「G‒CSF 適正使用ガイドライン2022 年10 月改訂第2 版」をお届けできることになり,このガイドライン作成に携わったメンバーの一人として,大変嬉しく思います。このガイドラインが,診療現場で,多くの皆様のお役に立てることを心より願っております。
前版である「G‒CSF 適正使用ガイドライン2013 年版(第1 版)」は,年1 回の部分改訂が重ねられていましたが,2018 年に「2013 年版ver. 5」が公開されたところで,大幅改訂の方針が決定され,私が委員長を拝命しました。その後,第2 版の発刊までに4 年もの歳月を要したわけですが,この間,けっして作業を怠っていたわけではなく,「G‒CSF 適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ」の委員とシステマティックレビューチームメンバー42 名をはじめ,数多くの方々のたゆまない努力がありました。4 年間で費やされた労力を思い返すと,実に感慨深いものがございます。
これだけの時間と労力を要した理由の一つとして,「Minds 診療ガイドライン作成の手引2014」「Minds 診療ガイドライン作成マニュアル2017」に本格的に準拠する方針をとったことがあります。近年の標準的なガイドライン作成手法ですので,当然の流れではありましたが,G‒CSF の使用については,世界の多くのガイドラインでも,本ガイドライン2013 年版でも,科学的根拠に乏しい「FN 発症率20%」のカットオフを前提に推奨が決められてきた歴史があり,これは,Minds の手法とはかけ離れたものでした。本ガイドライン改訂ワーキンググループは,議論を重ねた上で,「FN 発症率20%」の前提を捨て,Minds の手法に則って,個々のQuestion に対して科学的にエビデンスを評価していく方針を決定しました。これは,おそらく世界初の試みであり,想像以上に大変な道のりが待っていました。「FN 発症率20%」で決められたらどんなに楽だろうと思うこともありましたが,メンバーの多大なる尽力のおかげで,当初の方針を貫き,科学的根拠に基づくガイドラインを作り上げることができました。
作成過程で,個々のがん種,個々のレジメンについて,G‒CSF 使用の有無を比較したエビデンスが乏しいことも浮き彫りになり,今後の改訂の際には,Question の設定も含め,改善の余地があると考えられました。診療現場で利用する中でお気づきの点等ございましたら,是非ご意見をお寄せいただきたく存じます。本ガイドラインでは明確な推奨ができていないところも多々ございますが,エビデンスが乏しい場合でも,個々の状況で,リスクとベネフィットのバランスを評価する際の参考になるように作成していますので,目の前の患者さんに最適な医療を行うためにご活用いただければ幸いです。
本ガイドライン作成にご尽力くださった多くの皆様,そして,何度も心折れそうになったわれわれを支え,作業をリードしてくださった,日本癌治療学会事務局の福田奈津喜さんに,この場を借りて,心より感謝申し上げます。
2022 年10 月
がん診療ガイドライン作成・改訂委員会
G‒CSF 適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループ
委員長 高野 利実