子宮頸部を円錐状に切除する術式で,主として,診断の確認のために行われるが,異形成・上皮内癌(扁平上皮癌)の場合は治療法にもなり得る。
術式は腹式と腟式とがあり,一般の単純子宮全摘出術に準ずるが,腫瘍性病変の存在する場合には,子宮頸部の組織を残さないような術式が必要とされる。したがって,筋膜内術式(intrafascial method, Aldridge method)は適当でない。筋膜外術式(extrafascial method)によって行い,かつ病巣最外端と切除縁(surgical margin)との間の距離をおくため,腟壁を多少なりとも切除する必要がある。
広汎子宮全摘出術と単純子宮全摘出術との中間的な術式で,その内容はほぼ次のように要約できる。すなわち,前部子宮支帯前層を切断し,尿管を側方に寄せた後に全子宮支帯と腟壁を子宮頸からやや離れて切断する。このような方式を総称して準広汎子宮全摘出術といい,リンパ節郭清の有無を問わない。
子宮頸癌に対する基本的術式である。所属リンパ節regional lymph node を郭清し,膀胱側腔,直腸側腔を展開することによって,前,中,後の各子宮支帯を分離・切断する。中部支帯は脂肪織を除去して血管束とし,骨盤壁に近く切断し,前部支帯は前層を切断して,尿管を剥離,側方へ圧排した後に後層を切断する。全子宮支帯切断後,傍腟結合織および腟を切断する。リンパ節の郭清は本術式の基本の一つであり,可及的広汎・綿密に行うべきである。その原則的な郭清範囲は,いわゆる所属リンパ節,すなわち,基靭帯節,内腸骨節,閉鎖節,外腸骨節,仙骨節,総腸骨節,鼠径上節を含むことになる。
内腸骨動静脈,下殿動静脈,内陰部動静脈を切断することによって,骨盤壁付着部を含めて基靭帯をその根部から摘出する術式である(基靭帯摘出術)。臨床進行期分類VB期の一部に対する手術術式であるが,ⅡB期でも,その浸潤が骨盤壁近くまで及んでいる場合は,この術式が行われることがある。
女性内性器とともに膀胱,直腸など骨盤内臓器を摘出する術式である。全除臓術のほかに,前方除臓術と後方除臓術がある。膀胱,直腸に癌が及ぶ場合にはすでに遠隔転移を認める場合が多いので,適応となる症例は少ない。
〔子宮頸癌取扱い規約 1997年10月(改訂第2 版),金原出版,1997より引用〕
日本産科婦人科学会 | 日本癌治療学会 |
① 傍大動脈リンパ節(左腎静脈下縁から下腸間膜動脈根部まで)(#326b1) |
腹部大動脈周囲リンパ節(左腎静脈下縁から下腸間膜動脈根部まで) |
① 傍大動脈リンパ節(下腸間膜動脈根部から大動脈分岐部の高さまで)(#326b2) |
腹部大動脈周囲リンパ節(下腸間膜動脈根部から大動脈分岐部の高さまで) |
(該当なし) | 大動脈分岐部リンパ節 |
⑦ 仙骨リンパ節(#412) | 正中仙骨リンパ節 外側仙骨リンパ節 |
② 総腸骨リンパ節(#413) | 総腸骨リンパ節 |
③ 外腸骨リンパ節(#403) | 外腸骨リンパ節 |
④ 鼠径上リンパ節(#401) | 大腿上リンパ節 |
⑤ 内腸骨リンパ節(#411) | 内腸骨リンパ節 |
⑥ 閉鎖リンパ節(#410) | 閉鎖リンパ節 |
⑧ 基靱帯リンパ節(#405) | 基靱帯リンパ節 |
⑨ 鼠径リンパ節(#401a) | 鼠径リンパ節 |
『子宮頸癌取扱い規約 1997年10月(改訂第2 版)』(日本産科婦人科学会,日本病理学会,日本医学放射線学会編,1997 年)1)では,『日本癌治療学会・癌規約総論』(日本癌治療学会・癌の治療に関する合同委員会編,1991 年)2)が定めた各種臓器に共通に提唱された名称を勘案して定められている。しかしながら,『日本癌治療学会リンパ節規約』(日本癌治療学会編,2002 年)3)では,リンパ節の番号付けを廃止している。
1) 日本産科婦人科学会,日本病理学会,日本医学放射線学会編.子宮頸癌取扱い規約,改訂第2 版,東京:金原出版,1997(規約)
2) 日本癌治療学会,癌の治療に関する合同委員会,癌規約総論委員会編.日本癌治療学会・癌規約総論,東京:金原出版,1991(規約)
3) 日本癌治療学会編.日本癌治療学会リンパ節規約,東京:金原出版,2002(規約)