リハビリテーション 〜診療ガイドライン

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目次:


第1 章 総論・評価

CQ 01

がん患者のリハビリテーションに関するガイドラインは存在するか?

がんのリハビリテーションに関するガイドラインは数少ない。そのうち,原発巣や治療的介入別に網羅された包括的なガイドラインには,American Cancer Society(ACS)から発表された「がん患者の栄養と身体活動に関するガイドライン」およびAmerican College of Sports Medicine(ACSM)から発表された「がん患者の運動療法に関するガイドライン」がある。


エビデンス

がんのリハビリテーションに関する包括的なガイドラインは5 つ抽出された1-5)。American Cancer Society(ACS)は2003 年に「がん患者の栄養と身体活動に関するガイドライン」を発表1),2006 年に改訂版が発表された2)。がん患者に対する栄養と運動療法に関する提言が,病期(がんの治療中・後および進行がん)や原発巣(乳がん,大腸がん,造血幹細胞移植,肺がん,前立腺がん,上部消化管と頭頸部がん)別に記載されている。

また,2010 年にAmerican College of Sports Medicine(ACSM)から発表されたガイドライン3)では,全身持久力改善を目的とした有酸素運動と四肢や体幹の筋力増強を目的としたレジスタンストレーニングに関して,運動処方の具体的な内容とともに,原発巣(乳がん,婦人科がん,前立腺がん,大腸がん,血液悪性腫瘍,造血幹細胞移植)別,病期や治療介入(放射線・化学療法)別に提言されている。このガイドラインの中では,「がん治療中・後の運動を実施する際には特別のリスク管理を要するが,運動の実施は安全である。運動トレーニングは,乳がん・前立腺がん・血液がん患者に対して,体力・筋力・生活の質(quality of life;QOL),倦怠感の改善に有効である。レジスタンストレーニングは乳がん患者に対して,リンパ浮腫の合併の有無に関わらず,安全に実施できる。他のがん患者への運動の効果は十分に明らかでなく,がんの種類・病期,運動の量や内容についてさらに研究が必要である。」と総括されている。

一方,残り2 つのガイドライン4, 5)は進行がん・末期がん患者のがん疼痛緩和に対するリハビリテーションの効果を調べたものであり,リハビリテーションが有効であることが記載されているが,エビデンスレベルは低く,いまだ専門家の合意による推奨が多い。がん患者に対して,リハビリテーションは安全に実施可能であり有効性が検証されつつあるが,世界的にみてもガイドラインはごく限定されたものしかないのが現状である。

文献

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CQ 02

がん患者の全身機能,日常生活動作(ADL)評価の方法は?

推奨グレード
B
  1. 1.がん患者にリハビリテーションを行うにあたり,がんの病態や治療戦略,機能障害(Performance Status),能力低下[活動制限,日常生活動作(ADL)障害],社会的不利(参加制約)を評価することが勧められる。
推奨グレード
B
  1. 2.汎用され,信頼性・妥当性が検証されている以下の評価尺度を用いることが勧められる。
    1. 1)機能障害(Performance Status 等):Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Status,Karnofsky Performance Scale (KPS)
    2. 2)ADL:Barthel 指数,Functional Independence Measure(FIM)

エビデンス

がんのリハビリテーションを実施するうえでは,Performance Status,すなわち実際の身体機能の状態やセルフケア能力を的確に評価し,病状の進行や治療の効果を判定していくことが必要である。

がん患者のPerformance Status を評価する尺度として,がん医療の現場で世界的に広く用いられているのは,Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)Performance Status である。再テスト法によって高い信頼性が検証されている(2a)1)(2b)2)。妥当性に関しては,生存期間の予測因子として予測的妥当性が検証されている(1a)3)(2a)4)。また,Karnofsky Performance Scale(KPS)も広く用いられている。再テスト法によって高い信頼性が検証されている(2a)1)(2b)5)6)。妥当性に関しては,生存期間の予測因子として予測的妥当性(1a)3)(2a)4)および構成概念妥当性について検証されている(2b)5)6)。最近開発された新たな評価尺度として,Palliative Performance Scale(PPS)(2b)7)8),Edmonton Functional Assessment Tool(EFAT-2)(2b)9)10)があるが,それらの使用はいまだ限定的である。

日常生活動作(activities of daily living;ADL)に関しては,がんに特化した尺度はなく,標準的なADL 評価尺度であるBarthel 指数や機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;FIM)が用いられる。Barthel 指数の高い信頼性(2a)11)(2b)12),妥当性(2a)13)とFIM の高い信頼性・妥当性(1a)14)(2b)15)16)が報告されている。両尺度とも,がんの原発巣や治療目的に依存せずに用いることができる。

付記

機能障害(Performance Status 等)の評価:

がんのリハビリテーションを実施するうえでは,機能障害レベルでは,Performance Status,すなわち実際の身体機能の状態やセルフケア能力を的確に評価し,病状の進行や治療の効果を判定していくことが必要である。Performance Status は,がん患者の治療の適応基準の判断,治療効果の指標,予後予測因子としてがん医療の現場で用いられている。一方,がん患者のリハビリテーションの効果を評価するためには,信頼性・妥当性に優れ,リハビリテーション効果が鋭敏に反映されるような標準化された身体機能のアセスメントツールが必要である。また,ADL 評価はリハビリテーションのプログラムを計画するうえでは必須の評価となる。

がん患者の身体機能評価に世界的に広く使用されているのは,上述の通りECOG Performance Status 17-19)とKPS scale 20)である。両者ともに,利点は採点が容易で短時間で測定可能であることである。欠点は,感度が低く,がんのリハビリテーションの効果判定には不十分なことである。また,病的骨折や運動麻痺などの機能障害のために活動性が制限されている場合には,たとえ全身状態が良好であっても低いグレードになってしまうことに注意が必要である。

ECOG Performance Status の評定尺度は5 段階で,がん患者の全身状態を簡便に採点できる(表1)。JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)のホームページには日本語訳が掲載されている19)。パブリックドメイン(公有)であるため,知的財産権は発生しないが,複製する場合には,文献18 を引用する必要がある。一方,KPS は,1948 年に初めて報告された評価法であるが,現在でもECOG と並んで世界的に広く用いられている(表2)。病状や労働・日常生活の介助状況により,100%(正常)から0%(死)まで11 段階で採点を行う。欠点としては,古典的な評価法であるため,現在の医療状況にうまく適合しない点があげられる。たとえば,30%以下では入院治療が必要とされているが,現在の医療状況では在宅での医療・看護が選択される場合も十分に考えられる。また,採点方法の手引き書は存在しないため,採点に迷った場合に対応に苦慮することがある。著作権はなく制限なく利用できる。

近年, 新たな評価尺度としてPalliative Performance Scale(PPS) やEdmonton Functional Assessment Tool-2(EFAT-2)が報告されている。PPS は,KPS の問題点を考慮し,現状の医療状況と矛盾しないようにKPS を修正したものである。小項目として,移動・活動性・セルフケア・食物摂取・意識状態を各々評価し,KPS と同様に11 段階で採点する。信頼性・妥当性についての検証もなされており,末期がん患者の新たな身体機能評価法として注目されている。EFAT-2 は直接的に身体機能に影響するバランス,動作,移動,倦怠感,意欲,ADL 等の項目を含み,末期がん患者の個々の障害を評価することができるという特徴がある。したがって,病的骨折や運動麻痺などの機能障害のために活動性が制限されているのか,悪液質の進行により全身状態が悪化し活動性が制限されているのかを区別して評価することができる。信頼性・妥当性の検証もなされており,今後広く使用されていくことが期待されるが,いくつかの項目では採点方法が明確でないためまだ広く用いられるには至っていない。

既存の評価尺度では,がん患者の身体機能を多面的に評価できず,がん自体およびその治療に伴うさまざまな身体症状を詳細に評価することが困難であるため,リハビリテーションの治療効果を検討していくうえでは不十分である。がん患者特有の症状や機能障害を的確に評価することができる新しい評価尺度の開発が望まれる。

表1 ECOG Performance Status Scale(PS)日本語版
Score 定義
0

全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。

1

肉体的に激しい活動は制限されるが,歩行可能で,軽作業や座っての作業は行うことができる。
例:軽い家事,事務作業

2

歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。

3

限られた自分の身の回りのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。

4

全く動けない。
自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごす。

Oken MM, Creech RH, Tormey DC, Horton J, Davis TE, McFadden ET, et al. Toxicity and response criteria of the Eastern Cooperative Oncology Group. Am J Clin Oncol 1982; 5: 649-55.
ECOG Performance Status 日本語訳 http://www.jcog.jp/doctor/tool/C_150_0050.pdf(2011 年12 月4 日引用)

表2 Karnofsky Performance Scale(KPS)
症状 介助の要,不要
100% 正常,臨床症状なし 正常な活動可能,特別のケアを要していない
90% 軽い臨床症状があるが正常の活動可能
80% かなりの臨床症状があるが努力して正常の活動可能
70% 自分自身の世話はできるが正常の活動・労働は不可能 労働不可能,家庭での療養可能,日常の行動の大部分に症状に応じて介助が必要
60% 自分に必要なことはできるが時々介助が必要
50% 症状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要
40% 動けず,適切な医療および看護が必要 自分自身のことをすることが不可能,入院治療が必要,疾患が急速に進行していく時期
30% 全く動けず入院が必要だが死はさしせまっていない
20% 非常に重症,入院が必要で精力的な治療が必要
10% 死期が切迫している
0%  

(Karnofsky DA, Ableman WH, Craver LF, Burchenal JH. The use of nitrogen mustard in the palliative treatment of carcinoma. Carcer 1948: 1; 634-56.)

ADL の評価:

ADL のアセスメントツールとして,現在,世界的に広く用いられている標準的なADL 評価尺度は,Barthel 指数 21)とその発展版であるFIM 22, 23)である。Barthel 指数は1965 年に開発されて以降,国内外において数多くの研究に用いられてきた実績があり,現在でも簡便なADL 評価法として汎用されている。FIM は,運動項目13 項目と認知項目5 項目から構成され,各項目を7 段階で評価する。認知項目を有するため高次脳機能障害,精神心理面の問題を有する場合も良い適応となる。介護量(Burden of care)の測定を目的とし日常生活で実際にどのように行っているかを観察などによって採点する。評価尺度は既存のADL 評価法よりも詳細であるが,各項目の最高点と最低点および評定尺度の基準が統一されているので評価しやすい。がんにおいては,入院時と退院時のBarthel 指数 24)もしくはFIM 点数を比較しリハビリテーションの効果を検証した報告がある25-28)。また,末期がん患者については,ホスピス入院中の終末期患者のリハビリテーションの効果をBarthel 指数の移乗,移動項目で評価した報告がある29)

がんに伴う倦怠感(cancer-related fatigue ; CRF)の評価:

1)頻度と原因:

National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドライン30)では,がんに伴う倦怠感とは「がんやがん治療に伴う永続的,主観的な疲れであり,肉体的,精神的,感情的な側面をもっている感覚で,エネルギーが少なくなっている状態」と定義されている。がんに伴う倦怠感は,がん治療を受けている患者の14-96% 31-33),がん治療後の患者の19-82%に認められると報告されており34, 35),原疾患の進行により身体機能が低下すると自覚的な倦怠感は増強し,終末期になるほど頻度は高くなるといわれている。

倦怠感の明確な発症機序は不明であるが,化学療法や放射線療法などのがん治療や,鎮痛剤,抗うつ薬,睡眠導入剤などのがん関連症状に対する薬剤が原因となることもある。また,がんと診断されたことや長期間の治療に伴うストレスなどの精神・心理的要因が倦怠感へとつながることがある。さらに,がんの進行に伴う代謝異常,がん細胞より産生されるサイトカイン,貧血,疼痛,有害事象,栄養障害,睡眠障害,身体活動の低下,がん悪液質などの身体的要因によるものなど,さまざまな要因が関連し,倦怠感へとつながるといわれている。

日本語では,「がんに関連した疲労感」「疲労感」などと訳されることもあるが,緩和ケアなどの場面では,「倦怠感」と表現していることが多い。また,患者向けには,「からだのつらさ・きもちのつらさ」といった表現も,ほぼ同等の概念として用いられている。

2)評価尺度:

多数の評価法が用いられているが,一元的なスケールで倦怠感の有無やその程度を評価するものと,多角的なスケールで倦怠感が身体面・感情面・認知面にどのような影響を与えるか評価するものに大別される。

一元的なスケールでは,Profile of Mood States(POMS)36) のFatigue subscale やBrief Fatigue Inventry(BFI)37)がよく用いられる。簡易的には,Visual Analogue Scale(VAS)を用い,no fatigue からworst fatigue を10 段階で示すNumerical Rating Scale(NRS)38)や,0-100 の自覚的スケールのSymptom Assessment Scale(SAS)39)が使われている。一方,多角的なスケールでは,改訂版Piper Fatigue Scale(PFS)40)や,Schwartz Cancer Fatigue Scale(SCFS)41),Cancer Fatigue Scale(CFS)42)が,信頼性・妥当性も確かめられており,広く用いられている。

これらの中で,日本語版が作成され,その信頼性・妥当性が証明されているものは,BFI 37)およびCFS 42)である。

BFI 37)は米国MD Anderson Cancer Center で開発された倦怠感を評価するための自己記入式の質問表であり,9 項目の質問から構成されている。全項目の平均スコア(0-10)を用いて倦怠感の程度の指標とする。また,スコアの一部(最も疲れていた時)を用いてMild(1-3),Moderate(4-6),Severe(7-10)に層別化できる。BFI 日本語版43)を使用できる。

CFS 42)はがん患者の倦怠感を評価する簡便な自己記入式の質問票であり,15 項目の質問から構成されている。各質問に1(いいえ)から5(とても)の5 段階で評価する。身体的倦怠感・精神的倦怠感・認知的倦怠感という3 つの下位尺度から構成されており,高得点ほど強い倦怠感を表す。最高得点は,身体的倦怠感28 点,精神的倦怠感16 点,認知的倦怠感16 点,総合的倦怠感60 点である。CFS 日本語版44)を使用できる。

がん患者の精神心理面の評価:

がん患者の抑うつや不安などの精神心理面の評価には,包括的QOL 評価尺度の心理領域が用いられるほか,精神心理面に特化した評価法が用いられている。日本語での信頼性・妥当性が検証されている代表的な評価尺度を以下に示す。

Japanese version of the M.D.Anderson Symptom Inventory(MDASI-J)45) がん患者の症状評価尺度。症状13 項目(疼痛,倦怠感,嘔気,睡眠障害,ストレス,息切れ,もの忘れ,食欲不振,眠気,口渇,悲しい気持ち,嘔吐,しびれ),日常生活の障害6 項目〔日常生活の全般的活動,気持ち・情緒,仕事(家事を含む),対人関係,歩行,生活を楽しむこと〕の計19 項目を評価。患者による自己記入式評価尺度。信頼性・妥当性は検証済み。
Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)46) 身体的疾患を有する患者の抑うつと不安の評価尺度。抑うつ7 項目および不安7 項目の計14 項目を評価。患者による自己記入式評価尺度。信頼性・妥当性は検証済み。
日本語版Profile of Mood States(POMS)47) 感情・気分の評価尺度。抑うつ─落ち込み15 項目,活気8 項目,怒り─敵意12 項目,疲労7 項目,緊張─不安9 項目,混乱7 項目の計65 問を評価。患者による自己記入式評価尺度。信頼性・妥当性は検証済み。
つらさと支障の寒暖計(DIT:Distress and Impact Thermometer)48) がん患者の適応障害,うつ病のスクリーニング尺度。つらさ(Distress thermometer)1 項目および支障(Impact thermometer)1 項目を評価。患者による自己記入式評価尺度。妥当性は検証済み。
Integrated Distress-Activities Score(IDAS)49) がん患者の全身状態の評価尺度。生活スコア(食事,飲水,娯楽,会話・談話,行動範囲),症状スコア〔疼痛,倦怠感,呼吸器症状(呼吸困難等),消化器症状(嘔気腹満),苦痛を伴う精神・神経症状(不眠,不安,不穏等)〕の10 項目を評価する。評価者は医療者。信頼性・妥当性は一部検証済み。
Japanese version Support Team Assessment Schedule(STAS-J)50) がん患者の包括的な代理評価尺度。痛みのコントロール,症状が患者に及ぼす影響,患者の不安,家族の不安,患者の病状認識,家族の病状認識,患者と家族のコミュニケーション,医療専門職間のコミュニケーション,患者・家族に対する医療専門職とのコミュニケーションの計9 項目を評価する。評価者は医療者。信頼性・妥当性は検証済み。

がん患者のQOL の評価:

がん患者のQOL を評価する場合には,慢性疾患全般に広く用いられている評価法〔MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)51)など〕を用いる場合と,がん特異的尺度〔Functional Assesment of Cancer Therapy(FACT)52),The European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire(EORTC QLQ)53)など〕を用いる場合がある。

がん特異的尺度は,身体面・機能面・心理面・社会面といったQOL の領域(これらの領域群を健康関連QOL と呼ぶ)を含み,これにがん種・治療法・症状別にモジュールや下位尺度を追加した形式をとっていることが多い54)。たとえばFACT 52)では,身体症状について(7 項目)・社会的/ 家族との関係について(8 項目)・性生活(1 項目)・精神状態について(6 項目)・活動状況について(7 項目)という包括的尺度(FACT-G)に加え,乳がんであれば呼吸困難・浮腫・体重増加がないかなどの9 項目の尺度を追加し,FACT-B として用いられている。FACT,EORTC QLQ は,包括的尺度52, 53)も,追加尺度部分55, 56)も,信頼性と妥当性が検証され,広く用いられている。

乳がん患者では,早期から進行期,終末期と対象が広く,さらに治療中のみでなく治療後何年も経過した患者に対する介入研究も多いことから,用いられるQOL 尺度はそれぞれの対象にあわせて多岐にわたっている。FACT などがん特異的尺度は比較的簡便であるため進行期・終末期にも用いられる。Performance Status のよい早期の患者などでは,重視しているQOL 領域によって,複数のQOL の評価法や領域特異的な評価(心理面であれば既存の不安・うつの尺度)を併用し,より詳細な評価をしている報告が多い。また,治療後の患者ではがん特異的尺度よりも慢性疾患用の評価法(SF-36 など)が用いられていることが多い。

文献

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47) 横山和仁,荒記俊一,川上憲人,竹下達也.POMS(感情プロフィール検査)日本語版の作成と信頼性および妥当性の検討.日本公衆衛生雑誌1990; 37: 913-8.

48) Akizuki N, Yamawaki S, Akechi T, Nakano T, Uchitomi Y. Development of an Impact Thermometer for use in combination with the Distress Thermometer as a brief screening tool for adjustment disorders and/or major depression in cancer patients. J Pain Symptom Manage 2005; 29: 91-9.

49) 石黒浩史,宮森正,松田豊子,天杉裕望,金子早苗,岡島重考.病状・日常生活統合スコア(IDA score)を用いた終末期がん患者における症状緩和の予後因子の検討.死の臨床1997; 20: 59-63.

50) Miyashita M, Matoba K, Sasahara T, Kizawa Y, Maruguchi M, Abe M, et al. Reliability and validity of the Japanese version of the Support Team Assessment Schedule(STAS-J). Palliat Support Care 2004; 2: 379-85.

51) Ware JE, Sherbourne CD. The MOS 36-item Short Form Health Survey (SF-36): conceptual framework and item selection. Med Care 1992; 30: 473-83.

52) Cella DF, Tulsky DS, Gray G, Sarafian B, Linn E, Bonomi A, et al. The Functional Assessment of Cancer Therapy Scale; Development and validation of the general measure. J Clin Oncol 1993; 11: 570-9.

53) Aaronson NK, Ahmedzai S, Bergman B, Bullinger M, Cull A, Duez NJ, et al. European Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ-C30; A quality-of-life instrument of use in international clinical trials in oncology. J Natl Cancer Inst 1993; 85: 365-76.

54) 池上直己,福原俊一,下妻晃二郎,池田俊也編.臨床のためのQOL 評価ハンドブック.医学書院,2001.

55) Brady MJ, Cella DF, Mo F, Bonomi AE, Tulsky DS, Lloyd SR, et al. Reliability and validity of the Functional Assessment of Cancer Therapy-Breast quality-of-life instrument. J Clin Oncol 1997; 15: 974-86.

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第2 章
食道がん,肺がん,胃がん,肝臓・胆嚢・膵臓がん,大腸がん,前立腺がんと診断され,治療が行われる予定の患者または行われた患者

CQ 01

開胸・開腹術を施行される予定の患者に対して,術前から呼吸リハビリテーションを行うと,行わない場合に比べて術後の呼吸器合併症が減るか?

推奨グレード
B
  1. 1.開胸・開腹術を施行される予定の患者に対して,術前から呼吸リハビリテーションを行うと,術後の呼吸器合併症が減るので勧められる。

エビデンス

中村ら(Ⅱb)1)によると,開胸・開腹術が施行される前から呼吸リハビリテーションを行った群と呼吸リハビリテーションを行っていない群での術後呼吸器合併症の発症率は,それぞれ肺がんで3.0%と4.2%,胃がんで0%と6.8%であり,両群に有意な差を認めた。また,242 名の肺がん手術患者の多変量解析によって,術後呼吸器合併症の危険因子の一つとして術前からの呼吸リハビリテーションの非施行があげられている(Ⅲ)2)

食道がんにおいては,Feeney らのレビュー(Ⅲ)3)において術後呼吸器合併症との関連因子の一つとして術前からの吸気筋訓練の非施行が抽出されている。また,坪佐ら(Ⅲ)4)は術前から呼吸リハビリテーション,口腔ケア,摂食・嚥下リハビリテーションを導入することで,術後の肺炎発症率は6.8%(術後早期の肺炎は2.7%)と過去の報告(6.4-33%)よりも低い傾向であったと報告している。

付記

術前呼吸リハビリテーションの目的:

開胸・開腹術における術前呼吸リハビリテーションの目的は,おもに術後患者が呼吸訓練(腹式呼吸,インセンティブ・スパイロメトリー,排痰法など)を正しく行えるように事前に慣れておくことである。リハビリテーションの開始時期は外来通院中であっても入院後であってもその効果に明らかな差がないと報告されている5)が,慣れに要する時間は患者によって異なることを考慮すると術前1-2 週間前からの導入がよいと考えられる。

禁煙指導:

喫煙者に対しては術前から禁煙を指導することが重要である。喫煙者においては,一酸化炭素の血中濃度の上昇により酸素運搬能が低下すること,呼吸器系の分泌物が増加すること,気管の繊毛運動が障害されることなどが知られており,肺がん6)や食道がん3)の術後呼吸器合併症のリスクが高まることが指摘されている。なお,禁煙期間が1-2 カ月以下であると呼吸器合併症の発生頻度が高い7, 8)と報告されており,可能であれば術前少なくとも2 カ月の禁煙が推奨される。

文献

1) 中村拓人,水口且久,河合直樹,塚本彰,原拓央,野澤寛他.当院における周術期呼吸リハビリテーションの有効性と課題.みんなの理学療法2009; 21: 17-20.(Ⅱb)

2) Algar FJ, Alvarez A, Salvatierra A, Baamonde C, Aranda JL, Lopez-Pujol FJ. Predicting pulmonary complications after pneumonectomy for lung cancer. Eur J Cardiothorac Surg 2003; 23: 201-8.(Ⅲ)

3) Feeney C, Hussey J, Carey M, Reynolds JV. Assessment of physical fi tness for esophageal surgery, and targeting interventions to optimize outcomes. Dis Esophagus 2010; 23: 529-39.(Ⅲ)

4) 坪佐恭宏,佐藤弘,田沼明,大田洋二郎,大曲貴夫.食道癌に対する開胸開腹食道切除再建術における術後肺炎予防.日外感染症会誌2006; 3: 43-47.(Ⅲ)

付記文献

5) 中村綾子,大国生幸,内昌之,新井義朗,原田孝,秦美暢他.当院における肺切除術症例の術前外来理学療法.日本私立医科大学理学療法学会誌2008; 25: 45-8.

6) Dales RE, Dionne G, Leech JA, Lunau M, Schweitzer I. Preoperative prediction of pulmonary complications following thoracic surgery. Chest 1993; 1045: 155-9.

7) Vaporciyan AA, Merriman KW, Ece F, Roth JA, Smythe WR, Swisher SG, et al. Incidence of major pulmonary morbidity after pneumonectomy: association with timing of smoking cessation. Ann Thorac Surg 2002; 73: 420-5.

8) 中西良一,中川誠,徳渕浩,奥村隆志,久保井礼,城戸優光.肺がんに対する胸腔鏡下肺葉切除術における喫煙の影響.産業医科大学雑誌2010; 32: 45-52.


CQ 02

開胸・開腹術を施行される予定の患者に対して,術前から呼吸リハビリテーションの指導を行うと,行わない場合に比べて術後の入院期間が減るか?

推奨グレード
B

術後の入院期間の短縮のために,開胸・開腹術を施行される患者に術前から呼吸リハビリテーションの指導を行うことが勧められる。


エビデンス

食道がん患者に対して,術前から呼吸リハビリテーションを施行した場合と施行しなかった場合を比べると,術後の入院期間がそれぞれ29.9 日,67.9 日と前者が有意に短かったことが報告されている(Ⅱb)1)

また,慢性閉塞性呼吸不全を合併した肺がん患者に対して,術前から呼吸リハビリテーションを施行した場合と施行しなかった場合を比べると,術後の入院期間がそれぞれ21.0 日,29.0 日と前者が有意に短かったことが報告されている(Ⅲ)2)

付記

疼痛管理:

食道がん術後に自己調節硬膜外鎮痛法を用いると従来の硬膜外鎮痛法使用と比べて抜管までの日数,ICU 在室日数,歩行開始までの日数,在院日数が減少したという報告もある3)。術後の疼痛管理が良いと早期離床が促され,術後の入院期間の短縮につながるものと考えられる。

文献

1) 小山照幸,羽生信義,鈴木裕,青木照明,宮野佐年.食道癌手術例に対する術前理学療法導入効果 呼吸器合併症と入院医療費について.日臨外会誌2003; 64: 305-9.(Ⅱb)

2) Sekine Y, Chiyo M, Iwata T, Yasufuku K, Furukawa S, Amada Y, et al. Perioperative rehabilitation and physiotherapy for lung cancer patients with chronic obstructive pulmonary disease. Jpn J Thorac Cardiovasc Surg 2005; 53: 237-43.(Ⅲ)

付記文献

3) Saeki H, Ishimura H, Higashi H, Kitagawa D, Tanaka J, Maruyama R, et al. Postoperative management using intensive patient-controlled epidural analgesia and early rehabilitation after an esophagectomy. Surg Today 2009; 39: 476-80.


CQ 03

開胸・開腹術を施行された患者に対して,肺を拡張させる手技を含めた呼吸リハビリテーションを行うと,行わない場合に比べて,呼吸器合併症が減るか?

推奨グレード
A

開胸・開腹術を施行された患者に対して肺を拡張させる手技を含めた呼吸リハビリテーションを行うと,呼吸器合併症が減少するので,行うよう強く勧められる。


エビデンス

Thomas らのシステマティック・レビュー(Ⅰa)1)によると,深呼吸とインセンティブ・スパイロメトリーはそれらを施行しなかった場合と比べて共通オッズ比がそれぞれ0.43(95%信頼区間:0.27-0.63),0.44(95%信頼区間:0.18-0.99)となっており,開胸・開腹術後の呼吸器合併症を抑制する効果がみられたとされている。ただし,インセンティブ・スパイロメトリーに関してはその後のコクランレビュー(Ⅰa)2)では,呼吸リハビリテーションを施行しなかった場合との比較でリスク比が0.63(95%信頼区間:0.29-1.34)となっており,明らかな呼吸器合併症の抑制効果がみられなかった。

インセンティブ・スパイロメトリー単独ではその効果は十分に証明されていないが,Annals of Internal Medicine のガイドラインではインセンティブ・スパイロメトリー,深呼吸,IPPV(intermittent positive pressure ventilation;間欠的陽圧換気),CPAP(continuous positive airway pressure;持続気道陽圧法),といった肺を拡張させる手技(lung expansion modality)を行うことが,術後の呼吸器合併症の減少に寄与すると結論している(Ⅰa)3)

文献

1) Thomas JA, McIntosh JM. Are incentive spirometry, intermittent positive pressure breathing, and deep breathing exercise effective in the prevention of postoperative pulmonary complications after upper abdominal surgery? A systematic overview and meta-analysis. Phys Ther 1994; 74: 3-10.(Ⅰa)

2) Guimarães MM, El Dib R, Smith AF, Matos D. Incentive spirometry for prevention of postoperative pulmonary complications in upper abdominal surgery. Cochrane Database Syst Rev 2009;(3): CD006058.(Ⅰa)

3) Lawrence VA, Cornell JE, Smetana GW. Strategies to reduce postoperative pulmonary complications after noncardiothoracic surgery: systematic review for the American College of Physicians. Ann Intern Med 2006; 144: 596-608.(Ⅰa)


CQ 04

開胸・開腹術を施行された患者に対して,荷重側肺障害の予防を行うと,行わない場合に比べて術後の肺機能を改善することができるか?

推奨グレード
B

術後低酸素血症に対して,肺機能の改善のために術後体位ドレナージを行うよう勧められる。


エビデンス

胸部食道がん術後患者で術後5 日目において低酸素血症をきたしている16 名を対象にした研究では,1 日連続6 時間・4 日間腹臥位をとった群では,とらなかった群と比べてPaO2/FiO2 比が有意に改善し,人工呼吸器管理期間と集中治療室(ICU)在室期間を有意に短縮したと報告されている(Ⅰb)1)が,術後のすべての患者に対して行うことに関する意義は明らかでない。

付記

術後の体位ドレナージの目的:

臨床の場面では術後腹臥位をとることは必ずしも容易ではなく,側臥位をとる方が現実的と思われる。いずれにしても荷重側肺障害を予防するため体位を一定にせず,適宜換えることが重要である。実際にどの体位がよいかについては,腹臥位と側臥位,側臥位と仰臥位などさまざまな体位を比較した研究が必要である。また,胸部食道がん術後の管理方法は近年大きく変わってきており,術後の人工呼吸器管理期間は短縮されてきている。人工呼吸器管理から離脱した後は離床を進めることも重要と考えられる。

文献

1) Watanabe I, Fujihara H, Sato K, Honda T, Ohashi S, Endoh H, et al. Benefi cial effect of a prone position for patients with hypoxemia after transthoracic esophagectomy. Crit Care Med 2002; 30: 1799-802.(Ⅰb)


CQ 05

開胸・開腹術を施行された患者に対して,気管支鏡による排痰を行うと,行わない場合に比べて術後の呼吸器合併症が減るか?

推奨グレード
C1

排痰困難な患者に対しては,術後の無気肺発症の予防のため気管支鏡による排痰を行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠はない。


エビデンス

肺がん患者20 名を対象に呼吸リハビリテーションのみ施行された群とこれに術後気管支鏡による排痰を施行された群を比較して,両者の術後無気肺発症率に変化がないことが報告されている(Ⅰb)1)

一方で食道がん患者710 名を後方視的に調査した結果,ロジスティック回帰分析により術後の在院死を減らすことに関連する因子のひとつとして,排痰目的での気管支鏡の施行があげられており(Ⅲ)2),排痰困難例においては選択されるべき手技と考えられる。

文献

1) Jaworski A, Goldberg SK, Walkenstein MD, Wilson B, Lippmann ML. Utility of immediate postlobectomy fiberoptic bronchoscopy in preventing atelectasis. Chest 1988; 94: 38-43.(Ⅰb)

2) Whooley BP, Law S, Murthy SC, Alexandrou A, Wong J. Analysis of reduced death and complication rates after esophageal resection. Ann Surg 2001; 233: 338-44.(Ⅲ)


CQ 06

開胸・開腹術を施行された患者に対して,早期離床・歩行訓練を行うと,行わない場合に比べて術後の呼吸器合併症が減るか?

推奨グレード
C1

術後の呼吸器合併症の予防のために早期離床を行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠はない。


エビデンス

肺がんで肺葉切除後にfast-track rehabilitation を施行された患者をロジスティック回帰分析したところ,術後合併症を予測する唯一の因子として術後早期の歩行が抽出された(Ⅲ)1)

付記

早期離床の意義・目的:

fast-track rehabilitation,fast-track surgery,ERAS(enhanced recovery after surgery)などと呼ばれる麻酔・輸液・栄養・早期離床などの包括的な周術期管理方法が近年普及している。早期離床は筋骨格系の廃用の予防のためだけでなく,呼吸器系の機能低下の予防のためにも実施する必要がある。体幹を起こすことで横隔膜が下がり肺の拡張を助けることになり,また荷重側肺障害の予防にもなる。早期離床を安全に進めるためには呼吸循環器系を含めて全身状態が安定していることが必須であり,適切な全身管理と組み合わせたリハビリテーションが必要である。

文献

1) Das-Neves-Pereira JC, Bagan P, Coimbra-Israel AP, Grimaillof-Junior A, Cesar-Lopez G, Milanez-de- Campos JR, et al. Fast-track rehabilitation for lung cancer lobectomy: a five-year experience. Eur J Cardiothorac Surg 2009; 36: 383-91.(Ⅲ)


CQ 07

胸部食道がんの患者に対して,手術後に摂食・嚥下リハビリテーションを行うと,行わない場合に比べて肺炎の発症率が減るか?

推奨グレード
B

胸部食道がんの術後に多職種チームによる摂食・嚥下リハビリテーションを行うと術後肺炎の予防が可能となるので,行うことが勧められる。


エビデンス

胸部食道がん術後に嚥下障害が疑われる患者に対して,嚥下造影検査を含めた評価を行いながら適切な間接訓練・直接訓練を行うことで,対象9 例中8 例は重篤な嚥下(誤嚥)性肺炎を起こさず退院したと報告されている(Ⅲ)1)

また,胸部食道がん術後の経口摂取を流動食またはペースト食で開始した場合とゼリー食で開始した場合とを比較すると,嚥下(誤嚥)性肺炎の発症がそれぞれ40.0%,6.7%と有意に差があったことが報告されており(Ⅱb)2),適切な食形態の選択が重要である。

付記

嚥下障害の原因:

胸部食道がん術後は前頸筋群の切離による喉頭挙上制限,反回神経麻痺,残存食道と再建臓器の吻合部の瘢痕狭窄などによって嚥下障害が起こりうる。したがって,術後の呼吸器合併症予防のためには,呼吸リハビリテーションを行うだけでなく,嚥下に関しても適切な評価や訓練を行うことが必要と考えられる。

文献

1) 坪佐恭宏,佐藤弘,根本昌之,安藤牧子,辻哲也.胸部食道癌根治術後の嚥下障害に対する摂食嚥下リハビリテーションの施行経験.日消外会誌2005; 38: 571-6.(Ⅲ)

2) 小原仁,松原弘樹.嚥下障害食の食道切除術患者における栄養状態に対する効果.日摂食嚥下リハ会誌2004; 8: 39-45.(Ⅱb)


CQ 08

消化器がん初回治療後の患者に対して,運動療法を行うと,行わない場合に比べて免疫系が賦活されるか?

推奨グレード
B

免疫系が賦活されるためには,消化器がん初回治療後の患者に運動療法を行うことが勧められる。


エビデンス

胃がん根治術後2 日目より,予測最大心拍数の60%の強度でエルゴメーターによる運動を週5回・2 週間施行したところ,運動を行わなかった群と比べて術後14 日目のNK 細胞活性が有意に増加したと報告されている(Ⅰb)1)

大腸がん初回治療後に中等度の運動(乳酸閾値の55-65%の強度)を1 日30-40 分・2 週間施行したところ,IL-1 受容体アンタゴニスト活性が有意に低下したが,軽度の運動(乳酸閾値の30-40%の強度)では有意な変化がみられなかった(Ⅰb)2)。一方,大腸がん患者に対して乳酸閾値の30-40%の強度の運動を1 日30-40 分・2 週間行うことで尿中8-oxo-2-deoxyguanosine が有意に減少したが,乳酸閾値の50-60%の強度の運動では有意な変化がみられなかった(Ⅰb)3)。運動は免疫系の賦活のために有効であるという報告はみられるが,最適な運動の強度は明確でない。

付記

免疫系への運動療法の効果:

IL-1 には免疫系細胞の増殖促進作用がある。IL-1 受容体アンタゴニストにはIL-1 の生理活性を抑制する作用があるので,この減少は免疫系の賦活を意味する。また,尿中8-oxo-2’-deoxyguanosine は酸化的DNA 障害の指標であり,この値の減少は免疫系の賦活とともにがん予防に関連があると考えられる。

上記の文献では短期間の運動の効果が示されているが,大腸がんにおける生存率の調査においては,活動性が低い群で生存率が低いことが示されており4, 5),運動習慣を継続することがよいと考えられる。

文献

1) Na YM, Kim MY, Kim YK, Ha YR, Yoon DS. Exercise therapy effect on natural killer cell cytotoxic activity in stomach cancer patients after curative surgery. Arch Phys Med Rehab 2000; 81: 777-9.(Ⅰb)

2) Allgayer H, Nicolaus S, Schreiber S. Decreased interleukin-1 receptor antagonist response following moderate exercise in patients with colorectal carcinoma after primary treatment. Cancer Detect Prev 2004; 28: 208-13.(Ⅰb)

3) Allgayer H, Owen RW, Nair J, Spiegelhalder B, Streit J, Reichel C, et al. Short-term moderate exercise programs reduce oxidative DNA damage as determined by high-performance liquid chromatography-electrospray ionization-mass spectrometry in patients with colorectal carcinoma following primary treatment. Scand J Gastroinenterol 2008; 43: 971-8.(Ⅰb)

付記文献

4) Allgayer H, Owen RW, Nair J, Spiegelhalder B, Streit J, Reichel C, et al. Physical activity and survival after colorectal cancer diagnosis. J Clin Oncol 2006; 24: 3527-34.

5) Meyerhardt JA, Heseltine D, Niedzwiecki D, Hollis D, Saltz LB, Mayer RJ, et al. Impact of physical activity on cancer recurrence and survival in patients with stage Ⅲ colon cancer: findings from CALGB 89803. J Clin Oncol 2006; 24: 3535-41.


CQ 09

前立腺がんで放射線療法や内分泌療法を施行中の患者に対して,運動療法を行うと,行わない場合に比べて運動機能やQOL が向上するか?

推奨グレード
A

筋力・持久力・柔軟性・QOL の向上や倦怠感の緩和のために,放射線療法や内分泌療法を施行されている前立腺がん患者に運動療法を行うことが強く勧められる。


エビデンス

前立腺がんに対する内分泌療法では,倦怠感,抑うつ,骨粗鬆症などの有害事象によってQOL の低下が出現しうる。また,放射線療法でも倦怠感の副作用によってQOL が低下する可能性がある。有酸素運動や抵抗運動といった運動療法は,筋力(Ⅰb)1-3)(Ⅱb)4)・持久力(Ⅰb)1-3, 5, 6)(Ⅱb)4, 7)・QOL(Ⅰb)1-3, 6)(Ⅱb)7)・柔軟性(Ⅰb)3)・活動性(Ⅱb)7)(Ⅰb)8)の向上,倦怠感の緩和(Ⅰb)1, 3, 5, 6)(Ⅱb)7),中性脂肪値の改善(Ⅰb)1),除脂肪体重の増加(Ⅰb)2)に効果があると報告されている。

文献

1) Segal RJ, Reid RD, Courneya KS, Sigal RJ, Kenny GP, Prud’ Homme DG,et al. Randomized controlled trial of resistance or aerobic exercise in men receiving radiation therapy for prostate cancer. J Clin Oncol 2009; 27: 344-51.(Ⅰb)

2) Galvao DA, Taaff e DR, Spry N, Joseph D, Newton RU. Combined resistance and aerobic exercise program reverses muscle loss in men undergoing androgen suppression therapy for prostate cancer without bone metastases: a randomized controlled trial. J Clin Oncol 2010; 28: 340-7.(Ⅰb)

3) Monga U, Garber SL, Thornby J, Vallbona C, Kerrigan AJ, Monga TN, et al. Exercise prevents fatigue and improves quality of life in prostate cancer patients undergoing radiotherapy. Arch Phys Med Rehabil 2007; 88: 1416-22.(Ⅰb)

4) Galvao DA, Nosaka K, Taaff e DR, Spry N, Kristjanson LJ, McGuigan MR, et al. Resistance training and reduction of treatment side effects in prostate cancer patients. Med Sci Sports Exerc 2006; 38: 2045-52.(Ⅱb)

5) Windsor PM, Nicol KF, Potter J. A randomized,controlled trial of aerobic exercise for treatment-related fatigue in men receiving radical external beam radiotherapy for localized prostate carcinoma. Cancer 2004; 101: 550-7.(Ⅰb)

6) Segal RJ, Reid RD, Courneya KS, Malone SC, Parliament MB, Scott CG,et al. Resistance exercise in men receiving androgen deprivation therapy for prostate cancer. J Clin Oncol 2003; 21: 1653-9.(Ⅰb)

7) Culos-Reed SN, Robinson JL, Lau H, O’Connor K, Keats MR. Benefits of a physical activity intervention for men with prostate cancer. J Sport Exerc Psychol 2007; 29: 118-27.(Ⅱb)

8) Culos-Reed SN, Robinson JW, Lau H, Stephenson L, Keats M, Norris S, et al. Physical activity for men receiving androgen deprivation therapy for prostate cancer: benefits from a 16-week intervention. Support Care Cancer 2010; 18: 591-9.(Ⅰb)


CQ 10

前立腺がんで手術を施行された患者に対して,骨盤底筋体操を行うと,行わない場合に比べて尿失禁を改善することができるか?

推奨グレード
A

前立腺全摘出術後の患者に骨盤底筋体操を行うと尿失禁を抑制するので,行うことが強く勧められる。


エビデンス

前立腺全摘出術後の尿失禁の抑制に対する骨盤底筋体操の有効性については諸家により報告されており,骨盤底筋体操によって尿失禁を有する患者の率が減少した(Ⅰb)1, 2),尿失禁が続く期間が短縮した(Ⅰb)3)ことが示されている。そして,理学療法士による定期的な指導を加えることがさらに尿失禁を減らす効果を増すと報告されている(Ⅰb)4)

バイオフィードバックの併用に関しては,直腸内圧によるバイオフィードバックを併用した骨盤底筋体操によって,非介入群と比べて尿失禁が続く期間や重症の尿失禁の割合を減らすとする報告(Ⅰb)5)もあるが,筋電図バイオフィードバックを用いた訓練と口頭での指導の効果は同等としている報告もある(Ⅰb)6)

付記

骨盤底筋訓練の適応・方法:

骨盤底筋訓練は尿失禁の対策として知られている方法でKegel 体操とも呼ばれる。尿失禁の中でも腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁がおもな適応である。尿道・肛門・腟を随意的に締めるよう筋収縮を促し筋力増強を図るが,患者自身が随意的な収縮を意識しにくい場合には筋電図,腟内圧,直腸内圧などによるバイオフィードバックを用いることもある。TypeT線維とTypeⅡ線維の両者の強化のため,持続的な筋収縮と瞬発的な筋収縮を組み合わせて指導されることが多い。

文献

1) van Kampen M, de Weerdt W, van Poppel H, de Ridder D, Feys H, Baert L. Effect of pelvic-floor re-education on duration and degree of incontinence after radical prostatectomy: a randomised controlled trial. Lancet 2000; 355: 98-102.(Ⅰb)

2) Manassero F, Traversi C, Ales V, Pistolesi D, Panicucci E, Valent F, et al. Contribution of early intensive prolonged pelvic floor exercises on urinary continence recovery after bladder neck-sparing radical prostatectomy: results of a prospective controlled randomized trial. Neurourol Urodyn 2007; 26: 985-9.(Ⅰb)

3) Filocamo MT, li Marzi V, del Popolo G, Cecconi F, Marzocco M, Tosto A, et al. Effectiveness of early pelvic floor rehabilitation treatment for post-prostatectomy incontinence. Eur Urol 2005; 48: 734-8.(Ⅰb)

4) Overgard M, Angelsen A, Lydersen S, Morkved S. Does physiotherapist-guided pelvic floor muscle training reduce urinary incontinence after radical prostatectomy? A randomised controlled trial. Eur Urol 2008; 54: 438-48.(Ⅰb)

5) Burgio KL, Goode PS, Urban DA, Umlauf MG, Locher JL, Bueschen A, et al. Preoperative biofeedback assisted behavioral training to decrease post-prostatectomy incontinence: a randomized, controlled trial. J Urol 2006; 175: 196-201.(Ⅰb)

6) Floratos DL, Sonke GS, Rapidou CA, Alivizatos GJ, Deliveliotis C, Constantinides CA, et al. Biofeedback versus verbal feedback as learning tools for pelvic muscle exercises in the early management of urinary incontinence after radical prostatectomy. BJU Int 2002; 89: 714-9.(Ⅰb)


第3 章
舌がん,口腔がん,咽頭がん,喉頭がんと診断され,治療が行われる予定の患者または行われた患者

CQ 01

頭頸部がん領域の発話明瞭度,摂食・嚥下障害,副神経麻痺による機能障害・ADL,およびQOL について,系統的な評価を行うことは必要か?

推奨グレード
B

頭頸部がん領域の評価法は独自性のあるものは多くはないが,適切な評価を行いながらリハビリテーションを行うことが勧められる。


エビデンス

舌がん術後の発話明瞭度や音節の評価として,100 音節明瞭度テスト(Ⅲ)1),単語明瞭度検査,25 単音節明瞭度検査,スクリーニングとしての一定の会話や文の音読から5 段階で発話明瞭度を評価する方法(Ⅲ)2)などが使用されている。

摂食・嚥下障害の評価としては,スクリーニングとしてのRepetitive Saliva Swallowing Test(RSST)やModified Water Swallowing Test(MWST)(3)3),客観的評価としてのMTF (Method,Time,Food)スコア(Ⅳ)4),経過評価や治療プログラム作成のための嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing;VF)および嚥下内視鏡検査(videoenoscopic examination of swallowing;VE)(Ⅱb)5, 6)(Ⅲ)7-11)(Ⅳ)12, 13)が一般的であり,シンチグラフィー(3)14, 15)を用いる施設もある。

頸部郭清術後の副神経麻痺による肩関節機能障害に関しては,一般的な関節可動域や筋力の評価に加えて, 肩の疼痛をVisual Analog Scale(VAS)(Ⅲ)16) やShoulder Disability Questionnaire(SDQ)(Ⅲ)17)およびその他の質問紙表(Ⅲ)18),抑うつ状態をCentre for Epidemiological Studies Depression scale (CES-D)(Ⅲ)16),上肢全般の日常生活動作(activities of daily living;ADL)をDASH 質問紙表(the Disability of Arm,Shoulder and Hand)(Ⅲ)19)で評価している報告がある。

生活の質(quality of life;QOL)測定尺度としては,RANd-36(Ⅲ)16),EORTC QLQ-C30 H & N35(3)20)(Ⅲ)21),SF-36 V2(Ⅲ)21),Sickness Impact Profile(SIP)& Hospital Anxiety and Depression(HAD)(Ⅲ)22)が用いられている。

文献

1) 横尾聡.口腔癌広範切除症例に対する嚥下機能再建の意義.日本口腔科学会雑誌 2008; 57: 1-18.(Ⅲ)

2) 松本浩一,篠崎泰久,土屋欣之,星健太郎,伊藤弘人,野口忠秀他.口腔癌に対する機能温存手術と術後の口腔機能検査およびリハビリテーション.自治医科大学医学部紀要 2004; 27: 183-97.(Ⅲ)

3) 渡邉哲,大重日出男,宮地斉,荒木一将,小林純子,大岩伊知郎他.口腔癌術後嚥下障害のスクリーニング法について.頭頸部癌 2006; 32: 34-9.(3)

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8) 千年俊一,濱川幸世,前田明輝,梅野博仁,中島格.中咽頭癌切除再建術後の機能代償に関する研究.日本気管食道科学会会報 2010; 61: 1-7.(Ⅲ)

9) Dejonckere PH, Hordijk GJ. Prognostic factors for swallowing after treatment of head and neck cancer. Clin Otolaryngol Allied Sci 1998; 23: 218-23.(Ⅲ)

10) Bleier BS, Levine MS, Mick R, Rubesin SE, Sack SZ, McKinney K, et al. Dysphagia after chemoradiation: analysis by modified barium swallow. Ann Otol Rhinol Laryngol 2007; 116: 837-41.(Ⅲ)

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12) Logemann JA. Swallowing and communication rehabilitation. Semin Oncol Nurs 1989; 5: 205-12.(Ⅳ)

13) Dejonckere PH. Functional swallowing therapy after treatment for head and neck cancer can outcome be predicted? Rev Laryngol Otol Rhinol(Bord) 1998; 119: 239-43.(Ⅳ)

14) Valenza V, Galli J, Romano L, Reale F, Samanes Gajate AM, Corina L, et al. Oropharyngoesophageal scintigraphy in the evaluation of swallowing disorders after surgery for oral cancer. Clin Nucl Med 2001; 26: 1054-7.(3)

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16) van Wilgen CP, Dijkstra PU, van der Laan BF, Plukker JT, Roodenburg JL. Shoulder and neck morbidity in quality of life after surgery for head and neck cancer. Head Neck 2004; 26: 839-44.(Ⅲ)

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19) Carr SD, Bowyer D, Cox G. Upper limb dysfunction following selective neck dissection: a retrospective questionnaire study. Head Neck 2009; 31: 789-92.(Ⅲ)

20) トート・ガーボル,佃守.頭頸部癌患者に対するEuropean Organisation for Research and Treatment of Cancer(EORTC) Quality of Life調査票の日本人Versionについて.癌と化学療法 2004; 31: 461-7.(3)

21) 金澤均,西村晃典,小林真紀,草野修輔,菅原洋子.頭頸部腫瘍術後の患者における退院後QOL. リハビリテーションネットワーク研究 2010; 8: 26-30.(Ⅲ)

22) Finizia C,Bergman B. Health-related quality of life in patients with laryngeal cancer: a post-treatment comparison of different modes of communication. Laryngoscope 2001; 111: 918-23.(Ⅲ)


CQ 02

頭頸部がん手術後の摂食・嚥下障害に対して,嚥下造影検査および嚥下内視鏡検査による評価を行うことは,行わない場合に比べて,摂食・嚥下訓練を行ううえで有用か?

推奨グレード
B

頭頸部がん術後患者に対する嚥下造影検査および嚥下内視鏡検査は,摂食・嚥下障害を詳細に評価し,摂食・嚥下訓練を円滑に進めるうえで有用な検査であり,行うよう勧められる。


エビデンス

頭頸部がんにおいて切除および再建術を行った場合,治療後にどの程度の摂食嚥下機能を有するか,または誤嚥の有無を評価することは重要であり,嚥下造影検査(videofl uoroscopic examinationof swallowing;VF)および嚥下内視鏡検査(videoenoscopic examination of swallowing;VE)は摂食嚥下機能評価として積極的に用いられる。舌〜咽頭がん術後患者31 名を切除部位・範囲および再建方法にて10 グループに分けて,VF・VE を実施して嚥下の評価(早期咽頭流入,咽頭残留,気管への吸入など)を行った検討では,多少の程度の差はあるもののそれぞれ同じ21 名に気管への吸入を認めていた(Ⅲ)1)

上・側壁型中咽頭がん術後9 名に対して術後の摂食・嚥下機能評価としてVE を用いた報告では,嚥下時に認められる一時的な観察不能期の平均持続時間は手術群0.432 秒であり,対照群0.537 秒よりも短い傾向にあった。この観察不能期の持続時間の短縮は,嚥下時の不完全な咽頭収縮や喉頭挙上障害を示唆し,嚥下圧減少などによる障害を引き起こすと考えられるが,今回はこの持続時間0.3 秒以下の症例が3 例あり,咽頭残留を認めた(Ⅲ)2)。中咽頭がん再建術(喉頭温存)後52 名の機能代償の評価として,VF を用いて嚥下時の後壁運動率を算出したところ,術後2 週間-1 カ月よりも術後3-6 カ月の方が後壁運動率は高くなり,残存組織の機能代償は術後3 カ月過ぎに顕著になる傾向が判明した(Ⅲ)3)。頭頸部がんの手術後から1 週間経過した時点で中等度〜重度の摂食・嚥下障害が遷延した症例32 名に対し,摂食・嚥下訓練を行ったところ,24 名(75%)に改善を認めたが,この帰結に統計学的に関与した要因は,術前のステージ,年齢,訓練開始時期とVF での口腔相・咽頭相の通過時間,嚥下反射惹起・喉頭蓋閉鎖時間であり,VF 評価は口腔咽頭における摂食・嚥下障害,誤嚥の予後評価に貢献した(2b)4)。喉頭がん術後に摂食・嚥下障害を認める35 名にVF を行ったところ,咽頭後壁の厚みが健常人の2 倍になっていた。VF はその形態学的改善を経時的に評価できる有効な検査であった(Ⅳ)5)

付記

嚥下機能評価:

頭頸部がん治療後にVF・VE によって摂食・嚥下障害を評価した報告は散見され,VF・VE 未施行群よりも摂食・嚥下障害に関する情報や治療方針をより明確に得ることができる点から重要な検査であるとはいえる。しかし,施行群の方が未施行群と比較して,摂食・嚥下訓練期間が短縮される,早期に経口摂取が可能となる,経鼻胃管使用期間が短縮される,などの帰結には至っていないので今後の課題である。

文献

1) Caliceti U, Tesei F, Scaramuzzino G, Sciarretta V, Brusori S, Ceroni AR. Videofluoroscopy and videoendoscopy in evaluation of swallowing function in 31 patients submitted to surgery for advanced buccopharyngeal carcinoma. Acta Otorhinolaryngol Ital 2004; 24: 211-8.(Ⅲ)

2) 杉本良介,大上研二,濱野巨秀,酒井昭博,飯田政弘,西山耕一郎.上・側壁型中咽頭癌に対する術後機能評価.頭頸部癌 2009; 35: 21-4.(Ⅲ)

3) 千年俊一,濱川幸世,前田明輝,梅野博仁,中島格.中咽頭癌切除再建術後の機能代償に関する研究. 日本気管食道科学会会報 2010; 61: 1-7.(Ⅲ)

4) Denk DM, Swoboda H, Schima W, Eibenberger K. Prognostic factors for swallowing rehabilitation following head and neck cancer surgery. Acta Otolaryngol 1997; 117: 769-74.(2b)

5) Hannig CE, Wuttge-Hannig AC, Clasen B, Kellermann SL, Volkmer CK. Dysphagia of the treated laryngeal cancer ─ detection of functional and morphological changes by cineradiography. Bildgebung 1991; 58: 141-5.(Ⅳ)


CQ 03

舌がん・口腔がん術後の摂食・嚥下障害に対して,摂食・嚥下訓練を行うと,行わない場合に比べて,経口摂取が可能となる時期が早くなるか?

推奨グレード
B

舌がんおよび口腔がんの患者の手術後に生じる摂食・嚥下障害に対する口腔機能および嚥下機能の評価,摂食・嚥下訓練,代償手段の指導は,経口摂取が可能となる時期が早くなるので行うことが勧められる。


エビデンス

舌がんの手術は腫瘍の大きさや部位によって術式が選択され,舌部分切除術,舌半側切除術,舌(亜)全摘出術に分類される。特に舌(亜)全摘出術では術後の口腔機能障害,舌運動障害による摂食・嚥下障害,構音障害が生じ,QOL が低下する。

経鼻内視鏡を無麻酔下に喉頭蓋に挿入された状態で食材を嚥下し,その動態をモニター画面で残留や誤嚥を評価しながら最適な嚥下方法を学習するバイオフィードバック訓練(入院中:週5 回,外来通院中:週2-3 回・1 回45 分)を一般的な摂食・嚥下訓練(口腔器官運動,メンデルゾーン手技,姿勢調整)に併用した舌・咽頭術後患者群19 名と一般的な摂食・嚥下訓練のみを行った同術後患者群14 名との比較検討では,訓練開始40 日目の時点ではバイオフィードバック訓練併用群の方が嚥下獲得成功率は高く,80 日目までは成功率の差を認めたが,それ以降はその差はなくなったため,この方法を訓練開始後40 日間に用いることで嚥下獲得成功率を上げ,リハビリテーション期間が短縮された(Ⅱa)1)

舌がんおよび口腔がん患者64 名を含む82 名の頭頸部がん術後患者の嚥下機能をVF で評価,摂食・嚥下訓練(口腔器官運動,息こらえ嚥下訓練,頸部の姿勢調整,メンデルゾーン手技,食材形態調整)を実施した経過を後方視的に調査したところ,咽頭期に重度の問題点のある9 名を除いた患者群の,VF における摂食・嚥下の問題点(口腔移送,誤嚥)の改善を認めた(Ⅲ)2)

舌亜全摘出以上の切除患者7 名に対し,集学的嚥下機能回復治療(術前呼吸機能訓練,遊離腹直筋皮弁を用いた再建術の実施,術後舌接触補助床装着構音訓練)を行った報告では,気管カニューレ抜去は平均約12 日,抜去からほぼ10 日前後で直接的嚥下訓練の開始が可能であり,最終的に全例五分粥以上の食事形態の経口摂取が可能となった(Ⅲ)3)

付記

摂食・嚥下障害の発生率:

舌がんおよび口腔がんの術後に顕在化する摂食・嚥下障害は,一般的には腫瘍の切除範囲に左右され,13 名の口腔がん術後患者を2 群に分けた検討では4 分の1 以上切除した群の方が摂食・嚥下障害は遷延した4)

43 施設への共同アンケート調査によると舌がん256 名,口腔底がん535 名を含む口腔・咽頭の扁平上皮がん患者1,334 名のアンケート回答(術後からの平均期間43.6 カ月)では,発話障害851 名(63.8%),摂食・嚥下障害1,006 名(75.4%),と高い障害発生率を認めた5)。一方,3 施設の頭頸部がん患者治療開始後1 年間のQOL アンケート調査(EORTC QLQ-C30 およびQLQ-H & N35)では,手術を含むさまざまな治療によりQOL スコアは悪化していた6)

さらに舌がん・口腔底がんの障害発生率は,放射線療法併用・複合手術(下顎,舌,頸部郭清),進行した病期のがんの場合はより高くなるので,さらなる注意が必要である。

口腔機能の評価:

舌がんおよび口腔がんの術後患者にリハビリテーションを行うにあたり,口腔機能評価を適切に行うことが重要であり,さらに摂食嚥下機能については患者自身の主観的評価に加え,反復唾液嚥下テスト,水飲みテスト,頸部聴診法,VF,VE,シンチグラフィー検査などの客観的評価7-9)が実施され,その結果に基づいた適切な訓練方法が選択される。

気管カニューレ抜去時期:

舌がんおよび口腔がん術後に通常挿入される気管カニューレは嚥下時の喉頭挙上を制限し,嚥下にとって不利な要因になると一般にいわれる。しかし,一方では,気管カニューレの有無にかかわらず術後早期には誤嚥は生じるので,気管カニューレ抜去をすることで即時に嚥下機能が改善されるとはいえないという報告10)がある。また気管カニューレ抜去後の嚥下機能の回復に関しては,気管切開孔の自然閉鎖を数日かけて待つのではなく,気管切開孔を早期に外科的に縫合閉鎖すると,より早く安全に摂食嚥下を再獲得でき,早期に退院できたという報告11)がある。

PAP 装着の効果:

口腔期では,舌は口蓋に接し,陽圧をかけて食塊を咽頭に送り込むが,術後に舌の容積が足りない場合は,舌は口蓋に届かず嚥下困難になる。この場合は舌接触補助床(palatal augmentation prosthesis;PAP)を装着すると,口蓋に厚みが生じ,舌と口蓋が接触し,嚥下が容易になる。舌・口底・下顎歯肉がんの術後1-2 週間後に直接的嚥下訓練ができなかった患者に対してPAP 装着訓練を行う施設において,術後状態がPAP 使用訓練の有無に関連するか否かを後方視的に調査した報告では,PAP 装着群に筋皮弁使用例,両側頸部郭清例が多く,非装着群に縫縮・片側頸部郭清が多かった12)。PAP 装着と嚥下機能の関連性について超音波装置を用いて検討したところ,PAP 装着時の方が舌と口蓋の接触時間は短くなり,術後の嚥下に関する舌運動を補助しているという報告13)がある。PAP 装着は舌・口腔底・下顎切除後の舌運動障害に起因する摂食・嚥下障害の機能回復に有効とされ,PAP 装着による摂食・嚥下障害改善の経験の報告は散見されるが,PAP 装着と摂食・嚥下訓練の関連性や摂食・嚥下機能の回復に関するエビデンスは十分ではない。

口腔ケア:

術後の経口摂取やリハビリテーションを効果的に実施するうえで,術後有害事象の予防につながる口腔ケアの重要性が指摘されている。術前術後の口腔ケア介入プログラムが舌・口腔・下咽頭などの頭頸部がん再建手術後の肺炎を含む術後有害事象の発生リスクを軽減したという介入比較研究報告14)があり,今後は医科─歯科連携を含めた多職種チーム医療の重要性が高まることも期待される。

その他のアプローチ:

舌がん・口腔がんにおいて術前呼吸訓練や術直後からの栄養管理の重要性を示した報告15)はあるが,摂食・嚥下障害回復までに必要な訓練内容,訓練量,訓練期間の提示あるいは訓練の有無による比較検討研究はない。

文献

1) Denk DM, Kaider A. Videoendoscopic biofeedback: a simple method to improve the efficacy of swallowing rehabilitation of patients after head and neck surgery. ORL J Otorhinolaryngol Relat Spec 1997; 59: 100-5.(Ⅱa)

2) Dejonckere PH, Hordijk GJ. Prognostic factors for swallowing after treatment of head and neck cancer. Clin Otolaryngol Allied Sci 1998; 23: 218-23.(Ⅲ)

3) 横尾聡.口腔癌広範切除症例に対する嚥下機能再建の意義.日本口腔科学会雑誌 2008; 57: 1-18. (Ⅲ)

付記文献

4) Zuydam AC, Rogers SN, Brown JS, Vaughan ED, Magennis P. Swallowing rehabilitation after oro-pharyngeal resection for squamous cell carcinoma. Br J Oral Maxillofac Surg 2000; 38: 513-8.

5) Suarez-Cunqueiro MM, Schramm A, Schoen R, Seoane-Leston J, Otero-Cepeda XL, Bormann KH, et al. Speech and swallowing impairment after treatment for oral and oropharyngeal cancer. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 2008; 134: 1299-304.

6) Bjordal K, Ahlner-Elmqvist M, Hammerlid E, Boysen M, Evensen JF, Biorklund A, et al. A prospective study of quality of life in head and neck cancer patients. Part Ⅱ: Longitudinal data. Laryngoscope 2001; 111: 1440-52.

7) 松本浩一,篠崎泰久,土屋欣之,星健太郎,伊藤弘人,野口忠秀他.口腔癌に対する機能温存手術と術後の口腔機能検査およびリハビリテーション.自治医科大学医学部紀要 2004; 27: 183-97.

8) 難波亜紀子,山下夕香里,高橋浩二,道脇幸博,根本敏行,横山美加他.口腔癌術後患者への系統的嚥下訓練法の適用経験.日本口腔科学会雑誌 2001; 50: 122-9.

9) Muz J, Hamlet S, Mathog R, Farris R. Scintigraphic assessment of aspiration in head and neck cancer patients with tracheostomy. Head Neck 1994; 16: 17-20.

10) Leder SB, Joe JK, Ross DA, Coelho DH, Mendes J. Presence of a tracheotomy tube and aspiration status in early, postsurgical head and neck cancer patients. Head Neck 2005; 27: 757-61.

11) Brookes JT, Seikaly H, Diamond C, Mechor B, Harris JR. Prospective randomized trial comparing the effect of early suturing of tracheostomy sites on postoperative patient swallowing and rehabilitation. J Otolaryngol 2006; 35: 77-82.

12) 関谷秀樹,濱田良樹,園山智生,福井暁子,川口浩司,瀬戸ケ一他.口腔悪性腫瘍術後の摂食嚥下障害に対する舌接触補助床を用いた機能回復法の有効性の検討(第1 報) 舌接触補助床使用群と非使用群の術後状態における比較. 顎顔面補綴 2009; 32: 100-5.

13) Okayama H, Tamura F, Kikutani T, Kayanaka H, Katagiri H, Nishiwaki K. Effects of a palatal augmentation prosthesis on lingual function in postoperative patients with oral cancer: coronal section analysis by ultrasonography. Odontology 2008; 96: 26-31.

14) 大田洋二郎.口腔ケア介入は頭頸部進行癌における再建手術の術後合併症率を減少させる 静岡県立静岡がんセンターにおける挑戦.歯界展望 2005; 106: 766-72.

15) Groher ME. Dysphagia. Management: general principles and guidelines. Dysphagia 1991; 6: 67-70.


CQ 04

咽頭がん術後の摂食・嚥下障害に対して摂食・嚥下訓練を行うと,行わない場合に比べて,経口摂取が可能となる時期が早くなるか?

推奨グレード
C1

咽頭がん患者に喉頭を温存する手術を行った場合の摂食・嚥下訓練は,経口摂取可能となる時期を早めるため,行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠はない。


エビデンス

中咽頭前壁がんに対し,喉頭は温存するものの舌根部を含む広範囲の中咽頭切除および組織移植を行った場合は,誤嚥や鼻腔への逆流などの摂食・嚥下障害が問題となるため経口摂取再獲得に向けた摂食・嚥下訓練が実施される。

口腔・咽頭・喉頭がん術後患者44 名に対し,頻回な空嚥下訓練,口腔器官筋力促通訓練(舌運動,咀嚼運動,口唇運動,口輪筋運動)などの間接的嚥下訓練および直接的嚥下訓練(食材形態調整,摂食時姿勢調整,スプーンなどの機材選択)を平均3 カ月間(3 週間-6 カ月)にわたり実施したところ,45%が経口摂取のみで栄養摂取可能となり,10%が経口摂取と経鼻胃管との併用での栄養摂取となった(Ⅲ)1)。中咽頭がん手術後の放射線療法併用患者17 名に対し,言語聴覚士が間接的摂食・嚥下訓練(下顎の引き方に代表される姿勢調整,咽頭への感覚入力,息こらえ嚥下,口腔器官の可動域訓練)を行ったところ,6 名(35%)に摂食・嚥下障害の改善を嚥下造影検査上で認めた(Ⅲ)2)

付記

下咽頭がんに対する手術方法と術後の特徴・訓練内容:

下咽頭がんに対する手術は,①喉頭を温存する下咽頭部分切除術とA喉頭を全部合併切除する下咽頭喉頭頸部食道摘出術(以下,咽喉食摘)に大きく分けられ,喉頭を温存するか否かにより,術後嚥下障害のタイプが大きく異なる3)

腫瘍が下咽頭にとどまっているか,喉頭へ広がっていても程度が軽い場合には前者の①下咽頭部分切除術が用いられる。術後の摂食・嚥下障害に対する訓練に関する報告が散見され,その内容としては,間接的嚥下訓練(口腔器官の可動域訓練,筋力増強訓練,Shaker 法,息こらえ嚥下,メンデルゾーン手技,頸部ストレッチング),直接的嚥下訓練(姿勢,食形態,一口量の調整,嚥下方法など),歯科補綴装置の必要性が紹介されている4)。また術後に生じる摂食・嚥下障害を予測して,術前からリハビリテーションを開始しておいた方が術後のリハビリテーション開始が迅速に進むといわれているが,術前介入の時期,訓練担当職種,訓練時間などについては明らかなエビデンスはない。一般的には再建手術を行うことで術後の摂食・嚥下障害を軽減することができるといわれるが,術後の誤嚥の克服が困難あるいは長期化と予想される場合には喉頭摘出の必要性まで考慮する必要がある5)

一方,進行がんでは,喉頭全部と下咽頭と頸部食道までの切除となる後者の②咽喉食摘が用いられることが多い。永久気管孔が造設され,食道は代表的な再建方法である遊離空腸移植と呼ばれる方法にて再建される。気管と食道は完全に分離され経口摂取で誤嚥の危険性がないためか,喉頭摘出術後の系統的な摂食・嚥下訓練の効果に関する報告は認めない。

文献

1) Aguilar NV, Olson ML, Shedd DP. Rehabilitation of deglutition problems in patients with head and neck cancer. Am J Surg 1979; 138: 501-7.(Ⅲ)

2) Nguyen NP, Moltz CC, Frank C, Vos P, Smith HJ, Nguyen PD, et al. Impact of swallowing therapy on aspiration rate following treatment for locally advanced head and neck cancer. Oral Oncol 2007; 43: 352-7.(Ⅲ)

付記文献

3) 赤羽誉,吉野邦俊,藤井隆.治療による機能喪失と対策 嚥下障害とその対策 下咽頭がん. 臨床腫瘍プラクティス 2006; 2: 294-6.

4) Mittal BB, Pauloski BR, Haraf DJ, Pelzer HJ, Argiris A, Vokes EE, et al. Swallowing dysfunction ─ preventative and rehabilitation strategies in patients with head-and-neck cancers treated with surgery, radiotherapy, and chemotherapy: a critical review. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2003; 57: 1219-30.

5) 藤井隆,吉野邦俊,上村裕和,赤羽誉,栗田智之,藤久仁親他.舌根部癌治療に際しての喉頭全摘. 頭頸部外科 2004; 14: 99-103.


CQ 05

喉頭がん術後の嚥下障害に対して摂食・嚥下訓練を行うと,行わない場合に比べて,経口摂取が可能となる時期が早くなるか?

推奨グレード
B

喉頭がん術後,特に喉頭部分切除術後患者における術前からの摂食・嚥下訓練は,経口摂取が早くなるため,行うよう勧められる。


エビデンス

喉頭がんに対する術式としては,腫瘍の部位や大きさによって喉頭摘出術(以下,喉摘)と喉頭部分切除術が選択される。喉頭の前方に腫瘍が限局している例では発声機能を残すため,喉頭部分切除術が施行される。同手術では甲状軟骨を切り開き,声帯前方およびその周囲の組織を切除するが,声帯は温存されるので発声は可能である(Ⅲ)1)(Ⅳ)2)。また,喉頭がん術後患者の誤嚥の予防や治療のためには,嚥下再建術を行う外科医だけでなく,看護師・栄養士を含めたチームアプローチや摂食・嚥下訓練および栄養管理が重要である(Ⅳ)3)

喉頭部分切除術周術期の摂食・嚥下訓練(喉頭挙上,舌根部運動,喉頭閉鎖,メンデルゾーン手技)において,術後のみ摂食・嚥下訓練を行っていた25 名と術前後に摂食・嚥下訓練を行うようになった18 名を後方視的に比較検討した報告によると,言語聴覚士による発声訓練は術後7-9 日頃に開始され,摂食・嚥下訓練および舌運動訓練開始は術後10 日目であった。有効な嚥下再獲得までの日数は,術後のみ摂食・嚥下訓練を行った群の27.76 日に対し,術前後に摂食・嚥下訓練を行った群は16.38 日と有意に短く,経鼻胃管の使用期間が短縮された(Ⅱb)4)

付記

喉頭がんの手術方法と術後の障害の特徴・訓練内容:

喉摘後は気道と食道が分離され,永久気管孔が形成され音声が喪失された状態となるが,気道と食道はそれぞれ独立した別々の管となるため誤嚥の危険性はない。そのような機序のため,喉摘後の嚥下再獲得に関する摂食・嚥下訓練の効果に関する報告は明らかなものはない。

一方,代表的な喉頭部分切除術として喉頭垂直部分切除術や喉頭蓋や仮声帯上方の病変に適応される喉頭水平部分切除術がある。喉頭垂直部分切除術の場合,喉頭の挙上障害,気道内圧低下,気道開放による嚥下反射の鈍化による嚥下障害が生じるため摂食・嚥下訓練が必要となる。また最近では喉頭の約4 分の3 を摘出する喉頭亜全摘出術後の摂食・嚥下訓練の症例報告も認める5)。今後は術式の進歩によって,喉摘後患者よりも上述のような喉頭温存患者への摂食・嚥下訓練を実施する機会が増えてくる可能性がある。

文献

1) Levine PA, Debo RF, Reibel JF. Pearson near-total laryngectomy: a reproducible speaking shunt. Head Neck 1994; 16: 323-5.(Ⅲ)

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4) Cavalot AL, Ricci E, Schindler A, Roggero N, Albera R, Utari C, et al. The importance of preoperative swallowing therapy in subtotal laryngectomies. Otolaryngol Head Neck Surg 2009; 140: 822-5.(Ⅱb)

付記文献

5) 中山明仁,八尾和雄,西山耕一郎,永井浩巳,伊藤昭彦,横堀学他.喉頭癌に対するCricohyoidoepiglottopexy 後の嚥下機能の検討.日本耳鼻咽喉科学会会報 2002; 105: 8-13.


CQ 06

舌がん・口腔がん術後の構音障害に対して構音訓練を行うと,行わない場合に比べて,構音障害を改善することができるか?

推奨グレード
C1

舌がん・口腔がん術後の発声訓練・構音訓練は発話明瞭度の改善につながるので行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠はない。


エビデンス

舌全摘出術6 名,舌亜全摘出術9 名,舌部分切除術12 名の患者の術後の発話明瞭度(母音,音節,連続した母音─子音─母音,自発会話など)を点数化し,構音訓練(術後2-8 週間;平均5 週間で開始,3-6 カ月継続,舌運動訓練,音読訓練,会話訓練,録音による聴覚的フィードバック)の前後で比較したところ,舌部分切除術症例では訓練後の変化はなかったが,舌全摘出術・舌亜全摘出術後など舌切除範囲が広い症例では,発話明瞭度に改善を認めた(Ⅲ)1)。舌がん切除後は,残存舌の容量の減少や舌の可動性の低下を認めるが,術後症例36 名に比較的早期からPAP を装着し,3 カ月間使用した訓練の後の自発話の明瞭度の評価(母音の明瞭度,音節の正確さ,4 つのカテゴリーの文章朗読の明瞭さ,などの専門家による聞き取り評価)では,PAP 装着時の方がPAP 非装着時よりも,自発話の明瞭度は良好であった(Ⅲ)2)。口腔がん術後13 名に早期にPAP を装着させ構音訓練(/p/ や/b/ などの口唇音の発声訓練,舌尖を利用する/t/ の発声訓練,/k/ や/g/ などの奥舌音の発声訓練,術後1-6 カ月,1 日および1 週間の訓練量は不詳)を実施したところ,6 カ月の経過で100 音節明瞭度テストの結果が向上(70%以上の明瞭度の再獲得)した(Ⅲ)3)

付記

舌がん・口腔がん術後の障害・訓練内容:

舌および口腔底切除後・再建後患者の構音障害に対して,構音訓練・発声訓練を行うことは発話明瞭度の再獲得のために必要である4)。舌部分切除〜半切除までは会話に明らかな支障をきたさないが,舌亜全摘出(口部舌+舌根の全摘出)の場合は舌の可動性は制限され明瞭度は低くなる。残存舌は口唇外に挺舌することは困難なため,鏡を利用した視覚的なフィードバック訓練や舌根部の運動促通を行う。このように残存舌を利用して構音の再習得を図る。発話明瞭度のさらなる改善および嚥下再獲得に対しては,歯科補綴装置作製を行う。一般的に嚥下や構音に悪い癖がつく前の術後4-6 週以内に作製することが勧められている。PAP や軟口蓋挙上装置(palatal lifting prosthesis;PLP)を装着することで舌と口蓋が良好に接触するようになり,構音障害が改善する5, 6)

舌がんおよび口腔がんの術後構音訓練前後の比較により一定の成果の報告はあるが,構音訓練非施行群と比較し有意差を認めた研究はない。

文献

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付記文献

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CQ 07

咽頭・喉頭がん術後の喉頭全摘出術後の患者は代用音声の訓練を行えば,代用音声を獲得できるか?

推奨グレード
B

喉頭全摘出術後患者は,電気式人工喉頭,食道発声,シャント発声の代用音声訓練を行えば,音声を再獲得できるので行うよう勧められる。


エビデンス
  1. 電気式人工喉頭

    電気式人工喉頭は喉摘後に最も広く用いられている音声再建の方法であり,ネックタイプの電気式人工喉頭を頸部皮膚面に当て,ボタンスイッチを入れて一定の速度でブザー音を伝導させる基本的な方法で比較的速やかに習得可能である(Ⅳ)1)。欧米での166 名を対象とした2 年間の調査研究(Ⅱb)2)では,術後1 カ月の時点で他者と音声でのコミュニケーションを行っている患者129 名のうち109 名(85%)が電気式人工喉頭を使用し,シャント発声(2%)と比較して明らかに多かった。術後2 年経過後でも55%の患者が電気式人工喉頭でコミュニケーションを行っており,電気式人工喉頭は代用音声選択の第一選択肢であった。一方で,術後6 カ月以上経過した喉頭がん術後患者19 名へ質問紙調査を行い,QOL を評価した報告によると電気式人工喉頭のみで発声コミュニケーションを行っている5 名は,その音声がロボット様である,片手がふさがってしまうという理由から,シャント発声を用いている14 名と比較してQOL が低下していた(Ⅲ)3)

  2. 食道発声

    食道発声は口腔から上部食道へ空気を取り込み,それを口腔へ再流入させる際に発声する方法であるが,その習得は必ずしも容易ではない(Ⅳ)1)。欧米での2 年間の調査研究(Ⅱb)2)では,術後1 カ月の時点で他者と音声でのコミュニケーションを行っている患者129 名において,食道発声習得のための訓練の機会は他の代用音声習得の訓練の機会と同等に認めたが,術後1 カ月の時点での食道発声使用率は2%,術後2 年経過後でも6%であり,同時期の電気式人工喉頭使用率55%,シャント発声使用率31%よりも大きく下回っている。

    咽喉食摘後患者39 名について,その術式による食道発声訓練経過の差異を検討した報告(Ⅱb)4)では,術後から訓練開始までの日数の中央値は喉摘患者13.5 日・咽喉食摘患者37 日,術後4 カ月以上食道発声訓練(吸気注入法,1-4 回/月)を実施したうえでの食道発声習得までの期間は,喉摘患者約2-3 カ月・咽喉食摘患者約10-11 カ月であり,最終習得率は喉摘患者48%・咽喉食摘患者33%で,かつ咽喉食摘患者では食道発声使用率は16.7%と電気式人工喉頭使用率83.3%を大きく下回っていた。

  3. シャント発声

    喉摘後患者に対する気管食道瘻(TE-シャント)造設後のシャント発声は,基本的には術後約10 日で発声が可能(Ⅳ)5)となる。一般的に電気式人工喉頭・食道発声と比較して音声力学的に優れ,術後早期に音声コミュニケーションを習得でき,患者満足度も高い(Ⅳ)5)。15 名の喉摘後患者にシャント発声を行い,5-21 カ月の経過で観察調査した報告では,13 名が良好な音声を再獲得し,11 名がコミュニケーションに使用(2 名は食道発声を使用)していた(Ⅲ)6)。一期的に気管食道瘻造設した64 名の術後観察研究では,平均20 日目に音声訓練を開始し,3 カ月後に49 名(77%)がシャント発声を獲得していたが,9 カ月後にシャント発声を獲得していたのは43 名に減少していた(Ⅲ)7)

    シャント造設後に気管食道瘻に一方向弁になっているボイスプロステーシス(Blom-Singer ®:インターナショナルヘルスケア社,米国,Provox2 ®:アトスメディカル社,スウェーデン,Eska-Herrmann ®:エスカメディカル社,ドイツ,Groningen Voice Button ®:メディンインストゥルメンツ社,オランダ,など)を挿入する方法は,手技が比較的簡便であり,早期に音声再獲得できるため,欧米ではシャント発声の主流となっている(Ⅳ)8)。318 名の喉摘後に対してシャント造設後にボイスプロステーシス(Provox ®)を装着した追跡調査では,88%で良好な声質を再獲得し,ボイスプロステーシスの平均耐用日数は163 日であった(Ⅲ)9)。30 名の喉摘後患者に対してシャント造設後にボイスプロステーシス(Blom-Singer ®)を装着した1 年間の追跡調査では,疾病再発した5 名などを除く23 名(77%)が良好な音声を再獲得しており,その安全性と有効性が報告された(Ⅲ)10)。わが国でもボイスプロステーシスによる代用音声の報告がある。喉頭がん・下咽頭がんに対する喉摘後患者に対してシャント造設後にボイスプロステーシス(Provox2 ®)を装着した追跡調査(5 年間)では,32 名中29 名(90.6%)が音声を再獲得しており,これはシャント発声以外の代用音声習得を試みた喉摘後患者86 名の食道発声および電気式人工喉頭との代用音声習得率(62.8%)を上回っていた(Ⅱb)11)。さらに4 年間の症例を重ねた合計40 名の調査ではProvox2 ®による音声獲得率は92.3%と上昇した(Ⅱb)12)。ボイスプロステーシスの長期的な使用状況に関しては,音声再建術を行い6 カ月以上経過観察できた30 名のボイスプロステーシス装着者の追跡調査(10 年間)では,音声獲得率は90%と高い成績であったが,日常生活で会話に使用している症例の割合は66.7%とやや低下していた(Ⅲ)13)

付記

代用音声の種類と選択:

頭頸部がん全般において,治療後に生じるコミュニケーション障害に関して,治療前から評価・カウンセリングすることが重要だといわれている。その中には,正常発声機能の解説,頭頸部がん治療後に起こりうる一般的な言語障害・コミュニケーション障害の説明,術後コミュニケーションの再獲得方法の説明などが含まれる。その中でも最も問題となるのが,喉摘後の音声の喪失である。代用音声として,上述の電気式人工喉頭,食道発声,シャント発声が一般的に用いられる。大筋の流れとしては,術直後4-5 日目から電気式人工喉頭を用いて早期に新たな音声コミュニケーション能力を獲得する訓練を開始し,その後,創部が落ち着いたら食道発声の練習を開始する。シャント発声は,一期的もしくは二期的に外科的な音声再建術を受けて可能となる14)。代用音声の選択に関しては,手術手技,有害事象,長期管理上の問題,習得率や訓練期間,保険適応等を患者に説明のうえ,選択する。また原疾患の進行や治療計画,患者の社会的背景も十分考慮する必要がある。

人工喉頭:

人工喉頭には呼気を駆動力とするもの(笛式人工喉頭)と電気エネルギーを駆動力とするもの(電気式人工喉頭)があり,後者にはさらにネックタイプとマウスタイプがあるが,ネックタイプが主に使用される。電気式人工喉頭の使用に関しては術直後から言語聴覚士などが介入し,個人に合わせた電気式人工喉頭の提供を行うことが報告されている14)が,術後介入期間,コミュニケーション獲得率,など具体的なリハビリテーションの有効性に関する報告はない。また一般的に術後リハビリテーションのイメージのために術前に電気式人工喉頭の使用方法を説明する機会を作るが,この術前介入の術後リハビリテーションへの効果を検討した報告はない。

食道発声:

術後食道発声は,口腔から上部食道へ空気を取り込み,それを口腔へ再流入させる際に発声する方法であり14),習得率はおおむね6 割といわれている。食道発声は前述の人工喉頭と異なり,特別な器具を必要とせず,発声のために手を使う必要がないので両手が常にあいているという利点があるが,その習得には時間を要し,必ずしも容易ではなく,その間は電気式人工喉頭を用いたコミュニケーションを続けることになるが精神的ストレスも大きい14)。さらに喉摘後患者の食道発声訓練は患者会に委ねている場合が多く,リハビリテーションスタッフの介入による報告が少なく,習得基準なども確立されていないため,リハビリテーション効果としての有効なエビデンスの集積は難しい。一般的には喉摘後のコミュニケーション手段の確保のためには食道発声と電気式人工喉頭使用の訓練を並行して実施していく必要性があるといえる。

シャント発声:

シャント発声は気管食道瘻を用いる方法と,気管咽頭瘻を用いる方法がある。一般的には気管食道瘻に一方向弁になっているボイスプロステーシスを挿入する方法は,手技が比較的簡便で誤嚥が少ないという利点があると認識され,欧米ではシャント発声の主流となっており,わが国でも徐々に普及しつつある。さらにわが国では最近は気管咽頭瘻を気管粘膜でつくる天津法などが多く用いられる傾向にあり,実用的な発声が術後10-14 日で獲得できる15)

欧米では上述のような観察研究の他にも,ボイスプロステーシスの違い(Groningen Voice Button ®とBlom-Singer ®)による発話明瞭度の比較評価16),吸気時と発声時の音声空気力学の評価17),放射線療法の有無による音声再獲得の違い18)に関する研究報告があるが,ボイスプロステーシスの種類による耐用期間などの明確な調査は認めなかった。多くの論文ではリハビリテーションプログラムの提示はされておらず,発声,呼吸,嗅覚に関するリハビリテーション介入19)の報告が待たれる。一方,ボイスプロステーシスの問題点として,シャントおよび弁周囲の肉芽組織20),唾液漏出21),胃食道逆流22)の報告があり,シャント発声に関しては対象患者選択と慎重な長期観察が重要である。

文献

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付記文献

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CQ 08

頭頸部がん患者に対して頸部リンパ節郭清後に副神経麻痺(僧帽筋麻痺)が生じた場合にリハビリテーションを行うと,行わない場合に比べて,肩関節周囲の障害の改善につながるか?

推奨グレード
A

頸部リンパ節郭清術後の副神経麻痺に対する術後からのリハビリテーション介入は,肩関節周囲の疼痛・筋力・可動域を改善し,QOL を向上させるので行うよう強く勧められる。


エビデンス

頸部郭清術の術式は,根治的頸部郭清術,保存的頸部郭清術,選択的頸部郭清術に分けられる。手術の際に副神経が切除または損傷されると,術後に僧帽筋・胸鎖乳突筋の完全もしくは不全麻痺を呈し,安静時の肩甲骨の下垂・外側偏移,運動時の肩関節の挙上および頸部回旋の制限を認め,頸部や肩甲帯の痛みや不快感を生じる。

選択的頸部郭清術(副神経温存)を施行された148 名にDASH 質問紙表(the Disability of Arm,Shoulder and Hand)を用いて上肢機能障害を調査したところ,64 名から回答があり,副神経温存の術式で平均1.6 年経過した後であっても,軽度運動機能障害54%,中等度運動機能障害15%,重度運動機能障害8%であり,運動機能障害なしは23%であった(Ⅲ)1)

選択的頸部郭清後の患者60 名をリハビリテーション施行群(肩関節他動可動域訓練が主体:術後15-30 日で開始,入院中週3 回,退院後は外来で継続実施,平均97 日間)30 名と非施行群30 名に分けて観察した調査では,術後6 カ月では施行群の方が非施行群に比較して,有意に肩関節の自動・他動関節可動域や疼痛が改善し,仕事や余暇における活動性に優れていた(Ⅱa)2)

根治的頸部郭清術および保存的頸部郭清術後の患者52 名を無作為に,標準的な訓練群(肩甲帯および上肢筋群への自動・他動関節可動域訓練,ストレッチング:週3 回,3 カ月間)と漸増抵抗運動群(標準的訓練+ 10-15 回の筋力増強訓練:1 日2 セット・週3 回・3 カ月間,抵抗強度は最大筋力の25-35%の強度から開始し,終了時には60-70%の強度になるように漸増)の2 群に分けて,継続実施した研究では,漸増抵抗運動群は標準的な訓練群に比較して,上肢筋力・持久力,肩関節外転・外旋可動域,SPADI(Shoulder Pain and Disability Index)による自覚的な肩関節に関する痛みと障害度の評価において有意な改善を認めた(Ⅰb)3, 4)

国内では23 名の根治的頸部郭清術後患者に作業療法を行った報告があり,作業療法開始まで平均49 日,作業療法実施期間平均93 日の結果,疼痛と自動・他動関節可動域の改善を認め,ADL が自立した(Ⅲ)5)。また38 名の根治的頸部郭清術後患者を作業療法実施群29 名と非実施群9 名に分けた非ランダム化比較試験では,安静時・運動時の痛みの消失は不十分であったが,肩関節可動域(屈曲・外転)は作業療法実施群で有意に改善した(Ⅱa)6)。10 名の保存的頸部郭清術後患者に術後4-5 日目からリハビリテーションを開始し,術後2 カ月目の肩関節可動域(外転)評価では,7 名に僧帽筋麻痺残存(外転150°以下)を認めたが,6 カ月後には全例肩外転可動域は150°以上に改善し,ほぼ麻痺は回復した(Ⅲ)7)。7 名の保存的頸部郭清術後患者の12 日間の運動療法(筋力増強訓練+関節可動域訓練)前後での肩関節評価では,屈曲・外転筋力と他動外転可動域は改善していたが,疼痛・つっぱり感の改善には有意差はなかった(Ⅲ)8)

付記

頸部郭清術の種類と機能障害のメカニズム・発生率:

頭頸部がんの中でも特に下咽頭がんにおいては,その予後を左右する因子として頸部リンパ節転移の制御があり,臨床的に頸部リンパ節転移を有する症例に実施される頸部郭清術は重要な手術法である。頸部リンパ節は領域(level)別に6 群に分類され,郭清術の術式は①根治的頸部郭清術,②保存的頸部郭清術,③選択的頸部郭清術に分けられる。①では郭清はすべての領域であり,胸鎖乳突筋,副神経,内頸静脈が合併切除される(神経断裂)。②では①と同様に郭清はすべての領域であるが,胸鎖乳突筋,副神経,内頸静脈のうちひとつ以上は温存される。③では郭清される領域の一部が温存され,胸鎖乳突筋,副神経,内頸静脈も通常温存される。②③の術式の際に副神経は温存されるが,術中操作により①のような神経断裂には至らないものの副神経の損傷による神経軸索の障害を生じると考えられている。このような神経障害の結果として生じる僧帽筋の完全・不全麻痺(肩関節症状)の特徴は,安静時には肩甲骨は下垂・外側偏移し,運動時には肩関節の挙上制限がみられ,頸部や肩甲帯の痛みや不快感を訴えることも多い。

なお,一般的に①の方が②③よりも肩の症状の発生率は高く9),また放射線療法による肩関節機能障害の出現は手術群よりは少ない9, 10)。選択的頸部郭清術が施行された40 名におけるlevel Wまでの郭清群20 名とlevel Xまでの郭清群20 名との比較では,前者では筋力低下は認めなかったが,後者の20%に筋力低下を認めた11)。保存的頸部郭清術(level X含む)12 名・15 側と選択的頸部郭清術(level Ⅱ-Ⅳ)14 名・17 側を6 カ月後に調査した検討では,前者の方が肩の症状の発症率は有意に高く,肩関節可動域も狭小化していた12)。220 名の頸部郭清術症例のQOL 調査では,level Xもしくは両側level Ⅱ・Wを郭清した群のQOL が低下していた13)。このような肩関節機能障害は,二次的な抑うつ状態につながり,QOL 低下の重要な因子ともなる14)

副神経麻痺(僧帽筋麻痺)に対するアプローチ:

頸部郭清術後の肩関節の症状に対するリハビリテーションの重要性については多くの論文で述べられている15, 16)が,リハビリテーションを実際に施行し,効果を検討した介入研究はまだ少ない。報告により訓練開始時期や訓練期間が一定しておらず,今後の検討課題である。筋電図検査などによる神経障害(神経切断,軸索変性,脱髄)の程度の詳細評価と関連プログラムの確立も必要である。

なお,根治的頸部郭清術後にケーブル移植(大耳介神経使用による神経吻合術)を行うと肩関節機能障害を改善することができるという報告17, 18)もある。

文献

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17) Weisberger EC, Kincaid J, Riteris J. Cable grafting of the spinal accessory nerve after radical neck dissection. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 1998; 124: 377-80.

18) Weisberger EC, Lingeman RE. Cable grafting of the spinal accessory nerve for rehabilitation of shoulder function after radical neck dissection. Laryngoscope 1987; 97(8 Pt 1): 915-8.


CQ 09

頭頸部がん患者の放射線療法中・後に生じる摂食・嚥下障害に対して,嚥下造影検査による評価を行うことは,行わない場合に比べて有用か?

推奨グレード
B

頭頸部がん放射線療法中・後には嚥下障害を高率に認めるため,その嚥下障害に対する評価として嚥下造影検査を行うことが勧められる。


エビデンス

頭頸部がんに対して放射線療法が行われると,粘膜炎による疼痛や舌運動機能の低下,嚥下反射惹起遅延などによって摂食嚥下機能が低下し,経口摂取量が減少し,栄養障害につながる恐れがある。

放射線療法中の頭頸部がん患者9 名に対し,VF を実施し,健常人と比較したところ,7 名に舌根部後方運動や喉頭挙上運動の低下を認め,8 名に誤嚥の所見を認めた(Ⅱb)1)。また放射線療法後(平均22.7 カ月)の49 名の頭頸部がん患者にVF を実施したところ,96%に喉頭侵入の所見を認め,65%に誤嚥の所見を認めた(Ⅲ)2)。進行頭頸部がんで化学療法・放射線療法を受けた55 例中25 名は3 カ月以上の経管栄養を必要とする重度の嚥下障害を生じ,大部分の患者で治療中の体重減少を認め,8 名は誤嚥性肺炎を発症し,5 名が死亡した(Ⅲ)3)。放射線療法後1 年以上経過した咽頭がん71 名の嚥下機能評価をVF で行い,約72%に嚥下障害を認めた(Ⅲ)4)

付記

放射線療法と摂食・嚥下障害,訓練内容:

頭頸部がんの一般的な放射線療法では,1 日1 回3-5 分(2 グレイ)・週5 回・7 週間,合計35 回(70 グレイ)の治療が実施される。切除治療に比較して変形が少なく,音声嚥下機能も保たれることが多いことが放射線療法の利点である。一方で粘膜炎による疼痛や舌運動機能の低下,嚥下反射惹起遅延などによって摂食・嚥下機能が低下する。放射線療法中の頭頸部がん患者の嚥下障害の評価と安全な経口栄養摂取維持のために,VF は必要である。

放射線療法中・後のこのような嚥下障害に対するリハビリテーションプログラム(舌・舌床・口唇・喉頭の関節可動域訓練,舌・下顎・喉頭・口唇の筋力増強訓練,声門上嚥下,息こらえ嚥下,舌突出嚥下,メンデルゾーン手技)が報告されている5, 6)。しかしながら,放射線療法中・後に生じる嚥下障害に対し,摂食・嚥下訓練の有用性は考えられるものの,その効果を立証した明確な比較対照研究はない。

放射線療法中の栄養管理:

放射線療法中の栄養管理に関して経口摂取のみでの栄養状態が不十分であれば,経鼻胃管と胃瘻による管理方法があげられるが,治療後6 週間の時点での体重減少は経鼻胃管群の方が胃瘻群よりも有意に進み,四肢周径も同群の方がより小さくなっていたという報告7)などから,近年ではこのような化学放射線療法を含めた頭頸部がん治療への支持療法8)として原則的に経皮内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy;PEG)が実施されつつある9)。しかし,長期的視点から全例にPEG が必要であるかの詳細な検討はまだ十分とはいえず,症例毎の検討が今後重要である。

文献

1) Lazarus CL, Logemann JA, Pauloski BR, Colangelo LA, Kahrilas PJ, Mittal BB, et al. Swallowing disorders in head and neck cancer patients treated with radiotherapy and adjuvant chemotherapy. Laryngoscope 1996; 106(9 Pt 1): 1157-66.(Ⅱb)

2) Bleier BS, Levine MS, Mick R, Rubesin SE, Sack SZ, McKinney K, et al. Dysphagia after chemoradiation: analysis by modified barium swallow. Ann Otol Rhinol Laryngol 2007; 116: 837-41.(Ⅲ)

3) Nguyen NP, Moltz CC, Frank C, Vos P, Smith HJ, Karlsson U, et al. Dysphagia following chemoradiation for locally advanced head and neck cancer. Ann Oncol 2004; 15: 383-8.(Ⅲ)

4) Chang YC, Chen SY, Lui LT, Wang TG, Wang TC, Hsiao TY, et al. Dysphagia in patients with nasopharyngeal cancer after radiation therapy: a videofluoroscopic swallowing study. Dysphagia 2003; 18: 135-43.(Ⅲ)

付記文献

5) Mittal BB, Pauloski BR, Haraf DJ, Pelzer HJ, Argiris A, Vokes EE, et al. Swallowing dysfunction ─ preventative and rehabilitation strategies in patients with head-and-neck cancers treated with surgery, radiotherapy, and chemotherapy: a critical review. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2003; 57: 1219-30.

6) Logemann JA. Swallowing and communication rehabilitation. Semin Oncol Nurs 1989; 5: 205-12.

7) Nugent B, Lewis S, O’Sullivan JM. Enteral feeding methods for nutritional management in patients with head and neck cancers being treated with radiotherapy and/or chemotherapy. Cochrane Database Syst Rev 2010;(3): CD007904.

8) Raykher A, Correa L, Russo L, Brown P, Lee N, Pfister D, et al. The role of pretreatment percutaneous endoscopic gastrostomy in facilitating therapy of head and neck cancer and optimizing the body mass index of the obese patient. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2009; 33: 404-10.

9) 手島直則,谷本均,齋藤幹,大月直樹,佐々木良平,清田尚臣他.中咽頭癌同時併用化学放射線療法における経皮内視鏡的胃瘻造設術の有用性.頭頸部癌 2009; 35: 287-92.


CQ 10

頭頸部がん患者の放射線療法中に生じる可能性のある倦怠感や体力低下に対して,運動療法を行うことは,行わない場合に比べて,倦怠感を軽減することができるか?

推奨グレード
B

放射線療法中の頭頸部がん患者への全身運動プログラム提供は好ましい結果をもたらす可能性があり,行うよう勧められる。


エビデンス

頭頸部がん・胸部がん患者30 例に対し,5 週間の放射線療法を受ける際に,運動群(20 分間のウォーキング)15 例と非運動群15 例に分けて3 週間経過をみたところ,運動群の方が非運動群よりも運動耐容能は向上し,放射線療法における倦怠感は少なく,また運動群の倦怠感は放射線療法開始前よりも軽減した(Ⅱa)1)

付記

放射線療法期間中の運動療法:

化学療法・放射線療法中のがん患者では,倦怠感や運動能力の低下をきたすことが多いが,運動療法に関する報告は乳がんや前立腺がんなどの他のがん患者の報告に比較すると頭頸部がんの領域ではほとんど皆無である。頭頸部がんへの放射線療法中には口腔粘膜障害や嚥下障害,食欲低下,倦怠感が生じ,二次的な体力低下やADL 低下につながる。今回,文献は少ないものの,放射線療法中の頭頸部がん患者への有酸素運動は倦怠感の軽減という好ましい効果をもたらす可能性が示唆されたため,体力維持向上の面も併せて,運動療法が重要であるといえる。

文献

1) Aghili M,Farhan F, Rade M. A pilot study of the effects of programmed aerobic exercise on the severity of fatigue in cancer patients during external radiotherapy. Eur J Oncol Nurs 2007; 11: 179-82.(Ⅱa)


第4 章
乳がん,婦人科がんと診断され,治療が行われる予定の患者または行われた患者

CQ 01

乳がん術後の患者に対して肩関節可動域訓練などのリハビリテーションを行うことは,行わない場合に比べて患側上肢機能を改善させるか?

推奨グレード
A

生活指導および肩関節可動域訓練や上肢筋力増強訓練などの包括的リハビリテーションを実施することは,指導書を渡すのみ,もしくは家庭での自主練習のみを行う場合に比べて,患側肩関節可動域の改善,上肢機能の改善がみられるので,行うよう強く勧められる。


エビデンス

乳がん術後の患者においては,患側肩関節可動域が制限されやすく(Ⅰa)1),更衣や整容などの日常生活動作の制限となる(Ⅰb)2)。腋窩リンパ節郭清を伴う非定型的乳房切除術や乳房温存術後に一般的な生活指導のみを行った場合,術後約1 カ月後の患側肩関節可動域は,術前に比べて,屈曲方向に−30°(Ⅰb)3)から−40°(Ⅰb)4)程度,外転方向に−30°(Ⅰb)2)から−60°(Ⅰb)3)程度の制限がみられる。6 カ月後でも屈曲方向に−15°(Ⅰb)2)から−20°(Ⅰb)5),外転方向に−10°(Ⅰb)2)から−30°(Ⅰb)5)程度の制限が残るとされている。

手術後・入院中に,個別に,生活指導および自動・他動肩関節可動域訓練や上肢筋力増強訓練を含めた包括的リハビリテーションを実施することは,一般的な生活指導や指導書を渡したのみの場合に比べ,5-14 日後および3-6 カ月後の患側肩関節可動域と上肢機能を有意に改善させることが報告され(Ⅰb)2-7),メタアナリシスでも有効性が報告されている(Ⅰa)1)

個別のリハビリテーションの実施は,概ね入院中の10 日程度であるが,その後ホームプログラム指導・確認などのために,退院後6-8 週間程度リハビリテーションを継続することを勧めているものもある(Ⅰb)4-5)。個別のリハビリテーション以外にも,グループでの指導や3),ビデオなどで具体的な関節可動域訓練やストレッチングなどを指導することでも有効性が報告されている(Ⅰb)8)

付記

術式などによる上肢機能障害の頻度の違い:

近年はセンチネルリンパ節生検のみで腋窩リンパ節郭清を要しない例もあり,この場合は肩関節可動域制限をはじめとする上肢機能障害は起こらないか9),少ない10)とされる。しかし,手術例の70%程度では,腋窩リンパ節郭清が必要とされており11),術後の上肢機能障害は現在でも多くみられる有害事象である。

腋窩リンパ節郭清が同程度であったときには,乳房温存術の方が,非定型的乳房切除術に比して肩関節可動域や上肢機能は良好12)であるとされる。郭清した腋窩リンパ節の個数が多いほど肩関節可動域制限が起こりやすいとする報告もあるが,数は影響しない,もしくは切除数を減らしたために放射線療法の範囲が拡大するなどの要因で,より肩関節可動域に不利であったとする報告もある13)。胸壁・乳房への放射線照射は肩関節可動域に影響を与えないが,腋窩照射では肩関節可動域は著しく低下する14)

腋窩ウェブ症候群(axillary web syndrome;AWS):

腋窩リンパ節切除後,腋窩から上腕内側に皮下索状組織(cord)を生じるもので,疼痛を伴い,肩関節(特に外転方向)の可動域を制限する原因となる15)。腋窩リンパ節切除によりリンパ・静脈系の障害やうっ滞・凝固亢進状態が生じ,リンパ管内に血栓ができることが原因と考えられている。発症率は腋窩リンパ節切除後6 1)-72% 10)とされ,多くは術後8 週間以内の早期に生じ,2-3 カ月で自然に軽快する例が多いが,長期化する例や,晩発例もあることが報告されている。治療として,関節可動域訓練,ストレッチング,軟部組織のリリース(受動術)が有効であったとの報告がある16)が,それらの介入によってAWS の予後は変わらないという報告15)もある。

AWS は,まだ定義があいまいなこともあり,発症率は上記のように報告により大きな差があるが,比較的高頻度に生じる症候であり,症例によっては一過性でなく長期間にわたり疼痛や可動域制限などの症状を呈することから,医療者側の理解と,患者への情報提供が必要である。

文献

1) McNeely ML, Campbell K, Ospina M, Rowe BH, Dabbs K, Klassen TP, et al. Exercise interventions for upper-limb dysfunction due to breast cancer treatment. Cochrane Database Syst Rev 2010; (6): CD005211.(Ⅰa)

2) Box RC, Reul-Hirche HM, Bullock-Saxton JE, Furnival CM. Shoulder movement after breast cancer surgery: results of a randomised controlled study of postoperative physiotherapy. Breast Cancer Res Treat 2002; 75: 35-50.(Ⅰb)

3) de Rezende LF, Franco RL, de Rezende MF, Beletti PO, Morais SS, Gurgel MS. Two exercise schemes in postoperative breast cancer: comparison of effects on shoulder movement and lymphatic disturbance. Tumori 2006; 92: 55-61.(Ⅰb)

4) Cinar N, Seckin U, Keskin D, Bodur H, Bozkurt B, Cengiz O. The effectiveness of early rehabilitation in patients with modified radical mastectomy. Cancer Nurs 2008; 31: 160-5.(Ⅰb)

5) Beurskens CH, van Uden CJ, Strobbe LJ, Oostendorp RA, Wobbes T. The efficacy of physiotherapy upon shoulder function following axillary dissection in breast cancer, a randomized controlled study. BMC Cancer 2007; 7: 166.(Ⅰb)

6) Na YM, Lee JS, Park JS, Kang SW, Lee HD, Koo JY. Early rehabilitation program in postmastectomy patients: a prospective clinical trial. Yonsei Med J 1999; 40: 1-8.(Ⅰb)

7) Wingate L, Croghan I, Natarajan N, Michalek AM, Jordan C. Rehabilitation of the mastectomy patient: a randomized, blind, prospective study. Arch Phys Med Rehabil 1989; 70: 21-4.(Ⅰb)

8) Kilgour RD, Jones DH, Keyserlingk JR. Effectiveness of a self-administered, home-based exercise rehabilitation program for women following a modified radical mastectomy and axillary node dissection: a preliminary study. Breast Cancer Res Treat 2008; 109: 285-95.(Ⅰb)

付記文献

9) Langer S, Guenther JM, Haigh PI, Difronzo LA. Lymphatic Mapping Improves Staging and Reduces Morbidity in Women Undergoing Total Mastectomy for Breast Carcinoma. Am Surg 2004; 70: 881-5.

10) Leidenius M, Leppänen E, Krogerus L, von Smitten K. Motion restriction and axillary web syndrome after sentinel node biopsy and axillary clearance in breast cancer. Am J Surg 2003; 185: 127-30.

11) Springer BA, Levy E, McGarvey C, Pfalzer LA, Stout NL, Gerber LH, et al. Pre-operative assessment enables early diagnosis and recovery of shoulder function in patients with breast cancer. Breast Cancer Res Treat; 2010: 120: 135-47.

12) Gosselink R, Rouffaer L, Vanhelden P, Piot W, Troosters T, Christiaens MR. Recovery of Upper Limb Function After Axillary Dissection. J Surg Oncol 2003; 83: 204-11.

13) Nesvold IL, Dahl AA, Løkkevik E, Marit Mengshoel A, Fosså SD. Arm and shoulder morbidity in breast cancer patients after breast-conserving therapy versus mastectomy. Acta Oncol 2008; 47: 835-42.

14) van der Horst CM, Kenter JA, de Jong MT, Keeman JN. Shoulder function following early mobilization of the shoulder after mastectomy and axillary dissection. Neth J Surg 1985; 37: 105-8.

15) Moskovitz AH, Anderson BO, Yeung RS, Byrd DR, Lawton TJ, Moe RE. Axillary web sundrome after axillary dissection. Am J Surg 2001; 8: 434-9.

16) Fourie WJ, Robb KA. Physiotherapy management of axillary web syndrome following breast cancer treatment: Discussing the use of soft tissue techniques. Physiotherapy 2009;95: 314-20.


CQ 02

乳がん術後の患者に対して,肩関節可動域訓練などのリハビリテーションを術後5-7 日から開始することは,術後0-3 日に開始する場合に比べて,術後の有害事象を軽減させるか?

推奨グレード
A

術後5-7 日から肩関節可動域訓練を開始することは,術後0-3 日から開始する例に比して,術後のドレナージ排液量や術部のしょう液腫(seroma)が軽減し有害事象が減少する。術後の上肢機能については,術後5-7 日からの訓練開始により,術後の肩関節可動域の改善はやや遅くなるものの,長期的な可動域には差がない。このため,術後5-7 日経過してから積極的な関節可動域訓練を開始することが強く勧められる。


エビデンス

乳がんの術後の患者に対して,積極的な肩関節可動域訓練などのリハビリテーションを,術後当日-3 日目までの早期に開始すべきであるという説と,術後5-7 日から開始すべきであるという説があり,どちらが適切な開始時期か,議論がされてきた(Ⅰb)1)。術後早期(0-3 日)に積極的な肩関節可動域訓練(介入後2 日程度で全可動域まで到達する自動・他動関節可動域訓練)を開始すると,術後5-7 日から開始した群に比べて,術後1 週頃の関節可動域は良好であるが,術後4-6 週間,6 週以降には有意差がなくなるとした報告が多い(Ⅰb)1-4)。一方,術後のドレナージ排液量やしょう液腫は,早期訓練開始群で多いとされている(Ⅰb)2-4)(Ⅰa)5)。ドレナージ排液量増加や,しょう液腫出現の臨床的不利は明らかでないともされるが(Ⅰb)1),ドレーン抜去が遅くなり感染のリスクを増やす,創治癒の遷延のリスクがあるとも考えられており,入院期間の延長がみられたとする報告もある(Ⅰb)2)。また,早期訓練開始群で,7 日目以降からの開始に比して,1 年以内のリンパ浮腫の発症が増加したという報告(Ⅰb)6)もあり,有害事象のリスクという点では早期開始群の方が大きいと考えられている。このため,積極的な肩関節可動域訓練は術後5-7 日からの開始が勧められるが,5-7 日以前については,肩関節をスリングで固定する(Ⅰb)7),なるべく動かさない(Ⅰb)2),日常生活の範囲内で関節運動を許可する(Ⅰb)3),90°までは自動・他動運動を行う(Ⅰb)6),など報告により対処は異なっている。

文献

1) McNeely ML, Campbell K, Ospina M, Rowe BH, Dabbs K, Klassen TP, et al. Exercise interventions for upper-limb dysfunction due to breast cancer treatment. Cochrane Database Syst Rev 2010; (6): CD005211.(Ⅰb)

2) Lotze MT, Duncan MA, Gerber LH, Woltering EA, Rosenberg SA. Early versus delayed shoulder motion following axillary dissection: a randomized prospective study. Ann Surg 1981; 193: 288-95.(Ⅰb)

3) Abe M, Iwase T, Takeuchi T, Murai H, Miura S. A Randomized Controlled Trial on the Prevention of Seroma after Partial or Total Mastectomy and Axillary Lymph Node Dissection. Breast Cancer 1998; 5: 67-9.(Ⅰb)

4) Schultz I, Barholm M, Grondal S. Delayed shoulder exercises in reducing seroma frequency after modified radical mastectomy: a prospective randomized study. Ann Surg Oncol 1997; 4: 293-7.(Ⅰb)

5) Shamley DR, Barker K, Simonite V, Beardshaw A. Delayed versus immediate exercises following surgery for breast cancer: a systematic review. Breast Cancer Res Treat 2005; 90: 263-71.(Ⅰa)

6) Todd J, Scally A, Dodwell D, Horgan K, Topping A. A randomised controlled trial of two programmes of shoulder exercise following axillary node dissection for invasive breast cancer. Physiotherapy 2008; 94: 265-73.(Ⅰb)

7) Petrek JA, Peters MM, Nori S, Knauer C, Kinne DW, Rogatko A. Axillary lymphadenectomy. A prospective, randomized trial of 13 factors influencing drainage, including early or delayed arm mobilization. Arch Surg 1990; 125: 378-82.(Ⅰb)


CQ 03

乳がん術後の患者に対して,リハビリテーションを行うことは,行わない場合に比べて患側リンパ浮腫を予防できるか?

推奨グレード
A

乳がん術後の患者に対して,術後早期から生活指導および肩関節可動域訓練や軽度の上肢運動などの包括的リハビリテーションを行うことは,リンパ浮腫の発症リスクを減少させるので,行うよう強く勧められる。


エビデンス

腋窩リンパ節郭清を伴う乳がん手術を受けた患者の23-38%に,患側上肢のリンパ浮腫が生じるとされる1)。センチネルリンパ節切除のみでは,発症率は5-7%に低下する2)

リンパ浮腫の予防には,術前・術後の生活指導,定期的な測定などによる早期発見が勧められている(Ⅳ)3, 4)。それに加え,術後早期から肩関節可動域訓練や軽度の上肢運動などを含んだ包括的リハビリテーションを行うと,2 年後のリンパ浮腫の発症が減少することや(Ⅰb)5),行わない場合と比較して1 年以内のリンパ浮腫発症の相対リスクが0.28 に低下する(Ⅰb)6)ことが報告されている。

付記

リンパ浮腫予防のための生活指導:

生活上の注意としてNational Lymphedema Network のガイドライン7)では,①患肢への注射,採血や血圧測定を避けること,②患肢で重いものを持ったり繰り返し動作を行うことを避けること,③アクセサリーやゴム,下着で患肢をしめつけないこと,④寒冷・温熱刺激にさらさないこと,⑤いかなる外傷(日焼け,虫刺され,打撲,深爪,剃毛などによるものも含む)も避けること。切り傷などを作りやすい作業の際には手袋を着用すること,⑥患肢を清潔に保ち,スキンケアをすること,⑦飛行機に乗る際にはスリーブを着用すること,⑧体重の増加を避けること,⑨ウォーキング,水泳,軽度のエアロビクス,自転車,特別に調整されたバレエやヨガなどの運動は勧められるが,セラピストと相談し負荷量を決めること,⑩むくみが出現したり,発赤や熱感が生じたときは速やかに医療機関を受診すること,を指導している。

リンパ浮腫予防のための包括的リハビリテーションの具体的内容:

術後早期の包括的リハビリテーションの具体的内容は報告により多少異なるが,生活指導,肩関節可動域訓練,胸筋ストレッチング,瘢痕組織のマッサージ,柔軟体操や軽度(自重を用いる程度)の上肢運動は共通している5, 6, 8)。用手的リンパドレナージが予防のための包括的リハビリテーションに含まれている報告もあるが5),用手的リンパドレナージの有無によってリンパ浮腫の発症に差がないという報告もあり8),予防において用手的リンパドレナージが有用であるというエビデンスはない。

文献

1) Petrek J, Heelan M. Incidence of breast carcinoma-related lymphedema. Cancer 1998; 83: 2776-81.

2) Wilke LG, McCall LM, Posther KE, Whitworth PW, Reintgen DS, Leitch AM, et al. Surgical complications associated with sentinel lymph node biopsy: results from a prospective international cooperative group trial. Ann Surg Oncol 2006; 13: 491-500.

3) Rinehart-Ayres ME. Conservative approaches to lymphedema treatment. Cancer 1998; 83: 2828-32.(Ⅳ)

4) 河村進,大西ゆかり,浅野尚美,渡辺弘美,中岡初枝.リンパ浮腫のクリニカルパス.臨床看護 2010; 36: 900-6.(Ⅳ)

5) Box RC, Reul-Hirche HM, Bullock-Saxton JE, Furnival CM. Physiotherapy after breast cancer surgery: results of a randomised controlled study to minimise lymphoedema. Breast Cancer Res Treat 2002; 75: 51-64.(Ⅰb)

6) Torres Lacomba M, Yuste Sanchez MJ, Zapico Goni A, Prieto Merino D, Mayoral del Moral O, Cerezo Tellez E, et al. Effectiveness of early physiotherapy to prevent lymphoedema after surgery for breast cancer: randomised, single blinded, clinical trial. BMJ 2010; 340: b5396.(Ⅰb)

付記文献

7) Rider SH. Breast cancer lymphedema: pathophysioligy and risk reduction guidelines. Oncol Nurs Forum 2002; 29: 1285-93.

8) Devoogdt N, Christiaens MR, Geraerts I, Truijen S, Smeets A, Leunen K, et al. Effect of manual lymph drainage in addition to guidelines and exercise therapy on arm lymphoedema related to breast cancer: randomised controlled trial. BMJ 2011; 343: d5326.


CQ 04

乳がん術後の化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて身体活動性や心肺機能を改善させるか?

推奨グレード
A

有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うよう指導する,もしくは指導下に実施することは,身体活動性を拡大し,心肺機能を改善させるので,行うよう強く勧められる。


エビデンス

乳がん患者において,診断時から身体活動量が減少し,治療中・治療後には倦怠感などから活動量がさらに低下し,心肺機能や体力の低下がみられることが報告されている1)。心肺機能や体力の低下は,倦怠感の原因になり,さらに活動量を低下させるという悪循環を呈する。乳がんの診断時より,毎日,中等度の強度の歩行などの運動を行うよう指導することは,それらを行わない場合に比べて,運動量の増加がみられる(Ⅰb)2)

手術後の化学療法・放射線療法中に,強度を60-80%最大心拍数,時間を15-45 分まで漸増してのエルゴメーターやトレッドミルなどの有酸素運動を週3 回・12 週間行い,対照群や抵抗運動を行った群に比べて,最高酸素摂取量が改善したと報告されている(Ⅰb)3)。60-75%最大心拍数,10-20 分の有酸素運動と, 抵抗運動を週2 回・12 週間行い,Scottish Physical Activity Questionnaire(SPAQ)で評価される活動性や,12 分間歩行テストでの心肺機能の改善を示した報告もある(Ⅰb)4)

治療後の患者においても,70-75%最大心拍数のエルゴメーターを15-35 分(漸増),週3 回・15 週間行い,最高酸素摂取量の改善が報告されている(Ⅰb)5)。70-80%最大心拍数の有酸素運動20-30 分(漸増)と8-15 回繰り返すことができる負荷量での11 種類の上下肢の抵抗運動を併用して週3 回・8 週間行った報告でも,最高酸素摂取量の改善が示されている(Ⅰb)6)。運動量や活動量が少ない患者に対して,在宅で速歩などの運動を行うよう指導し,郵送物での情報提供や電話でのカウンセリングを併用し,活動量や1 マイル歩行テストの改善を示した報告もある(Ⅰb)7)

このほかにも,化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して,中〜高強度(50-80%最大心拍数)のエルゴメーターや速歩などの有酸素運動,ダンベルやマシンを用いた抵抗運動,これらを組み合わせた運動療法を,週2-3 回・20-40 分・6-15 週間程度行うよう指導する,もしくは指導下に実施した群で,行わない群に比べて活動・運動量を増やし,最高酸素摂取量,12 分間歩行距離などで示される心肺機能の低下を抑制,もしくは改善させた,という報告は複数あり,メタアナリシスやガイドラインでもその有効性が示されている(Ⅰa)8-10)

付記

運動療法の実施時期の検討:

運動療法は,化学療法・放射線療法中であっても,安全性が高く実施でき,運動強度も上げることができるとされ,化学療法・放射線療法開始と同時期に早期から運動療法を開始することが勧められている11)。一方,治療後からの介入では,全身状態が安定した状況で,より強度が高く,コンプライアンス良く運動療法を実施できる5)。メタアナリシスでも,治療中・治療後いずれの時期でも運動療法は有効であることが示されており8),治療中から運動療法を開始し,治療後にはさらに積極的な運動療法を行うなど,経過を通して運動療法の強度を調整しつつ継続していくことが必要であるとされている。

運動療法の種類の検討:

運動療法は,主に有酸素運動,抵抗運動に分けられる。一般に,成人に対する運動のガイドライン(Physical Activity Guidelines: US Department of Health and Human Services)では,中等度の強度の身体活動を週150 分,高強度の有酸素運動を週75 分,主な筋を全て網羅した中〜高強度の抵抗運動を週2 回以上が勧められている。乳がん患者に対する運動療法も同様に,中〜高強度の有酸素運動と,体幹を含む全身の筋肉の抵抗運動,それらの組み合わせを行うことがガイドラインで勧められている10)。特に乳がん患者で留意すべき点として,有酸素運動では骨折のリスクがないかを明確にすること,抵抗運動では開始時,少なくとも16 セッションは指導下で非常に軽い負荷から開始すること,浮腫などの上肢症状に気をつけることがあげられている10)。有酸素運動と抵抗運動の比較3)では,有酸素運動群では心肺機能の改善が主で,抵抗運動群で筋力や体組成の改善が主であると報告されているが,メタアナリシスでは運動の種類による有意な差はないとされ10),両者の組み合わせが望ましいと考えられている。

また,運動療法の実施方法も,通所・通院で1 対1 の指導下で行っているもの,グループで行っているもの,指導を受け在宅で行っているものがあり,いずれの方法でも有効性は示されている。通院での実施と在宅での実施を比較した報告では,通院での実施の方が心肺機能や体重の改善は得られやすかったが,生活の質(quality of life;QOL)の改善は在宅実施群の方が良好であった8),としている。

運動療法継続に関わる因子:

運動療法は,その継続性が効果に大きな影響を与える。がん患者における運動療法の継続性は,その必要性が的確に情報提供されていれば,健康な人に比べ非常に良いことが報告されている12)(一般に健康な対象者での運動療法ではその継続性は50%程度とされるが,がん患者では70-100%)13)。運動の継続性に関わる因子として,病前の運動習慣の有無14),体力,筋力,体組成(肥満でない),病期が進行していない,教育歴が高い,抑うつ傾向がない,非喫煙,が報告されている15)。通院・通所で指導下に行うより,在宅での実施の方が継続性は良いとされるが,運動強度を的確に変化させながら継続していくには,1 対1 の指導が望ましい16)。特に化学療法・放射線療法中の実施では,強度が強すぎると倦怠感が強く,運動の継続性を低下させる要因になるため,短時間ずつで,倦怠感を防ぐよう強度を調整し,自信をもてるようなプログラムにすることが,継続性の維持に必要である17)。また,高齢であることは,もともと運動習慣が少ないことや転倒恐怖,パートナーがいないことや経済面での不安,倦怠感の強さから,運動療法の継続性を低下させる因子となる13)。継続性を高める工夫としては,特に高齢者では繰り返し運動療法の必要性を説明する,電話などでカウンセリングを行うことが勧められている13)

文献

1) Irwin ML. Physical activity interventions for cancer survivors. Br J Sports Med 2009; 43: 32-8.

2) Jones LW, Courneya KS, Fairey AS, Mackey JR. Effects of an oncologist’s recommendation to exercise on self-reported exercise behavior in newly diagnosed breast cancer survivors: a single-blind, randomized controlled trial. Ann Behav Med 2004; 28: 105-13.(Ⅰb)

3) Courneya KS, Segal RJ, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Effects of aerobic and resistance exercise in breast cancer patients receiving adjuvant chemotherapy: a multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 2007; 25: 4396-404.(Ⅰb)

4) Campbell A, Mutrie N, White F, McGuire F, Kearney N. A pilot study of a supervised group exercise programme as a rehabilitation treatment for women with breast cancer receiving adjuvant treatment. Eur J Oncol Nurs 2005; 9: 56-63.(Ⅰb)

5) Courneya KS, Mackey JR, Bell GJ, Jones LW, Field CJ, Fairey AS. Randomized controlled trial of exercise training in postmenopausal breast cancer survivors: cardiopulmonary and quality of life outcomes. J Clin Oncol 2003; 21: 1660-8.(Ⅰb)

6) Herrero F, San Juan AF, Fleck SJ, Balmer J, Pérez M, Cañete S, et al. Combined aerobic and resistance training in breast cancer survivors: a randomized,controlled pilot trial. Int J Sports Med 2006; 27: 573-80.(Ⅰb)

7) Pinto BM, Frierson GM, Rabin C, Trunzo JJ, Marcus BH. Home-based physical activity intervention for breast cancer patients. J Clin Oncol 2005; 23: 3577-87.

8) Kim CJ, Kang DH, Park JW. A meta-analysis of aerobic exercise intervention for women with breast cancer. West J Nurs Res 2009; 31: 437-61.(Ⅰa)

9) McNeely ML, Campbell KL, Rowe BH, Klassen TP, Mackey JR, Courneya KS. Effects of exercise on breast cancer patients and survivors: a systematic review and meta-analysis . CMAJ 2006; 175: 34-41.(Ⅰa)

10) Schmitz KH, Courneya KS, Matthews C, Demark-Wahnefried W, Galvão DA, Pinto BM, et al. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010; 42: 1409-26.(Ⅰa)

付記文献

11) Kirshbaum MN. A review of the benefits of whole body exercise during and after treatment for breast cancer. J Clin Nurs 2007; 16: 104-21.

12) Irwin ML, Ainsworth BE. Physical activity interventions following cancer diagnosis: methodologic challenges to delivery and assessment. Cancer Invest 2004; 22: 30-50.

13) Courneya KS, Vallance JKH, McNeely ML, Karvinen KH, Peddle CJ, Mackey JR. Exercise issues in older cancer survivors. Crit Rev Oncol Hematol 2004; 51: 249-61.

14) Pickett M, Mock V, Ropka ME, Cameron L, Coleman M, Podewils L. Adherence to moderate-intensity exercise during breast cancer therapy. Cancer Pract 2002; 10: 284-92.

15) Courneya KS, Segal RJ, Gelmon K, Reid RD, Mackey JR, Friedenreich CM, et al. Predictors of supervised exercise adherence during breast cancer chemotherapy. Med Sci Sports Exerc 2008; 40: 1180-7.

16) Daley AJ, Crank H, Mutrie N, Saxton JM, Coleman R. Determinants of adherence to exercise in women treated for breast cancer. Eur J Oncol Nurs 2007; 11: 392-9.

17) Courneya KS, Mackey JR, McKenzie DC. Exercise for breast cancer survivors: research evidence and clinical guidelines. Phys Sportsmed 2002; 30: 33-42.


CQ 05

乳がん術後の化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて筋力を改善させるか?

推奨グレード
A

抵抗運動,もしくは抵抗運動と有酸素運動を組み合わせた運動療法を行うことは,筋力を改善させるので,行うよう強く勧められる。


エビデンス

手術後の化学療法・放射線療法中に,8-12 回繰り返すことができる負荷量(≒60-70% 1RM:1 repetition maximum)で,9 種類の抵抗運動を8-12 回ずつ2 セット・週3 回・12 週間指導下で行い,ベンチプレスで測定した上肢筋力,レッグエクステンションで測定した下肢筋力の改善を認めたとの報告がある(Ⅰb)1)。機器やダンベルを用いた8-12 種類の抵抗運動と40-60%最大心拍数の有酸素運動を併用して週2 回・21 週間実施し,体組成の改善と,上下肢筋力(それぞれ機器で測定した筋力の合計)の改善がみられた(Ⅰb)2)という報告もあり,抵抗運動単独,もしくは有酸素運動との併用で筋力の改善が認められている(Ⅰa)3)。一方,化学療法の一次選択として用いられることが多いタキサンは筋再生を阻害することが知られており,タキサンを含む化学療法では,治療中の運動療法で筋力改善が得られにくいという報告もある(Ⅰb)4)

治療後の患者においても,8-10 回繰り返すことができる負荷量で,マシンや重錘を用いた9 種類のウェイトトレーニング(抵抗運動)を,週2 回・13 週間指導下,その後在宅で6-12 カ月まで行い,リンパ浮腫の増悪なくベンチプレスで測定した上肢筋力・レッグエクステンションで測定した下肢筋力の改善を認めている(Ⅰb)5, 6)。徐々に負荷量を上げていくウェイトリフティングを中心に,上下肢の抵抗運動を行い,同様にリンパ浮腫の増悪なく上下肢筋力の改善を認めた報告もある(Ⅰb)7)。8-15 回繰り返すことができる負荷量で,7-11 種類の抵抗運動を,70-80%最大心拍数の有酸素運動と併用して,週3 回・8 週間行った介入研究でも,レッグプレスで測定した下肢筋力やsit-stand テストでの改善が報告されている(Ⅰb)8-10)。在宅で,重錘を用いた上下肢の抵抗運動と,バランス訓練を32 週間行ったのち,近隣のフィットネスセンターでマシンを用いた抵抗運動に拡大して24 カ月まで継続した報告(Ⅰb)11)もあり,上下肢筋力の9.5-50%の増強やバランスの改善が認められている。

文献

1) Courneya KS, Segal RJ, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Effects of aerobic and resistance exercise in breast cancer patients receiving adjuvant chemotherapy: a multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 2007; 25: 4396-404.(Ⅰb)

2) Battaglini C, Bottaro M, Dennehy C, Rae L, Shields E, Kirk D, et al. The effects of an individualized exercise intervention on body composition in breast cancer patients undergoing treatment. Sao Paulo Med J 2007; 125: 22-8.(Ⅰb)

3) Schmitz KH, Courneya KS, Matthews C, Demark-Wahnefried W, Galvão DA, Pinto BM, et al. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010; 42: 1409-26.(Ⅰa)

4) Courneya KS, McKenzie DC, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Moderators of the effects of exercise training in breast cancer patients receiving chemotherapy: a randomized controlled trial. Cancer 2008; 112: 1845-53.(Ⅰb)

5) Ahmed RL, Thomas W, Yee D, Schmitz KH. Randomized controlled trial of weight training and lymphedema in breast cancer survivors. J Clin Oncol 2006; 24: 2765-72.(Ⅰb)

6) Speck RM, Gross CR, Hormes JM, Ahmed RL, Lytle LA, Hwang WT, et al. Changes in the Body Image and Relationship Scale following a one-year strength training trial for breast cancer survivors with or at risk for lymphedema. Breast Cancer Res Treat 2009; 121: 421-30.(Ⅰb)

7) Schmitz KH, Ahmed RL, Troxel A, Cheville A, Smith R, Lewis-Grant L, et al. Weight Lifting in Women with Breast-Cancer-Related Lymphedema. N Engl J Med 2009; 361: 664-73.(Ⅰb)

8) Herrero F, San Juan AF, Fleck SJ, Balmer J, Pérez M, Cañete S, et al. Combined aerobic and resistance training in breast cancer survivors: a randomized, controlled pilot trial. Int J Sports Med 2006; 27: 573-80.(Ⅰb)

9) Nieman DC, Cook VD, Henson DA, Suttles J, Rejeski WJ, Ribisl PM, et al. Moderate exercise training and natural killer cell cytotoxic activity in breast cancer patients. Int J Sports Med 1995; 16: 334-7.(Ⅰb)

10) Cheema B, Gaul CA, Lane K, Fiatarone Singh MA. Progressive resistance training in breast cancer: a systematic review of clinical trials. Breast Cancer Res Treat 2008; 109: 9-26.(Ⅰb)

11) Twiss JJ, Waltman NL, Berg K, Ott CD, Gross GJ, Lindsey AM. An exercise intervention for breast cancer survivors with bone loss. J Nurs Scholarsh 2009; 41: 20-7.(Ⅰb)


CQ 06

乳がん術後の患者に対して,化学療法・放射線療法中もしくは治療後に運動療法を行うと,行わない場合に比べて倦怠感を改善させるか?

推奨グレード
A

有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を実施する,もしくは行うよう指導することは,がん患者に特有の倦怠感を改善させるので,行うよう強く勧められる。


エビデンス

倦怠感は,がん患者に非常に多くみられる愁訴であり,治療中には90%以上にみられるともされている1)。さらに乳がん患者の約3 分の1 では,治療後も数カ月以上にわたって,中〜高度の倦怠感が持続し,生活を制限していると報告されている(Ⅰb)2)

手術後の化学療法・放射線療法中に,自己ペースでのウォーキングを20-30 分・週4-5 回・6 週間-6 カ月(治療期間中)行い,Piper Fatigue Scale で評価された倦怠感の改善が報告されている(Ⅰb)3)。化学療法中の進行した乳がん患者でも,在宅で,座位でできる中等度の強度の運動(四肢体幹の屈伸)を30 分・週3 回実施するよう指導することで,Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue(FACIT-F) Ver Wで評価される倦怠感の悪化が,対照群に比しゆるやかになることが示されている(Ⅰb)4)

治療後の患者においても,中等度以上の倦怠感のある患者に,Borg Scale 10-13 の強度のウォーキングなどの有酸素運動を20-40 分・週3 回・12 週間行い,Piper Fatigue Scale で評価された倦怠感の改善が報告されている(Ⅰb)2)

メタアナリシスでも,治療中・治療後に,主に有酸素運動を実施することで,Piper Fatigue Scale やFACIT-F,もしくはSymptom Assessment Scale(SAS)で評価される倦怠感の改善が示されている(Ⅰa)5, 6)

付記

倦怠感に対する介入:

運動療法と心理療法との比較1)や,併用の報告もある7)。乳がん患者では,特に化学療法・放射線療法中には,心理療法よりも運動療法の方が倦怠感軽減に有効であるとされる8)が,がん患者全般を対象にしたメタアナリシスで心理介入単独,もしくは併用の方が有効であるという報告もあり9),どのような対象患者に積極的な心理介入を検討すべきか,という基準が必要と考えられる。

乳がん患者の倦怠感の評価法:

乳がん患者の倦怠感の評価尺度としては,本文中に示した評価尺度のほかに,Profile of Mood States(POMS)10)のFatigue subscale,Brief Fatigue Inventry(BFI)11),Schwartz Cancer Fatigue Scale(SCFS)12)なども用いられている(1 章CQ2 付記参照)。

文献

1) Kangas M, Bovbjerg DH, Montgomery GH. Cancer-related fatigue: a systematic and meta-analytic review of non-pharmacological therapies for cancer patients. Psychol Bull 2008; 134: 700-41.

2) Yuen HK, Sword D. Home-based exercise to alleviate fatigue and improve functional capacity among breast cancer survivors. J Allied Health 2007; 36: e257-75.(Ⅰb)

3) Mock V, Pickett M, Ropka ME, Muscari Lin E, Stewart KJ, Rhodes VA, et al. Fatigue and quality of life outcomes of exercise during cancer treatment. Cancer Practice 2001; 9: 119-27.(Ⅰb)

4) Headley JA, Ownby KK, John LD. The effects of seated exercise on fatigue and quality of life in women with advanced breast cancer[ with consumer summary]. Oncol Nurs Forum 2004; 31: 977-83.(Ⅰb)

5) McNeely ML, Campbell KL, Rowe BH, Klassen TP, Mackey JR, Courneya KS. Effects of exercise on breast cancer patients and survivors: a systematic review and meta-analysis . CMAJ 2006; 175: 34-41.(Ⅰa)

6) Schmitz KH, Courneya KS, Matthews C, Demark-Wahnefried W, Galvão DA, Pinto BM, et al. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010; 42: 1409-26.(Ⅰa)

付記文献

7) Fillion L, Gagnon P, Leblond F, Gélinas C, Savard J, Dupuis R, et al. A brief intervention for fatigue management in breast cancer survivors. Cancer Nurs 2008; 31: 145-59.

8) Kirshbaum MN. A review of the benefits of whole body exercise during and after treatment for breast cancer. J Clin Nurs 2007; 16: 104-21.

9) Jacobsen PB, Donovan KA, Vadaparampil ST, Small BJ. Systematic review and meta-analysis of psychological and activity-based interventions for cancer-related fatigue. Health Psychol 2007; 26: 660-7.

10) McNair DM, Lorr M, Droppelman LF. Profile of mood states: Educational and Industrial Testing Service: San Diego, CA, 1971.

11) Mendoza TR, Wang XS, Cleeland CS, Morrissey M, Johnson BA, Wendt JK, et al. The rapid assessment of fatigue severity in cancer patients-use of Brief Fatigue Inventry. Cancer 1999; 85: 1186-96.

12) Schwartz Al. The Schwartz Cancer Fatigue Scale: testing reliability and validity. Oncol Nurs Forum 1998; 25: 711-7.


CQ 07

乳がん術後の化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて体組成を改善させるか?

推奨グレード
A

有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことは,体組成を改善させるので,行うよう強く勧められる。


エビデンス

乳がん術後,化学療法・放射線療法中から治療後にかけて,体重増加,体脂肪の増加が起こりやすい1)。その原因として,化学療法の影響(内分泌療法)と,活動性低下があげられている。体重増加や体脂肪の増加は,ボディイメージなどを低下させるほか,心血管イベント,がん再発のリスク因子となり,生命予後の悪化につながる2)

手術後の化学療法中に,40-60%最大心拍数の強度の有酸素運動(エルゴメーター,トレッドミルなど)6-12 分と,重錘やセラバンドを用いた全身の抵抗運動を組み合わせた運動療法を,指導下に週2 回・21 週間実施し,化学療法中に低下しやすい食事摂取量を維持しつつ,体脂肪率を低下させたと報告されている(Ⅰb)3)。有酸素運動群(強度を60-80%最大心拍数,時間を15-45 分まで漸増した有酸素運動を週3 回・12 週間行った群)で体脂肪の減少,抵抗運動群(8-12 回繰り返すことができる負荷量で,9 種類の抵抗運動を,8-12 回ずつ2 セット・12 週間行った群)では体脂肪の減少と,除脂肪体重の増加がみられたという報告もある(Ⅰb)4)。メタアナリシスでも,運動療法による体脂肪率の低下は有意であると示されているが,除脂肪体重・体重の改善は有意ではなく,また運動の種類(有酸素運動か抵抗運動か)による差もないと報告されている(Ⅰa)5)

治療後の患者においても,70-80%最大心拍数の強度の有酸素運動(エルゴメーター,トレッドミルなど)20-30 分(漸増)と,8-15 回繰り返すことができる負荷量での11 種類の抵抗運動を併用して,週3 回・8 週間行い,体脂肪率の低下,筋肉率の改善が報告されている(Ⅰb)6)。マシンや重錘を用いた抵抗運動のみを6 カ月行った報告(Ⅰb)7)や,60-80%最大心拍数の強度の有酸素運動のみを6 カ月行った報告でも(Ⅰb)8),体脂肪率の低下,除脂肪体重増加を認めている。

文献

1) Courneya KS, Vallance JKH, McNeely ML, Karvinen KH, Peddle CJ, Mackey JR. Exercise issues in older cancer survivors. Crit Rev Oncol Hematol 2004; 51: 249-61.

2) Ingram C, Courneya KS, Kingston D. The effects of exercise on body weight and composition in breast cancer survivors: an integrative systematic review. Oncol Nurs Forum 2006; 33: 937-47.

3) Battaglini CL, Mihalik JP, Bottaro M, Dennehy C, Petschauer MA, Hairston LS, et al. Effect of exercise on the caloric intake of breast cancer patients undergoing treatment. Braz J Med Biol Res 2008; 41: 709-15.(Ⅰb)

4) Courneya KS, Segal RJ, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Effects of aerobic and resistance exercise in breast cancer patients receiving adjuvant chemotherapy: a multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 2007; 25: 4396-404.(Ⅰb)

5) Kim CJ, Kang DH, Park JW. A meta-analysis of aerobic exercise interventions for women with breast cancer. West J Nurs Res 2009; 31: 437-61.(Ⅰa)

6) Herrero F, San Juan AF, Fleck SJ, Balmer J, Pérez M, Cañete S, et al. Combined aerobic and resistance training in breast cancer survivors: a randomized, controlled pilot trial. Int J Sports Med 2006; 27: 573-80.(Ⅰb)

7) Schmitz KH, Ahmed RL, Hannan PJ, Yee D. Safety and efficacy of weight training in recent breast cancer survivors to alter body composition, insulin, and insulin-like growth factor axis proteins. Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 2005; 14: 1672-80.(Ⅰb)

8) Irwin ML, Alvarez-Reeves M, Cadmus L, Mierzejewski E, Mayne ST, Yu H, et al. Exercise improves body fat, lean mass, and bone mass in breast cancer survivors. Obesity 2009; 17: 1534-41.(Ⅰb)


CQ 08

乳がん術後の化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて,治療の有害反応を軽減させるか?

推奨グレード
B

有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことは,下痢や貧血など治療の有害反応を軽減させるので,行うよう勧められる。


エビデンス

乳がん術後化学療法や放射線療法など補助療法中には,下痢や貧血など有害反応が生じ,QOL を低下させるだけでなく,治療の耐容性を低下させる。

手術後の放射線療法中に,50-70%最大心拍数の強度の有酸素運動(ウォーキング)を20-45 分・週3-5 回・7 週間行い,赤血球数やヘモグロビン減少が有意に少なかったと報告されている(Ⅰb)1)。主に乳がん患者を対象とし,末梢血幹細胞輸血前の高容量化学療法中の患者に,臥位でのエルゴメーターを30 分,入院中毎日実施し,顆粒球減少と下痢の程度を改善させたとの報告もある(Ⅰb)2)。化学療法中に,60-70% IRM の強度で9 種類の抵抗運動を週3 回・12 週間行った患者で化学療法の耐容性改善・治療完遂率の向上がみられたとの報告もある(Ⅰb)3)

治療後の患者においても,貧血のある患者に造血剤を投与しつつ60-100%最高酸素摂取量の強度の有酸素運動を週3 回・12 週間行うと,造血剤投与のみに比して貧血の改善に良い傾向があるという報告(Ⅰb)4)や,ヨガで下痢やストレス症状(胃腸症状など)が改善する(Ⅰb)5)という報告がある。

文献

1) Drouin JS, Young TJ, Beeler J, Byrne K, Birk TJ, Hryniuk WM, et al. Random control clinical trial on the effects of aerobic exercise training on erythrocyte levels during radiation treatment for breast cancer. Cancer 2006; 107: 2490-5.(Ⅰb)

2) Dimeo F, Fetscher S, Lange W, Mertelsmann R, Keul J. Effects of aerobic exercise on the physical performance and incidence of treatment-related complications after high-dose chemotherapy. Blood 1997; 90: 3390-4.(Ⅰb)

3) Courneya KS, Segal RJ, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Effects of aerobic and resistance exercise in breast cancer patients receiving adjuvant chemotherapy: a multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 2007; 25: 4396-404.(Ⅰb)

4) Courneya KS, Jones LW, Peddle CJ, Sellar CM, Reiman T, Joy AA, et al. Effects of aerobic exercise training in anemic cancer patients receiving darbepoetin alfa: a randomized controlled trial. Oncologist 2008: 13: 1012-20.(Ⅰb)

5) Culos-Reed SN, Carlson LE, Daroux LM, Hately-Aldous S. A pilot study of yoga for breast cancer survivors: physical and psychological benefits. Psychooncology 2006: 15: 891-7.(Ⅰb)


CQ 09

乳がん術後の化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて,抑うつ・不安などの精神心理面を改善させるか?

推奨グレード
A

有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことは,抑うつや不安感,感情や気分,睡眠障害を改善させるため,行うよう強く勧められる。


エビデンス

乳がん術後には,ボディイメージの低下,抑うつ,不安感などの心理的問題が生じやすく,術後1 年で20-40%にみられると報告されている(Ⅰb)1)。その後,術後1-2 年で安定してくるとされるが,長期的に心理的症状を訴える例もある。

手術後の化学療法中に,抵抗運動を行った群(8-12 回繰り返すことができる負荷量で,9 種類の抵抗運動を,8-12 回ずつ2 セット・週3 回・12 週間)でRosenberg Self-Esteem Scale により評価された自尊心の改善が,有酸素運動を行った群(強度を60-80%最大心拍数,時間を15-45 分まで漸増した有酸素運動を週3 回・12 週間)ではSpielberger State Anxiety Inventory(SAI)により評価された不安感の改善が,6 カ月後の経過観察時にみられたという報告がある(Ⅰb)2)。放射線療法中に,自己ペースでのウォーキングを20-30 分・週4-5 回・6 週間(治療期間中) 行い,SymptomAssessment Scale(SAS:0-100 の自覚的スケール)で評価した不安感や睡眠障害の改善も報告されている(Ⅰb)3)。化学療法中に,在宅での速歩を10-45 分・週4-5 回実施しながら,2 週間に1 回のサポートグループ療法を併用した報告では,Visual Analogue Scale でのボディイメージの改善が報告されている(Ⅰb)4)

治療後の患者においても,65-85%最大心拍数の有酸素運動を50 分・週3 回・8 週間行い,Beck Depression Inventory(BDI)Ⅱで評価される抑うつ傾向の改善がみられている。この報告では,ストレッチングなど軽度の運動を行った群でも抑うつ傾向は改善がみられているが,有酸素運動群でより改善が大きい(Ⅰb)5)

ヨガでも,Symptoms of Stress Inventory(SOSI)で評価されるストレス症状(感情の不安定さ,抑うつ,不安や胃腸症状など)やProfile of Mood States(POMS)で評価される気分障害の改善が報告されている(Ⅰb)6)

付記

乳がん患者の精神心理面の評価法:

乳がん患者のうつや不安などの精神心理面の評価には,本文中の評価尺度に加え,包括的QOL 評価尺度の心理領域項目や,POMS 7),Hospital Anxiety and Deression Scale(HADS)8)1 章CQ2 付記参照),Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)9)などの評価尺度も用いられている。

文献

1) Segar ML, Katch VL, Roth RS, Garcia AW, Portner TI, Glickman SG, et al. The effect of aerobic exercise on self-esteem and depressive and anxiety symptoms among breast cancer survivors. Oncol Nurs Forum 1998; 25: 107-13.(Ⅰb)

2) Courneya KS, Segal RJ, Gelmon K, Reid R, D, Mackey JR, Friedenreich CM, et al. Six-month follow-up of patient-rated outcomes in a randomized controlled trial ofexercise training during breast cancer chemotherapy. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2007; 16: 2572-8.(Ⅰb)

3) Mock V, Dow KH, Meares CJ, Grimm PM, Dienemann JA, Haisfield-Wolfe ME, et al. Effects of exercise on fatigue, physical functioning, and emotional distress during radiation therapy for breast cancer. Oncol Nurs Forum 1997; 24: 991-1000.(Ⅰb)

4) Mock V, Burke MB, Sheehan P, Creaton EM, Winningham ML, McKenney-Tedder S, et al. A nursing rehabilitation program for women with breast cancer receiving adjuvant chemotherapy. Oncol Nurs Forum 1994; 21: 899-907.(Ⅰb)

5) Daley AJ, Crank H, Saxton JM, Mutrie N, Coleman R, Roalfe A. Randomized trial of exercise therapy in women treated for breast cancer. J Clin Oncol 2007; 25: 1713-21.(Ⅰb)

6) Culos-Reed SN, Carlson LE, Daroux LM, Hately-Aldous S. A pilot study of yoga for breast cancer survivors: physical and psychological benefits. Psychooncology 2006; 15: 891-7.(Ⅰb)

付記文献

7) McNair DM, Lorr M, Droppelman LF. Profile of mood states: Educational and Industrial Testing Service: San Diego, CA, 1971.

8) Zigmond AS, Snaith RP. The Hospital Anxiety and Deression Scale. Acta Psychiatri Scand 1983; 67: 361-70.

9) Radloff L. The CES-D Scale: a self-report depression scale for research in the general population. Appl Psychol Meas 1977; 1: 385-401.


CQ 10

乳がん術後の化学療法・放射線療法中もしくは治療後に運動療法を行うと,行わない場合に比べて,QOL を改善させるか?

推奨グレード
B
  1. 1.乳がんの術後化学療法・放射線療法中に,有酸素運動や抵抗運動,それらを組み合わせた運動療法を行うことは,身体機能関連のQOL を改善させるため,勧められる。
    推奨グレード
    A
    1. 2.治療後の患者においては,運動療法単独,もしくは心理療法やヨガ,ダンスなどを組み合わせたリハビリテーションプログラムにより,全般的なQOL の改善が得られ,行うことが強く勧められる。
      推奨グレード
      B
      1. 3.遠隔転移があるなど,進行した病期の患者においても,運動療法を行うことは,QOL の低下を緩徐にするため,行うことが勧められる。

        エビデンス

        乳がん術後,補助療法中から治療後にかけて,QOL が低下し,特に身体機能関連QOL が低下しやすいことが報告されている(Ⅰa)1)

        手術後の化学療法・放射線療法中に,60-75%最大心拍数・10-20 分の有酸素運動と,抵抗運動を週2 回・12 週間行い,Functional Assessment of Cancer Therapy-General(FACT-G)で評価されるQOL 全般の改善が報告されている(Ⅰb)2)。一方,治療中の運動療法によるQOL 全般への効果は有意ではないとする報告(Ⅰb)3-7),身体機能関連QOL(Ⅰb)4, 6)や自尊心(Ⅰb)5)などサブスコアに限って改善が示されている報告も多い。メタアナリシスでも,QOL 全般の改善は示されない(Ⅰa)8),もしくは身体機能面のQOL に限られるとしており(Ⅰa)9),治療中には有害事象の出現などさまざまな身体的要因がQOL 全般に大きな影響を与えるためとされている。

        治療後2-5 年経過した患者に対して,70-80%最大心拍数の強度の有酸素運動(エルゴメーター,トレッドミルなど)20-30 分と,8-15 回繰り返すことができる負荷量で11 種類の抵抗運動を併用して, 週3 回・8 週間行い,The European Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ-C30(EORTC-C30)で評価されたQOL 全般の改善が報告されている(Ⅰb)10)。このほかにも,有酸素運動のみ(Ⅰb)11, 12)や,有酸素運動と抵抗運動の組み合わせ(Ⅰb)13),さらに心理アプローチ,教育介入,グループ訓練などを含んだ多角的リハビリテーションプログラム(Ⅰb)14)や,ヨガ(Ⅰb)15),ダンス(Ⅰb)16) といったプログラムでもFunctional Assessment of Cancer Therapy-Breast(FACT-B),FACT-G(Ⅰb)11-13, 16),MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)16),SF-12(Ⅰb)14),EORTC-C30L(Ⅰb)15)改善が示されている。メタアナリシスでも,治療後の運動療法では,QOL 全般の改善がみられることが示されている(Ⅰa)9)

        遠隔転移のある,進行した病期の乳がん患者でも,在宅で,座位でできる中等度の強度の運動(四肢体幹の屈伸)を30 分・週3 回実施するよう指導することで,FACIT-F での身体面のQOL の低下が,対照群に比べてゆるやかになることが示されている(Ⅰb)17)

        付記

        乳がん患者のQOL の評価法:

        乳がん患者のQOL の評価尺度としては,Functional Assesment of Cancer Therary(FACT)18),The European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionaire(EORTC QLQ)19),SF-36 20)などが用いられている(1 章CQ2 付記参照)。

        文献

        1) McNeely ML, Campbell KL, Rowe BH, Klassen TP, Mackey JR, Courneya KS. Effects of exercise on breast cancer patients and survivors: a systematic review and meta-analysis. CMAJ 2006; 175: 34-41.(Ⅰa)

        2) Campbell A, Mutrie N, White F, McGuire F, Kearney N. A pilot study of a supervised group exercise programme as a rehabilitation treatment for women with breast cancer receiving adjuvant treatment. Eur J Oncol Nurs 2005; 9: 56-63.(Ⅰb)

        3) Courneya KS, McKenzie DC, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Moderators of the effects of exercise training in breast cancer patients receiving chemotherapy: a randomized controlled trial. Cancer 2008; 112: 1845-53.(Ⅰb)

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        5) Courneya KS, Segal RJ, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Effects of aerobic and resistance exercise in breast cancer patients receiving adjuvant chemotherapy: a multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 2007; 25: 4396-404.(Ⅰb)

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        7) Cadmus LA, Salovey P, Yu H, Chung G, Kasl S, Irwin ML. Exercise and quality of life during and after treatment for breast cancer: results of two randomized controlled trials. Psychooncology 2009; 18: 343-52.(Ⅰb)

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        12) Courneya KS, Mackey JR, Bell GJ, Jones LW, Field CJ, Fairey AS. Randomized controlled trial of exercise training in postmenopausal breast cancer survivors: cardiopulmonary and quality of life outcomes. J Clin Oncol 2003; 21: 1660-8.(Ⅰb)

        13) Milne HM, Wallman KE, Gordon S, Courneya KS. Effects of a combined aerobic and resistance exercise program in breast cancer survivors: a randomized controlled trial. Breast Cancer Res Treat 2008; 108: 279-88.(Ⅰb)

        14) Fillion L, Gagnon P, Leblond F, Gélinas C, Savard J, Dupuis R, et al. A brief intervention for fatigue management in breast cancer survivors. Cancer Nurs 2008; 31: 145-59.(Ⅰb)

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        16) Sandel SL, Judge JO, Landry N, Faria L, Ouellette R, Majczak M. Dance and movement program improves quality-of-life measures in breast cancer survivors. Cancer Nurs 2005; 28: 301-9.(Ⅰb)

        17) Headley JA, Ownby KK, John LD. The effect of seated exercise on fatigue and quality of life in women with advanced breast cancer[ with consumer summary]. Oncol Nurs Forum 2004; 31: 977-83.(Ⅰb)

        付記文献

        18) Cella DF, Tulsky DS, Gray G, Sarafian B, Linn E, Bonomi A, et al. The Functional Assessment of Cancer Therapy Scale; Development and validation of the general measure. J Clin Oncol 1993; 11: 570-9.

        19) Aaronson NK, Ahmedzai S, Bergman B, Bullinger M, Cull A, Duez NJ, et al. European Organization for Research and Treatment of Cancer Q LQ-C30; A quality-of -life instrument of use in international clinical trials in oncology. J Natl Cancer Inst 1993; 85: 365-76.

        20) Ware JE Jr, Sherbourne CD. The MOS 36-item Short Form Health Survey(SF-36): conceptual framework and item selection. Med Care 1992; 30: 473-83.


        CQ 11

        婦人科がん術後の化学療法・放射線療法中もしくは治療後に運動療法を行うと,行わない場合に比べて,体組成や精神心理面を改善させるか?

        推奨グレード
        B

        婦人科がんの術後化学療法・放射線療法中,もしくは治療後の患者に対して,有酸素運動などの運動療法を行うよう指導することは,体組成,抑うつ傾向や自己効力感を改善させるので,行うことが勧められる。


        エビデンス

        子宮がん・卵巣がんでは,がん治療が終了したのちも,身体活動性が低く経過する例が70%近くにのぼると報告されており,他のがんに比しても活動性が低下しやすい1, 2)。特に子宮がんにおいては,肥満が生じやすく,肥満者では特に身体面のQOL の低下が著しくなるとされる(Ⅰb)3)

        初期内膜がん(子宮がん)患者を対象に,歩行などの有酸素運動を45 分程度・週5 回行うという運動指導を,食事などの生活指導とともに6 カ月行った報告では,介入群でLeisure Score Index で評価される活動量が増え,開始時に比べ体重の平均3.5 kg の減少(対照群は1.4 kg の増加)(Ⅰb)3),Weight Efficacy Life-Style で評価された自己効力感の改善,BDI で評価される抑うつ傾向の改善(Ⅰb)4)を認めている。

        文献

        1) Stevinson C, Steed H, Faught W, Tonkin K, Vallance JK, Ladha AB, et al. Physical activity in ovarian cancer survivors. Int J Gynecol Cancer 2009; 19: 73-8.

        2) Courneya KS, Karvinen KH, Campbell KL, Peaycey RG, Dundas G, Capstick V, et al. Associations among exercise, body weight, and quality of life in a population-based sample of endometrial cancer survivors: Gynecol Oncol 2005; 97: 422-30.

        3) von Gruenigen VE, Courneya KS, Gibbons HE, Kavanagh MB, Waggoner SE, Lerner E. Feasibility and effectiveness of a lifestyle intervention program in obese endometrial cancer patients: a randomized trial. Gynecol Oncol 2008; 109: 19-26.(Ⅰb)

        4) von Gruenigen VE, Gibbons HE, Kavanagh MB, Janata JW, Lerner E, Courneya KS. A randomized trial of a lifestyle intervention in obese endometrial cancer survivors: quality of life outcomes and mediators of behavior change. Health Qual Life Outcomes 2009; 7: 17.(Ⅰb)


        第5 章
        骨軟部腫瘍またはがんの骨転移と診断され,治療が行われる予定の患者または行われた患者

        CQ 01

        原発性骨軟部悪性腫瘍患者に対して,手術(腫瘍摘出術,下肢切断術),放射線療法・化学療法中もしくは治療後にリハビリテーションを行うと,行わない場合に比べて機能障害の改善やADL,QOL の向上が得られるか?

        推奨グレード
        C1

        骨軟部腫瘍症例では腫瘍摘出術や下肢切断術などの外科的治療,化学療法・放射線療法により機能障害や能力障害を高率に生じる。したがって,治療中・治療後にリハビリテーションを実施することを考慮してもよいが,リハビリテーションの効果,適応症例,具体的な介入方法について,十分な科学的根拠はない。


        エビデンス

        骨軟部腫瘍症例に対して患肢温存術や切断術を行うことで,筋力低下や関節可動域制限などの機能障害,歩行能力低下などの能力障害を生じる。

        Sugiura らは下肢の骨軟部腫瘍で患肢温存術を施行された症例を調査した。1 日歩数は健常者と比較して骨軟部腫瘍術後の患者で低下し,軟部腫瘍に比して骨腫瘍で有意に低下がみられたとしている(Ⅲ)1)

        Lampert らは軟部肉腫症例において広範切除と放射線療法を施行した症例の調査を行った。 ROM,MMT,疼痛(Visual Analogue Scale;VAS),浮腫,Functional Capacity(modified Convert Scale)について調査し,頭頸部や上肢の肉腫に比して,下肢の肉腫の症例では浮腫の発生や日常生活動作(activities of daily living;ADL)の低下が多くみられたとしている(Ⅲ)2)

        Hoff man らは下肢の悪性腫瘍により大腿切断となった35 例について,Musculoskeletal Function Assessment(MFA),Short Form 12-General Health Status Survey(SF-12),Physical Performance Battery を調査した。切断者でMFA,SF-12 の身体機能,physical performance が低下していたとしている(Ⅳ)3)

        Gerrand らは下肢の軟部腫瘍症例で患肢温存術を施行した207 例のADL を,Musculoskeletal Tumor Society(MSTS 1993)Score および Toronto Extremity Salvage Score(TESS)にて調査した。表在性の腫瘍ではADL は変化なかったが,深部の腫瘍ではADL が低下していたとしている(Ⅱb)4)

        Davis は軟部腫瘍に関する文献のレビューを行い,約50%で筋力低下や可動域制限などの機能障害や歩行能力低下などの能力障害が残存していたとしている。しかしその症例のバリエーションや治療方法,評価方法がさまざまであることから,データの統合はできなかったとしている(Ⅳ)5)

        これらの機能障害に対してリハビリテーションを実施することを考慮してもよいが,その効果を検証した報告はない。

        付記

        術骨軟部悪性腫瘍の治療と機能障害:

        骨軟部悪性腫瘍の手術例においては筋力低下や関節可動域制限などの機能障害や歩行能力低下などの能力障害を生じることがある。さらに化学療法や放射線療法においても衰弱や倦怠感による廃用から筋力低下を生じる可能性があるので,リハビリテーションを実施することは必要と考えられるが,リハビリテーションの効果に関する明確なエビデンスは得られていない。これは原発性骨腫瘍の発生頻度が比較的低いこと,発生部位による障害のばらつきが大きいことによるものと考えられる。

        今後エビデンスを形成するためには多施設共同研究やシステマティック・レビューなどが必要である。しかし評価方法が統一されていないとこうした比較は困難である。今後は標準化された定義や信頼性のある評価尺度による系統的な評価方法の構築が必要である。その際には,信頼性・妥当性に優れ,普及している評価方法を使用する必要がある。

        文献

        1) Sugiura H, Katagiri H, Yonekawa M, Sato K, Yamamura S, Iwata H. Walking ability and activities of daily living after limb salvage operations for malignant bone and soft-tissue tumors of the lower limbs. Arch Orthop Trauma Surg 2001; 121: 131-4.(Ⅲ)

        2) Lampert MH, Gerber LH, Glatstein E, Rosenberg SA, Danoff JV. Soft tissue sarcoma: functional outcome after wide local excision and radiation therapy. Arch Phys Med Rehabil 1984; 65: 477-80.(Ⅲ)

        3) Hoffman RD, Saltzman CL, Buckwalter JA. Outcome of lower extremity malignancy survivors treated with transfemoral amputation. Arch Phys Med Rehabil 2002; 83: 177-82.(Ⅳ)

        4) Gerrand CH, Wunder JS, Kandel RA, O'Sullivan B, Catton CN, Bell RS, et al. The influence of anatomic location on functional outcome in lower-extremity soft-tissue sarcoma. Ann Surg Oncol 2004; 11: 476-82.(Ⅱb)

        5) Davis AM. Functional outcome in extremity soft tissue sarcoma. Semin Radiat Oncol 1999; 9: 360-8.(Ⅳ)


        CQ 02

        四肢の悪性腫瘍に対して手術が実施される場合,患肢温存術は四肢切断術と比較して,機能予後,ADL,QOL が優れるか?

        推奨グレード
        C1

        患肢温存術と上腕切断・肩離断および下肢切断術との比較では,患肢温存術の機能予後の方が良好とはいえないが,十分な科学的根拠はない。


        エビデンス

        患肢温存術と四肢切断術の比較をした報告がいくつかみられるが,機能予後に関する明確な差はみられていない。

        Sugarbaker らは下肢軟部肉腫症例に対して,切断術および化学療法を実施した群と患肢温存術と 放射線療法,化学療法を実施した群の比較を21 例のRCT にて行っている。Sickness Impact Profile,Barthel Function Scale,Katz Activities of Daily Living Scale にてADL を評価し,Psychosocial Adjustment to Illness Scale にて生活の質(quality of life;QOL)の評価を行ったが,両群間でいずれの評価においても有意差を認めなかった(Ⅱb)1)

        Meller らは肩甲帯周囲の骨軟部腫瘍術後における上肢機能の評価を行った。American Musculoskeletal Tumor Society system にて評価を行い,18 例でgood,11 例でmoderate,1 例でpoor であった。切除方法と機能予後では明確な関係は観察できなかった(Ⅲ)2)

        患肢温存術においては有害事象が患者のQOL を低下させる原因となるため,治療にあたっては有害事象の管理が重要である(Ⅳ)3)

        付記

        切断部位,方法がADL やQOL に与える影響:

        切断と患肢温存術や患肢温存術の術式と機能的予後の関係を評価した質の高い研究はみられなかった。悪性腫瘍の場合は再発のリスクを考慮して切断部位や切断方法が決定される。切除範囲が小さいほど機能障害の程度は低いものと考えられる。術式の決定にあたっては腫瘍の悪性度や部位,大きさ,再発のリスク,手術前の患者のADL などを考慮して総合的に判断する必要があると考える。

        文献

        1) Sugarbaker PH, Barofsky I, Rosenberg SA, Gianola FJ. Quality of life assessment of patients in extremity sarcoma clinical trials. Surgery 1982; 91: 17-23.(Ⅱb)

        2) Meller I, Bickels J, Kollender Y, Ovadia D, Oren R, Mozes M. Malignant bone and soft tissue tumors of the shoulder girdle. A retrospective analysis of 30 operated cases. Acta Orthop Scand 1997; 68: 374-80.(Ⅲ)

        3) 松峯昭彦,内田淳正.機能評価とQOL 悪性骨軟部腫瘍切除後の患肢機能評価とQOL. 関節外科 2005; 24: 811-6.(Ⅳ)


        CQ 03

        転移性骨腫瘍を有する患者において,病的骨折を発生するリスクを予測することは可能か?

        推奨グレード
        B

        既存のリスク予測手法で病的骨折の予測は可能であり,勧められるが,予測精度には限界があることを理解して使用するべきである。


        エビデンス

        骨転移の発生頻度は脊椎39.3%,骨盤16.7%,大腿骨18.0%とされており,体幹や大腿骨に発生しやすい(3)1)。これらは荷重部であり,病的骨折を生じることでADL を著しく損なうものとなる。このためリハビリテーションの実施にあたっては病的骨折のリスクを評価し,これを参考として妥当なゴール設定をする必要がある。

        がん患者の死亡までに至る5 年間の間に,脊椎転移による脊髄症状を呈する症例は少なくとも2.5%とされている(Ⅰb)2)。脊椎転移は脊髄圧迫による麻痺を生じることがあるため,さらに慎重な対応が必要である。

        1. 長管骨転移

          長管骨の病的骨折のリスクの評価方法としては単純X 線によるもの,および疼痛や原発巣など複数の情報からスコアを求めるものがある。

          単純X 線によるものとしては,皮質の長軸方向の破壊範囲が参考になるとしている(1)3)(3)4)(3)5)

          Van der Linden らは大腿骨骨幹部転移において大腿骨長軸方向の長さが30 mm 以上(感度86%,特異度58%)と,骨皮質の50%以上(感度43%,特異度82%)の破壊が骨折を予測する因子であったと報告している(1)3)

          Mirels の骨折リスクスコア(表1)は,長管骨転移を,場所,疼痛,タイプ(溶骨性,造骨性),大きさから点数化して病的骨折のリスクを評価する。12 点満点の評価システムであり,高得点ほど骨折のリスクが高いと判断される。合計点が8 点以上の場合,病的骨折のリスクが高いと判定される。78 例の分析で感度96.3%,特異度78.4%となっている(3)6)

          El-Husseiny は8 名の臨床家によりMirels のスコアでの評価を行い,カッパ統計量によりその再現性を評価している。そこでは検者内信頼性は0.396,検者間信頼性は0.183-0.218 であったとしている(1)7)

          Damron らは53 名の臨床家によりMirels のスコアでの評価を行い,カッパ統計量によりその再現性を評価している。そこでは検者間信頼性は0.292-0.752 であったとしている。そして感度は91%,特異度は35%であったとしている(3)8)

        2. 表1 Mirels による長管骨転移の病的骨折のリスク
            点数
            1 2 3
          場所 上肢 下肢 転子部
          疼痛 軽度 中等度 重度
          タイプ 造骨性 混合性 溶骨性
          大きさ <1/3 1/3-2/3 >2/3

          (Mirels H. Metastatic disease in long bones. A proposed scoring system for diagnosing impending pathologic fractures. Clin Orthop Relat Res 1989; 249: 256-64.)

        3. 脊椎転移

          脊椎転移においては病的骨折のみならず,麻痺のリスク評価が重要となる。このためには脊柱の安定性の評価が必要となる。

          単純X 線による評価法としては,以下の方法がある。Roth らによると72 例,92 椎体の転移巣の後ろ向き調査において21 椎体に骨折を認めたとしている。その骨折を予測する最大の因子はvertebral bulge であったとしている(3)9)

          Taneichi(3)10)らは脊椎の安定性を評価する方法をロジスティック回帰分析にて求めた。椎体圧潰を予測する因子は肋椎関節部の破壊,転移巣の大きさ,椎弓根の破壊であった。胸椎(T1-10)における危険因子は肋椎関節の破壊(OR10.17;p=0.021)と腫瘍の大きさ(腫瘍占拠率が10%上昇する毎にOR2.44;p=0.032)であった。胸腰椎移行部以下(T10-L5)においては腫瘍の大きさ(腫瘍占拠率が10%上昇する毎にOR4.35;p=0.002)および椎弓根の破壊(OR297.08;p=0.009)であった。

        付記

        その他の部位への転移:

        骨盤への転移も頻度は高いが,骨折リスクに関する予測方法はみられなかった。しかし臼蓋は荷重関節であり,転移巣の大きさや疼痛に応じて活動量を調節する必要がある。

        脊椎転移のリスク評価:

        脊椎転移の骨折リスクをスコア化する方法として,2010 年にSpinal Instability Neoplastic Score(SINS)(表2)が, 専門家によるDelphi 法により開発された11)。これは転移部位,動作時や脊椎への負荷時の疼痛,腫瘍の性状,画像所見による椎体アライメントの評価,椎体破壊,脊椎の後外側の障害の程度により脊椎の安定性を点数化するものである。18 点満点のスコアであり,高得点ほど安定性は不良である。6 点以下は安定性あり,7-12 点は中等度,13 点以上は不安定性ありと評価するとしている。

        表2 Spinal Instability Neoplastic Score(SINS)
        臨床所見や画像所見 点数
        転移部位

        移行部 (後頭骨-C2,C7-T2,T11-L1,L5-S1)

        3

        脊椎可動部(C3-C6,L2-L4)

        2

        ある程度強固な部位(T3-T10)

        1

        強固な部位(S2-S5)

        0
        動作時や脊椎への負荷時の疼痛

        あり

        3

        時に疼痛がある

        1

        疼痛はない

        0
        腫瘍の性状

        溶骨性変化

        2

        混合性変化

        1

        造骨性変化

        0
        画像所見による椎体アライメントの評価

        脱臼や亜脱臼の存在

        4

        後弯や側弯変形の存在

        2

        アライメント正常

        0
        椎体破壊

        50%以上の椎体破壊

        3

        50%以下の椎体破壊

        2

        椎体の50%以上が腫瘍浸潤されているが,椎体破壊はない

        1

        いずれもない

        0
        脊椎の後外側の障害(椎間関節,椎弓根,肋椎関節の骨折や腫瘍浸潤)

        両側性

        3

        片側性

        1

        なし

        0

        (Fisher, Charles GA. Novel Classification System for Spinal Instability in Neoplastic Disease: An Evidence-Based Approach and Expert Consensus From the Spine Oncology Study Group. Spine 2010; 35: E1221-9.)

        文献

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        3) Van der Linden YM, Dijkstra PD, Kroon HM, Lok JJ, Noordijk EM, Leer JW, et al. Comparative analysis of risk factors for pathological fracture with femoral metastases. J Bone Joint Surg Br 2004; 86: 566-73.(1)

        4) van der Linden YM, Kroon HM, Dijkstra SP, Lok JJ, Noordijk EM, Leer JW, et al. Simple radiographic parameter predicts fracturing in metastatic femoral bone lesions: results from a randomised trial. Radiother Oncol 2003; 69: 21-31.(3)

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        6) Mirels H. Metastatic disease in long bones. A proposed scoring system for diagnosing impending pathologic fractures. Clin Orthop Relat Res 1989; 249: 256-64.(3)

        7) El-Husseiny M, Coleman N. Inter- and intra-observer variation in classification systems for impending fractures of bone metastases. Skeletal Radiol 2010; 39: 155-60.(1)

        8) Damron TA, Morgan H, Prakash D, Grant W, Aronowitz J, Heiner J. Critical evaluation of Mirels’ rating system for impending pathologic fractures. Clin Orthop Relat Res 2003;(415 Suppl): S201-7.(3)

        9) Roth SE, Mousavi P, Finkelstein J, Chow E, Kreder H, Whyne CM. Metastatic burst fracture risk prediction using biomechanically based equations. Clin Orthop Relat Res 2004; 419: 83-90.(3)

        10) Taneichi H, Kaneda K, Takeda N, Abumi K, Satoh S. Risk factors and probability of vertebral body collapse in metastases of the thoracic and lumbar spine. Spine(Phila Pa 1976) 1997; 22: 239-45.(3)

        付記文献

        11) Fisher, Charles GA. Novel Classification System for Spinal Instability in Neoplastic Disease: An Evidence-Based Approach and Expert Consensus From the Spine Oncology Study Group. Spine 2010; 35: E1221-9.


        CQ 04

        骨転移に対して,病的骨折が生じる前もしくは生じた後に手術を行うと,行わない場合に比べて骨関連事象(SRE)の発生頻度が減少するか,もしくは,ADL,QOL を改善することができるか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.長管骨病的骨折や切迫骨折症例に対して,内固定術を施行することにより疼痛は改善し,歩行能力やADL が改善するので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 2.脊椎転移症例に対しては,疼痛や麻痺の改善およびADL 向上を目的に,脊柱の安定性や麻痺の状況を鑑みて,手術を考慮することが勧められる。

        エビデンス
        1. 長管骨

          切迫骨折や骨折後に内固定を行うことにより,除痛効果や歩行能力の改善が得られたという報告は複数みられる。

          Broos らは大腿骨骨転移による病的骨折の40 症例に対して,人工関節や内固定術を施行した症例の調査を行った。27 例(67.5%)が実用歩行能力を獲得でき,30 例(75%)で疼痛緩和が得られたとしている。その一方で2 例(5%)で内固定材料の破損など有害事象がみられたとしている。生存期間は平均10.2 カ月であった(Ⅲ)1)

          Nilsson らは216 例の大腿骨転移症例に対して,245 件の人工関節や内固定術を施行した症例について疼痛,歩行能力などを評価した。術後に全例で疼痛改善が得られ,歩行不可能であった症例は161 例であったところが,18 例まで減少したとしている。有害事象は47 例にみられ,人工関節脱臼や内固定材料の破損,創感染,肺塞栓などがあったとしている。生存期間の中央値は6 カ月であった(Ⅲ)2)

          Ampil らは大腿骨および脛骨の骨転移により病的骨折あるいは切迫骨折を生じていた22 症例に対して内固定術を施行し,疼痛緩和の有無や入院期間の調査を行った。86.7%の症例で疼痛は緩和し,72.7%の症例が歩行可能となったとしている。3 年後の生存率は18%であった(Ⅲ)3)

          Pretell らは上腕骨に病的骨折を生じ,髄内釘固定を施行した21 例の調査において,疼痛,骨癒合の評価を行っている。VAS による疼痛の平均値は術後に有意に改善した。骨癒合は80%で観察され,手術に関連する有害事象はみられなかったとしている。平均生存期間は22.7 カ月であった(Ⅲ)4)

          Lancaster らは52 症例,57 例の病的骨折や切迫骨折症例の調査を行った。7 例の骨折については放射線を含む保存的治療,そのほかは髄内釘などによる内固定術が施行された。保存的治療を受けた症例では7 例中1 例(14.3%)のみが良好な疼痛緩和と機能予後を獲得できた。観血的治療を受けた症例では7 例で手術に関連する有害事象を生じていた。疼痛緩和は87.2%で得られ,85.4%で良好な機能予後を獲得できていた(Ⅱb)5)

          Zore らは四肢長管骨に骨転移による病的骨折を生じた症例と外傷による骨折を比較する症例対照研究を実施している。術後有害事象および,機能評価としてMuscu1oske1eta1 Tumor Society Score およびToronto Extremity Salvage Score を使用した。術後にこれらのスコアは有意に改善した。病的骨折症例は67 例中12 例で有害事象を発生していた。有害事象としては固定不良3 例,人工関節脱臼2 例,深部静脈血栓症2 例などであったとしている。平均生存期間は7.8 カ月であった(Ⅱb)6)

        2. 脊椎

          Rompe らは106 例の悪性腫瘍脊椎転移症例に対して,緩和的な後方除圧固定術を施行した症例の調査を行っている。術式としては後方除圧固定のみで骨移植は施行していない。術後にFrankel 分類,歩行能力,疼痛,手術による有害事象を調査している。術後疼痛は有意に改善した。術後3 カ月の時点で,術前に麻痺があった56 症例のうち35 症例で麻痺の改善がみられた。麻痺のなかった50 症例のうち3 症例で一時的な不全麻痺を生じた。VAS による疼痛の平均値は術前7.8 から術後3.2 まで改善した。術後有害事象は肺炎9 件,深部静脈血栓症5 件,創感染3 件,ストレス潰瘍2 件であった。6 カ月時の生存率は72%,12 カ月時の生存率は50%であった(Ⅱb)7)

          Hirabayashi らは悪性腫瘍脊椎転移症例に対して,手術を施行した81 例の調査を行っている。ここではFrankel 分類と歩行能力,疼痛,生存期間を調査している。術前に歩行困難であった50 例のうち,27 例が歩行可能となった。術前に歩行できていた31 例のうち,1 例が術後に歩行不可能となった。術後に77%の症例で疼痛改善がみられた。術後の生存期間の中央値は10.6 カ月であった(Ⅱb)8)

          Cochrane Review では,脊椎転移による脊髄圧迫を生じた症例に対する治療介入に関する文献レビューをしている。ここでは手術と放射線療法の組み合わせの効果,放射線療法のみの比較を行っており,以下の2 つの研究がレビューされている。1980 年に報告された椎弓切除術と放射線療法を比較する16 例の研究(Ⅱa)9)では,2 群間の治療後の歩行能力に有意差はみられていなかった。しかしこのレビューの考察では椎弓切除術のみでは治療が不十分であるとして,この結果を手術効果の判定に使用することは適切ではないと考察している。2005 年には腫瘍切除・除圧術と放射線療法を比較する101 例のRCT(Ⅰb)10)が報告されている。必要に応じて骨移植や内固定も追加されている。観血的治療群では治療前に歩行不可能であった症例の63%が歩行可能となったのに対して,放射線療法単独の治療群では19%であったとしている。レビューの考察として,放射線感受性がある腫瘍,麻痺の発生から48 時間以上経過した症例,脊髄圧迫が多発している症例,生命予後が3 カ月以下と予想される症例を除いた歩行不能な症例は,放射線療法よりも前に除圧術を受けるメリットがあるのではないかとしている(Ⅰb)11)

          Bauer らは悪性腫瘍脊椎転移症例67 例に後方除圧固定術を施行した67 例を前向きに調査している。術後のFrankel 分類を調査し,多くの症例でFrankel 分類が改善し,術前に歩行が不可能であった26 例のうち18 例が歩行可能になったとしている。術後6 カ月時点の生存率は51%,1 年での生存率は22%であった。最も多い有害事象は創感染で11 例であった。再手術が必要となった症例は14 例で,脊髄圧迫の再発や内固定材料の弛みによるものであった(Ⅱb)12)

          Kostuik らは転移を含む脊椎腫瘍症例100 例に腫瘍切除,固定術などの観血的治療を実施した100 症例の調査を行い,術後の疼痛,歩行能力,有害事象を評価している。81%で良好な疼痛緩和効果を得ることができた。後方除圧術の40%,前方固定術の71%で歩行能力の改善がみられ,4%で感染,5%で固定不良例がみられた。術後の平均生存期間は11.3 カ月であった(Ⅲ)13)

          Wedin は転移性骨腫瘍症例を後ろ向きに調査し,その再手術率と生命予後を調査した。骨の有害事象に対する手術後の1 年生存率は0.3,3 年生存率は0.008 であった。

          多変量解析の結果,完全な病的骨折や軟部組織への転移は生命予後不良を予測する因子であった。単発転移,乳がん,前立腺がん,腎がん,骨髄腫,リンパ腫は予後良好を予測する因子であった。病的骨折に対する観血的治療に対して再手術が必要になった症例は228 手術中26 例であった。再手術が必要となる症例は術後長期生存例に多かった(Ⅲ)14)

          付記

          骨転移に対する手術方法:

          脊椎転移や四肢長管骨の転移症例では平均生存期間が1 年未満であることが多い。このため,生命予後に応じて手術適応や術式を決定する必要がある。

          特に生命予後が良好と予測される症例においては,比較的ADL が高いことや転移病巣が長期間の負荷にさらされることにより,再手術が必要になる症例も生じ得る。このため生命予後が良好な症例では,より強固な内固定が必要とされる。

          骨盤転移に対する手術の適応:

          骨盤転移による病的骨折のリスク予測方法は見当たらない。画像所見や患者のADL から骨折のリスクを判断する必要がある。股関節周囲の骨破壊に対して人工関節置換術を行い,良好な成績を得たとしている報告もある15)ため,必要に応じて手術適応も検討する必要がある。

          骨転移と生命予後:

          乳がんや前立腺がんなどの生命予後が比較的良好ながん症例では長期間にわたり獲得されたADL を実行されることが予想されるため,その経過中の病的骨折などに注意する必要がある。このためリスク管理にあたっては,生命予後も考慮する必要がある。骨転移症例において使用しやすい生命予後の予測方法にKatagiri らの方法16)とTokuhashi らの方法17)がある。

          Katagiri らは原発巣,ADL,内臓転移,骨転移,化学療法の既往の有無の5 項目からなる予測モデルを開発している16)。合計点が高得点であるほど予後不良であり,合計点が0-2 点では1 年生存率90%,3-5 点では1 年生存率50%,6 点以上では1 年生存率10%と予測するものである(表1)。

          Tokuhashi らは悪性腫瘍脊椎転移症例に対する前向きコホート調査を行った17)。183 例が対象となり,生命予後を予測するTokuhashi score と実際の生存期間との関係を調査した。

          6 項目,15 点満点で構成され,高得点ほど生命予後は良好と予測される。0-8 点では6 カ月未満,9-11 点では1 年未満,12-15 点では1 年以上の生存と予測する(表2)。ここでのPerformance Status(PS)はKarnofsky Performance Scale が使用されている。Tokuhashi score の予測生存期間は87.9%で的中していたとしている。

          表1 Katagiri らの方法
          原発巣:悪性リンパ腫,前立腺がん,乳がん,骨髄腫,甲状腺がん 0 点
          原発巣:腎がん,子宮がんなど,そのほかのがん,肉腫 2 点
          原発巣:肺がん,肝細胞がん,胃がん 3 点
          Performance Status 3, 4 1 点
          内臓転移あり 2 点
          過去の化学療法 1 点
          骨転移多発 1 点

          合計点が0-2 点では1 年生存率90%,3-5 点では1 年生存率50%,6 点以上では1 年生存率10%と予測する。

          (Katagiri H, Takahashi M, Wakai K, Sugiura H, Kataoka T, Nakanishi K. Prognostic factors and a scoring system for patients with skeletal metastasis. J Bone Joint Surg Br 2005; 87: 698-703.)

          表2 Tokuhashi Score
          全身状態(Performance Status) 不良(PS 10-40%) 0
          中等度(PS 50-70%) 1
          良好(PS 80-100%) 2
          脊椎以外の他の骨転移数 3 箇所以上 0
          1-2 箇所 1
          なし 2
          脊椎転移の数 3 箇所以上 0
          1-2 箇所 1
          なし 2
          腫瘍臓器転移の有無 切除不能 0
          切除可能 1
          転移なし 2
          原発巣の部位 肺,骨肉腫,胃 0
          膀胱,食道,膵臓 1
          肝臓,胆嚢,原発不明 2
          その他 3
          直腸 4
          甲状腺,乳腺,前立腺,カルチノイド 5
          麻痺の状態 完全麻痺(Frankel A, B) 0
          不全麻痺(Frankel C, D) 1
          麻痺なし(Frankel E) 2
              合計15 点

          高得点ほど生命予後は良好と予測される。0-8 点では6 カ月未満,9-11 点では1 年未満,12-15 点では1 年以上の生存と予測する。

          (Tokuhashi Y, Ajiro Y, Umezawa N. Outcome of treatment for spinal metastases using scoring system for preoperative evaluation of prognosis. Spine 2009; 34: 69-73.)

          文献

          1) Broos PL, Rommens PM, Vanlangenaker MJ. Pathological fractures of the femur: improvement of quality of life after surgical treatment. Arch Orthop Trauma Surg 1992; 111: 73-7.(Ⅲ)

          2) Nilsson J, Gustafson P. Surgery for metastatic lesions of the femur: good outcome after 245 operations in 216 patients. Injury 2008; 39: 404-10.(Ⅲ)

          3) Ampil FL, Sadasivan KK. Prophylactic and therapeutic fixation of weight-bearing long bones with metastatic cancer. South Med J 2001; 94: 394-6.(Ⅲ)

          4) Pretell J, Rodriguez J, Blanco D, Zafra A, Resines C. Treatment of pathological humeral shaft fractures with intramedullary nailing. A retrospective study. Int Orthop 2010; 34: 559-63.(Ⅲ)

          5) Lancaster JM, Koman LA, Gristina AG, Rovere GD, Poehling GG, Nicastro JF, et al. Pathologic fractures of the humerus. South Med J 1988; 81: 52-5.(Ⅱb)

          6) Zore Z, Filipovic Zore I, Matejcic A, Kamal M, Arslani N, Knezovic Zlataric D. Surgical treatment of pathologic fractures in patients with metastatic tumors. Coll Antropol 2009; 33: 1383-6.(Ⅱb)

          7) Rompe JD, Hopf CG, Eysel P. Outcome after palliative posterior surgery for metastatic disease of the spine ─ evaluation of 106 consecutive patients after decompression and stabilisation with the Cotrel-Dubousset instrumentation. Arch Orthop Trauma Surg 1999; 119: 394-400.(Ⅱb)

          8) Hirabayashi H, Ebara S, Kinoshita T, Yuzawa Y, Nakamura I, Takahashi J, et al. Clinical outcome and survival after palliative surgery for spinal metastases: palliative surgery in spinal metastases. Cancer 2003; 97: 476-84.(Ⅱb)

          9) Young RF, Post EM, King GA. Treatment of spinal epidural metastases. randomized prospective comparison of laminectomy and radiotherapy. J Neurosurg 1980; 53: 741-8.(Ⅱa)

          10) Patchell RA, Tibbs PA, Regine WF, Payne R, Saris S, Kryscio RJ, et al. Direct decompressive surgical resection in the treatment of spinal cord compression caused by metastatic cancer: a randomised trial. Lancet 2005; 366: 643-8.(Ⅰb)

          11) George R, Jeba J, Ramkumar G, Chacko AG, Leng M, Tharyan P. Interventions for the treatment of metastatic extradural spinal cord compression in adults. Cochrane Database Syst Rev 2008;(4): CD006716.(Ⅰb)

          12) Bauer HC. Posterior decompression and stabilization for spinal metastases. Analysis of sixty-seven consecutive patients. J Bone Joint Surg Am 1997; 79: 514-22.(Ⅱb)

          13) Kostuik JP, Errico TJ, Gleason TF, Errico CC. Spinal stabilization of vertebral column tumors. Spine(Phila Pa 1976)1988; 13: 250-6.(Ⅲ)

          14) Wedin R. Surgical treatment for pathologic fracture. Acta Orthop Scand Suppl 2001; 72: 1-29.(Ⅲ)

          付記文献

          15) Katrak P, O’Connor B, Woodgate I. Rehabilitation after total femur replacement: a report of 2 cases. Arch Phys Med Rehabil 2003; 84: 1080-4.

          16) Katagiri H, Takahashi M, Wakai K, Sugiura H, Kataoka T, Nakanishi K. Prognostic factors and a scoring system for patients with skeletal metastasis. J Bone Joint Surg Br 2005; 87: 698-703.

          17) Tokuhashi Y, Ajiro Y, Umezawa N. Outcome of treatment for spinal metastases using scoring system for preoperative evaluation of prognosis. Spine 2009; 34: 69-73.

          18) Tang V, Harvey D, Park Dorsay J, Jiang S, Rathbone MP. Prognostic indicators in metastatic spinal cord compression: using functional independence measure and Tokuhashi scale to optimize rehabilitation planning. Spinal Cord 2007; 45: 671-7.


        CQ 05

        骨転移を有する患者に対して,リハビリテーションを行うと,行わない場合に比べて機能障害の改善やADL,QOL の向上が得られるか?

        推奨グレード
        B

        脊椎転移症例に対して,リハビリテーションを実施することによりADL やQOL の向上が得られるため,行うよう勧められる。


        エビデンス

        McKinley らは腫瘍による脊髄圧迫があり,脊髄損傷リハビリテーションユニットに入院加療した32 例の調査を行っている。機能的自立度評価法(functional independence measure;FIM)と在院日数を退院時と退院3 カ月後に調査した。平均在院日数は27 日,自宅退院率は84%であった。退院時のFIM は有意に改善した。退院後3 カ月の時点でフォロー可能であった20 症例については75%で改善したADL が維持されていた(Ⅱb)1)

        Ruff らは硬膜外転移による対麻痺により歩行不可能となった症例に対して,2 週間の積極的なリハビリテーションを実施した群と,実施しなかった群に分けて症例対照研究を実施している。リハビリテーションの内容としては,移乗訓練,排泄訓練,呼吸訓練,栄養管理,皮膚の管理を実施した。痛み(Numerical Rating Scale),抑うつ傾向にBeck Depression Inventory-Second Edition,生活に対する満足度にSatisfaction with Life Scale を使用して,リハビリテーション実施前,リハビリテーション開始後2 週時,死亡直前の数値で比較を行った。リハビリテーション実施群では対照群と比較して疼痛,抑うつ傾向,満足度が有意に良好であった。その効果は死亡直前まで持続していた(Ⅱa)2)

        Tang らは脊椎転移により脊髄圧迫があり,リハビリテーション病棟に入院した63 症例を後ろ向きに調査した。Tokuhashi Score,生存期間,入院時と退院時のFIM を評価した。入院日数の中央値は23 日であった。生存期間の中央値は10 カ月であった。入院時FIM の中央値は83,退院時FIM の中央値は102 と有意に改善した。Tokuhashi score が高得点(9-15 点)の症例では,低得点(0-8 点)の症例と比較して有意にFIM 利得が大きかった(Ⅱb)3)

        Bunting らは,四肢の骨転移による病的骨折でリハビリテーション病院に入院した58 症例を後ろ向きにコホート調査した。入院時に独歩可能であった症例はなかったが,退院時には23 例が独歩可能となっていた。約60%の患者が自宅退院可能となった。自宅退院可能であった群に対して入院時と退院時のKenny Score を比較した。自宅退院可能となった症例ではKenny Score は平均17.2 から22.9 へ有意に改善していた。その一方で高カルシウム血症症例や鎮静剤の注射が必要な症例では生命予後は不良であった(Ⅲ)4)

        付記

        骨転移患者に対するリハビリテーション:

        骨転移は脊柱・骨盤や大腿骨など荷重のかかる部分に多い。このためリハビリテーションによる負荷,ADL 向上に伴い,病的骨折を生じる危険性がある。リハビリテーション中に骨折を発生した症例の報告などはみられないが,十分に注意するべきである。事前にそのリスクを評価し,治療内容やゴール設定を行う必要がある。ゴール設定にあたっては生命予後も考慮して総合的な判断が必要である。杖などの歩行補助具も必要に応じて使用するべきである。

        脊椎転移についてはリハビリテーションの効果を論じた研究が散見されたが,脊椎転移以外の骨転移に関する報 告はみられなかった。今後はその他の部位に関する研究が期待される。

        文献

        1) McKinley WO, Conti-Wyneken AR, Vokac CW, Cifu DX. Rehabilitative functional outcome of patients with neoplastic spinal cord compressions. Arch Phys Med Rehabil 1996; 77: 892-5.(Ⅱb)

        2) Ruff RL, Ruff SS, Wang X. Persistent benefits of rehabilitation on pain and life quality for nonambulatory patients with spinal epidural metastasis. J Rehabil Res Dev 2007; 44: 271-8.(Ⅱa)

        3) Tang V, Harvey D, Park Dorsay J, Jiang S, Rathbone MP. Prognostic indicators in metastatic spinal cord compression: using functional independence measure and Tokuhashi scale to optimize rehabilitation planning. Spinal Cord 2007; 45: 671-7.(Ⅱb)

        4) Bunting RW, Boublik M, Blevins FT, Dame CC, Ford LA, Lavine LS. Functional outcome of pathologic fracture secondary to malignant disease in a rehabilitation hospital. Cancer 1992; 69: 98-102.(Ⅲ)


        CQ 06

        骨転移を有する患者に対して,補装具を使用すると,使用しない場合に比べて骨関連事象(SRE)の発生頻度が減少するか,もしくは,ADL,QOL を改善することができるか?

        推奨グレード
        C1

        脊椎転移や四肢長管骨の転移を有する患者では,経過中に病的骨折や脊髄圧迫による麻痺を生じて,ADL やQOL が低下する場合がある。これらのリスクがある症例に対して装具療法を考慮するべきであるが,十分な科学的根拠はない。


        エビデンス

        脊椎転移や四肢長管骨の転移を有する患者が病的骨折を生じると,ADL やQOL の低下につながるので,予防的に装具療法を行うことを考慮するべきである1)。しかし補装具を使用することにより,骨関連事象(skeletal related event;SRE)の発生頻度の減少やADL,QOL の改善が得られたとするエビデンスは存在しない。

        付記

        骨転移の装具療法の位置づけ:

        脊椎転移や四肢長管骨の転移を有する患者が病的骨折を生じると,ADL やQOL の低下につながるので,予防的に装具療法を行うことを考慮するべきであるが,明確なエビデンスは存在しない。骨転移患者の病態は多様であるため,ランダム化比較試験(RCT)などの研究デザインの構築が困難であるためと考えられるが,今後は,多施設共同研究などによるエビデンスの蓄積により,補装具の効果の判定を行っていく必要がある。

        装具の種類としては頸椎にはフィラデルフィアカラー,胸腰椎にはダーメンコルセットやジュエット型体幹装具などがある。四肢に使用する装具としてFunctional Brace がある。下肢や骨盤の荷重部の骨転移症例では免荷を目的とした杖や歩行器を処方する。これらを骨折リスクと活動レベルに応じて使い分ける。

        適応の基準としては,上記に述べた病的骨折のリスクの程度に応じて考慮するべきである。しかし骨転移により破壊された骨が自然経過により回復する可能性は低く,良好な生命予後が期待できる場合は内固定術や放射線療法の併用を考慮する必要がある。

        骨転移に対して放射線療法を施行される機会は多く,良好な除痛効果が報告されている。しかし手術による固定術とは異なり,転移部の病的骨折のリスクはすぐには解決されない点に注意が必要である。照射後,骨の強度が回復するまでには2-3 カ月を要するものと考えられる。このため,補装具を補助的に使用することを考慮するべきである。

        文献

        1) 名井陽.その他の保存療法.骨転移治療ハンドブック(がんの骨転移に対する予後予測方法の確立と集学的治療法の開発班 編),金原出版,2004.


        CQ 07

        骨転移を有する患者に対して,放射線療法を行うと,行わない場合に比べて骨関連事象(SRE)の発生頻度が減少するか,もしくは,ADL,QOL を改善することができるか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.四肢の骨転移を有する患者に対して,手術と放射線療法の併用を行うと,疼痛が緩和しADL が向上するので,勧められる。
        推奨グレード
        C1
        1. 2.脊髄圧迫を伴う脊椎転移を有する患者に対して,放射線療法を単独で行うことを考慮してもよいが,それにより,麻痺やADL が改善したとする十分な科学的根拠はない。

        エビデンス

        Cochrane Review では疼痛を伴う骨転移に対する1 回照射と多数回照射の効果について11 件の報告をレビューしている。骨転移による疼痛に対する効果は1 回照射法70.0%,多数回照射法では71.7%であり,両群の疼痛抑制効果は同等であった(オッズ比0.90,95%信頼区間0.76-1.06)。しかし1 回照射の症例では再照射が必要になる症例が1 回照射法22.6%,多数回照射法では7.6%(オッズ比3.49,95%信頼区間:2.71-4.50)と1 回照射法で多くみられた。また病的骨折も1 回照射法3.0%,多数回照射法では1.7%と1 回照射法で多くみられた(オッズ比1.81,95%信頼区間:1.05-3.11)。脊髄圧迫の発生率については1 回照射法1.9%,多数回照射法では1.4%で有意差を認めなかったとしている(Ⅰb)1)

        Cochrane Review では,脊椎転移による脊髄圧迫を生じた症例に対する治療介入に関する文献レビューを行っている。脊椎に対する放射線療法の照射方法による効果について検討されている。照射前に歩行できなかった症例が歩行できるようになる確率は30 Gy 8 分割照射で28%,16 Gy 2 分割照射で29%であり,リスク比は0.98,95%信頼区間は0.51-1.88 であったとしている(Ⅰb)2)

        Kida らは脊椎転移により麻痺を生じた52 症例の放射線療法による効果を調査している。疼痛は61.7%で改善したが,麻痺の改善が得られたものは25.0%であった。6 カ月時の生存率は34.5%,1 年時の生存率は19.9%であった(Ⅲ)3)

        Townsend らは大腿骨,臼蓋,上腕骨への骨転移症例で手術および放射線療法を実施した群と手術のみの群の2 群での症例対照研究を実施している。病的骨折の有無とFunctional Status,再手術率を調査している。Functional Status が改善した症例は手術および放射線療法群で53%,手術単独群で11.5%であり,有意差を認めた。また再手術の頻度も放射線療法併用群で少なかった(Ⅱa)4)

        付記

        放射線療法の適応:

        放射線療法は疼痛緩和に対して有効であるため,疼痛によるADL 低下がみられる症例では積極的に適応を考慮するべきである。転移巣の放射線感受性は原発巣と同様であることが多いため,原発巣も考慮して適応を判断する必要がある。病的骨折の予防効果については,手術による固定術とは異なり,転移部の病的骨折のリスクはすぐには解決されない点にも注意が必要である。照射後に骨硬化が進み,骨の強度が回復するまでには2-3 カ月を要することが多いので,その間は脊椎であればカラーやコルセットなどで外固定,長管骨の場合には杖での免荷を行い,起居動作やADL 場面で骨転移部位への負担のかかる動作を行わないように指導することが重要である。

        良好な生命予後が期待でき,ADL の高い症例では内固定術などの追加も考慮する必要がある(CQ04 参照)。

        文献

        1) Sze WM, Shelley M, Held I, Mason M. Palliation of metastatic bone pain: single fraction versus multifraction radiotherapy-a systematic review of the randomised trials. Cochrane Database Syst Rev 2004; (2): CD004721.(Ⅰb)

        2) George R, Jeba J, Ramkumar G, Chacko AG, Leng M, Tharyan P. Interventions for the treatment of metastatic extradural spinal cord compression in adults. Cochrane Database Syst Rev 2008;(4): CD006716.(Ⅰb)

        3) Kida A, Taniguchi S, Fukuda H, Sakai K. Radiation therapy for metastatic spinal tumors. Radiat Med 2000; 18: 15-20.(Ⅲ)

        4) Townsend PW, Rosenthal HG, Smalley SR, Cozad SC, Hassanein RE. Impact of postoperative radiation therapy and other perioperative factors on outcome after orthopedic stabilization of impending or pathologic fractures due to metastatic disease. J Clin Oncol 1994; 12: 2345-50.(Ⅱa)


        CQ 08

        骨転移を有する患者に対して,ビスフォスフォネート製剤等の薬剤を使用すると,使用しない場合に比べて骨関連事象(SRE)の発生頻度が減少するか,もしくは,ADL,QOL を改善することができるか?

        推奨グレード
        A

        骨転移を有する患者に対して,ビスフォスフォネート製剤を使用すると,骨関連事象(SRE)の発生頻度は減少するとともに,その発生を遅らせるので,強く勧められる。


        エビデンス

        Cochrane Database Systematic Review において,ビスフォスフォネート製剤(ゾレドロネート,クロドロネート,パミドロネート,イバンドロネート)は進行乳がん症例の骨関連事象を17%低下させた(リスク比0.83;95%信頼区間:0.78-0.89)。薬剤別の効果はパミドロネート静脈注射でリスク比0.77;95%信頼区間:0.69-0.87,ゾレドロネート静脈注射でリスク比0.59;95%信頼区間:0.42-0.82,クロドロネート経口投与でリスク比0.84;95%信頼区間:0.72-0.98 であった(Ⅰa)1)

        Wardley らは乳がん骨転移症例に対して入院と在宅環境でゾレドロネート投与を行い,環境による差があるかをクロスオーバー比較試験で調査した。The Brief Pain Inventory(BPI)により疼痛を,The European Organisation for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire-Core 30 (EORTC QLQ-C30)にてQOL を評価した。治療後には疼痛やQOL は有意に改善した。入院環境と比較して在宅環境でより成績は良好であった(Ⅱa)2)

        Cochrane Database Systematic Review において,ビスフォスフォネート製剤(ゾレドロネート,クロドロネート,パミドロネート,エチドロネート)は進行前立腺がんの疼痛を,統計学的に有意ではないものの,改善(オッズ比1.54;95%信頼区間:0.97-2.44)した。同様に統計学的に有意ではないものの,骨関連事象の発生率も低下していた(オッズ比0.79;95%信頼区間:0.62-1.00)(Ⅰb)3)

        Saad らは前立腺がん骨転移症例にゾレドロネートを投与するRCT を行った。ゾレドロネート投与群で有意に骨関連事象を抑制し,骨代謝マーカーも減少した。疼痛緩和効果も得られた。しかし原疾患の進行,PS,QOL は差が得られなかったとしている(Ⅰb)4)

        Cochrane Database Systematic Review において,ビスフォスフォネート製剤(ゾレドロネート,クロドロネート,パミドロネート,エチドロネート,イバンドロネート)が多発性骨髄腫症例に与える影響を調査した17 文献をレビューしている。ビスフォスフォネート投与により椎体の病的骨折は有意に減少(リスク比0.74;95%信頼区間:0.62-0.89),骨関連事象は有意に減少(リスク比0.80;95%信頼区間:0.72-0.89),疼痛は有意に改善(リスク比0.75;95%信頼区間:0.60-0.95)した。生命予後,高カルシウム血症,椎体以外の骨折については有意差を認めなかった。ビスフォスフォネート製剤間で効果の差は認めなかった(Ⅰa)5)

        Lipton らは進行腎がんで骨転移を生じている症例でゾレドロネート投与を行うRCT を実施している。9 カ月間のフォローを行った結果,ゾレドロネート投与症例では対照群と比較して有意に骨関連事象が少なかった。その発生率は投与群で37%,非投与群で74%であった(Ⅰb)6)

        Rosen らは乳がんおよび前立腺がんを除く固形がんで骨転移のある症例に,ゾレドロネート投与を行うRCT を実施している。骨関連事象の発生の有無を36 週間のフォローで調査した。骨関連事象の発生率は投与群で35-38%,プラセボ群で44%であった(Ⅰb)7)

        Cochrane Database Systematic Review において,骨転移に対するカルシトニン製剤の皮下注射の効果が調査されている。カルシトニン製剤の使用にて有意な疼痛緩和や鎮痛剤使用量の減少はみられず,その他の有害事象,QOL,生存期間に対しても有意差は得られなかった(Ⅰb)8)

        付記

        ビスフォスフォネート製剤には病的骨折や疼痛緩和などの骨関連事象を抑制する効果が報告されているので,生命予後が比較的良好と予測される症例では積極的に使用を考慮するべきである。しかし生命予後が不良な症例に対しての効果についてはエビデンスは十分でなく,症例毎に個別の判断が必要である。またADL 改善に関するエビデンスはないが,疼痛改善や骨折の回避により間接的にADL を維持・向上する可能性があると考えられる。

        ビスフォスフォネート製剤以外の薬剤として,近年では抗RANKL 抗体製剤であるデノスマブの使用が急速に増加している。今後の報告が待たれるところである。

        文献

        1) Pavlakis N, Schmidt R, Stockler M. Bisphosphonates for breast cancer. Cochrane Database Syst Rev 2005;(3): CD003474.(Ⅰa)

        2) Wardley A, Davidson N, Barrett-Lee P, Hong A, Mansi J, Dodwell D, et al. Zoledronic acid significantly improves pain scores and quality of life in breast cancer patients with bone metastases: a randomised, crossover study of community vs hospital bisphosphonate administration. Br J Cancer 2005; 92: 1869-76.(Ⅱa)

        3) Yuen KK, Shelley M, Sze WM, Wilt T, Mason MD. Bisphosphonates for advanced prostate cancer. Cochrane Database Syst Rev 2006;(4): CD006250.(Ⅰb)

        4) Saad F, Gleason DM, Murray R, Tchekmedyian S, Venner P, Lacombe L, et al. A randomized, placebocontrolled trial of zoledronic acid in patients with hormone-refractory metastatic prostate carcinoma. J Natl Cancer Inst 2002; 94: 1458-68.(Ⅰb)

        5) Mhaskar R, Redzepovic J, Wheatley K, Clark OA, Miladinovic B, Glasmacher A, et al. Bisphosphonates in multiple myeloma. Cochrane Database Syst Rev 2010;(3): CD003188.(Ⅰa)

        6) Lipton A, Zheng M, Seaman J. Zoledronic acid delays the onset of skeletal-related events and progression of skeletal disease in patients with advanced renal cell carcinoma. Cancer 2003; 98: 962-9.(Ⅰb)

        7) Rosen LS, Gordon D, Tchekmedyian S, Yanagihara R, Hirsh V, Krzakowski M, et al. Zoledronic acid versus placebo in the treatment of skeletal metastases in patients with lung cancer and other solid tumors: a phase Ⅲ, double-blind, randomized trial ─ the Zoledronic Acid Lung Cancer and Other Solid Tumors Study Group. J Clin Oncol 2003; 21: 3150-7.(Ⅰb)

        8) Martinez-Zapata MJ, Roque M, Alonso-Coello P, Catala E. Calcitonin for metastatic bone pain. Cochrane Database Syst Rev 2006;(3): CD003223.(Ⅰb)


        第6 章
        原発性脳腫瘍または転移性脳腫瘍と診断され,治療が行われる予定の患者または行われた患者

        CQ 01

        脳腫瘍に対するリハビリテーションにおいて,系統的な評価を行うことは必要か?

        推奨グレード
        B
        リハビリテーションを行うにあたり,全般的身体機能,日常生活動作,生活の質,高次脳機能障害を患者の状態に応じて系統的に評価する必要があり,以下の尺度を用いることが勧められる。
        1. 1)全般的身体機能:KPS(Karnofsky Performance Status)Scale
        2. 2)日常生活動作:機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;FIM),Barthel 指数,こどものための機能的自立度評価法(Functional Independence Measure for Children;WeeFIM)
        3. 3)生活の質:FACT-Br(Functional Assessment of Cancer Therapy-Brain),SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)
        4. 4)高次脳機能障害の総合的評価:MMSE(Mini-Mental State Examination)

        エビデンス

        がんの全般的な身体機能の評価としてKPS(Karnofsky Performance Status)Scale があり,脳腫瘍の場合でも用いられる(1)1-3)

        脳腫瘍に対してリハビリテーションを行う時,日常生活動作(activities of daily living;ADL)の評価として機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;FIM)1, 4-7)やBarthel 指数2, 8-10)がよく用いられ,リハビリテーションの有効性が報告されている(Ⅱb-Ⅲ)。小児ではこどものための機能的自立度評価法(Functional Independence Measure for Children;WeeFIM)11)が用いられる。Barthel 指数はKPS と相関し(1)2),また,生存期間とも関連性が認められる(Ⅲ)2)。FIM もKPS との相関がみられる(1)1)

        生活の質(quality of life;QOL)の評価では,脳腫瘍に特化したものとしてFACT-Br(Functional Assessment of Cancer Therapy-Brain)(2b)1, 10)がある。リハビリテーションによりQOL が改善し,また,QOL の改善はADL の改善より遅れることが指摘されている(Ⅱb)1)。一般的なQOL 尺度であるSF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)が用いられることもある(2b)12)

        高次脳機能障害の評価には多くの種類の神経心理学的検査があり,記憶,注意,遂行機能などが評価されるが(Ⅰb)13),スクリーニング検査として有用なのはMMSE(Mini-Mental State Examination)3)である。MMSE はKPS および神経学的所見と相関し(1)3),病状の変化を捉えることができる。また,病状が進行するとき,ADL,QOL の悪化に先行して神経心理学的検査による結果が悪化し(Ⅱb)10),注意の低下がADL の低下を招く(Ⅲ)14)ことが指摘されている。

        付記

        MMSE とHDS-R:

        脳腫瘍では高次脳機能障害が高率にみられ,20-80%と報告されており8, 15),スクリーニング検査は重要である。MMSE は11 項目からなる総合的な認知機能のスクリーニング検査で,国際的に頻用される。30 点満点である。

        なお,MMSE は知的財産権(著作権)が認められており,無断使用はできない(http://www4.parinc.com/Products/Product.aspx?ProductID=MMSE)。本邦では改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa Dementia Rating Scale-Revised;HDS-R)も用いられる。高次脳機能障害の症状については本章CQ03 参照。

        文献

        1) Huang ME, Wartella JE, Kreutzer JS. Functional outcomes and quality of life in patients with brain tumors: a preliminary report. Arch Phys Med Rehabil 2001; 82: 1540-6.(Ⅱb, 1・2b)

        2) Brazil L, Thomas R, Laing R, Hines F, Guerrero D, Ashley S, et al. Verbally administered Barthel Index as functional assessment in brain tumour patients. J Neurooncol 1997; 34: 187-92.(Ⅱ, 1)

        3) Choucair AK, Scott C, Urtasun R, Nelson D, Mousas B, Curran W. Quality of life and neuropsychological evaluation for patients with malignant astrocytomas: RTOG 91-14. Radiation Therapy Oncology Group. Int J Radiat Oncol Biol Phys 1997; 38: 9-20.(1)

        4) Fu JB, Parsons HA, Shin KY, Guo Y, Konzen BS, Yadav RR, et al. Comparison of functional outcomes in low-and high-grade astrocytoma rehabilitation inpatients. Am J Phys Med Rehabil 2010; 89: 205-12.(Ⅱb)

        5) Greenberg E, Treger I, Ring H. Rehabilitation outcomes in patients with brain tumors and acute stroke: comparative study of inpatient rehabilitation. Am J Phys Med Rehabil 2006; 85: 568-73.(Ⅱb)

        6) 和田勇治,赤星和人,永田雅章.脳腫瘍開頭術後患者の入院リハビリテーションの機能的帰結. 総合リハビリテーション 2010; 38: 275-80.(Ⅱb)

        7) Marciniak CM, Sliwa JA, Heinemann AW, Semik PE. Functional outcomes of persons with brain tumors after inpatient rehabilitation. Arch Phys Med Rehabil 2001; 82: 457-63.(Ⅱb)

        8) 百瀬由佳,小林一成.脳腫瘍入院患者に対する早期リハビリテーションの効果.Jpn J Rehabil Med 2007; 44: 745-50.(Ⅱb)

        9) 水落和也,小野恵子.悪性腫瘍による脊髄障害と脳腫瘍による麻痺への対応.J Clin Rehabil 2001; 10: 604-9.(Ⅱ)

        10) Li J, Bentzen SM, Renschler M, Mehta MP. Relationship between neurocognitive function and quality of life after whole-brain radiotherapy in patients with brain metastasis. Int J Radiat Oncol Biol Phys 2008; 71: 64-70.(Ⅱb, 2b)

        11) Philip PA, Ayyangar R, Vanderbilt J, Gaebler-Spira DJ. Rehabilitation outcome in children after treatment of primary brain tumor. Arch Phys Med Rehabil 1994; 75: 36-9.(Ⅱb)

        12) Neil-Dwyer G, Lang D, Garfield J. The realities of postoperative disability and the carer’s burden. Ann R Coll Surg Engl 2001; 83: 215-8.(2b)

        13) Gehring K, Sitskoorn MM, Gundy CM, Sikkes SA, Klein M, Postma TJ, et al. Cognitive rehabilitation in patients with gliomas: a randomized, controlled trial. J Clin Oncol 2009; 27: 3712-22.(Ⅰb)

        14) Papazoglou A, King TZ, Morris RD, Morris MK, Krawiecki NS. Attention mediates radiation’s impact on daily living skills in children treated for brain tumors. Pediatr Blood Cancer 2008; 50: 1253-7.(Ⅲ)

        付記文献

        15) Mukand JA, Blackinton DD, Crincoli MG, Lee JJ, Santos BB. Incidence of neurologic deficits and rehabilitation of patients with brain tumors. Am J Phys Med Rehabil 2001; 80: 346-50.


        CQ 02

        脳腫瘍の運動障害に対して,リハビリテーションを行うことは,行わない場合に比べて日常生活動作(ADL),入院期間,QOL を改善させるか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.脳腫瘍の組織型,良性・悪性,原発性・転移性等の病型を問わず,また,小児においても,脳腫瘍の運動障害に対してリハビリテーションが有効であり,ADL,入院期間,QOL の改善が期待できるため,勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 2.理学療法,作業療法,言語療法,レクリエーション,看護,ケースワーク等を組み合わせた包括的リハビリテーションが効果的であり,行うよう勧められる。

        エビデンス

        脳腫瘍術後のリハビリテーションの効果は病型によらず有効であるが,その効果に差がみられることがある。

        高悪性度星状細胞腫21 例と低悪性度星状細胞腫21 例の入院リハビリテーション(約2 週間)の比較では,両者ともFIM の改善がみられ,前者はFIM が入院時に低い傾向にあるが,FIM 効率は同等であったと報告されている(Ⅱb)1)。低悪性度星状細胞腫,多形膠芽腫,髄膜腫の比較でもリハビリテーション効果に差異は認められないという報告がある(Ⅱb)2)。髄膜腫128 例と神経膠腫40 例の比較では,術後リハビリテーションの効果は同等にみられFIM 効率と利得に差異はなかったとする報告(Ⅱb)3)があるが,一方,髄膜腫19 例と神経膠腫68 例の比較では前者でBarthel 指数の改善が大きかったとする報告(Ⅱb)4)もある。

        原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍の比較ではFIM 効率は同等である(Ⅱb)5)。また,放射線療法の追加でFIM 効率が増大する(Ⅱb)5)。初発と再発の比較では,再発の方がリハビリテーション効果が不良で(Ⅱb)5),原発性脳腫瘍に限っても再発の方がリハビリテーション効果が不良である(Ⅲ)6)。脳腫瘍の部位による検討では,後頭蓋窩腫瘍20 例と小脳橋角部腫瘍20 例の比較で,後者の方が運動能力の改善が大きかったことが報告されている(Ⅱb)7)

        リハビリテーション効果は小児の原発性腫瘍においても認められ,こどものための機能的自立度評価法(WeeFIM)の改善がみられる(Ⅱb)8)

        脳腫瘍のリハビリテーションでは脳卒中と同等の効果が認められ(Ⅱb)2, 3),脳腫瘍の方が入院期間が短いとする報告(Ⅱb)3)がある。また,脳外傷との比較でも同等のリハビリテーション効果が認められる(Ⅱb)9)

        原発性脳腫瘍術後の包括的リハビリテーション(理学療法,作業療法,言語療法,レクリエーション療法,看護,ケースワーク)を入院患者10 名に7-35 日間行い,FIM とFACT-Br の改善がみられたことが報告されている(Ⅱb)10)。なお,FACT-Br はQOL の評価指標である。

        付記

        脳腫瘍のリハビリテーション:

        脳腫瘍のリハビリテーションに特化した研究は少ないのが現状であるが,多くの症例で脳卒中のリハビリテーション技法を使用することができる。運動障害では麻痺や運動失調が主な症状であるが,リハビリテーションでは起こっている障害を明らかにして,それに対して介入していく。ただし,脳腫瘍では進行性である場合が多いこと,種々の有害事象が存在したり全身状態が不良であったりすること,または,そうなる危険性が高いこと(特に転移性脳腫瘍の場合)に注意する必要がある。

        文献

        1) Fu JB, Parsons HA, Shin KY, Guo Y, Konzen BS, Yadav RR, et al. Comparison of functional outcomes in low-and high-grade astrocytoma rehabilitation inpatients. Am J Phys Med Rehabil 2010; 89: 205-12.(Ⅱb)

        2) Geler-Kulcu D, Gulsen G, Buyukbaba E, Ozkan D. Functional recovery of patients with brain tumor or acute stroke after rehabilitation: A comparative study. J Clin Neurosci 2009; 16: 74-8.(Ⅱb)

        3) Greenberg E, Treger I, Ring H. Rehabilitation outcomes in patients with brain tumors and acute stroke: comparative study of inpatient rehabilitation. Am J Phys Med Rehabil 2006; 85: 568-73.(Ⅱb)

        4) 百瀬由佳,小林一成.脳腫瘍入院患者に対する早期リハビリテーションの効果.Jpn J Rehabil Med 2007; 44: 745-50.(Ⅱb)

        5) Marciniak CM, Sliwa JA, Heinemann AW, Semik PE. Functional outcomes of persons with brain tumors after inpatient rehabilitation. Arch Phys Med Rehabil 2001; 82: 457-63.(Ⅱb)

        6) 水落和也,小野恵子.悪性腫瘍による脊髄障害と脳腫瘍による麻痺への対応.J Clin Rehabil 2001; 10: 604-9.(Ⅲ)

        7) Karakaya M, Kose N, Otman S, Ozgen T. Investigation and comparison of the effects of rehabilitation on balance and coordination problems in patients with posterior fossa and cerebellopontine angle tumours. J Neurosurg Sci 2000; 44: 220-5.(Ⅱb)

        8) Philip PA, Ayyangar R, Vanderbilt J, Gaebler-Spira DJ. Rehabilitation outcome in children after treatment of primary brain tumor. Arch Phys Med Rehabil 1994; 75: 36-9.(Ⅱb)

        9) 和田勇治,赤星和人,永田雅章.脳腫瘍開頭術後患者の入院リハビリテーションの機能的帰結.総合リハビリテーション 2010; 38: 275-80.(Ⅱb)

        10) Huang ME, Wartella JE, Kreutzer JS. Functional outcomes and quality of life in patients with brain tumors: a preliminary report. Arch Phys Med Rehabil 2001; 82: 1540-6.(Ⅱb)


        CQ 03

        脳腫瘍の高次脳機能障害に対して,リハビリテーションを行うことは,行わない場合に比べて,認知機能を改善させるか?

        推奨グレード
        B

        脳腫瘍の高次脳機能障害(注意障害,記憶障害,遂行機能障害)に対して,種々の訓練法を組み合わせた認知リハビリテーションが有効であり,行うよう勧められる。


        エビデンス

        神経膠腫で注意障害,記憶障害,遂行機能障害などの高次脳機能障害を呈する70 例(経過中央値5.2 年,外科手術45 例,放射線療法43 例)に対して,臨床心理士による多面的なリハビリテーション〔注意,記憶,遂行機能に対する教育的,実践的な代償的訓練(週1 回の個別訓練で宿題あり)を6 週間行い,その後6 カ月間のコンピュータを用いた訓練〕を行ったところ,非介入の対照群70 例と比較して,短期(6 週間)では主観的な認知症状の改善を認め,長期(6 カ月)では神経心理学的検査と精神疲労の改善を認めたことが報告されている(Ⅰb)1)。さらに,2 週間で6 セッションの認知リハビリテーション(メモリーノートを使用)と問題解決方法の教育を脳腫瘍患者と介護者のペアに対して行ったところ,QOL 評価や認知機能検査で変化はなかったものの,訓練内容を生活で実践するようになり,両者に好評であったことが報告されている(Ⅱa)2)

        また,通常のリハビリテーションでもFIM の認知項目の改善(Ⅱb)3, 4)がみられる。小児においてはWeeFIM 認知項目の改善が認められる(Ⅱb)5)

        付記

        高次脳機能障害について:

        高次脳機能障害とは,注意障害,記憶障害,遂行機能障害,社会的行動障害などを主症状とする認知障害をいう。失語,失認,失行も高次脳機能障害に分類される症状であるが,前者と区別して扱われることが多い。脳腫瘍患者で前者は20-80%に,後者のうち失語は14-24%にみられるとの報告がある6, 7)。以下,前者の高次脳機能障害について述べる。注意障害では集中できない,ミスが多い,ものを見つけるのに時間がかかる,同時に複数のことができないなどの症状,記憶障害では新しいことが覚えられない,以前覚えていたことを思い出せないなどの症状,遂行機能障害では計画を立てて要領よく行動できない,時間に遅れる,などの症状がみられる。欲求コントロール低下,感情爆発,対人技能拙劣,固執性などは社会的行動障害と呼ばれる。高次脳機能障害に対する病識が欠如していることも多い。高次脳機能障害により日常生活および社会生活が妨げられることが多く,リハビリテーションアプローチが重要になる。

        放射線療法による高次脳機能障害:

        高次脳機能障害は脳腫瘍そのものにより発症するだけでなく,放射線療法によっても起こりうる。脳腫瘍が消失していても放射線療法の数年後に高次脳機能障害が発症することもある。放射線療法が認知機能に及ぼす影響は,放射線療法の適用時期や線量(分割線量,総線量),照射方法(全脳照射,局所照射など)のみならず,患者要素(年齢,併存症など),脳腫瘍の性状と症状(組織,部位,大きさ,神経所見,てんかんの有無など),治療内容(手術,化学療法,抗てんかん剤の有無など)などにより変化しうると考えられ,一律に論じることはできないが,脳腫瘍では常に高次脳機能障害が出現しうることを念頭に,障害評価を行う必要がある。

        文献

        1) Gehring K, Sitskoorn MM, Gundy CM, Sikkes SA, Klein M, Postma TJ, et al. Cognitive rehabilitation in patients with gliomas: a randomized, controlled trial. J Clin Oncol 2009; 27: 3712-22.(Ⅰb)

        2) Locke DE, Cerhan JH, Wu W, Malec JF, Clark MM, Rummans TA, et al. Cognitive Rehabilitation and Problem-Solving to Improve Quality of Life of Patients With Primary Brain Tumors: A Pilot Study. J Support Oncol 2008; 6: 383-91.(Ⅱa)

        3) Fu JB, Parsons HA, Shin KY, Guo Y, Konzen BS, Yadav RR, et al. Comparison of functional outcomes in low-and high-grade astrocytoma rehabilitation inpatients. Am J Phys Med Rehabil 2010; 89: 205-12.(Ⅱb)

        4) 和田勇治,赤星和人,永田雅章.脳腫瘍開頭術後患者の入院リハビリテーションの機能的帰結.総合リハビリテーション 2010; 38: 275-80.(Ⅱb)

        5) Philip PA, Ayyangar R, Vanderbilt J, Gaebler-Spira DJ. Rehabilitation outcome in children after treatment of primary brain tumor. Arch Phys Med Rehabil 1994; 75: 36-9.(Ⅱb)

        付記文献

        6) 百瀬由佳,小林一成. 脳腫瘍入院患者に対する早期リハビリテーションの効果.Jpn J Rehabil Med 2007; 44: 745-50.

        7) Mukand JA, Blackinton DD, Crincoli MG, Lee JJ, Santos BB. Incidence of neurologic deficits and rehabilitation of patients with brain tumors. Am J Phys Med Rehabil 2001; 80: 346-50.


        第7 章
        血液腫瘍と診断され,造血幹細胞移植が行われる予定の患者または行われた患者

        CQ 01

        血液腫瘍に対して入院中に造血幹細胞移植が行われた患者に対して,化学療法・造血幹細胞移植後に運動療法を行うと,行わない場合に比べて,身体活動性や身体機能(筋力,運動耐容能など)を改善することができるか?

        推奨グレード
        A

        血液腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施した患者に,エルゴメーターやトレッドミルを用いた有酸素運動,ストレッチングや筋力トレーニング,また,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,運動耐容能や筋力などの身体機能の改善がみられるため,行うよう強く勧められる。


        エビデンス

        造血幹細胞移植治療中・治療後の患者が有酸素運動や筋力トレーニングなどの運動療法を行うことによる有害事象は報告されておらず,安全である(Ⅰb)1-3)(Ⅱa)4, 5)(Ⅱb)6)

        造血幹細胞移植患者では,治療に伴う毒性や有害事象により,心肺機能,筋力低下,全身倦怠感,疼痛,消化器症状,食欲低下など短期的・長期的な身体的・精神的症状を呈する(Ⅰb)7)

        造血幹細胞移植後の患者にトレッドミルやエルゴメーターを用いた有酸素運動を実施することにより,運動を実施しない群や自主トレーニングのみを実施する群と比べて,最大歩行速度(Ⅱa)8)(Ⅰb)9),運動耐容能(Ⅱb)6)(Ⅱa)8)(Ⅰb)9)(Ⅱb)10)が改善した。Dimeo らは自家末梢造血幹細胞移植患者32 名に対して,トレッドミルでのウォーキングを6 週間(1 週目:3 分×5 セット,2 週目:5 分×4 セット,3 週目:8 分×3 セット,4 週目:10 分×3 セット,5 週目:15 分×2 セット,6 週目:30 分×1 セット)実施することで歩行速度や運動耐容能が改善したことをを報告し(Ⅱa)8),Shelton らは同種造血幹細胞移植患者61 名に対して,年齢予測最大心拍予備能の60-75%の運動強度での有酸素運動(エルゴメーター,トレッドミル),抵抗運動(マシントレーニング)を20-30分/回,3 回/週を4 週実施することで,50-foot walk test で評価した歩行速度,6 分間歩行テストで評価した運動耐容能が改善したことを報告している(Ⅰb)9)

        また,造血幹細胞移植後の患者にトレッドミルやエルゴメーターによる有酸素運動,ストレッチングおよび筋力トレーニングを組み合わせた運動療法介入を行うことにより,運動を実施しない群やストレッチングのみ実施した群と比べて,筋力(Ⅰb)11)や体組成(Ⅰb)3)が改善した。Mello らの報告では,同種造血幹細胞移植患者18 名に対して,ストレッチング,上下肢筋力トレーニング,トレッドミルでのウォーキング(年齢予測最大心拍予備能の70%)を40分/回,週5 日を6 週間実施することで上下肢筋力が改善した(Ⅰb)11)。また,自家末梢血幹細胞移植患者12 名に対して,トレッドミルとエルゴメーターを用いた有酸素運動(70-90%最大心拍数にて20-40 分/回・週3 回),抵抗運動(3-6 機種のマシントレーニング,週2 回)を3 カ月実施することにより,総エネルギー消費量が増加し,除脂肪量も増加したとの報告がある(Ⅰb)3)

        造血幹細胞移植患者に対して運動療法を行うことは安全であり,運動耐容能や筋力などの身体機能の改善のためにも推奨される。

        付記

        造血幹細胞移植患者に対して運動療法はなぜ必要なのか?:

        造血幹細胞移植患者は,原疾患に起因する身体活動量の低下,前治療としての寛解導入療法や地固め療法などの化学療法による体力低下や有害事象,移植前処置療法に伴う安静臥床,移植後有害事象としての全身倦怠感,消化器症状,不眠,免疫力低下に伴う感染症,移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)などの発症により,身体活動が著しく制限される。さらに,クリーンルーム内での長期間の隔離・安静により,全身筋力および体力の低下,柔軟性低下,心肺機能低下,抑うつ・認知機能低下など重度の廃用症候群が生じる危険性が高い11-13)。これらの廃用症候群は,退院後の日常生活復帰を遅延させ,職業復帰や余暇活動にも悪影響を及ぼし,移植患者の生活の質(quality of life;QOL)を著しく低下させる14, 15)。移植患者の4 割が身体機能の回復に1 年を要し,3 割が体力低下のために移植後2 年間職業復帰できなかったとの報告もあり,廃用症候群予防のために移植後早期からの運動療法介入が必要である16)

        本邦での造血幹細胞移植患者への運動療法介入の現状:

        本邦でも,造血幹細胞移植患者への運動療法介入の報告はみられる。八並らは,造血幹細胞移植患者に対して移植前より退院までストレッチング,筋力トレーニング,トレッドミルなどの運動療法介入を行ったが,退院時の筋力,運動耐容能,柔軟性は移植前と比べて低下していたと報告し,身体機能の低下の要因はクリーンルーム内での活動性の制約であると述べている17)。井上らは,歩数計にて同種造血幹細胞移植患者の身体活動量をモニタリングし,ストレッチング,筋力トレーニング,エルゴメーターなどを用いた運動療法を早期から実施することで,身体活動量を維持,向上することができ18),患者の健康関連QOL 19)や運動イメージ20)を維持,改善することができたと報告している。また,Inoue らは,運動療法介入により身体活動量を維持,向上することにより,移植後入院期間が短縮したことを報告している21)。その他にも,運動療法の効果や安全性に関する報告が散見されるが22),サンプルサイズや研究デザインが不十分なためエビデンスレベルとしては高くない。

        文献

        1) Coleman EA, Coon S, Hall-Barrow J, Richards K, Gaylor D, Stewart B. Feasibility of exercise during treatment for multiple myeloma. Cancer Nurs 2003; 26: 410-9.(Ⅰb)

        2) Cunningham BA, Morris G, Cheney CL, Buergel N, Aker SN, Lenssen P. Effects of resistive exercise on skeletal muscle in marrow transplant recipients receiving total parenteral nutrition. JPEN J Parenter Enternal Nutr 1986; 10: 558-63.(Ⅰb)

        3) Hayes S, Davies PS, Parker T, Bashford J. Total energy expenditure and body composition changes following peripheral blood stem cell transplantation and participation in an exercise program. Bone Marrow Transplant 2003; 315: 331-8.(Ⅰb)

        4) Decker WA, Turner-McGlade J, Fehir KM. Psychosocial aspects and the physiological effects of a cardiopulmonary exercise program in patients undergoing bone marrow transplantation (BMT)for acute leukemia(AL). Transplant Proc 1989; 21: 3068-9.(Ⅱa)

        5) Dimeo F, Bertz H, Finke J, Fetscher S, Mertelsmann R, Keul J. An aerobic exercise program for patients with haematological malignancies after bone marrow transplantation. Bone Marrow Transplant 1996; 18: 1157-60.(Ⅱa)

        6) Wilson RW, Jacobsen PB, Fields KK. Pilot study of a home-based aerobic exercise program for sedentary cancer survivors treated with hematopoietic stem cell transplantation. Bone Marrow Transplant 2005; 35: 721-7.(Ⅱb)

        7) Jarden M, Baadsgaard MT, Hovgaard DJ, Boesen E, Adamsen L. A randomized trial on the effect of a multimodal intervention on physical capacity, functional performance and quality of life in adult patients undergoing allogeneic SCT. Bone Marrow Transplant 2009; 43: 725-37.(Ⅰb)

        8) Dimeo FC, Tilmann MH, Bertz H, Kanz L, Mertelsmann R, Keul J. Aerobic exercise in the rehabilitation of cancer patients after high dose chemotherapy and autologous peripheral stem cell transplantation. Cancer 1997; 79: 1717-22.(Ⅱa)

        9) Shelton ML, Lee JQ, Morris GS, Massey PR, Kendall DG, Munsell MF, et al. A randomized control trial of a supervised versus a self-directed exercise program for allogeneic stem cell transplant patients. Psychooncology 2009; 18: 353-9.(Ⅰb)

        10) Carlson LE, Smith D, Russell J, Fibich C, Whittaker T. Individualized exercise program for the treatment of severe fatigue in patients after allogeneic hematopoietic stem-cell transplant: a pilot study. Bone Marrow Transplant 2006; 37: 945-54.(Ⅱb)

        11) Mello M, Tanaka C, Dulley FL. Effects of an exercise program on muscle performance in patients under going allogeneic bone marrow transplantation. Bone Marrow Transplant 2003; 32: 723-8.(Ⅰb)

        付記文献

        12) Rovelli A, Pezzini C, Silvestri D, Tana F, Galli MA, Uderzo C. Cardiac and respiratory function after bone marrow transplantation in children with leukaemia. Bone Marrow Transplant 1995; 16: 571-6.

        13) Kellerman J, Rigler D, Siegel SE. The psychological effects of isolation in protected environment. Am J Psychiatry 1977; 134: 563-5.

        14) Fobair P, Hoppe RT, Bloom J, Cox R, Varghese A, Spiegel D. Psychosocial problems among survivals of Hodgkin’s disease. J Clin Oncol 1986; 4: 805-14.

        15) Graydon JE. Women with breast cancer: their quality of life following a course of radiation therapy. J Adv Nurs 1994; 19: 617-22.

        16) Syrjala KL, Chapko MK, Vitaliano PP, Cummings C, Sullivan KM. Recovery after allogenic marrow transplantation: prospective study of predictors of long-term physical and psychosocial functioning. Bone Marrow Transplant 1993; 11: 319-27.

        17) 八並光信,上迫道代,小宮山一樹,高橋友理子,遠藤敏,石川愛子他.造血幹細胞移植患者の廃用症候群に対する理学療法効果について.理学療法科学 2005; 20: 133-8.

        18) 井上順一朗,小野玲,竹腰久容,佐浦隆一,三輪雅彦,黒坂昌弘他.同種造血幹細胞移植患者の身体活動量に対する運動療法プログラム導入効果の検討.PT ジャーナル 2009; 43: 323-8.

        19) 井上順一朗,小野玲,竹腰久容,佐浦隆一,三輪雅彦,黒坂昌弘他.同種造血幹細胞移植患者のクリーンルームでの身体活動量はHRQOL に影響するか? 理学療法兵庫 2008; 14: 39-42.

        20) 井上順一朗,小野玲,牧浦大祐,竹腰久容,黒坂昌弘,岡村篤夫他.同種造血幹細胞移植患者の運動イメージはリハビリテーションにより改善するか? 理学療法科学 2010; 25: 741-5.

        21) Inoue J, Ono R, Okamura A, Matsui T, Takekoshi H, Miwa M, et al. The impact of early rehabilitation on the duration of hospitalization in patients after allogeneic hematopoietic stem cell transplantation. Transplant Proc 2010; 42: 2740-4.

        22) 森下慎一郎,瀬戸川啓,中原健次,太田徹,眞渕敏,海田勝仁他.造血幹細胞移植患者に対する無菌室・準無菌室での運動療法の効果および安全性の検討.理学療法学 2011; 38: 122-3.


        CQ 02

        血液腫瘍に対して入院中に造血幹細胞移植が行われた患者に対して,造血幹細胞移植後に運動療法を行うと,行わない場合に比べて,QOL を改善することができるか?

        推奨グレード
        A

        血液腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施した患者に,エルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動を実施することは,それらを行わない群や自主トレーニングのみを実施する群に比べてQOL の改善がみられるため,行うよう強く勧められる。


        エビデンス

        造血幹細胞移植を受けた患者では,造血幹細胞移植治療中に全身体力および活動性が低下し,それに伴いQOL が低下する。また,治療後にも健康関連QOL が低下することが報告されている。

        自家造血幹細胞移植を受けた患者に対して,入院中にエルゴメーターとウォーキングの組み合わせ,もしくはエルゴメーターのみを用いた有酸素運動を実施し,実施した時間を毎日記録したところ,1 日当たりの実施時間が多い患者ほどFunctional Assessment of Cancer Therapy-BMT(FACT-BMT)を用いて評価した健康関連 QOL,Aff ect Balance Scale(ABS)を用いて評価した精神的安寧(well-being),Center for Epidemiological Studies Depression(CES-D)を用いて評価した抑うつ,Spielberger State-Trait Anxiety Inventory(STAI)を用いて評価した不安が改善することが報告されている(Ⅱb)1)

        また,自家および同種造血幹細胞移植治療後の患者に対して,年齢予測心拍予備能の40-60%の運動強度での有酸素運動(ウォーキング,サイクリング,水泳,体操)を指導し,自宅にて1 セッション20-40 分,1 週間に3-5 セッションの運動を12 週間実施させ,また,運動日誌や電話指導を継続することにより,MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)を用いて評価した健康関連QOL が改善した(Ⅱb)2)との報告や,同種造血幹細胞移植治療後の患者に対して,入院中に15 分間のトレッドミルによる有酸素運動を1 日2 回実施し,退院後も自宅にて毎日30 分以上のウォーキングを実施することでQOL が改善するとの報告もある(Ⅰb)3)

        付記

        なぜ造血幹細胞移植患者のQOL は低下するのか?:

        造血幹細胞移植患者では,その治療過程において身体的・精神的ダメージを受けることが多い。心肺機能の低下,筋力の低下,柔軟性の低下,体組成の変化,倦怠感,疼痛,体力低下,不眠,消化器症状,呼吸器症状,発汗,食欲不振などが造血幹細胞移植患者の治療中・後の身体的症状として認められ,また,抑うつ,不安,ストレス,自尊心の低下,精神的・心理的安寧の低下などが精神的症状として認められることがある。これらの症状の影響により造血幹細胞移植患者のQOL が低下すると報告されている4, 5)

        文献

        1) Courneya KS, Keats MR, Turner AR. Physical exercise and quality of life in cancer patients following high dose chemotherapy and autologous bone marrow transplantation. Psychooncology 2000; 9: 127-36.(Ⅱb)

        2) Wilson RW, Jacobsen PB, Fields KK. Pilot study of a home-based aerobic exercise program for sedentary cancer survivors treated with hematopoietic stem cell transplantation. Bone Marrow Transplant 2005; 35: 721-7.(Ⅱb)

        3) DeFor TE, Burns LJ, Gold EM, Weisdorf DJ. A randomized trial of the effect of a walking regimen on the functional status of 100 adult allogeneic donor hematopoietic cell transplant patients. Biol Blood Marrow Transplant 2007; 13: 948-55.(Ⅰb)

        付記文献

        4) Courneya KS, Friedenreich CM. Physical exercise and quality of life following cancer diagnosis: a literature review. Ann Behav Med 1999; 21: 171-9.

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        CQ 03

        血液腫瘍に対して入院中に造血幹細胞移植が行われた患者に対して,造血幹細胞移植後に運動療法を行うと,行わない場合に比べて,倦怠感を改善することができるか?

        推奨グレード
        A
        1. 1.造血幹細胞移植実施後の入院患者に,エルゴメーターやトレッドミルを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,それらを行わない群や自主トレーニングのみを実施する群に比べて,倦怠感の改善がみられるため,行うよう強く勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 2.造血幹細胞移植後6 カ月以上経過した患者に,エルゴメーターやウォーキングなどの有酸素運動(運動療法)を実施することは,慢性的な倦怠感の改善がみられるため,行うよう勧められる。

        エビデンス

        造血幹細胞移植が行われた患者では,移植後早期より倦怠感が出現する。倦怠感およびそれに伴う身体的な制限は移植後3-10 年経過したがん患者にも認められる(Ⅲ)1-5)

        メタアナリシスの結果では,造血幹細胞移植後の患者に対して,入院中にトレッドミルやエルゴメーターを用いた有酸素運動を実施することで,運動を実施しない群と比べて,倦怠感が改善した(Ⅰa)6)。また,入院中にトレッドミルを用いた有酸素運動を1 日2 回・最低15 分/回実施し,退院後も自宅でのウォーキングを快適速度にて1 日最低30 分以上実施することで,倦怠感が改善するとの報告もある(Ⅰb)7)

        移植後6 カ月以上経過した造血幹細胞移植患者に対して,外来にてエルゴメーターを用いた有酸素運動(Borg Scale 2 程度の軽度〜中等度の運動を30 分,Borg Scale 6 程度の高強度の運動を15 分,Borg Scale 4 程度の中等度の運動を20 分)を12 週間実施することで,Functional Assessment of Cancer Therapy-Fatigue Module(FACT-F)および Brief Fatigue Inventory(BFI)を用いて評価した倦怠感が改善した(Ⅱb)8)。自宅でのウォーキング,サイクリング,水泳,体操などの有酸素運動(目標心拍数:予測最大心拍数の40-60%)を1 回20-40 分・週3-5 回・12 週間実施するよう指導し,運動日誌や電話指導を継続することにより,Fatigue Symptom Inventory(FSI)にて評価した倦怠感が改善した(Ⅱb)9)。また,30 分の音楽テープに合わせてrelaxation breathing exercise を毎日6 週間行うことで,The revised Piper Fatigue Scale(PFS-R)にて評価した倦怠感が改善したという報告もある(Ⅰb)10)。移植後早期に生じる倦怠感だけでなく,移植後6 カ月以上経過している慢性的な倦怠感に対しても有酸素運動を中心とした運動療法の効果が認められている。

        文献

        1) Andrykowski MA, Carpenter JS, Greiner CB, Altmaier EM, Burish TG, Antin JH, et al. Energy level and sleep quality following bone marrow transplantation. Bone Marrow Transplant 1997; 20: 669-79.(Ⅲ)

        2) Baker F, Wingard JR, Curbow B, Zabora J, Jodrey D, Fogarty L, et al. Quality of life of bone marrow transplant long-term survivors. Bone Marrow Transplant 1994; 13: 589-96.(Ⅲ)

        3) Kiss TL, Abdolell M, Jamal N, Minden MD, Lipton JH, Messner HA. Long-term medical outcomes and quality-of-life assessment of patients with chronic myeloid leukemia followed at least 10 years after allogeneic bone marrow transplantation. J Clin Oncol 2002; 20: 2334-43.(Ⅲ)

        4) Knobel H, Loge JH, Nordøy T, Kolstad AL, Espevik T, Kvaløy S, et al. High level of fatigue in lymphoma patients treated with high dose therapy. J Pain Symptom Manage 2000; 19: 446-56.(Ⅲ)

        5) Molassiotis A, Morris PJ. Quality of life in patients with chronic myeloid leukemia after unrelated donor bone marrow transplantation. Cancer Nurs 1999; 22: 340-9.(Ⅲ)

        6) Cramp F, Daniel J. Exercise for the management of cancer-related fatigue in adults. Cochrane Database Syst Rev 2008;(2): CD006145.(Ⅰa)

        7) DeFor TE, Burns LJ, Gold EM, Weisdorf DJ. A randomized trial of the effect of a walking regimen on the functional status of 100 adult allogeneic donor hematopoietic cell transplant patients. Biol Blood Marrow Transplant 2007; 13: 948-55.(Ⅰb)

        8) Carlson LE, Smith D, Russell J, Fibich C, Whittaker T. Individualized exercise program for the treatment of severe fatigue in patients after allogeneic hematopoietic stem-cell transplant: a pilot study. Bone Marrow Transplant 2006; 37: 945-54.(Ⅱb)

        9) Wilson RW, Jacobsen PB, Fields KK. Pilot study of a home-based aerobic exercise program for sedentary cancer survivors treated with hematopoietic stem cell transplantation. Bone Marrow Transplant 2005; 35: 721-7.(Ⅱb)

        10) Kim SD, Kim HS. Effects of a relaxation breathing exercise on fatigue in haemopoietic stem cell transplantation patients. J Clin Nurs 2005; 14: 51-5.(Ⅰb)


        CQ 04

        血液腫瘍に対して入院中に造血幹細胞移植が行われた患者に対して,造血幹細胞移植の前後に運動療法を行うと,行わない場合に比べて,精神機能・心理面(抑うつ,不安など)を改善することができるか?

        推奨グレード
        B

        血液腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施した患者に,監視下もしくは自宅での自主トレーニングにてエルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動を実施することは,それらを行わない群に比べて抑うつや不安などの精神症状,睡眠障害の改善がみられるため,行うよう勧められる。


        エビデンス

        一般にがん患者においては,化学療法,放射線療法,造血幹細胞移植などの治療過程において,不安,抑うつなどの精神症状や,全身倦怠感に伴う睡眠障害が生じる。

        造血幹細胞移植を受けた患者に,入院中にエルゴメーターとウォーキングの組み合わせ,もしくはエルゴメーターのみを用いた有酸素運動を実施し,実施した時間を毎日記録したところ,1 日当たりの実施時間が多い患者ほどABS を用いて評価した精神的安寧(well-being),CES-D を用いて評価した抑うつ,STAI を用いて評価した不安が改善した(Ⅱb)1)。また,メタアナリシスの結果では,造血幹細胞移植後の患者に,入院中にトレッドミルやエルゴメーターを用いた有酸素運動を実施することで,運動を実施しない群と比べて,抑うつ,不安,自己効力感が改善した(Ⅰa)2)。さらに,移植前3 カ月から移植後3 カ月の期間に,自宅での筋力トレーニングやウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を組み合わせたプログラム(例:ウォーミングアップとしてBorg Scale 9-10 程度のウォーキング10 分,四肢ストレッチング,有酸素運動としてBorg Scale 12-15 程度の速歩でのウォーキング,筋力トレーニングとしてゴムバンド運動,反復立ち上がり運動,クールダウンとしてBorg Scale 9-10 程度のウォーキング 5 分)を実施することで,The Profile of Mood States(POMS)を用いて評価した気分やActigraph ®(Ambulatory Monitoring,Ardsley,米国)を用いて評価した睡眠障害が改善した(Ⅰb)3)

        造血幹細胞移植後6 カ月以上経過した造血幹細胞移植患者に,外来でのエルゴメーターを用いた有酸素運動(Borg Scale 2 程度の軽度〜中等度の運動を30 分,Borg Scale 6 程度の高強度の運動を15 分,Borg Scale 4 程度の中等度の運動を20 分)を12 週間実施することで,POMS で評価した気分が改善したとの報告もある(Ⅱb)4)

        造血幹細胞移植患者に対して,監視下もしくは自宅での自主トレーニングにて有酸素運動や有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせたプログラムを実施することは,不安や抑うつなどの精神症状の改善や睡眠障害の軽減に有効であり,勧められる。

        付記

        移植前からの運動療法の効果:

        造血幹細胞移植患者においては,原疾患に起因する身体活動量の低下,前治療である寛解導入療法や地固め療法などの化学療法による体力低下やその副作用,移植前処置療法に伴う安静臥床,移植後合併症(全身倦怠感,消化器症状,不眠,感染症,GVHD など)やクリーンルーム内での長期間の隔離・安静による体力低下などのように,移植前から移植後にかけて廃用症候群を発症するリスクが非常に高い。そのため可能な限り移植前からの運動療法の介入が必要である。Coleman ら3)は移植3 カ月前からの筋力トレーニングや有酸素運動などの運動療法介入により,コントロール群と比較して移植後3 カ月に評価した筋力,気分,倦怠感,睡眠障害が改善し,除脂肪体重が維持され,運動耐容能の低下も抑制できたと報告している。そのため,造血幹細胞移植患者に対しては可能な限り移植前からの運動療法の介入が重要である。

        文献

        1) Courneya KS, Keats MR, Turner AR. Physical exercise and quality of life in cancer patients following high dose chemotherapy and autologous bone marrow transplantation. Psychooncology 2000; 9: 127-36.(Ⅱb)

        2) Cramp F, Daniel J. Exercise for the management of cancer-related fatigue in adults. Cochrane Database Syst Rev 2008;(2): CD006145.(Ⅰa)

        3) Coleman EA, Coon S, Hall-Barrow J, Richards K, Gaylor D, Stewart B. Feasibility of exercise during treatment for multiple myeloma. Cancer Nurs 2003; 26: 410-9.(Ⅰb)

        4) Carlson LE, Smith D, Russell J, Fibich C, Whittaker T. Individualized exercise program for the treatment of severe fatigue in patients after allogeneic hematopoietic stem-cell transplant: a pilot study. Bone Marrow Transplant 2006; 37: 945-54.(Ⅱb)


        CQ 05

        血液腫瘍に対して入院中に造血幹細胞移植が行われた患者に対して,造血幹細胞移植の前後に運動療法または物理療法を行うと,行わない場合に比べて,有害事象,その他のアウトカムを改善することができるか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.血液腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施した患者に,ウォーキングエルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動やストレッチング,筋力トレーニングを実施することにより,骨髄抑制からの血球の回復に改善が認められるため,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        A
        1. 2.血液腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施する患者に,移植前処置療法前にクライオテラピーを実施すると口腔粘膜症状の抑制が認められるため,行うよう強く勧められる。

        エビデンス

        造血幹細胞移植を受けた患者に対して,エポエチンアルファの投与とともにウォーキング(自覚的な倦怠感が生じるまで),四肢ストレッチング,四肢筋力トレーニング(ゴムバンド運動,反復立ち上がり運動)を実施することで,エポエチンアルファの投与のみの群と比べて,赤血球輸血回数,stem cell collection が減少した(Ⅰb)1)。また,トレッドミルでの有酸素運動を6 週間(予測最大心拍数の80±5%の運動強度にて,1 週目:3 分×5 セット,2 週目:5 分×4 セット,3 週目:8 分×3 セット,4 週目:10 分× 3 セット,5 週目:15 分×2 セット,6 週目:30 分×1 セット)実施することにより,運動療法介入を実施しない群と比べて,退院後のヘモグロビン濃度が改善した(Ⅱa)2)

        造血幹細胞移植を受けた患者に対して,前処置療法開始前(メルファラン・エトポシト投与開始10-15 分前)より投与終了後まで氷片を口腔内に含み,溶けた冷水を飲み込むクライオテラピーを実施することにより,口内炎などの口腔粘膜症状が抑制された(Ⅰb)3-5)(Ⅲ)6, 7)

        付記

        クライオテラピー:

        口腔粘膜を冷却し血管収縮させることにより,口腔粘膜に達する抗がん剤の量を低下させ,炎症誘導性サイトカインや炎症細胞浸潤の発生を抑制し,口腔粘膜潰瘍形成期を遅延させることを目的に,化学療法開始前約5-30 分間,氷片を口腔内に含む方法。

        The Mucositis Study Section of the Multinational Association of Supportive Care in Cancer and the International Society for Oral Oncology(MASCC/ISOO)のガイドラインにおいても,大量メルファラン投与(造血幹細胞移植における移植前処置療法)時の口内炎予防のためのクライオテラピーの実施は推奨レベルA(エビデンスレベルⅡ)とされている8)

        文献

        1) Coleman EA, Coon SK, Kennedy RL, Lockhart KD, Stewart CB, Anaissie EJ, et al. Effects of exercise in combination with epoetin alfa during high-dose chemotherapy and autologous peripheral blood stem cell transplantation for multiple myeloma. Oncol Nurs Forum 2008; 35: E53-61.(Ⅰb)

        2) Dimeo FC, Tilmann MH, Bertz H, Kanz L, Mertelsmann R, Keul J. Aerobic exercise in the rehabilitation of cancer patients after high dose chemotherapy and autologous peripheral stem cell transplantation. Cancer 1997; 79: 1717-22.(Ⅱa)

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        5) Mori T, Aisa Y, Yamazaki R, Mihara A, Ikeda Y, Okamoto S. Cryotherapy for the prevention of high-dose melphalan-induced oral mucositis. Bone Marrow Transplant 2006; 38: 637-8.(Ⅰb)

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        7) 稲垣紀子,大上幸子,重田宏惠,田坂大象.メルファラン大量投与におけるクライオテラピーの有効性の検討.臨床血液 2006; 47; 1469-71.(Ⅲ)

        付記文献

        8) Keefe DM, Schubert MM, Elting LS, Sonis ST, Epstein JB, Raber-Durlacher JE, et al. Mucositis Study Section of the Multinational Association of Supportive Care in Cancer and the International Society for Oral Oncology. Updated clinical practice guidelines for the prevention and treatment of mucositis. Cancer 2007; 109: 820-31.


        CQ 06

        血液腫瘍に対して入院中に造血幹細胞移植が行われた患者に対して,造血幹細胞移植後に精神的リラクセーション(音楽療法,カウンセリングなど)を行うと,行わない場合に比べて,精神機能・心理面(抑うつ,不安など)を改善することができるか?

        推奨グレード
        B

        血液腫瘍に対して造血幹細胞移植を実施した患者に,音楽療法を実施することは,それらを行わない群に比べて,気分や抑うつの改善が認められるため,勧められる。


        エビデンス

        自家造血幹細胞移植を受けた患者に,入院中に3 日毎に2 週間の頻度で20-30 分の個別の音楽療法を実施することにより,実施しない群と比べ,POMS で評価した気分:下位尺度の緊張−不安(Tension-Anxiety),活気(Vigor),倦怠感(Fatigue)が改善した(Ⅰb)1)

        付記

        精神心理面へのその他のアプローチ:

        同種造血幹細胞移植を施行された慢性骨髄性白血病患者に,カウンセリング,認知行動療法,薬物療法,筋リラクセーションを実施することにより抑うつやパニック症状を呈することなく治療経過したとの報告があるが2),十分な科学的根拠はない。

        文献

        1) Cassileth BR, Vickers AJ, Magill LA. Music therapy for mood disturbance during hospitalization for autologous stem cell transplantation: a randomized controlled trial. Cancer 2003; 98: 2723-9.(Ⅰb)

        付記文献

        2) Kopp M, Holzner B, Brugger A, Nachbaur D. Successful management of claustrophobia and depression during allogeneic SCT. Eur J Haematol 2001; 67: 54-5.


        第8 章 化学療法あるいは放射線療法が行われる予定の患者または行われた患者

        CQ 01

        化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて身体活動性や身体機能(筋力,運動耐容能など)を改善することができるか?

        推奨グレード
        A

        化学療法・放射線療法中・治療後の乳がん,前立腺がん,血液腫瘍患者に運動療法は安全に実施でき,エルゴメーターやトレッドミルを用いた有酸素運動,ストレッチングや筋力トレーニング,また,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,運動耐容能や筋力などの身体機能の改善がみられるため,行うよう強く勧められる。


        エビデンス

        がん患者では,化学療法前後に身体活動性が低下し,筋力や運動耐容能など身体機能低下が生じると報告されている。

        化学療法中・後には,骨髄抑制による白血球減少に伴う易感染性,赤血球・ヘモグロビン減少に伴う動悸,頻脈,息切れ,血小板減少に伴う易出血性,また,心毒性や多量の水分負荷による心機能障害などが頻回に認められる。しかし,化学療法中・後の運動療法実施には,これらのリスク管理は必要であるが,運動療法は安全に実施できる(Ⅰa)1)

        化学療法・放射線療法中の乳がん患者に対して,監視下でのエルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動やストレッチング,筋力トレーニングの実施,自宅でのウォーキングプログラムの実施は,運動耐容能の改善に有用である(Ⅰb)2-11)。エルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動(運動強度;1-6 週目:最大酸素摂取量の60%,7-12 週目:70%,12 週目以降:80%,運動時間;1-3 週目:15 分間,3 週毎に5 分間増加させ,18 週目では45 分間),もしくは,筋力トレーニング(マシントレーニング9 種類:1 最大反復回数(repetition maximum;RM)の60-70%の運動強度にて各トレーニング12 回× 2 セット)を週3 回・18 週間実施することで,運動耐容能や筋力に改善が認められたとの報告(Ⅰb)5)や,放射線療法中の乳がん患者に対して,自宅での速歩でのウォーキングを20-30 分・週4-5 回・6 週間実施することにより,運動耐容能が改善したとの報告がある(Ⅰb)8)。また,有酸素運動と筋力トレーニングにより筋力が改善したとの報告がある(Ⅰb)2, 5, 9, 10, 12)。Adamsen らは,ウォーミングアップ30 分,高強度の有酸素運動15 分,マシンでの筋力トレーニング45 分,リラクセーション30 分で構成されるグループでの運動療法プログラムを週3 回・6 週間実施することで筋力が改善したと報告している(Ⅰb)2)。Cochrane レビューでは,補助化学療法もしくは放射線療法中の乳がん患者に運動療法を行うと,行わない場合に比べて,運動耐容能が改善したが,筋力の改善には運動療法の効果は認められなかったことが報告されている(Ⅰa)13)

        アンドロゲン除去療法・放射線療法中の前立腺がん患者に,エルゴメーターを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,またはそれらを組み合わせたプログラムを実施することにより,運動耐容能が改善する(Ⅱb)14, 15)(Ⅰb)16-18)。Galvão らの報告では,筋力トレーニング(6-12 RM,2-4 セット/回)および有酸素運動(運動の種類:サイクリング,ウォーキング,ジョギング,運動強度:最大心拍数の65-80%,Borg Scale 11-13 程度)を組み合わせた運動療法を1 回15-20 分・週2 回・12 週間実施することで,運動耐容能が改善した(Ⅰb)16)

        自宅での低強度の運動や日常生活動作指導のみでは運動耐容能には改善が認められない(Ⅰb)19, 20)。また,自宅でのウォーキング,ストレッチング,ゴムバンドを用いた低強度の筋力トレーニングを週3-5 回・16 週間実施したが運動耐容能に改善は認められなかったとの報告がある(Ⅰb)20)。一方,上下肢の筋力トレーニングをアンドロゲン除去療法・放射線療法中に実施することで,上下肢筋力に改善が認められたとの報告がある(Ⅱb)15)(Ⅰb)16, 18, 21)。Segal らは,上下肢・体幹筋力トレーニング(9 種類,1RM の60-70%を8-12 回・2 セット/回)を12 週間実施することにより,筋力が改善したと報告している(Ⅰb)21)

        化学療法中・後の血液腫瘍患者に有酸素運動を実施することにより運動耐容能に改善がみられ,体力が向上した(Ⅰb)22, 23)(Ⅱa)24)。化学療法中の急性骨髄性白血病患者に対して,12 分間歩行を週5 回・3 週間実施することで運動耐容能が改善したとの報告(Ⅰb)22)や,エルゴメーターによる有酸素運動を週3 回・12 週間(運動強度:最大酸素摂取量の60%より開始し,各週5%ずつ強度を増加させ,4 週までに75%まで増加,運動時間:4 週目までは15-20 分,各週5 分ずつ増加させ,9 週では40-45 分)実施することで運動耐容能が改善した(Ⅰb)23)との報告がある。

        付記

        化学療法・放射線療法中・治療後のがん患者になぜリハビリテーションが必要なのか?:

        化学療法では,腎機能障害,心機能障害,間質性肺炎などの重篤な有害事象,また,嘔気・嘔吐,骨髄抑制,末梢神経障害,筋痛,関節痛などの高頻度の有害事象が認められる。

        放射線療法では,急性反応(照射期間中・照射直後)として,全身反応である放射線宿酔(嘔気,食欲不振,全身倦怠感など),局所反応である血管透過性の亢進による脳や気道などの浮腫,皮膚炎,口腔咽頭粘膜障害,消化管障害,喉頭浮腫などがみられる。晩期反応(通常照射後6 カ月以降)には,神経系(脳壊死,脊髄障害,末梢神経障害),皮下硬結,リンパ浮腫,骨障害(大腿骨頭壊死,肋骨骨折),口腔・唾液腺障害(口腔内乾燥症,開口障害),咽頭・喉頭障害などがある。急性反応は可逆性であるが,晩期反応は不可逆性であり回復が困難である。

        このような有害事象が原因となり,また,疼痛,睡眠障害,精神的要因も相まって,化学療法・放射線療法中・治療後の患者では全身体力の低下や倦怠感をきたすことが多い。倦怠感は身体活動を制限し二次的な体力低下へと結びつく。がん患者の身体活動の低下は,治療法選択,生命予後,日常生活動作能力(activities of daily living;ADL),生活の質(quality of life;QOL)にもかかわることから,体力の維持・改善のためのリハビリテーションが重要である。

        文献

        1) Schmitz KH, Courneya KS, Matthews C, Demark-Wahnefried W, Galvão DA, Pinto BM, et al. American College of Sports Medicine roundtable on exercise guidelines for cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2010; 42: 1409-26.(Ⅰa)

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        20) Culos-Reed SN, Robinson JW, Lau H, Stephenson L, Keats M, Norris S, et al. Physical activity for men receiving androgen deprivation therapy for prostate cancer: benefits from a 16-week intervention. Support Care Cancer 2010; 18: 591-9.(Ⅰb)

        21) Segal RJ, Reid RD, Courneya KS, Malone SC, Parliament MB, Scott CG, et al. Resistance exercise in men receiving androgen deprivation therapy for prostate cancer. J Clin Oncol 2003; 21: 1653-9.(Ⅰb)

        22) Chang PH, Lai YH, Shun SC, Lin LY, Chen ML, Yang Y, et al. Effects of a walking intervention on fatigue-related experiences of hospitalized acute myelogenous leukemia patients undergoing chemotherapy: a randomized controlled trial. J Pain Symptom Manage 2008; 35: 524-34.(Ⅰb)

        23) Courneya KS, Sellar CM, Stevinson C, McNeely ML, Peddle CJ, Friedenreich CM, et al. Randomized controlled trial of the effects of aerobic exercise on physical functioning and quality of life in lymphoma patients. J Clin Oncol 2009; 27: 4605-12.(Ⅰb)

        24) Oldervoll LM, Kaasa S, Knobel H, Loge JH. Exercise reduces fatigue in chronic fatigued Hodgkins disease survivors-results from a pilot study. Eur J Cancer 2003; 39: 57-63.(Ⅱa)


        CQ 02

        化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べてQOL を改善することができるか?

        推奨グレード
        A

        化学療法・放射線療法中・治療後の乳がん,前立腺がん,血液腫瘍患者に,エルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,ストレッチングなどの運動療法を実施することは,それらを行わない群に比べてQOL の改善がみられるため,行うよう強く勧められる。


        エビデンス

        がん患者では,化学療法・放射線療法中から治療後にかけて,健康関連のQOL が低下することが報告されている。

        乳がん患者では,化学療法・放射線療法中から治療後にかけて,運動介入を実施してもQOL の改善効果はなかったとの報告(Ⅰb)1-3)やメタアナリシスの結果ではQOL への運動療法の効果は明らかではないとする報告もある(Ⅰa)4)が,化学療法・放射線療法中に有酸素運動,筋力トレーニング,ストレッチングなどの運動療法を監視下に実施することにより,QOL が改善すると報告されている(Ⅰb)5-8)。Cochrane レビューでも,補助化学療法もしくは放射線療法中の乳がん患者に運動療法を行うと,行わない場合に比べて,運動耐容能が改善し,QOL が改善したと報告されている(Ⅰa)4)。Adamsen らは,ウォーミングアップ30 分,高強度の有酸素運動15 分,マシンでの抵抗運動45 分,リラクセーション30 分で構成される集団運動療法プログラムを監視下にて週3 回・6 週間実施したところ,非実施群と比べ,The European Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ-C30(EORTC QLQ-C30)で評価される倦怠感,MOS 36-Item Short-Form Health Survey(SF-36)の下位尺度である身体機能,日常生活役割(身体),自覚的活力,日常生活役割(精神),心の健康に有意な改善が認められたと報告している(Ⅰb)5)。また,Campbell らは,補助療法中の乳がん患者に対して,60-70% HRmax の有酸素運動と抵抗運動を1 回10-20 分・週2 回・12 週間実施したところ,非実施群と比べ,Functional Assessment of Cancer Therapy-General(FACT-G)にて評価したQOL が有意に増加したと報告している(Ⅰb)6)

        前立腺がん患者では,アンドロゲン除去療法・放射線療法中に運動療法を実施することによりQOL が改善するとの報告(Ⅱb)9)(Ⅰb)10-13)や,運動療法の効果は認められないとの報告もある(Ⅰb)14-17)。Galvão らは,筋力トレーニング(四肢・体幹筋:6-12 RM,2-4 セット)およびサイクリング,ウォーキングもしくはジョギングなどの有酸素運動(運動強度:最大心拍数の65-80%,Borg Scale 11-13 程度,15-20 分/ 回)を組み合わせた運動療法を週2 回・12 週間実施することで,SF-36 およびEORTC QLQ-C30 にて評価したQOL が改善したと報告しており(Ⅰb)10),Segal らは,筋力トレーニング(四肢・体幹筋:9 種類,1 RM の60-70%を8-12 回・2 セット)を12 週間実施することにより,Functional Assessment of Cancer Therapy-Prostate (FACT-P)にて評価したQOL が改善したと報告している(Ⅰb)13)。しかし,Culos-Reed らの報告では,自宅での中等度のウォーキング,ストレッチング,軽度の筋力トレーニング(ゴムバンド使用)からなる個別トレーニングを週3-5 回,また,週1 回・1.5 時間/回のウォーキング,ストレッチング,筋力トレーニング,患者教育からなるグループトレーニングを16 週間実施することにより身体活動量は向上したが,EORTC QLQ-C30 にて評価したQOL には変化を認めなかった(Ⅰb)15)。また,筋力トレーニングではQOL に改善がみられたが,有酸素運動では改善が認められなかったとの報告もある(Ⅰb)18)

        血液腫瘍患者では,化学療法後の悪性リンパ腫の患者に対して,監視下でのエルゴメーターを用いた有酸素運動を週3 回・12 週間(運動強度:最大酸素摂取量の60%より開始。毎週5%増加し,4 週目までに75%,運動時間:4 週目までは15-20 分,4 週目以降5 分ずつ増加し,9 週目までに40-45 分)行うことで,身体機能や倦怠感が軽減し,Functional Assessment of Cancer Therapy-Anemia(FACT-An)で評価したQOL が改善したと報告されている(Ⅰb)19)

        付記

        なぜ,化学療法・放射線療法施行患者ではQOL が低下するのか?:

        がん患者は,がんの診断によるストレス,がんの進行や再発,治療内容に対する不安,痛み,入院や治療に伴う経済的負担,社会的立場の変化など,その背景にQOL を低下させる多くの要因を抱えている。それに加え,化学療法・放射線療法施行患者には,化学療法による腎機能・心機能障害,嘔気・嘔吐,骨髄抑制,末梢神経障害などの有害事象,放射線療法中の患者では,嘔気,食欲不振,倦怠感,皮膚炎,口腔咽頭粘膜障害,消化管障害などの有害事象が生じる。また,それに伴う疼痛,有害事象,感染症,栄養障害,睡眠障害,倦怠感,身体活動量の低下,全身体力の低下,がん悪液質などの身体的要因,長期間にわたる治療によるストレスなどの心理的要因など,身体的,精神・心理的,社会的要因が相互に影響することにより,がん患者のQOL が低下する。

        文献

        1) Cadmus LA, Salovey P, Yu H, Chung G, Kasl S, Irwin ML. Exercise and quality of life during and after treatment for breast cancer: results of two randomized controlled trials. Psychooncology 2009; 18: 343-52.(Ⅰb)

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        13) Segal RJ, Reid RD, Courneya KS, Malone SC, Parliament MB, Scott CG, et al. Resistance exercise in men receiving androgen deprivation therapy for prostate cancer. J Clin Oncol 2003; 21: 1653-9.(Ⅰb)

        14) Carmack Taylor CL, Demoor C, Smith MA, Dunn AL, Basen-Engquist K, Nielsen I, et al. Active for Life After Cancer: a randomized trial examining a lifestyle physical activity program for prostate cancer patients. Psychooncology 2006; 15: 847-62.(Ⅰb)

        15) Culos-Reed SN, Robinson JW, Lau H, Stephenson L, Keats M, Norris S, et al. Physical activity for men receiving androgen deprivation therapy for prostate cancer: benefits from a 16-week intervention. Support Care Cancer 2010; 18: 591-9.(Ⅰb)

        16) Demark-Wahnefried W, Clipp EC, Lipkus IM, Lobach D, Snyder DC, Sloane R, et al. Main outcomes of the FRESH START trial: a sequentially tailored, diet and exercise mailed print intervention among breast and prostate cancer survivors. J Clin Oncol 2007; 25: 2709-18.(Ⅰb)

        17) Demark-Wahnefried W, Clipp EC, Morey MC, Pieper CF, Sloane R, Snyder DC, et al. Lifestyle intervention development study to improve physical function in older adults with cancer: outcomes from Project LEAD. J Clin Oncol 2006; 24: 3465-73.(Ⅰb)

        18) Segal RJ, Reid RD, Courneya KS, Sigal RJ, Kenny GP, Prud’Homme DG, et al. Randomized controlled trial of resistance or aerobic exercise in men receiving radiation therapy for prostate cancer. J Clin Oncol 2009; 27: 344-51.(Ⅰb)

        19) Courneya KS, Sellar CM, Stevinson C, McNeely ML, Peddle CJ, Friedenreich CM, et al. Randomized controlled trial of the effects of aerobic exercise on physical functioning and quality of life in lymphoma patients. J Clin Oncol 2009; 27: 4605-12.(Ⅰb)


        CQ 03

        化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて,倦怠感を改善することができるか?

        推奨グレード
        A

        化学療法や放射線療法中・治療後の乳がん,前立腺がん,血液腫瘍患者に,エルゴメーターやトレッドミルを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,それらを組み合わせた運動療法を実施することは,それらを行わない群に比べて,倦怠感の改善がみられるため,行うよう強く勧められる。


        エビデンス

        倦怠感は,化学療法や放射線療法中・治療後のがん患者に非常に多く認められる症状である。

        術後の補助療法(化学療法・放射線療法)中の乳がん患者に,運動療法を実施しても倦怠感は改善しないとの報告もあるが(Ⅰb)1-3),有酸素運動や筋力トレーニングなどの運動療法を実施することにより補助療法中の乳がん患者の倦怠感が改善したとの報告がある(Ⅰb)4-7)。242 症例を対象とした報告では,エルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動(運動強度:1-6 週目は最大酸素摂取量の60%,7-12 週目は70%,12 週目以降は80%,運動時間:1-3 週目は15 分間,3 週毎に5 分間増加させ,18 週目では45 分間),もしくは,筋力トレーニング(マシントレーニング9 種類:1RM の60-70%の運動強度にて各トレーニング12 回×2 セット)を週3 回・18 週間実施することで,運動耐容能や筋力などの身体機能に改善は認められたが,FACT-An を用いて評価した倦怠感には変化は認められなかったとされている(Ⅰb)2)。しかし,Dimeo らの報告では,入院中にエルゴメーターによる有酸素運動(1 分間運動+1 分間休憩を1 セットとし,15 セット/日(計30 分)実施,運動強度:予測最大心拍数の50%,運動負荷:平均30±5 ワット,ペダル回数:30-50 回転/分)を実施することで,The Profile of Mood States(POMS)短縮版およびThe Symptom Checklist-90-Revised(SCL-90-R)を用いて評価した倦怠感に改善が認められた(Ⅰb)4)。Mock らは,放射線療法中の乳がん患者に,自分のペースでの速歩を20-30 分・週4-5 回・6 週間実施することにより倦怠感,睡眠障害,不安感の有意な改善が認められたと報告している(Ⅰb)6)

        また,補助療法後の乳がん患者に,運動療法を実施することで倦怠感が改善したとの報告がある(Ⅰb)8-11)。Courneya らは,補助療法後の乳がん患者に対して,エルゴメーターを用いた有酸素運動を週3 回・15 週間(運動強度:最大酸素摂取量の70-75%,運動時間:1-3 週目15 分間,以降3 週間毎に5 分増加させ,13-15 週目では35 分間)実施することにより,13-item Fatigue Scale of the FACT measurement system を用いて評価した倦怠感が改善したと報告している(Ⅰb)9)

        前立腺がんについては,アンドロゲン除去療法,放射線療法,両療法併用中の患者に対して,有酸素運動や筋力トレーニングを実施することで倦怠感が改善したとの報告がある(Ⅱb)12)(Ⅰb)13-16)。また,自宅での有酸素運動や低強度の筋力トレーニングでも倦怠感が軽減するとの報告もある(Ⅱb)17)。Galvão らは,アンドロゲン除去療法施行の前立腺がん患者に対して,筋力トレーニング(四肢・体幹筋:6-12 RM,2-4 セット)およびサイクリング,ウォーキングもしくはジョギングなどの有酸素運動(最大心拍数の65-80%,Borg Scale 11-13 程度,15-20 分/回)を組み合わせた運動療法を週2 回・12 週間実施することで,EORTC QLQ-C30 の下位尺度である倦怠感に改善が認められたと報告している(Ⅰb)13)。また,Segal らは,筋力トレーニング(四肢・体幹筋:9 種類,1 RM の60-70%を8-12 回・2 セット)を12 週間実施することにより,Functional Assessment of Cancer Therapy-Fatigue にて評価した倦怠感が改善したと報告している(Ⅰb)14)

        化学療法中・後の血液腫瘍患者に対して,エルゴメーターやウォーキングでの有酸素運動による運動療法介入を実施することで,倦怠感が改善するという報告がある(Ⅰb)18, 19)(Ⅱa)20)。Chang らは,入院にて化学療法中の急性骨髄性白血病患者に対して,12 分間歩行を週5 回・3 週間実施することでBrief Fatigue Inventory(BFI)にて評価した倦怠感が改善したと報告している(Ⅰb)18)。また,エルゴメーターを用いた有酸素運動(運動強度:最大酸素摂取量の60%より開始し,各週5%ずつ強度を増加させ,4 週までに75%まで増加,運動時間:4 週目までは15-20 分,各週5 分ずつ増加させ,9 週では40-45 分)を週3 回・12 週間実施することでFACT-An にて評価した倦怠感が改善した(Ⅰb)19)

        文献

        1) Battaglini CL, Mihalik JP, Bottaro M, Dennehy C, Petschauer MA, Hairston LS, et al. Effect of exercise on the caloric intake of breast cancer patients undergoing treatment. Braz J Med Biol Res 2008; 41: 709-15.(Ⅰb)

        2) Courneya KS, Segal RJ, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Effects of aerobic and resistance exercise in breast cancer patients receiving adjuvant chemotherapy: a multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 2007; 25: 4396-404.(Ⅰb)

        3) Mock V, Frangakis C, Davidson NE, Ropka ME, Pickett M, Poniatowski B, et al. Exercise manages fatigue during breast cancer treatment: a randomized controlled trial. Psychooncology 2005; 14: 464-77.(Ⅰb)

        4) Dimeo FC, Stieglitz RD, Novelli-Fischer U, Fetscher S, Keul J. Effects of physical activity on the fatigueand psychologic status of cancer patients during chemotherapy. Cancer 1999; 85: 2273-7.(Ⅰb)

        5) Headley JA, Ownby KK, John LD. The effect of seated exercise on fatigue and quality of life in women with advanced breast cancer. Oncol Nurs Forum 2004; 31: 977-83.(Ⅰb)

        6) Mock V, Dow KH, Meares CJ, Grimm PM, Dienemann JA, Haisfield-Wolfe ME, et al. Effects of exercise on fatigue, physical functioning, and emotional distress during radiation therapy for breast cancer. Oncol Nurs Forum 1997; 24: 991-1000.(Ⅰb)

        7) Schwartz AL, Winters-Stone K, Gallucci B. Exercise effects on bone mineral density in women with breast cancer receiving adjuvant chemotherapy. Oncol Nurs Forum 2007; 34: 627-33.(Ⅰb)

        8) Courneya KS, Friedenreich CM, Sela RA, Quinney HA, Rhodes RE, Handman M. The group psychotherapy and home-based physical exercise(group-hope)trial in cancer survivors: physical fitness and quality of life outcomes. Psychooncology 2003; 12: 357-74.(Ⅰb)

        9) Courneya KS, Mackey JR, Bell GJ, Jones LW, Field CJ, Fairey AS. Randomized controlled trial of exercise training in postmenopausal breast cancer survivors: cardiopulmonary and quality of life outcomes. J Clin Oncol 2003; 21: 1660-8.(Ⅰb)

        10) Fillion L, Gagnon P, Leblond F, Gelinas C, Savard J, Dupuis R, et al. A brief intervention for fatigue management in breast cancer survivors. Cancer Nurs 2008; 31: 145-59.(Ⅰb)

        11) Pinto BM, Frierson GM, Rabin C, Trunzo JJ, Marcus BH. Home-based physical activity intervention for breast cancer patients. J Clin Oncol 2005; 23: 3577-87.(Ⅰb)

        12) Galvão DA, Nosaka K, Taaffe DR, Spry N, Kristjanson LJ, McGuigan MR, et al. Resistance training and reduction of treatment side effects in prostate cancer patients. Med Sci Sports Exerc 2006; 38: 2045-52.(Ⅱb)

        13) Galvão DA, Taaffe DR, Spry N, Joseph D, Newton RU. Combined resistance and aerobic exercise program reverses muscle loss in men undergoing androgen suppression therapy for prostate cancer without bone metastases: a randomized controlled trial. J Clin Oncol 2010; 28: 340-7.(Ⅰb)

        14) Segal RJ, Reid RD, Courneya KS, Malone SC, Parliament MB, Scott CG, et al. Resistance exercise in men receiving androgen deprivation therapy for prostate cancer. J Clin Oncol 2003; 21: 1653-9.(Ⅰb)

        15) Monga U, Garber SL, Thornby J, Vallbona C, Kerrigan AJ, Monga TN, et al. Exercise prevents fatigue and improves quality of life in prostate cancer patients undergoing radiotherapy. Arch Phys Med Rehabil 2007; 88: 1416-22.(Ⅰb)

        16) Segal RJ, Reid RD, Courneya KS, Sigal RJ, Kenny GP, Prud’Homme DG, et al. Randomized controlled trial of resistance or aerobic exercise in men receiving radiation therapy for prostate cancer J Clin Oncol 2009; 27: 344-51.(Ⅰb)

        17) Culos-Reed SN, Robinson JL, Lau H, O’Connor K, Keats MR. Benefits of a physical activity intervention for men with prostate cancer. J Sport Exerc Psychol 2007; 29: 118-27.(Ⅱb)

        18) Chang PH, Lai YH, Shun SC, Lin LY, Chen ML, Yang Y, et al. Effects of a walking intervention on fatigue-related experiences of hospitalized acute myelogenous leukemia patients undergoing chemotherapy: a randomized controlled trial. J Pain Symptom Manage 2008; 35: 524-34.(Ⅰb)

        19) Courneya KS, Sellar CM, Stevinson C, McNeely ML, Peddle CJ, Friedenreich CM, et al. Randomized controlled trial of the effects of aerobic exercise on physical functioning and quality of life in lymphoma patients. J Clin Oncol 2009; 27: 4605-12.(Ⅰb)

        20) Oldervoll LM, Kaasa S, Knobel H, Loge JH. Exercise reduces fatigue in chronic fatigued Hodgkins disease survivors-results from a pilot study. Eur J Cancer 2003; 39: 57-63.(Ⅱa)


        CQ 04

        化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて精神機能・心理面(抑うつ,不安など)を改善することができるか?

        推奨グレード
        A

        化学療法や放射線療法中・治療後の乳がん,血液腫瘍患者に,エルゴメーターやトレッドミルを用いた有酸素運動や筋力トレーニング,それらを組み合わせた運動療法,また,運動療法とカウンセリングを併用したリハビリテーションを実施することは,それらを行わない群に比べて,精神機能,心理面の改善がみられるため,行うよう強く勧められる。


        エビデンス

        がん患者では,手術や化学療法,放射線療法前後,また,治療後長期間にわたって精神症状,心理的症状が出現することが頻繁に認められる。

        乳がん患者が化学療法,放射線療法中に入院中,もしくは自宅での運動療法を実施することにより不安感が軽減したとの報告がある(Ⅰb)1-3)。化学療法中の乳がん患者に,エルゴメーターやトレッドミルなどを用いた有酸素運動を週3 回・18 週間(運動強度:1-6 週目は最大酸素摂取量の60%,7-12 週目は70%,12 週目以降は80%,運動時間:1-3 週目は15 分間,3 週毎に5 分間増加させ,18 週目では45 分間)実施することで運動耐容能が改善し,FACT-An で評価したQOL や倦怠感,Center for Epidemiological Studies Depression Scale(CES-D)で評価した抑うつ,Spielberger State Anxiety Inventory(SAI)で評価した不安感が改善する(Ⅰb)1)。また,Dimeo らの報告では,入院中にエルゴメーターを用いた有酸素運動(1 分間運動+1 分間休憩を1 セットとし,15 セット/日(計30 分)実施,運動強度:予測最大心拍数の50%,運動負荷:平均30 ± 5 ワット,ペダル回数:30-50 回転/分)を実施することで,POMS 短縮版およびSCL-90-R を用いて評価した精神的・心理的症状に改善が認められた(Ⅰb)2)。Mock らは,放射線療法中の乳がん患者に対して,自分のペースでの速歩を20-30 分・週4-5 回・6 週間実施することによりPiper Fatigue Scale(PFS)を用いて評価した倦怠感,Symptom Assessment Scales(SAS)を用いて評価した不安感,睡眠障害に有意な改善が認められたと報告している(Ⅰb)3)。また,運動療法とあわせて電話によるカウンセリングを併用することで,抑うつおよび不安感の改善が得られた(Ⅰb)4, 5)。Badger らは,運動療法に電話によるカウンセリングを併用することにより,非介入群(乳がんに関するパンフレットの配布と簡単な電話での会話)と比べ20-item CES-D を用いて評価した抑うつおよびThe Positive and Negative Affect Schedule(PANAS),SF-12,Index of Clinical Stress を用いて評価した不安感の改善が認められたと報告している(Ⅰb)4)。Cochrane レビューでも,補助化学療法もしくは放射線療法中の乳がん患者に運動療法を行うと,行わない場合に比べて気分障害や抑うつが改善したと報告されている(Ⅰa)6)

        化学療法,放射線療法後の乳がん患者においても,運動療法を実施することで抑うつや不安が軽減するとの報告がある(Ⅰb)7-10)。Daley らの報告では,化学療法,放射線療法,手術後12-36 カ月経過した乳がん患者に有酸素運動(運動強度:予測最大心拍数の65-85%)を1 回50 分・週3 回・8 週間実施することで,Beck Depression Inventory-Ⅱ(DBI-Ⅱ)を用いて評価した抑うつが改善した(Ⅰb)7)。また,Segar らは,有酸素運動(運動強度:予測最大心拍数の60%以上)を1 回30-40 分・週4 回・10 週間実施することで,Beck Depression Inventory(BDI)を用いて評価した抑うつ,Spielberger State-Trait Anxiety Inventory(STAI)を用いて評価した不安感が改善したと報告している(Ⅰb)8)

        血液腫瘍では,122 症例の悪性リンパ腫患者を対象としたRCT において,エルゴメーターを用いた有酸素運動を週3 回・12 週間(運動強度:最大酸素摂取量の60%より開始し,各週5%ずつ強度を増加させ,4 週までに75%まで増加,運動時間:4 週目までは15-20 分,各週5 分ずつ増加させ,9 週では40-45 分)実施することで身体機能の改善や倦怠感の軽減とともに,Happiness scale を用いて評価した幸福感,the short-form CES-D を用いて評価した抑うつ,the short-form SAI を用いて評価した不安感が改善したと報告されている(Ⅰb)11)

        付記

        精神・心理機能に対する運動療法の効果に関するエビデンス:

        American College of Sports Medicine (ACSM)のがん患者運動ガイドライン(American College of Sports Medicine Roundtable on Exercise Guidelines for Cancer Survivors)では,化学療法・放射線療法中・治療後の乳がん,前立腺がん,血液腫瘍患者に対する運動療法効果のエビデンスが述べられている。各がん患者のQOL に対する運動療法効果については数多くの研究が実施され,エビデンスが構築されているが,抑うつ・気分などの精神・心理機能に対する運動療法の効果は,乳がんを除く他のがん患者では十分に検証されていない。今後の研究の発展に期待したい。

        文献

        1) Courneya KS, Segal RJ, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Effects of aerobic and resistance exercise in breast cancer patients receiving adjuvant chemotherapy: a multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 2007; 25: 4396-404.(Ⅰb)

        2) Dimeo FC, Stieglitz RD, Novelli-Fischer U, Fetscher S, Keul J. Effects of physical activity on the fatigue and psychologic status of cancer patients during chemotherapy. Cancer 1999; 85: 2273-7.(Ⅰb)

        3) Mock V, Dow KH, Meares CJ, Grimm PM, Dienemann JA, Haisfield-Wolfe ME, et al. Effects of exercise on fatigue, physical functioning, and emotional distress during radiation therapy for breast cancer. Oncol Nurs Forum 1997; 24: 991-1000.(Ⅰb)

        4) Badger T, Segrin C, Dorros SM, Meek P, Lopez AM. Depression and anxiety in women with breast cancer and their partners. Nurs Res 2007; 56: 44-53.(Ⅰb)

        5) Demark-Wahnefried W, Case LD, Blackwell K, Marcom PK, Kraus W, Aziz N, et al. Results of a diet/exercise feasibility trial to prevent adverse body composition change in breast cancer patients on adjuvant chemotherapy. Clin Breast Cancer 2008; 8: 70-9.(Ⅰb)

        6) Markes M, Brockow T, Resch KL. Exercise for women receiving adjuvant therapy for breast cancer. Cochrane Database Syst Rev 2006;(4): CD005001.(Ⅰa)

        7) Daley AJ, Crank H, Saxton JM, Mutrie N, Coleman R, Roalfe A. Randomized trial of exercise therapy in women treated for breast cancer. J Clin Oncol 2007; 25: 1713-21.(Ⅰb)

        8) Segar ML, Katch VL, Roth RS, Garcia AW, Portner TI, Glickman SG, et al. The effect of aerobic exercise on self-esteem and depressive and anxiety symptoms among breast cancer survivors. Oncol Nurs Forum 1998; 25: 107-13.(Ⅰb)

        9) Thorsen L, Skovlund E, Stromme SB, Hornslien K, Dahl AA, Fossa SD. Effectiveness of physical activity on cardiorespiratory fitness and health-related quality of life in young and middle-aged cancer patients shortly after chemotherapy. J Clin Oncol 2005; 23: 2378-88.(Ⅰb)

        10) Burnham TR, Wilcox A. Effects of exercise on physiological and psychological variables in cancer survivors. Med Sci Sports Exerc 2002; 34: 1863-7.(Ⅰb)

        11) Courneya KS, Sellar CM, Stevinson C, McNeely ML, Peddle CJ, Friedenreich CM, et al. Randomized controlled trial of the effects of aerobic exercise on physical functioning and quality of life in lymphoma patients. J Clin Oncol 2009; 27: 4605-12.(Ⅰb)


        CQ 05

        化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して,運動療法または物理療法を行うと,行わない場合に比べて,有害事象,その他のアウトカムを改善することができるか?

        推奨グレード
        A

        化学療法や放射線療法中・治療後のがん患者に,有酸素運動や筋力トレーニングを実施することや鍼治療,物理療法を実施することは,有害事象の軽減,倦怠感の改善,免疫機能の改善が認められるため,行うよう強く勧められる。


        エビデンス

        化学療法や放射線療法中の患者では,嘔気・嘔吐,下痢,貧血などが生じることによりQOL が低下する。また,有害事象により治療の完遂率にも影響を与える。

        化学療法や放射線療法中の乳がん患者に,有酸素運動や筋力トレーニングを実施することにより,嘔気・嘔吐,貧血,下痢,疼痛が改善し,血小板減少期間,顆粒球減少期間,入院期間が減少する(Ⅰb)1-4)。また,有害事象を軽減することで抗がん剤の耐用量を増加できるとの報告がある(Ⅰb)5)。化学療法中のがん患者に対する物理療法に関するCochrane レビューでは,急性および遅発性化学療法関連の嘔気・嘔吐を認めるがん患者1,247 名に対して,鍼,電気刺激,磁力,指圧などによる物理療法を実施することにより,非介入群と比べ,嘔気・嘔吐を抑制できた(Ⅰa)6)

        また,化学療法後の中等度もしくは重度の倦怠感を有するがん患者に対して,片側3 箇所,両側で6 箇所の経穴に鍼治療あるいは指圧治療を1 回20 分・週3 回・2 週間実施することにより,Multi dimensional Fatigue Inventory(MFI)を用いて評価した全体的倦怠感,身体的倦怠感,活動制限,意欲低下が有意に改善し,改善度は鍼治療で36%,指圧治療で19%,偽鍼治療で0.6%であった。効果は介入2 週後も持続していたとの報告がある(Ⅰb)7)

        化学療法や放射線療法後の乳がん患者に対して,週3 回・15 週のエルゴメーターによる有酸素運動(最大酸素摂取量の70-75%の運動強度)を1-3 週目は15 分間,その後3 週毎に5 分増加させ,13-15 週目では35 分間実施することにより,Natural Killer(NK)細胞活性などの免疫学的指標に改善が認められた(Ⅰb)8)。補助化学療法もしくは放射線療法中の乳がん患者に対する運動療法についてのCochrane レビューでも,運動療法を実施することにより,実施しない場合と比べて,NK 細胞やT 細胞の増加などの免疫機能の向上,酸化ストレスの減少などが報告されている(Ⅰa)9)

        付記

        化学療法の適応とリハビリテーションの役割:

        化学療法の適応の原則として,①全身状態(Performance Status;PS)が良好であること,②栄養状態が良好であること,③化学療法に耐えうる臓器機能(骨髄,心,肺,肝,腎)を有することがあげられる。

        全身状態については,通常PS2 以下,つまり,軽作業はできないが,日中50%以上は起居している状態よりも元気な患者に化学療法の適応がある。PS3 以上の全身状態不良例は,予後不良かつ有害事象も増悪する傾向にあるため適応となることは少ない。栄養状態については,経口摂取不良,体重減少,低アルブミン血症が認められる患者は有害事象に耐えられない可能性があり,適応が慎重に判断される。また,臓器機能低下例では有害事象が増悪することが多い。

        化学療法中の患者では,腎機能障害,心機能障害,間質性肺炎,嘔気・嘔吐,骨髄抑制,末梢神経障害などの有害事象,放射線療法中の患者では,嘔気,食欲不振,倦怠感,皮膚炎,口腔咽頭粘膜障害,消化管障害などさまざまな有害事象が生じるリスクがある。それに伴い全身体力低下や倦怠感をきたす症例も多い。

        このような有害事象を軽減し,PS を維持・改善することにより化学療法の完遂率を向上させることもリハビリテーションの重要な役割である。

        文献

        1) Dimeo F, Fetscher S, Lange W, Mertelsmann R, Keul J. Effects of aerobic exercise on the physical performance and incidence of treatment-related complications after high-dose chemotherapy. Blood 1997; 90: 3390-4.(Ⅰb)

        2) Dimeo FC, Stieglitz RD, Novelli-Fischer U, Fetscher S, Keul J. Effects of physical activity on the fatigue and psychologic status of cancer patients during chemotherapy. Cancer 1999; 85: 2273-7.(Ⅰb)

        3) Mutrie N, Campbell AM, Whyte F, McConnachie A, Emslie C, Lee L, et al. Benefits of supervised group exercise programme for women being treated for early stage breast cancer: pragmatic randomised controlled trial. BMJ 2007; 334: 517.(Ⅰb)

        4) Drouin JS, Young TJ, Beeler J, Byrne K, Birk TJ, Hryniuk WM, et al. Random control clinical trial on the effects of aerobic exercise training on erythrocyte levels during radiation treatment for breast cancer. Cancer 2006; 107: 2490-5.(Ⅰb)

        5) Courneya KS, Segal RJ, Mackey JR, Gelmon K, Reid RD, Friedenreich CM, et al. Effects of aerobic and resistance exercise in breast cancer patients receiving adjuvant chemotherapy: a multicenter randomized controlled trial. J Clin Oncol 2007; 25: 4396-404.(Ⅰb)

        6) Ezzo JM, Richardson MA, Vickers A, Allen C, Dibble SL, Issell BF, et al. Acupuncture-point stimulation for chemotherapy-induced nausea or vomiting. Cochrane Database Syst Rev 2006;(2): CD002285.(Ⅰa)

        7) Molassiotis A, Sylt P, Diggins H. The management of cancer-related fatigue after chemotherapy with acupuncture and acupressure: a randomized controlled trial. Complement Ther Med 2007; 15: 228-37.(Ⅰb)

        8) Fairey AS, Courneya KS, Field CJ, Bell GJ, Jones LW, Mackey JR. Randomized controlled trial of exercise and blood immune function in postmenopausal breast cancer survivors. J Appl Physiol 2005; 98: 1534-40.(Ⅰb)

        9) Markes M, Brockow T, Resch KL. Exercise for women receiving adjuvant therapy for breast cancer. Cochrane Database Syst Rev 2006;(4): CD005001.(Ⅰa)


        CQ 06

        化学療法・放射線療法中もしくは治療後の患者に対して,精神的リラクセーション(音楽療法など)を行うと,行わない場合に比べて,有害事象を軽減できるか?

        推奨グレード
        B

        化学療法中・治療後のがん患者に,精神的リラクセーション(音楽療法など)を実施することは,それらを行わない群に比べて,気分,抑うつの改善や免疫機能の改善が認められるため,行うよう勧められる。


        エビデンス

        急性白血病や非ホジキンリンパ腫の患者に,治療中に音楽療法を1 回45 分・週2 回,また自主トレーニングを1 日に1 回実施することで,音楽療法を実施しない群と比べ,PANAS,Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue (FACIT-F),STAI Form Y-1 で評価した否定的感情,不安が軽減した(Ⅰb)1)

        また,術後化学療法を4 コース受け,骨髄抑制をきたしている卵巣がん患者に対して,コーピング,呼吸法,筋リラクセーション,患者教育で構成されるリラクセーションプログラムを2 カ月実施することにより, 非実施群と比べ, リンパ球・白血球の増加を認め, 骨髄での細胞分裂像(mitogen)の増加,NK 細胞の活性がみられるなど,免疫機能の改善が認められた(Ⅱa)2)

        文献

        1) Burns DS, Azzouz F, Sledge R, Rutledge C, Hincher K, Monahan PO, et al. Music imagery for adults with acute leukemia in protective environments: a feasibility study. Support Care Cancer 2008; 16: 507-13.(Ⅰb)

        2) Lekander M, Fürst CJ, Rotstein S, Hursti TJ, Fredrikson M. Immune effects of relaxation during chemotherapy for ovarian cancer. Psychother Psychosom 1997; 66: 185-91.(Ⅱa)


        第9 章 リハビリテーションが必要な在宅進行がん・末期がん患者

        CQ 01

        在宅進行がん・末期がん患者の運動機能低下に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて運動機能を改善することができるか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.緩和ケア対象がん患者に対するサーキットトレーニングを中心とした運動療法は,身体機能(歩行距離,立ち上がり時間)を改善するので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 2.転移がん患者に対する抵抗運動は,上下肢の筋力増強効果があるので,行うよう勧められる。

        エビデンス

        生命予後が3-12 カ月の緩和ケア対象がん患者に対し,1 回50 分・2 週間に1 回・6 週間の運動療法〔① 10 分のWarm Up,② 30 分のサーキットトレーニング(段差昇降,バランス,プルダウン,臥位での寝返り立ち上がり,座位での立ち上がり,自転車エルゴメーターの6 種目),③ 10 分のリラクセーション・ストレッチング〕を行うと,歩行距離,立ち上がり時間が改善する(Ⅱb)1)

        転移がん患者に対する運動の効果のシステマティックレビューでは,週3 回・12 週間の運動(予想1RM の60-70%の強度の抵抗運動)で上下肢の筋力増強が得られる(Ⅰb)2)

        一方,生命予後12 カ月未満の緩和ケア対象がん患者に対する身体活動の効果のシステマティックレビューでは,研究デザインの質が不十分で,緩和ケア対象がん患者に対する全身性有酸素運動を中心とした運動介入の有効性を示す十分なエビデンスはない(Ⅰb)3)との指摘もある。

        文献

        1) Oldervoll LM, Loge JH, Paltiel H, Asp MB, Vidvei U, Wiken AN, et al. The effect of a physical exercise program in palliative care: A phase Ⅱ study. J Pain Symptom Manage 2006; 31: 421-30.(Ⅱb)

        2) Beaton R, Pagdin-Friesen W, Robertson C, Vigar C, Watson H, Harris SR. Effects of exercise intervention on persons with metastatic cancer: a systematic review. Physiotherapy Canada 2009; 61: 141-53.(Ⅰb)

        3) Lowe SS, Watanabe SM, Courneya KS. Physical activity as a supportive care intervention in palliative cancer patients: a systematic review. J Support Oncol 2009; 7: 27-34.(Ⅰb)


        CQ 02

        在宅進行がん・末期がん患者の呼吸困難に対してリハビリテーションを行うと,行わない場合に比べて呼吸困難を改善することができるか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.呼吸困難のある肺がん患者に対する理学療法士による呼吸法指導は,呼吸困難,身体活動性,倦怠感を改善するので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        A
        1. 2.呼吸困難を有する肺がん患者に対する看護師による患者教育プログラムは,呼吸困難感,身体活動性,抑うつ,ADL 困難度などを改善するので,行うよう強く勧められる。
        推奨グレード
        C2
        1. 3.鍼治療は肺がん患者の呼吸困難感の改善に対して科学的根拠がないので,行うよう勧められない。

        エビデンス

        呼吸困難のある肺がん患者に対する経験豊かな緩和ケア専門理学療法士によるBreathlessness Clinic(1 回90 分・4-6 週間に3 回の呼吸法,リラクセーション,活動調整および心理社会的支援)は,介入後の呼吸困難,活動度,倦怠感を有意に改善する(Ⅱb)1)

        呼吸困難感を有するがん治療を終えた肺がん患者に対する看護師による患者教育プログラム,すなわち看護師が運営する外来に週1 回・3-8 週間通院し,呼吸困難に関する評価,呼吸困難感の管理についての患者・家族教育,呼吸困難感に関する教育,呼吸法訓練,リラクセーションテクニック,生活機能・社会生活を送るための補助呼吸法,対処法の目標設定などを行うと,8 週後の症状安定時の息切れ,WHO Performance Status,抑うつ,身体症状が有意に改善する(Ⅰb)2)

        肺がん患者に上記と同様の看護師による患者教育プログラムを1 回1 時間・週1 回・3-6 週行うと,1 カ月後,3 カ月後の症状安定時の呼吸困難感,呼吸困難感による苦悩,活動耐久性,日常生活動作(activities of daily living;ADL)困難度が有意に改善する(Ⅰb)3)

        呼吸困難を訴える肺がん患者,乳がん患者に対する鍼治療(四肢・体幹・耳介の経絡に置鍼を刺入し,同部を圧迫)は,施術直後と1 週後の呼吸困難感に対照群と有意差がない(Ⅰb)4)

        末期がん患者の呼吸困難に対する非薬物療法介入のシステマティックレビューでは,看護3 件,鍼治療1 件のRCT があり,鍼治療は無効,看護は呼吸困難感の改善に有効である(Ⅰb)5)

        付記

        呼吸機能障害に対するリハビリテーション:

        進行がん,COPD,間質性肺炎,心不全,運動ニューロン病による呼吸機能障害に対するリハビリテーション(歩行補助具,音楽,胸郭振動刺激,鍼治療,リラクセーション,カウンセリング,呼吸法訓練,下肢筋群の電気刺激)のシステマティックレビューで,下肢筋群の電気刺激と胸郭振動刺激は呼吸困難感を軽減する強いエビデンスがあり,歩行補助具と呼吸法訓練は中等度のエビデンスがある6)

        文献

        1) Hately J, Laurence V, Scott A, Baker R, Thomas P. Breathlessness clinics within specialist palliative care settings can improve the quality of life and functional capacity of patients with lung cancer. Palliat Med 2003; 17: 410-7.(Ⅱb)

        2) Bredin M, Corner J, Krishnasamy M, Plant H, Bailey C, A’Hern R. Multicentre randomised controlled trial of nursing intervention for breathlessness in patients with lung cancer. BMJ 1999; 318: 901-4.(Ⅰb)

        3) Corner J, Plant H, A’Hern R, Bailey C. Non-pharmacological intervention for breathlessness in lung cancer. Palliative Medicine 1996; 10: 299-305.(Ⅰb)

        4) Vickers AJ, Feinstein MB, Deng GE, Cassileth BR. Acupuncture for dyspnea in advanced cancer: a randomized, placebo-controlled pilot trial. BMC Palliative Care 2005; 4: 5 Epub.(Ⅰb)

        5) Ben-Aharon I, Gafter-Gvili A, Paul M, Leibovici L, Stemmer SM. Interventions for alleviating cancer-related dyspnea: a systematic review. J Clin Oncol 2008; 26: 2396-404.(Ⅰb)

        付記文献

        6) Bausewein C, Booth S, Gysels M, Higginson I. Non-pharmacological interventions for breathlessness in advanced stages of malignant and non-malignant diseases. Cochrane Database Syst Rev 2008; (2): CD005623.


        CQ 03

        在宅進行がん・末期がん患者の倦怠感に対して運動療法を行うと,行わない場合に比べて倦怠感を改善することができるか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.緩和ケア対象がん患者に対するサーキットトレーニングを中心とした運動療法は,倦怠感を改善するので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 2.転移のある乳がん患者に対する呼吸法・瞑想法などのヨガトレーニングは,自覚的活力を改善するので,行うよう勧められる。

        エビデンス

        生命予後が3-12 カ月の緩和ケア対象がん患者に対し,1 回50 分・2 週に1 回・6 週間の運動療法〔① 10 分のWarm Up,② 30 分のサーキットトレーニング(段差昇降:下肢筋力強化,バランス,プルダウン:上肢筋力強化,臥位での寝返り立ち上がり,座位での立ち上がり,自転車エルゴメーターの6 種目),③ 10 分のリラクセーション・ストレッチング〕を行うと倦怠感が有意に改善する(Ⅱb)1)

        転移のある乳がん患者に対して,1 回120 分・週1 回・8 週間のYoga of awareness program(ストレッチング,呼吸法,瞑想法,講義形式の学習,グループ討議)を行うと自覚的活力が有意に改善する(Ⅱb)2)

        進行がん患者の倦怠感についてのレビューでは,運動療法は非薬物療法の中で最も強い有効性のエビデンスがあり,その要因は心肺機能の改善と,気分の改善,睡眠の改善にある(Ⅳ)3)

        文献

        1) Oldervoll LM, Loge JH, Paltiel H, Asp MB, Vidvei U, Wiken AN, et al. The effect of a physical exercise program in palliative care: A phase Ⅱ study. J Pain Symptom Manage 2006; 31: 421-30.(Ⅱb)

        2) Carson JW, Carson KM, Porter LS, Keefe FJ, Shaw H, Miller JM. Yoga for women with metastatic breast cancer: results from a pilot study. J Pain Symptom Manage 2007; 33: 331-41.(Ⅱb)

        3) Barnes EA, Bruera E. Fatigue in patients with advanced cancer: a review. Int J Gynecol Cancer 2002; 12: 424-8.(Ⅳ)


        CQ 04

        在宅進行がん・末期がん患者の疼痛に対して患者教育を行うと,行わない場合に比べて疼痛緩和効果が高いか?

        推奨グレード
        B

        疼痛を有するがん患者に対する,看護師による個別レクチャー形式の疼痛教育プログラムは,疼痛を軽減し,疼痛による活動制限を改善するので,行うよう勧められる。


        エビデンス

        疼痛を有する入院がん患者に対して,看護師によるパンフレットとレクチャー形式の疼痛教育プログラム(pain education program;PEP)を1 対1 で,1 回30-40 分行うと,現在の疼痛と一番楽に感じる痛みがPEP 群で有意に改善し,2 週後の疼痛による活動制限が有意に改善する(Ⅰb)1)

        骨転移による疼痛を有するがん患者に対して,専門教育を受けたがん専門看護師による教育(The PRO-SELF ® Pain Control Program:1,3,6 週に患者・家族と面談し個別の疼痛管理法指導,薬物使用法の指導,医師・看護師とのコミュニケーション指導,2,4,6 週に電話による相談・支援)を行うと,pain score 改善例が多く,身体疼痛のQOL が改善する(Ⅱa)2)

        文献

        1) Yildirim YK, Cicek F, Uyar M. Effects of pain education program on pain intensity, pain treatment satisfaction, and barriers in Turkish cancer patients. Pain Manag Nurs 2009; 10: 220-8.(Ⅰb)

        2) Miaskowski C, Dodd M, West C, Paul SM, Schumacher K, Tripathy D, et al. The use of a responder analysis to identify differences in patient outcomes following a self-care intervention to improve cancer pain management. Pain 2007; 129: 55-63.(Ⅱa)


        CQ 05

        在宅進行がん・末期がん患者の疼痛・倦怠感に対し物理療法・徒手療法などを行うと,行わない場合に比べて,疼痛・倦怠感の緩和効果が高いか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.在宅ホスピス利用患者に対するマッサージはリラクセーション効果と疼痛緩和の即時効果があるので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 2.末期がん患者に対するマッサージ,特に足マッサージは疼痛緩和の即時効果があるので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 3.転移性骨腫瘍患者に対する疼痛部位への経皮的電気神経刺激(TENS)は,運動時疼痛緩和が得られるので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 4.通常の鍼治療,経穴刺激どちらも末期がん患者に対して即時的,長期的な疼痛緩和効果があるので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        B
        1. 5.経穴への電気刺激は疼痛,嘔気・嘔吐,倦怠感の即時的緩和効果があるので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        C2
        1. 6.末期がん患者に対するアロマテラピーは疼痛緩和の効果を認めず,科学的根拠がないので,行うよう勧められない。

        エビデンス

        在宅ホスピスケアを利用する疼痛を有するがん患者に,通常ホスピスケアとマッサージ師による週2 回・2 週間のマッサージを行うと,通常ホスピスケアのみに比べて心拍数,呼吸数が低下し疼痛強度が改善する(Ⅰb)1)

        がん患者に対するマッサージのシステマティックレビューでは,末期がん患者を対象にした3 件のRCT があり,1 回30 分・週1 回・4 週間のアロマテラピーは無効,1 回10 分・3 日間に2 回の足マッサージにより施術直後の疼痛,嘔気が改善し,リラクセーションが得られる。週2 回・4 回のマッサージで疼痛緩和の即時効果を認めるが長期効果はない(Ⅰb)2)

        転移性骨腫瘍による疼痛患者に対して,疼痛部位への経皮的電気神経刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation;TENS)を行うと(連続刺激・80 Hz・200μs・1 回60 分・2-7 日間),運動時の疼痛緩和が得られる(Ⅰb)3)

        ホスピス・緩和ケアにおける鍼治療のシステマティックレビューでは,27 件のRCT のうち23 件で鍼治療は有効であり,末期がん患者に対しては,通常の鍼治療,経穴刺激どちらでも即時的,継続的な疼痛緩和効果がある。経穴への電気刺激で疼痛,嘔気・嘔吐,倦怠感の即時的緩和効果がある(Ⅰb)4)

        付記

        がん患者に対するマッサージの効果:

        物理療法・徒手療法については,末期がん患者だけでなく広くがん患者を対象とした研究が多い。発病早期の乳がん患者に対して背部,頭頸部に古典的マッサージ(1 回30 分・週2 回・5 週間)を施行すると疼痛・倦怠感が有意に改善し,怒り,抑うつの感情障害が有意に改善する5)

        マッサージとアロマテラピーは介入直後に疼痛と不安を改善するが,中・長期的な効果はない6)

        古典的マッサージは,がん患者の疼痛,嘔気,不安,抑うつ,ストレス,倦怠感などの症状を緩和するが研究の質が低く,その効果について結論に至っていない7)

        がん患者に対する鍼治療の効果:

        悪性腫瘍の治療後に慢性の神経性疼痛をきたした患者に対する耳介経穴への鍼治療は疼痛を36%軽減し,プラセボ群の2%と有意差があったと報告されている8)

        手術を行うがん患者に対して,術後1 日目と2 日目にベッドサイドで,10-30 分のスウェーデンマッサージと足部の指圧および症状に応じた経穴への20 分間の鍼治療を行うと,疼痛スコアの改善率および抑うつ気分の改善率が対照群に比し有意に大きい9)

        中等度ないし重度の倦怠感を有するがん患者に,片側3 箇所,両側で6 箇所の経穴に鍼治療あるいは指圧治療を,1 回20 分・週3 回・2 週間行うと,倦怠感,活動制限,意欲低下が有意に改善し,改善度は鍼治療で36%,指圧治療で19%,偽鍼治療で0.6%であり,その効果は介入2 週後も持続していた10)

        一方で,がん関連疼痛に対する鍼治療のシステマティックレビューでは7 件のRCT のうちJadad score 5(研究の質を評価するスコア。4,5 は質が高い)は1 件のみで,耳介への鍼治療がプラセボ鍼治療に比べて疼痛を軽減するが,鍼治療を強く推奨する十分な根拠はない11),鍼治療・マッサージはがん性倦怠感の改善に有望な介入であるが,十分な根拠がない12)などの否定的な指摘もある。

        がん患者に対するその他の補完代替療法(CAM)の効果:

        鍼治療は補完代替療法(CAM)の位置づけだが,CAM には鍼治療,アロマテラピー,リフレクソロジー,足湯(foot soak),エネルギー温存の活動管理,治療的接触,催眠療法,マッサージ,注意集中に基づくストレス緩和(mindfulness-based stress reduction)が含まれる12)。がん性疼痛に対するCAM の効果についてのシステマティックレビューでは,多施設研究がなく,研究の質に問題があり,推奨できる介入はない13)。リラクセーション,鍼治療,TENS に疼痛緩和効果の可能性があるが,検索できる文献数が少なく,十分な根拠はない14)。鍼治療1 件,マッサージ1 件,催眠療法6 件のRCT があるが,いずれもエビデンスレベルは低い15)など,十分な科学的根拠を認めないのが現状である。

        文献

        1) Wilkie DJ, Kampbell J, Cutshall S, Halabisky H, Harmon H, Johnson LP, et al. Effects of massage on pain intensity, analgesics and quality of life in patients with cancer pain: a pilot study of a randomized clinical trial conducted within hospice care delivery. Hosp J 2000; 15: 31-53.(Ⅰb)

        2) Wilkinson S, Barnes K, Storey L. Massage for symptom relief in patients with cancer: systematic review. J Adv Nurs 2008; 63: 430-9.(Ⅰb)

        3) Bennett MI, Johnson MI, Brown SR, Radford H, Brown JM, Searle RD. Feasibility study of Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation(TENS)for cancer bone pain. J Pain 2010; 11: 351-9.(Ⅰb)

        4) Standish LJ, Kozak L, Congdon S. Acupuncture is underutilized in hospice and palliative medicine. Am J Hosp Palliat Care 2008; 25: 298-308.(Ⅰb)

        付記文献

        5) Listing M, Reisshauer A, Krohn M, Voigt B, Tjahono G, Becker J, et al. Massage therapy reduces physical discomfort and improves mood disturbances in women with breast cancer. Psychooncology 2009; 18: 1290-9.

        6) Fellowes D, Barnes K, Wilkinson S. Aromatherapy and massage for symptom relief in patients with cancer. Cochrane Database Syst Rev 2004;(2): CD002287.

        7) Ernst E. Massage therapy for cancer palliation and supportive care: a systematic review of randomised clinical trials. Support Care Cancer 2009; 17: 333-7.

        8) Alimi D, Rubino C, Pichard-Leandri E, Fermand-Brule S, Dubreuil-Lemaire M, Hill C. Analgesic effect of auricular acupuncture for cancer pain: a randomized, blinded, controlled trial. J Clin Oncol 2003; 21: 4120-6.

        9) Mehling WE, Jacobs B, Acree M, Wilson L, Bostrom A, West J, et al. Symptom management with massage and acupuncture in postoperative cancer patients: a randomized controlled trial. J Pain Symptom Manage 2007; 33: 258-66.

        10) Molassiotis A, Sylt P, Diggins H. The management of cancer-related fatigue after chemotherapy with acupuncture and acupressure: a randomised controlled trial. Complement Ther Med 2007; 15: 228-37.

        11) Lee H, Schmidt K, Ernst E. Acupuncture for the relief of cancer-related pain ─ a systematic review. Eur J Pain 2005; 9: 437-44.

        12) Sood A, Barton DL, Bauer BA, Loprinzi CL. A critical review of complementary therapies for cancer-related fatigue. Integr Cancer Ther 2007; 6: 8-13.

        13) Bardia A, Barton DL, Prokop LJ, Bauer BA, Moynihan TJ. Efficacy of complementary and alternative medicine therapies in relieving cancer pain: a systematic review. J Clin Oncol 2006; 24: 5457-64.

        14) Pan CX, Morrison RS, Ness J, Fugh-Berman A, Leipzig RM. Complementary and alternative medicine in the management of pain, dyspnea, and nausea and vomiting near the end of life. A systematic review. J Pain Symptom Manage 2000; 20: 374-87.

        15) Sellick SM, Zaza C. Critical review of 5 nonpharmacologic strategies for managing cancer pain. Cancer Prev Control 1998; 2: 7-14.


        CQ 06

        在宅進行がん・末期がん患者に対して,リハビリテーションチームアプローチを行うと,行わない場合に比べて,患者・家族のQOL が向上するか?

        推奨グレード
        B
        1. 1.進行がん患者に対する医療ソーシャルワーカー,理学療法士,臨床心理士などによる多専門職の治療セッションはQOL を改善するので,行うよう勧められる。
        推奨グレード
        C1
        1. 2.進行がん患者に対する理学療法士,作業療法士,言語聴覚士などによる評価・相談介入はがん関連症状と健康関連QOL を改善するので,行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠はない。

        エビデンス

        進行がん患者を対象に,多専門職セッション(1 回90 分・週2 回・4 週間),すなわち,20 分の調整運動(理学療法士),コーピングの認知行動戦略学習,QOL をテーマにした討論,医療ソーシャルワーカーによる地域の社会資源,経済的な支援制度,法的な問題などについての情報提供,10-20 分のリラクセーション訓練を実施したところ,介入直後のQOL が対照群に比べ有意に高く,特に社会生活の領域は全例で改善があり,経済的問題,法的問題の領域で有意に改善する(Ⅰb)1, 2)。 セッションの管理者は臨床心理士である。

        進行がん患者に多専門職(医療ソーシャルワーカー,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,栄養士,精神科専門看護師,チャプレン*)によるMD clinic(multidisciplinary symptom control and palliative care clinic,1 回5 時間の評価,相談,指導,文書・ビデオによる指導内容の説明)を行うと,医師と看護師による相談,口頭指導に比べ疼痛,嘔気,抑うつ,不安,睡眠,息切れ,健康感で有意に改善を認める(Ⅲ)3)

        システマティックレビューではリハビリテーションチームアプローチにより身体機能,移動能力,患者家族の満足感が高まる(Ⅲ)4)

        *チャプレン(Chaplain):軍隊,学校,病院,刑務所といった施設や組織で働く聖職者

        文献

        1) Miller JJ, Frost MH, Rummans TA, Huschka M, Atherton P, Brown P, et al. Role of a medical social worker in improving quality of life for patients with advanced cancer with a structured multidisciplinary intervention. J Psychosoc Oncol 2007; 25: 105-19.(Ⅰb)

        2) Rummans TA, Clark MM, Sloan JA, Frost MH, Bostwick JM, Atherton PJ, et al. Impacting quality of life for patients with advanced cancer with a structured multidisciplinary intervention: a randomized controlled trial. J Clin Oncol 2006; 24: 635-42.(Ⅰb)

        3) Strasser F, Sweeney C, Willey J, Benisch-Tolley S, Palmer JL, Bruera E. Impact of a half-day multidisciplinary symptom control and palliative care outpatient clinic in a comprehensive cancer center on recommendations, symptom intensity, and patient satisfaction: a retrospective descriptive study. J Pain Symptom Manage 2004; 27: 481-91.(Ⅲ)

        4) Santiago-Palma J, Payne R. Palliative care and rehabilitation. Cancer 2001; 92: 1049-52.(Ⅲ)

        付記

        clinical question(CQ)について:

        第9 章は当初「在宅進行がん,末期がんで症状増悪のため再入院した際に在宅再復帰を目的としたリハビリテーションが必要な患者」に対するリハビリテーション介入の効果をclinical question(CQ)とし,介入法としては運動療法,作業療法,装具療法,摂食嚥下療法など,アウトカムには入院期間の短縮,ADL 改善,家族のQOL の向上,家族の介護負担,患者の栄養状態・抑うつ状態の改善などをあげ文献検索を行った1)。しかし,欧米の文献では末期がん患者のケアは在宅ホスピスケアが中心となると読み取れ,再入院・入院期間などをアウトカムとして検証した研究は皆無であった。また,作業療法単独の介入,装具療法,摂食嚥下療法などの効果を検証した研究もみられなかった。そこでCQ の対象をリハビリテーションが必要な在宅進行がん患者・末期がん患者として,リハビリテーション介入とアウトカムを組み合わせてCQ を変更した。

        また,今回検索した文献にCancer rehabilitation の定義を明記したものは極めて少ない。「本ガイドラインについて」でも述べたが,Fialka-Moser ら2)は,Cancer rehabilitation を,がん患者の生活機能と生活の質(quality of life;QOL)の改善を目的とする医療ケアであり,がんとその治療による制限を受けた中で,患者に最大限の身体的,社会的,心理的,職業的活動を実現させることと定義し,Cancer rehabilitation は,臨床腫瘍科医,リハビリテーション科医の指示により,医療ソーシャルワーカー,臨床心理士,理学療法士,がん専門看護師,作業療法士のコアメンバーと,その他がん患者特有の問題に対処するさまざまな専門職からなるチームとして提供されるとしている。またRobb ら3)は,Rehabilitation は高度な専門家チームを利用した総合的アプローチであり,がん患者の機能とQOL を維持することに重きを置くとしている。

        リハビリテーション介入に関しては,がん患者の生活機能(ICF に規定するHuman Functioning)とQOL の維持・改善を目的としたリハビリテーション関連専門職による介入すべてを含め検索した。また,組織的チームの介入に限定せず,単独専門職による介入研究も含めた。

        1) 水落和也.進行がん・末期がんのリハビリテーションガイドライン作成に関する研究.厚生労働科学研究費補助金 第3 次がん総合戦力研究事業 がんのリハビリテーションガイドライン作成のためのシステム構築に関する研究 平成22 年度総括・分担報告書.138-9,2011.

        2) Fialka-Moser V, Crevenna R, Korpan M, Quittan M. Cancer rehabilitation: particularly with aspects on physical impairments. J Rehabil Med 2003; 35: 153-62.

        3) Robb KA, Williams JE, Duvivier V, Newham DJ. A pain management program for chronic cancertreatment-related pain: a preliminary study. J Pain 2006; 7: 82-90.