第2 章 疫学
口腔がんは顎口腔領域に発生する悪性腫瘍の総称である。口腔は歯以外の表面が扁平上皮からなる粘膜で被覆されているため,病理組織学的に口腔がんの90%以上は扁平上皮癌であり,その他としては小唾液腺に由来する腺系癌や,肉腫,悪性リンパ腫,転移性癌がある1)。ここでは,最も頻度が高い扁平上皮癌を「口腔癌」として述べる。
UICC やWHO は,頬粘膜,上歯肉/上顎歯肉(上顎歯肉),下歯肉/下顎歯肉(下顎歯肉),硬口蓋,舌,口腔底/口底(口底)に発生した癌を口腔癌と定義し,原発巣の大きさ,領域リンパ節転移,遠隔臓器転移の有無を基準とするTNM 分類を提案している1-3)。なお,頬粘膜は上・下唇の粘膜面,頬の粘膜面,臼後部,上・下の頬歯肉溝(口腔前庭)に,舌は有郭乳頭より前(舌の前方2/3)の舌背面と舌縁,舌下面(舌腹)に亜分類されている。UICC によるTNM 分類では,口唇は口腔と一括して取扱われているが,その中で口唇は赤唇部のみを指し,上唇(赤唇部),下唇(赤唇部)と唇交連とに分けられている。いずれも組織学的確証を必要としている。
口腔癌の疫学的手法としてコホート研究,症例対照研究が積み重ねられている3)。我が国における口腔癌罹患数は1975 年には2,100 人,2005 年には6,900 人であったが,2015 年には7,800 人になると予測された4)。しかし,我が国のがん登録・統計は従前より「口腔と咽頭」を合わせた罹患数の集計であり,口腔癌罹患数の信頼性の高いデータは現在のところない。今後,全国がん登録などの登録事業が厳正に進むことにより,より正確な罹患数が報告されるものと期待される。年齢調整による男女比は3:2 と男性に多く,人口の高齢化に伴って口腔癌の罹患数も増加しつつある(重要ポイント2-1)5)。また,若年者の口腔癌罹患数も増加しているとの報告もある20)。口腔癌の中では舌癌が最も多い6, 7)(重要ポイント2-2)。口腔は消化器系の入り口として,喫煙や飲酒8-11),食物などによる化学的刺激に曝露され,またう歯や不良な歯科補綴装置による機械的刺激12, 13)があり,発癌にかかわる特殊な環境と危険因子が複数存在することが特徴である(重要ポイント2-3)。
口腔癌は直接みて触れることができるため,その検診は容易に行いうる。口腔癌検診の意義は,口腔癌のみならず白板症や紅板症などの前癌病変,扁平苔癬,鉄欠乏性嚥下困難症(Plummer-Vinson 症候群),梅毒などの前癌状態を含めて,早期に診断し治療することにある14)。なお,口腔癌検診での口腔癌と前癌病変の検出率は0.99%と報告されており15),日本人における前癌病変の保有率は2.5%と報告されている16)。また,前癌病変と前癌状態に関しては,2005 年WHO はこれらを区別せずにoral potentially malignant disorder(口腔潜在的悪性疾患)と呼ぶことを提唱している。(重要ポイント2-4)。
口腔癌患者には同時性あるいは異時性に重複癌が発生することがある。口腔癌を含む頭頸部癌患者における重複癌の 60〜70%は上部消化管または肺に認められる17-19)(重要ポイント 2-5)。
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- 重要ポイント2-1
- 我が国における口腔癌の罹患数はどのくらいか?
- 2005 年における口腔癌の罹患数は約6,900 人であり,全がんの約1%を占めると推定される。
我が国においては,高齢化社会の到来とともに癌罹患数は増加しており,口腔癌においても同様である。口腔癌の罹患率は民族,国,地域,生活様式ならびに習慣などにより異なる。
口腔癌に関する正確な全国調査は実施されていないが,我が国における口腔癌罹患数は1975 年には2,100 人,2005 年には6,900 人であったが,2015 年には7,800 人になると予測された。これは,全がんの約1%,全頭頸部癌の約40%を占める。年齢調整による口腔癌患者の男女比は3:2 と男性に多く,年齢的には60 歳代に最も多い。人口の高齢化に伴って口腔癌罹患数も増加しつつある1-7, 15)。今後,女性および若年者の罹患数が増加すると予想されている16, 17)。全国がん登録などの登録事業が厳正に進み,より正確な罹患数が報告されるものと期待される。
国際的には,喫煙と飲酒の両方を嗜好する国において口腔癌罹患率が高い8, 9)。特に南アジア諸国に多い。これは檳榔子(ビンロウジ)などの噛みタバコによる習慣が原因と考えられており,インドにおける口腔癌の患者は全人口の0.5〜5%で,250 万人に達すると推定されている10-13)。我が国における口腔・咽頭癌による死亡率はフランスやイタリアより低いが,これには食事や習慣の影響が大きいと考えられている14)。
我が国におけるがん登録は徐々に普及しつつあるがなお不十分であり,個人情報保護法との兼ね合いも考慮した,より全国的ながん登録が必要である。
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- 重要ポイント2-2
- 我が国における口腔癌の好発部位はどこか?
- 我が国における口腔癌の好発部位は舌である。
口腔癌の好発部位は人種や習慣によって異なる。そこで,我が国における口腔癌の部位別発生頻度を検証した。
口腔癌の部位別発生頻度は民族,国,地域,生活様式ならびに習慣により異なる。2002 年の日本頭頸部癌学会の集計では,我が国における口腔癌の部位別発生割合は,舌60.0%,頬粘膜9.3%,口底9.7%,上顎歯肉6.0%,下顎歯肉11.7%,硬口蓋3.1%と報告されている1)。その他の報告においても,我が国における口腔癌の部位別頻度が最も高いのは舌である2-6, 8)。米国では,舌35.2%,頬粘膜2.9%,口底28.0%,上・下顎歯肉10.4%,硬口蓋8.9%と報告されている7)。
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- 重要ポイント2-3
- 口腔癌の危険因子は何か?
- 口腔癌の主な危険因子としては喫煙と飲酒が挙げられている。
口腔癌の危険因子として,喫煙,飲酒,慢性の機械的・化学的刺激,ウイルス感染などが挙げられているが,ここではこれらの危険因子について検証した。
口腔癌の危険因子としては,喫煙,飲酒,慢性の機械的刺激,食事などの化学的刺激,炎症による口腔粘膜の障害,ウイルス感染,加齢などが挙げられているが,疫学的あるいは科学的根拠のあるものは少ない1, 2)。発癌には複数の発癌因子が作用して,多段階的に癌に移行すると考えられ,口腔癌も外的慢性刺激により遺伝子異常が生じ,これらが蓄積して初めて生じるものと考えられている3, 4)。
喫煙は口腔癌における最大の危険因子と考えられている5, 6)。南アジア諸国では全癌の約30%を口腔癌が占めているが,これは檳榔子(ビンロウジ)などの噛みタバコの習慣によるものが大きいとされている7, 8)。喫煙と癌については多くの研究が行われ,タバコの煙に含まれる約4,000 種類の化学物質の中に発癌のイニシエーターおよびプロモーターとなる物質が存在することが明らかとなっている。最近では,CYP1A1 やGSTM1 など発癌物質の活性化や解毒にかかわる酵素についてそれぞれ遺伝子多型(SNP)を認めることから,喫煙に対する発癌リスクは個々人で異なると考えられている9, 10)。
飲酒も口腔癌の危険因子である。アルコールそのものには発癌性はないが,間接的に発癌に関与するとされ,また,アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドに発癌性があると報告されている11)。口腔内にも生じたアセトアルデヒドが蓄積することにより発癌するとの報告もある12)。アセトアルデヒド分解酵素2 遺伝子(ALDH2)に遺伝子多型(SNP)が認められることから,飲酒による発癌リスクにも個人差があるとの報告もある13)。米国では歯科医師により過度の飲酒を避けることが指導されている14)。また,洗口液に含まれるアルコールが口腔癌の発癌リスクを高めることも報告されている15)。飲酒と喫煙は口腔癌の発生に相乗的に作用し,アルコールはタバコ中に含まれる発癌物質の溶媒として作用すると考えられている。
慢性の機械的刺激として傾斜歯,う歯,不良充填物,不適合義歯などが挙げられる。これらがDNA 修復能に異常をもたらし発癌するとされているが,不適合義歯そのものは口腔癌の直接的な原因にはならないとする意見もある16)。
炎症性サイトカインは炎症性細胞の浸潤によりDNA 損傷や細胞増殖因子を供給することで,発癌,腫瘍の増大や浸潤に関与する17)。口腔では歯肉炎が,他因子と複雑に絡み合いながら発癌にかかわっている可能性がある。
ウイルス感染,特にヒトパピローマウイルス(HPV)が中咽頭癌と同様に口腔癌の発癌にも関与すると報告され,口腔癌では正常口腔粘膜より4.7 倍高率に検出されたと報告されている18)。
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- 重要ポイント2-4
- 口腔癌の前癌病変(口腔潜在的悪性疾患)である白板症の癌化率はどのくらいか?
- 口腔白板症の癌化率は,海外では0.13〜17.5%であり,我が国では3.1〜16.3%である。
前癌病変とは正常なものに比べて明らかに癌が発生しやすい形態的な変化を伴う組織とされ,臨床的には白板症と紅板症が挙げられ,病理組織学的には上皮性異形成がある。2005 年WHO はこれらの前癌病変と前癌状態とを区別せずにoral potentially malignant disorder(口腔潜在的悪性疾患)と呼ぶことを提唱している。
口腔白板症の中には悪性化するものがあることや,白板症と診断されるものの中に既に癌化しているものがあることから,白板症は口腔癌の代表的な前癌病変とされている。ここでは口腔白板症の癌化率を検証する。
口腔白板症は口腔粘膜の角化亢進によって生じる白斑状の病変であり,“他のいかなる疾患としても特徴づけられない著明な白色の口腔粘膜の病変”とされている1)。病理組織学的には上皮の過角化(過正角化症・棘細胞症あるいは過錯角化症)から,上皮性異形成を伴うもの,さらには上皮内癌,浸潤癌も含まれる2)。しかし上皮内癌や浸潤癌と診断される病変は白板症には含めない。
白板症の定義が明確でないこと以外にも,人種,喫煙などの生活習慣,治療,観察(病悩)期間などにより口腔白板症の癌化率は異なるが,海外では0.13〜17.5%3, 4),我が国では3.1〜16.3%と報告されている5, 6, 10)。観察期間が長期になるにしたがい癌化率は高くなり,5 年累積癌化率は1.2〜14.5%,10 年累積癌化率は2.4〜29.0%と報告されている7, 10)。癌化には性,年齢,臨床型,部位,発症様式,上皮性異形成の有無が影響する。女性の白板症は癌化しやすく,また,50 歳以上では癌化しやすい。疣贅型,結節型,潰瘍型および紅斑混在型のいわゆる非均一型白板症や,可動粘膜,特に舌,頬粘膜,口底に発生するもの,多中心性あるいは多発性のもの,および病理組織学的に上皮性異形成を有する病変が癌化をきたしやすいと考えられている8, 9)。また,上皮性異形成が高いほど癌化までの期間は短いとされている7)。口腔における発癌や悪性化に関与するものとして,TP53,CyclinD1,EGFR など多くのバイオマーカーが報告されており11),今後の研究成果が期待される。
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- 重要ポイント2-5
- 重複癌の好発部位と発生頻度は?
- 口腔癌と重複する癌としては,上部消化管癌や肺癌が多く,重複癌の発生頻度は11.0〜16.2%とされている。
近年,口腔の多発癌や重複癌は増加しつつある。その原因としては,患者の高齢化,口腔癌治癒率の向上,食生活や環境因子での多種の発癌物質への曝露などが挙げられている。口腔癌を含む頭頸部癌患者の重複癌の好発部位と発生頻度を検証する。
複数発生した癌を多重癌あるいは多中心性癌と呼ぶ。また同一臓器に複数の癌が発生したものを多発癌,異なった臓器にできたものを重複癌と呼び,これらは発生時期により同時性あるいは異時性とに分けられる1-3)。口腔癌と重複する癌としては,上部消化管癌や肺癌が多く,重複癌の発生頻度は11.0〜16.2%とされている4)。
口腔癌を含め,頭頸部癌患者における重複癌の特徴として,最近20 年間に発生頻度が急激に増加している,近隣領域に第2 癌が発生することが多い,頭頸部癌の治療後に第2 癌が発生することが多い,重複癌の60〜70%は上部消化管または肺に発生することが挙げられる5)。
上部消化管癌と重複することが多いことの説明として,口腔,咽頭,食道,胃は,同一の発癌環境にあるとされ,field cancerization の概念が挙げられる6)。また,口腔癌の重複癌の背景因子には,性,生活習慣,過度の喫煙と飲酒などが挙げられる7-10)。
口腔白板症などの前癌病変の合併11, 12)や重複癌の存在は,口腔癌の治療法選択や治療成績に影響を与える13, 14)。したがって治療前のみならず治療後にも,上部消化管や肺などの検査が必要である15-17)。
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第3 章 診断
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腫瘍の進行状態を規定する臨床的因子は,腫瘍の大きさ(T-原発巣),頸部リンパ節転移(N-領域リンパ節),遠隔転移(M-遠隔転移)である。これらは治療法の選択に際して重要な因子となり,また患者の予後に多大な影響を及ぼす因子である1-4, 74-78)。判定にあたってはUICC のTNM 分類(表1-1)や病期分類(表1-2),口腔癌取扱い規約が一般的に採用されている。また,我が国では下顎歯肉癌の診断基準について,下顎管を基準とした分類も用いられることがある6)。
原発巣に関しては,①発生部位,②肉眼分類,③腫瘍の厚さおよび深達度(depth of invasion:DOI),④周囲組織への進展程度などが,原発巣再発や頸部リンパ節転移,遠隔転移と関連することが指摘されていることから5-24),これらの因子についても注意深く診査して,治療法を選択すべきである。①発生部位と転移との関連性としては,舌癌,口底癌,頬粘膜癌では頸部リンパ節への転移が他部位と比べて高いので注意を要する6, 25, 26)。②肉眼分類2, 3, 5, 27-37)(重要ポイント3-1)については,舌,口底,頬粘膜などに発生したものでは肉眼分類と頸部リンパ節転移や遠隔転移との関連性が認められる(重要ポイント3-2)。上顎歯肉癌,硬口蓋癌でも関連性がみられるとの報告もあるが,上・下顎歯肉や硬口蓋に発生したものでは関連性は低いとの報告が多くなされている2, 5, 21, 26, 31-34, 38-41)。この点も正確に評価し治療法の選択にあたって考慮すべきである。さらに,舌癌では肉眼分類の内向型,表在型では原発巣再発率が外向型に比べて高く,治療法選択に際し注意を要する6, 13-23)(重要ポイント3-3)。③腫瘍の厚さ(深達度)については,舌癌では4〜5 mm 以上では頸部リンパ節への転移傾向が強くなり予後に影響を与えることが報告されている21, 32, 39, 41-50)。従来,T-原発巣は腫瘍の最大長径や周囲臓器への進展度により決定されていたが,UICC によるTNM 分類(第8 版)では深達度も考慮することになった。触診による硬結範囲の判定が重要となるが15, 52),深部への浸潤の判定に際しては,さらに超音波検査などによる精査が望まれる。④周囲組織への進展程度については,舌癌で口底部に進展しているもの31)や頬粘膜癌で臼後部に発生したもの52)は,頸部リンパ節転移率が高いと指摘されているので,診査にあたって注意を要する。
頸部リンパ節転移の診断にあたって,触診は有用な診査法であり2, 41, 53-62)(重要ポイント 3-4),第一に行うべきである。頸部リンパ節転移については,転移レベルが進行するほど,転移個数が増えるほど,周囲組織との癒着(節外浸潤)が認められるほど,頸部再発の頻度や遠隔臓器への転移傾向が強くなるとの報告がある12, 41, 52, 63-67)。そのため,UICC によるTNM 分類(第8 版)ではN- 領域リンパ節の決定に際し,転移レベルや転移個数に加え,節外浸潤の有無を考慮することになった。初診時の触診による慎重な診査が大切であるが,確定診断にあたっては触診に加えて,さらに画像検査が必要である。
さまざまな臨床症状(神経麻痺,疼痛,構音障害,嚥下障害,開口障害,体重減少など)が,腫瘍の病態や進行状態と関連しているとの報告もある。具体的には,下顎歯肉癌でのオトガイ神経障害が癌の進行程度と関連するとの報告,舌癌での構音障害,嚥下障害,また頬粘膜癌での開口障害が癌の進展と関連していると報告されている68-73)。さらに,口腔癌で治療前に自発痛を訴えた症例は予後が悪いとの報告もある79, 80)。肉眼分類と疼痛との関連性について,内向型で有意に自発痛が発現する頻度が高いという報告もある79, 80)。
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- 重要ポイント3-1
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- 分類としては,表在型,外向型,内向型の3 型に分類する肉眼分類が簡便で,臨床病態をよく反映しており,臨床上有用である。それぞれの型の定義を以下に示す。
表在型(superficial type):表在性の発育を主とするもの
外向型(exophytic type):外向性の発育を主とするもの
内向型(endophytic type):内向性の発育を主とするもの
口腔癌の肉眼所見としてこれまでに多くの分類が提唱されており,基本的には発育形態から外向性発育をみせる隆起性腫瘍と内向性発育をみせる浸潤性腫瘍に大別され,さらに腫瘍表層の特徴からいくつかに細分されている1-5)。腫瘍表層の特徴としては,鷲津の分類5)では外向性腫瘍を白斑型,乳頭型,肉芽型に,内向性腫瘍をびらん型,潰瘍型,腫瘤硬結型に分類している。しかし,発育形態と表層の性状の2 面から分類されているため,客観的な判定が難しく判定に迷う症例も多く,報告者間で発現頻度にはかなりの差異がみられる1-5)。
これらの報告の肉眼所見に注目すると,発育様式のみでも臨床病態を反映していることがうかがえる1-10, 16-20)。日本口腔腫瘍学会は,臨床病態の診断をより客観性があり簡便なものとするために,表層の特徴にとらわれない舌癌の肉眼分類(上記)を提唱し,本分類が初期舌癌(T1,T2)の原発巣・頸部再発,頸部リンパ節転移(一次転移,後発転移),遠隔転移,生存率の予測因子となりうることを示唆した11, 16)。また,臨床発育様式分類を用いた他の報告でも,同様の結果が認められている12, 13, 16-20)。舌癌以外の頬粘膜癌や口底癌に対しても,臨床型分類が有用であることが報告されている。一方,下顎歯肉癌,上顎歯肉癌,硬口蓋癌については,内向型は外向型に比べて転移率が高いとする報告14, 19)もあるが,肉眼分類は有用ではないとの報告15)もあり,肉眼分類の意義は定かでない。発生部位による特性もあることから,今後さらに多数例での検証が必要である。
『領域横断的がん取扱い規約』(日本癌治療学会,日本病理学会編)では,記載要領や用語の統一を目指しており,本ガイドライン2013 年版では「臨床発育様式分類」としていたが,今回の改訂版では「肉眼分類」とした。
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- 重要ポイント3-2
- 内向型の舌癌は表在型や外向型に比べて頸部リンパ節転移の可能性は高いか?
- 舌癌(T1,T2)において,肉眼分類の表在型や外向型は頸部リンパ節転移率が低い。一方,内向型では頸部リンパ節への転移率は前二者に比べて高く,治療に際しては注意を要する。
舌癌において,予後に影響する最も重要な因子のひとつに,頸部リンパ節転移があげられる。そのため,頸部リンパ節転移の可能性を治療前に予測することは,治療法の選択に重要である。そこで,肉眼分類と頸部リンパ節転移の関連性について検証した。
舌癌T1,T2 症例に関する多施設共同研究では,一次転移率は表在型4.9%,外向型12.6%,内向型24.9%で,内向型は表在型や外向型に比べて有意に頸部リンパ節転移率が高いことが示されている。また,後発転移率も表在型12.5%,外向型15.9%,内向型27.6%で,内向型は表在型や外向型に比べて頸部リンパ節転移率は高く,統計学的に有意差が認められている1, 13-17)。舌癌の頸部リンパ節転移についての多施設共同研究2)でも,肉眼分類の外向型の転移率は18.1%,膨隆型や潰瘍型(内向型)は50.5%で,外向型は内向型と比べて頸部リンパ節への転移率は低い。その他の報告でも表在型,外向型は7〜20%で,内向型50〜60%に比べて頸部リンパ節転移率は低い3-11, 15)。さらに,小浜ら12)は,内向型では組織学的腫瘍浸潤様式の4C 型や4D 型が多く,頸部リンパ節転移の治療には注意を要すると報告している(重要ポイント3-14)。
UICC によるTNM 分類(第8 版)では,口唇,口腔癌のT-原発巣の評価に関して腫瘍の厚さおよびDOI が加わったが,その評価を触診のみで行うか,画像所見などを必要とするかについての具体的な記載はない。
なお,口底癌,頬粘膜癌においても,肉眼分類と頸部リンパ節転移や遠隔転移との関連性について舌癌と同様の報告がみられる14)。
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- 重要ポイント3-3
- 内向型と表在型の舌癌は,外向型に比べて原発巣再発頻度が高いか?
- 舌癌(T1,T2)において,肉眼分類の内向型と表在型は外向型と比べて原発巣再発率は高い傾向にある。
舌癌において,予後に影響する重要な因子の1 つは原発巣の制御である。そのため,原発巣の再発の危険性を治療前に予測することは治療法の選択にあたって重要である。そこで,肉眼分類と原発巣再発の関連性について検証した。
口腔癌全体の原発巣再発率は13〜30%1-4),また舌癌の原発巣再発率は11〜24%と,報告によりばらつきがみられる5-8)。原因として,各報告での原発巣の発生部位の違いや治療法の違いが考えられる。
肉眼分類と原発巣再発について,舌癌T1,T2 症例の多施設共同研究では,内向型20.0%,表在型12.4%,外向型8.8%で,内向型は表在型,外向型に比べて原発巣再発率が高く,統計学的有意差が認められている5)。他の報告でも,内向型は他の肉眼分類と比べて原発巣再発率が高いとされている6, 8-11)。さらに,DOI が3 mm 未満では原発巣再発は0%,3〜9 mm では7%,10 mm 以上では24%であったとの報告もあり,内向型は原発巣再発の危険因子の1 つと考えられる。
しかし,原発巣再発率は表在型20%,外向型14%,内向型12%で,表在型の再発率が高いとする報告もある6)。その原因として,癌周囲の上皮性異形成が表在型では88.2%に,外向型では37.8%に,内向型では38.8%に認められたことから,癌周囲の上皮性異形成と原発巣再発との関連性が指摘されている。また,原発巣再発率は癌周囲に上皮性異形成のない症例では7.6%,上皮性異形成を伴う症例では17.9%と,上皮性異形成を伴う症例で有意に高いとの報告もある12)(重要ポイント3-13)。
しかし,肉眼分類(外向型,内向型)と原発巣再発との相関性はないとする報告もあり4),今後さらなる検証が必要である。
なお,舌癌以外の口腔癌では,頬粘膜癌,硬口蓋癌では関連性がみられるとする報告もあるが,下顎歯肉癌12),上顎歯肉癌,口底癌では関連性はみられないとする報告がある14-16)。
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- 重要ポイント3-4
- 触診による頸部リンパ節転移の診断はどの程度可能か?
- 触診による頸部リンパ節転移の診断精度は60〜70%であり,触診は有用である。しかし,頸部リンパ節転移の診断には画像診断を加えた総合的な診断が必要である。
触診は頸部リンパ節転移診断の基本的診査法である。しかし,その診断精度は診断医の熟練度などにより異なることが予想される。そこで,触診による頸部リンパ節転移の診断精度について検証した。
通常触知が可能なリンパ節の大きさは,オトガイ下リンパ節や顎下リンパ節など表在性のものでは5 mm,内頸静脈/ 内深頸リンパ節など深在性のリンパ節では10 mm が限界とされている1, 12-15)。触診による診断精度については,頸部側単位の検索では感度47〜97%,特異度38〜92%,正診率69〜88%と報告され,報告者間で差異がある2-10, 21-24)。また,リンパ節単位では,感度76%,特異度79%,正診率77%と報告されている11)。
一方,CT では,感度49〜95%,特異度38〜100%,超音波では感度58〜95%,特異度37〜96%と報告され,診断率の高い数値をみる限りにおいては,触診による診断精度は画像診断の精度と大差はない2)。しかし,診断精度にばらつきがある16-20)。これは診断基準となるリンパ節の硬さや可動性などが主観的因子であり,客観的な診断基準を示すのが困難なことに起因していると考えられる。
触診には豊富な臨床経験を必要とするが,リンパ節の硬さや可動性など他の診断法では得難い診断情報を得ることができる。頸部リンパ節転移の診断には,触診と客観的評価が可能な画像診断とによる総合的な診断が必要である。
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- Ⅱ.画像診断
1.T-原発巣の画像診断
a.舌癌
舌癌原発巣の画像診断では,舌内および周囲組織への進展を評価する必要がある1-3)。T1,T2 症例では視診・触診で十分な場合もあるが,客観的に進展を評価し,記録するという点に画像診断の意義がある。軟組織の診断が中心となるので,CT 4-6),MR4, 6-12, 66, 67, 86, 87)および超音波検査(US)13-19, 68, 69, 88, 89)が主として用いられる(重要ポイント3-5)。
舌内進展の評価では,舌筋群の変化と画像上の厚さや深さが評価される(重要ポイント3-6)。CT では,造影により腫瘍の範囲が明瞭になる。冠状断画像が有効な場合がある。歯冠修復物などによる金属アーティファクトが出現する。MR は一般的にCT より組織分解能が優れており,T1 強調画像,T2 強調画像,脂肪抑制T2 強調画像,脂肪抑制造影T1 強調画像などが基本的な撮像シークエンスである。T2 強調画像,脂肪抑制T2 強調画像,脂肪抑制造影T1 強調画像では腫瘍は高信号を示す。冠状断画像が有効な場合がある66, 67)。磁性体の存在によりアーティファクトが出現する。口腔内走査型の超音波装置は腫瘍の厚さや深さの評価に使用される13-15, 18, 19, 95, 96)。腫瘍は低エコー領域として描出される。口腔外走査型の装置でも,腫瘍を描出できる場合がある16, 17)。2017 年にはUICC のT 分類に,腫瘍の隣接粘膜基底部を結んだ仮想線から腫瘍最深部まで引いた垂線の長さとしてDOI が導入されたが1),画像上での定義は研究途上である97)。
周囲組織への進展の評価では,舌内進展の評価同様にCT,MR が有効である。顎骨の吸収を評価する際にはパノラマX 線撮影や口内法撮影に加えCT,MR が用いられる。
b.口底癌
基本的には舌癌の場合と同様に画像診断を行う。US は適応が困難な場合がある。
c.頬粘膜癌
基本的には舌癌の場合と同様に画像診断を行う。軟組織への進展では顔面皮膚への進展,咀嚼筋隙への進展の評価が重要である1)。
d.下顎歯肉癌
下顎歯肉癌原発巣の画像診断では,下顎骨および周囲軟組織への進展を評価する必要がある1)(重要ポイント3-7)。UICC によるTNM 分類(第8 版)1)では,歯肉原発病変で骨および歯槽の表在性びらんの場合にはT4a と評価しないとされ,これをこえる骨吸収の判定が重要となる。日本口腔腫瘍学会は,画像上の骨吸収の深さについては下顎管の所見も記載することを推奨している20)。画像上の骨吸収と組織学的な癌浸潤範囲は必ずしも一致しないことに注意する必要がある21-23)。一般的に骨吸収の判定にはパノラマ,頭部後頭前頭方向,下顎骨斜位,咬合法,口内法X 線画像22-25)やCT21, 26-28)を標準とし,MR も参考とする29, 30, 70, 71)。最近では,歯科用コーンビームCT が有用との報告もある31, 72)。骨シンチグラフィも使用される32-34)が一般的に普及はしていない。一方,画像上の所見(骨吸収型)は平滑型と虫喰い型および両者の中間型に分類される(表1-3)。多くの報告で予後との関連性が指摘されている35-37)(重要ポイント3-8)。PET の有用性を示す報告もある73)。
咀嚼筋間隙,翼状突起,頭蓋底,頸動脈への進展の評価にはCT,MR が必須となる38)。
e.上顎歯肉癌
上顎歯肉癌原発巣の画像診断では,上顎骨および上顎洞への進展と周囲軟組織への進展の評価が重要となる1)。上顎骨進展の評価にはパノラマ,口内法X 線画像およびCT を標準として使用する39-41)。上顎洞への進展はパノラマ,Waters 法X 線画像,CT およびMR を使用する。周囲軟組織進展の評価にはCT,MR を使用する38, 39)。頬粘膜,咀嚼筋隙,側頭下窩などへの進展を評価する39)。
f.硬口蓋癌
基本的には上顎歯肉癌の場合と同様に画像診断を行う。
2.N-領域リンパ節の画像診断(重要ポイント3-9)
口腔癌の頸部領域リンパ節転移の画像診断には,CT,MR やUS が一般的に使用される2, 3, 42-45)。初回検査時には,CT あるいはMR を使用して原発巣を含めた検査が行われることが多い。核医学検査として,近年はPET の有用性を示す報告が増えている46, 47, 74-76, 82-85)。術後の経過観察など頻回の検査にはUS が有用である48-51, 91)。
扁平上皮癌のリンパ節転移の特徴的な所見として中心壊死が挙げられ,この所見が認められる場合は大きさにかかわらず転移をほぼ確定しうる。造影CT では内部に低濃度域が認められ,辺縁部が強く造影されるため,rim-enhancement と表現される44, 45)。MR ではT2 強調画像で内部に高信号域が,脂肪抑制造影T1 強調画像では内部に低信号域が認められる44, 45)。US では無エコー域がみられる44, 45)。ドプラ法では正常な血流の欠落領域として認められる場合もある52-54)。角化が著明な場合には,単純CT で高濃度域,US で高エコー域がリンパ節内部に観察されることがある55, 56)。大きさについては,リンパ節の短径が10 mm 以上の場合に転移とする基準が最も多く受け入れられている44)。一方,非転移の所見として内部にリンパ門(hilum)が認められる場合を挙げるものもある44)。補助的な診断法として超音波エラストグラフィも応用されている77, 78, 90)。
近年ではセンチネルリンパ節生検が口腔癌にも導入され,その同定に核医学検査が応用されている57, 79, 93)。
各検査法はそれぞれに特長があり,適切に組み合わせることで診断精度の向上が望まれる92)。
3.M-遠隔転移の画像診断(重要ポイント3-10)
最も多い肺転移の診断に胸部X 線撮影がこれまで使用されてきたが,CT が一般に用いられている58)。他の全身への転移に対しては67Ga シンチグラフィや骨シンチグラフィが施行されてきた59, 60)が,最近ではPET の高い有用性が認められ,検査が一般的に行われるようになった。61, 62, 80, 81, 94)。
4.その他の画像診断
口腔癌患者では,消化管や呼吸器等に重複癌が高頻度で発生することが知られており(重要ポイント2-5),その発見には内視鏡検査や消化管の造影検査が有用である63-65)。最近ではPET によって重複癌が発見されることも報告されている62, 80, 81, 94)。さらに予後の予測や経過観察におけるPET の有用性が報告されるようになっている82, 83)。
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- 舌癌原発巣のT 分類のために優先される画像検査法はMR であり,MR が使用できない場合にはCT を使用する。厚さや深さの評価にはMR あるいは口腔内走査のUS が勧められる。
舌癌では,T1,T2 症例においても原発巣の進展範囲を客観的に評価するという点で画像診断の役割は大きい。UICC によるTNM 分類1)では,T4a は最大径が4 cm をこえ, かつ深達度が10 mm をこえる腫瘍,または下顎もしくは上顎の骨皮質を貫通するか上顎洞に浸潤する腫瘍,または顔面皮膚に浸潤する腫瘍,T4b は咀嚼筋間隙,翼状突起,頭蓋底に浸潤する腫瘍,または内頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍とされている。下顎骨吸収の判定はパノラマ,口内法X 線画像あるいはCT による。軟組織進展の評価は重要であり,CT 2-4),MR 2, 5-10, 30, 34),US 11-19, 32, 35)あるいはPET 20, 21, 29, 31, 33)が適応される。厚さや深さが頸部リンパ節転移や予後と関連するという報告があり,それらの評価には主としてMR 5-7, 22-25, 30, 34)あるいは口腔内走査に適した小型探触子を利用したUS 11-13, 15-18, 26-28)が用いられる(重要ポイント3-6)。
CT では腫瘍は造影を行うことによって範囲が明瞭化する2-4)。MR は一般的に,CT より組織分解能に優れ,腫瘍の描出率が高いとする報告が多い10, 12, 23)。しかし,CT と同等とするものもある4)。MR ではさまざまなシーケンスが使用されるが,T1 強調画像,T2 強調画像,脂肪抑制T2 強調画像,脂肪抑制造影T1 強調画像が基本となる。T1 強調画像では腫瘍は低信号域として,他のシーケンスでは高信号域として描出される。MR 画像で評価された進展範囲や厚さは組織学的な腫瘍浸潤範囲とよく相関することが確かめられている18, 22-24)が,過大評価する傾向がある22, 23)。
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- 重要ポイント3-6
- 舌癌原発巣の画像上の厚さ(深さ)は頸部リンパ節転移と関連するか?
- 画像上の厚さや深さが増すほど頸部リンパ節転移率が高くなる傾向があると報告されている。
舌癌の原発巣においては外向性の発育を示すものや,表面の陥凹を伴うものがあり,厚さおよび深さの定義は重要である。深さは仮想の正常粘膜部から画像上の腫瘍最深部までの距離と定義され,厚さとは区別される1)。2017 年にUICC によるTNM 分類(第8 版)では,腫瘍の隣接粘膜基底部を結んだ仮想線から腫瘍最深部まで引いた垂線の長さとしてDOI が導入されたが2, 3),画像上での定義は未確定である。
MR のT2 強調画像において,実測した厚さ(actual thickness)とは別に,対側(正常側)の粘膜面から正中までの距離と正中から腫瘍最深部までの距離を基に計算する方法(reconstructed thickness)が提案されている4)。これは組織学的な深達度と高い相関を示す4, 5)。計測にはT2 強調画像より造影T1 強調画像の信頼性が高いとするものもある6)。このreconstructed thickness が6 mm 未満の症例では,頸部リンパ節転移がみられなかったとするものや4),対側に転移のみられる症例ではみられない症例に比較して有意に深達度が大きいとする報告がある5)。我が国では,造影T1 強調画像で厚さ(腫瘍辺縁から最深部までの垂直距離と定義)が8 mm 以上になると,頸部リンパ節転移の頻度が有意に高くなるという報告がある7)。海外では,T2 強調画像で厚さ8.5 mm を閾値とする報告もある8)。腫瘍の厚さの評価には冠状断MR 画像が有用であり9),腫瘍の厚さや舌深動脈までの距離とリンパ節転移に関連があると報告されている10)。MR 画像におけるDOI の計測に関する報告があるが11),その普及は今後の課題である。
US 検査では口腔内走査に適した小型探触子を用いる。探触子を直接腫瘍に接触させて画像を得るため,腫瘍や正常粘膜の状態に変化が生じ,厚さや深さを明確に区別することが難しい場合があるが,周囲に描出された正常粘膜面を参考として,深さを計測する1)。深さが8 mm 以上の症例で頸部リンパ節転移率が上昇することが報告されている7, 12)。また,生存率にも8 mm を境として違いがみられるとする報告がある12)。T1,T2 症例の厚さと後発頸部リンパ節転移の関連を分析した報告では,5 mm を閾値とした場合に最も高い診断精度が得られると報告されている13, 14)。厚さに加えドプラ法が役立つとする報告もある15, 16)。組織内照射を施行した症例において,8 mm 以上で頸部制御不能例が増える傾向にあることも報告されている17)。治療法との関連では,6〜7 mm 以上の場合には選択的頸部郭清を考慮する必要があるとするものもある18)。
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- 重要ポイント3-7
- 下顎歯肉癌のT-原発巣の評価にはどのような画像検査が勧められるか?
- 下顎骨吸収の判定はパノラマX 線画像およびCT を基本とし,周囲軟組織への進展の判定にはCT およびMR を使用することが勧められる。
下顎歯肉癌のT-原発巣の評価には顎骨の吸収と周囲軟組織への進展を評価する必要があり,T4 の決定に画像診断は重要な役割を果たす。UICC によるTNM 分類(第8 版)によると,骨および歯槽の表在性びらんの場合にはT4a とはしない1)とされ,これをこえる骨吸収の判定が重要となる。骨吸収の深さについては下顎管を指標とする下顎管分類が提唱されてきた2)。これらの判定には伝統的にパノラマ,頭部後頭前頭方向,下顎骨斜位,咬合法,口内法X 線画像,CT が使用されている3-26, 35, 36, 40)。パノラマX 線画像,パノラマX 線画像と口内法X 線画像の併用およびCT 軸位断像の有用性を比較検討した報告では,骨吸収の有無を評価する場合には,口内法X 線画像を加えると正診率が低下する傾向にあることが示され,これは口内法X 線画像では,歯周炎などによる骨変化までを腫瘍による骨破壊と判断する場合があることが原因であるとしている22)。MR で骨への進展を判定しようとする試みもあり27, 28),骨髄浸潤についてはCT より感度が高いとする報告がある39, 45)。またダイナミックMR の有用性も報告されるようになった42)。骨シンチグラフィが有用との報告は多い29-32)が,使用できない施設も多く,また空間分解能が低いため一般的検査法としては定着していない。PET の特異度が高いことが示され37),複数の検査法の併用を推奨する報告も出てきた38, 43, 44)。歯科用コーンビームCT が有用との報告もある33, 41, 46)。
咀嚼筋間隙,翼状突起,頭蓋底,頸動脈への進展の評価にはCT,MR が必須となる。下顎歯肉癌のCT およびMR 画像の分析では,周囲の組織間隙への進展は58%の症例にみられ,大臼歯部に原発したものでは20%に咀嚼筋間隙への進展がみられるとの報告がある34)。
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- 重要ポイント3-8
- 下顎歯肉癌原発巣の画像所見は臨床経過と関連するか?
- 下顎歯肉癌の画像所見で骨吸収型は予後と関連するという報告が多く,虫喰い型の骨吸収を示すものでは予後が悪いとされる。
下顎歯肉癌の骨吸収の様相は,吸収縁が整で明瞭な平滑型と,不整の虫喰い型に分類されてきている1-25)が,口腔癌取扱い規約では,骨吸収型が連続的な分布を示すことに配慮して,両者の中間型を分類項目として採用している26)。平滑型はU-shape あるいは皿状吸収,虫喰い型は浸潤型と呼ばれることもある。この分類にはパノラマ,下顎骨斜位,口内法X 線画像が主として用いられてきた1-20, 28)が,最近ではCT 21-25, 27)を用いて分類するものもある。虫喰い型の骨吸収を示す場合には予後が不良であるとする報告が多い2, 5, 10, 11, 13, 15, 19)。X 線画像とCT を比較した報告では,パノラマX 線画像における骨吸収型はリンパ節転移率,再発率,生存率のいずれとも関連を認めないが,CT では関連が認められている22)。この理由として,CT ではパノラマX 線画像に比較して組織所見との関連がより強いことが一因であろうと考察している。CT 再構築画像で観察することによって,骨吸収型で頸部リンパ節転移のリスクを予測することが可能であるとするものもある24)。問題点として,骨吸収型判定の再現性が検証されていないことが挙げられる。10 年以上の経験を有する診断医ではパノラマX 線画像,CT ともに高い再現性を示すことが確かめられている。しかし,施設や装置の違いによる再現性は明らかではない21)。
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- 重要ポイント3-9
- 口腔癌の頸部リンパ節転移(N-領域リンパ節)の評価にはどのような画像検査が勧められるか?
- 口腔癌の頸部リンパ節転移(N-領域リンパ節)の評価には,CT,MR,US を単独あるいは組み合わせて用いることが勧められる。また,PET も一般的に用いられている。
CT,MR,US の単独使用では70〜80%以上の正診率が報告されている1, 2, 29, 31)。各検査法の特徴と基準となる所見を以下に示す。
CT では,中心壊死が認められる場合は大きさにかかわらず転移をほぼ確定しうる。造影CT では内部に低濃度域が認められ,辺縁部が強く造影されたrim-enhancement 所見を示す1-3, 29)。内部の角化が高濃度域として認められる場合もある4, 5)。大きさについては,リンパ節の短径が10 mm 以上の場合を転移とする基準が広く受け入れられている1, 2)。
MR でもCT 同様に中心壊死が認められる場合は,大きさにかかわらず転移をほぼ確定しうる3)。T2 強調画像で内部に高信号域が,脂肪抑制造影T1 強調画像では内部に低信号域が認められる。最近は頸部リンパ節に対しても拡散強調画像等の種々の撮像法が使用されるようになった6, 7, 50)。現時点ではMR による頸部リンパ節転移の診断能はCT とほぼ同等と評価されている2, 8)。
US でも中心壊死が認められる場合は,大きさにかかわらず転移をほぼ確定できる1-3, 31, 37)。リンパ節内部に壊死による無エコー域が認められる場合9-11)や,角化による不定形の高エコー域が認められる場合がある11)。また,ドプラ法では正常な血流の欠落領域として認められる場合もある12-16)。一方,リンパ門が周囲脂肪組織と連続性のある高エコー域として描出されるため,転移の判定に役立つ場合もある17)。最近では超音波エラストグラフィが利用され24, 32, 36, 39, 52),従来型のUS との組み合わせにより正診率が向上するとの報告がある24, 32, 36)。CT やMR で検出し得ない転移を診断できるとする報告もある51)。
近年ではPET の頸部リンパ節に対する有用性を示す報告が増え18, 20, 26-28, 30, 33, 38, 40-49),一般的に用いられている。F-18 fluorodeoxyglucose(18F-FDG)が核種として使われることが多いが19),他の核種の使用も試みられている45)。
N0 症例においては,CT,MR,US,PET に有意な診断能の差はないとの報告がある53)。正診率をさらに向上させるために,これらの診断法が組み合わせて使用される21-23, 30, 34, 35, 54)。また,センチネルリンパ節の同定に核医学検査が応用される25, 33, 55)。
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- 重要ポイント3-10
- 口腔癌の遠隔転移(M-遠隔転移)の評価にはどのような画像検査が勧められるか?
- 口腔癌の遠隔転移(M- 遠隔転移)の評価には一般的に胸部X 線撮影とCT が用いられてきたが,近年ではPET も併せた評価が一般的になっている。
口腔癌の遠隔転移は肺に多く,これまでその診断には胸部X 線撮影ならびにCT が一般的に用いられている1, 2, 9, 10)。
従来,全身への転移に対しては67Ga による腫瘍シンチグラフィや骨シンチグラフィが使用されてきたが,遠隔転移の発見にこれらの検査法は有効ではないとの報告がある3, 4)。近年では,PET による遠隔転移の診断が一般的に行われるようになっている5-8, 11-13)。
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- Ⅲ.病理診断
口腔癌の病理診断には,検査法として細胞診と組織診がある。組織診はパラフィン切片と凍結切片によるものがあり,検査材料として生検検体と手術検体がある。病理診断は口腔病理医や病理医が行い,細胞診は細胞検査士によるスクリーニングも行われる。
口腔領域に生じる悪性腫瘍には口腔粘膜,唾液腺,顎骨,軟部組織,リンパ節など多岐にわたる組織に由来する多様な組織型があるが,本ガイドラインでは口腔粘膜に発生する扁平上皮癌(squamous cell carcinoma:SCC)について記載する。
口腔粘膜の扁平上皮癌には組織亜型として,類基底扁平上皮癌(basaloid SCC),紡錘細胞扁平上皮癌(spindle cell SCC),腺扁平上皮癌(adenosquamous carcinoma),孔道癌(carcinoma cuniculatum),疣贅状扁平上皮癌(verrucous SCC),リンパ上皮癌(lymphoepithelial carcinoma),乳頭状扁平上皮癌(papillary SCC),棘融解型扁平上皮癌(acantholytic SCC)などがある1)。
口腔上皮性異形成(oral epithelial dysplasia:OED)や上皮内癌(carcinoma in-situ:CIS)を含めた口腔癌早期病変の考え方は,病理診断学の進歩に伴い変化し,従来の疾患概念や診断基準と異なった基準が提案されている2-4)。また,予後判定因子としての組織学的悪性度も,従来の分化度を指標としたGrade 分類(WHO)に浸潤様式や深達度などを加味するようになった1, 5-7)。
1.病理検査法
a.細胞診
口腔内では鋭匙や歯間ブラシ,婦人科頸管ブラシなどを用いて,患部から直接擦過する擦過細胞診が主体である。従来のスライドガラスに検体を直接塗抹する塗抹法より液状化検体検査法の方が細胞の乾燥や消失が少なく,免疫組織化学的検索の併用も可能であることなどから推奨されている8)。細胞診は初診時のスクリーニングはもとより,治療効果判定や経過観察あるいは集団検診でも利用可能な簡便な検査法である。
細胞採取に際しては,含嗽や綿球などで口腔内清掃を行い,粘膜を湿潤させ,ブラシなどを用いて病変のなるべく広範囲を均一な圧力で10 回程度擦過し,表層細胞のみの採取にならないように可及的に深層細胞の採取に留意する。出血が多いと細胞が重なり,判定に影響する8)。なお,口腔癌でも深部病巣に対して,穿刺吸引細胞診が行われる場合がある9)。
b.生検
治療を前提とした試験的な組織採取による検査は,隣接する組織を含めて病変の一部分を切除する生検(部分切除生検,incisional biopsy)が一般的である。生検の目的は癌の確定診断であるが,癌の悪性度,周囲組織への進展,脈管・神経侵襲など,予後を左右する因子の判定にも有効である3, 10)(重要ポイント3-11)。また,小さな病変の組織診検査としては病変部をすべて切除する切除生検(全切除生検,excisional biopsy)があり,一度で全体像を把握することが可能である。
c.術中迅速病理診断
術中迅速病理診断は,手術中に切除断端の癌の有無やリンパ節転移の有無の検索に用いられる。凍結標本を用いるので診断精度はホルマリン固定パラフィン標本には劣るが,手術中に診断できる意義は大きい(重要ポイント3-12)。
d.手術検体の検査
手術で切除された検体では,癌の組織型,深達度,進展形態,浸潤様式,切除断端の病変,脈管・神経侵襲,リンパ節転移の有無および手術前治療効果の判定などが検査される。切除断端における癌の有無を判定することは最も重要であり,また,上皮性異形成の有無も問題となる(重要ポイント3-13)。
手術検体の切り出し方法は施設により異なっているが,近年学会単位で推奨方法を提示し,統一しようとする動きもある3, 10)。また,免疫組織化学染色やin situ hybridization などを用いた分子病理学的検索も導入されている4, 10)。
2.上皮内癌を含めた口腔癌早期病変の考え方の変遷
生検検体や手術検体の病理組織診断において,口腔粘膜上皮の口腔癌早期病変(境界病変)はこれまでも重要な課題として検討されてきた。従来からWHO 分類では,臨床的な白板・紅板症などの口腔癌早期病変に対し,上皮性異形成と上皮内癌に分類し,上皮性異形成を軽度,中等度,高度の3 段階で評価してきた11)。一方,本邦の『口腔癌取扱い規約第1 版』では,腫瘍性病変と考えられる「口腔上皮内腫瘍(oral intraepithelial neoplasia:OIN)」と腫瘍性を疑うが異型度が軽度な病変あるいは反応性異型病変と区別できない病変「口腔上皮性異形成」の2 段階分類とされていた3)。しかし,2017 年のWHO 分類(第4 版)では,口腔上皮性異形成は「遺伝子変異の蓄積により引き起こされ,扁平上皮癌に進展するリスクの増加を伴う,上皮の構造学的および細胞学的一連の変化」と定義された12)。改訂された『口腔癌取扱い規約第2 版』では,病理診断はWHO 分類(第4 版)に準拠し,口腔上皮性異形成は腫瘍性病変に適用することとし,本用語を『口腔癌取扱い規約第1 版』の概念や定義では用いない点に留意する必要があるとしている13)。
また,WHO 分類(第4 版)では,口腔上皮性異形成について従前の軽度,中等度,高度(mild,moderate,severe)の3 段階評価法と低異型度と高異型度(low-grade,high-grade)の2 段階評価法が併記された12)。そのため『口腔癌取扱い規約第2 版』でも3 段階と2 段階のいずれの評価法を用いることも可能としている13)。したがって,各施設で病理医と臨床医が用いる評価法に関して十分な共通認識をもつことが重要である。
さらに,WHO 分類(第4 版)では高度異形成と上皮内癌は同義,あるいは上皮内癌は高異型度口腔上皮性異形成に含まれるなどの記載がなされている12)。『口腔癌取扱い規約第2 版』では,Tis 癌についての取扱いや表記に混乱が生じる可能性を危惧し,病理組織学的に明確に癌と診断されうる上皮内病変には高度異形成や高異型度口腔上皮性異形成の用語を用いず,上皮内癌とするとしている13)。
口腔粘膜では上皮内癌の病理組織所見として,上皮全層に異型細胞がみられる全層置換型より,表層に角化層や有棘層への明らかな分化を認め,下層のみに細胞異型を示す表層分化型が多い。そのため『口腔癌取扱い規約第2 版』では,口腔癌早期病変の適切な診断にはHE 染色に加えて,サイトケラチン(CK13,CK17)やKi-67,p53 などの免疫組織化学染色を併用し,細胞分化や増殖細胞の分布などの所見を加味することを推奨している13)。
3.組織学的悪性度評価と浸潤様式,癌の深達度
従来,重層扁平上皮への分化度を指標として扁平上皮癌を高分化,中分化,低分化に3 分類するGrade 分類が悪性度と相関するといわれていた11)。代表的な組織学的悪性度評価法にJakobsson 分類5)やAnneroth 分類6)がある。また,本邦の口腔外科では,Jakobsson 分類を改変した腫瘍宿主境界部の浸潤様式の山本・小浜分類(YK 分類)7)を使用する施設が多く,予後,特に頸部リンパ節転移の有無や 5 年累積生存率との相関がみられる10)(重要ポイント3-14)。しかし,病理医間の判定不一致も指摘されており,YK 分類の判定基準には改善の余地が残されている。なお,『頭頸部癌取扱い規約第6 版』では浸潤様式として膨脹発育と浸潤発育の2 型分類が記載されている14)。一方,American Joint Committee on Cancer(AJCC)の Cancer Staging Manual(第 8 版)15)では複数の予後判定因子が挙げられているが,ここでは組織学的悪性度評価法として癌の深達度を表すDOI と浸潤先端部での浸潤様式評価(worst pattern of invasion: WPOI)について記載する。
DOI は,深部組織への浸潤程度が予後に影響することに着目し,周囲正常粘膜上皮の基底面を基準にした浸潤の深さであり15),従来の腫瘍の大きさ(長径)とともにUICC によるTNM 分類(第8 版)のT-原発巣の分類基準に新たに加えられている16)。
AJCC(第8 版)では,浸潤様式評価として,Brandwein-Gensler ら17)が従来のAnneroth 分類(4 段階評価のpattern of invasion:POI)に追加した評価項目WPOI-5,すなわち浸潤先端部の胞巣から1 mm 以上離れた遊離胞巣が存在する場合を採用している。初期浸潤癌においても4 mm 以上の深さに浸潤している症例では,WPOI-5 がみられる場合に局所再発の可能性が高まり,また,疾患特異的生存率が低下する可能性があるとされている15)。
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- 重要ポイント3-11
- 生検検体から口腔癌の診断・治療に対してどのような情報が得られるか?
- 癌の確定診断だけでなく,予後にかかわる重要な情報が得られる場合が多い。生検の目的は癌の診断を確定することと,癌の性状や予後にかかわるさまざまな情報を得ることである。生検検体から得られる治療に有用な情報について解説する。
生検検体から腫瘍の組織型の確定,腫瘍の浸潤の有無,胞巣の辺縁形態(浸潤様式),分化度,分裂能(分裂像の数,増殖マーカー陽性率),脈管・神経侵襲の有無,それらを総合した組織学的悪性度などの情報が得られる1)。これらの因子のすべてが明確に予後と相関するというデータはないが,個々の癌の性状を知る上で非常に有用である2-5)。
一般に口腔領域の生検検体は小さい場合が多いが,診断にあたって免疫組織化学染色などを併用することにより,個々の癌の性状が明確にできる場合もある6)。また,ヨード生体染色で癌周囲に広範な不染域が認められる場合には,不染域の辺縁組織を採取することにより,切除範囲の決定に有用な情報が得られることもある。
病変部をすべて切除する切除生検(全切除生検)は,十分な術前検査を実施したうえで,しかも病変の一部分を切除する試験的な組織採取(部分切除生検)をするには病変が小さすぎる場合に,一定の安全域を含めて病変を一度で切除する方法である。切除生検検体では,上記の情報はすべて観察可能で,切除断端の病変の有無も判定でき,予後も推察しやすい5, 7-10)。
参考文献
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- 重要ポイント3-12
- 口腔癌の外科療法において術中迅速病理診断は有用か?
- 口腔癌の術中迅速病理診断は,切除断端での腫瘍組織残存の有無や頸部リンパ節転移の有無を検索する方法として有用である。術中に切除断端の腫瘍の有無や頸部リンパ節転移の有無を診断できれば,より確実な外科療法を行うことができる。
術中迅速凍結標本は,ホルマリン固定パラフィン標本と比較して診断は困難であり,高い標本作製技能と診断力が必要とされる特殊な病理診断である。しかし,術中迅速病理診断により,治療方針の変更もあり得ることからその意義は大きい1-3)。術中迅速病理診断の正診率は97.2%と高く,組織学的分化度と上皮性異形成の正診率は,それぞれ78.7%と80.0%と報告されている4)。一方,凍結標本での切除断端の状態と原発巣再発や頸部転移には関連性は見られないとの報告もある4)。
口腔癌の進展は複雑で,すべての切除断端を検索することは実際には困難であり,術中迅速病理診断で断端陰性であっても,手術検体のホルマリン固定パラフィン標本の検査で切除断端部に腫瘍がみつかることもある。
術中迅速病理診断でのリンパ節転移の診断は比較的容易であり5),頸部郭清術時に用いられる。また,センチネルリンパ節の術中迅速病理診断も行われている2)。
参考文献
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- 重要ポイント3-13
- 口腔癌において切除断端に上皮性異形成を認めた症例の再発率は高いか?
- 上皮性異形成の程度と再発率の関連性は明らかでないが,切除断端上皮に高度の異型を認めた症例では,原発巣再発率が高いと推察される。手術検体の検索や術中迅速病理診断時に,切除断端にみられる上皮性異形成に対する臨床的対応は常に問題となる。
口腔癌における切除断端の評価と予後との関連では,5 年生存率は断端陰性の場合は69%,断端に癌が近接する場合は58%,断端陽性の場合は38%である1)。癌が切除断端に近接する場合,上皮性異形成が切除断端に存在する可能性が考えられる。しかし,切除断端に上皮性異形成が認められた症例を経年的に観察したデータは少ない2, 3)。
口腔癌ではヨード生体染色不染域を含めて切除されることが多いが,その理由は,ヨード生体染色不染域は上皮性異形成である可能性が高いからである4)。従前のWHO 分類5)では上皮性異形成は軽度,中等度,高度の3 段階に分類されるが,その段階と再発率の相関は明らかではない。一方,口腔上皮内腫瘍(『口腔癌取扱い規約第1 版』)を切除断端に認めた症例では,再発率が高いと報告されている6)。切除断端に上皮性異形成を認める症例の予後についてはさらなるデータの蓄積が待たれる。
術中迅速病理診断や手術検体の病理診断で,切除断端に上皮性異形成を認めないと診断された症例でも,数年後に切除断端の創部に近接して癌が発生する場合があり,field cancerization の可能性も考えられる7, 8)。前回の癌の術後再発なのか,新たな癌の発生なのかの判断には,臨床医と病理医間の密接な情報共有が必要である。
参考文献
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- 重要ポイント3-14
- 口腔癌の浸潤様式は予後の判定に有用か?
- 癌の深部浸潤先端部における浸潤様式は,予後判定に有用な病理組織学的所見の1 つである。口腔癌の組織学的悪性度評価は予後と相関するとされている。
扁平上皮癌の最も一般的な組織学的悪性度評価法として,従来からGrade 分類(WHO)がある1)。口唇癌におけるBroders 分類2)に由来し,主として腫瘍の分化度を指標とした分類である。大きな母集団における検索では,予後やリンパ節転移とある程度の相関がみられることから,慣習的に使われてきた。その他の代表的な組織学的悪性度評価法にはJakobsson 分類3), Willen 分類4)やAnneroth 分類5)があり,腫瘍宿主境界部の6〜8 因子を点数化し,総合点により悪性度を評価する。その有用性は多くの研究により検証されているが,評価法の煩雑さから広く普及するには至っていない。
本邦の口腔外科では浸潤様式分類としてYK 分類6)を使用する施設が比較的多い。この分類はJakobsson 分類,Willen 分類における評価項目の中から,腫瘍宿主境界部の胞巣形態に注目したものである。口腔癌特有の高分化癌をYK-1 型,スキラス型の間質反応を伴うびまん性浸潤をYK-4D 型としたのが本分類の特徴である。YK 分類はリンパ節転移と比較的良く相関し,特にYK-4D 型に転移が多いと報告されている7)。なお,消化器癌で用いられる浸潤増殖様式(INF)との対応では,INFα (a)はYK-2 型に,INFβ (b)はYK-3 型に,INFγ (c)はYK-4C 型とYK-4D 型に相当する8)。なお,2005 年のWHO 分類(第3 版)では,Grade 分類は予後との相関が低く,深部境界部でのびまん性浸潤様式が重要であることを指摘している9)。
AJCC(第8 版)では,WPOI のWPOI-5 を推奨される予後評価基準としている10, 11)。表1-4 にYK 分類,Anneroth 分類(POI-1〜4)およびWPOI-5 の評価基準を示す。YK 分類とAnneroth 分類のPOI-1〜4 は,生検検体と手術検体のいずれでも評価可能であるが,WPOI-5 は生検検体での評価は困難であり,主に手術検体での評価方法である。T1,T2 の初期浸潤癌でも,特にDOI が4 mm 以上の場合,WPOI-5 は局所再発や疾患特異的生存率の有意な予測因子とされている11)。しかし,予後を決定する因子は複雑であり,更なる検討が必要である。
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- 日本口腔腫瘍学会編.口腔癌取扱い規約第2 版.金原出版,東京,2019.
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- Barnes L, Eveson JW, et al. World Health Organization Classification of Tumours, Pathology & Genetics, Head and Neck Tumours, IARC Press, London, p164-79, 2005.
- 10)
- Brandwein-Gensler M, Teixeira MS, et al. Oral squamous cell carcinoma : histologic risk assessment, but not margin status, is strongly predictive of local disease-free and overall survival. Am J Surg Pathol. 2005 ; 29 : 167-78.
- 11)
- Amin MB, Edge S, et al. AJCC Cancer Staging Manual, 8th ed. Springer, Switzerland, p3-94, 2017.(2018年改訂:https://cancerstaging.org/references-tools/deskreferences/pages/8eupdates.aspx)
第4 章 原発巣の治療
- Ⅰa.外科療法−切除術
口腔癌は,舌,口底,頬粘膜,上顎歯肉,下顎歯肉,硬口蓋など解剖学的構造の異なった部位に発生するために,癌の病態や進展様式は各部位によって大きく異なる。そのため治療法も各部位によって異なってくる。口腔癌の外科切除では,咀嚼および摂食・嚥下,発音などの機能面ならびに顎顔面領域の整容面に及ぼす影響も大きいため,術後の患者の機能やQOL を重視した治療体系が望まれ,欠損部については再建術や,上顎では顎補綴も考慮した外科療法を行う必要がある。
本稿では,口腔癌のなかでも発生率の高い舌癌ならびに下顎歯肉癌を中心に,各部位における外科療法ならびに気管切開について解説する。また,口腔癌の原発巣切除に関する適切な安全域(重要ポイント4-1),pull-through operation の適応(重要ポイント4-2),生体染色の意義(重要ポイント4-3),顎骨切除術(重要ポイント4-4,4-5)を解説する。
1.舌癌
舌癌は原発巣の大きさ,浸潤の深さ1)および周囲組織への進展により切除範囲が異なる。具体的には,口底浸潤2),舌根浸潤,下顎骨浸潤の有無,程度による3-6)。原発巣の切除範囲が大きければ,皮弁または筋皮弁による再建手術が必要となる。
舌癌T1N0,early T2N0 症例,表在性のlate T2N0,T3N0 症例は口内法による舌部分切除術を行う。late T2N0,T3N0,T4N0 症例は原発巣切除(舌部分切除術,舌半側切除術,舌亜全摘術など)とともに予防的頸部郭清術を行うため,pull-through operation にて頸部郭清組織と一塊として切除することもある7-14)。T1N1〜3,early T2N1〜3 症例もpull-through operation にて原発巣組織と頸部郭清組織を一塊として切除する(重要ポイント4-2)。late T2N1〜3,T3,T4N1〜3 症例は舌部分切除術,舌半側切除術,舌亜全摘術,さらに癌浸潤の程度により下顎骨など周囲組織の合併切除などの原発巣切除術と頸部郭清術を同時に行う(表1-5,図1-7)。
図1-1 舌部分切除術(a)
|
図1-2 舌可動部半側切除術+口底部分切除術 |
図1-3 舌可動部(亜)全摘術 |
図1-4 舌半側切除術 |
図1-5 舌(亜)全摘術 |
2.口底癌15-20)
口底癌は正中型(前歯部相当)と側方型(臼歯部相当)に分けられ,多くは正中型である。側方に進展すると,口底粘膜下が疎性結合組織であるため深部に浸潤しやすいことが特徴である。内方に進展すると舌下面,外方に進展すると下顎歯肉・歯槽部や下顎骨に浸潤をきたす。深部に進展するとオトガイ舌筋,舌骨舌筋,顎舌骨筋への浸潤をきたす。また,内舌筋(下縦舌筋,横舌筋,垂直舌筋など)への浸潤をきたし,舌根(中咽頭)へ進展する。ワルトン管周囲への浸潤や,舌深動脈,舌下動脈,舌神経,舌下神経周囲への浸潤を示す。頸部リンパ節転移は両側に起こりやすい。
口底癌のT1N0,early T2N0 症例は口底部分切除術(口内法)を行う。late T2,T3,T4 症例は原発巣と頸部郭清組織を一塊として切除するpull-through operation が行われる(重要ポイント4-2)。また,舌や下顎骨に浸潤した症例では,舌や下顎骨の合併切除を行う。
3.頬粘膜癌18-21)
頬粘膜の亜部位は ①上・下唇粘膜部,②頬粘膜部,③臼後部,④上・下頬歯槽溝に分類される。頬粘膜癌の外方進展は頬筋,皮下および皮膚浸潤である。内方進展は上・下顎歯肉や骨に浸潤し,前方進展は口角に,臼後部からの後方進展は粘膜下に沿って下顎骨・翼突下顎隙への浸潤をきたす。同様に,上方進展は上顎結節や翼口蓋窩へ至り,内方進展は軟口蓋,舌根への浸潤をきたす。
T1, T2 症例では頬粘膜切除術あるいは放射線療法が行われる。進展例では頬粘膜切除術,下顎合併切除術,上顎合併切除術,皮膚切除術,あるいは臼後三角部より上・後方の拡大切除術が行われる。深部マージンの設定法には腫瘍辺縁からの距離を用いるmetric approach と構成組織の腫瘍浸潤に対する抵抗性を考慮したbarrier approach がある。頬粘膜癌の皮膚側深部マージンの設定に関するbarrier approach として頬筋を基準とした客観的な深部マージンの設定法が報告されている。
4.下顎歯肉癌
下顎歯肉癌は早期に下顎骨に浸潤し,骨破壊を呈する。特に下顎骨内に深く浸潤した場合は放射線療法での治癒が期待できず,高線量では放射線性骨壊死といった副作用も考慮する必要がある22)。また,抗がん薬の骨への移行が悪いことから,外科的切除が基本となる。下顎骨内に進展した腫瘍は直接触知できないために,手術範囲の設定においてパノラマ,頭部後前方向,顎骨斜位方向,咬合法,口内法X 線画像やCT,MR などの画像診断により,骨吸収の深達度,骨吸収型,周囲軟組織への進展状況を正確に把握し,治療計画を立てる必要がある23-27)。
a.下顎歯肉癌の切除方法(表1-6,図1-8)
下顎歯肉癌の外科療法は原則的に下顎骨切除であり,切除範囲によって基本術式は表1-6 のように分類される。その適応は腫瘍の進展範囲によって決定される23, 24, 26-31)。手術標本の病理組織学的所見とX 線所見との比較や,原発巣再発率や予後との関連から得られたretrospective な結果をもとに切除法の議論がなされてきた。T1 症例では辺縁切除術が行われ,骨吸収が下顎管まで及んだ場合や深部軟組織進展症例のT4 症例では,区域切除術や半側切除術などが適応される27)。T2,T3 症例においては,特に骨吸収の深達度と骨吸収型との関連32, 33)を考慮した次頁b. に示す選択基準により,下顎骨の辺縁切除術か区域切除術が選択される(重要ポイント4-5)。
b.切除範囲の選択基準
(1)腫瘍の軟組織への進展
原発巣再発が切除後の骨断端よりも軟組織断端から起こっている報告が多く22, 24, 26, 34-37, 49),特に顎舌骨筋や咽頭側へ進展した症例では,辺縁切除術では軟組織の切除が不十分となる可能性がある38)。したがって,下顎骨周囲の深部軟組織への進展症例に対しては,周囲軟組織を含めた区域切除術が妥当と考えられる。
(2)骨吸収の深達度
下顎管に達した腫瘍は,下歯槽神経血管束に沿って進展していくため39, 40),オトガイ孔,下顎管を含めた区域切除術が必要である。X 線学的に下顎管に至らない症例の辺縁切除術か区域切除術かの適応においては,下顎管および骨髄腔内への組織学的浸潤が問題とされる23, 33, 41)。X 線学的に骨吸収が認められた下顎骨の手術標本の組織学的検索では,X 線像で骨吸収を認める部位から1 cm離れた部位には腫瘍を認めないことから,骨吸収部位から最低1 cm の安全域をとる必要性が報告されている42)。
(3)骨吸収型
X 線学的な骨吸収型(平滑型,虫喰い型,中間型)は予後因子とされていることから32, 33, 47),これらの吸収様式は骨吸収の深達度と関連して考慮すべきである。X 線学的に平滑型では,組織学的な骨浸潤範囲とX 線学的な浸潤範囲が一致するが,虫喰い型では,X 線の骨吸収像から腫瘍の組織学的骨浸潤を予測することは難しく,切除範囲を大きく設定する必要性がある43)。また,中間型は,平滑型と虫喰い型との中間的な病態として考慮される47)。歯槽骨内に限局した症例では辺縁切除術を選択すべきであるが,歯槽骨の一部に限局した場合を除けば26),虫喰い型の骨吸収像を示す場合や,平滑型であっても下顎管に近接あるいは達する骨吸収を示す症例では,区域切除術が妥当と考えられる24, 26, 27)。
(4)下顎骨の垂直的高さ
辺縁切除術では下顎下縁から1 cm 以下になると骨折の可能性があることが指摘されており,無歯顎萎縮骨の場合では垂直的高さの点で区域切除術が選択される場合が多い37, 42)。
(5)その他
組織学的悪性度に関しては高悪性度の方が再発率は高く,予後不良例が多いという報告44, 45)や,腫瘍浸潤様式と下顎骨への浸潤状態との関連性を示す報告もある46)。また診断前に患部に抜歯などの外科処置が行われた場合には内向性の発育様式を示すものが多く,骨吸収型では虫喰い型を示すことが有意に高いという報告があり49, 50),治療方針を立てるうえで考慮すべき点である。
下顎歯肉癌の外科療法のアルゴリズムを図1-9 に示す。
5.上顎歯肉癌・硬口蓋癌
上顎歯肉癌は,下顎歯肉癌と比較して発生頻度は低く,硬口蓋癌はさらにその頻度は低いとされる。上顎歯肉癌(硬口蓋癌を含む)は,下顎歯肉癌と同様に,速やかに骨への浸潤をきたしやすい。解剖学的な特徴として,上方へは上顎洞,鼻腔などへの進展があり,後方では翼状突起,翼口蓋窩,側方では頬粘膜に進展する。硬口蓋癌では軟口蓋へ進展することから,切除による口腔機能への影響が大きい。また,他の口腔癌と異なり,原発巣と頸部リンパ節転移巣の一塊切除ができないという解剖学的特徴を有しているが,頸部リンパ節転移の頻度は下顎歯肉癌より低いとされる51)。進行癌では,整容的障害の点からも外科療法単独ではなく,放射線療法や化学療法を併用した集学的治療が用いられることが多い。切除範囲の決定には,解剖学的に複雑な構造をしているために,画像診断による顎骨への浸潤,鼻腔,上顎洞,翼口蓋窩など周囲組織への進展範囲の精査が重要である。また上顎と下顎では骨質の差異がX 線所見に影響するとの意見もある55)。外科的治療では,外向性の早期癌に対して骨膜を含めた歯肉切除術がなされる場合もあるが52),多くは上顎部分切除術や上顎亜全摘術が行われる52-54)。切除によって,上顎洞や鼻腔が交通する場合が多い。上顎洞内に大きく進行した場合には,上顎洞癌に準じた上顎全摘術や拡大上顎全摘術が適応となる53, 54)(表1-7)。欠損部に対しては整容的障害ならびに言語,摂食障害の点から,顎補綴や遊離組織移植による再建術が行われる。
付 気管切開術
口腔癌の外科療法に際し気管切開術がしばしば行われるが,その適応については各施設で異なっているのが現状である。一般的には舌原発巣の切除範囲が広い場合(可動部半側切除術を越える場合),下顎骨の半側以上の切除を行った場合,両側の頸部郭清術を行った場合および再建皮弁のボリュームなどで気道閉塞の可能性がある場合などに気管切開術が行われることが多い57)。しかし,気管切開術による合併症(出血,閉塞,局所の感染,肺炎,瘻孔形成,気道狭窄など)も問題であり,安易に行うべきではない58, 59)。最近,気管切開術の適否を客観的に判定する目的で,危険因子のスコアリングによる判定法が報告されている60)。腫瘍の位置,下顎骨切除の有無,両側頸部郭清術の有無,皮弁再建の状態から気管切開術の適否を決定する試みである。また,最近,気管切開術を行うにあたって参考となる“誰が,いつ,そしてどのようにして気管切開術を実行すべきであろうか?”についてのレビュー報告もなされている61)。
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(下顎歯肉癌)
(上顎歯肉癌,硬口蓋癌)
(気管切開)
- 重要ポイント4-1
- 口腔癌の原発巣切除における適切な安全域は?
- 口腔癌の切除では10 mm 以上の安全域をとることが勧められるが,明確な根拠はない。
口腔癌の切除では10 mm 以上の安全域をとることが勧められるが,明確な根拠はない。口腔癌の安全域について,舌癌では肉眼的に腫瘍からは10 mm,ルゴール不染域から5 mm の設定で切除を行い,原発巣再発率3.8%と良好な成績の報告がある1, 2)。一方,浸潤型の舌癌では腫瘍縁が切除断端に近接することがあるため,安全域は10 mm 以上を必要とし,切除断端を迅速病理診断で確認すべきとする報告もある3-5)。口腔癌の切除断端の腫瘍陽性率は15%で,中・下咽頭癌,喉頭癌に比べて高いとの報告がある6)。また,腫瘍から5 mm 以内の安全域では術後の原発巣再発率は断端陽性の場合と変わらないとする報告7, 8)や,5 mm を超えた十分な切除の5 倍の再発率(10%)との報告もみられる7, 9)。口腔癌の摘出標本の縮小率は20〜30%とする報告8)や,30〜50%を示すとの報告がある10, 11)。標本上で5 mm 以上の安全域があると局所再発率が低いという事実から,手術標本の縮小を考えれば10 mm 以上という安全域は妥当と思われる12-20)。しかし,病理組織学的な浸潤様式の違いも考慮に入れる必要があり,すべての症例にあてはまるわけではない。
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- 重要ポイント4-2
- pull-through operation の適応は?
- 舌癌と口底癌のN1〜3 症例においては,口腔原発巣から頸部へのリンパ流路を損傷することなく切除することを目的としたpull-through operation が基本となる。
pull-through operation は舌癌,口底癌のN1〜3 症例において口腔原発巣から頸部へのリンパ流路を損傷することなく切除しようとする考えで,原発巣と頸部郭清組織を一塊として切除する1-4, 6-8)。T1, early T2N0 症例の場合,多くは口内法の原発巣切除が行われる。予防的に頸部郭清術を同時に行う場合,pull-through operation を支持するものが多い。any TN1〜3 症例の場合,pull-through operation が基本となる5)。
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- 重要ポイント4-3
- 口腔癌手術における生体染色の有用性は?
- 生体染色を用いた異型上皮や悪性腫瘍の識別法は有用である。なかでも,ヨード生体染色の不染域描出による異型上皮の識別は特異度が高く,有効である。また,舌癌のT1 症例あるいはearly T2 症例の表在性病変では,ヨード生体染色を行って切除した症例は,行わなかった症例に比べ明らかに原発巣再発率は低い。しかし,ヨードは歯肉や口蓋粘膜など角化上皮を染色できないことがある。
生体染色を用いた異型上皮や悪性腫瘍の識別法は有用である。なかでも,ヨード生体染色は上部消化管領域において広く用いられ,早期癌の発見には欠くことのできない補助診断法となっている1)。口腔領域において,ヨード染色は異型上皮を描出し,悪性病変や悪性化の可能性のある病変を識別できる5, 8-15)。また,異形成を示す粘膜上皮と正常粘膜上皮の識別では,視診よりヨード染色の正確さが示されている6, 8-15)。一方,口腔粘膜の生体染色でトルイジンブルーを用いた口腔扁平上皮癌の病変範囲の診断法は,浸潤性の扁平上皮癌の検出には優れるものの,上皮内癌や高度の異型上皮の病変断端の診断には有用ではないとの報告がある2-4)。局所切除の症例において,ヨード染色の有無により原発巣再発率を検討した結果,ヨード染色をした症例群で有意に原発巣再発率の低いことが示されている7, 8)。さらに,ヨードとトルイジンブルーを併せて用いるヨード・トルイジンブルー染色法9)や, ヨードを2 回にわたり染色する2 回染色法が切除範囲の決定に有用であるという報告もある10)。しかし,広範囲に不染域を認めた場合,どこまで切除するかの判断が困難な場合もある。ヨード生体染色の欠点として,歯肉や口蓋粘膜など角化上皮を染色できないことがあげられる16)。これらの部位に対する切除範囲決定の補助的手段として, fluorescence visualization(FV)システムの有用性を示す報告がある17)。FV は,正常粘膜の自己蛍光をフィルターを通して肉眼的に観察できるシステムである。腫瘍や異型上皮では蛍光発色が減少することから,口腔粘膜病変の診断における有用性が示されている16, 17)。
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- 重要ポイント4-4
- 口底癌における下顎骨合併切除の適応は?
- 臨床的に下顎歯槽歯肉への浸潤や骨浸潤を認める口底癌症例では,下顎骨の合併切除が必要となる。
口底癌の下顎骨への進展様式には,直接,舌側歯肉より下顎骨に進展していく場合と,骨膜に沿って深部に浸潤していく場合がある1-3)。前者の場合,有歯部では歯根膜腔を介し,無歯部では歯槽頂から骨髄腔に進展していく1-3)。
骨破壊を認める症例では,下顎歯肉癌と同様に下顎骨切除が必要である。明らかな下顎骨の破壊を認めない場合で,腫瘍と下顎骨の間に一層の正常な組織が介在している場合には,下顎骨の舌側骨膜を切除側に含めることで下顎骨切除は避けられる場合がある1, 4-8)。腫瘍と下顎骨に癒着を認める場合には,臨床所見から下顎骨切除が行われることが多い1, 5, 7, 9-13)。
切除方法は,辺縁切除術か区域切除術かの適応が問題となる1, 4-8, 11-15)。癌の骨髄内浸潤がある場合,下顎骨周囲に癌が深部浸潤した場合,骨浸潤が軽度であっても無歯顎で顎堤吸収が著明な場合には区域切除術が行われる16)。骨膜に腫瘍が進展している場合は区域切除術を推奨する報告がある17)。一方,初期の骨吸収を示す症例であっても,骨浸潤は組織学的に比較的限局性であるとの報告もあり1, 7),機能温存の面から,できるだけ辺縁切除術により下顎骨の連続性を残そうとする報告が多い1, 3, 5, 13-16, 18-23, 25)。辺縁切除術症例と区域切除術症例の比較検討から生存率,再発,転移に有意差はなかったとの報告12)や,口底癌の下顎骨合併切除に下顎辺縁切除術を適応し,良好な結果を得たとの報告がある1, 7, 15)。辺縁切除術においては,いわゆる歯槽頂を中心に部分切除術を行うか,舌側皮質骨を中心に部分切除術を行うかについて議論があるが3, 23, 24),口底癌の周囲軟組織への進展範囲,下顎骨への浸潤方向を考慮して下顎骨の切除範囲が決められる。
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- 重要ポイント4-5
- 下顎歯肉癌の骨浸潤(骨吸収)が歯槽部にとどまっている症例における辺縁切除術の適応は?
- T1 症例であれば適応可能である。T2,T3 症例でもX 線学的に骨吸収が歯槽部にとどまっている場合や,骨吸収型が平滑型の場合には辺縁切除術が適応される。ただし虫喰い型の場合,歯槽部にとどまっていても骨髄腔内への癌の浸潤が予想されるため,区域切除術が適応となる。
下顎歯肉癌の外科的切除においては,画像診断を基にした骨吸収深達度,骨吸収型,さらに腫瘍の軟組織への進展様相が下顎骨切除範囲の決定に重要である1-7, 21)。骨吸収型は,X 線学的には平滑型(pressure type)と虫喰い型(moth-eaten type),その中間型(mixed type)に分類することができ7-10, 23),病理組織学的には圧迫型(expansive type)と浸潤型(invasive type)に分類される9)。
X 線学的平滑型は100%が病理組織学的に圧迫型骨浸潤像を示すが,X 線学的虫喰い型は病理組織学的圧迫型が55%,浸潤型が45%と報告されている9)。また病理組織学的圧迫型では骨吸収が癌浸潤よりも先行し,癌浸潤境界と骨吸収面の間に線維性結合組織が介在するが,病理組織学的浸潤型では骨破壊に先行して骨髄腔内に癌が進展することが多い9, 11)。骨吸収深達度ならびに骨吸収型と原発巣制御との関連について統計分析を行い,推奨できる外科療法を検討した報告では,T1 では原則的に辺縁切除術を行い,下顎管に至らないT2,T3 症例では,骨吸収型が平滑型であれば辺縁切除術が勧められている2, 3)。他の報告でも平滑型では,骨内にて比較的限局して腫瘍が存在していることから,おおむね同様の適応基準がとられている1, 4, 12-15, 23)。一方,歯槽部であっても骨吸収型が虫喰い型であれば,骨髄腔内への広範な浸潤の可能性があるので区域切除術が原則的に勧められる2, 3)。しかし,再発の多くは周囲軟組織から起こりやすいこと12-19, 24)から,虫喰い型であっても歯槽部の一部に限局していれば,辺縁切除術が可能との意見もある13)。なお,骨浸潤が歯槽部にとどまっている場合でも周囲軟組織に高度に進展した場合には,区域切除術が選択される。無歯部の萎縮した下顎骨は,辺縁切除術では骨折を起こす可能性があるため区域切除術が適応となる18, 20)。
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- Ⅰb.外科療法−再建術
口腔癌治療において再建術を行う目的は,手術などで生じた組織欠損を修復することにより,術後の機能障害や整容障害をできるだけ軽減し,QOL を向上させることにある。口腔癌切除による組織欠損は軟組織や硬組織(顎骨)に生じ,さまざまな再建方法が報告されているが(表1-8),安全性が高く,長期的な機能・整容の回復に優れた方法が望まれる。しかし,再建術は適応やその評価方法など標準化が難しく,エビデンスを得るのは困難である。
再建を行う時期には,腫瘍切除と同時に行われる即時再建(一次再建)と,時期を異にして行われる二次再建がある。再建方法,再建時期は欠損の状態に応じて決定されるが,患者の年齢,全身状態,社会生活なども考慮される。
1.軟組織の再建方法(表1-8)
軟組織の欠損修復で重要なことは,残存組織の機能維持が可能な方法を選択することである。そのため,小さな組織欠損の場合は,単純縫縮が術後機能にとって最も有用な方法であることも多い1-3)。しかし,単純縫縮により組織欠損部を閉鎖することが困難である場合や,組織移植が術後機能の向上に寄与すると考えられる場合には,再建術を選択することになる。再建方法には,植皮,粘膜移植,局所粘膜弁,有茎(筋)皮弁,遊離組織移植などがある。現在でも有茎(筋)皮弁の有用性は高く評価されており,頸部島状皮弁,広頸筋皮弁,D-P 皮弁,大胸筋皮弁,広背筋皮弁などが用いられている。一方血管柄付き遊離組織移植は,遠隔領域の皮膚・筋肉・骨などを,大きさ・量を調節しながら移植することが可能であること,移植組織の自由度が高いこと,さらに血行が良好なことから,軟組織の再建に現在最も多く使用されている。口腔再建では,前腕皮弁,前外側大腿皮弁,腹直筋皮弁の使用頻度が高い4-9)。
再建組織の選択は,組織欠損量や形態に応じて決定される(重要ポイント4-6)。舌癌では,舌半側切除術の場合,残存舌の運動を障害しないことが術後機能に有利とされ,比較的薄い皮弁である前腕皮弁や前外側大腿皮弁などが用いられる3, 11)。舌亜全摘術や舌全摘術では,再建舌と口蓋・咽頭との接触を容易にして構音,嚥下機能の回復を図ることが重要であるため,容量があり,かつ長期的形態維持が可能である腹直筋皮弁が最も有用である4, 23, 24)。舌の前方切除では再建を行っても機能障害は高度であり13),両側の舌骨上筋群・舌下神経切除例では,特に高齢者においては重篤な嚥下障害が残遺することがある14)。さらに,頬粘膜癌の皮膚進展例などでは口腔・皮膚側の全層再建が必要となるため,折り返した皮弁や2 皮島皮弁,または2 つの皮弁が同時に用いられる25, 26, 35)。
2.顎骨の再建方法(表1-8)
下顎および上顎再建における骨再建材料の中で,血管柄付き遊離骨弁は,living bone であるため感染に強く,放射線療法などにより移植床の血行が不良である場合や,顎骨の欠損量が大きい場合などに有利である15)。現在では,腓骨,肩甲骨,腸骨が顎骨再建に多く使用されているが,移植骨の選択には明確な基準はなく,それぞれの特徴をよく理解したうえで選択する必要がある16-18)。また,口腔癌では顎骨とともに軟組織が大きく合併切除されることが多いため,腓骨皮弁,肩甲骨皮弁,肩甲骨付き遊離広背筋皮弁など,複合組織移植として用いられることが多い(重要ポイント4-7)。
自家骨片移植術の場合,腸骨のブロックや骨髄海綿骨細片(particulate cancellous bone and marrow:PCBM)として用いられ,前腸骨稜,後腸骨稜などから採取される。PCBM の保持にはチタンメッシュやポリ-L-乳酸(poly L-lactic acid:PLLA)メッシュが使用される19, 27, 28)。再建プレートには主にチタンプレートが用いられ,骨移植までの暫間的な再建材料として利用される20, 21)が,長期使用例もある。
下顎再建では,下顎辺縁切除術後に歯科インプラントや顎義歯などによる最終的な咬合再建を目的として,二次的骨移植,骨延長28)などを併用した顎堤形成術などを行うことがある。下顎区域切除術後は下顎骨の連続性が失われるため,下顎偏位による咀嚼障害や顔貌の変形を引き起こす。現在は下顎の一次再建では血管柄付き遊離骨皮弁移植が広く行われているが,再建プレートと軟組織(皮弁や筋皮弁)の併用,軟組織のみの移植も行われる23, 30-35)(重要ポイント4-7)。自家骨片移植の即時再建では,感染のリスクを考慮して口腔粘膜側が確実に閉鎖されることが要件である。二次再建には自家骨片移植か血管柄付き遊離骨移植が主に用いられる21, 22)。初回の手術時間は短縮できるが,複数回の手術となり,瘢痕拘縮のため下顎の位置や形態の回復が困難なことがある。また,血管柄付き遊離骨移植術では,移植床に吻合用血管がないと再建そのものが不可能となる場合もある。下顎再建による機能回復に関しては,下顎の連続性が回復しても,上下歯列の咬合関係,周囲軟組織の可動状態,残存歯数などの因子がより強く反映されるため,症例ごとにその回復程度は異なる(図1-10)。
上顎再建の場合,欠損部が大きいと軟組織再建のみでは皮弁の下垂や容量過多などから顎義歯が不安定となる36-38)。そのため,血管柄付き遊離骨皮弁を用いた再建が導入され39-42),歯科インプラントを併用することにより,顎義歯は飛躍的に安定性を増した38, 43, 44)。硬口蓋や歯槽部が残存していて,かつ歯があれば,皮弁による閉鎖よりも顎義歯が有効であると考えられる40, 45-47)。
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- 重要ポイント4-6
- 舌癌切除術後欠損に対する再建方法で,遊離組織移植(血管柄付き組織移植)は有茎(筋)皮弁に比べて術後の機能は優れているか?
- 舌癌の術後機能については,舌半側切除術後の構音機能における前腕皮弁の有用性が報告されているが,遊離組織移植が有茎(筋)皮弁に比べて機能的に優れているとする高いレベルのエビデンスはない。
舌癌切除術後の機能回復には,舌半側までの切除では残存舌の可動性が重要とされている。一方,舌亜全摘術ならびに舌全摘術では皮弁容量による再建舌と口蓋・咽頭接触が重要とされている1-3)。遊離組織移植は,有茎皮弁に比べて皮弁位置の制限や下方への牽引が少なく,皮弁デザインのバリエーションも多いため,再建上の工夫が容易であり術後機能回復にも有利と考えられている4, 5)。
舌半側切除術後の100 音節発語明瞭度評価を行った報告6)では,縫縮:51.2%,D-P 皮弁:67.5%,有茎筋皮弁:77.1%,前腕皮弁:86.3%であり,前腕皮弁による再建群が良好であったが,有茎筋皮弁との間に統計学的有意差はなかったとしている。大胸筋皮弁と前腕皮弁による舌癌再建術後の機能評価では,発語機能は前腕皮弁が優れていたが,嚥下機能は再建方法よりも切除範囲による影響が大きかったとの報告がある7)。可動部舌半側切除術後の前腕皮弁,腹直筋皮弁,大胸筋皮弁による再建後の簡易機能評価法では,前腕皮弁が優れていた4)。一方,舌・中咽頭癌切除術後に腹直筋皮弁,大胸筋皮弁,前外側大腿皮弁による再建と誤嚥防止術を行った症例の経口摂取の可否の判定では,舌根の切除範囲と年齢(60 歳以上)が影響し,再建材料による差は明らかではなかったとの報告がある8)。また,舌切除範囲をマッチングさせた症例の遊離皮弁と有茎筋皮弁の嚥下機能,構音機能を比較した結果,明らかな差は認められなかったとする報告もある9)。
現在,舌癌切除術後の再建には遊離組織移植が第一選択となることが多い。しかし,術後機能の改善には,切除範囲として欠損形態を考慮した再建が必要であり,有茎(筋)皮弁の有用性も高く,それぞれの再建材料の特性を理解して選択することが重要と考えられる。
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- 重要ポイント4-7
- 血管柄付き骨移植による下顎再建は他の方法と比較して優れているか?
- 血管柄付き骨移植は,他の方法と比較して多くの利点を有し,特に下顎区域切除後の一次再建においては第一選択と考えられる。
下顎の一次再建では,成功率が高いこと,十分な骨量が得られること,欠損部位に応じて微細な形態付与が可能であること,術後の咬合再建が容易になることなど,多くの利点を有していることから,血管柄付き骨皮弁移植が最適と考えられる。しかし,患者の年齢や合併症,癌の進行度,術後機能,下顎骨や周囲組織の切除範囲などを考慮して,他の方法も選択される。
下顎の一次再建は,整容的,機能的回復を目的として,血管柄付き骨皮弁移植,下顎再建プレートと軟組織(皮弁や筋皮弁)の併用,軟組織のみの移植の3 方法に大別される。その中で,信頼性の高さや術後の咬合再建(インプラント等)の容易さ等から,血管柄付き骨皮弁による再建が第一選択とされる1-5)。肩甲骨,腓骨,腸骨など,再建骨の選択は,各骨弁の特徴および付随する皮弁の特徴を理解し,最も使いなれたものを選択すべきである6)。下顎区域切除後の再建では,患者の年齢や基礎疾患によって血管吻合や長時間手術が不可能な場合は,再建プレートと軟組織を併用した再建が行われる場合がある。この場合のプレート関連合併症は側方欠損では5〜33%,前方欠損では35〜56%と報告され,プレート露出や感染,破折が多く,下顎骨欠損は可及的に骨弁による再建を行うべきであるとの意見がある7, 8)。プレート関連合併症を回避するための対策も報告されている9, 10)。一方,全身状態不良例や下顎半側切除術と軟組織の広範合併切除症例など,下顎再建全体の5%を遊離腹直筋皮弁のみで再建し,良好な顔貌と許容できる術後機能を得たとする報告もある11)。さらに,下顎骨後方切除(下顎体臼歯部から下顎枝)の機能障害は,骨欠損より軟組織欠損が主原因であるため,遊離腹直筋皮弁のみの充填で良いとする報告があり,良好な顔貌,構音,嚥下機能が得られている12)。しかし,オトガイを含む前方部欠損は,顔貌や口腔の機能,気道確保の点から下顎連続性再建は絶対的適応であり,プレート関連合併症の頻度の高さから,血管柄付き遊離骨皮弁移植が汎用されている13, 14)。
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- Ⅱ.放射線療法
放射線療法を目的別に分類すると,単独で根治をねらう根治治療,術前に腫瘍の縮小や不活化をはかる術前療法,術後に腫瘍の再発を防ぐための術後療法,腫瘍の根治は望まないが,症状の緩和やQOL を上げるための緩和的・姑息的治療となる。ここでは,特に根治的放射線療法について記載する。
口腔癌の放射線療法を治療手段により分けると,外部照射と小線源治療とになる。外部照射単独の治療成績が外科療法に匹敵するという報告はほとんどなく(薬物療法を併用した放射線療法は別項で述べる),根治性を求めるうえでは小線源を主体とした治療が選択される1-4)。初診時に頸部リンパ節転移が存在する場合は,一般的には原発巣と頸部リンパ節を同時に治療できる外科療法が選択される。
1.小線源治療
小線源治療は機能・形態を温存できる治療法として定着している。
小線源治療には腫瘍に近接して線源を配置し照射するモールド照射,腫瘍内に線源を刺入する組織内照射,腔内にアプリケーターを挿入して照射する腔内照射がある5-7)。舌など軟部組織には組織内照射が行われる。口蓋や頬粘膜の表在性腫瘍にはモールド照射が行われる。小線源治療に先行して外部照射が行われることもある。
小線源治療は,線量率により,従来から使用されている低線量率治療4, 8)と近年使用されるようになった高線量率治療8)に分けられる。
a.低線量率の組織内照射
1)針状線源
針状線源には192Ir,137Cs がある。通常は10 mm 以内の厚さの腫瘍であれば1 平面刺入,10 mm から20 mm 程の厚みの腫瘍であれば2 平面刺入,それ以上の厚みがあれば立体刺入を行う9)。192Ir の場合は最初にガイドピンを挿入し線源配列を確認した後に本線源と置換する(後装填法)ため,術者の被曝は軽減される。しかし,半減期が74 日と短く,供給された直後には137Cs と比較して線量率が高いので,短時間での抜針が必要となる場合がある。通常,5〜7 日間で70 Gy を照射するが,192Ir では線量率が変わっても70 Gy 照射すれば制御率は変わらないと報告されている10)。従来使用されていた226Ra の廃棄が勧告されたことや,137Cs 針の製造が中止されたために,現在では192Ir のみが本目的で使用されている。
2)粒状線源
粒状線源には198Au グレインがある。198Au グレインは大きさがφ 0.8 mm × 2.5 mm で半減期が2.7 日と短いために,永久刺入用線源として使用されている。舌の可動性も妨げず,針状線源の使用が難しい症例にも適応される。線量分布の均等性を保つために表在性の小さな腫瘍が適応となる11-14)。
b.高線量率の組織内照射
高線量率組織内照射は,低線量率組織内照射の欠点である術者の被曝や,放射線管理病棟での患者管理等の短所を克服した治療法である4, 15-18)。線源としては高線量の192Ir が使用される。分割方法,総線量,術式等はまだ確立されていないが,1 日2 回照射,1 回6 Gy,総線量60 Gy で良好な成績も報告されている18)。
c.小線源治療の適応1-3, 19-33)
一般的に,T1N0,early T2N0 で,腫瘍の厚さが10 mm を超えず,1 平面刺入で治療が可能な症例が適応となる。原発巣制御率は約 90%である1-3, 19-26)(重要ポイント 4-8)。T3N0 症例や腫瘍の厚さが10 mm を超える症例でも,外部照射単独と比較して制御率は高く,適応の可能性はあるが2, 27, 28),その適応については放射線治療医と検討すべきである。舌癌では有害事象もスペーサーの使用で予防可能となっている34, 35)。
2.外部照射
X 線やγ線を用いた従来型の外部照射単独で根治は期待できない。近年では高精度の強度変調照射法(intensity modulated radiation therapy:IMRT)が普及してきており36-38),粒子線治療39-41)とともに進行癌の治療にも期待が寄せられている。しかしながら粒子線の適応としては,扁平上皮癌以外の頭頸部悪性腫瘍が対象となっている。
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- 重要ポイント4-8
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- 1 平面刺入組織内照射が行える厚さ10 mm 未満の原発巣であれば,外科療法と同等の90%程度の原発巣制御率が得られる。しかし,厚さが10 mm を超える原発巣では,組織内照射より外科療法が勧められる。
舌癌の低線量率組織内照射で,T1 症例は86〜93%,T2 症例では65〜80%程度の原発巣制御率が報告されている1, 3-5, 7-14)。しかし,T2 症例では腫瘍の大きさにより制御率が異なり,early T2 では81〜83%,late T2 では72〜80%となり,腫瘍が大きくなるにつれ原発巣制御率が低下するとの報告もある3,9)。
また,192Ir を利用した高線量率組織内照射においても,低線量率組織内照射と同等の原発巣制御率を報告している施設もある2, 5-7)。
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- Ⅲ.化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)
化学放射線療法は進行癌を中心に施行され,用いられる場面としては,切除可能進行癌に対して外科療法を回避し臓器機能温存を目指す場合,外科療法拒否の場合,切除不能進行癌に対して残された治療方法の中での根治療法として用いられる場合,根治切除後の再発高リスク症例に対しての術後療法として用いられる場合の4 つが考えられる。
切除可能症例や外科療法拒否症例に対しては手術回避による臓器・機能温存療法として期待され(重要ポイント4-9),根治切除不能症例においては,放射線療法単独に比べ原発巣・頸部制御率と生存率ともに有意に優れているため,根治を目指した標準的治療法として考慮される1, 2)(重要ポイント4-10)。レジメンとしては,cisplatin(CDDP)100 mg/m2,3 週ごと,3 コースと放射線療法70 Gy/35 Fr(根治療法)もしくは60〜66 Gy/30〜33 Fr(術後療法)が標準となっている2)。また,cetuximab(Cmab)(初回400 mg/m2,以後毎週250 mg/m2)と放射線療法(66〜70 Gy)との併用は,放射線療法単独と比較して,頭頸部癌における有意な生存率の改善が認められている3)。CDDP を主体とした化学放射線療法とCmab を併用した化学放射線療法との比較では,口腔癌と中咽頭癌において,CDDP を主体とした化学放射線療法が原発巣・頸部制御率,全生存率,疾患特異的生存率のいずれも優位であるという報告があるが4),治療完遂率では,Cmab を併用した化学放射線療法の方が高いという報告がある5)。また,CDDP 投与非適応症例においては,Cmab を併用した化学放射線療法が選択される場合が多いが,インフュージョンリアクション,重篤な皮膚障害,間質性肺炎などの有害事象が生じる場合があるので,適切な準備と対処が必要である。
口腔癌の治療では咀嚼,嚥下,構音機能の温存や審美的な側面から形態の温存が強く要望される。非外科的治療法としては,化学放射線療法が選択される場合が多いが,口腔癌を含めた頭頸部癌に対する併用方法としては,放射線と同時に化学療法を施行する同時併用法(concurrent),放射線療法前もしくは後に施行する継続併用法(sequential),そして放射線療法と交互に行う交替療法(alternating)の3 つがあり,この中で同時併用療法に最も高いエビデンスが見いだされている6, 7)。
最近では,進行頭頸部癌に対して化学療法を超選択的に施行し,放射線療法を同時に行う超選択的動注化学放射線療法を根治療法として施行し,完全寛解が得られた場合には外科療法を回避し,効果が得られなかった症例にのみ救済手術を施行するという治療方針(重要ポイント4-11)も選択肢の一つとしている施設もある8)。
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- 重要ポイント4-9
- 切除可能進行口腔癌において,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)の原発巣・頸部制御率および生存率は,放射線療法および外科療法と比較して高いか?
- 切除可能な進行口腔癌に対して,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)が放射線療法や外科療法と比較して,原発巣・頸部制御率や生存率を明らかに向上させたというエビデンスは認められないが,非外科的治療を希望する患者に対する臓器・機能温存療法としての治療選択肢の可能性が示されている。
切除可能進行頭頸部癌(口腔癌を27%含む)に対しては,CDDP を主体とした化学放射線療法施行群と外科療法と術後放射線療法施行群を比較した報告で,化学放射線療法群は,原発巣・頸部制御率や生存率の向上は認めていないものの臓器・機能温存の可能性が示されている1, 2)。同様に放射線療法単独との比較(口腔癌を4%含む)では, 全生存期間に差は認められないものの,原発巣臓器温存率および5 年無再発生存率が有意に高いことが報告されている3)。口腔癌(舌癌)の原発巣に対する化学放射線療法の臨床的効果と組織学的効果の相関性が認められ,臨床効果の高い症例に対する外科療法回避や縮小手術の可能性が示されており,臓器・機能温存療法として期待されている4, 5)。また,最近では化学療法を超選択的に施行し,放射線療法を同時に行う超選択的動注化学放射線療法が臓器・機能温存療法として有用性が高いという報告もみられる6)。このように,化学放射線療法は,切除可能進行口腔癌に対し,臓器・機能温存療法としての可能性と高い生存率について報告しているものもあるが,十分なエビデンスはまだ示されていない。また,下咽頭癌や喉頭癌においては,放射線療法単独と比べて生存率に差は認められないものの,原発部位や頸部の臓器温存率が有意に向上したという報告がある7, 8)。レジメンとしては,CDDP 100 mg/m2,3 週ごと,3 コースと放射線療法70 Gy/35 Fr が標準となる。
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- 重要ポイント4-10
- 切除不能進行口腔癌において,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)の原発巣・頸部制御率および生存率は,放射線療法単独と比較して高いか?
- 根治切除不能な進行口腔癌の治療に対するCDDP を主体とする化学放射線療法は,放射線療法単独に比べて原発巣・頸部制御率と生存率ともに有意に優れている。また,頭頸部癌に対するCmab を併用した化学放射線療法は,放射線療法単独に比べて,原発巣・頸部制御率と生存率の向上ならびに生存期間の延長が認められている。
切除不能進行癌に対する報告では,従来から放射線療法が施行されてきたが,60〜70%が原発巣・頸部再発または遠隔転移を示し,5 年生存率も25%以下と極めて不良であった。そのため,化学放射線療法の検討がランダム化比較試験にてなされ,いくつかの報告がみられる。それらによると,原発巣・頸部制御率は36〜70%と放射線単独に比べ有意に高く,生存率も37〜55%と有意に優れていることが示されており,現在では,根治切除不能な症例に対しては,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)が標準的治療と考えられている1-4)。しかし,Grade 3 以上の粘膜炎や皮膚炎,骨髄毒性などの急性有害事象も38〜89%にみられ1-4),同様に有意に高いことが示されており,治療の完遂には効果的な支持療法が必須となる5, 6)。標準的なレジメンは,CDDP 100 mg/m2,3 週ごと,3 コースと放射線療法 70 Gy/35 Fr であるが,5-fluorouracil(5-FU)を加えたレジメンも報告されている1, 7)。
また,Cmab を併用した化学放射線療法も検討され,頭頸部癌において,放射線療法単独と比較して生存率の有意な改善が示されている8)。CDDP を用いた化学放射線療法とCmab を併用した化学放射線療法とを比較した試験では,口腔癌14%を含む頭頸部癌(n=70)で検討され,全症例での2 年原発巣・頸部制御率と全生存率では差はみられていないが,口腔癌と中咽頭癌でのサブグループ解析では,症例が少ないが,CDDP を用いた化学放射線療法の方が原発巣・頸部制御率,全生存率,疾患特異的生存率のいずれも有意に優れていたことが報告されている9)。さらに,2.5%の口腔癌を含む頭頸部癌(n=279)を対象とした両療法のレトロスペクティブな比較検討では,2 年原発巣・頸部制御率,全生存率,遠隔転移率のいずれも有意差は認められなかったが,スケジュール通りの治療完遂率は,CDDP を用いた化学放射線療法が53.5%であったのに対し,Cmab を併用した化学放射線療法は92%であったことが示されている10)。また, 頭頸部癌stage Ⅲ,ⅣA,ⅣB 非外科療法症例4520 例に対する両者の比較検討では,両者のPS のmatch 解析やunmatch 解析のいずれにおいても,CDDP を用いた化学放射線療法の方が,Cmab を併用した化学放射線療法に比べて,口腔癌を含む主な頭頸部癌において有意に全生存率が上回っていたことが報告されている(全生存期間中央値:1.7 年 vs 4.1 年,ハザード比:1.61,95%信頼区間:1.44-1.79,p<0.001)。また,これらはCDDP の投与量の違い(low dose:30〜50 mg/m2,high dose:80〜120 mg/m2)にかかわらず,Cmab を併用した化学放射線療法に比べて上回っていたことが示されており,進行頭頸部癌に対する非外科療法におけるCDDP を用いた化学放射線療法の優位性が示唆されている11)。
なお,頭頸部癌において,CDDP を用いた化学放射線療法へのCmab の併用による生存率向上への上乗せ効果は現時点では認められず,有害事象のみが増強されるために推奨されていない(RTOG 0522)12)。また,Cmab は循環器系や腎臓,骨髄,神経などへの毒性が少ないことから,これらに障害をもつ患者に対してはCmab と放射線療法との併用は選択肢の一つとなり得る。しかし, CDDP を用いた化学放射線療法とは異なる有害事象がみられる場合もあり,注意と対応が必要である。そのため, 高齢である,臓器障害を有する,全身状態が不良であるといった理由だけで安易に適応すべきではなく, 総合的な判断が必要である。
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- 重要ポイント4-11
- CDDP を主体とした超選択的動注化学放射線療法はどのような症例に有効と考えられるか?
- 超選択的動注化学放射線療法は,現時点では,他療法との比較を行ったエビデンスレベルの高い報告はみられないが,stage III,IV の進行癌や切除不能癌に対する臓器温存を目指した治療法として期待されている。
CDDP を主体とした超選択的動注化学放射線療法は,Robbins ら1)の報告以来,進行癌における非外科的療法として行われている治療法の1 つである。カテーテル挿入法としては,Seldinger 法を用いた大腿動脈からの方法と浅側頭動脈あるいは後頭動脈経由の主に3 つの方法がある。抗がん薬としてCDDP をhigh-dose で動注し,中和剤としてチオ硫酸ナトリウムを静注する。動注は1 週間ごとに4 週施行し,放射線を2 Gy/日で週5 回,トータル70 Gy を照射するRADPLAT 法とよばれている治療法が代表的なレジメンである1)。適応としては,一般的に動注の比較的行いやすい舌動脈,顔面動脈,顎動脈支配の進行頭頸部癌となるが,複数領域に及ぶ場合はカテーテルの入れ替えや2 経路からのアプローチなどの工夫が必要である2, 3)。
進行頭頸部癌(約1/3 は切除不能)における本療法では,原発巣再発率5.6%,頸部再発率2.6%,遠隔転移率17.9%であり,5 年累積生存率は全生存率で38.8%,補正生存率(cancer-related)で53.6%であり,原発巣・頸部制御率は74.3%であったと報告されている4)。また,頭頸部癌stage IV 症例(口腔癌を含む)に対する多施設共同研究では,原発巣CR 率が85%,頸部CR 率88%,1 年および2 年原発巣・頸部制御率がそれぞれ66%と57%,1 年および2 年無病生存率が62%と46%と非常に高い効果が示されている5)。しかし,Grade 3 以上の有害事象も86%と高率に認められ,治療関連死も3%に認められたことが報告されている3)。さらに,切除不能頭頸部癌stage IV 症例(口腔癌を含む)に対し本療法を施行し,原発巣CR 率91%,頸部CR 率90%,1 年および2 年原発巣・頸部制御率がそれぞれ82%と69%であったとする報告もある。同報告における治療関連死は3.8%とされている6)。また,T3,T4 の頭頸部癌(全30 症例のほとんどが口腔癌)に対し,docetaxel(total 60 mg/m2),CDDP(total 150 mg/m2)による単経路もしくは 2 経路から支配動脈への超選択的動注化学療法と放射線療法60 Gy/6 週により,原発巣CR 率100%,最終局所制御率88.0%,5 年生存率70.2%と非常に良好な結果が得られたという報告もみられる3)。
しかし,本療法は,静注例とのランダム化比較試験で,原発巣・頸部制御率,無病生存率,全生存率のいずれも有意差が認められておらず7),また,外科療法を中心とした標準的な治療法とのランダム化比較試験も行われていないため,優位な治療方法であると断定できないが,口腔癌を含む進行頭頸部癌に対する臓器温存療法としての期待はできるものと考えられる。
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第5 章 頸部転移巣の治療
口腔癌の頸部リンパ節転移の制御は予後を左右する重要な因子である。頸部リンパ節転移に対する治療は外科療法(頸部郭清術),放射線療法,化学療法,あるいはこれらの併用療法があるが,この中でも頸部郭清術は最も重要な位置を占めている。しかし,その術式の選択は施設により異なっているのが現状である1, 2)。
1.頸部リンパ節のレベル分類
頸部リンパ節はその部位により,Level Ⅰ〜Ⅵに分類される。さらにLevel Ⅰ,ⅡおよびⅤはA,B に分けられている3-5)(図1-11)。一般的に口腔癌の領域リンパ節は Level Ⅰ〜Ⅴとされている。
Level Ⅱ:上内頸静脈/上内深頸リンパ節(Level ⅡA:副神経より前方,Level ⅡB:副神経より頭側)
Level Ⅲ:中内頸静脈/中内深頸リンパ節
Level Ⅳ:下内頸静脈/下内深頸リンパ節
Level Ⅴ:副神経リンパ節(Level ⅤA),頸横リンパ節,鎖骨上窩リンパ節(Level ⅤB)
Level Ⅵ:前頸部リンパ節
2.頸部郭清術の基本術式(表1-9)
従来,頸部郭清術は内頸静脈,胸鎖乳突筋,副神経を切除する根治的頸部郭清術(RND)6)が行われてきたが,術後の機能障害が大きい7)。そこで,RND の根治性を損なうことなく,より低侵襲の術式が検討され,根治的頸部郭清術変法(MRND)が行われるようになった8-10)。さらに原発部位とレベル別のリンパ節転移頻度が検討され,口腔癌ではLevel Ⅰ〜Ⅲの転移頻度が高いことが示された10-12)。そのため,治療的頸部郭清術の一部や予防的頸部郭清術においては,肩甲舌骨筋上頸部郭清術(SOHND)13)のような選択的(部分的)頸部郭清術14, 15, 36, 37)が行われるようになっている。
3.頸部郭清術の適応
口腔癌のN0 症例に対して,予防的頸部郭清術を行った場合と後発リンパ節転移に対して救済治療を行った場合では治療成績に差はないという報告や,予防的頸部郭清術を行う方が無病生存率は有意に高かったという報告がある。予防的頸部郭清術式については,SOHND が術後機能障害が少ないことから,これを適用すべきであるという意見が多い。
舌癌ではT1N0 やearly T2N0 症例に対して通常は経過観察が行われる。しかし,T1 やearly T2 症例でも潜在性転移が強く疑われる場合や,潜在性転移率の高いlate T2 以上の症例に対しては予防的頸部郭清術が行われる21)。また,原発巣が口底部にまで及ぶ症例や再建手術を必要とする症例に対しても予防的頸部郭清術が行われる16-20)(重要ポイント5-1)。その術式としては,口腔癌はLevel Ⅰ〜Ⅲに転移する頻度が高いことから,SOHND が選択される。最近では,飛び石転移によるLevel Ⅳへの転移も約16%認められることから,Level Ⅳを含めたESOHND を適用すべきとする意見もある14, 15, 22)。一方で,口腔癌ではLevel ⅡB への頸部リンパ節転移が6%と非常に低いことが報告されたが,Level Ⅱ B の郭清の省略については議論の余地がある38)。T3 症例に対してもSOHND で良いとする意見や21),RND/MRND をすべきであるという意見もある9)。また,T4 症例においてもMRND を勧める意見がある23)。潜在性頸部リンパ節転移に関しては,T2 症例であっても4〜5 mm 以上の深達度などを示す舌癌では潜在性転移の可能性が高いことや24-30),E-cadherin の減弱や浸潤能の評価など潜在性頸部リンパ節転移予測因子の研究が進んでいることから27, 31, 32),これらを参考にする必要がある。
口腔癌の潜在性頸部リンパ節転移の診断におけるセンチネルリンパ節生検の有用性が報告されている33, 34, 39-48)。センチネルリンパ節の同定法では色素法,放射線同位元素法,CT lymphography を用いた方法などが検討され,最近ではPET を用いた報告もされている50)。センチネルリンパ節の検出度はおおむね100%に近い同定がなされている。また,転移検出法として,免疫組織化学的評価法ならびに分子生物学的手法が検討されている。
N1〜3 症例に対する治療的頸部郭清術ではRND/MRND を基本とするが,MRND は温存する臓器と癒着(節外浸潤)を認めないなど,転移の状況を考慮する。また,Level ⅠのN1 症例ではSOHND が選択される場合もある(重要ポイント5-2)。
4.頸部郭清術後の治療法
多発性リンパ節転移例,節外浸潤例などでは,頸部再発や遠隔転移をきたしやすく予後不良例が多いことから35),頸部郭清術後に放射線療法,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用を含む)が行われる。また,遠隔転移を予防するために薬物療法が行われることもある(重要ポイント5-3)。
5.その他の治療法
頸部リンパ節転移に対しては原則として外科療法が行われるが,手術適応のない症例に対しては,放射線療法,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用を含む)が行われる。
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- 重要ポイント5-1
- N0 症例に対する予防的頸部郭清術はどのような症例に適応されるか?
- 予防的頸部郭清術はN0 症例のうち,潜在性頸部リンパ節転移の存在が強く疑われる症例に適応される。また原発巣切除が頸部に及ぶ症例や,再建手術のために頸部の外科療法が行われる症例に適応される。その術式としてはSOHND が汎用される。
潜在性頸部リンパ節転移に対して予防的頸部郭清術を行うか,経過観察を行い後発頸部リンパ節転移を認めた時点で救済治療をするかに関しては,統一した見解が得られていないのが現状である。
予防的頸部郭清術は潜在性頸部リンパ節転移の存在を予測して行う頸部郭清術である。デシジョン・アナリシスでは,潜在性転移率が20%以上なら予防的頸部郭清術を行う意義があると報告されている1)。口腔癌の潜在性転移率は8〜48.2%2-9)と報告に幅があるが,T1N0 症例では潜在性転移率は低いことから経過観察が行われる27, 28)。予防的頸部郭清術と経過観察とのランダム化前向き試験にて, 3 年無病生存率は予防的頸部郭清術群69.5%,経過観察群45.9%で,予防的頸部郭清術群が有意に高かったという報告がある39)。一方,T1N0 およびT2N0 症例の口腔癌では,5 年生存率において経過観察群と予防的頸部郭清群の間に有意差がないなど5, 11, 30, 31)の研究もあり,予防的頸部郭清術の適応に関して統一した結論は得られていない。
しかし,舌癌T1N0 およびT2N0 症例に対して行われた経過観察か予防的頸部郭清術かのランダム化前向き試験の結果,5 年の疾病特異的生存率ではそれぞれ87%と89%と差が少ないため,経過観察を勧める報告がある32)。舌癌ではT1N0 およびT2N0 症例でも潜在性頸部リンパ節転移率が26.8〜48.2%と高いことから,late T2 以上の症例に対しては予防的頸部郭清術を施行すべきであるという報告が多い6)。本邦における多施設共同研究では,N0 症例の後発頸部リンパ節転移はT1 で19%,early T2 で33%であったが救済治療が行い得たこと,late T2N0 症例においては頸部転移死が23%と高率であったことから,late T2N0 およびT3N0 症例においては予防的頸部郭清術が勧められている12, 33)。またその際,late T2 症例では腫瘍の厚さ6 mm 以上を基準とする案もある33)。予防的頸部郭清術を有効な治療にするには,潜在性頸部リンパ節転移の高危険群を抽出することが重要である。初期口腔癌(T1,T2)の頸部リンパ節転移予測因子は舌癌での検討が多いが,腫瘍の厚さが4〜5 mm を超えるものを高危険群とする報告が多い7, 13-17, 34, 35)。さらに予測因子としては,組織学的悪性度14, 17),浸潤様式14-17),分化度,脈管侵襲や神経浸潤14),E-cadherin の低発現15),CD105,VEGF の発現18)などが報告されている。また,これらの予測因子を加味した治療体系もとられるようになってきている15, 17, 36)。今後,画像診断精度の向上,センチネルリンパ節生検の応用,転移予測因子の臨床データの集積と分析が必要と思われる。
対側に転移がない症例における対側頸部郭清術に関しては,患側にリンパ節転移を認めるT3,T4 症例の進行口腔癌で原発巣が正中に近接している場合には,対側の頸部郭清をすべきという意見もある19)。
術式としては,口腔癌におけるリンパ節転移の多くはLevel Ⅰ〜Ⅲに認められ20),またN0 症例ではSOHND とMRND との間には5 年生存率, 再発率に差がないことから21, 22), 現在ではSOHND が口腔癌の予防的頸部郭清術として広く用いられている6, 22, 23, 37, 38)。しかし,Level Ⅳを含むESOHND が望ましいという意見もあり24-26),評価が分かれる。
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- 重要ポイント5-2
- Level Ⅰに転移した口腔癌N1 症例に対して,SOHNDは応用できるか?
- SOHND は,症例を選択すれば,Level Ⅰに転移したN1 症例に対しても適応しうるが,さらに検討が必要である。
胸鎖乳突筋,内頸静脈,副神経を切除するRND は術後の機能障害が大きいことから,根治性を保ちつつ,より低侵襲の術式の検討がなされてきた。口腔癌のレベル別転移頻度や,N0 症例に対する頸部郭清術式別の生存率,再発率の検討から,現在,SOHND は口腔癌の予防的頸部郭清術として広く用いられている1-5)。同時に,治療的頸部郭清術としてのSOHND についても検討されている2, 6-17)。
N1 症例に対するSOHND については,その頸部再発率がMRND と比較して大差がないことから,N1 症例に対してもSOHND を適用して良いという報告もあるが,適応症例の選択基準等を含めた前向きランダム化試験による検討が必要とされている7-10, 15-18, 25, 26)。なお,N1 症例に対するSOHND 後には放射線療法の必要性を示す報告が多い7, 8, 10, 11)。一方,根治性からN1 症例でもLevelⅠ〜Ⅳ27-30)やLevelⅠ〜Ⅴまで郭清すべきであるという報告も多い6, 13, 14, 19, 20, 30, 31)。
適応症例の選択基準に関しては,原発巣の大きさではT1 ならびにT2,転移リンパ節の大きさでは3 cm 以下,転移部位ではLevelⅠが提唱されている7, 9, 21)。本邦における舌癌の多施設共同研究からは,any TN1 症例にSOHND が勧められている18, 32)。また,組織学的悪性度や浸潤様式なども考慮する必要があるとされている22, 23)。
一方,舌癌ではN0 症例であっても約16%にLevel ⅢまたはⅣへの飛び石転移が認められること24)や,口腔癌のN1 とN2b 症例に対して行った治療的SOHND 群の頸部再発率は,N0 症例に対して行ったSOHND 群と比較して6.3 倍も頸部再発率が高いとの報告もある21)。
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- 重要ポイント5-3
- 頸部郭清術による手術標本の病理組織学的検索では,どのような転移様相の場合に予後不良となるか?
- 病理組織学的検索において,節外浸潤,多発性頸部リンパ節転移,複数レベル(多領域)のリンパ節転移,遠位レベルの転移がみられる場合には予後不良となる。
頸部リンパ節転移の制御は,原発巣制御とともに口腔癌の予後を左右する因子の1 つとして重要である1)。臨床病態と病理組織学的検索の積み重ねにより,頸部リンパ節転移の様相が予後に深く関係することが指摘されている。
頸部リンパ節転移は口腔癌の治療成績を左右する因子の1 つであり,N(+)症例は予後が不良であり,その転移様相により予後に差があるとされている2)。
転移レベルに関して,舌癌の頸部再発には転移レベルが深く関与し,Level ⅣおよびⅤへの転移が予後不良の最大の因子であると報告され3),転移レベルの重要性が報告されている4)。
複数レベル(多領域)の転移については,口腔癌では3 レベル(領域)以上に転移が及んでいる場合には,節外浸潤の有無にかかわらず頸部再発の危険性が高いと報告されている1)。また,対側へのリンパ節転移は予後不良の一因であるとする報告もある5)。
また,節外浸潤は予後不良因子の1 つであると指摘されている6, 7)。
転移リンパ節の個数に関しては,3 個以上になると予後が不良になると報告されている8, 9)。また,転移度(転移リンパ節数/検索したリンパ節数)も予後に相関すると報告されている14)。
こうしたなか,早期舌癌における後発転移症例では,転移リンパ節の個数,レベル数,最遠位レベルが重要であり,また,リンパ節被膜の破壊程度は予後と関係するが,転移巣の大きさとは関係しないとの報告もある10)。
なお,頭頸部癌の術後再発危険因子として,切除断端陽性,節外浸潤リンパ節転移,2 個以上の多発性頸部リンパ節転移が挙げられ,3 因子のいずれかを有する症例は予後が不良との報告もある11-13)。
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第6 章 術前・術後療法
1.術前療法
術前療法の目的は,外科療法の根治性を高めるとともに,潜在性微小転移を根絶することにより,生存率の改善を図ることである。また,腫瘍の縮小により口腔の機能温存を期待することもある。
術前療法については,導入化学療法として主に切除可能もしくは切除不能喉頭癌における喉頭温存と生存率の向上を目的に行われてきており,喉頭温存については一定の有用性が報告されているものの,生存率向上への上乗せ効果は示されていないのが現状である1)。また,口腔癌については,進行例において術前化学療法もしくは術前化学放射線療法として検討されている。術前化学療法では,N2 症例に対して生存率を改善する可能性が示唆されている報告もあるが2),全症例では有意差は認められておらず,他の報告と同様に生存率の向上には至っていない3)。また,術前化学放射療法については,外科療法単独と比較し,局所制御率および3 年生存率に優位性が示され4),その他の報告でもその有用性が示唆されているものもあるが5),大規模なランダム化比較試験はなされておらず,その有効性は明らかではない。また,本ガイドラインPart 2 のGRADE アプローチによる推奨で示しているように,早期症例ならびに切除可能,切除不能進行口腔癌一次症例における術前化学療法については,「行わないことを弱く推奨」している(Part2「推奨と根拠」参照)。そのため,術前療法としての化学療法および化学放射線療法についての意義は現時点では明らかではなく,今回の改訂においては口腔癌治療アルゴリズムから削除することとした(重要ポイント6-1)。
2.術後療法
術後療法の目的は術後の再発を予防するとともに,潜在性転移を根絶し,生存率の改善を図ることである。主に術後の再発高リスク症例,すなわち切除断端陽性例や節外浸潤を有する症例,多発リンパ節転移例に対して通常施行される。近年,高い原発巣・頸部制御効果が示されている化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物療法を含む)を術後療法として用いることにより,原発巣・頸部制御率および生存率の改善が期待されている。
a.薬物療法
術後化学療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物療法を含む)は根治的外科療法による原発巣・頸部制御の可能性を高めるばかりではなく,遠隔転移の制御を目的として用いられる。しかしながら,進行頭頸部癌を対象としたランダム化比較試験からは,遠隔転移率の低下は認められるものの,生存率の改善への寄与を示すエビデンスは得られていない6)。
b.放射線療法
術後放射線療法は原発巣・頸部制御率の改善を目的に施行されているが,制御率は35〜70%で効果には差がある。切除断端陰性症例における微小な残存癌細胞の根絶には50 Gy が必要で,断端陽性などの術後再発高リスク症例においては,より高線量の放射線が必要なことが示されている7)。しかし,63 Gy 以上の線量増加は原発巣・頸部制御率の改善に寄与しないことも示されている8)。また,加速分割照射法も術後放射線療法として試みられているが,ランダム化比較試験でも結果は一定ではない9, 10)。
c.化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物療法を含む)
進行頭頸部癌に対する術後化学療法の効果は,遠隔転移率の低下への寄与は認められたものの,生存率の改善には至っていない。術後放射線療法群と化学放射線療法群(継続併用)の大規模ランダム化比較試験でも,化学放射線療法群では遠隔転移率の低下がみられたものの,生存率の改善には至っていない11)。しかし,サブグループ解析において,術後再発高リスク症例(被膜外浸潤,切除断端陽性,多発リンパ節転移,脈管および神経浸潤)では,化学療法の併用により原発巣・頸部制御率および生存率の改善が認められたと報告されている。また,その後の大規模ランダム化比較試験によって,術後再発高リスク症例における化学放射線療法の原発巣・頸部制御率および生存率の改善への寄与が示されている12, 13)(重要ポイント6-2)。
以上のように,術後再発高リスク症例に対し,化学放射線療法は標準的治療とされるが,有害事象の発生頻度や程度が高いことを考慮する必要がある。
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- 重要ポイント6-1
- 口腔癌に対する術前療法は,原発巣・頸部制御率および生存率を改善するか?
- 術前療法の有用性を示すエビデンスレベルの高い報告はなく,特に術前化学療法は行わないのが標準的である。
進行頭頸部癌(口腔癌を含む)に対する外科療法と術後照射による5 年生存率は40%に満たないものであった1, 2)。このことから,原発巣・頸部制御率ならびに生存率の改善を目的とした術前療法が試みられるようになった。cisplatin(CDDP)と 5-fluorouracil(5-FU)の複合化学療法(PF 療法)を中心とした進行頭頸部癌に対する大規模比較試験の結果は,原発巣に対する高い抗腫瘍効果および術後の遠隔転移率の低下はみられるものの,原発巣・頸部制御率ならびに生存率の改善は示されなかった3, 4)。また,口腔癌のみを対象とした術前化学療法の効果に関するランダム化比較試験5)では,頭頸部癌を対象とした先行研究と同様に,生存率の改善は示されなかった。
化学放射線療法については,切除不能進行頭頸部癌の治療や臓器温存療法として行われ一定の効果が得られているが6-9),これを術前療法として用いる試みもなされるようになった。DÖSAK による口腔癌および中咽頭癌を対象とした中規模ランダム化比較試験では,術前化学放射線療法群は外科療法単独群に比べて,原発巣・頸部再発制御率ならびに生存率ともに有意な改善が示されている10)。また,後ろ向き検討ではあるものの,切除可能口腔癌に限った検討においても,術前化学放射線療法群は,術後化学放射線療法群ならびに外科療法単独群に比べ,5 年生存率が良好であったことが報告されている12, 13)。本邦における報告11, 14)でも,口腔癌に対する術前化学放射線療法と根治的手術により,高い原発巣・頸部制御率と生存率が得られたことが示されている。
しかし,ランダム化比較試験などによる十分なエビデンスは示されていないため, 術前療法としての化学療法および化学放射線療法についての意義は現時点では明確ではなく, 本ガイドラインPart 2 のGRADE アプローチによる推奨では,術前化学療法についてはむしろ「行わないことを弱く推奨」としており, 今回の改訂では口腔癌治療アルゴリズムから削除することとした。
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- 重要ポイント6-2
- 術後化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物療法を含む)はどのような症例に施行すべきか?
- 口腔癌術後再発高リスク症例において,術後化学放射線療法は原発巣・頸部制御率および生存率ともに向上させることが示されている。
局所進行頭頸部癌(口腔癌を20〜28%含む)の根治切除した後の再発高リスク症例に対する術後療法としては,放射線療法単独に比べ,化学放射線療法(CDDP 100 mg/m2,3 週ごと,3 コース)が原発巣・頸部制御率,無増悪生存率,無再発生存率のいずれにおいても有意に優れていることが報告されている1, 2)。また,全生存率についても化学放射線療法が有意に優れていたことが示されており3),術後再発高リスク症例に対する標準的な術後療法は,CDDP(CDDP 100 mg/m2,3 週ごと,3 コース)と放射線療法(60〜66 Gy/30〜33 Fr)との併用であることが示されているが,治療に伴う有害事象も強く現れることを考慮する必要がある1, 2)。顕微鏡的切除断端陽性と節外浸潤は再発高リスク因子とされ,術後にCDDP を用いた化学放射線療法を行うことが勧められているが,その他のリスク因子である複数個の頸部リンパ節転移,神経周囲浸潤,静脈侵襲,リンパ管侵襲などでは,明らかな有用性は示されなかった3)。そのため,特に顕微鏡的切除断端陽性と節外浸潤を再発高リスク因子と規定し,術後にCDDP を用いた化学放射線療法が施行され, その他のリスク因子のみの場合は,術後放射線療法単独が勧められる。また,いずれのリスク因子も認められない場合は再発低リスク症例とし,術後療法を行うことなく,通常の経過観察を行うことになる。
術後の化学放射線療法の開始時期と総治療期間は,予後および原発巣・頸部制御率と関連することも明らかとなっており,化学放射線療法は術後6 週以内に開始し,中断なく治療が完遂されることが望ましいとされている4)。さらに,手術施行から術後放射線療法終了までの総治療期間との関連では,外科療法後から放射線療法終了までの期間が10 週以下では,5 年原発巣・頸部制御率が76%,5 年生存率が48%であったが,11〜13 週ではそれぞれ62%,27%と低下し,14 週以上では,それぞれ38%,25%と有意に低下していたことが示されており,総治療期間との関連性も報告されている5)。
Cetuximab(Cmab)を併用した化学放射線療法では,頭頸部癌(口腔癌を47.2%含む)の術後再発高リスク症例(断端陽性,節外浸潤,複数個頸部リンパ節転移と規定)に対して,CDDP を用いた化学放射線療法(CDDP 100 mg/m2,3 週ごとと放射線58〜66 Gy)とweekly CDDP(30 mg/m2)+Cmabの併用による化学放射線療法,weekly docetaxe(l 15 mg/m2)+Cmabの併用による化学放射線療法との比較試験が報告されている(RTOG0234)。それによると,2 年無再発生存率,全生存率ともにCmab を加えたレジメンの方が有意に良好であり,特にdocetaxel とCmab を併用した化学放射線療法により良好な結果が示され,遠隔転移が有意に少なかったことが示されている6)。これについては,phase Ⅱ / Ⅲの臨床試験が行われている(RTOG1216)。
現在,CDDP を用いた化学放射線療法は世界標準であり,日本人にも認容性があることは確認されており7),安易な減量や延期はすべきではない。しかし,これらの報告は,PS が0 もしくは1 であり,腎機能や肝機能などに異常がなく,骨髄抑制もないなど,全身状態が良好な患者を対象としたものであるため,この基準を満たさないものについては減量や分割投与などを考慮せざるを得ない場合もある。すなわち,CDDP の1 回投与量を80 mg/m2 に減量したり,20 mg/m2×4 日のように分割したり,40 mg/m2 を毎週投与するなどの方法となるが,その適応は慎重に考えるべきである。放射線療法との併用において,CDDP の総投与量が200 mg/m2 未満の場合は,200 mg/m2 以上の場合と比較して有意に全生存率が劣ることも示されている8)。そのため,200 mg/m2 以上の投与が見込めない場合はCDDP を適応とせず,放射線療法単独を選択するなどの配慮が実際の臨床では必要となる。
いずれにせよ,どのような治療方針のもとで,どの治療法を選択するのかについては,その治療法のメリットとデメリットを患者と家族に十分に説明し,インフォームドコンセントを得たうえで決定されなければならない。また,使用する新規化学療法のレジメンについては,各施設の医療倫理委員会の承認のもと施行されなければならない。
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第7 章 支持療法とリハビリテーション
口腔癌では,運動および感覚機能の障害,口腔乾燥を主症状とする唾液分泌減少,整容面の変化,それらによってもたらされる心理的障害やコミュニケーション障害など,治療後に起こり得る障害は多岐にわたる1-4, 7)。障害は,原発巣や転移巣の治療に直接関連する外科的侵襲や放射線療法の侵襲によるもの,化学療法の有害事象としての骨髄抑制・悪心を主とする消化器症状・脱毛を主とする皮膚症状,再建術のドナー部位における運動および感覚機能の障害・審美的障害,さらには治療を受ける患者側の局所および全身状態,生理的年齢,精神的状態,介助および家庭環境,経済状況などが大きな修飾因子となり,治療後には包括的アセスメントと全人的対応が求められる。
例えば,口腔癌の進展度,治療範囲,歯の残存状態,生理的年齢,患者の意欲などによって術後機能は大きく影響を受ける。口唇閉鎖能,液体や食塊の保持および搬送能が障害されると嚥下障害が生じ,嚥下機能と同じ運動器官が司る構音機能も障害され,構音障害が生じる。咀嚼機能においては,残存歯の数と状態が術後機能回復のキーとなり,臼歯での咬合支持と顎堤が良好であれば安定した顎補綴装置の作製が可能となる12)。切除範囲の具体例を挙げると,舌半側を越える切除や口底の広範囲切除,舌骨上筋群を含めた下顎骨の半側以上の区域切除,軟口蓋に及ぶ広範囲の口蓋欠損の場合には,口腔機能の回復に難渋する。さらに,顎堤の状態が不良で残存歯数が少ないか無歯顎の場合には,機能回復は一層困難なものとなる。頸部郭清術を行った場合には,術式によっては肩の旋回や上肢の挙上障害が生じることがある。以前は術後の機能回復は患者自身に委ねられていたが,現在では摂食嚥下リハビリテーションと同様に,十分な指導のもとにさまざまな術後の機能訓練が行われるようになっている17, 18, 41-43)。一方,放射線療法では,粘膜炎,口腔乾燥,う蝕および歯周病の管理などの支持療法が重要である5, 33, 45)。
機能回復は個人差が大きく,意欲のある患者では,咬合の回復が十分でなくても経口摂取が可能な場合がある12)。治療後の障害をより軽度にとどめるには,治療開始前から口腔ケアおよび訓練を一連の治療として計画することが必要である1, 7-10, 26, 27)。
機能障害に対しては,現状の記録,障害の予測,治療および評価を繰り返し行う。治療には歯科医師や医師のみならず,看護師,歯科衛生士,歯科技工士,薬剤師,理学療法士,言語聴覚士,心理療法士,管理栄養士,社会福祉士,臨床検査技師,診療放射線技師などの多職種参加によるチーム医療が望ましい1, 11, 12, 19, 23)。口腔癌の摂食嚥下障害に対するリハビリテーションは,従前は患者と医療者の個々の努力に頼るところが大きかったが17, 18),最近では系統的な訓練が有効であることが報告されている27, 41, 43, 44)。
1. 治療開始前からの摂食嚥下リハビリテーションおよび治療後の上肢挙上訓練の導入(重要ポイント7-1)
患者は,治療前の段階では治療後に生じる機能障害について正確に把握できていないことが多い。外科療法の場合には術前から術後に生じる機能障害を丁寧に説明し18),十分な理解を得て,精神的ケアを行った上で術前から摂食嚥下機能訓練を導入することにより,術後の機能障害を軽減させることが可能となる。具体的には舌の運動訓練,喉頭挙上訓練,呼吸訓練,排痰訓練などを術前から行うことが推奨されている8, 10, 17, 18, 27, 43, 44)。術後には体力の消耗とともに,創部の腫脹・疼痛・違和感が生じ,運動機能と感覚機能は低下する。そのような状態になってから初めて説明し,指導することは非効率的であることは明らかであり,術前訓練の導入が効率化に繋がることは容易に想像できる。一方,化学放射線療法の場合には,粘膜炎とそれに伴う疼痛や味覚の変化が早期に出現し,さらに唾液性状の変化と口腔乾燥の出現,晩発性に瘢痕形成や神経障害により機能障害と感覚障害が生じることを治療前に丁寧に説明し,患者に十分理解してもらう必要がある33)。治療後に疼痛以外の原因で摂食嚥下障害が生じる場合には,速やかに摂食嚥下機能訓練を施行する。特に,外科療法と化学放射線療法を併用した場合には重度の瘢痕拘縮が生じ,それに伴って極めて重度の摂食嚥下障害が出現することがある。特に瘢痕拘縮が食道入口部に生じた場合は食塊の通過障害が生じ,重度の場合には胃管を挿入することも不可能となり,経皮内視鏡的胃瘻造設術の施行が必要になることもある。瘢痕拘縮を予防または軽減するためには,放射線照射開始時よりストレッチ運動と手指による伸長マッサージを行う。運動制限が生じ始めた場合には,いわゆる「痛気持ち好い(イタキモチイイ)」感覚が生じる強度でストレッチを長めにそして頻回に行う。また,頸部郭清術後に生じる肩の旋回や上肢の挙上障害においては,患者自身による障害予防と回復訓練が不十分である場合には,理学療法士によるリハビリテーションを行う16)。いずれの場合も,術前に施術者側が説明し,患者の理解を得たと思った内容が,家族も含めた患者側が実際に理解した内容と乖離していることも少なくないため,施術者側は患者側が理解した内容について確認する作業を怠ってはならない。
2.治療開始時からの口腔管理(重要ポイント7-2)
口腔管理には,口腔内の清潔保持,口腔内の刺激による機能の賦活,廃用性萎縮の予防などの役割がある。治療開始前から口腔内を清潔に保つことは,創部および全身の感染症や誤嚥性肺炎の予防22, 24, 25)に有用であり,治療開始時から口腔ケアを開始することは,患者に口腔内の清潔を保つことを意識づけ,合併症のリスクを減少させる1, 13-15, 22, 24, 30, 32, 47)。特に,化学放射線療法においては,全身的な副作用に加えて,口腔粘膜炎も重篤になる傾向がある。歯の問題も含めた口腔内合併症に対しては,化学放射線療法を完遂させるためにも配慮が必要であり,特に粘膜炎や疼痛に対する支持療法が重要である33, 45, 46)。十分な口腔管理を行うためには,チーム医療の導入19, 23)や急性期病院と地域歯科医療機関との連携体制なども求められている53, 54)。
3.治療後のQOL 評価(重要ポイント7-3)
患者のQOL の評価を行うことは,口腔癌治療に限らず,すべての医療行為を行う上で極めて重要である34)。リハビリテーションのゴール設定を行う上でも,治療前に患者のQOL を評価することは不可欠である。リハビリテーションの効果を把握するためにQOL の評価を繰り返し行い,QOL の改善が得られない場合には,頻度や手法も含めてリハビリテーションを見直す必要がある8, 10, 18, 20, 28, 34, 43, 48-50)。
4.術後の摂食嚥下リハビリテーションと舌接触補助床(重要ポイント7-4)
術後の摂食嚥下リハビリテーションを効率的に行うためには,術後の障害の原因と程度を的確に把握し,患部の状態,全身状態,体力,肺炎などの合併症のリスク,リハビリテーションに対する意欲や要望などを考慮した上で,適切なリハビリテーション法を選択する必要がある。
摂食嚥下リハビリテーションを開始するに先立ち,患者の栄養評価を行い,栄養が不足している場合は栄養投与量を増やし,摂食嚥下リハビリテーションと同時進行で改善を図る。摂食嚥下リハビリテーションでは排痰・排出訓練は必須で,嚥下機能を評価しながら,可動域拡大訓練,筋力強化訓練,巧緻性獲得訓練,嚥下反射誘発訓練などの飲食物を用いない間接訓練を症例に応じて選択し,実行させる。続いて,訓練効果,誤嚥の程度,誤嚥物の排出能,咳嗽反射の有無などを評価しながら飲食物を用いた直接的訓練を取り入れる10, 18, 21)。直接訓練では,嚥下調整食,姿勢調節法,嚥下機能改善装置などのいわゆる代償法を症例に応じて適用する6, 35, 52)。なお,直接訓練開始後も間接訓練は継続して行う。
嚥下機能改善装置のうち,舌接触補助床(palatal augmentation prosthesis:PAP)は上顎に装着する口蓋部を肥厚させた形態の装置で,舌癌,口底癌などの切除術や再建術後の舌運動障害患者に用いられるほか,脳血管障害,神経筋疾患に起因する舌運動障害患者などに適用される35, 51, 52)。舌接触補助床を装着することにより,食塊の保持と送り込みが容易になり,嚥下機能が改善する。また,舌と舌接触補助床の接触により,舌運動が賦活化することもある29, 31)。
5.放射線療法と抜歯(重要ポイント7-5)
根治的放射線療法の後に照射野に含まれた歯の抜去を行うことは,放射線性骨壊死の危険因子であるために禁忌とされていた36-38)。このことは現在でも変わらない。放射線療法前に予防的に抜歯が行われることがあるが,抜歯から放射線療法までに設けるべき期間に一定の見解はなく,予防的に抜歯をしても骨壊死を生じることがある。そのため,抜歯を回避するためにも,う蝕および歯周病に対する管理が重要である36-38)。しかし,抜歯が必要になった場合には,放射線療法の線量と範囲,抜歯部位,抜歯術式を考慮し,場合によっては高気圧酸素治療などの併用を検討する36-40)。
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- 重要ポイント7-1
- 摂食嚥下リハビリテーションの導入は,術後の機能の向上に有用か?
- 口腔癌に対して拡大切除を行うと,術後の機能障害のために社会復帰が遅れる場合も少なくない。近年,口腔癌切除患者に対する口腔機能リハビリテーションが導入されるようになり,その有効性が報告されている。
口腔癌に対する外科療法が選択され,原発巣の拡大切除と再建術が予定された場合,術後の機能障害についての正確な把握が困難なために,患者が精神的に不安に陥りやすいといわれている。また,外科療法の進歩により治療成績が向上して長期生存が可能となってきているが,術後に生じる摂食嚥下障害によってQOL が大きく損なわれる場合もみられる1-4)。近年,口腔癌切除後の機能回復のためのリハビリテーションが多くの施設で精力的に行われ,その有効性が報告されている1-10)。従来,口腔癌の治療は主に担当医を中心に行われてきたが,現在は外科療法担当医,放射線療法医,腫瘍内科医,リハビリテーション医,補綴担当歯科医,看護師,歯科衛生士,言語聴覚士,歯科技工士,臨床検査技師,管理栄養士,社会福祉士等を含めた多職種によるチーム医療が行われ,その有効性が認められている6-9)。一方,そのプロトコルはいまだ確立されたものとはいえず,各施設で独自に行われているのが実状である。機能障害の評価を繰り返して行い,適切な訓練によって術後機能の早期回復を図ることが,在院日数の短縮と社会復帰への近道であることに疑問の余地はなく,系統的かつ適切な摂食嚥下リハビリテーションのプロトコルの作成が待たれる11, 12)。
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- 重要ポイント7-2
- 口腔癌治療における口腔管理は合併症の予防に有用か?
- 口腔癌に対する外科療法,放射線療法,薬物療法を受ける患者に対して,治療前から治療後に至るまで口腔管理を積極的に行うことにより,急性期のみならず晩期においても合併症の発生を減少させることができる。
口腔癌の外科療法は,口腔内常在菌が存在するため,術野が細菌に曝露されるという特徴がある。術後創感染や肺炎に対して,手術術式の工夫や合併症の有無,腫瘍病変部の細菌学的検索や抗菌薬の選択などの検討が行われてきたが,術後感染を著明に減少させることはできなかった1-3)。また,化学放射線療法を中断なく完遂するためには,口腔管理を含めた支持療法が重要であるとされている7, 8)。
口腔機能を含めた管理が肺炎の発症率を低下させるとの報告がなされ,口腔管理の重要性が認識されるようになった4, 9)。消化器悪性腫瘍の外科療法や血液疾患の薬物療法および造血幹細胞移植においても,同様に口腔管理の有用性が認められている10, 18, 19, 26, 28)。また,薬物療法や放射線療法に伴う口内炎に対しては,口腔内の清潔保持,局所麻酔薬の外用,麻薬性鎮痛薬を含めた鎮痛薬投与が行われてきたが,近年,粘膜炎表層を局所的に被覆・保護することにより疼痛緩和を行う,ハイドロゲル創傷被覆・保護剤(商品名:エピシル)が開発された。すでにその有効性が報告されており31),本邦でも2018 年から保険適用が可能となった。
口腔癌を含めた頭頸部癌に対する切除・再建手術や化学放射線療法では,積極的に口腔管理を行うことにより,感染の予防や経口摂取開始までの期間の短縮,晩期合併症の減少が報告されている5-8, 11-15, 20, 21, 24, 25, 29)。口腔管理は2012 年より周術期口腔機能管理として保険収載され,がん患者のみならず,心臓血管外科や整形外科を含めた全身麻酔患者に対しても行われ,その有効性が示されている32)。口腔癌を含めたがん患者の口腔管理は,主に治療が行われる急性期病院で行われていたが,2014 年度から地域歯科医療機関に向けた「全国共通がん医科歯科連携講習会」が各地で開催されている22)。がん診療連携登録歯科医はインターネット上で公開され,がん患者が地域歯科医療機関で口腔機能管理を受けられる体制が整備されてきている23, 27)。また,口腔癌の治療を円滑に進めるために,歯科衛生士を含めた多職種による包括的なチーム医療も望まれている16, 17, 30)。
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- 重要ポイント7-3
- 口腔癌治療後のQOL 評価にはどのような方法があるか?
- 口腔癌の治療後に後遺する機能障害は多岐に渡り,QOL に大きな影響を与える。口腔癌を含む頭頸部癌の疾患特異性を考慮したQOL を評価するスケールとしては,UW-QOL scale,EORTC QLQ-C30 and H&N35,FACT,PSS,MDASI-HN などがある。
外科療法の進歩によって再建術は進歩したが,重篤な機能障害が後遺する場合も少なくない。また,放射線療法においても,口腔粘膜湿潤度の低下に伴う機能障害や感覚障害,ニューロパチーや瘢痕拘縮に起因する感覚障害や運動障害が長期にわたって後遺することがしばしばある。他の部位の癌治療後と比べ,口腔癌治療後に出現する機能障害は,生命維持に直結する呼吸機能の障害や摂食嚥下機能の障害,高次脳機能に関連する言語機能の障害さらに整容面の劣化などと多岐にわたり,QOL に大きな影響を与える1-12)。
口腔癌患者においては外科療法後の顔貌の変化,摂食嚥下機能や言語機能の障害,放射線療法後の口腔乾燥・味覚障害・ニューロパチー・瘢痕拘縮などにより頭頸部領域の後遺症にとどまらず,心理面や社会生活も含めて患者のQOL は大きく影響を受ける。術後の障害を評価することは以前から行われてきたが,近年,治療後のQOL の維持も重要な治療目標と認められるようになり,口腔癌を含む頭頸部癌の疾患特異性を考慮したQOL を評価するスケールが次々と開発されており1-12),UW-QOL scale 5, 8, 10, 13),EORTC QLQ-C30 and H&N35 1, 2, 4-7),FACT 3, 5, 11),PSS 14),MDASI-HN 12)などがある。QOL 評価には医療者が評価する方法と患者自身が評価する方法があるが,患者自身によって記入される調査票を用いる方が望ましいとされている15, 16)。我が国でも,アンケート調査を含め,嚥下,構音,咀嚼機能全般を含めたQOL に関する報告が増えつつある10, 17)。QOL は患者の年齢,術前の状態,治療方法,併用療法,術後経過などが複雑に影響し,その評価結果を治療法の改善に結びつけていくことが次のステップとして求められている。
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- 重要ポイント7-4
- 舌接触補助床は術後の機能改善に有用か?
- 舌口底部切除後に舌の容量が減少した場合や舌の可動性が大きく障害された場合には,PAP を用いて口腔容積を減少させることにより,構音機能や摂食嚥下機能の回復が期待できる。術後の機能訓練や口腔ケアに加えて,このPAP による歯科補綴的アプローチが機能改善に貢献することがある。
舌口底部癌の外科療法後に残存舌の容量が減少したり,舌の可動性が制限されたりする場合には,舌が口蓋に接触しないために構音や口腔期の嚥下機能が障害されることがある。このような場合,舌と口蓋の間の空隙をレジンによって補填する装置をPAP といい,この装置を用いたリハビリテーションが,構音機能や嚥下機能の回復に有用であることが報告されている1-8)。PAP は舌や再建皮弁と口蓋との接触を代償するとともに,機能訓練により舌の機能を賦活化する効果もあり9),脳血管疾患患者にも応用されている5, 6)。PAP は上顎に装着される補綴装置であるが,無歯顎でも装着が可能であり,口腔内の条件を比較的選ばないのが利点である。PAP は,歯科医師や言語聴覚士が構音や嚥下の状態を確認しながら,歯科医師が作製する10)。PAP は訓練が開始される術後早期からの適用が望ましいとされている。PAP の効果は,年齢,社会復帰への意欲,コミュニケーションの必要度などにより影響を受けるとされている3, 4)。一方,PAP の問題点としては装着による違和感,味覚低下,唾液分泌の亢進などが挙げられている。舌の前突機能の低下や口裂の閉鎖不全がみられる場合には唾液が貯留し,流涎が問題となることがある11)。「顎顔面補綴診療ガイドライン2009 年度版」5)と「摂食・嚥下障害,構音障害に対する舌接触補助床(PAP)の診療ガイドライン」6)が既に公表されており,臨床の現場で活用されている。また,中空型PAP を用い,違和感を軽減させた報告もある。
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- 重要ポイント7-5
- 放射線照射野内の抜歯は避けるべきか?
- 放射線性骨壊死(以下,骨壊死)は,抜歯を契機に発症することが多いために危険因子とされており,原則的には禁忌である。しかし,実際には,抜歯が避けられない場合がある1)。
放射線療法後に照射野内の抜歯を行うと骨壊死が生じることが知られており3, 4),長期的に予後不良が予測される歯が存在した場合,予防的に放射線療法前に抜歯が行われてきたが,それでも骨壊死を回避できないこともある5, 13, 16)。抜歯から放射線療法までに設けるべき期間に一定の見解はないが,2 週間前に終わらせておくことが勧められている14)。しかし,放射線療法が終了後に抜歯が避けられないこともある。放射線療法後の抜歯は原則的には禁忌であるが,骨壊死の研究より,最近では放射線療法の線量と範囲,抜歯部位,抜歯術式,併用する治療を考慮することにより,放射線療法後の抜歯が必ずしも禁忌ではないとされている2)。口腔癌の放射線療法後に抜歯を行う場合,60 Gy 以上の照射6)および下顎臼歯の抜歯の方が骨壊死の発症率が高いとされている7)。骨壊死は,いったん発症すると難治性であるため,抗菌薬の投与8),抜歯創の完全閉鎖9),高気圧酸素治療の併用2, 3, 17)など,抜歯の施行にあたっては十分な配慮が望まれる。また,骨壊死は外傷性潰瘍からの感染で生じることもある。
骨壊死を予防するためには,抜歯を回避することが重要と考えられるが,骨壊死のリスクは何年経過しても変わらないため,抜歯に至らせないための歯周病やう蝕の歯科的管理が必要である3, 10, 11)。
放射線療法の進歩は著しく,固定照射法である対向2 門や直向2 門と比較して,三次元原体照射,さらに強度変調照射法(intensity modulated radiation therapy:IMRT)などの導入により顎骨の線量が減少してくると,放射線療法後の抜歯適応は今までと変わってくる可能性が考えられる12)。三次元原体照射とIMRT とを比較した後向き研究では,放射線性骨壊死の発生率には差が認められなかったという報告があり15),今後のさらなる研究が必要である。
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第8 章 治療後の経過観察
治療後の経過観察の目的は,原発巣再発,頸部再発および後発転移,遠隔転移,異時性重複癌などをできるだけ早期に発見し,速やかに適切な治療をすることにある。治療成績を向上させ,癌を治癒に導くためには,初回の治療法が最も重要であるが,術後の経過観察も同じくらいに重要である。定期的な経過観察は,治療成績の向上だけでなく,経済的効果や患者教育の観点からも重要とする報告がある1)。術後の経過観察期間(重要ポイント8-1)については,原発巣再発あるいは頸部再発・後発転移を考慮した場合,最低5 年間は必要であるという報告が多い2, 3)。また一般に,癌の治療成績は5 年生存率に基づいて判断されることから,少なくとも術後5 年までは経過観察を慎重に行うべきである。治療後の経過観察においては,原発巣,頸部,遠隔臓器などに対して注意深い診察と超音波検査(US)や造影CT,PET などの各種モダリティを用いた検査の実施(重要ポイント8-2)が必要である。
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- 重要ポイント8-1
- 口腔癌一次治療後に必要な経過観察の間隔と期間は?
- 口腔癌一次治療後の経過観察を行う場合,間隔としては,治療後1 年間は最低月1 回(可能であれば月2 回),1〜2 年では月1 回,2〜3 年では2 か月に1回,3〜4 年では3 か月に1 回,4〜5 年では4 か月に1 回,5 年以降は個々の症例に応じて6 か月に1 回程度が勧められる。
口腔癌一次治療後の経過観察については,国際的に統一した見解はない。これは,国によって医療制度や施策が異なり,さらに根拠となるデータが十分でないためである。National Comprehensive Cancer Network (NCCN)ガイドラインでは,最初の1 年は1〜3 か月に1 回,1〜2 年では2〜6 か月に1 回,2〜5 年は4〜8 か月に1 回,5 年以降は1 年に1 回の経過観察を推奨している1)。米国やカナダのNational board では,NCCN ガイドラインに準じた経過観察を推奨している。参考として,各国のガイドラインが推奨する,一次治療後の経過観察の間隔と期間についての比較を表1-10 に示す2-4)。
我が国において,一次治療後の経過観察について考える場合,原発巣再発,頸部再発および後発転移,遠隔転移,異時性重複癌の早期発見を前提としたものでなければならない。したがって,それぞれの発現する期間に関する論文を参考に,我が国において推奨すべき経過観察の間隔と期間を考慮するのが妥当と考える。
頸部リンパ節後発転移は,そのほとんど(70〜80%)が1 年以内に発現することや,局所再発を含めると90%が2 年以内に発生していることから,少なくとも治療後2 年間は厳重な経過観察が必要であるとする報告が多い5, 6)。また,一次治療後の経過観察をいつまで行うべきかのコホート調査では,原発巣再発および頸部リンパ節の再発・後発転移のみを考慮すると,3〜5 年で十分とする報告が多い5, 7, 8)。しかし,治療後5 年以上経過しても全症例の約2〜6%程度は二次癌が発症するとの報告9)や,放射線誘発癌,異時性重複癌が発生したという報告もあり10, 11),このことから症例によっては5 年経過しても引き続きの経過観察は必要と考える。
経過観察中に行う各種モダリティを考えた場合,原発巣再発,頸部再発および後発転移に関しては造影CT が有用で,基本的には6 か月に1 回程度,さらに病状に応じて必要があれば追加して実施すべきと考える。また,頸部再発および後発転移については,US もしくはUS と造影CT の組み合わせが有用で,US に関しては術後1〜2 年間は月1 回(可能であれば月2 回),それ以降は3〜6 か月に1 回は実施すべきとの報告がある12)。また,これらの妥当性について,多施設共同後ろ向き研究で検証した報告があり,その結果,ここで示す各種モダリティを用いた推奨期間は妥当であると結論している6)。
以上のことから,我が国における口腔癌一次治療後の経過観察の間隔は,治療後1 年間は最低月1 回(可能であれば月2 回),1〜2 年では月1 回,2〜3 年では2 か月に1 回,3〜4 年では3 か月に1 回,4〜5 年では4 か月に1 回,5 年以降は症例によって6 か月に1 回程度の経過観察が推奨され,術後5 年までは原発巣,頸部再発および頸部リンパ節後発転移の経過観察を行うべきであると考えられる。
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- 重要ポイント8-2
- 治療後の経過観察で必要な検査法は?
- 治療後の経過観察で勧められるモダリティとしては,US,あるいはUS と造影CT による評価が有効である。また,遠隔転移に対しては,胸部CT による評価が有効である。また,経過観察中に再発・転移が疑われる場合はPET による追加検査を行うことが勧められる。
口腔癌の再発,転移の診断において,視診・触診に加え画像検査がよく用いられる。しかし,国際的に統一したモダリティの使用についての明確な指針はない。これは各国の保険制度の違いや,設備状況の違いなどが影響しているためである。我が国におけるモダリティの使用については,施設の状況などにも左右されるが,一般的に治療後の再発,転移診断におけるベースライン画像は,US および造影CT が有効とされる。
【US および造影CT】
頸部リンパ節診断においては,US 単独あるいはUS と造影CT の併用が有用であるとの報告が多い1, 2)。また,検査の間隔について,特に非侵襲的診断が可能なUS では,術後1〜2 年間は月1 回が勧められ,2 週間に1 回であれば大きさの変化が掌握可能であると報告されている1, 2)。また,頸部転移が疑われるときにはUS ガイド下での穿刺吸引細胞診を有効とする報告もある3-5)。
【胸部CT】
一次治療後の遠隔転移の評価については,肺転移の頻度が高いことから,主に胸部X 線撮影あるいは胸部CT が行われる。肺転移の評価については,今までは進展度に応じて3〜6 か月に1 回の胸部X 線撮影が行われていたが,近年その有効性が低いとの報告6, 7)があり,現在は胸部CT による評価が勧められる。検査間隔については,術後1 年目は6 か月に1 回,2 年目は年に1 回の割合で撮像することを勧める報告や,術後1 年までは3 か月に1 回の撮像が有効であるとする報告がある1, 8)。NCCN ガイドラインでは,喫煙歴のある患者においてのみ定期的な胸部CT の撮像が推奨されており,目的は肺癌のスクリーニングのためであると記載されている。
【上部消化管内視鏡検査】
異時性重複癌については,口腔癌では高頻度に認められることから上部消化管内視鏡によるスクリーニング検査を施行している施設は多い。しかし,頭頸部癌患者の治療後に年2 回の上部消化管内視鏡検査を行ったところ,食道癌を発見できたものの,予後には影響しなかったとする報告があり9),治療後の定期的な上部消化管内視鏡検査の有用性については一定の見解が得られていない。
【PET】
近年,我が国におけるPET の普及により,頸部リンパ節転移や遠隔転移だけでなく,局所再発(特に深部再発)の評価に有効であるとの報告が多数認められるようになった10, 11)。さらに最近のシステマティックレビューでは,術後再発が疑われた場合,通常の検査に加え,PET の追加検査を行うことにより,遠隔転移診断の感度,特異度がそれぞれ92%,95%に上昇したと報告している12)。このことから,再発,転移が疑われる場合にPET 検査を追加して行うことは有用であると考える。
【腫瘍マーカー】
腫瘍マーカーについては,比較的古くよりその有用性が報告され,特にSCC 抗原が臨床ではよく用いられている。SCC 抗原の測定については,口腔癌のスクリーニングとしての意義は低いものの,再発・転移症例では,治療前のSCC 抗原が高値を示すことが多いため,一次治療後SCC 抗原を定期的に測定することは,再発・転移の予測に有効かもしれないと報告している13)。また,CYFRA 21-1 が口腔癌の独立した予後因子として有用であるとの報告14)や,SCC 抗原,CYFRA 21-1,癌胎児性抗原(cartinoembryonic antigen:CEA),tissue polypeptide specific antigen(TPS)のcombination marker としての有用性が報告されている15)。しかし,いずれも一定の見解は得られていない。したがって,経過観察に腫瘍マーカーの使用の必要性を裏付ける強力な証拠はないものの,補助的因子として,SCC 抗原をはじめとする各種腫瘍マーカーの変化を観察するのは有効かもしれない。
まとめると,一次治療後の検査法としては,頸部再発・転移診断の向上のためには,定期的なUS と造影CT 検査が勧められる。また,再発,転移が疑われる場合は,PET 検査が勧められる。異時性重複癌の診断のための一次治療後の定期的な上部消化菅内視鏡検査や,SCC 抗原などによる腫瘍マーカーの定期的な検査については,その有効性は限定的であり,現在のところ強く勧めるにはいたっていない。
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第9 章 再発癌の治療
口腔癌の根治的治療後の原発巣および頸部での再発は,最も大きな予後不良因子であることは言うまでもない。各種根治的治療後の原発巣・頸部再発率は通常24〜48%1-3)と報告され,そのうち原発巣再発が半数以上を占めている2)。また,再発癌の75%以上は一次治療後2 年以内に認められており4, 5),これらを考慮した経過観察が必要である。
再発癌の治療法としては,外科療法,放射線療法,薬物療法が用いられ,癌特異的ペプチドや樹状細胞を用いた免疫療法なども試みられている。また,姑息的な放射線療法や薬物療法を含む緩和治療も挙げられる。これらは,再発部位や再発時の進行度および先行治療の内容,患者の全身状態によって選択されている(重要ポイント9-1)。切除可能な再発例に対しては外科療法が行われ,切除不能な症例に対しては放射線療法が行われることが多いが,放射線療法の既往がある場合には困難である。局所療法が困難な場合は,分子標的薬を含む薬物療法が行われることが多い。進行再発および遠隔転移症例では,臨床研究への参加も考慮すべき選択のひとつである。
1.外科療法
再発癌が切除可能と判断でき,患者の全身状態も良好であれば,通常はまず外科療法が選択される。特に放射線療法の既往がある症例においては,外科療法は第一選択であり,薬物療法や放射線療法,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)に比べ予後が良いことが報告されている2, 6)。しかし,再発時に進行しているものや進行癌の再発例においては一般的に予後不良である2, 7, 8)。また,予後は原発巣と再発部位にも影響され,最も予後不良であるのは頸部再発であることが報告されている7)。口腔癌を含む頭頸部再発癌における外科療法の治療成績は15〜67%2)と幅が広いが, 2 年無病生存率で44%,また,メタ・アナリシスでは,5 年生存率39%と報告されている7)。
2. 放射線療法ならびに化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)
再発癌が切除不可能な場合や,患者の全身状態により手術不能である場合や,再発癌術後療法を行う場合に,放射線療法や化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)が選択される。再発癌に対しては通常50〜60 Gy 以上の高線量の外部照射,または比較的小さな再発・転移の場合は組織内照射や体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy:SBRT)が選択される場合もある9, 10, 17-19)。組織内照射では組織壊死や骨髄炎,瘻孔形成,強度の組織線維化などの合併症が生じる可能性があるため,合併症が比較的軽い外部照射が選択される場合が多い9)。ただ,再発癌の場合,既治療で放射線療法が施行されていることも多く,高線量の施行が困難であることも多い。最近では,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)11, 20)に加えて,術中放射線照射21),SBRT 19, 22-24),強度変調照射法(intensity modulated radiation therapy IMRT)25),ホウ素中性子補捉治療(Boron Neutron Capture therapy:BNCT)26),粒子線治療27)により治療成績を向上させる工夫が行われている。
化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)では,CDDP との併用,5-FU とhydroxyurea(HU)との併用,CDDP と5-FU との併用,CDDP(CBDCA)とpaclitaxel との併用,5FU,S-1 との併用などが行われている11)。分子標的薬であるcetuximab(Cmab)との併用は局所進行癌で効果がみられた28)ことから, 再発癌における効果も期待されている。現状において,局所進行および再発癌に対する放射線療法との組み合わせで標準的とされているのは,高用量のCDDP 29),CBDCA と5-FU の併用30),Cmab 28)の3 つである。
3.薬物療法
既治療として根治線量(60〜70 Gy)の照射が施行された原発巣再発癌に対しての再照射は困難で,また,切除不可能である場合や遠隔転移を伴っている場合は,多くは薬物療法が選択されることになる。薬物療法は通常CDDP やCBDCA などのプラチナ製剤,5-FU やS-1,paclitaxel やdocetaxel といったタキサン系をベースにした多剤併用療法が施行される場合が多い。単剤による薬物療法も用いられているが,多剤併用療法の方が奏効率は良好である12)。分子標的薬としては,MMP およびNF-κB の阻害薬,VEGF,VEGFR,およびEGFR などを分子標的とした治療薬があり,単独または他の薬物療法や放射線療法との併用による効果が報告されている31-33)が,生存期間および生存率の改善までには至っていない13-15)。ただ,EGFR を標的としたCmab は他の薬物療法34)および放射線療法28)に対する上乗せ効果があり,生存期間の改善を示すことが期待されている。Cmab 導入前の再発・転移癌に対する標準治療であったCDDP と5-FU の併用療法と,これにCmab を追加した併用療法とを比較した臨床試験(EXTREME 試験34))で,Cmab の併用により全生存期間中央値の7.4 か月が10.1 か月になり,生存期間が延長することが示され,進行・再発癌に対する標準治療として用いられている。
現状において,頭頸部扁平上皮癌におけるキードラッグはプラチナ製剤(CDDP もしくはCBDCA)であり,再発・転移例に対する標準的な薬物療法は,CDDP(CBDCA),5-FU,Cmab 34)による多剤薬物療法であるとされている。プラチナ製剤が使用できない,または,プラチナ不応(プラチナ製剤使用6 か月以内の再発,プラチナ製剤使用中もしくは投与後6 か月以内の増悪)症例の場合は,Cmab とpaclitaxel との併用35)が検討されている。
一方,新規の免疫療法として,免疫チェックポイント阻害薬であるnivolumab が頭頸部再発・転移癌に対する臨床効果を示すことが確認されている。ただし,nivolumab は特有の有害事象の可能性があるため,専門的な知識と経験をもつ医師と連携し,「厚生労働省 最適使用推進ガイドライン ニボルマブ(遺伝子組換え)〜頭頸部癌〜」に従った治療を行うことが必要である。
その他の免疫療法としては,口腔癌の切除不能な再発症例や進行症例に対して,癌特異的ペプチドや樹状細胞を用いた癌ワクチン療法が試みられており,phase I の臨床試験も行われている。ペプチドにはsurvivin-2B,URLC10,TTK,WT1 が用いられており,特にsurvivin-2B を用いた場合には,一部の症例でPR や腫瘍マーカーの低下といった臨床効果がみられており,少なくとも多くの症例で特異的細胞傷害性T 細胞の誘導が確認されている36)。現状ではいずれの臨床成果も十分とはいえないが,有害事象が少ないことなどもあり,今後の役割が期待される。
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- 重要ポイント9-1
- 口腔癌の根治的治療後の再発癌に対する治療法と治療成績は?
- 治療法としては,外科療法,放射線療法,免疫チェックポイント阻害薬を含む薬物療法が行われている。切除可能であれば,外科療法は他療法に比べて最も有効な治療法である。一方,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)や多剤併用薬物療法,さらに最近では,免疫チェックポイント阻害薬でも生存率や生存期間の延長が得られている。
再発癌が切除可能で,かつ患者の状態が手術可能であれば,通常は外科療法が選択され1),他療法に比べ良好な予後が認められている2, 3)。口腔癌を含む頭頸部再発癌の外科療法による治療成績は,無病生存中央値が18 か月,2 年無病生存率は44%(口腔癌のみでは47%)であり,再発時のstage が進行しているほど予後不良で,再発時stage I が73%,stage II が67%,stage III が33%,stage IV が22%であり,再発部位では頸部での再発が最も不良であったという報告がある4)。
放射線療法歴のない症例では放射線療法が選択肢に上がる。多くは化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)による報告であるが,再発癌に対する放射線外部照射による原発巣および頸部における2〜5 年の制御率は12〜36%,2 年生存率は10〜26%,5 年生存率は0〜15%と報告されている5-7)。放射線療法単独の場合,放射線外部照射の原発巣・頸部制御率は13〜33%,5 年生存率は13〜20%6),組織内照射の2 年および5 年生存率はそれぞれ13〜48%,1〜30%であるが,組織壊死や骨髄炎,瘻孔形成,強度の組織線維化などの合併症が5〜47%生じると報告されている8)。局所進行および再発癌に対する放射線療法との組み合わせで標準的とされている高用量のCDDP 9)を併用した研究では,3 年累積全生存率は37%(放射線単独23%)と報告されている。CBDCA と5-FU 10)を併用した報告では5 年累積生存率は22%(放射線単独16%),Cmab 11, 12)を併用した報告では5 年累積生存率は45.6%(放射線単独36.4%)と報告されている。近年,精度の高い放射線照射が可能となり,また,粒子線治療19)の報告もあり,生存期間を延長させる可能性はあるが,十分なエビデンスを得るまでには至っていない。
遠隔転移や手術不能で放射線療法歴のある再発症例では薬物療法が選択される。一般的に再発癌に対する薬物療法単独での治療効果は低く,奏効率は10〜35%程度であり,5 年生存率も5%以下とされている20-23)。CDDP やCBDCA といったプラチナ製剤がキードラッグであり,それに5-FU やS-1,paclitaxel やdocetaxel といったタキサン系を加えた多剤併用療法は,他の薬物療法に比べ治療成績は良いものの,おおむね生存期間中央値は6〜17 か月であり,1 年生存率は30〜60%,5 年生存率は5%以下である20, 21)。分子標的薬を用いた臨床試験において,Cmab をCDDP と5-FU の併用療法に追加すると,再発転移頭頸部癌で生存期間中央値が7 か月から10 か月まで有意に延長したと報告24)されている。国内において再発転移口腔癌を対象に検討した報告では,無増悪生存期間および全生存期間の中央値はそれぞれ7.8 か月,12.1 か月と報告25)されている。プラチナ製剤が使用できない,または,プラチナ不応(プラチナ製剤使用6 か月以内の再発,プラチナ製剤使用中もしくは投与後6 か月以内の増悪)症例の場合はCmab とpaclitaxel との併用療法が用いられており,無増悪生存期間および全生存期間の中央値はそれぞれ4.2 か月(95%信頼区間:2.9-5.5),8.1 か月(95%信頼区間:6.6-9.6)と報告されている26)。
一方,免疫チェックポイント阻害薬であるnivolumab は,CDDP 不応の再発・転移頭頸部扁平上皮癌を対象とした臨床試験(CheckMate 141 試験)では,nivolumab 投与群は単剤化学療法群(MTX,DTX あるいはCmab)と比較して,それぞれの全生存期間中央値は7.5 か月(95%信頼区間:5.5〜9.1)と5.1 か月(95%信頼区間:4.0〜6.0)であり,有意に生存期間が延長すること27),さらには患者のQOL の維持にも有効であったこと28)が報告されている。
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第10 章 緩和医療
緩和医療(palliative medicine)は,一般には緩和ケア(palliative care)とほぼ同義語として用いられている。日本緩和医療学会によると, WHO が2002 年に定めた緩和ケアの定義は,「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOL を,痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで,苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」としている。がん治療では,受診時の不安や告知後の抑うつに対する対応,術後や化学放射線療法施行時ならびに施行後の疼痛管理やせん妄を含む精神症状のケアが必要となることが多く,現在は初診時から緩和医療が介入できる体制が必要とされている。がんの終末期では,がん性疼痛,呼吸器症状,消化器症状,精神症状,出血などが生じるが,特に口腔癌の領域では,気道狭窄による呼吸困難,嚥下障害による栄養障害,構音障害によるコミュニケーション障害,整容的な障害などを生じやすいことが知られており,患者だけでなく,家族や周囲の介護の負担も大きい。このような口腔癌終末期患者の特殊性があるにも関わらず,それらに対応できる習熟した施設やスタッフが少なく,看取りの場が不足していることが指摘されている1)。また,がん患者の苦痛は全人的苦痛(トータルペイン)と呼ばれ,複雑で多面的であり,個別性が高いことから,近年集学的な多職種によるチームアプローチが必要とされている(重要ポイント10-1)。
1.疼痛管理
口腔癌におけるがん性疼痛は比較的早期から発現するため,WHO が推奨しているように,終末期だけではなく治療中を含めた早い段階から必要になることが多い。WHO は,がん疼痛治療の成績向上を目的として,『がんの痛みからの解放』第1 版を1986 年に,第2 版を1996 年に発表した2)。WHO 方式がん性疼痛治療法は,初版の公表から30 年以上経過しているが,各国のフィールド調査で70〜80%以上の患者に対し,鎮痛効果が得られていることが示されている。我が国のがん性疼痛に対する薬物療法については,日本緩和医療学会より『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2014 年版』が刊行されており,詳細はこちらを参照されたい3)。また,厚生労働省は,「がん対策推進基本計画」に基づき,さまざまな薬剤の使用および精神的な対応において,緩和ケアチーム,緩和ケア科および精神腫瘍科などとの密接な連携が必要であると述べている。
口腔癌の疼痛管理は,WHO が提唱する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),そして弱オピオイドと強オピオイドを用いた3 段階の薬物療法を行う。また,鎮痛薬の使用については,①経口投与を優先して,②時間を決めて規則正しく,③除痛ラダーに沿って,④患者ごとの個別的な量で,⑤その上で細かい配置を,の5 原則に従って使用することを推奨している。しかし,口腔癌の場合,経口投与が困難なことが多く,経管,経皮,経直腸,持続皮下注または持続静脈内投与を選択しなければならないことがある。また,予後不良が予想される場合は,患者および家族に対して十分な説明を行い,同意を得た上で胃瘻の増設やCV ポートを留置して投与経路を確保することが望ましいとされる。また,適切な用量調整を行っても十分な疼痛管理が得られない場合には,鎮痛補助薬の使用,放射線療法,神経ブロックなどを行う4, 5)。鎮痛補助薬としては,抗うつ薬,抗けいれん薬,局所麻酔薬,抗不整脈薬,NMDA 受容体拮抗薬,中枢性筋弛緩薬,コルチコステロイド,ベンゾジアゼピン系抗不安薬などがある。また,口腔癌の疼痛は,神経浸潤や圧迫による疼痛,放射線療法や外科療法に伴う疼痛以外に,顔面の変形などによる心理的な因子も加わるため,薬物療法の原則に従って適切な用量調整を行っても,十分な痛みのコントロールが得られないことがある。通常,がん性疼痛は持続性であり,鎮痛薬の血中濃度が低下すると再び疼痛が生じるため,一定の間隔で投与する。加えて,突出痛に対しては,基本処方一日量の約1/6 を一回投与量とするレスキュードーズで対応するが,投与後の効果や眠気などを判断して適宜調整する必要がある。また,オピオイドの副作用により鎮痛効果を得られるだけの投与ができない時や,鎮痛効果が不十分な時には,投与中のオピオイドから他のオピオイドに変更するオピオイドローテーションを行う必要がある。モルヒネは,がん性疼痛の管理に最もよく用いられるオピオイドであり,中等度から重度の痛みに対して用いられる。口腔癌患者においてモルヒネの内服が困難な場合には,経管投与,直腸内投与,経皮的投与,持続皮下注または持続静脈内投与などの投与法を検討する6〜8)。また,放射線療法が疼痛緩和の手段として選択されることがある9)。疼痛を伴う骨転移は放射線療法の適応であり,複数のランダム化比較試験により80〜90%の疼痛緩和が認められていると報告されている10)。また,骨転移には,ビスフォスフォネート製剤やデノスマブ11, 12),放射性ストロンチウム(89Sr)13)の投与が有効である。
2.栄養療法
進行癌患者における栄養療法の目標は,症状緩和および快適性にある14)。終末期においても,摂食機能から導かれる口腔感覚や食べる喜びを維持することが望ましいが,口腔癌の存在や治療の影響により経口摂取が困難なことが多い。口腔癌患者では,咽頭より下部の消化器に異常を認めないことが多いため,経口摂取が困難な場合は経腸的な栄養摂取が好ましい。そのため,経口摂取が困難となることが予想される場合は,患者および家族に対して十分な説明を行い,全身状況が悪化する前に経皮内視鏡的胃瘻造設(persutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)で,栄養摂取および薬剤投与のための経路を確保することが望ましいとされる15, 16)。
3.精神症状の緩和
約半数のがん患者が何らかの精神症状を有し,なかでも適応障害,うつ病およびせん妄の頻度が高い。がん患者の適応障害やうつ病の危険因子として,若年者,独居,進行がん・再発がん,痛みの存在,身体的機能の低下,うつ病の既往,神経質な性格傾向,周囲からの乏しい援助などが知られている。これらのなかでもコントロールできない痛みの存在は不安や抑うつの最大の原因の一つであり,精神症状とがん性疼痛が同時に存在する場合には原則として除痛が優先される。また,せん妄は,軽度から中程度の意識混濁に,幻覚,妄想,興奮などのさまざまな精神症状を伴う特殊な意識障害であり,手術直後や入院中,がん終末期にみられることが多い。終末期で入院を要する患者では,せん妄の割合が増加し,30〜90%に及ぶことが報告されている17)。適応障害への対応としては,医療者との良好な信頼関係を基礎とした支持的コミュニケーションが不可欠であり,効果が不十分な場合は,薬物療法として半減期の短い抗不安薬を投与して対応する。うつ病への対応は,支持的コミュニケーションに加えて,薬物療法として抗うつ薬を投与する17)。せん妄患者への対応は,原因となる薬剤,脱水,高Ca 血症,感染症への対応を試み,薬物療法として抗精神病薬を併用することが多い。
4.口腔癌患者の終末期医療
a.輸液療法
終末期の口腔癌患者は,低栄養に伴う体重減少,るいそうが認められ,明らかに健常時と比較し代謝量は減少する。終末期患者の輸液管理は,肺水腫に伴う呼吸障害や気道分泌量の増加に注意が必要である。日本緩和医療学会から出版された,『終末期がん患者の輸液療法に関するガイドライン2013 年版』では,抗がん治療に反応しない終末期の段階での輸液量は個別に対応するとともに,生命予後が1〜2 週間と見込まれた場合には輸液を行わないことを推奨している19)。
b.鎮静
終末期の口腔癌患者は,疼痛コントロールで十分に苦痛を取り除くことができないことがある。日本緩和医療学会から出版された『苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン2010 年版』では,本人あるいは家族の意思を十分に確認したうえで,かつ生命予後が2〜3 週間以内である場合には,標準的薬剤としてミダゾラムを推奨している20)。鎮静を行うと意思の疎通が取れなくなるばかりでなく,呼吸抑制が増悪することから,使用量に十分注意し,場合により生命予後に影響することも家族に対して十分に説明する必要がある。
5.口腔癌患者の緊急医療
a.電解質異常
口腔癌でしばしばみられる高Ca 血症は,腫瘍による骨破壊もしくは副甲状腺ホルモン関連タンパクの異常産生によって引き起こされ,悪心・嘔吐,全身倦怠感,意識障害を生じる。高Ca 血症の治療としては,生理食塩水による大量輸液を行い,脱水を回避しながらCa の排泄を図るが,急激または重度な高Ca 血症では,ヒドロコルチゾン,カルシトニン,ビスフォスフォネート製剤およびデノスマブを使用する11, 12)。がん患者の低Na 血症は,低栄養によるNa 摂取不足および腫瘍による抗利尿ホルモンの異常産生などにより発症する。治療としては,NaCl の経静脈的投与を行い,緩徐な補正を行う。
b.出血
大量出血はショックや気道閉塞により死に直結し,また慢性持続性の出血は貧血をきたしてQOL の低下を招く。腫瘍浸潤による出血を生じた場合は,用手的な圧迫や局所止血剤の貼付が有効であるが,止血困難な場合は,腫瘍の栄養血管である外頸動脈の結紮や,IVR(interventional radiology)を応用して白金コイルやゼラチンスポンジ等を用いた動脈塞栓術が行われる21)。
c.上気道閉塞
腫瘍や周囲組織の浮腫,治療後の気道の狭窄,あるいは出血,肺炎,気道分泌物の増加により呼吸困難を生じる際には,適切な気道管理が必要である。原因や気道狭窄部位とその程度により対応を選択する。上気道閉塞の症状は咳から始まり,冷汗・頻呼吸・陥没呼吸・吸気時の高調喘鳴・チアノーゼを認める。呼吸苦への対応としては,体位や呼吸法の工夫,去痰法,酸素療法などがあり,また精神的ケアによる不安の軽減も必要である。浮腫に対してはステロイドの投与が有効である。気道異物により気道が閉塞している場合は,速やかに用手的に掻き出すか,ハイムリッヒ法や腹部突き上げ法により異物の除去を試みる。咽頭ならびに喉頭の浮腫や腫瘍浸潤,外方からの腫瘍による圧迫が原因で気道が閉塞し,重篤な状況やそれが予見される場合は,気管内挿管が可能かを判断する。高度の気道浮腫や狭窄・閉塞などの気管内挿管が困難な場合は,気管切開を考慮する。気管切開に際しては,生命予後と患者個々のQOL を考慮し,その適否を決める必要がある。なお気管切開の際には,腫瘍による気管の偏位に配慮する必要がある。
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- 重要ポイント10-1
- 緩和医療の基本的な知識を習得するPEACE プロジェクトとは?
- 口腔癌の終末期患者は,会話や食事などの機能の低下,がんの進行による整容面の低下など,著しいQOL の低下をきたすことがあり,患者や家族に対する苦痛の予防と軽減を図ることが必要となる。これらの達成には,多職種によるチームアプローチが必要不可欠であるため,口腔癌診療に携わる者は,日本緩和医療学会が開催する「PEACE プロジェクト」に参加し,緩和医療の基本を学ぶことが必要である。
厚生労働省は,がん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画(2012 年6 月閣議決定)において,「がん診療に携わる全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを理解し,知識と技術を習得する」ことを目標としている。これを受けて,がん診療に携わるすべての医療従事者が緩和ケアについての基本的な知識を習得し,がん治療の初期段階から緩和ケアが提供されることを目的に,これら医療従事者に対する緩和ケアの基本的な知識等を習得するための研修会を行うように開催指針が出された。2018 年からは,新たに事前学習としてのe-learning 受講とワークショップ形式の集合研修を受けるよう開催指針が変更されている。
【PEACE プロジェクト】
日本緩和医療学会は,米国で開発された「オンコロジストに対する緩和ケアの教育プログラム」(Education in Palliative and End-of-life Care-Oncology:EPEC-O)を2005 年から導入し,我が国のがん医療と緩和ケアの実情にあわせ,新たに「症状の評価とマネジメントを中心とした緩和ケアのための医師の継続教育プログラム」(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education:PEACE)を開発した。現在,我が国では,がん診療連携拠点病院を中心に日本緩和医療学会が主催する「PEACE プロジェクト」が実施され,厚生労働省からがん等の診療に携わるすべての医師・歯科医師が,緩和ケア研修会を受講すべきであると通達されている。また,現在まで緩和医療に関連する各種ガイドラインが発刊されており,口腔癌診療に携わるすべての医療従事者はこれらに準拠した治療が求められる1-5)。
参考文献
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- 日本緩和医療学会編.終末期患者の輸液療法に関するガイドライン2013 年版.金原出版,2013.
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- 日本緩和医療学会編.苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン2010 年版.金原出版,2010.