No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
はじめに |
CQ1 |
小児ALL の治療方針の決定に必要な分類と検査は何か |
治療開始前には年齢,白血球数,中枢神経系(central nervous system:CNS)および精巣浸潤の有無を把握し,免疫学的分類,染色体・遺伝子異常などの検査を行うことを強く推奨する。治療開始後の検査としては,初期治療反応性と寛解の有無を評価することを強く推奨する。初期治療反応性は,治療開始後8 日目の末梢血芽球数や15 日目の骨髄芽球割合等で判定する。寛解後はフローサイトメトリー(flow cytometry:FCM)やPCR(polymerasechain reaction)を用いた微小残存病変(minimal residual disease:MRD)検査を行うことを推奨する。 |
1A |
CQ2 |
小児ALL の標準的寛解導入療法は何か |
小児ALL の寛解導入療法には,プレドニゾロンまたはデキサメタゾン,ビンクリスチン,L-アスパラギナーゼの3 剤またはアントラサイクリンを加えた4 剤を用い,寛解導入療法とメトトレキサートの髄腔内投与(髄注)を行うことを強く推奨する。 |
1A |
CQ3 |
小児ALL の寛解後の標準的治療は何か |
小児ALL の寛解後には,CNS 予防治療および再寛解導入療法を含む寛解後強化療法を行うことを強く推奨する。 |
1A |
CQ4 |
小児ALL の標準的維持療法は何か |
連日のメルカプトプリン内服と週1 回のメトトレキサート(MTX)投与の併用療法は,維持療法の骨格として近年日本および欧米の多くの多施設共同研究で用いられていることから,小児ALL における標準的維持療法と考えられる。この維持療法を含め,全治療期間は最低2 年間行うことを強く推奨する。 |
1A |
CQ5 |
小児ALL の標準的CNS 白血病の予防および治療は何か |
通常リスク群の小児ALL における標準的CNS 予防治療は,メトトレキサート(MTX)を含む髄注療法とMTX 静注療法との併用である。 |
1A |
高リスク群,特に初診時CNS 浸潤が認められた小児ALL における標準的治療法は,髄注,MTX 静注に加えて,CI を考慮する。 |
2B |
CQ6 |
小児Ph 染色体陽性ALL の標準的治療は何か |
イマチニブ併用の化学療法を行うことを強く推奨する。 |
1A |
CQ7 |
乳児ALL の標準的治療は何か |
MLL 遺伝子再構成陽性群では,強力な多剤併用化学療法を行い,高リスク群では第一寛解期における同種SCT の併用を推奨する。 |
2B |
MLL 遺伝子再構成陰性群では,小児ALL に準じた多剤併用化学療法(寛解導入療法,強化療法,再寛解導入療法,維持療法)を行うことを強く推奨する。 |
1B |
CQ8 |
思春期・若年成人ALL の標準的治療は何か |
思春期・若年成人ALL は,小児型プロトコールが強く推奨される。 |
1A |
CQ9 |
再発小児ALL の標準的治療は何か |
小児の第一再発ALL では,再発時期,再発部位,および白血病細胞の免疫学的分類に基づいて層別化した治療を行うことを強く推奨する。 |
1A |
B-precursor ALL の後期骨髄単独再発,早期および後期骨髄髄外複合再発では,プレドニゾロンもしくはデキサメタゾン,ビンクリスチン,L- アスパラギナーゼの3 剤にアントラサイクリンや大量メトトレキサート(MTX)で強化した寛解導入療法を行う。第二寛解到達後は,多剤による強化地固め療法,中枢神経系(central nervous system:CNS)白血病の予防治療(以下,CNS 予防治療),維持療法を行う。 |
1A |
治療反応不良群では同種SCT を考慮する。 |
1B |
第一再発ALL の高リスク群では寛解到達後は同種SCT を考慮する。 |
1B |
CNS 単独再発では全身化学療法と髄注により治療を行い,十分な全身治療後に頭蓋もしくは頭蓋脊髄放射線照射を行うことを強く推奨する。 |
1A |
精巣単独再発では局所治療に加え,全身化学療法を行うことを提案する。 |
1B |
CQ10 |
小児ALL 治療における造血細胞移植の役割は何か |
hypodiploid(低二倍体),寛解導入療法後も高い微小残存病変(minimal residual disease:MRD)レベルが持続するALL の場合,第一寛解期での同種SCT を考慮する。 |
2C |
初期治療で非寛解のALL に対しては,寛解到達後に同種SCT を行うことを考慮する。 |
2C |
CQ11 |
小児ALL 治療におけるMRD 測定の役割は何か |
小児ALL のMRD レベルは再発との関連がきわめて高い予後因子であり,治療層別化に有用な検査である。ただし,MRD レベルを治療方針の決定に使用する場合は,対象とする病型,治療プロトコール,測定方法,測定ポイントおよびカットオフレベルを十分に考慮する必要がある。 |
1A |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
はじめに |
CQ1 |
小児AML の治療方針の決定に必要な分類と検査は何か |
白血病細胞の形態,細胞表面マーカーの結果からFAB 分類にもとづいた診断を行い,染色体や遺伝子診断の結果が判明した時点でWHO 分類にもとづいた病型分類を行う。 |
1A |
骨髄穿刺で骨髄血が吸引困難ないしは骨髄低形成像を示す場合,また芽球比率が低く骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)との鑑別が問題になる場合は,骨髄生検による病理組織診断を行う。 |
2B |
CQ2 |
小児AML の標準的寛解導入療法は何か |
de novo AML の寛解導入療法としてシタラビン持続静注とアントラサイクリンの併用を基本とした化学療法を用いる。 |
1A |
CQ3 |
小児AML の寛解後の標準的治療は何か |
寛解導入療法後化学療法として大量シタラビン療法を含む複数回の多剤併用強化療法を行うことを強く推奨する。 |
1A |
CQ4 |
小児AML 治療における造血細胞移植の役割は何か |
第一寛解期の高リスク群に対しては同種SCT の適応が考慮される。 |
2C |
CQ5 |
再発小児AML の標準的治療は何か |
再寛解導入療法により第二寛解に導入できた場合に,同種SCT を行うことを強く推奨する。 |
1B |
CQ6 |
小児APL の標準的治療は何か |
ATRA,アントラサイクリン,シタラビンを含む複数回の多剤併用強化療法を用いることを強く推奨する。 |
1B |
CQ7 |
Down 症候群のAML の標準的治療は何か |
アントラサイクリンとシタラビンを中心とし,非Down 症候群児のAML より減弱した治療を行うことを強く推奨する。 |
1B |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
はじめに |
CQ1 |
小児リンパ腫の治療方針の決定に必要な検査と分類は何か |
できる限り安全で侵襲の少ない方法で検体を採取し,正確な病理組織診断を行うことを強く推奨する。 |
1A |
小児のNHL においてはMurphy 分類,HL においては修正Ann Arbor 分類による病期の評価を行う。 |
1A |
CQ2 |
小児の成熟B 細胞性リンパ腫の標準的治療は何か |
小児の成熟B 細胞性リンパ腫は白血病と同様に全身性のリンパ系腫瘍のため,初発例に対する外科的手術と放射線治療とはいずれも有効性が期待できず,化学療法のみで治療することを強く推奨する。 |
1A |
BL とDLBCL は,同一の短期集中型治療法で治療することを強く推奨する。 |
1B |
初発患者には再発リスクに基づいた層別化治療を行うことを強く推奨する。 |
1A |
CNS 浸潤例に対してもCI は行わない。 |
2C |
CQ3 |
小児のリンパ芽球性リンパ腫の標準的治療は何か |
小児のリンパ芽球性リンパ腫(lymphoblastic lymphoma:LBL)の治療はALL 型の治療を行うことを強く推奨する。 |
1A |
CQ4 |
小児の未分化大細胞型リンパ腫の標準的治療は何か |
小児ALCL の治療は予後因子に基づいた層別化治療(ALCL99 研究)を行うことを提案する。 |
2B |
CQ5 |
小児ホジキンリンパ腫の標準的治療は何か |
早期例(病期Ⅰ,Ⅱ A かつ巨大腫瘤を有しない症例)に対しては,多剤併用化学療法2 〜4コースと低線量IF 放射線照射の併用療法を行うことを強く推奨する。 |
1A |
進行例(病期ⅡB〜Ⅳ,あるいは巨大腫瘤を有する症例)に対しては,多剤併用化学療法4〜8 コースとIF 低線量照射の併用療法を行うことを強く推奨する。 |
1A |
CQ6 |
思春期・若年成人のリンパ腫の標準的治療は何か |
思春期・若年成人のリンパ芽球性リンパ腫(lymphoblastic lymphoma:LBL)の治療は小児のALL 型治療法を用いることを提案する。 |
2A |
思春期・若年成人のバーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma:BL)の治療は小児の短期集中型治療法を用いる。 |
2A |
思春期・若年成人のDLBCL の治療は晩期毒性の危険性を考慮すると小児の短期集中治療法を用いるのが望ましい。 |
2A |
CQ7 |
小児リンパ腫治療におけるFDG-PET/CT 検査の意義は何か |
小児HL に対するFDG-PET 検査は,一般に確立された方法である。 |
1B |
小児NHL に対するFDG-PET 検査は,未だ確立されておらず,有用性は限定的である。 |
2C |
CQ8 |
再発・難治性非ホジキンリンパ腫の標準的治療は何か |
再寛解導入療法に標準的といえる化学療法プロトコールはなく,さらなる化学療法に反応がある場合,大量化学療法/SCT が考慮される。 |
2B |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
はじめに |
CQ1 |
小児LCH の治療方針の決定に必要な検査と分類は何か |
診断は生検組織による病理学的検索により行う。 |
1A |
病型分類のために詳細な病歴の聴取,身体診察,血液および尿検査,画像検査を行う。 |
1A |
病型は,単一臓器型か多臓器型か,前者は単独病変か多病変か,後者はリスク臓器浸潤陰性か陽性かに分類する。 |
1A |
肝および脾,造血器はリスク臓器である。 |
1B |
天蓋部を除く頭蓋顔面骨の病変はCNS リスク病変である。 |
2C |
CQ2 |
単一臓器型LCH の標準的治療は何か |
単一骨病変では無治療経過観察が基本方針であるが,脊髄や視神経の圧迫がある場合,強い痛みが持続する場合,CNS リスク病変である場合などでは,全身化学療法が考慮される。 |
2C |
有痛性骨病変に対し,メチルプレドニゾロンの局所注射を行うことを考慮する。 |
2C |
皮膚単独病変では無治療経過観察が基本方針であるが,乳児では多臓器型に移行することがあり慎重な経過観察を要する。 |
2C |
多発骨病変に対し,ビンカアルカロイドとステロイドを基本とした6〜12 カ月間の全身化学療法を行うことを強く推奨する。 |
1B |
CQ3 |
多臓器型LCH の標準的治療は何か |
エトポシドはファーストライン治療として使用せず,ビンカアルカロイドとステロイドを基本とした12 カ月間の全身化学療法を強く推奨する。 |
1A |
リスク臓器浸潤陽性で,初期治療反応が不良な例は,治療を強化することを強く推奨する。 |
1B |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
はじめに |
CQ1 |
標準的な感染予防は何か |
がん薬物療法中は全期間を通じてニューモシスチス感染の予防を主目的としてST 合剤の投与を行うことを強く推奨する。 |
1A |
小児においても高リスク群に対して経口キノロン薬の予防投与を行うことを提案する。 |
2C |
重度好中球減少時(前頁参照)にはST 合剤に加えて抗真菌薬の予防投与を行うことを強く推奨する。 |
1B |
G-CSF の予防投与(好中球減少を来す前からの投与)は予測される発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN)の頻度が20%以上のがん薬物療法に対して行うことを提案する。 |
2B |
CQ2 |
発熱性好中球減少症の標準的治療は何か |
FN を発症した場合には,まず初期評価を行うことを強く推奨する。 |
1C |
FN の経験的治療では,広域抗菌スペクトラムを有するβ-ラクタム系薬単剤による経静脈的投与から開始することを強く推奨する。 |
1A |
経験的抗菌薬治療を開始後4 日間以上発熱が持続する高リスク群では,感染部位と病原体の特定に努めるとともに経験的抗真菌薬治療を開始することを強く推奨する。 |
1B |
CQ3 |
深在性真菌症の診断法は何か |
リスクファクターを有する抗菌薬不応性発熱の際には,真菌感染症の可能性を考慮し,診断を進めることを強く推奨する。 |
1A |
CQ4 |
深在性真菌症の標準的治療は何か |
真菌感染症可能性例(possible)に対しては経験的治療を行うことを強く推奨する。 |
1B |
真菌感染症推定診断例(probable)あるいは確定診断例(proven)に対しては標的治療を行うことを強く推奨する。 |
1B |
CQ5 |
ウイルス感染症の標準的治療は何か |
HSV 感染症の粘膜病変や臓器病変には,アシクロビルの静注療法を強く推奨する。 |
1A |
白血病などの化学療法中の患者に水痘様発疹が出現した時には,直ちにアシクロビルの静注を開始することを強く推奨する。 |
1A |
化学療法中の水痘未罹患の患者がVZV に曝露された時は,アシクロビルの予防投与を強く推奨する。 |
1C |
患者が水痘を発症した時には,空気感染予防のために陰圧室で管理することを強く推奨する。 |
1A |
CMV 抗原の定期的なモニタリングはSCT の際には推奨されるが,小児の悪性腫瘍患者の化学療法においては合併症の発症頻度は低く,推奨されない。 |
なし |
化学療法中にCMV 感染症を発症した時の第一選択剤として,ガンシクロビルの静注を強く推奨する。 |
1B |
化学療法中の患者がインフルエンザ様症状を発症した時には,早期の(48 時間以内の)ノイラミニダーゼ阻害薬の投与を強く推奨する。 |
1B |
化学療法中の患者がインフルエンザウイルスに曝露された時には,オセルタミビルまたはザナミビルの10 日間の予防投与を提案する。また,10 歳以上であれば,ラニナミビル2 日間の予防吸入も可能である。 |
2C |
季節性インフルエンザワクチンを化学療法中の患者に接種することを強く推奨するとともに,同時にその家族,患者に接触する医療従事者にも接種することを強く推奨する。 |
1B |
生後24 カ月齢以下でRS ウイルス(respiratory syncytial virus)感染症流行シーズンを迎える場合には,パリビズマブによる重症化予防を提案する。 |
2C |
CQ6 |
赤血球輸血の適応と輸血量の目安は何か |
貧血の症状や心肺所見に十分注意をしながらHb 7 g/dL を輸血実施の目安にすることを強く推奨する。 |
1B |
1 回10 mL/kg の赤血球液を2〜6 時間かけて輸血することを強く推奨する。 |
1A |
CQ7 |
血小板輸血の適応と輸血量の目安は何か |
急性白血病やその他の悪性腫瘍の骨髄浸潤による血小板減少,抗腫瘍薬による骨髄抑制に際しては,血小板数1 〜2 万/μL 以上を維持するように計画的に輸血を行うことを強く推奨する。 |
1B |
以下の計算式をもって,血小板輸血を行うことを強く推奨する。
血小板輸血直後の予測血小板増加数=輸血血小板総数/循環血液量(ml)×103×2/3 |
1A |
CQ8 |
L-アスパラギナーゼ投与時の凝固線溶系異常に対する標準的治療は何か |
L-Asp の長期反復投与時には,AT の補充を考慮する。 |
2B |
CQ9 |
腫瘍崩壊症候群の標準的治療は何か |
疾患ごとに疾患の進行度,腎機能障害の程度をもとにTLS 発症のリスクを評価し,定期的にlaboratory TLS を含むTLS 発症の有無,TLS 発症リスクの再評価を行い,それに基づいたTLS 治療および予防を行うことを強く推奨する。 |
1A |
TLS 発症時には,頻回のモニタリング,大量補液,ラスブリカーゼ製剤投与,電解質管理を行うことを強く推奨する。 |
1A |
TLS の治療,予防として尿のアルカリ化は不要である。 |
1A |
TLS 高リスク症例に対してはTLS の治療に準じて,頻回のモニタリング,大量補液,ラスブリカーゼ製剤投与,電解質管理を行うことを強く推奨する。 |
1B |
TLS 中等度リスク症例に対してはモニタリング,大量補液,アロプリノール投与を行うことを強く推奨する。 |
1B |
TLS 低リスク症例に対してはモニタリング,通常量の補液を行うことを強く推奨する。 |
1B |
CQ10 |
小児がん治療における苦痛緩和対策は何か |
小児がん患児が経験する苦痛を全人的に捉え軽減するための緩和ケアを,患児・家族の希望を考慮した場所で,必要に応じ抗がん治療や生命維持治療と並行しながら,全経過を通じて提供することを強く推奨する。 |
1C |
CQ11 |
小児がん患児が経験する疼痛に対する標準的評価は何か |
小児の疼痛を評価する際には,小児の特性を理解し,疼痛を医学的,臨床的,全身的に評価し,さらに疼痛の背景にある心理社会的要因も考慮し,全人的,包括に評価を行うことを強く推奨する。 |
1B |
CQ12 |
検査・処置に対する標準的疼痛管理は何か |
苦痛を伴う検査・処置に際しては,①心の準備(preparation)などの非薬理学的疼痛管理,ならびに②患児の鎮静前評価,医療側の鎮静前準備ならびに鎮静中の管理,管理終了の目安など,安全面にも配慮した薬理学的疼痛管理(鎮静・鎮痛)を併用し,安全かつ充分な疼痛管理を行うことを強く推奨する。 |
1C |
CQ13 |
小児がん(疾患)に対する標準的疼痛管理は何か |
原疾患に伴う薬理学的疼痛管理に関しては,日本の実状に配慮した上で,WHO guidelines on the pharmacological treatment of persisting pain in children with medical illness. 2012(以下WHO 指針2012)に基づく管理を行うことを強く推奨する。 |
1B |