クリニカルクエスチョン・推奨一覧

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1章 小児肝がん

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 小児肝がんの治療方針の決定に必要な分類と検査は 小児肝がんの治療方針決定には,精度の高い画像診断・血清AFP に加え,病期分類が必要である。 1C
CQ2 腫瘍生検は必要か 腫瘍生検は6 カ月未満の乳児と3 歳以上の年長児において必須であり,その他の年齢でも推奨される。 1C
CQ3 初診時(化学療法前)に切除可能であれば切除した方がよいか 肝芽腫予後良好例の治療では一期的切除により化学療法を軽減できる。しかし,術前化学療法により切除範囲や手術合併症を減少させる可能性があり,総合的な判断の下に一期的切除を行うことを考慮する。 2C
肝細胞癌では初診時に一期的切除が可能であれば切除したほうがよい。 2C
CQ4 肝芽腫に対する腫瘍の完全切除の意義は 肝芽腫では腫瘍の完全切除率と生存率が相関する。また定型的肝切除は非定型的肝切除に比し腫瘍切除率が高く,局所再発率が低い。 1A
CQ5 肝細胞癌に対する腫瘍の完全切除の意義は 肝細胞癌において腫瘍の完全切除の可否は予後に大きく関与する。 1B
CQ6 肝腫瘍切除の前に血管造影は必要か 超音波,CT,MRI 検査により小児肝がんの切除可能性は評価可能であり,術前の画像検査として必ずしも肝血管造影を行う必要はない。 1B
CQ7 肺転移巣に対する外科療法の役割は 化学療法後も残存する切除可能な肺転移巣に対しては外科療法が推奨される。 1C
CQ8 小児肝がんに対する肝移植の適応は 肝芽腫のうち化学療法後も切除不能でかつ,肝外病変がなく化学療法に反応したもの, または完全摘出後に肝内に再発したものや不完全摘出に終わったもので肝外病変がないものが,肝移植の適応となる。 1B
CQ9 肝芽腫に対する標準的化学療法は 肝芽腫には化学療法が有効であり,CDDP を含む化学療法が強く推奨される。 1A
CQ10 肝細胞癌に対する化学療法の適応は 小児の肝細胞癌は化学療法の感受性が低く,シスプラチン(CDDP)を用いた化学療法が行われるが,有効性は明らかではない。 2C
CQ11 小児肝がんに対する大量化学療法の適応は 小児肝がんにおいて,大量化学療法を行う十分な科学的根拠はない。 なし
CQ12 静注化学療法と比較した動注化学療法(塞栓術を含めて)の意義は 小児肝がんに対する動注化学塞栓療法を行う十分な科学的根拠はない。 2C
CQ13 肝芽腫に対する放射線治療は有効か 肝芽腫に対して放射線治療を初期の補助療法として明らかな治療効果を示した報告はなく,その意義については不明である。 2C
CQ14 再発腫瘍に対する治療方針は 化学療法も行われるが,可能な限り再発部位の完全摘出を考慮する。 2C
CQ15 難治性小児肝がんに対する新規治療薬は 治療抵抗性肝芽腫に対してイリノテカン(CPT-11)の有効性が示されているが,新規分子標的薬は未だ開発中である。 2C
CQ16 小児肝がん治療における合併症とその対応は 小児肝がん治療の外科的合併症は一般的な肝臓手術に伴うものであり,その対応は肝臓手術のそれに準ずる。 1B
小児肝がん治療の化学療法に伴う合併症はキードラッグであるシスプラチン(CDDP)によるものが主体であり,その対策が必要である。 1B

2章 小児腎腫瘍

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 小児腎腫瘍の治療方針の決定に必要な分類と検査は 病理組織分類では,米国ウィルムス腫瘍スタディ(NWTS)分類と欧州の国際小児がん学会(SIOP)分類が有用である。予後不良の組織型としてびまん性退形成腎芽腫(diffuse anaplasia in nephroblastoma), 腎明細胞肉腫(clear cell sarcoma of the kidney:CCSK),腎ラブドイド腫瘍(rhabdoid tumor of the kidney:RTK)がある。 1A
病期分類は腫瘍の解剖学的進展度を表しており,手術所見と手術術式(腫瘍完全切除か否か)を分類の条件としている2 つの分類が最も多く使用されている。化学療法前にはNWTS 病期分類,化学療法後にはSIOP 病期分類が使用されている。 1B
画像診断は,外科療法のアプローチや術前化学療法の必要性などの,病理組織診断確定までの診療方針の決定に利用されている。 1A
一般臨床検査では,特異的な腫瘍マーカーはない。 1D
CQ2 標準的な外科療法は 腫瘍を破裂させずに完全に摘出することと,腫瘍の進展度を評価することである。 1C
CQ3 両側性腎芽腫(stage Ⅴ)に推奨されるマネージメント・外科療法は 両側腎芽腫のうち,局所病期がより進行している側に適合した化学療法を施行する。 1B
まず化学療法を施行して腫瘍の縮小を図った後に,腎温存手術(nephron sparing surgery:NSS)(腎部分切除術,楔状切除術など)にてできるだけ正常腎を残して腫瘍を摘出する。 1C
治療開始前に病理組織診断のための両側腫瘍生検を行う十分な根拠がない。 2D
CQ4 Stage Ⅰの予後良好組織型の腎芽腫に推奨される化学療法は 腎摘出術後化学療法レジメンとして,ビンクリスチン (VCR)とアクチノマイシン(ACD)併用による化学療法が有効である。 1B
腎摘出術前化学療法レジメンとしてのVCR とACD 併用による化学療法と,腎摘出術後の化学療法レジメンとしてのVCR とACD の併用による化学療法が有効である。 1B
CQ5 Stage Ⅱの予後良好組織型の腎芽腫に推奨される化学療法は 腎摘出後化学療法レジメンとしてビンクリスチン(VCR)およびアクチノマイシン(ACD)併用による術後化学療法を施行する。 1B
腎摘出術前にVCR とACD 併用による化学療法を施行し,腎摘出後にVCR,ACD とドキソルビシン(DXR)の併用による化学療法を施行する。 1B
CQ6 Stage Ⅲ,Ⅳの予後良好組織型の腎芽腫に推奨される化学療法は 化学療法剤としてアクチノマイシン(ACD)+ビンクリスチン(VCR)+ドキソルビシン(DXR)の組み合わせと,腹部放射線治療が有効である。 1C
CQ7 腎明細胞肉腫に推奨される化学療法は 米国ウィルムス腫瘍スタディ(NWTS)stageⅠ-Ⅲでは,腎摘出術後化学療法レジメンとしてビンクリスチン(VCR)+ドキソルビシン(DXR)+エトポシド(ETP)+シクロホスファミド(CPM)の組み合わせが推奨される。 1C
CQ8 腎ラブドイド腫瘍に推奨される化学療法は 推奨すべき有効な化学療法レジメンがない。 2D
CQ9 腎芽腫症に対する治療方針は 多剤併用化学療法が行われる。 2D
できるだけ腎機能を損なわないようにして,腎部分切除を施行してもよい。 2D
CQ10 安全性を考慮した基本的な化学療法の方針は 乳児では治療の強度を軽減する化学療法が必要である。 1B
CQ11 標準的放射線治療とは。その適応は Stage ⅠとⅡの予後良好組織型(favorable histology:FH)腎芽腫では術後放射線治療を施行しない。 1C
Stage Ⅲ/FH 腎芽腫では術後放射線治療を行う。 1B
CT のみで検出され,胸部X 線撮影では確認できない肺転移巣への全肺照射の役割については,明確にされていない。 2D
CQ12 再発後の治療法は 再発に対する治療法は確立していないが,多剤化学療法が施行される。 2D
CQ13 晩期合併症にはどのようなものがあるか 晩期合併症には,腎障害,心血管障害,肝障害,二次がんの発生などが挙げられる。 1A
CQ14 再発に対する追跡はどのように行うか 腎芽腫治療終了後の再発に対する追跡では,(1)腎芽腫症または腎芽腫発生素因のある症候群(WAGR 症候群,Denys-Drash 症候群,Beckwith-Wiedmann 症候群)では,8 歳まで3~4 カ月ごと,(2)この危険因子がない場合には最初の2 年間は3 カ月ごと,以後2年間は6 カ月ごと,の画像診断検査が推奨される。 2D

3章 骨肉腫

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 骨肉腫の治療方針の決定に必要な分類と検査は 病理検査により骨肉腫と診断された場合,治療方針決定のために,単純X 線,CT,MRI,骨シンチグラフィー,Tl シンチグラフィー,18F-FDG PET/CT などの画像検査によって病変の進展,遠隔転移の有無の評価(病期診断)を行うことが重要である。 1A
CQ2 予後因子で治療法を変更することができるか 骨肉腫では,予後不良因子があったとしても治療法を変更することで予後が改善するというエビデンスはなく,予後因子で治療法を変更することを推奨しない。ただし術前化学療法の奏効が不良であった場合,術後に術前使用しなかった抗がん剤を使用することを検討してもよい。 2C
CQ3 術前化学療法の治療効果は画像で評価できるか。術前化学療法が著効した場合,縮小手術は可能か 術前化学療法の前後に,単純X 線,造影MRI などの画像検査を行うことで,組織学的効果を予測し,切除計画の参考にすることを推奨する。化学療法が奏効したと判断される症例でも,辺縁切除を推奨する十分なデータは集積されておらず,広範切除を推奨する。 2C
CQ4 低悪性度骨肉腫の治療法は 低悪性度骨肉腫に対しては原発巣の広範切除を行うことが推奨される。腫瘍内切除,辺縁切除,あるいは切除後の病理評価で切除断端陽性と診断されたときは,追加広範切除を行うことを考慮する。 1C
CQ5 通常型骨肉腫の標準的外科療法は 広範切除を推奨する。術前化学療法中に腫瘍の明らかな増悪が確認された場合には,より十分な切除縁を確保した広範切除術,切断,離断術を考慮する。 1B
CQ6 切断,離断を行う際に,どのような検討を行うべきか 患肢の温存・機能維持のために重要な血管,神経などを温存(再建)して,広範切除が行えないときは,切断,離断を考慮する。 2B
CQ7 病的骨折を併発した骨肉腫に対する患肢温存手術の妥当性は 病的骨折を併発しても,化学療法が奏効した場合,広範切除縁による切除を安全に達成可能であれば患肢温存手術を検討してもよい。 2C
CQ8 通常型骨肉腫の標準的化学療法は 通常型骨肉腫では,大量メトトレキサート(MTX),ドキソルビシン(DXR),シスプラチン(CDDP)の3 剤からなるMAP 療法による術前・術後化学療法を行うことが推奨される。 1B
CQ9 一期的に手術可能な通常型骨肉腫に対して術前化学療法は必要か 一期的に手術可能な通常型骨肉腫に対して術前化学療法を施行することによって予後が改善するという明らかなエビデンスはない。しかし,実地診療においては術前化学療法を数カ月行ってから広範切除を行う例が多い。 2D
CQ10 肺転移に対する自家造血細胞移植併用大量化学療法は有効か 骨肉腫の肺転移に対する治療法は転移巣切除が第一選択である。肺転移巣が多発性で切除不能であっても,大量化学療法によって予後が改善したというデータはなく,肺転移に対する自家造血細胞移植併用大量化学療法は推奨しない。 2D
CQ11 摘出不能な骨肉腫に放射線治療は有効か 摘出不能な骨肉腫に対して,放射線治療が手術と同様に有効であるという明確な根拠はないため,根治目的での放射線治療は推奨しない。ただし,症状緩和目的には使用されることがある。 1C
CQ12 骨肉腫肺転移に対する外科療法と化学療法は 肺転移巣切除が治癒に結びつく可能性も期待されるので,条件が整えば,外科療法を考慮する。切除不能な肺転移に対しては化学療法が行われる。肺転移切除後に化学療法を行うことの有効性は検証されていない。 1C
CQ13 局所再発を起こした場合の治療法は 再発腫瘍の広範切除あるいは切断,離断術と化学療法を考慮する。 1C
CQ14 治療後の経過観察の方法は 骨肉腫の治療後は,腫瘍の再発や転移のほかに,治療に関連した心筋障害,腎障害,聴覚障害,不妊,二次がんなどの有害事象を生じる可能性があり,これらの晩期合併症にも注意しながら経過観察をする必要がある。 1C

4章 中枢神経外胚細胞腫瘍

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 中枢神経外胚細胞腫瘍の治療方針決定に必要な分類と診断方法は 組織型,病期,さらにこれらを用いた予後予測分類を用いて治療方針を決定する。 1A
CQ2 一期的手術の原則とその方法は 中枢神経外胚細胞腫瘍においては,可能ならば一期的全摘を目指す。 1A
CQ3 標準的化学療法と治療期間は PEB 療法〔シスプラチン(CDDP)+エトポシド(ETP)+BLM〕が推奨される。 1A
CDDP の腎・聴器毒性が懸念される場合はJEB 療法〔カルボプラチン(CBDCA)+ETP+BLM〕が推奨される。 1B
治療期間は腫瘍マーカーの陰性化と腫瘍の縮小が得られた後,さらに2 コース追加することが推奨される。 1B
CQ4 術前化学療法の適応は 術前化学療法は,完全切除が困難な場合と遠隔転移のある場合に実施することが推奨される。 1A
CQ5 未熟奇形腫に対する化学療法の適応は 完全切除された場合は,部位や悪性成分の含有にかかわらず化学療法は行わず,経過観察を推奨する。 1A
CQ6 Stage I 性腺胚細胞腫瘍に対する外科療法ならびに化学療法の適応は StageⅠ精巣胚細胞腫は摘出術のみで,慎重に経過を観察する,また卵巣腫瘍については化学療法を実施することが推奨される。 1A
CQ7 放射線治療の役割は 放射線治療を考慮する。 2D
CQ8 化学療法抵抗性または化学療法後の再発腫瘍に対する治療法は 成人における標準レジメンであるVIP 療法〔ビンブラスチン(VBL)+イホスファミド(IFM)+シスプラチン(CDDP)〕または成人で救済療法として用いられるパクリタキセル(PTX),ゲムシタビン(GEM),オキサリプラチン(L-OHP)の併用療法やTIP 療法(PTX+IFM+CDDP)および自家造血細胞移植併用大量化学療法の適用を考慮する。 1C
CQ9 自家造血細胞移植併用大量化学療法の適応と有効性は 初期治療抵抗例,初回治療への反応が不良であった再発例,縦隔原発の再発例では救済療法として自家造血細胞移植併用大量化学療法は選択肢となりうる。 2C
CQ10 治療に関連する合併症とその後の経過観察は 術前からの臓器不全の存在には注意が必要であり,治療後の醜形とともに慎重に経過を追い,心理的アプローチも導入すべきである。また,プラチナ製剤による腎障害や聴器障害,アルキル化剤や放射線治療による妊孕性低下に対しても注意が必要である。 1A

5章 網膜芽細胞腫

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 網膜芽細胞腫の治療方針の決定に必要な分類と検査は何か。腫瘍生検による病理診断は必要か 網膜芽細胞腫の病期分類はTNM 分類(第7 版)を用いることを推奨する(2B)。眼球温存治療を行う場合,眼底検査など臨床所見に基づき分類を行い,腫瘍生検は行わないことを強く推奨する(1B)。眼球摘出を行う場合,転移の危険因子がある場合に骨髄検査,髄液検査,PET 検査を行い,病期分類を決定する(2B)。頭部MRI は治療前に行うことが推奨される(2C)。 2B
CQ2 遺伝子検査は行うべきか 遺伝子検査は,可能であれば行うことが望ましい。発病者の変異が検出できた場合,同胞や子供の保因者診断が可能である(2A)。専門資格を有する遺伝カウンセラーによるカウンセリングを行った後に遺伝子検査を行うことが強く推奨される。 2B
CQ3 眼球摘出の適応と播種の危険性は 視力の期待できない巨大腫瘍,視神経浸潤,緑内障や大量の眼球内出血などの随伴所見を有する場合には眼球摘出が推奨される(2B)。片眼性であっても視力の期待できる非進行眼であれば温存を試みてよい(2C)。眼球摘出手術により腫瘍細胞が撒布され転移・眼窩内再発を増加させるというエビデンスはない(2C)。 2B
CQ4 片眼性の眼球温存治療は許容されるか 片眼性であっても視力の期待できる非進行眼であれば温存を試みてよい(2C)。眼球温存治療を行うことに伴う危険性は十分説明する必要がある(1A)。 2C
CQ5 局所治療単独(小線源治療,レーザー,冷凍凝固)の適応は 小線源治療は腫瘍径15 mm 以下かつ腫瘍厚10 mm 以下の限局腫瘍,ダイオードレーザーによる経瞳孔温熱療法は播種を伴わない1.5 mm 以下の腫瘍,冷凍凝固は周辺部で播種を伴わない2.5 mm 以下の腫瘍が単独治療の適応である。 2B
CQ6 眼球温存治療後,眼底検査で腫瘍が不活化している場合に行う内眼手術は安全か 腫瘍の不活化の後,どの程度の期間を経過すれば内眼手術が安全であるかは未確立であり,可能な範囲で内眼手術は遅らせるべきである。 2C
CQ7 眼球温存のための全身化学療法レジメンは ビンクリスチン(VCR),カルボプラチン(CBDCA),エトポシド(ETP)の2〜3 剤を組み合わせたレジメンを用いる。多くのレジメンがあるが,その有用性についての比較試験は行われていないため,最適化されていない。全身化学療法単独で治癒することは少なく,多くの場合,局所治療の併用が必要である。 2C
CQ8 局所化学療法は有効か 抗がん剤の結膜下注射,選択的眼動脈注入,硝子体注入が一部の施設で行われている。いずれも単独治療としての効果は未確立であり,他の治療と併用して行われている。 2B
CQ9 眼球摘出後の化学療法は必要か 摘出された眼球の病理学的検索により,視神経切除断端陽性,強膜外浸潤があれば局所放射線治療を併用した全身化学療法,脈絡膜全層の浸潤を伴う視神経浸潤があれば全身化学療法が後療法として推奨される。断端陰性で視神経浸潤を伴っていても他の危険因子がなければ後療法は不要である。 2B
CQ10 遠隔転移など眼球外進展例に対する最適な治療法は 標準的治療は行われておらず,種々の治療が行われている。眼窩内進展例は全身化学療法と放射線治療の併用,眼窩を越えた遠隔転移例では,大量化学療法と放射線治療の併用による救命例の報告が多い。 2B
CQ11 全身化学療法で三側性網膜芽細胞腫,眼球内新生腫瘍は予防できるか 全身化学療法の導入によって,三側性網膜芽細胞腫の頻度が低下したとの報告があり,その可能性が示唆されているが,確証されていない。化学療法を行っても,遺伝性症例では10 〜48%に新生腫瘍を発症するため,慎重な経過観察が必要である。若年発症,家族歴があること,発見時に非進行期であることがその後の新生腫瘍の危険因子である。 2D
CQ12 眼球温存のための放射線外照射の適応およびその照射方法は 初期治療として化学療法を選択することが多く,放射線外照射を行うことはまれである。化学療法後の不応例,眼球内再発例で視機能の温存が期待される場合に,照射に伴う骨障害,二次がんのリスクを考慮し,放射線治療の適応を判断する。海外では強度変調放射線治療(IMRT)や陽子線治療が臨床に導入されている。 2C
CQ13 遠隔転移再発例への治療法は 遠隔転移再発例の予後は不良であり,初発時に遠隔転移を認める場合と同様に,腫瘍の進展状況に応じて,全身化学療法あるいは大量化学療法,放射線治療を併用した集学的治療を行う必要がある。 2B
CQ14 眼球摘出後の経過観察はどのように行うべきか 3 歳までは頻回の診察,それ以後も長期間の診察が推奨される。摘出眼球の眼窩内再発の有無,義眼の装用状況の確認を行う。初診時片眼性であっても生後44 カ月までは他眼の診察を行うことが推奨される。定期的画像検査,血液検査の意義は確立していない。 2B
CQ15 眼球温存治療を行った場合の経過観察はどのように行うべきか 腫瘍瘢痕からの再発,新生腫瘍,眼球合併症に関して定期的に眼底検査を行う。最終治療から1 年間は1〜3 カ月ごと,その後も間隔を延ばしながら長期間診察を行うことが推奨される。 2B
CQ16 家族歴のある場合の経過観察はどのように行うべきか 家族歴のある未発病者の検査は,出生直後から3〜4 歳までは3〜4 カ月ごと,5〜6 歳までは6 カ月ごとに行うことが推奨される。可能であれば全身麻酔下で行うことが望ましい。 2B
CQ17 二次がんのスクリーニング検査は必要か 有効な二次がんのスクリーニング方法はない。放射線治療を行った場合には,照射野のMRI画像は早期発見に有効である可能性があるが,定期的な検査を継続していくことは現実的ではなく,有用性も示されていない。全身化学療法を行った場合には,血液検査が白血病の早期発見につながる可能性がある。 C

6章 神経芽腫

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 神経芽腫の治療方針の決定に必要な分類と検査は 神経芽腫の国際標準のリスク分類は国際神経芽腫リスクグループ分類 (INRGR)であり,画像診断,病理診断とともに分子生物学的な診断が必須である。 1B
CQ2 PET 検査は有意義か 神経芽腫診断においてPET 検査の有用性は限定的である。 2C
CQ3 局所性神経芽腫の生検と一期的切除の適応についての指標は 局所性神経芽腫において,外科的リスク因子(surgical risk factors:SRFs)のある症例は生検を先行させることが推奨されるが,判断の指標となるものとしてIDRF(imagedefinedrisk risk factors)が推奨されている。 1B
CQ4 ダンベル腫瘍への椎弓切除の有効性は 神経芽腫の脊髄圧迫症状で緊急の対処を要する緊急手術(72 時間以内) 以外は,椎弓切除の有効性は明らかでない。 2C
CQ5 神経芽腫の内視鏡手術による腫瘍摘出の是非は 内視鏡手術による腫瘍摘出についての是非は明らかでない。腫瘍の部位,大きさ,血管浸潤の有無によって適応を決定すべきである。 2C
CQ6 腹部神経芽腫の手術における腎合併切除の意義は 神経芽腫の手術における腎臓摘出は行わないことを推奨する。 1B
CQ7 放射線治療の有効性とその適応は 進行神経芽腫に対して,術後の原発腫瘍の制御および骨転移部への局所療法として,放射線治療を行う。 1C
低中間リスク群の場合でも,肝転移による呼吸不全,化学療法に反応しないダンベル型の場合に,放射線治療を行う場合がある。 2C
CQ8 術中照射は有効か 進行神経芽腫の局所療法としての術中照射(intraoperative radiation therapy:IORT)の有効性については明らかでない。 2C
CQ9 無治療経過観察の適応と安全性は 低リスク群に分類される神経芽腫には,自然退縮や分化傾向をもつものがあり,これらを適応とすれば,安全に無治療経過観察を行うことができる。 1B
CQ10 外科的全摘可能な低リスク群腫瘍に対する標準治療は 低リスク群に分類された患者の治療では,外科的に全摘できた症例は,外科的摘出術のみにて経過観察する。 1B
CQ11 外科的全摘不能な低リスク群腫瘍に対する標準治療は 外科的全摘出術が不能な患者には低用量の化学療法を試行する。 2C
CQ12 Stage MS 腫瘍への放射線治療,化学療法の意義と適応は 神経芽腫stage MS 症例への放射線治療,化学療法は予後不良因子をもつ場合や重篤な症状を有する場合に施行される。 2C
CQ13 中間リスク群腫瘍に対する標準治療は 中間リスク群に対する標準的治療法は確立していないが,生検後に4〜8 コースの中等度の化学療法を試行し,二期的に原発腫瘍の摘出術を行う治療法が一般的である。 2C
CQ14 神経芽腫のstage 4 に対する外科療法の原則は 神経芽腫のstage 4 原発の完全切除を行う外科療法は予後の改善につながらない。したがって,将来の治療のために臓器切除をできるだけ回避して機能温存に努めることが肝要である。 2C
CQ15 高リスク群に対する寛解導入療法は 高リスク群神経芽腫に対する寛解導入療法は,シスプラチン(CDDP),エトポシド(ETP),ドキソルビシン(DXR),シクロホスファミド(CPA),トポテカンなどからなる多剤併用療法が一般的である。 1C
CQ16 高リスク群に対する自家造血細胞移植併用大量化学療法の有効性は 無イベント生存率(EFS)では,大量化学療法群は比較対照群に比べ統計学的に有意に優れていることが示されているため,その観点からは,高リスク群に対する自家造血細胞移植併用大量化学療法は有効であるといえる。しかしながら全生存率(OS)では統計学的に有意な差が証明されなかった。 2C
CQ17 高リスク群に対する同種移植の有効性は 現時点では,同種移植は,高リスク群神経芽腫のような生命予後の非常に不良な群に対して,その予後改善のために臨床試験の枠組みの中で取り組むべき治療法であると考えられている。 なし
CQ18 再発腫瘍に対する救済療法は 診断時低リスク群または中間リスク群の再発に対する救済療法は,局所再発か転移性再発か,診断時の腫瘍の生物学的特性が良好か不良か,再発した時期がいつか,現在の年齢などにより異なる。米国小児がんグループ(COG)の経験では,それぞれの再発様式に見合った治療を行うことにより予後は良好である。 1A
診断時高リスク群の再発では,確立した救済療法はなく,予後は不良である。この群に対しては臨床試験に基づく試験的治療を検討しても良い。 1A
CQ19 中枢神経系再発への対応は 神経芽腫の中枢神経系再発には,確立した救済療法はなく,予後は非常に不良である。この群に対しては世界的にみても臨床試験に基づく試験的治療は十分に行われていない。緩和ケアも考慮すべきである。 1C
CQ20 神経芽腫への分化誘導療法は有効か 進行神経芽腫に対する骨髄破壊的大量化学療法後の非進行例へ,イソトレチノイン(13-cis-retinoic acid:13-cis-RA)投与の有効性が示唆されている。 1A
CQ21 神経芽腫への免疫療法は有効か 大量化学療法後の非進行病変の高リスク群神経芽腫に対し,抗GD2 抗体の有効性が示されている。 1A
CQ22 神経芽腫へのMIBG 治療は有効か,その適応は MIBG 治療の有効性は再発・難治例で示されてはいるが,初発例に対する有効性は明らかでない。 2C
CQ23 治療効果判定の方法は 治療反応性は予後に関連している。高リスク群患者では,MIBG(メタヨードベンジルグアニジン)などで治療効果判定を行うことを推奨する。 1C
CQ24 眼球クローヌス/ ミオクローヌス症候群への対応は 眼球クローヌス/ミオクローヌス症候群を伴う症例の生命予後は良好であるが,神経症状に関する有効な治療法は確立されていない。 2C

7章 横紋筋肉腫

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 横紋筋肉腫の治療方針の決定に必要な分類と検査は 治療前ステージ分類と術後グループ分類,組織型によりリスク分類を決定し層別化治療を行う。その決定のために画像検査(CT,MRI,核医学検査),骨髄検査,髄液検査(傍髄膜症例)を施行後,腫瘍切除または生検を行い,融合遺伝子検索も含めた病理学的検索を行うことが強く推奨される。 1B
CQ2 PET は転移巣や腫瘍生存(viability)の診断に有用か PET/CT は,転移巣の検出に有用であり,治療開始前の病期診断のために実施することを推奨する。 2B
PET の治療後の腫瘍生存(viability)の診断については,造影CT,MRI などの従来の検査より有効性が高く,実施することを推奨する。 2C
CQ3 生検と一期的手術の適応は 一期的に腫瘍の完全切除が可能で,機能障害が許容範囲である場合には腫瘍摘出が強く推奨されるが,完全切除が不能な場合などでは生検が推奨される。 1A
CQ4 傍精巣腫瘍の場合の病期を決定するための同側後腹膜リンパ節郭清(SIRPLND)は再発を減少させるか 10 歳以上の傍精巣原発症例ではSIRPLND を行うことが推奨される。 2B
CQ5 リンパ節郭清の範囲,方法と意義は 臨床的あるいは画像診断上で腫大したリンパ節がなければ,必ずしも郭清が必要とは限らないが,画像上あるいは術中所見により腫大が認められる場合には積極的にサンプリングを行い1),切除可能なリンパ節は摘除を行うことを推奨する。 2B
CQ6 化学療法前腫瘍再切除(PRE)の適応は 初回手術が生検のみ,あるいは残存腫瘍がみられ,再切除で腫瘍全摘が可能と考えられる場合,および切除断端が組織学的に陽性の場合にはPRE を行うことが推奨される。 2B
CQ7 頭頸部原発腫瘍に対する手術方針は 頭頸部原発横紋筋肉腫の手術は広範切除を行うことが難しい場合は,可能であれば化学療法,放射線治療などにより腫瘍の縮小を図った後の二期的切除が推奨される。 2B
CQ8 四肢原発腫瘍に対する手術方針は 可能である限り,機能を温存するよう配慮した手術を行うことが推奨される。 2B
CQ9 膀胱・前立腺原発腫瘍に対する切除方針は 可能な限り,機能温存に努めて手術を行うことが推奨される。 1B
CQ10 遠隔転移巣に対する局所治療の方針は 転移巣に対する外科療法は,孤立性病変で切除可能な場合のみ推奨される。放射線治療は神経圧迫やその他局所症状の緩和に有効である場合が多く,推奨される。 2B
CQ11 放射線治療の至適開始時期,基本方針は 発生部位,治療前ステージ分類などの要因に応じて第1〜19 週の間に放射線治療を開始することを推奨する。 2B
CQ12 頭頸部,眼窩,傍髄膜原発腫瘍に対する放射線治療を化学療法と同時に開始する適応は 傍髄膜原発横紋筋肉腫において,ICE のある場合には,化学療法と同時に放射線治療を開始することが勧められる。 2A
傍髄膜以外の頭頸部,眼窩原発横紋筋肉腫に対しては,脊髄圧迫や視力消失,その他の機能障害の危険が差し迫った場合には緊急照射を行う。 1A
CQ13 強度変調放射線治療(IMRT),陽子線治療の適応は IMRT の適応は頭頸部や膀胱・前立腺に発生した横紋筋肉腫では推奨される。 2B
陽子線治療の適応は近接危険臓器への線量をIMRT よりさらに減量できるため推奨される。 2C
CQ14 低リスク群に対する標準的化学療法は 低リスクA 群,low subset 1 群に対しては48 週のVA 療法〔ビンクリスチン(VCR)+アクチノマイシン(ACD)〕が長期成績の確立した治療として推奨される。 2B
低リスクB 群,low subset 2 群に対しては42 週のVAC2.2 療法(CPA 2.2 g/m2/ サイクル)が長期成績の確立した治療として推奨される。 2B
CQ15 中間リスク群に対する標準的化学療法は 42 週のVAC2.2 療法(シクロホスファミド(CPA)2.2 g/m2/サイクル)が推奨される。 2B
CQ16 高リスク群に対する標準的化学療法は 確立された標準療法は定まっていない。 2B
CQ17 高リスク群に対する自家造血細胞移植併用大量化学療法は有効か 横紋筋肉腫においては大量化学療法の有効性を示す根拠はない。 2B
CQ18 再発後治療の化学療法レジメンにはどのようなものがあるか 強く推奨される化学療法レジメンはない。 2B
CQ19 再発腫瘍に対する局所治療の役割は 孤立性局所性の再発巣であれば外科療法,放射線治療などの局所治療が推奨される。 2B
CQ20 有効な分子標的治療は 現状では十分なエビデンスが得られている治療とは言い難く,今後とも臨床試験研究が必要な分野である。 D
CQ21 肝中心静脈閉塞症(VOD)の診断基準にはどのようなものがあるか 米国小児がんグループ(COG)のhepatopathy の診断基準を用いることが推奨される3) 1B
CQ22 標準治療による長期合併症や再発の経過観察はどのように行うか 再発の経過観察および長期合併症の早期発見のために定期的な診察,画像検査,検査が推奨される。 2B

8章 ユーイング肉腫ファミリー腫瘍

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)の治療方針の決定に必要な分類と検査,診断のために必要な検査は CT,骨シンチグラフィー,MRI,骨髄穿刺,骨髄生検に加えFDG-PET,FDG-PET/CT の検査・生検による病理,細胞遺伝学的検査を行うことを強く推奨する。 1A
CQ2 推奨される手術法(切除範囲)は ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)に対して,手術単独で局所治療を行う場合には,他の骨・軟部肉腫の手術と同様に広範切除を行うことを強く推奨する。 1A
CQ3 限局例における外科切除縁と放射線照射線量の関係は 不十分な広範切除以下で初期(術前)化学療法の効果が不十分な場合や,辺縁切除,部分切除の場合は,術後照射を行うことが推奨される。 1B
CQ4 限局例に対する標準的化学療法は 限局例に対する化学療法はビンクリスチン(VCR),ドキソルビシン(DXR),シクロホスファミド(CPA),アクチノマイシン(ACD),イホスファミド(IFM),エトポシド(ETP)のうち4〜6 剤を組み合わせた多剤併用化学療法が強く推奨される。ただし,適切な局所療法を併用することが必要である。 1A
CQ5 限局例に対する初回化学療法後の組織学的治療効果と予後との関係は 限局性ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)の初回化学療法後の組織学的治療効果は予後と相関する。 1C
CQ6 限局例における骨髄への微小転移による全身再発への影響は 限局例における骨髄での融合遺伝子の検出が全身再発に影響するかどうかは,明らかでない。 2C
CQ7 骨盤原発の限局例に対する適切な局所治療は 骨盤原発のESFT は,安全な切除縁が確保できれば術後患肢機能,局所制御はある程度計算でき,切除を行うことが考慮される。ただし,生命予後については,切除が可能でも術前化学療法の効果が不十分な症例では不良である。放射線単独治療のみに比べると,切除術を行った方が予後良好と考えられるが,厳密にはランダム化比較試験による検証が必要である。 2C
CQ8 肺転移例に対する全肺照射は有効か 肺転移のある患者では,全肺照射による生存率の向上が示唆される。 2C
CQ9 転移例に対する標準的治療は 転移例に対して有効な標準的治療は確立してない。 2B
転移例に対して,化学療法に反応性が良く,移植時に完全寛解の場合は,自家造血細胞移植併用大量化学療法を行うことは有効である。 2C
CQ10 再発例の治療法は 再発ESFT に対する有効性が高い標準的治療は確立していない。 2C
CQ11 局所治療の晩期合併症は ESFT に対する放射線治療の晩期合併症は,照射部の筋萎縮,脚長差,放射線治療後の肉腫である。手術,放射線治療に共通する晩期合併症は,脊柱側彎,四肢関節の可動域制限である。 2C
CQ12 化学療法による晩期合併症は アルキル化剤による妊孕性の低下,アントラサイクリン系による心機能障害,放射線治療,トポイソメラーゼなどによる二次がんの発症などについて,十分なフォローアップを推奨する。 1B
CQ13 再発の経過観察の方法は ESFT の治療終了後3 年間は2 〜3 カ月ごと,以降治療終了5 年までは6 カ月ごと,その後は少なくとも年に1回の経過観察が必要である。画像検査は,局所の評価と胸部の単純X線あるいはCT 検査を行うべきである。 1B

9章 その他のまれな腫瘍

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 以下の疾患群の治療方針の決定に必要な分類と検査は
・乳児型線維肉腫
・滑膜肉腫
・胞巣状軟部肉腫
・悪性ラブドイド腫瘍
CT,MRI,核医学検査など各種画像検査を行い,原発巣と転移巣の評価をする。 2C
確定診断には生検組織による病理組織診断が必須である。しかし,病理組織診断のみでは正確な診断が確定できないこともまれではなく,そういった場合は腫瘍特異的な遺伝子検査が診断に有用な場合がある。遺伝子検査を念頭に腫瘍組織検体の採取と凍結保存を計画的に行う必要があり,可能な限り十分な量の腫瘍組織を採取することが望ましい。 2C

10章 腫瘍生検・中枢ルート

はじめに

No. クリニカルクエスチョン 推奨 グレード
CQ1 腫瘍生検におけるサンプルのサイズ,質は 腫瘍生検におけるサンプルのサイズ,質は,考えられる疾患の診断およびリスク判定に必要な量,質が求められる。 2C
CQ2 腫瘍生検において注意すべき合併症は 腫瘍生検において注意すべき合併症は,腫瘍の存在部位,性状や大きさ,生検方法によって異なる。 2C
CQ3 巨大縦隔腫瘍における安全な腫瘍生検方法は 巨大縦隔腫瘍による気道閉塞や上大静脈症候群による合併症に留意し,適切なリスク予測に基づいた生検方法を選択するべきである。 2C
CQ4 中枢ルート造設の方法にはどのようなものがあるか 主な中枢ルート造設方法にはカットダウン法,静脈穿刺法が挙げられる。 1B
CQ5 中枢ルート造設における合併症とその対策は 中枢ルート造設の術後早期合併症として出血,創感染,液漏れ,カテーテル屈曲,位置異常,血管外漏出,縦隔炎などが挙げられる。 1B
対策として,愛護的な手術操作,止血確認,術中抗菌薬投与,創洗浄,術中X 線透視によるカテーテルの位置確認,カテーテルからの逆血・注入の確認,ポートと筋膜との固定が重要である。 2C
CQ6 中枢ルートの標準的管理法は カフ付きカテーテルでは挿入部を清潔に保ち滅菌ドレープで覆う。薬剤の投与,ルート交換などは無菌的操作で行う。薬剤投与後はヘパリン加生理食塩水でフラッシュし,使用しない場合も定期的にヘパリン加生理食塩水でロックする。乳幼児,学童では特に事故抜去やカテーテルの破損を防ぐように留意すべきである。 1B
CQ7 中枢ルート挿入中の合併症とその対策は 中枢ルート挿入中の主な合併症として感染と閉塞が挙げられる。感染にはカテーテルから血中に細菌や真菌が侵入するCRBSI と挿入部からのトンネル感染がある。対策としては無菌操作が推奨される。 1A