頭頸部がん 〜診療ガイドライン

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目次:

1.口腔癌(舌癌)

口腔癌の亜部位は頬粘膜,上歯槽と歯肉,下歯槽と歯肉,硬口蓋,舌,口腔底に分類される。ここでは最も症例数の多い舌癌を対象に作成した。

1.病期診断

[T 分類]

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内癌
T1 最大径が2 cm 以下の腫瘍
T2 最大径が2 cm をこえるが4 cm 以下の腫瘍
T3 最大径が4 cm をこえる腫瘍
T4a 皮質骨,舌深層の筋肉 / 外舌筋(オトガイ舌筋,舌骨舌筋,口蓋舌筋,茎突舌筋),上顎洞,顔面の皮膚に浸潤する腫瘍
T4b 咀嚼筋間隙,翼状突起,または頭蓋底に浸潤する腫瘍,または内頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

注:歯肉を原発巣とし,骨および歯槽のみに表在性びらんが認められる症例はT4 としない。

[N 分類]

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm 以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm をこえるが6 cm 以下
N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N3 最大径が6 cm をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

[M 分類]

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

[病期分類]

0期 Tis N0 M0
Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T2 N0 M0
Ⅲ期 T1/2 N1 M0
T3 N0/1 M0
ⅣA期 T1/2/3 N2 M0
T4a N0/1/2 M0
ⅣB期 T4b Nに関係なく M0
Tに関係なく N3 M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

2.アルゴリズム

口腔癌(舌癌)の治療方針のアルゴリズム CQ11-4


▶治療法と適応は?

照射線源の管理の問題などにより,組織内照射が可能な施設が限られてきており,舌癌の治療は外科治療が中心となってきている。

放射線治療

組織内照射はT1,T2症例,表在性の T3症例に対して適応となる 1)〜4)(→ CQ2-1)。

手術

舌の切除術式は舌部分切除術,舌可動部半側切除術,舌可動部(亜)全摘出術,舌半側切除術,舌(亜)全摘出術に分類される。病期Ⅰ・Ⅱ症例に対する予防的頸部郭清術は深部浸潤が高度な症例に対して行われることが多いが,適応基準については一定の見解は得られていない 5)〜10)(→ CQ2-2)。再建手術は,舌半側切除程度では,直接縫合や薄い皮弁による再建が推奨される(→ CQ2-3)。術後の誤嚥が問題視される舌(亜)全摘出症例では,遊離腹直筋皮弁のような容積のある再建材料を選択する 11)12)(→ CQ2-4)。

化学療法

進行癌に対して導入化学療法として用いられることがある。レジメンとして白金製剤を含む多剤併用療法が用いられることが多い(→ CQ11-3)。

参考文献

1) Nakagawa T, Shibuya H, Yoshimura R, et al. Neck node metastasis after successful brachytherapy for early stage tongue carcinoma. Radiother Oncol. 2003;68:129-35.(レベルⅤ)

2) Oota S, Shibuya H, Yoshimura R, et al. Brachytherapy of stage Ⅱ mobile tongue carcinoma. Prediction of local control and QOL. Radiat Oncol. 2006;1:21.(レベルⅤ)

3) 渋谷 均,吉村亮一,太田さやか,他.舌癌Ⅰ・Ⅱ期の小線源治療とその結果.臨床放射線 47: 741-9,2002.(レベルⅣ)

4) Inoue Ta, Inoue To, Yoshida K, et al. Phase Ⅲ trial of high-vs. low-dose-rate interstitial radiotherapy for early mobile tongue cancer. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;51:171-5.(レベルⅣ)

5) 松浦一登,林 隆一,海老原 敏.舌扁平上皮癌一次治療症例(274 例)の手術治療成績.頭頸部癌 30:550-7,2004.(レベルⅣ)

6) 朝蔭孝宏,岸本誠司,斎川雅久,他.舌癌に対する頸部郭清術の適応と郭清範囲の標準化に関する研究.頭頸部癌 31:536-40,2005.(レベルⅣ)

7) 吉本世一,三谷浩樹,米川博之,他.舌・喉頭・下咽頭癌手術における予防的頸部郭清の適応とその範囲.頭頸部外科 14:73-9,2004.(レベルⅣ)

8) 寺尾恭一,森 一功,楠 威志,他.舌癌124 例の臨床的検討.耳鼻臨床 96:317-22,2004.(レベルⅣ)

9) 岸本誠司,林 隆一,海老原 敏.T2-T4,N0 症例の頸部郭清術の適応と術式 舌癌.耳鼻 48(Suppl. 1):S25-32,2002.(レベルⅣ)

10) Lim SC, Zhang S, Ishii G, et al. Predictive markers for late cervical metastasis in stage Ⅰ and Ⅱ invasive squamous cell carcinoma of the oral tongue. Clin Cancer Res. 2004;10(1 Pt 1):166-72.(レベルⅣ)

11) Kimata Y, Uchiyama K, Ebihara S, et al. Postoperative complications and functional results after total glossectomy with microvascular reconstruction.Plast Reconstr Surg. 2000;106:1028-35.(レベルⅣ)

12) 中塚貴志,波利井清紀,小野 勇,他.遊離腹直筋皮弁を用いた頭頸部癌切除後の再建.日形会誌 6:964-72,1986.(レベルⅣ)


2.上顎洞癌

1.病期断診

[T 分類]

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内癌
T1 上顎洞粘膜に限局する腫瘍,骨吸収または骨破壊を認めない
T2 骨吸収または骨破壊のある腫瘍,硬口蓋および / または中鼻道に進展する腫瘍を含むが,上顎洞後壁および翼状突起に進展する腫瘍を除く
T3 上顎洞後壁の骨,皮下組織,眼窩底または眼窩内側壁,翼突窩,篩骨洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4a 眼窩内容前部,頬部皮膚,翼状突起,側頭下窩,篩板,蝶形洞,前頭洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4b 眼窩尖端,硬膜,脳,中頭蓋窩,三叉神経第二枝以外の脳神経,上咽頭,斜台のいずれかに浸潤する腫瘍

[N 分類]

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm 以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm をこえるが 6 cm 以下
N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N3 最大径が6 cm をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

[M 分類]

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

[病期分類]

0期 Tis N0 M0
Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T2 N0 M0
Ⅲ期 T1/2 N1 M0
T3 N0/1 M0
ⅣA期 T1/2/3 N2 M0
T4a N0/1/2 M0
ⅣB期 T4b Nに関係なく M0
Tに関係なく N3 M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

2.アルゴリズム

上顎洞癌のアルゴリズム


▶治療法と適応は?

機能面と同時に整容面にも配慮し治療を行う必要があり,手術,放射線治療,化学療法を組み合わせた集学的治療が共通した治療方針となっている。

放射線治療

放射線治療は60〜70 Gy / 30〜35 回 / 6〜7 週の外照射が一般的であり,手術,化学療法と併用されることが多い 1)〜5)。手術後の残存腫瘍体積と放射線治療による局所制御には相関があり,十分な減量が可能な症例では,放射線治療の併用により良好な局所制御が期待できる 6)。晩期毒性軽減のために強度変調放射線治療(intensity modulated radiotherapy;IMRT)なども行われる(→ CQ11-5)。

手術

切除術式としては上顎部分切除,上顎全摘出,上顎拡大全摘出,頭蓋底手術に分類される(→ CQ3-1)。開洞と減量術は上顎部分切除術に含まれる 7)〜9)。術後の口蓋の欠損に対しては口腔と鼻腔の遮断のためプロテーゼ,ないしは再建手術により閉鎖する必要がある 10)

化学療法

投与経路は顎動脈などからの動注ないしは全身投与である(→ CQ3-2)。動注レジメンとして白金製剤,フルオロウラシル系薬剤が選択されることが多い。全身投与では白金製剤を中心とした多剤併用療法も行われる。導入化学療法として用いられることもある。

参考文献

1) 酒井俊一,森 望,宮口 衛,他.上顎洞癌併用治療における拡大デンケル手術の役割.日耳鼻 94:214-24,1991.(レベルⅣ)

2) 米川博之.鼻副鼻腔悪性腫瘍の診断と治療.耳鼻 49:145-7,2003.(レベルⅣ)

3) Dulguerov P, Jacobsen MS, Allal AS, et al. Nasal and paranasal sinus carcinoma:are we making progress? A series of 220 patients and a systematic review. Cancer. 2001;92:3012-29. (レベルⅣ)

4) 藤井正人,山下 拓,冨田俊樹,他.上顎癌の治療.耳鼻 47:233-5,2001.(レベルⅣ)

5) Nibu K, Sugasawa M, Asai M, et al. Results of multimodality therapy for squamous cell carcinoma of maxillary sinus. Cancer. 2002;94:1476-82.(レベルⅣ)

6) Kawashima M, Ogino T, Hayashi R, et al. Influence of postsurgical residual tumor volume on local control in radiotherapy for maxillary sinus cancer. Jpn J Clin Oncol. 2001;31:195-202.(レベルⅣ)

7) 佐藤靖男,森田 守,高橋広臣.上顎癌の形態・機能保存治療について.耳鼻 17:86-99,1971.(レベルⅣ)

8) Sato Y, Morita M, Takahashi HO, et al. Combined surgery, radiotherapy, and regional chemotherapy in carcinoma of the paranasal sinuses. Cancer. 1970;25:571-9.(レベルⅣ)

9) Itami J, Uno T, Aruga M, et al. Squamous cell carcinoma of the maxillary sinus treated with radiation therapy and conservative surgery. Cancer. 1998;82:104-7.(レベルⅣ)

10) 大田洋二郎,海老原 敏,木股敬裕,他.上顎全摘後の無歯顎患者に対する腹直筋再建の工夫と顎義歯装着の試み.頭頸部腫瘍 27:142-7, 2001.(レベルⅤ)


3.上咽頭癌

亜部位:①後上壁,②側壁,③下壁に分類

1.病期診断

[T 分類]

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内癌
T1 上咽頭に限局する腫瘍,または中咽頭および / または鼻腔に進展する腫瘍
T2 傍咽頭間隙への進展を伴う腫瘍
T3 頭蓋底骨組織および / または副鼻腔に浸潤する腫瘍
T4 頭蓋内に進展する腫瘍および / または脳神経を取り囲む腫瘍,下咽頭,眼窩に浸潤する腫瘍,または側頭下窩 / 咀嚼筋間隙への進展を伴う腫瘍

*:傍咽頭間隙への進展とは,後外側への浸潤を意味する。

[N 分類]

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 鎖骨上窩より上方の,片側頸部リンパ節転移および / または片側 / 両側咽頭後リンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N2 鎖骨上窩より上方の両側頸部リンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N3a 最大径が6 cm をこえるリンパ節転移
N3b 鎖骨上窩へのリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

[M 分類]

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

[病期分類]

0期 Tis N0 M0
Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T1 N1 M0
  T2 N0/1 M0
Ⅲ期 T1/2 N2 M0
T3 N0/1/2 M0
ⅣA期 T4 N0/1/2 M0
ⅣB期 Tに関係なく N3 M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

2.アルゴリズム

上咽頭癌のアルゴリズム


▶治療法と適応は?

上咽頭癌は低分化・未分化の組織の腫瘍が大部分で放射線感受性が高いこと,解剖学的に手術が困難なことより,放射線治療が標準治療とされる。再発形式として遠隔再発が多いこと,化学療法の放射線増感効果が期待できることから,全身状態良好で予備機能が許せば化学療法の併用を積極的に考慮する。

放射線治療

放射線治療は原発巣と予防的リンパ節領域に40〜50 Gy を投与し,病巣部に縮小して60〜70 Gy / 30〜35 回 / 6〜7 週の外照射を行う。米国での比較試験の結果から放射線単独治療に比べて化学放射線療法での治癒率の向上が示され,化学放射線同時併用療法が広く行われる 1)〜5)(→ CQ4-1)。晩期毒性軽減のために強度変調放射線治療(IMRT)も行われる 6)7)(→ CQ11-5)。

化学療法

遠隔転移リスクが高い進行癌は同時併用療法以外に補助化学療法が併用される場合が多い 8)。化学療法は白金製剤を含む単剤ないしは多剤併用療法が行われる。遠隔転移を有する進行癌は化学療法が主たる治療で,臨床的に利点がある場合に放射線治療の併用も考慮される。

手術

化学放射線療法後の頸部リンパ節転移残存に対して救済手術が考慮される場合があ る。放射線治療後の局所再発の救済手術の報告があるが,適応となる症例は限られる 9)

参考文献

1) Langendijk JA, Leemans CR, Buter J, et al. The additional value of chemotherapy to radiotherapy in locally advanced nasopharyngeal carcinoma:a meta-analysis of the published literature. J Clin Oncol. 2004;22:4604-12.(レベルⅠ)

2) Baujat B, Audry H, Bourhis J, et al. Chemotherapy in locally advanced nasopharyngeal carcinoma:an individual patient data meta-analysis of eight randomized trials and 1753 patients. Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2006;64:47-56.(レベルⅠ)

3) Zhang L, Zhao C, Ghimire B, et al. The role of concurrent chemoradiotherapy in the treatment of locoregionally advanced nasopharyngeal carcinoma among endemic population:a meta-analysis of the phase III randomized trials. BMC Cancer. 2010;10:558.(レベルⅠ)

4) Chen L, Hu CS, Chen XZ, et al. Concurrent chemoradiotherapy plus adjuvant chemotherapy versus concurrent chemoradiotherapy alone in patients with locoregionally advanced nasopharyngeal carcinoma:a phase 3 multicentre randomised controlled trial. Lancet Oncol. 2012;13:163-71.(レベルⅡ)

5) Chen QY, Wen YF, Guo L, et al. Concurrent chemoradiotherapy vs radiotherapy alone in stage Ⅱ nasopharyngeal carcinoma:phase Ⅲ randomized trial. J Natl Cancer Inst. 2011;103:1761-70.(レベルⅡ)

6) Pow EH, Kwong DL, Mcmillan AS, et al.Xerostomia and quality of life after intensity-modulated radiotherapy vs. conventional radiotherapy for early-stage nasopharyngeal carcinoma:initial report on a randomized controlled clinical trial. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2006;66:981-91.(レベルⅡ)

7) Kam MK, Leung SF, Zee B, et al. Prospective randomized study of intensity-modulated radiotherapy on salivary gland function in early-stage nasopharyngeal carcinoma patients. J Clin Oncol. 2007;25:4873-9.(レベルⅡ)

8) Al-Sarraf M, LeBlanc M, Giri PG et al. Chemoradiotherapy versus radiotherapy in patients with advanced nasopharyngeal cancer:phase Ⅲ randomized Intergroup study 0099. J Clin Oncol. 1998;16:1310-7.(レベルⅡ)

9) Wei WI.Cancer of the nasopharynx:functional surgical salvage. World J Surg. 2003;27:844-8.(レベルⅣ)


4.中咽頭癌

亜部位:①側壁,②前壁,③上壁,④後壁に分類

1.病期診断

[T 分類]

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内癌
T1 最大径が2 cm 以下の腫瘍
T2 最大径が 2 cm をこえるが4 cm 以下の腫瘍
T3 最大径が4 cm をこえる腫瘍,または喉頭蓋舌面へ進展する腫瘍
T4a 喉頭,舌深層の筋肉 / 外舌筋(オトガイ舌筋,舌骨舌筋,口蓋舌筋,茎突舌筋),内側翼突筋,硬口蓋,および下顎骨のいずれかに浸潤する腫瘍
T4b 外側翼突筋,翼状突起,上咽頭側壁,頭蓋底のいずれかに浸潤する腫瘍,または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

*:舌根または喉頭蓋谷の原発腫瘍から喉頭蓋舌面粘膜への進展は喉頭浸潤ではない。

[N 分類]

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm 以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm をこえるが6 cm 以下
N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N3 最大径が6 cm をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

[M 分類]

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

[病期分類]

0期 Tis N0 M0
Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T2 N0 M0
Ⅲ期 T1/2 N1 M0
T3 N0/1 M0
ⅣA期 T1/2/3 N2 M0
T4a N0/1/2 M0
ⅣB期 T4b Nに関係なく M0
Tに関係なく N3 M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

2.アルゴリズム

中咽頭癌 CQ11-4


▶治療法と適応は?

中咽頭癌の治療においては生命予後とともに機能の温存が重要であるが,これまで手術療法と放射線治療の治療成績を前向きに比較検討した臨床研究はない。近年,ヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)と中咽頭癌の関連が指摘されている 1)2)(→ CQ5-1)。一方,再建術式や手術手技の向上に伴い進行癌においても術後の機能保持は可能となってきた。

放射線治療

放射線治療は原発巣と転移リンパ節を含む予防的リンパ節領域に40〜50 Gy を照射し,病巣部に縮小して60〜70 Gy / 30〜35 回 / 6〜7 週の外照射を行う。頸部転移の制御が困難と判断される場合は頸部郭清術を先行し,その後頸部も含めて放射線治療を行ってもよい。米国での比較試験の結果から,放射線単独治療に比べて化学放射線療法での治癒率の向上が示され,化学放射線同時併用療法が広く行われる 3)〜6)

手術

側壁癌や上壁癌のT1〜2 症例であれば口腔内からの切除(口内法)で根治できる症例も多く,術後の障害も比較的少ない7)。側壁癌の進行症例や前壁癌では頸部からのいわゆるプルスルー法ないしは下口唇下顎正中離断法が用いられる。予防的頸部郭清術を行う場合は内深頸領域を中心に行う 8)9)。原発巣が正中をこえる場合は健側の予防郭清も考慮する 4)5)。原発巣の切除範囲が広範な場合や,嚥下機能や鼻咽腔閉鎖機能の保持のために,局所(粘膜)皮弁,有茎(筋)皮弁,遊離(筋)皮弁が切除後の再建材料として用いられる。側壁癌切除後の欠損形態により再建材料を選択することが術後の機能保持につながる 10)

化学療法

放射線治療との同時併用や導入化学療法として用いられる。レジメンとして白金製剤を含む単剤ないしは多剤併用療法が多い。

参考文献

1) Ang KK, Harris J, Wheeler R, et al. Human papillomavirus and survival of patients with oropharyngeal cancer. N Engl J Med. 2010;363:24-35.(レベルⅡ)

2) Ihloff AS, Petersen C, Hoffmann M, et al. Human papilloma virus in locally advanced stage Ⅲ / Ⅳ squamous cell cancer of the oropharynx and impact on choice of therapy. Oral Oncol. 2010;46:705-11.(レベルⅠ)

3) Pignon JP, Bourhis J, Domenge C, et al. Chemotherapy added to locoregional treatment for head and neck squamous-cell carcinoma:three meta-analyses of updated individual data. Lancet. 2000;355:949-55.(レベルⅠ)

4) Pignon JP, le Maître A, Maillard E, et al;MACH-NC Collaborative Group. Meta-analysis of chemotherapy in head and neck cancer(MACH-NC):an update on 93 randomised trials and 17, 346 patients. Radiother Oncol. 2009;92:4-14.(レベルⅠ)

5) Bernier J, Cooper JS, Pajak TF, et al. Defining risk levels in locally advanced head and neck cancers:a comparative analysis of concurrent postoperative radiation plus chemotherapy trials of the EORTC(#22931)and RTOG(#9501). Head Neck. 2005;27:843-50.(レベルⅡ)

6) Cooper JS, Pajak TF, Forastiere AA, et al;Radiation Therapy Oncology Group 9501 / Intergroup. Postoperative concurrent radiotherapy and chemotherapy for high-risk squamous-cell carcinoma of the head and neck. N Engl J Med. 2004;350:1937-44.(レベルⅡ)

7) Adelstein DJ, Ridge JA, Brizel DM, et al. Transoral resection of pharyngeal cancer:summary of a National Cancer Institute Head and Neck Cancer Steering Committee Clinical TrialsPlanning Meeting, November 6-7, 2011, Arlington, Virginia. Head Neck. 2012;34:1681-703.(レベルⅠ)

8) 岸本誠司,鎌田信悦,鈴木晴彦,他.10-7 頭頸部がんの頸部リンパ節転移に対する標準的治療の確立に関する研究.平成12 年度厚生労働省がん研究助成金による研究報告集,国立がん研究センター,2000;220-6.(レベルⅣ)

9) Lim YC, Koo BS, Lee JS, et al. Distributions of cervical lymph node metastases in oropharyngeal carcinoma:therapeutic implications for the N0 neck. Laryngoscope. 2006;116:1148-52.(レベルⅣ)

10) Kimata Y, Uchiyama K, Sakuraba M, et al. Velopharyngeal function after microsurgical reconstruction of lateral and superior oropharyngeal defects. Laryngoscope. 2002;112:1037-42.(レベルⅤ)


5.下咽頭癌

亜部位:①梨状陥凹,②後壁,③輪状後部に分類

1.病期診断

[T 分類]

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内癌
T1 下咽頭の1 亜部位に限局し,および / または最大径が2 cm 以下の腫瘍
T2 片側喉頭の固定がなく,下咽頭の1 亜部位をこえるか,隣接部位に浸潤する腫瘍,または最大径が2 cm をこえるが4 cm 以下で片側の喉頭の固定がない腫瘍
T3 最大径が4 cm をこえるか,または片側喉頭の固定,または食道へ進展する腫瘍
T4a 甲状軟骨,輪状軟骨,舌骨,甲状腺,食道,頸部正中軟部組織 のいずれかに浸潤する腫瘍
T4b 椎前筋膜,縦隔に浸潤する腫瘍,または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

*:頸部正中軟部組織には,前頸筋群および皮下脂肪組織が含まれる。

[N 分類]

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm 以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm をこえるが6 cm 以下
N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N3 最大径が6 cm をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

[M 分類]

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

[病期分類]

0期 Tis N0 M0
Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T2 N0 M0
Ⅲ期 T1/2 N1 M0
T3 N0/1 M0
ⅣA期 T1/2/3 N2 M0
T4a N0/1/2 M0
ⅣB期 T4b Nに関係なく M0
Tに関係なく N3 M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

2.アルゴリズム

下咽頭癌のアルゴリズム CQ11-4


▶治療法と適応は?

早期例に対しては喉頭温存を目指し,根治照射あるいは喉頭温存手術(経口的切除,外切開による切除)のいずれかを個々の症例に応じて選択する(→ CQ6-1)。進行例に対しては手術治療が主体となるが,解剖学的特性により喉頭摘出を余儀なくされることが多く,切除後の再建法として遊離空腸移植による再建が本邦では広く行われている(→ CQ6-2)。QOL 保持の観点より化学放射線同時併用療法や喉頭温存手術も行われる。

放射線治療

放射線治療は60〜70 Gy / 30〜35 回 / 6〜7 週の外照射が一般的であり,根治照射のよい適応となるのはT1〜2 症例であるが,腫瘍型や亜部位によっては進行症例も根治照射の適応となる 1)2)。臨床的に認められるリンパ節転移は照射野に含めるが,頸部転移の制御が困難と判断される場合は頸部郭清術を先行し,その後頸部も含めて放射線治療を行ってもよい。臨床的にリンパ節転移がなくても腫瘍型や亜部位,進行度により予防的にリンパ節を照射野に含める。米国での比較試験の結果から放射線単独治療に比べて化学放射線療法での治癒率の向上が示され,化学放射線同時併用療法も行われる 3)4)

手術

切除術式として内視鏡切除術,経口的切除術,喉頭温存・下咽頭部分切除術,喉頭摘出・下咽頭部分切除術,下咽頭・喉頭全摘出術,下咽頭・喉頭・食道全摘出術,下咽頭・頸部食道切除術に分類される。下咽頭・喉頭全摘出術が進行例に対する標準的な術式となるが,亜部位や進行度により喉頭温存手術も行われる 5)〜9)。頸部郭清術を行う場合は内深頸領域を中心に行う。喉頭全摘出時は患側の甲状腺を切除し少なくとも患側の気管傍リンパ節を郭清する 10)〜12)。下咽頭・喉頭全摘出術後は上部消化管の再建が必要となる。再建法としては遊離空腸移植術が一般的である。拡大内視鏡,狭帯領域内視鏡によりはじめて確認される咽頭の表在性腫瘍病変に対しては近年,内視鏡切除術 13)〜15)や経口的切除術 16)が行われている。

化学療法

放射線治療との同時併用,導入化学療法として用いられる。レジメンとして白金製剤を含む単剤ないしは多剤併用療法が行われる 17)〜19)。(→ CQ11-1〜3

参考文献

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19) The Department of Veterans Affairs Laryngeal Cancer Study Group. Induction chemotherapy plus radiation compared with surgery plus radiation in patients with advanced laryngeal cancer. N Engl Med. 1991;324:1685-90.(レベルⅡ)


6.喉頭癌

亜部位:①声門,②声門上部,③声門下部に分類

1.病期診断

[T 分類]

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内癌

声門癌

T1 声帯運動が正常で,(一側)声帯に限局する腫瘍(前または後連合に達してもよい)
T1a 一側声帯に限局する腫瘍
T1b 両側声帯に浸潤する腫瘍
T2 声門上部,および / または声門下部に進展するもの,および / または声帯運動の制限を伴う腫瘍
T3 声帯が固定し喉頭内に限局する腫瘍,および / または傍声帯間隙および / または甲状軟骨の内側に浸潤する腫瘍
T4a 甲状軟骨の外側を破って浸潤する腫瘍,および / または喉頭外,すなわち気管,舌深層の筋肉 / 外舌筋(オトガイ舌筋,舌骨舌筋,口蓋舌筋,茎突舌筋)を含む頸部軟部組織,前頸筋群,甲状腺,食道に浸潤する腫瘍
T4b 椎前間隙,縦隔に浸潤する腫瘍,および / または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

声門上癌

T1 声帯運動が正常で,声門上部の1 亜部位に限局する腫瘍
T2 喉頭の固定がなく,声門上部の他の亜部位,声門または声門上部の外側域(例えば舌根粘膜,喉頭蓋谷,梨状陥凹の内壁など)の粘膜に浸潤する腫瘍
T3 声帯が固定し喉頭に限局するもの,および / または輪状後部,喉頭蓋前間隙に浸潤する腫瘍,傍声帯間隙浸潤,および / または甲状軟骨の内側に浸潤する腫瘍
T4a 甲状軟骨を破って浸潤する腫瘍,および / または喉頭外,すなわち気管,舌深層の筋肉 / 外舌筋(オトガイ舌筋,舌骨舌筋,口蓋舌筋,茎突舌筋)を含む頸部軟部組織,前頸筋群,甲状腺,食道に浸潤する腫瘍
T4b 椎前間隙,縦隔に浸潤する腫瘍,および / または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

声門下癌

T1 声門下部に限局する腫瘍
T2 声帯に進展し,その運動が正常か制限されている腫瘍
T3 声帯が固定し,喉頭内に限局する腫瘍
T4a 輪状軟骨あるいは甲状軟骨に浸潤する腫瘍,および / または喉頭外,すなわち気管,舌深層の筋肉 / 外舌筋(オトガイ舌筋,舌骨舌筋,口蓋舌筋,茎突舌筋)を含む頸部軟部組織,前頸筋群,甲状腺,食道に浸潤する腫瘍
T4b 椎前間隙,縦隔に浸潤する腫瘍,および / または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

[N 分類]

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm 以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm をこえるが 6 cm 以下
N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N3 最大径が6 cm をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

[M 分類]

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

[病期分類]

0期 Tis N0 M0
Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T2 N0 M0
Ⅲ期 T1/2 N1 M0
T3 N0/1 M0
ⅣA期 T1/2/3 N2 M0
T4a N0/1/2 M0
ⅣB期 T4b Nに関係なく M0
Tに関係なく N3 M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

2.アルゴリズム

喉頭癌のアルゴリズム 喉頭癌のアルゴリズム CQ11-4


治療法と適応は?

早期癌に対しては,放射線治療あるいは喉頭温存手術のいずれかで喉頭温存を図ることが推奨される 1)(→ CQ7-1)。進行癌に対しては喉頭全摘出術が主体であったが,QOL 保持の観点から,年齢や全身状態などを十分考慮し,化学放射線同時併用療法や喉頭温存手術が行われることが多くなってきている。

放射線治療

根治照射のよい適応はT1 N0, T2 N0 症例である。T1 では60〜66 Gy / 30〜33 回 / 6〜7 週,T2 以上では70 Gy / 35 回 / 7 週の通常分割照射が一般的である 2)3)。声門癌では頸部リンパ節領域を含めないが,声門上癌では両側上・中頸部リンパ節領域を照射野に含める 4)

進行癌に対しては化学療法の併用が一般的に行われ,同時併用療法が標準的である。放射線単独治療に比して,急性期有害事象は多くなるものの,局所制御率の向上による喉頭温存率 5)および予後の向上 6)が示されている。

手術

喉頭微細手術や喉頭部分切除術に代表される喉頭温存手術と,喉頭全摘出術に大別される。早期声門癌に対する喉頭温存手術の治療成績は,放射線治療と同等とする報告が多い 7)〜9)(→ CQ7-1)。また,早期声門癌に対する放射線治療後の再発例に対し,救済手術として喉頭温存手術が適応となる症例は少なくない 10)〜16)(→ CQ7-2)。一方,軟骨をこえて軟部組織へ腫瘍浸潤がみられるT4 症例に対しては,喉頭全摘出術が一般的である。声門下進展例では喉頭全摘出時,患側の甲状腺を切除し気管傍リンパ節の郭清を行うことが望ましい。頸部郭清術を行う場合は内深頸リンパ節領域を中心に行う 17)〜19)

化学療法

放射線治療との同時併用,導入化学療法として用いられる。レジメンとして白金製剤を含む単剤ないしは多剤併用療法が行われる 20)〜22)。(→ CQ11-1〜3

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7.甲状腺癌

1.病期診断 甲状腺癌取扱い規約(第6 版)による

[T 分類]

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
T1 甲状腺に限局し最大径が2 cm 以下の腫瘍
T1a 最大径が1 cm 以下の腫瘍
T1b 最大径が1 cm をこえ2 cm 以下の腫瘍
T2 甲状腺に限局し最大径が2 cm をこえ4 cm 以下の腫瘍
T3 甲状腺に限局し最大径が4 cm をこえる腫瘍,もしくは大きさを問わず甲状腺の被膜外に微小進展(胸骨甲状筋あるいは甲状腺周囲脂肪組織に進展)する腫瘍
T4 大きさを問わず甲状腺の被膜をこえて上記以外の組織あるいは臓器にも進展する腫瘍
T4a 甲状腺の被膜をこえて上記以外の組織あるいは臓器にも進展するが,下記進展を伴わないもの
T4b 椎骨前筋群の筋膜,縦隔の大血管に浸潤するあるいは頸動脈を取り囲む腫瘍

注1:多発性腫瘍のT 分類は最も大きいT により,(m)を付記することとする。例:T2(m)

注2: すべての未分化癌はT4 と分類し,甲状腺に限局するものはT4 a, 甲状腺外に進展するものはT4 b と細分類する。

注3: 大きさを問わずT3 とする甲状腺被膜外微少進展とはEx 1 に相当するものであり,T4 はEx 2 に相当する腫瘍である。

[N 分類]

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 所属リンパ節転移あり
N1 a 頸部中央区域リンパ節に転移あり
N1 b 一側,両側もしくは対側の頸部外側区域リンパ節あるいは上縦隔リンパ節に転移あり

[M 分類]

MX 遠隔転移の評価が不可能
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

[病期分類]

乳頭癌または濾胞癌(45 歳未満)

Ⅰ期 T,N に関係なく   M0
Ⅱ期 T,N に関係なく   M1

乳頭癌または濾胞癌(45 歳以上)

Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T2 N0 M0
Ⅲ期 T1/2 N1a M0
T3 N0/1a M0
ⅣA期 T1/2/3 N1b M0
T4a N0/1 M0
ⅣB期 T4b Nに関係なく M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

未分化癌(全症例を第Ⅳ期とする)

ⅣA期 T4a Nに関係なく M0
ⅣB期 T4b Nに関係なく M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

[リンパ節郭清の分類]

D0 郭清なし,またはD1 に達しないもの
D1 Ⅰ〜Ⅳ,対側Ⅲの郭清(対側Ⅲは必須でない)
D2 a Ⅰ〜Ⅵ,対側Ⅲの郭清(Xb,対側Ⅲは必須でない)
D2 b Ⅰ〜Ⅷ,対側Ⅲの郭清(Ⅷは必須でない)
D3 a 両側のD2 a
D3 b 両側のD2 b または(D2 a + D2 b)
D3 c (D2 またはD3)+縦隔郭清

2.悪性度診断

甲状腺癌の予後を予測する目的でいくつかのリスク分類が提唱されている。1979 年のEORTC の報告以来,Lahey Clinic のAMES(Age, Metastasis, Extrathyroidal invasion, Size),Mayo Clinic のAGES(Age, Grade, Extent, Size)やMACIS(Metastasis, Age, Completeness of resection, Invasion, Size)などの分類法が提唱されており,基準と考え方は各報告で少しずつ異なっている 1)〜3)

現在多くの施設で用いられているのは『甲状腺癌取扱い規約 第6 版』と,UICC の『TNM 悪性腫瘍の分類 日本語版 第7 版』である。いずれの評価法においても年齢,性別,被膜外浸潤,腫瘍径,腫瘍の分化度,リンパ節転移,遠隔転移などを組み合わせることによってリスク分類がなされている。


3.アルゴリズム

免疫染色による主な消化管間葉系腫瘍の鑑別のアルゴリズム


▶甲状腺分化癌に対する治療法

甲状腺分化癌においては手術が根治的治療法であり,他の治療法は補助療法となる 4)5)

手術

甲状腺癌における原発巣の切除術式は,全摘,準全摘,亜全摘,葉切除(峡部切除を合併した場合も含む),葉部分切除,峡部切除(錐体葉の切除も含む),核出,その他に分けられる。切除術式の選択は悪性度診断を参考にする。

病理診断の結果,広汎浸潤型濾胞癌や低分化癌である場合には甲状腺補完全摘術を行い,放射性ヨードを用いた遠隔転移巣の検索や放射性ヨード内用療法を行う 6)7)(→ CQ8-2)。

頸部郭清の範囲に関しては,原則としてN0 であれば予防的郭清術は行わない方針でよいとする報告が多い 8)〜10)。ただし,気管傍リンパ節を含む頸部中央区域の取り扱いについては議論がある(→ CQ8-3)。気管周囲での後発リンパ節転移に対する二次手術では反回神経麻痺を含む合併症のリスクが高まることなどを考慮すると 11),少なくとも患側の気管周囲の郭清を初回手術時に行うことが推奨される。

気管浸潤に対する切除法には,切除範囲に応じて気管層状切除(shaving),気管窓状切除,気管環状切除がある 12)。各術式の優劣について直接比較した報告はないので,浸潤の程度によって術式を選択する。

放射線治療

外照射は切除不能もしくは術後腫瘍残存症例で内照射が施行できない場合や骨転移に対する疼痛緩和の目的で行われる。

腫瘍残存例や遠隔転移を有する甲状腺分化癌(乳頭癌,濾胞癌)で,甲状腺全摘後の転移巣に131 I の取り込みが認められた場合,131 I による内照射が適用される。特に微小結節型の肺転移に対して良好な治療効果が期待できるが 13)〜15),本邦では実施可能な病床数が十分でないのが現状である。集積の有無は185 MBq(1〜5 mCi)程度のテスト量を投与して判定するが,ヒトチロトロピンアルファの認可により,甲状腺ホルモン投与を中断せずに検査実施が可能である。治療量は一般に3. 7 GBq(100 mCi)程度が用いられる 15)。一方,明らかな腫瘍の残存や転移巣はないが再発リスクが高いと考えられる症例に対するアブレーションは,局所再発の予防に有用と報告されている 16)131 I(30 mCi)外来投与の認可に伴い,本邦での今後の普及が期待される。

術後補助療法としてTSH 抑制療法を一律に適用することについては議論のあるところだが,再発転移の高危険群に対しては有効性が報告されている 17)。高分化型乳頭癌症例および甲状腺全摘症例で,術前サイログロブリン値が高い場合は,TSH 抑制療法の適応と考えられる 18)。ただし,女性や高齢患者では骨粗鬆症を予防するためにTSH 値を0. 5 μU / ml(正常下限)程度に保つのが望ましい 19)

参考文献

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8.唾液腺癌(耳下腺癌)

大唾液腺として耳下腺,顎下腺,舌下腺がある。ここでは最も症例数の多い耳下腺癌を対象に作成した。

1.病期診断

[T 分類]

TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
T1 最大径が2 cm 以下の腫瘍で,実質外進展 なし
T2 最大径が2 cm をこえるが4 cm 以下の腫瘍で,実質外進展 なし
T3 最大径が4 cm をこえる腫瘍,および / または実質外進展 を伴う腫瘍
T4a 皮膚,下顎骨,外耳道,および / または顔面神経に浸潤する腫瘍
T4b 頭蓋底,翼状突起に浸潤する腫瘍,または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

*: 実質外進展とは,臨床的または肉眼的に軟部組織または神経に浸潤しているものをい う。ただし,T4 a およびT4 b に定義された組織への浸潤は除く。顕微鏡的証拠のみで は臨床分類上,実質外進展とはならない。

[N 分類]

NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm 以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3 cm をこえるが6 cm 以下
N2b 同側の多発性リンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6 cm 以下
N3 最大径が6 cm をこえるリンパ節転移

注:正中リンパ節は同側リンパ節である。

[M 分類]

M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

[病期分類]

Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T2 N0 M0
Ⅲ期 T1/2 N1 M0
T3 N0/1 M0
ⅣA期 T1/2/3 N2 M0
T4a N0/1/2 M0
ⅣB期 T4b Nに関係なく M0
Tに関係なく N3 M0
ⅣC期 T,Nに関係なく   M1

2.悪性度診断

低悪性度群

腺房細胞癌 Acinic cell carcinoma,粘表皮癌(低悪性度)Mucoepidermoid carcinoma(low grade),多型低悪性度腺癌 Polymorphous low-grade adenocarcinoma,明細胞癌 NOS Clear cell carcinoma, not otherwise specified(NOS),基底細胞腺癌 Basal cell adenocarcinoma,嚢胞腺癌 Cystadenocarcinoma,低悪性度篩状嚢胞腺癌 Low-grade cribriform cystadenocarcinoma,粘液腺癌 Mucinous adenocarcinoma,腺癌NOS(低悪性度)Adenocarcinoma, NOS(low grade),多形腺腫由来癌(非・微小浸潤型)Carcinoma ex pleomorphic adenoma(non / minimally invasive types),転移性多形腺腫 Metastasizing pleomorphic adenoma,唾液腺芽腫 Sialoblastoma

中悪性度群

粘表皮癌(中悪性度)Mucoepidermoid carcinoma(intermediate grade),腺様嚢胞癌(篩状・管状型)Adenoid cystic carcinoma(cribriform and tubular types),上皮筋上皮癌 Epithelial-myoepithelial carcinoma,悪性脂腺腫瘍(脂腺癌・脂腺リンパ腺癌)Malignant sebaceous tumors(sebaceous carcinoma and sebaceous lymphadenocarcinoma),リンパ上皮癌 Lymphoepithelial carcinoma

高悪性度群

粘表皮癌(高悪性度)Mucoepidermoid carcinoma(high grade),腺様嚢胞癌(充実型)Adenoid cystic carcinoma(solid type),オンコサイト癌 Oncocytic carcinoma,唾液腺導管癌 Salivary duct carcinoma,腺癌NOS(高悪性度)Adenocarcinoma, NOS(high grade),筋上皮癌 Myoepithelial carcinoma,多形腺腫由来癌(浸潤型)Carcinoma ex pleomorphic adenoma(invasive type), 癌肉腫 Carcinosarcoma, 扁平上皮癌 Squamous cell carcinoma,小細胞癌 Small cell carcinoma,大細胞癌 Large cell carcinomaa

*:一部低〜中悪性


3.アルゴリズム

唾液腺癌(耳下腺癌)のアルゴリズム


▶治療法と適応は?

手術が根治的治療法であり,特に耳下腺癌では顔面神経の温存が術後のQOL に関わる。

手術

耳下腺癌の切除術式は耳下腺部分切除術,耳下腺葉切除術(浅葉・深葉),耳下腺全摘出術,耳下腺拡大全摘出術に分類される。顔面神経は麻痺がなければ原則として保存的に扱うが(→ CQ9-2),高悪性度群や周囲組織への浸潤を認める症例では,拡大切除を考慮する 1)2)。耳下腺癌の予防的頸部郭清については一般に扁平上皮癌,粘表皮癌(高度性度),腺癌などの高悪性度群では施行することが望ましい。頸部転移陽性であれば少なくとも内深頸領域の郭清を行う。顔面神経を切除した場合は可能であれば即時再建を行う 3)(→ CQ9-1)。

放射線治療

根治的治療としての適応は少ない。高悪性度症例や不完全切除症例では術後治療として適応となる 4)〜6)

化学療法

確立されたレジメンは現在のところ認められない。

参考文献

1) Guntinas-Lichius O, Klussmann JP, Schroeder U, et al. Primary parotid malignoma surgery in patients with normal preoperative facial nerve function:outcome and long-term postoperative facial nerve function. Laryngoscope. 2004;114:949-56.(レベルⅣ)

2) Godballe C, Schultz JH, Krogdahl A, et al. Parotid carcinoma:impact of clinical factors on prognosis in a histologically revised series. Laryngoscope. 2003;113:1411-7.(レベルⅡ)

3) Spiro RH. Management of malignant tumors of the salivary glands. Oncology(Williston Park). 1998;12:671-80;discussion 683.(レベルⅢ)

4) Garden AS, Weber RS, Morrison WH, et al. The influence of positive margins and nerve invasion in adenoid cystic carcinoma of the head and neck treated with surgery and radiation. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1995;32:619-26.(レベルⅡ)

5) Koul R, Dubey A, Butler J, et al. Prognostic factors depicting disease-specific survival in parotid-gland tumors. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2007;68:714-8.(レベルⅡ)

6) Spiro JD, Spiro RH. Cancer of the parotid gland:role of 7 th nerve preservation. World J Surg. 2003;27:863-7.(レベルⅢ)


9.原発不明頸部転移癌

原発不明頸部転移癌とは,頸部リンパ節から組織学的あるいは細胞学的に癌が証明されているものの,原発巣検索によって初回治療開始までに原発巣が発見できない症例を指す。

▶原発巣検索の方法は?

顎下部,上内深頸部,中内深頸部領域までの扁平上皮癌の転移であれば,一般に頭頸部に原発巣が隠れていることが多く,下内深頸部,鎖骨上領域のみの転移で組織型が腺癌であれば,甲状腺や鎖骨下の臓器に原発巣が隠れている可能性が高い 1)

原発巣検索には耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域の視診,触診,喉頭視鏡検査,CT, MRI,超音波検査のほか,胸部X 線検査,上部消化管内視鏡検査,原発巣の候補と考えられる部位の無作為生検などを積極的に施行する 1)〜4)。また,HPV 遺伝子検査も原発巣検索の一法である(→ CQ5-1)。最近では口蓋扁桃が原発巣である確率が比較的高いことから,口蓋扁桃摘出術を併せて施行することを推奨する論文もある 1)5)。FDG-PET あるいはFDG-PET / CT の有用性についてはいまだ議論が多いが 1)5)6),頭頸部以外の全身的な原発巣検索としての有用性もあり否定されるものではない 4)7)〜9)(→ CQ1-6)。

▶治療法と適応は?

ここでは『頭頸部癌取扱い規約 第5 版』の上咽頭癌および甲状腺癌を除いた鼻・副鼻腔,口腔,中下咽頭,喉頭,唾液腺癌におけるN 分類を用いた。

手術

頸部郭清術が頸部制御,生存率ともに有用であるとする報告は多い 3)5)8)10)(→ CQ10-1)。N1 までの症例では頸部郭清術と転移側の放射線治療との間で治療成績に有意差はないという報告もあるが 1)7)11)12),N2 以上の症例では頸部郭清術+術後(化学)放射線治療,あるいは化学放射線療法+術後頸部郭清術(残存例に対して)の集学的治療を考慮する。特に術後の病理結果で節外浸潤陽性例では,術後(化学)放射線治療を推奨する論文が多い 1)4)7)11)〜16)(→ CQ10-2)。

頸部郭清の範囲は少なくとも転移側の内深頸領域を郭清することが必要である。N1 症例に対しては選択的頸部郭清術で十分とする報告もみられるが 11),現段階では十分なエビデンスはない。

化学療法

化学療法単独での治療は推奨されておらず,放射線との併用で実施される。レジメンとしては白金製剤を中心とした単剤ないしは多剤併用療法が一般的である 2)15)17)。なお,手術,あるいは手術+術後(化学)放射線治療後の補助化学療法の有用性に対するエビデンスはない。

参考文献

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3) Erkal HS, Mendenhall WM, Amdur RJ, et al. Squamous cell carcinoma metastatic to cervical lymph nodes from an unknown head-and-neck mucosal site treated with radiation therapy alone or in combination with neck dissection. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2001;50:55-63.(レベルⅣ)

4) Cerezo L, Raboso E, Ballesteros AI. Unknown primry cancer of the head and neck:a multidisciplinary approach. Clin Transl Oncol. 2011;13:88-97.(レベルⅤ)

5) Issing WJ, Taleban B, Tauber S. Diagnosis and management of carcinoma of unknown primary in the head and neck. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2003;260:436-43.(レベルⅣ)

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8) Wallace A, Richards GM, Harari PM, et al. Head and neck squamous cell carcinoma from an unknown primary site. Am J Otolaryngol. 2011;32:286-90.(レベルⅣ)

9) Waltonen JD, Ozer E, Hall NC, et al. Metastatic carcinoma of the neck of unknown primary origin:evolution and efficacy of the modern workup. Arch otolaryngol Head Neck Surg. 2009;135:1024-9.(レベルⅣ)

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12) Patel RS, Clark J, Wyten R, et al. Squamous cell carcinoma from an unknown head and neck primary site:a “selective treatment” approach. Arch Otolarngol Head Neck Surg. 2007;133:1282-7.(レベルⅣ)

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16) Nieder C, Ang KK. Cervical lymph node metastases from occult squamous cell carcinoma. Curr Treat Options Oncol. 2002;3:33-40.(レベルⅤ)

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