日本癌治療学会は,がんの予防,診断及び治療に関する研究の連絡,提携及び促進を図り,がんの医療の進歩普及に貢献し,もって学術文化の発展及び人類の福祉に寄与することを目的とし活動をしております。特に,尽力していますがん医療の均てん化のためには,エビデンスに基づくがん診療ガイドラインの作成と,新規のエビデンスに基づくリアルタイムな改訂は大変重要な任務と考えています。
GIST は,全消化管に発生する間葉系腫瘍で,疫学的には10 万人に1~2 人と消化器がんの中で,希少がんに属する疾患です。一方で,その発生分子メカニズムの解明に伴う分子標的治療薬が開発・臨床応用されたことで,比較的早期から様々なエビデンスが構築されてきました。そういった背景を基に,希少がんとしてはいち早く2008 年3 月に日本癌治療学会,日本胃癌学会,GIST 研究会によって『GIST 診療ガイドライン』が作成・発行されました。さらに,その後,新規の薬剤開発とともに新たなエビデンスが発出されるにあわせて,2008 年9 月に第2版,2010 年11 月の第2 版補訂版,2014 年4 月に第3 版と改訂されてきました。第3 版発行から,8 年が経過し,その間に構築されたエビデンスを新たに取り入れ,他がんに倣う形で,Minds に沿った検討を行うこととし,改訂作業が進められ,ここに第4 版として発刊の運びとなりました。
本ガイドライン改訂は,がん対策推進総合研究事業「希少癌診療ガイドラインの作成を通した医療提供体制の質向上」班(平成29~令和元年度),「学会連携を通じた希少癌の適切な医療の質向上と次世代を担う希少がん領域の人材育成に資する研究」班(令和2~4 年度)(主任研究者:小寺 泰弘)のサポートのもと実施されました。また,これまでのガイドラインは,日本癌治療学会,日本胃癌学会,GIST 研究会の3 学会合同での作成であったのに対し,本改訂は稀少腫瘍研究会(旧称:GIST 研究会)の協力のもと,日本癌治療学会が中心となって作成を行いました。本ガイドラインは,最新の情報を網羅しかつ我が国の現状に即した内容となっており,GIST 診療にご尽力されている医療従事者の方々の明日からの診療に必ずお役立ていただけるものと確信しております。
最後に,本ガイドラインの作成にご尽力いただきましたGIST 診療ガイドライン改訂ワーキンググループ委員長の廣田 誠一先生をはじめとして多くの関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
2022 年2 月
一般社団法人日本癌治療学会理事長
土岐 祐一郎