腎盂・尿管癌は,病理組織学的には膀胱癌と同じ尿路上皮癌であり,多くの共通した危険因子をもち,現在行われている全身化学療法もほぼ同様である。しかしながら,膀胱癌に比べると罹患数は少なく,診療に関するエビデンスが極めて限られたものであったために,これまでガイドラインの作成は着手されないままであった。このため,腎盂・尿管癌の診療はエビデンスに基づく標準化されたものではなく,各施設の先生方の経験に基づいて行われてきたところが多かったと思われる。この度,大家基嗣教授を委員長とする「腎盂・尿管癌診療ガイドライン」作成委員会の皆様の強い熱意とご尽力によって作成された本邦初の腎盂・尿管癌診療ガイドラインは,限られたエビデンスのもとで,重要なクリニカルクエスチョンを抽出し,その回答を作成するとともに,推奨グレードを決定するという極めて難しい作業を,委員全員の合議を重ねることによって成し遂げられた成果である。本ガイドラインを上手く活用して頂くことによって,腎盂・尿管癌の患者さんに対する適切な診断と治療の提供と,標準化されたデータの蓄積と解析が可能になり,今後のクリニカルクエスチョン解決のための臨床試験の設定にも大きく役立つものと期待される。本ガイドラインによって,腎盂・尿管癌の診断・治療の標準化が図られ,本邦独自の新たなエビデンスが構築され,ひいては治療成績の向上に繋がることを願うものである。

最後に,本ガイドライン作成の委員長ならびに委員会委員の皆様には厚く御礼申し上げるとともに,心からの敬意を表します。

平成26 年3 月

社団法人日本泌尿器科学会
理事長 内藤誠二