第III章.予防・疫学
- CQ1
- 胆道癌の危険因子はどのようなものか?[Background Question]
- レベルC
- 胆管癌の危険因子は胆管拡張型の膵・胆管合流異常,原発性硬化性胆管炎などである。胆囊癌の危険因子は膵・胆管合流異常などである。
解説
胆道癌の疫学研究では体脂肪の増加,すなわち肥満が胆囊癌の危険因子とされている1)。肥満は直接的に,あるいは胆石の形成を介して間接的に胆囊癌の危険因子になっていると推測されている。糖尿病,妊娠なども同様に胆石の発症を増加させることから胆道癌との関連が示唆されている2,3)。(レベルC)
1)胆管癌の危険因子
膵・胆管合流異常
膵・胆管合流異常は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常である4)。Oddi 括約筋の作用が膵管と胆管の合流部に及ばないことから膵液と胆汁の相互逆流を生じ,それによる胆道上皮障害が発癌の原因となる。胆道癌の合併頻度は胆管拡張型では胆管癌6.9%,胆囊癌13.4%で,非拡張型では胆管癌3.1%,胆囊癌37.4%と報告されている5)。メタアナリシスでも合流異常は比較的若年者の胆管癌合併頻度が有意に高いことが報告されている6)。(レベルC)
原発性硬化性胆管炎
原発性硬化性胆管炎は原因不明の進行性疾患で肝内外胆管の線維化を伴った狭窄・拡張に伴う胆汁うっ滞,胆管炎から肝硬変へと進行する。欧米では胆管癌の合併が10〜20%前後と高率である7)。発癌の原因に関しては慢性炎症によるmetaplasia-dysplasia-carcinoma sequence が想定されている。また,原発性硬化性胆管炎の診断から1 年以内に胆管癌を合併する頻度が高いことが知られている。(レベルC)
肝内結石
肝内結石症と胆管癌の合併は古くから指摘されている。胆道粘膜への持続的刺激,慢性炎症が発癌に関与すると考えられている。胆管結石と肝内胆管癌の関連を解析したメタアナリシスでは肝内結石が危険因子であると報告されている8)。本邦における疫学研究では,肝内結石の1.3〜5.9%に肝内胆管癌が合併しており,コホート解析では65 歳以上と結石除去のみ(肝切除なし)が胆管癌合併の危険因子とされている9)。(レベルC)
化学物質
2012 年に大阪市内のオフセット校正印刷会社の従業員に多数の胆管癌患者が発生していることが明らかになり,ジクロロメタンと1,2 ジクロロプロパンの曝露が原因と考えられている。発癌のメカニズムは肝臓内で代謝されたジクロロメタンが活性化されてDNA 損傷を引き起こすと推測されている10,11)。ジクロロプロパンも同様の機序と推測されている。(レベルC)
肝吸虫
東南アジア,西太平洋地域の風土病である肝吸虫感染は淡水魚を介して経口的に胆管内に感染する。慢性胆管炎から癌化をきたすことから胆管癌,肝細胞癌の危険因子であることが知られている12)。(レベルC)
2) 胆囊癌の危険因子
膵・胆管合流異常
胆管拡張型,非拡張型とも胆囊癌を高率に合併することが知られている4,5)。予防的胆囊摘出術が推奨されている。(レベルC)
胆囊胆石
胆囊胆石が胆囊癌の危険因子であるとする多くの疫学研究が報告されている。結石径が3 cm 以上,有症状例,胆石保有期間が長いなどが胆囊癌の危険因子とされている13〜15)。胆石に伴う慢性炎症が異形成や癌化を促進すると考えられている。しかし,無症状胆囊胆石の長期にわたる経過観察では胆囊癌発生率は極めて低率であり,胆石と癌の因果関係に関する明らかなエビデンスはない16)。(レベルC)
胆囊ポリープ
胆囊ポリープとは胆囊の限局性小隆起性病変の総称であり,良悪性を問わず上皮性,非上皮性,非腫瘍性の様々な病変を含む。腫瘍性病変のうち腺腫は癌化するものがあるがその頻度は不明である。腺腫を念頭に胆囊ポリープを前癌状態として厳密な経過観察することには否定的な意見もある17)。その理由として胆囊癌ではadenoma-carcinoma sequence は稀で,多くはdysplasia-carcinoma sequence をとると考えられているからである。(レベルC)
陶器様胆囊
陶器様胆囊は高率に胆囊癌を合併するとされてきたが,Schnelldorfer によるシステマティックレビューによればselection bias を除いた陶器様胆囊124 例の胆囊癌合併は6%に過ぎず,背景をマッチさせたコントロール群と比較して有意差はあるものの従来指摘されてきたほどの危険因子ではないと結論されている18)。(レベルC)
感染症
サルモネラ菌感染と胆囊癌の関連が知られており,感染による慢性炎症が癌化の過程で何らかの役割を果たしていると考えられている。メタアナリシスによればサルモネラ菌感染はコントロールとした胆石症よりも有意に胆囊癌のリスクが高いことが報告されている19)。(レベルC)
胆囊腺筋腫症
分節型胆囊腺筋腫症はくびれた胆囊の底部側に胆汁うっ滞が生じ,結石形成や癌の発生につながるとされるが20,21),明らかなエビデンスはない22)。(レベルC)
3) 十二指腸乳頭部癌の危険因子
十二指腸乳頭部癌には疫学的にエビデンスのある危険因子は報告されていない。十二指腸乳頭腺腫は前癌病変と考えられており,癌病巣周囲には30〜91%の症例で腺腫病変が混在し,腺腫から癌への移行も観察されると報告されている23〜25)。分子生物学的には乳頭部癌にはK-Ras のmutation が37〜41%にみられ,K-Ras mutation がみられる乳頭部癌周囲の腺腫様病変の96%にK-Ras mutation が認められることよりadenoma-carcinoma sequence の存在が疑われている25,26)。家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis, FAP)に乳頭部腺腫を合併する頻度が高いことが知られている。FAP では大腸だけでなく十二指腸病変でもadenoma-carcinoma sequence が存在し癌化をきたすため,重要な予後因子とされている27)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Borena W, Edlinger M, Bjørge T, Häggström C, Lindkvist B, Nagel G, et al. A prospective study on metabolic risk factors and gallbladder cancer in the metabolic syndrome and cancer (Me-Can) collaborative study. PLoS One 2014;9:e89368.
- 2)
- Guo P, Xu C, Zhou Q, Zhou J, Zhao J, Si Z, et al. Number of parity and the risk of gallbladder cancer:a systematic review and dose-response meta-analysis of observational studies. Arch Gynecol Obstet 2016;293:1087-1096.
- 3)
- Gu J, Yan S, Wang B, Shen F, Cao H, Fan J, et al. Type 2 diabetes mellitus and risk of gallbladder cancer:a systematic review and meta-analysis of observational studies. Diabetes Metab Res Rev 2016;32:63-72.
- 4)
- Kamisawa T, Kuruma S, Tabata T, Chiba K, Iwasaki S, Koizumi S, et al. Pancreaticobiliary maljunction and biliary cancer. J Gastroenterol 2015;50:273-279.
- 5)
- Morine Y, Shimada M, Takamatsu H, Araida T, Endo I, Kubota M, et al. Clinical features of pancreaticobiliary maljunction:update analysis of 2nd Japan-nationwide survey. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2013;20:472-480.
- 6)
- Li Y, Wei J, Zhao Z, You T, Zhong M. Pancreaticobiliary maljunction is associated with common bile duct carcinoma:a meta-analysis. ScientificWorldJournal 2013:618670.
- 7)
- Karlsen TH, Boberg KM. Update on primary sclerosing cholangitis. J Hepatol 2013;59:571-582.
- 8)
- Cai H, Kong WT, Chen CB, Shi GM, Huang C, Shen YH, et al. Cholelithiasis and the risk of intrahepatic cholangiocarcinoma:a meta-analysis of observational studies. BMC Cancer 2015;15:831.
- 9)
- Suzuki Y, Mori T, Yokoyama M, Nakazato T, Abe N, Nakanuma Y, et al. Hepatolithiasis:analysis of Japanese nationwide surveys over a period of 40 years. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014;21:617-622.
- 10)
- Kubo S, Nakanuma Y, Takemura S, Sakata C, Urata Y, Nozawa A, et al. Case series of 17 patients with cholangiocarcinoma among young adult workers of a printing company in Japan. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014;21:479-488.
- 11)
- Kumagai S, Sobue T, Makiuchi T, Kubo S, Uehara S, Hayashi T, et al. Relationship between cumulative exposure to 1, 2-dichloropropane and incidence risk of cholangiocarcinoma among offset printing workers. Occup Environ Med 2016;73:545-552.
- 12)
- Xia J, Jiang SC, Peng HJ. Association between liver fluke infection and hepatobiliary pathological changes:a systematic review and meta-analysis. PLoS One 2015;10:e0132673.
- 13)
- Diehl AK. Gallstone size and the risk of gallbladder cancer. JAMA 1983;250:2323-2326.
- 14)
- Scott TE, Carroll M, Cogliano FD, Smith BF, Lamorte WW. A case-control assessment of risk factors for gallbladder carcinoma. Dig Dis Sci 1999;44:1619-1625.
- 15)
- Serra I, Yamamoto M, Calvo A, Cavada G, Báez S, Endoh K, et al. Association of chili pepper consumption, low socioeconomic status and longstanding gallstones with gallbladder cancer in a Chilean population. Int J Cancer 2002;102:407-411.
- 16)
- Sheth S, Bedford A, Chopra S. Primary gallbladder cancer:recognition of risk factors and the role of prophylactic cholecystectomy. Am J Gastroenterol 2000;95:1402-1410.
- 17)
- Pilgrim CH, Groeschl RT, Christians KK, Gamblin TC. Modern perspectives on factors predisposing to the development of gallbladder cancer. HPB(Oxford) 2013;15:839-844.
- 18)
- Schnelldorfer T. Porcelain gallbladder:a benign process or concern for malignancy? J Gastrointest Surg 2013;17:1161-1168.
- 19)
- Nagaraja V, Eslick GD. Systematic review with meta-analysis:the relationship between chronic Salmonella typhi carrier status and gallbladder cancer. Aliment Pharmacol Ther 2014;39:745-750.
- 20)
- Ootani T, Shirai Y, Tsukada K, Muto T. Relationship between gallbladder carcinoma and the segmental type of adenomyomatosis of the gallbladder. Cancer 1992;69:2647-2652.
- 21)
- Nabatame N, Shirai Y, Nishimura A, Yokoyama N, Wakai T, Hatakeyama K. High risk of gallbladder carcinoma in elderly patients with segmental adenomyomatosis of the gallbladder. J Exp Clin Cancer Res 2004;23:593-598.
- 22)
- 守 慶,窪川良広,崔 仁煥,須山正文,信川文誠.胆囊腺筋腫症に合併した胆囊癌の臨床病理学的検討.胆道2010;24:675-682.
- 23)
- Kaiser A, Jurowich C, Schönekäs H, Gebhardt C, Wünsch PH. The adenoma-carcinoma sequence applies to epithelial tumours of the papilla of Vater. Z Gastroenterol 2002;40:913-920.
- 24)
- Baczako K, Büchler M, Beger HG, Kirkpatrick CJ, Haferkamp O. Morphogenesis and possible precursor lesions of invasive carcinoma of the papilla of Vater:epithelial dysplasia and adenoma. Hum Pathol 1985;16:305-310.
- 25)
- Takashima M, Ueki T, Nagai E, Yao T, Yamaguchi K, Tanaka M, et al. Carcinoma of the ampulla of Vater associated with or without adenoma:a clinicopathologic analysis of 198 cases with reference to p53 and Ki-67 immunohistochemical expressions. Mod Pathol 2000;13:1300-1307.
- 26)
- Howe JR, Klimstra DS, Cordon-Cardo C, Paty PB, Park PY, Brennan MF. K-ras mutation in adenomas and carcinomas of the ampulla of Vater. Clin Cancer Res 1997;3:129-133.
- 27)
- Groves CJ, Saunders BP, Spigelman AD, Phillips RK. Duodenal cancer in patients with familial adenomatous polyposis(FAP):results of a 10 year prospective study. Gut 2002;50:636-641.
- CQ2
- 膵・胆管合流異常に予防的手術は行うべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- 膵・胆管合流異常は胆道癌の危険因子であり,診断確定後は積極的な手術加療が必要である。胆管拡張型には肝外胆管切除+胆道再建(分流手術)を,胆管非拡張型には胆囊摘出術を行うことを推奨する。
解説
膵・胆管合流異常は解剖学的に膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天性の形成異常である1)。十二指腸乳頭部括約筋の作用が膵管と胆管の合流部に及ばないことから,胆管・胆囊上皮が逆流した膵液に長期間曝露され,慢性炎症を基盤とするhyperplasia-dysplasia-carcinoma sequence が誘導されるため,高率に胆道癌を引き起こすとされている2,3)。 膵・胆管合流異常には,胆管の拡張を認める胆管拡張型と,胆管に拡張を認めない胆管非拡張型がある1)。日本膵・胆管合流異常研究会が1990 年から2007 年に行った2,561 例に対する全国集計では,成人における胆道癌合併頻度は,胆管拡張型で21.6% (215/997 例),胆管非拡張型で42.4%(218/514 例)と高率であった4)。胆道癌の局在は,胆管拡張型では胆囊癌62.3%,胆管癌32.1%,胆囊+胆管癌4.7%,胆管非拡張型では胆囊癌88.1%,胆管癌7.3%,胆囊+胆管癌4.1% であり,胆管拡張の有無にかかわらず胆囊癌の合併が最も高頻度であった4)。胆管・胆囊上皮が長期間膵液に曝露される膵・胆管合流異常は胆道癌の発生母地であり,診断確定後は積極的な手術加療が推奨される5)。(レベルC)
全国集計からみた術式の報告では,胆管拡張型は胆囊摘出術に肝外胆管切除を加えた,いわゆる分流手術が94.2% とほぼ全例に施行されており,標準術式として広く受け入れられている4)。一方,胆管非拡張型については分流手術の割合は38.1% と50% 以下であった4)。胆管非拡張型に対し胆囊癌予防の観点から胆囊摘出術を行うことには異論はないが,分流手術をすべきか否かについては一定の見解が得られていない6)。胆管非拡張型に対し分流手術が推奨される理由としては,胆管癌の合併率は決して低くはないという報告や7),胆囊摘出術後の胆管癌発症報告例があること8,9),非拡張型においても切除した胆管上皮に遺伝子異常が認められることなどから10),胆管癌発症のリスクを無視できないためと考えられている11,12)。一方,胆囊摘出術のみを推奨する理由については,長期間の観察を行っても胆管癌が発症しないこと13〜15),胆管非拡張型では,胆道シンチグラフィにて発癌のリスクと考えられる胆汁うっ滞が認められないこと16),発癌に関与するとされるK-Ras の遺伝子異常が認められないこと17)などがあげられる。また,胆管非拡張型に対する手術操作によるリスク,すなわち細い胆管と消化管を吻合することによる術後の胆管狭窄や胆管炎,あるいは膵管との合流部を術中に識別することが困難であるため膵管を損傷する危険性があることなども指摘される18)。(レベルC)
小児科領域では全国集計の結果,癌非合併例では胆管拡張の有無に関係なく95% 以上の症例で分流手術が施行されていた(胆管拡張型:98.6%,胆管非拡張型:95.2%)1)。その理由として小児の大部分は症状を呈して発症するため,症状の改善を目指した治療が施行されたためと考えられている1)。ただし,術後長期間を診る小児外科医には,QOL の低下や発癌の危険性など将来にわずかでも禍根を残すことは避けるべきとの考えもあり19),発癌を予防するための分流手術の意義について結論は出ていない20)。(レベルC)
膵・胆管合流異常は女性に多い良性疾患であることから近年侵襲性と整容性を兼ねた腹腔鏡下手術が選択される機会が増えている21)。腹腔鏡下胆囊摘出術はすでに一般的な手術術式であるが,分流手術に対する腹腔鏡下手術は肝門部胆管の狭窄に対する処理や,膵内胆管の処置が不十分になる危険性もあるため21),今後,適応や手技の確立が期待される。
引用文献
- 1)
- 島田光生,神澤輝実,安藤久實,須山正文,森根裕二,森 大樹.膵・胆管合流異常の診療ガイドライン(日本膵・胆管合流異常研究会・日本胆道学会編). 胆道 2012;26:678-690.
- 2)
- Shimada K, Yanagisawa J, Nakayama F. Increased lysophosphatidylcholine and pancreatic enzyme content in bile of patients with anomalous pancreaticobiliary ductal junction. Hepatology 1991;13:438-444.
- 3)
- Tsuchida A, Itoi T. Carcinogenesis and chemoprevention of biliary tract cancer in pancreaticobiliary maljunction. World J Gastrointest Oncol 2010;2:130-135.
- 4)
- 森根裕二,島田光生,石橋広樹.膵・胆管合流異常の最前線.全国集計からみた膵・胆管合流異常.日消誌2014;111:699-705.
- 5)
- Kamisawa T, Kuruma S, Tabata T, Chiba K, Iwasaki S, Koizumi S, et al. Pancreaticobiliary maljunction and biliary cancer. J Gastroenterol 2015;50:273-279.
- 6)
- 高屋敷吏,清水宏明,大塚将之,加藤 厚,吉富秀幸,宮崎 勝.膵・胆管合流異常の診断と外科治療.胆道2014;28:172-179.
- 7)
- Funabiki T, Matsubara T, Miyakawa S, Ishihara S. Pancreaticobiliary maljunction and carcinogenesis to biliary and pancreatic malignancy. Langenbecks Arch Surg 2009;394:159-169.
- 8)
- 石橋広樹,森根裕二,森 大樹,島田光生.胆管非拡張型膵・胆管合流異常は先天性胆道拡張症より胆管癌の発生は少ないのか? ―日本膵・胆管合流異常研究会登録症例の解析―胆と膵 2012;33:61-65.
- 9)
- Yamada S, Shimada M, Utsunomiya T, Morine Y, Imura S, Ikemoto T, et al. Hilar cholangiocarcinoma accompanied by pancreaticobiliary maljunction without bile duct dilatation 20 years after cholecystectomy:report of a case. J Med Invest 2013;60:169-173.
- 10)
- Matsubara T, Sakurai Y, Zhi LZ, Miura H, Ochiai M, Funabiki T. K-ras and p53 gene mutations in noncancerous biliary lesions of patients with pancreaticobiliary maljunction. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2002;9:312-321.
- 11)
- 岩橋衆一,森根裕二,宇都宮徹,居村 暁,池本哲也,森 大樹,他.胆管非拡張型膵・胆管合流異常に対する術式:「分流手術」の立場から. 臨外2014;69:182-186.
- 12)
- 高屋敷吏,大塚将之,清水宏明,吉留博之,加藤 厚,吉富秀幸,他.胆道癌合併症例における胆管拡張形式の検討からみた膵・胆管合流異常に対する肝外胆管切除の適応.胆道2012;26:78-84.
- 13)
- 大内田次郎,千々岩一男.胆管非拡張型膵・胆管合流異常に対する術式:「胆摘のみ」の立場から. 臨外2014;69:178-181.
- 14)
- Ohuchida J, Chijiiwa K, Hiyoshi M, Kobayashi K, Konomi H, Tanaka M. Long-term results of treatment for pancreaticobiliary maljunction without bile duct dilatation. Arch Surg 2006;141:1066-1070.
- 15)
- Tsuchida A, Itoi T, Endo M, Kitamura K, Mukaide M, Itokawa F, et al. Pathological features and surgical outcome of pancreaticobiliary maljunction without dilatation of the extrahepatic bile duct. Oncol Rep 2004;11:269-276.
- 16)
- 太田岳洋,松下典正,吾妻 司,新井田達雄,高崎 健.胆管非拡張型膵・胆管合流異常に対する外科治療:胆管切除を行わない立場から. 胆と膵2004;25:41-45.
- 17)
- Masuhara S, Kasuya K, Aoki T, Yoshimatsu A, Tsuchida A, Koyanagi Y. Relation between K-ras codon 12 mutation and p53 protein overexpression in gallbladder cancer and biliary ductal epithelia in patients with pancreaticobiliary maljunction. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2000;7:198-205.
- 18)
- 安藤久實,金子健一朗. 胆管非拡張型膵胆管合流異常に対する手術術式の検討:予防的胆管切除は必要か. 胆と膵 2000;21:971-976.
- 19)
- 渡辺泰宏,土岐 彰,野田卓男,植村貞繁,戸谷拓二.肝外胆道全切除(いわゆる分流手術)とその考え方―小児外科の立場から―. 胆と膵 2001;22:489-492.
- 20)
- Ando H, Ito T, Nagaya M, Watanabe Y, Seo T, Kaneko K. Pancreaticobiliary maljunction without choledochal cysts in infants and children:clinical features and surgical therapy. J Pediatr Surg 1995;30:1658-1662.
- 21)
- Tian Y, Wu SD, Zhu AD, Chen DX. Management of type I choledochal cyst in adult:totally laparoscopic resection and Roux-en-Y hepaticoenterostomy. J Gastrointest Surg 2010;14:1381-1388.
- CQ3
- 無症状胆囊結石に胆囊摘出術は行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 胆囊壁を十分評価できる場合には,胆囊癌予防目的の胆囊摘出術は行わないことを提案する。
解説
無症状胆囊結石に対して胆囊摘出術を行うべきか否かについては古くから議論されているが,今までこれに関するランダム化比較試験は行われていない1)。無症状胆囊結石を経過観察した場合,有症状化や胆囊癌の発症が問題となる。症状として,胆囊管や頸部への結石嵌頓による疝痛発作や,胆囊炎,閉塞性黄疸,急性膵炎などの合併症状が起こる2)。無症状胆囊結石の自然史として,疝痛発作などの有症状化は10.6〜44%,合併症状は0〜8.7% とされている2〜4)。大規模なコホート研究において,腹部超音波検査で胆石を認め胆石の状態を知らされていない664 人は,平均観察期間17.4 年で8.0% が合併症状をきたしたが,80.4% は無症状のままで経過,11.6% は軽度の症状の出現のみであった。10 mm 以上の胆石,複数個,5 年以上の期間が有症状のリスクファクターであったが,良好な経過をたどるとされる2)。(レベルC)
一方,胆囊癌に胆石が合併する頻度は高く75〜90% と報告されている5,6)。しかし,先行する胆石の存在により胆囊癌発生頻度が有意に増加するという報告はみられず7),胆囊癌と胆石の直接的な因果関係については証明されていない8)。(レベルC)
胆囊癌のコホート研究と症例対照研究をまとめたメタアナリシスでは,胆石の保有が相対危険度4.9 と最も強い胆囊癌のリスクファクターであると報告されている9)。胆囊結石と胆囊癌の関連性については,3 cm 以上の大きな結石や結石の数(量)が多い症例10〜12),胆石症と診断されてから期間が長いと胆囊癌発症のリスクが高いという報告がある13)。また,胆囊壁の石灰化や陶器様胆囊が胆囊癌の合併が多いとする報告はあるが14),全く因果関係は認めないとする報告もあり15),見解は一致していない。病理組織学的検討では,胆囊結石により胆囊粘膜のdysplasia やmetaplasia の発生率が高くなるとの報告や16),胆囊粘膜のmetaplasia-dysplasia-carcinoma sequence を認め,年齢とともに進行するという報告がある17)。それらは無症状例でも認めており,無症状胆石でも胆石による胆囊粘膜への長期間の刺激が胆囊癌の発生に影響を与える可能性が示唆されている。しかし,無症状胆石症の経過観察例における胆囊癌の発生頻度は年0.01〜0.02% と低く18,19),予防的に胆囊摘出術を勧める根拠は不十分である。(レベルC)
胆囊摘出術の害として,周術期合併症と長期合併症を考慮すべきである。胆石症に対する腹腔鏡下胆囊摘出術の術中合併症は,胆管損傷0.63%,開腹を要した出血0.51%,他臓器損傷0.26% であり,術後合併症として開腹を要する後出血0.09%,術後に判明した胆管損傷0.21% と報告されている20)。また,長期合併症として腹腔内落下結石による腹腔内膿瘍,術中胆管損傷による胆管狭窄,遺残胆管結石,結石再発などが報告されている21)。頻度は低いものの手術により生命を脅かすあるいは生活を変化させる合併症が起こりうることから,無症状胆囊結石に対する胆囊摘出術は慎重に選択すべきである。(レベルC)
無症状胆囊結石は長期間経過観察しても胆囊癌が発生する危険性は少なく,胆囊癌に対する予防的胆囊摘出術を勧める根拠は不十分である。腹部超音波検査で胆囊壁が十分評価できる症例では切除を行わず,胆囊癌発生の可能性を考慮し経過観察を行うことを提案する。結石のサイズが大きく,結石数が多い場合,胆囊結石と診断されてから期間が長い場合などは,無症状であっても個々の症例への十分なインフォームドコンセントを行った上で手術適応を決定するのが望ましい。
引用文献
- 1)
- Gurusamy KS, Samraj K. Cholecystectomy versus no cholecystectomy in patients with silent gallstones. Cochrane Database Syst Rev 2007;24:CD006230.
- 2)
- Shabanzadeh DM, Sørensen LT, Jørgensen T. A prediction rule for risk stratification of incidentally discovered gallstones:results from a large cohort study. Gastroenterology 2016;150:156-167.
- 3)
- McSherry CK, Ferstenberg H, Calhoun WF, Lahman E, Virshup M. The natural history of diagnosed gallstone disease in symptomatic and asymptomatic patients. Ann Surg 1985;202:59-63.
- 4)
- Festi D, Reggiani ML, Attili AF, Loria P, Pazzi P, Scaioli E, et al. Natural history of gallstone disease:Expectant management or active treatment? results from a population-based cohort study. J Gastroenterol Hepatol 2010;25:719-724.
- 5)
- Tewari M. Contribution of silent gallstones in gallbladder cancer. J Surg Oncol 2006;93:629-632.
- 6)
- Sakorafas GH, Milingos D, Peros G. Asymptomatic cholelithiasis:is cholecystectomy really needed? A critical reappraisal 15 years after the introduction of laparoscopic cholecystectomy. Dig Dis Sci 2007;52:1313-1325.
- 7)
- Gracie WA, Ransohoff DF. The natural history of silent gallstones:the innocent gallstone is not a myth. N Engl J Med 1982;307:798-800.
- 8)
- Gurusamy KS, Davidson BR. Surgical treatment of gallstones. Gastroenterol Clin North Am 2010;39:229-244.
- 9)
- Randi G, Franceschi S, La Vecchia C. Gallbladder cancer worldwide:geographical distribution and risk factors. Int J Cancer 2006;118:1591-1602.
- 10)
- Lowenfels AB, Walker AM, Althaus DP, Townsend G, Domellöf L. Gallstone growth, size, and risk of gallbladder cancer:an interracial study. Int J Epidemiol 1989;18:50-54.
- 11)
- Diehl AK. Gallstone size and the risk of gallbladder cancer. JAMA 1983;250:2323-2326.
- 12)
- Roa I, Ibacache G, Roa J, Araya J, de Aretxabala X, Muñoz S. Gallstones and gallbladder cancer-volume and weight of gallstones are associated with gallbladder cancer:a case-control study. J Surg Oncol 2006;93:624-628.
- 13)
- Serra I, Yamamoto M, Calvo A, Cavada G, Báez S, Endoh K, et al. Association of chili pepper consumption, low socioeconomic status and longstanding gallstones with gallbladder cancer in a Chilean population. Int J Cancer 2002;102:407-411.
- 14)
- Stephen AE, Berger DL. Carcinoma in the porcelain gallbladder:a relationship revisited. Surgery 2001;129:699-703.
- 15)
- Towfigh S, McFadden DW, Cortina GR, Thompson JE Jr, Tompkins RK, Chandler C, et al. Porcelain gallbladder is not associated with gallbladder carcinoma. Am Surg 2001;67:7-10.
- 16)
- Yamagiwa H. Mucosal dysplasia of gallbladder:isolated and adjacent lesions to carcinoma. Jpn J Cancer Res 1989;80:238-243.
- 17)
- Meirelles-Costa AL, Bresciani CJ, Perez RO, Bresciani BH, Siqueira SA, Cecconello I. Are histological alterations observed in the gallbladder precancerous lesions? Clinics(Sao Paulo) 2010;65:143-150.
- 18)
- Sheth S, Bedford A, Chopra S. Primary gallbladder cancer:recognition of risk factors and the role of prophylactic cholecystectomy. Am J Gastroenterol 2000;95:1402-1410.
- 19)
- Attili AF, De Santis A, Capri R, Repice AM, Maselli S. The natural history of gallstones:the GREPCO experience. The GREPCO Group. Hepatology 1995;21:655-660.
- 20)
- 内視鏡外科手術に関するアンケート調査―第12 回集計結果報告―.日内視鏡外会誌 2014;19:498-632
- 21)
- 石和直樹,山本裕司,田中聡一,山田六平,和田修幸,熊切 寛,他.腹腔鏡下胆囊摘出術の晩期合併症.外科2000;62:329-332.
- CQ4
- どのような胆囊ポリープに対して癌を疑うべきか?[Background Question]
- レベルC
- 大きさ10 mm 以上,大きさにかかわらず広基性,あるいは画像上増大傾向を認める場合,胆囊癌を疑うべきである。
解説
胆囊ポリープとは20 mm 程度までの胆囊の限局性小隆起性病変の総称であり,良悪性を問わず上皮性,非上皮性,非腫瘍性の様々な病変を含む。10 mm 以上,広基性,充実性低エコー,増大傾向があれば胆囊癌の可能性があり,胆囊摘出術が勧められる1〜5)。(エビデンスレベルC)
検診などで指摘される10 mm 以下の多発するポリープの多くはコレステロールポリープであり,その多くは肥満や脂肪肝との関連がある6)。腹部超音波検査(US)で偶然発見された10 mm 以下の胆囊ポリープ346 例を経過観察した検討では,癌化した症例は1 例もなく長期経過観察も不要とされている7)。203 例の胆囊ポリープを半年ごとにUS で経過観察した研究ではポリープ増大例も含めて胆囊癌を1 例も認めておらず,6 mm 以下のポリープの経過観察は医療経済上も不利益であり不要とされている8)。腺腫ないし腺腫内癌を念頭に胆囊ポリープを厳密に経過観察することに否定的な意見は,胆囊癌の多くが平坦なdysplasia-carcinoma sequence9)をとり,adenoma-carcinoma sequence が稀とされているためである10)。(レベルC)
胆囊摘出術後,偶発的に胆囊癌と診断された33 例の術前診断の多くは胆囊結石症(13 例,39%)や胆囊ポリープ(11 例,33%)であり,occult cancer を念頭に術前画像診断を行う必要がある11)。US 上悪性を疑う所見(10 mm 以上,増大傾向など)で胆囊摘出術を行った胆囊ポリープ152 例の術後所見は,41 例(27%)にポリープを認めたが102 例(67%)は胆囊結石のみで病理学的にはポリープを認めなかった12)。ポリープ41 例の病理学的検索ではコレステロールポリープが20 例(13%)と最も多く,腺腫は5 例(3%),腺癌は僅かに1 例(0.65%)のみであった。検診で発見された胆囊ポリープ2,152 例中16 例の切除例(増大,10 mm 以上)を検討した報告では,コレステロールポリープ12 例,乳頭状過形成1 例,炎症性ポリープ1 例,管状腺腫1 例,腺腫内癌1 例,であった13)。腺腫ないし腺腫内癌は内部エコーが均一,実質様で肝臓と等エコーを示し,良性ポリープでは小囊胞状構造,高エコースポットを示すことが多く鑑別に役立つとされる。原発性硬化性胆管炎に合併する胆囊ポリープは胆囊癌の危険因子であるが胆囊摘出術後の合併症が多いことから8 mm 以下では他に悪性所見がなければ経過観察することが勧められている14)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- 有坂好史,竹中 完,塩見英之,東 健.胆囊ポリープの診断と取扱い. 日消誌 2015;112:444-455.
- 2)
- Chijiiwa K, Tanaka M. Polypoid lesion of the gallbladder:indications of carcinoma and outcome after surgery for malignant polypoid lesion. Int Surg 1994;79:106-109.
- 3)
- Kubota K, Bandai Y, Noie T, Ishizaki Y, Teruya M, Makuuchi M. How should polypoid lesions of the gallbladder be treated in the era of laparoscopic cholecystectomy? Surgery 1995;117:481-487.
- 4)
- Park JK, Yoon YB, Kim YT, Ryu JK, Yoon WJ, Lee SH, et al. Management strategies for gallbladder polyps:is it possible to predict malignant gallbladder polyps? Gut Liver 2008;2:88-94.
- 5)
- Kwon W, Jang JY, Lee SE, Hwang DW, Kim SW. Clinicopathologic features of polypoid lesions of the gallbladder and risk factors of gallbladder cancer. J Korean Med Sci 2009;24:481-487.
- 6)
- Lim SH, Kim D, Kang JH, Song JH, Yang SY, Yim JY, et al. Hepatic fat, not visceral fat, is associated with gallbladder polyps:a study of 2643 healthy subjects. J Gastroenterol Hepatol 2015;30:767-774.
- 7)
- Corwin MT, Siewert B, Sheiman RG, Kane RA. Incidentally detected gallbladder polyps:Is follow-up necessary? – Long-term clinical and US analysis of 346 patients. Radiology 2011;258:277-282.
- 8)
- Pedersen MR, Dam C, Rafaelsen SR. Ultrasound follow-up for gallbladder polyps less than 6 mm may not be necessary. Dan Med J 2012;59:A4503.
- 9)
- Yamagiwa H. Mucosal dysplasia of gallbladder:isolated and adjacent lesions to carcinoma. Jpn J Cancer Res 1989;80:238-243.
- 10)
- Pilgrim CH, Groeschl RT, Christians KK, Gamblin TC. Modern perspectives on factors predisposing to the development of gallbladder cancer. HPB(Oxford) 2013;15:839-844.
- 11)
- Cha BH, Bae JM. Comparison of clinical outcomes of incidental and non-incidental gallbladder cancers:a single-center cross-sectional study. Asian Pac J Cancer Prev 2014;15:1281-1283.
- 12)
- Matłok M, Migaczewski M, Major P, Pędziwiatr M, Budzyński P, Winiarski M, et al. Laparoscopic cholecystectomy in the treatment of gallbladder polypoid lesions:15 years of experience. Pol Przegl Chir 2013;85:625-629.
- 13)
- 小坂俊仁,乾 和郎,芳野純治,若林貴夫,小林 隆,三好広尚,他.検診で発見された胆囊ポリープ切除例の検討.日消がん検診誌 2012;50:529-536.
- 14)
- Karlsen TH, Boberg KM. Update on primary sclerosing cholangitis. J Hepatol 2013;59:571-582.
第IV章.診断
- CQ5
- 胆道癌を疑う臨床症状は?[Background Question]
- レベルC
- 黄疸,右上腹部痛,体重減少などがある。
解説
1)胆管癌
胆管癌の初発症状は胆道閉塞の症状である黄疸が約90%と最も多く,続いて体重減少(約35%),腹痛(約30%)などとされている1,2)。特に肝門部領域胆管癌における黄疸症例の比率は72%と報告されている3)。本邦では無黄疸発見例も約半数と報告されており4),無黄疸例のうち採血で肝機能障害を指摘されて発見されるのが約1/3 と報告されている5)。(レベルC)
2)胆囊癌
胆囊癌の初発症状は右上腹部痛(50〜80%),黄疸(10〜44%),悪心嘔吐(15〜68%),体重減少(10〜72%)と報告されている6〜9)。黄疸例(肝外胆管浸潤例)は拡大切除を要するため死亡率も7〜11% と高く,切除後生存期間の中間値も14〜18 ヵ月と不良である9,10)。無黄疸例は検診での腹部超音波検査や胆石症に対する胆囊摘出術で偶然発見される11)。(レベルC)
3) 乳頭部癌
乳頭部癌の初発症状は胆管癌と同じく黄疸発症が72〜90% と最も多く,発熱,腹痛などが続く12,13)。無黄疸で発見された症例の発見動機としては,発熱や腹痛(65%),全身倦怠感(13%)などの症状に続いて,無症状での発見例として腹部超音波検査での胆道系異常指摘(13%),上部消化管内視鏡検査での乳頭部異常所見指摘(9%)などが報告されている14)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Aljiffry M, Abdulelah A, Walsh M, Peltekian K, Alwayn I, Molinari M. Evidence-based approach to cholangiocarcinoma:a systematic review of the current literature. J Am Coll Surg 2009;208:134-147.
- 2)
- DeOliveira ML, Cunningham SC, Cameron JL, Kamanger F, Winter JM, Lillemoe KD, et al. Cholangiocarcinoma:thirty-one-year experience with 564 patients at a single institution. Ann Surg 2007;245:755-762.
- 3)
- Nagino M, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, et al. Evolution of surgical treatment for perihilar cholangiocarcinoma:a single-center 34-year review of 574 consecutive resections. Ann Surg 2013;258:129-140.
- 4)
- 小林省吾,永野浩昭,土岐祐一郎,森 正樹.肝外胆管(胆管,胆囊管,総胆管)腫瘍 肝外胆管系腫瘍(良性,悪性).日本臨床 2011;別冊(肝・胆道系症候群Ⅲ): 36-40.
- 5)
- 広松 孝,長谷川洋,坂本英至,小松俊一郎,田畑智丈,夏目誠治,他.内視鏡下生検が診断に有効であった無黄疸早期胆管癌の1 例:本邦報告73 例の検討.胆道 2007;21:75-81.
- 6)
- Cubertafond P, Gainant A, Cucchiaro G. Surgical treatment of 724 carcinomas of the gallbladder:results of the French surgical association survey. Ann Surg 1994;219:275-280.
- 7)
- Misra S, Chaturvedi A, Misra NC, Sharma ID. Carcinoma of the gallbladder. Lancet Oncol 2003;4:167-176.
- 8)
- Konstantinidis IT, Deshpande V, Genevay M, Berger D, Fernandez-del Castillo C, Tanabe KK, et al. Trends in presentation and survival for gallbladder cancer during a period of more than 4 decades:a single-institution experience. Arch Surg 2009;144:441-447.
- 9)
- Tran TB, Norton JA, Ethun CG, Pawlik TM, Buettner S, Schmidt C, et al. Gallbladder cancer presenting with jaundice:uniformly fatal or still potentially curable? J Gastrointest Surg 2017;21:1245-1253.
- 10)
- Nishio H, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Nagino M. Gallbladder cancer involving the extrahepatic bile duct is worthy of resection. Ann Surg 2011;253:953-960.
- 11)
- 三好広尚,乾 和郎,芳野純治,服部昌志,若林貴夫,奥嶋一武,他.胆囊癌の超音波診断の現況と問題点.肝胆膵2006;53:201-204.
- 12)
- Winter JM, Cameron JL, Olino K, Herman JM, de Jong MC, Hruban RH, et al. Clinicopathologic analysis of ampullary neoplasms in 450 patients:implications for surgical strategy and long-term prognosis. J Gastrointest Surg 2010;14:379-387.
- 13)
- Nieveen Van Dijkum EJ, Terwee CB, Oosterveld P, Van Der Meulen JH, Gouma DJ, De Haes JC. Validation of the gastrointestinal quality of life index for patients with potentially operable periampullary carcinoma. Br J Surg 2000;87:110-115.
- 14)
- Kamisawa T, Tu Y, Egawa N, Nakajima H, Horiguchi S, Tsuruta K, et al. Clinicopathologic features of ampullary carcinoma without jaundice. J Clin Gastroenterol 2006;40:162-166.
- CQ6
- 胆道癌診断のファーストステップとして行うべき検査は?
- 推奨度1
- レベルC
- 血液検査および腹部超音波検査を推奨する。
解説
ファーストステップとして行うべき検査として,低侵襲かつ簡便な検査である血液検査と腹部超音波検査が必須となる。
1)血液検査
胆管閉塞による胆道系酵素の上昇が主であり,早期胆管癌患者の約70% でALP やγ-GTP が高値を示すと報告されている1)。胆管閉塞が遷延すると肝細胞障害によるAST, ALT 上昇もみられる。しかし特異性に乏しく,ウイルス性,アルコール性などによる肝疾患との鑑別を要する2)。(レベルC)
腫瘍マーカーとしてはCEA,CA19-9 が頻用されるが,全国胆道癌登録調査ではCA19-9 の上昇は69% に認められるがCEA の上昇は18% であったと報告されている3)。海外からの報告でもCA19-9 に関してはメタアナリシス含め感度71〜72%,特異度84〜96% と報告され4,5),無黄疸の胆囊癌でも43% でCA19-9 の上昇がみられている5)。一方,CEA の感度は12% と低く,CA19-9 と比べその有用性は少ない5)。(レベルC)
2)腹部超音波検査
画像診断としては低侵襲かつベッドサイドで施行可能であり,また診断能の高い腹部超音波検査(US)が必須である。胆管癌による閉塞性肝内胆管拡張は78〜98% で正診でき6),肝外胆管癌の診断に関しては感度89%,正診率80〜90% であった7,8)。上流から下流にいくに従って腫瘍の正診率は84%,57%,37% と低下するとの報告もある9)。(レベルC)
US の胆囊腫瘍描出能は極めて高く,胆囊腫瘍の中での胆囊癌の正診率においても70〜90% と高率である10)。さらに高解像度超音波11),超音波ドプラ法12),超音波造影剤10,13)を用いることにより,正診率がさらに上昇すると報告されている。
乳頭部癌では93% の症例で胆管拡張を指摘し得たが,乳頭部腫瘍そのものの描出は27% と低率であったと報告されている14)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Cha JM, Kim MH, Lee SK, Seo DW, Lee SS, Lee JH, et al. Clinicopathological review of 61 patients with early bile duct cancer. Clin Oncol(R Coll Radiol) 2006;18:669-677.
- 2)
- Stepien M, Fedirko V, Duarte-Salles T, Ferrari P, Freisling H, Trepo E, et al. Prospective association of liver function biomarkers with development of hepatobiliary cancers. Cancer Epidemiol 2016;40:179-187.
- 3)
- 皆川紀剛,山口幸二.膵癌・胆道癌の腫瘍マーカー.成人病と生活習慣病 2011;41;654-660.
- 4)
- Liang B, Zhong L, He Q, Wang S, Pan Z, Wang T, et al. Diagnostic accuracy of serum CA19-9 in patients with cholangiocarcinoma:a systematic review and meta-analysis. Med Sci Monit 2015;21:3555-3563.
- 5)
- Wang YF, Feng FL, Zhao XH, Ye ZX, Zeng HP, Li Z, et al. Combined detection tumor markers for diagnosis and prognosis of gallbladder cancer. World J Gastroenterol 2014;20:4085-4092.
- 6)
- Tse F, Barkun JS, Romagnuolo J, Friedman G, Bornstein JD, Barkun AN. Nonoperative imaging techniques in suspected biliary tract obstruction. HPB(Oxford) 2006;8:409–425.
- 7)
- Aljiffry M, Abdulelah A, Walsh M, Peltekian K, Alwayn I, Molinari M. Evidence-based approach to cholangiocarcinoma:a systematic review of the current literature. J Am Coll Surg 2009;208:134-147.
- 8)
- Slattery JM, Sahani DV. What is the current state-of-the-art imaging for detection and staging of cholangiocarcinoma? Oncologist 2006;11:913-922.
- 9)
- Albu S, Tantau M, Sparchez Z, Branda H, Suteu T, Badea R, et al. Diagnosis and treatment of extrahepatic cholangiocarcinoma:results in a series of 124 patients. Rom J Gastroenterol 2005;14:33-36.
- 10)
- Inui K, Yoshino J, Miyoshi H. Diagnosis of gallbladder tumors. Intern Med 2011;50:1133-1136.
- 11)
- Kim JH, Lee JY, Baek JH, Eun HW, Kim YJ, Han JK, et al. High-resolution sonography for distinguishing neoplastic gallbladder polyps and staging gallbladder cancer. AJR Am J Roentgenol 2015;204:W150-159.
- 12)
- Hirooka Y, Naitoh Y, Goto H, Furukawa T, Ito A, Hayakawa T. Differential diagnosis of gall-bladder masses using colour Doppler ultrasonography. J Gastroenterol Hepatol 1996;11:840-846.
- 13)
- Wang W, Fei Y, Wang F. Meta-analysis of contrast-enhanced ultrasonography for the detection of gallbladder carcinoma. Med Ultrason 2016;18:281-228.
- 14)
- Chen WX, Xie QG, Zhang WF, Zhang X, Hu TT, Xu P, et al. Multiple imaging techniques in the diagnosis of ampullary carcinoma. Hepatobiliary Pancreat Dis Int 2008;7:649-653.
- CQ7
- 胆管癌診断のセカンドステップとして行うべき検査は?
- 推奨度1
- レベルA
- CT は病変の局在診断や進展度診断に有用であり,胆道ドレナージ前に行うことを推奨する。
- 推奨度2
- レベルB
- MRI(MRCP)は非侵襲的にCT とは異なる情報が得られる点で有用であり,胆道ドレナージ前に行うことを提案する。
解説
CT は簡便性,普及度,コストなどの総合的観点から,胆管癌診断のセカンドステップとして行うことが強く推奨される検査である1〜6)。CT は横断像に加え冠状断像・斜位冠状断像・矢状断像など多断面再構成画像(MPR 像)の構築が可能である。胆管狭窄部の描出や造影効果を有する壁肥厚所見から胆管癌の水平方向進展度診断7)に加えて,動脈相・門脈相の撮像により血管浸潤の評価8,9)にも有用性が高い。肝門部領域胆管癌を対象にしたメタアナリシスでは,水平方向進展度診断の正診率が86%(71〜92%),血管浸潤診断の感度,特異度は肝動脈で84%,93%,門脈で89%,92% と報告されている3)。(レベルA)
MRI(MRCP)は造影剤を用いることなく胆管の描出が可能であり,また狭窄のために直接胆道造影では描出され難い胆管枝まで画像化できる利点を有する1〜3,10)。水平方向進展度診断の正診率は,肝門部領域胆管癌のメタアナリシスで71〜80% と報告されている3)。(レベルA)
MRI(MRCP)がCT に劣る点は,造影を行わない場合には血管浸潤の判定が困難であること,検査時間が長くかかることである。一方,利点は放射線被曝がないことに加え,拡散強調画像(diffusion-weighted imaging:DWI)が病変やリンパ節転移の診断に有用なことである1)。(レベルC)
CT とMRI(MRCP)の併用は,相補的な情報収集に役立ち,併用による切除適応の判定の正診率は75%を超えると報告されている1)。ガイドライン委員の施設では,CT とMRI を両方必ず撮る施設,CT は撮るがMRI は必要に応じて撮る施設が半々程度であった。
CT とMRI はいずれも有用な検査であるが,胆道ドレナージ後は胆管壁にカテーテルによる炎症性変化が加わり,癌による壁肥厚との鑑別が困難になる。したがって,CT,MRI とも胆道ドレナージ前に施行すべきである6,7)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Mansour JC, Aloia TA, Crane CH, Heimbach JK, Nagino M, Vauthey JN. Hilar cholangiocarcinoma:expert consensus statement. HPB(Oxford)2015;17:691-699.
- 2)
- Ray CE Jr, Lorenz JM, Burke CT, Darcy MD, Fidelman N, Greene FL, et al. ACR Appropriateness Criteria radiologic management of benign and malignant biliary obstruction. J Am Coll Radiol 2013;10:567-574.
- 3)
- Ruys AT, van Beem BE, Engelbrecht MR, Bipat S, Stoker J, Van Gulik TM. Radiological staging in patients with hilar cholangiocarcinoma:a systematic review and meta-analysis. Br J Radiol 2012;85:1255-1262.
- 4)
- Okuda Y, Taura K, Seo S, Yasuchika K, Nitta T, Ogawa K, et al. Usefulness of operative planning based on 3-dimensional CT cholangiography for biliary malignancies. Surgery 2015;158:1261-1271.
- 5)
- Endo I, Shimada H, Sugita M, Fujii Y, Morioka D, Takeda K, et al. Role of three-dimensional imaging in operative planning for hilar cholangiocarcinoma. Surgery 2007;142:666-675.
- 6)
- Unno M, Okumoto T, Katayose Y, Rikiyama T, Sato A, Motoi F, et al. Preoperative assessment of hilar cholangiocarcinoma by multidetector row computed tomography. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:434-440.
- 7)
- Senda Y, Nishio H, Oda K, Yokoyama Y, Ebata T, Igami T, et al. Value of multidetector-row CT in the assessment of longitudinal extension of cholangiocarcinoma:correlation between MDCT and microscopic findings. World J Surg 2009;33:1459-1467.
- 8)
- Sugiura T, Nishio H, Nagino M, Senda Y, Ebata T, Yokoyama Y, et al. Value of multidetector-row computed tomography in diagnosis of portal vein invasion by perihilar cholangiocarcinoma. World J Surg 2008;32:1478-1484.
- 9)
- Fukami Y, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, et al. Diagnostic ability of MDCT to assess right hepatic artery invasion by perihilar cholangiocarcinoma with left-sided predominance. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2012;19:179-186.
- 10)
- Sun N, Xu Q, Liu X, Liu W, Wang J. Comparison of preoperative evaluation of malignant low-level biliary obstruction using plain magnetic resonance and coronal liver acquisition with volume acceleration technique alone and in combination. Eur J Med Res 2015;20:92.
- CQ8
- 胆管癌診断のサードステップにはどのような検査があるか?[Background Question]
- レベルC
- ERCP は水平方向進展などの精密な診断に有用である。
IDUS は深達度診断,血管浸潤や壁内進展の評価に有用である。
POCS は直視下生検が可能であり,質的診断と表層進展の診断に有用である。
EUS は質的診断および壁内進展の診断に有用である。
PET,PET-CT は遠隔転移やリンパ節転移の診断に有用である。
解説
1)ERCP,IDUS
ERCP による直接胆道造影はMRCP に比べ空間分解能に優れ,胆管狭窄に対する良悪の鑑別診断,胆管癌の水平方向進展度診断に有用であり,胆管癌を疑う場合には推奨される検査である1〜3)。肝門部領域胆管癌では肝切除術式の選択と術前胆道ドレナージが重要となるため,ERCP に引き続いて予定残肝側にENBD チューブを留置し,胆道ドレナージと造影による水平方向進展度診断が行われる2,3)。(レベルC)
また,ERCP では造影に加えて胆汁細胞診,ブラシ細胞診のほか,X 線透視下生検が可能である利点がある1)。胆汁細胞診,胆管ブラシ細胞診,透視下生検による悪性の感度は30% 前後,45% 程度,48% 程度であり4),満足すべき段階に至っていないが,改善に向けて細胞診のcell block 法5)やfluorescence in situ hybridization6,7)あるいは胆道鏡直視下生検が試みられている。(レベルC)
IDUS はERCP に引き続いてガイドワイヤー誘導下に施行可能であり,胆管癌の壁深達度,右肝動脈浸潤などの垂直方向進展および壁内進展の診断に優れている8)。(レベルC)
2)POCS
POCS は胆管内腔の詳細な観察と直視下の正確な生検を可能とし,良悪の鑑別と癌の表層進展の診断に有用である。最近,電子胆道鏡9,10)が登場したほか,処置性能を改善した新しい胆道鏡システムも開発され,診断能が向上している11,12)。(レベルC)
ただし,POCS の胆管内誘導に際して内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)を要することに留意する必要がある。
3)EUS
EUS は質的診断13),壁内進展の診断,血管浸潤の判定に有用性が高い。また,胆管原発腫瘍か周囲臓器(膵あるいは胆囊など)からの浸潤かの鑑別診断に有用であるほか,MRCP とEUS の組み合わせが早期胆管癌の診断に有用との報告もある3)。(レベルC) ただし,診断能が術者の技量に依存することが問題である。(EUS-FNA に関してはCQ13 を参照)
4)PET,PET-CT
PET およびPET-CT はリンパ節転移や遠隔転移の検出,術後再発の診断に有用である。(レベルC)
また最近では,胆管癌の局在および進展度診断に対する有用性が報告されてきている14,15)。メタアナリシスではPET もしくはPET-CT の感度,特異度は肝内胆管癌で95%,83%,肝外胆管癌で76%,74% と報告されている15)。(レベルB)
引用文献
- 1)
- American Society for Gastrointestinal Endoscopy(ASGE)Standards of Practice Committee, Anderson MA, Appalaneni V, Ben-Menachem T, Decker GA, Early DS, Evans JA, et al. The role of endoscopy in the evaluation and treatment of patients with biliary neoplasia. Gastrointest Endosc 2013;77:167-174.
- 2)
- Kawakami H, Kuwatani M, Onodera M, Haba S, Eto K, Ehira N, et al. Endoscopic nasobiliary drainage is the most suitable preoperative biliary drainage method in the management of patients with hilar cholangiocarcinoma. J Gastroenterol 2011;46:242-248.
- 3)
- Kawashima H, Itoh A, Ohno E, Itoh Y, Ebata T, Nagino M, et al. Preoperative endoscopic nasobiliary drainage in 164 consecutive patients with suspected perihilar cholangiocarcinoma:a retrospective study of efficacy and risk factors related to complications. Ann Surg 2013;257:121-127.
- 4)
- Navaneethan U, Njei B, Lourdusamy V, Konjeti R, Vargo JJ, Parsi MA. Comparative effectiveness of biliary brush cytology and intraductal biopsy for detection of malignant biliary strictures:a systematic review and meta-analysis. Gastrointest Endosc 2015;81:168-176.
- 5)
- Noda Y, Fujita N, Kobayashi G, Ito K, Horaguchi J, Hashimoto S, et al. Prospective randomized controlled study comparing cell block method and conventional smear method for bile cytology. Dig Endosc 2013;25:444-452.
- 6)
- Smoczynski M, Jablonska A, Matyskiel A, Lakomy J, Dubowik M, Marek I, et al. Routine brush cytology and fluorescence in situ hybridization for assessment of pancreatobiliary strictures. Gastrointest Endosc 2012;75:65-73.
- 7)
- Layfield LJ, Ehya H, Filie AC, Hruban RH, Jhala N, Joseph L, et al. Utilization of ancillary studies in the cytologic diagnosis of biliary and pancreatic lesions:the Papanicolaou Society of Cytopathology guidelines for pancreatobiliary cytology. Diagn Cytopathol 2014;42:351-362.
- 8)
- Tamada K, Ushio J, Sugano K. Endoscopic diagnosis of extrahepatic bile duct carcinoma:Advances and current limitations. World J Clin Oncol 2011;2:203-216.
- 9)
- Osanai M, Itoi T, Igarashi Y, Tanaka K, Kida M, Maguchi H, et al. Peroral video cholangioscopy to evaluate indeterminate bile duct lesions and preoperative mucosal cancerous extension:a prospective multicenter study. Endoscopy 2013;45:635-642.
- 10)
- Nishikawa T, Tsuyuguchi T, Sakai Y, Sugiyama H, Miyazaki M, Yokosuka O. Comparison of the diagnostic accuracy of peroral video-cholangioscopic visual findings and cholangioscopy-guided forceps biopsy findings for indeterminate biliary lesions:a prospective study. Gastrointest Endosc 2013;77:219-226.
- 11)
- Manta R, Frazzoni M, Conigliaro R, Maccio L, Melotti G, Dabizzi E, et al. SpyGlass single-operator peroral cholangioscopy in the evaluation of indeterminate biliary lesions:a single-center, prospective, cohort study. Surg Endosc 2013;27:1569-1572.
- 12)
- Ramchandani M, Reddy DN, Lakhtakia S, Tandan M, Maydeo A, Chandrashekhar TS, et al. Per oral cholangiopancreatoscopy in pancreatico biliary diseases:expert consensus statements. World J Gastroenterol 2015;21:4722-4734.
- 13)
- Alper E, Arabul M, Buyrac Z, Baydar B, Ustundag Y, Celik M, et al. The use of radial endosonography findings in the prediction of cholangiocarcinoma in cases with distal bile duct obstructions. Hepatogastroenterology 2013;60:678-683.
- 14)
- Annunziata S, Caldarella C, Pizzuto DA, Galiandro F, Sadeghi R, Giovanella L, et al. Diagnostic accuracy of fluorine-18-fluorodeoxyglucose positron emission tomography in the evaluation of the primary tumor in patients with cholangiocarcinoma:a meta-analysis. Biomed Res Int 2014:247693.
- 15)
- Cheng MF, Wang HP, Tien YW, Liu KL, Yen RF, Tzen KY, et al. Usefulness of PET/CT for the differentiation and characterization of periampullary lesions. Clin Nucl Med 2013:38:703-708.
- CQ9
- 胆囊癌診断のセカンドステップとして行うべき検査は?
- 推奨度1
- レベルC
- CT は病変の局在診断や進展度診断に有用であり,行うことを推奨する。
- 推奨度2
- レベルC
- MRI(MRCP)は非侵襲的にCT とは異なる情報が得られる点で有用であり,行うことを提案する。
解説
CT は病変の局在診断や進展度診断に有用であるが,単純CT のみでは診断能が不十分であり,造影剤の禁忌(アレルギー歴,腎機能障害,ビグアナイド系経口血糖降下剤内服)に配慮した上で2 相(動脈・門脈相)以上のダイナミックCT をセカンドステップとして行うことが強く推奨される1)。ダイナミックCT の局所進展度評価,血管浸潤や肝浸潤の診断能は高く,resectability の評価に有用である2)。リンパ節転移の検出率は38〜65%と報告されている3,4)。また,原発巣の診断において多断面再構成画像(MPR 像)は横断像のみより正診度を71.7%から84.9%に上昇させたとも報告されており5),術式など治療方針決定には重要な検査である。しかし,CT は壁内病変であるT1 癌に対して特異度は94%と高いものの感度は33%と低いと報告されており6),胆囊癌の質的診断能においては経腹壁high-resolution 超音波検査やEUS に比べ劣るという報告がある点に注意が必要である(CT の正診率が44.4% であるのに対しhigh-resolution 超音波検査62.9%,EUS 55.5%)7)。(レベルC)
MRI は非侵襲的に胆囊管や総胆管への浸潤が評価でき8,9),造影ダイナミックMRI は直接肝浸潤(感度67%,特異度89%)や血管浸潤(感度100%,特異度87%)の評価に有用である9)。なお肝病変の検出には,細胞外液分布Gd 造影剤(通常のGd 造影剤)よりも肝特異性造影剤であるGd-EOB-DTPA の方が優れているという報告もある10)。拡散強調像の質的診断に対する有用性も報告されている11,12)。その他,胆囊癌類似の所見を呈する胆囊腺筋腫症においてRokitansky-Aschoff sinuses の描出に優れており13,14),胆囊壁肥厚症例における胆囊癌の危険因子である膵・胆管合流異常の診断においても有用とされている15)。(レベルC)
なお,閉塞性黄疸を伴う症例にはCT,MRI ともに胆道ドレナージ前に施行すべきである(CQ7 参照)。
引用文献
- 1)
- Kumaran V, Gulati S, Paul B, Pande K, Sahni P, Chattopadhyay K. The role of dual-phase helical CT in assessing resectability of carcinoma of the gallbladder. Eur Radiol 2002;12:1993-1999.
- 2)
- Kalra N, Suri S, Gupta R, Natarajan SK, Khandelwal N, Wig JD, et al. MDCT in the staging of gallbladder carcinoma. AJR Am J Roentgenol 2006;186:758-762.
- 3)
- Engels JT, Balfe DM, Lee JK. Biliary carcinoma:CT evaluation of extrahepatic spread. Radiology 1989;172:35-40.
- 4)
- Ohtani T, Shirai Y, Tsukada K, Hatakeyama K, Muto T. Carcinoma of the gallbladder:CT evaluation of lymphatic spread. Radiology 1993;189:875-880.
- 5)
- Kim SJ, Lee JM, Lee JY, Choi JY, Kim SH, Han JK, et al. Accuracy of preoperative T-staging of gallbladder carcinoma using MDCT. AJR Am J Roentgenol 2008;190:74-80.
- 6)
- Yoshimitsu K, Honda H, Shinozaki K, Aibe H, Kuroiwa T, Irie H, et al. Helical CT of the local spread of carcinoma of the gallbladder:evaluation according to the TNM system in patients who underwent surgical resection. AJR Am J Roentgenol 2002;179:423-428.
- 7)
- Jang JY, Kim SW, Lee SE, Hwang DW, Kim EJ, Lee JY, et al. Differential diagnostic and staging accuracies of high resolution ultrasonography, endoscopic ultrasonography, and multidetector computed tomography for gallbladder polypoid lesions and gallbladder cancer. Ann Surg 2009;250:943-949.
- 8)
- Schwartz LH, Lefkowitz RA, Panicek DM, Coakley FV, Jarnagin W, Dematteo R, et al. Breath-hold magnetic resonance cholangiopancreatography in the evaluation of malignant pancreaticobiliary obstruction. J Comput Assist Tomogr 2003;27:307-314.
- 9)
- Kim JH, Kim TK, Eun HW, Kim BS, Lee MG, Kim PN, et al. Preoperative evaluation of gallbladder carcinoma:efficacy of combined use of MR imaging, MR cholangiography, and contrast-enhanced dual-phase three-dimensional MR angiography. J Magn Reson Imaging 2002;16:676-684.
- 10)
- Vogl TJ, Kümmel S, Hammerstingl R, Schellenbeck M, Schumacher G, Balzer T, et al. Liver tumors:comparison of MR imaging with Gd-EOB-DTPA and Gd-DTPA. Radiology 1996;200:59-67.
- 11)
- Lee NK, Kim S, Kim TU, Kim DU, Seo HI, Jeon TY. Diffusion-weighted MRI for differentiation of benign from malignant lesions in the gallbladder. Clin Radiol 2014;69:e78-85.
- 12)
- Kitazume Y, Taura S, Nakaminato S, Noguchi O, Masaki Y, Kasahara I, et al. Diffusion-weighted magnetic resonance imaging to differentiate malignant from benign gallbladder disorders. Eur J Radiol 2016;85:864-873.
- 13)
- Haradome H, Ichikawa T, Sou H, Yoshikawa T, Nakamura A, Araki T, et al. The pearl necklace sign:an imaging sign of adenomyomatosis of the gallbladder at MR cholangiopancreatography. Radiology 2003;227:80-88.
- 14)
- Bang SH, Lee JY, Woo H, Joo I, Lee ES, Han JK, et al. Differentiating between adenomyomatosis and gallbladder cancer:revisiting a comparative study of high-resolution ultrasound, multidetector CT, and MR imaging. Korean J Radiol 2014;15:226-234.
- 15)
- Takuma K, Kamisawa T, Tabata T, Hara S, Kuruma S, Inaba Y, et al. Importance of early diagnosis of pancreaticobiliary maljunction without biliary dilatation. World J Gastroenterol 2012;18:3409-3414.
- CQ10
- 胆囊癌診断のサードステップにはどのような検査があるか?[Background Question]
- レベルC
- EUS は局在診断,質的診断および進展度診断に有用である。
ERCP は局在診断,質的診断および進展度診断に有用である。
POCS は直視下生検が可能であり,胆管への表層進展の診断に有用である。
PET,PET-CT は遠隔転移やリンパ節転移の診断に有用である。
解説
1)EUS
EUS は腹部超音波検査(US)に比較して胆囊隆起性病変の診断能に優れており, US の感度,特異度が54.2%, 53.8% に対してEUS は91.7%, 87.7% であった1)。また,CT と比較しても胆囊内隆起性病変の感度についてはEUS が86%, CT が72% とEUS の方が優れていた。一方, 1 cm 以下の小病変においてはEUS でも良悪性の鑑別は困難である2)。胆囊隆起性病変の良悪性の鑑別においてはEUS スコアリングシステムが提案されており3),感度,特異度はそれぞれ81%, 86% であった。胆囊癌の深達度診断の正診率はEUS で55.5%,CT で44.4% とEUS が優れていた4)。(レベルC)
近年,胆囊隆起性病変や壁肥厚の診断において超音波造影剤を用いた造影EUS(CE-EUS)の有用性も示唆されている5〜7)。造影パターンに基づいたCE-EUS の胆囊癌に対する感度,特異度はconventional EUS の90.0%, 91.1% に対して93.5%, 93.2% と優れていた5)。しかし,胆囊病変に対するCE-EUS の報告はまだ限られており,造影経腹壁超音波より真に優れているかは明らかではない。また,本邦ではEUS 下の超音波造影剤の使用はいまだ保険適応外であり,使用には慎重を要する。(レベルC)(EUS-FNA に関してはCQ13 を参照)
2)ERCP,POCS
直接造影や胆管粘膜の内視鏡観察により,胆囊管ならびに総肝管への浸潤の評価に有用である8,9)。また,両検査法は胆囊胆汁細胞診10)や直視下生検8)が可能であり,胆囊病変や胆囊癌による胆道狭窄の鑑別に有用である。しかし,胆囊癌の胆管浸潤診断におけるPOCS の適応は限定的であり,実際にこれを施行している施設は少ないと思われる。(レベルC)
3)PET,PET-CT
原発巣の診断においてはPET-CT とCT は同等であるが,リンパ節転移の診断では陽性適中率がCT で77.5% に対しPET-CT は94.1%11),正診率もCT で60.9% に対しPET-CT は75.9% と有意に優れていた12)。また,遠隔転移の診断においてもPET-CT はCT よりも優れており,resectability の評価に有用である11,12)。さらにPET-CT は従来の画像診断法に比較して再発診断にも優れていると報告されている13,14)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Azuma T, Yoshikawa T, Araida T, Takasaki K. Differential diagnosis of polypoid lesions of the gallbladder by endoscopic ultrasonography. Am J Surg 2001;181:65-70.
- 2)
- Cheon YK, Cho WY, Lee TH, Cho YD, Moon JH, Lee JS, et al. Endoscopic ultrasonography does not differentiate neoplastic from non-neoplastic small gallbladder polyps. World J Gastroenterol 2009;15:2361-2366.
- 3)
- Choi WB, Lee SK, Kim MH, Seo DW, Kim HJ, Kim DI, et al. A new strategy to predict the neoplastic polyps of the gallbladder based on a scoring system using EUS. Gastrointest Endosc 2000;52:372-379.
- 4)
- Jang JY, Kim SW, Lee SE, Hwang DW, Kim EJ, Lee JY, et al. Differential diagnostic and staging accuracies of high resolution ultrasonography, endoscopic ultrasonography, and multidetector computed tomography for gallbladder polypoid lesions and gallbladder cancer. Ann Surg 2009;250:943-949.
- 5)
- Choi JH, Seo DW, Choi JH, Park DH, Lee SS, Lee SK, et al. Utility of contrast-enhanced harmonic EUS in the diagnosis of malignant gallbladder polyps(with videos). Gastrointest Endosc 2013;78:484-493.
- 6)
- Hirooka Y, Naitoh Y, Goto H, Ito A, Hayakawa S, Watanabe Y, et al. Contrast-enhanced endoscopic ultrasonography in gallbladder diseases. Gastrointest Endosc 1998;48:406-410.
- 7)
- Park CH, Chung MJ, Oh TG, Park JY, Bang S, Park SW, et al. Differential diagnosis between gallbladder adenomas and cholesterol polyps on contrast-enhanced harmonic endoscopic ultrasonography. Surg Endosc 2013;27:1414-1421.
- 8)
- Ramchandani M, Reddy DN, Gupta R, Lakhtakia S, Tandan M, Darisetty S, et al. Role of single-operator peroral cholangioscopy in the diagnosis of indeterminate biliary lesions:a single-center, prospective study. Gastrointest Endosc 2011;74:511-519.
- 9)
- Tsukada K, Takada T, Miyazaki M, Miyakawa S, Nagino M, Kondo S, et al. Diagnosis of biliary tract and ampullary carcinomas. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2008;15:31-40.
- 10)
- Itoi T, Sofuni A, Itokawa F, Kurihara T, Tsuchiya T, Moriyasu F, et al. Preoperative diagnosis and management of thick-walled gallbladder based on bile cytology obtained by endoscopic transpapillary gallbladder drainage tube. Gastrointest Endosc 2006;64:512-519.
- 11)
- Lee SW, Kim HJ, Park JH, Park DI, Cho YK, Sohn CI, et al. Clinical usefulness of 18F-FDG PET-CT for patients with gallbladder cancer and cholangiocarcinoma. J Gastroenterol 2010;45:560-566.
- 12)
- Kim JY, Kim MH, Lee TY, Hwang CY, Kim JS, Yun SC, et al. Clinical role of 18F-FDG PET-CT in suspected and potentially operable cholangiocarcinoma:a prospective study compared with conventional imaging. Am J Gastroenterol 2008;103:1145-1151.
- 13)
- Kitajima K, Murakami K, Kanegae K, Tamaki N, Kaneta T, Fukuda H, et al. Clinical impact of whole body FDG-PET for recurrent biliary cancer:a multicenter study. Ann Nucl Med 2009;23:709-715.
- 14)
- Kumar R, Sharma P, Kumari A, Halanaik D, Malhotra A. Role of 18F-FDG PET/CT in detecting recurrent gallbladder carcinoma. Clin Nucl Med 2012;37:431-435.
- CQ11
- 乳頭部癌診断のセカンドステップとして行うべき検査は?
- 推奨度1
- レベルC
- 上部消化管内視鏡検査を行い,腫瘍が疑われた場合は生検を行うことを推奨する。
- 推奨度1
- レベルC
- CT は病変の局在診断や進展度診断に有用であり,行うことを推奨する。
- 推奨度2
- レベルC
- MRI(MRCP)は非侵襲的にCT とは異なる情報が得られる点で有用であり,行うことを提案する。
解説
1)上部消化管内視鏡検査,内視鏡下生検
乳頭部癌は肉眼的形態から腫瘤型,混在型,潰瘍型,その他(正常型,ポリープ型,特殊型)に分類される1)。前3 者およびポリープ型は内視鏡像から強く疑診を持つことができ,引き続き生検を行うことにより組織診断を得る。正常型では内視鏡的乳頭切開術後に生検を行うことにより診断を確定する。乳頭部腫瘍は生検で腺腫と診断されても切除標本では癌が存在する場合が珍しくなく,生検での乳頭部癌の感度は37〜77%,正診率は70〜81% と報告されている2〜6)。乳頭部癌は発癌過程でadenoma-carcinoma sequence が疑われており,放置すれば癌になる可能性があること,腺腫と診断されても腺腫内癌の可能性があることなどから原則,治療の対象となる。腫瘍全生検の手段として,内視鏡的乳頭切除術の意義を評価する意見がある2)。通常生検の限界を踏まえ,内視鏡的乳頭切除術を用いた全生検により病変全体を検討したうえで最終的な診療方針を決定するという立場である。通常生検の診断能は腫瘍の形態により異なり,非露出腫瘤型で50%,露出腫瘤型で64%,潰瘍型で88% と報告されている2)。(レベルC)
2)CT
乳頭部癌は遠隔転移とリンパ節転移の有無により治療方針が異なってくるため,内視鏡検査とともにCT による評価も重要である。局所評価に関して,CT での進展度の診断精度は26%〜60%7〜10)と中等度であり,進行癌(ステージT3/T4)の診断には有用であるが小さな病変の検出と評価は十分とは言えない10)。一方,CT は胸部から骨盤を1 回で撮影可能であり,遠隔転移とリンパ節転移の診断には必須の検査となる。また病変と周囲脈管,臓器との解剖学的位置関係を詳細に評価可能なことも利点となる。リンパ節は10 mm 以上あるいは内部に造影不良を伴う場合に転移と診断するのが一般的であるが,CT の感度は44〜59% と報告されており,診断精度は中等度である7,8,10)。(レベルC)
3)MRI,MRCP
MRI の局所評価は,通常の造影MRI に拡散強調像を加えて撮影することで良悪性鑑別の精度が85〜87%から97〜98% に上がったとの報告がある11)。MRCP では胆管,膵管の解剖や狭窄範囲を非侵襲的に評価できることが優れている。転移性肝腫瘍の検出に関して,乳頭部癌で肝特異性造影剤(Gd-EOB-DTPA)を用いたMRI とCT とを比較した報告はないが,大腸癌や膵癌ではMRI の方がCT よりも有意に優れていると報告されており12,13),MRI は肝転移の診断にも有用である。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Miyazaki M, Ohtsuka M, Miyakawa S, Nagino M, Yamamoto M, Kokudo N, et al. Classification of biliary tract cancers established by the Japanese Society of Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery:3rd English edition. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2015;22:181-196.
- 2)
- Yamaguchi K, Enjoji M, Kitamura K. Endoscopic biopsy has limited accuracy in diagnosis of ampullary tumors. Gastrointest Endosc 1990;36:588-592.
- 3)
- Menzel J, Poremba C, Dietl KH, Böcker W, Domschke W. Tumors of the papilla of Vater – inadequate diagnostic impact of endoscopic forceps biopsies taken prior to and following sphincterotomy. Ann Oncol 1999;10:1227-1231.
- 4)
- Beger HG, Treitschke F, Gansauge F, Harada N, Hiki N, Mattfeldt T. Tumor of the ampulla of Vater:experience with local or radical resection in 171 consecutively treated patients. Arch Surg 1999;134:526-532.
- 5)
- Elek G, Gyôri S, Tóth B, Pap A. Histological evaluation of preoperative biopsies from ampulla Vateri. Pathol Oncol Res 2003;9:32-41.
- 6)
- Lee HS, Jang JS, Lee S, Yeon MH, Kim KB, Park JG, et al. Diagnostic accuracy of the initial endoscopy for ampullary tumors. Clin Endosc 2015;48:239-246.
- 7)
- Chen CH, Yang CC, Yeh YH, Chou DA, Nien CK. Reappraisal of endosonography of ampullary tumors:correlation with transabdominal sonography, CT, and MRI. J Clin Ultrasound 2009;37:18-25.
- 8)
- Artifon EL, Couto D Jr, Sakai P, da Silveira EB. Prospective evaluation of EUS versus CT scan for staging of ampullary cancer. Gastrointest Endosc 2009;70:290-296.
- 9)
- Lee M, Kim MJ, Park MS, Choi JY, Chung YE. Using multi-detector-row CT to diagnose ampullary adenoma or adenocarcinoma in situ. Eur J Radiol 2011;80:e340-345.
- 10)
- Menzel J, Hoepffner N, Sulkowski U, Reimer P, Heinecke A, Poremba C, et al. Polypoid tumors of the major duodenal papilla:preoperative staging with intraductal US, EUS, and CT:a prospective, histopathologically controlled study. Gastrointest Endosc 1999;49:349-357.
- 11)
- Jang KM, Kim SH, Lee SJ, Park HJ, Choi D, Hwang J. Added value of diffusion-weighted MR imaging in the diagnosis of ampullary carcinoma. Radiology 2013;266:491-501.
- 12)
- Motosugi U, Ichikawa T, Morisaka H, Sou H, Muhi A, Kimura K, et al. Detection of pancreatic carcinoma and liver metastases with gadoxetic acid-enhanced MR imaging:comparison with contrast-enhanced multi-detector row CT. Radiology 2011;260:446-453.
- 13)
- Scharitzer M, Ba-Ssalamah A, Ringl H, Kölblinger C, Grünberger T, Weber M, et al. Preoperative evaluation of colorectal liver metastases:comparison between gadoxetic acid-enhanced 3.0-T MRI and contrast-enhanced MDCT with histopathological correlation. Eur Radiol 2013;23:2187-2196.
- CQ12
- 乳頭部癌診断のサードステップにはどのような検査があるか?[Background Question]
- レベルC
- EUS は局所進展度診断に有用である。
ERCP・IDUS は局所進展度診断に有用である。
PET,PET-CT は遠隔転移やリンパ節転移の診断に有用である。
解説
内視鏡検査で乳頭部癌と診断されCT やMRI でリンパ節転移と遠隔転移がなければ,局所進展度の評価が重要となる。EUS とIDUS は乳頭部癌の描出と局所進展度の診断がCT よりも優れており1〜3),内視鏡的・外科的乳頭切除(局所切除)の適応を判断する上で重要な膵管と胆管への腫瘍進展の評価にも有用である4)。
1)EUS
EUS のT 分類の評価に関して,メタアナリシスで感度と特異度はT1:77% と78%, T2:73% と76%,T3:79% と77%,T4:84% と74%,と報告され,高い診断精度を示している5)。EUS は膵浸潤の判定に優れているが,十二指腸壁を越えるが膵実質に達していないことを判定することは困難である。またOddi 筋を越えるが十二指腸固有筋層に達していないことを判定することも困難である。EUS の膵管と胆管進展の診断能は,それぞれ77〜92% と86〜90% と報告され,高い診断精度を示している3,4,6)。(レベルC)
2)ERCP,IDUS
IDUS はERCP に引き続いて施行可能である。IDUS とEUS のT 分類での診断精度を比較した報告では,IDUS が78〜89 %,EUS が62〜90%,と報告され2〜4),IDUS はEUS よりもT1,T2 で診断精度が高いとの報告がある4)(表1)。IDUS は微細な観察が可能で,腫瘍と十二指腸固有筋層やOddi 筋との関係を評価するのに適しているとの報告もある。IDUS の膵管と胆管進展の診断能は,それぞれ88〜100% と90〜95% と報告され,高い診断精度を示している3,4,6)。(レベルC)
3)PET,PET-CT
乳頭部癌のPET,PET-CT に関しては,periampullary cancer もしくは胆道癌の一部としての報告があり,局所病変の検出感度は71〜88% と高い診断精度を示している7〜9)。しかし,PET,PET-CT に求められる重要な役割は,主にCT やMRI で転移の判断が難しい病巣を認めた場合の評価である。CT では認めなかったリンパ節転移や遠隔転移がPET-CT で診断され,外科手術が回避されたとの報告もある7,10)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Artifon EL, Couto D Jr, Sakai P, da Silveira EB. Prospective evaluation of EUS versus CT scan for staging of ampullary cancer. Gastrointest Endosc 2009;70:290-296.
- 2)
- Menzel J, Hoepffner N, Sulkowski U, Reimer P, Heinecke A, Poremba C, et al. Polypoid tumors of the major duodenal papilla:preoperative staging with intraductal US, EUS, and CT – A prospective, histopathologically controlled study. Gastrointest Endosc 1999;49:349-357.
- 3)
- Itoh A, Goto H, Naitoh Y, Hirooka Y, Furukawa T, Hayakawa T. Intraductal ultrasonography in diagnosing tumor extension of cancer of the papilla of Vater. Gastrointest Endosc 1997;45:251-260.
- 4)
- Ito K, Fujita N, Noda Y, Kobayashi G, Horaguchi J, Takasawa O, et al. Preoperative evaluation of ampullary neoplasm with EUS and transpapillary intraductal US:a prospective and histopathologically controlled study. Gastrointest Endosc 2007;66:740-747.
- 5)
- Trikudanathan G, Njei B, Attam R, Arain M, Shaukat A. Staging accuracy of ampullary tumors by endoscopic ultrasound:meta-analysis and systematic review. Dig Endosc 2014;26:617-626.
- 6)
- Okano N, Igarashi Y, Hara S, Takuma K, Kamata I, Kishimoto Y, et al. Endosonographic preoperative evaluation for tumors of the ampulla of Vater using endoscopic ultrasonography and intraductal ultrasonography. Clin Endosc 2014;47:174-177.
- 7)
- Sperti C, Pasquali C, Fiore V, Bissoli S, Chierichetti F, Liessi G, et al. Clinical usefulness of 18-fluorodeoxyglucose positron emission tomography in the management of patients with nonpancreatic periampullary neoplasms. Am J Surg 2006;191:743-748.
- 8)
- Cheng MF, Wang HP, Tien YW, Liu KL, Yen RF, Tzen KY, et al. Usefulness of PET/CT for the differentiation and characterization of periampullary lesions. Clin Nucl Med 2013;38:703-708.
- 9)
- Yamada I, Ajiki T, Ueno K, Sawa H, Otsubo I, Yoshida Y, et al. Feasibility of 18F-fluorodeoxyglucose positron-emission tomography for preoperative evaluation of biliary tract cancer. Anticancer Res 2012;32:5105-5110.
- 10)
- Burge ME, O’Rourke N, Cavallucci D, Bryant R, Francesconi A, Houston K, et al. A prospective study of the impact of fluorodeoxyglucose positron emission tomography with concurrent non-contrast CT scanning on the management of operable pancreatic and peri-ampullary cancers. HPB(Oxford) 2015;17:624-631.
- CQ13
- 胆管癌,胆囊癌が疑われる症例に治療前生検または細胞診は行うべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- 切除可能胆管癌では,術前に経乳頭的生検または細胞診を行うことを推奨する。
- 推奨度1
- レベルC
- 切除不能胆管癌,切除不能胆囊癌では,治療前に生検または細胞診を行うことを推奨する。
解説
胆道癌の細胞診・組織診の方法は,大きく経皮的と内視鏡下とに分かれる。経皮的な方法には超音波ガイドあるいはCT ガイドでの針生検(細胞診)と経皮経肝胆道ドレナージ下の鉗子生検・胆汁細胞診がある。内視鏡下に行う方法には経乳頭的(ERCP 下)に施行する胆汁細胞診・胆管ブラシ細胞診・鉗子生検とEUS-FNAがある。それぞれの方法で診断能・侵襲度・合併症などが異なる。
1)胆管癌
切除可能例
胆管癌を疑う場合,減黄目的ないしは診断のサードステップとしての精査目的にERCP が行われることがほとんどである。その際に胆汁細胞診・胆管ブラシ細胞診・胆管生検が可能であり必須である。外瘻ドレナージを受けた切除可能胆管癌を対象にした胆汁細胞診の採取時期と回数に関するランダム化比較試験(1 日1 回10 日間計10 回採取 vs 1 日2 時間おきに5 回2 日間計10 回採取)では,両群の陽性率は5 回目までで約45%と差はなく,それ以上検査しても陽性率は上がらないことが示されている1)。胆管狭窄に対する胆管ブラシ細胞診の感度は45%,特異度は99% とメタアナリシスで報告されている2)。さらに胆管生検の感度・特異度はそれぞれ48% と99% であり,両者を併用すると感度は59%,特異度は100% と上昇する2)。合併症は膵炎,胆管炎,胆囊炎などが報告されている(3〜6%)3,4)。手術術式の多くは膵頭十二指腸切除や拡大肝葉切除,ないしはその両方という拡大手術になるため,経乳頭的生検・細胞診は推奨される。(レベルC)
EUS-FNA は経乳頭的方法に比べて高い正診率(94% vs 53%)が報告されている5)。遠位胆管狭窄に対するEUS-FNA は膵頭部癌に対するそれと同じく安全に施行可能であるとされているが,肝門部領域胆管癌の場合はEUS-FNA による播種6)や経皮的アプローチによる播種7)などが報告されているので,現時点では経皮的に減黄されている場合を除き経乳頭的以外の生検・細胞診は推奨しない。(レベルC)
切除不能例
切除適応のない場合,化学療法や放射線治療など非切除療法が選択されるが,組織型をみて化学療法のレジメン選択をする,あるいは放射線治療の適応を決定する必要がある。したがって,経乳頭的方法により,あるいはそれで診断できない場合には経皮的アプローチやEUS-FNA により治療前生検または細胞診により診断を確定することを推奨する。(レベルC)
2)胆囊癌
切除可能例
胆囊癌に対する治療前生検・細胞診は胆管癌に対する場合と以下の二点で異なる。1 つは,胆囊癌において胆管浸潤がなければ減黄処置としてのERCP やPTBD は必須でないため,治療前生検・細胞診はその目的のためだけの処置となる点である。もう1 つは,切除術式が胆囊摘出術から,拡大胆囊摘出術,拡大肝葉切除+膵頭十二指腸切除まで様々である点である。T1(深達度が固有筋層以下)胆囊癌が疑われる場合,excisional biopsy の意味合いも兼ねて胆囊摘出術が適応となるため治療前生検・細胞診を必ずしも必要としない。T2 以深の胆囊癌を疑う場合は拡大胆囊摘出術以上の手術となるため,術前生検または細胞診があることが望ましい。経乳頭的な治療前生検・細胞診として経鼻胆囊ドレナージ下胆囊胆汁細胞診が有用との報告もあるが4),いまだ技術的に施行可能な施設が限られており推奨文に提示できるまでの段階にはないと考える。胆囊病変に対するEUS-FNA の高い正診率も報告されている(80〜100%)8〜10)が,胆汁性腹膜炎の合併もあり11),播種の原因となる可能性も否定できていない。同じく経皮的胆汁細胞診も78% で診断に至っており12),胆汁性腹膜炎のような短期合併症は報告されていないが,長期的に播種などで根治切除を損なう可能性があるため推奨されない。(レベルC)
切除不能例
切除適応のない場合は,胆管癌と同じく治療法決定のため経皮的アプローチ11)や感度の高いEUS-FNA(感度96%)7〜9)により治療前生検または細胞診を行うことを推奨する。しかし,リスクを避けるため穿刺を胆囊壁内に留める必要があり12),同手技に熟練した施設で施行されるべきである9)。(レベルC)
細胞診や生検には偽陰性例がある程度存在する。したがって,組織学的に癌の確証が得られないものの臨床的には癌を否定できない場合,主治医は患者・家族と十分な話し合いを行い,手術や化学療法などの治療を行うのか,或いは厳重な経過観察を行うのかを決める必要がある。なお,生検で陽性所見が得られない場合,どれくらい胆管生検を繰り返すかについてガイドライン委員の意見を募った所,2〜4 回まで行うという施設が多かった。
引用文献
- 1)
- Tsuchiya T, Yokoyama Y, Ebata T, Igami T, Sugawara G, Kato K, et al. Randomized controlled trial on timing and number of sampling for bile aspiration cytology. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014;21:433-438.
- 2)
- Navaneethan U, Njei B, Lourdusamy V, Konjeti R, Vargo JJ, Parsi MA. Comparative effectiveness of biliary brush cytology and intraductal biopsy for detection of malignant biliary strictures:a systematic review and meta-analysis. Gastrointest Endosc 2015;81:168-176.
- 3)
- Rösch T, Hofrichter K, Frimberger E, Meining A, Born P, Weigert N, et al. ERCP or EUS for tissue diagnosis of biliary strictures?:a prospective comparative study. Gastrointest Endosc 2004;60:390-396.
- 4)
- Itoi T, Sofuni A, Itokawa F, Kurihara T, Tsuchiya T, Moriyasu F, et al. Preoperative diagnosis and management of thick-walled gallbladder based on bile cytology obtained by endoscopic transpapillary gallbladder drainage tube. Gastrointest Endosc 2006;64:512-519.
- 5)
- Weilert F, Bhat YM, Binmoeller KF, Kane S, Jaffee IM, Shaw RE, et al. EUS-FNA is superior to ERCP-based tissue sampling in suspected malignant biliary obstruction:results of a prospective, single-blind, comparative study. Gastrointest Endosc 2014;80:97-104.
- 6)
- Khashab MA, Fockens P, Al-Haddad MA. Utility of EUS in patients with indeterminate biliary strictures and suspected extrahepatic cholangiocarcinoma. Gastrointest Endosc 2012;76:1024-1033.
- 7)
- Heimbach JK, Sanchez W, Rosen CB, Gores GJ. Trans-peritoneal fine needle aspiration biopsy of hilar cholangiocarcinoma is associated with disease dissemination. HPB(Oxford)2011;13:356-360.
- 8)
- Hijioka S, Mekky MA, Bhatia V, Sawaki A, Mizuno N, Hara K, et al. Can EUS-guided FNA distinguish between gallbladder cancer and xanthogranulomatous cholecystitis? Gastrointest Endosc 2010;72:622-627.
- 9)
- Jacobson BC, Pitman MB, Brugge WR. EUS-guided FNA for the diagnosis of gallbladder masses. Gastrointest Endosc 2003;57:251-254.
- 10)
- Varadarajulu S, Eloubeidi MA. Endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration in the evaluation of gallbladder masses. Endoscopy 2005;37:751-754.
- 11)
- Jacobson BC, Waxman I, Parmar K, Kauffman JM, Clarke GA, Van Dam J. Endoscopic ultrasound-guided gallbladder bile aspiration in idiopathic pancreatitis carries a significant risk of bile peritonitis. Pancreatology 2002;2:26-29.
- 12)
- Rana C, Krishnani N, Kumari N. Ultrasound-guided fine needle aspiration cytology of gallbladder lesions:a study of 596 cases. Cytopathology 2016;27:398-406.
第V章.胆道ドレナージ
- CQ14
- 黄疸患者に術前胆道ドレナージは行うべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- 広範肝切除術(肝葉切除以上)を予定する胆道癌には,行うことを推奨する。
解説
術前胆道ドレナージに関するこれまでのランダム化比較試験,メタアナリシスでは,“術前胆道ドレナージを行っても術後の合併症発生率,死亡率には差がなく,むしろ術後の感染性合併症を増加させる”といった報告が多く見うけられた1〜6)。一方,2016 年に報告された悪性閉塞性黄疸における術前胆道ドレナージに関する26 の研究(8つのランダム化比較試験を含む)計3,352 症例を集積したメタアナリシス7)では,術後在院日数,死亡率には影響を与えなかったが,膵炎,胆管炎,穿孔,ステント閉塞,膵空腸縫合不全などの大きな合併症(major adverse events)を減少させたとした。この結果は,より新しい研究が集積され,近年の胆道ドレナージ手技の向上が反映されたことによると述べられている。(レベルB)
閉塞性黄疸を伴う患者に対する術前胆道ドレナージの意義を正しく検討するには,術後合併症率・死亡率の高い広範肝切除・胆管切除を要する肝門部胆管閉塞8)と膵頭十二指腸切除を標準術式とする遠位胆管閉塞を明確に区別して検討する必要がある9)。
肝門部胆管閉塞に関して,フランスを中心としたヨーロッパの多施設による肝門部胆管癌切除366 例(術前胆道ドレナージ180 症例)の後ろ向きの検討10)では,術前胆道ドレナージは全体の死亡率には影響を与えなかった。しかし,右側肝切除例では有意に死亡率を低下させ,一方,左側肝切除例では死亡率を増加させたと述べられている。また,欧米からの後ろ向き研究において,広範肝切除とくに右側肝切除症例11),あるいは残存肝容積率が30%未満の症例12)には,術後肝不全の予防のために術前胆道ドレナージは有用であろうと考察している。さらに,肝門部領域胆管癌の術後死亡のリスクスコアを解析した研究13)では,術前胆管炎合併,残肝率30%未満,残肝率50%未満の不適切なドレナージ,門脈再建が有意な因子として報告されている。以上の結果から,肝門部胆管閉塞で広範肝切除術が必要な症例には,術前胆道ドレナージを施行すべきである。(レベルC)
一方,遠位胆管閉塞例の術前胆管ドレナージに関する25 の研究(3 つのランダム化比較試験を含む)6,214 症例を集積したメタアナリシス14)では,術前胆道ドレナージは術後の死亡率に影響を与えなかったが,術後合併症率を有意に増加させたと報告している。また,術後の死亡率や合併症率には影響を与えないものの15),胆汁の細菌感染16)や創感染を増加させるとした報告17)も見られている。これらの結果からみて,膵頭十二指腸切除を予定とした症例では術前胆道ドレナージは,胆管炎合併,肝機能不良,術前化学療法施行症例などの特別な場合を除き回避できる可能性が考えられる9)。しかし,許容される黄疸の程度などその適応基準に関しての明確なエビデンスはない。また,実際に本邦の多くの施設では術前精査としてERCP を行い,その終了時にドレナージチューブを留置することが一般的であることを踏まえると,現時点では肝切除を要しない膵頭十二指腸切除症例に対する術前胆管ドレナージに関しての推奨度の決定は困難であるとした。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Pitt HA, Gomes AS, Lois JF, Mann LL, Deutsch LS, Longmire WP Jr. Does preoperative percutaneous biliary drainage reduce operative risk or increase hospital cost? Ann Surg 1985;201:545-553.
- 2)
- Lai EC, Mok FP, Fan ST, Lo CM, Chu KM, Liu CL, et al. Preoperative endoscopic drainage for malignant obstructive jaundice. Br J Surg 1994;81:1195-1198.
- 3)
- Sewnath ME, Karsten TM, Prins MH, Rauws EJ, Obertop H, Gouma DJ. A meta-analysis on the efficacy of preoperative biliary drainage for tumors causing obstructive jaundice. Ann Surg 2002;236:17-27.
- 4)
- Ferrero A, Lo Tesoriere R, Viganò L, Caggiano L, Sgotto E, Capussotti L. Preoperative biliary drainage increases infectious complications after hepatectomy for proximal bile duct tumor obstruction. World J Surg 2009;33:318-325.
- 5)
- Liu F, Li Y, Wei Y, Li B. Preoperative biliary drainage before resection for hilar cholangiocarcinoma:whether or not?:a systematic review. Dig Dis Sci 2011;56:663-672.
- 6)
- van der Gaag NA, Rauws EA, van Eijck CH, Bruno MJ, van der Harst E, Kubben FJ, et al. Preoperative biliary drainage for cancer of the head of the pancreas. N Engl J Med 2010;362: 129-137.
- 7)
- Moole H, Bechtold M, Puli SR. Efficacy of preoperative biliary drainage in malignant obstructive jaundice:a meta-analysis and systematic review. World J Surg Oncol 2016;14:182.
- 8)
- Nagino M, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, et al. Evolution of surgical treatment for perihilar cholangiocarcinoma:a single-center 34-year review of 574 consecutive resections. Ann Surg 2013;258:129-140.
- 9)
- Iacono C, Ruzzenente A, Campagnaro T, Bortolasi L, Valdegamberi A, Guglielmi A. Role of preoperative biliary drainage in jaundiced patients who are candidates for pancreatoduodenectomy or hepatic resection:highlights and drawbacks. Ann Surg 2013;257:191-204.
- 10)
- Farges O, Regimbeau JM, Fuks D, Le Treut YP, Cherqui D, Bachellier P, et al. Multicentre European study of preoperative biliary drainage for hilar cholangiocarcinoma. Br J Surg 2013;100:274-283.
- 11)
- Nuzzo G, Giuliante F, Ardito F, Giovannini I, Aldrighetti L, Belli G, et al. Improvement in perioperative and long-term outcome after surgical treatment of hilar cholangiocarcinoma:results of an Italian multicenter analysis of 440 patients. Arch Surg 2012;147:26-34.
- 12)
- Kennedy TJ, Yopp A, Qin Y, Zhao B, Guo P, Liu F, et al. Role of preoperative biliary drainage of liver remnant prior to extended liver resection for hilar cholangiocarcinoma. HPB(Oxford) 2009;11:445-451.
- 13)
- Wiggers JK, Groot Koerkamp B, Cieslak KP, Doussot A, van Klaveren D, Allen PJ, et al. Postoperative mortality after liver resection for perihilar cholangiocarcinoma:development of a risk score and importance of biliary drainage of the future liver remnant. J Am Coll Surg 2016;223:321-331.
- 14)
- Scheufele F, Schorn S, Demir IE, Sargut M, Tieftrunk E, Calavrezos L, et al. Preoperative biliary stenting versus operation first in jaundiced patients due to malignant lesions in the pancreatic head:A meta-analysis of current literature. Surgery 2017;161:939-950.
- 15)
- Choi YM, Cho EH, Lee KY, Ahn SI, Choi SK, Kim SJ, et al. Effect of preoperative biliary drainage on surgical results after pancreaticoduodenectomy in patients with distal common bile duct cancer:focused on the rate of decrease in serum bilirubin. World J Gastroenterol 2008;14:1102-1107.
- 16)
- Jagannath P, Dhir V, Shrikhande S, Shah RC, Mullerpatan P, Mohandas KM. Effect of preoperative biliary stenting on immediate outcome after pancreaticoduodenectomy. Br J Surg 2005;92:356-361.
- 17)
- Garcea G, Chee W, Ong SL, Maddern GJ. Preoperative biliary drainage for distal obstruction:the case against revisited. Pancreas 2010;39:119-126.
- CQ15
- 遠位胆管閉塞に対する術前胆道ドレナージは何を行うべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- 第1 選択として内視鏡的(経乳頭的)減黄処置を推奨する。
解説
術前ドレナージには経皮的アプローチ法(PTBD,図1a,2)と内視鏡的(経乳頭的)アプローチ法があり,後者は留置するドレナージチューブの種類によりENBD(図1b,3),EBS(図1c,4),SEMS(図1d,5)の3 つに分けられる。経皮的アプローチと内視鏡的アプローチの成績を比較した後ろ向き研究ではPTBD 施行例の予後が有意に不良であり,その原因が肝転移率の増加にあったと報告されている1)。また,PTBD には穿刺時の合併症のリスク,瘻孔再発や腹膜再発などいわゆるseeding metastasis の可能性も報告されており2),その点からも内視鏡的減黄処置が第1 選択として推奨される。(レベルC)
経乳頭的アプローチのなかで,EBS とSEMS を比較した後ろ向き研究では,SEMS が優れているとするもの3),差を認めないとするもの4,5)があるが,最近報告されたメタアナリシスではSEMS がより有用であると結論している6)。膵頭部癌を対象に行われたEBS とSEMS を比較するランダム化比較試験では,膵頭十二指腸切除後の成績には両者に差は認めなかったが,ステントに関連する合併症はSEMS の方が低率であったとされている7)。また,ENBD とEBS の有用性を比較した検討ではENBD を推奨するものが多い8,9)。(レベルB)
胆管病変の局在診断,進展度診断にはCT が極めて有用であるが,胆道ドレナージ施行後には胆管に炎症性変化が加わり,癌による壁肥厚との鑑別が困難となる。したがって,胆道ドレナージはCT 施行後に行うべきである10)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Miura F, Sano K, Wada K, Shibuya M, Ikeda Y, Takahashi K, et al. Prognostic impact of type of preoperative biliary drainage in patients with distal cholangiocarcinoma. Am J Surg 2017;214:256-261.
- 2)
- Komaya K, Ebata T, Fukami Y, Sakamoto E, Miyake H, Takara D, et al;Nagoya Surgical Oncology Group. Percutaneous biliary drainage is oncologically inferior to endoscopic drainage:a propensity score matching analysis in resectable distal cholangiocarcinoma. J Gastroenterol 2016;51:608-619.
- 3)
- Decker C, Christein JD, Phadmis MA, Wilcox CM, Varadarajulu S. Biliary metal stents are superior to plastic stents for preoperative biliary decompression in pancreatic cancer. Surg Endosc 2011;25:2364-2367.
- 4)
- Cavell LK, Allen PJ, Vinoya C, Eaton AA, Gonen M, Gerdes H, et al. Biliary self-expandable metal stents do not adversely affect pancreaticoduodenectomy. Am J Gastroenterol 2013;108:1168-1173.
- 5)
- Haapamäki C, Seppänen H, Udd M, Juuti A, Halttunen J, Kiviluoto T, et al. Preoperative biliary decompression preceding pancreaticoduodenectomy with plastic or self-expandable metallic stent. Scand J Surg 2015;104:79-85.
- 6)
- Crippa S, Cirocchi R, Partelli S, Petrone MC, Muffatti F, Renzi C, et al. Systemic review and meta-analysis of metal versus plastic stents for preoperative biliary drainage in resectable periampullary or pancreatic head tumors. Eur J Surg Oncol 2016;42:1278-1285.
- 7)
- Tol JA, van Hooft JE, Timmer R, Kubben FJ, van der Harst E, de Hingh IH, et al. Metal or plastic stents for preoperative biliary drainage in resectable pancreatic cancer. Gut 2016;65:1981-1987.
- 8)
- Huang X, Liang B, Zhao XQ, Zhang FB, Wang XT, Dong JH. The effects of different preoperative biliary drainage methods on complications following pancreaticoduodenectomy. Medicine(Baltimore) 2015;94:e723.
- 9)
- Lin H, Li S, Liu X. The safety and efficacy of nasobiliary drainage versus biliary stenting in malignant biliary obstruction:a systematic review and meta-analysis. Medicine(Baltimore) 2016;95:e5253.
- 10)
- Seo H, Lee JM, Kim IH, Han JK, Kim SH, Jang JY, et al. Evaluation of the gross type and longitudinal extent of extrahepatic cholangiocarcinomas on contrast-enhanced multidetector row computed tomography. J Comput Assist Tomogr 2009;33:376-382.
- CQ16
- 肝門部胆管閉塞に対する術前胆道ドレナージは何を行うべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- 広範肝切除(肝葉切除以上)を予定する胆道癌には,第1 選択として内視鏡的(経乳頭的)な残存予定側の片葉ドレナージを推奨する。
解説
術前胆道ドレナージには,PTBD, ENBD, EBS などがある(CQ15 参照)。それぞれの方法を比較した前向き試験はなく,単施設の後ろ向き研究では各方法による差はないとするもの,PTBD が優れているとするもの,ENBD が優れているものと結果は様々である1〜3)。近年報告されたメタアナリシスでは,PTBD の方が経乳頭的アプローチと比較して処置後の合併症発生が低いとしている4,5)。(レベルB)
しかしながら,PTBD には頻度は少ないものの穿刺時の門脈・肝動脈損傷の可能性が指摘されている。また,穿刺経路および腹膜播種などのいわゆるseeding metastasis の原因となることにより,内視鏡的ドレナージに比べ,有意に予後を悪化させることが報告されている6〜8)。したがって,第1 選択とはなりえない。(レベルC)
ENBD とEBS を比較すると,ENBD は胆汁の量や性状を観察できるメリットがあるが,胆汁を返還しないと体外に喪失されていくこと,また経鼻チューブが長期留置されることによる患者の苦痛が無視できないというデメリットがある。一方,EBS は胆汁の生理的ドレナージ法(内瘻法)であるものの,胆汁の量や性状が観察できないというデメリットがある。また,チューブ閉塞率が高く,胆管炎の発症リスクが高いことから,術後の合併症発生の誘因となる可能性がある。以上のことから,術前胆道ドレナージ法としてはENBD による減黄処置が第1 選択であると判断した。ENBD かEBS かに関するガイドライン委員の投票では,ENBD 推奨18,EBS 推奨0,棄権4 という結果であった。(レベルC)
術前ドレナージを行うべき肝の領域については,残存予定片葉ドレナージのみを行う方が両葉ドレナージと比較した場合,門脈塞栓術後の残肝の肥大率やビリルビン産生能からみた残肝機能が良好であることが実験的にも臨床的にも証明されている9,10)。したがって,まず残存予定側の片葉のみのドレナージを行い,胆管炎のコントロール不良,あるいは減黄不良などの場合に対側葉のドレナージを行うことが推奨される。なお,画像所見に基づく切除術式,言い換えれば残存予定片葉の決定は胆道外科医と相談して行うことが望ましい。(レベルC)
胆管病変の局在診断,進展度診断にはCT が有用であるが,胆道ドレナージ施行後には胆管に炎症性変化が加わり,癌による壁肥厚との鑑別が困難となる。したがって,胆道ドレナージはCT 後に行うべきである11)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Wiggers JK, Groot Koerkamp B, Coelen RJ, Doussot A, van Dieren S, Rauws EA, et al. Percutaneous preoperative biliary drainage for resectable perihilar cholangiocarcinoma:no association with survival and no increase in seeding metastases. Ann Surg Oncol 2015;22 Supple 3:S1156-1163.
- 2)
- Walter T, Ho CS, Horgan AM, Warkentin A, Gallinger S, Greig PD, et al. Endoscopic or percutaneous biliary drainage for Klatskin tumors? J Vasc Interv Radiol 2013;24:113-121.
- 3)
- Kawakami H, Kuwatani M, Onodera M, Haba S, Eto K, Ehira N, et al. Endoscopic nasobiliary drainage is the most suitable preoperative biliary drainage method in the management of patients with hilar cholangiocarcinoma. J Gastroenterol 2011;46:242-248.
- 4)
- Hameed A, Pang T, Chiou J, Pleass H, Lam V, Hollands M, et al. Percutaneous vs. endoscopic pre-operative biliary drainage in hilar cholangiocarcinoma:a systematic review and meta-analysis. HPB (Oxford) 2016;18:400-410.
- 5)
- Al Mahjoub A, Menahem B, Fohlen A, Dupont B, Alves A, Launoy G, et al. Preoperative biliary drainage in patients with resectable perihilar cholangiocarcinoma:Is percutaneous transhepatic biliary drainage safer and more effective than endoscopic biliary drainage? A meta-analysis. J Vasc Interv Radiol 2017;28:576-582.
- 6)
- Takahashi Y, Nagino M, Nishio H, Ebata T, Igami T, Nimura Y. Percutaneous transhepatic biliary drainage catheter tract recurrence in cholangiocarcinoma. Br J Surg 2010;97:1860-1866.
- 7)
- Komaya K, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Mizuno T, et al. Verification of the oncologic inferiority of percutaneous biliary drainage to endoscopic drainage:a propensity score matching analysis of resectable perihilar cholangiocarcinoma. Surgery 2017;161:394-404.
- 8)
- Higuchi R, Yazawa T, Uemura S, Izumo W, Chaudhary RJ, Furukawa T, et al. ENBD is associated with decreased tumor dissemination compared to PTBD in perihilar cholangiocarcinoma. J Gastrointest Surg 2017;21:1506-1514.
- 9)
- Noie T, Sugawara Y, Imamura H, Takayama T, Makuuchi M. Selective versus total drainage for biliary obstruction in the hepatic hilus:an experimental study. Surgery 2001;130:74-81.
- 10)
- Ishizawa T, Hasegawa K, Sano K, Imamura H, Kokudo N, Makuuchi M. Selective versus total drainage for obstructive jaundice caused by a hepatobiliary malignancy. Am J Surg 2007;193:149-154.
- 11)
- Unno M, Okumoto T, Katayose Y, Rikiyama T, Sato A, Motoi F, et al. Preoperative assessment of hilar cholangiocarcinoma by multidetector row computed tomography. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:434-440.
- CQ17
- 術前胆道ドレナージ中の発熱にはどのように対応すべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- まず,既存の胆道ドレナージが良好か否かを確認する。チューブトラブルがあればチューブ交換を行い,抗菌薬を投与することを推奨する。
- 推奨度1
- レベルC
- チューブトラブルがない,あるいはチューブ交換後も解熱しない場合には,非ドレナージ領域に生じた胆管炎(区域性胆管炎)を疑い,速やかにドレナージを追加することを推奨する。
解説
術前胆道ドレナージ中に発熱をきたした場合,まずチューブトラブル(閉塞,屈曲,逸脱など)による胆管炎を疑う。PTBD やENBD の場合には胆汁の排液量や性状をチェックし,チューブの詰まりを確認する。チューブの位置確認は腹部単純X 線写真で行い,必要に応じて胆道造影を行う。EBS の場合には腹部単純X線写真でチューブの逸脱がないかをまず確認するが,チューブのつまりをきたすことがしばしばあるため,その診断には造影CT が有用である。チューブトラブルによる胆管炎と診断されれば,チューブ交換を速やかに行い,抗菌薬の投与を行う1〜6)。既存のドレナージチューブに問題がない場合には,胆囊管閉塞による胆囊炎,経乳頭的ドレナージの際には膵管閉塞による膵炎の可能性も考慮する。 (レベルC)
チューブトラブルがない,あるいはチューブ交換後も解熱しない場合には,肺炎などの他の発熱原因を除外した上で,非ドレナージ領域に生じた胆管炎(区域性胆管炎)を疑う。区域性胆管炎は肝門部領域胆管閉塞でしばしば認められる病態であり,これが疑われる場合には造影CT を施行し,拡張した胆管枝を同定し速やかにその領域をドレナージする必要がある7〜11)。ドレナージの方法は新たにPTBD やENBD を追加するか,すでに挿入されているPTBD チューブを非ドレナージ胆管に誘導するかのいずれかである。区域性胆管炎の存在は,術前患者においては術後の感染性合併症のみならず,肝切除術後肝不全の有意な危険因子となることから7,8,10,11),迅速かつ適切に対応する必要がある。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Maguchi H, Takahashi K, Katanuma A, Osanai M, Nakahara K, Matuzaki S, et al. Preoperative biliary drainage for hilar cholangiocarcinoma. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:441-446.
- 2)
- Kloek JJ, van der Gaag NA, Aziz Y, Rauws EA, van Delden OM, Lameris JS, et al. Endoscopic and percutaneous preoperative biliary drainage in patients with suspected hilar cholangiocarcinoma. J Gastrointest Surg 2010;14:119-125.
- 3)
- Kawakami H, Kuwatani M, Onodera M, Haba S, Eto K, Ehira N, et al. Endoscopic nasobiliary drainage is the most suitable preoperative biliary drainage method in the management of patients with hilar cholangiocarcinoma. J Gastroenterol 2011;46:242-248.
- 4)
- Wiggers JK, Groot Koerkamp B, Coelen RJ, Rauws EA, Schattner MA, Nio CY, et al. Preoperative biliary drainage in perihilar cholangiocarcinoma:identifying patients who require percutaneous drainage after failed endoscopic drainage. Endoscopy 2015;47:1124-1131.
- 5)
- Ito Y, Nakai Y, Isayama H, Tsujino T, Hamada T, Umefune G, et al. Impact of preoperative biliary drainage on surgical outcomes in periampullary and hilar malignancy:a single-center experience. Surg Laparosc Endosc Percutan Tech 2016;26:150-155.
- 6)
- Sasahira N, Hamada T, Togawa O, Yamamoto R, Iwai T, Tamada K, et al. Multicenter study of endoscopic preoperative biliary drainage for malignant distal biliary obstruction. World J Gastroenterol 2016;22:3793-3802.
- 7)
- Kanai M, Nimura Y, Kamiya J, Kondo S, Nagino M, Miyachi M, et al. Preoperative intrahepatic segmental cholangitis in patients with advanced carcinoma involving the hepatic hilus. Surgery 1996;119:498-504.
- 8)
- Sakata J, Shirai Y, Tsuchiya Y, Wakai T, Nomura T, Hatakeyama K. Preoperative cholangitis independently increases in-hospital mortality after combined major hepatic and bile duct resection for hilar cholangiocarcinoma. Langenbecks Arch Surg 2009;394:1065-1072.
- 9)
- Jagannath P, Dhir V, Shrikhande S, Shah RC, Mullerpatan P, Mohandas KM. Effect of preoperative biliary stenting on immediate outcome after pancreaticoduodenectomy. Br J Surg 2005;92:356-361.
- 10)
- Wiggers JK, Groot Koerkamp B, Cieslak KP, Doussot A, van Klaveren D, Allen PJ, et al. Postoperative mortality after liver resection for perihilar cholangiocarcinoma:development of a risk score and importance of biliary drainage of the future liver remnant. J Am Coll Surg 2016;223:321-331.
- 11)
- Ribero D, Zimmitti G, Aloia TA, Shindoh J, Fabio F, Amisano M, et al. Preoperative cholangitis and future liver remnant volume determine the risk of liver failure in patients undergoing resection for hilar cholangiocarcinoma. J Am Coll Surg 2016;223:87-97.
- CQ18
- 術前外瘻ドレナージ患者に胆汁監視培養は行うべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- 胆汁監視培養は周術期における抗菌薬の選択に有用であり,行うことを推奨する。
解説
胆汁監視培養とは,外瘻ドレナージ患者において感染徴候のない時点で定期的に胆汁培養を行うことである。胆汁感染の状態を把握しておくことで,術前,急に胆管炎を発症した際など,速やかに感受性のある抗菌薬投与を開始することが可能となる。
胆道再建を伴う広範肝切除術において,感染性合併症発症の大きな原因のひとつに胆汁感染があげられる。術前に胆道ドレナージを行うと,ほぼ100%の症例で二次性に胆汁感染が発生する1)。肝門部領域胆管癌に対する広範囲肝切除を施行した症例について術前胆汁感染の有無と術後感染症との関係を検討した論文では,胆汁感染のある症例において術後感染症(特に創感染や腹腔内感染)の合併する頻度が高く(P=0.008)2),しかも30〜88%の症例で胆汁監視培養と同様の細菌叢が検出されたと報告されている3〜5)。(レベルC)
胆汁監視培養を施行することにより,周術期における予防的抗菌薬および術後感染に対する治療的抗菌薬を適切に選択することが可能になる5〜10)。手術部位感染(surgical site infection:以下,SSI)に関する後ろ向き多施設共同研究で,日本の医療制度下,SSI 非発生例と比較して,消化器外科領域のSSI 発症症例では,術後入院日数が2 倍,術後医療費が2.5 倍に増大し,医療経済負担は感染部位が深くなるほど,もしくはメチシリン耐性菌分離症例では大幅に増大していたと報告されている11)。(レベルC)
胆汁監視培養の結果に基づき術中・術後に投与する抗菌薬を選定し,適正な期間(2 日間)投与することにより,胆道再建を伴う肝切除術後の感染性合併症を減らすことがランダム化比較試験で証明されている12,13)。術後SSI 発生率は,胆汁監視培養の結果に基づく術後2 日間の抗菌薬投与群が43.5% であったのに対し,標準的な予防的抗菌薬投与群は71.0% であった(P=0.002)と報告されており,特に膵頭十二指腸切除では有意に術後SSI 発生率は減少し(36.8% vs 89.5%;P=0.001),胆道再建を伴う肝葉切除でも有意に術後SSI 発生率は減少した(41.7% vs 73.1%;P=0.025)と報告されている12)。胆道再建を伴う肝葉切除では,感染性合併症発生率は胆汁監視培養の結果に基づく術後2 日間の抗菌薬投与群が30.2% であったのに対し,術後4 日間投与群は32.6% と同等であり,Clavien-Dindo 分類でGrade 3a 以上の合併症発生率は術後2 日間の抗菌薬投与群が53.5% であったのに対し,術後4 日間投与群は67.4% であった(P=0.186)と報告されている13)。(レベルA)
胆汁監視培養は週に1 回程度の施行が望ましいが,頻度に関してエビデンスレベルの高い報告はない。
引用文献
- 1)
- 滋野 俊.内視鏡的逆行性胆管ドレナージ法(ERBD)と胆汁細菌,第1 編:ERBD 施行例における胆汁中細菌の検討.Gastroenterol Endosc 1990;32:334-344.
- 2)
- Sakata J, Shirai Y, Tsuchiya Y, Wakai T, Nomura T, Hatakeyama K. Preoperative cholangitis independently increases in-hospital mortality after combined major hepatic and bile duct resection for hilar cholangiocarcinoma. Langenbecks Arch Surg 2009;394:1065-1072.
- 3)
- Povoski SP, Karpeh MS Jr, Conlon KC, Blumgart LH, Brennan MF. Preoperative biliary drainage:impact on intraoperative bile cultures and infectious morbidity and mortality after pancreaticoduodenectomy. J Gastrointest Surg 1999;3:496-505.
- 4)
- Cortes A, Sauvanet A, Bert F, Janny S, Sockeel P, Kianmanesh R, et al. Effect of bile contamination on immediate outcomes after pancreaticoduodenectomy for tumor. J Am Coll Surg 2006;202:93-99.
- 5)
- Sugawara G, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Takahashi Y, Takara D, et al. The effect of preoperative biliary drainage on infectious complications after hepatobiliary resection with cholangiojejunostomy. Surgery 2013;153:200-210.
- 6)
- 坂本和彦,岡田敏正,為佐卓夫,岡 正朗.障害肝を背景とする肝切除例における周術期細菌培養.日外感染症会誌2006;3:83-86.
- 7)
- 藤井義郎,遠藤 格,増成秀樹,齋藤修治,神谷紀之,永野靖彦,ほか.胆汁培養からみた悪性胆道疾患の術後抗菌薬投与法について.胆道2001;15:375-380.
- 8)
- Hochwald SN, Burke EC, Jarnagin WR, Fong Y, Blumgart LH. Association of preoperative biliary stenting with increased postoperative infectious complications in proximal cholangiocarcinoma. Arch Surg 1999;134:261-266.
- 9)
- Takara D, Sugawara G, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Nagino M. Preoperative biliary MRSA infection in patients undergoing hepatobiliary resection with cholangiojejunostomy:incidence, antibiotic treatment, and surgical outcome. World J Surg 2011;35:850-857.
- 10)
- Sugawara G, Yokoyama Y, Ebata T, Igami T, Yamaguchi J, Mizuno T, et al. Preoperative biliary colonization/infection caused by multidrug-resistant(MDR)pathogens in patients undergoing major hepatectomy with extrahepatic bile duct resection. Surgery 2018;163:1106-1113.
- 11)
- Kusachi S, Kashimura N, Konishi T, Shimizu J, Kusunoki M, Oka M, et al. Length of stay and cost for surgical site infection after abdominal and cardiac surgery in Japanese hospitals:multi-center surveillance. Surg Infect(Larchmt)2012;13:257-265.
- 12)
- Okamura K, Tanaka K, Miura T, Nakanishi Y, Noji T, Nakamura T, et al. Randomized controlled trial of perioperative antimicrobial therapy based on the results of preoperative bile cultures in patients undergoing biliary reconstruction. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2017;24:382-393.
- 13)
- Sugawara G, Yokoyama Y, Ebata T, Mizuno T, Yagi T, Ando M, et al. Duration of antimicrobial prophylaxis in patients undergoing major hepatectomy with extrahepatic bile duct resection:A randomized controlled trial. Ann Surg 2018;267:142-148.
- CQ19
- 術前外瘻ドレナージ患者に胆汁返還は行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 胆汁返還は有用であり,行うことを提案する。
解説
胆道ドレナージ法には,ドレナージされた胆汁が腸管内を流れる内瘻法(EBS)と,体外に排出され腸管内に返還されない外瘻法(ENBD,PTBD)とがある。内瘻法がより生理的であり,肝再生,感染予防,腸管免疫および水分バランスを保つという点で,外瘻法より優れたドレナージ法であることが多数の動物実験で証明されている1,2)。(レベルC)
ヒトでは,閉塞性黄疸による腸管粘膜の透過性の亢進が,内瘻ドレナージ(EBS)により正常化する3,4)。外瘻ドレナージにおいても,ドレナージされた胆汁を飲用などにより腸管内に返還することにより,内瘻ドレナージと同様に腸管粘膜の透過性が低下し,腸管の免疫機能が回復することが報告されている5)。(レベルC)
胆汁の腸肝循環が保たれ,消化管の免疫機能が維持されていることが生体にとって重要である。したがって,外瘻時の術前胆汁返還は,侵襲の高度な手術(胆道癌に対する広範囲肝切除など)が予定されている場合には有用である可能性が高い。胆汁監視培養の結果から術中・術後に投与する抗菌薬を選定し,胆汁返還を含めた術前栄養管理およびシンバイオティクスを術前2 週間投与することで,術後感染性合併症の発生率が30.0% から12.1% と有意に減少し(P=0.049),術後在院日数(中央値)も38 日から30 日と有意に短縮すること(P=0.045)がランダム化比較試験で報告されている6)。(レベルB)
外瘻ドレナージ患者の多くは胆汁飲用が可能である(図1)。しかし,どうしても生理的嫌悪感から飲用できない,あるいは多量胆汁症例には返還用のチューブ(10F シリコンチューブ)を経鼻的に胃・十二指腸に留置して返還するとよい。
引用文献
- 1)
- Kanai M, Tanaka M, Nimura Y, Nagino M, Katoh T, Ozawa T. Mitochondrial dysfunction in the non-obstructed lobe of rat liver after selective biliary obstruction. Hepatogastroenterology 1992;39:385-391.
- 2)
- Suzuki H, Iyomasa S, Nimura Y, Yoshida S. Internal biliary drainage, unlike external drainage, does not suppress the regeneration of cholestatic rat liver after partial hepatectomy. Hepatology 1994;20:1318-1322.
- 3)
- Parks RW, Clements WD, Smye MG, Pope C, Rowlands BJ, Diamond T. Intestinal barrier dysfunction in clinical and experimental obstructive jaundice and its reversal by internal biliary drainage. Br J Surg 1996;83:1345-1349.
- 4)
- Welsh FK, Ramsden CW, MacLennan K, Sheridan MB, Barclay GR, Guillou PJ, et al. Increased intestinal permeability and altered mucosal immunity in cholestatic jaundice. Ann Surg 1998;227:205-212.
- 5)
- Kamiya S, Nagino M, Kanazawa H, Komatsu S, Mayumi T, Takagi K, et al. The value of bile replacement during external biliary drainage:an analysis of intestinal permeability, integrity, and microflora. Ann Surg 2004;239:510-517.
- 6)
- Sugawara G, Nagino M, Nishio H, Ebata T, Takagi K, Asahara T, et al. Perioperative synbiotic treatment to prevent postoperative infectious complications in biliary cancer surgery:a randomized controlled trial. Ann Surg 2006;244:706-714.
- CQ20
- 切除不能遠位胆管閉塞に対する胆管ステントは何を選択すべきか?
- 推奨度2
- レベルB
- Covered SEMS の選択を提案する。
解説
胆管ステントにはplastic stent(PS)とself-expandable metallic stent(SEMS)があり,SEMS はさらにcover の有無によりuncovered SEMS とcovered SEMS に分けられる。図1にPS,図2 にSEMS の各種類を示す。切除不能胆管閉塞例に関するステントの臨床試験は疾患ごとに検討した臨床試験が極めて少ないため,胆管の閉塞部位別に検討した臨床試験を参考に推奨度を決める必要がある。さらに,ステント留置後の胆道閉塞症状の再発(recurrent biliary obstruction:RBO)の頻度および再発までの期間(time to RBO:TRBO),偶発症の他に,留置や閉塞時の対応における技術的な難易度も考慮する必要がある。
遠位胆管閉塞ではPS とuncovered SEMS とのランダム化比較試験が幾つか報告されており,uncovered SEMS のTRBO が有意に長いことが知られている1〜3)。かかる試験ではRBO 以外の合併症についてもuncovered SEMS の方が少なく,コストの面からもSEMS が推奨されている。また,covered SEMS とPS を比較したランダム化比較試験は2 編あり,いずれもcovered SEMS の成績が良好であった4,5)。最近のメタアナリシスでも同様の傾向が示されている6)。(レベルA)
Covered SEMS とuncovered SEMS を比較したランダム化試験は5 編が報告されている7〜11)。うち3 編ではcovered SEMS の優越性が示されたが,他の2 つの試験では差は認められなかった。また,2 つのメタアナリシスでは,1 つがcovered SEMS のTRBO が有意に長いことを示したが,他の1 つでは差がないと報告されている12,13)。メタアナリシスで結果が異なるのは,評価方法が試験ごとに異なることが原因と考えられ,統一した評価方法であるTokyo criteria が新たに提唱されている14,15)。Covered SEMS の導入以来,ステントの閉塞ではない逸脱や,胆管のkink,逆行性胆管炎などもprimary endpoint と考えられるので,Tokyo criteria では従来用いられていたpatency(ステント開存期間)に代わってTRBO が採用されている。現時点ではいまだTokyo criteria を用いた論文は少なくメタアナリシスも行われていないが,将来この定義を用いた文献によるメタアナリシスが行われることが望ましい。(レベルB)
ステント閉塞以外の偶発症に関してcovered SEMS では逸脱が多いが,胆囊炎や膵炎発症に関しては差がなく,以前言われていたように胆囊炎や膵炎がcovered SEMS 特有の偶発症ではないことが示唆されている。ただし,これらの臨床試験7,10,11)では膵癌が60%程度を占めており,胆道癌の割合は20%前後であった。対象を胆道癌に限ったランダム化比較試験が1 編だけ報告されており,この試験ではcovered SEMS のTRBO が有意に長く,成績が良好であった9)。(レベルB)
以上をまとめると,切除不能遠位胆管閉塞には,PS よりもSEMS が推奨される。SEMS のtype では,covered SEMS のTRBO はuncovered SEMS より長いか同等であり,RBO 以外の偶発症はほぼ同等である。さらに,covered SEMS は留置後の位置修正が可能,re-intervention に際し抜去が可能といった長所がある。以上より,covered SEMS を選択することが望ましい。(レベルB)
引用文献
- 1)
- Smith AC, Dowset JF, Rassell RCG, Hatfield ARW, Cotton PB. Randomized trial of endoscopic stenting versus surgical bypass in malignant low bile duct obstruction. Lancet 1994;344:1655-1660.
- 2)
- Davids PH, Groen AK, Rauws EA, Tytgat GN, Huibregtse K. Randomized trial of self-expanding metal stents versus polyethylene stents for distal malignant biliary obstruction. Lancet 1992;340:1488-1492.
- 3)
- Lammer J, Hausegger KA, Flückiger F, Winkelbauer FW, Wildling R, Klein GE, et al. Common bile duct obstruction due to malignancy:treatment with plastic versus metal stents. Radiology 1996;201:167-172.
- 4)
- Soderlund C, Linder S. Covered metal versus plastic stents for malignant common bile duct stenosis:a prospective, randomized, controlled trial. Gastrointest Endosc 2006;63:986–995.
- 5)
- Isayama H, Yasuda I, Ryozawa S, Maguchi H, Igarashi Y, Matsuyama Y, et al. Results of a Japanese multicenter, randomized trial of endoscopic stenting for non-resectable pancreatic head cancer(JM-TEST):Covered Wallstent versus DoubleLayer stent. Dig Endosc 2011;23:310-315.
- 6)
- Almadi MA, Barkun A, Martel M. Plastic vs. self-expandable metal stents for palliation in malignant biliary obstruction:a series of meta-analyses. Am J Gastroenterol 2017;112:260-273.
- 7)
- Isayama H, Komatsu Y, Tsujino T, Sasahira N, Hirano K, Toda N, et al. A prospective randomized study of “covered” versus “uncovered” diamond stents for the management of distal malignant biliary obstruction. Gut 2004;53:729-734.
- 8)
- Krokidis M, Fanelli F, Orgera G, Tsetis D, Mouzas I, Bezzi M, et al. Percutaneous palliation of pancreatic head cancer:randomized comparison of ePTFE/FEP-covered versus uncovered nitinol biliary stents. Cardiovasc Intervent Radiol 2011;34:352-361.
- 9)
- Krokidis M, Fanelli F, Orgera G, Bezzi M, Passariello R, Hatzidakis A. Percutaneous treatment of malignant jaundice due to extrahepatic cholangiocarcinoma:covered Viabil stent versus uncovered Wallstents. Cardiovasc Intervent Radiol 2010;33:97-106.
- 10)
- Telford JJ, Carr-Locke DL, Baron TH, Poneros JM, Bounds BC, Kelsey PB, et al. A randomized trial comparing uncovered and partially covered self-expandable metal stents in the palliation of distal malignant biliary obstruction. Gastrointest Endosc 2010;72:907-914.
- 11)
- Kullman E, Frozanpor F, Söderlund C, Linder S, Sandström P, Lindhoff-Larsson A, et al. Covered versus uncovered self-expandable nitinol stents in the palliative treatment of malignant distal biliary obstruction:results from a randomized, multicenter study. Gastrointest Endosc 2010;72:915-923.
- 12)
- Saleem A, Leggett CL, Murad MH, Baron TH. Meta-analysis of randomized trials comparing the patency of covered and uncovered self-expandable metal stents for palliation of distal malignant bile duct obstruction. Gastrointest Endosc 2011;74:321-327.
- 13)
- Almadi MA, Barkun AN, Martel M. No benefit of covered vs uncovered self-expandable metal stents in patients with malignant distal biliary obstruction:a meta-analysis. Clin Gastroenterol Hepatol 2013;11:27-37.
- 14)
- Hamada T, Nakai Y, Isayama H. Two meta-analyses with different conclusions:stent outcomes should be standardized before their integration. Clin Gastroenterol Hepatol 2013;11:748.
- 15)
- Isayama H, Hamada T, Yasuda I, Itoi T, Ryozawa S, Nakai Y, et al. TOKYO criteria 2014 for transpapillary biliary stenting. Dig Endosc 2015;27:259-264.
- CQ21
- 切除不能肝門部胆管閉塞に対する胆管ステントは何を選択すべきか?
- 推奨度2
- レベルB
- PS またはuncovered SEMS の選択を提案する。
解説
肝門部胆管閉塞において,plastic stent (PS: CQ20 図1 参照) とuncovered self-expandable metallic stent(SEMS:CQ20 図2 参照)の胆管閉塞症状の再発(recurrent biliary obstruction:RBO)までの期間(time to RBO:TRBO)を比較したランダム化試験が3 編あり,いずれもuncovered SEMS のTRBO が有意に長かったと報告されている1〜4)。Sangchan ら3)によるランダム化比較試験では,留置成功率は同等であったがuncovered SEMS の方がドレナージ成功率が高く(70.4% vs 46.3%;P=0.011),生存期間も長い(MST 126 日 vs 49 日;P=0.002)という結果であった。また,本邦で行われたMukai ら4)の試験では,uncovered SEMS の方が,ステント閉塞率が低く(40% vs 70%;P=0.019),全入院期間が短く(63.5 日 vs 90 日;P=0.015),手技にかかる総費用が低い(1,121,080 円 vs 2,154,190 円;P=0.015)という結果であった。このように,uncovered SEMS を推奨すべきエビデンスが数多く得られている。しかし,uncovered SEMS の留置および閉塞時のre-intervention は技術的に難しく,専門施設以外ではPS を選択する傾向にある。(レベルB)
近年,化学療法の進歩により切除不能例の生存期間が延長し,それに伴いステント閉塞に対するre-intervention の頻度が増加している。また,化学療法著効例にはconversion surgery が積極的に行われるようになってきている。Re-intervention の容易さや手術移行の可能性を考慮してSEMS ではなくPS を選択する施設も増加してきている。多くの臨床的な検討ではSEMS の成績が良好ではあるが,かかる状況を考慮してuncovered SEMS とPS を同等に推奨とすることとした。しかし,PS が有用であるとするエビデンスは得られていないので,今後,評価項目を工夫して検討する必要がある。最近ではPS を胆管内に(乳頭をまたがない)埋め込む形で留置するinside stent(CQ20 図1c 参照)も試みられている。乳頭機能を保持することによりPS の開存性を向上させようという考え方であり,期待される方法ではあるが,まだ十分な評価はなされていない5,6)。また,covered SEMS は挿入した胆管以外の肝内胆管枝を塞いでしまうので,肝門部胆管閉塞にはその使用は不可能と言われてきた。しかし,最近6 mm 径の細いcovered SEMS をPS と同様にside by side で留置する方法が試みられている7,8)。その臨床的意義はいまだ明らかではないが,有望な方法となるかもしれない。(レベルB)
肝門部胆管閉塞では肝内胆管枝が分断されているが,どれだけの胆管枝をドレナージすべきかについては明らかではない。PS で片葉と両葉のドレナージを比較したランダム化試験が1 編だけあり,開存期間に有意差を認めなかったが,症例数も少なく十分なエビデンスとはいえない9)。肝臓の容積をCT で測定し,ドレナージ領域の容積と開存期間や生存期間,合併症の関係を検討したretrospective な検討では,肝容積の50%以上をドレナージした方が開存期間,生存期間いずれも有意に長く,合併症も少なかったと報告されている10)。本邦からの同様の検討では,正常肝機能では35%,肝機能障害では50% 以上の領域のドレナージが必要であるという報告がなされた11)。また,肝容積は測定されていないが,片葉vs 両葉ドレナージに関するランダム化比較試験が韓国より報告され,両葉ドレナージの方が良好であったことが示されている12)。この問題は今後さらなる検討が必要である。(レベルC)
複数本のステントを留置する方法には,先に挿入したuncovered SEMS のメッシュ間隙を通して対側の胆管枝にステントを挿入するpartially stent in stent と13),複数本のステントを並列に別々の胆管枝に挿入するside by side とが報告されている(図1)14)。しかし,この2 つの方法を比較した論文はなく,今後の検討が必要である。(レベルD)
引用文献
- 1)
- Isayama H, Hamada T, Yasuda I, Itoi T, Ryozawa S, Nakai Y, et al. TOKYO criteria 2014 for transpapillary biliary stenting. Dig Endosc 2015;27:259-264.
- 2)
- Wagner HJ, Knyrim K, Vakil N, Klose KJ. Plastic endoprostheses versus metal stents in the palliative treatment of malignant hilar biliary obstruction. A prospective and randomized trial. Endoscopy 1993;25:213-218.
- 3)
- Sangchan A, Kongkasame W, Pugkhem A, Jenwitheesuk K, Mairiang P. Efficacy of metal and plastic stents in unresectable complex hilar cholangiocarcinoma:a randomized controlled trial. Gastrointest Endosc 2012;76:93-99.
- 4)
- Mukai T, Yasuda I, Nakashima M, Doi S, Iwashita T, Iwata K, et al. Metallic stents are more efficacious than plastic stents in unresectable malignant hilar biliary strictures:a randomized controlled trial. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2013;20:214-222.
- 5)
- Kaneko T, Sugimori K, Shimizu Y, Miwa H, Kameta E, Koh R, et al. Efficacy of plastic stent placement inside bile ducts for the treatment of unresectable malignant hilar obstruction(with videos). J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014;21:349-355.
- 6)
- Ishiwatari H, Hayashi T, Ono M, Sato T, Kato J. Newly designed plastic stent for endoscopic placement above the sphincter of Oddi in patients with malignant hilar biliary obstruction. Dig Endosc 2013;25 Suppl 2:94-99.
- 7)
- Inoue T, Okumura F, Naitoh I, Fukusada S, Kachi K, Ozeki T, et al. Feasibility of the placement of a novel 6-mm diameter threaded fully covered self-expandable metal stent for malignant hilar biliary obstructions (with videos). Gastrointest Endosc 2016;84:352-357.
- 8)
- Yoshida T, Hara K, Imaoka H, Hijioka S, Mizuno N, Ishihara M, et al. Benefits of side-by-side deployment of 6-mm covered self-expandable metal stents for hilar malignant biliary obstructions. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2016;23:548-555.
- 9)
- De Palma GD, Galloro G, Siciliano S, Iovino P, Catanzano C. Unilateral vs bilateral endoscopic hepatic duct drainage in patients with malignant hilar biliary obstruction:results of a prospective, randomized and controlled study. Gastrointest Endosc 2001;53:547-553.
- 10)
- Vienne A, Hobeika E, Gouya H, Lapidus N, Fritsch J, Choury AD, et al. Prediction of drainage effectiveness during endoscopic stenting of malignant hilar strictures:the role of liver volume assessment. Gastrointest Endosc 2010;72:728-735.
- 11)
- Takahashi E, Fukasawa M, Sato T, Takano S, Kadokura M, Shindo H, et al. Biliary drainage strategy of unresectable malignant hilar strictures by computed tomography volumetry. World J Gastroenterol 2015;21:4946-4953.
- 12)
- Lee TH, Kim TH, Moon JH, Lee SH, Choi HJ, Hwangbo Y, et al. Bilateral versus unilateral placement of metal stents for inoperable high-grade malignant hilar biliary strictures:a multicenter, prospective, randomized study(with video). Gastrointest Endosc 2017;86:817-827.
- 13)
- Kogure H, Isayama H, Nakai Y, Tsujino T, Ito Y, Yamamoto K, et al. Newly designed large cell Niti-S stent for malignant hilar biliary obstruction:a pilot study. Surg Endosc 2011;25:463-467.
- 14)
- Chennat J, Waxman I. Initial performance profile of a new 6F self-expanding metal stent for palliation of malignant hilar biliary obstruction. Gastrointest Endosc 2010;72:632-636.
第VI章.外科治療
- CQ22
- 切除不能胆道癌とはどのようなものか?[Background Question]
- レベルC
- 遠隔転移を伴う胆道癌は切除不能と考えられる。局所進展による切除不能因子については明らかなコンセンサスは得られていない。
解説
胆道癌の根治的治療法は外科的切除である。しかし,様々な要因によって切除不能と判定される。患者因子としては,他疾患と同様,外科的切除に耐えられないような全身状態,肝切除を要する場合は肝予備能低下があげられる。肝予備能は施設によって基準値が異なり独自の方法で切除可能限界を設定している施設が多い1,2)。門脈塞栓術を施行しても予定残肝容積が基準よりも小さい場合は切除不能と判定される3)。(レベルC)
腫瘍因子のうち,遠隔転移を有する症例は占拠部位によらず切除の意義が乏しく,益よりも害の方が多いので切除不能として取り扱われる4〜6)。(レベルC)
腫瘍の局所因子による切除可能性については,肝内胆管癌は左・中・右すべての肝静脈に浸潤した場合は切除不能とされる場合があるが,冷却還流や体外肝切除によって切除可能であるとする意見もある7)。多発する肝内転移も切除後の予後が概して不良なため切除不能と判定されることが多い8,9)。Bismuth-Corlette 分類は肝門部領域胆管癌の胆管占拠部位を表現したものであるが,しばしば切除可能性判定にも用いられる10,11)。拡大肝切除と血管合併切除再建によってBismuth Ⅰ〜Ⅲまでの切除率は向上した。しかし,左右胆管二次分枝(区域枝)まで進展するBismuth Ⅳは,2017 年に第8 版に改訂されたUICC 分類ではT4 から除外されたものの,米国を中心として依然切除不能と考えられている4,12)。また胆管外の垂直浸潤については両側の門脈浸潤,予定残肝側の肝動脈浸潤,総肝動脈浸潤も切除不能と考えられている4)。しかし,エキスパートが所属する少数の施設では肝三区域切除と門脈・肝動脈合併切除によって切除可能と考える外科医もいる13〜17)。このように局所進展による切除可能性限界については十分なコンセンサスは得られていない18〜20)。(レベルC)
胆囊癌の肝転移は,たとえS4a+S5 切除の範囲内にあっても切除後の予後が不良なため切除不能と考える外科医もいる。また,本邦取扱い規約第5 版の肝十二指腸間膜浸潤(Binf2,3)および肝動脈浸潤についても,肝膵同時切除や動脈再建によって切除は可能であるが,切除後の予後が極めて不良なため切除不能(切除適応外)と考える外科医もおり,コンセンサスは得られていない21〜25)。(レベルC)
近年,初診時に切除不能とされ化学療法を施行されたのちに腫瘍縮小が認められた症例に対してconversion surgery が行われるようになった26)。米国を中心として切除不能胆管癌に対して化学放射線療法ののちに肝臓移植を行うという治療も行われている10,27)。このように切除可能性は治療介入によって変化することを念頭に置くべきである28)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Yokoyama Y, Nishio H, Ebata T, Igami T, Sugawara G, Nagino M. Value of indocyanine green clearance of the future liver remnant in predicting outcome after resection for biliary cancer. Br J Surg 2010;97:1260–1268.
- 2)
- Vauthey JN, Chaoui A, Do KA, Bilimoria MM, Fenstermacher MJ, Charnsangavej C, et al. Standardized measurement of the future liver remnant prior to extended liver resection:methodology and clinical associations. Surgery 2000;127:512-519.
- 3)
- Hemming AW, Reed AI, Howard RJ, Fujita S, Hochwald SN, Caridi JG, et al. Preoperative portal vein embolization for extended hepatectomy. Ann Surg 2003;237:686–693.
- 4)
- Jarnagin WR, Fong Y, DeMatteo RP, Gonen M, Burke EC, Bodniewicz BJ, et al. Staging, resectability, and outcome in 225 patients with hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg 2001;234:507-517.
- 5)
- Duffy A, Capanu M, Abou-Alfa GK, Huitzil D, Jarnagin W, Fong Y, et al. Gallbladder cancer (GBC):10-year experience at Memorial Sloan-Kettering Cancer Centre(MSKCC). J Surg Oncol 2008;98:485-489.
- 6)
- Kondo S, Nimura Y, Hayakawa N, Kamiya J, Nagino M, Uesaka K. Regional and para-aortic lymphadenectomy in radical surgery for advanced gallbladder carcinoma. Br J Surg 2000;87:418-422.
- 7)
- Hemming AW, Reed AI, Langham MR Jr, Fujita S, Howard RJ. Combined resection of the liver and inferior vena cava for hepatic malignancy. Ann Surg 2004;239:712-719.
- 8)
- Endo I, Gonen M, Yopp AC, Dalal KM, Zhou Q, Klimstra D, et al. Intrahepatic cholangiocarcinoma:rising frequency, improved survival, and determinants of outcome after resection. Ann Surg 2008;248:84-96.
- 9)
- Konstantinidis IT, Groot Koerkamp B, Do RK, Gönen M, Fong Y, Allen PJ, et al. Unresectable intrahepatic cholangiocarcinoma:Systemic plus hepatic arterial infusion chemotherapy is associated with longer survival in comparison with systemic chemotherapy alone. Cancer 2016;122:758-765.
- 10)
- Croome KP, Rosen CB, Heimbach JK, Nagorney DM. Is liver transplantation appropriate for patients with potentially resectable de novo hilar cholangiocarcinoma? J Am Coll Surg 2015;221:130-139.
- 11)
- Tan JW, Hu BS, Chu YJ, Tan YC, Ji X, Chen K, et al. One-stage resection for Bismuth type Ⅳ hilar cholangiocarcinoma with high hilar resection and parenchyma-preserving strategies:a cohort study. World J Surg 2013;37:614-621.
- 12)
- Matsuo K, Rocha FG, Ito K, DʼAngelica MI, Allen PJ, Fong Y, et al. The Blumgart preoperative staging system for hilar cholangiocarcinoma:analysis of resectability and outcomes in 380 patients. J Am Coll Surg 2012;215:343-355.
- 13)
- Neuhaus P, Jonas S, Bechstein WO, Lohmann R, Radke C, Kling N, et al. Extended resections for hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg 1999;230:808-818.
- 14)
- Shimizu H, Kimura F, Yoshidome H, Ohtsuka M, Kato A, Yoshitomi H, et al. Aggressive surgical resection for hilar cholangiocarcinoma of the left-side predominance:radicality and safety of left-sided hepatectomy. Ann Surg 2010;251:281-286.
- 15)
- Nagino M, Nimura Y, Nishio H, Ebata T, Igami T, Matsushita M, et al. Hepatectomy with simultaneous resection of the portal vein and hepatic artery for advanced perihilar cholangiocarcinoma:an audit of 50 consecutive cases. Ann Surg 2010;252:115-123.
- 16)
- Miyazaki M, Kato A, Ito H, Kimura F, Shimizu H, Ohtsuka M, et al. Combined vascular resection in operative resection for hilar cholangiocarcinoma:does it work or not? Surgery 2007;141:581-588.
- 17)
- Kwon W, Jang JY, Chang YR, Jung W, Kang MJ, Kim SW. Suggestions for improving perihilar cholangiocarcinoma staging based on an evaluation of the seventh edition AJCC system. J Gastrointest Surg 2015;19:666-674.
- 18)
- Mansour JC, Aloia TA, Crane CH, Heimbach JK, Nagino M, Vauthey JN. Hilar cholangiocarcinoma:expert consensus statement. HPB(Oxford)2015;17:691-699.
- 19)
- Abbas S, Sandroussi C. Systematic review and meta-analysis of the role of vascular resection in the treatment of hilar cholangiocarcinoma. HPB(Oxford)2013;15:492-503.
- 20)
- Banales JM, Cardinale V, Carpino G, Marzioni M, Andersen JB, Invernizzi P, et al. Expert consensus document:cholangiocarcinoma:current knowledge and future perspectives consensus statement from the European Network for the Study of Cholangiocarcinoma(ENS-CCA). Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2016;13:261-280.
- 21)
- Shimada H, Endo I, Sugita M, Masunari H, Fujii Y, Tanaka K, et al. Hepatic resection combined with portal vein or hepatic artery reconstruction for advanced carcinoma of the hilar bile duct and gallbladder. World J Surg 2003;27:1137–1142.
- 22)
- Kobayashi A, Oda T, Fukunaga K, Sasaki R, Ohkohchi N. Invasion of the hepatic artery is a crucial predictor of poor outcomes in gallbladder carcinoma. World J Surg 2012;36:645–650.
- 23)
- Higuchi R, Ota T, Araida T, Kajiyama H, Yazawa T, Furukawa T, et al. Surgical approaches to advanced gallbladder cancer:a 40-year single-institution study of prognostic factors and resectability. Ann Surg Oncol 2014;21:4308-4316.
- 24)
- Yamamoto Y, Sugiura T, Ashida R, Okamura Y, Ito T, Uesaka K. Indications for major hepatectomy and combined procedures for advanced gallbladder cancer. Br J Surg 2017;104:257-266.
- 25)
- Nishio H, Nagino M, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Nimura Y. Aggressive surgery for stage Ⅳ gallbladder carcinoma;what are the contraindications? J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:351-357.
- 26)
- Kato A, Shimizu H, Ohtsuka M, Yoshidome H, Yoshitomi H, Furukawa K, et al. Surgical resection after downsizing chemotherapy for initially unresectable locally advanced biliary tract cancer:a retrospective single-center study. Ann Surg Oncol 2013;20:318-324.
- 27)
- Darwish Murad S, Kim WR, Harnois DM, Douglas DD, Burton J, Kulik LM, et al. Efficacy of neoadjuvant chemoradiation, followed by liver transplantation, for perihilar cholangiocarcinoma at 12 US centers. Gastroenterology 2012;143:88-98.
- 28)
- Grendar J, Grendarova P, Sinha R, Dixon E. Neoadjuvant therapy for downstaging of locally advanced hilar cholangiocarcinoma:a systematic review. HPB(Oxford) 2014;16:297-303.
- CQ23
- 術前門脈塞栓術はどのような症例に行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 切除率50〜60%以上の肝切除を予定する胆道癌に行うことを提案する。
解説
門脈塞栓術(portal vein embolization:PVE)は術後の肝不全発生を予防する目的で,切除予定肝の門脈枝をあらかじめ塞栓しておく術前処置である。1990 年にMakuuchi ら1)が肝門部胆管癌症例に最初に用いた。PVE の約2 週間後には予定残肝(非塞栓側)の全肝容積に対する比率(残肝率)は,10〜14% 程度増加する2〜5)。PVE による容積変化の組織学的背景として,塞栓側における肝細胞のapoptosis と非塞栓側の肝細胞数の増加が観察される6)。
胆道癌症例における肝切除は,肝腫瘍に対する肝切除とは性質が異なる。前者は肝葉切除以上の肝切除に加え,胆管切除とリンパ節郭清が併施され,手術侵襲がより高度である。また,胆道癌は発症時に閉塞性黄疸(胆汁うっ滞)が存在するため,障害肝として扱われることが多い。以前から,胆管切除の併施,もしくは胆道癌に対する肝切除は在院死亡のリスクであることが報告されている7,8)。この結果から,PVE の適応を議論する際には胆管切除の有無もしくは背景疾患を考慮すべきである。(レベルC)
肝切除限界に関する検討は周術期死亡もしくは術後肝不全をエンドポイントとして以前から検討されている。肝切除の限界は,周術期管理や手術手技の進歩とともに徐々に拡大し,肝切除率70%9)から75%10)となり,さらに現在は80%11)と報告されている。この結果から,欧米では切除率75〜80% 以上となる場合にPVE を施行することが多い12)。しかし,この基準は正常肝における肝切除の場合であり,障害肝の場合にはPVE の適応を肝切除率50〜60% に下げる必要があると述べられている10,12)。(レベルC)
胆道癌肝切除例に限定してPVE の臨床効果を検証した報告は少ない。Kang ら13)は残肝率≦ 30% の肝門部領域胆管癌33 例をPVE の有無別に検討した。PVE 施行11 例,非施行22 例の残肝率は平均20.8%,22.4% で,残肝率≦ 20% がそれぞれ4 例,6 例含まれていた。両群間で術後の肝再生率,最終肝容積,合併症は同等で,PVE 群に2 例の在院死を認め,この結果から,残肝率≦ 30% でもPVE による明らかな利点を認めないと結論した。一方,Olthof ら14)らは肝門部領域胆管癌(疑い含)279 手術例から,PVE を施行しなかった217 例を対象に術後肝不全(ISGLS Grade B/C)を検討した。肝不全は全体で52 例(23.9%)に発生し,残肝率≧45% の17%,30 から45% 未満の23%,<30% の44% に認められた。肝不全の危険因子として残肝率<30% のみならず,術前胆管炎,初診黄疸例,手術時総ビリルビン>2.9 mg/dL が重要であり,複合的な要因で発生することを明らかにした。そして,残肝率<30% は重要であるが,それだけでPVE の適応を決めるべきではないと結論した。なお,本研究における90 日死亡率は13.8%(30 例)と極めて高いことが問題である。Higuchi ら15)は,胆道癌肝切除に対するPVE を扱う研究論文を調査し836 例を集計した。90% 以上の施設は残肝率<40% をPVE の適応基準としていたが,この“緩やかな”適応基準の妥当性が科学的に検証されている訳ではない。しかし,肝切除後の死亡率が3.7%(31/836)と欧米の報告に比べて明らかに低い点は注目すべきである。(レベルC)
PVE の手技成功率は99% 以上,合併症は約3〜10% に生じ,出血,残肝側の門脈血栓,塞栓物質の逸脱・迷入,胆管穿刺に伴う胆汁瘻,気胸,再疎通などが知られる2,3,5,12,15,16)。PVE 関連死亡率は0.09%15)と稀であるが,死亡例が報告されている事実は知っておく必要がある17,18)。(レベルC)
以上のように,胆道癌肝切除においてPVE に関する前向き比較試験は存在せず,多くは後方視的観察研究であり,エビデンスレベルは低い。PVE を積極的に活用する本邦での死亡率は低い19)。一方,PVE の適応基準が厳しい海外施設では手術死亡率は高く,それは本邦におけるPVE 導入前の成績より不良である19)。Overuse の可能性は否定できないが,胆道癌肝切除におけるPVE の適応は切除率60% 以上の肝切除に行うことが多いと考えられる。さらに膵頭十二指腸切除・血管合併切除などを伴う複雑な肝切除では,その施行基準を切除率50% まで拡大しても患者の不利益にはならないと考えられる。なお,日本インターベンショナルラジオロジー学会から“経皮経肝門脈塞栓術ガイドライン”が出版されているので,そちらも参考にされると良い。
引用文献
- 1)
- Makuuchi M, Thai BL, Takayasu K, Takayama T, Kosuge T, Gunvén P, et al. Preoperative portal embolization to increase safety of major hepatectomy for hilar bile duct carcinoma:a preliminary report. Surgery 1990;107:521-527.
- 2)
- Nagino M, Kamiya J, Nishio H, Ebata T, Arai T, Nimura Y. Two hundred forty consecutive portal vein embolizations before extended hepatectomy for biliary cancer:surgical outcome and long-term follow-up. Ann Surg 2006;243:364-372.
- 3)
- Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, Nagino M. Portal vein embolization before extended hepatectomy for biliary cancer:current technique and review of 494 consecutive embolizations. Dig Surg 2012;29:23-29.
- 4)
- Geisel D, Raabe P, Lüdemann L, Malinowski M, Stockmann M, Seehofer D, et al. Gd-EOB-DTPA-enhanced MRI for monitoring future liver remnant function after portal vein embolization and extended hemihepatectomy:A prospective trial. Eur Radiol 2017;27:3080-3087.
- 5)
- Yamashita S, Sakamoto Y, Yamamoto S, Takemura N, Omichi K, Shinkawa H, et al. Efficacy of preoperative portal vein embolization among patients with hepatocellular carcinoma, biliary tract cancer, and colorectal liver metastases:a comparative study based on single-center experience of 319 cases. Ann Surg Oncol 2017;24:1557-1568.
- 6)
- Komori K, Nagino M, Nimura Y. Hepatocyte morphology and kinetics after portal vein embolization. Br J Surg 2006;93:745-751.
- 7)
- Belghiti J, Hiramatsu K, Benoist S, Massault P, Sauvanet A, Farges O. Seven hundred forty-seven hepatectomies in the 1990s:an update to evaluate the actual risk of liver resection. J Am Coll Surg 2000;191:38-46.
- 8)
- Kenjo A, Miyata H, Gotoh M, Kitagawa Y, Shimada M, Baba H, et al. Risk stratification of 7,732 hepatectomy cases in 2011 from the National Clinical Database for Japan. J Am Coll Surg 2014;218:412-422.
- 9)
- Yigitler C, Farges O, Kianmanesh R, Regimbeau JM, Abdalla EK, Belghiti J. The small remnant liver after major liver resection:how common and how relevant? Liver Transpl 2003;9:S18-25.
- 10)
- Abdalla EK, Barnett CC, Doherty D, Curley SA, Vauthey JN. Extended hepatectomy in patients with hepatobiliary malignancies with and without preoperative portal vein embolization. Arch Surg 2002;137:675-680.
- 11)
- Kishi Y, Abdalla EK, Chun YS, Zorzi D, Madoff DC, Wallace MJ, et al. Three hundred and one consecutive extended right hepatectomies:evaluation of outcome based on systematic liver volumetry. Ann Surg 2009;250:540-548.
- 12)
- Madoff DC, Gaba RC, Weber CN, Clark TW, Saad WE. Portal venous interventions:state of the art. Radiology 2016;278:333-353.
- 13)
- Kang MJ, Jang JY, Kwon W, Park JW, Chang YR, Kim SW. Does preoperative portal vein embolization have any impact on the outcome of right-side hepatectomy for Klatskin tumor? J Gastrointest Surg 2013;17:1592-1599.
- 14)
- Olthof PB, Wiggers JK, Groot Koerkamp B, Coelen RJ, Allen PJ, Besselink MG, et al. Postoperative liver failure risk score:identifying patients with resectable perihilar cholangiocarcinoma who can benefit from portal vein embolization. J Am Coll Surg 2017;225:387-394.
- 15)
- Higuchi R, Yamamoto M. Indications for portal vein embolization in perihilar cholangiocarcinoma. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014;21:542-549.
- 16)
- Narula N, Aloia TA. Portal vein embolization in extended liver resection. Langenbecks Arch Surg 2017;402:727-735.
- 17)
- Lee EC, Park SJ, Han SS, Park HM, Lee SD, Kim SH, et al. Mortality after portal vein embolization:Two case reports. Medicine(Baltimore) 2017;96:e5446.
- 18)
- Mohammed M, Kobayashi K, Jawed M. Biliary-pleural fistula following portal vein embolization for perihilar cholangiocarcinoma. Case Rep Gastroenterol 2017;11:277-283.
- 19)
- Nagino M, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, et al. Evolution of surgical treatment for perihilar cholangiocarcinoma:a single-center 34-year review of 574 consecutive resections. Ann Surg 2013;258:129-140.
- CQ24
- 術前の残肝予備能評価はどのように行うべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- CT による予定残肝容積の測定とICG 排泄試験(減黄後かつ胆管炎の存在しない条件)は胆道癌肝切除における有用な予備能の指標であり,行うことを推奨する。
解説
肝の切除術式は多様であり,切除される肝容積も実に様々である。このため,外科領域における肝予備能は,肝機能のみならず肝容積をも考慮した指標が必要である1)。総ビリルビンやアルブミンなどの通常の生化学的検査もしくは臨床所見と組み合わせたChild-Pugh 分類などでは正確な肝機能評価はできない。アジア圏ではICG 排泄試験が肝切除前の肝機能検査に用いられることが多い。胆道癌では並存する閉塞性黄疸のため様々な程度の胆汁うっ滞性肝障害を認める。よって,胆道ドレナージで胆汁うっ滞による影響を排除(血清総ビリルビン値が2.0 mg/dL 未満まで低下)した後にICG 排泄試験を行うことが重要である2,3)。切除される肝容積は手術ごとに異なるので,肝容積はCT 画像を用いて肝区域ごとに実測され,残肝容積は全肝容積または標準化肝容積を基準に比率(残肝率)で表示される。(レベルC)
胆道癌に対する肝切除は,術後肝不全や在院死亡のリスクが高い4,5)。しかし,胆道癌肝切除における肝予備能と周術期成績を検討した研究は少ない。Ribero ら6)によると,肝門部領域胆管癌133 例中肝不全は22%(n=29)に,在院死亡は11%(n=15)に発生し,肝不全は残肝率<30% と術前胆管炎に関連したと報告した。Olthof ら7)も同様に肝門部領域胆管癌217 例中52 例(23.9%)に肝不全が発生し,その危険因子として残肝率<30%,術前胆管炎,初診黄疸例,手術時総ビリルビン>2.9 mg/dL が重要であったと報告し,術後肝不全は複合的な要因で発生するため,残肝率だけでは判断できないと結論した。これら海外の報告では肝機能そのものが測定されていないことが問題である。一方,Nagino ら5)の肝門部領域胆管癌574 例の検討では,在院死亡(n=27,4.7%:1977〜2000 年,10.1%;2001〜2005 年,3.0%;2006〜2010 年,1.4%)の危険因子は術前胆管炎,ICG 消失率(ICGK),術中出血量≧ 2.5L であったと報告し,ICG 機能が重要であることを示唆している。Yokoyama ら2)は585 例の肝門部領域胆管癌のICGK ×残肝率から得られたICGK-F 値を検討し,0.05 が在院死亡や肝不全を予測する有効なカットオフ値であり,ICGK-F ≧ 0.05 を機能的な手術適応とすることを提案している。ICGK-F は機能と容積を反映する簡素で汎用性の高い指標である。(レベルC)
胆道癌に対する広範肝切除例では残肝側の胆道ドレナージに加え,切除側に門脈枝塞栓術が行われる。この場合,切除側と残肝側の肝細胞機能に差が生じる。Geisel ら8)はICG と同様の肝排泄動態を示すGd-EOB-DTPA(プリモビストⓇ)を用いたMRI で,門脈右枝の塞栓前および2,4 週後に肝左葉の信号強度は変化せず,肝右葉側では有意な低下を認めることを観察した。Sumiyoshi ら9)は,胆管癌32 例に99mTc-GSA(アシアロシンチⓇ注)を用いたSPECT/CT 検査を2〜3 回施行し,左右の分肝機能を経時的に可視化した。それによると,胆道ドレナージにより残肝側の99mTc-GSA の取り込みは増加し,切除側に門脈塞栓術を加えるとさらにその取り込みが増加した。99mTc-GSA の取り込みを計測することで肝細胞機能総量の差を反映した残肝機能率とも言える指標を提唱した。その後,Sumiyoshi ら10)は肝門部胆管癌30 切除例を用いて,99mTc-GSA による左右の分肝機能を考慮した指標は,ICGK-F よりも正確な指標である可能性を示した。(レベルC)
このように,胆道癌肝切除における肝予備能評価に関する検討はいまだ少なく,標準的な方法は存在しない。現時点では,ICG 検査と残肝容積の両者を考慮し,肝予備能の面から肝切除の適応を決定すべきである。本邦では簡便なICGK-F が胆道癌の肝切除の術前評価として推奨される。すでに述べたように,肝不全や在院死亡は複合的な要因で発生する。ICGK-F のみならず,周術期の管理状況,手術の内容(血管合併切除や膵頭十二指腸切除の併施),手術経験などを踏まえ,個々の安全性を判定することが重要である。現在,ICG 検査の臨床的意義を明らかにすることを目的に,National Clinical Database(NCD)を用いて肝切除後合併症とICG 検査結果との関連が検討されている。
引用文献
- 1)
- Clavien PA, Petrowsky H, DeOliveira ML, Graf R. Strategies for safer liver surgery and partial liver transplantation. N Engl J Med 2007;356:1545-1559.
- 2)
- Yokoyama Y, Ebata T, Igami T, Sugawara G, Mizuno T, Yamaguchi J, et al. The Predictive value of indocyanine green clearance in future liver remnant for posthepatectomy liver failure following hepatectomy with extrahepatic bile duct resection. World J Surg 2016;40:1440-1447.
- 3)
- Yokoyama Y, Nishio H, Ebata T, Igami T, Sugawara G, Nagino M. Value of indocyanine green clearance of the future liver remnant in predicting outcome after resection for biliary cancer. Br J Surg 2010;97:1260-1268.
- 4)
- Kenjo A, Miyata H, Gotoh M, Kitagawa Y, Shimada M, Baba H, et al. Risk stratification of 7,732 hepatectomy cases in 2011 from the National Clinical Database for Japan. J Am Coll Surg 2014;218:412-422.
- 5)
- Nagino M, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, et al. Evolution of surgical treatment for perihilar cholangiocarcinoma:a single-center 34-year review of 574 consecutive resections. Ann Surg 2013;258:129-140.
- 6)
- Ribero D, Zimmitti G, Aloia TA, Shindoh J, Fabio F, Amisano M, et al. Preoperative cholangitis and future liver remnant volume determine the risk of liver failure in patients undergoing resection for hilar cholangiocarcinoma. J Am Coll Surg 2016;223:87-97.
- 7)
- Olthof PB, Wiggers JK, Groot Koerkamp B, Coelen RJ, Allen PJ, Besselink MG, et al. Postoperative liver failure risk score:identifying patients with resectable perihilar cholangiocarcinoma who can benefit from portal vein embolization. J Am Coll Surg 2017;225:387-394.
- 8)
- Geisel D, Raabe P, Lüdemann L, Malinowski M, Stockmann M, Seehofer D, et al. Gd-EOB-DTPA-enhanced MRI for monitoring future liver remnant function after portal vein embolization and extended hemihepatectomy:a prospective trial. Eur Radiol 2017;27:3080-3087.
- 9)
- Sumiyoshi T, Shima Y, Okabayashi T, Noda Y, Hata Y, Murata Y, et al. Functional discrepancy between two liver lobes after hemilobe biliary drainage in patients with jaundice and bile duct cancer:an appraisal using 99mTc-GSA SPECT/CT fusion imaging. Radiology 2014;273:444-451.
- 10)
- Sumiyoshi T, Shima Y, Okabayashi T, Kozuki A, Hata Y, Noda Y, et al. Liver function assessment using 99mTc-GSA single-photon emission computed tomography(SPECT)/CT fusion imaging in hilar bile duct cancer:a retrospective study. Surgery 2016;160:118-126.
- CQ25
- 血管浸潤に対して血管合併切除は行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 肝門部領域胆管癌に対する門脈合併切除は行うことを提案する。
- レベルC
- 肝門部領域胆管癌に対する肝動脈合併切除は行うことを考慮しても良い。
解説
1)肝門部領域胆管癌に対する門脈合併切除
Ebata ら1)は,肝門部領域胆管癌160 切除例のうち52 例に門脈合併切除を施行した。門脈合併切除例と非合併切除例の5年生存率は9.9%と36.8%であり,門脈合併切除例が有意に予後不良であった。多変量解析では,組織学的分化度,リンパ節転移,肉眼的門脈浸潤が予後に関与する因子であり,門脈合併切除により進行癌の一部で長期生存が可能であった,と報告した。その7 年後,同施設のIgami ら2)は,肝門部領域胆管癌298 切除例のうち111 例に門脈合併切除を行った結果を報告した。門脈非合併切除例の5 年生存率が51%であったのに対し,門脈合併切除例(肝動脈合併切除は含まない)は33%であり,門脈合併切除例の予後は有意に不良であったものの比較的良好な成績であった。Miyazaki ら3)は,肝門部領域胆管癌161 切除例のうち41 例に門脈合併切除を行った。門脈合併切除の5 年生存率22% は血管非合併切除例の5 年生存率41% より有意に不良であったが,切除不能例よりは予後良好であり,門脈合併切除の意義はあると報告した。さらにLee ら4)は,肝門部領域胆管癌302 切除例のうち門脈合併切除を38 例に行い,非合併切除例と合併切除の生存期間中央値(MST)は44.6ヵ月と39.4ヵ月であり,両者に有意差がなかったことを報告した。Hemming ら5)も,肝門部領域胆管癌切除95 例のうち42 例に門脈合併切除を行い,非合併切除例と合併切除例の間で在院死亡率,合併症率,OS に有意差がなかったことを報告した。de Jong ら6)は,多施設の肝門部領域胆管癌切除305 例を検討し,組織学的門脈浸潤は有意な予後因子ではなく(HR,1.23:P=0.19),また門脈合併切除は非切除群と予後に違いがなかった(P=0.76)ことから,門脈合併切除は根治切除に必要であれば行うべきであると報告した。Wang ら7)は,肝門部領域胆管癌154 切除例を検討し,脈管合併切除なし群,門脈合併切除群,肝動脈合併切除群を比較し,OS と合併症率に差がなかったことから,門脈または肝動脈浸潤例に対する血管合併切除は予後を改善すると報告した。Nakanishi ら8)は,肝門部領域胆管癌の門脈浸潤部位を病理学的に検討し,門脈浸潤のない症例と切除側の門脈に浸潤のある症例の切除後の予後には差がないが,門脈本幹や対側門脈にまで浸潤のある症例の予後は劣ることを報告した。(レベルC)
肝門部の“no-touch resection”のために門脈をルーチンに合併切除する報告もされている。Hirano ら9)は肝門部領域悪性腫瘍に対する右側肝切除に際してルーチンに門脈合併切除を行った25 例と,従来の概念に基づいて門脈合併切除を行った18 例と門脈非合併切除21 例とを比較し,在院死亡率は3 群間(4.0%,5.6%,4.8%)で有意差がなく,合併症率は“no-touch resection”群(24.0%)と従来式の門脈合併切除群(33.3%)の間で有意差がなかったことから“no-touch resection”が安全に施行可能と報告した。同施設のTamoto ら10)は,右側肝切除を行った肝門部領域胆管癌49 切除例のうち,“no-touch technique”で門脈合併切除を行った36例と門脈非合併切除13 例を比較し,前者の方がより局所進行度が高かったにもかかわらず,癌遺残度,再発率,5 年生存率(59% vs 51%)に差がなかったことを報告した。またNeuhaus ら11)は,肝門部領域胆管癌に対する“hilar en bloc resection”のために肝右3区域切除と門脈合併切除を“no-touch” technique で行った50 例の5 年生存率(58%)は,従来の肝切除群(29%)よりも有意に良好で,多変量解析では組織学的分化度と術式(“hilar en bloc resection”か従来式の肝切除群か)のみが独立予後因子であると報告した。(レベルC)
Abbas ら12)は肝門部領域胆管癌切除に関するメタアナリシスを行い,肝門部領域胆管癌に対する門脈合併切除のランダム化比較試験がないために,ルーチンに門脈合併切除を行うことがR0 切除率を向上させるかどうか結論付けることはできないが,予後に悪影響を与える門脈浸潤例に対する門脈合併切除は予後を改善させる可能性があることを報告した。Chen ら13)は同様に肝門部領域胆管癌に関するメタアナリシスを行い,門脈合併切除はそれが不要であった場合よりも予後が悪いが,非切除よりは予後がよいこと,また門脈合併切除群と不要群の間で術後合併症率と術後死亡率に差がなかったことを報告した。(レベルB)
これまでに肝門部領域胆管癌に対する門脈合併切除のランダム化比較試験はない。また,門脈合併切除例は切除不能例と比較して予後が良好とする報告が多いが,そもそも切除不能例には門脈合併切除例よりも高度進行例が多いことを考慮しなければならない。このように門脈合併切除の意義を明らかにする十分な科学的根拠はない。しかし,門脈合併切除によって長期生存できる症例が一定数存在し,high volume center では安全に門脈合併切除が行われ,またその成績も非合併切除例と有意差がないとする報告も散見される。かかる点を踏まえ,肝門部領域胆管癌に対する門脈合併切除の推奨度は2 とした。ただし,肝門の“no-touch resection”の概念に基づいたいわゆる「予防的」門脈合併切除の臨床的意義はいまだ不明である。
2)遠位胆管癌に対する門脈合併切除
遠位胆管癌については,Kurosaki ら14)が遠位胆管癌および胆囊癌切除118 例中10 例に門脈合併切除を行い,門脈合併切除,非合併切除のMST は6.8ヵ月,28.6ヵ月であったことから,遠位胆管癌および胆囊癌では門脈合併切除は推奨できないと報告した。Miura ら15)は,遠位胆管癌129 切除例のうち10 例に門脈合併切除を行い,門脈合併切除例の3 年,5 年生存率が17%,0% であったのに対し,門脈非合併切除例では50%,39%であったことから,遠位胆管癌に対する門脈浸潤は切除可能境界と認識すべきであると報告した。Maeta ら16)は,遠位胆管癌453 切除例のうち31 例に門脈合併切除を行い,門脈浸潤はリンパ節転移や膵浸潤などの局所進行因子と有意に相関し,結果として門脈合併切除例の予後が悪い(5 年生存率:門脈合併切除群15%,門脈非合併切除群42.4%)ことを報告した。このように,遠位胆管癌に対して門脈合併切除を行う頻度は少なく,またそれによって根治切除ができたとしてもその予後は厳しいが,Maeta ら16)の報告では少ないながらも長期生存例が報告されている。遠位胆管癌に対する門脈合併切除に関する論文は少なく,またその効果に関する見解も一定しないことから,推奨文を提示できる段階ではないと判断した。(レベルC)
3)胆囊癌に対する門脈合併切除
胆囊癌について,Chijiiwa ら17)は,胆道癌取扱い規約の定めるstage Ⅳ胆囊癌切除37 例を検討し,門脈または肝動脈浸潤を有した4 例に長期生存はなく,その予後は非切除例と変わりないことを報告した。一方,Nishio ら18)は肝外胆管に浸潤する胆囊癌切除例のうち,在院死亡例と遠隔転移例を除く65 切除例のうち,門脈合併切除を行った26 例と行わなかった39 例を比較し,前者の5 年生存率,MST が17.7%,1.5 年であったのに対し,後者では29.7%,1.9 年であり,予後に差がなかった(P=0.227)ことを報告した。またYamamoto ら19)は,広範肝切除を行った胆囊癌29 例のうち,門脈合併切除を要した9 例と門脈合併切除が不要であった20 例を比較し,両者の全生存に差がなく(P=0.872),門脈合併切除例は非切除例よりも予後が良好(P=0.054)であったと報告した。このように,胆囊癌に対する門脈合併切除の報告はいまだ少なく,その有効性に関する見解も一致しておらず,臨床的意義は不明である。以上から,推奨度を提示できる段階ではないと判断した。(レベルC)
4)胆道癌に対する肝動脈合併切除
Yamanaka ら20)は,肝門部領域胆管癌において左側肝切除に伴う9 例の右肝動脈合併切除例を報告し,右側肝切除では肝不全になる危険性がある場合には,肝動脈合併切除を伴う左側肝切除は施行可能な選択肢であると報告した。Sakamoto ら21)は,胆道癌11 例に対して右肝動脈合併切除を行い,在院死亡がなかったこと,R0 切除のMST が23ヵ月であったのに対しR1 切除では13ヵ月であったことから,右肝動脈合併切除は安全に施行できるが,R0 切除が見込まれる時のみにするべきと報告した。これに対してMiyazaki ら3)は9 例の肝門部領域胆管癌に対して肝動脈合併切除を行ったところ,4 例(44%)に在院死亡がみられ,長期予後(2 年生存率0%)は非切除例と変わらなかった,と報告した。2010 年以後になると,Nagino ら22)が,肝動脈・門脈同時切除再建を伴う肝切除を施行した肝門部領域胆管癌50 例について報告した。施行した肝切除は49 例が左側肝切除,1例のみが右肝切除であった。在院死亡は1例(2%)で,合併症は27 例(54%)に発生した。R0 切除は33 例(66%)に達成され,全切除例の3 年および5 年生存率は36.3%,30.3% であった。以上から,肝門部領域胆管癌に対する肝動脈・門脈合併切除を伴う肝切除は,技術的難度は極めて高いが,限られた症例においては長期予後が見込める,と報告した。Noji ら23)は,肝門部領域胆管癌に対する肝動脈合併切除39 例のうち,肝動脈合併切除・再建群と肝動脈合併切除・動門脈シャント群の成績を比較した。シャント群では肝膿瘍の発生率が高かったものの,5 年生存率は再建例18%,シャント群11% と差を認めなかったことから,肝動脈は可能な限り再建する方がよいが,再建が不可能な場合には動門脈シャントが適応になることを報告した。(レベルC)
肝門部領域胆管癌に対する肝動脈合併切除は,専門施設において着実に増えつつあり,長期生存例も報告されている。しかし,いまだ報告数は十分ではなく,推奨度をつけないこととした。また,胆囊癌や遠位胆管癌に対して肝動脈合併切除を行うことは極めて少なく,実際にその論文もないことから,推奨度を提示しないこととした。
引用文献
- 1)
- Ebata T, Nagino M, Kamiya J, Uesaka K, Nagasaka T, Nimura Y. Hepatectomy with portal vein resection for hilar cholangiocarcinoma:audit of 52 consecutive cases. Ann Surg 2003;238:720-727.
- 2)
- Igami T, Nishio H, Ebata T, Yokoyama Y, Sugawara G, Nimura Y, et al. Surgical treatment of hilar cholangiocarcinoma in the “new era”:the Nagoya University experience. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2010;17:449-454.
- 3)
- Miyazaki M, Kato A, Ito H, Kimura F, Shimizu H, Ohtsuka M, et al. Combined vascular resection in operative resection for hilar cholangiocarcinoma:does it work or not? Surgery 2007;141:581-588.
- 4)
- Lee SG, Song GW, Hwang S, Ha TY, Moon DB, Jung DH, et al. Surgical treatment of hilar cholangiocarcinoma in the new era:the Asan experience. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2010;17:476-489.
- 5)
- Hemming AW, Mekeel K, Khanna A, Baquerizo A, Kim RD. Portal vein resection in management of hilar cholangiocarcinoma. J Am Coll Surg 2011;212:604-613.
- 6)
- de Jong MC, Marques H, Clary BM, Bauer TW, Marsh JW, Ribero D, et al. The impact of portal vein resection on outcomes for hilar cholangiocarcinoma:a multi-institutional analysis of 305 cases. Cancer 2012;118:4737-4747.
- 7)
- Wang ST, Shen SL, Peng BG, Hua YP, Chen B, Kuang M, et al. Combined vascular resection and analysis of prognostic factors for hilar cholangiocarcinoma. Hepatobiliary Pancreat Dis Int 2015;14:626-632.
- 8)
- Nakanishi Y, Tsuchikawa T, Okamura K, Nakamura T, Tamoto E, Murakami S, et al. Prognostic impact of the site of portal vein invasion in patients with surgically resected perihilar cholangiocarcinoma. Surgery 2016;159:1511-1519.
- 9)
- Hirano S, Kondo S, Tanaka E, Shichinohe T, Tsuchikawa T, Kato K. No-touch resection of hilar malignancies with right hepatectomy and routine portal reconstruction. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2009;16:502-507.
- 10)
- Tamoto E, Hirano S, Tsuchikawa T, Tanaka E, Miyamoto M, Matsumoto J, et al. Portal vein resection using the no-touch technique with a hepatectomy for hilar cholangiocarcinoma. HPB(Oxford)2014;16:56-61.
- 11)
- Neuhaus P, Thelen A, Jonas S, Puhl G, Denecke T, Veltzke-Schlieker W, et al. Oncological superiority of hilar en bloc resection for the treatment of hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg Oncol 2012;19:1602-1608.
- 12)
- Abbas S, Sandroussi C. Systematic review and meta-analysis of the role of vascular resection in the treatment of hilar cholangiocarcinoma. HPB(Oxford)2013;15:492-503.
- 13)
- Chen W, Ke K, Chen YL. Combined portal vein resection in the treatment of hilar cholangiocarcinoma:a systematic review and meta-analysis. Eur J Surg Oncol 2014;40:489-495.
- 14)
- Kurosaki I, Hatakeyama K, Minagawa M, Sato D. Portal vein resection in surgery for cancer of biliary tract and pancreas:special reference to the relationship between surgical outcome and site of primary tumor. J Gastrointest Surg 2008;12:907-918.
- 15)
- Miura F, Sano K, Amano H, Toyota N, Wada K, Yoshida M, et al. Evaluation of portal vein invasion of distal cholangiocarcinoma as borderline resectability. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2015;22:294-300.
- 16)
- Maeta T, Ebata T, Hayashi E, Kawahara T, Mizuno S, Matsumoto N, et al. Pancreatoduodenectomy with portal vein resection for distal cholangiocarcinoma. Br J Surg 2017;104:1549-1557.
- 17)
- Chijiiwa K, Kai M, Nagano M, Hiyoshi M, Ohuchida J, Kondo K. Outcome of radical surgery for stage Ⅳ gallbladder carcinoma. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:345-350.
- 18)
- Nishio H, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Nagino M. Gallbladder cancer involving the extrahepatic bile duct is worthy of resection. Ann Surg 2011;253:953-960.
- 19)
- Yamamoto Y, Sugiura T, Ashida R, Okamura Y, Ito T, Uesaka K. Indications for major hepatectomy and combined procedures for advanced gallbladder cancer. Br J Surg 2007;104:257-266.
- 20)
- Yamanaka N, Yasui C, Yamanaka J, Ando T, Kuroda N, Maeda S, et al. Left hemihepatectomy with microsurgical reconstruction of the right-sided hepatic vasculature:a strategy for preserving hepatic function in patients with proximal bile duct cancer. Langenbecks Arch Surg 2001;386:364-368.
- 21)
- Sakamoto Y, Sano T, Shimada K, Kosuge T, Kimata Y, Sakuraba M, et al. Clinical significance of reconstruction of the right hepatic artery for biliary malignancy. Langenbecks Arch Surg 2006;391:203-208.
- 22)
- Nagino M, Nimura Y, Nishio H, Ebata T, Igami T, Matsushita M, et al. Hepatectomy with simultaneous resection of the portal vein and hepatic artery for advanced perihilar cholangiocarcinoma. an audit of 50 consecutive cases. Ann Surg 2010;252:115-123.
- 23)
- Noji T, Tsuchikawa T, Okamura K, Nakamura T, Tamoto E, Shichinohe T, et al. Resection and reconstruction of the hepatic artery for advanced perihilar cholangiocarcinoma:result of arterioportal shunting. J Gastrointest Surg 2015;19:675-681.
- CQ26
- 肝葉切除を伴う膵頭十二指腸切除(いわゆるmajor HPD)は行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 広範に進展した胆管癌には行うことを提案する。
解説
肝葉切除を伴う膵頭十二指腸切除術(major hepatopancreatoduodenectomy:major HPD)は,広範囲に進展した胆管癌や胆囊癌での完全切除を目指して導入され,1990 年代より単施設の少数例によるretrospective な検討が報告されてきた。現在でも,HPD に関する報告の多くは本邦からのものであるが,近年,high volume center から比較的多数例の報告がなされるようになった。
胆管癌に対するmajor HPD に関する最も多数例の検討はEbata ら1)の85 例の報告であり,全生存率は1 年79.7%,3 年48.5%,5 年37.4%,10 年32.1%と比較的良好であり,特にR0 切除を達成できたM0 症例の5年生存率は54.3%と良好であった。また,Aoki ら2)は,膵空腸吻合のみを二期的に行うHPD の成績を報告し,43 例の二期的膵空腸吻合例を含む52 例(胆管癌39 例,胆囊癌13 例)の5 年生存率は44.5%であり,胆管癌と胆囊癌に差はなかったと報告している。また,R2 切除となった症例は予後が不良であり,1 年生存例がなかったが,R0 とR1 に差はなかったと述べている。Fukami ら3)は,胆管癌24 例を含む38 例にHPD を施行し,胆管癌の生存期間中央値(MST)は63.1ヵ月と良好であったと報告している。また,症例数が10〜20 例の報告4〜8)では,5 年生存率は12〜51.9%,MST は8〜63ヵ月と様々な結果を示している。これらの報告でもR0 切除症例,およびリンパ節転移陰性例で予後が良いと報告されている6,7)。(レベルC)
一方,胆囊癌に対して,Yamamoto ら9)が行った9 例のmajor HPD の検討でMST は29.8ヵ月,5 年生存率は34.6%であり,肝切除のみを行った20 例との比較で有意差はなかったと報告した。他にも胆囊癌と胆管癌で予後に差はないとする報告2,7)もある一方で,胆囊癌で予後が不良であるとする報告3,10)もあり,施設間の差は大きい。(レベルC)
HPD 施行例の高い術後合併症率や死亡率は,本術式を施行する意義を考える際には極めて重要な要素である。Ebata ら11)は胆囊癌を含めた検討で,右葉切除20 例,右葉切除+ S4a 切除28 例,肝右三区域切除10 例を伴うHPD の58 例を,1980 年代(前期),1990 年代(中期),2000 年代(〜2004 年,後期)に分け,在院死亡率は前期31%,中期18%,後期14%と有意差はなかったものの経年的に減少傾向にあると述べている。また,同時に術後合併症として膵液瘻,胆管空腸吻合部縫合不全,肝不全の頻度は経年的に減少したことを報告し,手術手技や画像診断,あるいは周術期管理の進歩が寄与していると述べている。また,同施設からの胆管癌に限ったHPD の報告1)では,1992 年から2011 年までに行った85 例の合併症は肝不全(75.2%),膵液瘻(70.6%)と高率であったが,在院死亡率は2.4%と十分許容できるものであった。Aoki ら2)は二期的膵空腸吻合によるHPD 52 例(うちmajor HPD は42 例)を検討し,Clavien-Dindo Ⅲ以上の合併症を19 例(37%)に認めたが,死亡例は1 例(2%)に過ぎなかったと報告した。一方で,施設あたり20〜38 例の比較的少数例の検討では死亡率が10%以上の報告3,6,7)もあり,施設における症例数の多寡が手術関連死亡率に関係している可能性が高い。(レベルC)
以上より,広範に進展した胆管癌に対するmajor HPD は有効であると言えるが,胆囊癌に対する臨床的意義は明らかではない。在院死亡率はhigh volume center では許容されるレベルにまで低下してきている。しかし,いまだ術後合併症率は高く,安全性に十分配慮した患者選択と手術適応の決定が必要である。
引用文献
- 1)
- Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, Nimura Y, et al. Hepatopancreatoduodenectomy for cholangiocarcinoma:a single-center review of 85 consecutive patients. Ann Surg 2012;256:297-305.
- 2)
- Aoki T, Sakamoto Y, Kohno Y, Akamatsu N, Kaneko J, Sugawara Y, et al. Hepatopancreaticoduodenectomy for biliary cancer:strategies for near-zero operative mortality and acceptable long-term outcome. Ann Surg 2018;267:332-337.
- 3)
- Fukami Y, Kaneoka Y, Maeda A, Takayama Y, Onoe S. Major hepatopancreatoduodenectomy with simultaneous resection of the hepatic artery for advanced biliary cancer. Langenbecks Arch Surg 2016;401:471-478.
- 4)
- Kaneoka Y, Yamaguchi A, Isogai M, Kumada T. Survival benefit of hepatopancreatoduodenectomy for cholangiocarcinoma in comparison to hepatectomy or pancreatoduodenectomy. World J Surg 2010;34:2662-2670.
- 5)
- Miwa S, Kobayashi A, Akahane Y, Nakata T, Mihara M, Kusama K, et al. Is major hepatectomy with pancreatoduodenectomy justified for advanced biliary malignancy? J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:136-141.
- 6)
- Wakai T, Shirai Y, Tsuchiya Y, Nomura T, Akazawa K, Hatakeyama K. Combined major hepatectomy and pancreaticoduodenectomy for locally advanced biliary carcinoma:Long-term results. World J Surg 2008;32:1067-1074.
- 7)
- Lim CS, Jang JY, Lee SE, Kang MJ, Kim SW. Reappraisal of hepatopancreatoduodenectomy as a treatment modality for bile duct and gallbladder cancer. J Gastrointest Surg 2012;16:1012-1018.
- 8)
- Sakamoto Y, Nara S, Kishi Y, Esaki M, Shimada K, Kokudo N, et al. Is extended hemihepatectomy plus pancreaticoduodenectomy justified for advanced bile duct cancer and gallbladder cancer? Surgery 2013;153:794-800.
- 9)
- Yamamoto Y, Sugiura T, Okamura Y, Ito T, Ashida R, Uemura S, et al. Is combined pancreatoduodenectomy for advanced gallbladder cancer justified? Surgery 2016;159:810-820.
- 10)
- Kaneoka Y, Yamaguchi A, Isogai M. Hepatopancreatoduodenectomy:its suitability for bile duct cancer versus gallbladder cancer. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:142-148.
- 11)
- Ebata T, Nagino M, Nishio H, Arai T, Nimura Y. Right hepatopancreatoduodenectomy:improvements over 23 years to attain acceptability. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:131-135.
- CQ27
- 胆囊癌を疑う症例には腹腔鏡下手術ではなく開腹手術を行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 原則として開腹手術を行うことを提案する。
解説
腹腔鏡下胆囊摘出術(laparoscopic cholecystectomy:LC)は,今日では低侵襲手術として広く普及し,胆囊結石症に対しては第一選択となっている。2015 年の全国集計では,全胆囊摘出術に占めるLC の割合は88.4%で,胆囊癌疑診例に対しても適応拡大の傾向を認めている1)。しかし,胆囊癌に対するLC では癌の不完全切除,胆囊損傷に伴う腹腔内への胆汁散布,port site recurrence などの問題があげられている2)。また,胆囊癌疑診例に対する術前診断能が依然として高くないという問題もある3)。(レベルC)
治療関連因子に関するいくつかの後ろ向き研究において,腹腔鏡下手術が予後を悪化させるという研究がある。これはLC 時に意図せぬ胆囊穿孔が生じ,胆汁漏出による腹膜再発やport site recurrence のリスクが生じることによる。一般に腹腔鏡下胆囊摘出術には10% 程度の胆囊穿孔のリスクが存在する4)。胆囊壁の肥厚を伴う慢性胆囊炎,胆囊水腫,開腹術の既往の3 つが術中胆囊穿孔のリスク因子であり,これらがない症例では穿孔の発症は3.5%であったが,1 つでもリスク因子を伴う症例では25%と極めて高率であったと報告されている5)。実際,Ouchi ら6)は498 例のLC 後に胆囊癌と判明した症例を集計し,20%の症例が術中に胆囊が穿孔したと報告している。この研究では胆囊穿孔例の予後は非穿孔例よりも有意に不良であった。また,胆汁漏出例はR1 切除に終わることが多く,多臓器に再発しやすいという報告もある7)。一方,Steinert ら8)は,多くのport site recurrence が腹腔鏡下手術後に報告されているが,腹腔鏡下手術後のwound recurrence の発生率は開腹手術後ほど高くないと報告しており,いまだ一定のコンセンサスは得られていない。(レベルC)
LC 後に発見された偶発胆囊癌においても,port site recurrence や腹膜再発の発生率が高率で9〜12),再発までの期間も短いと報告されている10〜12)。術中の胆囊穿孔による癌細胞を含む胆汁の腹腔内への散布,胆囊を体外に摘出する際のポート挿入部の汚染が要因とされ,腫瘍の生物学的性質,病期,手術手技,気腹圧や炭酸ガスの生体や腫瘍細胞への影響が考えられている10)。(レベルC)
一方,近年,胆囊癌に対する腹腔鏡下の根治切除としてリンパ節郭清や胆囊床の合併切除13〜17),早期癌ないし疑診例に対する胆囊全層切除も報告されている18)。Yoon ら14)は45 例(Tis:n=2,T1a:n=10,T1b:n=8,T2:n=25)の胆囊癌に対して腹腔鏡下手術(リンパ節郭清を伴う拡大胆囊摘出術32 例,単純胆囊摘出術13 例)を行い,5 年疾患特異的生存率(観察期間中央値60ヵ月)は94.2%,再発は遠隔転移4 例のみであったと報告した。Jang ら17)もT1 胆囊癌197 例を検討し,単純胆囊摘出術を行った116 例(Lap 85 例,Open 31 例)では,5 年疾患特異的生存率(観察期間中央値56ヵ月)はLap 群97.6%,Open 群100% と差はなく,Lap 群に再発を認めなかったと報告した。その他,複数の著者が胆囊癌に対する腹腔鏡下手術は開腹手術に比べ出血量や在院日数が少なく,術後の短期成績が良好であったことを報告している13〜17,19)。かかる報告では,胆囊癌に対する腹腔鏡下手術における術中胆汁漏出0%14,15),手術死亡率0%14〜16,19),R1 切除率0〜5%14,15),port site recurrence 0〜4%14,15,19),腹膜播種再発0〜9.1%14〜16,19)などの成績も述べられている。ドイツのデータベースを用いたT1〜3 偶発胆囊癌837 例の検討では,初回手術アプローチ法(腹腔鏡492 例,開腹200 例,開腹移行142 例)は予後に影響を及ぼさなかったことも報告されている2)。(レベルC)
ガイドライン委員会における投票では,推奨度1 に対しては同意11,非同意12 (棄権0,欠席2)と70%以上の合意が得られなかった。推奨度を2 として再投票を行ったところ,同意19,非同意4 で合意率82.6%となった。しかし,同意しなかった4 委員の意見は,“早期病変でも胆汁散布が生じてしまうと悲惨な結果になり,そうした結果は統計学的には証明されづらいので,あくまで推奨度1として開腹手術を強く推奨すべきである”,ということであった。すなわち,委員全員が胆囊癌に対する腹腔鏡下手術には否定的な意見であった。我が国では,現時点で胆囊癌に対する腹腔鏡下手術は保険収載上認められていない。したがって,医学的観点ばかりでなく保険診療の面からも胆囊癌に対する腹腔鏡下手術は十分なインフォームドコンセントを行った上での慎重な対応が必要である。
引用文献
- 1)
- 日本内視鏡外科学会.内視鏡外科手術に関するアンケート調査 第 13 回集計結果報告.日内視鏡外会誌 2016;21:655-804.
- 2)
- Goetze TO, Paolucci V. Prognosis of incidental gallbladder carcinoma is not influenced by the primary access technique:analysis of 837 incidental gallbladder carcinomas in the German Registry. Surg Endosc 2013;27:2821-2828.
- 3)
- Kokudo N, Makuuchi M, Natori T, Sakamoto Y, Yamamoto J, Seki M, et al. Strategies for surgical treatment of gallbladder carcinoma based on information available before resection. Arch Surg 2003;138:741-750.
- 4)
- Sarli L, Pietra N, Costi R, Grattarola M. Gallbladder perforation during laparoscopic cholecystectomy. World J Surg 1999;23:1186-1190.
- 5)
- De Simone P, Donadio R, Urbano D. The risk of gallbladder perforation at laparoscopic cholecystectomy. Surg Endosc 1999;13:1099-1102.
- 6)
- Ouchi K, Mikuni J, Kakugawa Y;Organizing Committee, The 30th Annual Congress of the Japanese Society of Biliry Surgery. Laparoscopic cholecystectomy for gallbladder carcinoma:results of a Japanese survey of 498 patients. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2002;9:256-260.
- 7)
- Lee JM, Kim BW, Kim WH, Wang HJ, Kim MW. Clinical implication of bile spillage in patients undergoing laparoscopic cholecystectomy for gallbladder cancer. Am Surg 2011;77:697-701.
- 8)
- Steinert R, Nestler G, Sagynaliev E, Müller J, Lippert H, Reymond MA. Laparoscopic cholecystectomy and gallbladder cancer. J Surg Oncol 2006;93:682-689.
- 9)
- Wakai T, Shirai Y, Hatakeyama K. Radical second resection provides survival benefit for patients with T2 gallbladder carcinoma first discovered after laparoscopic cholecystectomy. World J Surg 2002;26:867-871.
- 10)
- Paolucci V, Schaeff B, Schneider M, Gutt C. Tumor seeding following laparoscopy:international survey. World J Surg 1999;23:989-995.
- 11)
- Lundberg O, Kristoffersson A. Port site metastases from gallbladder cancer after laparoscopic cholecystectomy:results of a Swedish survey and review of published reports. Eur J Surg 1999;165:215-222.
- 12)
- ZʼGraggen K, Birrer S, Maurer CA, Wehrli H, Klaiber C, Baer HU. Incidence of port site recurrence after laparoscopic cholecystectomy for preoperatively unsuspected gallbladder carcinoma. Surgery 1998;124:831-838.
- 13)
- Itano O, Oshima G, Minagawa T, Shinoda M, Kitago M, Abe Y, et al. Novel strategy for laparoscopic treatment of pT2 gallbladder carcinoma. Surg Endosc 2015;29:3600-3607.
- 14)
- Yoon YS, Han HS, Cho JY, Choi Y, Lee W, Jang JY, et al. Is Laparoscopy contraindicated for gallbladder cancer?:a 10-year prospective cohort study. J Am Coll Surg 2015;221:847-853.
- 15)
- Agarwal AK, Javed A, Kalayarasan R, Sakhuja P. Minimally invasive versus the conventional open surgical approach of a radical cholecystectomy for gallbladder cancer:a retrospective comparative study. HPB(Oxford)2015;17:536-541.
- 16)
- Shirobe T, Maruyama S. Laparoscopic radical cholecystectomy with lymph node dissection for gallbladder carcinoma. Surg Endosc 2015;29:2244-2250.
- 17)
- Jang JY, Heo JS, Han Y, Chang J, Kim JR, Kim H, et al. Impact of type of surgery on survival outcome in patients with early gallbladder cancer in the era of minimally invasive surgery:oncologic safety of laparoscopic surgery. Medicine(Baltimore)2016;95:e3675.
- 18)
- 本田五郎,倉田昌直,奥田雄紀浩,小林 信,坂元克考,堀口慎一郎,他.早期胆囊癌に対する腹腔鏡下胆囊全層切除のコツとその剥離層の組織学的検討.胆道 2013;27:705-711.
- 19)
- Ha TY, Yoon YI, Hwang S, Park YJ, Kang SH, Jung BH, et al. Effect of reoperation on long-term outcome of pT1b/T2 gallbladder carcinoma after initial laparoscopic cholecystectomy. J Gastrointest Surg 2015;19:298-305.
- CQ28
- 肝外胆管に直接浸潤のない胆囊癌に予防的肝外胆管切除は行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 原則として行わないことを提案する。
解説
肝外胆管に直接浸潤のない胆囊癌に対するリンパ節郭清,あるいは潜在的な病理組織学的癌浸潤に対する予防的肝外胆管切除の有用性に関する報告は少ない。肝外胆管切除は,胆囊癌において胆管周囲のリンパ管が腫瘍進展経路であること,非連続的な肝十二指腸間膜内の腫瘍進展が認められたこと1,2)から推奨されてきた。T2〜4 胆囊癌を用いた単施設後ろ向き研究で,肝外胆管切除例の5 年生存率は73%と非切除例の45%に比較して有意に良好であり,肝外胆管切除はpT,pM とともに独立予後規定因子であったとの報告を認める3)。(レベルC)
一方,日本の胆道癌登録データを用いたT2N0 胆囊癌症例における検討では,単変量解析で肝外胆管切除群は胆管非切除群よりも予後は良好であったものの,多変量解析では神経周囲浸潤のみが有意な因子で,胆管切除の有無は有意な予後因子として抽出されなかった4)。また,近年における複数の単施設後ろ向き研究でも,肝外胆管切除の有無で生存率に統計学的な差を認めないとする報告が多い5〜8)。肝外胆管切除を施行した症例には進行例が多いこと,R0 切除が重要な予後規定因子であることから,全例に肝外胆管切除は必要ではないものの,進行例にはR0 切除が得られるよう肝外胆管切除を考慮すべきとの意見もある5)。肝外胆管切除を考慮すべき病態には,リンパ節転移陽性2,9),頸部に存在する胆囊癌10,11),神経周囲浸潤11)などがある。(レベルC)
ガイドライン委員会における投票では,推奨度1 に対しては同意5,非同意17(棄権1,欠席2)と70%以上の合意に至らなかった。推奨度を2 として再投票を行ったところ合意率100% となり,上記推奨内容となった。
なお,肝外胆管を温存して肝十二指腸間膜リンパ節郭清を行う場合には,肝外胆管の遅発性の虚血性狭窄に注意が必要である12)。(レベルC)。
引用文献
- 1)
- Tsukada K, Hatakeyama K, Kurosaki I, Uchida K, Shirai Y, Muto T, et al. Outcome of radical surgery for carcinoma of the gallbladder according to the TNM stage. Surgery 1996;120:816-821.
- 2)
- Shimizu Y, Ohtsuka M, Ito H, Kimura F, Shimizu H, Togawa A, et al. Should the extrahepatic bile duct be resected for locally advanced gallbladder cancer? Surgery 2004;136:1012-1017.
- 3)
- Wakai T, Shirai Y, Sakata J, Tsuchiya Y, Nomura T, Hatakeyama K. Surgical outcomes of minor hepatectomy for locally advanced gallbladder carcinoma. Hepatogastroenterology 2012;59:2083-2088.
- 4)
- Horiguchi A, Miyakawa S, Ishihara S, Miyazaki M, Ohtsuka M, Shimizu H, et al. Gallbladder bed resection or hepatectomy of segments 4a and 5 for pT2 gallbladder carcinoma:analysis of Japanese registration cases by the study group for biliary surgery of the Japanese Society of Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2013;20:518-524.
- 5)
- Choi SB, Han HJ, Kim WB, Song TJ, Suh SO, Choi SY. Surgical strategy for T2 and T3 gallbladder cancer:is extrahepatic bile duct resection always necessary? Langenbecks Arch Surg 2013;398:1137-1144.
- 6)
- Higuchi R, Ota T, Araida T, Kajiyama H, Yazawa T, Furukawa T, et al. Surgical approaches to advanced gallbladder cancer:a 40-year single-institution study of prognostic factors and resectability. Ann Surg Oncol 2014;21:4308-4016.
- 7)
- Ha TY, Yoon YI, Hwang S, Park YJ, Kang SH, Jung BH, et al. Effect of reoperation on long-term outcome of pT1b/T2 gallbladder carcinoma after initial laparoscopic cholecystectomy. J Gastrointest Surg 2015;19:298-305.
- 8)
- Igami T, Ebata T, Yokoyama Y, Sugawara G, Mizuno T, Yamaguchi J, et al. Combined extrahepatic bile duct resection for locally advanced gallbladder carcinoma:does it work? World J Surg 2015;39:1810-1817.
- 9)
- Kokudo N, Makuuchi M, Natori T, Sakamoto Y, Yamamoto J, Seki M, et al. Strategies for surgical treatment of gallbladder carcinoma based on information available before resection. Arch Surg 2003;138:741-750.
- 10)
- Suzuki S, Yokoi Y, Kurachi K, Inaba K, Ota S, Azuma M, et al. Appraisal of surgical treatment for pT2 gallbladder carcinomas. World J Surg 2004;28:160-165.
- 11)
- Sakamoto Y, Kosuge T, Shimada K, Sano T, Hibi T, Yamamoto J, et al. Clinical significance of extrahepatic bile duct resection for advanced gallbladder cancer. J Surg Oncol 2006;94:298-306.
- 12)
- Ishizuka D, Shirai Y, Hatakeyama K. Ischemic biliary stricture due to lymph node dissection in the hepatoduodenal ligament. Hepatogastroenterology 1998;45:2048-2050.
- CQ29
- 肝浸潤を疑う胆囊癌にはどのような肝切除を行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 十分なsurgical margin を確保した胆囊床切除を行うことを提案する。
解説
胆囊癌に対する系統的肝S4a+5(海外ではS4b+5)切除は,従来,胆囊癌の肝への進展が胆囊静脈を介して生じると考えられ,また胆囊静脈が主にP4a,P5 を中心とする肝内門脈に流入しているとの研究から1〜3),不顕性の転移4)や浸潤をGlisson 鞘単位で系統的に切除することを目的に行われてきた。しかし,胆囊癌の肝への進展は,胆囊床経由の肝内直接浸潤と肝内リンパ管浸潤を主体とするGlisson 鞘浸潤であることが報告されている5〜7)。(レベルC)
日本の胆道癌登録データを用いてT2N0 胆囊癌症例における胆囊床切除(図1)とS4a+5 切除(図2)の比較を行った後ろ向き研究8)では,胆囊床切除例の5 年生存率が76.2%に対し,S4a+5 切除例は65.9%と差を認めなかった。また,再発様式にも統計学的な差を見出すことはできなかった。さらに,T2〜4 胆囊癌に対する単施設の後ろ向き研究では,Wakai ら9)が胆囊床切除例の3 年生存率が74%であるのに対し,S4a+5 切除例では60%と差がなかったと報告している。また,Higuchi ら10)も5 年の疾患特異的生存率が胆囊床切除例で39.1%,S4a+5 切除例で36.4%であり,いずれも肝切除法は有意な因子でなかったことを報告している。かかる報告例における胆囊癌の予後規定因子は神経周囲浸潤8),pT9),pN10),pM9,10),胆管切除9),R0 切除8)などであった。
ガイドライン委員会における投票では,推奨度1 に対しては同意12,非同意10(棄権1,欠席2)と70%以上の合意が得られなかった。推奨度を2 として再投票を行ったところ合意率100% となり,上記推奨内容となった。
胆囊癌手術においてはpT/pN/pM 因子,R0 切除などが独立予後規定因子であり,R0 切除が得られれば,肝浸潤に対する肝切除術式(胆囊床切除/ S4a+5 切除)は生存率や再発様式に影響しないと考えられる。(レベルC)
引用文献
- 1)
- 佐藤智丈. ヒト肝鋳型標本よりみた胆囊静脈の解剖学的研究.胆道 1989;3:227-233.
- 2)
- Yoshimitsu K, Honda H, Kaneko K, Kuroiwa T, Irie H, Chijiiwa K, et al. Anatomy and clinical importance of cholecystic venous drainage:helical CT observations during injection of contrast medium into the cholecystic artery. AJR Am J Roentgenol 1997;169:505-510.
- 3)
- Sugita M, Ryu M, Satake M, Kinoshita T, Konishi M, Inoue K, et al. Intrahepatic inflow areas of the drainage vein of the gallbladder:analysis by angio-CT. Surgery 2000;128:417-421.
- 4)
- Endo I, Shimada H, Takimoto A, Fujii Y, Miura Y, Sugita M, et al. Microscopic liver metastasis:prognostic factor for patients with pT2 gallbladder carcinoma. World J Surg 2004;28:692-696.
- 5)
- Fahim RB, McDonald JR, Richards JC, Ferris DO. Carcinoma of the gallbladder:a study of its modes of spread. Ann Surg 1962;156:114-124.
- 6)
- Shirai Y, Tsukada K, Ohtani T, Watanabe H, Hatakeyama K. Hepatic metastases from carcinoma of the gallbladder. Cancer 1995;75:2063-2068.
- 7)
- Wakai T, Shirai Y, Sakata J, Nagahashi M, Ajioka Y, Hatakeyama K. Mode of hepatic spread from gallbladder carcinoma:an immunohistochemical analysis of 42 hepatectomized specimens. Am J Surg Pathol 2010;34:65-74.
- 8)
- Horiguchi A, Miyakawa S, Ishihara S, Miyazaki M, Ohtsuka M, Shimizu H, et al. Gallbladder bed resection or hepatectomy of segments 4a and 5 for pT2 gallbladder carcinoma:analysis of Japanese registration cases by the study group for biliary surgery of the Japanese Society of Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2013;20:518-524.
- 9)
- Wakai T, Shirai Y, Sakata J, Tsuchiya Y, Nomura T, Hatakeyama K. Surgical outcomes of minor hepatectomy for locally advanced gallbladder carcinoma. Hepatogastroenterology 2012;59:2083-2088.
- 10)
- Higuchi R, Ota T, Araida T, Kajiyama H, Yazawa T, Furukawa T, et al. Surgical approaches to advanced gallbladder cancer :a 40-year single-institution study of prognostic factors and resectability. Ann Surg Oncol 2014;21:4308-4316.
- CQ30
- 胆囊摘出後に深達度ss 以上の胆囊癌が判明した場合に追加切除を行うべきか?
- 推奨度1
- レベルC
- 一期的ないし二期的に追加根治術を行うことを推奨する。
解説
胆囊結石症などの良性胆囊疾患の診断のもとに胆囊摘出術が行われ,術中あるいは術後の病理組織学的検索で初めて胆囊癌と診断される偶発胆囊癌の頻度は0.2〜1.0%と報告されている1,2)。良性疾患で胆摘を行う場合には,偶発癌の可能性を患者に予め話しておく必要がある。(レベルC)
胆摘後に病理組織診断が行われ深達度がm あるいはmp にとどまる場合には追加切除は不要であるが,ss 以上では胆囊摘出術のみでは予後不良であり,追加切除を行うべきと報告されてきた3,4)。しかし,mp においても積極的に追加切除を推奨する報告もある5,6)。pT2,pT3 症例を対象とした後ろ向き研究では,追加切除がなされた群は追加切除なしの単純胆摘のみ群に比較して有意に予後良好であると報告されており,ss 以上の進行胆囊癌では,必要に応じた肝切除,リンパ節郭清を伴う根治的二期手術が考慮されるべきと考える3,4,7)。Stage が高い症例は二期的手術の際の外科切除率,追加根治切除後の5 年生存率は低く,予後は不良とならざるを得ない7)。また,急性胆囊炎に対する腹腔鏡下胆摘術後の偶発胆囊癌の予後は不良とされている8)。(レベルC)
腹腔鏡下胆摘後の偶発癌ではport site recurrence が報告され9),追加切除の際に刺入部の切除が推奨されている。しかし,切除しても予後の改善には貢献しないという結果が最近報告されている10)。(レベルC)
術中に迅速組織診断にてss 胆囊癌と診断された際に,一期的に追加根治切除を行うか否かは,術中迅速組織診の正確性,術者の追加根治切除の術式に対する習熟度など,いくつかの問題がある。全国登録例の集計報告によると,238 例のうち59 例は開腹手術移行により一期的根治切除が行われた。残りの179 例のうち119 例には30 日以内に,60 例には30 日以降に根治手術が施行されていたが,両群に術後生存率で有意差は認めなかった4)。このように二期的根治手術でも比較的良好な成績が報告されているので,術中の限られた条件の中で無理をする必要はなく,十分な準備をして二期的に追加根治切除を行っても良い4,11)。最近の報告では,初回胆摘術の4〜8 週間が再切除の至適時期との報告がある12)。(レベルC)
引用文献
- 1)
- 河野 博,中村雅史,永吉洋介,森 泰寿,堤 宏介,安井隆晴,他.腹腔鏡下胆囊摘出術におけるIncidental Gallbladder Cancer の頻度.胆と膵 2011;32:373-377.
- 2)
- Tian YH, Ji X, Liu B, Yang GY, Meng XF, Xia HT, et al. Surgical treatment of incidental gallbladder cancer discovered during or following laparoscopic cholecystectomy. World J Surg 2015;39:746-752.
- 3)
- Shirai Y, Yoshida K, Tsukada K, Muto T. Inapparent carcinoma of the gallbladder:an appraisal of a radical second operation after simple cholecystectomy. Ann Surg 1992;215:326-331.
- 4)
- Ouchi K, Mikuni J, Kakugawa Y;Organizing Committee, The 30th Annual Congress of the Japanese Society of Biliary Surgery. Laparoscopic cholecystectomy for gallbladder carcinoma:results of a Japanese survey of 498 patients. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2002;9:256-260.
- 5)
- Otero JC, Proske A, Vallilengua C, Luján M, Poletto L, Pezzotto SM, et al. Gallbladder cancer:surgical results after cholecystectomy in 25 patients with lamina propria invasion and 26 patients with muscular layer invasion. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2006;13:562-566.
- 6)
- Goetze TO, Paolucci V. Immediate re–resection of T1 incidental gallbladder carcinomas:a survival analysis of the German Registry. Surg Endosc 2008;22:2462-2465.
- 7)
- Goetze TO, Paolucci V. Benefits of reoperation of T2 and more advanced incidental gallbladder carcinoma:analysis of the German Registry. Ann Surg 2008;247:104-108.
- 8)
- Clemente G, Nuzzo G, De Rose AM, Giovannini I, La Torre G, Ardito F, et al. Unexpected gallbladder cancer after laparoscopic cholecystectomy for acute cholecystitis:a worrisome picture. J Gastrointest Surg 2012;16:1462-1468.
- 9)
- Steinert R, Nestler G, Sagynaliev E, Müller J, Lippert H, Reymond MA. Laparoscopic cholecystectomy and gallbladder cancer. J Surg Oncol 2006;93:682-689.
- 10)
- Maker AV, Butte JM, Oxenberg J, Kuk D, Gonen M, Fong Y, et al. Is port site resection necessary in the surgical management of gallbladder cancer? Ann Surg Oncol 2012;19:409-417.
- 11)
- 島田和明,奈良 聡,江崎 稔,阪本良弘,小菅智男. Incidental Gallbladder Cancer 術中判明時の対応―術中診断と治療方針―. 胆と膵 2011;32:391-396.
- 12)
- Ethun CG, Postlewait LM, Le N, Pawlik TM, Buettner S, Poultsides G, et al. Association of optimal time interval to re-resection for incidental gallbladder cancer with overall survival:a multi-institution analysis from the US extrahepatic biliary malignancy consortium. JAMA Surg 2017;152:143-149.
- CQ31
- 十二指腸乳頭部腫瘍に局所的乳頭部切除(外科的治療を含む)は行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 十二指腸乳頭部腺腫には行うことを提案する。
- 推奨度2
- レベルC
- 十二指腸乳頭部癌では正確な深達度診断がいまだ困難なので,行わないことを提案する。
解説
十二指腸乳頭部癌に対する標準手術は,膵頭十二指腸切除(PD)である1)。しかし我が国では,乳頭部癌の詳細な病理学的検討から,乳頭部粘膜内にとどまりOddi 筋に達しないT1a までの癌であれば,リンパ節転移を起こす可能性が極めて低いことがわかり2,3),一部の乳頭部癌や乳頭部腺腫に対して外科的あるいは内視鏡的乳頭部切除が試みられてきた。(レベルC)
外科的乳頭部切除の代表は経十二指腸的乳頭切除術である。近年の外科的乳頭部切除に関する報告では,腺腫のみを対象としたもの4,5),癌のうちTis 〜T1 を対象としたもの6〜9),浸潤癌までを対象としたもの10),などさまざまである。この中でAmini ら6)は,T1 に対してPD を行った163 例においては22% にリンパ節転移がみられたので,T1 にリンパ節郭清を伴わない外科的乳頭部切除を行うべきでないことを報告した。同様にLee ら7)も,Tis にはリンパ節転移がなかったがT1 には10%にリンパ節転移がみられたこと,Tis に対する外科的乳頭部切除(経十二指腸的乳頭切除)の術後には再発がなかったが,T1 に対する外科的乳頭部切除はPD よりも局所再発率が高かったことから,T1 に対して外科的乳頭部切除を行うべきでないことを報告した。Gao ら8)は,外科的乳頭切除は,pTis またはpT1 で,腫瘍径が2 cm 以下,リンパ節転移がない症例に対して有効であることを報告した。また,Kawabata ら11)はPD を施行した症例の検討に基づいて,pTis,pT1 ともにリンパ節転移はなかったが,リンパ管侵襲の頻度はpTis 0%,pT1 38.5% であったので,乳頭切除はpTis 症例に限るべきだと報告した。(レベルC)
内視鏡的乳頭切除術の適応も,理論的には外科的乳頭切除術の適応と同じであると考えられる。Petrone ら12)は,内視鏡的乳頭切除を行ったT1 乳頭部癌15 例を解析し,根治切除であったものは8 例(57%)であり,腫瘍関連死亡がなかったのは,癌の深達度が4 mm 以内の症例に限られることを報告した。Napoleon ら13)は,生検で腺腫と診断されたか,超音波内視鏡でT1N0 と診断され内視鏡的乳頭切除を行った93 例を解析し,9例に治療が不十分(癌の粘膜下進展8 例,腺腫の遺残1 例)で,最終的に81% の症例が根治したことを報告した。この報告は,術前の正診率にいまだ問題があることを示している。De Palma ら14)は,3 cm 以下で,内視鏡的には悪性所見がなく,膵管・胆管への進展がない27症例に対して内視鏡的乳頭切除を行った経験から,内視鏡的乳頭切除は良性またはTis 症例にまで有効であることを報告した。Alvarez-Sanchez ら15)は,28 例の十二指腸乳頭部癌の内視鏡的乳頭切除の経験から,内視鏡的乳頭切除はリンパ管侵襲を伴わないT1 までの症例には根治的であろうと報告した。(レベルC)
これらの報告からは,内視鏡的であれ外科的であれ,根治性の面からみた局所的乳頭部切除の適応は,腺腫,および癌であればpTis とpT1 の一部に限られると言えよう。しかし,局所的乳頭部切除を実臨床で適用する際には,いくつかの問題が存在する。第1 の問題は,術前に十二指腸乳頭部腺腫と癌を,必ずしも正確に鑑別することができない場合があることである。腺腫と癌の術前診断の正診率に関する論文はないが,術前の生検で腺腫と診断して局所的乳頭部切除をしたにもかかわらず,切除標本の検索では深部が癌化しており,結果として局所的乳頭部切除では不十分な手術であった,という場合もあり得る。完全切除できる腺腫に対して局所的乳頭部切除を行うことは妥当である反面,術前に腺腫を必ずしも正確に診断できない現状を鑑み,腺腫に対する局所的乳頭部切除の推奨度は2 とした。第2 の問題はT1 の定義であるが,American Joint Committee on Cancer16)のT1 はVater に限局またはOddi 筋に達するものを含んでいる。すなわち胆道癌取扱い規約17)のT1a(乳頭部粘膜内にとどまる)とT1b(Oddi 筋に達する)の両方を含んでいることである。これまでに記載した和文論文2,3)と英文論文4〜15)を総合すると,乳頭部癌に対する局所的乳頭部切除の適応は,少なくともpTis あるいはpT1a に限られ,リンパ節転移やリンパ管侵襲がある可能性のあるpT1b にはその適応はない18)と考えるべきと言えよう。十二指腸乳頭部癌の術前診断において,その深達度診断に有用とされるのは超音波内視鏡検査(EUS)と腔内超音波検査(IDUS)であるが,現状ではT1a とT1b を術前に鑑別するのは不可能と報告されている19)。術前診断においてT1a とT1b を正確に鑑別することが困難である以上,十二指腸乳頭部癌に局所的乳頭部切除を十分な信頼度をもって適応することは時期尚早であり,PD が標準術式と考えられる。(レベルC)
我が国では2018 年1 月現在,外科的乳頭部切除あるいは内視鏡的乳頭部切除そのものが保険収載されていないという問題がある。欧米からは,症例を正しく選択すれば乳頭部の局所切除も安全に施行可能で良好な成績が得られることが報告されている7,13)。保険診療の立場からは,実臨床における局所的乳頭部切除の適用は慎重に対処すべきである。しかし,本邦でも専門施設では積極的に行われている現状と欧米からの良好な成績を考慮して,上記の推奨とした。
引用文献
- 1)
- 日本肝胆膵外科学会胆道癌診療ガイドライン作成委員会編. エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン. 第2 版.東京,医学図書出版, 2014, 92-93.
- 2)
- 長池幸樹,千々岩一男,大内田次郎,内山周一郎,今村直哉,旭吉雅秀,他.十二指腸乳頭部癌切除例の臨床病理学的検討.胆道 2009;23:74-79.
- 3)
- 大坪 出,味木徹夫,上野公彦,沢 秀博,松本逸平,福本 巧,他.早期乳頭部癌の臨床的特徴と治療.胆と膵2012;33:249-254.
- 4)
- Ceppa EP, Burbridge RA, Rialon KL, Omotosho PA, Emick D, Jowell PS, et al. Endoscopic versus surgical ampullectomy:an algorithm to treat disease of the ampulla of Vater. Ann Surg 2013;257:315-322.
- 5)
- Schneider L, Contin P, Fritz S, Strobel O, Büchler MW, Hackert T. Surgical ampullectomy:an underestimated operation in the era of endoscopy. HPB(Oxford)2016;18:65-71
- 6)
- Amini A, Miura JT, Jayakrishnan TT, Johnston FM, Tsai S, Christians KK, et al. Is local resection adequate for T1 stage ampullary cancer? HPB(Oxford)2015;17:66-71.
- 7)
- Lee H, Park JY, Kwon W, Heo JS, Choi DW, Choi SH. Transduodenal ampullectomy for the treatment of early-stage ampulla of Vater cancer. World J Surg 2016;40:967-973.
- 8)
- Gao Y, Zhu Y, Huang X, Wang H, Huang X, Yuan Z. Transduodenal ampullectomy provides a less invasive technique to cure early ampullary cancer. BMC Surg 2016;16:36.
- 9)
- Papalampros A, Moris D, Petrou A, Dimitrokallis N, Karavokyros I, Schizas D, et al. Non-Whipple operations in the management of benign, premalignant and early cancerous duodenal lesions. Anticancer Res 2017;37:1443-1452.
- 10)
- Zhong J, Palta M, Willett CG, McCall SJ, Bulusu A, Tyler DS, et al. The role of local excision in invasive adenocarcinoma of the ampulla of Vater. J Gastrointest Oncol 2013;4:8-13.
- 11)
- Kawabata Y, Ishikawa N, Moriyama I, Tajima Y. What is an adequate surgical management for pTis and pT1 early ampullary carcinoma? Hepatogastroenterology 2014;61:12-17.
- 12)
- Petrone G, Ricci R, Familiari P, Inzani F, Matsuoka M, Mutignani M, et al. Endoscopic snare papillectomy:a possible radical treatment for a subgroup of T1 ampullary adenocarcinomas. Endoscopy 2013;45:401-404.
- 13)
- Napoleon B, Gincul R, Ponchon T, Berthiller J, Escourrou J, Canard JM, et al. Endoscopic papillectomy for early ampullary tumors:long-term results from a large multicenter prospective study. Endoscopy 2014;46:127-134.
- 14)
- De Palma GD, Luglio G, Maione F, Esposito D, Siciliano S, Gennarelli N, et al. Endoscopic snare papillectomy:a single institutional experience of a standardized technique:a retrospective cohort study. Int J Surg 2015;13:180-183.
- 15)
- Alvarez-Sanchez MV, Orial I, Luna OB, Pialat J, Gincul R, Lefort C, et al. Can endoscopic papillectomy be curative for early ampullary adenocarcinoma of the ampulla of Vater? Surg Endosc 2017;31:1564-1572.
- 16)
- Edge SB, Byrd DR, Compton CC, Fritz AG, Greene FL, Trotti A, eds. AJCC cancer staging manual. 7th ed. New York, Springer, 2010.
- 17)
- 日本肝胆膵外科学会編.臨床・病理 胆道癌取扱い規約.第6 版.東京,金原出版, 2013, 28-32.
- 18)
- 中井陽介,伊佐山浩通,笹平直樹,川久保和道,木暮宏史,高原楠昊,他.十二指腸乳頭部癌に対する内視鏡的治療の適応と限界.胆と膵 2012;33:255-259.
- 19)
- 伊藤 啓,藤田直孝,野田 裕,小林 剛,洞口 淳,越田真介,他.十二指腸乳頭部腫瘍に対する内視鏡を用いた進展度診断.胆と膵 2012;33:233-241.
- CQ32
- 術中胆管切離断端上皮内癌陽性例に胆管の追加切除を行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- リンパ節転移などの予後不良因子がない場合には行うことを提案する。
解説
胆管癌の局所進展様式の検討では,浸潤癌による長軸方向への壁内進展は肉眼的腫瘍縁から10 mm 未満に留まることが多い。しかし,上皮内癌による表層拡大進展は20 mm 以上に及ぶことがあり,かつ,その正確な術前診断は困難なことが多いとされている1〜3)。胆管切離断端が浸潤癌で陽性となった症例の予後は不良である4)。一方,上皮内癌で胆管断端陽性となった症例は,短期的な予後は断端陰性例と変わらないが,中・長期的に再発をきたす可能性が示唆されている。したがって,胆管癌根治切除においては,常に胆管切離断端に腫瘍を遺残させない手術が求められる1,5〜8)。(レベルC)
胆管切離断端の癌遺残の有無を術中迅速組織診断によって判定する目的は,診断結果に応じて胆管追加切除を行うことである。その是非は追加切除を行うことが手術成績に影響するか否かにある。肝側切離断端の胆管を追加切除できる長さはせいぜい数mm 程度であり4),追加により切離断端を陰性化できる可能性に関する研究はない。実際,主に浸潤癌を対象とした研究では胆管追加切除によりR0 切除となった症例では良好な生命予後が得られるとする報告9,10)と,胆管追加切除によりR0 切除が行われても生命予後の改善が得られないとする報告4,11)があり,術中迅速組織診断にて浸潤癌陽性と診断された症例に対し胆管の追加切除を行う意義は,肝側断端・十二指腸側断端ともに意見の分かれるところである。(レベルC)
最近,pTis-2N0M0 といった比較的早期の胆管癌を対象とした検討が行われ7),上皮内癌の胆管断端遺残は有意に予後を悪化することが明らかとなった。一方,上皮内癌による切離断端陽性例に胆管の追加切除を行った結果R0 が得られた症例は,追加切除なしでR0 を得られた症例と同等の良好な無再発生存率が得られることが示された。すなわち,リンパ節転移がない比較的早期の胆管癌では,上皮内癌陽性に対する胆管の追加切除が生存率を改善する可能性がある。(レベルC)
肝門部領域胆管癌における十二指腸側切離断端陽性例に対して,上皮内癌陽性では膵内胆管のみの追加切除,浸潤癌陽性では膵頭十二指腸切除が行われることが多い7,12)。しかし,肝葉切除症例に対する膵頭十二指腸切除の追加は侵襲が大きいため,患者の状態により適応を慎重に検討すべきである。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Nakanishi Y, Zen Y, Kawakami H, Kubota K, Itoh T, Hirano S, et al. Extrahepatic bile duct carcinoma with extensive intraepithelial spread:a clinicopathological study of 21 cases. Mod Pathol 2008;21:807-816.
- 2)
- Ebata T, Watanabe H, Ajioka Y, Oda K, Nimura Y. Pathological appraisal of lines of resection for bile duct carcinoma. Br J Surg 2002;89:1260-1267.
- 3)
- Igami T, Nagino M, Oda K, Nishio H, Ebata T, Yokoyama Y, et al. Clinicopathologic study of cholangiocarcinoma with superficial spread. Ann Surg 2009;249:296-302.
- 4)
- Shingu Y, Ebata T, Nishio H, Igami T, Shimoyama Y, Nagino M. Clinical value of additional resection of a margin-positive proximal bile duct in hilar cholangiocarcinoma. Surgery 2010;147:49-56.
- 5)
- Wakai T, Shirai Y, Moroda T, Yokoyama N, Hatakeyama K. Impact of ductal resection margin status on long-term survival in patients undergoing resection for extrahepatic cholangiocarcinoma. Cancer 2005;103:1210-1216.
- 6)
- Ojima H, Kanai Y, Iwasaki M, Hiraoka N, Shimada K, Sano T, et al. Intraductal carcinoma component as a favorable prognostic factor in biliary tract carcinoma. Cancer Sci 2009;100:62-70.
- 7)
- Tsukahara T, Ebata T, Shimoyama Y, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, et al. Residual carcinoma in situ at the ductal stump has a negative survival effect:an analysis of early-stage cholangiocarcinomas. Ann Surg 2017;266:126-132.
- 8)
- Higuchi R, Yazawa T, Uemura S, Izumo W, Furukawa T, Yamamoto M. High-grade dysplasia/carcinoma in situ of the bile duct margin in patients with surgically resected node-negative perihilar cholangiocarcinoma is associated with poor survival:a retrospective study. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2017;24:456-465.
- 9)
- Oguro S, Esaki M, Kishi Y, Nara S, Shimada K, Ojima H, et al. Optimal indications for additional resection of the invasive cancer-positive proximal bile duct margin in cases of advanced perihilar cholangiocarcinoma. Ann Surg Oncol 2015;22:1915-1924.
- 10)
- Ribero D, Amisano M, Lo Tesoriere R, Rosso S, Ferrero A, Capussotti L. Additional resection of an intraoperative margin-positive proximal bile duct improves survival in patients with hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg 2011;254:776-781.
- 11)
- Endo I, House MG, Klimstra DS, Gönen M, DʼAngelica M, Dematteo RP, et al. Clinical significance of intraoperative bile duct margin assessment for hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg Oncol 2008;15:2104-2112.
- 12)
- Furukawa T, Higuchi R, Yamamoto M. Clinical relevance of frozen diagnosis of ductal margins in surgery of bile duct cancer. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2014;21:459-462.
- CQ33
- 胆管癌切除後の予後因子はどのようなものか?[Background Question]
- レベルC
- 胆管切離断端および剝離面での癌の遺残,リンパ節転移,神経周囲浸潤,組織学的分化度および主要血管への浸潤などがあげられる。
解説
肝門部領域胆管癌切除例の予後解析では,胆管切離断端および剝離面での癌の遺残1〜10),組織学的分化度1,6,8〜11),リンパ節転移4,5,8,10),神経周囲浸潤6),リンパ管侵襲6),肝切除9,11),性差5),血管合併切除7),Bismuth type8)などが予後因子として報告されている。Nagino らの574 切除例による予後因子の多変量解析ではリンパ節転移が最も強い予後不良因子であった10)。また,リンパ節転移の部位よりも,転移リンパ節数によるN因子の分類が重要で,5 個以上の切除リンパ節の病理組織学的評価を推奨している12)。高いR0 切除率を目指すことが治療成績の向上に重要である10,11)。胆管断端に関しては浸潤癌により陽性の場合は予後不良であるが,上皮内癌による陽性では晩期局所再発のリスクはあるものの短期予後には影響しないことが報告されている13〜16)。(レベルC)
遠位胆管癌もR0 切除が重要な予後規定因子である。切除断端および剝離面に癌遺残を認めないことが最も重要であるが15,17〜19),リンパ節転移17,18,20〜23)や膵浸潤22,23)も重要な予後因子であると報告されている。リンパ節転移陽性個数が2 個までの症例では,治癒切除により良好な予後が期待できると報告されている18,22)。肝門部領域胆管癌と同様,遠位胆管癌においても転移陽性リンパ節の数が重要な予後規定因子として報告されている24)。遠位胆管癌では神経周囲浸潤の有無より,神経周囲浸潤が剝離面の癌遺残として認められた場合に,より重大な予後不良因子であると報告されている17)。(レベルC)
切除断端や剝離面に癌遺残がみられる症例,あるいはリンパ節転移陽性例では再発をきたす可能性が高く,厳重な経過観察が必要である。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Su CH, Tsay SH, Wu CC, Shyr YM, King KL, Lee CH, et al. Factors influencing postoperative morbidity, mortality, and survival after resection for hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg 1996;223:384-394.
- 2)
- Nakeeb A, Pitt HA, Sohn TA, Coleman J, Abrams RA, Piantadosi S, et al. Cholangiocarcinoma:a spectrum of intrahepatic, perihilar, and distal tumors. Ann Surg 1996;224:463-473.
- 3)
- Klempnauer J, Ridder GJ, von Wasielewski R, Werner M, Weimann A, Pichlmayr R. Resectional surgery of hilar cholangiocarcinoma:a multivariate analysis of prognostic factors. J Clin Oncol 1997;15:947-954.
- 4)
- Iwatsuki S, Todo S, Marsh JW, Madariaga JR, Lee RG, Dvorchik I, et al. Treatment of hilar cholangiocarcinoma(Klatskin tumors)with hepatic resection or transplantation. J Am Coll Surg 1998;187:358-364.
- 5)
- Kosuge T, Yamamoto J, Shimada K, Yamasaki S, Makuuchi M. Improved surgical results for hilar cholangiocarcinoma with procedures including major hepatic resection. Ann Surg 1999;230:663-671.
- 6)
- Neuhaus P, Jonas S, Bechstein WO, Lohmann R, Radke C, Kling N, et al. Extended resections for hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg 1999;230:808-818.
- 7)
- Miyazaki M, Ito H, Nakagawa K, Ambiru S, Shimizu H, Okaya T, et al. Parenchyma-preserving hepatectomy in the surgical treatment of hilar cholangiocarcinoma. J Am Coll Surg 1999;189:575-583.
- 8)
- Todoroki T, Kawamoto T, Koike N, Takahashi H, Yoshida S, Kashiwagi H, et al. Radical resection of hilar bile duct carcinoma and predictors of survival. Br J Surg 2000;87:306-313.
- 9)
- Jarnagin WR, Fong Y, DeMatteo RP, Gonen M, Burke EC, Bodniewicz BS J, et al. Staging, resectability, and outcome in 225 patients with hilar cholangiocarcinoma. Ann Surg 2001;234:507-517.
- 10)
- Nagino M, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, et al. Evolution of surgical treatment for perihilar cholangiocarcinoma:a single-center 34-year review of 574 consecutive resections. Ann Surg 2013;258:129–140.
- 11)
- Kondo S, Hirano S, Ambo Y, Tanaka E, Okushiba S, Morikawa T, et al. Forty consecutive resections of hilar cholangiocarcinoma with no postoperative mortality and no positive ductal margins:results of a prospective study. Ann Surg 2004;240:95-101.
- 12)
- Aoba T, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, Takahashi Y, et al. Assessment of nodal status for perihilar cholangiocarcinoma:location, number, or ratio of involved nodes. Ann Surg 2013;257:718–725.
- 13)
- Wakai T, Shirai Y, Moroda T, Yokoyama N, Hatakeyama K. Impact of ductal resection margin status on long-term survival in patients undergoing resection for extrahepatic cholangiocarcinoma. Cancer 2005;103:1210-1216.
- 14)
- Ojima H, Kanai Y, Iwasaki M, Hiraoka N, Shimada K, Sano T, et al. Intraductal carcinoma component as a favorable prognostic factor in biliary tract carcinoma. Cancer Sci 2009;100:62-70.
- 15)
- Igami T, Nagino M, Oda K, Nishio H, Ebata T, Yokoyama Y, et al. Clinicopathologic study of cholangiocarcinoma with superficial spread. Ann Surg 2009;249:296-302.
- 16)
- Nakanishi Y, Kondo S, Zen Y, Yonemori A, Kubota K, Kawakami H, et al. Impact of residual in situ carcinoma on postoperative survival in 125 patients with extrahepatic bile duct carcinoma. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2010;17:166-173.
- 17)
- Kayahara M, Nagakawa T, Ohta T, Kitagawa H, Tajima H, Miwa K. Role of nodal involvement and the periductal soft-tissue margin in middle and distal bile duct cancer. Ann Surg 1999;229:76-83.
- 18)
- Yoshida T, Matsumoto T, Sasaki A, Morii Y, Aramaki M, Kitano S. Prognostic factors after pancreatoduodenectomy with extended lymphadenectomy for distal bile duct cancer. Arch Surg 2002;137:69-73.
- 19)
- Sakamoto Y, Kosuge T, Shimada K, Sano T, Ojima H, Yamamoto J, et al. Prognostic factors of surgical resection in middle and distal bile duct cancer:an analysis of 55 patients concerning the significance of ductal and radial margins. Surgery 2005;137:396-402.
- 20)
- DeOliveira ML, Cunningham SC, Cameron JL, Kamangar F, Winter JM, Lillemoe KD, et al. Cholangiocarcinoma:thirty-one-year experience with 564 patients at a single institution. Ann Surg 2007;245:755-762.
- 21)
- Bahra M, Jacob D, Langrehr JM, Neumann UP, Neuhaus P. Carcinoma of the distal and middle bile duct:surgical results, prognostic factors, and long-term follow-up. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2008;15:501-507.
- 22)
- Murakami Y, Uemura K, Hayashidani Y, Sudo T, Ohge H, Sueda T. Pancreatoduodenectomy for distal chorangiocartinoma:prognostic impact of lymph node metastasis. World J Surg 2007;31:337-342.
- 23)
- Cheng Q, Luo X, Zhang B, Jiang X, Yi B, Wu M. Distal bile duct carcinoma:prognostic factors after curative surgery:a series of 112 cases. Ann Surg Oncol 2007;14:1212-1219.
- 24)
- Kiriyama M, Ebata T, Aoba T, Kaneoka Y, Arai T, Shimizu Y, et al. Prognostic impact of lymph node metastasis in distal cholangiocarcinoma. Br J Surg 2015;102:399–406.
- CQ34
- 胆囊癌切除後の予後因子はどのようなものか?[Background Question]
- レベルC
- 患者因子として黄疸,Glasgow Prognostic Score(GPS)が,腫瘍因子として壁深達度,占拠部位,肝十二指腸間膜浸潤,組織学的分化度,リンパ節転移,リンパ管・神経周囲浸潤が,治療因子として手術根治度,術中胆汁漏出などがあげられる。
解説
胆囊癌切除後の予後因子に関しては患者因子,腫瘍因子,治療因子について多くの報告がある1)。患者因子としては,年齢2,3),性別(男性)2),黄疸は予後不良因子とされている4)。Han ら5)は,手術前2 週間以内の胆囊炎,胆管炎などの術前の炎症所見を予後不良因子として報告している。最近,Glasgow Prognostic Score(GPS)が予後規定因子となることが報告された6)。(レベルC)
腫瘍因子の代表的なものが壁深達度である7〜9)。Shindoh ら10)はT2 腫瘍において肝床側(hepatic side)に存在する腫瘍は腹腔側(peritoneal side)に存在する腫瘍に比べて脈管浸潤・神経浸潤・リンパ節転移頻度が高率であり,遠隔成績も有意に不良であったと報告している。その他,肝十二指腸間膜浸潤(Binf)は肝葉切除や膵頭十二指腸切除を施行しても予後不良なうえ,手術関連死亡率が高いことも認知されている11〜13)。その他,肝動脈浸潤13〜16),組織学的分化度17,18),リンパ管浸潤19),神経周囲浸潤20),胆囊床近傍の肝実質内の微小転移21,22),リンパ節転移個数23,24),郭清リンパ節中の転移陽性リンパ節の比率18,25),大動脈周囲リンパ節転移26,27)は予後不良因子として広く受け入れられている。(レベルC)
治療関連因子では,胆囊癌と診断されずに行われた腹腔鏡下手術が予後を悪化させるという報告がある。これは,胆囊結石・急性胆囊炎などの診断で行われた腹腔鏡下胆囊摘出術の際に意図せぬ胆囊穿孔が生じ,術野への胆汁漏出による腹膜再発が生じることによる28)。実際,Ouchi ら29)は498 例の腹腔鏡下胆囊摘出術後に胆囊癌と判明した症例を集計し,20%の症例が術中に胆囊穿孔し予後不良であったと報告している。一方,Steinert ら30)は腹腔鏡下手術と開腹手術でwound recurrence の発生頻度には差がなかったと報告しており,いまだ一定のコンセンサスは得られていない。その他に,術後の組織学的検索で偶然発見された胆囊癌に対する二期的切除施行の有無31,32),切除断端癌陽性(R1 切除)13,33,34)が予後因子であることは多くの研究者が認めている。(CQ27 参照)(レベルC)
引用文献
- 1)
- Pilgrim CH, Groeschl RT, Turaga KK, Gamblin TC. Key factors influencing prognosis in relation to gallbladder cancer. Dig Dis Sci 2013;58:2455-2462.
- 2)
- Kayahara M, Nagakawa T, Nakagawara H, Kitagawa H, Ohta T. Prognostic factors for gallbladder cancer in Japan. Ann Surg 2008;248:807-814.
- 3)
- Choi SB, Han HJ, Kim CY, Kim WB, Song TJ, Suh SO, et al. Surgical outcomes and prognostic factors for T2 gallbladder cancer following surgical resection. J Gastrointest Surg 2010;14:668-678.
- 4)
- Hawkins WG, DeMatteo RP, Jarnagin WR, Ben-Porat L, Blumgart LH, Fong Y. Jaundice predicts advanced disease and early mortality in patients with gallbladder cancer. Ann Surg Oncol 2004;11:310–315.
- 5)
- Han HS, Cho JY, Yoon YS, Ahn KS, Kim H. Preoperative inflammation is a prognostic factor for gallbladder carcinoma. Br J Surg 2011;98:111-116.
- 6)
- Wu XS, Shi LB, Li ML, Ding Q, Weng H, Wu WG, et al. Evaluation of two inflammation-based prognostic scores in patients with resectable gallbladder carcinoma. Ann Surg Oncol 2014;21:449-457.
- 7)
- Varga M, Obrist P, Schneeberger S, Mühlmann G, Felgel-Farnholz C, Fong D, et al. Overexpression of epithelial cell adhesion molecule antigen in gallbladder carcinoma is an independent marker for poor survival. Clin Cancer Res 2004;10:3131-3136.
- 8)
- Shibata K, Uchida H, Iwaki K, Kai S, Ohta M, Kitano S. Lymphatic invasion:an important prognostic factor for stages T1b-T3 gallbladder cancer and an indication for additional radical resection of incidental gallbladder cancer. World J Surg 2009;33:1035-1041.
- 9)
- Butte JM, Matsuo K, Gönen M, DʼAngelica MI, Waugh E, Allen PJ, et al. Gallbladder cancer:Differences in presentation, surgical treatment, and survival in patients treated at centers in three countries. J Am Coll Surg 2011;212:50-61.
- 10)
- Shindoh J, de Aretxabala X, Aloia TA, Roa JC, Roa I, Zimmitti G, et al. Tumor location is a strong predictor of tumor progression and survival in T2 gallbladder cancer:an international multicenter study. Ann Surg 2015;261:733-739.
- 11)
- Araida T, Yoshikawa T, Azuma T, Ota T, Takasaki K, Hanyu F. Indications for pancreatoduodenectomy in patients undergoing lymphadenectomy for advanced gallbladder carcinoma. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2004;11:45-49.
- 12)
- Shimizu H, Kimura F, Yoshidome H, Ohtsuka M, Kato A, Yoshitomi H, et al. Aggressive surgical approach for stage Ⅳ gallbladder carcinoma based on Japanese Society of Biliary Surgery classification. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2007;14:358-365.
- 13)
- Higuchi R, Ota T, Araida T, Kajiyama H, Yazawa T, Furukawa T, et al. Surgical approaches to advanced gallbladder cancer:a 40-year single-institution study of prognostic factors and resectability. Ann Surg Oncol 2014;21:4308-4316.
- 14)
- Shimada H, Endo I, Sugita M, Masunari H, Fujii Y, Tanaka K, et al. Hepatic resection combined with portal vein or hepatic artery reconstruction for advanced carcinoma of the hilar bile duct and gallbladder. World J Surg 2003;27:1137–1142.
- 15)
- Yamamoto Y, Sugiura T, Ashida R, Okamura Y, Ito T, Uesaka K. Indications for major hepatectomy and combined procedures for advanced gallbladder cancer. Br J Surg 2017;104:257-266.
- 16)
- Kobayashi A, Oda T, Fukunaga K, Sasaki R, Ohkohchi N. Invasion of the hepatic artery is a crucial predictor of poor outcomes in gallbladder carcinoma. World J Surg 2012;36:645–650.
- 17)
- Ito H, Ito K, DʼAngelica M, Gonen M, Klimstra D, Allen P, et al. Accurate staging for gallbladder cancer:implications for surgical therapy and pathological assessment. Ann Surg 2011;254:320-325.
- 18)
- Negi SS, Singh A, Chaudhary A. Lymph nodal involvement as prognostic factor in gallbladder cancer:location, count or ratio? J Gastrointest Surg 2011;15:1017–1025.
- 19)
- Shibata K, Uchida H, Iwaki K, Kai S, Ohta M, Kitano S. Lymphatic invasion:An important prognostic factor for Stages T1b-T3 gallbladder cancer and an indication for additional radical resection of incidental gallbladder cancer. World J Surg 2009;33:1035-1041.
- 20)
- Yamaguchi R, Nagino M, Oda K, Kamiya J, Uesaka K, Nimura Y. Perineural invasion has a negative impact on survival of patients with gallbladder carcinoma. Br J Surg 2002;89:1130-1136.
- 21)
- Ohtsuka M, Miyazaki M, Itoh H, Nakagawa K, Ambiru S, Shimizu H, et al. Routes of hepatic metastasis of gallbladder carcinoma. Am J Clin Pathol 1998;109:62-68.
- 22)
- Endo I, Shimada H, Takimoto A, Fujii Y, Miura Y, Sugita M, et al. Microscopic liver metastasis:prognostic factor for patients with pT2 gallbladder carcinoma. World J Surg 2004;28:692-696.
- 23)
- Endo I, Shimada H, Tanabe M, Fujii Y, Takeda K, Morioka D, et al. Prognostic significance of the number of positive lymph nodes in gallbladder cancer. J Gastrointest Surg 2006;10:999-1007.
- 24)
- Sakata J, Shirai Y, Wakai T, Ajioka Y, Hatakeyama K. Number of positive lymph nodes independently determines the prognosis after resection in patients with gallbladder carcinoma. Ann Surg Oncol 2010;17:1831-1840.
- 25)
- Shirai Y, Sakata J, Wakai T, Ohashi T, Ajioka Y, Hatakeyama K. Assessment of lymph node status in gallbladder cancer:location, number, or ratio of positive nodes. World J Surg Oncol 2012;10:87.
- 26)
- Kondo S, Nimura Y, Hayakawa N, Kamiya J, Nagino M, Uesaka K. Regional and para-aortic lymphadenectomy in radical surgery for advanced gallbladder carcinoma. Br J Surg 2000;87:418-422.
- 27)
- Sasaki E, Nagino M, Ebata T, Oda K, Arai T, Nishio H, et al. Immunohistochemically demonstrated lymph node micrometastasis and prognosis in patients with gallbladder carcinoma. Ann Surg 2006;244:99-105.
- 28)
- Lee JM, Kim BW, Kim WH, Wang HJ, Kim MW. Clinical implication of bile spillage in patients undergoing laparoscopic cholecystectomy for gallbladder cancer. Am Surg 2011;77:697-701.
- 29)
- Ouchi K, Mikuni J, Kakugawa Y;Organizing Committee, The 30th Annual Congress of the Japanese Society of Biliary Surgery. Laparoscopic cholecystectomy for gallbladder carcinoma:results of a Japanese survey of 498 patients. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2002;9:256-260.
- 30)
- Steinert R, Nestler G, Sagynaliev E, Müller J, Lippert H, Reymond MA. Laparoscopic cholecystectomy and gallbladder cancer. J Surg Oncol 2006;93:682-689.
- 31)
- Pawlik TM, Gleisner AL, Vigano L, Kooby DA, Bauer TW, Frilling A, et al. Incidence of finding residual disease for incidental gallbladder carcinoma:implications for re-resection. J Gastrointest Surg 2007;11:1478-1486.
- 32)
- Lendoire JC, Gil L, Duek F, Quarin C, Garay V, Raffin G, et al. Relevance of residual disease after liver resection for incidental gallbladder cancer. HPB(Oxford)2012;14:548–553.
- 33)
- Murakami Y, Uemura K, Sudo T, Hashimoto Y, Nakashima A, Kondo N, et al. Prognostic factors of patients with advanced gallbladder carcinoma following aggressive surgical resection. J Gastrointest Surg 2011;15:1007–1016.
- 34)
- Garg PK, Pandey D, Sharma J. The surgical management of gallbladder cancer. Expert Rev Gastroenterol Hepatol 2015;9:155-166.
- CQ35
- 乳頭部癌切除後の予後因子はどのようなものか?[Background Question]
- レベルC
- 膵浸潤,リンパ節転移などがあげられる。
解説
乳頭部癌は胆道癌の中では切除率が高く,予後も比較的良好とされているが,膵浸潤やリンパ節転移陽性例では予後不良である1)。乳頭部癌がいったん膵実質に浸潤すると神経周囲浸潤を高率に認め,浸潤性膵管癌と同様の生物学的悪性度を有する様になる2,3)。UICC のTNM 分類(第8版)では乳頭部癌の膵浸潤はT3 となり,5 mm 以内膵浸潤はT3a,5 mm 以上の膵浸潤あるいは膵周囲組織の浸潤・十二指腸漿膜浸潤はT3b に分類されている4)。膵浸潤の程度が5 mm〜20 mm,20 mm 以上と高度になるにつれ,予後が有意に不良であることが報告されている3)。(レベルC)
リンパ節転移は乳頭部癌においても悪性度を推測する重要な予後因子である2,5〜8)。リンパ節転移個数が多い症例(≧ 4 個)は,より少ない症例(1〜3 個)に比べて予後不良との報告もある9,10)。UICC の胆道癌TNM 分類(第8 版)では乳頭部癌のN 因子に関しては所属リンパ節転移が2 個以内であればN1,3 個以上であればN2 と分類し,個数による差別化を行っている4)。しかし,十分なエビデンスをもとに決定された訳ではなく,診療上の有用性は疑問である。(レベルC)
十二指腸浸潤は高度になるにつれ予後不良と報告されている3)。しかし,独立した予後不良因子としての報告はなく,膵浸潤ほど悪性度に及ぼす影響は高度ではないと考えられる。十二指腸浸潤が高度になればリンパ節転移陽性例も増加し,多変量解析では十二指腸浸潤は有意な予後因子にはならないと報告されている1)。(レベルC)
その他,いくつかの予後不良因子が報告されているものの,症例数集積が小規模な報告が多い。リンパ管浸潤,静脈浸潤は潜在的な癌の進展を予測する予後不良因子とされている7,11,12)。神経周囲浸潤は膵癌ほど高率ではないが,陽性例は予後不良である13)。肉眼形態では腫瘤形成型は十二指腸浸潤,リンパ節転移例が少なく比較的予後良好であるが,潰瘍浸潤型はそれらの陽性例が多く予後不良である7,11,12)。細胞形質による亜分類でpancreatobiliary type はintestinal type より予後不良とする報告もある11)。(レベルC)
胆道癌に占める乳頭部癌の割合は少なく,外科治療成績を向上するためには多数の症例集積を行い,真に予後を決定する因子を解明する必要がある。
引用文献
- 1)
- 久保木知,清水宏明,大塚将之,加藤 厚,宮崎 勝.膵癌・胆道癌―基礎と臨床の最新動向― 乳頭部癌予後長期生存に関わる予後因子.日本臨牀 2015;73:749-753.
- 2)
- Chan C, Herrera MF, de la Garza L, Quintanilla-Martinez L, Vargas-Vorackova F, Richaud-Patín Y, et al. Clinical behavior and prognostic factors of periampullary adenocarcinoma. Ann Surg 1995;222:632-637.
- 3)
- 石原 慎,宮川秀一,堀口明彦,宮崎 勝,高田忠敬.胆道癌登録からみた乳頭部癌の動向―進行度とリンパ節転移を中心に―. 胆と膵 2012;33:221-224.
- 4)
- Brierley JD, Gospodarowicz MK, Wittekind Ch, eds. TNM classification of malignant tumours. 8th ed. New York:Wiley-Blackwell;2017.
- 5)
- Shirai Y, Ohtani T, Tsukada K, Hatakeyama K. Patterns of lymphatic spread of carcinoma of the ampulla of Vater. Br J Surg 1997;84:1012-1016.
- 6)
- Kayahara M, Nagakawa T, Ohta T, Kitagawa H, Miyazaki I. Surgical strategy for carcinoma of the papilla of Vater on the basis of on the lymphatic spread and mode of recurrence. Surgery 1997;121:611-617.
- 7)
- Mizuno T, Ishizaki Y, Ogura K, Yoshimoto J, Kawasaki S. Clinical significance of immunohistochemically detectable lymph node metastasis in adenocarcinoma of the ampulla of Vater. Br J Surg 2006;93:221-225.
- 8)
- Hornick JR, Johnston FM, Simon PO, Younkin M, Chamberlin M, Mitchem JB, et al. A single-institution review of 157 patients presenting with benign and malignant tumors of the ampulla of Vater:management and outcomes. Surgery 2011;150:169-176.
- 9)
- Sierzega M, Nowak K, Kulig J, Matyja A, Nowak W, Popiela T. Lymph node involvement in ampullary cancer:the importance of the number, ratio, and location of metastatic nodes. J Surg Oncol 2009;100:19-24.
- 10)
- Sakata J, Shirai Y, Wakai T, Ajioka Y, Akazawa K, Hatakeyama K. Assessment of the nodal status in ampullary carcinoma:the number of positive lymph nodes versus the lymph node ratio. World J Surg 2011;35:2118-2124.
- 11)
- de Paiva Haddad LB, Patzina RA, Penteado S, Montagnini AL, da Cunha JE, Machado MC, et al. Lymph node involvement and not the histopathologic subtype is correlated with outcome after resection of adenocarcinoma of the ampulla of Vater. J Gastrointest Surg 2010;14:719-728.
- 12)
- Ohike N, Coban I, Kim GE, Basturk O, Tajiri T, Krasinskas A, et al. Tumor budding as a strong prognostic indicator in invasive ampullary adenocarcinomas. Am J Surg Pathol 2010;34:1417-1424.
- 13)
- Hatzaras I, George N, Muscarella P, Melvin WS, Ellison EC, Bloomston M. Predictors of survival in periampullary cancers following pancreaticoduodenectomy. Ann Surg Oncol 2010;17:991-997.
- CQ36
- 胆道癌手術は手術数の多い施設で行うべきか?
- 推奨度2
- レベルC
- 肝切除および膵頭十二指腸切除は安全性を考慮し,手術数の多い施設で行うことを提案する。しかし,個々においては総合的に判断されるべきである。
解説
欧米では1979 年頃からいくつかの術式で手術数(hospital volume)と術後の死亡率との逆相関関係(volume-outcome relationship)が指摘され1),その後,癌に対する手術でもこの関係が成立することが明らかになった2)。胆管切除を伴う肝切除と膵頭十二指腸切除は胆道癌に対する高難度手術の代表的なものであるが,この両術式に関してもvolume-outcome relationship が成立することが明らかとなり3,4),術後の長期生存もhospital volume との関係が示唆されている5)。世界的な傾向として癌に対する手術は施設の集約化へと向かいつつある6〜8)。(レベルC)
本邦では2003 年から医療費算定と連動する診断群分類包括評価(diagnostic procedure combination:DPC)が施行されている。Yasunaga ら9)は,DPC データから18,046 例の肝切除(2007〜2009 年)を同定し,hospital volume と30 日死亡との関係を検討した。全体の死亡率は1.1% で,術式別には部分切除0.6%,区域切除0.8%,肝葉切除1.9%,拡大肝葉切除3.0% であった。Hospital volume 別の死亡率をみると,年間18 例未満の病院では1.6%, 18〜35 例で1.3%,36〜70 例で1.1%,71 例以上で0.4% となり,hospital volume 増加に従い死亡率は直線的に低下することが本邦でも明らかとなった。この傾向は,特に(拡大)肝葉切除で顕著に観察されるため,かかる術式は集約化が望ましいと結論した。同様にYoshioka ら10)は,同データから抽出した膵頭十二指腸切除10,652 例(2007〜2010 年)を用い,hospital volume 別に在院死亡,在院日数,コストを検討した。全体での在院死亡率は3.3% であった。Hospital volume 別にみると年間8 例未満では5.0%,9〜11 例では4.0%,12〜17 例では3.1%,18〜28 例では2.8%,29 例以上は1.4% と有意な相関関係を認めた。同様に,在院日数とコストも低下した。以上の結果より,保健医療の観点から膵頭十二指腸切除は集約化が望ましいと結論した。しかし,DPC は特定機能病院や大学病院から試行し始め,全ての医療機関がDPC に参加しているわけではなく,hospital volume が低い病院のデータは実態を反映していない可能性が高いため慎重に解釈すべきである。(レベルC)
肝胆膵外科学会は独自のカリキュラムにより2011 年から高度技能専門医を認定している。Miura ら11)は高難度肝切除25 術式,総計14,970 例(2011〜2012 年)のNCD データを用い,在院死亡率を肝胆膵外科学会が認定する修練施設A(高難度手術を年50 例以上施行),B(同30 例以上50 例未満),非修練施設の3 群,有資格者の手術参加の有無で検討した。在院死亡率はA 施設3.1%, B 施設3.8%, 非修練施設4.5% であった(P<0.001)。有資格者が手術に参加した場合の死亡率は3.5%,参加しない場合が4.3% であった(P=0.012)。次に,Miura ら12)は膵頭十二指腸切除17,563 例(2011〜2012 年)のNCD データを用いて同様の検討を行った。在院死亡率は,A 施設1.5%, B 施設3.0%,非修練施設3.9% であった(P<0.001)。有資格者が手術に参加した場合の死亡率は2.2%,参加しない場合が3.8% であった(P<0.001)。この結果から,高難度肝切除や膵切除は修練施設で学会認定有資格者が行うことが適切かもしれないとした。一方で,非修練施設の症例は全身状態が不良で高リスク患者の頻度が高く,患者背景に差異が認められる事実を重視している。様々な事情をかかえる地域外科医療に対する非修練施設の貢献は無視できないという慎重な姿勢を崩していない。また,過半数の症例が全病院の20% を占めるに過ぎない修練施設病院で行われており,本邦でも手術の集約化が観察されている。(レベルC)
さらに,Otsubo ら13)は2012-2015 年のNCD データを利用し,日本肝胆膵外科学会修練施設で行われた高難度術式28 種類総計53,929 例を検討した。高難度手術全体の90 日死亡率は2012 年の2.1%から2015 年の1.6%へと徐々に低下した。術式別,疾患別にみても経年的に死亡率は低下していた。同時に,高リスクな手術術式として肝左三区域切除(4 年間の90 日死亡は10.3%)と肝膵同時切除(同7.6%)を,高リスク疾患として肝門部領域胆管癌(同6.1%)を明らかにした。また,A 施設とB 施設における30 日死亡率の差をみると,肝(拡大)右葉(0.8% vs 1.6%,P=0.022),右三区域切除(0.9% vs 4.7%,P=0.042),S4 を除く肝区域切除(0.3%vs 0.8%,P=0.034)の3 術式においてB 施設が有意に高いことが判明した。90 日死亡率では肝(拡大)右葉(2.2%vs 3.6%,P=0.008)と膵頭十二指腸切除(1.1% vs 1.5%,P=0.006)においてB 施設が有意に高かった。しかし,その他の多くの術式で有意差は認めず,日本肝胆膵外科学会の高度技能医・修練施設の制度は高難度外科手術の安全性向上に貢献していることが確認された。(レベルC)
本邦においても高難度肝胆膵外科手術ではvolume-outcome relationship が観察され,hospital volume が高い施設ほど手術関連死亡率が低いことが明らかとなった。胆道癌手術は安全性を考慮し手術数の多い施設で行うことを提案するが,このような施設は国内では限られているため,個々の事例については患者の希望・全身状態・社会背景,医療コスト,利便性,地域事情などを考慮した上で判断されるべきである。
引用文献
- 1)
- Luft HS, Bunker JP, Enthoven AC. Should operations be regionalized? The empirical relation between surgical volume and mortality. N Engl J Med 1979;301:1364-1369.
- 2)
- Begg CB, Cramer LD, Hoskins WJ, Brennan MF. Impact of hospital volume on operative mortality for major cancer surgery. JAMA 1998;280:1747-1751.
- 3)
- Farges O, Goutte N, Bendersky N, Falissard B. Incidence and risks of liver resection:an all-inclusive French nationwide study. Ann Surg 2012;256:697-704.
- 4)
- Hata T, Motoi F, Ishida M, Naitoh T, Katayose Y, Egawa S, et al. Effect of hospital volume on surgical outcomes after pancreaticoduodenectomy:a systematic review and meta-analysis. Ann Surg 2016;263:664-672.
- 5)
- Fong Y, Gonen M, Rubin D, Radzyner M, Brennan MF. Long-term survival is superior after resection for cancer in high-volume centers. Ann Surg 2005;242:540-544.
- 6)
- Stitzenberg KB, Sigurdson ER, Egleston BL, Starkey RB, Meropol NJ. Centralization of cancer surgery:implications for patient access to optimal care. J Clin Oncol 2009;27:4671-4678.
- 7)
- de Wilde RF, Besselink MG, van der Tweel I, de Hingh IH, van Eijck CH, Dejong CH, et al. Impact of nationwide centralization of pancreaticoduodenectomy on hospital mortality. Br J Surg 2012;99:404-410.
- 8)
- OʼMahoney PRA, Yeo HL, Sedrakyan A, Trencheva K, Mao J, Isaacs AJ, et al. Centralization of pancreatoduodenectomy a decade later:impact of the volume-outcome relationship. Surgery 2016;159:1528-1538.
- 9)
- Yasunaga H, Horiguchi H, Matsuda S, Fushimi K, Hashimoto H, Ohe K, et al. Relationship between hospital volume and operative mortality for liver resection:data from the Japanese Diagnosis Procedure Combination database. Hepatol Res 2012;42:1073-1080.
- 10)
- Yoshioka R, Yasunaga H, Hasegawa K, Horiguchi H, Fushimi K, Aoki T, et al. Impact of hospital volume on hospital mortality, length of stay and total costs after pancreaticoduodenectomy. Br J Surg 2014;101:523-529.
- 11)
- Miura F, Yamamoto M, Gotoh M, Konno H, Fujimoto J, Yanaga K, et al. Validation of the board certification system for expert surgeons(hepato-biliary-pancreatic field)using the data of the National Clinical Database of Japan:part 1 – Hepatectomy of more than one segment. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2016;23:313-323.
- 12)
- Miura F, Yamamoto M, Gotoh M, Konno H, Fujimoto J, Yanaga K, et al. Validation of the board certification system for expert surgeons(hepato-biliary-pancreatic field)using the data of the National Clinical Database of Japan:part 2 – Pancreatoduodenectomy. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2016;23:353-363.
- 13)
- Otsubo T, Kobayashi S, Sano K, Misawa T, Ota T, Katagiri S, et al. Safety-related outcomes of the Japanese Society of Hepato-Biliary-Pancreatic Surgery board certification system for expert surgeons. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2017;24:252-261.
第VII章.化学療法
- CQ37
- 切除不能胆道癌に対するファーストラインの化学療法は何か?
※2023年8月22日追記あり(PDF)
- 推奨度1
- レベルA
- ゲムシタビン+シスプラチン併用療法,ゲムシタビン+ S-1 併用療法,またはゲムシタビン+シスプラチン+ S-1 併用療法を推奨する。
解説
ゲムシタビンの保険適応が承認されるまで,一般診療で使える薬剤はテガフール・ウラシル配合薬(UFT)とドキソルビシンに限られ,十分な効果は得られていなかった。2000 年以降,我が国で行われたゲムシタビンの第Ⅱ相試験では奏効率17.5%,無増悪生存期間(PFS)中央値2.6 ヵ月,生存期間中央値(MST)7.6 ヵ月と良好な成績が得られ1),2006 年に適応が承認されている。続いてテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合薬(S-1)による第Ⅱ相試験が実施され,奏効率21〜35%,PFS 中央値3.7 ヵ月,MST 8.3〜9.4 ヵ月とさらに良好な治療成績が得られたことから2,3),2007 年に適応が承認された。しかし,我が国を含め国際的にもランダム化比較試験に基づくエビデンスはなく,標準治療は確立していなかった。(レベルC)
英国において,ゲムシタビン単独とゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC 療法)のランダム化第Ⅱ相試験(ABC-01 試験)および第Ⅲ相試験(ABC-02 試験)が実施され4,5),GC 療法による有意な生存期間の延長が確認された(表1)。我が国でも同様のレジメンを用いた小規模な比較試験(BT22 試験)が行われ,GC 療法で良好な治療成績が得られた6)。これらのランダム化比較試験の結果,GC 療法が国際的な切除不能胆道癌の標準治療として確立し,現在国内外で広く用いられている。(レベルA)
ABC-02 試験とBT22 試験において,493 例個々の患者データを追跡調査した統合解析が行われ7),そのサブグループ解析では肝内胆管癌,肝外胆管癌,胆囊癌のいずれもGC 療法で有意に良好な生存期間が認められている。また,乳頭部癌でも同様にGC 療法で良好な治療成績が得られている。Performance status(PS)別の解析では, PS 0,1 はGC 療法で良好な治療効果が得られているものの,PS2 ではゲムシタビン単独との差が小さく,全身状態が低下している患者ではGC の適応は慎重に考慮する必要がある。(レベルA)
GC 療法では,シスプラチン25 mg/m2,60 分点滴静注,ゲムシタビン1,000 mg/m2,30 分点滴静注の用法用量が用いられ,シスプラチンを低用量にすることで毒性の軽減が得られている。本治療は,週1 回,2 週連続投与後,1週休薬の3 週を1サイクルとして,原病の増悪がなく忍容性が保たれていれば繰り返し継続するが,日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)の臨床試験ではシスプラチンの蓄積毒性を考慮して16 回の投与を上限とし,その後はゲムシタビン単独治療に移行している8,9)。
ゲムシタビンとオキサリプラチンとの併用(GEMOX 療法)は,GC 療法と同様のゲムシタビンとプラチナ製剤の併用療法であり,胆囊癌を対象としたランダム化比較試験においてbest supportive care やフルオロウラシル+ホリナートカルシウム併用療法に比べ良好な治療成績が得られている(表1)10)。しかし,小規模な試験であり標準治療としてのエビデンスは十分ではない。(レベルB)
我が国の比較試験としては,S-1 単独とゲムシタビン+S-1 併用療法(GS 療法)によるランダム化第Ⅱ相試験(JCOG0805)が行われ,GS 療法で良好な成績が報告された(表1)8)。GS 療法の成績はGC 療法を上回る可能性があり,さらに点滴時間が短いという利便性もあることから,GC 療法に対するGS 療法の非劣性と優越性を検証する第Ⅲ相試験(JCOG1113)が実施された(UMIN000010667)9)。その結果,GC 療法に対するGS 療法の非劣性が証明され,GS 療法も1 次治療のひとつとして日常診療で導入可能となった11)。GS 療法では長時間の点滴が不要である利便性がある反面,自宅でのS-1 内服管理が必要である。また,GC 療法とGS療法の副作用の違いを理解した上で適応を決める必要がある。(レベルA)
GC 療法にS-1 を上乗せする3 剤併用療法(GCS 療法)が試みられ,第Ⅱ相試験において奏効率24%,OS 中央値16.2 ヵ月と良好な成績が報告された12)。続いて,GCS 療法とGC 療法の第Ⅲ相試験(KHBO1401)が実施され(UMIN000014371),GC 療法に対するGCS 療法の優越性が証明された13)。有害事象としては,GC 療法群で末梢神経障害,GCS 療法群で下痢,口内炎,皮疹が有意に多く発現していた。これらからGCS 療法は切除不能胆道癌に対する新たな選択肢の1 つとして位置づけられるものと考えられる。(レベルA)
分子標的薬の開発として,GEMOX に上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)阻害薬エルロチニブ,抗EGFR 抗体薬セツキシマブまたはパニツムマブ,GC 療法に血管内皮細胞増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor:VEGFR)阻害薬cediranib を上乗せする治療法の比較試験が行われているが,期待した結果は得られていない(表1)14〜18)。
切除不能局所進行胆道癌においては化学放射線療法も治療選択となっている。Phelip ら19)は,転移のない肝門部および遠位胆管癌を対象にGEMOX 療法とフルオロウラシル+シスプラチン併用放射線療法(50 Gy)との小規模な比較試験を行い,PFS およびOS ともに化学療法群で良好な成績であったと報告している。(レベルC)
以上より,切除不能胆道癌に対する標準治療は化学療法であり,レジメンとしてゲムシタビン+シスプラチン併用療法,ゲムシタビン+S-1 併用療法,またはゲムシタビン+シスプラチン+S-1 併用療法を行うことを推奨する。
引用文献
- 1)
- Okusaka T, Ishii H, Funakoshi A, Yamao K, Ohkawa S, Saito S, et al. Phase Ⅱ study of single-agent gemcitabine in patients with advanced biliary tract cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2006;57:647-653.
- 2)
- Ueno H, Okusaka T, Ikeda M, Takezako Y, Morizane C. Phase Ⅱ study of S-1 in patients with advanced biliary tract cancer. Br J Cancer 2004;91:1769-1774.
- 3)
- Furuse J, Okusaka T, Boku N, Ohkawa S, Sawaki A, Masumoto T, et al. S-1 monotherapy as first-line treatment in patients with advanced biliary tract cancer:a multicenter phase Ⅱ study. Cancer Chemother Pharmacol 2008;62:849-855.
- 4)
- Valle JW, Wasan H, Johnson P, Jones E, Dixon L, Swindell R, et al. Gemcitabine alone or in combination with cisplatin in patients with advanced or metastatic cholangiocarcinomas or other biliary tract tumours:a multicentre randomised phase Ⅱ study – The UK ABC-01 Study. Br J Cancer 2009;101:621-627.
- 5)
- Valle J, Wasan H, Palmer DH, Cunningham D, Anthoney A, Maraveyas A, et al. Cisplatin plus gemcitabine versus gemcitabine for biliary tract cancer. N Engl J Med 2010;362:1273-1281.
- 6)
- Okusaka T, Nakachi K, Fukutomi A, Mizuno N, Ohkawa S, Funakoshi A, et al. Gemcitabine alone or in combination with cisplatin in patients with biliary tract cancer:a comparative multicentre study in Japan. Br J Cancer 2010;103:469-474.
- 7)
- Valle JW, Furuse J, Jitlal M, Beare S, Mizuno N, Wasan H, et al. Cisplatin and gemcitabine for advanced biliary tract cancer:a meta-analysis of two randomised trials. Ann Oncol 2014;25:391-398.
- 8)
- Morizane C, Okusaka T, Mizusawa J, Takashima A, Ueno M, Ikeda M, et al. Randomized phase Ⅱ study of gemcitabine plus S-1 versus S-1 in advanced biliary tract cancer:a Japan Clinical Oncology Group trial(JCOG 0805). Cancer Sci 2013;104:1211-1216.
- 9)
- Mizusawa J, Morizane C, Okusaka T, Katayama H, Ishii H, Fukuda H, et al. Randomized phase Ⅲ study of gemcitabine plus S-1 versus gemcitabine plus cisplatin in advanced biliary tract cancer:Japan Clinical Oncology Group Study(JCOG1113, FUGA-BT). Jpn J Clin Oncol 2016;46:385-388.
- 10)
- Sharma A, Dwary AD, Mohanti BK, Deo SV, Pal S, Sreenivas V, et al. Best supportive care compared with chemotherapy for unresectable gall bladder cancer:a randomized controlled study. J Clin Oncol 2010;28:4581-4586.
- 11)
- Morizane C, Okusaka T, Mizusawa J, Katayama H, Ueno M, Ikeda M, et al. Randomized phase Ⅲ study of gemcitabine plus S-1 combination therapy versus gemcitabine plus cisplatin combination therapy in advanced biliary tract cancer:a Japan Clinical Oncology Group study(JCOG1113, FUGA-BT). 2018 Gastrointestinal Cancers Symposium. #205
- 12)
- Kanai M, Hatano E, Kobayashi S, Fujiwara Y, Marubashi S, Miyamoto A, et al. A multi-institution phase Ⅱ study of gemcitabine/cisplatin/S-1(GCS)combination chemotherapy for patients with advanced biliary tract cancer(KHBO 1002). Cancer Chemother Pharmacol 2015;75:293-300.
- 13)
- Sakai D, Kanai M, Kobayashi S, Eguchi H, Baba H, Seo S, et al:Randomized phase Ⅲ study of gemcitabine, cisplatin plus S-1(GCS)versus gemcitabine, cisplatin(GC)for advanced biliary tract cancer(KHBO1401-MITSUBA). 2018 ESMO annual meeting. #6150.
- 14)
- Lee J, Park SH, Chang HM, Kim JS, Choi HJ, Lee MA, et al. Gemcitabine and oxaliplatin with or without erlotinib in advanced biliary-tract cancer:a multicentre, open-label, randomised, phase 3 study. Lancet Oncol 2012;13:181-188.
- 15)
- Malka D, Cervera P, Foulon S, Trarbach T, de la Fouchardière C, Boucher E, et al. Gemcitabine and oxaliplatin with or without cetuximab in advanced biliary-tract cancer(BINGO):a randomised, open-label, non-comparative phase 2 trial. Lancet Oncol 2014;15:819-828.
- 16)
- Chen JS, Hsu C, Chiang NJ, Tsai CS, Tsou HH, Huang SF, et al. A KRAS mutation status-stratified randomized phase Ⅱ trial of gemcitabine and oxaliplatin alone or in combination with cetuximab in advanced biliary tract cancer. Ann Oncol 2015;26:943-949.
- 17)
- Valle JW, Wasan H, Lopes A, Backen AC, Palmer DH, Morris K, et al. Cediranib or placebo in combination with cisplatin and gemcitabine chemotherapy for patients with advanced biliary tract cancer(ABC-03):a randomised phase 2 trial. Lancet Oncol 2015;16:967-978.
- 18)
- Leone F, Marino D, Cereda S, Filippi R, Belli C, Spadi R, et al. Panitumumab in combination with gemcitabine and oxaliplatin does not prolong survival in wild-type KRAS advanced biliary tract cancer:A randomized phase 2 trial(Vecti-BIL study). Cancer 2016;122:574-581.
- 19)
- Phelip JM, Vendrely V, Rostain F, Subtil F, Jouve JL, Gasmi M, et al. Gemcitabine plus cisplatin versus chemoradiotherapy in locally advanced biliary tract cancer:Fédération Francophone de Cancérologie Digestive 9902 phase Ⅱ randomised study. Eur J Cancer 2014;50:2975-2982.
注:文献No. 13 は検索期間以降に発表された“検索期間外論文”である。
- CQ38
- 切除不能胆道癌に対するセカンドラインの化学療法は何か?
※2023年8月22日追記あり(PDF)
- 推奨度2
- レベルC
- ゲムシタビン・シスプラチン併用療法後のセカンドラインとしてはフルオロピリミジン系抗癌剤による化学療法を提案する。標準的な治療が困難な場合に限るがMSI-H であればペムブロリズマブを提案する。
解説
切除不能胆道癌に対するセカンドラインに関しては第Ⅲ相試験によって生存期間の延長を示した治療はなく,現在までに結果が示されている臨床試験は比較を伴わない単群試験か少数例を対象としたランダム化第Ⅱ相試験のみである。よってセカンドラインとして延命効果の証明された標準治療は確立しておらず,強く推奨できるレジメンは存在しない。(レベルC)
これまでに報告されている主なセカンドラインの成績を示す(表1)。このうち,ゲムシタビンを中心としたファーストライン後のセカンドラインとしては,フルオロピリミジン系抗癌剤をベースとするレジメンが最も多く,次いで種々の分子標的治療薬やチェックポイント阻害剤等が検討されている。テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合薬(S-1)単剤療法については,奏効率7.5〜22.7%,無増悪生存期間中央値 2.5〜5.5 ヵ月,生存期間中央値(MST) 7.3〜13.5 ヵ月と報告されており1,2),胆道癌に保険適応を有するS-1 は本邦においては実臨床においてもセカンドラインとして広く用いられている。また,MEK 阻害剤であるtrametinib とフルオロピリミジン(5FU またはcapecitabine)と比較するランダム化第Ⅱ相試験が行われているが,この試験における生存期間はフルオロピリミジン(5FU またはcapecitabine)群の方がtrametinib 群よりも良好な成績であった(HR=2.02(95% CI:1.01-4.03,P=0.05))3)。その他の薬剤については,一部の治療薬においては効果が期待され現在も開発が続けられているが,実臨床において推奨できるほどのエビデンスは現時点では示されていない。以上より,ゲムシタビンベースレジメンによる治療後で,かつフルオロピリミジン系抗癌剤未使用の場合は,セカンドラインとしてフルオロピリミジン系抗癌剤による化学療法が弱く推奨される。一方,フルオロピリミジン系抗癌剤が用いられた場合のセカンドラインとして検討されているレジメンは少なく,現時点で推奨可能な治療はない。(レベルC)
最近,マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)例ではペムブロリズマブが高い奏効率を示すことが報告されている。前治療で病勢進行を認めたMSI-H 固形腫瘍におけるペムブロリズマブを評価した単群の第Ⅱ相試験では,胆道癌を含む12 癌種86 例が登録され,MST は未到達,2 年生存割合は64%,奏効割合は58% とされている4)。これらの結果,ペムブロリズマブは2018 年12 月に「がん化学療法後に増悪した進行・再発のMSI-H を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対して適応拡大が承認された。MSI-H を有する胆道癌に対しても,前述の試験では胆管癌(肝内・肝外は不明)4 例,乳頭部癌4 例が登録され,それぞれ1 例ずつに完全奏効が得られた(奏効割合25%)と報告されており,標準的な治療が困難な場合にペムブロリズマブが弱く推奨される。(レベルC)
現在セカンドラインとしてmodified FOLFOX を評価する第Ⅲ相試験や,バイオマーカーなどにより有効性が期待される患者を対象とした分子標的治療薬,さらにチェックポイント阻害薬などの臨床試験が進められている。このような臨床試験によって今後より強く推奨しうるセカンドラインが確立することが期待されている。
引用文献
- 1)
- Suzuki E, Ikeda M, Okusaka T, Nakamori S, Ohkawa S, Nagakawa T, et al. A multicenter phase Ⅱ study of S-1 for gemcitabine-refractory biliary tract cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2013;71:1141-1146.
- 2)
- Sasaki T, Isayama H, Nakai Y, Mizuno S, Yamamoto K, Yagioka H, et al. Multicenter phase Ⅱ study of S-1 monotherapy as second-line chemotherapy for advanced biliary tract cancer refractory to gemcitabine. Invest New Drugs 2012;30:708-713.
- 3)
- Kim RD, McDonough SL, El-Khoueiry AB, Bekali-Saab TS, Stein S, Sahai V, et al. SWOG S1310:Randomized phase Ⅱ trial of single agent MEK inhibitor trametinib vs. 5-fluorouracil or capecitabine in refractory advanced biliary cancer. J Clin Oncol 2017;35 suppl:4016.
- 4)
- Le DT, Durham JN, Smith KN, Wang H, Bartlett BR, Aulakh LK, et al. Mismatch repair deficiency predicts response of solid tumors to PD-1 blockade. Science 2017;357:409-413.
- 5)
- Pino MS, Milella M, Gelibter A, Sperduti I, De Marco S, Nuzzo C, et al. Capecitabine and celecoxib as second-line treatment of advanced pancreatic and biliary tract cancers. Oncology 2009;76:254-261.
- 6)
- Lee S, Oh SY, Kim BG, Kwon HC, Kim SH, Rho MH, et al. Second-line treatment with a combination of continuous 5-fluorouracil, doxorubicin, and mitomycin-C(conti-FAM)in gemcitabine-pretreated pancreatic and biliary tract cancer. Am J Clin Oncol 2009;32:348-352.
- 7)
- He S, Shen J, Sun X, Liu L, Dong J. A phase Ⅱ FOLFOX-4 regimen as second-line treatment in advanced biliary tract cancer refractory to gemcitabine/cisplatin. J Chemother 2014;26:243-247.
- 8)
- Sasaki T, Isayama H, Nakai Y, Mizuno S, Yamamoto K, Yagioka H, et al. Feasibility study of gemcitabine and cisplatin combination chemotherapy for patients with refractory biliary tract cancer. Invest New Drugs 2011;29:1488-1493.
- 9)
- Paule B, Herelle MO, Rage E, Ducreux M, Adam R, Guettier C, et al. Cetuximab plus gemcitabine-oxaliplatin(GEMOX)in patients with refractory advanced intrahepatic cholangiocarcinomas. Oncology 2007;72:105-110.
- 10)
- Yi JH, Thongprasert S, Lee J, Doval DC, Park SH, Park JO, et al. A phase Ⅱ study of sunitinib as a second-line treatment in advanced biliary tract carcinoma:a multicentre, multinational study. Eur J Cancer 2012;48:196-201.
- 11)
- Ikeda M, Ioka T, Fukutomi A, Morizane C, Kasuga A, Takahashi H, et al:Efficacy and ssafety of trametinib in Japanese patients with advanced biliary tract cancers refractory to gemcitabine. Cancer Sci 2018;109:215-224.
- 12)
- Shroff RT, Yarchoan M, OʼConnor A, Gallagher D, Zahurak ML, Rosner G, et al. The oral VEGF receptor tyrosine kinase inhibitor pazopanib in combination with the MEK inhibitor trametinib in advanced cholangiocarcinoma. Br J Cancer 2017;116:1402-1407.
- 13)
- Javle M, Lowery M, Shroff RT, Weiss KH, Springfeld C, Borad MJ, et al. Phase Ⅱ study of BGJ398 in patients with FGFR-altered advanced cholangiocarcinoma. J Clin Oncol 2018;36:276-282.
- 14)
- Mazzaferro V, El-Rayes BF, Cotsoglou C, Harris WP, Damjanov N, Masi G, et al. ARQ 087, an oral pan-fibroblast growth factor receptor(FGFR)inhibitor, in patients with advanced intrahepatic cholangiocarcinoma(iCCA)with FGFR2 genetic aberrations. J Clin Oncol 2017;35 suppl:4017.
- 15)
- Soria JC, Strickler JH, Govindan R, Chai S, Chan N, Quiroga-Garcia V, et al. Safety and activity of the pan-fibroblast growth factor receptor(FGFR)inhibitor erdafitinib in phase 1 study patients with molecularly selected advanced cholangiocarcinoma. J Clin Oncol 2017;35 suppl:4074.
- 16)
- Buzzoni R, Pusceddu S, Bajetta E, De Braud F, Platania M, Iannacone C, et al. Activity and safety of RAD001(everolimus)in patients affected by biliary tract cancer progressing after prior chemotherapy:a phase Ⅱ ITMO study. Ann Oncol 2014;25:1597-1603.
- 17)
- Roth A, Schleyer E, Schoppmeyer K, Kluge R, Wittekind C, Mössner J, et al. Imatinib mesylate for palliative second-line treatment of advanced biliary tract cancer:a bicentric phase Ⅱ study. Onkologie 2011;34:469-470.
- 18)
- Kim R, Chiorean EG, Amin M, Rocha-Lima CMS, Gandhi J, Harris WP, et al. Phase Ⅱ study of combination SPI-1620 with docetaxel as second-line advanced biliary tract cancer treatment. Br J Cancer 2017;117:189-194.
- 19)
- Bang YJ, Doi T, Braud FD, Piha-Paul S, Hollebecque A, Razak ARA, et al. Safety and efficacy of pembrolizumab(MK-3475)in patients with advanced biliary tract cancer:interim results of KEYNOTE-028. Eur J Cancer 2015;51:S112.
- 20)
- Oh SY, Jeong CY, Hong SC, Kim TH, Ha CY, Kim HJ, et al. Phase Ⅱ study of second line gemcitabine single chemotherapy for biliary tract cancer patients with 5-fluorouracil refractoriness. Invest New Drugs 2011;29:1066-1072.
注:文献No. 4 は検索期間以降に発表された“検索期間外論文”である。
- CQ39
- 術後補助化学療法は行うべきか?
※2023年8月22日追記あり(PDF)
- レベルC
- 術後補助化学療法の有用性を示した報告はないが,行うことを考慮しても良い。
解説
胆道癌では外科切除のみが根治を期待できる治療法であるが,根治切除例においても再発率は高く,治療成績向上のためには有効な補助療法の開発が必要である。これまで術後補助化学療法に関するランダム化比較試験は,胆管癌・乳頭部癌・胆囊癌に対するマイトマイシンC+5-FU の有用性を検証したTakada ら1)の報告のみである。しかし,全登録例を当初割り付けられた群で比較するintent-to-treat 解析(ITT 解析)では有効性が認められなかったことから標準治療と位置づけられるまでには至らなかった。その後2012 年以降に以下に述べる4 本の大規模ランダム化比較試験の結果が相次いで発表された(表1)。
1)ESPAC-3 試験2)
乳頭部癌・肝外胆管癌を中心とする傍乳頭部領域癌に対し手術単独群と5-FU+フォリン酸もしくはゲムシタビンの化学療法群を比較した試験である。生存期間中央値(MST)は手術単独群で35.2 ヵ月,化学療法群で43.1 ヵ月,HR 0.86(95%CI;0.66-1.11,P=0.25)と化学療法の優越性は示されていない。しかし,他の予後因子にて調整した感度解析では手術単独群と比較し化学療法群ではHR 0.75(95%CI;0.57-0.98,P=0.03),またGEM 群ではHR 0.70(95%CI;0.51-0.97,P=0.03)と有意に予後延長効果が認められた。(レベルB)
2)PRODIGE 12-ACCORD 18 試験3)
フランスで行われた乳頭部癌を除く胆道癌を対象にゲムシタビン+オキサリプラチン(GEMOX)の有効性を検証した試験である。2017 年のASCO-GI にて結果が報告された。無再発生存期間中央値は手術単独群で22.0 ヵ月であったのに対し,GEMOX 群では30.4 ヵ月,HR 0.83(95%CI;0.57-1.05,P=0.31)と,GEMOXの優越性は示されなかった。(レベルB)
3)BILCAP 試験4)
乳頭部癌を除く胆道癌を対象にカペシタビンの有効性を検証した試験で,2017 年のASCO にて結果が報告された。447 例によるITT 解析ではMST は手術単独群で36.4 ヵ月であったのに対し,カペシタビン群では51.1 ヵ月,HR 0.81(95%CI;0.63-1.04,P=0.097)と予後の延長は認められたものの優越性は示されなかった。しかし,登録時不適格症例やカペシタビン未投与症例を除いた430 例によるper-protocol 解析(PP 解析)では,手術単独群の36.1 ヵ月に対してカペシタビン群は52.7 ヵ月,HR 0.75(95%CI;0.58-0.97,P=0.028)と有意に予後延長効果が認められた。(レベルB)
4)BCAT 試験5)
肝外胆管癌(肝門部領域胆管癌+遠位胆管癌)のみを対象にゲムシタビンの有効性を検証した本邦で行われた試験である。MST は手術単独群で63.8 ヵ月であったのに対し,ゲムシタビン群では62.3 ヵ月,HR 1.01(95%CI;0.70-1.45,P=0.964)と,予後の延長効果は全く認められなかった。(レベルB)
いずれのランダム化比較試験においてもITT 解析では化学療法群の有効性は認められなかった。しかし,ESPAC-3 試験では感度解析にて,BILCAP 試験ではPP 解析にてそれぞれ有意な効果を認めたと報告している。特にBILCAP 試験では片群220 例以上の症例が集積され,かつ15 ヵ月の予後延長効果があったことから,今後海外ではカペシタビンが標準治療として受け入れられる可能性はある。
Horgan ら6)は,放射線治療も含めた補助療法のメタアナリシス(化学療法単独の論文は20 編中3 編)にて,リンパ節転移陽性例(HR0.49,95%CI 0.30-0.80)や病理学的断端陽性例(HR 0.36, 95%CI 0.19-0.68)では補助療法群が有意な予後延長効果を認めたと報告している。(レベルC)
一方,対象疾患が異なるため試験間の比較は難しいが,本邦で行われたBCAT 試験の結果をみると,手術単独群の成績が他の試験の化学療法群より良好であったことから,胆道癌においては海外のエビデンスをそのまま本邦に応用することに対しては慎重に判断すべきである。現在テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合薬(S-1)の有効性を検証するASCOT(JCOG1202)試験7)とゲムシタビン+シスプラチンの有効性を検証するACTICCA-1 試験8)が実施されており,今後これらの試験結果によってエビデンスが確立することを期待する。
以上,現時点では高いエビデンスをもって推奨される術後補助化学療法はなく,推奨度を提示できる段階ではないと判断した。
引用文献
- 1)
- Takada T, Amano H, Yasuda H, Nimura Y, Matsushiro T, Kato H, et al. Is postoperative adjuvant chemotherapy useful for gallbladder carcinoma?:a phase Ⅲ multicenter prospective randomized controlled trial in patients with resected pancreaticobiliary carcinoma. Cancer 2002;95:1685-1695.
- 2)
- Neoptolemos JP, Moore MJ, Cox TF, Valle JW, Palmer DH, McDonald AC, et al. Effect of adjuvant chemotherapy with fluorouracil plus folinic acid or gemcitabine vs observation on survival in patients with resected periampullary adenocarcinoma. JAMA 2012;308:147-156.
- 3)
- Edeline J, Bonnetain F, Phelip JM, Watelet J, Hammel P, Joly JP, et al. Gemox versus surveillance following surgery of localized biliary tract cancer;Results of the PRODIGE 12 – ACCORD 18(UNICANCER GI)phase Ⅲ trial. J Clin Oncol 2017;35 suppl:225.
- 4)
- Primrose JN, Fox R, Palmer DH, Prasad R, Mirza D, Anthoney DA, et al. Adjuvant capecitabine for biliary tract cancer:the BILCAP randomized study. J Clin Oncol 2017;35 suppl:4006.
- 5)
- Ebata T, Hirano S, Konishi M, Uesaka K, Tsuchiya Y, Ohtsuka M, et al. Randomized clinical trial of adjuvant gemcitabine chemotherapy versus observation in resected bile duct cancer. Br J Surg 2018;105:192-202.
- 6)
- Horgan AM, Amir E, Walter T, Knox JJ. Adjuvant therapy in the treatment of biliary tract cancer:a systematic review and meta-analysis. J Clin Oncol 2012;30:1934-1940.
- 7)
- Ikeda M, Nakachi K, Konishi M, Mitsunaga S, Mizusawa J, Uesaka K, et al. A randomized phase Ⅲ trial comparing adjuvant chemotherapy with S-1 vs surgery alone in patients with resectable biliary tract cancer:JCOG 1202(ASCOT). J Clin Oncol 2017;35 suppl:4144.
- 8)
- Stein A, Arnold D, Bridgewater J, Goldstein D, Jensen LH, Klümpen HJ, et al. Adjuvant chemotherapy with gemcitabine and cisplatin compared to observation after curative intent resection of cholangiocarcinoma and muscle invasive gallbladder carcinoma(ACTICCA-1 trial):a randomized, multidisciplinary, multinational phase Ⅲ trial. BMC Cancer 2015;15:564.
- CQ40
- 閉塞性黄疸に対する化学療法はいつ開始すべきか?[Future Research Question]
- レベルC
- 総ビリルビン値が少なくとも3.0 mg/dL 以下に改善した状態で開始することが望ましい。
解説
現在,胆道癌に対してゲムシタビン,シスプラチン,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合薬(S-1)が一般臨床で使用されている。これらの薬剤を用いた臨床試験では,対象患者はいずれも黄疸がない,あるいは閉塞性黄疸に対する減黄が行われ,血中総ビリルビン値が基準値1.5 倍〜3.0 mg/dL 以下が適格条件として設定されている1〜6)。したがって,日常診療においても切除不能胆道癌に対する化学療法は減黄が十分行われ,総ビリルビン値が少なくとも3.0 mg/dL 以下に改善した状態で開始することが望ましい。しかし,実際の臨床では閉塞性黄疸を有する胆道癌患者において,順調に減黄が進んでいる場合,総ビリルビン値が3.0 mg/dL 以下になるまで化学療法の開始を待たなければならないかどうか,臨床的疑問としてあがっている。
ゲムシタビン,シスプラチン,S-1 はいずれも腎排泄される薬剤であり,肝毒性はそれ程強くないが,これまで黄疸患者に対する安全性と有効性を検証した大規模な前向き臨床試験は行われていない。Venook ら7)は,肝機能あるいは腎機能低下を認める患者を対象としたゲムシタビンの第Ⅰ相試験を行い,血中ビリルビン中央値2.7 mg/dL(範囲1.7〜5.7 mg/dL)の肝障害を有する患者では800 mg/m2 の投与量で治療開始し,忍容性をみて増量するのが適当としている。(レベルC)
Shibata ら8)は,肝障害を有する胆道・膵癌患者を対象にゲムシタビン単独治療による適切な投与量を明らかにする目的で前向き臨床試験を実施し,総ビリルビン基準値3.0〜10.0 倍の高度肝障害8 例を含む15 例において,適切な胆汁ドレナージが行われていればゲムシタビン800〜1,000 mg/m2 の初回投与は可能であると結論している。(レベルC)
Lamarca ら9)は,適切な胆管ステント留置を行った上で,総ビリルビン値が1.7 mg/dL に低下しない胆道癌患者を対象とした後ろ向き研究を報告している。総ビリルビン中央値3.2 mg/dL(範囲1.87〜16.7 mg/dL)の状態でゲムシタビン+シスプラチン併用療法を行い,胆管閉塞に起因する場合は第Ⅲ相試験(ABC-02 試験)と同等の成績が得られたが,肝転移による黄疸の場合は予後不良であったとしている。(レベルC)
これらの報告からは,閉塞性黄疸胆道癌患者において,ビリルビン値が上下の変動なく低下し順調に減黄されている状態,かつ全身状態が良好で胆管炎が制御されていれば,総ビリルビン値が臨床試験で設定された基準まで改善していなくても,ゲムシタビンベースの化学療法は実施可能と考えられる。しかし,いずれも小規模な第Ⅰ相試験と後ろ向きの解析であり,個々の患者のリスクとベネフィットを十分考慮した上で治療の開始を慎重に検討する必要がある。
引用文献
- 1)
- Okusaka T, Ishii H, Funakoshi A, Yamao K, Ohkawa S, Saito S, et al. Phase Ⅱ study of single-agent gemcitabine in patients with advanced biliary tract cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2006;57:647-653.
- 2)
- Furuse J, Okusaka T, Boku N, Ohkawa S, Sawaki A, Masumoto T, et al. S-1 monotherapy as first-line treatment in patients with advanced biliary tract cancer:a multicenter phase Ⅱ study. Cancer Chemother Pharmacol 2008;62:849-855.
- 3)
- Valle J, Wasan H, Palmer DH, Cunningham D, Anthoney A, Maraveyas A, et al. Cisplatin plus gemcitabine versus gemcitabine for biliary tract cancer. N Engl J Med 2010;362:1273-1281.
- 4)
- Okusaka T, Nakachi K, Fukutomi A, Mizuno N, Ohkawa S, Funakoshi A, et al. Gemcitabine alone or in combination with cisplatin in patients with biliary tract cancer:a comparative multicentre study in Japan. Br J Cancer 2010;103:469-474.
- 5)
- Valle JW, Furuse J, Jitlal M, Beare S, Mizuno N, Wasan H, et al. Cisplatin and gemcitabine for advanced biliary tract cancer:a meta-analysis of two randomized trials. Ann Oncol 2014;25:391-398.
- 6)
- Mizusawa J, Morizane C, Okusaka T, Katayama H, Ishii H, Fukuda H, et al. Randomized Phase Ⅲ study of gemcitabine plus S-1 versus gemcitabine plus cisplatin in advanced biliary tract cancer:Japan Clinical Oncology Group Study(JCOG1113, FUGA-BT). Jpn J Clin Oncol 2016;46:385-388.
- 7)
- Venook AP, Egorin MJ, Rosner GL, Hollis D, Mani S, Hawkins M, et al. Phase Ⅰ and pharmacokinetic trial of gemcitabine in patients with hepatic or renal dysfunction:Cancer and Leukemia Group B 9565. J Clin Oncol 2000;18:2780-2787.
- 8)
- Shibata T, Ebata T, Fujita K, Shimokata T, Maeda O, Mitsuma A, et al. Optimal dose of gemcitabine for the treatment of biliary tract or pancreatic cancer in patients with liver dysfunction. Cancer Sci 2016;107:168-172.
- 9)
- Lamarca A, Benafif S, Ross P, Bridgewater J, Valle JW. Cisplatin and gemcitabine in patients with advanced biliary tract cancer(ABC)and persistent jaundice despite optimal stenting:effective intervention in patients with luminal disease. Eur J Cancer 2015;51:1694-1703.
第VIII章.放射線治療
- CQ41
- 切除不能胆道癌に放射線治療,または化学放射線療法は行うべきか?[Future Research Question]
- レベルC
- 放射線治療,化学放射線療法の有用性は,現時点では根拠が不十分であり,明確な推奨はできない。今後の臨床研究に期待する。
解説
1)放射線治療
切除不能胆道癌に対する放射線治療(表1)の目的は,延命(姑息的治療)あるいはステント開存性維持,減黄,疼痛緩和(対症的治療)などである。全身状態良好な切除不能例はゲムシタビンとシスプラチン併用療法(GC)が標準治療であるが,放射線治療は他の姑息的治療あるいは支持療法と比較して延命効果があるとする報告は多い(表2)。大規模なランダム化比較試験は実現していない。主症状の閉塞性黄疸に対して,照射による減黄も試みられるが縮小効果は即効性でないため胆道ドレナージが優先され,長期間の減黄維持にはステント留置が必要である。Shinchi ら1)は減黄単独群の生存期間中央値(MST)4.4 ヵ月,ステント群6.4 ヵ月に比して放射線治療を加えた群のMST が10.6 ヵ月に延長したことより,放射線治療はステント開存および予後延長に有用であるとした。Shinohara ら2)は米国の疫学調査データベースSurveillance, Epidemiology, and End Results database(SEER)を解析し,放射線治療群(n=475)のMST 9 ヵ月は無治療群(n=2,210)のMST 4 ヵ月に比して有意に延長したことを示した。同様の報告は多く,放射線治療により予後の延長とともにステント開存期間が延長する傾向にある1〜3)。(レベルC)
胆道癌に対しては一般的に外照射が行われているが,消化管や脊髄などの周囲臓器耐容線量を考慮して,通常分割照射では総線量45〜50 Gy 程度が用いられる。一方,放射線治療で腺癌を制御するには高線量が必要とされる。Alden ら4)は55 Gy 未満では2 年生存率0%であったが,外部照射45 Gy に腔内照射24〜26 Gy 程度を加えた,55 Gy を超える線量群では2 年生存率が48% だったとしている。腔内照射は周辺正常組織の線量を減じつつ病変部に高線量を照射できるため,副作用を抑えて治療効果をあげることが期待される。Válek ら5)はランダム化比較試験を行い,ステント留置後に放射線治療(外部照射+腔内照射)を加えた24 例でMST 388 日と,ステントのみ24 例のMST 298 日と比較して生存率の向上およびステント開存期間延長を示した。Takamura ら6)は外部照射50 Gy と腔内照射27〜50 Gy(平均39.2 Gy)を併用しMST 11.9 ヵ月(5 年生存率4.3%)を得た。SEER データベースを用いた大規模疫学調査でも193 例の腔内照射群ではMST 11 ヵ月と6,859 例の放射線治療無施行群のMST 4 ヵ月に比較して良好な成績が示されており7),腔内照射の併用はおおむね肯定的に考えられている。我が国の多施設調査でも腔内照射による生存率改善は認めないが,傾向スコアを用いた解析で局所制御改善に有効で(1 年局所制御率:腔内照射群65%と対照群35%),胆管開存やQOL の維持に有用とされた8)。一方,Bowling ら9)はステント留置のみのMST 7 ヵ月が外部照射と腔内照射の併用で10 ヵ月へと3 ヵ月の延長をすたが治療期間を考えると,患者にとって有用性に乏しいとしている。また腔内照射の線量投与方法や線量分割にも定まったものはなく,胆管炎や消化管障害などに注意が必要で標準的な放射線治療は確立していない。国内では腔内照射の施行数が減少している。(レベルC)
近年では放射線治療の技術の進歩でCT を用いた3 次元治療計画(three-dimensional conformal radiation therapy:3D-CRT)が一般的になり,強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)を用いて有害事象を減らす試みや10),体幹部定位照射(stereotactic body radiotherapy:SBRT)や,粒子線治療などが行われている(表3)。体幹部定位照射は肝臓癌で有用性が認められ,我が国でも原発性肝癌は保険適応となった。肝内胆管癌や肝門部領域胆管癌でもMST 17〜35.5 ヵ月と優れた成績が報告されているが11〜16),消化管の有害事象に注意が必要である13)。Tao ら16)は肝内胆管癌に対して58.05 Gy(35〜100 Gy)/3〜30 回の照射を行い,[89% 前化学療法(主にGC),63%同時化学療法(カペシタビン),47%維持化学療法を使用]MST 30 ヵ月を得た。高線量群で局所制御率も生存率も優れていた{biological equivalent dose:BED ≥ 80.5 Gy:3 年生存率73% vs. BED<80.5 Gy:38%(P=0.02)}。粒子線治療でも近年胆道癌の治療成績報告があり17〜20),陽子線を用いた肝内胆管癌の前向き多施設試験で2 年生存率46.5%と好成績が得られた17)。(レベルC)
なお,治療法選択の際,主に生存期間について議論されることが多いが,放射線治療では局所制御によるステント開存性の維持や疼痛緩和などが期待できることも利点の1 つである。根治切除不能で高齢のために化学療法の適応とならない症例には,放射線治療について説明すべきである。
2)化学放射線療法
近年,集学的治療の一環として化学療法による放射線増感効果・照射野以外の転移抑制,転移病巣の制御を目的として化学放射線療法が行われる(表4)。5-FU やカペシタビンを用いたフルオロピリミジン系薬剤併用の報告が多いが,新規薬剤としてゲムシタビン,シスプラチン,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合薬(S-1)なども使用されるようになってきた。放射線治療単独と放射線化学療法を比較したランダム化比較試験は見られないが,小規模な非ランダム化試験としてFoo ら21)が放射線外照射および腔内照射に5-FU の全身投与を併用し,有意差は得られなかったものの化学療法併用群で生存率改善の可能性を示唆している。同様に化学放射線療法の有効性を示した報告は多いが22,23),認めなかったとする報告もある24)。動注化学療法は胆管および周囲組織に高濃度の薬剤分布が期待できる。左右肝管より末梢の肝内胆管は固有肝動脈の枝から血流を受けているため,肝内胆管および周囲間実質への分布が良好である。Matsumoto ら25)は肝内胆管進展例や肝実質浸潤例に対する併用療法として放射線治療に加えて動注化学療法を用いてMST 19.4 ヵ月を報告している。近年,ゲムシタビンやS-1 などの新規薬剤を用いた化学放射線療法の報告で10〜16 ヵ月のMST が報告されている26〜29)。予後因子の1 つとして腫瘍の大きさが報告されており,4 cm 以下の症例では化学放射線療法に腔内照射を加えることによりMST 21.4 ヵ月と,4 cm 超の腫瘍でのMST 8.7 ヵ月と比して生存期間改善を得た報告がある22)。国内31 施設で2000〜2011 年に555 名の胆道癌患者が放射線治療を受け(外部照射78%,腔内照射17%,術中照射5%),外部照射は主に3D-CRT を用いて50〜50.4 Gy 程度投与されていた。化学療法は47%で使用され(同時併用64%,放射線治療後が63%)ゲムシタビンが最多であった30)。非切除例では化学放射線療法群(逐次的・同時併用を問わず:148 例)のMST 16 ヵ月が,放射線治療単独群(137 例)のMST 13 ヵ月より良い傾向だった31)。Pollom ら32)はSEER に化学療法のデータを加えた2,343 例の解析を行い,放射線治療(診断から4 ヵ月以内)は化学療法非併用例では有効性に乏しいが(Hazard ratio=1.09,P=0.34:HR)化学療法併用例では有用(HR=0.82,P=0.02)であったと報告している。Phelip ら33)は少数例ながら化学療法(GEM+オキサリプラチン)と化学放射線療法(CDDP+5-FU+放射線治療50 Gy)を比較したランダム化試験を行い,MST で19.9 ヵ月と13.5 ヵ月となり,化学療法は化学放射線療法と同等以上であるとした。(レベルC)
化学放射線療法はMST 1 年以上の報告が多く期待される治療法ではあるが,併用のタイミング(同時併用か交互か,維持療法など),放射線治療法の内容,薬剤量など標準的レジメンはなく,いまだ研究段階である。
引用文献
- 1)
- Shinchi H, Takao S, Nishida H, Aikou T. Length and quality of survival following external beam radiotherapy combined with expandable metallic stent for unresectable hilar cholangiocarcinoma. J Surg Oncol 2000;75:89-94.
- 2)
- Shinohara ET, Mitra N, Guo M, Metz JM. Radiotherapy is associated with improved survival in adjuvant and palliative treatment of extrahepatic cholangiocarcinomas. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2009;74:1191-1198.
- 3)
- Isayama H, Tsujino T, Nakai Y, Sasaki T, Nakagawa K, Yamashita H, et al. Clinical benefit of radiation therapy and metallic stenting for unresectable hilar cholangiocarcinoma. World J Gastroenterol 2012;18:2364-2370.
- 4)
- Alden ME, Mohiuddin M. The impact of radiation dose in combined external beam and intraluminal Ir-192 brachytherapy for bile duct cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1994;28:945-951.
- 5)
- Válek V, Kysela P, Kala Z, Kiss I, Tomásek J, Petera J. Brachytherapy and percutaneous stenting in the treatment of cholangiocarcinoma:a prospective randomised study. Eur J Radiol 2007;62:175-179.
- 6)
- Takamura A, Saito H, Kamada T, Hiramatsu K, Takeuchi S, Hasegawa M, et al. Intraluminal low-dose-rate 192Ir brachytherapy combined with external beam radiotherapy and biliary stenting for unresectable extrahepatic bile duct carcinoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2003;57:1357-1365.
- 7)
- Shinohara ET, Guo M, Mitra N, Metz JM. Brachytherapy in the treatment of cholangiocarcinoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2010;78:722-728.
- 8)
- Yoshioka Y, Ogawa K, Oikawa H, Onishi H, Kanesaka N, Tamamoto T, et al. Impact of intraluminal brachytherapy on survival outcome for radiation therapy for unresectable biliary tract cancer:a propensity-score matched-pair analysis. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2014;89:822-829.
- 9)
- Bowling TE, Galbraith SM, Hatfield AR, Solano J, Spittle MF. A retrospective comparison of endoscopic stenting alone with stenting and radiotherapy in non-resectable cholangiocarcinoma. Gut 1996;39:852-855.
- 10)
- Yovino S, Poppe M, Jabbour S, David V, Garofalo M, Pandya N, et al. Intensity-modulated radiation therapy significantly improves acute gastrointestinal toxicity in pancreatic and ampullary cancers. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2011;79:158-162.
- 11)
- Mahadevan A, Dagoglu N, Mancias J, Raven K, Khwaja K, Tseng JF, et al. Stereotactic body radiotherapy(SBRT)for intrahepatic and hilar cholangiocarcinoma. J Cancer 2015;6:1099-1104.
- 12)
- Sandler KA, Veruttipong D, Agopian VG, Finn RS, Hong JC, Kaldas FM, et al. Stereotactic body radiotherapy(SBRT)for locally advanced extrahepatic and intrahepatic cholangiocarcinoma. Adv Radiat Oncol 2016;1:237-243.
- 13)
- Kopek N, Holt MI, Hansen AT, Høyer M. Stereotactic body radiotherapy for unresectable cholangiocarcinoma. Radiother Oncol 2010;94:47-52.
- 14)
- Momm F, Schubert E, Henne K, Hodapp N, Frommhold H, Harder J, et al. Stereotactic fractionated radiotherapy for Klatskin tumours. Radiother Oncol 2010;95:99-102.
- 15)
- Polistina FA, Guglielmi R, Baiocchi C, Francescon P, Scalchi P, Febbraro A, et al. Chemoradiation treatment with gemcitabine plus stereotactic body radiotherapy for unresectable, non-metastatic, locally advanced hilar cholangiocarcinoma. Results of a five year experience. Radiother Oncol 2011;99:120-123.
- 16)
- Tao R, Krishnan S, Bhosale PR, Javle MM, Aloia TA, Shroff RT, et al. Ablative radiotherapy doses lead to a substantial prolongation of survival in patients with inoperable intrahepatic cholangiocarcinoma:a retrospective dose response analysis. J Clin Oncol 2016;34:219-226.
- 17)
- Hong TS, Wo JY, Yeap BY, Ben-Josef E, McDonnell EI, Blaszkowsky LS, et al. Multi-institutional phase Ⅱ study of high-dose hypofractionated proton beam therapy in patients with localized, unresectable hepatocellular carcinoma and intrahepatic cholangiocarcinoma. J Clin Oncol 2016;34:460-468.
- 18)
- Ohkawa A, Mizumoto M, Ishikawa H, Abei M, Fukuda K, Hashimoto T, et al. Proton beam therapy for unresectable intrahepatic cholangiocarcinoma. J Gastroenterol Hepatol 2015;30:957-963.
- 19)
- Makita C, Nakamura T, Takada A, Takayama K, Suzuki M, Ishikawa Y, et al. Clinical outcomes and toxicity of proton beam therapy for advanced cholangiocarcinoma. Radiat Oncol 2014;9:26.
- 20)
- Abe T, Shibuya K, Koyama Y, Okamoto M, Kiyohara H, Katoh H, et al. Initial results of hypofractionated carbon ion radiotherapy for cholangiocarcinoma. Anticancer Res 2016;36:2955-2960.
- 21)
- Foo ML, Gunderson LL, Bender CE, Buskirk SJ. External radiation therapy and transcatheter iridium in the treatment of extrahepatic bile duct carcinoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1997;39:929-935.
- 22)
- Brunner TB, Schwab D, Meyer T, Sauer R. Chemoradiation may prolong survival of patients with non-bulky unresectable extrahepatic biliary carcinoma:a retrospective analysis. Strahlenther Onkol 2004;180:751-757.
- 23)
- Akita H, Yamada T, Sasaki Y, Eguchi H, Ohigashi H, Ishikawa O, et al. The evaluation of chemoradiotherapy to unresectable hepatobiliary cancers. Gan To Kagaku Ryoho 2005;32:1727-1729.(in Japanese)
- 24)
- Crane CH, Macdonald KO, Vauthey JN, Yehuda P, Brown T, Curley S, et al. Limitations of conventional doses of chemoradiation for unresectable biliary cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2002;53:969-974.
- 25)
- Matsumoto S, Kiyosue H, Komatsu E, Wakisaka M, Tomonari K, Hori Y, et al. Radiotherapy combined with transarterial infusion chemotherapy and concurrent infusion of a vasoconstrictor agent for nonresectable advanced hepatic hilar duct carcinoma. Cancer 2004;100:2422-2429.
- 26)
- Lin LL, Picus J, Drebin JA, Linehan DC, Solis J, Strasberg SM, et al. A phase Ⅱ study of alternating cycles of split course radiation therapy and gemcitabine chemotherapy for inoperable pancreatic or biliary tract carcinoma. Am J Clin Oncol 2005;28:234-241.
- 27)
- Park JY, Park SW, Chung JB, Seong J, Kim KS, Lee WJ, et al. Concurrent chemoradiotherapy with doxifluridine and paclitaxel for extrahepatic bile duct cancer. Am J Clin Oncol 2006;29:240-245.
- 28)
- Autorino R, Mattiucci GC, Ardito F, Balducci M, Deodato F, Macchia G, et al. Radiochemotherapy with gemcitabine in unresectable extrahepatic cholangiocarcinoma:long-term results of a phase Ⅱ study. Anticancer Res 2016;36:737-740.
- 29)
- Lee KJ, Yi SW, Cha J, Seong J, Bang S, Song SY, et al. A pilot study of concurrent chemoradiotherapy with gemcitabine and cisplatin in patients with locally advanced biliary tract cancer. Cancer Chemother Pharmacol 2016;78:841-846.
- 30)
- Isohashi F, Ogawa K, Oikawa H, Onishi H, Uchida N, Maebayashi T, et al. Patterns of radiotherapy practice for biliary tract cancer in Japan:results of the Japanese radiation oncology study group(JROSG)survey. Radiat Oncol 2013;8:76.
- 31)
- Yoshioka Y, Ogawa K, Oikawa H, Onishi H, Uchida N, Maebayashi T, et al. Factors influencing survival outcome for radiotherapy for biliary tract cancer:a multicenter retrospective study. Radiother Oncol 2014;110:546-552.
- 32)
- Pollom EL, Alagappan M, Park LS, Whittemore AS, Koong AC, Chang DT. Does radiotherapy still have a role in unresected biliary tract cancer? Cancer Med 2017;6:129-141.
- 33)
- Phelip JM, Vendrely V, Rostain F, Subtil F, Jouve JL, Gasmi M, et al. Gemcitabine plus cisplatin versus chemoradiotherapy in locally advanced biliary tract cancer:Fédération Francophone de Cancérologie Digestive 9902 phase Ⅱ randomised study. Eur J Cancer 2014;50:2975-2982.
- CQ42
- 胆道癌切除例に術後放射線治療,または術後化学放射線療法は行うべきか?[Future Research Question]
- レベルC
- 断端陽性例やリンパ節転移例には行うことを考慮してもよい。しかし,現時点では有用性に関する根拠が不十分であり,明確な推奨はできない。今後の臨床研究に期待する。
解説
1)放射線治療
胆道癌はR1 切除となる頻度が高く,たとえR0 切除であっても術後局所再発率は少なくない。このため切除症例の局所制御率を高めるため,術後化学療法や放射線治療が行われることがある(表1)。放射線治療は術中照射・外照射・腔内照射などをそれぞれ単独に,またはいずれか2 者または3 者の組み合わせで施行されてきたが,大規模なランダム化比較試験の報告はない。
Pitt ら1)は胆管癌50 例(切除31 例+非切除19 例)を対象とした小規模ランダム化比較試験において,放射線治療施行群23 例と非施行群27 例を比較検討した。放射線治療群の生存期間中央値(MST)14 ヵ月は非施行群のMST 15 ヵ月と有意差はなく,切除例では放射線治療群14 例,非施行群17 例ともにMST 20 ヵ月であった。一方,Gerhards ら2)は胆管癌切除後91 例に対して20 例の手術単独群と切除後補助療法群71 例{外照射(平均46 Gy)を施行した30 例と外照射(平均42 Gy)に腔内照射(平均10 Gy)を加えた41 例}の解析を行い,非照射群のMST 8 ヵ月に対して照射群では24 ヵ月と有意に予後が延長したことを報告した。同様に術後照射は有用とする報告と3),有用性は認められなかったとする報告がある4)。(レベルC)
胆囊癌やファーター乳頭癌を除いた肝外胆管癌においてメタアナリシスやシステマティックレビューが行われ,術後照射が有意に全生存率を改善することが示された(Hazard Ratio:HR 0.62,P<0.001)5)。晩期放射線毒性は通過障害あるいは消化管出血が2〜9%と軽微であった。また,米国の大規模疫学調査データベースSurveillance, Epidemiology, and End Results database(SEER)を用いた2,000 例以上の検討で,手術単独群のMST 9 ヵ月に比して術後照射群ではMST 16 ヵ月であり,術後放射線治療の有用性が示された6)。同様に胆囊癌でも4,000 例以上のSEER のデータで手術単独のMST 8 ヵ月が放射線治療を加えることによって14〜15 ヵ月に延長し,特にT2 以上の原発巣やリンパ節転移陽性例・肝浸潤例で術後放射線治療が有用であった7,8)。一方,経過観察が3 ヵ月未満例を除外するとT1-2 ではむしろ手術単独群の生存率が優れており,進行例でも放射線治療の有効性は示せなかった9)。メタアナリシスでも補助療法としての放射線治療が断端陽性例やリンパ節転移陽性例で有用とされており5)症例選択の必要性を示唆している。(レベルC)
術中照射は目的とする部位に正確に照射可能で,放射線感受性の高い周囲正常組織を照射野からはずすことができる。1 回線量や照射野を大きくすると合併症が生じ易くなるため,一般的には外照射が併用される。術中照射21 Gy と術後照射44 Gy 程度を加えることによりⅣA 期のR1 切除例の5 年生存率が39.2%と,切除のみ13.5%に比して改善したものから10),有用性が認められなかったとする報告もある11)。(レベルC)
以上,切除後断端陽性例やリンパ節転移例には放射線治療を考慮しても良い。しかし,大規模なランダム化比較試験はなく,高いエビデンスレベルがないので,臨床研究として行うことが望ましい。一方,治癒切除例に対してはその適応は慎重でなければならない。
2)化学放射線療法
胆道癌に対する放射線治療と化学療法の併用は有効との報告が多く,切除断端陽性例やリンパ節転移例にはフルオロピリミジン系薬剤併用の術後化学放射線療法や引き続く化学療法なども行われる(表2)。
一般的には術後化学放射線療法は断端陽性例やT2 以上,リンパ節転移例などの進行例で有用とする報告が多い。我が国の多施設集計では術後放射線治療例(212 例)のMST 31 ヵ月で12),特にリンパ節転移例では化学放射線療法(同時・順次問わず)が放射線治療単独より良好(MST,31 ヵ月vs. 13 ヵ月:P<0.001)であった。断端陽性やリンパ節転移例でも術後化学放射線療法施行により断端陰性例と同等の生存率であったとする報告や13),維持化学療法の重要性を示唆する研究もあり14,15)併用方法も検討を要する。同様に化学療法と化学放射線療法併用例では有意な予後延長を示したが,放射線治療単独では有意とならなかった報告がある16,17)。Hoehn ら18)もThe National Cancer Database(NCDB)を用いた解析でT2-3 では化学放射線療法が有用だが,リンパ節転移陰性例では有用性を認めなかった。Horgan ら19)の術後補助療法全般のメタアナリシスでは,有意差はないが補助療法群が良好な傾向を示した(オッズ比0.74;P=0.06)。特に断端陽性例(オッズ比 0.36;P=0.002)やリンパ節転移陽性例(オッズ比0.49;P=0.004)では補助療法が有用であった。化学療法(オッズ比0.39;P<0.001)や化学放射線療法(オッズ比0.61;P<0.049)が放射線治療単独(オッズ比0.98;P=0.9)より良好な傾向を示した。(レベルC)
SWOG(South West Oncology Group)の多施設前向き第Ⅱ相試験で術後化学放射線療法のエビデンスが示された。術後化学療法(ゲムシタビン+カペシタビン)を先行させ,カペシタビン同時併用化学放射線療法(含intensity modulated radiotherapy:IMRT)を行いMST 35 ヵ月と良好な結果が報告された20)。化学療法を先行させることにより,早期に遠隔転移を生じる症例に放射線治療を避けることも可能であり今後考慮される方法である。(レベルB)
Narang ら21)は乳頭部癌で66 例の5-FU を用いた化学放射線療法群を120 例の対照群と比較してMST では40.1 ヵ月と39.9 ヵ月で有意差がなかったが,リンパ節転移例に限ると15.7 ヵ月が32.1 ヵ月へと生存期間の延長が認められ,背景を調整した多変量解析でも化学放射線療法が有意な予後因子であった。傍乳頭部癌で2 本の前向き試験が報告された。Smeenk ら22)は膵癌と乳頭部癌対象で術後に5-FU 併用後で2 週間の休止をいれた40 Gy の化学放射線療法を行った前向きランダム化試験(EORTC40891)の長期予後を解析し,術後化学放射線療法では生存率は向上を認めなかった。Morak らは膵癌と傍乳頭部癌について術後動注化学放射線療法(celiac axis infusion chemotherapy:CAI)6 クールと放射線治療54 Gy/30 回(CAI/RT)を交替で行う前向き比較試験を行い,CAI/RT は予後に寄与しないが,傍乳頭部癌では肝転移を減らし無増悪生存期間を延長23),患者QOL 向上に寄与したと述べている24)。これらを含めたシステマティックレビューでも予後改善は認められなかった25)。リンパ節転移例に限った試験の必要性や,傍乳頭部癌と膵臓癌は分けて検討すべきとの考察はあるものの,現在,傍乳頭部癌に補助療法としての術後化学放射線療法は推奨されない。(レベルB)
局所制御率向上のため術前化学放射線療法も試みられている。欧米ではリンパ節転移陰性の肝門部局所進行胆道癌に術前化学放射線療法と肝移植を行い,断端陰性率の改善と優れた5 年生存率45〜73%を得ている26,27)。McMasters ら28)は切除不能胆道癌9 例に5-FU 併用の術前化学放射線療法を行ったところ,全例切除可能となり断端陰性率100%と,非施行例の断端陰性率54%と比較して有意に高い断端陰性率だった。同様に術前化学放射線療法によりR0 切除が増加し,リンパ節転移例が減少し予後延長の可能性を示唆する報告がある29)。(レベルC)
化学療法の進展は著しく新規薬剤を用いた研究がなされている。食道癌や膵臓癌など他の消化器癌では化学放射線療法が放射線治療単独と比較して良好とされ,直腸癌などでは術前化学放射線療法が行われるようになっている。今後,前向き臨床試験の蓄積によって胆道癌に対する放射線治療と化学療法との併用療法が生存期間やQOL の向上に寄与するか否かを明らかにしていく必要がある。
引用文献
- 1)
- Pitt HA, Nakeeb A, Abrams RA, Coleman J, Piantadosi S, Yeo CJ, et al. Perihilar cholangiocarcinoma. Postoperative radiotherapy does not improve survival. Ann Surg 1995;221:788-797.
- 2)
- Gerhards MF, van Gulik TM, González González D, Rauws EA, Gouma DJ. Results of postoperative radiotherapy for resectable hilar cholangiocarcinoma. World J Surg 2003;27:173-179.
- 3)
- Cheng Q, Luo X, Zhang B, Jiang X, Yi B, Wu M. Predictive factors for prognosis of hilar cholangiocarcinoma:postresection radiotherapy improves survival. Eur J Surg Oncol 2007;33:202-207.
- 4)
- Sagawa N, Kondo S, Morikawa T, Okushiba S, Katoh H. Effectiveness of radiation therapy after surgery for hilar cholangiocarcinoma. Surg Today 2005;35:548-552.
- 5)
- Bonet Beltrán M, Allal AS, Gich I, Gich I, Solé JM, Carrió I. Is adjuvant radiotherapy needed after curative resection of extrahepatic biliary tract cancers?:a systematic review with a meta-analysis of observational studies. Cancer Treat Rev 2012;38:111-119.
- 6)
- Shinohara ET, Mitra N, Guo M, Metz JM. Radiotherapy is associated with improved survival in adjuvant and palliative treatment of extrahepatic cholangiocarcinomas. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2009;74:1191-1198.
- 7)
- Wang SJ, Fuller CD, Kim JS, Sittig DF, Thomas CR Jr, Ravdin PM. Prediction model for estimating the survival benefit of adjuvant radiotherapy for gallbladder cancer. J Clin Oncol 2008;26:2112-2117.
- 8)
- Mojica P, Smith D, Ellenhorn J. Adjuvant radiation therapy is associated with improved survival for gallbladder carcinoma with regional metastatic disease. J Surg Oncol 2007;96:8-13.
- 9)
- Vern-Gross TZ, Shivnani AT, Chen K, Lee CM, Tward JD, MacDonald OK, et al. Survival outcomes in resected extrahepatic cholangiocarcinoma:effect of adjuvant radiotherapy in a surveillance, epidemiology, and end results analysis. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2011;81:189-198.
- 10)
- Todoroki T, Ohara K, Kawamoto T, Koike N, Yoshida S, Kashiwagi H, et al. Benefits of adjuvant radiotherapy after radical resection of locally advanced main hepatic duct carcinoma. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2000;46:581-587.
- 11)
- Nakano K, Chijiiwa K, Toyonaga T, Ueda J, Takamatsu Y, Kimura M, et al. Combination therapy of resection and intraoperative radiation for patients with carcinomas of extrahepatic bile duct and ampulla of Vater:prognostic advantage over resection alone? Hepatogastroenterology 2003;50:928-933.
- 12)
- Yoshioka Y, Ogawa K, Oikawa H, Onishi H, Uchida N, Maebayashi T, et al. Factors influencing survival outcome for radiotherapy for biliary tract cancer:a multicenter retrospective study. Radiother Oncol 2014;110:546-552.
- 13)
- Borghero Y, Crane CH, Szklaruk J, Oyarzo M, Curley S, Pisters PW, et al. Extrahepatic bile duct adenocarcinoma:patients at high-risk for local recurrence treated with surgery and adjuvant chemoradiation have an equivalent overall survival to patients with standard-risk treated with surgery alone. Ann Surg Oncol 2008;15:3147-3156.
- 14)
- Hughes MA, Frassica DA, Yeo CJ, Riall TS, Lillemoe KD, Cameron JL, et al. Adjuvant concurrent chemoradiation for adenocarcinoma of the distal common bile duct. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2007;68:178-182.
- 15)
- Lim KH, Oh DY, Chie EK, Jang JY, Im SA, Kim TY, et al. Adjuvant concurrent chemoradiation therapy(CCRT)alone versus CCRT followed by adjuvant chemotherapy:which is better in patients with radically resected extrahepatic biliary tract cancer?:a non-randomized, single center study. BMC Cancer 2009;9:345.
- 16)
- Im JH, Seong J, Lee IJ, Park JS, Yoon DS, Kim KS, et al. Surgery alone versus surgery followed by chemotherapy and radiotherapy in resected extrahepatic bile duct cancer:treatment outcome analysis of 336 patients. Cancer Res Treat 2016;48:583-595.
- 17)
- Kim YS, Hwang IG, Park SE, Go SI, Kang JH, Park I, et al. Role of adjuvant therapy after R0 resection for patients with distal cholangiocarcinoma. Cancer Chemother Pharmacol 2016;77:979-985.
- 18)
- Hoehn RS, Wima K, Ertel AE, Meier A, Ahmad SA, Shah SA, et al. Adjuvant therapy for gallbladder cancer:an analysis of the National Cancer Data Base. J Gastrointest Surg 2015;19:1794-1801.
- 19)
- Horgan AM, Amir E, Walter T, Knox JJ. Adjuvant therapy in the treatment of biliary tract cancer:a
systematic review and meta-analysis. J Clin Oncol 2012;30:1934-1940. - 20)
- Ben-Josef E, Guthrie KA, El-Khoueiry AB, Corless CL, Zalupski MM, Lowy AM, et al. SWOG S0809:A phase Ⅱ intergroup trial of adjuvant capecitabine and gemcitabine followed by radiotherapy and concurrent capecitabine in extrahepatic cholangiocarcinoma and gallbladder carcinoma. J Clin Oncol 2015;33:2617-2622.
- 21)
- Narang AK, Miller RC, Hsu CC, Bhatia S, Pawlik TM, Laheru D, et al. Evaluation of adjuvant chemoradiation therapy for ampullary adenocarcinoma:the Johns Hopkins Hospital – Mayo Clinic collaborative study. Radiat Oncol 2011;6:126.
- 22)
- Smeenk HG, van Eijck CH, Hop WC, Erdmann J, Tran KC, Debois M, et al. Long-term survival and metastatic pattern of pancreatic and periampullary cancer after adjuvant chemoradiation or observation:long-term results of EORTC trial 40891. Ann Surg 2007;246:734-740.
- 23)
- Morak MJ, van der Gaast A, Incrocci L, van Dekken H, Hermans JJ, Jeekel J, et al. Adjuvant intra-arterial chemotherapy and radiotherapy versus surgery alone in resectable pancreatic and periampullary cancer:a prospective randomized controlled trial. Ann Surg 2008;248:1031-1041.
- 24)
- Morak MJ, Pek CJ, Kompanje EJ, Hop WC, Kazemier G, van Eijck CH. Quality of life after adjuvant intra-arterial chemotherapy and radiotherapy versus surgery alone in resectable pancreatic and periampullary cancer:a prospective randomized controlled study. Cancer 2010;116:830-836.
- 25)
- Acharya A, Markar SR, Sodergren MH, Malietzis G, Darzi A, Athanasiou T, et al. Meta-analysis of adjuvant therapy following curative surgery for periampullary adenocarcinoma. Br J Surg 2017;104:814-822.
- 26)
- Darwish Murad S, Kim WR, Harnois DM, Douglas DD, Burton J, Kulik LM, et al. Efficacy of neoadjuvant chemoradiation, followed by liver transplantation, for perihilar cholangiocarcinoma at 12 US centers. Gastroenterology 2012;143:88-98.
- 27)
- Marchan EM, Landry JC. Neoadjuvant chemoradiation followed by orthotopic liver transplantation in cholangiocarcinomas:the Emory experience. J Gastrointest Oncol 2016;7:248-254.
- 28)
- McMasters KM, Tuttle TM, Leach SD, Rich T, Cleary KR, Evans DB, et al. Neoadjuvant chemoradiation for extrahepatic cholangiocarcinoma. Am J Surg 1997;174:605-608.
- 29)
- Kobayashi S, Tomokuni A, Gotoh K, Takahashi H, Akita H, Marubashi S, et al. A retrospective analysis of the clinical effects of neoadjuvant combination therapy with full-dose gemcitabine and radiation therapy in patients with biliary tract cancer. Eur J Surg Oncol 2017;43:763-771.
- CQ43
- 胆管癌の治療としてphotodynamic therapy は行うべきか?
- レベルB
- 切除不能胆管癌の治療として行うことを考慮してもよい。
解説
光線力学的治療(PDT)は光感受性物質とレーザー照射による治療法であるが,胆管癌に対して現時点で保険適応にはなっていない1)。前向き比較試験が2 編報告されており,いずれも胆道ステント併用PDT と胆道ステント単独を比較する小規模な試験である。Ortner ら2)は20 例 vs 19 例の検討で,生存期間中央値(MST)が有意に延長し(493 日vs 98 日),QOL も有意に良好であったと報告した。なお,本試験は胆道ステント単独の予後が不良であったため,勧告により試験が途中で中止となっている。同様にZoepf ら3)は16 例 vs 16 例を検討し,PDT 併用によりMST が有意に延長した(21 ヵ月vs 7 ヵ月)と報告した。Witzigmann ら4)はステントのみ56 例とステントにPDT を併用した68 例を比較し,ステント単独群のMST 6.4 ヵ月がPDT 群で12 ヵ月と有意に延長し,R1/R2 切除群18 例のMST 12.2 ヵ月と同等であったと報告した。同様の報告は複数認められ5〜7),メタアナリシスやシステマティックレビューでもステントにPDT を併用することにより生存率が改善すると報告されている8〜10)。Gao ら8)は342 例を解析し,PDT の有害事象は胆管炎27.5%,光毒性10.2%,胆汁性囊胞1.8%などであったと報告している。(レベルA)PDT に化学療法を併用することによって成績が向上したとする報告(Gemcitabine+CDDP11),S-112),Gemcitabine13)など)が複数ある。また手術後の補助療法としてのPDT も行われている1,14,15)。(レベルC)
これまでのPorfimer sodium(PhotofrinⓇ)に加えて,新しい世代の薬物が開発され,光感受性物質による光線過敏症は第2 世代光感受性物質(Talaporfin Na:レザフィリンⓇ)の出現により軽減した1,14)。欧米ではTemoporfin(FoscanⓇ)が開発され,Wagner らは29 例で新薬Temoporfin の第二相試験を行い,無増悪期間が6.5 ヵ月(Photofrin で4.3 ヵ月,P<0.01)に延長したが,光線過敏症に差はなかった16)。新しい世代の薬剤を用いたPDT の役割を明らかにするためには,ステントのみ,あるいは化学療法に新世代のPDT を加えた研究が求められる。また放射線療法など他療法との比較・併用の前向き研究も併せて行われ,PDT の臨床的意義が明らかになることが望まれる。
胆道ステント併用PDT は生存期間の延長やQOL の向上が期待できるので,行うことを考慮してもよい。しかし,いまだ症例数が少なく施行可能な施設も非常に限られているので,現時点では推奨度を提示できる段階ではないと判断した。
引用文献
- 1)
- Nanashima A, Nagayasu T. Current status of photodynamic therapy in digestive tract carcinoma in Japan. Int J Mol Sci 2015;16:3434-3440.
- 2)
- Ortner ME, Caca K, Berr F, Liebetruth J, Mansmann U, Huster D, et al. Successful photodynamic therapy for nonresectable cholangiocarcinoma:a randomized prospective study. Gastroenterology 2003;125:1355-1363.
- 3)
- Zoepf T, Jakobs R, Arnold JC, Apel D, Riemann JF. Palliation of nonresectable bile duct cancer:improved survival after photodynamic therapy. Am J Gastroenterol 2005;100:2426-2430.
- 4)
- Witzigmann H, Berr F, Ringel U, Caca K, Uhlmann D, Schoppmeyer K, et al. Surgical and palliative management and outcome in 184 patients with hilar cholangiocarcinoma:palliative photodynamic therapy plus stenting is comparable to r1/r2 resection. Ann Surg 2006;244:230-239.
- 5)
- Leggett CL, Gorospe EC, Murad MH, Montori VM, Baron TH, Wang KK. Photodynamic therapy for unresectable cholangiocarcinoma:a comparative effectiveness systematic review and meta-analyses. Photodiagnosis Photodyn Ther 2012;9:189-195.
- 6)
- Cheon YK, Lee TY, Lee SM, Yoon JY, Shim CS. Long-term outcome of photodynamic therapy compared with biliary stenting alone in patients with advanced hilar cholangiocarcinoma. HPB(Oxford)2012;14:185-193.
- 7)
- Dolak W, Schwaighofer H, Hellmich B, Stadler B, Spaun G, Plieschnegger W, et al. Photodynamic therapy with polyhematoporphyrin for malignant biliary obstruction:a nationwide retrospective study of 150 consecutive applications. United European Gastroenterol J 2017;5:104-110.
- 8)
- Gao F, Bai Y, Ma SR, Liu F, Li ZS. Systematic review:photodynamic therapy for unresectable cholangiocarcinoma. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2010;17:125-131.
- 9)
- Moole H, Tathireddy H, Dharmapuri S, Moole V, Boddireddy R, Yedama P, et al. Success of photodynamic therapy in palliating patients with nonresectable cholangiocarcinoma:a systematic review and meta-analysis. World J Gastroenterol 2017;23:1278-1288.
- 10)
- Lu Y, Liu L, Wu JC, Bie LK, Gong B. Efficacy and safety of photodynamic therapy for unresectable cholangiocarcinoma:a meta-analysis. Clin Res Hepatol Gastroenterol 2015;39:718-724.
- 11)
- Hong MJ, Cheon YK, Lee EJ, Lee TY, Shim CS. Long-term outcome of photodynamic therapy with systemic chemotherapy compared to photodynamic therapy alone in patients with advanced hilar cholangiocarcinoma. Gut Liver 2014;8:318-323.
- 12)
- Park DH, Lee SS, Park SE, Lee JL, Choi JH, Choi HJ, et al. Randomised phase Ⅱ trial of photodynamic therapy plus oral fluoropyrimidine, S-1, versus photodynamic therapy alone for unresectable hilar cholangiocarcinoma. Eur J Cancer 2014;50:1259-1268.
- 13)
- Wentrup R, Winkelmann N, Mitroshkin A, Prager M, Voderholzer W, Schachschal G, et al. Photodynamic Therapy Plus Chemotherapy Compared with Photodynamic Therapy Alone in Hilar Nonresectable Cholangiocarcinoma. Gut Liver 2016;10:470-475.
- 14)
- Nanashima A, Isomoto H, Abo T, Nonaka T, Morisaki T, Arai J, et al. How to access photodynamic therapy for bile duct carcinoma. Ann Transl Med 2014;2:23.
- 15)
- Wagner A, Wiedmann M, Tannapfel A, Mayr C, Kiesslich T, Wolkersdörfer GW, et al. Neoadjuvant Down-Sizing of Hilar Cholangiocarcinoma with Photodynamic Therapy – Long-Term Outcome of a Phase Ⅱ Pilot Study. Int J Mol Sci 2015;16:26619-26628.
- 16)
- Wagner A, Denzer UW, Neureiter D, Kiesslich T, Puespoeck A, Rauws EA, et al. Temoporfin improves efficacy of photodynamic therapy in advanced biliary tract carcinoma:A multicenter prospective phase Ⅱ study. Hepatology 2015;62:1456-1465.
第IX章.病理
- CQ44
- 胆道における腫瘍類似病変はどのようなものか。[Background Question]
- レベルC
- 胆道における腫瘍類似病変には,(A)硬化性胆管炎,(B)黄色肉芽腫性胆囊炎,(C)胆囊腺筋腫症,(D)非腫瘍性胆囊ポリープなどがある。
解説
胆管の腫瘍類似病変として,硬化性胆管炎,胆囊の腫瘍類似病変として,黄色肉芽腫性胆囊炎・胆囊腺筋腫症・非腫瘍性胆囊ポリープがあり,十二指腸乳頭部癌の腫瘍類似病変として乳頭部炎,過形成がある。
1)胆管の腫瘍類似病変
a.硬化性胆管炎 sclerosing cholangitis
硬化性胆管炎は,肝外胆管,肝内胆管,またはその両者の胆管壁とその周囲に高度の線維化と慢性炎症がみられ,限局性ないしびまん性の胆管狭窄や閉塞,拡張をきたす病態であり,胆管癌(平坦型,結節型)との鑑別が重要である。原発性,IgG4 関連,それに原因が明らかな続発性(二次性)硬化性胆管炎に分類される。
原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis:PSC)は,原因不明の進行性疾患で,病初期は無症状の症例が多い1)。胆管の狭窄や拡張に伴い胆汁うっ滞,黄疸や胆管炎が出現し,肝線維化が進展し,肝硬変,肝機能不全へと進行する。我が国では20 歳代と50〜60 歳代に2 峰性のピークがみられ,若年発症例では潰瘍性大腸炎の合併率が高い(36%に合併)2)。進行例では,胆管癌を合併する例がある(3.6%に合併)3)。本疾患の病態に自己免疫の関与が示唆され,核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)などの自己抗体も検出される4,5)。
PSC の病理所見は,肝内外胆管の線維化と,胆管の狭小化・消失ならびに拡張を特徴とする。組織学的には,肝外胆管や肝門部胆管では,胆管壁の管腔縁に強い炎症性変化(リンパ球,形質細胞,好中球など)と胆管上皮のびらん・潰瘍があり,上皮の反応性過形成もみられる。肝内胆管では,胆管周囲の同心円状の線維化(玉葱状線維化)や胆管消失部では,その部分に円状線維瘢痕化(線維性芯)がみられる。(レベルC)
IgG4 関連硬化性胆管炎(IgG4-related sclerosing cholangitis:IgG4-SC)は,血中IgG4 値の上昇,病変局所の線維化とリンパ球,形質細胞の著しい浸潤などを特徴とする(表1,図1)6,7)。狭窄部位では全周性の胆管壁の肥厚を認め,狭窄を認めない部位にも同様の変化がみられることが多い。自己免疫性膵炎を極めて高率に合併し,硬化性唾液腺炎,後腹膜線維症などを合併する症例もある8)。高齢の男性に好発し,閉塞性黄疸で発症することが多い。ステロイド治療に奏効して臨床徴候,画像所見などの改善を認める。IgG4-SC は,比較的新しい疾患概念であるため,従来,PSC と診断されていた症例の中に,本疾患が含まれている可能性もある。
IgG4-SC の病理所見は,胆管壁に密なリンパ球・形質細胞浸潤,線維化,閉塞性静脈炎がみられる。免疫組織化学的には,多数のIgG4 陽性細胞の浸潤が確認される。胆管壁結合織に炎症の主座があり,上皮は正常であることが多い9)。胆管癌例でも,血中のIgG4 が高値を示し,また癌病変および周囲の胆管粘膜中にもIgG4 陽性形質細胞浸潤の目立つ症例があり,鑑別に注意する必要がある10)。また,炎症性変化と線維化が局所的に目立ち,腫瘤性の病変が目立つ例は,炎症性偽腫瘍(リンパ球形質細胞型)と診断される11)。腫瘤型,結節型の胆管癌に類似する。(レベルC)
2)胆囊の腫瘍類似病変
a.黄色肉芽腫性胆囊炎(xanthogranulomatous cholecystitis:XGC)
黄色肉芽腫性胆囊炎(XGC)は,胆石症患者の1〜2%にみられ,女性に多い。境界が不明瞭な黄色の結節性病変であり,肥厚した胆囊壁に連続し,腸管や肝などの周囲臓器に病変が波及する例があり,胆囊癌などの悪性腫瘍との鑑別が問題となる12)。組織学的には,泡沫細胞を主体に,単球,リンパ球,形質細胞,好中球などの炎症細胞浸潤に加えて,異物型巨細胞と肉芽組織の形成が混在する比較的限局した炎症巣よりなる(図2)。
Rokitansky-Aschoff 洞(RA 洞)内に貯留した胆汁成分が胆囊壁内に漏出し,これに対する異物反応により肉芽腫性炎症が形成される。胆囊胆汁や病変組織より大腸菌などが検出される12,13)。胆汁成分を貪食したマクロファージは泡沫細胞となり,異物型巨細胞の出現もみられ,肉芽組織が形成される。経過とともに,病巣周囲から線維化が進行する。二次感染があると病巣中心部に好中球浸潤が強い。陳旧化した病巣は漿膜下層に線維組織の増生がみられる。類似の病変は,胆管にも発生し,黄色肉芽腫性胆管炎と呼ばれる。(レベルC)
b.胆囊腺筋腫症 adenomyomatosis
胆囊腺筋腫症は腺筋過形成(adenomyomatous hyperplasia)とも呼ばれ,RA 洞と平滑筋(線維筋組織)の増生により,胆囊壁が限局性もしくはびまん性に肥厚を呈する病変である(図3)。漿膜下層にいたる胆囊壁が肥厚するために,隆起型ないしびまん浸潤型の胆囊癌との鑑別を要する例がある。病変の部位や広がりから,以下の3 型に分類される14,15)。(ⅰ)胆囊の底部を中心に限局した腫瘤を形成する底部型(限局型),(ⅱ)胆囊の頸部や体部に全周性の壁の肥厚をきたし,内腔が狭くなっている分節型(輪状型),(ⅲ)胆囊壁全体にRA 洞の増生が及びびまん性の肥厚を認める広範型(びまん型)。
組織学的に,胆囊腺筋腫症はRA 洞が固有筋層から漿膜下層にかけて増生・拡張し,それを取り囲むようにして平滑筋線維と膠原線維が増加する。RA 洞は胆囊固有上皮で覆われることが多いが,時として幽門腺化生などの化生性変化も伴う。組織学的にはRA 洞の被覆上皮は過形成を示し,異型は乏しいが,炎症や結石を合併すると,上皮細胞に反応性異型が生じ,平滑筋組織内へ浸潤様に侵入増生することがある。(胆囊癌の合併は,CQ1 を参照)
c.非腫瘍性胆囊ポリープ gallbladder polyps
“ポリープ”は限局性隆起性病変の総称であり,非腫瘍性病変のみならず腫瘍性病変(腺腫,癌など)も含まれる16〜20)(図4)。非腫瘍性ポリープとしては,コレステロールポリープ,過形成性ポリープ,肉芽組織ポリープ,炎症性ポリープ,線維性ポリープ,リンパ性ポリープがあげられる(図5)。ポリープの大きさ別の頻度では,胆囊ポリープの大部分は,最大径5 mm 以下の小隆起性病変で,その多くはコレステロールポリープか過形成性ポリープである。最大径10 mm 未満のポリープの大部分が良性病変である。一方,10 mm 以上の大型ポリープでは,その多くが悪性である。
- ①コレステロールポリープ cholesterol polyp
コレステロールポリープは,細い茎を有する桑実状の有茎性ないし亜有茎性ポリープで,黄色調を呈する。組織学的には,ポリープ表面は過形成を伴う胆囊固有上皮で覆われ,粘膜固有層には脂質を貪食したマクロファージ(泡沫細胞)が集簇している。
- ②過形成性ポリープ hyperplastic polyp
過形成性ポリープは,それを構成する上皮細胞により,固有上皮型と化生上皮型に分けられる。
- ・固有上皮型過形成性ポリープ hyperplastic polyp, proper epithelium type
肉眼所見では桑実状で有茎性ないし亜有茎性を呈する。組織学的には,ポリープは異型に乏しい胆囊固有上皮からなり,しばしばコレステローシスを伴いコレステロールポリープとの鑑別が必要である。
- ・化生上皮型過形成性ポリープ hyperplastic polyp, metaplastic epithelium type
一般に広基性で比較的平滑な表面を呈する肉眼所見である。組織学的には,ポリープは粘膜固有層内に増生した幽門腺型の化生腺管よりなる。
- ③肉芽組織ポリープ granulation tissue polyp
肉芽組織ポリープは,肉芽組織の増生で形成されたポリープである。肉眼的に,ポリープは壊死組織が付着した比較的粗造な表面で,胆汁成分を含む壊死物質により褐色調から暗緑色調を呈する。組織学的に,ポリープは壊死物質を伴う肉芽組織よりなる。
- ④良性リンパ性ポリープ benign lymphoid polyp
良性リンパ性ポリープは,粘膜内に形成されたリンパ濾胞の孤立性・集合性の過形成によりポリープが形成されたものである。組織学的には,粘膜固有層内に腫大した胚中心を有するリンパ濾胞の過形成が認められ,粘膜上皮で覆われている。
- ⑤線維性ポリープ fibrous polyp
線維性ポリープは,毛細血管を含む線維性結合組織(線維性間質)により構成されるポリープで,表面は1 層の上皮成分で覆われることが多い。
- ⑥炎症性ポリープ inflammatory polyp
炎症性ポリープは,胆囊炎に際して反応性に粘膜が隆起しポリープを形成してきたものと考えられる。組織学的には,毛細血管に富む浮腫状の疎性結合組織ないし線維性結合組織よりなり上皮成分で覆われていることもある。
- ⑦異所性組織 heterotopic tissue
稀ではあるが,胃粘膜組織や膵組織,肝組織などの異所性組織が,ポリープ様病変として認められることがある。
3)十二指腸乳頭部の腫瘍類似病変
乳頭部炎 papillitis,乳頭領域の腺筋腫性過形成adenomyomatous hyperplasia などがある。
乳頭部炎は十二指腸乳頭部(膨大部)の炎症であり,内視鏡的に発赤,十二指腸乳頭部が腫大,変形,びらん形成を伴うために,乳頭部腫瘍との鑑別が問題となる。十二指腸乳頭部の炎症に伴い,炎症による上皮の反応性過形成や,好酸性細胞質を有し腫大した細胞が出現する。
乳頭部領域の腺筋腫症はadenomyomatosis, adenomyoma とも呼ばれ,乳頭部壁内の腺組織(附属腺)の過形成であり,平滑筋組織の増生があり,狭窄をきたし,乳頭部癌などの悪性腫瘍との鑑別が必要である14,21)。右季肋部痛や黄疸などで発症する。最近,胆管系に附属腺組織が分布することが明らかとなり22),乳頭部にも密に分布し,種々の刺激で過形成を呈する。類似の病変が,総胆管末端部にも発生する。(レベルC)
引用文献
- 1)
- Krones E, Graziadei I, Trauner M, Fickert P. Evolving concepts in primary sclerosing cholangitis. Liver Int 2012;32:352-369.
- 2)
- Takikawa H, Manabe T. Primary sclerosing cholangitis in Japan–analysis of 192 cases. J Gastroenterol 1997;32:134-137.
- 3)
- Tanaka A, Takamori Y, Toda G, Ohnishi S, Takikawa H. Outcome and prognostic factors of 391 Japanese patients with primary sclerosing cholangitis. Liver Int 2008;28:983-989.
- 4)
- Terjung B, Worman HJ. Anti-neutrophil antibodies in primary sclerosing cholangitis. Best Pract Res Clin Gastroenterol 2001;15:629-642.
- 5)
- Zauli D, Schrumpf E, Crespi C, Cassani F, Fausa O, Aadland E. An autoantibody profile in primary sclerosing cholangitis. J Hepatol 1987;5:14-18.
- 6)
- Ohara H, Okazaki K, Tsubouchi H, Inui K, Kawa S, Kamisawa T, et al. Clinical diagnostic criteria of IgG4-related sclerosing cholangitis 2012. J Hepatobiliary Pancreat Sci 2012;19:536-542.
- 7)
- IgG4 関連硬化性胆管炎臨床診断基準作成ワーキンググループ.IgG4 関連硬化性胆管炎臨床診断基準2012.胆道
2012;26:59-63. - 8)
- Zen Y, Harada K, Sasaki M, Sato Y, Tsuneyama K, Haratake J, et al. IgG4-related sclerosing cholangitis with and without hepatic inflammatory pseudotumor, and sclerosing pancreatitis-associated sclerosing cholangitis:do they belong to a spectrum of sclerosing pancreatitis? Am J Surg Pathol 2004;28:1193-1203.
- 9)
- Nakanuma Y, Zen Y, Portmann BC. Diseases of the bile ducts. MacSween’s Pathology of the Liver(Eds. Burt A, Portmann B,Ferrell L)6th eds., Churchill Livingstone, 2011,pp.491-562.
- 10)
- Harada K, Shimoda S, Kimura Y, Sato Y, Ikeda H, Igarashi S, et al. Significance of immunoglobulin G4(IgG4)-positive cells in extrahepatic cholangiocarcinoma:molecular mechanism of IgG4 reaction in cancer tissue. Hepatology 2012;56:157-164.
- 11)
- Zen Y, Fujii T, Sato Y, Masuda S, Nakanuma Y. Pathological classification of hepatic inflammatory pseudotumor with respect to IgG4-related disease. Mod Pathol 2007;20:884-894.
- 12)
- Albores-Saavedra J, Angeles-Angeles A. Diseases of the gallbladder. MacSween’s Pathology of the Liver(Eds. Burt A, Portmann B,Ferrell L)6th eds., Churchill Livingstone, 2011, pp.563-597.
- 13)
- Sawada S, Harada K, Isse K, Sato Y, Sasaki M, Kaizaki Y, et al. Involvement of Escherichia coli in pathogenesis of xanthogranulomatous cholecystitis with scavenger receptor class A and CXCL16-CXCR6 interaction. Pathol Int 2007;57:652-663.
- 14)
- 萱原正都,中川原寿俊,北川裕久,太田哲生.胆管末端部のadenomyomatosis の診断と治療.胆道 2010;24:192-198.
- 15)
- Nishimura A, Shirai Y, Hatakeyama K. Segmental adenomyomatosis of the gallbladder predisposes to cholecystolithiasis. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2004;11:342-347.
- 16)
- 羽賀敏博,吉澤忠司,鬼島 宏.腫瘍様病変(ポリープを含む)および腺筋腫症.鬼島 宏,福嶋敬宜(編):腫瘍病理鑑別診断アトラス 胆道癌・膵癌.文光堂,2015.
- 17)
- 鬼島 宏:胆囊・胆管.向井 清,真鍋俊明,深山正久(編):外科病理学,第4 版.文光堂,東京,2006, pp. 665-698.
- 18)
- 吉澤忠司,鬼島 宏:腺腫.坂元亨宇,平岡伸介,尾島英知(編):癌診療指針のための病理診断プラクティス 肝・胆・膵腫瘍.中山書店,2014.
- 19)
- Bosman FT, Carneiro F, Hruban RH, Theise ND, eds:WHO Classification of Tumours of the Digestive System. Forth Edition. IARC Press, Lyon, 2010, pp. 263-278(Chapter 11, Tumours of the Gallbladder and Extrahepatic Bile Ducts).
- 20)
- Hamilton SR, Aaltonen LA, eds:Pathology and Genetics. Tumours of the Digestive System. World Health Organization Classification of Tumours. IARC Press, Lyon, 2000, pp. 203-217(Chapter 9, Tumours of the Gallbladder and Extrahepatic Bile Ducts).
- 21)
- Handra-Luca A, Terris B, Couvelard A, Bonte H, Flejou JF. Adenomyoma and adenomyomatous hyperplasia of the Vaterian system:clinical, pathological, and new immunohistochemical features of 13 cases. Mod Pathol 2003;16:530-536.
- 22)
- Carpino G, Cardinale V, Onori P, Franchitto A, Berloco PB, Rossi M, et al. Biliary tree stem/progenitor cells in glands of extrahepatic and intrahepatic bile ducts:an anatomical in situ study yielding evidence of maturational lineages. J Anat 2012;220:186-199.
- CQ45
- 胆道のIPNB,BilIN,dysplasia はどのようなものか?[Background Question]
- レベルC
- IPNB(intraductal papillary neoplasm of bile duct)は,肉眼的に病変が認識される胆管内乳頭状腫瘍である。
BilIN(biliary intraepithelial neoplasia)は,組織学的に病変が認識される胆道上皮内腫瘍である。
Dysplasia は,癌か非癌かの鑑別が難しい異型を有する上皮性病変である。
解説
近年,胆道癌(腺癌)との鑑別を要する非浸潤性腫瘍性病変(上皮性腫瘍)が発見されるようになり,IPNB, BilIN, dysplasia といった概念が提唱された。胆道癌は先行病変を伴わずに発症することがほとんどであり,かかる病変が良性腫瘍性病変・前癌病変・初期癌病変のいずれに相当するかが議論されている。
1)IPNB(intraductal papillary neoplasm of bile duct)
IPNB とは,肝外胆管ないし肝内の大型胆管に発生し,肉眼的に病変が認識される胆管内乳頭状腫瘍のことであり1〜5),胃型形質ないし腸型形質を呈する上皮が豊富な粘液産生をすることが多い6)(図1)。IPNB は組織学的異型に応じて,低異型度(low-grade),中間異型度(intermediate-grade),高異型度(high-grade:上皮内癌相当)に分類される7)。しかし,切除されたIPNB の大部分は癌(high-grade)であり,“IPNB は前癌病変である”という概念は疑問視されている。膵IPMN にはadenoma あるいはhyperplasia 相当の病変が多数存在しているので,“IPNB は膵IPMN のcounterpart である”という概念についても今後の検討が必要である。低悪性度病変とされているが,細胞周期蛋白の発現や遺伝子変異が報告されており,前癌病変としての意味付けが不明である1,8)。(レベルD)IPNB の病態や発癌機序に関しては十分な検討がなされておらず,また,IPNB といわゆるpapillary cholangiocarcinoma との違いは明確ではない。したがって,IPNB が真に独立した疾患概念として臨床的意義があるのかどうかは全く不明である5〜7)。(レベルC)
2010 年の現WHO 分類(表1)ではIPNB と同様の腫瘍が,胆囊に発生するとICPN(intracystic papillary neoplasm),十二指腸乳頭部に発生するとNPPN(non-invasive pancreaticobiliary papillary neoplasm)と称している9,10)。
2)BilIN(biliary intraepithelial neoplasia)
BilIN は,組織学的に病変が認識される胆道上皮内腫瘍のことである4,11〜13)。組織学的異型に応じてBilIN は,BilIN-1(低異型度, low-grade),BilIN-2(中間異型度, intermediate-grade),BilIN-3(高異型度,high-grade:上皮内癌相当)に分類される(図2)。分子生物学的にも細胞周期蛋白(cyclin D1,p21 など)の発現や遺伝子異常(TP53, CDKN2A など)が軽度異形成上皮から高度異型性上皮になるにつれて強くなることが報告されている14〜17)。(レベルD)また,肝内胆管癌と関連することが報告されているB/C 型肝炎,あるいはアルコール性の肝硬変においてもBilIN の併存率は11%と報告されている18,19)。(レベルD)BilIN は,しばしば肝内結石症や原発性硬化性胆管炎といった慢性胆道疾患を基礎疾患として発生した胆管癌周囲に高頻度に認められる20)。前癌病変とする報告もあるが,見解は一致していない。(レベルC)
3)Dysplasia
胆道の上皮性病変には,しばしば上皮内癌か非癌かの鑑別を有する異型病変が観察される。かかる病変をどのように病理診断するかは実臨床における大きな問題であるが,現時点では便宜上dysplasia(異形成)と診断されている(図3)。Dysplasia に関しては以下のような報告があるが,組織学的にその定義が不明瞭であるため一定の見解は得られていない。なお,2000 年の旧WHO 分類では,dysplasia は良性腫瘍として記載されていたが,2010 年の現WHO 分類では削除されている9,21〜23)。
胆囊癌の浸潤周囲粘膜には,上皮内癌とともにdysplasia や化生性上皮(幽門腺化生,腸上皮化生),過形成性上皮が33.4〜81.6%の頻度で認められると報告されている24,25)。(レベルC)中でもdysplasia は,胆石症・慢性胆囊炎で切除された胆囊内には0.4〜33.8%の頻度で観察されており,前癌病変であることが示唆される25〜27)。(レベルD)分子生物学的にも癌病巣で認められる細胞増殖活性の増加,癌遺伝子(主にK-ras)や癌抑制遺伝子(p53, p16 など)の異常, loss of heterozygosity,microsatellite instability などがdysplasia にも認められる28〜36)。(レベルD)また,dysplasia と化生性上皮,特に腸上皮化生との関連性も指摘され,分子生物学的な検討からも化生上皮 → dysplasia → 上皮内癌というsequence が考えられている26,37〜39)。(レベルC)胆囊癌のリスクファクターである原発性硬化性胆管炎では,37%の胆囊にdysplasia が認められ,胆囊癌との関連が報告されている40)。(レベルD)
引用文献
- 1)
- Nakanishi Y, Zen Y, Kondo S, Itoh T, Itatsu K, Nakanuma Y. Expression of cell cycle-related molecules in biliary premalignant lesions:biliary intraepithelial neoplasia and biliary intraductal papillary neoplasm. Hum Pathol 2008;39:1153-1161.
- 2)
- Itatsu K, Zen Y, Ohira S, Ishikawa A, Sato Y, Harada K, et al. Immunohistochemical analysis of the progression of flat and papillary preneoplastic lesions in intrahepatic cholangiocarcinogenesis in hepatolithiasis. Liver Int 2007;27:1174-1184.
- 3)
- Nakanuma Y, Kakuda Y, Uesaka K, Miyata T, Yamamoto Y, Fukumura Y, et al. Characterization of intraductal papillary neoplasm of bile duct with respect to histopathologic similarities to pancreatic intraductal papillary mucinous neoplasm. Hum Pathol 2016;51:103-113.
- 4)
- 福村由紀,大池信之,中沼安二,八尾隆史.胆道癌の前癌病変(IPNB, BilIN, ICPN を含む).鬼島 宏,福嶋敬宜(編):腫瘍病理鑑別診断アトラス「胆道癌・膵癌」.文光堂, 2015;pp 66-75.
- 5)
- Tsukahara T, Shimoyama Y, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, et al. Cholangiocarcinoma with intraductal tubular growth pattern versus intraductal papillary growth pattern. Mod Pathol 2016;29:293-301.
- 6)
- Onoe S, Shimoyama Y, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, et al. Clinicopathological significance of mucin production in patients with papillary cholangiocarcinoma. World J Surg 2015;39:1177-1184.
- 7)
- Onoe S, Shimoyama Y, Ebata T, Yokoyama Y, Igami T, Sugawara G, et al. Prognostic delineation of papillary cholangiocarcinoma based on the invasive proportion:a single-institution study with 184 patients. Surgery 2014;155:280-291.
- 8)
- Tsai JH, Liau JY, Yuan CT, Cheng ML, Yuan RH, Jeng YM. RNF43 mutation frequently occurs with GNAS mutation and mucin hypersecretion in intraductal papillary neoplasms of the bile duct. Histopathology 2017;70:756-765.
- 9)
- Bosman FT, Carneiro F, Hruban RH, Theise ND. WHO Classification of Tumours of the Digestive System. Lyon:International Agency for Research on Cancer, 2010.
- 10)
- Adsay V, Jang KT, Roa JC, Dursun N, Ohike N, Bagci P, et al. Intracholecystic papillary-tubular neoplasms(ICPN)of the gallbladder(neoplastic polyps, adenomas, and papillary neoplasms that are ≥ 1.0 cm):clinicopathologic and immunohistochemical analysis of 123 cases. Am J Surg Pathol 2012;36:1279-1301.
- 11)
- Zen Y, Sasaki M, Fujii T, Chen TC, Chen MF, Yeh TS, et al. Different expression patterns of mucin core proteins and cytokeratins during intrahepatic cholangiocarcinogenesis from biliary intraepithelial neoplasia and intraductal papillary neoplasm of the bile duct:an immunohistochemical study of 110 cases of hepatolithiasis. J Hepatol 2006;44:350-358.
- 12)
- Sato Y, Harada K, Sasaki M, Nakanuma Y. Histological characterization of biliary intraepithelial neoplasia with respect to pancreatic intraepithelial neoplasia. Int J Hepatol 2014;2014:678260.
- 13)
- Matthaei H, Lingohr P, Strässer A, Dietrich D, Rostamzadeh B, Glees S, et al. Biliary intraepithelial neoplasia(BilIN)is frequently found in surgical margins of biliary tract cancer resection specimens but has no clinical implications. Virchows Arch 2015;466:133-141.
- 14)
- Lewis JT, Talwalkar JA, Rosen CB, Smyrk TC, Abraham SC. Precancerous bile duct pathology in end-stage primary sclerosing cholangitis, with and without cholangiocarcinoma. Am J Surg Pathol 2010;34:27-34.
- 15)
- Rougemont AL, Genevay M, McKee TA, Gremaud M, Mentha G, Rubbia-Brandt L. Extensive biliary intraepithelial neoplasia(BilIN)and multifocal early intrahepatic cholangiocarcinoma in non-biliary cirrhosis. Virchows Arch 2010;456:711-717.
- 16)
- Torbenson M, Yeh MM, Abraham SC. Bile duct dysplasia in the setting of chronic hepatitis C and alcohol cirrhosis. Am J Surg Pathol 2007;31:1410-1413.
- 17)
- Hsu M, Sasaki M, Igarashi S, Sato Y, Nakanuma Y. KRAS and GNAS mutations and p53 overexpression in biliary intraepithelial neoplasia and intrahepatic cholangiocarcinomas. Cancer 2013;119:1669-1674.
- 18)
- Aishima S, Iguchi T, Fujita N, Taketomi A, Maehara Y, Tsuneyoshi M, et al. Histological and immunohistological findings in biliary intraepithelial neoplasia arising from a background of chronic biliary disease compared with liver cirrhosis of non-biliary aetiology. Histopathology 2011;59:867-875.
- 19)
- Devaney K, Goodman ZD, Ishak KG. Hepatobiliary cystadenoma and cystadenocarcinoma:a light microscopic and immunohistochemical study of 70 patients. Am J Surg Pathol 1994;18:1078-1091.
- 20)
- Sato Y, Sasaki M, Harada K, Aishima S, Fukusato T, Ojima H, et al. Pathological diagnosis of flat epithelial lesions of the biliary tract with emphasis on biliary intraepithelial neoplasia. J Gastroenterol 2014;49:64-72.
- 21)
- Hamilton SR, Aaltonen LA, eds:Pathology and Genetics. Tumours of the Digestive System. World Health Organization Classification of Tumours. IARC Press, Lyon, 2000, pp. 203-217(Chapter 9, Tumours of the Gallbladder and Extrahepatic Bile Ducts).
- 22)
- 鬼島 宏,羽賀敏博,高綱将史,太田理恵,袴田健一,福田眞作.胆囊癌の前癌病変.日消誌 2015;112:437-443.
- 23)
- Jang KT, Ahn S. Tumoral versus flat intraepithelial neoplasia of pancreatobiliary tract, gallbladder, and ampulla of Vater. Arch Pathol Lab Med 2016;140:429-436.
- 24)
- Roa I, de Aretxabala X, Araya JC, Roa J. Preneoplastic lesions in gallbladder cancer. J Surg Oncol 2006;93:615-623.
- 25)
- Stancu M, Căruntu ID, Giuşcă S, Dobrescu G. Hyperplasia, metaplasia, dysplasia and neoplasia lesions in chronic cholecystitis – a morphologic study. Rom J Morphol Embryol 2007;48:335-342.
- 26)
- Duarte I, Llanos O, Domke H, Harz C, Valdivieso V. Metaplasia and precursor lesions of gallbladder carcinoma:frequency, distribution, and probability of detection in routine histologic samples. Cancer 1993;72:1878-1884.
- 27)
- Laitio M. Histogenesis of epithelial neoplasms of human gallbladder I. Dysplasia. Pathol Res Pract 1983;178:51-56.
- 28)
- Stancu M, Căruntu ID, Sajin M, Giuşcă S, Bădescu A, Dobrescu G. Immunohistochemical markers in the study of gallbladder premalignant lesions and cancer. Rev Med Chir Soc Med Nat Iasi 2007;111:734-743.
- 29)
- Kim SW, Her KH, Jang JY, Kim WH, Kim YT, Park YH. K-ras oncogene mutation in cancer and precancerous lesions of the gallbladder. J Surg Oncol 2000;75:246-251.
- 30)
- Choi HJ, Yun SS, Kim HJ, Choi JH. Expression of p16 protein in gallbladder carcinoma and its precancerous conditions. Hepatogastroenterology 2010;57:18-21.
- 31)
- Lynch BC, Lathrop SL, Ye D, Ma TY, Cerilli LA. Expression of the p16(INK4a)gene product in premalignant and malignant epithelial lesions of the gallbladder. Ann Diagn Pathol 2008;12:161-164.
- 32)
- Legan M, Luzar B, Marolt VF, Cor A. Expression of cyclooxygenase-2 is associated with p53 accumulation in premalignant and malignant gallbladder lesions. World J Gastroenterol 2006;12:3425-3429.
- 33)
- Wistuba II, Gazdar AF, Roa I, Albores-Saavedra J. p53 protein overexpression in gallbladder carcinoma and its precursor lesions:an immunohistochemical study. Hum Pathol 1996;27:360-365.
- 34)
- Wee A, Teh M, Raju GC. Clinical importance of p53 protein in gallbladder carcinoma and its precursor lesions. J Clin Pathol 1994;47:453-456.
- 35)
- Moreno M, Pimentel F, Gazdar AF, Wistuba II, Miquel JF. TP53 abnormalities are frequent and early events in the sequential pathogenesis of gallbladder carcinoma. Ann Hepatol 2005;4:192-199.
- 36)
- Kim YT, Kim J, Jang YH, Lee WJ, Ryu JK, Park YK, et al. Genetic alterations in gallbladder adenoma, dysplasia and carcinoma. Cancer Lett 2001;169:59-68.
- 37)
- Inada A, Konishi F, Yamamichi N, Ito H. Histogenesis of gallbladder cancer with special reference to metaplastic changes and distribution of various mucins and CEA. Nihon Geka Gakkai Zasshi 1989;90:894-906.
- 38)
- Yamagiwa H, Tomiyama H. Intestinal metaplasia-dysplasia-carcinoma sequence of the gallbladder. Acta Pathol Jpn 1986;36:989-997.
- 39)
- García P, Manterola C, Araya JC, Villaseca M, Guzmán P, Sanhueza A, et al. Promoter methylation profile in preneoplastic and neoplastic gallbladder lesions. Mol Carcinog 2009;48:79-89.
- 40)
- Lewis JT, Talwalkar JA, Rosen CB, Smyrk TC, Abraham SC. Prevalence and risk factors for gallbladder neoplasia in patients with primary sclerosing cholangitis:evidence for a metaplasia-dysplasia-carcinoma sequence. Am J Surg Pathol 2007;31:907-913.