本ガイドラインの診療対象は成人胆道癌患者とし、小児患者を除いた。本文中の薬剤使用量などは成人を対象とした物である。
利用法の詳細、資金、利益相反については「エビデンスに基づいた 胆道癌診療ガイドライン 改訂第2 版」(医学図書出版(株))を参照されたい。
本ガイドラインではGrading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)(Atkins D, Guyatt GH, Oxman AD et al. BMJ 2004, 328:1490)の考え方を参考にして、できるだけ推奨を明確にするようにすることで、本ガイドラインを参考とする医療従事者がより使いやすくなるようにこころがけた。そのため,外科系専門医に加えて,内科,放射線治療、病理、ガイドライン作成専門委員も増員あるいは新たに参加してもらうことで多分野の専門家による討議により内容に片寄りがないように努力した。ガイドライン作成委員会により度重なる討議をおこない各クリニカルクエスチョンの推奨度とエビデンスレベルの決定を図った。
まず,下記表に準じて論文エビデンスの質評価を行った。
Study design | Rate-Down | Rate-up | Quality | Evidence Level |
---|---|---|---|---|
RCT, systematic review, metaanalysis=高 複数の良質な 観察研究 (cohort study, case control study)=低 |
①限界(-1,-2) ②結果の非一貫性 (-1,-2) ③External diases の非直接性 ④結果が不精確(-1,-2) ⑤出版バイアス(-1,-2) |
①関連性(効果の大きさ)(+1,+2) ②交絡因子のために効果が減少(+1) ③用量反応匂配(+1) | High |
A |
case series, case study=非常に低 | 原則としてグレードは上げない |
Very low |
D |
本システムの特徴は表にあるようにエビデンスのStudy design のみでそのレベルを決定しないことにある。これにより、エビデンスレベルの決定にその内容、質まで含めて行うようにした。また、論文ごとにレベルを決定するのでは無く、ある論点に対する種々の論文を包括的に判断するようにした。
次に論文のエビデンスに加えて利益と害・負担のバランスに関する確実性,患者の嗜好性,資源の影響をはい,いいえに分けて判定した.これによりエビデンスレベルだけに推奨度の決定が左右されることがないよう、より実臨床での応用が行えるようにこころがけた。
推奨の強さを決定する要因 | 判定 |
---|---|
高いまたは中等度の質のエビデンス(「高」または「中」の質のエビデンスはあるか?) エビデンスの質が高いほど、強い推奨の可能性が高くなる。エビデンスの質が低いほど、条件付き/弱い推奨の可能性が高くなる。 |
□A □B □C □D |
利益と害・負担のバランスに関する確実性(確実性があるか?) 望ましい帰結と望ましくない帰結の差が大きいほど、その差についての確実性が高くなり、強い推奨の可能性が高くなる。正味の利益が小さいほど利益の確実性が低くなり、条件付き/弱い推奨の可能性が高くなる。 |
□はい □いいえ |
患者の嗜好性(価値観の確実性または類似点(確実性があるか?) 価値観や好みにばらつきが少ないほど、または確実性が大きいほど、強い推奨の可能性が高くなる。 |
□はい □いいえ |
資源の影響(消費される資源は期待される利益に見合うか) 考慮された代替よりも介入のコストが高く、意思決定に関連したほかのコストが高いほど、すなわち消費される資源が多いほど、条件付き/弱い推奨の可能性が高くなる。 |
□はい □いいえ |
これらの結果から作成委員の70%以上の決をとり,推奨度を決定した。
推奨度1:「実施すること」または「実施しないこと」を推奨する 推奨度2:「実施すること」または「実施しないこと」を提案する |
ただし、その解説内容が単に事実をまとめただけのCQ については推奨という言葉はふさわしくないと判断し、推奨度なしとした(CQ1, 5, 8, 10, 12, 22, 27, 30, 32, 43, 44)。
また、幾つかのCQ では委員の中での評価が分かれ、70%以上の意見の一致が得られなかったクリニカルクエスチョンも存在した。このようなクリニカルクエスチョンに対してもその理由を解説に記載することで推奨度なしとした。推奨度なしとは胆道診療の専門家においてですら現時点ではコンセンサスがないという意味であり,これらのCQ が胆道癌診療の臨床上で重要な問題であることには変わりはない。したがって,ガイドラインで取り上げる意義はあると判断し,エビデンスが乏しいという現時点の状況を踏まえて作成委員の解説を記載した。