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Question No. | Questions | 推奨(CQ)/ステートメント(BQ・FQ) | 推奨の強さ* | エビデンスの強さ* |
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BQ1 | 高度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | 高度催吐性リスク抗がん薬に対しては,オランザピン,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンを用いた4 剤併用療法を行う。オランザピンの併用が困難な場合は,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンを用いた3 剤併用療法を行う。 合意率:100%(24/24 名) |
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BQ2 | 高度催吐性リスク抗がん薬に対する5-HT3 受容体拮抗薬の選択において考慮すべき点は何か? | 高度催吐性リスク抗がん薬に対しては,3 剤併用療法において,急性期の制吐効果はグラニセトロンなどの第1 世代と第2 世代のパロノセトロンでほぼ同等であるが,遅発期の制吐効果はパロノセトロンのほうが良好な傾向である。4 剤併用療法時には第1 世代と第2 世代のどちらも選択可能だが,デキサメタゾンの投与期間を短縮する場合,あるいはオランザピンの併用が困難な場合には,パロノセトロンが優先される。 合意率:100%(24/24 名) |
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BQ3 | 中等度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | 中等度催吐性リスク抗がん薬による急性期の悪心・嘔吐に対しては,5-HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用する。催吐性が高いカルボプラチン(AUC≧4)においてはNK1 受容体拮抗薬を加えた3 剤を併用する。 合意率:100%(24/24 名) |
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BQ4 | 中等度催吐性リスク抗がん薬に対する5-HT3 受容体拮抗薬の選択において考慮すべき点は何か? | 中等度催吐性リスク抗がん薬に対しては,第2 世代の5-HT3 受容体拮抗薬であるパロノセトロンとデキサメタゾンを用いた2 剤併用療法を行うが,NK1 受容体拮抗薬を追加する場合には第1 世代の5-HT3 受容体拮抗薬を選択してもよい。 合意率:100%(24/24 名) |
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BQ5 | 軽度・最小度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | 軽度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法について,明確な根拠はないが,実臨床ではデキサメタゾンや5-HT3受容体拮抗薬等が広く投与されている。最小度催吐性リスク抗がん薬に対しては,予防的制吐療法は行わない。 合意率:100%(25/25 名) |
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CQ1 | 高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか? | 高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法へのオランザピンの追加・併用を強く推奨する。 合意率:95.7%(22/23 名) |
1 | B |
CQ2 | 高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,デキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することは推奨されるか? | 高度催吐性リスク抗がん薬のうち,AC 療法においては,悪心・嘔吐予防としてデキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することを弱く推奨する。 合意率:95.5%(21/22 名) |
2 | B |
CQ3 | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,NK1 受容体拮抗薬の投与は推奨されるか? | 中等度催吐性リスク抗がん薬のうち,カルボプラチンによる治療においては,悪心・嘔吐予防としてNK1 受容体拮抗薬の投与を強く推奨する。 合意率:100%(22/22 名) |
1 | A |
CQ4 | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか? | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法へのオランザピンの追加・併用を弱く推奨する。 合意率:87.5%(21/24 名) |
2 | C |
CQ5 | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,2 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか? | 推奨なし 合意率:—%(2 回投票を行ったが合意形成に至らなかった) |
not graded | C |
CQ6 | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,デキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することは推奨されるか? | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬にパロノセトロンを投与する場合には,デキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することを強く推奨する。 合意率:90.5%(19/21 名) |
1 | B |
CQ7 | R±CHOP 療法の悪心・嘔吐予防として,NK1 受容体拮抗薬の投与を省略することは推奨されるか? | R±CHOP 療法の悪心・嘔吐予防として,NK1 受容体拮抗薬の投与を省略しないことを弱く推奨する。 合意率:91.7%(22/24 名) |
2 | C |
FQ1 | 軽度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬の投与は推奨されるか? | 軽度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,明確な根拠はないが,実臨床ではデキサメタゾン,5-HT3 受容体拮抗薬が広く投与されている。 合意率:100%(22/22 名) |
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BQ6 | 予期性悪心・嘔吐に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | がん薬物療法による急性期・遅発期悪心・嘔吐の完全制御により,患者に悪心・嘔吐を経験させないことが最善の対策である。予期性悪心・嘔吐が生じた場合には,ベンゾジアゼピン系抗不安薬を投与する。 合意率:100%(25/25 名) |
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BQ7 | 放射線治療による悪心・嘔吐に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | 放射線照射部位によって催吐性リスク分類を行い,リスクに応じた制吐療法を行う。高度リスク(全身照射)では,予防的に5-HT3 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンを投与する。中等度リスク(上腹部への照射,全脳全脊髄照射)では,予防的に5-HT3 受容体拮抗薬を投与する。デキサメタゾンを併用してもよい。 合意率:100%(24/24 名) |
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CQ8 | 突出性悪心・嘔吐に対して,メトクロプラミドの投与は推奨されるか? | 突出性悪心・嘔吐に対して,メトクロプラミドの投与を弱く推奨する。 合意率:95.8%(23/24 名) |
2 | B |
CQ9 | 細胞障害性抗がん薬の静脈内投与を連日受ける患者に対して,連日制吐療法は推奨されるか? | 細胞障害性抗がん薬の静脈内投与を連日受ける患者に対して,連日制吐療法を行うことを強く推奨する。 合意率:95.8%(23/24 名) |
1 | D |
FQ2 | 経口抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,制吐薬の投与は推奨されるか? | 経口抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,制吐薬の投与を推奨できる根拠はない。救済治療薬の処方と適切な休薬・減量による対応を行う。 合意率:100%(22/22 名) |
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FQ3 | 悪心・嘔吐予防としてオランザピンを投与しても突出性悪心・嘔吐をきたした場合,オランザピンの追加投与は推奨されるか? | 突出性悪心・嘔吐に対して,オランザピン投与後のオランザピン追加投与を推奨できる根拠はない。オランザピン以外の制吐薬を投与する。 合意率:100%(22/22 名) |
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BQ8 | 制吐薬の投与経路選択において考慮すべき点は何か? | 5-HT3 受容体拮抗薬とNK1 受容体拮抗薬による悪心・嘔吐の抑制効果と全身作用に基づく副作用は,承認用法・用量において静脈内投与と経口投与に差はなく,投与経路は患者の状況に応じて判断する。 合意率:100%(19/19 名) |
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BQ9 | 制吐薬の注意すべき副作用にはどのようなものがあるか? | 制吐薬の注意すべき副作用として,5-HT3 受容体拮抗薬とNK1 受容体拮抗薬では便秘や頭痛,ホスアプレピタントでは末梢静脈内投与による注射部位障害がある。オランザピンでは眠気やめまい,デキサメタゾンでは不眠や一過性の高血糖,メトクロプラミドでは錐体外路症状(アカシジア,急性ジストニア等)がある。 合意率:100%(23/23 名) |
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BQ10 | 免疫チェックポイント阻害薬を併用したがん薬物療法における制吐療法はどのように行うか? | 免疫チェックポイント阻害薬を併用する場合には,がん薬物療法の催吐性リスクに応じた制吐療法を行う。免疫チェックポイント阻害薬の投与を理由に,制吐療法としてのデキサメタゾンの減量は行わない。 合意率:100%(24/24 名) |
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CQ10 | 悪心・嘔吐に対して,非薬物療法を併施することは推奨されるか? | 悪心・嘔吐に対して,非薬物療法を併施しないことを弱く推奨する。 合意率:83.3%(20/24 名) |
2 | D |
CQ11 | 予期性悪心・嘔吐に対して,非薬物療法は推奨されるか? | 予期性悪心・嘔吐に対して,非薬物療法を行わないことを弱く推奨する。 合意率:95.8%(23/24 名) |
2 | D |
BQ11 | 制吐療法の効果に影響を及ぼす患者関連因子にはどのようなものがあるか? | 制吐療法の効果を低下させる患者関連因子には,若年,女性,飲酒習慣なし,乗り物酔いや妊娠悪阻の経験,がある。患者背景に応じた制吐療法の強化を検討する。 合意率:100%(22/22 名) |
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BQ12 | 自宅など病院外で生じた悪心・嘔吐のコントロールにあたって,求められる支援は何か? | 患者が自身の症状評価を適切に行い,重篤な症状や困りごとがある場合には病院へ速やかに連絡・受診できるよう支援する。自宅でも悪心・嘔吐をコントロールできるよう,救済治療薬の服用方法について指導する。 合意率:100%(19/19 名) |
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BQ13 | 悪心・嘔吐に対する患者の効果的なセルフケアを促進するために,求められる情報提供や支援は何か? | 看護師,薬剤師等の医療チームは,医師からの説明に加え,予測される悪心・嘔吐の程度,発現時期,持続期間,生活への影響,制吐薬の種類や服用方法やその副作用,緊急時の連絡方法,生活の工夫など,治療前から継続した情報提供と支援を行う。患者が必要時に確認できるような教育資材等を活用しながら,個別性を踏まえて対応する。 合意率:100%(19/19 名) |
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CQ12 | 悪心・嘔吐の評価に,患者報告アウトカムを用いることは推奨されるか? | 悪心・嘔吐の評価に,患者報告アウトカムを用いることを強く推奨する。 合意率:100%(22/22 名) |
1 | B |
*推奨の強さ・エビデンスの強さは,本ガイドラインの概要の表3 を参照。