このたび,三木恒治先生を作成委員長として,精巣腫瘍診療ガイドラインを5 年振りに改訂して頂きました。今回の作成委員会には,委員長を始めとして多くの先生方に第1 版に引き続いて参加して頂きましたので,この改訂版は第1 版作成時の経験を生かしながら,この5 年間で新たに得られたエビデンスをもとに,よりコンパクトで充実したガイドラインに仕上げて頂けたものと確信しております。
精巣腫瘍はそれほど頻度の高い疾患ではありませんが,乳幼児期と青壮年期という若い人に好発すること,極めて進行が速いことから,迅速な臨床診断と病理診断そして病期診断が重要であり,それらの情報に基づく適切治療が治療成績向上には不可欠です。適切な診療を行えば,有転移症例であってもかなりの確率で治癒に導くことが可能ですが,一歩誤ると直ちに大きく予後を損なうのが本疾患の特徴です。本ガイドラインで取り上げて頂いたCQ は臨床の現場で適切な診療を実践していくために理解しておくべき重要な質問となっています。本ガイドラインを外来,病棟に常備して,必要に応じて大いに活用して頂ければ幸いです。
最後に,ご多忙の中,本ガイドラインの作成にご尽力いただきました作成委員会の泌尿器科の先生方,ご協力頂きました他科(放射線科および腫瘍内科)の先生方,そして外部評価委員の先生方に心から感謝申し上げます。
平成27 年1 月
一般社団法人日本泌尿器科学会
理事長 内藤 誠二
第1 版 序 |
この度,三木恒治委員長のもと,精巣腫瘍診療ガイドラインが作成され,いよいよ刊行されることになりました。泌尿器科領域のがん診療ガイドラインとしては,前立腺癌,腎癌,膀胱癌に続くものとなります。
精巣腫瘍は,われわれが日常接する頻度はそれほど高いものではありませんが,泌尿器科領域の他腫瘍と違って乳幼児期と青壮年期に好発し,極めて進行が早いという特徴があり,その診療においては,迅速な臨床診断と正しい病理組織診断および病期診断が不可欠です。また,精巣腫瘍の治療における化学療法,放射線療法の役割は極めて大きく,特に化学療法の進歩は目覚ましいものがあります。転移を有する患者さんでも,適切な時期に,適切に化学療法を行い,手術療法や放射線療法を必要に応じて適切に併用していくことで,高率に治癒が期待できるようになってきました。しかし,いったんこれらの診断や治療の種類・時期を誤ると,大きく予後を損なう危険もあり,集学的治療を行うには,十分な知識と他科との連携,さらには高度な診断・治療設備が必要です。したがって,われわれ泌尿器科医の責任は極めて大きく,この診療ガイドラインの果たす役割も大きいと思います。適切な診療を実践するために,外来,病棟において本書を大いに活用していただければ幸いです。
最後に,本ガイドラインの作成にご尽力いただきました諸先生方に厚く御礼申し上げます。
平成21 年10 月
一般社団法人日本泌尿器科学会
理事長 内藤 誠二