第2 版序文

初版(2007年版)から4 年が経過し,やっと改訂版(2011年版)の発刊にこぎつけました。初版のときも「子宮体癌治療ガイドライン」と同時に作業を開始したにもかかわらず1年長くかかりましたが,今回の改訂でも時間がかかってしまいました。これは,第一に子宮頸癌の治療法のエビデンスが蓄積されているとはいえ,エビデンスが一つひとつ連続して積み重なっておらず,各エビデンス間での比較が難しかったことによります。第二に,国内の治療法発達の歴史的背景の違いから,せっかく欧米で高いエビデンスがある領域であっても,それがそのまま国内の治療指針に適応とならなかったという点にも依存します。そのために初版作成にあたっては作成委員会内でも意見がなかなか集約せず,コンセンサスミーティングでも多くの意見が出されるなかでコンセンサスに至らないままの事項が残っておりました。今回の改訂に際しては,新たな項目は設けずに,最新のエビデンスを収集しながら国内の意見を再度集約することを目的としました。すなわち,初版を吟味しなおしてブラッシュアップするという方針で改訂作業を進めることとしました。そのために,できるだけ全国の大学やがんセンター,中核病院などで実地診療に携わっている専門家に作成をお願いしたいと考え,今回初めて作成委員を公募しました。また,初版で放射線腫瘍医側の意見を十分に反映できなかったのではないかという反省から,日本放射線腫瘍学会に事前に作成委員の推薦をお願いしました。

今回の改訂の主なポイントは以下の通りです。

1)推奨グレードの変更

初版では推奨グレードがA,B,C,D,A’,E の6 段階になっていましたが,「子宮体がん治療ガイドライン2009 年版」や「卵巣がん治療ガイドライン2010 年版」に倣い,A,B,C1,C2,D の5 段階に変更しました。

2)新FIGO 進行期分類との関係

本ガイドラインの作成作業中にFIGO(International Federation of Gynecology and Obstetrics)の進行期分類が改訂されました。新分類では上皮内癌0 期を除外することとなっていますが,0期は患者数も多く患者年齢も若年者が多いためにガイドラインに記述する意義は高いと判断し,従来通り0 期に対する治療指針を示すこととしました。

一方,新分類でⅡA 期がⅡA1 期とⅡA2 期に細分類されました。それに伴い日本産科婦人科学会 を中心とした「子宮頸癌取扱い規約」の改訂作業が急速に進み,本ガイドライン発刊時期からそれ ほど期間をおかずに発刊されることが明らかとなりました。そこで,本ガイドラインではⅡA1 期とⅡA2 期の細分類を採用しています。

3)「子宮頸癌取扱い規約」との役割分担

「子宮頸癌取扱い規約」との役割分担という意味で,放射線治療の具体的な方法については本ガイドラインで詳述することとしました。

4)腺癌関連のCQ の取り扱い

子宮頸癌では腺癌単独での臨床試験がほとんど施行されていないことから,初版に設けていた腺癌単独の章は削除し,各進行期のなかで腺癌についても記述することとしました。

5)妊娠合併症例の充実

子宮頸癌症例の若年化,妊娠出産年齢の高齢化という傾向から,妊娠に合併した子宮頸癌の取り扱いはますますその重要性を増しています。そのために,これに関連するCQ を増やし詳細に治療指針を示すこととしました。

東日本大震災の年に,大変困難と思われた「子宮頸癌治療ガイドライン」の改訂版を世に出すことができましたことは,本書に関わったすべての人にとって大きな誇りとなるはずです。ガイドライン作成のまとめ役をしてきたものとして,改訂作業に携わっていただいたすべての皆様に深甚なる感謝を申し上げます。

2011 年盛夏

日本婦人科腫瘍学会子宮頸癌治療ガイドライン検討委員会
委員長 八重樫 伸生
副委員長 片渕  秀隆