クリニカルクエスチョン・推奨一覧

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第III章.予防・疫学

CQ No. Clinical Question 推奨 推奨度 レベル
CQ1 胆道癌の危険因子はどのようなものか? 胆管癌の危険因子は胆管拡張型の膵・胆管合流異常,原発性硬化性胆管炎などである。胆囊癌の危険因子は膵・胆管合流異常などである。   C
CQ2 膵・胆管合流異常に予防的手術は行うべきか? 膵・胆管合流異常は胆道癌の危険因子であり,診断確定後は積極的な手術加療が必要である。胆管拡張型には肝外胆管切除+胆道再建(分流手術)を,胆管非拡張型には胆囊摘出術を行うことを推奨する。 1 C
CQ3 無症状胆囊結石に胆囊摘出術は行うべきか? 胆囊壁を十分評価できる場合には,胆囊癌予防目的の胆囊摘出術は行わないことを提案する。 2 C
CQ4 どのような胆囊ポリープに対して癌を疑うべきか?[Background Question] 大きさ10 mm 以上,大きさにかかわらず広基性,あるいは画像上増大傾向を認める場合,胆囊癌を疑うべきである。   C

第IV章.診断

CQ No. Clinical Question 推奨 推奨度 レベル
CQ5 胆道癌を疑う臨床症状は?[Background Question] 黄疸,右上腹部痛,体重減少などがある。   C
CQ6 胆道癌診断のファーストステップとして行うべき検査は? 血液検査および腹部超音波検査を推奨する。 1 C
CQ7 胆管癌診断のセカンドステップとして行うべき検査は? CT は病変の局在診断や進展度診断に有用であり,胆道ドレナージ前に行うことを推奨する。 1 A
MRI(MRCP)は非侵襲的にCT とは異なる情報が得られる点で有用であり,胆道ドレナージ前に行うことを提案する。 2 B
CQ8 胆管癌診断のサードステップにはどのような検査があるか?[Background Question] ERCP は水平方向進展などの精密な診断に有用である。
IDUS は深達度診断,血管浸潤や壁内進展の評価に有用である。
POCS は直視下生検が可能であり,質的診断と表層進展の診断に有用である。
EUS は質的診断および壁内進展の診断に有用である。
PET,PET-CT は遠隔転移やリンパ節転移の診断に有用である。
  C
CQ9 胆囊癌診断のセカンドステップとして行うべき検査は? CT は病変の局在診断や進展度診断に有用であり,行うことを推奨する。 1 C
MRI(MRCP)は非侵襲的にCT とは異なる情報が得られる点で有用であり,行うことを提案する。 2 C
CQ10 胆囊癌診断のサードステップにはどのような検査があるか?[Background Question] EUS は局在診断,質的診断および進展度診断に有用である。
ERCP は局在診断,質的診断および進展度診断に有用である。
POCS は直視下生検が可能であり,胆管への表層進展の診断に有用である。
PET,PET-CT は遠隔転移やリンパ節転移の診断に有用である。
  C
CQ11 乳頭部癌診断のセカンドステップとして行うべき検査は? 上部消化管内視鏡検査を行い,腫瘍が疑われた場合は生検を行うことを推奨する。 1 C
CT は病変の局在診断や進展度診断に有用であり,行うことを推奨する。 1 C
MRI(MRCP)は非侵襲的にCT とは異なる情報が得られる点で有用であり,行うことを提案する。 2 C
CQ12 乳頭部癌診断のサードステップにはどのような検査があるか?[Background Question] EUS は局所進展度診断に有用である。 
ERCP・IDUS は局所進展度診断に有用である。
PET,PET-CT は遠隔転移やリンパ節転移の診断に有用である。
  C
CQ13 胆管癌,胆囊癌が疑われる症例に治療前生検または細胞診は行うべきか? 切除可能胆管癌では,術前に経乳頭的生検または細胞診を行うことを推奨する。 1 C
切除不能胆管癌,切除不能胆囊癌では,治療前に生検または細胞診を行うことを推奨する。 1 C

第V章.胆道ドレナージ

CQ No. Clinical Question 推奨 推奨度 レベル
CQ14 黄疸患者に術前胆道ドレナージは行うべきか? 広範肝切除術(肝葉切除以上)を予定する胆道癌には,行うことを推奨する。 1 C
CQ15 遠位胆管閉塞に対する術前胆道ドレナージは何を行うべきか? 第1 選択として内視鏡的(経乳頭的)減黄処置を推奨する。 1 C
CQ16 肝門部胆管閉塞に対する術前胆道ドレナージは何を行うべきか? 広範肝切除(肝葉切除以上)を予定する胆道癌には,第1 選択として内視鏡的(経乳頭的)な残存予定側の片葉ドレナージを推奨する。 1 C
CQ17 術前胆道ドレナージ中の発熱にはどのように対応すべきか? まず,既存の胆道ドレナージが良好か否かを確認する。チューブトラブルがあればチューブ交換を行い,抗菌薬を投与することを推奨する。 1 C
チューブトラブルがない,あるいはチューブ交換後も解熱しない場合には,非ドレナージ領域に生じた胆管炎(区域性胆管炎)を疑い,速やかにドレナージを追加することを推奨する。 1 C
CQ18 術前外瘻ドレナージ患者に胆汁監視培養は行うべきか? 胆汁監視培養は周術期における抗菌薬の選択に有用であり,行うことを推奨する。 1 C
CQ19 術前外瘻ドレナージ患者に胆汁返還は行うべきか? 胆汁返還は有用であり,行うことを提案する。 2 C
CQ20 切除不能遠位胆管閉塞に対する胆管ステントは何を選択すべきか? Covered SEMS の選択を提案する。 2 B
CQ21 切除不能肝門部胆管閉塞に対する胆管ステントは何を選択すべきか? PS またはuncovered SEMS の選択を提案する。 2 B

第VI章.外科治療

CQ No. Clinical Question 推奨 推奨度 レベル
CQ22 切除不能胆道癌とはどのようなものか?[Background Question] 遠隔転移を伴う胆道癌は切除不能と考えられる。局所進展による切除不能因子については明らかなコンセンサスは得られていない。   C
CQ23 術前門脈塞栓術はどのような症例に行うべきか? 切除率50〜60%以上の肝切除を予定する胆道癌に行うことを提案する。 2 C
CQ24 術前の残肝予備能評価はどのように行うべきか? CT による予定残肝容積の測定とICG 排泄試験(減黄後かつ胆管炎の存在しない条件)は胆道癌肝切除における有用な予備能の指標であり,行うことを推奨する。 1 C
CQ25 血管浸潤に対して血管合併切除は行うべきか? 肝門部領域胆管癌に対する門脈合併切除は行うことを提案する。 2 C
肝門部領域胆管癌に対する肝動脈合併切除は行うことを考慮しても良い。   C
CQ26 肝葉切除を伴う膵頭十二指腸切除(いわゆるmajor HPD)は行うべきか? 広範に進展した胆管癌には行うことを提案する。 2 C
CQ27 胆囊癌を疑う症例には腹腔鏡下手術ではなく開腹手術を行うべきか? 原則として開腹手術を行うことを提案する。 2 C
CQ28 肝外胆管に直接浸潤のない胆囊癌に予防的肝外胆管切除は行うべきか? 原則として行わないことを提案する。 2 C
CQ29 肝浸潤を疑う胆囊癌にはどのような肝切除を行うべきか? 十分なsurgical margin を確保した胆囊床切除を行うことを提案する。 2 C
CQ30 胆囊摘出後に深達度ss 以上の胆囊癌が判明した場合に追加切除を行うべきか? 一期的ないし二期的に追加根治術を行うことを推奨する。 1 C
CQ31 十二指腸乳頭部腫瘍に局所的乳頭部切除(外科的治療を含む)は行うべきか? 十二指腸乳頭部腺腫には行うことを提案する。 2 C
十二指腸乳頭部癌では正確な深達度診断がいまだ困難なので,行わないことを提案する。  2 C
CQ32 術中胆管切離断端上皮内癌陽性例に胆管の追加切除を行うべきか? リンパ節転移などの予後不良因子がない場合には行うことを提案する。 2 C
CQ33 胆管癌切除後の予後因子はどのようなものか?[Background Question] 胆管切離断端および剝離面での癌の遺残,リンパ節転移,神経周囲浸潤,組織学的分化度および主要血管への浸潤などがあげられる。   C
CQ34 胆囊癌切除後の予後因子はどのようなものか?[Background Question] 患者因子として黄疸,Glasgow Prognostic Score(GPS)が,腫瘍因子として壁深達度,占拠部位,肝十二指腸間膜浸潤,組織学的分化度,リンパ節転移,リンパ管・神経周囲浸潤が,治療因子として手術根治度,術中胆汁漏出などがあげられる。   C
CQ35 乳頭部癌切除後の予後因子はどのようなものか?[Background Question] 膵浸潤,リンパ節転移などがあげられる。   C
CQ36 胆道癌手術は手術数の多い施設で行うべきか? 肝切除および膵頭十二指腸切除は安全性を考慮し,手術数の多い施設で行うことを提案する。しかし,個々においては総合的に判断されるべきである。 2 C

第VII章.化学療法

CQ No. Clinical Question 推奨 推奨度 レベル
CQ37 切除不能胆道癌に対するファーストラインの化学療法は何か? ゲムシタビン+シスプラチン併用療法,ゲムシタビン+ S-1 併用療法,またはゲムシタビン+シスプラチン+ S-1 併用療法を推奨する。 1 A
CQ38 切除不能胆道癌に対するセカンドラインの化学療法は何か? ゲムシタビン・シスプラチン併用療法後のセカンドラインとしてはフルオロピリミジン系抗癌剤による化学療法を提案する。標準的な治療が困難な場合に限るがMSI-H であればペムブロリズマブを提案する。 2 C
CQ39 術後補助化学療法は行うべきか? 術後補助化学療法の有用性を示した報告はないが,行うことを考慮しても良い。   C
CQ40 閉塞性黄疸に対する化学療法はいつ開始すべきか?[Future Research Question] 総ビリルビン値が少なくとも3.0 mg/dL 以下に改善した状態で開始することが望ましい。   C

第VIII章.放射線治療

CQ No. Clinical Question 推奨 推奨度 レベル
CQ41 切除不能胆道癌に放射線治療,または化学放射線療法は行うべきか?[Future Research Question] 放射線治療,化学放射線療法の有用性は,現時点では根拠が不十分であり,明確な推奨はできない。今後の臨床研究に期待する。   C
CQ42 胆道癌切除例に術後放射線治療,または術後化学放射線療法は行うべきか?[Future Research Question] 断端陽性例やリンパ節転移例には行うことを考慮してもよい。しかし,現時点では有用性に関する根拠が不十分であり,明確な推奨はできない。今後の臨床研究に期待する。   C
CQ43 胆管癌の治療としてphotodynamic therapy は行うべきか? 切除不能胆管癌の治療として行うことを考慮してもよい。   B

第IX章.病理

CQ No. Clinical Question 推奨 推奨の強さ エビデンスの強さ
CQ44 胆道における腫瘍類似病変はどのようなものか。[Background Question] 胆道における腫瘍類似病変には,(A)硬化性胆管炎,(B)黄色肉芽腫性胆囊炎,(C)胆囊腺筋腫症,(D)非腫瘍性胆囊ポリープなどがある。   C
CQ45 胆道のIPNB,BilIN,dysplasia はどのようなものか?[Background Question] IPNB(intraductal papillary neoplasm of bile duct)は,肉眼的に病変が認識される胆管内乳頭状腫瘍である。
BilIN(biliary intraepithelial neoplasia)は,組織学的に病変が認識される胆道上皮内腫瘍である。
Dysplasia は,癌か非癌かの鑑別が難しい異型を有する上皮性病変である。
  C