Ⅰ.疫学・病理
- 総論
疫学
1.はじめに
わが国の人口動態を基準とした膀胱癌の年齢調整罹患率(全国推計値。基準人口は1985 年のモデル人口)は,2013 年において6.6(/10 万人/ 年)であり,男女別にみると男性11.5,女性2.6 と男性において約4 倍頻度が高い1,2)。年齢調整死亡率は,2016 年の集計にて,男女合計で2.1(/10 万人/ 年)で,男女別にみると男性3.7,女性1.0 である。
過去15 年間の推移を粗率でみると罹患率は約1.4 倍,死亡率は2.2 倍に増加しているが,年齢調整罹患率および年齢調整死亡率はほとんど不変であることから,罹患数・死亡数の増加は人口全体の高齢化によるものと考えられる。罹患時の年齢分布としては,95%超が45 歳以上,80%が65 歳以上と高年齢層に発症する。
国際的視点に立って世界人口を基準としたわが国の年齢調整罹患率・死亡率を見てみると,2012 年の罹患率は男女合計で4.9,男性7.7,女性1.8(いずれも/10 万人/ 年)となっている3,4)。アジア諸国では1.5〜6.6 の範囲で比較的大きなばらつきがあるが,中国・台湾・韓国といった東アジア地域ではおおむね5〜6 となっている。米国では男女合計で11.6 であり,アジア諸国に比べて約2 倍頻度が高い。
死亡率は男女合計で1.4,男性2.4,女性0.7(いずれも/10 万人/ 年)となっており,アジア諸国の0.7〜2.6 の範囲の中間に位置する。死亡率/ 罹患率でみると,アジア諸国の多くが0.3 を超える中,わが国は0.25 程度と比較的低値を示している。
2.人種差・地域差
本ガイドラインで採用されているエビデンスの中には,わが国のデータに基づくものではなく欧米からのデータを基にしたものも多い。それらを正しく解釈し日本人患者を対象としたCQ に答えを与えるためには,膀胱癌の人種差・地域差に関する理解が前提になると考え,本項で採り上げることとした。
(1)人口統計
北米・欧州・西アジアの罹患率は日本に比べ2〜3 倍頻度が高く(男性15〜20,女性3〜4,いずれも/10 万人/ 年で世界人口を基準とした2012 年の年齢調整率),中南米・アフリカ・東南アジアではわが国よりもやや低い傾向(男性2.1〜3.6,女性0.7〜1.4,以下同上)にある4,5)。同様に死亡率も北米・欧州・西アジアで高い傾向(男性4.0〜8.4,女性3.3〜6.5,以下同上)にある。これらの地域差は一般的に男性においてより顕著で,女性ではその差は小さい。米国内においてはヨーロッパ系人種男性(22.8)における罹患率はアフリカ系人種男性(11.7)のそれに比べて約2 倍高頻度で,死亡率もヨーロッパ系人種男性の方が高い(3.9 対2.8)。しかしこの傾向は女性では認められない。
(2)がん登録データ(レジストリーデータ)
米国において1975 年から2005 年に膀胱癌と診断されSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースに登録された患者(ヨーロッパ系人種163,973 人,アフリカ系人種7,731 人,ヒスパニック系7,364 人,アジア・太平洋系5,934 人)のデータを基にした解析では,進行した病期で発見される確率がアフリカ系人種(31%)において有意に高く,ヨーロッパ系人種(21%)・ヒスパニック系(24%)アジア・太平洋系(23%)の間には有意差は認められなかった。さらに診断時病期を含めた多変量Cox 比例ハザード解析においてアフリカ系人種の生存率におけるハザード比(hazard ratio:HR)は1.29(95%信頼区間[confidence interval:CI]:1.24〜1.36,対ヨーロッパ系人種)と有意に不良であった。ヒスパニック系(1.03:0.97〜1.10),アジア・太平洋系(0.95:0.89〜1.02)では有意差を認めなかった6)。しかしSEER データベースを用いた別の報告7)では同じアジア・太平洋系の中でも生存率が異なる(日本・中国系はフィリピン・ハワイ系に比べて良好)ことも報告されている。
以上をまとめると膀胱癌の罹患率・死亡率に関しては,日本人は他の東アジア系人種と同様で,ヨーロッパ系人種・アフリカ系人種と比べると低い。診断後の予後はヨーロッパ系人種とほぼ同等で,アフリカ系人種に比べて良好であると考えられる。
3.リスクファクター(環境因子・その他)
喫煙は膀胱癌の最大の危険因子であり,50%までの膀胱癌の原因と推測される8)。メタアナリシスから喫煙者は非喫煙者と比較して2.58 倍の罹患リスクであり,特に現在喫煙している場合は3.47 倍で,以前喫煙していた場合の2.04 倍より高い9)。日本人を対象としたシステマティックレビューからも喫煙者は非喫煙者と比較して2.14 倍の罹患リスクとなる10)。さらに喫煙者は非喫煙者より約6 年早く膀胱癌が発症することが示された11)。1 日の喫煙本数や喫煙年数が増加するほど膀胱癌の罹患リスクは上昇するが,禁煙は罹患リスクを低下させ,10 年間以上の禁煙は罹患リスクを2 倍以下までに低下させる12,13)。喫煙によってnitrosoamine やbiphenyl,arylamine などの発癌物質に尿路上皮が暴露されることが膀胱癌発症の原因であり,NAT2 やGSTM1 などの遺伝子多型による発癌物質の解毒機能やDNA 損傷に対する修復機能の違いが罹患率に関与する8,14)。
職業性発癌物質への暴露も重要な危険因子であり,5〜10%の膀胱癌の原因と推測される8, 15)。メタアナリシスからaromatic amine やpolycyclic aromatic hydrocarbon に暴露される仕事の従事者は1.7 倍までの膀胱癌罹患リスクとなる16)。2012 年に国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC) は新たにortho-toluidine とchloroaniline(MOCA) を発癌物質と認定し, 本邦でもortho-toluidine の暴露に伴う膀胱癌が報告されている17)。職場を含む社会環境の整備により発癌物質への暴露を軽減することで罹患率の低下が期待される。
膀胱癌の発症に影響しうる要因として尿路の慢性炎症があり,ビルハルツ住血吸虫症は中東およびアフリカの広範な地域において扁平上皮癌の原因となっている18)。またヒトパピローマウイルス感染はメタアナリシスからは2.84 倍の膀胱癌罹患リスクとなることが示された19)。その他には,長期間の尿道カテーテル留置20)やシクロフォスファミドの使用21),骨盤内放射線治療による膀胱への被曝22)も膀胱癌の発症要因となりうるので注意が必要である。
4.リスクファクター(遺伝学的因子)
膀胱癌の一度近親者(親子兄弟)での罹患リスクは約1.7 倍であり23〜25),スウェーデンの研究では,尿路上皮癌患者の7%に膀胱癌の家族歴が認められた24)。家族性の膀胱癌は,共通した環境因子の可能性も考えられるが,膀胱癌の発症に関与する遺伝学的因子も明らかになりつつある。次世代シークエンス,Genome–wide association studies(GWAS),メタアナリシスなどから同定された膀胱癌の発症に関与する遺伝子(遺伝子座)としては,他癌腫でも多く認められるMYC(8q24.21)やTERT(5p15.33)に加えて, 化学発癌物質の代謝に関与するGSTM1(1p13.3),NAT2(8p22),CYP1A2(15q24),UGT1A(2q37.1) やDNA 修復に関与するXRCC1,ERCC2,XPC,細胞周期に関与するCCNE1(19q12),遺伝子変異を引き起こすAPOBEC3A(22q13.1),他にもTERC(3q26.2),TP63(3q28),FGFR3(4p16.3),PSCA(8q24.3),LSP1(11p15.5),SLC14A1(18q12.3),MCF2L(13q34)などが主に遺伝子多型で報告されている25〜31)。またGWAS を用いたパスウェイ解析からも前述の遺伝子異常による細胞周期や増殖シグナルの異常が膀胱癌の発症に関与することが示されている28)。
リンチ症候群は,DNA 複製時のミスマッチ修復異常によって癌の易罹患性に関与する常染色体優性(顕性)の遺伝性疾患であり,ミスマッチ修復関連遺伝子(MLH1,MSH2,MSH6,PMS2)の異常が原因となる。大腸癌や子宮内膜癌の頻度が高く,腎盂尿管癌はリンチ症候群関連癌として知られるが,膀胱癌との関連も示唆されている。カナダやデンマークのリンチ症候群患者の研究では,特にMSH2 に遺伝子変異を認める場合に膀胱癌罹患リスクが高く,若年で膀胱癌が発症する傾向が認められた32〜34)。膀胱癌でのリンチ症候群の頻度は約1%であるが,既往歴や家族歴,発症年齢からのスクリーニングが重要となる35)。
病理
膀胱癌のほとんどは尿路上皮癌であり,非尿路上皮癌としては扁平上皮癌,腺癌,小細胞癌等があげられる36)。2016 年度版WHO 分類に準じて,尿路上皮癌は非浸潤性乳頭型尿路上皮癌,尿路上皮内癌,浸潤性尿路上皮癌の3 つに大別される36,37)。非浸潤性乳頭型尿路上皮癌は腫瘍細胞が血管結合織を伴って乳頭状に増殖する病態である。腫瘍の構造および細胞異型の程度により,低異型度と高異型度の2 つに大別される。低悪性度乳頭型尿路上皮癌は,本邦では低異型度に包括される37)。欧州では1973 年度版WHO 分類に基づく3 段階評価方法(G1,G2,G3)も用いられており38),本邦でも併記することが望まれている37)。1973 年度と2016 年度版WHO 分類の相関性であるが,G1 はすべて低異型度に,G2 は低異型度もしくは高異型度に,G3 はすべて高異型度に分類される37,39)。尿路上皮内癌は明らかに悪性と診断できる腫瘍細胞が平坦状に増殖する病態である。乳頭状と平坦状の鑑別は膀胱鏡所見が最重要視される。浸潤性尿路上皮癌は間質への浸潤を認める病変であり,筋層非浸潤癌の一部も該当する(pT1 病変がこれに相当する)。平坦状尿路上皮内癌および浸潤性尿路上皮癌はほぼすべて高異型度に分類される。3 段階評価法での明確な取り決めはない。低異型度の約半数は再発するが病期の進展はほとんど生じない(< 5%)。それに対し,高異型度,尿路上皮内癌およびpT1 相当の浸潤性尿路上皮内癌は半数以上が再発し,15〜20%の症例においてさらに病期が進展すると報告されている40)。
臨床的には,尿路上皮癌は固有筋層に腫瘍が浸潤していない筋層非浸潤癌と浸潤する筋層浸潤癌に大別される。初発時に診断される尿路上皮癌の約75%は筋層非浸潤癌で,25%が筋層浸潤癌である39)。腫瘍の固有筋層浸潤の有無は経尿道的膀胱腫瘍切除術(trans urethral resection of bladder tumor:TURBT)もしくは膀胱全摘除術標本により判定される。腫瘍筋層浸潤の有無の鑑別は重要であり,TURBT 標本において固有筋層採取の有無の記載は必須である37, 41)。
尿路上皮癌には様々な特殊型がある。主な特殊型として,扁平上皮・腺上皮・栄養膜細胞への分化を伴う,胞巣型,微小乳頭型,リンパ上皮腫瘍型,形質細胞様型,肉腫様型などがあげられる36,37)。そのほとんどは浸潤癌,特に病期が進行した状態でみられる傾向が強く,手術標本全体の30%に達する42)。特殊型と予後に関する関係には議論があるが,一部の特殊型では予後および治療にも影響を与える可能性が指摘されており,その存在を明記することが望まれる39,43,44)。
近年,尿路上皮癌の分子生物学的分類が提唱され,予後および治療予測に大きな影響を及ぼす可能性が指摘されている30,39,45)。しかしながら,現時点では検索方法が高価である点,分類法が統一されていない点,十分な症例数が検証されていない点などから,特定の表現型を限定することは困難な状況である。分子生物学的分類の有用性については,現時点では今後の発展および推移に注目する必要がある。
尿路上皮癌以外の膀胱癌としては扁平上皮癌,腺癌,小細胞癌等があげられる36,37,46)。尿路上皮癌成分を含まない場合のみ扁平上皮癌および腺癌と診断される。扁平上皮癌は尿路上皮の扁平上皮化生を背景に発生すると考えられている。国外症例ではビルハルツ住血吸虫の合併を高率に認める。腺癌は尿膜管から発生する病変とそれ以外とに分類される。いずれの場合も,大腸癌に類似した組織像を呈することが多く,診断および治療時には大腸癌との鑑別が必須である。小細胞癌は非常に予後不良な組織型で,肺の同名の病態と同様の病理像を呈する。小細胞癌のほとんどはすでに存在する尿路上皮癌等から発生すると考えられており,その多くは尿路上皮癌の経過中に生じる。小細胞癌の診断は予後に与える影響が強いことから,腫瘍の背景および成分量の多寡にかかわらず,その存在を明記することが必須である36,37,41)。
なお病理学的病期,尿細胞診については,Ⅱ.診断・総論を参照されたい。
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Ⅱ.診断
- 総論
1.初期診断
膀胱癌の初期診断では症状が重要である。膀胱癌の発見の契機となる主な症状としては,血尿(肉眼的血尿,顕微鏡的血尿)と膀胱刺激症状(頻尿,排尿時痛,残尿感等)である。特に肉眼的血尿は高頻度にみられる症状であり,膀胱癌患者(40 歳以上)の64%に認められたと報告されている1,2)。また肉眼的血尿での膀胱癌の陽性診断的中率は15 歳以上の女性が3.4%であるのに対し,70 歳以上の高度喫煙者では12.5%に上昇すると報告されている1)。一方,顕微鏡的血尿は膀胱癌患者の6.4%にみられている1)。また血尿の患者が3 年以内に尿路上皮癌に罹患する確率は男性が7.4%,女性が3.4%と報告され3),膀胱癌の検出率は肉眼的血尿で17%,顕微鏡的血尿では4%と報告されている4)。
膀胱癌の早期診断には,無症状の段階で一般検診を行うことが想定されるが,罹患率が高くないこと,検診方法が確立していないこと,偽陽性により不必要な検査の可能性があること,検診で予後を改善するというエビデンスが得られていないことからまだ推奨されるに至っていない5,6)。一方で,ハイリスクの患者,すなわち喫煙歴のある高齢者や職業上発癌物質に暴露された既往のある人等については年1 回の検尿や尿細胞診の検査が推奨されている7)。
腫瘍マーカーとしては,これまで尿検査による2 種類の尿中腫瘍マーカー(NMP22,BTA テスト)が保険適応となっており,診断の補助として用いられている。これらの感度と特異度はNMP22 が58〜69%,77〜88%,BTA が64〜65%,74〜77%と報告されている8)。また2019 年1 月より膀胱癌既往患者の尿中細胞の3 番,7 番および17 番染色体の異数倍数体,ならびに9p21 遺伝子座の欠失を検出するDNA FISH 検査(ウロビジョンⓇ)も再発の診断補助として保険承認された。ウロビジョンⓇの感度は69〜87%,特異度は89〜96%と報告されている9,10)。その他の分子マーカーについては,尿中,血液中のマイクロRNA やcell-free DNA の変異解析等の報告があるがまだ実用化されていない10)。
尿細胞診は膀胱癌の診断および治療後の監視に用いられる。尿路上皮癌において,尿細胞診の特異度は非常に高いが感度は低い。特に生命予後の良好な低異型度尿路上皮癌に対する感度は非常に低い。このことから,2016 年に発表された国際標準の尿細胞報告様式であるパリシステムでは,生命予後に関係する高異型度尿路上皮癌の検出を中心にした診断基準を設定している11)。パリシステムによる診断の対象は中リスク以上の非筋層浸潤性膀胱癌が対象であり,その主眼は膀胱鏡を行うべきかどうかの判断根拠を提示することである。上述のウロビジョンⓇは尿細胞診の診断補助として,本邦では膀胱上皮内癌(carcinoma in situ:CIS)患者の再発が疑われる症例に対してのみ使用が可能である。尿細胞診と比較して,ウロビジョンⓇは感度が向上するも特異度が低下することが報告されており,診断時には尿細胞診の併用が必要である12)。
膀胱鏡検査は膀胱癌の診断と治療方針決定に必須であるが通常の白色光源による膀胱内観察で微小病変や平坦病変が10〜30%見逃されていると推測される。これらの病変をより的確に把握できる腫瘍可視化技術として蛍光膀胱鏡を用いた光力学診断(photodynamic diagnosis:PDD)や狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)がある。PDD では,光感受性物質である5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid:5-ALA)やヘキシルアミノレブリン酸(hexylaminolevulinic acid:HAL)を投与後,蛍光膀胱鏡で観察すると腫瘍細胞が赤色蛍光発光を示す。PDD により白色光源では視認困難であった微小病変や平坦病変の検出が可能となりPDD による追加腫瘍発見率は10〜30%であり13,14),特にCIS 検出率については著明な改善を認める14)。これまで実施された多くのランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)やメタアナリシスにより,PDD によって検出感度は93%で,CIS 検出率は38.3%改善すると報告されている13,14)。しかし特異度の改善は認められず65%にとどまる13〜15)。この原因としては,慢性炎症等による影響や接線効果による偽陽性所見が指摘されている。一方,NBI は,光の波長を青色(415nm)と緑色(540nm)の2 つのバンドに狭帯域化することで,おのおのの光の伝播深度の違いを利用して血管と組織のコントラストを強調させて微細な構造を増強させるイメージング技術である。多数のランダム比較試験を集計したメタアナリシスにより,検出感度94.3%,追加腫瘍発見率18.6%と白色光源に比べ改善すると報告されている16,17)。
2019 年のEAU ガイドラインにおいて,乳頭状病変を認めない尿細胞診陽性例や高リスク非乳頭状病変例では可能ならPDD を用いた生検が強く推奨されている。一方,NBI を用いた膀胱生検は弱い推奨となっている18)。本邦での使用においては,PDD は“経尿道的膀胱腫瘍切除時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化”,NBI は“上皮内癌の患者に対し,治療方針の決定を目的に実施する”と保険上規定されている。
一方,超音波検査は外来で膀胱内の隆起性病変を描出できる簡便な手法として用いられる。しかし,その診断精度には限界があり,腫瘍径が5mm 以下や恥骨干渉を受ける膀胱前壁下部の腫瘍,さらにCIS のような平坦な腫瘍の診断は困難である。近年,3 次元超音波検査や微小気泡造影剤を用いた超音波検査も試行されているが,T stage 診断は困難である19)。
2.病期診断
膀胱癌の診断が確定すると,治療方針決定のために病期診断を決定する必要がある。これには原発巣の膀胱壁内深達度の評価,リンパ節転移の有無の評価,遠隔転移の有無の評価が必要である。病期分類としては,UICC/AJCC の TNM 分類が用いられるが,これまで2009 年版TNM 分類(第7 版)が使用されてきたが20),2016 年にTNM 分類(第8 版),2018 年にアップデート版へ改訂が行われた(表1)21)。主な変更点は,StageⅢおよびⅣがⅢA,ⅢB,ⅣA,ⅣB のように細分類されたことである。すなわち,従来のT3-4aN0M0 とT1-4aN1M0 がⅢA となり,T1-4aN2-3M0 がⅢB となった。また,M 分類に関して,M0 とM1a(領域外の遠隔リンパ節転移)がⅣA に,M1b(他臓器転移)がⅣB に新たに細分類された。
従来,CT やMRI を中心にT stage 診断が行われてきた。CT の正診率は肉眼的な膀胱壁外浸潤でMRI と同等とされる。しかし,筋層と腫瘍を明瞭に区別できないので筋層内浸潤に関してはCT による鑑別は困難である。CT はその撮像範囲の広さから,主にリンパ節転移,遠隔転移の診断に用いられる。近年,膀胱癌の筋層浸潤のリスクを評価する目的で,multiparametric MRI を用いて膀胱癌の大きさ,局在,腫瘍数,形態をもとに,読影方式や報告書の統一化が提唱された22)。すなわちVesical Imaging-Reporting And Data System(VI-RADS) である。VI-RADS は,T2 強調画像においてfirst pass 画像,拡散強調画像,dynamic contrast enhanced(DCE)画像の3 種類の画像をもとに筋層浸潤のリスクを5 段階評価によりスコア化するものである。この評価法の導入により,特に膀胱筋層非浸潤癌の治療方針決定に有益な情報が提供されることが期待される。
PET は小病変でも代謝亢進組織があると検出できることから,CT では捉えきれない癌組織の検出に有用と考えられた。しかし膀胱においては,尿中に18F-FDG が排泄されるため,膀胱癌のT stage 診断には不向きとされている。そこで18F-FDG 以外のtracer として,尿中に排泄されない11C-choline や11C-methionine が検討されたがCT と比較して優位性を示すに至っていない19)。Goodfellow らは233 名の膀胱癌患者でFDG-PET による癌検出をCT と比較したところ,骨盤外病変の検出率(感度)および特異度は,それぞれPET が54%と97%,CT が41%と98%であり,ややPET が優れていたが,CT で検出できなかった病変をPET が診断できたのは3%のみでPET の費用を考えると膀胱癌の診断には単独使用は推奨されないと報告している23)。ただし,PET とCT を組み合わせるとリンパ節転移検出率は,CT 単独が45%であったのに対し69%に上昇することから,一部の選択された患者においてのPET-CTの利用は推奨できると報告している。
上述のように画像診断の進歩は著しいが,最終的な病期診断のためには,TURBT による腫瘍切除による壁内深達度の検討が必須であり筋層を含めた腫瘍切除が必要である。仮に筋層が含まれていない場合は病期診断の過小評価の危険性のみならず残存腫瘍,早期再発のリスクが高まることが報告されている24)。初回のTURBT でT1 腫瘍が認められた場合や筋層が含まれていない場合は2nd TUR が必要となる18)。また,CIS を合併する場合はランダム生検が必要となる。2nd TUR の内容はⅢ.筋層非浸潤性膀胱癌の治療・総論と重複するのでそちらを参照されたい。
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- CQ1
- 膀胱癌の診断に腫瘍可視化技術(photodynamic diagnosis:PDD,narrow band imaging:NBI)は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 膀胱癌の診断において,腫瘍可視化技術を用いることは,癌検出感度が改善されることから推奨される(PDD:推奨の強さ1)。
- エビデンスの確実性B
- 膀胱癌の診断において,腫瘍可視化技術を用いることは,癌検出感度が改善されることから推奨される(NBI:推奨の強さ1)。
解 説
膀胱鏡検査により膀胱癌の形態的特徴を正確に把握することは,以降の治療方針決定に必須である。しかし通常の白色光源による膀胱内観察で微小病変や平坦病変が10〜30%見逃されていると推測される。これらの病変を的確に把握できる腫瘍可視化技術は,正確な膀胱癌診断に必須である。このようなイメージング技術として蛍光膀胱鏡を用いたPDD やNBI がある。
PDD では,光感受性物質である5-ALA やHAL を投与し,蛍光膀胱鏡で観察すると腫瘍細胞が赤色蛍光発光を示す。PDD により白色光源では視認困難であった微小病変や平坦病変の検出が可能となり,検出感度の改善を認める1〜7)。PDD による追加腫瘍発見率は10〜30%であり,特にCIS 検出率については著明な改善を認める4,8〜16)。これまで実施された多くのRCT やメタアナリシスにより,PDD によって検出感度は93%,CIS 検出率は38.3%改善すると報告されている1〜13)。しかし特異度の改善は認められず65%にとどまる1,2,4,6,7)。この原因として,慢性炎症等による影響や接線効果による偽陽性所見などが報告されている。本邦で実施された国内第Ⅱ/Ⅲ相試験における有害事象は,グレード4 以上の重篤なものはなく,グレード3 以下の一過性の肝関連酵素の上昇,嘔吐等が報告されている2,7)。また, アミノレブリン酸内服による副作用として低血圧・血圧低下を認めるため,注意して使用することが望ましい17,18)。
PDD は検出感度の改善にとどまらず経尿道的膀胱腫瘍切除後の無再発生存率が向上する治療的効果も報告されており,詳細は治療の項に譲る。
NBI は,狭帯域化した光を利用したイメージング技術であり,光感受性物質の投与を必要としない。光の波長を青色(415nm)と緑色(540nm)の2 つのバンドに狭帯域化することで,おのおのの光の伝播深度の違いを利用して血管と組織のコントラストを強調させて微細な構造を増強させることが可能である。多数のランダム比較試験を集計したメタアナリシスにより,診断精度の改善を認めることが検証されてきた。NBI のよる検出感度94.3%,追加腫瘍発見率18.6%であり,白色光源に対する優位性が報告されている19,20)。
2019 年のEAU ガイドライン(web 版)において,乳頭状病変を認めない尿細胞診陽性例でPDD を用いた選択的な生検が推奨されている(エビデンスレベル;1a/ 推奨度;強い推奨)。NBI を用いた膀胱生検は,白色光源に比べ検出感度の改善を認めると記載されている(エビデンスレベル;3b/ 推奨度;弱い推奨)21)。本邦での使用においては,PDD は“経尿道的膀胱腫瘍切除時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化”,NBI は“上皮内癌の患者に対し,治療方針の決定を目的に実施する”と保険上規定されている。
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- CQ2
- 膀胱癌の局所病期診断にマルチパラメトリックMRI は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 膀胱癌の筋層浸潤が疑われる場合は,拡散強調画像を含むマルチパラメトリック(mp)-MRI や超高磁場(3T)MRI 等の活用により,筋層浸潤の診断精度が向上することから推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
膀胱癌の局所病期診断に関する画像診断方法の検討は,MRI が多くを占めるが,CT の正診率は肉眼的な膀胱壁外浸潤についてはMRI と同等とされる。しかし,筋層内浸潤に関しては筋層と腫瘍を明瞭に区別できないため,CT による鑑別は困難である。CT はその撮像範囲の広さから,主にリンパ節転移,遠隔転移の診断に用いられる。
膀胱癌の筋層浸潤のMRI 診断において,拡散強調画像による腫瘍茎の有無,造影ダイナミックMRI による粘膜下層の濃染の有無により筋層浸潤の過剰診断が低下し,特異度の向上に貢献している1〜5)。拡散強調画像による深達度診断は,TUR 生検に代用できないが6),TURBT 後の再発腫瘍については有用である7,8)。
MRI の筋層浸潤に関しては,泌尿器科と放射線科から合計3 本のメタアナリシスが報告されている9〜11)。いずれも過去の多数の文献からシステマティックレビューの一定の基準を満たし,厳選された論文による詳細な検討であり,エビデンスレベルもA ないしB と高い信頼性を持つ論文である。これらの論文をまとめたサマリーを表1 に提示する。感度は87〜92% , 特異度は87〜88%でいずれのメタアナリシスも筋層浸潤の特異度は感度より低いが,エビデンスレベルの高い2 論文9,10)から,拡散強調画像と超高磁場(3T)MRI の出現により偽陽性が減少し,特異度が上昇しmp-MRI の深達度診断における信頼性が向上する可能性が示されている。すなわち拡散強調画像を活用したmp-MRI により,従来のT2 強調画像による筋層浸潤の過剰診断が防げることを示している。
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Ⅲ.筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療
- 総論
1.はじめに
筋層非浸潤性膀胱癌(non-muscle invasive bladder cancer:NMIBC)は未治療膀胱癌全体の約70%を占める。NMIBC 患者のほとんどは膀胱温存を目指してTURBT による初期治療を受ける。さらに得られた病理組織診断をもとに術後治療が考慮され,TURBT による完全切除が困難な症例や再発・進展リスクの高い症例に対しては,抗腫瘍効果あるいは再発予防効果を期待して抗癌剤やbacillus Calmette-Guérin(BCG)の膀胱内注入療法が選択される。
NMIBC の臨床的特徴は,TURBT による治療後も高率かつ頻回に膀胱内再発がみられることであり,これは残存腫瘍や新たに発生する腫瘍が原因となっており,引き続き一部の症例では筋層浸潤や所属リンパ節転移などの進展をみることになる。したがって,NMIBC の診療上の最重要課題は,TURBT による残存腫瘍を最小限にすることと(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ7:推奨グレードA),膀胱内注入療法によって再発・進展を抑制することである。現在汎用されているいくつかのリスク分類も再発・進展のリスクを予測するためのもので,同時にリスク分類に応じた治療指針を示す内容となっている。
2.TURBT
過去の多数の文献を調査すると初回TURBT 単独治療後の再発率は30〜70%と報告によって大きな幅がある。これはTURBT という内視鏡手術に内在する不確実性とともに,施設間においてTURBT の手技に格差が存在することが推測される。特に初回TURBT でT1 high grade と診断された高リスク群NMIBC では,筋層や周辺粘膜に腫瘍が残存している可能性が高く,治療的意義と診断的意義から2nd TURの実施が推奨されてきた(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ9:推奨グレードA)。文献的に2nd TUR における腫瘍残存率は27〜78%,筋層浸潤と再診断される率も0〜28%と施設間格差は大きい。Anderson ら1)は初回TURBT の質を向上させることが課題としている。本来の2nd TUR とは,初回TURBT において筋層採取が確認されているが,2〜6 週間後に再度TUR 瘢痕部をより広く・深く切除し,残存腫瘍の有無を確認することとDivrik らによって定義されている2)。ただし,その後の臨床研究では,2nd TUR の施行時期を初回TURBT の4〜8 週間後としている報告が多い。したがって,初回TURBT で不完全切除になった腫瘍に対し再切除を行うrepeat TUR や,初回TURBT で筋層が採取されず,再度筋層浸潤の確認のために行うrestaging TUR とは区別されるが,本ガイドラインでは「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」3)に従って包括的に2nd TUR という表現で統一する。2nd TURの意義については再発や進展を抑制することが報告されているので,該当するCQ3 をご覧いただきたい。
一方,治療成績の向上のためには見落としやすい微小な乳頭型腫瘍やCIS など平坦型腫瘍,さらには隆起性腫瘍周囲に広がり不完全切除の原因となりやすい病変を確実に検出し,切除することが求められる。TURBT 時の術中補助診断として承認された5-ALA と蛍光膀胱鏡システムによるPDD やNBI は有用で,日本にもすでに導入されており,詳しくはCQ4 をご覧いただきたい。PDD やNBI の使用により癌検出率は向上し4,5),PDD では特にCIS の検出が増加し,膀胱内再発も減少する4)。CIS の検出が向上すると,よりリスクの高い病理診断が得られ,BCG 膀胱内注入療法や即時膀胱全摘除術など術後補助療法が適切に選択されることになる。
3.NMIBC の病理学的深達度と異型度分類
「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」3)では,NMIBC の組織学的深達度をTis(CIS),Ta(乳頭状非浸潤癌)ならびにT1(粘膜上皮下結合組織に浸潤)の3 つのT カテゴリに分類している。一方,リンパ節転移や遠隔転移を伴うNMIBC の症例は稀である。組織学的異型度については,以前はG1(細胞異型度,構造異型度とも1),G2(細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が2),G3(細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が3)の3 段階分類であったが,これは1973 年版のWHO の異型度分類による。2004 年にはInternational Society of Urological Pathology(ISUP)の勧告を受けて,乳頭状病変のG1 を低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(papillary urothelial neoplasm of low malignant potential:PUNLMP)とlow grade に分割した。G2 もlow grade とhigh grade に分割され,G3 はすべてhigh grade となった6)。以上のWHO/ISUP 分類は長年の両者の協議の成果であり,日本でも「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」においてlow grade とhigh grade の2 段階分類を採用し,Grade 分類も併記することになった。しかし,過去の重要な研究論文は旧分類で記載されており,最近の研究でもPUNLMP とlow grade が明確に区別できていないことが病理診断領域で指摘されている。病理診断上,乳頭腫を含めて癌でないと診断された場合は治療選択や経過観察のあり方にも影響が出るため,再発リスクの低い腫瘍でも異型度の表現には慎重な議論が必要である。
4.NMIBC の再発・進展に関するリスク因子とリスク分類
各種のガイドラインではNMIBC の再発と進展のリスク分類が提唱され,治療指針との関連から重要である。再発と進展のリスクに関係する因子としては,病理学的深達度と異型度(G1-3)ならびに併発CIS の有無に加えて,臨床的因子である再発頻度(初発・再発と再発間隔),腫瘍数,腫瘍サイズなどがある。近年,これらの因子に加えてBCG 膀胱内注入療法の治療歴やBCG 最終投与から再発までの期間も重要なリスク因子と考えられるようになってきている。
EAU ガイドライン7)では,European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)が行った抗癌薬膀胱内注入療法が中心となった7 つの臨床試験を基に,上記6 項目(病理学的深達度,異型度(G1-3),併発CIS の有無,再発頻度(初発・再発と再発間隔),腫瘍数,腫瘍サイズ)の各因子別に再発スコアと進展スコアがリスクテーブルに定められており,その合計スコアによって再発率と進展率を提示している(表1)。また,このスコア値によりTURBT 後1〜5 年の再発率と進展率の推定値を自動計算できるシステムもある8,9)。このスコアリングシステムを基に,低リスク群を,①初発,②単発,③ Ta,④ G1(low grade),⑤ 3cm 以下,⑥併発CIS なしの①〜⑥のすべての因子を満たすもの,高リスク群を,① T1,② G3(high grade),③ CIS(併発CIS を含む),④「多発・再発・3cm を超える・Ta/G1G2」の①〜④のいずれかに該当するもの,中リスク群を低リスク群・高リスク群以外のものと定義している。一方,BCG 膀胱内注入療法が標準治療となるに従い,再発・進展に関する因子は変化してきた。Spanish Urological Oncology Group(Club Urológico Español de Tratamiento Oncológico:CUETO)は,BCG 膀胱内注入療法を実施した4 つの臨床試験データをもとにCUETO スコアリングシステムを作成した。この結果,BCG 膀胱内注入療法後の再発,進展リスクには,性別,年齢,初発/ 再発,腫瘍数, 病理学的深達度, 併発CIS の有無, 異型度(G1-3) が関係していた(表2)10)。
また,EAU ガイドラインにおけるリスク分類別治療指針11)も時代により変化しており,中リスク群のうち「pTa/Low grade・単発・再発・年1 回以下の再発頻度のすべての因子をみたす腫瘍」については,低リスク群と同様に抗癌剤即時単回注入のみでの経過観察が許容されている。また,高リスク群の中でも,特に膀胱全摘除術を考慮すべき症例群として超高リスク群なる分類が提唱されてきた。超高リスク群の定義は,①広範囲な膀胱CIS を併発するT1 high grade 腫瘍,②前立腺部尿道CIS を併発するT1 high grade 腫瘍,③多発かつ/ または3cm 以上かつ/ または再発性であるT1 high grade 腫瘍,④微小乳頭型などの尿路上皮癌亜型(UC variant histology)を有するT1 high grade 腫瘍,⑤脈管浸潤(lymphovascular invasion:LVI)を有するT1 high grade 腫瘍,⑥ BCG unresponsive(BCG 不応性)腫瘍のいずれかに該当するものとしている。治療指針との関係は,リスク分類のみではなく,BCG 膀胱内注入療法の治療歴の有無別にフローチャート形式で示すようになっている。
一方,National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドライン12)は病理学的因子のみで,Ta/low grade 群,Ta/high grade 群,T1/low grade 群,T1/high grade 群,Tis 群の5 群に分類し,初発時と再発時に分けてフローチャート形式で治療指針を提示している。またフォローアップスケジュールは,AUA ガイドラインが独自に提唱するリスク分類にしたがって規定している。このように国際的にNMIBC のリスク分類が多様化するなか,International Bladder Cancer Group(IBCG)は2011 年にNMIBC に対する種々のガイドラインを比較し,国際的なコンセンサスとして独自のリスク分類を提唱している。このリスク分類では,低リスク群を初発のTa/low grade,高リスク群をT1,High grade,CIS のいずれか,中リスク群を低リスク群・高リスク群以外と規定している。2019 年現在実施されている高リスク群を対象とした国際共同臨床治験では,このIBCG リスク分類に基づいて高リスク群を定義しているものが増えてきている。
本邦のガイドラインにおけるNMIBC のリスク分類は,初版・第二版においてはEAU ガイドラインのリスク分類を採用してきた。今回の改訂においても海外のガイドラインとの整合性を重視しているが,上述のような国際的・歴史的変化を考慮し,低リスク群は初発,単発,3cm 未満,Ta,low grade,併発CIS なしのすべてを満たすもの,高リスク群はT1,High grade,CIS(併発CIS を含む)のいずれかを満たすもの,そして低・高リスク以外を中リスク群とした(表3)。今回の改訂に伴い,中リスク群の対象が幅広くなるため,「pTa/Low grade・単発・再発・年1 回以下の再発頻度のすべての因子を満たす腫瘍」のように中リスク群の中には低リスク群と同様の治療指針でよいものや,中リスク群ではあるが「再発・多発・Ta・Low grade・3cm 以上のすべてを満たすもの」のようなEORTC リスク因子を複数個有する場合には,高リスク群に準じてBCG 膀胱内注入療法が推奨される症例もあることにも留意していただきたい。また,膀胱全摘除術を考慮すべき超高リスク群としては,T1 high grade 腫瘍のうち,①膀胱CIS または前立腺部尿道CIS を併発する場合,②多発,再発または3cm 以上の場合,③ UC variant histology またはLVI を有する場合のいずれかに該当するもの,およびBCG unresponsive NMIBC/CIS のいずれかに該当するものとした。今回の改訂では上記のリスク分類に基づいてCQ を記載するが,海外文献が多く引用されている以上,日本人の実情と若干の差違が生じることもある13,14)。将来的には日本人のデータに基づいたNMIBC の新たなリスク分類を提唱すべきと考えるが,そのためには日本人における多数のRCT の実施も必要であり,病理学的異型度表記の統一などとともに今後の課題とする。
5.NMIBC の治療指針
NMIBC に対してTURBT 後の再発・進展リスクを下げるために,抗癌剤やBCG の膀胱内注入療法がリスク分類に応じて推奨されている。抗癌剤膀胱内注入療法には,TURBT 術後の抗癌剤術後単回注入と,抗癌剤術後単回注入を行った後に複数回注入する抗癌剤維持注入療法とがある。薬剤については米国ではマイトマイシンC(MMC)が頻用されるのに対し,欧州ではアントラサイクリン系抗癌剤の膀胱内注入の研究が多く,日本ではMMC やアントラサイクリン系抗癌剤が多く用いられており,特に中リスク群に対しては抗癌剤維持注入が推奨されてきた(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ13:推奨グレードA)。しかし,抗癌剤膀胱内注入については,至適な注入薬剤,注入量(濃度)と注入回数や期間,維持注入の要否などのプロトコールに十分なコンセンサスが得られていない。一方,BCG については,世界的にはTice 株,コンノート株,東京(日本)株,ロシア株等の種々の異なった株が使用されている。本邦では,東京(日本)株が使用可能であるが,過去にはコンノート株(現在,製造中止)も使用された歴史がある15,16)。BCG の株間の薬効の差異については一定の見解は得られていない。BCG の投与方法としては,TURBT 後に6〜8 回投与するBCG 導入療法と,その後1〜3 年間継続投与するBCG 維持療法とがある。一般に,NMIBC の膀胱内注入療法薬として抗癌剤とBCG を比較すると,BCG の方が治療効果は強い。しかし,BCG 導入療法でも副作用の発現は高率であり,1/2〜1/6 の低用量BCG など投与法が検討されてきた11)(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ14:推奨グレードB)。また,BCG 維持療法は有害事象による完遂率の低さも問題となっており,維持療法の至適投与スケジュールや至適用量などが,導入療法以上にCQ で議論となるところである。
リスク分類別治療指針については,RCT やシステマティックレビューによると低リスク群の再発リスクを下げるため,低リスク群では抗癌剤即時単回注入が推奨されている17,18)。中リスク群には抗癌剤あるいはBCG 膀胱内注入の維持療法が推奨される。注入期間が1 年程度になると再発予防効果を認めるが,定型的な維持注入のプロトコールはない19,20)。なお,中リスクには「pTa/Low grade,単発,再発,年1 回以下の再発頻度」など,TURBT 後の単回注入のみで許容される群もある。高リスク群にはBCG 膀胱内注入の維持療法が推奨されるが,高リスク群の中でも,超高リスク群に該当する場合には,膀胱全摘術を考慮する必要がある。治療オプションについては後述のCQ7,8,9,10 を参照いただきたい。
BCG 膀胱内注入療法が標準治療として普及するに伴い治療成績も飛躍的に向上してきた。しかし,BCG 膀胱内注入療法を施行した後に膀胱内再発を認める場合(BCG failure)には,膀胱全摘除術(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ16:推奨グレードB)や2 回目のBCG 膀胱内注入療法(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ17:推奨グレードC1)など,その後の治療に苦慮することが多い。BCG failure には様々な病態が混在するため,Nieder らはT1 症例を対象としてBCG failure をBCG refractory,BCG resistant,BCG relapsing,BCG intolerant の4 つに分類することを提唱した21)。しかし,BCG 膀胱内注入療法には導入療法や維持療法があり,導入療法後の再発と維持療法後の再発では治療指針が異なる。このため,AUA,IBCG,FDA が中心となりBCG failure に対する臨床試験の指針が作成され,その一環としてBCG unresponsive(BCG 不応性)という「十分なBCG 膀胱内注入治療」が無効と考えられる疾患群が提唱された22,23)。BCG unresponsive は,BCG refractory と早期のBCG relapsing(BCG 最終投与から12 ヵ月以内の再発)を総称したものと定義されている。BCG failure に関する各用語の本ガイドラインでの定義を表4 に記載するので,CQ9,10 を参照していただきたい。最近は,この膀胱全摘除術が標準治療とされるBCG unresponsive を対象とした国際的多施設共同臨床治験も行われてきており,今後NMIBC の治療のあり方が変化する可能性がある。
6.CIS の治療
前述のように,本邦を含めEAU,AUA の各ガイドラインにおいてprimary CIS および併発CIS はともに高リスク群に分類され,治療としてBCG 膀胱内注入療法あるいは膀胱全摘除術が推奨されているが,特にBCG 膀胱内注入療法はその高い奏効率より初期治療として一般的となっている。残念ながらCIS のみを対象としたRCT はほとんどないが,CIS を対象に含むRCT のメタアナリシスではBCG 膀胱内注入療法が抗癌剤注入療法と比較して有意に高い完全奏効(complete response:CR)率を示し,進展リスクを低減することが示されている24,25)。BCG 膀胱内注入療法における推奨される用量,スケジュールはCQ7,8 を参照していただきたい。一方,CIS に対するBCG 膀胱内注入療法は治療的注入であり,他のNMIBC に対する予防的注入とは分けて考える必要がある。すなわち,CIS に対する治療の場合,膀胱生検により治療の奏効を確認する必要があり,腫瘍の残存を認めた場合は次の戦略を考慮する必要がある。どの時点で膀胱生検を行い,どのような治療選択があるかはCQ12,13 を参照していただきたい。また,膀胱内にCIS を認める場合,前立腺部尿道にもCIS を認めることがあるが,その場合の治療選択についてはCQ11 に記載した。
BCG 膀胱内注入後にCR を得ても,その後の再発の有無を確認するため経過観察が必要である。通常,膀胱鏡検査,尿細胞診などが用いられるが,最近になりfluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いたウロビジョン® が膀胱鏡検査にて明らかな腫瘍を認めない症例において有用であることが示され26,27),本邦においてもCIS と診断された症例で経尿道的手術後2 年に2 回に限り算定可能となっている。ただし,尿細胞診と同時には算定できないので注意が必要である。
7.おわりに
海外のガイドラインが推奨する治療指針と本ガイドラインが推奨する治療指針に大きな相違はない。しかしながら,日本人の疾患特性や診療体制による検証が十分できているとは言い難く,あくまでもそのエビデンスの多くは海外データによるものである。日本人のデータによる今後の検討は必要である。
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- CQ3
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して2nd TUR は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- T1 high grade や初回TURBT で筋層が採取されていないTa high grade の場合,2nd TUR を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
- エビデンスの確実性C
- 筋層が採取されているTa high grade に対しても,2nd TUR は予後を改善させる可能性があるので,考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
2nd TUR の目的は,1)潜在する残存腫瘍の切除,2)アンダーステージングの発見,3)BCG 膀胱内注入療法の効果改善や予後の改善である。また,初回TURBT で筋層が採取されてない場合も2nd TUR が必要とされる。最近のシステマティックレビューで,残存腫瘍はTa だと17〜67%,T1 であれば20〜71%に認められ,残存腫瘍の36〜86%は初回TUR 部位に認めている。また,T2 以上の筋層浸潤も0〜32%に発見された1)。再発率はTa だと2nd TUR をすることで58%から16%に低下しているが,T1 では報告によって幅があり,2nd TUR を行っても有意差のなかったものもある。しかし,T1 high grade の2nd TUR に関して唯一行われたRCT の結果では,再発率,進展率,癌特異生存率ともに2nd TUR 群が有意に改善している2)。
2,451 例のBCG 膀胱内注入療法がなされたT1 high grade のコホート研究では,初回TURBT に筋層が含まれていない場合,2nd TUR を行った方が,再発率,進展率,癌特異生存率,全生存率が良好であったと報告された3)。一方,T1 で膀胱全摘除術を行った279 例の検討で,48%は全摘標本に筋層浸潤があり,2nd TUR を行った症例のみでも46.7%に筋層浸潤を認めたとの報告がある4)。
2nd TUR の時期は,初回TUR 後2〜8 週がほとんどであるが,6 週間を超えると予後に影響を与えたという報告もある5,6)。現在進行中のJapan Clinical Oncology Group(JCOG)臨床試験では3〜8 週間で行うことに定めている7)。また,2nd TUR の方法については,初回TUR の周辺とさらに深部を切除することが一般的である7)。
NBI や5-ALA を使用したTURBT の報告があるが,2nd TUR への応用はまだない8,9)。また,2nd TUR の有害事象は初回TURBT と同じで,危険性が増すことはない。
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- CQ4
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療の際にPDD やNBI は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- PDD は膀胱再発率の低下につながることから推奨される(推奨の強さ1)。
- エビデンスの確実性B
- NBI は癌検出率を改善させるが,膀胱再発率の低下につながるかは未確定である(推奨の強さ2)。
解 説
TURBT 時の膀胱鏡による注意深い観察は必須であるが,従来の白色光下の観察(white-light imaging:WLI)では微小な腫瘍やCIS などの平坦型腫瘍,さらには隆起型腫瘍に付随する平坦病変の広がりの同定が困難である。WLI では,小径の腫瘍や平坦型腫瘍のうち10〜20%が見落とされているとの推計がある1,2)。治療成績の向上のためにはこれらを効率的に検出・切除することが重要であり,TURBT 時補助診断技術として蛍光膀胱鏡を用いたPDD やNBI といった方法が開発されている。
PDD は,5-ALA(経口・膀注ともに可能)やHAL(膀注のみ可能)という蛍光前駆物質をTURBT 術前に投与した後に,腫瘍細胞選択的に蓄積するプロトポルフィリンⅨを標的とした蛍光膀胱鏡を用いて観察し,赤色蛍光を示す病変を検出するものであり,診断精度,特にCIS の検出率を著明に向上させた1,3,4)。診断精度にとどまらず,PDD 補助下TURBT(PDD-TURBT)による無再発率の低下はこれまで多くの前向きRCT とそれらを蓄積したメタアナリシスにより検証されてきた1,2,5)。また,Geavlete らの報告ではPDD 補助診断に伴う追加病変の検出によりEORTC の再発および進展リスクがアップグレードし,無治療から抗癌剤注入療法やBCG 膀胱内注入療法へ,または抗癌剤注入療法からBCG 膀胱内注入療法へと,術後補助療法が変化している症例があったとしている6)。PDD-TURBT は,確実な病変の切除だけでなくその後の正確なリスク分類と適切な術後補助治療の選択を可能とし,再発率の低下に間接的に寄与していることも推察される。本邦で承認されている5-ALA の20mg/kg 経口投与における有害事象として,グレード4 以上は認めなかったもののグレード3 以下の肝関連酵素上昇,低血圧,蕁麻疹などが報告されている3)。また,アミノレブリン酸内服による副作用として低血圧・血圧低下を認めるため,注意して使用することが望ましい7),8)。
一方,NBI は血中のヘモグロビンに吸収されやすい415nm(青)と540nm(緑)の2 種の波長の光を照射することで,血管による微細模様や色調によって癌粘膜と正常粘膜の違いを強調表示し病変を検出するものである。PDD と異なり蛍光前駆体物質を前投与する必要がなく,蛍光が消退するphotobleaching 現象も問題とならないため,手元のスイッチのみで目的部位を何度も繰り返して観察できる。臨床試験の結果を集積したメタアナリシスによると,従来のWLI で80〜85%程度であった癌検出感度を95%まで改善した9〜11)。多施設共同ランダム化試験において,TURBT 単独とNBI 補助下TURBT の術後12 ヵ月の治療成績を比較している12)。全症例の解析ではNBI 補助の有用性が示されなかった(27.1%vs 25.4%,P=0.585)が,低リスクNMIBC(Ta low grade かつ腫瘍径< 30cm かつCIS なし)を対象としたサブ解析においては無再発率の低下が認められた(27.3% vs 5.6%,P=0.002)。
2019 EAU ガイドライン13)では,膀胱鏡で明らかな病変を認めない尿細胞診陽性の症例や非乳頭状腫瘍のような高リスク症例において,ランダム生検にかわりPDD 補助下ターゲット生検を推奨している(推奨グレード:B)。また,同ガイドラインでは,NBI の使用は癌検出率を改善すると明記されている。一方,NBI 併用TURBT の再発率の低下についての評価は未だ十分ではないものの,低リスクNMIBC に限ると,3 ヵ月と12 ヵ月時点の再発率に改善がみられたことに言及している12)。
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- CQ5
- 低リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して抗癌剤即時単回注入は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 低リスクNMIBC に対して抗癌剤即時単回注入を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
Ta およびT1 のNMIBC はTUR で切除可能であるが,再発や進展を起こすことが知られており,術後補助療法が考慮される。最近行われた2,278 例のメタアナリシスでも,抗癌剤単回膀胱内注入は再発リスクを35%低下させた1)。しかし,EORTC の再発スコアが5 以上あるいは1 年間に2 回以上の再発の既往がある症例には単回注入の効果はない1)。使用する薬剤は,MMC,エピルビシン,ピラルビシンのどれも効果があるが,薬剤間を比較した試験はない。ピラルビシンに関しては進展率を低下させた報告もある2)。一方,MMC の単回注入と生理食塩水の持続灌流を比較したRCT があり,再発率に差はなかった3)。
抗癌剤単回注入は通常TUR 後24 時間以内に行われる。術後24 時間以内と2 週後に行う単回注入のRCT で術後24 時間以内の方が再発率は低かった4)。また,24 時間以内の注入を手術当日と翌日に分けて検討した試験では,両群間に差はなく,24 時間以内なら有効であることが示された5)。一方で,5-ALA を用いてTUR を行いドキソルビシンの単回注入を比較したRCT では,5-ALA を用いた方が再発率や進展率を低下させたが,術後単回注入の有無は再発率に影響しなかったとの報告もある6)。術後早期単回注入の有害事象はほとんどないが,膀胱外溢流による有害事象報告はあり,安全性には注意すべきである5)。
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- CQ6
- 中リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して抗癌剤単回注入療法後の維持注入は,単回注入単独と比べて推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 中リスクNMIBC に対しては,抗癌剤維持療法を追加することが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
中リスク群において抗癌剤術後単回注入後に追加の維持療法(注:BCG 維持療法のことではなく,TURBT 直後の単回注入後に抗癌剤を複数回注入すること)を行うことで再発率を低下させる。メタアナリシスで,維持療法群はTUR 単独と比較し1 年後,3 年後の再発率をそれぞれ38%,65%低下させている1)。ピラルビシンの術後単回注入療法に,8 回の維持療法を追加する試験でも,維持療法の有用性が示されている2)。一方で,エピルビシンを用いたRCT では,維持療法群の方が若干良かったものの,コントロール群と比較し再発率に有意差はなかった3)。この試験のコントロール群は術後6 時間以内の単回注入を含む週1 回6 週間の投与であり,維持療法群はさらに月1 回で10 ヵ月間の追加投与がなされた。
維持療法のスケジュールについては定まったものはなく,期間も3 ヵ月から3年間と幅広い。最近のシステマティックレビューでは,月1 回の投与で7 ヵ月から1 年間の維持療法が最も多く,再発率が有意に良好であったのもこの期間の維持療法群であった4)。一方で,維持療法追加による進展率の低下を認めた試験はなかった。維持療法を追加することによって排尿痛や血尿,膀胱炎などの有害事象は増加するが,重症化することは稀である5)。
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- CQ7
- 中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対してBCG 導入療法と比較してBCG 維持療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- 中・高リスクNMIBC に対するBCG 維持療法は,再発予防効果の点から推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
BCG 維持療法はBCG 導入療法や他の抗癌剤注入療法と比較して,中・高リスクNMIBC に対して膀胱内再発抑制効果1〜5),進展抑制効果1,6),予後延長効果3)を有することがいくつかの臨床研究で確認されている。
SWOG8507 試験1)では高リスクNMIBC を6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 週間のBCG 維持注入を3 年間行うBCG 維持療法群(3,6,12,18,24,30,36 ヵ月目:計27 回投与)とBCG 導入療法単独群にランダム化割り付けされ,BCG 維持療法群では無再発生存期間(5 年無再発生存率;導入療法:41%,維持療法:60%,p < 0.0001),無増悪生存期間(5 年無増悪生存率;導入療法:70%,維持療法:76%,p=0.04)の有意な延長を認めた。しかし,3 年の維持療法完遂率は16%であった。EORTC30911 試験3,7)では中・高リスクNMIBC に対してSWOG8507 維持療法レジメンを用いてBCG 維持療法群とエピルビシン注入群をランダム化比較検討し,BCG 維持療法群で無再発生存期間(HR:0.62,95% CI:0.50〜0.76),無転移生存期間(HR:0.55,95% CI:0.32〜0.94),癌特異的生存期間(HR:0.47,95 % CI:0.25〜0.89), 全生存期間(overall survival:OS)(HR:0.76,95% CI:0.59〜0.96)の有意な改善が確認された。維持療法群のレジメン間の比較を行ったEORTC30962 試験8,9)において中・高リスクNMIBC に対してTICE 株通常量と1/3 量,維持療法1 年と3 年が検討され,中リスク群では通常量で1 年間,高リスク群では通常量で3 年間の維持療法が無再発生存期間を低下させ,有害事象は有意な差がなかったと報告された。一方,CUETO98013 試験10)では高リスクNMIBC を6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 ヵ月ごとに1 回のBCG 注入を3 年間行うBCG 維持療法群(BCG 注入,計18 回投与)とBCG 導入療法単独群にランダム化割り付けされ,CUETO レジメンではすべての有効性アウトカムで有意な改善が確認されなかった。
本邦においてはBCG 導入療法としては日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)80mg で週1 回6〜8 週間繰り返すレジメンが標準である。日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)を使った小規模な臨床試験4)で,8 回のBCG 導入療法後に3 ヵ月ごとに1 回のBCG 注入を9 ヵ月間行う(BCG 注入,計12 回投与)レジメンにおいて,無再発生存期間の改善が示唆されている。現在国内製造中止であるコンノート株(イムシストⓇ膀注用)で6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 週間のBCG 維持注入を18 ヵ月行うBCG 維持療法群とBCG 導入療法群,抗癌剤膀注療法とを比較した本邦の試験5)では,BCG 維持療法群で無再発生存率の有意な改善が確認され,完遂率は42%であった。しかしながらコンノート株の維持療法で,完全なTURBT 後に予定された18 ヵ月の維持療法完遂率は23.9%で,維持療法の再発予防効果は確認されなかったとの報告11)も存在する。
メタアナリシスにおいて,TUR 単独に対してBCG 維持療法の再発予防効果,病期進展抑制効果の優位性が示されている6,12)。BCG 導入療法や他の抗癌剤膀注療法に対する優位性は,再発予防効果で示されているが2,6,12〜14),病期進展抑制効果に関しては肯定的な結果14,15)と否定的な結果2,6,12,13)が報告されている。
中・高リスクNMIBC に対するBCG 維持療法は,BCG 導入療法や他の抗癌剤膀注療法よりも再発予防効果が高いため行うことが推奨される(推奨の強さ:2)。BCG 維持療法はSWOG8507 レジメンを基本とした投与法で12 ヵ月以上行うことが望ましい。しかしながらBCG 維持療法の完遂率の低さ,副作用の問題から具体的な投与スケジュールは定まっておらず,今後さらなる最適なレジメンの確立が望まれる。
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- CQ8
- 中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して低用量BCG 膀胱内注入療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 通常量BCG 膀胱内注入療法の副作用が問題となる患者,身体リスクの高い患者,中リスクNMIBC に対しては,低用量BCG 膀胱内注入療法が選択肢の1 つとして推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
本邦においてはBCG 導入療法としては日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)80mg で週1 回6〜8 週間繰り返すレジメンが標準であるが,維持療法は定まったレジメンは存在していない。通常量のBCG 膀胱内注入療法では副作用の発現頻度が高く,副作用の軽減を目的に低用量BCG 膀胱内注入療法の有効性,安全性が検証されてきた。
大規模なEORTC30962 試験1,2)においてTICE 株の通常量と1/3 の低用量,1 年間と3 年間の維持療法がそれぞれ検討され,低用量の膀胱内再発予防効果は通常量より劣性(HR:0.75,95% CI:0.59〜0.94;p=0.01)であり,副作用発現率も低下しなかった(通常量:8.0%,低用量:7.6%)と報告されている。一方,コンノート株でのCUETO 試験3,4)では,27mg(1/3 量)と81mg(通常量)による半年間維持療法で低用量での再発予防効果の非劣性,副作用発現率の減少を認めているが,高リスク群では再発予防効果が低下する可能性3)や13.5mg(1/6 量)では有効性が低下することが示されている5)。またコンノート株27mg(1/3 量)の3 週間のBCG 維持注入を3 年間行う維持療法レジメンにおいて,3 ヵ月と6 ヵ月間隔での投与を比較したURO-BCG-4 試験6)では,2 群間に有意な有効性の差は認めなかった。また,日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)40mg(1/2 量)と80mg(通常量)の導入療法7,8)やDanish 株40mg(1/3 量),80mg(2/3 量),120mg(通常量)による1 年間維持療法での試験9)で低用量BCG 膀胱内注入療法の再発予防効果の非劣性,副作用発現率の減少を認めている試験もある。
メタアナリシスでは,低用量BCG 膀胱内注入療法は通常量と比較し腫瘍進展予防効果は変わらず,有害事象発現率の減少を認めるものの,再発予防効果は低下する10,11)とされているが,効果に差がないとする解析結果12,13)もある。
日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)の具体的な維持療法投与スケジュールは定まっておらず,今後低用量BCG 維持療法レジメンでの前向き検証が必要である。低用量BCG 維持療法は副作用発現率の減少が期待される一方,再発予防効果の低下も予測されるため,標準的な治療法としては行わないことを推奨する(推奨の強さ:2)。BCG 注入通常量で局所副作用がある患者,高齢者など身体リスクの高い患者,中リスクNMIBC に対しては,低用量BCG 維持療法は治療選択肢となる(推奨の強さ:2)。
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- CQ9
- BCG 膀胱内注入療法後に腫瘍残存を認める症例や膀胱内再発をきたす症例に対して,BCG 膀胱内注入療法の再導入は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- BCG unresponsive には膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
- エビデンスの確実性C
- 1 年以降のBCG relapsing にはBCG 膀胱内注入療法再導入は選択肢の1 つとして推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
NMIBC のBCG 膀胱内注入療法後の残存・再発癌に対する治療を考える際に,Nieder ら1)はBCG failure を,① BCG-refractory:導入療法後3 ヵ月の時点で再発または腫瘍が残存し,6 ヵ月時点(維持療法を含む)でも消失しない,② BCG-resistant:導入療法後3 ヵ月時点で腫瘍残存も6 ヵ月の時点で消失,③ BCG-relapsing:治療後6 ヵ月時点で消失した腫瘍が再発(再発までの期間をearly:≦ 12 ヵ月,intermediate:12〜24 ヵ月,late:> 24 ヵ月に細分類),④ BCG-intolerant:重篤な有害事象のため十分な注入療法が施行できず再発を繰り返すの4 つに分類した。本邦での検討2,3)では,BCG failure 症例のうち大半をBCG-relapsing とBCG-refractory が占め,BCG-resistant,BCG-intolerant は少数との報告がある。
SWOG 試験のBCG 注入群でのpost hoc 解析では,BCG-refractory は進展傾向が強く予後不良となりやすいことが示されている4)。BCG-refractory を対象とした小規模の前向き試験では,BCG 膀胱内注入療法再導入の87.5%に再発を認め,2 年無再発生存率は3%で,37.5%に腫瘍進展を認めたと報告されている5)。BCG+IFNα注入療法による前向き試験6)で,BCG-refractory はBCG+IFNα注入療法再導入の効果が悪かったものの,1 年以降に再発したBCG relapsing はBCG 未施行例と比較し,BCG+IFNα膀注導入療法の効果は変わらなかったと報告されている7)。BCG-relapsing を対象としたBCG 膀胱内注入療法再導入の本邦の成績2)では,中および高リスク癌の5 年非再発率はそれぞれ78%および46%と報告されている。本邦のBCG-refractory およびBCG-relapsing に対する膀胱温存療法の5 年癌特異生存割合は74 % および97 % と報告があり3),BCG-refractory は他のBCG failure 様式より病期進展する可能性が高い3)。BCG-refractoryはBCG 膀胱内注入療法再導入にも抵抗性5)であるため,即時膀胱全摘療法が標準治療と考えられ8),BCG 膀胱内注入療法再導入による膀胱温存療法は選択しないことが推奨される(推奨の強さ:2)。
NMIBC のBCG failure は多様であり,Nieder の分類は腫瘍の再発時期に関する代表的な分類であるが,BCG 膀胱内注入療法のスケジュールが加味されたものではなかった8)。そのためAUA,IBCG,FDA が中心となりBCG failure に対する臨床試験指針が作成された。その中でBCG-refractory と早期のBCG-relapsing(BCG 最終投与から12 ヵ月以内の再発) を総称したBCG-unresponsive8〜10)という「十分なBCG 膀胱内注入療法を行ったにもかかわらず再発し,BCG 膀胱内注入療法再導入が無効と考えられる疾患群」が提唱された(各用語の定義は本章の総論,表4 を参照)。また,この指針8)では,BCG-unresponsive に対する新薬開発の際の臨床試験のエンドポイントとしてBCG-unresponsive CIS では6 ヵ月のCR 率が50%,奏効した症例における12,18 ヵ月の持続的な奏効率(Durable response rate)が30%,25%,BCG-unresponsive-papillary disease では12,18 ヵ月の無再発生存割合が30%,25%を臨床的に意義のある有効性の指標とすることが提唱されている。
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- CQ10
- 超高リスク症例に対して即時膀胱全摘除術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 超高リスク症例では進展リスクが高く,即時膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
高リスクNMIBC に対する即時膀胱全摘は,結果的に適切な治療と判断されることもある反面,過剰治療と判断されることもあるが,膀胱温存治療とのRCT はなく,議論の多いところである1)。膀胱温存治療として,Sylvester らは中〜高リスクNMIBC やCIS 症例に対してBCG 膀胱内注入療法,特にBCG 維持療法の有用性を強調している2)。しかし,十分なBCG 膀胱内注入療法にもかかわらず早期に再発,BCG 膀胱内注入療法再導入が無効と考えられるBCG unresponsive では膀胱全摘除術の適応となり,EAU とNCCN ガイドラインでは早期の膀胱全摘除術を推奨すべき症例として,BCG 膀胱内注入療法1〜2 コース施行後にT1 high grade 腫瘍が再発した例をあげている3,4)。このように,高リスク症例のなかには,さらに進展リスクが高いとされる『超高リスク(highest risk)症例』があり,BCG 膀胱内注入療法よりも即時膀胱全摘除術が推奨される。
2016 年にBabjuk ら4)は超高リスク症例として,膀胱および前立腺部尿道CIS 併発T1 high grade,多発かつ/ または3cm 以上かつ/ または再発性のT1 high grade に加え,UC variant-histology やLVI を有するような腫瘍をあげ,これらに対して即時膀胱全摘除術を推奨している。尿路上皮癌に付随するUC variant-histology のうち即時膀胱全摘除術が推奨されるものとしては,micropapillary,sarcomatoid,plasmacytoid variant などがあり,診断時点で筋層浸潤癌である可能性が高く予後不良である5)(Ⅷ.希少がん参照)。また,初発のT1,特に,CIS 併発や前立腺浸潤を伴っている場合は,この時点での膀胱全摘除術が奨められる6,7)。現在,初回TURBT でT1 high grade が検出された場合2nd TUR が実施されるが,この2nd TUR の組織内に再びT1 腫瘍を認めた症例は,その後に筋層浸潤癌に進展する可能性が高く,この時点での膀胱全摘除術が推奨されている8)。一方,NMIBC の膀胱全摘除術に際しては周辺臓器および神経温存を考慮してもよい。
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Ⅳ.上皮内癌(CIS)の治療
- CQ11
- 前立腺部尿道における上皮内癌(CIS)に対してBCG 膀胱内注入療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 前立腺部CIS 症例のうち前立腺部尿道原発,あるいは併発する膀胱癌がTa 以下の筋層非浸潤性癌である場合,前立腺部尿道の十分な経尿道的切除後にBCG 膀胱内注入療法を行うことが推奨される(推奨の強さ2)。
- エビデンスの確実性C
- 併発する膀胱癌がT1 high grade の場合は膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
膀胱CIS に対する一次治療としてはBCG 膀胱内注入療法,もしくは膀胱全摘除術が推奨されている1,2)。しかしながら,膀胱CIS 症例を対象とした即時膀胱全摘除術とBCG 注入療法とのRCT はなく,同様により頻度の低い前立腺部尿道CIS 症例に対するRCT は存在しない。
前立腺部尿道に発生する尿路上皮癌の多くは膀胱癌を併発している3)。逆に,NMIBC の16〜39%,膀胱全摘除術を行った症例の12〜48%で前立腺部尿道に尿路上皮癌が検出されたと報告されている3,4)。膀胱全摘標本を用いた解析により,前立腺部尿道の尿路上皮癌の深達度はCIS(前立腺部尿道および前立腺腺管)が41〜64%,間質浸潤が17〜47%にみられたと報告されている5〜7)。膀胱全摘後の予後は前立腺間質浸潤を認める症例で不良であり,即時膀胱全摘除術の適応と考えられる1,3,8)。一方,前立腺部尿道CIS 症例の予後は,前立腺部に尿路上皮癌を伴わない症例と有意差を認めなかったという報告と予後不良であったとする報告が混在する5,7,9,10)。これらより,一部の前立腺部尿道CIS 症例においては,即時膀胱全摘除術が過剰治療となっている可能性がある。
これまでの少数の症例集積研究では,間質浸潤を伴わない前立腺部尿道進展があるNMIBC 患者に対して,1〜2 コースのBCG 膀胱内注入療法を行い64%〜82%でCR を得たと報告されている11,12)。BCG 膀胱内注入療法はその治療効果を発揮するために尿路上皮へのBCG の直接接触が理論上必要とされる。Gofrit らは,間質浸潤を伴わない前立腺部尿道の尿路上皮癌患者に対してBCG 膀胱内注入療法に先立って前立腺部尿道の経尿道的切除(TURP)を行うことにより高いCR 率を達成することが可能であったと報告しており,過去の報告を含めたプール解析ではBCG 注入単独群でCR 率67%に対しTURP 後にBCG 注入した群で95%であったと報告している13)。一方Palou らは,膀胱癌がT1G3 で経尿道的切除後にBCG 導入療法のみ行った146 名を後ろ向きに検討し,女性あるいは前立腺部尿道CIS を伴う男性群がその他と比較して予後不良であったと報告している14)。これらの報告をもとに,EAU ガイドラインでは,前立腺部尿道の非浸潤性尿路上皮癌もしくはCIS の場合,経尿道的切除後のBCG 膀胱内注入療法を選択肢の1 つとしている8)。
結論として,前立腺部CIS 症例においては,併存する膀胱癌がTa 以下のNMIBC である場合,前立腺部尿道の十分な経尿道的切除後にBCG 膀胱内注入療法を行うことは選択肢の1 つとなりえる。しかしながら,併存する膀胱癌がT1,high grade あるいは筋層浸潤癌の場合は膀胱全摘除術を考慮すべきである。
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- CQ12
- 上皮内癌(CIS)症例に対するBCG 導入療法でCIS が残存する場合,BCG 再導入療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- CIS 症例に対する初回BCG 導入療法でCIS が残存する場合,BCG 再導入療法が推奨される(推奨の強さ2)。
- エビデンスの確実性C
- ただし,BCG 再導入後の初回注入から6 ヵ月時点でも残存する症例は,膀胱全摘除術を考慮する(推奨の強さ2)。
解 説
CIS に対する初期治療について,BCG 膀胱内注入療法と即時膀胱全摘除術の無作為化比較試験は存在しないが,その高い奏効率と比較的良好な予後よりBCG 膀胱内注入療法は標準治療となっている1,2)。Chade らはBCG 膀胱内注入療法開始後6 ヵ月時点でCR にならなかった群はCR 群と比較して有意にその後の進展頻度が高かったと報告しており3),どの時点でBCG の治療効果を判定するかは重要な問題である。
Lamm らは,CIS のあるNMIBC 患者117 名のうち,BCG 導入療法後3 ヵ月時点でのCR を64 名(55%)に認めているが,6 ヵ月時点ではさらに13 名(11%)がCR の判定となり,維持療法としてBCG 注入療法が追加されることでさらに34 名(29%)がCR と判定され,最終的なCR 率は84%であったと報告している4)。この結果は,BCG 膀胱内注入療法による遅延性効果と再導入による奏効の可能性を示している。
Sylvester らは同様の報告をまとめて導入療法1 サイクルにてCR を得られなかった症例のうち,40〜60%は再導入療法に奏効するとしている2)。
Herr らは再発リスクの高いNMIBC 患者(78%がCIS を併存)における維持療法と導入療法単独の無作為化比較試験の副次的解析において,6 ヵ月時点でのCR 症例は2 年無再発生存が77%であるのに対して非CR 症例では11%であり,再発の予測因子となることを示している(HR:9.18,p=0.001)。一方,3 ヵ月時点での評価は再発と相関しなかった(HR:1.51,p=0.24)ことより,BCG 抵抗性の判定には少なくとも6 ヵ月が必要と結論づけている5)。これらの報告をもとに,CIS に対するBCG 抵抗性の評価は6 ヵ月が推奨されており6),EAU ガイドラインでも3 ヵ月時点でのCIS 残存症例にはBCG 再導入が推奨されている7)。
Zehnder らは膀胱全摘標本にて病理学的にCIS のみを認めた症例の10 年非再発率が90%と非常に良好であることを報告しているが8),一方で臨床的Tis の診断にて膀胱全摘除術が施行された症例の複数の記述研究では約20%に筋層浸潤癌を認めており,治療前,治療効果判定におけるアンダーステージング(過少病期診断)のリスクを常に念頭に置く必要がある1)。
結論として,CIS 症例に対する初回BCG 導入療法でCIS が残存する場合,40〜60%でCR が期待できBCG 再導入療法が提案される。一方,BCG 再導入後の初回BCG 注入開始から6 ヵ月の時点でも残存する症例は,即時膀胱全摘除術の適応である。
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- CQ13
- BCG 膀胱内注入療法後に再発した上皮内癌(CIS)症例に対して膀胱全摘除術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- CIS 症例に対する1〜2 コースのBCG 膀胱内注入療法後にhigh grade 腫瘍が再発した場合,膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
Tilki らは,膀胱CIS に対してBCG 膀胱内注入療法後に抵抗性となり膀胱全摘除術を行った243 症例について,全摘病理標本におけるアップステージングとその後の予後を検討したところ,22.6%に筋層浸潤,5.8%に所属リンパ節転移を認め,これらの症例が特に予後不良であったことから,必要な患者には早期に膀胱全摘除術を行うことの重要性を強調している1)。また原発性CIS は併発CIS と比較してBCG 導入療法の奏効率は良好であったものの,その後の筋層浸潤癌への進展や膀胱全摘除術に至るリスクが高いとする報告もあり,primary CIS 症例に対する厳重な経過観察と全摘除術のタイミングの重要性が示唆される2)。さらにBCG 膀胱内注入療法後に筋層浸潤癌となった症例の予後は診断時に筋層浸潤癌であった症例より不良であること3),膀胱全摘除術を行ったBCG 抵抗性症例において,BCG 膀胱内注入療法2 年以降の膀胱全摘除術症例は2 年以内の全摘症例より予後不良であること4)も考慮すると,BCG 抵抗例に対しては早期の膀胱全摘除術が必要となる。Andius らは,BCG 膀胱内注入療法後の初回膀胱鏡検査において,肉眼所見陽性(CIS や隆起性病変の存在)がステージ進行,BCG-failure,膀胱癌死の唯一の予測因子であり,治療後早期の検査により膀胱全摘除術の適応を決定すべきと述べている5)。
膀胱原発のCIS は膀胱外尿路再発・進展(上部尿路または前立腺部尿道)をきたしやすい。Solsona らは膀胱CIS を有する138 例のうち87 例(63%)に初診時または経過観察中に膀胱外尿路再発・進展を認め,予後不良であったと報告している6)。BCG 膀胱内注入療法は,治療効果を発揮するために尿路上皮に直接BCG 菌体が接触することが必要である。したがってBCG 膀胱内注入療法後の再発様式のうち,前立腺部尿道に病変(特に,前立腺間質組織への浸潤がある場合)を認めた場合は速やかに膀胱全摘除術を考慮すべきである。
EAU ガイドライン7)では膀胱全摘除術を推奨すべき適応として,BCG refractory 症例およびhigh grade 腫瘍が再発した症例をあげており,初発が中リスク筋層非浸潤癌のうちBCG 膀胱内注入療法後に非high grade 腫瘍が再発した場合にも検討すべきとしている。NCCN ガイドラインにおいてもBCG 膀胱内注入療法1〜2 コース施行後の再発症例でT1 high grade 症例は膀胱全摘除術を推奨している8)。その他,BCG failure 症例に対する膀胱温存治療としてゲムシタビン注入療法(本邦では適応外使用)などが試されているが,膀胱全摘除術との比較試験は行われておらず,現時点でのエビデンスは限定的である9)。
結論として,① BCG 膀胱内注入療法開始後6 ヵ月でCIS が残存している症例および,② BCG 膀胱内注入療法後再発症例でT1 high grade 腫瘍は,早期に膀胱全摘除術が推奨される。
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Ⅴ.Stage Ⅱ,Stage Ⅲ 膀胱癌の治療
- 総論
Stage Ⅱ,Ⅲの筋層浸潤性膀胱癌(muscle invasive bladder cancer:MIBC)の標準治療は膀胱全摘除術である1,2)。男性の場合,膀胱,前立腺,精囊,遠位尿管を摘除し,骨盤リンパ節郭清を行う。尿道再発のリスクが高い場合には,尿道摘除術も同時に実施する。女性の場合には,膀胱,子宮,膣壁,遠位尿管,尿道を摘除し骨盤リンパ節郭清を行うのが標準術式とされている。
膀胱全摘除術に際して,尿道摘除の適応は議論の多いところである3)。大規模なRCT が存在しない現時点での見解としては,自排尿型新膀胱を考慮しない場合や根治が可能な症例においては尿道摘除を施行し,尿道温存を行う場合には再発の危険性を説明した上で行うことが重要である。尿道再発の腫瘍学的意義と経過観察法も含めて,詳細はCQ14 を参照されたい。
近年,膀胱全摘除術においても根治性を確保しつつ生活の質(quality of life:QOL)を向上させることが求められる状況になってきた。神経温存膀胱全摘除術によって自排尿型新膀胱の尿禁制や性機能が良好に確保されることも報告されており,神経温存膀胱全摘除術の適応と問題点をCQ15 で取り上げた。現時点での結論としては,MIBC において神経温存手術を試みても良いが,その選択基準は未だに確立していない。システマティックレビュー4)は存在するものの未だにエビデンスレベルは低く,性機能温存を希望する症例においては,根治性を考慮した総合的検討により神経温存の可否を判断し,慎重に選択された症例にのみ行うことを推奨する。
女性の標準的膀胱全摘除術と自排尿型尿路再建術後に性機能障害や排尿機能障害を伴うため,婦人科臓器温存手術が考慮されるようになってきた5,6)。標準術式と婦人科臓器温存術式を比較したRCT は存在しないが,婦人科臓器温存膀胱全摘除術は通常の膀胱全摘除術と治療成績は同等で,性機能や排尿機能の改善を認めるとする後ろ向き研究が多い7,8)。しかしながら,これらは小規模で評価項目等も統一されていないため,RCT で臨床的意義が証明されるまで婦人科臓器温存膀胱全摘除術は標準治療とはならない。膀胱頸部や尿道に病変を認めないT2 以下の腫瘍で,患者が婦人科臓器温存を希望する場合には考慮しても良いと考える5〜8)。卵巣摘除に関する問題点も存在するので,詳細はCQ16 を参照されたい。
リンパ節郭清の範囲を広げることで,腫瘍学的アウトカム改善効果が期待されるため,至適リンパ節郭清の範囲に関する多くの報告がなされている。拡大郭清の治療意義,特に無再発生存期間の改善効果に関しては,後ろ向き研究から得られたエビデンスが多いが,これらを用いたシステマティックレビュー9)およびメタアナリシス10)では,拡大郭清が標準郭清と比較して無再発生存期間を改善すると結論付けられている。最近,下腸間膜動脈起始部レベルまでの傍大動静脈領域および仙骨前面領域を含めた拡大リンパ節郭清が標準郭清に比して生存率向上に寄与するかを検討したRCT(LEA AUO AB 25/02 試験)の結果が報告された11)。しかし,標準郭清と比較して拡大郭清の優越性は示されなかった。現在,もう1 件のRCT(SWOG1011 試験)が進行中であり,その結果が待たれる。なお,拡大郭清の定義が試験によって様々な状態となっており,統一された定義が存在しないことにも注意が必要である。
従来,膀胱全摘除術は主に開腹膀胱全摘除術(open radical cystectomy:ORC)が実施されてきたが,低侵襲手術の普及に伴い,腹腔鏡下膀胱全摘除術(Laparoscopic radical cystectomy:LRC)とロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術(Robot-assisted radical cystectomy:RARC)に関するエビデンスが充実してきた。ORC とLRC を比較したRCT が3 報,メタアナリシスが2 報存在する。総じて,周術期死亡率,合併症,短期再発率については,両者ほぼ同等の成績であり,出血量は明らかにLRC の方がORC より少なく,手術時間はLRC の方がORC より長い12,13)。RARC とORC を比較したRCT は5 報あり,メタアナリシスも報告されている。RARC はORC と比較して,手術時間が長く,コストが高いが,入院期間が短く,出血量が少なく,高度な術期合併症の頻度が少ないとされている14,15)。最近,ORC とRARC を直接比較したRCT RAZOR(randomized open vs robotic cystectomy)study の結果が報告された16)。2 年非再発生存率においてRARC のORC に対する非劣性が明らかになり,これまで不明だったRARC の腫瘍学的意義に関して,1 つのエビデンスが提供された。これら低侵襲膀胱全摘除術に関する最近の臨床研究の概要に関しては,CQ17 を参照されたい。
MIBC の標準治療は膀胱全摘除術とされているが,その5 年全生存率は約50%程度にとどまるため1,2),治療成績向上の目的で周術期化学療法の検討がされてきた。シスプラチンベースの術前化学療法(ネオアジュバント療法)は複数のRCT において生存期間延長効果を有することが証明されている17〜19)。北村らの報告でも,日本人患者においてその有用性が示されている20)。しかし,腎機能低下などの理由でシスプラチンベースの化学療法が適応とならない症例に対する術前化学療法に関するエビデンスは乏しく,その臨床的意義は確立されていない。術後化学療法(アジュバント療法)に関しては,その有用性を支持するエビデンスが乏しかったが,EORTC 30994 試験21)およびプロペンシティスコア・マッチング法を用いた検討22)から,術前化学療法未施行のpT3-4 and/or pN+に対するシスプラチンベースの術後化学療法の有効性を示唆する報告もなされている。
MIBC のうち,尿路上皮癌に対する術前化学療法のエビデンスは充実しているが,micropapillary,neuroendocrine,squamous cell carcinoma,sarcomatoid,adenocarcinoma などの尿路上皮癌亜型に関するエビデンスは乏しい。米国National Cancer Data Base に登録された症例の中で,膀胱全摘除術を受けた尿路上皮癌亜型2,018 例の検討では,術前化学療法による全生存率改善効果はneuroendocrine 腫瘍にのみ認められたと報告している23)。
現在,国内で実施されている主な尿路変向術は,尿管皮膚瘻造設術,回腸導管造設術,新膀胱造設術などである。尿管皮膚瘻造設術は,回腸導管造設術と比較して手術時間と入院期間が短く,合併症発生率が低いため24),高齢者や合併症を有する症例に用いられる傾向がある25)。回腸導管造設術は,安定した転帰が期待できる確立された尿路変向術であるが,経過が長くなるとストーマや上部尿路の合併症が20〜30%程度発生する26)。前部尿道に腫瘍性病変を有する場合や吻合する尿道断端に腫瘍が存在する場合は尿道摘除が必要であり,自排尿型新膀胱造設術の適応とはならない。また,前立腺部尿道に腫瘍性病変が存在する場合も自排尿型新膀胱造設術の適応は慎重に検討すべきである。海外の中核施設では,膀胱全摘除術後の尿路変向術として,男性の80%,女性の50%で自排尿型新膀胱が選択されているが27),最近の米国での傾向は自排尿型新膀胱を選択する頻度は減少傾向とする報告もある。尿路変向術の種類によって腫瘍制御が影響を受けることはないが,二次的な尿道再発率は自排尿型新膀胱で低い傾向であることが報告されている。QOL に関しては,自排尿型新膀胱と回腸導管のRCT は存在せず,21 編の論文のシステマティックレビューではわずかに自排尿型新膀胱が良好であったと報告されている28)。膀胱全摘除術後の尿路変向術の選択に際しては,上記の情報をふまえて,患者の医学的要素,家庭や社会的背景を考慮しながら,患者とその家族,医療スタッフと十分な意見交換をして決定していくことが重要である。
社会の急速な高齢化に対応して,高齢者・フレイル患者に対する膀胱全摘除術の適応も重要な課題である。60 歳以下の患者に対し80 歳以上の患者では膀胱全摘術後90 日以内周術期死亡率が有意に上昇し,全生存率・癌特異的生存率も年齢とともに低下するというシステマティックレビューの結果が報告されている29)。高齢者やフレイル患者の定義に関しても確立されたものはないが,その治療に際しては慎重な配慮が求められる。現時点では,合併症のない全身状態良好な高齢者に対する膀胱全摘除術は推奨されるが,フレイル患者のための術前評価法は確立されておらず,その適応に関しては個々の症例で慎重に検討する必要がある。
高齢者や合併症を有する患者の増加,そしてQOL 重視の治療への関心が高まり,膀胱温存療法のエビデンスも充実してきた。膀胱温存の手法には,TURBT,シスプラチンを中心とした化学療法,および,放射線療法があり,積極的に膀胱温存を図るにはこれらを併用した集学的治療(Multi-, or Tri-modality therapy)を行うのが一般的である30,31)。膀胱全摘除術と膀胱温存療法を直接比較したRCT はまだないが,複数の後ろ向き試験やプロペンシティスコア・マッチング法を用いた直接比較解析では5 年生存率に有意差を認めなかった32)。集学的治療による膀胱温存療法は高齢者,肝疾患,呼吸器疾患,心不全などの基礎疾患のため膀胱全摘除術が適応にならない症例,あるいは,本人が希望しない症例には治療選択肢の1 つとして検討されるべきである。現在行われている膀胱温存療法には多くの種類があり,治療法の詳細に関してはCQ18 を参照されたい。
2017 年にAJCC Cancer Staging Manual 第8 版が公表され,膀胱癌の病期分類が改訂された33)。第7 版までのStage Ⅲは新たにⅢA とⅢB に分けられ,ⅢA にはT3a-4aN0M0 およびT1-4aN1M0 が含まれ,ⅢB はT1-T4aN2 or N3M0 と定義されている。Stage Ⅲに骨盤リンパ節転移を有する症例が含まれることになるが,今回の膀胱癌診療ガイドライン改訂版では第7 版の分類に従い骨盤リンパ節転移を有する症例はⅥ.StageⅣ膀胱癌の治療で記述しているのでそちらを参照いただきたい。今後は,骨盤リンパ節転移を有する症例を含めたMIBC に対する標準治療の検討を行う必要がある。
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- CQ14
- 膀胱全摘除術における尿道摘除は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 新膀胱造設を考慮しない膀胱全摘除術の場合,尿道摘除を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
- エビデンスの確実性C
- また,新膀胱造設による尿道温存を行う場合,不利益が生じる危険性を説明して行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
2016 年EAU ガイドライン1)では,新膀胱造設の禁忌は,術前前立腺部尿道または術中尿道吻合部断端に癌が存在する場合となっている。また尿道摘除を行わず,尿道再発した症例の癌なし生存率は10〜20%と予後は不良である2,3)。新膀胱造設による尿道温存例またはその他の尿路変向法例の尿道非摘除症例における尿道再発のリスクを検討し,尿道摘除の可否を検討することは臨床上極めて重要である。
システマティックレビューによる検討では,膀胱全摘除術後の尿道再発の頻発時期と頻度はそれぞれ2 年以内,4〜10%程度で,男性は女性に比較して高く,その頻度は約4%と報告されている2,4)。尿道再発のリスクがあると考えられる場合には尿道を温存しなかったとする報告で,尿道温存をした症例のうち男性は4%程度,平均30 ヵ月程度に尿道再発があるとされている5〜10)。一方,尿道温存の条件が不明確な症例では男性が6%,女性でも2.6%に再発があったと報告されており11,12),適応条件を厳しくした報告に比べ明らかに早期,高率に尿道再発を認めている。また新膀胱により尿道温存した場合の尿道再発の頻度は約2%ながら,他の尿路変向法を選択し尿道摘除を行わなかった場合は約6%と明らかに高い6,11,13)。
尿道再発のリスクをレビューした文献によると,男性では前立腺部尿道,女性では膀胱頸部に腫瘍が存在,膀胱全摘除術時の遺残尿道(尿道非摘除),術中尿道断端組織での癌陽性,併発CIS の存在,NMIBC の再発による膀胱全摘などがリスク因子であると報告されている2,4,14,15)。また前立腺部尿道に癌が存在するリスク因子としては多発腫瘍,再発症例16),非乳頭状腫瘍17),膀胱CIS の存在,三角部の腫瘍18)が報告されており,尿道温存を選択する場合には術前の丁寧な評価が必要である。
尿道の評価方法としては術前の精阜付近5 時7 時方向の尿道生検19)や前立腺部尿道の経尿道的切除17),尿道断端の術中迅速病理診断の有用性が報告されている20,21)。一方,術前の前立腺部尿道の評価は,同部に発生した癌の診断に優れるものの,膀胱原発尿路上皮癌の浸潤の診断には不適であるという報告19)や術中尿道断端癌陽性に対する術前評価の陽性的中率は,わずか6.9%(陰性的中率は99.5%)であったとの報告もある22)。同様の結果は前回のガイドラインで引用された研究23)にもあり,術前前立腺部尿道に癌が検出されても吻合部尿道断端病理結果とは乖離があり,新膀胱作成をはじめから除外すべきではないという意見1,23)にも妥当性があると思われる。
また,術中迅速診断結果を最終病理診断と比較した報告では,陰性および陽性的中率はそれぞれ89〜100%,83〜93%であるが20,24),術中迅速診断が偽陰性であった症例も尿道再発をきたさなかったとの報告20)もあり,術中迅速診断が陰性であればおおむね問題はないようである20,21,24)。
尿道温存または尿道非摘除症例に対する定期的経過観察の是非は,議論の分かれるところであるが,定期的観察により無症候性再発を早期発見することは症候性再発に比べ,予後を改善するとする報告が多い25,26)。定期検査の方法としては自然尿細胞診,あるいは洗浄細胞診が最も有用であるとされている3,27,28)。
以上より,根治が期待でき,尿道吻合を行わない尿路変向においては尿道摘除が推奨される。また新膀胱造設による尿道温存する場合には,頻度は低いがその不利益の危険性について症例ごとに説明し,適応を考慮する必要がある。
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- CQ15
- 膀胱全摘除術において神経温存手術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性D
- 神経温存手術の適応基準はなく,選択された症例に対して行うことが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
根治的膀胱摘除術における神経温存手術の目的は,癌に対する手術の根治性を損なうことなく,性機能温存や尿道吻合を行う尿路変向術の尿禁制の改善に寄与し,QOL の向上に資することである。実際,従来の神経血管束を温存する方が非温存より性機能の回復がよいとされてきた1)。また尿道吻合を行う尿路変向術においては男女とも尿禁制が良好であることが報告されている2,3)。したがって,根治的摘除が担保されれば神経温存手術が適応になる場合があると考えられる。NMIBC において膀胱全摘除術を行う場合には神経温存術式は適応を検討できると思われるが,MIBC に対して温存して問題ないとされる基準があるか検討した。また近年報告が多い,前立腺,あるいは前立腺被膜,精囊,婦人科臓器を温存する手術が適応できるかも検討した。
神経温存手術についてSchoenberg4)らは,T1〜T3b を対象とし術前の検査で神経浸潤が疑われる症例を除き,側方に肉眼的な浸潤がない101 例の患者に神経温存を行ったが,5 年局所再発率は5%,5 年および10 年全生存率はそれぞれ67%,54%と非温存手術の場合とは遜色がなかったと報告している。Kessler ら2)も根治性を損なわなければ適応があるとし,331 人に対して,膀胱癌が頂部,前壁にある場合,あるいはNMIBC で多発する症例に対して両側の神経温存,片側に癌が認められる場合には対側の神経温存のみを行った。その結果,両側温存では6 割,片側で温存は3 割が,術後勃起機能が回復し,良好な術後,尿禁制が得られた。局所再発率はpT2 以下N0 では3%,pT3-4N0 で11%,pN+で13%とこれまでの非温存と違いがないと報告している。
しかし,これらの選択基準についての妥当性に関する検討は報告されていない。前述の文献1 では神経温存をしなかった症例の選択基準は様々で,術者の判断,大きな腫瘍,膀胱頸部の浸潤癌,骨盤内の癒着,神経血管束を温存することを妨げる術中のトラブルなどとしている。臨床的に膀胱頂部,あるいは前壁にMIBCの存在が疑われる場合,肉眼的な浸潤の有無などの条件で,温存の有無を比較した文献は報告されていない。
女性において神経血管束温存,非温存のランダム化試験が報告されているが,温存が7 人,非温存が6 人という少数例の検討で,女性の性機能改善のため温存手術を推奨しているが,症例数が少なすぎて結論を導くとこは不可能と思われる5)。
根治的膀胱全摘除術が必要な病態においては神経温存部位による癌の取り残し以上に,原発巣での深達度やリンパ節転移の方が予後に関与するとも考えられる。したがって性機能温存を望む症例で尿道吻合を予定する場合には神経温存を意図しても良いのかもしれない。しかし神経温存を前向きに検討したランダム化試験はなく根治性を損なわないとする適応基準は確立していない。
一方で従来の神経温存術式ではなく,前立腺,前立腺被膜,精囊,婦人科臓器を温存する手術法の報告が近年,散見される。これに対して2016 年のEAU ガイドライン6)では,膀胱頸部浸潤,前立腺部尿道浸潤,尿道に腫瘍がないT2 以下の症例に対して適応があるものの,注意深い選択が必要であり標準治療ではないとしている。また女性では男性よりさらにエビデンスが不足しており,神経温存に関する成績は不明である。これらの文献の多くは性機能,排尿機能の温存は良好で,腫瘍学的アウトカムに遜色がないとしているが,一部には劣るとの報告7,8)もあり,それらをレビューした文献9,10)では,いずれも選択基準にバイアスがあり,数も少なく,成績も短期であり,結論は限局性でよく選択された症例のみにすべきとしている。中にはランダム化試験の報告11)もあるが40 人をランダム化したに過ぎず,結論は限定的である。筋層浸潤癌を含む症例で実施した報告もあるがやはり少数例で,選択基準には強いバイアスがあると思われ12〜15),結論を導くことは困難である。
また近年ロボット支援と腹腔鏡下と開腹手術による治療成績の違いが報告されるようになっているが,現状ではロボット支援手術はまだエビデンスが不足している16,17)。
結論として,筋層浸潤癌において神経温存手術を試みても良いが,その選択基準は未だに確立していないといえる。前立腺や婦人科臓器を温存する方法についても筋層浸潤癌での適応を推奨するエビデンスはない。
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- 女性の膀胱全摘除術において婦人科臓器温存手術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- T2 以下で,膀胱頸部や尿道に腫瘍を認めない場合,婦人科臓器温存手術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
女性の膀胱全摘除術は原則として,膀胱・子宮・膣前壁を一塊に摘除することが推奨されてきたが,女性生殖器を温存しても予後に影響しないとする報告もある1〜7)。根治的膀胱全摘除と新膀胱造設術後の性機能や排尿機能障害の改善を目的として,婦人科臓器温存手術が考慮されるようになってきた1〜15)。
婦人科臓器温存膀胱全摘除術後の性機能を評価した論文は少ないが,術後性機能の満足度スコアの中央値は88.5(80〜100)% で,通常の膀胱全摘除術と比較して良好との報告がある2〜6,13)。さらに,日中および夜間の尿禁制率はそれぞれ58〜100%,42〜100%,自己導尿率は9.5〜78%と,比較的良好な排尿機能が報告されている2〜7,11)。また,婦人科臓器温存が尿閉の予防となったという報告や10),子宮温存と神経温存を行った方が非温存と比較して有意に尿禁制率が高率であったという報告もある15)。
治療成績に関しては,3〜5 年の癌特異的生存率は70〜100%,全生存率は65〜100%と報告され2〜7)。摘出標本の病理組織学的断端陽性率は0〜13.7%,局所再発は0〜13%,遠隔転移は0〜16.7%と比較的良好な成績であった2〜7)。周術期成績に関しては,75 歳以上の患者での傾向スコアマッチング解析で,婦人科臓器温存膀胱全摘除術の方が通常の膀胱全摘に比べて手術時間が短く,出血量が少なく,腸管の回復が早かったという報告もある1)。
以上の結果より,婦人科臓器温存膀胱全摘除術は通常の膀胱全摘除術と比較して治療成績は同等で,性機能や排尿機能は良好である可能性が推定される2,11)。しかし,これらの報告は後ろ向きの観察研究であり,症例数も少なく,評価項目等も論文間で同一でないため,前向きの大規模比較試験の結果が出るまでは標準治療とはいえない2,11,13,14)。婦人科臓器温存手術は標準治療外であることを了承した上で,深達度T2 以下の限局癌で,膀胱頸部や尿道に腫瘍を認めず,婦人科臓器温存を希望される症例に対しては考慮してもよいと思われる9,14)。
根治的膀胱全摘除術時の卵巣摘除は,卵巣疾患のリスクを低下させ,卵巣への膀胱癌の転移の予防となり,高齢者の場合はQOL への影響が比較的少ないため合理的である12)ものの,卵巣摘除による骨粗鬆症,心臓血管疾患等のリスク上昇や,卵巣を温存しても卵管のみ切除することで卵巣癌の発生のリスクを下げるとの報告もあり8),さらなる今後の検討が必要である。
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- 腹腔鏡下/ ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- 腹腔鏡下/ ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術は開放膀胱全摘除術よりも低侵襲で,同等の制癌効果が報告されており,考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
MIBC に対する標準治療として,従来ORC が行われてきたが,低侵襲手術としてLRC とRARC に関する報告が増えてきた。ORC とLRC を比較したRCT が3 報1〜3),メタアナリシスが2 報4,5)存在する。総じて,周術期死亡率,合併症,短期再発率については,両者ほぼ同等の成績であり,出血量は明らかにLRC の方がORC より少なく,手術時間はLRC の方がORC より長いとされている。本邦でも2018 年4 月よりRARC が保険収載となり,急速に普及している。ORC は侵襲の大きい手術であり,周術期合併症や死亡率が高い。またMIBC も悪性度の高い疾患であるため,RARC の安全性と有効性を検証する複数のRCT の結果が報告されている。
RARC(21 例)とORC(20 例)を比較したRCT ではRARC はORC に比べ手術時間が長くなるものの,出血量の減少,消化管の早期回復,在院日数の短縮,鎮痛剤使用量の減少が認められたと報告されている6)。また前向き観察試験でもRARC(83 例)はORC(104 例)と比較し,グレード3 以上の合併症が少なかったと報告されている7)。しかし,データベースから多数症例をマッチングしてRARC(2,101 例)とORC(34,672 例)を比較した後ろ向き報告では,RARC はグレード2 以下の合併症や在院日数の短縮には寄与するものの,グレード3 以上の合併症は同等であり,手術時間とコスト面ではORC に劣ると報告された8)。さらに手術件数が多い施設(年間19 例以上),もしくは年間7 例以上膀胱全摘除術を行う術者ではRARC もORC も合併症は同等と報告している8)。RARC とORC 各群150 例を比較したRCT(RAZOR study)9)では,全グレードの合併症がRARC で67%,ORC で69%と同等であった。また,5 つのRCT から540 名を集め解析したメタアナリシス10)では,再発,グレード3 以上の合併症,QOL は両術式間に有意差はないが,輸血率の低さと在院日数に関してはRARC に優位性があると報告している。
制癌効果に関しては,RAZOR study において2 年の非再発生存率がRARC,ORC ともに72%と同等であったことからRARC のORC に対する非劣勢が明らかになり,これまで不明だったRARC の腫瘍学的意義に関して,1 つのエビデンスが提供された。
しかし,RARC とORC の再発形式に関してはさまざまな報告があり,一定の見解を提示するにはさらなるエビデンスの蓄積が必要である。したがって症例ごとに慎重に術式を検討する必要があると思われる。また,導入初期は合併症が増える可能性もあるため,年間症例数の少ない施設ではその導入には慎重に対応する必要があると思われる。
膀胱全摘除術後の尿路変向術を体腔内で行う術式(intracorporeal urinary diversion:ICUD) も行われているが, 体腔外で尿路変向を行う術式(extracorporeal urinary diversion:ECUD)との比較はまだ十分な検討がなされておらず,その有用性については明らかになっていない。ICUD の技術的高難度を指摘する報告が多いが,ICUD とECUD の手術成績や合併症を比較したRCT はなく,今後のエビデンスが待たれるところである。また,ORC におけるリンパ節郭清についても至適郭清範囲が定まっていないことから,RARC におけるリンパ節郭清の範囲に関しても今後の検討課題である。
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- 筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)に対して膀胱温存集学的治療は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 選択された症例に対する治療として考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
高齢化社会が進む中,年齢,パフォーマンスステータス(performance status:PS)低下,あるいは,心疾患などの基礎疾患がある症例,あるいは,身体的に問題がなくても本人・家族が膀胱全摘除術を拒否する場合もあり,膀胱温存療法のニーズは広がりつつある。膀胱温存の手法には,TURBT,シスプラチンを中心とした化学療法,および,放射線療法があり,積極的に膀胱温存を図るにはこれらを併用した集学的治療を行うのが一般的である1〜5)。適応に関しては,腫瘍深達度,悪性度,腫瘍径,腫瘍数,CIS の有無,および,水腎症の有無が治療成績において重要な因子で,深達度T3a 以下の限局癌(できればT2 以下),腫瘍径3cm 以下,そして,CIS や水腎症のない症例が望ましいとされている1〜5)。
化学放射線治療は,米国放射線腫瘍研究グループ(Radiation Therapy Oncology Group:RTOG)による大規模臨床試験をはじめ,これまで多くの施設で施行されてきた治療法で6〜11),その治療成績はタキサン系薬剤やゲムシタビンあるいは5-FU を併用した多剤併用療法の導入によって徐々に向上し4,10,11),2014 年に報告されたRTOG 前向き研究(8802,8903,9506,9706,9906,0233)の長期治療成績では5 年生存率は57% 12)と,膀胱全摘除術の治療成績とほぼ同等の結果であった13〜15)。また,膀胱全摘除術との優劣に関して直接比較した前向き臨床試験はないが,Zlotta らのプロペンシティ・マッチング法を用いた直接比較解析では5 年生存率に有意差を認めず(p=0.49)16),これまでに施行された複数の後ろ向き比較研究でも有意差を認めなかった1,4,17)。
さらに,近年本邦ではいくつかの施設が特殊な技術を駆使した治療法を用いて高いCR 誘導率(80%以上)と膀胱温存症例における長期生存率(5 年癌特異生存率70%以上)を報告しており18〜20)(表1 に治療の概要と適応を示す),これらを総合的に考慮すれば,高齢者,肝・呼吸器・心不全などの基礎疾患のため膀胱全摘除術が適応にならない症例,あるいは,本人が希望しない症例には治療選択肢の1 つとして検討されるべきであると思われる。ただし,これらの治療は標準治療とは異なるため,適用する際にはそれぞれの治療法の特徴を理解し,十分なインフォームドコンセントを得て治療を決定することが肝要である。
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Ⅵ.Stage Ⅳ 膀胱癌の治療
- 総論
1.はじめに
Stage Ⅳ膀胱癌の治療として,全身化学療法,癌免疫療法,緩和療法に分けて概説する。またStage Ⅳ膀胱癌に対する外科治療(外科処置)としての膀胱全摘除術,転移巣切除の臨床的意義に関してはそれぞれCQ19,20 に取り上げており,そちらを参照されたい。
2.全身化学療法
(1)Stage IV に使用されるレジメンの実際
切除不能または転移を有する膀胱癌に対する標準レジメンはメソトレキセート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチン(M-VAC)療法(表1)であった。M-VAC 療法は大規模第Ⅲ相試験を経て標準治療になったわけではなく,現在の臨床試験デザインからはかけ離れたシングルアーム試験の結果により登場した1,2)。その後少数例のランダム化試験によりシスプラチン単剤3)やシスプラチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン(CISCA)療法4)より生存期間を有意に延長することが示され,2000 年にゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法が登場するまで,唯一無二の一次化学療法レジメンとして普及した。
GC 療法(表2)は臨床第Ⅲ相試験においてM-VAC 療法と同等のOS を示し,M-VAC 療法と比較してグレード3 以上の好中球数減少,発熱性好中球減少症,粘膜炎などの有害事象や治療関連死の割合が低いことが示された5)。この結果を受けて,現在はM-VAC 療法よりもGC 療法が選択されることが多い(詳細はCQ21 を参照いただきたい)。GC 療法の原法は4 週1 サイクルであるが,Day 15 のゲムシタビンを省略して3 週1 サイクルとして実施する変法の報告6,7)もある。臨床第Ⅱ相試験6)や後ろ向き研究7)の結果からは原法と変法の治療成績に大きな差はなさそうであるが,ランダム化第Ⅲ相試験で検証したエビデンスはなく,標準レジメンはGC 療法原法である。
M-VAC 療法におけるシスプラチンの治療強度を高めたdose-dense M-VAC 療法(表3)は,M-VAC 原法との比較試験でOS における統計学的優越性を示すことができなかった8)。しかし長期観察後の解析で統計学的有意差が認められた9)ため,この結果を根拠にdose-dense M-VAC を施行することは許容される。
二次化学療法に関して実施された臨床第Ⅲ相試験は非常に少ない。微小管阻害薬ビンフルニン+ベスト・サポーティブ・ケア(best supportive care:BSC)とBSC のランダム化試験では,intent-to-treat 解析でビンフルニン+BSC 群のOS 中央値は6.9 ヵ月で,BSC 群のOS 中央値(4.6 ヵ月)と比較して有意な差を認めなかった(HR:0.88,95% CI:0.69〜1.12)10)。抗VEGFR-2 抗体ラムシルマブ+ドセタキセルとドセタキセル単独を比較した第Ⅲ相試験では,主要評価項目の無増悪生存期間において,それぞれの中央値が4.07 ヵ月および2.76 ヵ月で,統計学的にラムシルマブ+ドセタキセル群で有意に長かった(HR:0.757,95% CI:0.607〜0.943,p=0.0118)11)。しかしOSに関しては,ラムシルマブ+ドセタキセル群の中央値が9.40 ヵ月,ドセタキセル単独群の中央値が7.85 ヵ月で統計学的有意差に至らなかった(HR:0.887,95% CI:0.724〜1.086,p=0.2461)12)。臨床第Ⅱ相試験では,ペメトレキセド13,14),nab-paclitaxel(nab-パクリタキセル;ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル)15),パクリタキセル16,17),ドセタキセル18),ゲムシタビン19),イホスファミド20,21),などの薬剤が一定の治療効果を示しているものの,BSC に対するOS 延長効果の十分なエビデンスはない。本邦では腎機能障害がある場合または二次化学療法として使用される場合に限り,パクリタキセルおよびドセタキセルの使用は保険審査上認められている。臨床第Ⅱ相試験の統合解析22)によれば,タキサン系抗癌薬は2 剤以上の併用療法として使用した方が単剤使用よりもOS が良好であったが,ランダム化第Ⅲ相試験によるエビデンスは存在しない。
(2)全身化学療法が施行されたStage Ⅳ膀胱癌に対する予後因子
一次化学療法前の評価では,Bajorin23)のリスク分類が有名である。M-VAC またはdose-dense M-VAC を受けた203 例におけるOS に関連する因子を多変量解析し,Karnofsky performance status(KPS)< 80%と内臓転移(肺,肝または骨)の存在が独立因子として算出された。これらの因子を0,1 および2 個有する患者のOS 中央値はそれぞれ33.0,13.4 および9.3 ヵ月であった(p=0.0001)。一方,プラチナ含有レジメンによる一次治療後の時点では,Bellmunt24)の分類が知られている。多変量解析によりEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)PS > 0,ヘモグロビン < 10 g/dL および肝転移の存在がOS と関連した独立因子であり,これらを0,1,2,3 個有する患者のOS 中央値はそれぞれ14.2,7.3,3.8,1.7 ヵ月であった(p < 0.001)。ただしこの研究のコホートはビンフルニン+BSC とBSC 単独のランダム化第Ⅲ相試験であり,実地診療を反映しているかどうかは賛否両論があった。その後二次治療におけるゲムシタビン+パクリタキセル療法など7 つの臨床第Ⅱ相試験が統合解析され,ECOG PS > 0,ヘモグロビン < 10 g/dL,肝転移の存在に加えて,前化学療法からの期間 < 3 ヵ月の4 因子がOS およびprogression-free survival(PFS)と関連することが示された25)。さらに好中球数,リンパ球数,血小板数,アルブミンといった固形癌の一般的予後不良因子を加えた研究では,多変量解析にて先述の4 因子とアルブミン(正常下限未満)の5 因子がOS と相関する独立因子として同定された26)。これら5 因子のうち,0,1 または2 因子,3 因子以上を有する患者のOS 中央値はそれぞれ8.9,6.4,4.5 ヵ月であり(p < 0.001),validation set ではそれぞれ10.6,10.0,7.0 ヵ月であった(p=0.014)。日本人患者を対象とした研究では,性別(男性)27),ECOG PS ≥127)または≥228),ヘモグロビン < 10 g/dL27),白血球数 ≥8,000/μL28),肝転移28),他臓器転移27)が一次治療前における予後因子として報告されている。
(3)高齢者(または超高齢者)のStage Ⅳ膀胱癌に対する全身化学療法
高齢者(WHO では65 歳以上と定義)へのシスプラチン投与を考慮する際には,まず高齢者機能評価を行うべきである。代表的なスクリーニングツールとしてG829)があり(表4)30),簡便で有用なツールとして国際老年腫瘍学会(Société Internationale d’Oncologie Gériatrique:SIOG)で推奨されている31)。G8 で14 点未満は異常,すなわちvulnerable またはfrail となり,原則としてシスプラチン治療は勧められない。ただし日本人患者においては,欧米人と比較して肥満患者が少なく(質問F),保険制度の充実により複数の処方薬を内服していることが多く(質問H),謙遜することが美徳とされる(質問P)ため,低得点になりやすい可能性があることを念頭に置いて評価すべきである。
次に非高齢者と同様に,シスプラチンfit かunfit かの判断を行う。シスプラチンunfit の定義に関しては,EORTC がシスプラチンunfit 患者を対象としたゲムシタビン+カルボプラチン療法とメソトレキセート+カルボプラチン+ビンブラスチン療法のランダム化第Ⅱ/Ⅲ相試験32)を実施した際に用いた『GFR 60mL/min 未満かつ/ またはECOG PS ≥2』が普及している。さらにGalsky ら33)はシスプラチンunfit 患者を対象として実施された臨床第Ⅱ相試験および第Ⅲ相試験をレビューし,① GFR60mL/min 未満と,② ECOG PS ≥2 に加え,③グレード2 以上の聴覚障害,④グレード2 以上のニューロパチー,⑤ New York Heart Association Class Ⅲの心不全を加えた5 項目のうち1 つでも該当するものがあればシスプラチンunfit と提唱した。これは臨床試験のエビデンスに基づくものではないが,尿路上皮癌の臨床研究に従事している120 名の腫瘍内科医をサーベイし,文献的考察を加えてエキスパートのコンセンサスを得たものとなっている34)。
(4) シスプラチンfit(eligible)のStage Ⅳ膀胱癌に対するカルボプラチン・ベース・レジメンの全身化学療法
シスプラチン・ベースとカルボプラチン・ベースのレジメンを直接比較した第Ⅲ相試験として,M-VAC 療法とカルボプラチン+パクリタキセル(CP)療法のランダム化試験35)がある。ただしこの試験では症例登録数が予定の4 分の1 程度と極めて悪く,主要評価項目のOS 中央値はM-VAC 15.4 ヵ月,CP 13.8 ヵ月で,統計学的有意差に至らなかった。他にはメソトレキセート+ビンブラスチン+エピルビシン+シスプラチン(M-VEC)療法とメソトレキセート+ビンブラスチン+エピルビシン+カルボプラチン(M-VECa)療法のランダム化第Ⅱ相試験36),M-VAC 療法とメソトレキセート+カルボプラチン+ビンブラスチン(M-CAVI)療法のランダム化第Ⅱ相試験37),GC 療法とゲムシタビン+カルボプラチン(GCarbo)療法のランダム化第Ⅱ相試験38)が存在する。これらの3 試験においては,奏効率,OS ともにシスプラチン・ベースのレジメンがカルボプラチン・ベースのレジメンよりも優れていた。以上の4 試験に関してメタアナリシスを行ったところ,シスプラチン・ベースのレジメンはCR 率[リスク比(RR)3.54,95% CI 1.48〜8.49,p=0.005],全奏効率(RR 1.34,95% CI 1.04〜1.71,p=0.02)において,カルボプラチン・ベースのレジメンよりも優れていた(OSはデータ不整合のため未解析)39)。毒性に関しては,GC とGCarbo に差はなく38),M-VAC,M-VEC はM-CAVI,M-VECa と比較して悪心・嘔吐36,37),腎毒性36),脱毛37)の頻度が高かった。
制吐療法の発達によりシスプラチンに起因する悪心・嘔吐の頻度やグレードが低くなっていることや,一次治療でM-VAC よりもGC が選択される場合が多いことを勘案すると,シスプラチンfit(eligible)患者に対してはカルボプラチンではなく,シスプラチン・ベースのレジメンが推奨される。なお腎機能障害を有するStage Ⅳ膀胱癌に対するGCarbo の臨床的意義に関してはCQ22 を参照されたい。
3.癌免疫療法
近年,癌免疫療法の中で免疫チェックポイント阻害薬の開発が成功し,膀胱癌を含む各種腫瘍に臨床導入が進みつつあり大きく変化してきている。免疫チェックポイント阻害薬は,T 細胞上に発現する免疫チェックポイント分子と呼ばれる抑制性受容体,もしくは,そのリガンドに結合して,抑制性シグナルを遮断することによって免疫系のブレーキを解除し,腫瘍に対する免疫応答を高める薬剤であり,従来の癌薬物療法とは異なる作用機序をもつ。特有の有害事象として,免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)が出現する。特徴としてはおのおのの有害事象は頻度が低いものがほとんどであるが,全身多岐にわたり出現し,その発現時期を予測することが難しく,時に適切な対応や対処の遅れが致命的となることもありうるため,その管理にあたっては注意が必要である。
(1)免疫チェックポイント分子
癌に対する免疫反応の中心的役割を担うT 細胞において,その活性化を調節する機構が解明されてきた。T 細胞受容体(T cell receptor:TCR)が,癌抗原ペプチドと主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC)を認識してT 細胞は活性化されるが,その活性化にはTCR からのシグナルだけでは不十分であり,免疫反応を活性化する分子(co-stimulatory molecule:共刺激分子)からのシグナルも必要である。一方,自己への不適切な免疫応答や過剰な炎症反応を抑制する働きを有する因子(co-inhibitory molecule:共抑制分子)も存在し,免疫チェックポイントと呼ばれ免疫反応を抑制している40)。代表的な免疫チェックポイント分子としてcytotoxic T-lymphocyte associated antigen 4(CTLA-4) やprogrammed cell death 1(PD-1)などの抑制性の受容体があり,主に活性化したT 細胞上に発現する。これらの抑制性受容体に生理的なリガンドが結合すると,T 細胞の増殖やエフェクター機能(サイトカイン産生や細胞傷害活性など)が抑制される。癌はこの抑制機構を利用して宿主の免疫監視から逃れている。
(2)免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイント阻害薬は主な作用機序として,T 細胞などに発現する免疫チェックポイント分子である抑制性受容体,もしくは,そのリガンドに結合して,抑制性シグナルを遮断することによってT 細胞などの免疫系細胞のブレーキを解除することで,腫瘍に対する免疫応答を高める薬剤である。現在,わが国で膀胱癌に対して承認され実地臨床で使用可能な免疫チェックポイント阻害薬にペムブロリズマブがある(詳細はCQ23 を参照されたい)。
(3)有害事象の種類とその対応(副作用マネージメント)
免疫チェックポイント分子は免疫反応の恒常性維持に関与しており,自己抗原に対する末梢性免疫寛容の成立とその破綻の結果生じる自己免疫疾患の発症に深く関わっている41)。そのため,CTLA-4 やPD-1 などのco-inhibitory molecules をブロックする抗体である免疫チェックポイント阻害薬を投与すると,免疫調整が正常に機能せず,自己免疫疾患・炎症性疾患様の副作用が発現することがある。これらの免疫に関与した副作用はirAE と呼ばれている。irAE は主にT 細胞が関与すると考えられているが,抗体を作るB 細胞系や炎症性サイトカインを産生する顆粒球なども関与すると考えられている42)。従来の細胞傷害性化学療法に対する対症療法とは異なり,irAE に対してはステロイドなどの免疫抑制剤で対処する。重症度に応じて速やかに,適切な治療を行うことで多くのirAE をコントロールすることが可能である。おのおのの有害事象は頻度が低いものがほとんどであるが,全身多岐にわたり多彩な形で出現し,その発現時期を予測することも難しい。ほとんどの症例で投与中に生じるが,稀ではあるものの投与を止めてから数ヵ月以上経過してから出現することもある。適切な対応や対処の遅れが致命的となることがありうるため,注意深く経過観察を行い早期発見に努めることが重要である。
(4)Pseudoprogression とHyperprogression
① Pseudoprogression
癌免疫療法中,腫瘍の増大や新病変が出現して疾患が進行しているように見えても,後から遅れて臨床効果が表れてくる現象が報告されており,pseudoprogression と呼ばれている43)。Pseudoprogression は腫瘍自体の増悪を表すものではないが,疾患の進行として誤って評価されてしまう可能性がある。癌免疫療法は,作用機序として宿主の免疫系を介して抗腫瘍効果を発揮させるために,治療を開始してから抗腫瘍免疫応答が発揮するまでの期間に個人差があると考えられる。したがって,pseudoprogression の機序として,①免疫細胞が腫瘍部位に浸潤することにより見かけ上腫瘍が増悪(腫瘍の増大や新病変が出現)していると評価される場合,②抗腫瘍免疫応答を発揮するまでの期間に実際に一過性に腫瘍が増悪している場合があると考えられている43,44)。実地臨床において腫瘍増大時に組織学的に腫瘍局所の免疫状態を確認できる場面は限られるため,pseudoprogression と真の増悪(true progression)を見分けるのは困難である。したがって,実地臨床においても,一旦腫瘍が増大した段階で治療を継続する場合は,①患者の全身状態が治療開始と同程度であること,②病変が生命を脅かす状態(life threatening)でないと判断されること,③患者に発生した有害事象が治療薬の継続投与の際に許容できると判断したうえで,患者に対して病状悪化のリスク,および,継続により全身状態が悪化した場合に後治療を受ける機会を失うリスクがあることについてのインフォームドコンセントを得ることが必要である45)。
② Hyperprogression
近年,癌免疫療法を開始後,ごく短期間の間に急速な進行を認める症例が存在するとの報告が増えており,癌免疫療法が契機となって急速に腫瘍を進行させてしまうhyperprogression という概念が提唱されている46)。進行期の癌患者においては,臨床経過のどこかの時点で腫瘍が急速に悪化しはじめることもあり,hyperprogression の存在および機序についての報告は増えつつあるが未解明の部分が多くコンセンサスは得られていない状況である。治療開始後に短期間で全身状態の悪化,転移部位の急速な増悪を反映しうる検査値の上昇(例えば腫瘍マーカーの急激な上昇,肝機能検査値の急激な上昇[肝転移症例]など)を認めた際は,ただちに画像評価等で治療効果判定を行い,診断を確定させて即座に治療を中止する必要があると考える。
現在,pseudoprogression やhyperprogression を見分ける方法を特定するための研究が進められている。
4.緩和療法
現在,膀胱癌にかかわらず癌と診断された時からの緩和ケアが必要とされている。患者や家族の苦痛や気がかりを可能な限り取り除くことが求められるが,進行した膀胱癌の症状緩和は必ずしも容易ではない。膀胱癌には他臓器の進行癌とは違った対応を求められることが多い。進行した膀胱癌は膀胱が残存している場合,膀胱機能を障害し排尿時痛や頻尿,排出障害といった排尿に関する症状,膀胱そのものの痛みや深刻な肉眼的血尿により起こる膀胱タンポナーデ,上部尿路の閉塞による腎機能障害や痛みなどを引き起こすことが考えられる。さらにリンパ節転移や肺転移などの遠隔転移,局所の浸潤といった症例ごとの進展の程度や範囲により浮腫や呼吸困難なども出現する。進行した膀胱癌の上述した症状緩和に特化したエビデンスレベルの高い研究は検索した範囲では認められず,小規模の後ろ向き観察研究やレビューを認めるのみである。
(1)膀胱癌局所進行に伴う血尿の対処
肉眼的血尿に対して,一般的には用手的膀胱洗浄による凝血塊除去ののち膀胱灌流を行うが,血尿の制御は容易でない場合が多い。腫瘍切除が可能な身体状況であれば,TURBT は選択肢であるが,事実上困難であることも多い。海外のレビュー文献によれば47,48),局所進行性膀胱癌の血尿に対する治療法として,イプシロンアミノカプロン酸内服やホルマリン膀胱内注入,ミョウバン膀胱灌流,プロスタグランジン膀胱灌流,水圧療法,尿路変向,小分割放射線療法,動脈塞栓術,ミトキサントロン動脈注入,姑息的膀胱全摘除術があげられている。IVR 治療や放射線照射による血尿制御については,複数の症例報告や症例集積の報告がされている49〜52)。膀胱癌の血尿制御を目的とした膀胱全摘除術および尿路変向についての文献は少ない53)。血尿の制御を目的とした膀胱全摘除術は合併症が少ないとは言えないとして,終末期で状態が悪い症例の場合は推奨できないと,癌患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン54)には記載がある。膀胱局所コントロール目的に経皮的腎瘻,尿管皮膚瘻等の尿路変向が難治例では選択肢となる55)。また尿路変向は尿管閉塞に伴う水腎症,腎後性腎不全,引き続く電解質異常への対処として施行され,尿路変向術として経皮的腎瘻が選択される場合が多いと考えられる56,57)。腎機能の改善後に救済化学療法を選択できる状況もあろう。尿路変向の実施にあたっては患者の意向,全身状態,期待生命予後を総合的に考慮する必要がある。
(2)膀胱癌局所進行に伴う膀胱痛,膀胱痙攣の対処
膀胱癌による刺激や癌治療に伴う炎症などは膀胱の痛みの原因となり,肉眼的血尿と同様にQOL を低下させる。血尿以外の膀胱の症状緩和に対しても放射線治療が有効との報告がある。詳細は,次項の「(3)緩和目的の放射線照射 」およびCQ24 を参照されたい。膀胱痙攣に伴う痛みは突出痛として現れ,癌病変そのものにより引き起こされる持続痛とは異なる。これらの痛みは痛みの神経学的分類では内臓痛に分類される。痛みの治療にはNSAIDs やアセトアミノフェンを開始し,改善しない痛みに対してはトラマドールやコデインなどの軽度から中等度の強さの痛みに用いるオピオイドやモルヒネ,オキシコドン,ヒドロモルフォン,フェンタニル,タペンタドールなどの中等度から高度の強さに用いるオピオイドに変更,もしくは追加を行い対応する。本邦で使用できるいわゆる強オピオイド製剤は増えてきているがそれぞれの特徴を把握した上で薬剤を選択する。これらの薬物治療で制御の難しい痛みの場合には直腸,前立腺,膀胱後半部,子宮頸部,膣円蓋部などの求心性線維を受けている上下腹神経叢ブロックが適応になることがある。その他にクモ膜下鎮痛法や硬膜外鎮痛法があるがカテーテル感染などのトラブルや尿閉や筋力低下などの症状出現に留意が必要である58)。
膀胱癌により引き起こされる身体症状は非特異的症状を含めると多岐にわたるが,これらの苦痛に対処するには患者・家族の辛さを包括的に評価し全人的に捉え,医師のみならず,看護師やその他の職種と協働して臨むことが重要である。
(3)緩和目的の放射線照射
緩和的放射線治療においては,対象患者の状態・予後を鑑み,総治療期間が短期間で比較的早い時期に治療効果出現が期待できる寡分割照射が主流となっている。各種緩和的放射線治療における放射線外照射の具体的なレジメンについては,CQ24 ならびに放射線治療計画ガイドラインを参照されたい59)。
骨転移に起因する疼痛に対して多くのRI 治療製剤の開発が行われており60),そのうちのいくつかはすでに市販製剤として利用可能となっている。本邦においては,89SrCl2(メタストロン)が2007 年に保険収載されて使用可能であったが,2019 年1 月に製造が終了されてしまったため,本ガイドライン作成時点において国内で使用可能な製剤はない。
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- CQ19
- 局所進展例または骨盤内リンパ節転移を有する症例に対して膀胱全摘除術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 化学療法が有効であった症例には膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
以下,本解説では,AJCC 第7 版でStage Ⅳとして扱われたcTanyN1-3M0 症例に関しては,AJCC 第8 版に準拠し,Stage ⅢA,B と記載する。
Stage ⅢA およびB(AJCC 第8 版),言い換えれば明らかに骨盤内リンパ節腫大を伴う膀胱癌に対しては,導入全身化学療法後に腫瘍の縮小が得られた時点で,膀胱全摘除術および骨盤内リンパ節郭清を追加する集学的アプローチが行われてきた。前向き試験による化学療法単独や放射線治療など他の治療法との比較試験はないが,化学療法著効後の再発部位の検討において,もともと腫瘍を認めた部位の再増大の頻度が高いことが手術追加の理論的根拠とされている。Dimopolous らは,遠隔転移を有する症例に対する化学療法でCR,部分奏効(partial response:PR)が得られた後に再発を生じた症例の再発部位を検討した後ろ向き研究において,治療前に局所進展と判定された42 例においては,74%(31/42)が術後遠隔転移を生じることなく,まず局所再発を生じたと報告している1)。
Herr らは,cT4bNxM0/cT3-4N2-3M0 症例207 例のうち,M-VAC 療法後に膀胱全摘除術が施行された60 例の成績を報告している。術後5 年の時点で19 例(32%)が生存し,その内訳は病理にて残存癌を認めなかったpCR 19 例中9 例(41%),残存癌が完全切除されたsCR 34 例中10 例(29%)で,切除不能例での長期生存例はなかった。また,化学療法に良好な反応を示したが,その後の膀胱全摘除術を拒否した12 例(CR 10,PR 2)では,3 年時点で生存していたのは1 例のみに過ぎなかった2)。この報告は,化学療法の反応性が良好であること,完全切除が可能であることが長期生存に関わる予後因子であることを示唆している。Ho らは,MD Anderson Cancer Center において,1995 年から2010 年の間に,骨盤内・後腹膜リンパ節(所属外リンパ節を含む)の腫大を伴う膀胱癌に対して,導入全身化学療法後に膀胱全摘除術が施行された55 例の治療成績を報告している。病理所見上,ypN0*が55%を占め,全体での癌特異的生存期間中央値は26 ヵ月であったが,ypN0 であった症例の5 年生存率が66%であったのに対し,ypN+症例では12%であった3)。
最近,Zargar-Shoshtari らが,北米および欧州の19 施設を含む多施設共同研究の結果を報告した。2000 年から2013 年の間に,cT1-4aN1-3 症例に対し,導入全身化学療法(M-VAC 42%,GC 43%)後に膀胱全摘除術が施行された304 例での検討の結果,病理所見上ypN0 は48%の症例で認め,全体でのOS 中央値は22 ヵ月であった。多変量解析では,病理所見がypN0 であること,摘除リンパ節個数が15 個以上であること,切除断端陰性であること,シスプラチンを含む多剤併用レジメンの使用が長期生存に関連する予後予測因子であった4)。
このように局所進行例あるいはリンパ節転移を有する症例でも,導入全身化学療法の反応がよければ長期生存が期待できるが,膀胱全摘除術前に最終病理結果を予想することは困難であり,半数近い症例は導入全身化学療法後に膀胱全摘除術を実施しても長期生存は期待できないことも事実である。
遠隔転移を有する膀胱癌において,局所治療追加により予後を改善するか,という疑問があるが,この点についてSeisen らは,米国National Cancer Data Base を用いた後ろ向き研究で,遠隔転移を有する膀胱癌3,753 例を対象に,膀胱全摘除術もしくは50Gy 以上の膀胱への放射線照射が施行された297 例とそれ以外の3,456 例で予後を比較している。Inverse probability of treatment weighting(IPTW)法を用いた調整を行った結果,OS 中央値は局所治療群14.92 ヵ月,なし群は9.95 ヵ月で有意差を認めた。IPTW 調整後の多変量解析でも局所治療は長期生存に関する予後予測因子であったと報告している5)。本研究の問題点として転移の範囲,個数等は調整できていないことがあげられ,局所治療が施行されたコホートは,極めて選択された患者群であることは容易に予想される。遠隔転移を有する症例に対する局所治療は,現時点ではあくまで緩和的位置づけであり,予後改善の可能性に関しては,今後の報告を含めて検討していく必要がある。
* y:既治療例を再分類した場合の前頭語。
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- CQ20
- 転移を有する膀胱癌に対する転移巣切除は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 全身状態が良好な症例,病巣が単発で完全切除が可能な症例,化学療法が有効であった症例,病勢の進行が急速ではない症例等で転移巣切除を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
転移性尿路上皮癌における転移巣切除術は,古くはCowles らが単発肺転移症例6 例に対して肺転移切除術を施行し,生存期間中央値5 年の成績を報告したことにはじまる1)。実臨床において選択された症例で転移巣切除術が施行されることがあり,その治療成績が蓄積されている。
Siefker-Radtke らは,1985〜2001 年にM.D. Anderson Cancer Center で転移巣切除が施行された31 例の治療成績を報告した。切除された転移巣は,肺(77%,24/31),遠隔リンパ節(13%,4/31),脳(7%,2/31),皮膚(3%,1/31)で,30 例で完全切除が可能であった。OS 中央値は23 ヵ月,5 年生存率は33%であった2)。また,Lehmann らは,ドイツの多施設共同研究において,1991〜2008 年の間に転移巣切除術が施行された44 例の治療成績を報告した。周術期化学療法は80%(35/44)で施行,切除対象はすべて単一臓器,切除部位は後腹膜リンパ節(56.8%,25/44),肺(18.2%,8/44),遠隔リンパ節(11.4%,5/44),骨(4.5%,2/44),副腎(2.3%,1/44),脳(2.3%,1/44),小腸(2.3%,1/44),皮膚(2.3%,1/44)で,転移巣切除術からのOS 中央値は27 ヵ月,5 年全生存率は28%であった3)。
最近,米国SEER データベースを用いた研究結果が報告された。70,648 例の尿路上皮癌症例中,497 例で治療経過中に転移巣切除術が施行されており,転移巣切除術からのOS 中央値は19 ヵ月,3 年全生存率は38%であった4)。
本邦からは,Abe らが1989〜2012 年に国内4 施設において,1989〜2012 年の間に転移巣切除術が施行された42 例の治療成績を報告した。周術期化学療法は98%(41/42)で施行され,切除部位は,後腹膜/ 遠隔リンパ節(47.6%,20/42),肺(28.6%,12/42),局所再発(11.9%,5/42,骨盤内臓全摘:3,再発腫瘍切除術:2), 皮膚(4.8 %,2/42), 肝臓(2.4 %,1/42), 下肢(2.4 %,1/42),副腎(2.4%,1/42)で,転移巣切除術からのOS 中央値は26 ヵ月,5 年全生存率は31%であった。特に単発の肺転移,リンパ節転移例で,転移巣切除術後の長期生存が得られたと報告している5)。Matsuguma らは肺転移切除32 例の検討において5 年全生存率50%の成績を報告している6)。Kanzaki らも18 例の検討において,5 年全生存率46.5%の成績を報告し,単発の肺転移が長期生存と関わっていたと報告している7)。一方,Otto らはM-VAC 抵抗例であった70 例に転移巣切除術を施行した結果,摘除後の生存期間中央値は7 ヵ月に過ぎず,4%の症例で周術期死亡があったと報告している8)。
以上,これまでの報告を総括すると,転移巣切除(特に単発の肺転移症例)により,長期生存が得られる可能性がある。適応に関して高いエビデンスは存在しないが,Herr らは,①化学療法を先行し症例を選択する,②化学療法に対する良好な反応性,③限局するリンパ節転移・単発の肺転移・単一の臓器転移,④治癒切除が可能であること,⑤良好な全身状態と手術に向かう高いモチベーションを指摘9)しており,各症例について,患者の全身状態,化学療法の反応性,病勢進行の程度を十分に見極め,手術適応を検討することが重要であると思われる。
なお,同様の患者群において,化学療法後の残存病変に対する放射線照射に関しては,病勢コントロールに有益な可能性があるが,現時点では報告が限られており治療的意義に関して一定の見解は出ていない。今後のデータ集積が必要である。
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- CQ21
- 切除不能または転移を有する症例の一次治療としてGC 療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 切除不能または転移を有する症例の一次治療として,GC 療法を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
切除不能または転移を有する膀胱癌に対する治療の原則は薬物療法である。GC 療法は,それまで標準治療とされていたM-VAC 療法とのランダム化第Ⅲ相試験において,同等の治療成績を示し,有害事象が軽微であった1,2)。しかし本試験はGC のM-VAC に対する優越性を検証するデザインとなっており,主要評価項目のOS 中央値がGC 群14.8 ヵ月,M-VAC 群13.8 ヵ月(HR:1.04, 95 %CI:0.82〜1.32)と,GC の優越性を示すことができなかったという解釈が正しい。ただし,好中球数減少や発熱性好中球減少,粘膜炎,脱毛といった有害事象や治療関連死の割合はGC の方がM-VAC よりも低く,NCCN ガイドライン3)ではcategory 1 として,EAU ガイドライン4)ではstrong としてGC が推奨されている。
シスプラチンfit 患者に対するGC と並ぶ一次化学療法として,EAU ガイドライン4)ではM-VAC およびdose-dense(またはhigh-dose intensity)M-VAC がstrong として,NCCN ガイドライン3)ではdose-dense M-VAC がcategory 1 として推奨されている。dose-dense M-VAC はM-VAC 原法における15 日目および22 日目のメソトレキセートおよびビンブラスチンをスキップし,2 週間を1 サイクルとしてシスプラチンの治療強度を高めたレジメンで,G-CSF をDay 4 からDay 10 まで投与する5)。EORTC によりM-VAC とdose-dense M-VAC を比較するランダム化第Ⅲ相試験が実施され,主要評価項目のOS 中央値はdose-dense M-VAC 群で15.5 ヵ月,M-VAC 群で14.1 ヵ月と統計学的有意差を認めなかった(HR:0.80,95% CI:0.60〜1.06)5)。ただし毒性はG-CSF をルーチンに使用するためdose-dense M-VAC の方が軽微であり,7.3 年のフォローアップ後の解析6)では,HR:0.76, 95% CI:0.58〜0.99 と統計学的にdose-dense M-VAC 群が優れていた。このことより,NCCN ガイドライン3)では従来のM-VAC は推奨されていない。
なおGC のDay 1 にパクリタキセルを追加したPGC とGC のランダム化第Ⅲ相試験7)において,PGC 群およびGC 群のOS はそれぞれ15.8 ヵ月および12.7 ヵ月であったが,統計学的な有意差には至らなかった(HR:0.85,95% CI:0.72〜1.02)。PGC はGC と比較して好中球数減少と発熱性好中球減少の頻度が高くなるが,非血液毒性には差がなく,奏効率はPGC 群が有意に優れていた(56% vs. 44% , p=0.0031)ことから,EAU ガイドライン4)ではPGC もstrong として推奨されている。しかしNCCN ガイドライン3)では推奨されておらず,わが国では保険診療上の制約がある(パクリタキセルの使用は腎障害がある場合または二次化学療法に限る)ため,本ガイドラインでは推奨しない。
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- CQ22
- 腎機能障害を伴う切除不能または有転移症例に対するGCarbo 療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- 腎機能障害以外の予後不良因子がない症例にはGCarbo 療法を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
シスプラチン(CDDP)を含む化学療法はStageⅣ膀胱癌の第一選択の治療として確立している。しかしながら,進行膀胱癌症例は高齢者が多く,腎機能が障害されていることが多い1)。Dash ら2)によれば,Cockroft-Gault の算出式を用いた場合,アジュバント化学療法の適応と判断されたT3 以上あるいはN+の膀胱全摘症例では28%,このうち70 歳以上に限ると40%の症例でクレアチニンクリアランス(CCr)が60mL/ 分未満であった。このような,腎機能障害を有するunfit for CDDP 症例に対しては,CDDP を腎機能障害が少ないカルボプラチン(CBDCA)に変更したゲムシタビン+CBDCA(GCarbo)が用いられるが,他にCDDP+メトトレキサート+ビンブラスチン(CMV)をCBDCA に変更したM-CAVI や,CDDP を減量あるいは分割投与するGC・M-VAC,白金製剤を含まないゲムシタビン+パクリタキセル(GP)などのレジメンも選択される。他のレジメンと比較しGCarbo の副作用の発現程度,治療的優位性は定まっていない。今までに腎機能障害を有するStage Ⅳ膀胱癌におけるGCarbo とM-CAVI を比較した第Ⅱ-Ⅲ相試験が報告されている。De Santis ら3)は第Ⅱ相RCT を行い,30 < CCr < 60,またはPS 2 に該当する患者(unfit for CDDP)をGCarbo(n=88),またはM-CAVI(n=87)に割り付け,Overall response rate(ORR)とsevere acute toxicity(SAT)を比較した。その結果ORR はGCarbo で42%,M-CAVI で30%,SAT はGCarbo で13.6%,M-CAVI で23%と2 つのレジメンはどちらも有効と判断され,OS を比較検討する第Ⅲ相試験に進んだ。第Ⅲ相試験では症例が追加され,GCarbo とM-CAVI にそれぞれ119 例が割り付けられた4)。OS はGCarbo で9.3 ヵ月,M-CAVI で8.1 ヵ月と有意差を認めなかった。ORR はそれぞれ41.2 %,30.3 % であった。SAT はそれぞれ9.3 %,21.2 % とM-CAVI でより多く認められた。以上の結果から,GCarbo はM-CAVI と比較して効果が同等であり,重篤な副作用の発現頻度が低いことから,unfit for CDDP 症例において,より有用な治療法と結論された。なお,CCr < 60mL/ 分のみの症例と比較して,CCr < 60mL/ 分かつPS 2 の群の予後は不良であり,SAT の頻度も高かった。PS と内臓転移の有無によるBajorin リスクグループ5)では,グループ2*の予後は不良であった。したがって,腎機能障害に加えてPS 2 あるいは内臓転移などの予後不良因子を有する症例では,副作用が強く発現するため,GCarbo の有効性は限定的である。
以上より,腎機能障害を有するStageⅣの膀胱癌に対して,GCarbo 療法は腎機能障害以外の予後不良因子がない症例には考慮することが推奨される。
* KPS 80%未満かつ臓器転移(肺,肝,または骨)を有するグループ。
参考文献
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- CQ23
- 一次抗癌化学療法後に再発または進行した局所進行性または転移性膀胱癌に対するペムブロリズマブ使用は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 一次治療のプラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した,あるいはプラチナ製剤併用化学療法による術前もしくは術後補助化学療法の治療終了後12 ヵ月以内に再発または転移した膀胱癌に対して,ぺムブロリズマブを使用することが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
従来,プラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した局所進行性または転移性の膀胱癌に対して定まった二次治療は存在せず,タキサン系抗癌薬(パクリタキセルあるいはドセタキセル)等を単剤あるいは併用した多剤化学療法が適宜用いられていた1)。2017 年12 月に一次治療のプラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した,あるいはプラチナ製剤併用化学療法による術前もしくは術後補助化学療法の治療終了後12 ヵ月以内に再発または転移した膀胱癌に対して,ヒト化抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体であるぺムブロリズマブの使用が本邦で承認された。ぺムブロリズマブが使用されるエビデンスとなったKEYNOTE-045 試験では,日本人52 例を含む542 例を,ぺムブロリズマブ群または化学療法群に1:1 で無作為に割付し,有効性・安全性が検討されている2)。OS の中央値はぺムブロリズマブ群で10.3 ヵ月,化学療法群で7.4 ヵ月であり,ぺムブロリズマブ群で有意な延長が確認され,奏効率はぺムブロリズマブ群で21.1%,化学療法群で11.4%であり,ぺムブロリズマブ群で有意に高い値であった。なお奏効が確定した患者においては奏効期間の明らかな延長が認められ,いわゆるdurable response が得られている。健康関連QOL 調査においてもぺムブロリズマブ群の良好なQOL スコアが示されている3)。ぺムブロリズマブ群の主な副作用はそう痒症(19.5%),疲労(13.9%),悪心(10.9%)で,irAE は16.9%に認められ,主なものは甲状腺機能低下症(6.4%)であった。免疫チェックポイント阻害薬に起因するirAE の発症は比較的稀であるものの重篤化しやすく,早期発見と十分な管理が必要で,可能なら他診療部門を含めたチーム医療により慎重に対応することが望ましい。
2018 年版EAU ガイドラインでは,プラチナ製剤併用化学療法施行中あるいは施行後に進行する転移性膀胱癌に対してぺムブロリズマブ,アテゾリズマブ,ニボルマブをstrong として推奨している4)。2019 年版 version 1 のNCCN ガイドラインでは,プラチナ製剤使用後の局所進行性あるいは転移性膀胱癌(Stage Ⅳ)に対してぺムブロリズマブをpreferred regimen として,アテゾリズマブ,ニボルマブ,デュルバルマブ,アベルマブをalternative preferred regimen として取り上げている5)。
転移性膀胱癌に対する二次治療としての免疫チェックポイント阻害薬の使用に際し,治療効果が不十分である症例に対する治療の切り替えのタイミング6),有用な治療効果予測マーカー,有効例に対する治療継続期間などは定まっていない。また免疫チェックポイント阻害薬が無効の場合の三次治療も確立されていない7)。今後,より高い有効性・安全性を有する,転移性膀胱癌に対する二次,および三次治療の確立が望まれる。
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- CQ24
- 局所進行性あるいは転移性の膀胱癌に対する緩和目的の放射線外照射療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- 局所進行性膀胱癌に起因する局所症状の軽減および遠隔転移に起因する症状緩和目的で放射線外照射療法を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
放射線外照射療法は,多くの癌種において,根治療法としてだけでなく症状緩和を目的としても有効であり広く用いられている。膀胱癌においては,原発腫瘍の局所進展による局所症状(主として膀胱出血)と遠隔転移(主として骨転移,脳転移)による症状の改善を目的に加療が行われることが多い。第Ⅲ相試験は少ないものの,大多数の研究において放射線治療による高い症状緩和効果と低い有害事象発生頻度が一致して報告されている。加えて,約70%の患者において治療後3 ヵ月の時点でのQOL は改善または維持されることから1,2),緩和目的の放射線外照射療法は推奨できると判断される。
根治的治療が困難な手術不能例や高度の局所進展例においては,病勢の進行抑制に有効である。特に,原発巣に起因する膀胱出血に対する緩和効果は高く,おおむね70〜90%の患者に有意な出血緩和効果が得られ,50〜60%に完全緩解が得られると報告されている1〜8)。ただし,初期効果は高いものの,6 ヵ月目の評価で69%の患者に再出血が認められ7),症状改善後の再増悪までの期間は中央値で6 ヵ月と報告されており2),長期制御は期待し難いことが課題である。放射線照射方法としては,寡分割照射が主流である1〜8)。
骨転移に起因する疼痛に対しては,おおむね60〜80%の患者に症状緩和効果が得られる1,3〜5,9,10)。放射線照射方法としては,1 回照射を含む寡分割照射が主流となっている11)。骨転移に起因する疼痛緩和効果に関する1 回照射と分割照射を比較した25 のRCT のシステマティックレビューでは,有効率,完全緩解率はともに分割方法間に有意差を認めなかったが,再治療率は1 回照射群が分割照射群の2.6 倍と有意に多かった(95% CI:1.92〜3.67,p < 0.00001)10)。したがって,患者の全身状態や予後に応じて,適切な線量分割を選択することが重要と考えられる。
頻度は低いものの,膀胱癌の脳転移に対しても放射線外照射は有効である。照射方法としては,脳照射と定位放射線照射が広く用いられており,膀胱癌においても手術例と比較して遜色のない成績が報告されている12)。また,脳転移に対する全脳照射においても,4Gy×5 回の寡分割照射が試みられている13)。脳転移の治療については,脳腫瘍診療ガイドラインを参照されたい14)。
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- 追加CQ
- 根治切除不能または転移を有する症例における一次抗癌化学療法後の維持療法としてアベルマブ使用は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 一次抗癌化学療法後の病勢進行を認めない根治切除不能または転移を有する症例に対して, アベルマブ維持療法を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
根治切除不能または転移を有する尿路上皮癌に対しては,プラチナ製剤を中心とした多剤併用抗癌化学療法が一次治療として用いられている。その奏効率は高いものの長期成鎖は満足できるものではない。シスプラチンfit 患者を対象に行われたGC 療法とMVAC 療法の前向きランダム化比較試験の報告によると,GC 療法,MVAC 療法の全奏効率はそれぞれ49.4%,45.7%で,病勢コントロール率(CR+PR+SD の割合)はそれぞれ82.9%,78.2%であった1)。しかしながら全生存期間の中央値はそれぞれ14.0 カ月, 15.2 カ月であり,良好な長期成績とは言い難い2)。 シスプラチンunfit 患者を対象に行われたGCarbo 療法とM-CAVI 療法(メトトレキサート+カルボプラチン+ビンブラスチン)の前向きランダム化比較試験の結果では,GCarbo 療法の奏効率は41.2%,病勢コントロール率は74.0%であったが,全生存期間の中央値は9.3 カ月と短かった3)。長期成績の向上を目指して,一次抗癌化学療法で効果を認めた症例に対して,間欠的に抗癌剤を投与する維持療法が試みられてきたが,高い有効性を示す抗癌剤維持療法の確立には至っていない。
2021 年2 月に根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法として,ヒト型抗ヒトPD-Ll モノクロナール)抗体であるアベルマブの使用が本邦で承認された。アベルマブが使用されるエピデンスとなったJAVELIN Bladder 100 試験は,一次抗癌化学療法としてGC 療法あるいはGCarbo 療法を4 から6 サイクル施行後に病勢進行を認めない根治切除不能または転移を有する尿路上皮癌患者700 例を対象とし, アベルマブ維持治療(10mg/kg, 2 週間毎投与)にbest supportive care (BSC)を併用する群(アベルマブ+BSC 群)とBSC 単独群に,1:1 で無作為化割り付けして行われた4)。全患者集団においてアベルマブ+BSC 群の全生存期間の中央値は21.4 ヵ月で,BSC 単独群の14.3 ヵ月と比較して有意に延長していた。また,無増悪生存期間の中央値はアベルマブ+BSC 群で3.7 ヵ月であり,BSC 単独群の2.0 ヵ月と比較して延長が確認された。有害事象の発現率は,アベルマブ+BSC 群で98.0%,BSC 単独群で77.7%であった。グレード3 以上の有害事象の発現率はそれぞれ47.4%及び25.2%であった。なおアベルマブの注意すべき有害事象としてinfusion reaction が挙げられるが,その発現頻度は全グレードで21.5%,グレード3 以上で0.9%であった。Infusion reaction を軽減させるためにはアベルマブ投与前に抗ヒスタミン薬,解熱鎮痛薬の使用を考慮することが望まれる。
2021 年版EAU ガイドラインでは, 一次抗癌化学療法でSD 以上の有効性を認めた転移性膀脱癌に対して,アベルマブ維持療法をstrong として推奨している5)。同様に2021 年版version 4 のNCCN ガイドラインでは,category 1 として推奨している6)。
以上より,一次抗癌化学療法後に病勢進行を認めない転移性膀脱癌に対して,アベルマブ維持療法は生命予後の延長が期待できるため推奨される。今後,アベルマブ維持療法後に病勢進行を認める症例に対する逐次治療の確立,アベルマブの投与継続期間の最適化の検証が望まれる。
参考文献
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Ⅶ.膀胱癌の経過観察
- 総論
1.膀胱癌の経過観察について
膀胱癌の経過観察では膀胱が温存されているNMIBC 患者と膀胱が摘除された患者では大きな違いがある。MIBC に対して放射線療法+化学療法により膀胱が温存された場合の詳細は省くが,基本的にはMIBC の膀胱全摘除後の経過観察項目にハイリスクNMIBC の膀胱に対する経過観察項目を組み合わせたものと考えるのが妥当であろう。
2.NMIBC の経過観察
NMIBC に対する経過観察の目的は,膀胱内再発の早期発見による侵襲度の高い治療の回避,MIBC への進展を含むリスクの高い再発の早期発見による膀胱温存維持あるいは生存率の改善,上部尿路病変の早期発見による生存率向上にあると言える。NMIBC に対してBCG 膀胱内注入療法を行わない場合,5 年膀胱内再発率は31〜78%,5 年筋層進展率は0.8〜45%とされている1)。BCG の導入により,5 年晩期再発率は25.9〜55.4%に,5 年(筋層)進展率は2.4〜18.9%程度に低下するとされている2)。このように,再発率,MIBC への進展率に大きな違いがあるのは,NMIBC が非常に多様性のある疾患群であるためである。したがって,NMIBC を妥当性のあるリスク分類のもとに経過観察法を修正することは当然と言える。
3.経過観察の視点からのNMIBC のリスク分類について
リスク分類についての詳細は他項に譲るが,経過観察について注意すべきことがある。例えばEAU のNMIBC リスク分類においては,代表的なSylvester らの研究をもとにしているが,本研究自体はEORTC の7 つのRCT における2,596 名のNMIBC 患者を対象としたデータを基に作成されたものである1)。結果は,再発,進展ともに,腫瘍数,腫瘍サイズ,再発歴,T 病期,異型度,CIS の有無がリスク因子とされるが,対象患者は70 歳以下が67.4%,80 歳を超えた患者が4.5%を占め,BCG 膀胱内注入療法は全員受けていなかった集団のデータを基にしている1)。一方,同グループはBCG の導入療法と1〜3 年の維持療法を行った集団でのリスク因子の解析結果も報告しており,再発に寄与する因子は,異型度,再発歴,腫瘍数であり,進展や疾患特異的生存に関与する因子はT 病期と異型度であった2)。このように,再発率,再発パターン,時期などは,治療介入や患者背景により変化していく可能性があり,最新のデータも加味しながら実臨床では応用していくべきであり,日本の現在の実臨床とは違いがあることに注意が必要である。
4.NMIBC 患者の上部尿路の経過観察は?
一般にNMIBC の患者に同時性の上部尿路腫瘍が見つかる割合は1.8%であり,膀胱三角部に腫瘍があるとそのリスクは6 倍になる3)。8 年間の経過観察で膀胱CIS の患者では24.6%に上部尿路に腫瘍病変が生じるが,CIS を伴わないNMIBC の場合は2.3%であった4)。他の研究ではNMIBC に対する2 年ごとの観察で上部尿路腫瘍が2.6%に認められたが,低リスクでは0.6%であったのに対し,高リスクでは4.1%と高い5)。上部尿路腫瘍の発症リスクとしては膀胱腫瘍の多発性が唯一の有意なリスク因子であったという5)。全体として,NMIBC の経過観察中の上部尿路腫瘍の頻度は低く,例えばNMIBC 患者にCT urography(CTU)で定期経過観察を行ってもNMIBC 治療後の上部尿路再発の25〜27%程度しか検出できなかったとの報告もあり6),全てのNMIBC 患者への上部尿路の画像診断による定期経過観察には疑問が残る。超音波検査は容易に施行可能であるが,定期診察時における超音波検査が上部尿路再発の早期発見と結果的に尿路上皮癌による死亡を減らせるかのエビデンスはない。
5.リスク分類に応じたNMIBC の経過観察
現時点ではNMIBC の経過観察において,リスク分類に応じて方法や頻度,期間を修正した結果が,最終的な膀胱温存率,進展率,癌死率,経済的効果にどの程度寄与できるかを検証した前向きの研究や前向きRCT はない。しかしながら過去のデータからリスクごとの再発率,進展率の大きな違いは明らかであり,既存のリスク分類に沿って経過観察のプロトコールを修正することは妥当といえる。ここでは海外の主要機関(AUA,EAU,NCCN)によるガイドライン7〜9),および本ガイドライン委員会の経過観察プロトコールの一案を提示する(表1)。経過観察における尿中分子マーカーの応用についてはCQ26 に記載するが,保険承認上の制約もあり,表1 には明記していない。表1 にあげた経過観察については,上述してきた内容の他に以下の後方視的なデータが,主な根拠となっている。
ⅰ)初回治療後3 ヵ月目の所見がその後の再発や進展の重要な指標となる10,11)。
ⅱ)低リスク膀胱癌の再発はほとんどが低異型度のTa である。したがって経過観察における尿細胞診の有用性は極めて低い12,13)。
ⅲ)低リスク膀胱癌が5 年間再発なければその後の再発の確率は低い14)。
ⅳ)中・高リスク膀胱癌では10 年以降の再発もありうる15)。
6.膀胱全摘除術後の経過観察〜特に筋層浸潤癌
CQ27,28 の解説でも記載されているように,膀胱全摘除術後の経過観察は,①癌の再発(局所・尿路再発,遠隔転移),②上部尿路の変化と腎機能,③代謝異常が重要観察項目である。
(1)癌の再発に関する経過観察について
再発の早期発見が経過観察の重要な目的であるが,現在まで,膀胱全摘除術後に早期発見することにより生存率や生存期間の延長が得られることを示した前向き研究はない16)。これは,これまで膀胱全摘除術後の再発に対する治療がプラチナ製剤を中心とする化学療法に限られていたためにも起因する。
しかし,免疫チェックポイント阻害薬に代表される免疫療法の進歩や新規薬剤開発が進んでおり,再発の早期発見の意義は今後高まる可能性がある。しかしながら,膀胱癌患者はPS や年齢,全身状態などの点で再発時の積極的治療が困難な場合や積極的治療を希望されない場合も多く,そのような患者を綿密な経過観察プロトコールに縛らないように配慮することも必要である。
①局所再発
局所再発の定義は膀胱が位置した箇所,あるいは骨盤リンパ節の郭清された範囲内とする場合が多い。その頻度は5〜16.5%とされており17,18),多くは2 年以内に起こる。局所再発の危険因子としては,病期,リンパ節転移の存在,骨盤リンパ節郭清の質,断端陽性,周術期化学療法などがあげられる18,19)。
②遠隔転移
遠隔転移再発の80〜90%は3 年以内,特に2 年以内にきたすことが多いが20,21),周術期化学療法を施行された患者では異なる可能性がある。遠隔転移の好発部位としてはリンパ節,肺,肝臓,骨などがあげられ22,23),遠隔転移再発のリスク因子としてはT 病期(T3/4)やリンパ節転移があげられる24)。
③上部尿路再発
上部尿路再発は膀胱全摘術後で1.8〜6.0%とされているが8,17,25),3 年以降の再発部位としてはその頻度は高く18),3 年で4%,5 年で7%との報告もある26)。膀胱全摘除術後の上部尿路再発リスクとしては,膀胱癌の多発性,CIS の合併,尿管の断端陽性などがあげられている25)。また術前に尿管ステントが留置されていた患者では膀胱全摘除術後の上部尿路再発率が高いとの報告もあり,注意が必要である27)。
④尿道再発
膀胱全摘除術後の尿道再発に関しては,その頻度は男性で1.5〜6.0%,女性で0.83〜4.3%とされ17),3 年以内の再発が多いという。尿道再発の危険因子として,男性ではNMIBC に対する膀胱全摘,前立腺の病変,再発性NMIBC の既往等があげられており,女性では膀胱頸部病変があげられている17)。禁制型尿路変向(新膀胱)より非禁制型尿路変向の方が尿道再発率は高い(0.9〜4.0% vs 6.4〜11.1%)との報告が多く18),特に理由がない限り,基本的には非禁制型尿路変向の場合は膀胱全摘除術時には尿道全摘を行うべきであろう。最近のメタアナリシス研究でも,尿道再発のリスク因子として,男性,非禁制型尿路変向,CIS,表在性を含む膀胱癌の既往,前立腺部尿道や膀胱頸部の腫瘍,多発膀胱腫瘍や尿道断端陽性等があげられている28)。また,無症候性で発見された尿道再発の方が症状発現後より予後が良いことから洗浄尿細胞診による経過観察が重要であるとされているが16,28),前述したように非禁制型の尿路変向の場合には尿道全摘を行うべきであろう。
(2)機能的経過観察について
上部尿路の変化と腎機能,ならびに代謝異常に関しては尿路変向による変化と加齢や併存疾患による機能低下の経過観察が重要である8,9,16,29)。また,非禁制型尿路変向ではストーマの,禁制型の場合には排尿状態の観察や管理も生涯必要となる。腎機能に関しては禁制型か非禁制型の尿路変向の方法による腎機能低下の差はないとされるが30〜32),非禁制型でも尿管皮膚瘻では腎機能低下が高度となる傾向が指摘されている32)。いずれにしても,上部尿路の形態と腎機能の経過観察は癌の再発の経過観察が終了した後も必要と考えられる8,9,16,17)。特に術後の水腎症,腸管利用の尿路変向における尿管腸管吻合部狭窄が腎機能低下に有意に影響することから33),これらのモニタリングは重要である。回腸導管に限った研究であるが,最初の5 年に45%の患者に尿路変向に起因した合併症が起こり,10 年,15 年,15 年を超えると,それぞれ50%,54%,94%の生存患者に合併症が起こるとの報告もあり33),生涯の経過観察の必要性が支持されている8,9,16,29)。
代謝異常に関しては,特にビタミンB12 欠乏症,高クロール性代謝性アシドーシスが重要である。ビタミンB12 欠乏症は回腸終末部を利用する尿路変向に特異的で,発生率は0.2〜33%とされている34〜36)。ビタミンB12 は肝臓に貯蔵されているため欠乏症が出現するのは多くは術後3 年以降であり,この時期より毎年のビタミンB12 測定を行うことが肝要である。
尿路変向や再建に回腸を用いた場合,尿中のCl−,NH3+,H+を再吸収し,HCO3−を排出するため,しばしば高クロール性代謝性アシドーシスをきたす35,36)。代謝性アシドーシスは骨塩量低下を招き,病的骨折のリスクを21%上げ,尿路結石の原因になる可能性がある37)。膀胱全摘除術に伴う回腸利用の代用膀胱では術後90 日を超えて観察できた923 名中307 名(33%)に長期の重曹の投与が必要であったという35)。アシドーシスの頻度は回腸導管で15%程度であるが,利用腸管の長い禁制型で頻度は上昇(50%程度まで)するという38)。このように機能的な経過観察は尿路上皮癌再発の経過観察必要性が終了したとしても続けられるべきである。
7.経過観察のタイムテーブルと方法
膀胱全摘除術を受けた患者の経過観察において,海外のデータではあるが,ほとんどの再発は症状を伴っており,50%を超える遠隔(転移)再発が症状ありとの報告もある16)。また,症状ありと症状なしで発見された再発は,その後の生存率の差がないとの報告39)もみられる一方,症状なしの発見は生存率が上昇する(特に肺転移の早期発見40))との報告20,41)もあるが全て後方視的研究である42)。今後,免疫チェックポイント阻害薬に代表される新規の再発性,転移性の尿路上皮癌に対する薬剤が使用できるようになり,再発の早期発見の意義や重要性が変わる可能性があり,経過観察の方法や時期,期間も変わる可能性がある。EAU やAUA,NCCN によるガイドラインでは病期や再発リスクにあわせた明確な経過観察のタイムテーブルや方法を提示しておらず7〜9),International Bladder Cancer Network は,全摘時病理所見に沿った一定の経過観察法が提示されているが,周術期化学療法施行の有無などを加味したり確固たるエビデンスに基づいたものではない16)。また全身状態や年齢を加味すべきとの見解もある43)。本ガイドライン作成委員会の推奨する膀胱全摘除術後の経過観察を,① pT2 以下かつpN0 と,② pT3 以上あるいはany pT N1〜3 の2 分類として表2 に提示する。全摘標本でpT1 以下かつpN0 の症例はpT2N0 より再発リスクは低いことから,①をさらに2 グループに分類して経過観察のプロトコールを変えているものもある42,44)。明確なエビデンスに基づいたものではないが,腎上部尿路の形態変化や上部尿路再発の観察については造影CT で行うこととしている7〜9,16)。
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- CQ25
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の患者にリスク分類に沿った経過観察は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 初回治療後3 ヵ月目に膀胱鏡検査を行い,その後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
NMIBC は再発率が高く,進行の危険性もあるため治療後の経過観察が必須である。特に,MIBC やhigh grade 腫瘍の出現はその後の治療選択や予後に大きく影響するため注意が必要である。EAU およびNCCN いずれのガイドラインでもNMIBC 初期治療後はリスク分類に基づいた経過観察プロトコールが推奨されている1,2)。しかし,これまでにリスク分類に基づいた経過観察の有用性や安全性を証明するRCT は行われていない。
TURBT 後3 ヵ月の膀胱鏡検査は再発,進行の重要な予測因子であるため,通常すべてのNMIBC 患者の経過観察として行われるべきと考える3,4)。TaG1 腫瘍の前向き経過観察試験では3 ヵ月目の再発および非再発症例のその後1 年の再発率がそれぞれ55.8%,17.8%であり,3 ヵ月目の再発症例で有意に多かったと報告されている4)。また,Solsona らは膀胱注入療法を施行したCIS またはT1G3 において,3 ヵ月目の膀胱鏡所見がMIBC 移行の独立した危険因子であると報告している3)。以上より高低リスク腫瘍のいずれにおいても3 ヵ月目の膀胱鏡検査の重要性が示唆されている。
EAU ガイドラインでは,腫瘍個数,腫瘍径,再発回数,深達度,CIS 併発,grade に基づいた再発および進行リスクスコアが提唱されている1,5)。低リスク腫瘍(初発,単発,Ta low grade,3cm 未満,CIS 併発なしをすべて満たす)は術後3 ヵ月の膀胱鏡検査で陰性なら12 ヵ月目に膀胱鏡検査を施行し,以降5 年まで年1 回膀胱鏡検査を行うことが推奨されている。逆に高リスク腫瘍(T1,high grade,CIS,3cm より大きい多発再発のT1 low grade のいずれか)では,2 年間3 ヵ月ごと,5 年まで6 ヵ月ごと,その後は年1 回の膀胱鏡と尿細胞診を行うことが推奨されている。中リスクでは3 ヵ月目に尿細胞診と膀胱鏡検査を行い,もし陰性なら5 年まで個々の症例に応じ3〜6 ヵ月の間隔で尿細胞診と膀胱鏡検査を行うとされている。低リスク腫瘍では5 年以降の再発が低いため経過観察は5 年とされているが,中・高リスク腫瘍では5 年以降の再発の可能性があるため,永続的な経過観察が推奨されている1,4,6)。
NCCN ガイドラインでは,AUA リスクカテゴリーに基づいた経過観察が推奨されている2)。低リスク腫瘍(単発3cm 以下のlow grade)は3 ヵ月,12 ヵ月で膀胱鏡を施行し,その後5 年まで1 年ごとの膀胱鏡が推奨されている。中リスク腫瘍(1 年以内の再発のTa low grade,3cm を越えるlow grade 単発腫瘍,low grade 多発腫瘍,3cm 以下のTa high grade,T1 low grade)では治療後1 年目は3,6,12 ヵ月目に,2 年目は6 ヵ月ごとに,その後5 年までは1 年ごとの尿細胞診と膀胱鏡検査が推奨されている。高リスク腫瘍(T1 high grade,再発Ta high grade,CIS,high grade のBCG 後再発,組織学的亜型,脈管侵襲あり,前立腺部尿道進展のいずれか)でははじめの2 年間は3 ヵ月ごと,5 年まで半年ごと,10 年まで1 年ごとの膀胱鏡検査と尿細胞診が推奨されている。それ以外の経過観察に関しては臨床的必要性を考慮し決定するとされている2)。
以上より,現時点ではリスク分類に基づいた経過観察の有効性および安全性を証明した前向きなエビデンスは十分でないものの,治療後3 ヵ月目にすべてのNMIBC に膀胱鏡検査を施行し,その後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨される。
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- Holmäng S and Ströck V:Should follow-up cystoscopy in bacillus Calmette-Guérin-treated patients continue after five tumour-free years? Eur Urol 61:503-507, 2012
- CQ26
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の患者の経過観察において尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術の使用は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 再発高リスクの症例では膀胱鏡と尿細胞診による従来の経過観察に加えて,尿中分子マーカーやNBI は選択された症例に対して考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
NMIBC に対する初期治療後の経過観察は,侵襲的な膀胱鏡検査がその中心となる。そのため,より非侵襲的な検査による膀胱鏡の回避や新規検査による診断率向上,予後改善が期待される。非侵襲的検査として,尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術(PDD,NBI 等)の有用性が複数報告されている1,2)が,その経過観察における有用性を証明したRCT は存在しない。
尿中マーカーとして特異度の高い尿細胞診が広く用いられているが,診断が病理医の経験や検体の採取・処理法に依存するなどの問題がある1)。また尿細胞診の感度は35〜70%と一般的に高くなく,特に低異型度および再発腫瘍では感度が低下すると報告されている3)。NMIBC の診断や経過観察に用いられる尿中分子マーカーとして,NMP22,BTA,FISH 法による膀胱癌関連遺伝子検査(ウロビジョンⓇ)など複数の尿中分子マーカーの有用性が報告されており,その多くは尿細胞診より感度が高く,特異度が低いとされる3,4)。Yoder らは膀胱癌の経過観察において尿細胞診陰性例の26%が尿中FISH 検査陽性で,そのうちの62.5%に癌が発見されたと報告している5)。Kamat らはTURBT 後BCG 膀胱内注入療法を施行するNMIBC 患者に対するFISH を用いた経過観察の有用性を検討する前向き試験で,TURBT 後6 週目のFISH 陽性は3 ヵ月もしくは6 ヵ月後の再発リスクが3〜5 倍,進行が5〜13 倍となると報告している6)。Shariat らは尿細胞診陰性のNMIBC において尿中NMP22 陽性は再発および進行に有意に関連し,NMP22 を用いた経過観察を行うと3%の進行見逃しで不要な膀胱鏡検査を12%回避できると報告している7)。しかし,前向き試験やエキスパートオピニオンにおいても膀胱鏡検査および尿細胞診に代わる十分な尿中分子マーカーは今のところないと結論づけられている1,2,8,9)。
膀胱鏡検査は膀胱癌の診断および経過観察の中心的検査であるが,通常の膀胱鏡検査では10〜20%の腫瘍の見逃しがあると報告されている1)。NBI や5-ALA またはHAL を用いたPDD といった腫瘍可視化技術のNMIBC の診断や治療における有用性が報告されているが,経過観察における有用性を検討した報告は少ない10,11)。NMIBC 治療歴のある患者を含む膀胱癌患者の検討でHAL を用いたPDD は硬性鏡,軟性鏡どちらでも通常の膀胱鏡検査に比較し腫瘍検出率が向上した9)。Herr らはlow grade の再発膀胱癌患者において通常の膀胱鏡に比較しNBI を用いた経過観察は再発回数が少なく,非再発生存期間が有意に延長することを報告した11)。上述のように,腫瘍可視化技術を用いた経過観察の有用性に期待が高まるが,経過観察における有用性および安全性を比較した前向きRCT はない。
以上より,現時点では有用性が証明された尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術等の非侵襲検査は存在しないため,通常の膀胱鏡検査が経過観察の軸となる。しかし,通常の膀胱鏡検査ができない症例や膀胱鏡検査および尿細胞診の補助検査として上記の非侵襲検査法が考慮されうる。なお日本では2019 年1 月現在,膀胱癌の経過観察において保険承認されている尿中分子マーカーは尿中BTA が再発診断目的に,FISH 法がCIS と診断された患者に経尿道的手術後2 年を限度として2 回に限り認められているのみである。よって,診断率の向上や膀胱鏡検査回避のための非侵襲検査を用いた経過観察に関するさらなる検討が待たれるところである。
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- CQ27
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)ならびに膀胱全摘除術後の経過観察において,上部尿路の評価は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 上部尿路の評価を行い,無症候性再発を早期発見することは推奨される(推奨の強さ2)。ただし,現時点で明確な上部尿路経過観察プロトコールは確立されていない。
解 説
NMIBC 治療後の上部尿路再発率は,低リスク癌では0.7%程度であるが高リスク癌では20〜25%とされる1)。EAU およびNCCN いずれのガイドラインでもNMIBC 初期治療後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨され,その中で上部尿路経過観察に関しては,EAU では進展高リスク症例において1 年ごとの画像検索が推奨されており(期間は明記なし),NCCN ガイドラインではAUA が定義する高リスク症例に対しては術後1 年目,以後1〜2 年ごとに10 年目までの上部尿路検索が推奨されている2,3)。International Bladder Cancer Network が2016 年に発表した推奨プロトコールもNCCN 同様である4)。上部尿路癌に対する細胞診の感度は膀胱癌より低いとされており,画像検査としてCTU(CT 造影剤が使用不可の場合はMR urography(MRU)での代用)の併用が推奨される。
ただし,これらはすべて後ろ向き研究から導き出されたものである。Sternberg らは,935 例のNMIBC の経過観察において51 例に上部尿路再発を認め,そのうち定期画像検査で同定された症例は15 例(29%)に留まり,延べ3,074 件の画像検査の有効率はわずか0.49%であったことからCTU による経過観察に疑問を呈している1)。T1G3 ハイリスク癌でもBCG 膀胱内注入療法を行い5 年間膀胱内無再発の場合,その後の上部尿路再発リスクは非常に低くなるとの報告もあり5),NMIBC 治療後の上部尿路経過観察の頻度や期間に関しては議論が必要と考えられる。
一方,膀胱全摘除術後では上部尿路再発は1.8〜6.0%と比較的稀なものの,術後3 年目以後の晩期再発部位としては頻度が高い6)。上部尿路再発症例は遠隔転移を伴うことは稀で,再発した場合,生存期間中央値は10〜55 ヵ月,60〜67%の症例は癌死すると報告されている7,8)。Picozzi らのメタアナリシスでは上部尿路再発のうち38%は無症候性で,定期検査が発見の契機となっている9)。無症候性での早期発見にて癌死率・全死亡率が30%低下するとの報告もあり定期的な経過観察が臨床的に有意義な可能性があるが,この点に関しては議論の余地がある10)。経過観察法としては尿細胞診のみではなくCTU を用いることで,手術合併症(水腎症・傍ストーマヘルニア)や遠隔転移再発・リンパ節再発のチェックを同時に行うことが勧められる11)。尿細胞診以外にFISH 法(ウロビジョン®)など新たな診断技術の併用も試みられているが,現状では偽陽性率が高く,今後診断率の向上が求められる12)。
膀胱全摘除術後の経過観察として,EAU ガイドラインでは,1 年目は4 ヵ月ごと,2〜3 年目は6 ヵ月ごと,以後は1 年ごとの術後画像検索が推奨されており,その中に上部尿路画像検査も含まれるものと考えられる。NCCN ガイドラインでは上部尿路および腹部・骨盤部画像を術後2 年は3〜6 ヵ月ごと,5 年目までは1 年ごとを推奨している。
膀胱全摘除術後の上部尿路再発リスクは,MIBC よりもNMIBC 症例の方が高く,その他のリスク因子としては多発・CIS・遠位尿管断端陽性があげられる13,14)。膀胱全摘除術時尿管断端CIS 陽性例に対して,6 ヵ月ごとの尿管鏡検査を用いた経過観察が上部尿路再発早期発見に有用であったとの報告もあるが15),リスク・ベネフィットを考え,このようなリスク因子を持つ尿路再発高リスク症例においてはより入念な上部尿路経過観察が有効かもしれない。
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- CQ28
- 膀胱全摘除術後は摘出病理組織所見や再発リスクに沿った経過観察が推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 再発リスクに沿った経過観察を行うことが推奨される(推奨の強さ2)。ただし,現時点で摘出病理組織所見や再発リスクに沿った明確な経過観察プロトコールは確立されていない。
解 説
MIBC に対する膀胱全摘除術後の経過観察は,①癌の再発(局所・尿路再発,遠隔転移),②尿路変向に関連した上部尿路の変化,③腎機能,および,④代謝異常が観察項目である。②〜④に関しては,非禁制型尿路変向時の水腎症の有無,腎機能モニタリング,禁制型尿路変向時の代謝性アシドーシスやビタミンB12モニタリング等が重要となる1)。
①に関して,局所再発は5〜15%の症例に認められ,術後2 年以内に多い。リスク因子としては膀胱壁外浸潤,リンパ節転移,断端陽性,摘出リンパ節数,リンパ節郭清範囲,周術期化学療法の有無があげられる2,3)。遠隔転移は50%の症例で認められ,高ステージ,リンパ節転移がリスク因子となる。転移部位としてはリンパ節,肺,肝,骨が主で,術後2 年以内が多く,10 年以上経過するとほとんど認めない4,5)。尿道再発は男性患者の1.5〜6.0%,女性患者の0.8〜4.3%で認められ,再発までの期間は平均13.5〜39 ヵ月と報告されている1)。リスク因子としては,男性では(再発)筋層非浸潤癌,前立腺部尿道浸潤,女性では膀胱頸部浸潤があげられ,非失禁型代用膀胱が造設された症例は失禁型尿路変向症例と比較して有意に再発率が低いとされる4)。上部尿路再発は1.8〜6.0%の症例で認められ,晩期再発症例の中では最も頻度が高い。メタアナリシスでは38%の上部尿路再発は無症候性で発見され,多発病巣,尿管断端陽性がリスク因子とされている6)。
上記②〜④の項目は通常定期的な経過観察が施行されることとなるが,①については経過観察によって無症候性のうちに転移・再発を発見することが予後改善に有効なのか最終的な結論は出ていない。膀胱全摘除1,270 例中再発を認めた444 例を解析し,無症状・有症状の両群間で再発後生存率に有意差を認めなかったとの報告もあるが7),この解析は尿路再発が含まれておらず,20 年にもおよぶ症例集積のため再発後の治療選択肢が現在と異なる可能性がある。対して,無症候性での尿道再発早期発見が生存期間延長に寄与するとする報告や8),新膀胱造設後の経過観察において,尿道CIS の発見および肺・遠隔リンパ節転移の無症候性再発の早期発見は予後改善に有効であるとの報告もある9)。Stewart-Merrill らのシステマティックレビューにおいても,尿路再発まで含めた解析では無症候性再発の早期発見は有意に死亡率を低下させる結果であった10)。ただし現状では定期経過観察頻度・期間に関しての明確なエビデンスはなく,3 年目以後の全体的な再発率が低下することから,それ以後の画像検査による経過観察の有効性に関しては今後の検討が必要との意見もある11)。
以上をふまえ,NCCN ガイドラインでは膀胱全摘除術後2 年はCT(もしくはMRI, PET-CT)による腹部骨盤部画像検査と胸部単純X 線検査(もしくはCT,PET-CT)による胸部画像検査を3〜6 ヵ月ごと,血液検査を3〜12 ヵ月ごと,尿細胞診を6〜12 ヵ月ごと,以後は5 年目まで1 年ごとの経過観察を推奨している。EAU ガイドラインでは,膀胱全摘除術後1 年は4 ヵ月ごと,2〜3 年目は半年ごと,それ以後は1 年ごとのCT 検査を推奨している12,13)。しかし両ガイドラインの経過観察での再発発見率は低く,摘出病理組織所見,再発リスク,年齢などを考慮し患者ごとに経過観察頻度や期間を調整すべきとの報告もある14)。その他にも病理ステージ,リンパ節転移,切除断端の状態,術前水腎症の有無をリスク因子として再発リスクを分類し経過観察様式を変える方法15)や,病理ステージ,年齢,チャールソン併存疾患指数(CCI)から再発部位(尿路,腹部骨盤部,肺,その他)ごとの再発リスクと他因死のバランスを検討し経過観察様式を決定する方法16)などが報告されている。脈管浸潤,壁外浸潤もしくは断端陽性,リンパ節転移,慢性腎疾患,心血管疾患,失禁型尿路変向等のリスク因子による分類を使用した方が病理因子のみの分類よりもコスト面でも効率の良い5 年経過観察方法となる可能性があるとの研究もある17)。
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Ⅷ.希少がん
- 尿路上皮癌亜型および特殊型総論
1.疫学,病理所見
尿路上皮癌,特に浸潤性尿路上皮癌には様々な亜型が存在しており1〜5),その多くは診断時に進行している。最も頻度が高い亜型は扁平上皮への分化を示す尿路上皮癌で,組織学的に腫瘍細胞が扁平上皮化生を示すことが特徴であり,全浸潤性尿路上皮癌の20〜40%に存在するとされる。次いで腺上皮への分化を示す尿路上皮癌で,組織学的に腫瘍細胞が腺管を形成することが特徴であり,全浸潤性尿路上皮癌の6〜18%に存在するとされる。その他の亜型の頻度は低く,具体的な頻度は不明な点が多い。微小乳頭型は腫瘍細胞が小胞巣を形成しその周囲に裂隙形成を伴うことが特徴であり,診断時に進行している症例が多い。リンパ腫様型/ 形質細胞様型は浸潤傾向が強い亜型で,肉眼的に腫瘍形成が不明瞭であることが特徴的である。組織学的には小型腫瘍細胞が高度な浸潤性増殖形式を示すことを特徴とする。肉眼および組織学的には胃癌および乳腺の小葉癌の膀胱への転移症例との類似性が高いことから,原発性と転移性との鑑別が非常に重要な問題となる。胞巣型および微小囊胞型は,腫瘍細胞が正常の尿路上皮に類似した形態を示すことが特徴で,病理診断に難渋することが少なくない。肉腫型は通常の尿路上皮癌の脱分化した組織型であり,尿路上皮癌の経過観察中もしくは通常型尿路上皮癌を伴うことが一般的である。リンパ上皮腫様型は腫瘍内に顕著なリンパ球浸潤を伴うことが特徴で,咽頭部に好発する同名の病名と同様の組織像を示す。巨細胞型は腫瘍内に多数の破骨型巨細胞を認めることが特徴で,骨に好発する同名の病名と同様の組織像を示す。明細胞型は腫瘍細胞が淡明な所見を示すのが特徴で,胞体内に多量のグリコーゲンを認める。脂肪細胞型は腫瘍細胞が脂肪細胞への分化を示すことが特徴とされ,皮膚等の発生する脂腺系腫瘍に類似した所見を示す。いずれの亜型に関しても,特定の成因は不明である。
尿路上皮癌以外にも,扁平上皮癌,腺癌,神経内分泌腫瘍,軟部腫瘍および造血器系腫瘍が膀胱に発生するが,いずれも頻度は低い1,2,4,5)。最も多い組織型は扁平上皮癌で,角化を伴うことが多い。成因としてビルハルツ住血吸虫感染関連がよく知られているが,本邦ではその頻度は極めて稀である。その他には扁平上皮化生を伴った尿路上皮からの由来が推定されている。次に多い組織型は腺癌で,大腸癌に類似する組織像を示し,時に顕著な粘液産生を伴う。成因として尿膜管由来が最も多く,次いで腺様化生を伴った尿路上皮からの由来が推定されている。神経内分泌癌の多くは小細胞癌であり,肺に発生する同名の腫瘍と同じ組織像を示す。小細胞癌の多くは通常型尿路上皮癌を合併もしくはその経過観察中に発生することから,その発生由来は通常型尿路上皮癌脱分化と推定されている。その他の神経内分泌腫瘍としてはカルチノイドがあげられるが,その頻度は極めて稀である。その他の組織型としては,血液造血器系および軟部腫瘍系があげられる。他臓器の同名症例と同様の組織像を呈する。いずれもその頻度は極めて稀であり,特定の成因は知られていない(表1)。
2.治療・予後
(1)Stage I
これらの亜型や特殊型は,純粋な尿路上皮癌と比べて病期は進行していることが多い。形質細胞様型や肉腫型では,TURBT にてcT1 と診断された場合でも筋層浸潤を過小評価している可能性が高い。BCG 膀胱内注入療法による膀胱温存は全摘除と比べて予後が不良になることから,これらの症例には即時膀胱全摘除術が推奨される6,7)。微小乳頭型においては,cT1 症例において即時全摘除術の有用性の報告がある一方で,BCG 膀胱内注入療法と同等であるという報告もあることから結論については議論がある8)。扁平上皮または腺上皮への分化を示すcT1 症例においては,BCG 注入療法にて良好な成績が報告されている9)。これらの症例には綿密な病期診断のもとBCG 膀胱内注入療法が推奨される10)。EAU ガイドラインでは超高リスクとして“some forms of variant histology of urothelial carcinoma”を定義しており,即時膀胱全摘除術を推奨している11)。NCCN ガイドラインでは微小乳頭型,形質細胞様型,肉腫型は筋層浸潤の危険性が高いために,即時膀胱全摘除術を推奨している12)。
一方,特殊型である扁平上皮癌や腺癌においても,多くの症例が進行例で見つかることから,cT1 であっても即時膀胱全摘除術を含むより強力な局所治療が推奨される10)。小細胞癌成分を含む場合には,術前化学療法の有用性が病期に関わらず認められることから,術前化学療法とその後の局所治療(膀胱全摘除術または放射線療法)が推奨される10)。
(2)Stage Ⅱ – Ⅲ
MIBC の治療においては,National Cancer Data Base のデータを用いて術前化学療法の有用性が検討されている13)。微小乳頭型,肉腫型,神経内分泌腫瘍では,術前化学療法により有意にdownstaging したが,全生存率の改善は神経内分泌腫瘍のみに認められた。扁平上皮または腺上皮への分化を示す症例では,純粋な尿路上皮癌と比較して膀胱全摘除術の成績は同等であり,さらに術前化学療法による予後改善も認められた14,15)。以上より,術前化学療法は,小細胞癌を有する症例には考慮すべきであり,扁平上皮または腺上皮への分化を示す症例においても考慮してよい。一方,他の亜型や特殊型における意義は不明である。Trimodality による膀胱温存の成績も報告されている16)。単一施設にて施行された膀胱温存療法303 例のうち,22%がunusual histology であった(扁平上皮または腺上皮への分化を示す腫瘍が74%)。これらの治療成績(CR 率,癌特異的生存率,全生存率)は,純粋な尿路上皮癌と同等であった。
MIBC の予後においては,小細胞癌は通常の尿路上皮癌に比べて不良である。その他の亜型や特殊型においては,純粋な尿路上皮癌と比べて病期は進行している傾向があるが,背景因子を調整すれば予後に変わりがないと考えられている17)。
(3)Stage Ⅳ
転移性病期の治療においては,亜型を伴う尿路上皮癌の場合には,純粋な尿路上皮癌と同様に行う。特殊型では,それぞれの組織型に基づいた治療を行うことが推奨される。扁平上皮癌においては臨床試験への参加が推奨されるが,パクリタキセル+イホスファミド+シスプラチン(ITP)による併用化学療法が前向き試験として唯一検討されており考慮してもよい18)。腺癌においても臨床試験への参加が推奨されるが,5-FU ベースのレジメンであるFOLFOX またはGemFLP(5-FU, ロイコボリン, ゲムシタビン, シスプラチン)やITP による併用化学療法を考慮してもよい12)。現在,腺癌においてGemFLP による第Ⅱ相試験が行われている(NCT00082706)。小細胞癌成分を含む場合には,シスプラチンに適格であればエトポシド+シスプラチンが,シスプラチンが不適格の場合にはエトポシド+カルボプラチンが推奨される12)。KEYNOTE-045 試験では約30%が組織学的亜型を含む尿路上皮癌が対象となっていた。全生存における層別化解析では,亜型を有する症例では,ペムブロリズマブの有用性がより高い可能性が示唆された(亜型ありHR:0.58,亜型なしHR:0.80)19)。特殊型における免疫チェックポイント阻害薬の有用性については明らかになっていない。
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- 尿道癌総論
1.疫学
原発性尿道癌は非常に稀な腫瘍で,人口100 万人あたり1.1〜1.5 人の発生数である。65 歳以上の発症が多く,男女比は1:1.5〜2.9 と女性において高頻度である1〜5)。発生原因として尿道狭窄,尿道カテーテルもしくは尿道形成術後の慢性刺激,放射線外照射,放射線シード挿入,性感染症後(ヒトパピローマウイルス)の慢性尿道炎などがあげられる4,6,7)。女性例では尿道憩室や反復性尿路感染も発生原因となる。現時点では尿道癌の発生と地域性もしくは人種差との関係を示す証拠はない。
2.病理所見
肉眼的には,尿道癌は外方向性乳頭状もしくは結節状腫瘍を形成することが多く,紅斑もしくは白斑状の平坦病変を形成することもある8)。尿道癌の組織型については男女差が存在し,男女とも最も多い組織型は尿路上皮癌で(45〜77%),男性では次いで扁平上皮癌(10〜35%),腺癌(5〜12%)の順となる2,3,9,10)。女性では腺癌の比率が29〜40%と高い傾向にあり,扁平上皮癌の比率は5〜19%程度である3,10)。女性の腺癌では特に明細胞腺癌の発生頻度が高く,その多くは尿道憩室から発生する11)。男女とも尿路上皮癌と扁平上皮癌との鑑別が困難な低分化な組織型が多い4)。稀な組織型8)としては腺様囊胞癌,粘液癌,癌肉腫,悪性黒色腫などがあげられる。尿道癌には明確な分化度分類は存在しないが,一般的には高・中・低の三段階分化度評価方法が用いられる。病理学的病期はUICC TNM 分類12)によって判定され,第8 版(2017)では本邦の腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1 版で付記されている第7 版から,N 分類の層別で大きさ2cm から個数に変更されている(N1:単発,N2:多発)。
3.予後
予後に関して多くは病期が進行して発見される不良例が多い2〜5,9,13〜15)が,本邦の大規模な報告はない。米国National Cancer Database(2004〜2013 年)の2,137 例の解析において,5 年,10 年全生存率はそれぞれ46%,31%であり,病期別の5年全生存率は,≦ CT1,CT2 および≧ CT3 について63%,38%および29%と報告されている5)。男女別では米国SEER データベース登録で5 年,10 年全生存率は男性2,065 例(1988〜2006 年) で46 %,29 % 9), 女性722 例(1983〜2008 年) で43%,32%と報告されている15)。EU 圏の340 例のRARECARE データベース(1995〜2002 年)では1 年,5 年相対生存率は72%,54%と報告されている2)。組織別に扁平上皮癌は予後不良の傾向を示すが結論は得られていない3〜5,9,14)。
4.診断
診断には膀胱尿道鏡検査,身体所見(鼠径部リンパ節触診,男性では直腸診,女性では外陰部視診,膣内診,双手診)が重要である。症状としては,排尿障害,出血(外陰部出血,尿道出血,血尿),膀胱炎様症状,陰部腫瘤などがあるが,男性では尿道狭窄症状や腫瘤触知,女性では尿道出血の頻度が多い。局所進展により皮膚潰瘍を形成することもある。外尿道口付近に発生した癌では視診により発見される場合が多いが,後部尿道に発生した癌では膀胱尿道鏡検査,尿道造影,膣内診が必要であり,発見時にすでに進行している癌も多く,女性では膣癌との鑑別が困難となる場合もある。確定診断は生検による病理診断で行われる。画像検査としてはMRI で原発巣の局所浸潤の程度,CT でリンパ節転移や遠隔転移を確認することが多い16)。腫瘍内部はCT で軟部濃度,MRI のT1 強調画像で低信号,T2 強調画像で低〜やや高信号と非特異的で(図1),尿道造影では局所の不整な狭窄像を示すことが多い。尿道憩室に癌が発生することもあり,尿道造影やCT・MRI での憩室の確認が有効とされ,尿道を取り囲むようなU 字型や馬蹄形の囊胞構造に出現し,T2 強調画像で中等度信号を呈する隆起性病変を示すことが多い17)。尿細胞診の陽性率は約6 割で,扁平上皮癌で高く(77%),尿路上皮癌で低い(50%)と報告され18),尿道憩室癌では特に高い陽性率19)が報告されている。腫瘍マーカーとしてはPSA,SCC,CEA,CA19-9 の上昇も報告されているが,多数の症例では上昇を認めない。
5.治療法
治療法は性別,癌発生部位,組織型,浸潤範囲,転移部位などの多様な因子に基づき個々の症例によって推奨されるが標準治療は定まっていない16)。治療法に関しての前向き研究はなく,後ろ向き研究や陰茎癌,外陰癌などの他癌腫治療の外挿化に基づく経験的治療が中心であるため,いずれも治療推奨度は低い。過去の報告では,限局性病変では外科的切除が推奨され6,20),放射線治療単独療法での報告は極めて少ない。
(1)外科的治療
術式は経尿道的内視鏡切除,尿道部分切除,尿道全摘除,陰茎全摘除,膀胱前立腺尿道全摘除,前方骨盤除臓術,骨盤内臓全摘除,恥骨合併切除と浸潤に伴い切除範囲が拡大する。低悪性度で小範囲の非浸潤癌(Ta)は経尿道的内視鏡切除で尿道機能温存可能であり,まず検討されるべき治療法である。限局浸潤癌(T1)の男性では数mm から2cm のマージンを確保した遠位尿道切除および尿道口形成が行われている一方21),女性では環状切除が行われるが,短い尿道長や尿道括約筋損傷のため技術的に困難なことが多い。尿道海綿体浸潤(T2)の男性では尿道亜全摘および会陰部尿道口形成が可能であるが,女性では尿道の温存は困難であり,膀胱瘻造設や尿路変向が必要なことが多い。陰茎海綿体(T3)以上の男性では陰茎全摘除および膀胱前立腺全摘除が必要な症例が多く,周囲浸潤傾向のある腫瘍(T4)では,恥骨合併切除も必要な症例もある。女性では外陰部癌に準じた婦人科領域の合併切除が必要であり,膣前壁合併切除を含む前方骨盤除臓術や広汎外陰切除術が必要になる。広範囲の会陰部手術で欠損部が大きい時は,形成外科的再建術を取り入れることが必要である。治療成績として多施設共同研究154 例(pT1 以下:44%, pT2:24%, pT3 以上32%,cN+:16%)の報告では,53%に治療後再発を認め,再発部位は尿道再発(31%),鼠径リンパ節(29%),遠隔転移(20%)と報告されている13)。
鼠径および骨盤内所属リンパ節転移は全体の14〜22% 9,13,15)で認め,特に局所進行例で高頻度にリンパ節転移を認める。陰茎癌とは異なり炎症の影響を受けにくく,リンパ節転移の術前予測精度は92.4%と報告されている13)。系統的リンパ節郭清の予防的22),治療的意義13)は明確ではない。各ガイドラインではリンパ節腫大症例や浸潤癌に対し手術時の郭清を推奨しているものや6),鼠径リンパ節生検後の放射線化学療法を推奨しているものもある20)。
(2)放射線治療
局所進行例では手術療法と並んで放射線治療が用いられてきたものの,放射線単独療法の治療成績は手術療法単独と同様に不良である23)。そのため手術療法,化学療法,放射線療法の集学的治療が試みられている6,16,24)。多施設共同研究39 例の報告では,術前化学療法および化学放射線療法に対する奏効率は25%および33%と報告され,奏効例では良好な生存が報告されている24)。また症例報告レベルではあるが外照射,小線源治療と化学療法併用により良好な局所制御が得られることが報告されており25,26),本アプローチの有効性の検証が望まれる。
(3)化学療法
遠隔転移例は一般的に全身化学療法が行われているが,3 年全生存率10〜25%程度と予後不良である3,9)。M.D. Anderson Cancer Center による化学療法の報告(2005〜2009 年)では,組織型別に化学療法レジメンが選択される傾向があり,扁平上皮癌でCGI 療法(シスプラチン, ゲムシタビン, イホスファミド),腺癌でGemFLP 療法(シスプラチン, ゲムシタビン, 5-FU, ロイコボリン),尿路上皮癌でM-VAC やCGI 療法が主に使用され,奏効率はCGI 療法(74%),GemFLP 療法(67%)と良好な成績も報告されている27)。近年免疫チェクポイント阻害薬やプレシジョン・メディシンによる新たな治療方法が試みられており,原発性尿道癌に対してのPD-L1 発現28)やEGF レセプター発現に基づいた治療による奏効例29)の報告がなされている。
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- 尿膜管癌総論
1.疫学
尿膜管癌は尿膜管を発生母地とする稀な腫瘍で,発生頻度は全膀胱悪性腫瘍の0.17〜0.7%とされている1〜3)。尿膜管は出生後にその多くは索状化するが,一部は内腔が開存した状態で遺残し,内腔は円柱上皮もしくは尿路上皮で被覆される4)。尿膜管癌で腺癌の発症年齢は20〜90 歳(平均50 歳台),男女比1.4〜2:1 である5〜8),非腺癌の発症年齢は45〜85,男女比6:1 である9)。
2.病理所見
組織学的には腺癌の頻度が最も高く5〜8),それらは非囊胞型と囊胞型とに大別されるが,前者の頻度が高い10)。囊胞型では大腸癌に類似した腸型の頻度が最も多く,その他には粘液癌,印環細胞癌,その他の腺癌が発生する。腸型は大腸癌との鑑別が病理学的に問題となることが多く,特に進行癌では大腸癌の膀胱への直接浸潤との鑑別が問題となる。したがって,尿膜管癌には以下の厳密な診断基準が存在する。1)膀胱頂部もしくは前壁に位置する,2)膀胱壁に腫瘍の主座がある,3)膀胱頂部および前壁の膀胱粘膜に広範な腺様化生を認めない,4)他部位に同様の腫瘍を認めない,尿膜管癌の診断には以上の4 つを満たす必要がある2)。上述の診断基準および免疫染色による鑑別が重要である11,12)。非囊胞型は粘液産生性の高分化癌が多く,予後は良好である。腺癌以外では,尿路上皮癌,小細胞癌,扁平上皮癌の順の頻度で発生する5,7,9)。尿膜管癌の標準的な組織学的分化度評価はないが,高分化,中分化,低分化の三段階評価方法が一般的には用いられている13)。
3.診断
尿膜管癌は,尿膜管が存在する膀胱頂部もしくは膀胱前壁の固有筋層内に主座を有することが一般的で,腫瘍は尿膜管に沿って発育することが多い。進行した場合には,レチウス腔や腹直筋に進展することもある。膀胱壁側に突出すると腫瘍状の形態を呈し,画像にて膀胱癌との鑑別が困難となる場合もある。発見時にすでに遠隔転移や腹膜播種を有していることも少なくなく,腹膜偽粘液腫を合併した報告も散見される14)。症状としては肉眼的血尿が最も多く,その他では疼痛や腫瘤触知,粘液尿などがあるが,腹膜外に発生するため無症状のことも多い。腫瘍マーカーとしてCEA,TPA,CA19-9,CA125 などが高値となるが特異的なものではない。腫瘤内部は充実性・囊胞性・両者が混在した形態のいずれも呈しうる。CT では約60%で粘液貯留を反映した低濃度域が出現し,50〜70%で石灰化を含有すると報告されている15)(図1)。粘液を反映してMRI のT2 強調画像で内部が高信号主体となることも多い。尿膜管癌の術前診断の精度に関して,尿細胞診,画像検査(CT,MRI),麻酔下での触診,TURBT を比較した検討が報告されている16)。TURBT が最も診断精度が良好であった(感度93%,特異度100%)が,陰性適中率が50%でありTURBT での過小評価には注意が必要である。
尿膜管癌ではAJCC/UICC によるTNM 分類が存在しておらず,統一した病期分類はない。代表的な病期分類として,尿膜管癌の膀胱壁内での深達度,リンパ節転移,遠隔転移を考慮したSheldon 分類3)およびMayo clinic 分類1)がある(表1)が,前者が最も広く用いられている13)。Sheldon 分類,Mayo 分類ともに予後の層別化が可能であるが,Sheldon 分類は項目が細分化されており煩雑性がある。さらにSheldon分類においてはStage ⅢA 以上の患者が大部分を占めることから,患者分布の不均衡が問題となる。実臨床においてはSheldon 分類が広く用いられているが,その簡便性からMayo 分類を推奨する報告もある6)。
4.予後
尿膜管癌の予後については,腫瘍が尿膜管または膀胱に限局するSheldon 分類Stage ⅢA 以下またはMayo 分類Stage I である患者においては,5 年癌特異的生存率は80%以上と良好である。一方,リンパ節転移や遠隔転移を有する場合は,20%以下と予後は不良である1,6)。
5.治療
(1)外科的治療
病変が限局している尿膜管癌では,尿膜管靭帯と臍部の一塊切除を伴う膀胱部分切除術とリンパ節郭清術が推奨される6,17)。膀胱全摘除術は,後ろ向き研究において部分切除術と比較して予後に差を認めないことから,侵襲性を考慮してすべての患者には推奨されない。腫瘍が大きく切除断端の確保が困難な場合や膀胱機能の温存が困難な場合には考慮すべきである6,17)。切除断端の陽性は予後不良因子であることから,尿膜管靭帯,臍部の一塊切除を行い,切除断端を陰性にすることが重要である。臨床学的にリンパ節転移を認めない患者におけるリンパ節郭清が予後に与える影響は明らかになっていない。郭清が施行された17%に転移を認めたと報告されていることから診断的な意義はあると考えられる6)。尿膜管癌に対する術前,術後補助化学療法の役割は証明されていない。臨床学的にリンパ節転移がなく原発腫瘍の切除が可能である場合には,術前化学療法は一般的に行われない。術前にリンパ節転移を有する患者においては,大腸癌に準じた化学療法を行い奏効した場合に地固め療法として外科的な切除を考慮する17)。術後補助療法は,病理結果にて断端陽性,リンパ節転移陽性,腹膜浸潤などの予後不良因子を認めた場合には考慮してもよい17)。
(2)化学療法
尿膜管癌の進行例における化学療法では,臨床試験において有効性が証明されたものはなく,症例報告や少数例の観察研究のみでの報告がなされている。尿路上皮癌に準じたM-VAC 療法やGC 療法の治療効果は限られている。その一方,尿膜管癌と大腸癌の遺伝子異常には高い類似性が認められ,大腸癌と同様の治療の有効性が示唆されている18,19)。メタアナリシスによると,CDDP と5-FU の使用が最も報告が多く,5-FU ベースやCDDP と5-FU 併用の奏効率は,40%程度と有効性が高い6)。国内からもTS-1 とCDDP の併用で33%の奏効率が報告されている8)。現在,尿膜管癌を含む腺癌においてGemFLP(5-FU, ロイコボリン, ゲムシタビン, シスプラチン)による第Ⅱ相試験が行われており(NCT00082706),その結果が待たれるところである。尿膜管癌の遺伝子異常においては,TP53 変異が最も高頻度にみられ(66〜80%),次に,KRAS,NRAS,BRAF,APC など大腸癌に類似した変異が多くみられる18,19)。
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- 総論
1.初期診断
膀胱癌の初期診断では症状が重要である。膀胱癌の発見の契機となる主な症状としては,血尿(肉眼的血尿,顕微鏡的血尿)と膀胱刺激症状(頻尿,排尿時痛,残尿感等)である。特に肉眼的血尿は高頻度にみられる症状であり,膀胱癌患者(40 歳以上)の64%に認められたと報告されている1,2)。また肉眼的血尿での膀胱癌の陽性診断的中率は15 歳以上の女性が3.4%であるのに対し,70 歳以上の高度喫煙者では12.5%に上昇すると報告されている1)。一方,顕微鏡的血尿は膀胱癌患者の6.4%にみられている1)。また血尿の患者が3 年以内に尿路上皮癌に罹患する確率は男性が7.4%,女性が3.4%と報告され3),膀胱癌の検出率は肉眼的血尿で17%,顕微鏡的血尿では4%と報告されている4)。
膀胱癌の早期診断には,無症状の段階で一般検診を行うことが想定されるが,罹患率が高くないこと,検診方法が確立していないこと,偽陽性により不必要な検査の可能性があること,検診で予後を改善するというエビデンスが得られていないことからまだ推奨されるに至っていない5,6)。一方で,ハイリスクの患者,すなわち喫煙歴のある高齢者や職業上発癌物質に暴露された既往のある人等については年1 回の検尿や尿細胞診の検査が推奨されている7)。
腫瘍マーカーとしては,これまで尿検査による2 種類の尿中腫瘍マーカー(NMP22,BTA テスト)が保険適応となっており,診断の補助として用いられている。これらの感度と特異度はNMP22 が58〜69%,77〜88%,BTA が64〜65%,74〜77%と報告されている8)。また2019 年1 月より膀胱癌既往患者の尿中細胞の3 番,7 番および17 番染色体の異数倍数体,ならびに9p21 遺伝子座の欠失を検出するDNA FISH 検査(ウロビジョンⓇ)も再発の診断補助として保険承認された。ウロビジョンⓇの感度は69〜87%,特異度は89〜96%と報告されている9,10)。その他の分子マーカーについては,尿中,血液中のマイクロRNA やcell-free DNA の変異解析等の報告があるがまだ実用化されていない10)。
尿細胞診は膀胱癌の診断および治療後の監視に用いられる。尿路上皮癌において,尿細胞診の特異度は非常に高いが感度は低い。特に生命予後の良好な低異型度尿路上皮癌に対する感度は非常に低い。このことから,2016 年に発表された国際標準の尿細胞報告様式であるパリシステムでは,生命予後に関係する高異型度尿路上皮癌の検出を中心にした診断基準を設定している11)。パリシステムによる診断の対象は中リスク以上の非筋層浸潤性膀胱癌が対象であり,その主眼は膀胱鏡を行うべきかどうかの判断根拠を提示することである。上述のウロビジョンⓇは尿細胞診の診断補助として,本邦では膀胱上皮内癌(carcinoma in situ:CIS)患者の再発が疑われる症例に対してのみ使用が可能である。尿細胞診と比較して,ウロビジョンⓇは感度が向上するも特異度が低下することが報告されており,診断時には尿細胞診の併用が必要である12)。
膀胱鏡検査は膀胱癌の診断と治療方針決定に必須であるが通常の白色光源による膀胱内観察で微小病変や平坦病変が10〜30%見逃されていると推測される。これらの病変をより的確に把握できる腫瘍可視化技術として蛍光膀胱鏡を用いた光力学診断(photodynamic diagnosis:PDD)や狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)がある。PDD では,光感受性物質である5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid:5-ALA)やヘキシルアミノレブリン酸(hexylaminolevulinic acid:HAL)を投与後,蛍光膀胱鏡で観察すると腫瘍細胞が赤色蛍光発光を示す。PDD により白色光源では視認困難であった微小病変や平坦病変の検出が可能となりPDD による追加腫瘍発見率は10〜30%であり13,14),特にCIS 検出率については著明な改善を認める14)。これまで実施された多くのランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)やメタアナリシスにより,PDD によって検出感度は93%で,CIS 検出率は38.3%改善すると報告されている13,14)。しかし特異度の改善は認められず65%にとどまる13〜15)。この原因としては,慢性炎症等による影響や接線効果による偽陽性所見が指摘されている。一方,NBI は,光の波長を青色(415nm)と緑色(540nm)の2 つのバンドに狭帯域化することで,おのおのの光の伝播深度の違いを利用して血管と組織のコントラストを強調させて微細な構造を増強させるイメージング技術である。多数のランダム比較試験を集計したメタアナリシスにより,検出感度94.3%,追加腫瘍発見率18.6%と白色光源に比べ改善すると報告されている16,17)。
2019 年のEAU ガイドラインにおいて,乳頭状病変を認めない尿細胞診陽性例や高リスク非乳頭状病変例では可能ならPDD を用いた生検が強く推奨されている。一方,NBI を用いた膀胱生検は弱い推奨となっている18)。本邦での使用においては,PDD は“経尿道的膀胱腫瘍切除時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化”,NBI は“上皮内癌の患者に対し,治療方針の決定を目的に実施する”と保険上規定されている。
一方,超音波検査は外来で膀胱内の隆起性病変を描出できる簡便な手法として用いられる。しかし,その診断精度には限界があり,腫瘍径が5mm 以下や恥骨干渉を受ける膀胱前壁下部の腫瘍,さらにCIS のような平坦な腫瘍の診断は困難である。近年,3 次元超音波検査や微小気泡造影剤を用いた超音波検査も試行されているが,T stage 診断は困難である19)。
2.病期診断
膀胱癌の診断が確定すると,治療方針決定のために病期診断を決定する必要がある。これには原発巣の膀胱壁内深達度の評価,リンパ節転移の有無の評価,遠隔転移の有無の評価が必要である。病期分類としては,UICC/AJCC の TNM 分類が用いられるが,これまで2009 年版TNM 分類(第7 版)が使用されてきたが20),2016 年にTNM 分類(第8 版),2018 年にアップデート版へ改訂が行われた(表1)21)。主な変更点は,StageⅢおよびⅣがⅢA,ⅢB,ⅣA,ⅣB のように細分類されたことである。すなわち,従来のT3-4aN0M0 とT1-4aN1M0 がⅢA となり,T1-4aN2-3M0 がⅢB となった。また,M 分類に関して,M0 とM1a(領域外の遠隔リンパ節転移)がⅣA に,M1b(他臓器転移)がⅣB に新たに細分類された。
従来,CT やMRI を中心にT stage 診断が行われてきた。CT の正診率は肉眼的な膀胱壁外浸潤でMRI と同等とされる。しかし,筋層と腫瘍を明瞭に区別できないので筋層内浸潤に関してはCT による鑑別は困難である。CT はその撮像範囲の広さから,主にリンパ節転移,遠隔転移の診断に用いられる。近年,膀胱癌の筋層浸潤のリスクを評価する目的で,multiparametric MRI を用いて膀胱癌の大きさ,局在,腫瘍数,形態をもとに,読影方式や報告書の統一化が提唱された22)。すなわちVesical Imaging-Reporting And Data System(VI-RADS) である。VI-RADS は,T2 強調画像においてfirst pass 画像,拡散強調画像,dynamic contrast enhanced(DCE)画像の3 種類の画像をもとに筋層浸潤のリスクを5 段階評価によりスコア化するものである。この評価法の導入により,特に膀胱筋層非浸潤癌の治療方針決定に有益な情報が提供されることが期待される。
PET は小病変でも代謝亢進組織があると検出できることから,CT では捉えきれない癌組織の検出に有用と考えられた。しかし膀胱においては,尿中に18F-FDG が排泄されるため,膀胱癌のT stage 診断には不向きとされている。そこで18F-FDG 以外のtracer として,尿中に排泄されない11C-choline や11C-methionine が検討されたがCT と比較して優位性を示すに至っていない19)。Goodfellow らは233 名の膀胱癌患者でFDG-PET による癌検出をCT と比較したところ,骨盤外病変の検出率(感度)および特異度は,それぞれPET が54%と97%,CT が41%と98%であり,ややPET が優れていたが,CT で検出できなかった病変をPET が診断できたのは3%のみでPET の費用を考えると膀胱癌の診断には単独使用は推奨されないと報告している23)。ただし,PET とCT を組み合わせるとリンパ節転移検出率は,CT 単独が45%であったのに対し69%に上昇することから,一部の選択された患者においてのPET-CTの利用は推奨できると報告している。
上述のように画像診断の進歩は著しいが,最終的な病期診断のためには,TURBT による腫瘍切除による壁内深達度の検討が必須であり筋層を含めた腫瘍切除が必要である。仮に筋層が含まれていない場合は病期診断の過小評価の危険性のみならず残存腫瘍,早期再発のリスクが高まることが報告されている24)。初回のTURBT でT1 腫瘍が認められた場合や筋層が含まれていない場合は2nd TUR が必要となる18)。また,CIS を合併する場合はランダム生検が必要となる。2nd TUR の内容はⅢ.筋層非浸潤性膀胱癌の治療・総論と重複するのでそちらを参照されたい。
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- CQ1
- 膀胱癌の診断に腫瘍可視化技術(photodynamic diagnosis:PDD,narrow band imaging:NBI)は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 膀胱癌の診断において,腫瘍可視化技術を用いることは,癌検出感度が改善されることから推奨される(PDD:推奨の強さ1)。
- エビデンスの確実性B
- 膀胱癌の診断において,腫瘍可視化技術を用いることは,癌検出感度が改善されることから推奨される(NBI:推奨の強さ1)。
解 説
膀胱鏡検査により膀胱癌の形態的特徴を正確に把握することは,以降の治療方針決定に必須である。しかし通常の白色光源による膀胱内観察で微小病変や平坦病変が10〜30%見逃されていると推測される。これらの病変を的確に把握できる腫瘍可視化技術は,正確な膀胱癌診断に必須である。このようなイメージング技術として蛍光膀胱鏡を用いたPDD やNBI がある。
PDD では,光感受性物質である5-ALA やHAL を投与し,蛍光膀胱鏡で観察すると腫瘍細胞が赤色蛍光発光を示す。PDD により白色光源では視認困難であった微小病変や平坦病変の検出が可能となり,検出感度の改善を認める1〜7)。PDD による追加腫瘍発見率は10〜30%であり,特にCIS 検出率については著明な改善を認める4,8〜16)。これまで実施された多くのRCT やメタアナリシスにより,PDD によって検出感度は93%,CIS 検出率は38.3%改善すると報告されている1〜13)。しかし特異度の改善は認められず65%にとどまる1,2,4,6,7)。この原因として,慢性炎症等による影響や接線効果による偽陽性所見などが報告されている。本邦で実施された国内第Ⅱ/Ⅲ相試験における有害事象は,グレード4 以上の重篤なものはなく,グレード3 以下の一過性の肝関連酵素の上昇,嘔吐等が報告されている2,7)。また, アミノレブリン酸内服による副作用として低血圧・血圧低下を認めるため,注意して使用することが望ましい17,18)。
PDD は検出感度の改善にとどまらず経尿道的膀胱腫瘍切除後の無再発生存率が向上する治療的効果も報告されており,詳細は治療の項に譲る。
NBI は,狭帯域化した光を利用したイメージング技術であり,光感受性物質の投与を必要としない。光の波長を青色(415nm)と緑色(540nm)の2 つのバンドに狭帯域化することで,おのおのの光の伝播深度の違いを利用して血管と組織のコントラストを強調させて微細な構造を増強させることが可能である。多数のランダム比較試験を集計したメタアナリシスにより,診断精度の改善を認めることが検証されてきた。NBI のよる検出感度94.3%,追加腫瘍発見率18.6%であり,白色光源に対する優位性が報告されている19,20)。
2019 年のEAU ガイドライン(web 版)において,乳頭状病変を認めない尿細胞診陽性例でPDD を用いた選択的な生検が推奨されている(エビデンスレベル;1a/ 推奨度;強い推奨)。NBI を用いた膀胱生検は,白色光源に比べ検出感度の改善を認めると記載されている(エビデンスレベル;3b/ 推奨度;弱い推奨)21)。本邦での使用においては,PDD は“経尿道的膀胱腫瘍切除時における筋層非浸潤性膀胱癌の可視化”,NBI は“上皮内癌の患者に対し,治療方針の決定を目的に実施する”と保険上規定されている。
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- CQ2
- 膀胱癌の局所病期診断にマルチパラメトリックMRI は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 膀胱癌の筋層浸潤が疑われる場合は,拡散強調画像を含むマルチパラメトリック(mp)-MRI や超高磁場(3T)MRI 等の活用により,筋層浸潤の診断精度が向上することから推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
膀胱癌の局所病期診断に関する画像診断方法の検討は,MRI が多くを占めるが,CT の正診率は肉眼的な膀胱壁外浸潤についてはMRI と同等とされる。しかし,筋層内浸潤に関しては筋層と腫瘍を明瞭に区別できないため,CT による鑑別は困難である。CT はその撮像範囲の広さから,主にリンパ節転移,遠隔転移の診断に用いられる。
膀胱癌の筋層浸潤のMRI 診断において,拡散強調画像による腫瘍茎の有無,造影ダイナミックMRI による粘膜下層の濃染の有無により筋層浸潤の過剰診断が低下し,特異度の向上に貢献している1〜5)。拡散強調画像による深達度診断は,TUR 生検に代用できないが6),TURBT 後の再発腫瘍については有用である7,8)。
MRI の筋層浸潤に関しては,泌尿器科と放射線科から合計3 本のメタアナリシスが報告されている9〜11)。いずれも過去の多数の文献からシステマティックレビューの一定の基準を満たし,厳選された論文による詳細な検討であり,エビデンスレベルもA ないしB と高い信頼性を持つ論文である。これらの論文をまとめたサマリーを表1 に提示する。感度は87〜92% , 特異度は87〜88%でいずれのメタアナリシスも筋層浸潤の特異度は感度より低いが,エビデンスレベルの高い2 論文9,10)から,拡散強調画像と超高磁場(3T)MRI の出現により偽陽性が減少し,特異度が上昇しmp-MRI の深達度診断における信頼性が向上する可能性が示されている。すなわち拡散強調画像を活用したmp-MRI により,従来のT2 強調画像による筋層浸潤の過剰診断が防げることを示している。
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- 総論
1.はじめに
筋層非浸潤性膀胱癌(non-muscle invasive bladder cancer:NMIBC)は未治療膀胱癌全体の約70%を占める。NMIBC 患者のほとんどは膀胱温存を目指してTURBT による初期治療を受ける。さらに得られた病理組織診断をもとに術後治療が考慮され,TURBT による完全切除が困難な症例や再発・進展リスクの高い症例に対しては,抗腫瘍効果あるいは再発予防効果を期待して抗癌剤やbacillus Calmette-Guérin(BCG)の膀胱内注入療法が選択される。
NMIBC の臨床的特徴は,TURBT による治療後も高率かつ頻回に膀胱内再発がみられることであり,これは残存腫瘍や新たに発生する腫瘍が原因となっており,引き続き一部の症例では筋層浸潤や所属リンパ節転移などの進展をみることになる。したがって,NMIBC の診療上の最重要課題は,TURBT による残存腫瘍を最小限にすることと(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ7:推奨グレードA),膀胱内注入療法によって再発・進展を抑制することである。現在汎用されているいくつかのリスク分類も再発・進展のリスクを予測するためのもので,同時にリスク分類に応じた治療指針を示す内容となっている。
2.TURBT
過去の多数の文献を調査すると初回TURBT 単独治療後の再発率は30〜70%と報告によって大きな幅がある。これはTURBT という内視鏡手術に内在する不確実性とともに,施設間においてTURBT の手技に格差が存在することが推測される。特に初回TURBT でT1 high grade と診断された高リスク群NMIBC では,筋層や周辺粘膜に腫瘍が残存している可能性が高く,治療的意義と診断的意義から2nd TURの実施が推奨されてきた(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ9:推奨グレードA)。文献的に2nd TUR における腫瘍残存率は27〜78%,筋層浸潤と再診断される率も0〜28%と施設間格差は大きい。Anderson ら1)は初回TURBT の質を向上させることが課題としている。本来の2nd TUR とは,初回TURBT において筋層採取が確認されているが,2〜6 週間後に再度TUR 瘢痕部をより広く・深く切除し,残存腫瘍の有無を確認することとDivrik らによって定義されている2)。ただし,その後の臨床研究では,2nd TUR の施行時期を初回TURBT の4〜8 週間後としている報告が多い。したがって,初回TURBT で不完全切除になった腫瘍に対し再切除を行うrepeat TUR や,初回TURBT で筋層が採取されず,再度筋層浸潤の確認のために行うrestaging TUR とは区別されるが,本ガイドラインでは「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」3)に従って包括的に2nd TUR という表現で統一する。2nd TURの意義については再発や進展を抑制することが報告されているので,該当するCQ3 をご覧いただきたい。
一方,治療成績の向上のためには見落としやすい微小な乳頭型腫瘍やCIS など平坦型腫瘍,さらには隆起性腫瘍周囲に広がり不完全切除の原因となりやすい病変を確実に検出し,切除することが求められる。TURBT 時の術中補助診断として承認された5-ALA と蛍光膀胱鏡システムによるPDD やNBI は有用で,日本にもすでに導入されており,詳しくはCQ4 をご覧いただきたい。PDD やNBI の使用により癌検出率は向上し4,5),PDD では特にCIS の検出が増加し,膀胱内再発も減少する4)。CIS の検出が向上すると,よりリスクの高い病理診断が得られ,BCG 膀胱内注入療法や即時膀胱全摘除術など術後補助療法が適切に選択されることになる。
3.NMIBC の病理学的深達度と異型度分類
「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」3)では,NMIBC の組織学的深達度をTis(CIS),Ta(乳頭状非浸潤癌)ならびにT1(粘膜上皮下結合組織に浸潤)の3 つのT カテゴリに分類している。一方,リンパ節転移や遠隔転移を伴うNMIBC の症例は稀である。組織学的異型度については,以前はG1(細胞異型度,構造異型度とも1),G2(細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が2),G3(細胞異型度,構造異型度の少なくとも一方が3)の3 段階分類であったが,これは1973 年版のWHO の異型度分類による。2004 年にはInternational Society of Urological Pathology(ISUP)の勧告を受けて,乳頭状病変のG1 を低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(papillary urothelial neoplasm of low malignant potential:PUNLMP)とlow grade に分割した。G2 もlow grade とhigh grade に分割され,G3 はすべてhigh grade となった6)。以上のWHO/ISUP 分類は長年の両者の協議の成果であり,日本でも「腎孟・尿管・膀胱癌取扱い規約(第1 版)」においてlow grade とhigh grade の2 段階分類を採用し,Grade 分類も併記することになった。しかし,過去の重要な研究論文は旧分類で記載されており,最近の研究でもPUNLMP とlow grade が明確に区別できていないことが病理診断領域で指摘されている。病理診断上,乳頭腫を含めて癌でないと診断された場合は治療選択や経過観察のあり方にも影響が出るため,再発リスクの低い腫瘍でも異型度の表現には慎重な議論が必要である。
4.NMIBC の再発・進展に関するリスク因子とリスク分類
各種のガイドラインではNMIBC の再発と進展のリスク分類が提唱され,治療指針との関連から重要である。再発と進展のリスクに関係する因子としては,病理学的深達度と異型度(G1-3)ならびに併発CIS の有無に加えて,臨床的因子である再発頻度(初発・再発と再発間隔),腫瘍数,腫瘍サイズなどがある。近年,これらの因子に加えてBCG 膀胱内注入療法の治療歴やBCG 最終投与から再発までの期間も重要なリスク因子と考えられるようになってきている。
EAU ガイドライン7)では,European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC)が行った抗癌薬膀胱内注入療法が中心となった7 つの臨床試験を基に,上記6 項目(病理学的深達度,異型度(G1-3),併発CIS の有無,再発頻度(初発・再発と再発間隔),腫瘍数,腫瘍サイズ)の各因子別に再発スコアと進展スコアがリスクテーブルに定められており,その合計スコアによって再発率と進展率を提示している(表1)。また,このスコア値によりTURBT 後1〜5 年の再発率と進展率の推定値を自動計算できるシステムもある8,9)。このスコアリングシステムを基に,低リスク群を,①初発,②単発,③ Ta,④ G1(low grade),⑤ 3cm 以下,⑥併発CIS なしの①〜⑥のすべての因子を満たすもの,高リスク群を,① T1,② G3(high grade),③ CIS(併発CIS を含む),④「多発・再発・3cm を超える・Ta/G1G2」の①〜④のいずれかに該当するもの,中リスク群を低リスク群・高リスク群以外のものと定義している。一方,BCG 膀胱内注入療法が標準治療となるに従い,再発・進展に関する因子は変化してきた。Spanish Urological Oncology Group(Club Urológico Español de Tratamiento Oncológico:CUETO)は,BCG 膀胱内注入療法を実施した4 つの臨床試験データをもとにCUETO スコアリングシステムを作成した。この結果,BCG 膀胱内注入療法後の再発,進展リスクには,性別,年齢,初発/ 再発,腫瘍数, 病理学的深達度, 併発CIS の有無, 異型度(G1-3) が関係していた(表2)10)。
また,EAU ガイドラインにおけるリスク分類別治療指針11)も時代により変化しており,中リスク群のうち「pTa/Low grade・単発・再発・年1 回以下の再発頻度のすべての因子をみたす腫瘍」については,低リスク群と同様に抗癌剤即時単回注入のみでの経過観察が許容されている。また,高リスク群の中でも,特に膀胱全摘除術を考慮すべき症例群として超高リスク群なる分類が提唱されてきた。超高リスク群の定義は,①広範囲な膀胱CIS を併発するT1 high grade 腫瘍,②前立腺部尿道CIS を併発するT1 high grade 腫瘍,③多発かつ/ または3cm 以上かつ/ または再発性であるT1 high grade 腫瘍,④微小乳頭型などの尿路上皮癌亜型(UC variant histology)を有するT1 high grade 腫瘍,⑤脈管浸潤(lymphovascular invasion:LVI)を有するT1 high grade 腫瘍,⑥ BCG unresponsive(BCG 不応性)腫瘍のいずれかに該当するものとしている。治療指針との関係は,リスク分類のみではなく,BCG 膀胱内注入療法の治療歴の有無別にフローチャート形式で示すようになっている。
一方,National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドライン12)は病理学的因子のみで,Ta/low grade 群,Ta/high grade 群,T1/low grade 群,T1/high grade 群,Tis 群の5 群に分類し,初発時と再発時に分けてフローチャート形式で治療指針を提示している。またフォローアップスケジュールは,AUA ガイドラインが独自に提唱するリスク分類にしたがって規定している。このように国際的にNMIBC のリスク分類が多様化するなか,International Bladder Cancer Group(IBCG)は2011 年にNMIBC に対する種々のガイドラインを比較し,国際的なコンセンサスとして独自のリスク分類を提唱している。このリスク分類では,低リスク群を初発のTa/low grade,高リスク群をT1,High grade,CIS のいずれか,中リスク群を低リスク群・高リスク群以外と規定している。2019 年現在実施されている高リスク群を対象とした国際共同臨床治験では,このIBCG リスク分類に基づいて高リスク群を定義しているものが増えてきている。
本邦のガイドラインにおけるNMIBC のリスク分類は,初版・第二版においてはEAU ガイドラインのリスク分類を採用してきた。今回の改訂においても海外のガイドラインとの整合性を重視しているが,上述のような国際的・歴史的変化を考慮し,低リスク群は初発,単発,3cm 未満,Ta,low grade,併発CIS なしのすべてを満たすもの,高リスク群はT1,High grade,CIS(併発CIS を含む)のいずれかを満たすもの,そして低・高リスク以外を中リスク群とした(表3)。今回の改訂に伴い,中リスク群の対象が幅広くなるため,「pTa/Low grade・単発・再発・年1 回以下の再発頻度のすべての因子を満たす腫瘍」のように中リスク群の中には低リスク群と同様の治療指針でよいものや,中リスク群ではあるが「再発・多発・Ta・Low grade・3cm 以上のすべてを満たすもの」のようなEORTC リスク因子を複数個有する場合には,高リスク群に準じてBCG 膀胱内注入療法が推奨される症例もあることにも留意していただきたい。また,膀胱全摘除術を考慮すべき超高リスク群としては,T1 high grade 腫瘍のうち,①膀胱CIS または前立腺部尿道CIS を併発する場合,②多発,再発または3cm 以上の場合,③ UC variant histology またはLVI を有する場合のいずれかに該当するもの,およびBCG unresponsive NMIBC/CIS のいずれかに該当するものとした。今回の改訂では上記のリスク分類に基づいてCQ を記載するが,海外文献が多く引用されている以上,日本人の実情と若干の差違が生じることもある13,14)。将来的には日本人のデータに基づいたNMIBC の新たなリスク分類を提唱すべきと考えるが,そのためには日本人における多数のRCT の実施も必要であり,病理学的異型度表記の統一などとともに今後の課題とする。
5.NMIBC の治療指針
NMIBC に対してTURBT 後の再発・進展リスクを下げるために,抗癌剤やBCG の膀胱内注入療法がリスク分類に応じて推奨されている。抗癌剤膀胱内注入療法には,TURBT 術後の抗癌剤術後単回注入と,抗癌剤術後単回注入を行った後に複数回注入する抗癌剤維持注入療法とがある。薬剤については米国ではマイトマイシンC(MMC)が頻用されるのに対し,欧州ではアントラサイクリン系抗癌剤の膀胱内注入の研究が多く,日本ではMMC やアントラサイクリン系抗癌剤が多く用いられており,特に中リスク群に対しては抗癌剤維持注入が推奨されてきた(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ13:推奨グレードA)。しかし,抗癌剤膀胱内注入については,至適な注入薬剤,注入量(濃度)と注入回数や期間,維持注入の要否などのプロトコールに十分なコンセンサスが得られていない。一方,BCG については,世界的にはTice 株,コンノート株,東京(日本)株,ロシア株等の種々の異なった株が使用されている。本邦では,東京(日本)株が使用可能であるが,過去にはコンノート株(現在,製造中止)も使用された歴史がある15,16)。BCG の株間の薬効の差異については一定の見解は得られていない。BCG の投与方法としては,TURBT 後に6〜8 回投与するBCG 導入療法と,その後1〜3 年間継続投与するBCG 維持療法とがある。一般に,NMIBC の膀胱内注入療法薬として抗癌剤とBCG を比較すると,BCG の方が治療効果は強い。しかし,BCG 導入療法でも副作用の発現は高率であり,1/2〜1/6 の低用量BCG など投与法が検討されてきた11)(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ14:推奨グレードB)。また,BCG 維持療法は有害事象による完遂率の低さも問題となっており,維持療法の至適投与スケジュールや至適用量などが,導入療法以上にCQ で議論となるところである。
リスク分類別治療指針については,RCT やシステマティックレビューによると低リスク群の再発リスクを下げるため,低リスク群では抗癌剤即時単回注入が推奨されている17,18)。中リスク群には抗癌剤あるいはBCG 膀胱内注入の維持療法が推奨される。注入期間が1 年程度になると再発予防効果を認めるが,定型的な維持注入のプロトコールはない19,20)。なお,中リスクには「pTa/Low grade,単発,再発,年1 回以下の再発頻度」など,TURBT 後の単回注入のみで許容される群もある。高リスク群にはBCG 膀胱内注入の維持療法が推奨されるが,高リスク群の中でも,超高リスク群に該当する場合には,膀胱全摘術を考慮する必要がある。治療オプションについては後述のCQ7,8,9,10 を参照いただきたい。
BCG 膀胱内注入療法が標準治療として普及するに伴い治療成績も飛躍的に向上してきた。しかし,BCG 膀胱内注入療法を施行した後に膀胱内再発を認める場合(BCG failure)には,膀胱全摘除術(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ16:推奨グレードB)や2 回目のBCG 膀胱内注入療法(膀胱癌診療ガイドライン2015 年版;CQ17:推奨グレードC1)など,その後の治療に苦慮することが多い。BCG failure には様々な病態が混在するため,Nieder らはT1 症例を対象としてBCG failure をBCG refractory,BCG resistant,BCG relapsing,BCG intolerant の4 つに分類することを提唱した21)。しかし,BCG 膀胱内注入療法には導入療法や維持療法があり,導入療法後の再発と維持療法後の再発では治療指針が異なる。このため,AUA,IBCG,FDA が中心となりBCG failure に対する臨床試験の指針が作成され,その一環としてBCG unresponsive(BCG 不応性)という「十分なBCG 膀胱内注入治療」が無効と考えられる疾患群が提唱された22,23)。BCG unresponsive は,BCG refractory と早期のBCG relapsing(BCG 最終投与から12 ヵ月以内の再発)を総称したものと定義されている。BCG failure に関する各用語の本ガイドラインでの定義を表4 に記載するので,CQ9,10 を参照していただきたい。最近は,この膀胱全摘除術が標準治療とされるBCG unresponsive を対象とした国際的多施設共同臨床治験も行われてきており,今後NMIBC の治療のあり方が変化する可能性がある。
6.CIS の治療
前述のように,本邦を含めEAU,AUA の各ガイドラインにおいてprimary CIS および併発CIS はともに高リスク群に分類され,治療としてBCG 膀胱内注入療法あるいは膀胱全摘除術が推奨されているが,特にBCG 膀胱内注入療法はその高い奏効率より初期治療として一般的となっている。残念ながらCIS のみを対象としたRCT はほとんどないが,CIS を対象に含むRCT のメタアナリシスではBCG 膀胱内注入療法が抗癌剤注入療法と比較して有意に高い完全奏効(complete response:CR)率を示し,進展リスクを低減することが示されている24,25)。BCG 膀胱内注入療法における推奨される用量,スケジュールはCQ7,8 を参照していただきたい。一方,CIS に対するBCG 膀胱内注入療法は治療的注入であり,他のNMIBC に対する予防的注入とは分けて考える必要がある。すなわち,CIS に対する治療の場合,膀胱生検により治療の奏効を確認する必要があり,腫瘍の残存を認めた場合は次の戦略を考慮する必要がある。どの時点で膀胱生検を行い,どのような治療選択があるかはCQ12,13 を参照していただきたい。また,膀胱内にCIS を認める場合,前立腺部尿道にもCIS を認めることがあるが,その場合の治療選択についてはCQ11 に記載した。
BCG 膀胱内注入後にCR を得ても,その後の再発の有無を確認するため経過観察が必要である。通常,膀胱鏡検査,尿細胞診などが用いられるが,最近になりfluorescence in situ hybridization(FISH)法を用いたウロビジョン® が膀胱鏡検査にて明らかな腫瘍を認めない症例において有用であることが示され26,27),本邦においてもCIS と診断された症例で経尿道的手術後2 年に2 回に限り算定可能となっている。ただし,尿細胞診と同時には算定できないので注意が必要である。
7.おわりに
海外のガイドラインが推奨する治療指針と本ガイドラインが推奨する治療指針に大きな相違はない。しかしながら,日本人の疾患特性や診療体制による検証が十分できているとは言い難く,あくまでもそのエビデンスの多くは海外データによるものである。日本人のデータによる今後の検討は必要である。
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- CQ3
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して2nd TUR は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- T1 high grade や初回TURBT で筋層が採取されていないTa high grade の場合,2nd TUR を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
- エビデンスの確実性C
- 筋層が採取されているTa high grade に対しても,2nd TUR は予後を改善させる可能性があるので,考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
2nd TUR の目的は,1)潜在する残存腫瘍の切除,2)アンダーステージングの発見,3)BCG 膀胱内注入療法の効果改善や予後の改善である。また,初回TURBT で筋層が採取されてない場合も2nd TUR が必要とされる。最近のシステマティックレビューで,残存腫瘍はTa だと17〜67%,T1 であれば20〜71%に認められ,残存腫瘍の36〜86%は初回TUR 部位に認めている。また,T2 以上の筋層浸潤も0〜32%に発見された1)。再発率はTa だと2nd TUR をすることで58%から16%に低下しているが,T1 では報告によって幅があり,2nd TUR を行っても有意差のなかったものもある。しかし,T1 high grade の2nd TUR に関して唯一行われたRCT の結果では,再発率,進展率,癌特異生存率ともに2nd TUR 群が有意に改善している2)。
2,451 例のBCG 膀胱内注入療法がなされたT1 high grade のコホート研究では,初回TURBT に筋層が含まれていない場合,2nd TUR を行った方が,再発率,進展率,癌特異生存率,全生存率が良好であったと報告された3)。一方,T1 で膀胱全摘除術を行った279 例の検討で,48%は全摘標本に筋層浸潤があり,2nd TUR を行った症例のみでも46.7%に筋層浸潤を認めたとの報告がある4)。
2nd TUR の時期は,初回TUR 後2〜8 週がほとんどであるが,6 週間を超えると予後に影響を与えたという報告もある5,6)。現在進行中のJapan Clinical Oncology Group(JCOG)臨床試験では3〜8 週間で行うことに定めている7)。また,2nd TUR の方法については,初回TUR の周辺とさらに深部を切除することが一般的である7)。
NBI や5-ALA を使用したTURBT の報告があるが,2nd TUR への応用はまだない8,9)。また,2nd TUR の有害事象は初回TURBT と同じで,危険性が増すことはない。
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- CQ4
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療の際にPDD やNBI は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- PDD は膀胱再発率の低下につながることから推奨される(推奨の強さ1)。
- エビデンスの確実性B
- NBI は癌検出率を改善させるが,膀胱再発率の低下につながるかは未確定である(推奨の強さ2)。
解 説
TURBT 時の膀胱鏡による注意深い観察は必須であるが,従来の白色光下の観察(white-light imaging:WLI)では微小な腫瘍やCIS などの平坦型腫瘍,さらには隆起型腫瘍に付随する平坦病変の広がりの同定が困難である。WLI では,小径の腫瘍や平坦型腫瘍のうち10〜20%が見落とされているとの推計がある1,2)。治療成績の向上のためにはこれらを効率的に検出・切除することが重要であり,TURBT 時補助診断技術として蛍光膀胱鏡を用いたPDD やNBI といった方法が開発されている。
PDD は,5-ALA(経口・膀注ともに可能)やHAL(膀注のみ可能)という蛍光前駆物質をTURBT 術前に投与した後に,腫瘍細胞選択的に蓄積するプロトポルフィリンⅨを標的とした蛍光膀胱鏡を用いて観察し,赤色蛍光を示す病変を検出するものであり,診断精度,特にCIS の検出率を著明に向上させた1,3,4)。診断精度にとどまらず,PDD 補助下TURBT(PDD-TURBT)による無再発率の低下はこれまで多くの前向きRCT とそれらを蓄積したメタアナリシスにより検証されてきた1,2,5)。また,Geavlete らの報告ではPDD 補助診断に伴う追加病変の検出によりEORTC の再発および進展リスクがアップグレードし,無治療から抗癌剤注入療法やBCG 膀胱内注入療法へ,または抗癌剤注入療法からBCG 膀胱内注入療法へと,術後補助療法が変化している症例があったとしている6)。PDD-TURBT は,確実な病変の切除だけでなくその後の正確なリスク分類と適切な術後補助治療の選択を可能とし,再発率の低下に間接的に寄与していることも推察される。本邦で承認されている5-ALA の20mg/kg 経口投与における有害事象として,グレード4 以上は認めなかったもののグレード3 以下の肝関連酵素上昇,低血圧,蕁麻疹などが報告されている3)。また,アミノレブリン酸内服による副作用として低血圧・血圧低下を認めるため,注意して使用することが望ましい7),8)。
一方,NBI は血中のヘモグロビンに吸収されやすい415nm(青)と540nm(緑)の2 種の波長の光を照射することで,血管による微細模様や色調によって癌粘膜と正常粘膜の違いを強調表示し病変を検出するものである。PDD と異なり蛍光前駆体物質を前投与する必要がなく,蛍光が消退するphotobleaching 現象も問題とならないため,手元のスイッチのみで目的部位を何度も繰り返して観察できる。臨床試験の結果を集積したメタアナリシスによると,従来のWLI で80〜85%程度であった癌検出感度を95%まで改善した9〜11)。多施設共同ランダム化試験において,TURBT 単独とNBI 補助下TURBT の術後12 ヵ月の治療成績を比較している12)。全症例の解析ではNBI 補助の有用性が示されなかった(27.1%vs 25.4%,P=0.585)が,低リスクNMIBC(Ta low grade かつ腫瘍径< 30cm かつCIS なし)を対象としたサブ解析においては無再発率の低下が認められた(27.3% vs 5.6%,P=0.002)。
2019 EAU ガイドライン13)では,膀胱鏡で明らかな病変を認めない尿細胞診陽性の症例や非乳頭状腫瘍のような高リスク症例において,ランダム生検にかわりPDD 補助下ターゲット生検を推奨している(推奨グレード:B)。また,同ガイドラインでは,NBI の使用は癌検出率を改善すると明記されている。一方,NBI 併用TURBT の再発率の低下についての評価は未だ十分ではないものの,低リスクNMIBC に限ると,3 ヵ月と12 ヵ月時点の再発率に改善がみられたことに言及している12)。
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- CQ5
- 低リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して抗癌剤即時単回注入は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 低リスクNMIBC に対して抗癌剤即時単回注入を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
Ta およびT1 のNMIBC はTUR で切除可能であるが,再発や進展を起こすことが知られており,術後補助療法が考慮される。最近行われた2,278 例のメタアナリシスでも,抗癌剤単回膀胱内注入は再発リスクを35%低下させた1)。しかし,EORTC の再発スコアが5 以上あるいは1 年間に2 回以上の再発の既往がある症例には単回注入の効果はない1)。使用する薬剤は,MMC,エピルビシン,ピラルビシンのどれも効果があるが,薬剤間を比較した試験はない。ピラルビシンに関しては進展率を低下させた報告もある2)。一方,MMC の単回注入と生理食塩水の持続灌流を比較したRCT があり,再発率に差はなかった3)。
抗癌剤単回注入は通常TUR 後24 時間以内に行われる。術後24 時間以内と2 週後に行う単回注入のRCT で術後24 時間以内の方が再発率は低かった4)。また,24 時間以内の注入を手術当日と翌日に分けて検討した試験では,両群間に差はなく,24 時間以内なら有効であることが示された5)。一方で,5-ALA を用いてTUR を行いドキソルビシンの単回注入を比較したRCT では,5-ALA を用いた方が再発率や進展率を低下させたが,術後単回注入の有無は再発率に影響しなかったとの報告もある6)。術後早期単回注入の有害事象はほとんどないが,膀胱外溢流による有害事象報告はあり,安全性には注意すべきである5)。
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- CQ6
- 中リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して抗癌剤単回注入療法後の維持注入は,単回注入単独と比べて推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 中リスクNMIBC に対しては,抗癌剤維持療法を追加することが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
中リスク群において抗癌剤術後単回注入後に追加の維持療法(注:BCG 維持療法のことではなく,TURBT 直後の単回注入後に抗癌剤を複数回注入すること)を行うことで再発率を低下させる。メタアナリシスで,維持療法群はTUR 単独と比較し1 年後,3 年後の再発率をそれぞれ38%,65%低下させている1)。ピラルビシンの術後単回注入療法に,8 回の維持療法を追加する試験でも,維持療法の有用性が示されている2)。一方で,エピルビシンを用いたRCT では,維持療法群の方が若干良かったものの,コントロール群と比較し再発率に有意差はなかった3)。この試験のコントロール群は術後6 時間以内の単回注入を含む週1 回6 週間の投与であり,維持療法群はさらに月1 回で10 ヵ月間の追加投与がなされた。
維持療法のスケジュールについては定まったものはなく,期間も3 ヵ月から3年間と幅広い。最近のシステマティックレビューでは,月1 回の投与で7 ヵ月から1 年間の維持療法が最も多く,再発率が有意に良好であったのもこの期間の維持療法群であった4)。一方で,維持療法追加による進展率の低下を認めた試験はなかった。維持療法を追加することによって排尿痛や血尿,膀胱炎などの有害事象は増加するが,重症化することは稀である5)。
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- CQ7
- 中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対してBCG 導入療法と比較してBCG 維持療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- 中・高リスクNMIBC に対するBCG 維持療法は,再発予防効果の点から推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
BCG 維持療法はBCG 導入療法や他の抗癌剤注入療法と比較して,中・高リスクNMIBC に対して膀胱内再発抑制効果1〜5),進展抑制効果1,6),予後延長効果3)を有することがいくつかの臨床研究で確認されている。
SWOG8507 試験1)では高リスクNMIBC を6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 週間のBCG 維持注入を3 年間行うBCG 維持療法群(3,6,12,18,24,30,36 ヵ月目:計27 回投与)とBCG 導入療法単独群にランダム化割り付けされ,BCG 維持療法群では無再発生存期間(5 年無再発生存率;導入療法:41%,維持療法:60%,p < 0.0001),無増悪生存期間(5 年無増悪生存率;導入療法:70%,維持療法:76%,p=0.04)の有意な延長を認めた。しかし,3 年の維持療法完遂率は16%であった。EORTC30911 試験3,7)では中・高リスクNMIBC に対してSWOG8507 維持療法レジメンを用いてBCG 維持療法群とエピルビシン注入群をランダム化比較検討し,BCG 維持療法群で無再発生存期間(HR:0.62,95% CI:0.50〜0.76),無転移生存期間(HR:0.55,95% CI:0.32〜0.94),癌特異的生存期間(HR:0.47,95 % CI:0.25〜0.89), 全生存期間(overall survival:OS)(HR:0.76,95% CI:0.59〜0.96)の有意な改善が確認された。維持療法群のレジメン間の比較を行ったEORTC30962 試験8,9)において中・高リスクNMIBC に対してTICE 株通常量と1/3 量,維持療法1 年と3 年が検討され,中リスク群では通常量で1 年間,高リスク群では通常量で3 年間の維持療法が無再発生存期間を低下させ,有害事象は有意な差がなかったと報告された。一方,CUETO98013 試験10)では高リスクNMIBC を6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 ヵ月ごとに1 回のBCG 注入を3 年間行うBCG 維持療法群(BCG 注入,計18 回投与)とBCG 導入療法単独群にランダム化割り付けされ,CUETO レジメンではすべての有効性アウトカムで有意な改善が確認されなかった。
本邦においてはBCG 導入療法としては日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)80mg で週1 回6〜8 週間繰り返すレジメンが標準である。日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)を使った小規模な臨床試験4)で,8 回のBCG 導入療法後に3 ヵ月ごとに1 回のBCG 注入を9 ヵ月間行う(BCG 注入,計12 回投与)レジメンにおいて,無再発生存期間の改善が示唆されている。現在国内製造中止であるコンノート株(イムシストⓇ膀注用)で6 回のBCG 導入療法後に定期的に3 週間のBCG 維持注入を18 ヵ月行うBCG 維持療法群とBCG 導入療法群,抗癌剤膀注療法とを比較した本邦の試験5)では,BCG 維持療法群で無再発生存率の有意な改善が確認され,完遂率は42%であった。しかしながらコンノート株の維持療法で,完全なTURBT 後に予定された18 ヵ月の維持療法完遂率は23.9%で,維持療法の再発予防効果は確認されなかったとの報告11)も存在する。
メタアナリシスにおいて,TUR 単独に対してBCG 維持療法の再発予防効果,病期進展抑制効果の優位性が示されている6,12)。BCG 導入療法や他の抗癌剤膀注療法に対する優位性は,再発予防効果で示されているが2,6,12〜14),病期進展抑制効果に関しては肯定的な結果14,15)と否定的な結果2,6,12,13)が報告されている。
中・高リスクNMIBC に対するBCG 維持療法は,BCG 導入療法や他の抗癌剤膀注療法よりも再発予防効果が高いため行うことが推奨される(推奨の強さ:2)。BCG 維持療法はSWOG8507 レジメンを基本とした投与法で12 ヵ月以上行うことが望ましい。しかしながらBCG 維持療法の完遂率の低さ,副作用の問題から具体的な投与スケジュールは定まっておらず,今後さらなる最適なレジメンの確立が望まれる。
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- CQ8
- 中・高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対して低用量BCG 膀胱内注入療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 通常量BCG 膀胱内注入療法の副作用が問題となる患者,身体リスクの高い患者,中リスクNMIBC に対しては,低用量BCG 膀胱内注入療法が選択肢の1 つとして推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
本邦においてはBCG 導入療法としては日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)80mg で週1 回6〜8 週間繰り返すレジメンが標準であるが,維持療法は定まったレジメンは存在していない。通常量のBCG 膀胱内注入療法では副作用の発現頻度が高く,副作用の軽減を目的に低用量BCG 膀胱内注入療法の有効性,安全性が検証されてきた。
大規模なEORTC30962 試験1,2)においてTICE 株の通常量と1/3 の低用量,1 年間と3 年間の維持療法がそれぞれ検討され,低用量の膀胱内再発予防効果は通常量より劣性(HR:0.75,95% CI:0.59〜0.94;p=0.01)であり,副作用発現率も低下しなかった(通常量:8.0%,低用量:7.6%)と報告されている。一方,コンノート株でのCUETO 試験3,4)では,27mg(1/3 量)と81mg(通常量)による半年間維持療法で低用量での再発予防効果の非劣性,副作用発現率の減少を認めているが,高リスク群では再発予防効果が低下する可能性3)や13.5mg(1/6 量)では有効性が低下することが示されている5)。またコンノート株27mg(1/3 量)の3 週間のBCG 維持注入を3 年間行う維持療法レジメンにおいて,3 ヵ月と6 ヵ月間隔での投与を比較したURO-BCG-4 試験6)では,2 群間に有意な有効性の差は認めなかった。また,日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)40mg(1/2 量)と80mg(通常量)の導入療法7,8)やDanish 株40mg(1/3 量),80mg(2/3 量),120mg(通常量)による1 年間維持療法での試験9)で低用量BCG 膀胱内注入療法の再発予防効果の非劣性,副作用発現率の減少を認めている試験もある。
メタアナリシスでは,低用量BCG 膀胱内注入療法は通常量と比較し腫瘍進展予防効果は変わらず,有害事象発現率の減少を認めるものの,再発予防効果は低下する10,11)とされているが,効果に差がないとする解析結果12,13)もある。
日本株(イムノブラダーⓇ膀注用)の具体的な維持療法投与スケジュールは定まっておらず,今後低用量BCG 維持療法レジメンでの前向き検証が必要である。低用量BCG 維持療法は副作用発現率の減少が期待される一方,再発予防効果の低下も予測されるため,標準的な治療法としては行わないことを推奨する(推奨の強さ:2)。BCG 注入通常量で局所副作用がある患者,高齢者など身体リスクの高い患者,中リスクNMIBC に対しては,低用量BCG 維持療法は治療選択肢となる(推奨の強さ:2)。
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- CQ9
- BCG 膀胱内注入療法後に腫瘍残存を認める症例や膀胱内再発をきたす症例に対して,BCG 膀胱内注入療法の再導入は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- BCG unresponsive には膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
- エビデンスの確実性C
- 1 年以降のBCG relapsing にはBCG 膀胱内注入療法再導入は選択肢の1 つとして推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
NMIBC のBCG 膀胱内注入療法後の残存・再発癌に対する治療を考える際に,Nieder ら1)はBCG failure を,① BCG-refractory:導入療法後3 ヵ月の時点で再発または腫瘍が残存し,6 ヵ月時点(維持療法を含む)でも消失しない,② BCG-resistant:導入療法後3 ヵ月時点で腫瘍残存も6 ヵ月の時点で消失,③ BCG-relapsing:治療後6 ヵ月時点で消失した腫瘍が再発(再発までの期間をearly:≦ 12 ヵ月,intermediate:12〜24 ヵ月,late:> 24 ヵ月に細分類),④ BCG-intolerant:重篤な有害事象のため十分な注入療法が施行できず再発を繰り返すの4 つに分類した。本邦での検討2,3)では,BCG failure 症例のうち大半をBCG-relapsing とBCG-refractory が占め,BCG-resistant,BCG-intolerant は少数との報告がある。
SWOG 試験のBCG 注入群でのpost hoc 解析では,BCG-refractory は進展傾向が強く予後不良となりやすいことが示されている4)。BCG-refractory を対象とした小規模の前向き試験では,BCG 膀胱内注入療法再導入の87.5%に再発を認め,2 年無再発生存率は3%で,37.5%に腫瘍進展を認めたと報告されている5)。BCG+IFNα注入療法による前向き試験6)で,BCG-refractory はBCG+IFNα注入療法再導入の効果が悪かったものの,1 年以降に再発したBCG relapsing はBCG 未施行例と比較し,BCG+IFNα膀注導入療法の効果は変わらなかったと報告されている7)。BCG-relapsing を対象としたBCG 膀胱内注入療法再導入の本邦の成績2)では,中および高リスク癌の5 年非再発率はそれぞれ78%および46%と報告されている。本邦のBCG-refractory およびBCG-relapsing に対する膀胱温存療法の5 年癌特異生存割合は74 % および97 % と報告があり3),BCG-refractory は他のBCG failure 様式より病期進展する可能性が高い3)。BCG-refractoryはBCG 膀胱内注入療法再導入にも抵抗性5)であるため,即時膀胱全摘療法が標準治療と考えられ8),BCG 膀胱内注入療法再導入による膀胱温存療法は選択しないことが推奨される(推奨の強さ:2)。
NMIBC のBCG failure は多様であり,Nieder の分類は腫瘍の再発時期に関する代表的な分類であるが,BCG 膀胱内注入療法のスケジュールが加味されたものではなかった8)。そのためAUA,IBCG,FDA が中心となりBCG failure に対する臨床試験指針が作成された。その中でBCG-refractory と早期のBCG-relapsing(BCG 最終投与から12 ヵ月以内の再発) を総称したBCG-unresponsive8〜10)という「十分なBCG 膀胱内注入療法を行ったにもかかわらず再発し,BCG 膀胱内注入療法再導入が無効と考えられる疾患群」が提唱された(各用語の定義は本章の総論,表4 を参照)。また,この指針8)では,BCG-unresponsive に対する新薬開発の際の臨床試験のエンドポイントとしてBCG-unresponsive CIS では6 ヵ月のCR 率が50%,奏効した症例における12,18 ヵ月の持続的な奏効率(Durable response rate)が30%,25%,BCG-unresponsive-papillary disease では12,18 ヵ月の無再発生存割合が30%,25%を臨床的に意義のある有効性の指標とすることが提唱されている。
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- CQ10
- 超高リスク症例に対して即時膀胱全摘除術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 超高リスク症例では進展リスクが高く,即時膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
高リスクNMIBC に対する即時膀胱全摘は,結果的に適切な治療と判断されることもある反面,過剰治療と判断されることもあるが,膀胱温存治療とのRCT はなく,議論の多いところである1)。膀胱温存治療として,Sylvester らは中〜高リスクNMIBC やCIS 症例に対してBCG 膀胱内注入療法,特にBCG 維持療法の有用性を強調している2)。しかし,十分なBCG 膀胱内注入療法にもかかわらず早期に再発,BCG 膀胱内注入療法再導入が無効と考えられるBCG unresponsive では膀胱全摘除術の適応となり,EAU とNCCN ガイドラインでは早期の膀胱全摘除術を推奨すべき症例として,BCG 膀胱内注入療法1〜2 コース施行後にT1 high grade 腫瘍が再発した例をあげている3,4)。このように,高リスク症例のなかには,さらに進展リスクが高いとされる『超高リスク(highest risk)症例』があり,BCG 膀胱内注入療法よりも即時膀胱全摘除術が推奨される。
2016 年にBabjuk ら4)は超高リスク症例として,膀胱および前立腺部尿道CIS 併発T1 high grade,多発かつ/ または3cm 以上かつ/ または再発性のT1 high grade に加え,UC variant-histology やLVI を有するような腫瘍をあげ,これらに対して即時膀胱全摘除術を推奨している。尿路上皮癌に付随するUC variant-histology のうち即時膀胱全摘除術が推奨されるものとしては,micropapillary,sarcomatoid,plasmacytoid variant などがあり,診断時点で筋層浸潤癌である可能性が高く予後不良である5)(Ⅷ.希少がん参照)。また,初発のT1,特に,CIS 併発や前立腺浸潤を伴っている場合は,この時点での膀胱全摘除術が奨められる6,7)。現在,初回TURBT でT1 high grade が検出された場合2nd TUR が実施されるが,この2nd TUR の組織内に再びT1 腫瘍を認めた症例は,その後に筋層浸潤癌に進展する可能性が高く,この時点での膀胱全摘除術が推奨されている8)。一方,NMIBC の膀胱全摘除術に際しては周辺臓器および神経温存を考慮してもよい。
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- CQ11
- 前立腺部尿道における上皮内癌(CIS)に対してBCG 膀胱内注入療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 前立腺部CIS 症例のうち前立腺部尿道原発,あるいは併発する膀胱癌がTa 以下の筋層非浸潤性癌である場合,前立腺部尿道の十分な経尿道的切除後にBCG 膀胱内注入療法を行うことが推奨される(推奨の強さ2)。
- エビデンスの確実性C
- 併発する膀胱癌がT1 high grade の場合は膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
膀胱CIS に対する一次治療としてはBCG 膀胱内注入療法,もしくは膀胱全摘除術が推奨されている1,2)。しかしながら,膀胱CIS 症例を対象とした即時膀胱全摘除術とBCG 注入療法とのRCT はなく,同様により頻度の低い前立腺部尿道CIS 症例に対するRCT は存在しない。
前立腺部尿道に発生する尿路上皮癌の多くは膀胱癌を併発している3)。逆に,NMIBC の16〜39%,膀胱全摘除術を行った症例の12〜48%で前立腺部尿道に尿路上皮癌が検出されたと報告されている3,4)。膀胱全摘標本を用いた解析により,前立腺部尿道の尿路上皮癌の深達度はCIS(前立腺部尿道および前立腺腺管)が41〜64%,間質浸潤が17〜47%にみられたと報告されている5〜7)。膀胱全摘後の予後は前立腺間質浸潤を認める症例で不良であり,即時膀胱全摘除術の適応と考えられる1,3,8)。一方,前立腺部尿道CIS 症例の予後は,前立腺部に尿路上皮癌を伴わない症例と有意差を認めなかったという報告と予後不良であったとする報告が混在する5,7,9,10)。これらより,一部の前立腺部尿道CIS 症例においては,即時膀胱全摘除術が過剰治療となっている可能性がある。
これまでの少数の症例集積研究では,間質浸潤を伴わない前立腺部尿道進展があるNMIBC 患者に対して,1〜2 コースのBCG 膀胱内注入療法を行い64%〜82%でCR を得たと報告されている11,12)。BCG 膀胱内注入療法はその治療効果を発揮するために尿路上皮へのBCG の直接接触が理論上必要とされる。Gofrit らは,間質浸潤を伴わない前立腺部尿道の尿路上皮癌患者に対してBCG 膀胱内注入療法に先立って前立腺部尿道の経尿道的切除(TURP)を行うことにより高いCR 率を達成することが可能であったと報告しており,過去の報告を含めたプール解析ではBCG 注入単独群でCR 率67%に対しTURP 後にBCG 注入した群で95%であったと報告している13)。一方Palou らは,膀胱癌がT1G3 で経尿道的切除後にBCG 導入療法のみ行った146 名を後ろ向きに検討し,女性あるいは前立腺部尿道CIS を伴う男性群がその他と比較して予後不良であったと報告している14)。これらの報告をもとに,EAU ガイドラインでは,前立腺部尿道の非浸潤性尿路上皮癌もしくはCIS の場合,経尿道的切除後のBCG 膀胱内注入療法を選択肢の1 つとしている8)。
結論として,前立腺部CIS 症例においては,併存する膀胱癌がTa 以下のNMIBC である場合,前立腺部尿道の十分な経尿道的切除後にBCG 膀胱内注入療法を行うことは選択肢の1 つとなりえる。しかしながら,併存する膀胱癌がT1,high grade あるいは筋層浸潤癌の場合は膀胱全摘除術を考慮すべきである。
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- CQ12
- 上皮内癌(CIS)症例に対するBCG 導入療法でCIS が残存する場合,BCG 再導入療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- CIS 症例に対する初回BCG 導入療法でCIS が残存する場合,BCG 再導入療法が推奨される(推奨の強さ2)。
- エビデンスの確実性C
- ただし,BCG 再導入後の初回注入から6 ヵ月時点でも残存する症例は,膀胱全摘除術を考慮する(推奨の強さ2)。
解 説
CIS に対する初期治療について,BCG 膀胱内注入療法と即時膀胱全摘除術の無作為化比較試験は存在しないが,その高い奏効率と比較的良好な予後よりBCG 膀胱内注入療法は標準治療となっている1,2)。Chade らはBCG 膀胱内注入療法開始後6 ヵ月時点でCR にならなかった群はCR 群と比較して有意にその後の進展頻度が高かったと報告しており3),どの時点でBCG の治療効果を判定するかは重要な問題である。
Lamm らは,CIS のあるNMIBC 患者117 名のうち,BCG 導入療法後3 ヵ月時点でのCR を64 名(55%)に認めているが,6 ヵ月時点ではさらに13 名(11%)がCR の判定となり,維持療法としてBCG 注入療法が追加されることでさらに34 名(29%)がCR と判定され,最終的なCR 率は84%であったと報告している4)。この結果は,BCG 膀胱内注入療法による遅延性効果と再導入による奏効の可能性を示している。
Sylvester らは同様の報告をまとめて導入療法1 サイクルにてCR を得られなかった症例のうち,40〜60%は再導入療法に奏効するとしている2)。
Herr らは再発リスクの高いNMIBC 患者(78%がCIS を併存)における維持療法と導入療法単独の無作為化比較試験の副次的解析において,6 ヵ月時点でのCR 症例は2 年無再発生存が77%であるのに対して非CR 症例では11%であり,再発の予測因子となることを示している(HR:9.18,p=0.001)。一方,3 ヵ月時点での評価は再発と相関しなかった(HR:1.51,p=0.24)ことより,BCG 抵抗性の判定には少なくとも6 ヵ月が必要と結論づけている5)。これらの報告をもとに,CIS に対するBCG 抵抗性の評価は6 ヵ月が推奨されており6),EAU ガイドラインでも3 ヵ月時点でのCIS 残存症例にはBCG 再導入が推奨されている7)。
Zehnder らは膀胱全摘標本にて病理学的にCIS のみを認めた症例の10 年非再発率が90%と非常に良好であることを報告しているが8),一方で臨床的Tis の診断にて膀胱全摘除術が施行された症例の複数の記述研究では約20%に筋層浸潤癌を認めており,治療前,治療効果判定におけるアンダーステージング(過少病期診断)のリスクを常に念頭に置く必要がある1)。
結論として,CIS 症例に対する初回BCG 導入療法でCIS が残存する場合,40〜60%でCR が期待できBCG 再導入療法が提案される。一方,BCG 再導入後の初回BCG 注入開始から6 ヵ月の時点でも残存する症例は,即時膀胱全摘除術の適応である。
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- CQ13
- BCG 膀胱内注入療法後に再発した上皮内癌(CIS)症例に対して膀胱全摘除術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- CIS 症例に対する1〜2 コースのBCG 膀胱内注入療法後にhigh grade 腫瘍が再発した場合,膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
Tilki らは,膀胱CIS に対してBCG 膀胱内注入療法後に抵抗性となり膀胱全摘除術を行った243 症例について,全摘病理標本におけるアップステージングとその後の予後を検討したところ,22.6%に筋層浸潤,5.8%に所属リンパ節転移を認め,これらの症例が特に予後不良であったことから,必要な患者には早期に膀胱全摘除術を行うことの重要性を強調している1)。また原発性CIS は併発CIS と比較してBCG 導入療法の奏効率は良好であったものの,その後の筋層浸潤癌への進展や膀胱全摘除術に至るリスクが高いとする報告もあり,primary CIS 症例に対する厳重な経過観察と全摘除術のタイミングの重要性が示唆される2)。さらにBCG 膀胱内注入療法後に筋層浸潤癌となった症例の予後は診断時に筋層浸潤癌であった症例より不良であること3),膀胱全摘除術を行ったBCG 抵抗性症例において,BCG 膀胱内注入療法2 年以降の膀胱全摘除術症例は2 年以内の全摘症例より予後不良であること4)も考慮すると,BCG 抵抗例に対しては早期の膀胱全摘除術が必要となる。Andius らは,BCG 膀胱内注入療法後の初回膀胱鏡検査において,肉眼所見陽性(CIS や隆起性病変の存在)がステージ進行,BCG-failure,膀胱癌死の唯一の予測因子であり,治療後早期の検査により膀胱全摘除術の適応を決定すべきと述べている5)。
膀胱原発のCIS は膀胱外尿路再発・進展(上部尿路または前立腺部尿道)をきたしやすい。Solsona らは膀胱CIS を有する138 例のうち87 例(63%)に初診時または経過観察中に膀胱外尿路再発・進展を認め,予後不良であったと報告している6)。BCG 膀胱内注入療法は,治療効果を発揮するために尿路上皮に直接BCG 菌体が接触することが必要である。したがってBCG 膀胱内注入療法後の再発様式のうち,前立腺部尿道に病変(特に,前立腺間質組織への浸潤がある場合)を認めた場合は速やかに膀胱全摘除術を考慮すべきである。
EAU ガイドライン7)では膀胱全摘除術を推奨すべき適応として,BCG refractory 症例およびhigh grade 腫瘍が再発した症例をあげており,初発が中リスク筋層非浸潤癌のうちBCG 膀胱内注入療法後に非high grade 腫瘍が再発した場合にも検討すべきとしている。NCCN ガイドラインにおいてもBCG 膀胱内注入療法1〜2 コース施行後の再発症例でT1 high grade 症例は膀胱全摘除術を推奨している8)。その他,BCG failure 症例に対する膀胱温存治療としてゲムシタビン注入療法(本邦では適応外使用)などが試されているが,膀胱全摘除術との比較試験は行われておらず,現時点でのエビデンスは限定的である9)。
結論として,① BCG 膀胱内注入療法開始後6 ヵ月でCIS が残存している症例および,② BCG 膀胱内注入療法後再発症例でT1 high grade 腫瘍は,早期に膀胱全摘除術が推奨される。
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- 総論
Stage Ⅱ,Ⅲの筋層浸潤性膀胱癌(muscle invasive bladder cancer:MIBC)の標準治療は膀胱全摘除術である1,2)。男性の場合,膀胱,前立腺,精囊,遠位尿管を摘除し,骨盤リンパ節郭清を行う。尿道再発のリスクが高い場合には,尿道摘除術も同時に実施する。女性の場合には,膀胱,子宮,膣壁,遠位尿管,尿道を摘除し骨盤リンパ節郭清を行うのが標準術式とされている。
膀胱全摘除術に際して,尿道摘除の適応は議論の多いところである3)。大規模なRCT が存在しない現時点での見解としては,自排尿型新膀胱を考慮しない場合や根治が可能な症例においては尿道摘除を施行し,尿道温存を行う場合には再発の危険性を説明した上で行うことが重要である。尿道再発の腫瘍学的意義と経過観察法も含めて,詳細はCQ14 を参照されたい。
近年,膀胱全摘除術においても根治性を確保しつつ生活の質(quality of life:QOL)を向上させることが求められる状況になってきた。神経温存膀胱全摘除術によって自排尿型新膀胱の尿禁制や性機能が良好に確保されることも報告されており,神経温存膀胱全摘除術の適応と問題点をCQ15 で取り上げた。現時点での結論としては,MIBC において神経温存手術を試みても良いが,その選択基準は未だに確立していない。システマティックレビュー4)は存在するものの未だにエビデンスレベルは低く,性機能温存を希望する症例においては,根治性を考慮した総合的検討により神経温存の可否を判断し,慎重に選択された症例にのみ行うことを推奨する。
女性の標準的膀胱全摘除術と自排尿型尿路再建術後に性機能障害や排尿機能障害を伴うため,婦人科臓器温存手術が考慮されるようになってきた5,6)。標準術式と婦人科臓器温存術式を比較したRCT は存在しないが,婦人科臓器温存膀胱全摘除術は通常の膀胱全摘除術と治療成績は同等で,性機能や排尿機能の改善を認めるとする後ろ向き研究が多い7,8)。しかしながら,これらは小規模で評価項目等も統一されていないため,RCT で臨床的意義が証明されるまで婦人科臓器温存膀胱全摘除術は標準治療とはならない。膀胱頸部や尿道に病変を認めないT2 以下の腫瘍で,患者が婦人科臓器温存を希望する場合には考慮しても良いと考える5〜8)。卵巣摘除に関する問題点も存在するので,詳細はCQ16 を参照されたい。
リンパ節郭清の範囲を広げることで,腫瘍学的アウトカム改善効果が期待されるため,至適リンパ節郭清の範囲に関する多くの報告がなされている。拡大郭清の治療意義,特に無再発生存期間の改善効果に関しては,後ろ向き研究から得られたエビデンスが多いが,これらを用いたシステマティックレビュー9)およびメタアナリシス10)では,拡大郭清が標準郭清と比較して無再発生存期間を改善すると結論付けられている。最近,下腸間膜動脈起始部レベルまでの傍大動静脈領域および仙骨前面領域を含めた拡大リンパ節郭清が標準郭清に比して生存率向上に寄与するかを検討したRCT(LEA AUO AB 25/02 試験)の結果が報告された11)。しかし,標準郭清と比較して拡大郭清の優越性は示されなかった。現在,もう1 件のRCT(SWOG1011 試験)が進行中であり,その結果が待たれる。なお,拡大郭清の定義が試験によって様々な状態となっており,統一された定義が存在しないことにも注意が必要である。
従来,膀胱全摘除術は主に開腹膀胱全摘除術(open radical cystectomy:ORC)が実施されてきたが,低侵襲手術の普及に伴い,腹腔鏡下膀胱全摘除術(Laparoscopic radical cystectomy:LRC)とロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術(Robot-assisted radical cystectomy:RARC)に関するエビデンスが充実してきた。ORC とLRC を比較したRCT が3 報,メタアナリシスが2 報存在する。総じて,周術期死亡率,合併症,短期再発率については,両者ほぼ同等の成績であり,出血量は明らかにLRC の方がORC より少なく,手術時間はLRC の方がORC より長い12,13)。RARC とORC を比較したRCT は5 報あり,メタアナリシスも報告されている。RARC はORC と比較して,手術時間が長く,コストが高いが,入院期間が短く,出血量が少なく,高度な術期合併症の頻度が少ないとされている14,15)。最近,ORC とRARC を直接比較したRCT RAZOR(randomized open vs robotic cystectomy)study の結果が報告された16)。2 年非再発生存率においてRARC のORC に対する非劣性が明らかになり,これまで不明だったRARC の腫瘍学的意義に関して,1 つのエビデンスが提供された。これら低侵襲膀胱全摘除術に関する最近の臨床研究の概要に関しては,CQ17 を参照されたい。
MIBC の標準治療は膀胱全摘除術とされているが,その5 年全生存率は約50%程度にとどまるため1,2),治療成績向上の目的で周術期化学療法の検討がされてきた。シスプラチンベースの術前化学療法(ネオアジュバント療法)は複数のRCT において生存期間延長効果を有することが証明されている17〜19)。北村らの報告でも,日本人患者においてその有用性が示されている20)。しかし,腎機能低下などの理由でシスプラチンベースの化学療法が適応とならない症例に対する術前化学療法に関するエビデンスは乏しく,その臨床的意義は確立されていない。術後化学療法(アジュバント療法)に関しては,その有用性を支持するエビデンスが乏しかったが,EORTC 30994 試験21)およびプロペンシティスコア・マッチング法を用いた検討22)から,術前化学療法未施行のpT3-4 and/or pN+に対するシスプラチンベースの術後化学療法の有効性を示唆する報告もなされている。
MIBC のうち,尿路上皮癌に対する術前化学療法のエビデンスは充実しているが,micropapillary,neuroendocrine,squamous cell carcinoma,sarcomatoid,adenocarcinoma などの尿路上皮癌亜型に関するエビデンスは乏しい。米国National Cancer Data Base に登録された症例の中で,膀胱全摘除術を受けた尿路上皮癌亜型2,018 例の検討では,術前化学療法による全生存率改善効果はneuroendocrine 腫瘍にのみ認められたと報告している23)。
現在,国内で実施されている主な尿路変向術は,尿管皮膚瘻造設術,回腸導管造設術,新膀胱造設術などである。尿管皮膚瘻造設術は,回腸導管造設術と比較して手術時間と入院期間が短く,合併症発生率が低いため24),高齢者や合併症を有する症例に用いられる傾向がある25)。回腸導管造設術は,安定した転帰が期待できる確立された尿路変向術であるが,経過が長くなるとストーマや上部尿路の合併症が20〜30%程度発生する26)。前部尿道に腫瘍性病変を有する場合や吻合する尿道断端に腫瘍が存在する場合は尿道摘除が必要であり,自排尿型新膀胱造設術の適応とはならない。また,前立腺部尿道に腫瘍性病変が存在する場合も自排尿型新膀胱造設術の適応は慎重に検討すべきである。海外の中核施設では,膀胱全摘除術後の尿路変向術として,男性の80%,女性の50%で自排尿型新膀胱が選択されているが27),最近の米国での傾向は自排尿型新膀胱を選択する頻度は減少傾向とする報告もある。尿路変向術の種類によって腫瘍制御が影響を受けることはないが,二次的な尿道再発率は自排尿型新膀胱で低い傾向であることが報告されている。QOL に関しては,自排尿型新膀胱と回腸導管のRCT は存在せず,21 編の論文のシステマティックレビューではわずかに自排尿型新膀胱が良好であったと報告されている28)。膀胱全摘除術後の尿路変向術の選択に際しては,上記の情報をふまえて,患者の医学的要素,家庭や社会的背景を考慮しながら,患者とその家族,医療スタッフと十分な意見交換をして決定していくことが重要である。
社会の急速な高齢化に対応して,高齢者・フレイル患者に対する膀胱全摘除術の適応も重要な課題である。60 歳以下の患者に対し80 歳以上の患者では膀胱全摘術後90 日以内周術期死亡率が有意に上昇し,全生存率・癌特異的生存率も年齢とともに低下するというシステマティックレビューの結果が報告されている29)。高齢者やフレイル患者の定義に関しても確立されたものはないが,その治療に際しては慎重な配慮が求められる。現時点では,合併症のない全身状態良好な高齢者に対する膀胱全摘除術は推奨されるが,フレイル患者のための術前評価法は確立されておらず,その適応に関しては個々の症例で慎重に検討する必要がある。
高齢者や合併症を有する患者の増加,そしてQOL 重視の治療への関心が高まり,膀胱温存療法のエビデンスも充実してきた。膀胱温存の手法には,TURBT,シスプラチンを中心とした化学療法,および,放射線療法があり,積極的に膀胱温存を図るにはこれらを併用した集学的治療(Multi-, or Tri-modality therapy)を行うのが一般的である30,31)。膀胱全摘除術と膀胱温存療法を直接比較したRCT はまだないが,複数の後ろ向き試験やプロペンシティスコア・マッチング法を用いた直接比較解析では5 年生存率に有意差を認めなかった32)。集学的治療による膀胱温存療法は高齢者,肝疾患,呼吸器疾患,心不全などの基礎疾患のため膀胱全摘除術が適応にならない症例,あるいは,本人が希望しない症例には治療選択肢の1 つとして検討されるべきである。現在行われている膀胱温存療法には多くの種類があり,治療法の詳細に関してはCQ18 を参照されたい。
2017 年にAJCC Cancer Staging Manual 第8 版が公表され,膀胱癌の病期分類が改訂された33)。第7 版までのStage Ⅲは新たにⅢA とⅢB に分けられ,ⅢA にはT3a-4aN0M0 およびT1-4aN1M0 が含まれ,ⅢB はT1-T4aN2 or N3M0 と定義されている。Stage Ⅲに骨盤リンパ節転移を有する症例が含まれることになるが,今回の膀胱癌診療ガイドライン改訂版では第7 版の分類に従い骨盤リンパ節転移を有する症例はⅥ.StageⅣ膀胱癌の治療で記述しているのでそちらを参照いただきたい。今後は,骨盤リンパ節転移を有する症例を含めたMIBC に対する標準治療の検討を行う必要がある。
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- CQ14
- 膀胱全摘除術における尿道摘除は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 新膀胱造設を考慮しない膀胱全摘除術の場合,尿道摘除を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
- エビデンスの確実性C
- また,新膀胱造設による尿道温存を行う場合,不利益が生じる危険性を説明して行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
2016 年EAU ガイドライン1)では,新膀胱造設の禁忌は,術前前立腺部尿道または術中尿道吻合部断端に癌が存在する場合となっている。また尿道摘除を行わず,尿道再発した症例の癌なし生存率は10〜20%と予後は不良である2,3)。新膀胱造設による尿道温存例またはその他の尿路変向法例の尿道非摘除症例における尿道再発のリスクを検討し,尿道摘除の可否を検討することは臨床上極めて重要である。
システマティックレビューによる検討では,膀胱全摘除術後の尿道再発の頻発時期と頻度はそれぞれ2 年以内,4〜10%程度で,男性は女性に比較して高く,その頻度は約4%と報告されている2,4)。尿道再発のリスクがあると考えられる場合には尿道を温存しなかったとする報告で,尿道温存をした症例のうち男性は4%程度,平均30 ヵ月程度に尿道再発があるとされている5〜10)。一方,尿道温存の条件が不明確な症例では男性が6%,女性でも2.6%に再発があったと報告されており11,12),適応条件を厳しくした報告に比べ明らかに早期,高率に尿道再発を認めている。また新膀胱により尿道温存した場合の尿道再発の頻度は約2%ながら,他の尿路変向法を選択し尿道摘除を行わなかった場合は約6%と明らかに高い6,11,13)。
尿道再発のリスクをレビューした文献によると,男性では前立腺部尿道,女性では膀胱頸部に腫瘍が存在,膀胱全摘除術時の遺残尿道(尿道非摘除),術中尿道断端組織での癌陽性,併発CIS の存在,NMIBC の再発による膀胱全摘などがリスク因子であると報告されている2,4,14,15)。また前立腺部尿道に癌が存在するリスク因子としては多発腫瘍,再発症例16),非乳頭状腫瘍17),膀胱CIS の存在,三角部の腫瘍18)が報告されており,尿道温存を選択する場合には術前の丁寧な評価が必要である。
尿道の評価方法としては術前の精阜付近5 時7 時方向の尿道生検19)や前立腺部尿道の経尿道的切除17),尿道断端の術中迅速病理診断の有用性が報告されている20,21)。一方,術前の前立腺部尿道の評価は,同部に発生した癌の診断に優れるものの,膀胱原発尿路上皮癌の浸潤の診断には不適であるという報告19)や術中尿道断端癌陽性に対する術前評価の陽性的中率は,わずか6.9%(陰性的中率は99.5%)であったとの報告もある22)。同様の結果は前回のガイドラインで引用された研究23)にもあり,術前前立腺部尿道に癌が検出されても吻合部尿道断端病理結果とは乖離があり,新膀胱作成をはじめから除外すべきではないという意見1,23)にも妥当性があると思われる。
また,術中迅速診断結果を最終病理診断と比較した報告では,陰性および陽性的中率はそれぞれ89〜100%,83〜93%であるが20,24),術中迅速診断が偽陰性であった症例も尿道再発をきたさなかったとの報告20)もあり,術中迅速診断が陰性であればおおむね問題はないようである20,21,24)。
尿道温存または尿道非摘除症例に対する定期的経過観察の是非は,議論の分かれるところであるが,定期的観察により無症候性再発を早期発見することは症候性再発に比べ,予後を改善するとする報告が多い25,26)。定期検査の方法としては自然尿細胞診,あるいは洗浄細胞診が最も有用であるとされている3,27,28)。
以上より,根治が期待でき,尿道吻合を行わない尿路変向においては尿道摘除が推奨される。また新膀胱造設による尿道温存する場合には,頻度は低いがその不利益の危険性について症例ごとに説明し,適応を考慮する必要がある。
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- CQ15
- 膀胱全摘除術において神経温存手術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性D
- 神経温存手術の適応基準はなく,選択された症例に対して行うことが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
根治的膀胱摘除術における神経温存手術の目的は,癌に対する手術の根治性を損なうことなく,性機能温存や尿道吻合を行う尿路変向術の尿禁制の改善に寄与し,QOL の向上に資することである。実際,従来の神経血管束を温存する方が非温存より性機能の回復がよいとされてきた1)。また尿道吻合を行う尿路変向術においては男女とも尿禁制が良好であることが報告されている2,3)。したがって,根治的摘除が担保されれば神経温存手術が適応になる場合があると考えられる。NMIBC において膀胱全摘除術を行う場合には神経温存術式は適応を検討できると思われるが,MIBC に対して温存して問題ないとされる基準があるか検討した。また近年報告が多い,前立腺,あるいは前立腺被膜,精囊,婦人科臓器を温存する手術が適応できるかも検討した。
神経温存手術についてSchoenberg4)らは,T1〜T3b を対象とし術前の検査で神経浸潤が疑われる症例を除き,側方に肉眼的な浸潤がない101 例の患者に神経温存を行ったが,5 年局所再発率は5%,5 年および10 年全生存率はそれぞれ67%,54%と非温存手術の場合とは遜色がなかったと報告している。Kessler ら2)も根治性を損なわなければ適応があるとし,331 人に対して,膀胱癌が頂部,前壁にある場合,あるいはNMIBC で多発する症例に対して両側の神経温存,片側に癌が認められる場合には対側の神経温存のみを行った。その結果,両側温存では6 割,片側で温存は3 割が,術後勃起機能が回復し,良好な術後,尿禁制が得られた。局所再発率はpT2 以下N0 では3%,pT3-4N0 で11%,pN+で13%とこれまでの非温存と違いがないと報告している。
しかし,これらの選択基準についての妥当性に関する検討は報告されていない。前述の文献1 では神経温存をしなかった症例の選択基準は様々で,術者の判断,大きな腫瘍,膀胱頸部の浸潤癌,骨盤内の癒着,神経血管束を温存することを妨げる術中のトラブルなどとしている。臨床的に膀胱頂部,あるいは前壁にMIBCの存在が疑われる場合,肉眼的な浸潤の有無などの条件で,温存の有無を比較した文献は報告されていない。
女性において神経血管束温存,非温存のランダム化試験が報告されているが,温存が7 人,非温存が6 人という少数例の検討で,女性の性機能改善のため温存手術を推奨しているが,症例数が少なすぎて結論を導くとこは不可能と思われる5)。
根治的膀胱全摘除術が必要な病態においては神経温存部位による癌の取り残し以上に,原発巣での深達度やリンパ節転移の方が予後に関与するとも考えられる。したがって性機能温存を望む症例で尿道吻合を予定する場合には神経温存を意図しても良いのかもしれない。しかし神経温存を前向きに検討したランダム化試験はなく根治性を損なわないとする適応基準は確立していない。
一方で従来の神経温存術式ではなく,前立腺,前立腺被膜,精囊,婦人科臓器を温存する手術法の報告が近年,散見される。これに対して2016 年のEAU ガイドライン6)では,膀胱頸部浸潤,前立腺部尿道浸潤,尿道に腫瘍がないT2 以下の症例に対して適応があるものの,注意深い選択が必要であり標準治療ではないとしている。また女性では男性よりさらにエビデンスが不足しており,神経温存に関する成績は不明である。これらの文献の多くは性機能,排尿機能の温存は良好で,腫瘍学的アウトカムに遜色がないとしているが,一部には劣るとの報告7,8)もあり,それらをレビューした文献9,10)では,いずれも選択基準にバイアスがあり,数も少なく,成績も短期であり,結論は限局性でよく選択された症例のみにすべきとしている。中にはランダム化試験の報告11)もあるが40 人をランダム化したに過ぎず,結論は限定的である。筋層浸潤癌を含む症例で実施した報告もあるがやはり少数例で,選択基準には強いバイアスがあると思われ12〜15),結論を導くことは困難である。
また近年ロボット支援と腹腔鏡下と開腹手術による治療成績の違いが報告されるようになっているが,現状ではロボット支援手術はまだエビデンスが不足している16,17)。
結論として,筋層浸潤癌において神経温存手術を試みても良いが,その選択基準は未だに確立していないといえる。前立腺や婦人科臓器を温存する方法についても筋層浸潤癌での適応を推奨するエビデンスはない。
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- 女性の膀胱全摘除術において婦人科臓器温存手術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- T2 以下で,膀胱頸部や尿道に腫瘍を認めない場合,婦人科臓器温存手術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
女性の膀胱全摘除術は原則として,膀胱・子宮・膣前壁を一塊に摘除することが推奨されてきたが,女性生殖器を温存しても予後に影響しないとする報告もある1〜7)。根治的膀胱全摘除と新膀胱造設術後の性機能や排尿機能障害の改善を目的として,婦人科臓器温存手術が考慮されるようになってきた1〜15)。
婦人科臓器温存膀胱全摘除術後の性機能を評価した論文は少ないが,術後性機能の満足度スコアの中央値は88.5(80〜100)% で,通常の膀胱全摘除術と比較して良好との報告がある2〜6,13)。さらに,日中および夜間の尿禁制率はそれぞれ58〜100%,42〜100%,自己導尿率は9.5〜78%と,比較的良好な排尿機能が報告されている2〜7,11)。また,婦人科臓器温存が尿閉の予防となったという報告や10),子宮温存と神経温存を行った方が非温存と比較して有意に尿禁制率が高率であったという報告もある15)。
治療成績に関しては,3〜5 年の癌特異的生存率は70〜100%,全生存率は65〜100%と報告され2〜7)。摘出標本の病理組織学的断端陽性率は0〜13.7%,局所再発は0〜13%,遠隔転移は0〜16.7%と比較的良好な成績であった2〜7)。周術期成績に関しては,75 歳以上の患者での傾向スコアマッチング解析で,婦人科臓器温存膀胱全摘除術の方が通常の膀胱全摘に比べて手術時間が短く,出血量が少なく,腸管の回復が早かったという報告もある1)。
以上の結果より,婦人科臓器温存膀胱全摘除術は通常の膀胱全摘除術と比較して治療成績は同等で,性機能や排尿機能は良好である可能性が推定される2,11)。しかし,これらの報告は後ろ向きの観察研究であり,症例数も少なく,評価項目等も論文間で同一でないため,前向きの大規模比較試験の結果が出るまでは標準治療とはいえない2,11,13,14)。婦人科臓器温存手術は標準治療外であることを了承した上で,深達度T2 以下の限局癌で,膀胱頸部や尿道に腫瘍を認めず,婦人科臓器温存を希望される症例に対しては考慮してもよいと思われる9,14)。
根治的膀胱全摘除術時の卵巣摘除は,卵巣疾患のリスクを低下させ,卵巣への膀胱癌の転移の予防となり,高齢者の場合はQOL への影響が比較的少ないため合理的である12)ものの,卵巣摘除による骨粗鬆症,心臓血管疾患等のリスク上昇や,卵巣を温存しても卵管のみ切除することで卵巣癌の発生のリスクを下げるとの報告もあり8),さらなる今後の検討が必要である。
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- 腹腔鏡下/ ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- 腹腔鏡下/ ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術は開放膀胱全摘除術よりも低侵襲で,同等の制癌効果が報告されており,考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
MIBC に対する標準治療として,従来ORC が行われてきたが,低侵襲手術としてLRC とRARC に関する報告が増えてきた。ORC とLRC を比較したRCT が3 報1〜3),メタアナリシスが2 報4,5)存在する。総じて,周術期死亡率,合併症,短期再発率については,両者ほぼ同等の成績であり,出血量は明らかにLRC の方がORC より少なく,手術時間はLRC の方がORC より長いとされている。本邦でも2018 年4 月よりRARC が保険収載となり,急速に普及している。ORC は侵襲の大きい手術であり,周術期合併症や死亡率が高い。またMIBC も悪性度の高い疾患であるため,RARC の安全性と有効性を検証する複数のRCT の結果が報告されている。
RARC(21 例)とORC(20 例)を比較したRCT ではRARC はORC に比べ手術時間が長くなるものの,出血量の減少,消化管の早期回復,在院日数の短縮,鎮痛剤使用量の減少が認められたと報告されている6)。また前向き観察試験でもRARC(83 例)はORC(104 例)と比較し,グレード3 以上の合併症が少なかったと報告されている7)。しかし,データベースから多数症例をマッチングしてRARC(2,101 例)とORC(34,672 例)を比較した後ろ向き報告では,RARC はグレード2 以下の合併症や在院日数の短縮には寄与するものの,グレード3 以上の合併症は同等であり,手術時間とコスト面ではORC に劣ると報告された8)。さらに手術件数が多い施設(年間19 例以上),もしくは年間7 例以上膀胱全摘除術を行う術者ではRARC もORC も合併症は同等と報告している8)。RARC とORC 各群150 例を比較したRCT(RAZOR study)9)では,全グレードの合併症がRARC で67%,ORC で69%と同等であった。また,5 つのRCT から540 名を集め解析したメタアナリシス10)では,再発,グレード3 以上の合併症,QOL は両術式間に有意差はないが,輸血率の低さと在院日数に関してはRARC に優位性があると報告している。
制癌効果に関しては,RAZOR study において2 年の非再発生存率がRARC,ORC ともに72%と同等であったことからRARC のORC に対する非劣勢が明らかになり,これまで不明だったRARC の腫瘍学的意義に関して,1 つのエビデンスが提供された。
しかし,RARC とORC の再発形式に関してはさまざまな報告があり,一定の見解を提示するにはさらなるエビデンスの蓄積が必要である。したがって症例ごとに慎重に術式を検討する必要があると思われる。また,導入初期は合併症が増える可能性もあるため,年間症例数の少ない施設ではその導入には慎重に対応する必要があると思われる。
膀胱全摘除術後の尿路変向術を体腔内で行う術式(intracorporeal urinary diversion:ICUD) も行われているが, 体腔外で尿路変向を行う術式(extracorporeal urinary diversion:ECUD)との比較はまだ十分な検討がなされておらず,その有用性については明らかになっていない。ICUD の技術的高難度を指摘する報告が多いが,ICUD とECUD の手術成績や合併症を比較したRCT はなく,今後のエビデンスが待たれるところである。また,ORC におけるリンパ節郭清についても至適郭清範囲が定まっていないことから,RARC におけるリンパ節郭清の範囲に関しても今後の検討課題である。
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- 筋層浸潤性膀胱癌(MIBC)に対して膀胱温存集学的治療は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 選択された症例に対する治療として考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
高齢化社会が進む中,年齢,パフォーマンスステータス(performance status:PS)低下,あるいは,心疾患などの基礎疾患がある症例,あるいは,身体的に問題がなくても本人・家族が膀胱全摘除術を拒否する場合もあり,膀胱温存療法のニーズは広がりつつある。膀胱温存の手法には,TURBT,シスプラチンを中心とした化学療法,および,放射線療法があり,積極的に膀胱温存を図るにはこれらを併用した集学的治療を行うのが一般的である1〜5)。適応に関しては,腫瘍深達度,悪性度,腫瘍径,腫瘍数,CIS の有無,および,水腎症の有無が治療成績において重要な因子で,深達度T3a 以下の限局癌(できればT2 以下),腫瘍径3cm 以下,そして,CIS や水腎症のない症例が望ましいとされている1〜5)。
化学放射線治療は,米国放射線腫瘍研究グループ(Radiation Therapy Oncology Group:RTOG)による大規模臨床試験をはじめ,これまで多くの施設で施行されてきた治療法で6〜11),その治療成績はタキサン系薬剤やゲムシタビンあるいは5-FU を併用した多剤併用療法の導入によって徐々に向上し4,10,11),2014 年に報告されたRTOG 前向き研究(8802,8903,9506,9706,9906,0233)の長期治療成績では5 年生存率は57% 12)と,膀胱全摘除術の治療成績とほぼ同等の結果であった13〜15)。また,膀胱全摘除術との優劣に関して直接比較した前向き臨床試験はないが,Zlotta らのプロペンシティ・マッチング法を用いた直接比較解析では5 年生存率に有意差を認めず(p=0.49)16),これまでに施行された複数の後ろ向き比較研究でも有意差を認めなかった1,4,17)。
さらに,近年本邦ではいくつかの施設が特殊な技術を駆使した治療法を用いて高いCR 誘導率(80%以上)と膀胱温存症例における長期生存率(5 年癌特異生存率70%以上)を報告しており18〜20)(表1 に治療の概要と適応を示す),これらを総合的に考慮すれば,高齢者,肝・呼吸器・心不全などの基礎疾患のため膀胱全摘除術が適応にならない症例,あるいは,本人が希望しない症例には治療選択肢の1 つとして検討されるべきであると思われる。ただし,これらの治療は標準治療とは異なるため,適用する際にはそれぞれの治療法の特徴を理解し,十分なインフォームドコンセントを得て治療を決定することが肝要である。
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1.はじめに
Stage Ⅳ膀胱癌の治療として,全身化学療法,癌免疫療法,緩和療法に分けて概説する。またStage Ⅳ膀胱癌に対する外科治療(外科処置)としての膀胱全摘除術,転移巣切除の臨床的意義に関してはそれぞれCQ19,20 に取り上げており,そちらを参照されたい。
2.全身化学療法
(1)Stage IV に使用されるレジメンの実際
切除不能または転移を有する膀胱癌に対する標準レジメンはメソトレキセート+ビンブラスチン+ドキソルビシン+シスプラチン(M-VAC)療法(表1)であった。M-VAC 療法は大規模第Ⅲ相試験を経て標準治療になったわけではなく,現在の臨床試験デザインからはかけ離れたシングルアーム試験の結果により登場した1,2)。その後少数例のランダム化試験によりシスプラチン単剤3)やシスプラチン+シクロホスファミド+ドキソルビシン(CISCA)療法4)より生存期間を有意に延長することが示され,2000 年にゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法が登場するまで,唯一無二の一次化学療法レジメンとして普及した。
GC 療法(表2)は臨床第Ⅲ相試験においてM-VAC 療法と同等のOS を示し,M-VAC 療法と比較してグレード3 以上の好中球数減少,発熱性好中球減少症,粘膜炎などの有害事象や治療関連死の割合が低いことが示された5)。この結果を受けて,現在はM-VAC 療法よりもGC 療法が選択されることが多い(詳細はCQ21 を参照いただきたい)。GC 療法の原法は4 週1 サイクルであるが,Day 15 のゲムシタビンを省略して3 週1 サイクルとして実施する変法の報告6,7)もある。臨床第Ⅱ相試験6)や後ろ向き研究7)の結果からは原法と変法の治療成績に大きな差はなさそうであるが,ランダム化第Ⅲ相試験で検証したエビデンスはなく,標準レジメンはGC 療法原法である。
M-VAC 療法におけるシスプラチンの治療強度を高めたdose-dense M-VAC 療法(表3)は,M-VAC 原法との比較試験でOS における統計学的優越性を示すことができなかった8)。しかし長期観察後の解析で統計学的有意差が認められた9)ため,この結果を根拠にdose-dense M-VAC を施行することは許容される。
二次化学療法に関して実施された臨床第Ⅲ相試験は非常に少ない。微小管阻害薬ビンフルニン+ベスト・サポーティブ・ケア(best supportive care:BSC)とBSC のランダム化試験では,intent-to-treat 解析でビンフルニン+BSC 群のOS 中央値は6.9 ヵ月で,BSC 群のOS 中央値(4.6 ヵ月)と比較して有意な差を認めなかった(HR:0.88,95% CI:0.69〜1.12)10)。抗VEGFR-2 抗体ラムシルマブ+ドセタキセルとドセタキセル単独を比較した第Ⅲ相試験では,主要評価項目の無増悪生存期間において,それぞれの中央値が4.07 ヵ月および2.76 ヵ月で,統計学的にラムシルマブ+ドセタキセル群で有意に長かった(HR:0.757,95% CI:0.607〜0.943,p=0.0118)11)。しかしOSに関しては,ラムシルマブ+ドセタキセル群の中央値が9.40 ヵ月,ドセタキセル単独群の中央値が7.85 ヵ月で統計学的有意差に至らなかった(HR:0.887,95% CI:0.724〜1.086,p=0.2461)12)。臨床第Ⅱ相試験では,ペメトレキセド13,14),nab-paclitaxel(nab-パクリタキセル;ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル)15),パクリタキセル16,17),ドセタキセル18),ゲムシタビン19),イホスファミド20,21),などの薬剤が一定の治療効果を示しているものの,BSC に対するOS 延長効果の十分なエビデンスはない。本邦では腎機能障害がある場合または二次化学療法として使用される場合に限り,パクリタキセルおよびドセタキセルの使用は保険審査上認められている。臨床第Ⅱ相試験の統合解析22)によれば,タキサン系抗癌薬は2 剤以上の併用療法として使用した方が単剤使用よりもOS が良好であったが,ランダム化第Ⅲ相試験によるエビデンスは存在しない。
(2)全身化学療法が施行されたStage Ⅳ膀胱癌に対する予後因子
一次化学療法前の評価では,Bajorin23)のリスク分類が有名である。M-VAC またはdose-dense M-VAC を受けた203 例におけるOS に関連する因子を多変量解析し,Karnofsky performance status(KPS)< 80%と内臓転移(肺,肝または骨)の存在が独立因子として算出された。これらの因子を0,1 および2 個有する患者のOS 中央値はそれぞれ33.0,13.4 および9.3 ヵ月であった(p=0.0001)。一方,プラチナ含有レジメンによる一次治療後の時点では,Bellmunt24)の分類が知られている。多変量解析によりEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)PS > 0,ヘモグロビン < 10 g/dL および肝転移の存在がOS と関連した独立因子であり,これらを0,1,2,3 個有する患者のOS 中央値はそれぞれ14.2,7.3,3.8,1.7 ヵ月であった(p < 0.001)。ただしこの研究のコホートはビンフルニン+BSC とBSC 単独のランダム化第Ⅲ相試験であり,実地診療を反映しているかどうかは賛否両論があった。その後二次治療におけるゲムシタビン+パクリタキセル療法など7 つの臨床第Ⅱ相試験が統合解析され,ECOG PS > 0,ヘモグロビン < 10 g/dL,肝転移の存在に加えて,前化学療法からの期間 < 3 ヵ月の4 因子がOS およびprogression-free survival(PFS)と関連することが示された25)。さらに好中球数,リンパ球数,血小板数,アルブミンといった固形癌の一般的予後不良因子を加えた研究では,多変量解析にて先述の4 因子とアルブミン(正常下限未満)の5 因子がOS と相関する独立因子として同定された26)。これら5 因子のうち,0,1 または2 因子,3 因子以上を有する患者のOS 中央値はそれぞれ8.9,6.4,4.5 ヵ月であり(p < 0.001),validation set ではそれぞれ10.6,10.0,7.0 ヵ月であった(p=0.014)。日本人患者を対象とした研究では,性別(男性)27),ECOG PS ≥127)または≥228),ヘモグロビン < 10 g/dL27),白血球数 ≥8,000/μL28),肝転移28),他臓器転移27)が一次治療前における予後因子として報告されている。
(3)高齢者(または超高齢者)のStage Ⅳ膀胱癌に対する全身化学療法
高齢者(WHO では65 歳以上と定義)へのシスプラチン投与を考慮する際には,まず高齢者機能評価を行うべきである。代表的なスクリーニングツールとしてG829)があり(表4)30),簡便で有用なツールとして国際老年腫瘍学会(Société Internationale d’Oncologie Gériatrique:SIOG)で推奨されている31)。G8 で14 点未満は異常,すなわちvulnerable またはfrail となり,原則としてシスプラチン治療は勧められない。ただし日本人患者においては,欧米人と比較して肥満患者が少なく(質問F),保険制度の充実により複数の処方薬を内服していることが多く(質問H),謙遜することが美徳とされる(質問P)ため,低得点になりやすい可能性があることを念頭に置いて評価すべきである。
次に非高齢者と同様に,シスプラチンfit かunfit かの判断を行う。シスプラチンunfit の定義に関しては,EORTC がシスプラチンunfit 患者を対象としたゲムシタビン+カルボプラチン療法とメソトレキセート+カルボプラチン+ビンブラスチン療法のランダム化第Ⅱ/Ⅲ相試験32)を実施した際に用いた『GFR 60mL/min 未満かつ/ またはECOG PS ≥2』が普及している。さらにGalsky ら33)はシスプラチンunfit 患者を対象として実施された臨床第Ⅱ相試験および第Ⅲ相試験をレビューし,① GFR60mL/min 未満と,② ECOG PS ≥2 に加え,③グレード2 以上の聴覚障害,④グレード2 以上のニューロパチー,⑤ New York Heart Association Class Ⅲの心不全を加えた5 項目のうち1 つでも該当するものがあればシスプラチンunfit と提唱した。これは臨床試験のエビデンスに基づくものではないが,尿路上皮癌の臨床研究に従事している120 名の腫瘍内科医をサーベイし,文献的考察を加えてエキスパートのコンセンサスを得たものとなっている34)。
(4) シスプラチンfit(eligible)のStage Ⅳ膀胱癌に対するカルボプラチン・ベース・レジメンの全身化学療法
シスプラチン・ベースとカルボプラチン・ベースのレジメンを直接比較した第Ⅲ相試験として,M-VAC 療法とカルボプラチン+パクリタキセル(CP)療法のランダム化試験35)がある。ただしこの試験では症例登録数が予定の4 分の1 程度と極めて悪く,主要評価項目のOS 中央値はM-VAC 15.4 ヵ月,CP 13.8 ヵ月で,統計学的有意差に至らなかった。他にはメソトレキセート+ビンブラスチン+エピルビシン+シスプラチン(M-VEC)療法とメソトレキセート+ビンブラスチン+エピルビシン+カルボプラチン(M-VECa)療法のランダム化第Ⅱ相試験36),M-VAC 療法とメソトレキセート+カルボプラチン+ビンブラスチン(M-CAVI)療法のランダム化第Ⅱ相試験37),GC 療法とゲムシタビン+カルボプラチン(GCarbo)療法のランダム化第Ⅱ相試験38)が存在する。これらの3 試験においては,奏効率,OS ともにシスプラチン・ベースのレジメンがカルボプラチン・ベースのレジメンよりも優れていた。以上の4 試験に関してメタアナリシスを行ったところ,シスプラチン・ベースのレジメンはCR 率[リスク比(RR)3.54,95% CI 1.48〜8.49,p=0.005],全奏効率(RR 1.34,95% CI 1.04〜1.71,p=0.02)において,カルボプラチン・ベースのレジメンよりも優れていた(OSはデータ不整合のため未解析)39)。毒性に関しては,GC とGCarbo に差はなく38),M-VAC,M-VEC はM-CAVI,M-VECa と比較して悪心・嘔吐36,37),腎毒性36),脱毛37)の頻度が高かった。
制吐療法の発達によりシスプラチンに起因する悪心・嘔吐の頻度やグレードが低くなっていることや,一次治療でM-VAC よりもGC が選択される場合が多いことを勘案すると,シスプラチンfit(eligible)患者に対してはカルボプラチンではなく,シスプラチン・ベースのレジメンが推奨される。なお腎機能障害を有するStage Ⅳ膀胱癌に対するGCarbo の臨床的意義に関してはCQ22 を参照されたい。
3.癌免疫療法
近年,癌免疫療法の中で免疫チェックポイント阻害薬の開発が成功し,膀胱癌を含む各種腫瘍に臨床導入が進みつつあり大きく変化してきている。免疫チェックポイント阻害薬は,T 細胞上に発現する免疫チェックポイント分子と呼ばれる抑制性受容体,もしくは,そのリガンドに結合して,抑制性シグナルを遮断することによって免疫系のブレーキを解除し,腫瘍に対する免疫応答を高める薬剤であり,従来の癌薬物療法とは異なる作用機序をもつ。特有の有害事象として,免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)が出現する。特徴としてはおのおのの有害事象は頻度が低いものがほとんどであるが,全身多岐にわたり出現し,その発現時期を予測することが難しく,時に適切な対応や対処の遅れが致命的となることもありうるため,その管理にあたっては注意が必要である。
(1)免疫チェックポイント分子
癌に対する免疫反応の中心的役割を担うT 細胞において,その活性化を調節する機構が解明されてきた。T 細胞受容体(T cell receptor:TCR)が,癌抗原ペプチドと主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC)を認識してT 細胞は活性化されるが,その活性化にはTCR からのシグナルだけでは不十分であり,免疫反応を活性化する分子(co-stimulatory molecule:共刺激分子)からのシグナルも必要である。一方,自己への不適切な免疫応答や過剰な炎症反応を抑制する働きを有する因子(co-inhibitory molecule:共抑制分子)も存在し,免疫チェックポイントと呼ばれ免疫反応を抑制している40)。代表的な免疫チェックポイント分子としてcytotoxic T-lymphocyte associated antigen 4(CTLA-4) やprogrammed cell death 1(PD-1)などの抑制性の受容体があり,主に活性化したT 細胞上に発現する。これらの抑制性受容体に生理的なリガンドが結合すると,T 細胞の増殖やエフェクター機能(サイトカイン産生や細胞傷害活性など)が抑制される。癌はこの抑制機構を利用して宿主の免疫監視から逃れている。
(2)免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイント阻害薬は主な作用機序として,T 細胞などに発現する免疫チェックポイント分子である抑制性受容体,もしくは,そのリガンドに結合して,抑制性シグナルを遮断することによってT 細胞などの免疫系細胞のブレーキを解除することで,腫瘍に対する免疫応答を高める薬剤である。現在,わが国で膀胱癌に対して承認され実地臨床で使用可能な免疫チェックポイント阻害薬にペムブロリズマブがある(詳細はCQ23 を参照されたい)。
(3)有害事象の種類とその対応(副作用マネージメント)
免疫チェックポイント分子は免疫反応の恒常性維持に関与しており,自己抗原に対する末梢性免疫寛容の成立とその破綻の結果生じる自己免疫疾患の発症に深く関わっている41)。そのため,CTLA-4 やPD-1 などのco-inhibitory molecules をブロックする抗体である免疫チェックポイント阻害薬を投与すると,免疫調整が正常に機能せず,自己免疫疾患・炎症性疾患様の副作用が発現することがある。これらの免疫に関与した副作用はirAE と呼ばれている。irAE は主にT 細胞が関与すると考えられているが,抗体を作るB 細胞系や炎症性サイトカインを産生する顆粒球なども関与すると考えられている42)。従来の細胞傷害性化学療法に対する対症療法とは異なり,irAE に対してはステロイドなどの免疫抑制剤で対処する。重症度に応じて速やかに,適切な治療を行うことで多くのirAE をコントロールすることが可能である。おのおのの有害事象は頻度が低いものがほとんどであるが,全身多岐にわたり多彩な形で出現し,その発現時期を予測することも難しい。ほとんどの症例で投与中に生じるが,稀ではあるものの投与を止めてから数ヵ月以上経過してから出現することもある。適切な対応や対処の遅れが致命的となることがありうるため,注意深く経過観察を行い早期発見に努めることが重要である。
(4)Pseudoprogression とHyperprogression
① Pseudoprogression
癌免疫療法中,腫瘍の増大や新病変が出現して疾患が進行しているように見えても,後から遅れて臨床効果が表れてくる現象が報告されており,pseudoprogression と呼ばれている43)。Pseudoprogression は腫瘍自体の増悪を表すものではないが,疾患の進行として誤って評価されてしまう可能性がある。癌免疫療法は,作用機序として宿主の免疫系を介して抗腫瘍効果を発揮させるために,治療を開始してから抗腫瘍免疫応答が発揮するまでの期間に個人差があると考えられる。したがって,pseudoprogression の機序として,①免疫細胞が腫瘍部位に浸潤することにより見かけ上腫瘍が増悪(腫瘍の増大や新病変が出現)していると評価される場合,②抗腫瘍免疫応答を発揮するまでの期間に実際に一過性に腫瘍が増悪している場合があると考えられている43,44)。実地臨床において腫瘍増大時に組織学的に腫瘍局所の免疫状態を確認できる場面は限られるため,pseudoprogression と真の増悪(true progression)を見分けるのは困難である。したがって,実地臨床においても,一旦腫瘍が増大した段階で治療を継続する場合は,①患者の全身状態が治療開始と同程度であること,②病変が生命を脅かす状態(life threatening)でないと判断されること,③患者に発生した有害事象が治療薬の継続投与の際に許容できると判断したうえで,患者に対して病状悪化のリスク,および,継続により全身状態が悪化した場合に後治療を受ける機会を失うリスクがあることについてのインフォームドコンセントを得ることが必要である45)。
② Hyperprogression
近年,癌免疫療法を開始後,ごく短期間の間に急速な進行を認める症例が存在するとの報告が増えており,癌免疫療法が契機となって急速に腫瘍を進行させてしまうhyperprogression という概念が提唱されている46)。進行期の癌患者においては,臨床経過のどこかの時点で腫瘍が急速に悪化しはじめることもあり,hyperprogression の存在および機序についての報告は増えつつあるが未解明の部分が多くコンセンサスは得られていない状況である。治療開始後に短期間で全身状態の悪化,転移部位の急速な増悪を反映しうる検査値の上昇(例えば腫瘍マーカーの急激な上昇,肝機能検査値の急激な上昇[肝転移症例]など)を認めた際は,ただちに画像評価等で治療効果判定を行い,診断を確定させて即座に治療を中止する必要があると考える。
現在,pseudoprogression やhyperprogression を見分ける方法を特定するための研究が進められている。
4.緩和療法
現在,膀胱癌にかかわらず癌と診断された時からの緩和ケアが必要とされている。患者や家族の苦痛や気がかりを可能な限り取り除くことが求められるが,進行した膀胱癌の症状緩和は必ずしも容易ではない。膀胱癌には他臓器の進行癌とは違った対応を求められることが多い。進行した膀胱癌は膀胱が残存している場合,膀胱機能を障害し排尿時痛や頻尿,排出障害といった排尿に関する症状,膀胱そのものの痛みや深刻な肉眼的血尿により起こる膀胱タンポナーデ,上部尿路の閉塞による腎機能障害や痛みなどを引き起こすことが考えられる。さらにリンパ節転移や肺転移などの遠隔転移,局所の浸潤といった症例ごとの進展の程度や範囲により浮腫や呼吸困難なども出現する。進行した膀胱癌の上述した症状緩和に特化したエビデンスレベルの高い研究は検索した範囲では認められず,小規模の後ろ向き観察研究やレビューを認めるのみである。
(1)膀胱癌局所進行に伴う血尿の対処
肉眼的血尿に対して,一般的には用手的膀胱洗浄による凝血塊除去ののち膀胱灌流を行うが,血尿の制御は容易でない場合が多い。腫瘍切除が可能な身体状況であれば,TURBT は選択肢であるが,事実上困難であることも多い。海外のレビュー文献によれば47,48),局所進行性膀胱癌の血尿に対する治療法として,イプシロンアミノカプロン酸内服やホルマリン膀胱内注入,ミョウバン膀胱灌流,プロスタグランジン膀胱灌流,水圧療法,尿路変向,小分割放射線療法,動脈塞栓術,ミトキサントロン動脈注入,姑息的膀胱全摘除術があげられている。IVR 治療や放射線照射による血尿制御については,複数の症例報告や症例集積の報告がされている49〜52)。膀胱癌の血尿制御を目的とした膀胱全摘除術および尿路変向についての文献は少ない53)。血尿の制御を目的とした膀胱全摘除術は合併症が少ないとは言えないとして,終末期で状態が悪い症例の場合は推奨できないと,癌患者の泌尿器症状の緩和に関するガイドライン54)には記載がある。膀胱局所コントロール目的に経皮的腎瘻,尿管皮膚瘻等の尿路変向が難治例では選択肢となる55)。また尿路変向は尿管閉塞に伴う水腎症,腎後性腎不全,引き続く電解質異常への対処として施行され,尿路変向術として経皮的腎瘻が選択される場合が多いと考えられる56,57)。腎機能の改善後に救済化学療法を選択できる状況もあろう。尿路変向の実施にあたっては患者の意向,全身状態,期待生命予後を総合的に考慮する必要がある。
(2)膀胱癌局所進行に伴う膀胱痛,膀胱痙攣の対処
膀胱癌による刺激や癌治療に伴う炎症などは膀胱の痛みの原因となり,肉眼的血尿と同様にQOL を低下させる。血尿以外の膀胱の症状緩和に対しても放射線治療が有効との報告がある。詳細は,次項の「(3)緩和目的の放射線照射 」およびCQ24 を参照されたい。膀胱痙攣に伴う痛みは突出痛として現れ,癌病変そのものにより引き起こされる持続痛とは異なる。これらの痛みは痛みの神経学的分類では内臓痛に分類される。痛みの治療にはNSAIDs やアセトアミノフェンを開始し,改善しない痛みに対してはトラマドールやコデインなどの軽度から中等度の強さの痛みに用いるオピオイドやモルヒネ,オキシコドン,ヒドロモルフォン,フェンタニル,タペンタドールなどの中等度から高度の強さに用いるオピオイドに変更,もしくは追加を行い対応する。本邦で使用できるいわゆる強オピオイド製剤は増えてきているがそれぞれの特徴を把握した上で薬剤を選択する。これらの薬物治療で制御の難しい痛みの場合には直腸,前立腺,膀胱後半部,子宮頸部,膣円蓋部などの求心性線維を受けている上下腹神経叢ブロックが適応になることがある。その他にクモ膜下鎮痛法や硬膜外鎮痛法があるがカテーテル感染などのトラブルや尿閉や筋力低下などの症状出現に留意が必要である58)。
膀胱癌により引き起こされる身体症状は非特異的症状を含めると多岐にわたるが,これらの苦痛に対処するには患者・家族の辛さを包括的に評価し全人的に捉え,医師のみならず,看護師やその他の職種と協働して臨むことが重要である。
(3)緩和目的の放射線照射
緩和的放射線治療においては,対象患者の状態・予後を鑑み,総治療期間が短期間で比較的早い時期に治療効果出現が期待できる寡分割照射が主流となっている。各種緩和的放射線治療における放射線外照射の具体的なレジメンについては,CQ24 ならびに放射線治療計画ガイドラインを参照されたい59)。
骨転移に起因する疼痛に対して多くのRI 治療製剤の開発が行われており60),そのうちのいくつかはすでに市販製剤として利用可能となっている。本邦においては,89SrCl2(メタストロン)が2007 年に保険収載されて使用可能であったが,2019 年1 月に製造が終了されてしまったため,本ガイドライン作成時点において国内で使用可能な製剤はない。
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- CQ19
- 局所進展例または骨盤内リンパ節転移を有する症例に対して膀胱全摘除術は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 化学療法が有効であった症例には膀胱全摘除術を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
以下,本解説では,AJCC 第7 版でStage Ⅳとして扱われたcTanyN1-3M0 症例に関しては,AJCC 第8 版に準拠し,Stage ⅢA,B と記載する。
Stage ⅢA およびB(AJCC 第8 版),言い換えれば明らかに骨盤内リンパ節腫大を伴う膀胱癌に対しては,導入全身化学療法後に腫瘍の縮小が得られた時点で,膀胱全摘除術および骨盤内リンパ節郭清を追加する集学的アプローチが行われてきた。前向き試験による化学療法単独や放射線治療など他の治療法との比較試験はないが,化学療法著効後の再発部位の検討において,もともと腫瘍を認めた部位の再増大の頻度が高いことが手術追加の理論的根拠とされている。Dimopolous らは,遠隔転移を有する症例に対する化学療法でCR,部分奏効(partial response:PR)が得られた後に再発を生じた症例の再発部位を検討した後ろ向き研究において,治療前に局所進展と判定された42 例においては,74%(31/42)が術後遠隔転移を生じることなく,まず局所再発を生じたと報告している1)。
Herr らは,cT4bNxM0/cT3-4N2-3M0 症例207 例のうち,M-VAC 療法後に膀胱全摘除術が施行された60 例の成績を報告している。術後5 年の時点で19 例(32%)が生存し,その内訳は病理にて残存癌を認めなかったpCR 19 例中9 例(41%),残存癌が完全切除されたsCR 34 例中10 例(29%)で,切除不能例での長期生存例はなかった。また,化学療法に良好な反応を示したが,その後の膀胱全摘除術を拒否した12 例(CR 10,PR 2)では,3 年時点で生存していたのは1 例のみに過ぎなかった2)。この報告は,化学療法の反応性が良好であること,完全切除が可能であることが長期生存に関わる予後因子であることを示唆している。Ho らは,MD Anderson Cancer Center において,1995 年から2010 年の間に,骨盤内・後腹膜リンパ節(所属外リンパ節を含む)の腫大を伴う膀胱癌に対して,導入全身化学療法後に膀胱全摘除術が施行された55 例の治療成績を報告している。病理所見上,ypN0*が55%を占め,全体での癌特異的生存期間中央値は26 ヵ月であったが,ypN0 であった症例の5 年生存率が66%であったのに対し,ypN+症例では12%であった3)。
最近,Zargar-Shoshtari らが,北米および欧州の19 施設を含む多施設共同研究の結果を報告した。2000 年から2013 年の間に,cT1-4aN1-3 症例に対し,導入全身化学療法(M-VAC 42%,GC 43%)後に膀胱全摘除術が施行された304 例での検討の結果,病理所見上ypN0 は48%の症例で認め,全体でのOS 中央値は22 ヵ月であった。多変量解析では,病理所見がypN0 であること,摘除リンパ節個数が15 個以上であること,切除断端陰性であること,シスプラチンを含む多剤併用レジメンの使用が長期生存に関連する予後予測因子であった4)。
このように局所進行例あるいはリンパ節転移を有する症例でも,導入全身化学療法の反応がよければ長期生存が期待できるが,膀胱全摘除術前に最終病理結果を予想することは困難であり,半数近い症例は導入全身化学療法後に膀胱全摘除術を実施しても長期生存は期待できないことも事実である。
遠隔転移を有する膀胱癌において,局所治療追加により予後を改善するか,という疑問があるが,この点についてSeisen らは,米国National Cancer Data Base を用いた後ろ向き研究で,遠隔転移を有する膀胱癌3,753 例を対象に,膀胱全摘除術もしくは50Gy 以上の膀胱への放射線照射が施行された297 例とそれ以外の3,456 例で予後を比較している。Inverse probability of treatment weighting(IPTW)法を用いた調整を行った結果,OS 中央値は局所治療群14.92 ヵ月,なし群は9.95 ヵ月で有意差を認めた。IPTW 調整後の多変量解析でも局所治療は長期生存に関する予後予測因子であったと報告している5)。本研究の問題点として転移の範囲,個数等は調整できていないことがあげられ,局所治療が施行されたコホートは,極めて選択された患者群であることは容易に予想される。遠隔転移を有する症例に対する局所治療は,現時点ではあくまで緩和的位置づけであり,予後改善の可能性に関しては,今後の報告を含めて検討していく必要がある。
* y:既治療例を再分類した場合の前頭語。
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- CQ20
- 転移を有する膀胱癌に対する転移巣切除は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 全身状態が良好な症例,病巣が単発で完全切除が可能な症例,化学療法が有効であった症例,病勢の進行が急速ではない症例等で転移巣切除を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
転移性尿路上皮癌における転移巣切除術は,古くはCowles らが単発肺転移症例6 例に対して肺転移切除術を施行し,生存期間中央値5 年の成績を報告したことにはじまる1)。実臨床において選択された症例で転移巣切除術が施行されることがあり,その治療成績が蓄積されている。
Siefker-Radtke らは,1985〜2001 年にM.D. Anderson Cancer Center で転移巣切除が施行された31 例の治療成績を報告した。切除された転移巣は,肺(77%,24/31),遠隔リンパ節(13%,4/31),脳(7%,2/31),皮膚(3%,1/31)で,30 例で完全切除が可能であった。OS 中央値は23 ヵ月,5 年生存率は33%であった2)。また,Lehmann らは,ドイツの多施設共同研究において,1991〜2008 年の間に転移巣切除術が施行された44 例の治療成績を報告した。周術期化学療法は80%(35/44)で施行,切除対象はすべて単一臓器,切除部位は後腹膜リンパ節(56.8%,25/44),肺(18.2%,8/44),遠隔リンパ節(11.4%,5/44),骨(4.5%,2/44),副腎(2.3%,1/44),脳(2.3%,1/44),小腸(2.3%,1/44),皮膚(2.3%,1/44)で,転移巣切除術からのOS 中央値は27 ヵ月,5 年全生存率は28%であった3)。
最近,米国SEER データベースを用いた研究結果が報告された。70,648 例の尿路上皮癌症例中,497 例で治療経過中に転移巣切除術が施行されており,転移巣切除術からのOS 中央値は19 ヵ月,3 年全生存率は38%であった4)。
本邦からは,Abe らが1989〜2012 年に国内4 施設において,1989〜2012 年の間に転移巣切除術が施行された42 例の治療成績を報告した。周術期化学療法は98%(41/42)で施行され,切除部位は,後腹膜/ 遠隔リンパ節(47.6%,20/42),肺(28.6%,12/42),局所再発(11.9%,5/42,骨盤内臓全摘:3,再発腫瘍切除術:2), 皮膚(4.8 %,2/42), 肝臓(2.4 %,1/42), 下肢(2.4 %,1/42),副腎(2.4%,1/42)で,転移巣切除術からのOS 中央値は26 ヵ月,5 年全生存率は31%であった。特に単発の肺転移,リンパ節転移例で,転移巣切除術後の長期生存が得られたと報告している5)。Matsuguma らは肺転移切除32 例の検討において5 年全生存率50%の成績を報告している6)。Kanzaki らも18 例の検討において,5 年全生存率46.5%の成績を報告し,単発の肺転移が長期生存と関わっていたと報告している7)。一方,Otto らはM-VAC 抵抗例であった70 例に転移巣切除術を施行した結果,摘除後の生存期間中央値は7 ヵ月に過ぎず,4%の症例で周術期死亡があったと報告している8)。
以上,これまでの報告を総括すると,転移巣切除(特に単発の肺転移症例)により,長期生存が得られる可能性がある。適応に関して高いエビデンスは存在しないが,Herr らは,①化学療法を先行し症例を選択する,②化学療法に対する良好な反応性,③限局するリンパ節転移・単発の肺転移・単一の臓器転移,④治癒切除が可能であること,⑤良好な全身状態と手術に向かう高いモチベーションを指摘9)しており,各症例について,患者の全身状態,化学療法の反応性,病勢進行の程度を十分に見極め,手術適応を検討することが重要であると思われる。
なお,同様の患者群において,化学療法後の残存病変に対する放射線照射に関しては,病勢コントロールに有益な可能性があるが,現時点では報告が限られており治療的意義に関して一定の見解は出ていない。今後のデータ集積が必要である。
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- CQ21
- 切除不能または転移を有する症例の一次治療としてGC 療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 切除不能または転移を有する症例の一次治療として,GC 療法を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
切除不能または転移を有する膀胱癌に対する治療の原則は薬物療法である。GC 療法は,それまで標準治療とされていたM-VAC 療法とのランダム化第Ⅲ相試験において,同等の治療成績を示し,有害事象が軽微であった1,2)。しかし本試験はGC のM-VAC に対する優越性を検証するデザインとなっており,主要評価項目のOS 中央値がGC 群14.8 ヵ月,M-VAC 群13.8 ヵ月(HR:1.04, 95 %CI:0.82〜1.32)と,GC の優越性を示すことができなかったという解釈が正しい。ただし,好中球数減少や発熱性好中球減少,粘膜炎,脱毛といった有害事象や治療関連死の割合はGC の方がM-VAC よりも低く,NCCN ガイドライン3)ではcategory 1 として,EAU ガイドライン4)ではstrong としてGC が推奨されている。
シスプラチンfit 患者に対するGC と並ぶ一次化学療法として,EAU ガイドライン4)ではM-VAC およびdose-dense(またはhigh-dose intensity)M-VAC がstrong として,NCCN ガイドライン3)ではdose-dense M-VAC がcategory 1 として推奨されている。dose-dense M-VAC はM-VAC 原法における15 日目および22 日目のメソトレキセートおよびビンブラスチンをスキップし,2 週間を1 サイクルとしてシスプラチンの治療強度を高めたレジメンで,G-CSF をDay 4 からDay 10 まで投与する5)。EORTC によりM-VAC とdose-dense M-VAC を比較するランダム化第Ⅲ相試験が実施され,主要評価項目のOS 中央値はdose-dense M-VAC 群で15.5 ヵ月,M-VAC 群で14.1 ヵ月と統計学的有意差を認めなかった(HR:0.80,95% CI:0.60〜1.06)5)。ただし毒性はG-CSF をルーチンに使用するためdose-dense M-VAC の方が軽微であり,7.3 年のフォローアップ後の解析6)では,HR:0.76, 95% CI:0.58〜0.99 と統計学的にdose-dense M-VAC 群が優れていた。このことより,NCCN ガイドライン3)では従来のM-VAC は推奨されていない。
なおGC のDay 1 にパクリタキセルを追加したPGC とGC のランダム化第Ⅲ相試験7)において,PGC 群およびGC 群のOS はそれぞれ15.8 ヵ月および12.7 ヵ月であったが,統計学的な有意差には至らなかった(HR:0.85,95% CI:0.72〜1.02)。PGC はGC と比較して好中球数減少と発熱性好中球減少の頻度が高くなるが,非血液毒性には差がなく,奏効率はPGC 群が有意に優れていた(56% vs. 44% , p=0.0031)ことから,EAU ガイドライン4)ではPGC もstrong として推奨されている。しかしNCCN ガイドライン3)では推奨されておらず,わが国では保険診療上の制約がある(パクリタキセルの使用は腎障害がある場合または二次化学療法に限る)ため,本ガイドラインでは推奨しない。
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- CQ22
- 腎機能障害を伴う切除不能または有転移症例に対するGCarbo 療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- 腎機能障害以外の予後不良因子がない症例にはGCarbo 療法を考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
シスプラチン(CDDP)を含む化学療法はStageⅣ膀胱癌の第一選択の治療として確立している。しかしながら,進行膀胱癌症例は高齢者が多く,腎機能が障害されていることが多い1)。Dash ら2)によれば,Cockroft-Gault の算出式を用いた場合,アジュバント化学療法の適応と判断されたT3 以上あるいはN+の膀胱全摘症例では28%,このうち70 歳以上に限ると40%の症例でクレアチニンクリアランス(CCr)が60mL/ 分未満であった。このような,腎機能障害を有するunfit for CDDP 症例に対しては,CDDP を腎機能障害が少ないカルボプラチン(CBDCA)に変更したゲムシタビン+CBDCA(GCarbo)が用いられるが,他にCDDP+メトトレキサート+ビンブラスチン(CMV)をCBDCA に変更したM-CAVI や,CDDP を減量あるいは分割投与するGC・M-VAC,白金製剤を含まないゲムシタビン+パクリタキセル(GP)などのレジメンも選択される。他のレジメンと比較しGCarbo の副作用の発現程度,治療的優位性は定まっていない。今までに腎機能障害を有するStage Ⅳ膀胱癌におけるGCarbo とM-CAVI を比較した第Ⅱ-Ⅲ相試験が報告されている。De Santis ら3)は第Ⅱ相RCT を行い,30 < CCr < 60,またはPS 2 に該当する患者(unfit for CDDP)をGCarbo(n=88),またはM-CAVI(n=87)に割り付け,Overall response rate(ORR)とsevere acute toxicity(SAT)を比較した。その結果ORR はGCarbo で42%,M-CAVI で30%,SAT はGCarbo で13.6%,M-CAVI で23%と2 つのレジメンはどちらも有効と判断され,OS を比較検討する第Ⅲ相試験に進んだ。第Ⅲ相試験では症例が追加され,GCarbo とM-CAVI にそれぞれ119 例が割り付けられた4)。OS はGCarbo で9.3 ヵ月,M-CAVI で8.1 ヵ月と有意差を認めなかった。ORR はそれぞれ41.2 %,30.3 % であった。SAT はそれぞれ9.3 %,21.2 % とM-CAVI でより多く認められた。以上の結果から,GCarbo はM-CAVI と比較して効果が同等であり,重篤な副作用の発現頻度が低いことから,unfit for CDDP 症例において,より有用な治療法と結論された。なお,CCr < 60mL/ 分のみの症例と比較して,CCr < 60mL/ 分かつPS 2 の群の予後は不良であり,SAT の頻度も高かった。PS と内臓転移の有無によるBajorin リスクグループ5)では,グループ2*の予後は不良であった。したがって,腎機能障害に加えてPS 2 あるいは内臓転移などの予後不良因子を有する症例では,副作用が強く発現するため,GCarbo の有効性は限定的である。
以上より,腎機能障害を有するStageⅣの膀胱癌に対して,GCarbo 療法は腎機能障害以外の予後不良因子がない症例には考慮することが推奨される。
* KPS 80%未満かつ臓器転移(肺,肝,または骨)を有するグループ。
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- CQ23
- 一次抗癌化学療法後に再発または進行した局所進行性または転移性膀胱癌に対するペムブロリズマブ使用は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 一次治療のプラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した,あるいはプラチナ製剤併用化学療法による術前もしくは術後補助化学療法の治療終了後12 ヵ月以内に再発または転移した膀胱癌に対して,ぺムブロリズマブを使用することが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
従来,プラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した局所進行性または転移性の膀胱癌に対して定まった二次治療は存在せず,タキサン系抗癌薬(パクリタキセルあるいはドセタキセル)等を単剤あるいは併用した多剤化学療法が適宜用いられていた1)。2017 年12 月に一次治療のプラチナ製剤併用化学療法後に再発または進行した,あるいはプラチナ製剤併用化学療法による術前もしくは術後補助化学療法の治療終了後12 ヵ月以内に再発または転移した膀胱癌に対して,ヒト化抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体であるぺムブロリズマブの使用が本邦で承認された。ぺムブロリズマブが使用されるエビデンスとなったKEYNOTE-045 試験では,日本人52 例を含む542 例を,ぺムブロリズマブ群または化学療法群に1:1 で無作為に割付し,有効性・安全性が検討されている2)。OS の中央値はぺムブロリズマブ群で10.3 ヵ月,化学療法群で7.4 ヵ月であり,ぺムブロリズマブ群で有意な延長が確認され,奏効率はぺムブロリズマブ群で21.1%,化学療法群で11.4%であり,ぺムブロリズマブ群で有意に高い値であった。なお奏効が確定した患者においては奏効期間の明らかな延長が認められ,いわゆるdurable response が得られている。健康関連QOL 調査においてもぺムブロリズマブ群の良好なQOL スコアが示されている3)。ぺムブロリズマブ群の主な副作用はそう痒症(19.5%),疲労(13.9%),悪心(10.9%)で,irAE は16.9%に認められ,主なものは甲状腺機能低下症(6.4%)であった。免疫チェックポイント阻害薬に起因するirAE の発症は比較的稀であるものの重篤化しやすく,早期発見と十分な管理が必要で,可能なら他診療部門を含めたチーム医療により慎重に対応することが望ましい。
2018 年版EAU ガイドラインでは,プラチナ製剤併用化学療法施行中あるいは施行後に進行する転移性膀胱癌に対してぺムブロリズマブ,アテゾリズマブ,ニボルマブをstrong として推奨している4)。2019 年版 version 1 のNCCN ガイドラインでは,プラチナ製剤使用後の局所進行性あるいは転移性膀胱癌(Stage Ⅳ)に対してぺムブロリズマブをpreferred regimen として,アテゾリズマブ,ニボルマブ,デュルバルマブ,アベルマブをalternative preferred regimen として取り上げている5)。
転移性膀胱癌に対する二次治療としての免疫チェックポイント阻害薬の使用に際し,治療効果が不十分である症例に対する治療の切り替えのタイミング6),有用な治療効果予測マーカー,有効例に対する治療継続期間などは定まっていない。また免疫チェックポイント阻害薬が無効の場合の三次治療も確立されていない7)。今後,より高い有効性・安全性を有する,転移性膀胱癌に対する二次,および三次治療の確立が望まれる。
参考文献
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- CQ24
- 局所進行性あるいは転移性の膀胱癌に対する緩和目的の放射線外照射療法は推奨されるか?
- エビデンスの確実性B
- 局所進行性膀胱癌に起因する局所症状の軽減および遠隔転移に起因する症状緩和目的で放射線外照射療法を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
放射線外照射療法は,多くの癌種において,根治療法としてだけでなく症状緩和を目的としても有効であり広く用いられている。膀胱癌においては,原発腫瘍の局所進展による局所症状(主として膀胱出血)と遠隔転移(主として骨転移,脳転移)による症状の改善を目的に加療が行われることが多い。第Ⅲ相試験は少ないものの,大多数の研究において放射線治療による高い症状緩和効果と低い有害事象発生頻度が一致して報告されている。加えて,約70%の患者において治療後3 ヵ月の時点でのQOL は改善または維持されることから1,2),緩和目的の放射線外照射療法は推奨できると判断される。
根治的治療が困難な手術不能例や高度の局所進展例においては,病勢の進行抑制に有効である。特に,原発巣に起因する膀胱出血に対する緩和効果は高く,おおむね70〜90%の患者に有意な出血緩和効果が得られ,50〜60%に完全緩解が得られると報告されている1〜8)。ただし,初期効果は高いものの,6 ヵ月目の評価で69%の患者に再出血が認められ7),症状改善後の再増悪までの期間は中央値で6 ヵ月と報告されており2),長期制御は期待し難いことが課題である。放射線照射方法としては,寡分割照射が主流である1〜8)。
骨転移に起因する疼痛に対しては,おおむね60〜80%の患者に症状緩和効果が得られる1,3〜5,9,10)。放射線照射方法としては,1 回照射を含む寡分割照射が主流となっている11)。骨転移に起因する疼痛緩和効果に関する1 回照射と分割照射を比較した25 のRCT のシステマティックレビューでは,有効率,完全緩解率はともに分割方法間に有意差を認めなかったが,再治療率は1 回照射群が分割照射群の2.6 倍と有意に多かった(95% CI:1.92〜3.67,p < 0.00001)10)。したがって,患者の全身状態や予後に応じて,適切な線量分割を選択することが重要と考えられる。
頻度は低いものの,膀胱癌の脳転移に対しても放射線外照射は有効である。照射方法としては,脳照射と定位放射線照射が広く用いられており,膀胱癌においても手術例と比較して遜色のない成績が報告されている12)。また,脳転移に対する全脳照射においても,4Gy×5 回の寡分割照射が試みられている13)。脳転移の治療については,脳腫瘍診療ガイドラインを参照されたい14)。
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- 追加CQ
- 根治切除不能または転移を有する症例における一次抗癌化学療法後の維持療法としてアベルマブ使用は推奨されるか?
- エビデンスの確実性A
- 一次抗癌化学療法後の病勢進行を認めない根治切除不能または転移を有する症例に対して, アベルマブ維持療法を行うことが推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
根治切除不能または転移を有する尿路上皮癌に対しては,プラチナ製剤を中心とした多剤併用抗癌化学療法が一次治療として用いられている。その奏効率は高いものの長期成鎖は満足できるものではない。シスプラチンfit 患者を対象に行われたGC 療法とMVAC 療法の前向きランダム化比較試験の報告によると,GC 療法,MVAC 療法の全奏効率はそれぞれ49.4%,45.7%で,病勢コントロール率(CR+PR+SD の割合)はそれぞれ82.9%,78.2%であった1)。しかしながら全生存期間の中央値はそれぞれ14.0 カ月, 15.2 カ月であり,良好な長期成績とは言い難い2)。 シスプラチンunfit 患者を対象に行われたGCarbo 療法とM-CAVI 療法(メトトレキサート+カルボプラチン+ビンブラスチン)の前向きランダム化比較試験の結果では,GCarbo 療法の奏効率は41.2%,病勢コントロール率は74.0%であったが,全生存期間の中央値は9.3 カ月と短かった3)。長期成績の向上を目指して,一次抗癌化学療法で効果を認めた症例に対して,間欠的に抗癌剤を投与する維持療法が試みられてきたが,高い有効性を示す抗癌剤維持療法の確立には至っていない。
2021 年2 月に根治切除不能な尿路上皮癌における化学療法後の維持療法として,ヒト型抗ヒトPD-Ll モノクロナール)抗体であるアベルマブの使用が本邦で承認された。アベルマブが使用されるエピデンスとなったJAVELIN Bladder 100 試験は,一次抗癌化学療法としてGC 療法あるいはGCarbo 療法を4 から6 サイクル施行後に病勢進行を認めない根治切除不能または転移を有する尿路上皮癌患者700 例を対象とし, アベルマブ維持治療(10mg/kg, 2 週間毎投与)にbest supportive care (BSC)を併用する群(アベルマブ+BSC 群)とBSC 単独群に,1:1 で無作為化割り付けして行われた4)。全患者集団においてアベルマブ+BSC 群の全生存期間の中央値は21.4 ヵ月で,BSC 単独群の14.3 ヵ月と比較して有意に延長していた。また,無増悪生存期間の中央値はアベルマブ+BSC 群で3.7 ヵ月であり,BSC 単独群の2.0 ヵ月と比較して延長が確認された。有害事象の発現率は,アベルマブ+BSC 群で98.0%,BSC 単独群で77.7%であった。グレード3 以上の有害事象の発現率はそれぞれ47.4%及び25.2%であった。なおアベルマブの注意すべき有害事象としてinfusion reaction が挙げられるが,その発現頻度は全グレードで21.5%,グレード3 以上で0.9%であった。Infusion reaction を軽減させるためにはアベルマブ投与前に抗ヒスタミン薬,解熱鎮痛薬の使用を考慮することが望まれる。
2021 年版EAU ガイドラインでは, 一次抗癌化学療法でSD 以上の有効性を認めた転移性膀脱癌に対して,アベルマブ維持療法をstrong として推奨している5)。同様に2021 年版version 4 のNCCN ガイドラインでは,category 1 として推奨している6)。
以上より,一次抗癌化学療法後に病勢進行を認めない転移性膀脱癌に対して,アベルマブ維持療法は生命予後の延長が期待できるため推奨される。今後,アベルマブ維持療法後に病勢進行を認める症例に対する逐次治療の確立,アベルマブの投与継続期間の最適化の検証が望まれる。
参考文献
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- 総論
1.膀胱癌の経過観察について
膀胱癌の経過観察では膀胱が温存されているNMIBC 患者と膀胱が摘除された患者では大きな違いがある。MIBC に対して放射線療法+化学療法により膀胱が温存された場合の詳細は省くが,基本的にはMIBC の膀胱全摘除後の経過観察項目にハイリスクNMIBC の膀胱に対する経過観察項目を組み合わせたものと考えるのが妥当であろう。
2.NMIBC の経過観察
NMIBC に対する経過観察の目的は,膀胱内再発の早期発見による侵襲度の高い治療の回避,MIBC への進展を含むリスクの高い再発の早期発見による膀胱温存維持あるいは生存率の改善,上部尿路病変の早期発見による生存率向上にあると言える。NMIBC に対してBCG 膀胱内注入療法を行わない場合,5 年膀胱内再発率は31〜78%,5 年筋層進展率は0.8〜45%とされている1)。BCG の導入により,5 年晩期再発率は25.9〜55.4%に,5 年(筋層)進展率は2.4〜18.9%程度に低下するとされている2)。このように,再発率,MIBC への進展率に大きな違いがあるのは,NMIBC が非常に多様性のある疾患群であるためである。したがって,NMIBC を妥当性のあるリスク分類のもとに経過観察法を修正することは当然と言える。
3.経過観察の視点からのNMIBC のリスク分類について
リスク分類についての詳細は他項に譲るが,経過観察について注意すべきことがある。例えばEAU のNMIBC リスク分類においては,代表的なSylvester らの研究をもとにしているが,本研究自体はEORTC の7 つのRCT における2,596 名のNMIBC 患者を対象としたデータを基に作成されたものである1)。結果は,再発,進展ともに,腫瘍数,腫瘍サイズ,再発歴,T 病期,異型度,CIS の有無がリスク因子とされるが,対象患者は70 歳以下が67.4%,80 歳を超えた患者が4.5%を占め,BCG 膀胱内注入療法は全員受けていなかった集団のデータを基にしている1)。一方,同グループはBCG の導入療法と1〜3 年の維持療法を行った集団でのリスク因子の解析結果も報告しており,再発に寄与する因子は,異型度,再発歴,腫瘍数であり,進展や疾患特異的生存に関与する因子はT 病期と異型度であった2)。このように,再発率,再発パターン,時期などは,治療介入や患者背景により変化していく可能性があり,最新のデータも加味しながら実臨床では応用していくべきであり,日本の現在の実臨床とは違いがあることに注意が必要である。
4.NMIBC 患者の上部尿路の経過観察は?
一般にNMIBC の患者に同時性の上部尿路腫瘍が見つかる割合は1.8%であり,膀胱三角部に腫瘍があるとそのリスクは6 倍になる3)。8 年間の経過観察で膀胱CIS の患者では24.6%に上部尿路に腫瘍病変が生じるが,CIS を伴わないNMIBC の場合は2.3%であった4)。他の研究ではNMIBC に対する2 年ごとの観察で上部尿路腫瘍が2.6%に認められたが,低リスクでは0.6%であったのに対し,高リスクでは4.1%と高い5)。上部尿路腫瘍の発症リスクとしては膀胱腫瘍の多発性が唯一の有意なリスク因子であったという5)。全体として,NMIBC の経過観察中の上部尿路腫瘍の頻度は低く,例えばNMIBC 患者にCT urography(CTU)で定期経過観察を行ってもNMIBC 治療後の上部尿路再発の25〜27%程度しか検出できなかったとの報告もあり6),全てのNMIBC 患者への上部尿路の画像診断による定期経過観察には疑問が残る。超音波検査は容易に施行可能であるが,定期診察時における超音波検査が上部尿路再発の早期発見と結果的に尿路上皮癌による死亡を減らせるかのエビデンスはない。
5.リスク分類に応じたNMIBC の経過観察
現時点ではNMIBC の経過観察において,リスク分類に応じて方法や頻度,期間を修正した結果が,最終的な膀胱温存率,進展率,癌死率,経済的効果にどの程度寄与できるかを検証した前向きの研究や前向きRCT はない。しかしながら過去のデータからリスクごとの再発率,進展率の大きな違いは明らかであり,既存のリスク分類に沿って経過観察のプロトコールを修正することは妥当といえる。ここでは海外の主要機関(AUA,EAU,NCCN)によるガイドライン7〜9),および本ガイドライン委員会の経過観察プロトコールの一案を提示する(表1)。経過観察における尿中分子マーカーの応用についてはCQ26 に記載するが,保険承認上の制約もあり,表1 には明記していない。表1 にあげた経過観察については,上述してきた内容の他に以下の後方視的なデータが,主な根拠となっている。
ⅰ)初回治療後3 ヵ月目の所見がその後の再発や進展の重要な指標となる10,11)。
ⅱ)低リスク膀胱癌の再発はほとんどが低異型度のTa である。したがって経過観察における尿細胞診の有用性は極めて低い12,13)。
ⅲ)低リスク膀胱癌が5 年間再発なければその後の再発の確率は低い14)。
ⅳ)中・高リスク膀胱癌では10 年以降の再発もありうる15)。
6.膀胱全摘除術後の経過観察〜特に筋層浸潤癌
CQ27,28 の解説でも記載されているように,膀胱全摘除術後の経過観察は,①癌の再発(局所・尿路再発,遠隔転移),②上部尿路の変化と腎機能,③代謝異常が重要観察項目である。
(1)癌の再発に関する経過観察について
再発の早期発見が経過観察の重要な目的であるが,現在まで,膀胱全摘除術後に早期発見することにより生存率や生存期間の延長が得られることを示した前向き研究はない16)。これは,これまで膀胱全摘除術後の再発に対する治療がプラチナ製剤を中心とする化学療法に限られていたためにも起因する。
しかし,免疫チェックポイント阻害薬に代表される免疫療法の進歩や新規薬剤開発が進んでおり,再発の早期発見の意義は今後高まる可能性がある。しかしながら,膀胱癌患者はPS や年齢,全身状態などの点で再発時の積極的治療が困難な場合や積極的治療を希望されない場合も多く,そのような患者を綿密な経過観察プロトコールに縛らないように配慮することも必要である。
①局所再発
局所再発の定義は膀胱が位置した箇所,あるいは骨盤リンパ節の郭清された範囲内とする場合が多い。その頻度は5〜16.5%とされており17,18),多くは2 年以内に起こる。局所再発の危険因子としては,病期,リンパ節転移の存在,骨盤リンパ節郭清の質,断端陽性,周術期化学療法などがあげられる18,19)。
②遠隔転移
遠隔転移再発の80〜90%は3 年以内,特に2 年以内にきたすことが多いが20,21),周術期化学療法を施行された患者では異なる可能性がある。遠隔転移の好発部位としてはリンパ節,肺,肝臓,骨などがあげられ22,23),遠隔転移再発のリスク因子としてはT 病期(T3/4)やリンパ節転移があげられる24)。
③上部尿路再発
上部尿路再発は膀胱全摘術後で1.8〜6.0%とされているが8,17,25),3 年以降の再発部位としてはその頻度は高く18),3 年で4%,5 年で7%との報告もある26)。膀胱全摘除術後の上部尿路再発リスクとしては,膀胱癌の多発性,CIS の合併,尿管の断端陽性などがあげられている25)。また術前に尿管ステントが留置されていた患者では膀胱全摘除術後の上部尿路再発率が高いとの報告もあり,注意が必要である27)。
④尿道再発
膀胱全摘除術後の尿道再発に関しては,その頻度は男性で1.5〜6.0%,女性で0.83〜4.3%とされ17),3 年以内の再発が多いという。尿道再発の危険因子として,男性ではNMIBC に対する膀胱全摘,前立腺の病変,再発性NMIBC の既往等があげられており,女性では膀胱頸部病変があげられている17)。禁制型尿路変向(新膀胱)より非禁制型尿路変向の方が尿道再発率は高い(0.9〜4.0% vs 6.4〜11.1%)との報告が多く18),特に理由がない限り,基本的には非禁制型尿路変向の場合は膀胱全摘除術時には尿道全摘を行うべきであろう。最近のメタアナリシス研究でも,尿道再発のリスク因子として,男性,非禁制型尿路変向,CIS,表在性を含む膀胱癌の既往,前立腺部尿道や膀胱頸部の腫瘍,多発膀胱腫瘍や尿道断端陽性等があげられている28)。また,無症候性で発見された尿道再発の方が症状発現後より予後が良いことから洗浄尿細胞診による経過観察が重要であるとされているが16,28),前述したように非禁制型の尿路変向の場合には尿道全摘を行うべきであろう。
(2)機能的経過観察について
上部尿路の変化と腎機能,ならびに代謝異常に関しては尿路変向による変化と加齢や併存疾患による機能低下の経過観察が重要である8,9,16,29)。また,非禁制型尿路変向ではストーマの,禁制型の場合には排尿状態の観察や管理も生涯必要となる。腎機能に関しては禁制型か非禁制型の尿路変向の方法による腎機能低下の差はないとされるが30〜32),非禁制型でも尿管皮膚瘻では腎機能低下が高度となる傾向が指摘されている32)。いずれにしても,上部尿路の形態と腎機能の経過観察は癌の再発の経過観察が終了した後も必要と考えられる8,9,16,17)。特に術後の水腎症,腸管利用の尿路変向における尿管腸管吻合部狭窄が腎機能低下に有意に影響することから33),これらのモニタリングは重要である。回腸導管に限った研究であるが,最初の5 年に45%の患者に尿路変向に起因した合併症が起こり,10 年,15 年,15 年を超えると,それぞれ50%,54%,94%の生存患者に合併症が起こるとの報告もあり33),生涯の経過観察の必要性が支持されている8,9,16,29)。
代謝異常に関しては,特にビタミンB12 欠乏症,高クロール性代謝性アシドーシスが重要である。ビタミンB12 欠乏症は回腸終末部を利用する尿路変向に特異的で,発生率は0.2〜33%とされている34〜36)。ビタミンB12 は肝臓に貯蔵されているため欠乏症が出現するのは多くは術後3 年以降であり,この時期より毎年のビタミンB12 測定を行うことが肝要である。
尿路変向や再建に回腸を用いた場合,尿中のCl−,NH3+,H+を再吸収し,HCO3−を排出するため,しばしば高クロール性代謝性アシドーシスをきたす35,36)。代謝性アシドーシスは骨塩量低下を招き,病的骨折のリスクを21%上げ,尿路結石の原因になる可能性がある37)。膀胱全摘除術に伴う回腸利用の代用膀胱では術後90 日を超えて観察できた923 名中307 名(33%)に長期の重曹の投与が必要であったという35)。アシドーシスの頻度は回腸導管で15%程度であるが,利用腸管の長い禁制型で頻度は上昇(50%程度まで)するという38)。このように機能的な経過観察は尿路上皮癌再発の経過観察必要性が終了したとしても続けられるべきである。
7.経過観察のタイムテーブルと方法
膀胱全摘除術を受けた患者の経過観察において,海外のデータではあるが,ほとんどの再発は症状を伴っており,50%を超える遠隔(転移)再発が症状ありとの報告もある16)。また,症状ありと症状なしで発見された再発は,その後の生存率の差がないとの報告39)もみられる一方,症状なしの発見は生存率が上昇する(特に肺転移の早期発見40))との報告20,41)もあるが全て後方視的研究である42)。今後,免疫チェックポイント阻害薬に代表される新規の再発性,転移性の尿路上皮癌に対する薬剤が使用できるようになり,再発の早期発見の意義や重要性が変わる可能性があり,経過観察の方法や時期,期間も変わる可能性がある。EAU やAUA,NCCN によるガイドラインでは病期や再発リスクにあわせた明確な経過観察のタイムテーブルや方法を提示しておらず7〜9),International Bladder Cancer Network は,全摘時病理所見に沿った一定の経過観察法が提示されているが,周術期化学療法施行の有無などを加味したり確固たるエビデンスに基づいたものではない16)。また全身状態や年齢を加味すべきとの見解もある43)。本ガイドライン作成委員会の推奨する膀胱全摘除術後の経過観察を,① pT2 以下かつpN0 と,② pT3 以上あるいはany pT N1〜3 の2 分類として表2 に提示する。全摘標本でpT1 以下かつpN0 の症例はpT2N0 より再発リスクは低いことから,①をさらに2 グループに分類して経過観察のプロトコールを変えているものもある42,44)。明確なエビデンスに基づいたものではないが,腎上部尿路の形態変化や上部尿路再発の観察については造影CT で行うこととしている7〜9,16)。
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- CQ25
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の患者にリスク分類に沿った経過観察は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 初回治療後3 ヵ月目に膀胱鏡検査を行い,その後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨される(推奨の強さ1)。
解 説
NMIBC は再発率が高く,進行の危険性もあるため治療後の経過観察が必須である。特に,MIBC やhigh grade 腫瘍の出現はその後の治療選択や予後に大きく影響するため注意が必要である。EAU およびNCCN いずれのガイドラインでもNMIBC 初期治療後はリスク分類に基づいた経過観察プロトコールが推奨されている1,2)。しかし,これまでにリスク分類に基づいた経過観察の有用性や安全性を証明するRCT は行われていない。
TURBT 後3 ヵ月の膀胱鏡検査は再発,進行の重要な予測因子であるため,通常すべてのNMIBC 患者の経過観察として行われるべきと考える3,4)。TaG1 腫瘍の前向き経過観察試験では3 ヵ月目の再発および非再発症例のその後1 年の再発率がそれぞれ55.8%,17.8%であり,3 ヵ月目の再発症例で有意に多かったと報告されている4)。また,Solsona らは膀胱注入療法を施行したCIS またはT1G3 において,3 ヵ月目の膀胱鏡所見がMIBC 移行の独立した危険因子であると報告している3)。以上より高低リスク腫瘍のいずれにおいても3 ヵ月目の膀胱鏡検査の重要性が示唆されている。
EAU ガイドラインでは,腫瘍個数,腫瘍径,再発回数,深達度,CIS 併発,grade に基づいた再発および進行リスクスコアが提唱されている1,5)。低リスク腫瘍(初発,単発,Ta low grade,3cm 未満,CIS 併発なしをすべて満たす)は術後3 ヵ月の膀胱鏡検査で陰性なら12 ヵ月目に膀胱鏡検査を施行し,以降5 年まで年1 回膀胱鏡検査を行うことが推奨されている。逆に高リスク腫瘍(T1,high grade,CIS,3cm より大きい多発再発のT1 low grade のいずれか)では,2 年間3 ヵ月ごと,5 年まで6 ヵ月ごと,その後は年1 回の膀胱鏡と尿細胞診を行うことが推奨されている。中リスクでは3 ヵ月目に尿細胞診と膀胱鏡検査を行い,もし陰性なら5 年まで個々の症例に応じ3〜6 ヵ月の間隔で尿細胞診と膀胱鏡検査を行うとされている。低リスク腫瘍では5 年以降の再発が低いため経過観察は5 年とされているが,中・高リスク腫瘍では5 年以降の再発の可能性があるため,永続的な経過観察が推奨されている1,4,6)。
NCCN ガイドラインでは,AUA リスクカテゴリーに基づいた経過観察が推奨されている2)。低リスク腫瘍(単発3cm 以下のlow grade)は3 ヵ月,12 ヵ月で膀胱鏡を施行し,その後5 年まで1 年ごとの膀胱鏡が推奨されている。中リスク腫瘍(1 年以内の再発のTa low grade,3cm を越えるlow grade 単発腫瘍,low grade 多発腫瘍,3cm 以下のTa high grade,T1 low grade)では治療後1 年目は3,6,12 ヵ月目に,2 年目は6 ヵ月ごとに,その後5 年までは1 年ごとの尿細胞診と膀胱鏡検査が推奨されている。高リスク腫瘍(T1 high grade,再発Ta high grade,CIS,high grade のBCG 後再発,組織学的亜型,脈管侵襲あり,前立腺部尿道進展のいずれか)でははじめの2 年間は3 ヵ月ごと,5 年まで半年ごと,10 年まで1 年ごとの膀胱鏡検査と尿細胞診が推奨されている。それ以外の経過観察に関しては臨床的必要性を考慮し決定するとされている2)。
以上より,現時点ではリスク分類に基づいた経過観察の有効性および安全性を証明した前向きなエビデンスは十分でないものの,治療後3 ヵ月目にすべてのNMIBC に膀胱鏡検査を施行し,その後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨される。
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- CQ26
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)の患者の経過観察において尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術の使用は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 再発高リスクの症例では膀胱鏡と尿細胞診による従来の経過観察に加えて,尿中分子マーカーやNBI は選択された症例に対して考慮することが推奨される(推奨の強さ2)。
解 説
NMIBC に対する初期治療後の経過観察は,侵襲的な膀胱鏡検査がその中心となる。そのため,より非侵襲的な検査による膀胱鏡の回避や新規検査による診断率向上,予後改善が期待される。非侵襲的検査として,尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術(PDD,NBI 等)の有用性が複数報告されている1,2)が,その経過観察における有用性を証明したRCT は存在しない。
尿中マーカーとして特異度の高い尿細胞診が広く用いられているが,診断が病理医の経験や検体の採取・処理法に依存するなどの問題がある1)。また尿細胞診の感度は35〜70%と一般的に高くなく,特に低異型度および再発腫瘍では感度が低下すると報告されている3)。NMIBC の診断や経過観察に用いられる尿中分子マーカーとして,NMP22,BTA,FISH 法による膀胱癌関連遺伝子検査(ウロビジョンⓇ)など複数の尿中分子マーカーの有用性が報告されており,その多くは尿細胞診より感度が高く,特異度が低いとされる3,4)。Yoder らは膀胱癌の経過観察において尿細胞診陰性例の26%が尿中FISH 検査陽性で,そのうちの62.5%に癌が発見されたと報告している5)。Kamat らはTURBT 後BCG 膀胱内注入療法を施行するNMIBC 患者に対するFISH を用いた経過観察の有用性を検討する前向き試験で,TURBT 後6 週目のFISH 陽性は3 ヵ月もしくは6 ヵ月後の再発リスクが3〜5 倍,進行が5〜13 倍となると報告している6)。Shariat らは尿細胞診陰性のNMIBC において尿中NMP22 陽性は再発および進行に有意に関連し,NMP22 を用いた経過観察を行うと3%の進行見逃しで不要な膀胱鏡検査を12%回避できると報告している7)。しかし,前向き試験やエキスパートオピニオンにおいても膀胱鏡検査および尿細胞診に代わる十分な尿中分子マーカーは今のところないと結論づけられている1,2,8,9)。
膀胱鏡検査は膀胱癌の診断および経過観察の中心的検査であるが,通常の膀胱鏡検査では10〜20%の腫瘍の見逃しがあると報告されている1)。NBI や5-ALA またはHAL を用いたPDD といった腫瘍可視化技術のNMIBC の診断や治療における有用性が報告されているが,経過観察における有用性を検討した報告は少ない10,11)。NMIBC 治療歴のある患者を含む膀胱癌患者の検討でHAL を用いたPDD は硬性鏡,軟性鏡どちらでも通常の膀胱鏡検査に比較し腫瘍検出率が向上した9)。Herr らはlow grade の再発膀胱癌患者において通常の膀胱鏡に比較しNBI を用いた経過観察は再発回数が少なく,非再発生存期間が有意に延長することを報告した11)。上述のように,腫瘍可視化技術を用いた経過観察の有用性に期待が高まるが,経過観察における有用性および安全性を比較した前向きRCT はない。
以上より,現時点では有用性が証明された尿中分子マーカーや腫瘍可視化技術等の非侵襲検査は存在しないため,通常の膀胱鏡検査が経過観察の軸となる。しかし,通常の膀胱鏡検査ができない症例や膀胱鏡検査および尿細胞診の補助検査として上記の非侵襲検査法が考慮されうる。なお日本では2019 年1 月現在,膀胱癌の経過観察において保険承認されている尿中分子マーカーは尿中BTA が再発診断目的に,FISH 法がCIS と診断された患者に経尿道的手術後2 年を限度として2 回に限り認められているのみである。よって,診断率の向上や膀胱鏡検査回避のための非侵襲検査を用いた経過観察に関するさらなる検討が待たれるところである。
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- CQ27
- 筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)ならびに膀胱全摘除術後の経過観察において,上部尿路の評価は推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 上部尿路の評価を行い,無症候性再発を早期発見することは推奨される(推奨の強さ2)。ただし,現時点で明確な上部尿路経過観察プロトコールは確立されていない。
解 説
NMIBC 治療後の上部尿路再発率は,低リスク癌では0.7%程度であるが高リスク癌では20〜25%とされる1)。EAU およびNCCN いずれのガイドラインでもNMIBC 初期治療後はリスク分類に基づいた経過観察が推奨され,その中で上部尿路経過観察に関しては,EAU では進展高リスク症例において1 年ごとの画像検索が推奨されており(期間は明記なし),NCCN ガイドラインではAUA が定義する高リスク症例に対しては術後1 年目,以後1〜2 年ごとに10 年目までの上部尿路検索が推奨されている2,3)。International Bladder Cancer Network が2016 年に発表した推奨プロトコールもNCCN 同様である4)。上部尿路癌に対する細胞診の感度は膀胱癌より低いとされており,画像検査としてCTU(CT 造影剤が使用不可の場合はMR urography(MRU)での代用)の併用が推奨される。
ただし,これらはすべて後ろ向き研究から導き出されたものである。Sternberg らは,935 例のNMIBC の経過観察において51 例に上部尿路再発を認め,そのうち定期画像検査で同定された症例は15 例(29%)に留まり,延べ3,074 件の画像検査の有効率はわずか0.49%であったことからCTU による経過観察に疑問を呈している1)。T1G3 ハイリスク癌でもBCG 膀胱内注入療法を行い5 年間膀胱内無再発の場合,その後の上部尿路再発リスクは非常に低くなるとの報告もあり5),NMIBC 治療後の上部尿路経過観察の頻度や期間に関しては議論が必要と考えられる。
一方,膀胱全摘除術後では上部尿路再発は1.8〜6.0%と比較的稀なものの,術後3 年目以後の晩期再発部位としては頻度が高い6)。上部尿路再発症例は遠隔転移を伴うことは稀で,再発した場合,生存期間中央値は10〜55 ヵ月,60〜67%の症例は癌死すると報告されている7,8)。Picozzi らのメタアナリシスでは上部尿路再発のうち38%は無症候性で,定期検査が発見の契機となっている9)。無症候性での早期発見にて癌死率・全死亡率が30%低下するとの報告もあり定期的な経過観察が臨床的に有意義な可能性があるが,この点に関しては議論の余地がある10)。経過観察法としては尿細胞診のみではなくCTU を用いることで,手術合併症(水腎症・傍ストーマヘルニア)や遠隔転移再発・リンパ節再発のチェックを同時に行うことが勧められる11)。尿細胞診以外にFISH 法(ウロビジョン®)など新たな診断技術の併用も試みられているが,現状では偽陽性率が高く,今後診断率の向上が求められる12)。
膀胱全摘除術後の経過観察として,EAU ガイドラインでは,1 年目は4 ヵ月ごと,2〜3 年目は6 ヵ月ごと,以後は1 年ごとの術後画像検索が推奨されており,その中に上部尿路画像検査も含まれるものと考えられる。NCCN ガイドラインでは上部尿路および腹部・骨盤部画像を術後2 年は3〜6 ヵ月ごと,5 年目までは1 年ごとを推奨している。
膀胱全摘除術後の上部尿路再発リスクは,MIBC よりもNMIBC 症例の方が高く,その他のリスク因子としては多発・CIS・遠位尿管断端陽性があげられる13,14)。膀胱全摘除術時尿管断端CIS 陽性例に対して,6 ヵ月ごとの尿管鏡検査を用いた経過観察が上部尿路再発早期発見に有用であったとの報告もあるが15),リスク・ベネフィットを考え,このようなリスク因子を持つ尿路再発高リスク症例においてはより入念な上部尿路経過観察が有効かもしれない。
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- CQ28
- 膀胱全摘除術後は摘出病理組織所見や再発リスクに沿った経過観察が推奨されるか?
- エビデンスの確実性C
- 再発リスクに沿った経過観察を行うことが推奨される(推奨の強さ2)。ただし,現時点で摘出病理組織所見や再発リスクに沿った明確な経過観察プロトコールは確立されていない。
解 説
MIBC に対する膀胱全摘除術後の経過観察は,①癌の再発(局所・尿路再発,遠隔転移),②尿路変向に関連した上部尿路の変化,③腎機能,および,④代謝異常が観察項目である。②〜④に関しては,非禁制型尿路変向時の水腎症の有無,腎機能モニタリング,禁制型尿路変向時の代謝性アシドーシスやビタミンB12モニタリング等が重要となる1)。
①に関して,局所再発は5〜15%の症例に認められ,術後2 年以内に多い。リスク因子としては膀胱壁外浸潤,リンパ節転移,断端陽性,摘出リンパ節数,リンパ節郭清範囲,周術期化学療法の有無があげられる2,3)。遠隔転移は50%の症例で認められ,高ステージ,リンパ節転移がリスク因子となる。転移部位としてはリンパ節,肺,肝,骨が主で,術後2 年以内が多く,10 年以上経過するとほとんど認めない4,5)。尿道再発は男性患者の1.5〜6.0%,女性患者の0.8〜4.3%で認められ,再発までの期間は平均13.5〜39 ヵ月と報告されている1)。リスク因子としては,男性では(再発)筋層非浸潤癌,前立腺部尿道浸潤,女性では膀胱頸部浸潤があげられ,非失禁型代用膀胱が造設された症例は失禁型尿路変向症例と比較して有意に再発率が低いとされる4)。上部尿路再発は1.8〜6.0%の症例で認められ,晩期再発症例の中では最も頻度が高い。メタアナリシスでは38%の上部尿路再発は無症候性で発見され,多発病巣,尿管断端陽性がリスク因子とされている6)。
上記②〜④の項目は通常定期的な経過観察が施行されることとなるが,①については経過観察によって無症候性のうちに転移・再発を発見することが予後改善に有効なのか最終的な結論は出ていない。膀胱全摘除1,270 例中再発を認めた444 例を解析し,無症状・有症状の両群間で再発後生存率に有意差を認めなかったとの報告もあるが7),この解析は尿路再発が含まれておらず,20 年にもおよぶ症例集積のため再発後の治療選択肢が現在と異なる可能性がある。対して,無症候性での尿道再発早期発見が生存期間延長に寄与するとする報告や8),新膀胱造設後の経過観察において,尿道CIS の発見および肺・遠隔リンパ節転移の無症候性再発の早期発見は予後改善に有効であるとの報告もある9)。Stewart-Merrill らのシステマティックレビューにおいても,尿路再発まで含めた解析では無症候性再発の早期発見は有意に死亡率を低下させる結果であった10)。ただし現状では定期経過観察頻度・期間に関しての明確なエビデンスはなく,3 年目以後の全体的な再発率が低下することから,それ以後の画像検査による経過観察の有効性に関しては今後の検討が必要との意見もある11)。
以上をふまえ,NCCN ガイドラインでは膀胱全摘除術後2 年はCT(もしくはMRI, PET-CT)による腹部骨盤部画像検査と胸部単純X 線検査(もしくはCT,PET-CT)による胸部画像検査を3〜6 ヵ月ごと,血液検査を3〜12 ヵ月ごと,尿細胞診を6〜12 ヵ月ごと,以後は5 年目まで1 年ごとの経過観察を推奨している。EAU ガイドラインでは,膀胱全摘除術後1 年は4 ヵ月ごと,2〜3 年目は半年ごと,それ以後は1 年ごとのCT 検査を推奨している12,13)。しかし両ガイドラインの経過観察での再発発見率は低く,摘出病理組織所見,再発リスク,年齢などを考慮し患者ごとに経過観察頻度や期間を調整すべきとの報告もある14)。その他にも病理ステージ,リンパ節転移,切除断端の状態,術前水腎症の有無をリスク因子として再発リスクを分類し経過観察様式を変える方法15)や,病理ステージ,年齢,チャールソン併存疾患指数(CCI)から再発部位(尿路,腹部骨盤部,肺,その他)ごとの再発リスクと他因死のバランスを検討し経過観察様式を決定する方法16)などが報告されている。脈管浸潤,壁外浸潤もしくは断端陽性,リンパ節転移,慢性腎疾患,心血管疾患,失禁型尿路変向等のリスク因子による分類を使用した方が病理因子のみの分類よりもコスト面でも効率の良い5 年経過観察方法となる可能性があるとの研究もある17)。
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- 尿路上皮癌亜型および特殊型総論
1.疫学,病理所見
尿路上皮癌,特に浸潤性尿路上皮癌には様々な亜型が存在しており1〜5),その多くは診断時に進行している。最も頻度が高い亜型は扁平上皮への分化を示す尿路上皮癌で,組織学的に腫瘍細胞が扁平上皮化生を示すことが特徴であり,全浸潤性尿路上皮癌の20〜40%に存在するとされる。次いで腺上皮への分化を示す尿路上皮癌で,組織学的に腫瘍細胞が腺管を形成することが特徴であり,全浸潤性尿路上皮癌の6〜18%に存在するとされる。その他の亜型の頻度は低く,具体的な頻度は不明な点が多い。微小乳頭型は腫瘍細胞が小胞巣を形成しその周囲に裂隙形成を伴うことが特徴であり,診断時に進行している症例が多い。リンパ腫様型/ 形質細胞様型は浸潤傾向が強い亜型で,肉眼的に腫瘍形成が不明瞭であることが特徴的である。組織学的には小型腫瘍細胞が高度な浸潤性増殖形式を示すことを特徴とする。肉眼および組織学的には胃癌および乳腺の小葉癌の膀胱への転移症例との類似性が高いことから,原発性と転移性との鑑別が非常に重要な問題となる。胞巣型および微小囊胞型は,腫瘍細胞が正常の尿路上皮に類似した形態を示すことが特徴で,病理診断に難渋することが少なくない。肉腫型は通常の尿路上皮癌の脱分化した組織型であり,尿路上皮癌の経過観察中もしくは通常型尿路上皮癌を伴うことが一般的である。リンパ上皮腫様型は腫瘍内に顕著なリンパ球浸潤を伴うことが特徴で,咽頭部に好発する同名の病名と同様の組織像を示す。巨細胞型は腫瘍内に多数の破骨型巨細胞を認めることが特徴で,骨に好発する同名の病名と同様の組織像を示す。明細胞型は腫瘍細胞が淡明な所見を示すのが特徴で,胞体内に多量のグリコーゲンを認める。脂肪細胞型は腫瘍細胞が脂肪細胞への分化を示すことが特徴とされ,皮膚等の発生する脂腺系腫瘍に類似した所見を示す。いずれの亜型に関しても,特定の成因は不明である。
尿路上皮癌以外にも,扁平上皮癌,腺癌,神経内分泌腫瘍,軟部腫瘍および造血器系腫瘍が膀胱に発生するが,いずれも頻度は低い1,2,4,5)。最も多い組織型は扁平上皮癌で,角化を伴うことが多い。成因としてビルハルツ住血吸虫感染関連がよく知られているが,本邦ではその頻度は極めて稀である。その他には扁平上皮化生を伴った尿路上皮からの由来が推定されている。次に多い組織型は腺癌で,大腸癌に類似する組織像を示し,時に顕著な粘液産生を伴う。成因として尿膜管由来が最も多く,次いで腺様化生を伴った尿路上皮からの由来が推定されている。神経内分泌癌の多くは小細胞癌であり,肺に発生する同名の腫瘍と同じ組織像を示す。小細胞癌の多くは通常型尿路上皮癌を合併もしくはその経過観察中に発生することから,その発生由来は通常型尿路上皮癌脱分化と推定されている。その他の神経内分泌腫瘍としてはカルチノイドがあげられるが,その頻度は極めて稀である。その他の組織型としては,血液造血器系および軟部腫瘍系があげられる。他臓器の同名症例と同様の組織像を呈する。いずれもその頻度は極めて稀であり,特定の成因は知られていない(表1)。
2.治療・予後
(1)Stage I
これらの亜型や特殊型は,純粋な尿路上皮癌と比べて病期は進行していることが多い。形質細胞様型や肉腫型では,TURBT にてcT1 と診断された場合でも筋層浸潤を過小評価している可能性が高い。BCG 膀胱内注入療法による膀胱温存は全摘除と比べて予後が不良になることから,これらの症例には即時膀胱全摘除術が推奨される6,7)。微小乳頭型においては,cT1 症例において即時全摘除術の有用性の報告がある一方で,BCG 膀胱内注入療法と同等であるという報告もあることから結論については議論がある8)。扁平上皮または腺上皮への分化を示すcT1 症例においては,BCG 注入療法にて良好な成績が報告されている9)。これらの症例には綿密な病期診断のもとBCG 膀胱内注入療法が推奨される10)。EAU ガイドラインでは超高リスクとして“some forms of variant histology of urothelial carcinoma”を定義しており,即時膀胱全摘除術を推奨している11)。NCCN ガイドラインでは微小乳頭型,形質細胞様型,肉腫型は筋層浸潤の危険性が高いために,即時膀胱全摘除術を推奨している12)。
一方,特殊型である扁平上皮癌や腺癌においても,多くの症例が進行例で見つかることから,cT1 であっても即時膀胱全摘除術を含むより強力な局所治療が推奨される10)。小細胞癌成分を含む場合には,術前化学療法の有用性が病期に関わらず認められることから,術前化学療法とその後の局所治療(膀胱全摘除術または放射線療法)が推奨される10)。
(2)Stage Ⅱ – Ⅲ
MIBC の治療においては,National Cancer Data Base のデータを用いて術前化学療法の有用性が検討されている13)。微小乳頭型,肉腫型,神経内分泌腫瘍では,術前化学療法により有意にdownstaging したが,全生存率の改善は神経内分泌腫瘍のみに認められた。扁平上皮または腺上皮への分化を示す症例では,純粋な尿路上皮癌と比較して膀胱全摘除術の成績は同等であり,さらに術前化学療法による予後改善も認められた14,15)。以上より,術前化学療法は,小細胞癌を有する症例には考慮すべきであり,扁平上皮または腺上皮への分化を示す症例においても考慮してよい。一方,他の亜型や特殊型における意義は不明である。Trimodality による膀胱温存の成績も報告されている16)。単一施設にて施行された膀胱温存療法303 例のうち,22%がunusual histology であった(扁平上皮または腺上皮への分化を示す腫瘍が74%)。これらの治療成績(CR 率,癌特異的生存率,全生存率)は,純粋な尿路上皮癌と同等であった。
MIBC の予後においては,小細胞癌は通常の尿路上皮癌に比べて不良である。その他の亜型や特殊型においては,純粋な尿路上皮癌と比べて病期は進行している傾向があるが,背景因子を調整すれば予後に変わりがないと考えられている17)。
(3)Stage Ⅳ
転移性病期の治療においては,亜型を伴う尿路上皮癌の場合には,純粋な尿路上皮癌と同様に行う。特殊型では,それぞれの組織型に基づいた治療を行うことが推奨される。扁平上皮癌においては臨床試験への参加が推奨されるが,パクリタキセル+イホスファミド+シスプラチン(ITP)による併用化学療法が前向き試験として唯一検討されており考慮してもよい18)。腺癌においても臨床試験への参加が推奨されるが,5-FU ベースのレジメンであるFOLFOX またはGemFLP(5-FU, ロイコボリン, ゲムシタビン, シスプラチン)やITP による併用化学療法を考慮してもよい12)。現在,腺癌においてGemFLP による第Ⅱ相試験が行われている(NCT00082706)。小細胞癌成分を含む場合には,シスプラチンに適格であればエトポシド+シスプラチンが,シスプラチンが不適格の場合にはエトポシド+カルボプラチンが推奨される12)。KEYNOTE-045 試験では約30%が組織学的亜型を含む尿路上皮癌が対象となっていた。全生存における層別化解析では,亜型を有する症例では,ペムブロリズマブの有用性がより高い可能性が示唆された(亜型ありHR:0.58,亜型なしHR:0.80)19)。特殊型における免疫チェックポイント阻害薬の有用性については明らかになっていない。
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- 尿道癌総論
1.疫学
原発性尿道癌は非常に稀な腫瘍で,人口100 万人あたり1.1〜1.5 人の発生数である。65 歳以上の発症が多く,男女比は1:1.5〜2.9 と女性において高頻度である1〜5)。発生原因として尿道狭窄,尿道カテーテルもしくは尿道形成術後の慢性刺激,放射線外照射,放射線シード挿入,性感染症後(ヒトパピローマウイルス)の慢性尿道炎などがあげられる4,6,7)。女性例では尿道憩室や反復性尿路感染も発生原因となる。現時点では尿道癌の発生と地域性もしくは人種差との関係を示す証拠はない。
2.病理所見
肉眼的には,尿道癌は外方向性乳頭状もしくは結節状腫瘍を形成することが多く,紅斑もしくは白斑状の平坦病変を形成することもある8)。尿道癌の組織型については男女差が存在し,男女とも最も多い組織型は尿路上皮癌で(45〜77%),男性では次いで扁平上皮癌(10〜35%),腺癌(5〜12%)の順となる2,3,9,10)。女性では腺癌の比率が29〜40%と高い傾向にあり,扁平上皮癌の比率は5〜19%程度である3,10)。女性の腺癌では特に明細胞腺癌の発生頻度が高く,その多くは尿道憩室から発生する11)。男女とも尿路上皮癌と扁平上皮癌との鑑別が困難な低分化な組織型が多い4)。稀な組織型8)としては腺様囊胞癌,粘液癌,癌肉腫,悪性黒色腫などがあげられる。尿道癌には明確な分化度分類は存在しないが,一般的には高・中・低の三段階分化度評価方法が用いられる。病理学的病期はUICC TNM 分類12)によって判定され,第8 版(2017)では本邦の腎盂・尿管・膀胱癌取扱い規約第1 版で付記されている第7 版から,N 分類の層別で大きさ2cm から個数に変更されている(N1:単発,N2:多発)。
3.予後
予後に関して多くは病期が進行して発見される不良例が多い2〜5,9,13〜15)が,本邦の大規模な報告はない。米国National Cancer Database(2004〜2013 年)の2,137 例の解析において,5 年,10 年全生存率はそれぞれ46%,31%であり,病期別の5年全生存率は,≦ CT1,CT2 および≧ CT3 について63%,38%および29%と報告されている5)。男女別では米国SEER データベース登録で5 年,10 年全生存率は男性2,065 例(1988〜2006 年) で46 %,29 % 9), 女性722 例(1983〜2008 年) で43%,32%と報告されている15)。EU 圏の340 例のRARECARE データベース(1995〜2002 年)では1 年,5 年相対生存率は72%,54%と報告されている2)。組織別に扁平上皮癌は予後不良の傾向を示すが結論は得られていない3〜5,9,14)。
4.診断
診断には膀胱尿道鏡検査,身体所見(鼠径部リンパ節触診,男性では直腸診,女性では外陰部視診,膣内診,双手診)が重要である。症状としては,排尿障害,出血(外陰部出血,尿道出血,血尿),膀胱炎様症状,陰部腫瘤などがあるが,男性では尿道狭窄症状や腫瘤触知,女性では尿道出血の頻度が多い。局所進展により皮膚潰瘍を形成することもある。外尿道口付近に発生した癌では視診により発見される場合が多いが,後部尿道に発生した癌では膀胱尿道鏡検査,尿道造影,膣内診が必要であり,発見時にすでに進行している癌も多く,女性では膣癌との鑑別が困難となる場合もある。確定診断は生検による病理診断で行われる。画像検査としてはMRI で原発巣の局所浸潤の程度,CT でリンパ節転移や遠隔転移を確認することが多い16)。腫瘍内部はCT で軟部濃度,MRI のT1 強調画像で低信号,T2 強調画像で低〜やや高信号と非特異的で(図1),尿道造影では局所の不整な狭窄像を示すことが多い。尿道憩室に癌が発生することもあり,尿道造影やCT・MRI での憩室の確認が有効とされ,尿道を取り囲むようなU 字型や馬蹄形の囊胞構造に出現し,T2 強調画像で中等度信号を呈する隆起性病変を示すことが多い17)。尿細胞診の陽性率は約6 割で,扁平上皮癌で高く(77%),尿路上皮癌で低い(50%)と報告され18),尿道憩室癌では特に高い陽性率19)が報告されている。腫瘍マーカーとしてはPSA,SCC,CEA,CA19-9 の上昇も報告されているが,多数の症例では上昇を認めない。
5.治療法
治療法は性別,癌発生部位,組織型,浸潤範囲,転移部位などの多様な因子に基づき個々の症例によって推奨されるが標準治療は定まっていない16)。治療法に関しての前向き研究はなく,後ろ向き研究や陰茎癌,外陰癌などの他癌腫治療の外挿化に基づく経験的治療が中心であるため,いずれも治療推奨度は低い。過去の報告では,限局性病変では外科的切除が推奨され6,20),放射線治療単独療法での報告は極めて少ない。
(1)外科的治療
術式は経尿道的内視鏡切除,尿道部分切除,尿道全摘除,陰茎全摘除,膀胱前立腺尿道全摘除,前方骨盤除臓術,骨盤内臓全摘除,恥骨合併切除と浸潤に伴い切除範囲が拡大する。低悪性度で小範囲の非浸潤癌(Ta)は経尿道的内視鏡切除で尿道機能温存可能であり,まず検討されるべき治療法である。限局浸潤癌(T1)の男性では数mm から2cm のマージンを確保した遠位尿道切除および尿道口形成が行われている一方21),女性では環状切除が行われるが,短い尿道長や尿道括約筋損傷のため技術的に困難なことが多い。尿道海綿体浸潤(T2)の男性では尿道亜全摘および会陰部尿道口形成が可能であるが,女性では尿道の温存は困難であり,膀胱瘻造設や尿路変向が必要なことが多い。陰茎海綿体(T3)以上の男性では陰茎全摘除および膀胱前立腺全摘除が必要な症例が多く,周囲浸潤傾向のある腫瘍(T4)では,恥骨合併切除も必要な症例もある。女性では外陰部癌に準じた婦人科領域の合併切除が必要であり,膣前壁合併切除を含む前方骨盤除臓術や広汎外陰切除術が必要になる。広範囲の会陰部手術で欠損部が大きい時は,形成外科的再建術を取り入れることが必要である。治療成績として多施設共同研究154 例(pT1 以下:44%, pT2:24%, pT3 以上32%,cN+:16%)の報告では,53%に治療後再発を認め,再発部位は尿道再発(31%),鼠径リンパ節(29%),遠隔転移(20%)と報告されている13)。
鼠径および骨盤内所属リンパ節転移は全体の14〜22% 9,13,15)で認め,特に局所進行例で高頻度にリンパ節転移を認める。陰茎癌とは異なり炎症の影響を受けにくく,リンパ節転移の術前予測精度は92.4%と報告されている13)。系統的リンパ節郭清の予防的22),治療的意義13)は明確ではない。各ガイドラインではリンパ節腫大症例や浸潤癌に対し手術時の郭清を推奨しているものや6),鼠径リンパ節生検後の放射線化学療法を推奨しているものもある20)。
(2)放射線治療
局所進行例では手術療法と並んで放射線治療が用いられてきたものの,放射線単独療法の治療成績は手術療法単独と同様に不良である23)。そのため手術療法,化学療法,放射線療法の集学的治療が試みられている6,16,24)。多施設共同研究39 例の報告では,術前化学療法および化学放射線療法に対する奏効率は25%および33%と報告され,奏効例では良好な生存が報告されている24)。また症例報告レベルではあるが外照射,小線源治療と化学療法併用により良好な局所制御が得られることが報告されており25,26),本アプローチの有効性の検証が望まれる。
(3)化学療法
遠隔転移例は一般的に全身化学療法が行われているが,3 年全生存率10〜25%程度と予後不良である3,9)。M.D. Anderson Cancer Center による化学療法の報告(2005〜2009 年)では,組織型別に化学療法レジメンが選択される傾向があり,扁平上皮癌でCGI 療法(シスプラチン, ゲムシタビン, イホスファミド),腺癌でGemFLP 療法(シスプラチン, ゲムシタビン, 5-FU, ロイコボリン),尿路上皮癌でM-VAC やCGI 療法が主に使用され,奏効率はCGI 療法(74%),GemFLP 療法(67%)と良好な成績も報告されている27)。近年免疫チェクポイント阻害薬やプレシジョン・メディシンによる新たな治療方法が試みられており,原発性尿道癌に対してのPD-L1 発現28)やEGF レセプター発現に基づいた治療による奏効例29)の報告がなされている。
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- 尿膜管癌総論
1.疫学
尿膜管癌は尿膜管を発生母地とする稀な腫瘍で,発生頻度は全膀胱悪性腫瘍の0.17〜0.7%とされている1〜3)。尿膜管は出生後にその多くは索状化するが,一部は内腔が開存した状態で遺残し,内腔は円柱上皮もしくは尿路上皮で被覆される4)。尿膜管癌で腺癌の発症年齢は20〜90 歳(平均50 歳台),男女比1.4〜2:1 である5〜8),非腺癌の発症年齢は45〜85,男女比6:1 である9)。
2.病理所見
組織学的には腺癌の頻度が最も高く5〜8),それらは非囊胞型と囊胞型とに大別されるが,前者の頻度が高い10)。囊胞型では大腸癌に類似した腸型の頻度が最も多く,その他には粘液癌,印環細胞癌,その他の腺癌が発生する。腸型は大腸癌との鑑別が病理学的に問題となることが多く,特に進行癌では大腸癌の膀胱への直接浸潤との鑑別が問題となる。したがって,尿膜管癌には以下の厳密な診断基準が存在する。1)膀胱頂部もしくは前壁に位置する,2)膀胱壁に腫瘍の主座がある,3)膀胱頂部および前壁の膀胱粘膜に広範な腺様化生を認めない,4)他部位に同様の腫瘍を認めない,尿膜管癌の診断には以上の4 つを満たす必要がある2)。上述の診断基準および免疫染色による鑑別が重要である11,12)。非囊胞型は粘液産生性の高分化癌が多く,予後は良好である。腺癌以外では,尿路上皮癌,小細胞癌,扁平上皮癌の順の頻度で発生する5,7,9)。尿膜管癌の標準的な組織学的分化度評価はないが,高分化,中分化,低分化の三段階評価方法が一般的には用いられている13)。
3.診断
尿膜管癌は,尿膜管が存在する膀胱頂部もしくは膀胱前壁の固有筋層内に主座を有することが一般的で,腫瘍は尿膜管に沿って発育することが多い。進行した場合には,レチウス腔や腹直筋に進展することもある。膀胱壁側に突出すると腫瘍状の形態を呈し,画像にて膀胱癌との鑑別が困難となる場合もある。発見時にすでに遠隔転移や腹膜播種を有していることも少なくなく,腹膜偽粘液腫を合併した報告も散見される14)。症状としては肉眼的血尿が最も多く,その他では疼痛や腫瘤触知,粘液尿などがあるが,腹膜外に発生するため無症状のことも多い。腫瘍マーカーとしてCEA,TPA,CA19-9,CA125 などが高値となるが特異的なものではない。腫瘤内部は充実性・囊胞性・両者が混在した形態のいずれも呈しうる。CT では約60%で粘液貯留を反映した低濃度域が出現し,50〜70%で石灰化を含有すると報告されている15)(図1)。粘液を反映してMRI のT2 強調画像で内部が高信号主体となることも多い。尿膜管癌の術前診断の精度に関して,尿細胞診,画像検査(CT,MRI),麻酔下での触診,TURBT を比較した検討が報告されている16)。TURBT が最も診断精度が良好であった(感度93%,特異度100%)が,陰性適中率が50%でありTURBT での過小評価には注意が必要である。
尿膜管癌ではAJCC/UICC によるTNM 分類が存在しておらず,統一した病期分類はない。代表的な病期分類として,尿膜管癌の膀胱壁内での深達度,リンパ節転移,遠隔転移を考慮したSheldon 分類3)およびMayo clinic 分類1)がある(表1)が,前者が最も広く用いられている13)。Sheldon 分類,Mayo 分類ともに予後の層別化が可能であるが,Sheldon 分類は項目が細分化されており煩雑性がある。さらにSheldon分類においてはStage ⅢA 以上の患者が大部分を占めることから,患者分布の不均衡が問題となる。実臨床においてはSheldon 分類が広く用いられているが,その簡便性からMayo 分類を推奨する報告もある6)。
4.予後
尿膜管癌の予後については,腫瘍が尿膜管または膀胱に限局するSheldon 分類Stage ⅢA 以下またはMayo 分類Stage I である患者においては,5 年癌特異的生存率は80%以上と良好である。一方,リンパ節転移や遠隔転移を有する場合は,20%以下と予後は不良である1,6)。
5.治療
(1)外科的治療
病変が限局している尿膜管癌では,尿膜管靭帯と臍部の一塊切除を伴う膀胱部分切除術とリンパ節郭清術が推奨される6,17)。膀胱全摘除術は,後ろ向き研究において部分切除術と比較して予後に差を認めないことから,侵襲性を考慮してすべての患者には推奨されない。腫瘍が大きく切除断端の確保が困難な場合や膀胱機能の温存が困難な場合には考慮すべきである6,17)。切除断端の陽性は予後不良因子であることから,尿膜管靭帯,臍部の一塊切除を行い,切除断端を陰性にすることが重要である。臨床学的にリンパ節転移を認めない患者におけるリンパ節郭清が予後に与える影響は明らかになっていない。郭清が施行された17%に転移を認めたと報告されていることから診断的な意義はあると考えられる6)。尿膜管癌に対する術前,術後補助化学療法の役割は証明されていない。臨床学的にリンパ節転移がなく原発腫瘍の切除が可能である場合には,術前化学療法は一般的に行われない。術前にリンパ節転移を有する患者においては,大腸癌に準じた化学療法を行い奏効した場合に地固め療法として外科的な切除を考慮する17)。術後補助療法は,病理結果にて断端陽性,リンパ節転移陽性,腹膜浸潤などの予後不良因子を認めた場合には考慮してもよい17)。
(2)化学療法
尿膜管癌の進行例における化学療法では,臨床試験において有効性が証明されたものはなく,症例報告や少数例の観察研究のみでの報告がなされている。尿路上皮癌に準じたM-VAC 療法やGC 療法の治療効果は限られている。その一方,尿膜管癌と大腸癌の遺伝子異常には高い類似性が認められ,大腸癌と同様の治療の有効性が示唆されている18,19)。メタアナリシスによると,CDDP と5-FU の使用が最も報告が多く,5-FU ベースやCDDP と5-FU 併用の奏効率は,40%程度と有効性が高い6)。国内からもTS-1 とCDDP の併用で33%の奏効率が報告されている8)。現在,尿膜管癌を含む腺癌においてGemFLP(5-FU, ロイコボリン, ゲムシタビン, シスプラチン)による第Ⅱ相試験が行われており(NCT00082706),その結果が待たれるところである。尿膜管癌の遺伝子異常においては,TP53 変異が最も高頻度にみられ(66〜80%),次に,KRAS,NRAS,BRAF,APC など大腸癌に類似した変異が多くみられる18,19)。
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