2013 年版(第3 版)序文

日本婦人科腫瘍学会のガイドライン委員会が2002 年に設置され,宇田川康博委員長と八重樫伸生副委員長のご尽力によって,最初の発刊となった『卵巣がん治療ガイドライン2004 年版』に引き続き,『子宮体癌治療ガイドライン 2006 年版』が刊行されました。その3 年後,八重樫伸生委員長の下で改訂作業が進められ,『子宮体がん治療ガイドライン 2009 年版』が上梓されました。そして,再度の改訂作業により,ここに第3 版となる『子宮体がん治療ガイドライン 2013 年版』出版の運びとなりました。2011 年11 月24 日に開催された第1 回作成委員会は,歴代委員長,委員長,副委員長,小委員長,委員,幹事をあわせて43 名と,これまで設置された委員会の中で最も多い構成でした。委員には,日本病理学会と日本放射線腫瘍学会からもご推薦を頂き,腫瘍内科医の方々にもこれまで通り加わって頂きました。最後の2013 年9 月27 日までに7 回の作成委員会を開催し,その間にホームページ上でパブリック・コメントを会員に募集し,また第52 回学術講演会(2011 年7 月21 日:東京,瀧澤 憲会長)と第54 回学術講演会(2012 年7 月20 日:東京,落合和徳会長)においてコンセンサス・ミーティングを実施し,最終段階として30 名の委員によって構成される評価委員会で検討致しました。この2 年間の作業工程において,国内外の子宮体がんの治療に関するデータを渉猟し,また現在のわが国における叡智を結集し,最終的に日本の実地治療に最も適合し得ると考えられる治療指針を48 項目にわたって提示致しました。本ガイドラインが,子宮体がんの治療にあたる医療従事者にとって必携の書となり,それが患者さんとそのご家族にとって最良の結果が得られることにつながるものと確信しております。

子宮体癌に限って治療指針を提示した初版を踏まえて,第2 版では,子宮体癌の特殊組織型ならびに癌肉腫・肉腫の項目を新設したことによって「子宮体がん治療ガイドライン」と名称を新たにし,また推奨グレードC をC1,C2 の2 段階に変更しました。今回の第3 版では,以下の点をさらに改変・変更しました。

  1. 第1 章「ガイドライン総説」には,作成費用と利益相反を新たに明記しました。
  2. 第2 章「初回治療」には別章にあった子宮体癌の特殊組織型を含め,骨盤リンパ節郭清と傍大動脈リンパ節郭清をそれぞれ独立させ,それぞれの臨床的意義について詳述しました。また,標準治療としての腹腔鏡下手術の適応をより明確にし,子宮摘出術後に子宮体癌と診断された症例の取り扱いも採り上げました。
  3. 第3 章「術後治療」にも特殊組織型を含め,わが国の治療の現状に即して,化学療法を放射線治療に優先する立場を取りました。
  4. 第4 章「治療後の経過観察」では,日本産科婦人科学会,日本女性医学学会編の『ホルモン補充療法ガイドライン2012 年度版』に基づき,治療後のホルモン補充療法 (HRT)の指針を新たに示しました。
  5. 第5 章「進行・再発癌の治療」では,初回手術後に行う化学療法,放射線治療,ホルモン療法との相違を明確にしました。
  6. 第6 章「妊孕性温存療法」では,子宮内膜異型増殖症と類内膜腺癌G1相当の2 つの疾患をまとめ,新たにこの治療後の再発癌の指針を示しました。
  7. 前版で新設された「癌肉腫・肉腫の治療」の第7章に加え,2011 年7 月に16 年ぶりに改訂された『絨毛性疾患取扱い規約 第3 版』に即応するために,第8 章として「絨毛性疾患の治療」を新たに設けました。

さらに,明解な「フローチャート」に整理し,本章の前に「本ガイドラインにおける基本事項」として,進行期分類,手術術式,化学療法,放射線治療,リンパ節の部位と名称を設けることで,本文の理解をより促すように努めました。また,使用される語句や用語の統一を図り,2013 年5 月発刊の日本産科婦人科学会編『産科婦人科用語集・用語解説集』をはじめ各専門領域の用語を採用しました。最善を尽くして完成させたガイドラインでありますが,日々の臨床の進歩・発展は目覚ましく,本学会会員諸氏,本書を手にされた多くの方々,そしてご後援頂いた日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会,婦人科悪性腫瘍研究機構,日本放射線腫瘍学会,日本病理学会にご叱正を請いながら,次の改訂につながることは申し上げるに及びません。

今回の改訂にあたり,宇田川康博教授,八重樫伸生教授のおふたりの歴代委員長には常に貴重で的確なご助言を頂きました。また,作成のパートナーである三上幹男副委員長,そして,加藤秀則,久布白兼行,熄シ 潔,井箟一彦の各小委員長,永瀬 智,村松俊成,田畑 務,蝦名康彦,小宮山慎一,大竹秀幸の各幹事の懸命且つ献身的なご尽力に深甚なる謝意を表します。さらに,嘉村敏治理事長をはじめ,理事会,評議員会,会員の皆様の暖かいご支援に心からお礼申し上げます。加えて,編集の過程で昼夜を問わずご苦労頂いた本学会事務局の安田利恵さん,ならびに金原出版株式会社の編集部の方々に感謝申し上げます。

2013 年秋

日本婦人科腫瘍学会子宮体がん治療ガイドライン 2013年版検討委員会
委員長  片渕 秀隆


2009 年版 序文


2009 年版(第2 版)序文

『子宮体癌治療ガイドライン 2006 年版』を発刊してからすでに3年がたちました。この間,国内外の大規模臨床試験の結果が相次いで報告され,新たなエビデンスの蓄積がガイドライン改訂を後押ししました。さらに,子宮悪性腫瘍のなかで頻度はさほど多くないものの悪性度が高い肉腫や特殊組織型(漿液性腺癌など)に関する治療指針を示してほしいという要望も多く寄せられました。そこで発刊1年後の2007 年秋に改訂委員会を立ち上げ鋭意作業を進めてまいりました。本ガイドラインが日常の実地診療に少しでも役立てば幸いです。

今回発刊しました『子宮体がん治療ガイドライン 2009 年版』が2006 年版と大きく変わった点は以下です。

1)2009 年版では上皮性悪性腫瘍(いわゆる癌)のみならず間葉系悪性腫瘍(肉腫など)も扱うこととしたために,名称を「子宮体がん」と平仮名にしました。

2)Minds 診療ガイドライン作成の手引きを参考にしながら推奨の基準(グレード)を変更しました。これは2006 年版で使用していた推奨の文言では,実際にその推奨文をどの程度強く奨めているのかわかりにくいということがありましたので,推奨の程度がわかるようにという配慮です。さらに2006 年版では推奨グレードCが非常に多くありましたが,エビデンスがあまりないにしても,それを奨めているのか,逆にどちらかというと否定的なのかわかるようにしてほしい,というご意見も多くありました。そこで,肯定的に奨めている場合にはC1,どちらかというと否定的な場合にはC2 を用いることにしました。

3)特殊組織型の漿液性腺癌と明細胞腺癌を第8章として別に扱いました。

4)癌肉腫と肉腫を第9章として別に扱いました。

今回の改訂に当たり,改訂作業の途中で委員長が宇田川康博先生から私に代わりました。これは学会の役員改選に伴う交代でしたが,委員長の重責を背負いながら改訂作業の途中で何度も投げ出したくなるような状況に陥りました。最後までたどり着きましたのも,前委員長の的確なアドバイスと稲葉憲之理事長をはじめとする理事の先生方の温かいご支援のお陰です。紙面を借りて感謝申し上げます。また,短期間に発刊に至りましたのは,副委員長と特殊組織型・肉腫担当小委員長を兼任していただきました片渕秀隆先生,初版に引き続き小委員長をお引き受けいただきました日浦昌道先生と櫻木範明先生,対価を求めず快く改訂作業を進めていただきました作成委員の先生方の献身によるものです。今回の改訂作業班のチームワークの良さには脱帽です。さらに,評価委員の先生方には,十分な仕上がりではない段階で評価をお願いしたにもかかわらず,快くお引き受けいただき,貴重な助言を多数お寄せいただき本当にありがとうございます。コンセンサスミーティングでご発言いただいた先生方,学会ホームページで掲載した際にパブリックコメントをくださった先生方,関連学会・団体のコメントをお寄せいただいた先生方,私どもの慣れない事務作業・編集作業を肩代わりしていただきました学会事務局や金原出版の方々にも厚く御礼申し上げます。

最後に,3 つの婦人科がん治療ガイドライン作成を日本婦人科腫瘍学会の主要プロジェクトの1 つとして掲げられ私にチャンスを与えて下さいました故野澤志朗先生に深謝いたします。

2009 年秋

日本婦人科腫瘍学会子宮体がん治療ガイドライン作成委員会
委員長 八重樫伸生


2006 年版 序文


2006 年版 序文

近年わが国の子宮体癌の罹患数は増加の一途をたどり,その罹患率も成人女性のあらゆる年齢層で上昇している。かような背景もあって日本婦人科腫瘍学会は,「卵巣がん治療ガイドライン」に引き続き「子宮体癌治療ガイドライン」の作成に着手した。体癌は手術および術後療法等の治療に関するエビデンスが少なくレベルも高くないこと,手術に関してはわが国と欧米間で選択する術式に差があること,術後療法に関しては欧米では放射線療法が中心であるのに対し,国内では化学療法が行われることが多く,欧米のエビデンスをそのまま国内に推奨として適用することができないことなどの問題点も多々あって,記述にはかなりの注意が払われ,かつ時間も要したが,ようやく此度の発刊にこぎつけた。

本ガイドライン作成の目的は,体癌の日常診療に携わる医師に対して,現時点でコンセンサスが得られ,適正と考えられる体癌の標準的な治療法を示すことにある。それにより体癌の治療レベルの均霑化と治療の安全性や成績の向上を図ることが期待できる。本ガイドラインはあくまでも診療上の参考に供するものであって,これにより治療法自体に制約を加えるものではない。実際の臨床における治療法の選択は,個々の症例や患者および家族の意向にも考慮して,ガイドラインを参考にしたうえで医師の裁量で行われるべきものと考える。したがって,医事紛争や医療訴訟に本ガイドラインが利用されるようなことは私共の本旨ではない。なお,本ガイドラインの記述内容に対しては日本婦人科腫瘍学会が責任を負うものとするが,治療結果に対する責任は直接の治療担当者が負うべきものと考える。

本ガイドラインの作成に当たっては,「卵巣がん」の時と同様にガイドライン検討委員会の中に作成委員会と評価委員会を設置し,作成委員には体癌の診療を専門的に行っている医師を広く全国から召集し,さらに放射線治療専門医と腫瘍内科医にも入っていただいた。作成形式は「卵巣がん」では総説的な体裁をとったが,本ガイドラインでは体癌の治療に関するエビデンスが少なくレベルも低いこと,欧米との治療上のギャップが少なくないことなどから,体癌の治療上の問題点を明らかにしそれに回答する「Q & A 形式」を採用することにした。取り扱う対象は,子宮体部に原発した癌,子宮内膜異型増殖症およびそれらの再発腫瘍とし,対象疾患の治療を主体とした5 つのアルゴリズムを載せ,各項を「Q & A 形式」で記述した。すなわち,体癌治療における現在の問題点を臨床的疑問点(クリニカルクエスチョン:CQ)として取り上げ,各CQ に対して国内外の文献を網羅的に収集し,各文献の構造化抄録を作成しエビデンスとして評価した。これを十分に吟味したうえで,総合的な判断からCQ に対する答えを推奨として簡潔に記載し,さらにそのCQ に対する背景・目的と推奨に至るまでの経緯を解説として記述し,最後にエビデンスのレベルを付記した参考文献を載せた。エビデンスのレベルと推奨のグレードに関しては,「卵巣がん治療ガイドライン」との整合性から,そこで用いたものをそのまま使用することにした。ガイドライン原案は,評価委員会での検討に次いで本学会の審査を経て,コンセンサスミーティングで専門家間の長時間に亘る論議を尽くした後,全学会員に提示され,この一連の過程で多くの提言や助言を容れた。さらに婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構(JGOG)や日本産婦人科医会,日本産科婦人科学会にも提示され,ここでも意見を採り入れたうえで,これらの学会の承認を得た。最終的には本年夏に開催された日本婦人科腫瘍学会理事会での承認を経て,此度の発刊に至った。

本ガイドラインを「卵巣がん」同様に実地医療の場で十二分に活用していただきたいことはもちろんであるが,一方で本書は3 年ごとに改訂される予定であることから,今後も引き続き多くの方々からご批判やご助言をいただきたい。

終わりに,本ガイドラインの作成にあたり,献身的かつ多大なご尽力をいただいた八重樫伸生副委員長と日浦昌道,櫻木範明両小委員長を始めとした作成委員の先生方,編集にあたって種々のご苦労をおかけした金原出版編集部の方々,膨大な原稿の収集と整理を担当していただいた学会事務局の方々に深甚なる謝意を表します。

2006 年9 月

日本婦人科腫瘍学会子宮体癌治療ガイドライン作成委員会
委員長 宇田川康博