本ガイドラインにおける基本事項

Ⅰ 進行期分類

日本産科婦人科学会では,進行期分類としてFIGO(International Federation of Gynecology and Obstetrics)による手術進行期分類とUICC(Union Internationale Contra le Cancer)による病理学的TNM 分類(pTNM)を採用している。本邦では,日本産科婦人科学会,日本病理学会の協力のもと『卵巣腫瘍取扱い規約第1 部(第2 版)』が2009 年12 月に発刊された。『卵巣がん治療ガイドライン2015 年版』での本文中の進行期分類に関しては,原則として上記の取扱い規約(2009 年12 月)に則って記載されている。

本ガイドラインで使用している卵巣がん手術進行期分類は,1988 年のFIGO 分類である。しかし,卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の新FIGO 進行期分類(FIGO 2014)が2014 年に発行されたことに伴い,日本産科婦人科学会で検討された上で新FIGO手術進行期分類(FIGO 2014)が採用された 1)。そこで今回は,手術進行期分類(FIGO 1988)と手術進行期分類(日産婦2014,FIGO 2014)をともにここに掲載した。なお,本文中の進行期分類の記述は,混乱を避けるために旧分類の小文字a,b,c に統一した。

1.手術進行期分類
(1)卵巣がん手術進行期分類(FIGO 1988) 2)
Ⅰ期:
卵巣内限局発育
Ⅰa:
腫瘍が一側の卵巣に限局し,癌性腹水がなく,被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの。
Ⅰb:
腫瘍が両側の卵巣に限局し,癌性腹水がなく,被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの。
Ⅰc:
腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが,被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり,腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞が認められるもの。

[注] 腫瘍表面の擦過細胞診で悪性細胞が検出された場合はⅠc とする。

Ⅱ期:
腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し,さらに骨盤内への進展を認めるもの。
Ⅱa:
進展ならびに/あるいは転移が,子宮ならびに/あるいは卵管に及ぶもの。
Ⅱb:
他の骨盤内臓器に進展するもの。
Ⅱc:
腫瘍の進展がⅡaあるいはⅡbで,被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり,腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞が認められるもの。
[注1]
Ⅰc およびⅡc においては,さらに次のように分けて表現する。
Ⅰc(a):自然被膜破綻
Ⅰc(b):手術操作による破綻
Ⅰc(1):腹腔洗浄細胞診陽性
Ⅰc(2):腹水細胞診陽性
Ⅱc も同様とする。
[注2]
他臓器への進展も組織学的に調べられることが望ましい。
Ⅲ期:
腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し,さらに骨盤外の腹膜播種ならびに/あるいは後腹膜または,鼠径部のリンパ節転移を認めるもの。また腫瘍は小骨盤に限局しているが小腸や大網に組織学的転移を認めるものや,肝表面への転移の認められるものもⅢ期とする。
Ⅲa:
リンパ節転移陰性で,腫瘍は肉眼的に小骨盤に限局しているが,腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの。
Ⅲb:
リンパ節転移陰性で,組織学的に確認された直径2cm 以下の腹腔内播種を認めるもの。
Ⅲc:
直径2cmを超える腹腔内播種ならびに/あるいは後腹膜または鼠径リンパ節に転移が認められるもの。
[注1]
腹腔内転移の大きさは最大のものの径で示す。すなわち2 cm 以下のものが多数認められてもⅢb とする。
[注2]
リンパ節郭清が行われなかった場合,触診,その他のでき得るかぎりの検索で知り得た範囲で転移の有無を判断し,進行期を決定する。
Ⅳ期:
腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し,遠隔転移を伴うもの。胸水の存在によりⅣ期とする場合には,胸水中に悪性胞を認めなければならない。肝実質への転移もⅣ期とする。
[注]
肝実質転移は組織学的(細胞学的)に確認されることが望ましいが,画像診断で転移と診断されたものもⅣ期とする。
(2)卵巣癌・卵管癌・腹膜癌手術進行期分類(日産婦2014,FIGO 2014) 1)
Ⅰ期:
卵巣あるいは卵管内限局発育
ⅠA期:
腫瘍が一側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し,被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
ⅠB期:
腫瘍が両側の卵巣(被膜破綻がない)あるいは卵管に限局し,被膜表面への浸潤が認められないもの。腹水または洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められないもの
ⅠC期:
腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に限局するが,以下のいずれかが認められるもの
ⅠC1:
手術操作による被膜破綻
ⅠC2:
自然被膜破綻あるいは被膜表面への浸潤
ⅠC3:
腹水または腹腔洗浄細胞診に悪性細胞が認められるもの
Ⅱ期:
腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し,さらに骨盤内(小骨盤腔)への進展を認めるもの,あるいは原発性腹膜癌
ⅡA期:
進展ならびに/あるいは転移が子宮ならびに/あるいは卵管ならびに/あるいは卵巣に及ぶもの
ⅡB 期:
他の骨盤部腹腔内臓器に進展するもの
Ⅲ期:
腫瘍が一側または両側の卵巣あるいは卵管に存在し,あるいは原発性腹膜癌で,細胞学的あるいは組織学的に確認された骨盤外の腹膜播種ならびに/あるいは後腹膜リンパ節転移を認めるもの
ⅢA1期:
後腹膜リンパ節転移陽性のみを認めるもの(細胞学的あるいは組織学的に確認)
ⅢA1():
転移巣最大径10 mm 以下
ⅢA1():
転移巣最大径10 mm をこえる
ⅢA2 期:
後腹膜リンパ節転移の有無にかかわらず,骨盤外に顕微鏡的播種を認めるもの
ⅢB 期:
後腹膜リンパ節転移の有無にかかわらず,最大径2 cm 以下の腹腔内播種を認めるもの
ⅢC 期:
後腹膜リンパ節転移の有無にかかわらず,最大径2 cm をこえる腹腔内播種を認めるもの(実質転移を伴わない肝および脾の被膜への進展を含む)
Ⅳ期:
腹膜播種を除く遠隔転移
ⅣA 期:
胸水中に悪性細胞を認める
ⅣB 期:
実質転移ならびに腹腔外臓器(鼠径リンパ節ならびに腹腔外リンパ節を含む)に転移を認めるもの
2.UICC のTNM 分類 2)

UICCのTNM分類は,全ての臓器の悪性腫瘍に適応する分類法を基としている。T は腫瘍の原発巣と進展の程度,Nは所属リンパ節,Mは遠隔転移を表し,これらの組み合わせからなる。卵巣腫瘍の進行期決定においては開腹所見がその基本となることから,通常,病理学的TNM 分類(pTNM)が用いられ,pT,pN,pMとして表す。

T:
腫瘍の原発巣の状態と進展の程度
TX:
原発腫瘍の評価が不可能なもの。
T0:
原発腫瘍を認めないもの。
T1:
卵巣に限局するもの。
T1a:
腫瘍が一側の卵巣に限局し,癌性腹水がなく,被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの。
T1b:
腫瘍が両側の卵巣に限局し,癌性腹水がなく,被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの。
T1c:
腫瘍は一側または両側の卵巣に限局するが,被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり,腹水または洗浄細胞診で悪性腫瘍が認められるもの。
T2:
腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し,さらに骨盤内への進展を認めるもの。
T2a:
進展ならびに/あるいは転移が子宮ならびに/あるいは卵管に及ぶもの。
T2b:
他の骨盤内臓器に進展するもの。
T2c:
腫瘍の進展が2a または2b で,腹水または洗浄細胞診で悪性細胞が認められるもの。
T3:
腫瘍が一側または両側の卵巣に存在し,さらに骨盤外の腹膜播種を認めるもの。
また,腫瘍は小骨盤に限局しているが,小腸や大網に組織学的に確認された転移を認めるものや肝表面への転移もT3 とする。
T3a:
腫瘍は小骨盤に限局し,腹膜表面に顕微鏡的播種を認めるもの。
T3b:
組織学的に確認された直径2 cm 以下の腹腔内播種を認めるもの。
T3c:
直径2 cm を超える腹腔内播種を認めるもの。
図1 悪性卵巣腫瘍治療に関係のある所属リンパ節と名称3)

①傍大動脈リンパ節(左腎静脈から下腸間膜動脈根部までを326b1,下腸間膜動脈根部から
大動脈分岐部の高さまでを326b2),②総腸骨リンパ節,③外腸骨リンパ節,④鼠径リンパ節,
⑤内腸骨リンパ節,⑥閉鎖リンパ節,⑦仙骨リンパ節,⑧基靱帯リンパ節

注1)
ここでいう④鼠径リンパ節とは,「鼠径上リンパ節」「大腿上リンパ節」と同義語であり,鼠径靱帯に入る直前のリンパ節を指す。鼠径靱帯より足方のリンパ節()は所属リンパ節とならない。
注2)
『 日本癌治療学会リンパ節規約』(第1版,2002年)において,従来のリンパ節番号は廃止された。
N:
所属リンパ節(図1
NX:
所属リンパ節転移を判定するための検索が行われなかったとき。
N0:
所属リンパ節に転移を認めない。
N1:
所属リンパ節に転移を認める。
M:
遠隔転移
MX:
遠隔転移を判定するための検査が行われなかったとき。
M0:
遠隔転移を認めない。
M1:
遠隔転移を認める。
[注]
M1(pM1)については,さらに次の記号を用いて特定できる。
肺転移:PUL,骨転移:OSS,肝転移:HEP,脳転移:BRA,リンパ節転移:LYM,
骨髄転移:MAR,胸膜転移:PLE,皮膚転移:SKI,その他:OTH

その他

“y” 記号:手術前に化学療法等の治療が行われている例では,“y” 記号を前につけて区別する。

例:ypT2apN1pM0

“r” 記号:再発腫瘍の例では,“r” 記号を前につけて区別する。

例:rpT2bpN1pMX

3.FIGO 分類とUICC 分類との関係 2)

FIGO の手術進行期分類とUICC のTNM 分類との相互関係を以下の表に示す。

FIGO 分類 UICC 分類
Ⅰa T1aN0M0
Ⅰb T1bN0M0
Ⅰc T1cN0M0
Ⅱa T2aN0M0
Ⅱb T2bN0M0
Ⅱc T2cN0M0
Ⅲa T3aN0M0
Ⅲb T3bN0M0
Ⅲc T3cN0M0/ Tに関係なくN1M0
T,N に関係なくM1

Ⅱ 組織学的分類

卵巣腫瘍の組織学的分類として,本邦独自の日産婦分類とWHO 分類の両者が長年にわたって用いられた経緯があった。国際的な分類に統一すべきとの機運の盛り上がりにより,1987 年から『卵巣腫瘍取扱い規約』の作成が推し進められ,1990 年7 月に日本産科婦人科学会と日本病理学会による『卵巣腫瘍取扱い規約 第1 部-組織分類ならびにカラーアトラス』が出版された。その後WHO 分類は2003 年に改訂版が出版され,日本産科婦人科学会理事会の議を経て,同婦人科腫瘍委員会の中に取扱い規約改訂委員会が設置された。日本病理学会からも委員が選任され,2007 年から改訂作業が開始し,2009 年に『卵巣腫瘍取扱い規約 第1部-組織分類ならびにカラーアトラス』(2009 年12 月,第2 版)が出版された。さらに2014 年,WHO分類の改訂版が出版された。本ガイドラインでは今回の改訂にあたり,『卵巣腫瘍取扱い規約 第1 部』(2009 年12 月,第2 版)とWHO 分類2014 年(WHO Classification of tumours of the ovary 2014)をここに掲載した。

1.卵巣腫瘍取扱い規約 第1 部(2009 年12 月,第2 版)

コード番号はInternational Classification of Diseases for Oncology(ICD-O),第3 版に基づいた。

Ⅰ.表層上皮性・間質性腫瘍 Surface epithelial-stromal tumors
  1. A.漿液性腫瘍 Serous tumors
    1. 1.良性 Benign
      1. a.
        漿液性腺腫 Serous adenoma
        8441/ 0
        (漿液性囊胞腺腫 Serous cystadenoma,漿液性乳頭状囊胞腺腫 Serous papillary cystadenoma)
      2. b.
        漿液性表在性乳頭腫 Serous surface papilloma
        8461/ 0
      3. c.
        漿液性腺線維腫 Serous adenofibroma
        9014/ 0
        (漿液性囊胞腺線維腫 Serous cystadenofibroma)
    2. 2.境界悪性 Borderline
      1. a.
        漿液性境界悪性腫瘍 Serous borderline tumor
        8442/ 1
        (漿液性境界悪性乳頭状囊胞性腫瘍 Serous borderline papillary cystic tumor)
      2. b.
        漿液性境界悪性表在性腫瘍 Serous borderline surface papillary tumor
        8463/ 1
      3. c.
        漿液性境界悪性腺線維腫 Serous borderline adenofibroma
        9014/ 1
        (漿液性境界悪性囊胞性腺線維腫 Serous borderline cystadenofibroma)
      4. d.
        微小乳頭状パターンを伴う漿液性境界悪性腫瘍
        Serous borderline tumor with micropapillary pattern
        8442/ 1
    3. 3.悪性 Malignant
      1. a.
        漿液性腺癌 Serous adenocarcinoma
        8441/ 3
      2. b.
        漿液性表在性乳頭状腺癌 Serous surface papillary adenocarcinoma
        8461/ 3
      3. c.
        漿液性腺癌線維腫 Serous adenocarcinofibroma
        9014/ 3
  2. B.粘液性腫瘍 Mucinous tumors
    1. 1.良性 Benign
      1. a.
        粘液性腺腫 Mucinous adenoma
        8470/ 0
        (粘液性囊胞腺腫 Mucinous cystadenoma)
      2. b.
        粘液性腺線維腫 Mucinous adenofibroma
        9015/ 0
    2. 2.境界悪性 Borderline
      1. a.
        粘液性境界悪性腫瘍 Mucinous borderline tumor
        8472/ 1
        1)腸型 Intestinal type
        2)内頸部様 Endocervical-like
      2. b.
        粘液性境界悪性腺線維腫 Mucinous borderline adenofibroma
        9015/ 1
    3. 3.悪性 Malignant
      1. a.
        粘液性腺癌 Mucinous adenocarcinoma
        8480/ 3
      2. b.
        粘液性腺癌線維腫 Mucinous adenocarcinofibroma
        9015/ 3
    4. 4.壁在結節を伴う粘液性腫瘍 Mucinous tumor with mural nodule
      *粘液性腫瘍の良性・境界悪性・悪性の別と壁在結節の組織診断を明記する。
    5. 5.
      腹膜偽粘液腫を伴う粘液性腫瘍 Mucinous tumor with pseudomyxoma peritonei
      8480/ 3
      *粘液性腫瘍の良性・境界悪性・悪性の別を明記する。
  3. C.類内膜腫瘍 Endometrioid tumors
    1. 1.良性
      1. a.
        類内膜腺腫 Endometrioid adenoma
        8380/ 0
        (類内膜囊胞腺腫 Endometrioid cystadenoma)
      2. b.
        類内膜腺線維腫 Endometrioid adenofibroma
        8381/ 0
    2. 2.境界悪性 Borderline
      1. a.
        類内膜境界悪性腫瘍 Endometrioid borderline tumor
        8380/ 1
        (類内膜境界悪性囊胞性腫瘍 Endometrioid borderline cystic tumor)
      2. b.
        類内膜境界悪性腺線維腫 Endometrioid borderline adenofibroma
        8381/ 1
    3. 3.悪性 Malignant
      1. a.
        類内膜腺癌 Endometrioid adenocarcinoma
        8380/ 3
      2. b.
        類内膜腺癌線維腫 Endometrioid adenocarcinofibroma
        8381/ 3
      3. c.
        癌肉腫 Carcinosarcoma
        8950/ 3
      4. d.
        腺肉腫 Adenosarcoma
        8933/ 3
      5. e.
        低悪性度類内膜間質肉腫 Endometrioid stromal sarcoma, low grade
        8931/ 3
      6. f.
        未分化卵巣肉腫 Undifferentiated ovarian sarcoma
        8805/ 3
  4. D.明細胞腫瘍 Clear cell tumors
    1. 1.良性 Benign
      1. a.
        明細胞腺腫 Clear cell adenoma
        8310/ 0
        (明細胞囊胞腺腫 Clear cell cystadenoma)
      2. b.
        明細胞腺線維腫 Clear cell adenofibroma
        8313/ 0
    2. 2.境界悪性 Borderline
      1. a.
        明細胞境界悪性腫瘍 Clear cell borderline tumor
        8310/ 1
        (明細胞境界悪性囊胞性腫瘍 Clear cell borderline cystic tumor)
      2. b.
        明細胞境界悪性腺線維腫 Clear cell borderline adenofibroma
        8313/ 1
    3. 3.悪性 Malignant
      1. a.
        明細胞腺癌 Clear cell adenocarcinoma
        8310/ 3
      2. b.
        明細胞腺癌線維腫 Clear cell adenocarcinofibroma
        8313/ 3
  5. E.移行上皮腫瘍 Transitional cell tumors
    1. 1.良性 Benign
      1. a.
        ブレンナー腫瘍 Brenner tumor
        9000/ 0
    2. 2.境界悪性 Borderline
      1. a.
        境界悪性ブレンナー腫瘍 Borderline Brenner tumor
        9000/ 1
    3. 3.悪性 Malignant
      1. a.
        悪性ブレンナー腫瘍 Malignant Brenner tumor
        9000/ 3
      2. b.
        移行上皮癌 Transitional cell carcinoma[非ブレンナー型non-Brenner type]
        8120/ 3
  6. F.扁平上皮腫瘍 Squamous cell tumors
    1. 1.良性 Benign
      1. a.類表皮囊腫 Epidermoid cyst
    2. 2.悪性 Malignant
      1. a.
        扁平上皮癌 Squamous cell carcinoma
        8070/ 3
  7. G.混合型上皮性腫瘍 Mixed epithelial tumors
    1. 1.
      良性 Benign
      8323/ 0
    2. 2.
      境界悪性 Borderline
      8323/ 1
    3. 3.
      悪性 Malignant
      8323/ 3
      *構成成分を明記する。
  8. H.
    分類不能の腺癌 Unclassified adenocarcinoma
    8140/ 3
  9. I.
    未分化癌 Undifferentiated carcinoma
    8020/ 3

注) 上記の()内の名称は,肉眼所見を加味してそのように呼ぶことができるが,日常診断においては必ずしもそこまでは求められない。

Ⅱ.性索間質性腫瘍 Sex cord-stromal tumors
  1. A.顆粒膜・間質細胞腫瘍 Granulosa-stromal cell tumors
    1. 1.顆粒膜細胞腫 Granulosa cell tumor
      1. a.
        成人型顆粒膜細胞腫 Adult granulosa cell tumor
        8620/ 1
      2. b.
        若年型顆粒膜細胞腫 Juvenile granulosa cell tumor
        8622/ 1
    2. 2.莢膜細胞・線維芽細胞性腫瘍 Theca cell-fibroblastic tumor
      1. a.
        莢膜細胞腫 Thecoma
        8600/ 0
        * 黄体化したものであるときは黄体化莢膜細胞腫Luteinized thecoma 8601/ 0 とする。
      2. b.
        線維腫 Fibroma
        8810/ 0
        *富細胞性であるときは富細胞性線維腫Cellular fibroma 8810/ 1 とする。
      3. c.
        線維肉腫 Fibrosarcoma
        8810/ 3
      4. d.
        僅少な性索成分を伴う間質性腫瘍 Stromal tumor with minor sex cord elements
        8593/ 1
      5. e.
        硬化性間質性腫瘍 Sclerosing stromal tumor
        8602/ 0
      6. f.その他 Others
  2. B.セルトリ・間質細胞腫瘍 Sertoli-stromal cell tumors
    1. 1.セルトリ・ライデッヒ細胞腫 Sertoli-Leydig cell tumor
      1. a.
        高分化型 Well differentiated
        8631/ 0
      2. b.
        中分化型 Of intermediate differentiation
        8631/ 1
      3. c.
        低分化型 Poorly differentiated
        8631/ 3
      4. d.
        網状型 Retiform
        8633/ 1
        * 異所性成分を伴うものwith heterologous elements は,セルトリ・ライデッヒ細胞腫としての組織亜型b〜d と異所性成分を明記する。中分化型と網状型は8634/ 1,低分化型は8634/ 3 とする。
    2. 2.
      セルトリ細胞腫 Sertoli cell tumor
      8640/ 1
  3. C.ステロイド細胞腫瘍 Steroid cell tumors
    1. 1.
      ステロイド細胞腫瘍 Steroid cell tumor
      8670/ 0
      * 発生部位が卵巣間質か卵巣門かを特定できるものについては,ラインケ結晶を確認できない間質性黄体腫Stromal luteoma 8610/ 0,確認できる門細胞腫Hilus cell tumor 8660/ 0,あるいは非門型ライデッヒ細胞腫Leydig cell tumor, non-hilar type 8650/1 に亜分類できる。悪性性格を示すものは悪性ステロイド細胞腫瘍8670/3 とする。
  4. D.混合型性索間質性腫瘍 Sex cord-stromal tumor, mixed cell type
    1. 1.
      輪状細管を伴う性索腫瘍 Sex cord tumor with annular tubules
      8623/ 1
    2. 2.
      ギナンドロブラストーマ Gynandroblastoma
      8632/ 1
      * 構成成分を明記する。
  5. E.
    分類不能型性索間質性腫瘍 Sex cord-stromal tumor, unclassified cell typess
    8590/ 1
Ⅲ.胚細胞腫瘍 Germ cell tumors
  1. A.
    ディスジャーミノーマ Dysgerminoma
    9060/ 3
  2. B.
    卵黄囊腫瘍 Yolk sac tumor
    9071/ 3
  3. C.
    胎芽性癌 Embryonal carcinoma
    9070/ 3
  4. D.
    多胎芽腫 Polyembryoma
    9072/ 3
  5. E.
    非妊娠性絨毛癌 Non-gestational choriocarcinoma
    9100/ 3
  6. F.奇形腫 Teratoma
    1. 1.2 胚葉性あるいは3 胚葉性奇形腫 Biphasic or triphasic teratoma
      1. a.
        未熟奇形腫 Immature teratoma
        9080/ 3
      2. b.
        成熟奇形腫 Mature teratoma
        9080/ 0
        1. 1)充実性 Solid
        2. 2)囊胞性 Cystic〔皮様囊腫 Dermoid cyst〕
        3. 3)胎児型 Fetiform〔こびと型 Homunculus〕
    2. 2.単胚葉性奇形腫および成熟奇形腫に伴う体細胞型腫瘍 Monodermal teratoma and somatic-type tumors associated with mature teratoma
      1. a.
        卵巣甲状腺腫 Struma ovarii
        9090/ 0
        * 甲状腺組織が悪性像を示すときは悪性卵巣甲状腺腫Malignant struma ovarii 9090/ 3 とし,甲状腺癌としての組織型を付記する。
      2. b.カルチノイド腫瘍 Carcinoid tumor
        1. 1)
          甲状腺腫性カルチノイド Strumal carcinoid
          9091/ 1
        2. 2)
          島状カルチノイド Insular carcinoidi
          8240/ 3
        3. 3)
          索状カルチノイド Trabecular carcinoidi
          8240/ 3
        4. 4)
          粘液性カルチノイド Mucinous carcinoidi
          8243/ 3
        5. 5)混合型 Mixed
          *構成成分を明記する。
      3. c.神経外胚葉性腫瘍群 Neuroectodermal tumor group
        *組織型を明記する。
      4. d.癌腫群 Carcinoma group
        1. 1)
          扁平上皮癌 Squamous cell carcinoma
          8070/ 3
        2. 2)
          腺癌 Adenocarcinoma
          8140/ 3
        3. 3)その他 Others
      5. e.メラノサイト群 Melanocytic group
        *組織型を明記する。
      6. f.その他 Others
  7. G.混合型胚細胞腫瘍 Mixed germ cell tumors
    *構成成分を明記する。
Ⅳ.胚細胞・性索間質性腫瘍 Germ cell-sex cord-stromal tumors
  1. a.
    性腺芽腫 Gonadoblastoma
    9073/ 1
  2. b.混合性胚細胞・性索間質性腫瘍 Mixed germ cell-sex cord-stromal tumor
Ⅴ.卵巣網の腫瘍 Tumors of the rete ovarii
  1. a.
    腺腫 Adenoma
    9110/ 0
  2. b.
    腺癌 Adenocarcinoma
    9110/ 3
Ⅵ.その他の腫瘍 Miscellaneous tumors
  1. a.
    小細胞癌 Small cell carcinoma
    8041/ 3
    * それぞれに特徴的な形態を示すときは高カルシウム血症型Hypercalcemic type,肺型Pulmonary typeとする。そうでない場合は小細胞癌の診断にとどめる。
  2. b.
    大細胞神経内分泌癌 Large cell neuroendocrine carcinoma
    8013/ 3
  3. c.
    肝様癌 Hepatoid carcinoma
    8576/ 3
  4. d.中皮性腫瘍 Mesothelial tumors
  5. e.妊娠性絨毛性疾患 Gestational trophoblastic diseases
  6. f.
    ウォルフ管腫瘍 Wolffian tumor
    9110/ 1
  7. g.軟部腫瘍 Soft tissue tumors
  8. h.悪性リンパ腫,造血細胞腫瘍 Malignant lymphoma,Hematopoietic tumors
  9. i.その他 Others
Ⅶ.腫瘍様病変 Tumor-like conditions
  1. A.囊胞形成群 Cyst-forming group
    1. a.子宮内膜症性囊胞 Endometriotic cyst
    2. b.表層上皮封入囊胞 Surface epithelial inclusion cyst
    3. c.孤在性卵胞囊胞および黄体囊囊胞 Solitary follicle cyst and corpus luteum cyst
    4. d.妊娠性および産褥性大型孤在性黄体化卵胞囊胞 Large solitary luteinized follicle cyst of pregnancy and puerperium
    5. e.多発性卵胞囊胞 Multiple follicle cysts
    6. f.多発性黄体化卵胞囊胞 Multiple luteinized follicle cysts(黄体化過剰反応 Hyperreactio luteinalis)
    7. g.分類不能囊胞 Unclassified cyst
  2. B.間質過形成群 Stromal hyperplasia group
    1. a.妊娠黄体腫 Luteoma of pregnancy(Pregnancy luteoma)
    2. b.間質過形成 Stromal hyperplasia
    3. c.間質性莢膜細胞過形成 Stromal hyperthecosis
    4. d.線維腫症 Fibromatosis
    5. e.広汎性浮腫 Massive edema
  3. C.その他 Others
Ⅷ.二次性腫瘍 Secondary tumors〔転移性腫瘍 Metastatic tumors〕
  1. 附.腹膜腫瘍
  2. A.中皮性腫瘍 Mesothelial tumors
    1. a.
      良性中皮腫 Benign mesothelioma
      9050/ 0
    2. b.
      悪性中皮腫 Malignant mesothelioma
      9050/ 3
    3. c.
      高分化乳頭状中皮腫 Well differentiated papillary mesothelioma
      9052/ 0
    4. d.
      多囊胞性中皮腫 Multicystic mesothelioma
      9055/ 1
    5. e.
      アデノマトイド腫瘍 Adenomatoid tumor
      9054/ 0
  3. B.平滑筋腫瘍 Smooth muscle tumors
    1. a.
      播種性腹膜平滑筋腫症 Leiomyomatosis peritonealis disseminata
      8890/ 1
  4. C.起源不明の腫瘍 Tumors of uncertain origin
    1. a.
      線維形成性小円形細胞腫瘍 Desmoplastic small round cell tumor
      8806/ 3
  5. D.上皮性腫瘍 Epithelial tumors
    1. a.
      原発性腹膜漿液性腺癌 Primary peritoneal serous adenocarcinoma
      8461/ 3
    2. b.原発性腹膜境界悪性腫瘍 Primary peritoneal borderline tumor
      *組織型を明記する。
    3. その他 Others

〔卵巣腫瘍取扱い規約 第1 部 第2 版(2009 年12 月,金原出版)より〕

2.WHO Classification of tumours of the ovary 2014a, b

Epithelial tumours

Serous Tumours
Benign

Serous cystadenoma
8441/ 0
Serous adenofibroma
9014/ 0
Serous surface papilloma
8461/ 0

Borderline

Serous borderline tumour/ Atypical proliferative serous tumour
8442/ 1
Serous borderline tumour-micropapillary variant/ Non-invasive low-grade serous carcinoma
8460/ 2 *

Malignant

Low-grade serous carcinoma
8460/ 3
High-grade serous carcinoma
8461/ 3
 

Mucinous tumours

Benign

Mucinous cystadenoma
8470/ 0
Mucinous adenofibroma
9015/ 0

Borderline

Mucinous borderline tumour/Atypical proliferative mucinous tumour
8472/ 1

Malignant

Mucinous carcinoma
8480/ 3

Endometrioid tumours
Benign

Endometriotic cyst
 
Endometrioid cystadenoma
8380/ 0
Endometrioid adenofibroma
8381/ 0

Borderline

Endometrioid borderline tumour/ Atypical proliferative endometrioid tumour
8380/ 1

Malignant

Endometrioid carcinoma
8380/ 3

Clear cell tumours
Benign

Clear cell cystadenoma
8443/ 0
Clear cell adenofibroma
8313/ 0

Borderline

Clear cell borderline tumour/ Atypical proliferative clear cell tumour
8313/ 1

Malignant

Clear cell carcinoma
8310/ 3

Brenner tumours
Benign

Brenner tumour
9000/ 0

Borderline

Borderline Brenner tumour/ Atypical proliferative Brenner tumour
9000/ 1

Malignant

Malignant Brenner tumour
9000/ 3

Seromucinous tumours
Benign

Seromucinous cystadenoma
8474/ 0 *
Seromucinous adenofibroma
9014/ 0 *

Borderline

Seromucinous borderline tumour/ Atypical proliferative seromucinous tumour
8474/ 1 *

Malignant

Seromucinous carcinoma
8474/ 3 *

Undifferentiated carcinoma

8020/3

Mesenchymal tumours
Low-grade endometrioid stromal sarcoma
8931/ 3
High-grade endometrioid stromal sarcoma
8930/ 3
 

Mixed epithelial and mesenchymal tumours

tumours

Adenosarcoma
8933/ 3
Carcinosarcoma
8980/ 3

Sex cord-stromal tumours

Pure stromal tumours

Fibromaa
8810/ 0
Cellulara fibroma
8810/ 1
Thecomaa
8600/ 0
Luteinized thecoma associated with sclerosing peritonitisa
8601/ 0
Fibrosarcomaa
8810/ 3
Sclerosing stromal tumoura
8602/ 0
Signet-ring stromal tumoura
8590/ 0
Microcystic stromal tumoura
8590/ 0
Leydig cell tumoura
8650/ 0
Steroid cell tumoura
8760/ 0
Steroid cell tumour, malignanta
8760/ 3

Pure sex cord tumours

Adult granulosa cell tumour
8620/ 3
Juvenile granulosa cell tumour
8622/ 1
Sertoli cell tumour
8640/ 1
Sex cord tumour with annular tubules
8623/ 1

Mixed sex cord-stromal tumours
Sertoli-Leydig cell tumours

Well differentiated
8631/ 0
Moderately differentiated
8631/ 1
 With heterologous elements
8634/ 1
Poorly differentiated
8631/ 3
 With heterologous elements
8634/ 3
Retiform
8633/ 1
 With heterologous elements
8634/ 1
Sex cord-stromal tumours, NOS
8590/ 1

Germ cell tumours

Dysgerminoma
9060/ 3
Yolk sac tumour
9071/ 3
Embryonal carcinoma
9070/ 3
Non-gestational choriocarcinoma
9100/ 3
Mature teratoma
9080/ 0
Immature teratoma
9080/ 3
Mixed germ cell tumour
9085/ 3

Monodermal teratoma and somatic-type tumours arising from a dermoid cyst

Struma ovarii, benign
9090/ 0
Struma ovarii, malignant
9090/ 3
Carcinoid
8240/ 3
Strumal carcinoid
9091/ 1
Mucinous carcinoid
8243/ 3

Neuroectodermal-type tumours
Sebaceous tumours

Sebaceous adenoma
8410/ 0
Sebaceous carcinoma
8410/ 3

Other rare monodermal teratomas
Carcinomas

Squamous cell carcinoma
8070/ 3

Others

Germ cell-sex cord-stromal tumours
Gonadoblastoma, including gonadoblastoma with malignant germ cell tumour
9073/ 1
Mixed germ cell-sex cord-stromal tumour, unclassified
8594/ 1 *

Miscellaneous tumours
Tumours of rete ovarii

Adenoma of rete ovarii
9110/ 0
Adenocarcinoma of rete ovarii
9110/ 3
Wolffian tumour
9110/ 1
Small cell carcinoma, hypercalcaemic type
8044/ 3 *
Small cell carcinoma, pulmonary type
8041/ 3
Wilms tumour
8960/ 3
Paraganglioma
8693/ 1
Solid pseudopapillary neoplasm
8452/ 1
 
Mesothelial tumours
Adenomatoid tumour
9054/ 0
Mesothelioma
9050/ 3
Soft tissue tumours
Myxoma
8840/ 0
Others
Tumour-like lesions
Follicle cyst
Corpus luteum cyst
Large solitary luteinized follicle cyst
Hyperreactio luteinalis
Pregnancy luteoma
Stromal hyperplasia
Stromal hyperthecosis
Fibromatosis
Massive oedema
Leydig cell hyperplasia
Others
Lymphoid and myeloid tumours
Lymphomas
Plasmacytoma
9734/ 3
Myeloid neoplasms

Secondary tumours

a The morphology codes are from the International Classification of Diseases for Oncology(ICD-O){575A}. Behaviour is coded / 0 for benign tumours, / 1 for unspecified, borderline or uncertain behaviour, / 2 for carcinoma in situ and grade Ⅲ intraepithelial neoplasia and / 3 for malignant tumours; b The classification is modified from the previous WHO classific ation of tumours {1906A}, taking into account changes in our understanding of these lesions; *These new codes were approved by the IARC/ WHO Committee for ICD-O in 2013.

〔WHO Classification of Tumours of Female Reproductive Organs. Fourth Edition(2014, IARC Press)より〕

Ⅲ 手術術式

手術の目的は,① 卵巣腫瘍の確定診断を行い,悪性腫瘍ならばその組織型と進行期の確定を行うこと,② 病巣の完全摘出を目指した最大限の腫瘍減量を行うこと,③ 予後因子に関する情報を得ることである。手術術式名とその内容を下記に列挙した。

基本術式 両側付属器摘出術+子宮全摘出術+大網切除術
staging laparotomy 進行期の確定に必要な手技を含む手術
exploratory laparotomy
(試験開腹術)
原発腫瘍の摘出が困難で生検と最小限の進行期確認にとどめる手術
debulking surgery
(腫瘍減量術)
可及的に最大限の腫瘍減量を行う手術
primary debulking surgery
(PDS)
初回治療として可及的に最大限の腫瘍減量を行う手術
interval debulking surgery
(IDS)
初回化学療法中に可及的に最大限の腫瘍減量を行う手術
secondary debulking surgery
(SDS)
再発腫瘍に対して可及的に最大限の腫瘍減量を行う手術
(初回化学療法終了後に認められる残存腫瘍に対する手術も含む)
  1. cytoreduction:悪性腫瘍病巣を可及的に除去する概念である。
    1)抗がん剤や放射線によるcytoreduction
    2)手術によるcytoreduction
  2. debulking 4, 5):手術において,完全切除を行い得ず,腫瘍容積を縮小して化学療法や放射線治療による治療効果を高める狭義の手術によるcytoreduction の概念で,以下の3 つの場合に分けられる。
    1)complete surgery:肉眼的に残存腫瘍が認められない場合
    2)optimal surgery:最大残存腫瘍径が1 cm 未満の場合
    3)suboptimal surgery:最大残存腫瘍径が1 cm 以上の場合
    注)
    欧米では,debulkingとcytoreductiveは同義語として扱われ,cytoreductive surgery, primary cytoreductive surgery(PCS),interval cytoreductive surgery(ICS),secondary cytoreductive surgery(SCS)の用語も使われることがある。
  3. SDS:再発腫瘍や初回化学療法終了後に認められる残存腫瘍に対して行う手術に用いられる 3, 6, 7)
  4. second look operation(SLO):初回手術の臨床的寛解例に対して化学療法の効果判定を目的として行われる手術であったが,治療後のCT やPET/ CT などの画像検査の充実や,SLOが治療効果や予後向上に結び付かないという観点から,今回からSLO の記載を省略した。

Ⅳ 化学療法

卵巣癌は化学療法が奏効する腫瘍である。一般に進行癌の割合が高く,早期癌でもしばしば再発することから,多くの症例が化学療法の対象となる。化学療法の目的とその施行時期別に分類し,下記に列挙した。

初回化学療法
first-line chemotherapy
治療成績の向上を目的として行う初回化学療法
術前化学療法
neoadjuvant chemotherapy(NAC)
初回手術に先立って,または試験開腹後に根治手術完遂率の向上などを目的として行う化学療法
維持化学療法
maintenance chemotherapy/
consolidation chemotherapy
寛解後に長期生存を目的として行う化学療法
二次化学療法
second─line chemotherapy
(salvage chemotherapy)
再発時や初回化学療法に抵抗を示した場合に行う化学療法
基本的な使用薬剤と使用方法
  1. TC 療法(conventional TC療法)

    パクリタキセル(T):175〜180 mg/m2 静注,day 1(3時間投与)
    カルボプラチン(C):AUC 5 〜6 静注,day 1(1時間投与)

    上記を3 週間毎,3 〜6 サイクル
  2. dose-dense TC療法

    パクリタキセル(T):80 mg/m2 静注,day 1,8,15(1時間投与)
    カルボプラチン(C):AUC 6 静注,day 1(1時間投与)

    上記を3 週間毎,6 〜9 サイクル
  3. DC 療法

    ドセタキセル(D):70 〜75 mg/m2 静注,day 1(1時間投与)
    カルボプラチン(C):AUC 5 静注,day 1(1時間投与)

    上記を3 週間毎,6 サイクル
  4. PLD-C 療法

    リポソーム化ドキソルビシン(PLD):30 mg/m2 静注,day 1(1時間投与)
    カルボプラチン(C):AUC 5 静注,day 1(1時間投与)

    上記を4 週間毎,6 サイクル
  5. GC 療法

    ゲムシタビン(G):1, 000 mg/m2 静注,day 1,8(30分投与)
    カルボプラチン(C):AUC 4 静注,day 1(1時間投与)

    上記を3 週間毎,6 サイクル
  6. シスプラチン単剤またはカルボプラチン単剤

    シスプラチン:75〜100 mg/m2 点滴静注,day 1

    あるいは

    カルボプラチン:AUC 5 〜6 静注,day 1(1時間投与)

    上記を3 〜4 週間毎
  7. BEP 療法

    ブレオマイシン(B):20 mg/ m2 または30 mg/ bodyのどちらか少ないほう,
    点滴静注,day 2,9,16
    エトポシド(E):100 mg/m2 点滴静注,day 1〜5
    シスプラチン(P):20 mg/m2 点滴静注,day 1〜5

    上記を3 週間毎,3 〜4 サイクル
  8. VeIP 療法

    ビンブラスチン(Ve):0. 11 mg/ kg 静注,day 1〜2
    イホスファミド(I):1. 2 g/m2 静注,day 1〜5
    シスプラチン(P):20 mg/m2 点滴静注,day 1〜5

    上記を3 週間毎
  9. VIP 療法

    エトポシド(V):75 mg/m2 点滴静注,day 1〜5
    イホスファミド(I):1. 2 g/m2 静注,day 1〜5
    シスプラチン(P):20 mg/m2 点滴静注,day 1〜5

    上記を3 週間毎
  10. TIP 療法

    パクリタキセル(T):175 mg/m2 静注,day 1(3時間投与)
    イホスファミド(I):1. 0 g/m2 静注,day 1〜5
    シスプラチン(P):20 mg/m2 点滴静注,day 1〜5

    上記を3 週間毎
    あるいは

    パクリタキセル(T):250 mg/m2 静注,day 1(24時間投与)
    イホスファミド(I):1. 5 g/m2 静注,day 2〜5
    シスプラチン(P):25 mg/m2 点滴静注,day 2〜5

    上記を3 週間毎
  11. VA(C)療法(13 歳以下)

    ビンクリスチン(V):2. 0 mg/m2 静注,weekly,8〜12 weeks
    アクチノマイシンD(A):400μg/m2 静注,day 1〜5

    上記を4 週間毎  *欧米での投与量であることに留意して施行する
  12. VAC 療法(14 歳以上)

    ビンクリスチン(V):1.5mg/m2(最高2.0mg)静注,weekly,8〜12weeks
    アクチノマイシンD(A):300μg/m2 静注,day 1〜5
    シクロホスファミド(C):150 mg/m2 静注,day 1〜5

    上記を4 週間毎  *欧米での投与量であることに留意して施行する
  13. PVB 療法

    シスプラチン(P):20 mg/m2 点滴静注,day 1〜5
    ビンブラスチン(V):0. 15 mg/ kg 静注,day 1〜2
    ブレオマイシン(B):20 mg/m2 静注,day 2,9,16

    上記を3 週間毎

Ⅴ 緩和ケア

WHO の1990 年の定義では「緩和ケアとは,治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである」とされていたように,かつて緩和ケアは,積極的な治療が終了した,いわゆる末期状態に行われる医療であると考えられてきた。しかしながら,その後のがん医療を取り巻く環境の変化から,欧米を中心に緩和ケアを早期から積極的に取り込むことが提唱されるようになり,WHO では2002 年に緩和ケアを「生命を脅かすような疾患による問題に直面している患者とその家族に対して,疾患の早期より,痛みや身体的,心理社会的,スピリチュアルな問題の同定と評価と治療を行うことによって,予防したり軽減したりすることでQOL を改善するためのアプローチである」と改めて定義し(図2),以下のような具体例を挙げている 8)

  • 痛みその他の苦しい症状を軽減する。
  • 生命を尊重し,死が特別なことではないことを認識する。
  • 死を早めたり遅らせたりしない。
  • 心理的な局面,スピリチュアルな局面に対するケアも軽視しない。
  • 死ぬまで患者が積極的に生きられるようサポートする環境を提供する。
  • 患者が闘病中や死別後に,患者家族がうまくやっていけるようにサポートする。
  • 患者と家族の要求に応えられるようにチームアプローチを適用する。
  • QOL を高めることによって,病状を改善する。
  • 病気の早い段階にも適用する。延命を目指すそのほかの治療,例えば化学療法や放射線治療に併用される。臨床上の様々な困難をより深く理解し管理するために必要な調査も含む。
図2 新旧の緩和ケアモデル

がん患者の苦痛は全人的苦痛(Total Pain)と称され,非常に多岐にわたる。緩和ケアは全てのがん領域で共通に行われるべき医療であるが,婦人科がんでは,生殖あるいは内分泌器官という臓器特性から,様々な要因が複雑に絡み合う。各種治療法の進歩に伴い,末期患者の長期生存が珍しくなくなった今日では,身体的苦痛の軽減のみならず,不安やいらだちといった精神的な苦痛,死生観や人生の意味に対するスピリチュアルな苦痛,家庭内の問題や経済上の問題などの社会的な苦痛に対しても,これまで以上に踏み込んだ緩和ケアが要求されるようになっている。

本邦では,2007 年に「がん対策基本法」が施行され,さらに翌年「がん対策推進基本計画」が閣議決定されて,国を挙げてがん医療に取り組むための基盤が整った。厚生労働省の指定するがん診療連携拠点病院は,質の高い緩和ケアの提供を目指し,緩和ケアチームの整備や,緩和ケア外来の設置,患者相談窓口の設置,緩和ケア地域連携の強化,緩和ケア研修会の実施などの機能を指定要件としている。また,基本計画では,がん診療に携わる全ての医師が緩和ケアの知識を習得することが定められており,日本緩和医療学会を中心に「症状の評価とマネジメントに関する緩和ケア継続教育プログラム」(Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education;PEACE)による緩和ケア研修会が全国各地で広く行われるようになり,本邦における緩和ケアの教育と実践の体制が急速に整備されつつある。

近年,卵巣がん患者に対する終末期までの積極的治療の継続が,かえって在院期間の延長や症状の増悪をもたらすという報告 9)や,早期からの緩和ケアの導入により肺がん患者のQOLや予後の有意な改善がみられたという第Ⅲ相試験の報告 10)が相次ぎ,卵巣がん治療において今後ますます緩和ケアの重要性が高まることが予想される。患者を中心に,医師のみならず看護師,薬剤師,社会福祉士,理学療法士,ソーシャルワーカーなどの多職種でチーム医療を行うとともに,地域病院や在宅医療支援診療所,訪問看護ステーションなどと緊密な地域連携を図り,診断時から看取りまでの切れ目のない緩和ケアを提供する体制をつくることが急務である。

【参考文献】

1) 小西郁生,青木大輔.卵巣癌・卵管癌・腹膜癌手術進行期分類の改訂および外陰癌,腟癌,子宮肉腫,子宮腺肉腫手術進行期分類の採用について.日産婦誌 2014;66:2736-2737(規約)

2) 日本産科婦人科学会・日本病理学会編.卵巣腫瘍取扱い規約第1 部(第2版).金原出版,東京,2009(規約)

3) 日本産科婦人科学会編.卵巣腫瘍取扱い規約第2部(改訂第2版).金原出版,東京,1997;9-14(規約)

4) Crawford SC, Vasey PA, Paul J, Hay A, Davis JA, Kaye SB. Does a ggressive surgery only benefit patients with less advanced ovarian cancer ? Results from an international comparison within the SCOTROC-1 Trial. J Clin Oncol 2005;23:8802-8811(レベルⅡ)

5) Aletti GD, Dowdy SC, Gostout BS, Jones MB, Stanhope CR, Wilson TO, et al. Aggressive surgical effort and improved survival in advanced-stage ovarian cancer. Obstet Gynecol 2006;107:77-85(レベルⅢ)

6) Chi DS, Eisenhauer EL, Lang J, Huh J, Haddad L, Abu -Rustum NR, et al. What is the optimal goal of pr imary cytoreductive surgery for bulky stage ⅢC epithelial ovarian carcinoma(EOC)? Gynecol Oncol 2006;103:559-564(レベルⅢ)

7) Steinberb JJ, Demopoulos RI, Bigelow B. The evaluation of the omentum in ovarian cancer. Gynecol Oncol 1986;24:327-30(レベルⅢ)

8) World Health Organization. WHO Definition of Palliative Care
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9) von Gruenigen V, Daly B, Gibbons H, Hutchins J, Green A. Indica tors of survival duration in ovarian cancer and implications for aggressiveness of care. Cancer 2008;112:2221-2227(レベルⅢ)

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