クリニカルクエスチョン・推奨一覧

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第1 章 成人膠芽腫

総論

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 成人初発膠芽腫に対する手術療法はどのような意義があるか? 膠芽腫では,手術後の一般状態が良い場合において,手術による摘出度が高いほど,無増悪生存期間と全生存期間の改善がみられる。 C1
CQ2 成人初発膠芽腫に対する放射線治療はどのような意義があるか? 70 歳以下の成人初発膠芽腫に対し,放射線治療を行う。照射方法は総線量60 Gy を6 週間かけて行う(1 日1 回2 Gy,5 日間/1 週間)。 A
成人初発膠芽腫に対する放射線治療として追加および単独での定位放射線照射を行わない。 C2
CQ3 成人初発膠芽腫に対する化学療法の種類と意義はどのようなものがあるか? 18 歳以上70 歳以下の成人初発膠芽腫患者に対して,手術後,経口内服薬テモゾロミドを放射線治療期間中,ならびに放射線終了後投与する(Stupp プロトコール)。 A
Stupp プロトコール治療を遂行中,放射線治療終了後に偽増悪(pseudoprogression)が示唆される場合はテモゾロミド維持化学療法を継続する。 C1
初発または再発悪性神経膠腫に対するテモゾロミド治療において,適宜ニューモシスチス肺炎に対する予防処置を行う。 C1
初発または再発悪性神経膠腫に対するテモゾロミド治療を行う場合,血清中のHBs 抗原,HBc 抗体,HBs 抗体を測定し,肝臓専門医や内科医と相談して,その患者のB 型肝炎状態に応じた対応を適切に行う。 C1
初発成人膠芽腫に対してニムスチン単剤あるいはニムスチンを含む化学療法を用いる。 C1
初発成人膠芽腫に対して,術後ニムスチンやテモゾロミドの化学療法に併用してインターフェロン‒βを投与する。 C1
成人初発膠芽腫手術においてカルムスチン徐放性ポリマーを留置する。 C1
補遺1 ベバシズマブのStupp プロトコールへの上乗せ効果
最近発表された2 つの第III 相試験(AVAGlio 試験,RTOG0825 試験)において,全生存期間に関するベバシズマブのStupp プロトコールへの上乗せ効果は認められなかった。無増悪生存期間,QOL 保持・改善の観点からはベバシズマブの上乗せ効果の評価は両試験が相反する結果となっている。
 
補遺2 光線力学的療法
悪性神経膠腫(初発・再発)を含めた悪性脳腫瘍に対して,開頭腫瘍摘出術の際にタラポルフィンナトリウムと半導体レーザを用いた光線力学的療法を行うことが可能である。
 
CQ4 成人再発膠芽腫に対する治療はどのように行うか? 症例によっては,再発膠芽腫に対して再手術を考慮してもよい。 C1
成人再発膠芽腫に対して全身・局所化学療法を考慮してもよい。 C1
成人再発膠芽腫治療において局在した病変の制御を目的として,定位放射線照射を考慮してもよい。 C1
CQ5 高齢者初発膠芽腫に対して手術後どのような治療が推奨されるか? 高齢者においてもまず放射線治療を考慮する。 B
高齢者においては,線量の減量と照射期間の短縮を考慮してもよい。 B
高齢者において,MGMT 遺伝子プロモーター領域メチル化症例はテモゾロミド単独療法も治療選択肢として考慮してもよい。 C1
高齢者において,放射線治療後にテモゾロミド補助化学療法を考慮してもよい。 C1

第2 章 成人転移性脳腫瘍

総論

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1-a 単発あるいは少数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか? 全脳照射を行う。 B
KPS の良い症例で全摘出可能な腫瘍では腫瘍摘出術+全脳照射を行う。 ・単発の場合 B
・少数個の場合 C1
3 cm 以下の腫瘍に対しては全脳照射に加えて定位放射線照射(STI)を行う。 ・単発の場合 B
・少数個の場合 C1
薬物療法に高感受性とされる腫瘍(小細胞肺癌など)を除き,厳重なフォローアップを前提にSTI 単独治療を行ってもよい。 C1
腫瘍の薬物療法感受性によっては薬物療法を行ってもよい。(本章CQ2 参照) C1
機能予後あるいは生命予後の改善が期待される場合には摘出術を行ってもよい。 C1
CQ1-b 多数個の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか? 全脳照射を行う。 A
全脳照射にSTI を加えても良い。 C1
腫瘍の薬物療法感受性によっては薬物療法を行ってもよい。(本章CQ2 参照) C1
機能予後あるいは生命予後の改善が期待される場合には腫瘍摘出術を行ってもよい。 C1
CQ2 転移性脳腫瘍の治療において薬物療法(分子標的治療薬を含む)はどう選択するのか? 症候性または近い将来に脳局所治療を必要とする転移性脳腫瘍では,原則として放射線治療または腫瘍摘出術を優先する。 A
薬物療法に高感受性とされる腫瘍では,全身薬物療法を単独または転移性脳腫瘍への局所治療と並行して行う。 B
推奨2 に該当しない固形腫瘍では,頭蓋外に明らかながん病変があり,かつ転移性脳腫瘍による症状がない場合には,転移性脳腫瘍および頭蓋外病変への効果を期待して全身薬物療法を優先してもよい。 C1
髄膜がん腫症では,それぞれの腫瘍の薬物療法感受性を根拠として全身薬物療法または抗がん薬の髄腔内投与を行ってもよい。 C1
CQ3 再発の転移性脳腫瘍の治療はどう選択するのか? 全脳照射が行われていない症例に関しては全脳照射を追加するように勧められる。 C1
定位放射線照射(STI)後の長径3 cm 以下の新規脳内病変にはSTI を考慮してもよい。 C1
全脳照射後の長径3 cm 以下の再発にはSTI を行うよう勧められる。 C1
腫瘍の種類によっては薬物療法を考慮してもよい。(本章CQ2 参照) C1
機能予後あるいは生命予後の改善が期待される場合には摘出術を考慮してもよい。 C1
CQ4 髄膜がん腫症に対する治療はどう選択するのか? 腫瘍の広がりおよび粗大病変の存在に応じて放射線治療を行うことが勧められる。 C1
腫瘍の種類によって薬物療法を行ってもよい。 C1
髄膜がん腫症に伴う水頭症には髄液シャントあるいはドレナージを行ってもよい。 C1
CQ5 頭蓋骨転移に対する治療はどう選択するのか? 症候性または近い将来に局所治療を必要とする頭蓋骨転移には放射線治療を行う。 B
薬物療法に高感受性とされる腫瘍では,薬物療法を単独あるいは放射線治療と組み合わせて行うよう勧められる。 C1
全身の転移性骨腫瘍を有する患者に対して,あるいは骨関連事象のリスクが高い頭蓋骨転移の場合,骨関連事象の発現を軽減するために,ビスホスホネート製剤(ゾレドロン酸)またはヒト型抗RANKL(NFκB 活性化受容体リガンド)モノクローナル抗体薬(デノスマブ)を投与する。 B
外科治療は,脳神経症状の早急な解除,静脈洞閉塞の回避,整容,または病理診断を目的に,厳格な適応判断のもとに行うよう勧められる。 C1
CQ6 転移性脳腫瘍に対するステロイドや浸透圧利尿薬はどう使用するのか? 神経症状を呈する腫瘍周辺の浮腫に対しては,ステロイドや浸透圧利尿薬を使用する。 B
CQ7 転移性脳腫瘍に対する抗てんかん薬はどう使用するのか? てんかん発作の既往がある場合に使用することが勧められる。 C1
てんかん発作の既往のない場合は,腫瘍摘出術および定位放射線照射の周術期などを除き,予防的な抗てんかん薬は使用しない。 C2
抗てんかん薬を使用する場合は,抗がん薬を含めた他剤との薬物相互作用に注意する。 C1

第3 章 中枢神経系原発悪性リンパ腫

総論

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 PCNSL の診療における手術療法の位置づけは? PCNSL に対しては,原則として手術による組織診断が必要である。 A
手術法としては,組織診断を目的とした生検術が推奨される。 C1
CQ2-a PCNSL に対して診断確定前にステロイド療法は施行すべきか? 生検術前のステロイド使用は,ステロイドによる標的病変の縮小が高頻度に生じるため,手術時に生検的中率が低下するリスクがあり,可能な限り投与を控える。 C2
CQ2-b PCNSL に対する診断確定後のステロイド療法の位置づけは? PCNSL に対するステロイド療法は,一過性の腫瘍縮小効果が認められることが多く,また,症状緩和目的に使用されることも多い。 C1
ステロイドは治癒的効果に乏しいため,治癒目的の単独使用は推奨されない。 C2
CQ3 PCNSL に対してどのような治療が推奨されるか? HD‒MTX療法を基盤とする化学療法を先行し,引き続き全脳照射による放射線治療を行うことが望ましい。 A
註1:高齢者では,全脳照射による遅発性中枢神経障害のリスクがあり,注意を要する(本章CQ4 参照)。 C1
註2:化学療法が不適切な症例では,病勢制御のため全脳照射単独療法を行う場合がある。  
CQ4 高齢者PCNSL に対してどのような治療が推奨されるか? 遅発性中枢神経障害の発生を軽減するため,高齢者における初発時の治療として,導入化学療法後CR となった症例については,全脳照射を減量ないし待機とした治療法を考慮する。 C1
CQ5 PCNSL に対する放射線治療ではどのような照射野と照射線量が推奨されるか? 照射野は全脳が推奨される。 C1
照射線量は,全脳に30~40 Gy(1 回線量1.8~2.0 Gy)が推奨される。 B
CQ6 PCNSL に対してどのような化学療法が推奨されるか? HD‒MTX 療法との併用薬剤としては,プロカルバジン(PCZ),シクロホスファミド(CPA),ビンクリスチン(VCR),チオテパ(国内販売中止),HD‒AraC 療法が推奨される。 C1
HD‒MTX 療法とHD‒AraC 療法の併用療法+全脳照射は,HD‒MTX 単独療法+全脳照射より予後が改善する可能性があるが,骨髄抑制やそれに伴う感染症などの有害事象発生率は高い。HD‒MTX 療法とHD‒AraC 療法との同時併用療法か,逐次療法のいずれでもよい。 C1
CQ7 初発PCNSL に対して全脳照射を省略した化学療法単独療法は推奨されるか? 初発PCNSL では化学療法単独療法によってCR が得られた場合,全脳照射併用療法を省略することは治療選択肢の一つではあるが,無増悪生存期間が短くなる可能性がある。
註:高齢者初発PCNSL に対しての推奨については,本章CQ4 を参照のこと。
C2
CQ8 PCNSL に対する抗がん薬の髄注療法は推奨されるか? 抗がん薬の髄注による有意な生存期間延長効果は検証されておらず,診断時髄液細胞診陰性例では髄注は推奨されない。 C2
CQ9 PCNSL に対して自家幹細胞移植を伴う大量化学療法は推奨されるか? 初発PCNSL に対する自家幹細胞移植(ASCT)併用大量化学療法(HDC)(主にチオテパを含むレジメン)は,現段階では一般臨床としては推奨されない。 C2
CQ10 PCNSL に対してリツキシマブによる免疫(抗体)療法は推奨されるか? B‒cell マーカーのCD20 に対するモノクローナル抗体のリツキシマブは,血液脳関門透過性に欠き,PCNSL に対するリツキシマブの単独,併用療法ともに,現段階では一般臨床としては推奨されない。 C2
CQ11 PCNSL に対して血液脳関門破綻療法を併用した化学療法は推奨されるか? PCNSL に対する血液脳関門破綻療法(BBBD)併用化学療法は,血管内治療などの特殊な治療技術を要し,現状では試験的治療の段階にある。 C2
CQ12 再発PCNSL に対してどのような治療が推奨されるか? 再発PCNSL に対する標準治療は確立していないが,初期治療でHD‒MTX 療法反応症例では,HD‒MTX 療法の再投与を試みてもよい。 C1
CQ13 PCNSL に対して眼科的検査,全身精査は必要か? PCNSL では,眼球内リンパ腫や全身性悪性リンパ腫を合併することがあり,その有無を精査することが望ましい。 B
CQ14 眼球内リンパ腫にはどのような治療があるか? 眼球内リンパ腫に対しての標準的治療法は確立していないが,病状に応じ,MTX やAraC の全身投与,MTX の硝子体局注療法,眼球照射などが行われることがある。 C1