No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
AML の診断時に必要な遺伝子検査は何が勧められるか |
染色体核型検査は病型分類,予後予測,治療法選択において必須である。FLT3,NPM1,CEBPA,RUNX1,ASXL1,TP53 遺伝子などの変異解析によってさらなる予後層別化が可能とされている。 |
2A |
CQ2 |
若年者de novo AML に対する標準的寛解導入療法としてどのレジメンが勧められるか |
若年成人de novo AML に対する標準的寛解導入療法はアントラサイクリン(イダルビシンまたはダウノルビシン)+標準量シタラビンである。 |
1 |
CQ3 |
若年者de novo AML の寛解導入療法(アントラサイクリン+標準量シタラビン)に他の薬剤の追加やシタラビン大量療法の組み込みは有効か |
標準的寛解導入療法であるアントラサイクリン(イダルビシンまたはダウノルビシン)+標準量シタラビン療法に他剤を追加した場合の優越性は認められていない。また,シタラビン大量療法を組み入れた場合の優越性のエビデンスは乏しく,有害事象の危険性が増すため推奨されない。 |
3 |
CQ4 |
高齢者AML に対して推奨される寛解導入療法は何か |
60〜65 歳までの高齢者AML においては,若年成人と同等の寛解導入療法を実施した方が良好な寛解率と生存割合が期待できる。しかし,高齢者AML では全身状態(PS),併存疾患などの程度により,治療強度の軽減やbest supportive care の選択を検討することが必要である。 |
2A |
CQ5 |
1 回の寛解導入療法で完全寛解が得られない場合,どのような治療法を選択すべきか |
同一の寛解導入療法をもう一度繰り返すべきか,治療法を変えるべきかのエビデンスは存在しない。しかし,一定の比率で寛解が得られることから,同一の寛解導入療法を再度繰り返すことは妥当と考えられる。 |
2B |
CQ6 |
CBF-AML の寛解後療法として何が勧められるか |
60 歳以下のCBF(core binding factor)-AML の寛解後療法として,シタラビン大量療法は無病生存期間の延長が期待でき勧められる。 |
2A |
CQ7 |
CBF-AML 以外のAML の寛解後療法として何が勧められるか |
CBF-AML 以外のAML では,非交差耐性のアントラサイクリン系薬剤を用いた多剤併用化学療法4 コースの地固め療法が推奨される。 |
2B |
CQ8 |
若年者AML の第一寛解期に同種造血幹細胞移植の適応はどのように決定すべきか |
現時点では初診時の染色体異常による患者層別化が重要である。予後良好な染色体異常を有するfavorable-risk の患者では造血幹細胞移植の有用性は示されていない。それ以外のAML においては,HLA 適合血縁者ドナーからの同種造血幹細胞移植の有用性は示されているが,更なる層別化システムの構築とHLA 適合血縁者間以外のドナーからの移植に関するエビデンスの確立が必要である。 |
1 |
CQ9 |
移植適応のない高齢者AML に寛解後療法を施行するメリットはあるか |
移植適応のない高齢者AML に対する寛解後療法のメリットは明らかにされていないが,一部の症例では寛解後療法を行うことの有用性が示唆されている。 |
2B |
CQ10 |
非寛解期AML に対する同種造血幹細胞移植の適応に関する指標はあるか |
再発AML に対し再寛解導入療法を行わない非寛解のままでの移植の適応を決定する明確な指標は確立されていない。また寛解導入療法不応非寛解症例に対する移植の適応を決定する明確な指標も確立されていない。現時点では後方視的解析に基づく予後因子と移植に関連する因子(ドナーソースなど)を総合的に評価し,患者とのshared-decision making で移植適応を決めることが勧められる。 |
3 |
CQ11 |
AML において治療後の好中球減少期にG-CSF を使用するのは有用か |
AML の寛解導入療法,寛解後療法時におけるG-CSF 投与は,好中球減少期間の短縮やQOL の改善が期待でき,高齢者や重症感染症を併発した症例では検討されても良い。 |
2B(寛解導入療法),2A(寛解後療法) |
CQ12 |
AML の化学療法において,どのような場合に腫瘍崩壊症候群の予防を実施すべきか |
化学療法開始前に末梢白血球数と血清乳酸脱水素酵素値,腎機能に基づきリスク分類をおこない,リスクに応じた腫瘍崩壊症候群の予防を行うことが推奨される。 |
2A |
CQ13 |
AML において中枢神経白血病の予防は勧められるか |
AML では中枢神経系白血病の発症頻度が低く,無症状の症例に対して予防的に抗がん薬を髄腔内投与する適応はない。単球系への分化を示す症例,mixed phenotype,末梢血白血球数が4 万/μL を超える症例,髄外白血病では神経症状がみられなくても寛解に到達した時点で腰椎穿刺によるスクリーニングが考慮される。 |
2A |
CQ14 |
腫瘤形成性AML に対して通常の寛解導入療法を行うのは妥当か |
腫瘤形成性AML に対しては孤発性であっても通常の寛解導入療法が考慮される。 |
2B |
CQ15 |
AML における微小残存病変の評価として何が勧められるか |
AML における微小残存病変のモニタリングに経時的な疾患特異的キメラ遺伝子やWT1 遺伝子のmRNA 発現定量が考慮される。 |
2B |
CQ16 |
AML に対するGO の適切な使用法は何か |
再発または難治性のCD33 陽性AML に対して,単剤で,少なくとも14 日間の投与間隔をおいて,2 回投与する。 |
2A |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
初発APL の治療開始前に行うべき検査と予後因子は何か |
FISH 法やRT-PCR 法によるPML-RARA の早期診断が勧められる。 |
2A |
臓器出血による早期死亡の予防のために頻回の凝固検査が勧められる。 |
2B |
予後因子である治療前白血球数とCD56 により治療戦略を立てることが勧められる。 |
1 |
CQ2 |
初発APL の寛解導入療法として何が勧められるか |
初発APL の初回寛解導入療法として,ATRA とアントラサイクリン系を主体とした化学療法の併用が薦められる。 |
1 |
初発APL の初回寛解導入療法において,ATRA と亜ヒ酸を併用した治療はATRA とアントラサイクリン系を主体とした化学療法に遜色はない(国内保険適用外)。 |
1 |
CQ3 |
初発APL の寛解導入療法におけるDIC 対策として何が勧められるか |
寛解導入療法中の出血予防には,血小板輸血により血小板数30,000〜50,000/μL 以上,凍結血漿によりフィブリノゲン150 mg/dL 以上に保つ補充療法が勧められる。 |
2A |
ヘパリンによる抗凝固療法の効果は証明されていない。 |
2A |
ATRA とトラネキサム酸などによる抗線溶療法の併用は,血栓症の危険が増すため勧められない。 |
2A |
遺伝子組換えトロンボモジュリンによる治療は検討に値する。 |
3 |
CQ4 |
APL 分化症候群の治療は何が勧められるか |
APL 分化症候群(differentiation syndrome:DS)は早期発見と,疑い段階からの副腎皮質ステロイドの早期開始が推奨される。 |
2A |
DS の重症例では,ATRA,ATO の投与を中止する。 |
2A |
CQ5 |
初発APL のATRA と化学療法による寛解後の至適な地固め療法は何か |
3 サイクルのアントラサイクリン系薬剤とシタラビン併用の地固め療法が推奨される。 |
1 |
APL の地固め療法にATRA やATO を組み込むことにより,EFS の改善を期待できる。(ATO は国内保険適用外) |
2B |
CQ6 |
初発APL の寛解例における至適な維持療法は何か |
地固め療法終了時にRT-PCR 法によるPML-RARA が陰性化している高リスク群では,ATRA またはタミバロテン(Am80)内服を中心とした維持療法が考慮される。 |
2B |
CQ7 |
再発APL の至適な再寛解導入療法は何か |
再発APL の再寛解療法はATO を含むレジメンが第一選択となる。 |
1 |
ATO が有害事象で使用できないとき,ゲムツズマブ オゾガマイシンまたはタミバロテンを含むレジメンの使用を考慮する。 |
2B |
CQ8 |
ATO によるAPL 第二寛解例の寛解後治療として何が勧められるか |
ATO による再寛解APL 症例ではATO による地固め療法後,RQ-PCR法による骨髄PML-RARA 陰性例には自家移植が勧められる。 |
2A |
寛解後も骨髄PML-RARA 陽性で移植可能症例には同種移植が勧められる。 |
2A |
CQ9 |
高齢者APL の至適な治療方法は何か |
全身状態が比較的良好な高齢者に対しては若年者と同様に,治癒を目指した治療を行うが,その強度は若年者より弱めるべきである。 |
2A |
重篤な併存疾患を持ち,アントラサイクリン系抗がん剤の投与が困難な高齢者に対しては,亜ヒ酸をベースにした治療も妥当と考えられる(国内保険適用外)。 |
2A |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
骨髄浸潤のないLBL の治療はALL と同じ治療が推奨されるか |
骨髄浸潤の有無にかかわらず,LBL の治療はALL と同様に行うことが推奨される(縦隔病変を有する場合の対応については,CQ11 参照)。 |
2B |
CQ2 |
成人若年者(< 65 歳)Ph 陽性ALL に対する初期治療はBCR-ABL チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)併用化学療法が推奨されるか |
Ph 陽性ALL の寛解導入療法・地固め療法において,TKI は化学療法と併用することにより,高率で持続的な完全寛解をもたらし,生存期間の延長が期待できるため,推奨される。 |
2A |
CQ3 |
高齢者(≧ 65 歳)Ph 陽性ALL に対する初期治療はTKI +ステロイド療法が推奨されるか |
高齢者のPh 陽性ALL に対してはTKI+ステロイド療法により寛解率の改善が期待できるため,推奨される。 |
2B |
CQ4 |
思春期・若年成人ALL は小児プロトコールでの治療が推奨されるか |
思春期・若年成人ALL は,小児プロトコールによる治療が勧められる。 |
2A |
CQ5 |
成人(30〜64 歳)Ph 陰性ALL の治療は何が推奨されるか |
Ph 陰性 ALL に対する標準的な多剤併用化学療法は開発段階である。 |
2B |
CQ6 |
高齢者(≧ 65 歳)Ph 陰性ALL の治療は何が推奨されるか |
高齢者のPh 陰性ALL に対する標準的な治療法は開発段階である。(Ph 陽性の場合の対応については,CQ3 参照) |
2B |
CQ7 |
非若年者Ph 陰性ALL(初発例)において,T 細胞性ALL とB 細胞性ALL は同様の治療方法が推奨されるか |
T 細胞性 ALL と B 細胞性ALLで同様の治療方法が選択される。 |
2B |
CQ8 |
成人ALL の治療において中枢神経系再発予防は推奨されるか |
すべての症例に対して,抗がん剤の髄腔内投与および中枢神経系への移行性の良い全身化学療法の使用が推奨される。全脳照射はルーチンに施行すべきではなく,中枢神経再発ハイリスク例においては選択肢の一つである。 |
2B |
CQ9 |
寛解期成人ALL の治療における微小残存病変の評価の意義はあるか |
寛解療法後に微小残存病変があれば(0.1%ないし0.01%以上),再発の危険性が高まるため,測定の意義はある。ただし,寛解療法後のどの時点で微小残存病変を測定すべきかのコンセンサスは確立されていない。 |
2A |
CQ10 |
成人ALL の寛解後療法において大量シタラビン療法や大量メトトレキサート療法は推奨されるか |
成人ALL に対する寛解後療法として大量メトトレキサート療法(3 g/m2)は行うべきである。大量シタラビン療法(1〜3 g/m2)も妥当な選択肢である。再発・難治例に対する救援化学療法としても用いられる。 |
1(大量メトトレキサート),2B(大量シタラビン) |
CQ11 |
縦隔病変を有するT 細胞性LBL に対して縦隔照射は行うべきか |
縦隔病変を有する成人T 細胞性LBL に対して,局所再発予防を目的とした縦隔照射が用いられることが多いが,ALL に対する縦隔照射を含まない治療プロトコールを用いることも妥当である。 |
2B |
CQ12 |
第一寛解期の同種造血幹細胞移植は推奨されるか(Ph 陽性,Ph 陰性を含む),また減弱前処置による同種造血幹細胞移植は有用か |
第一寛解期の成人ALL に対して,HLA 適合血縁,非血縁ドナーがいれば同種造血幹細胞移植が選択される。 |
2A |
通常の強度の移植前処置を行うことができない高齢者,あるいは臓器障害を有する第一寛解期ALL 患者に対しては,減弱前処置による同種造血幹細胞移植を考慮する。 |
2B |
CQ13 |
第一寛解期で造血幹細胞移植を行わない場合,維持療法は推奨されるか(Ph 陽性,Ph 陰性を含む) |
第一寛解期で造血幹細胞移植を行わない場合,維持療法は推奨される。Ph 陽性症例ではTKI を長期に使用することが推奨される。 |
1(Ph 陰性),2A(Ph 陽性) |
CQ14 |
ALL 再発例(Ph 陰性前駆B 細胞ALL,Ph 陽性前駆B 細胞ALL,前駆T 細胞ALL)に対する再寛解導入療法の選択肢として何が推奨されるか |
ALL 再発例では前治療歴を考慮した再寛解導入療法を行う。晩期再発例では初回寛解導入療法と同一のレジメンによる再治療も選択肢に入る。 |
2B |
Ph 陽性ALL のイマチニブ継続中の再発ではダサチニブへの変更が妥当である。BCR-ABL T315I 変異陽性例ではポナチニブへの変更が妥当である。 |
2A |
前駆T 細胞ALL ではネララビンが治療選択肢に加わる。 |
2B |
前駆B 細胞ALL 再発例ではブリナツモマブ,イノツズマブ オゾガマイシンが治療選択肢に加わる。 |
1 |
25 歳以下,2回以上の前駆B 細胞ALL 再発例ではチサゲンレクルユーセルが治療選択肢に加わる。 |
2A |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
初発CML-CP に対する治療として何が勧められるか |
初発CML-CP に対しては,イマチニブ400 mg QD(1 回/日),ニロチニブ300 mg BID(2 回/日),ダサチニブ100 mg QD のいずれかの投与を推奨する。3 剤の副作用プロファイルが異なることから,合併疾患などの患者背景を考慮して治療薬を選択することが望ましい。 |
1 |
CQ2 |
TKI 治療開始後の効果判定のモニタリングはどのような方法が勧められるか |
国際指標(International Scale:IS)で補正したBCR-ABL1IS 定量RT-PCR によるTKI 治療前と治療後3 カ月ごとのモニタリングが推奨される。 |
1 |
CQ3 |
ELN の効果判定基準によりWarning やFailure とされた症例に対する二次治療は何が勧められるか |
CML-CP の二次治療には,ABL1 点突然変異解析を参考としつつボスチニブを含む未投与の第二世代TKI が推奨される。 |
2A |
CQ4 |
TKI の長期治療中の副作用モニタリングとして何が勧められるか |
TKI 治療前および治療中には心血管イベントに関するリスク因子(年齢,性別,血圧,脂質,糖尿病,喫煙歴)を評価し,動脈硬化や肺高血圧に対する定期的な検査が必要である。 |
2B |
CQ5 |
進行期CML(AP およびBP)の治療はTKI が勧められるか |
CML-AP の治療は,初発AP に対してはニロチニブ400 mg BID,ダサチニブ70 mg BID を,TKI 治療中のAP に対してはボスチニブとポナチニブを含む未投与のTKI を推奨する。これらのTKI で至適奏効が得られない場合は,同種造血幹細胞移植を考慮する。 |
2A |
CML-BP の治療は,感受性のあるTKI 単剤または化学療法併用で最大効果を得た後,可能な限り同種HSCT を推奨する。 |
2A |
CQ6 |
DMR を達成しMRD が検出されなければTKI 中止は勧められるか |
DMR が得られて安全にTKI 治療が終了できる基準が確立されるまでは,臨床試験以外でTKI を中止すべきではない。 |
4 |
ただし特別な事情がある場合(妊娠を望む女性や重篤な副作用の合併など),完全には否定できない急性転化に関する十分な説明同意と定期的な定量PCR によるMRD のモニタリングを行い,MMR を失ったら可及的早期に治療を再開するという条件でTKI 中止を考慮しても良い。 |
2A |
CQ7 |
PV 瀉血療法後のHt 目標値を45%にすることは勧められるか |
瀉血後の目標 Ht 値は 45%を目指す。 |
1 |
CQ8 |
高リスクET における細胞減少療法薬は何が勧められるか |
ヒドロキシウレア,アナグレリドいずれも,動静脈血栓症や重篤な出血などの予防に有用である。 |
1 |
CQ9 |
心血管リスクファクターを有する低リスクET 症例に対してアスピリン投与は勧められるか |
低リスクET(60 歳未満,かつ血栓症の既往がない)に対するアスピリン投与の有用性は示されていない。しかし,低リスクET のうち,心血管リスクファクター(喫煙,高血圧,脂質異常症,糖尿病)のある症例やJAK2 変異のある症例では,抗血小板療法(低用量アスピリン75〜100 mg/日)を行ってもよい。 |
2A |
CQ10 |
若年者低リスクPV/ET 症例に対してヒドロキシウレアによる治療介入は勧められるか |
60 歳未満の低リスクPV/ET 症例に対し,ヒドロキシウレアの有効性は示されていない。また,急性白血病化または二次がんの頻度を増加させる可能性が否定できないため,60 歳未満の低リスクPV/ET 症例に対しヒドロキシウレアによる治療介入は推奨されない。 |
4 |
CQ11 |
妊娠合併ET に対して流産を減少させるための治療介入は勧められるか |
流産を減らすことができる可能性があるため,少量アスピリンによる治療介入を推奨する。 |
2B |
CQ12 |
高リスク,中間- Ⅱリスク原発性骨髄線維症に対する治療法は何が勧められるか |
若年で合併症がなく適切なドナーが有る場合には同種造血幹細胞移植を,移植非適応で脾腫や全身症候を伴う場合にはルキソリチニブを推奨する。 |
2B |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
早期CLL に対して治療は勧められるか |
活動性の病態がないBinet 病期分類A とB,および無症状の改訂Rai 分類低リスクおよび中間リスク(Rai 分類病期0〜Ⅱ期)患者は,治療を開始しても生存の向上には寄与しないため,経過観察することが推奨される。 |
1 |
進行期(活動性病態のあるBinet A とB 期,Binet C 期,症状のあるRai 分類病期0〜Ⅱ期,Rai 分類病期Ⅲ〜Ⅳ期)の患者は治療を開始することを考慮する。 |
2A |
CQ2 |
標準治療実施可能(fit)な未治療進行期CLL に対して化学免疫療法は勧められるか |
17p 欠失/TP53 変異がなければ化学免疫療法が推奨される。
高齢者ではBTK 阻害薬イブルチニブも推奨される。 |
1 |
CQ3 |
標準治療実施不可能(unfit)な未治療進行期CLL に対して化学免疫療法は勧められるか |
17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)がなければ化学免疫療法が推奨される。BTK 阻害薬イブルチニブも推奨される。 |
1 |
CQ4 |
17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)のある進行期CLL に対してBTK阻害薬や抗CD52 抗体薬は勧められるか |
17p 欠失/TP53 異常(変異と欠失)のある進行期CLL では,BTK 阻害薬であるイブルチニブの使用が推奨される。 |
1 |
CQ5 |
晩期再発CLL に対して初回治療と同様の治療は勧められるか |
24〜36 カ月以降の再発は,初回治療と同様な治療を考慮する。 |
2A |
化学療法単独治療後の再発には化学免疫療法を考慮する。 |
2A |
CQ6 |
治療抵抗性・早期再発CLL に対してBCL-2 阻害薬やBTK 阻害薬は勧められるか |
高リスク患者,染色体17p 欠失やTP53 異常(変異と欠失)がある場合は通常の化学療法に対して難治性であるが,ベネトクラクスやイブルチニブが有効である。 |
1 |
治療抵抗性である染色体17p 欠失もしくはTP53 異常(変異と欠失)のある再発にはアレムツズマブを考慮する。また,オファツムマブも考慮する。 |
2A |
CQ7 |
再発CLL に対して造血幹細胞移植は勧められるか |
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法はCLL に対する治療として推奨されない。 |
4 |
同種造血幹細胞移植は,予後不良な染色体異常を持つ患者やハイリスクな患者で完全奏効/部分奏効(CR/PR)に達した場合は,長期予後を改善する治療法として考慮される。 |
2B |
CQ8 |
組織学的形質転換をきたしたCLL(Richter 症候群)に対して造血幹細胞移植は勧められるか |
Richter 症候群に対する造血幹細胞移植は,救援治療により完全奏効/部分奏効(CR/PR)に達した場合は考慮される。また,適切なドナーがいた場合はRIC による同種移植を考慮する。 |
2B |
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
MDS の予後予測法,リスク分類として勧められるのは何か |
国際予後予測スコアリングシステム(International Prognostic Scoring System:IPSS)やWHO 分類に基づく予後予測スコアリングシステム(WHO Classification-based Prognostic Scoring System:WPSS),IPSS の改訂版である改訂国際予後予測スコアリングシステム(Revised IPSS:IPSS-R)のように複数の因子を組み合わせて予後を予測するスコアリングシステムが勧められる。特に,IPSS は頻用されており,近年IPSS-R の利用が広がっている。 |
2A |
CQ2 |
輸血による鉄過剰症への鉄キレート剤が適応とされる状態は何か |
一年以上など一定の予後が期待されかつ,定期的な赤血球輸血を必要とするMDS で,輸血による鉄過剰状態に至った場合には鉄キレート療法を実施する。 |
2B |
CQ3 |
低リスクMDS の治療において免疫抑制療法は勧められるか |
MDS の一部の症例に対しては造血の回復に免疫抑制療法が勧められる。特にHLA-DR15,赤血球輸血歴の短い例,若年例での効果が期待される(国内保険適用外)。 |
2A |
CQ4 |
低リスクMDS の貧血に対してサイトカイン療法は勧められるか |
血清エリスロポエチン濃度低値(200 または500 mU/mL 未満),環状鉄芽球15%未満,赤血球輸血依存のないまたは月2 単位程度の輸血を必要とする貧血を有するMDS に対してはエリスロポエチン(40,000〜60,000 U 週1〜3 回投与) あるいはダルベポエチン(150〜500μg 週1〜3 回投与)の投与が貧血を改善させる。ダルベポエチンはMDS に伴う貧血に対して保険適用となっている。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の併用はESA 製剤への反応性を上昇させるが,ダルベポエチンの効果増強を目的としたG-CSF の使用は本邦では保険適用となっていない。 |
2A |
CQ5 |
低リスクMDS の貧血に対して蛋白同化ステロイドは勧められるか |
低リスクMDS の貧血に対する蛋白同化ステロイドの有効性は一部の症例に限られており,ルーチンでの使用は推奨されない。 |
2B |
CQ6 |
MDS の治療としてレナリドミドは勧められるか |
5 番染色体長腕の欠失[del(5q)]を伴う低リスクMDS で赤血球輸血依存例に対してはレナリドミドが赤血球造血促進効果を示し,レナリドミドによる治療が推奨される。10 mg/日の21 日間投与を28 日サイクルで実施する。 |
1 |
del(5q)を伴わない赤血球輸血依存低リスク MDS に対しては,赤血球輸血非依存が達成される例がみられるが,現時点では第一選択薬としては推奨されない(国内保険適用外)。 |
2B |
CQ7 |
低リスクMDS の治療としてアザシチジンは勧められるか |
サイトカイン療法や免疫抑制療法の対象とならない低リスクMDS 症例の一部においてアザシチジンによる造血の回復が認められるが,生存期間の延長をもたらすエビデンスはなく,生存期間延長を目的とした第一選択薬としてのアザシチジンの使用は推奨されない。 |
2B |
CQ8 |
MDS に対する同種造血幹細胞移植の適応と適切な実施時期はいつか |
高リスクMDS 患者では,できる限り速やかに同種造血幹細胞移植を行う。HLA 1 座不適合以内の血縁者間移植が最も望ましいが,血縁ドナーが得られない場合は,HLA 一致非血縁者間移植も考慮する。 |
2A |
低リスクMDS 患者では同種造血幹細胞移植は推奨されない。しかし,血球減少が高度で輸血依存性の強い症例,重症感染症や出血のハイリスク症例で他の治療が無効の場合には造血幹細胞移植の候補となる。 |
2A |
臍帯血移植は推奨されないが,骨髄・末梢血ドナーが得られない高リスクMDS 患者では考慮される。 |
2A |
CQ9 |
MDS に対して減弱した前処置による同種移植は勧められるか |
高年齢や合併症を持つために強力前処置がリスクと考えられる患者に対しては,減弱した前処置による同種移植を選択肢として考慮する。 |
2A |
CQ10 |
高リスクMDS に対してアザシチジンは勧められるか |
アザシチジンは,同種造血幹細胞移植が行われない高リスク症例では第一選択薬剤である。 |
1 |
アザシチジンの移植前治療としての意義は確立していないが,ドナーの準備を待つ間のつなぎ治療(bridge)として施行を考慮してもよい。 |
2A |
CQ11 |
高リスクMDS に対してレナリドミドは勧められるか |
del(5q)を有する高リスク MDSにおいては,アザシチジン不応あるいは不耐の場合,レナリドミドの使用を考慮しても良い。 |
2B |
CQ12 |
高リスクMDS において化学療法は勧められるか |
生存期間,白血病化までの期間を延長する化学療法の報告はなく,第一選択としては推奨されない(アザシチジンが推奨される)。 |
2A |
同種造血幹細胞移植が実施されない若年齢で染色体異常,全身状態(PS),罹病期間などの予後不良因子のない症例では強力化学療法も候補となるが,化学療法はアザシチジンが使用できない場合に適応が考慮される。 |
2B |
強力化学療法と低用量化学療法の生存期間への影響はほぼ同等であり,その適応は症例ごとに判断する。 |
2B |