1.リスク分類からみた臓器がん別のレジメン一覧
1肺がん
2消化器がん
3頭頸部がん
4乳がん
5婦人科がん
6泌尿器がん
7胚細胞性腫瘍
8造血器腫瘍
9骨軟部腫瘍
10皮膚悪性腫瘍
11脳腫瘍
12原発不明がん
2.外部評価
本ガイドラインは草案段階で,制吐薬適正使用ガイドライン評価ワーキンググループによる外部評価,がん診療ガイドライン評価委員会によるガイドライン作成手法の評価(AGREEⅡ評価)を受けた。また,日本癌治療学会のほか,日本臨床腫瘍学会,日本サイコオンコロジー学会,日本がんサポーティブケア学会,日本放射線腫瘍学会,日本医療薬学会,日本がん看護学会の協力を得て,パブリックコメント募集を行った。外部評価にご協力くださった評価ワーキンググループ,がん診療ガイドライン評価委員会の皆様,コメントをお寄せくださった各学会会員の皆様には心より感謝したい。
以下,これらの外部評価で寄せられた主な意見に対する見解と対応を示す。なお,解説内容修正の指摘があったものについては,本ガイドライン改訂ワーキンググループ(改訂WG)で検討したうえで修正を行った。用語・誤字・脱字等の指摘には適宜対応した。
1評価ワーキンググループによる外部評価およびパブリックコメントで寄せられた意見とその対応
❶本ガイドライン全般について
- ・全体に難しい表現が多く,患者・家族が参考にすることが難しいのではないか
今版から患者2 名が改訂WG 委員として参加し,作成の各工程における協議にも加わっているが,主な利用者として「がん薬物療法および放射線治療実施医療機関において患者と直接的な関わりをもつ医療従事者(医師,看護師,薬剤師等)」を念頭に置いているため,専門性が高い内容が多くなっていることは否めない。今後,本ガイドラインとは別に,「患者向けのガイドライン」を作成することを検討している。
- ・レジメンの支持療法を考えるうえで重要な薬物相互作用の記載がなくなっている
薬物相互作用については,委員の間でも議論した。現状では実際の薬物間の相互作用を示す詳細なデータが存在しないまま「おそれや可能性」と明記されている場合が多いことを鑑み,臨床上の注意喚起目的で,Ⅱ章表1 において「薬物相互作用」としてエビデンスのあるものについて記載することとした。また,Ⅴ章の総論にも記載を追加した。今後,各薬剤の薬物相互作用に関するデータの蓄積と解析を待ち,記載を充実させていきたい。
- ・SPARED 試験,CONSOLE 試験などの本邦のランダム化第Ⅲ相比較試験のデータは重要性が高く,ガイドラインへ反映すべきである
発刊スケジュール上の制約により,検索年代以降の文献は今回のシステマティックレビューへの反映は困難であったが,重要なエビデンスについては,各CQ 解説内において,システマティックレビューには含まれていないことを明示したうえで,適宜言及している。部分改訂時には,2021 年以降のエビデンスを含めたシステマティックレビューを行う予定である。
- ・現在,ガイドラインごとに催吐性リスク分類の揺れがあり混乱している。エビデンスに基づく検討を行うなら,催吐性リスクごとではなく,抗がん薬やレジメンごとにCQ を設定すべきである
レジメンごとのCQ 設定を行えば,システマティックレビューでより厳密なエビデンスが得られ,正確な推奨につながる可能性はあるが,同時にCQ 数が際限なく増大する懸念と,レジメンによっては十分なエビデンスが得られない可能性もある。改訂WG でもレジメンごとのCQ 設定を行うか議論したが,今回の改訂においては従来どおり,催吐性リスクごとにレビューを行った。重要な問題であり,今後の検討課題とする。
❷Ⅱ章について
- ・NCCN ガイドラインでは,トラスツズマブ デルクステカンの催吐性リスクが中等度から高度に変更となっているが,本ガイドラインとしての見解を示すべき
注射薬の催吐性リスク表内のトラスツズマブ デルクステカン,sacituzumab govitecan を中等度催吐性リスクに分類したうえで,注釈を追記した。今後,制吐療法に関する臨床試験の結果が蓄積されれば,AUC≧4 のカルボプラチンと同様,この2 剤は中等度催吐性リスクでありながら,高度催吐性リスク抗がん薬に準じて3 剤併用療法を適応すべきとされる可能性がある。
- ・表2 で中等度催吐性リスクとされているカルボプラチンについて,アルゴリズムでは「中等度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法」の中に位置付けられており,「高度催吐性リスクに準じた扱い」の意味が分かりにくい
表2 のカルボプラチンに対する注記を修正するとともに,BQ3 ステートメントは「中等度催吐性リスク抗がん薬による急性期の悪心・嘔吐に対しては,5-HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用する。催吐性が高いカルボプラチン(AUC≧4)においてはNK1 受容体拮抗薬を加えた3 剤を併用する。」と変更した。
- ・抗がん薬投与開始後120 時間以上持続する超遅発期悪心・嘔吐を記載すべき
ご指摘に従って記載を修正した。
❸個別のQuestion について
- ●BQ2:高度催吐性リスク抗がん薬に対する5-HT3 受容体拮抗薬の選択において考慮すべき点は何か?
- ・現時点(2023 年4 月)では4 剤併用下において第1 世代と第2 世代を比較したデータは存在しない
ご指摘に従って記載を修正した。
- ・ステートメントの記載について,読者に誤解のないよう「急性期の制吐効果はほぼ同等であるが,」とすべき
ご指摘に従って記載を修正した。
- ●BQ3:中等度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか?
- ・オキサリプラチンは,2 つのメタアナリシスでNK1 受容体拮抗薬を追加する意義は否定的であり,修正すべき
ご指摘に従って,CQ1 とBQ3 と記載をそろえ,記載を修正した。
- ●BQ4:中等度催吐性リスク抗がん薬に対する5-HT3 受容体拮抗薬の選択において考慮すべき点は何か?
- ・参考文献のAnn Oncol. 2016;27:1601-6. では,臨床的に問題となる遅発期に関してはパロノセトロン群が第1 世代5-HT3 受容体拮抗薬に比較して有意に良好であり,「効果の差が大きくない」との表現は不適切である
ご指摘に従って,文献の内容を正確に示すため,解説を一部修正した。
- ●CQ1:高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?
- ・直接比較ではないため,「オランザピン5 mg と10 mg を比較したランダム化比較試験では」という表現は適切でない
ご指摘に従って,文献の内容を正確に示すため,解説を一部修正した。
- ・「オランザピンの追加投与」の「追加」は削除すべき
もとの記載は救済投与をイメージさせるため,「追加投与」という表現を「追加・併用」へ変更した。
- ・推奨の根拠となっているRCT 2 報は「CDDP or AC」と「CDDP」レジメンであり,高度催吐性リスクとしては適用が広くなるので推奨文か本文中で言及すべき。オランザピンの用量・投与方法について,J-FORCE 試験を根拠に「原則」とするのはやや早計に思われる
今回の改訂ではレジメンごとにエビデンスを収集していないので,次回改訂時の検討課題としたい。解説の記載については,ご指摘に従って「5 mg を1~4 日目の夕食後に投与することが望ましい」と修正した。
- ・抗コリン作用と関連する便秘や口渇等も患者にとっては重要になるため言及すべき
今回のシステマティックレビューでは,オランザピン追加・併用による最も代表的な害として血糖上昇と傾眠を採用したが,今回検証できなかった便秘や口渇など,その他の害については今後の検討課題としたい。
- ●CQ2:高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,デキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することは推奨されるか?
- ・CQ1 で4 剤を強く推奨しているが,本CQ の記載では3 剤を併用するのが一般的であると誤解が生じる可能性があり,オランザピンを含まない3 剤での評価であることを強調すべき。本邦のCDDP を対象としたSPARED 試験にも言及すべき
ご指摘に従って,解説の記載を「3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾン)を行う場合に」と修正した。SPARED 試験については,今後の研究課題の項で言及している。
- ・CQ で「高度催吐性リスク抗がん薬の~」としているのに対し,推奨の中ではAC 療法においてのみ言及されていることに違和感がある
改訂開始当初は高度催吐性リスク抗がん薬全般を念頭に置いてCQ を設定したものの,システマティックレビューではAC 療法以外の高度催吐性リスク抗がん薬においては,スペアリングに関するエビデンスが得られなかったことから,今版ではAC 療法に限定した推奨としている。AC 療法,CDDP レジメンに分けたCQ 設定については,次版の検討課題としたい。
- ・CDDP レジメンを対象としたサブグループ解析の結果で非劣性が証明されていないことを根拠に「エビデンスは確立されていない」とすることはやや限界があるように思われる。患者背景を包括的に評価し適用を慎重に考える,というスタンスが正しいのではないか
CDDP レジメンの標準制吐療法では,デキサメタゾンは「1~4 日目の4 日間投与」であるのに対し,当該試験の対照群では「1~3 日目の3 日間投与」になっていた。CDDP レジメンのサブグループ解析で非劣性が示されていないだけではなく,CDDP レジメンにおけるデキサメタゾン省略について適切なデザインで検証された非劣性試験が存在しないため,エビデンスは確立されていないとした。この点を検証したSPARED 試験は次回改訂時に取り込む予定である。
- ●CQ4:中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?
- ・CQ5 のほうは推奨なしになっているが,CQ4 も同様にエビデンスが不足しているため,推奨を決定できないように思われる
本ガイドラインではGRADE Grid による推奨決定方法を採用しており,推奨の強さはエビデンスの強さ以外の要素も含めて総合的に各委員が判断し,投票した結果により決定されるため,エビデンスの強さが類似するCQ とは必ずしも同様の結果とはならない。
- ●CQ5:中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,2 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか?
- ・各引用論文中に糖尿病患者が何人エントリーされていたのかという情報はないので,「糖尿病の患者が除外されていた」という記載は正確性に欠ける
海外で実施された臨床試験では,糖尿病の程度によって除外されている報告や,除外されて有無が明確でない報告もあることから,記載を一部修正した。
- ●CQ6:中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,デキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することは推奨されるか?
- ・システマティックレビュー結果から,NV 割合においてのみ有意差をもって対照群が良好な結果であり,遅発期のCR 割合については,有意差はないものの対照群が良い傾向を示すものが多かったと記載されている。益についてはCQ の解決に足るエビデンスがない状態で,この結果からステロイドスペアリングを行うことについて「強く推奨」することは妥当といえるのか
ご指摘いただいた点については要検討事案として認識しているが,システマティックレビューの結果に基づいて行った推奨決定会議の投票結果を尊重したい。
- ●FQ1:軽度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬の投与は推奨されるか?
- ・直接比較ではないため,「オランザピン5 mg と10 mg を比較したランダム化比較試験では」という表現は適切でない
ご指摘に従って,文献の内容を正確に示すため,解説を一部修正した。
- ●BQ6:予期性悪心・嘔吐に対する制吐療法にはどのようなものがあるか?
- ・予期性悪心・嘔吐に対する対策の中で「患者に対し,あらかじめ適切な制吐療法で対応していることを伝える」ことも重要ではないか
ご指摘に従って記載を追加した。
- ●CQ9:細胞障害性抗がん薬の静脈内投与を連日受ける患者に対して,連日制吐療法は推奨されるか?
- ・Cytotoxic の日本語訳として「殺細胞性抗がん薬」は適切でないので,「細胞障害性抗がん薬」とすべき
ご指摘に従って記載を修正した。
- ・「殺細胞性抗がん薬」は「シスプラチンまたはイホスファミド」と変更すべき
当初は細胞障害性抗がん薬を連日投与する際の制吐療法について対象薬は限定せずにCQ を設定したが,結果的にシステマティックレビューで評価可能な文献がシスプラチン,イホスファミドを対象としたものが多かったため,CQ 文言は変更せずに記載した。
- ・エビデンスの強さと推奨の強さに乖離があるように思われる
Minds 2017 では,重大とされたアウトカムの中から,一番弱いエビデンスの強さをエビデンスの総括としてのエビデンスの強さとして採用するとされていることから,本CQ のエビデンスの強さはD(非常に弱い)となっている。一方,推奨決定会議では,エビデンスの強さ以外の要素も含めて総合的に推奨の強さが考慮されるため,強い推奨となった。今後のエビデンスの蓄積を踏まえて検討継続が必要な分野と思われた。
- ・「本 CQ の背景」において「今回は高度催吐性リスクとされるシスプラチンおよびイホスファミドを連日投与するレジメンに絞って検討した」と記載しているが,推奨文には催吐性リスクに関する記載はなく,細胞障害性抗がん薬全般に関する内容であると判断できる。本推奨の対象患者像および制吐療法を明確に示す必要があるのではないか
本来であれば催吐性リスクごとに検討するべきであるが,システマティックレビューが膨大化するため,今回は重要臨床課題として催吐性リスクが高いレジメンに絞ってレビューを行った。
- ●FQ2:経口抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,制吐薬の投与は推奨されるか?
- ・オラパリブ,ニラパリブは軽度催吐性リスクに分類されるのではないか
重要臨床課題として取り上げた薬剤について検討を行ったので,中等度/軽度というよりも「比較的嘔気リスクが高い」として取り上げた。オラパリブ,ニラパリブについてはpivotal 試験(SOLO1,SOLO2,NOVA など)で嘔吐が30~40%程度観察されており,Ⅱ章の表3 では中等度としている。
- ●FQ3:悪心・嘔吐予防としてオランザピンを投与しても突出性悪心・嘔吐をきたした場合,オランザピンの追加投与は推奨されるか?
- ・突出性悪心・嘔吐に対して有効な薬剤は非常に限られており,本案でもオランザピンおよびメトクロプラミドの2 剤のみが記載されている。両剤は添付文書上の併用禁忌に指定されておらず,実臨床において他の治療選択肢も乏しいことから,悪心・嘔吐の症状に応じて錐体外路症状に注意しながら使用する事例が散見される。「オランザピンとの併用は錐体外路症状に注意すること」のような記載が妥当ではないか
ご指摘に従って,記載を修正した。
- ●BQ9:制吐薬の注意すべき副作用にはどのようなものがあるか?
- ・オランザピンの副作用として,高血糖についても言及したほうがよい
本BQ では制吐薬としての用法・用量における副作用を取り扱うため,オランザピンによる高血糖に関する記載は不要とした。
- ●CQ10:悪心・嘔吐に対して,非薬物療法を併施することは推奨されるか?
- ・いくつかの経口抗がん薬において,グレープフルーツジュースや高脂肪食等との相互作用が明らかにされており,添付文書に明記されている薬剤が多く存在する。このため,食事療法については,これらによる薬物動態上の変化も害の一つとして認識されることが重要であり,本案においても評価の一つとして記載する必要があるのではないか
ご指摘に従って,記載を追加した。
❹図表・付録類について
- ・PRO-CTCAE の表を掲載してはどうか
本ガイドラインとして掲載を試みたが,当該の表は転載不可であることが判明したため,解説中での紹介にとどめた。
- ・ホスネツピタントについて「主な副作用」「併用禁忌・注意薬」の記載が不正確である
薬物相互作用についてはⅡ章の表1 に項目を設け,エビデンスのあるアプレピタントとホスネツピタントの相互作用を個々に記載した。
2がん診療ガイドライン評価委員会によるAGREEⅡ評価結果とその対応
❶AGREEⅡ評価結果
❷AGREEⅡ評価結果への対応
・項目2
今回,標準制吐療法としてエビデンスが十分あり広く実臨床に浸透している内容についてはBQ として記述を行った。Ⅰ章7 の❹Questionの作成 に「BQ1~7,BQ11 に関しては,前版では CQ であったが,基本的な情報または標準制吐療法としてエビデンスが十分あり,広く実臨床に浸透しているとして,改訂WG の協議によりBQ とした。」と追記した。Question の区分については,引き続き検討していく。
・項目4
疾患のガイドラインと違い,本ガイドラインに領域の専門家として参加しているわけではないため,専門分野・職種の情報は割愛している。
・項目8
ご指摘に従って,記載を修正した。
・項目9
ご指摘に従って,システマティックレビュー結果の公開予定についても,記載を追加した。
・項目16
エビデンスとしては限定的と思われるが,次版の検討課題としたい。
・項目18
施設間格差等の問題点は,現在検討しているQI 調査としてのアンケート調査結果によって明らかにしたうえで,次版に反映したい。他科連携については重要な問題であり,次期改訂版で取り上げたい。
・項目19
本ガイドラインとは別に,患者用のガイドライン作成を検討中である。
・項目20
コストやリソースについてはエビデンスが乏しいが,継続課題としたい。
・項目21
ご指摘に従って,記載を追加した。
3投票結果
Question 情報 | 投票参加者 | 行うことを強く推奨 する/承認する** |
行うことを弱く推奨 する/承認しない** |
行わないことを強く 推奨する |
行わないことを弱く 推奨する |
|||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Question No |
Questions | 推奨(CQ)/ステートメント(BQ・FQ) | 推奨の強さ*1 | エビデンスの強さ*1 | 合意率 | 投票人数 | 棄権 | 棄権者 | 人数 | 割合 | 人数 | 割合 | 人数 | 割合 | 人数 | 割合 |
BQ1 | 高度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | 高度催吐性リスク抗がん薬に対しては,オランザピン,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンを用いた4 剤併用療法を行う。オランザピンの併用が困難な場合は,5-HT3 受容体拮抗薬,NK1 受容体拮抗薬,デキサメタゾンを用いた3 剤併用療法を行う。 | — | — | 100% | 24 | 1 | 安部正和 | 24 | 100% | 0 | 0% | ||||
BQ2 | 高度催吐性リスク抗がん薬に対する5-HT3 受容体拮抗薬の選択において考慮すべき点は何か? | 高度催吐性リスク抗がん薬に対しては,3 剤併用療法において,急性期の制吐効果はグラニセトロンなどの第1 世代と第2 世代のパロノセトロンでほぼ同等であるが,遅発期の制吐効果はパロノセトロンのほうが良好な傾向である。4 剤併用療法時には第1 世代と第2 世代のどちらも選択可能だが,デキサメタゾンの投与期間を短縮する場合,あるいはオランザピンの併用が困難な場合には,パロノセトロンが優先される。 | — | — | 100% | 24 | 0 | 24 | 100% | 0 | 0% | |||||
BQ3 | 中等度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | 中等度催吐性リスク抗がん薬による急性期の悪心・嘔吐に対しては,5-HT3 受容体拮抗薬とデキサメタゾンを併用する。催吐性が高いカルボプラチン(AUC≧4)においてはNK1 受容体拮抗薬を加えた3 剤を併用する。 | — | — | 100% | 24 | 1 | 西村潤一 | 24 | 100% | 0 | 0% | ||||
BQ4 | 中等度催吐性リスク抗がん薬に対する5-HT3 受容体拮抗薬の選択において考慮すべき点は何か? | 中等度催吐性リスク抗がん薬に対しては,第2 世代の5-HT3 受容体拮抗薬であるパロノセトロンとデキサメタゾンを用いた2 剤併用療法を行うが,NK1 受容体拮抗薬を追加する場合には第1 世代の5-HT3 受容体拮抗薬を選択してもよい。 | — | — | 100% | 24 | 0 | 24 | 100% | 0 | 0% | |||||
BQ5 | 軽度・最小度催吐性リスク抗がん薬に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | 軽度催吐性リスク抗がん薬に対する予防的制吐療法について,明確な根拠はないが,実臨床ではデキサメタゾンや5-HT3 受容体拮抗薬等が広く投与されている。最小度催吐性リスク抗がん薬に対しては,予防的制吐療法は行わない。 | — | — | 100% | 25 | 0 | 25 | 100% | 0 | 0% | |||||
CQ1 | 高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか? | 高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法へのオランザピンの追加・併用を強く推奨する。 | 1 | B | 95.7% | 23 | 1 | 安部正和 | 22 | 95.7% | 1 | 4.3% | 0 | 0% | 0 | 0% |
CQ2 | 高度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,デキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することは推奨されるか? | 高度催吐性リスク抗がん薬のうち,AC 療法においては,悪心・嘔吐予防としてデキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することを弱く推奨する。 | 2 | B | 95.5% | 22 | 1 | 中島貴子 | 0 | 0% | 21 | 95.5% | 0 | 0% | 1 | 4.5% |
CQ3 | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,NK1 受容体拮抗薬の投与は推奨されるか? | 中等度催吐性リスク抗がん薬のうち,カルボプラチンによる治療においては,悪心・嘔吐予防としてNK1 受容体拮抗薬の投与を強く推奨する。 | 1 | A | 100% | 22 | 1 | 西村潤一 | 22 | 100% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% |
CQ4 | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+NK1 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか? | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,3 剤併用療法へのオランザピンの追加・併用を弱く推奨する。 | 2 | C | 87.5% | 24 | 1 | 西村潤一 | 0 | 0% | 21 | 87.5% | 0 | 0% | 3 | 12.5% |
CQ5 | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,2 剤併用療法(5-HT3 受容体拮抗薬+デキサメタゾン)へのオランザピンの追加・併用は推奨されるか? | 推奨なし | not graded | C | 58.3% | 24 | 0 | 0 | 0% | 11 | 45.8% | 0 | 0% | 13 | 54.2% | |
24 | 0 | 0 | 0% | 9 | 37.5 | 1 | 4.2% | 14 | 58.3% | |||||||
CQ6 | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,デキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することは推奨されるか? | 中等度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬にパロノセトロンを投与する場合には,デキサメタゾンの投与期間を1 日に短縮することを強く推奨する。 | 1 | B | 90.5% | 21 | 2 | 沖田憲司・ 中島貴子 |
19 | 90.5% | 2 | 9.5% | 0 | 0% | 0 | 0% |
CQ7 | R±CHOP 療法の悪心・嘔吐予防として,NK1 受容体拮抗薬の投与を省略することは推奨されるか? | R±CHOP 療法の悪心・嘔吐予防として,NK1 受容体拮抗薬の投与を省略しないことを弱く推奨する。 | 2 | C | 91.7% | 24 | 0 | 0 | 0% | 2 | 8.3% | 0 | 0% | 22 | 91.7% | |
FQ1 | 軽度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,5-HT3 受容体拮抗薬の投与は推奨されるか? | 軽度催吐性リスク抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,明確な根拠はないが,実臨床ではデキサメタゾン,5-HT3 受容体拮抗薬が広く投与されている。 | — | — | 100% | 22 | 0 | 22 | 100% | 0 | 0% | |||||
BQ6 | 予期性悪心・嘔吐に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | がん薬物療法による急性期・遅発期悪心・嘔吐の完全制御により,患者に悪心・嘔吐を経験させないことが最善の対策である。予期性悪心・嘔吐が生じた場合には,ベンゾジアゼピン系抗不安薬を投与する。 | — | — | 100% | 25 | 0 | 25 | 100% | 0 | 0% | |||||
BQ7 | 放射線治療による悪心・嘔吐に対する制吐療法にはどのようなものがあるか? | 放射線照射部位によって催吐性リスク分類を行い,リスクに応じた制吐療法を行う。高度リスク(全身照射)では,予防的に5-HT3 受容体拮抗薬およびデキサメタゾンを投与する。中等度リスク(上腹部への照射,全脳全脊髄照射)では,予防的に5-HT3 受容体拮抗薬を投与する。デキサメタゾンを併用してもよい。 | — | — | 100% | 24 | 0 | 24 | 100% | 0 | 0% | |||||
CQ8 | 突出性悪心・嘔吐に対して,メトクロプラミドの投与は推奨されるか? | 突出性悪心・嘔吐に対して,メトクロプラミドの投与を弱く推奨する。 | 2 | B | 95.8% | 24 | 0 | 0 | 0% | 23 | 95.8% | 0 | 0% | 1 | 4.2% | |
CQ9 | 細胞障害性抗がん薬の静脈内投与を連日受ける患者に対して,連日制吐療法は推奨されるか? | 細胞障害性抗がん薬の静脈内投与を連日受ける患者に対して,連日制吐療法を行うことを強く推奨する。 | 1 | D | 95.8% | 24 | 0 | 23 | 95.8% | 1 | 4.2% | 0 | 0% | 0 | 0% | |
FQ2 | 経口抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,制吐薬の投与は推奨されるか? | 経口抗がん薬の悪心・嘔吐予防として,制吐薬の投与を推奨できる根拠はない。救済治療薬の処方と適切な休薬・減量による対応を行う。 | — | — | 100% | 22 | 0 | 22 | 100% | 0 | 0% | |||||
FQ3 | 悪心・嘔吐予防としてオランザピンを投与しても突出性悪心・嘔吐をきたした場合,オランザピンの追加投与は推奨されるか? | 突出性悪心・嘔吐に対して,オランザピン投与後のオランザピン追加投与を推奨できる根拠はない。オランザピン以外の制吐薬を投与する。 | — | — | 100% | 22 | 0 | 22 | 100% | 0 | 0% | |||||
BQ8 | 制吐薬の投与経路選択において考慮すべき点は何か? | 5-HT3 受容体拮抗薬とNK1 受容体拮抗薬による悪心・嘔吐の抑制効果と全身作用に基づく副作用は,承認用法・用量において静脈内投与と経口投与に差はなく,投与経路は患者の状況に応じて判断する。 | — | — | 100% | 19 | 0 | 19 | 100% | 0 | 0% | |||||
BQ9 | 制吐薬の注意すべき副作用にはどのようなものがあるか? | 制吐薬の注意すべき副作用として,5-HT3 受容体拮抗薬とNK1 受容体拮抗薬では便秘や頭痛,ホスアプレピタントでは末梢静脈内投与による注射部位障害がある。オランザピンでは眠気やめまい,デキサメタゾンでは不眠や一過性の高血糖,メトクロプラミドでは錐体外路症状(アカシジア,急性ジストニア等)がある。 | — | — | 100% | 23 | 0 | 23 | 100% | 0 | 0% | |||||
BQ10 | 免疫チェックポイント阻害薬を併用したがん薬物療法における制吐療法はどのように行うか? | 免疫チェックポイント阻害薬を併用する場合には,がん薬物療法の催吐性リスクに応じた制吐療法を行う。免疫チェックポイント阻害薬の投与を理由に,制吐療法としてのデキサメタゾンの減量は行わない。 | — | — | 100% | 24 | 0 | 24 | 100% | 0 | 0% | |||||
CQ10 | 悪心・嘔吐に対して,非薬物療法を併施することは推奨されるか? | 悪心・嘔吐に対して,非薬物療法を併施しないことを弱く推奨する。 | 2 | D | 83.3% | 23 | 0 | 0 | 0% | 7 | 30.4% | 1 | 4.3% | 15 | 65.2% | |
24 | 0 | 0 | 0% | 3 | 12.5% | 1 | 4.2% | 20 | 83.3% | |||||||
CQ11 | 予期性悪心・嘔吐に対して,非薬物療法は推奨されるか? | 予期性悪心・嘔吐に対して,非薬物療法を行わないことを弱く推奨する。 | 2 | D | 95.8% | 24 | 0 | 0 | % | 0 | 0% | 1 | 4.2% | 23 | 95.8% | |
BQ11 | 制吐療法の効果に影響を及ぼす患者関連因子にはどのようなものがあるか? | 制吐療法の効果を低下させる患者関連因子には,若年,女性,飲酒習慣なし,乗り物酔いや妊娠悪阻の経験,がある。患者背景に応じた制吐療法の強化を検討する。 | — | — | 100% | 22 | 0 |
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22 | 100% | 0 | 0% | ||||
BQ12 | 自宅など病院外で生じた悪心・嘔吐のコントロールにあたって,求められる支援は何か? | 患者が自身の症状評価を適切に行い,重篤な症状や困りごとがある場合には病院へ速やかに連絡・受診できるよう支援する。自宅でも悪心・嘔吐をコントロールできるよう,救済治療薬の服用方法について指導する。 | — | — | 100% | 19 | 0 |
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19 | 100% | 0 | 0% | ||||
BQ13 | 悪心・嘔吐に対する患者の効果的なセルフケアを促進するために,求められる情報提供や支援は何か? | 看護師,薬剤師等の医療チームは,医師からの説明に加え,予測される悪心・嘔吐の程度,発現時期,持続期間,生活への影響,制吐薬の種類や服用方法やその副作用,緊急時の連絡方法,生活の工夫など,治療前から継続した情報提供と支援を行う。患者が必要時に確認できるような教育資材等を活用しながら,個別性を踏まえて対応する。 | — | — | 100% | 19 | 0 | 19 | 100% | 0 | 0% | |||||
CQ12 | 悪心・嘔吐の評価に,患者報告アウトカムを用いることは推奨されるか? | 悪心・嘔吐の評価に,患者報告アウトカムを用いることを強く推奨する。 | 1 | B | 100% | 22 | 1 | 中島貴子 | 22 | 100% | 0 | 0% | 0 | 0% | 0 | 0% |