ガイドラインサマリー

CQ 1

抗がん薬投与における用量調節のための腎機能評価にeGFR は推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

  1. 抗がん薬投与量を調整するための腎機能評価には,患者が年齢・性別に応じた標準的な体格であれば,すなわち栄養不良,極端なるい痩あるいは極端な肥満がなければeGFR を用いることを推奨する。
  2. 栄養不良,極端なるい痩など筋肉量が標準値よりも著しく異なると考えられる患者では,eGFR はGFR を正確に反映しないことがある。そのような場合には,血清Cr 値からのeGFR ではなく,蓄尿によるGFR 測定など他の方法を併用することを推奨する。
  3. 体格にかかわらず固定用量が定められている薬剤については,1.73m2 あたりの体表面積補正をしないクレアチニン・クリアランス(Ccr)ないしeGFR(mL/分)に応じた用量調整を行う。
  4. 体格に応じ,体表面積あたりで用量が定められている薬剤では,体表面積補正(1.73m2 あたり)を行ったCcr あるいはeGFR(mL/分/1.73m2)を用いることが合理的である。
  5. Cockcroft-Gault 式によるCcr(mL/分)はJaffé 法で測定された血清Cr 値を用いて計算されたものである。わが国で一般的な,酵素法で測定されたCr 値を用いる際には,実測Cr 値に0.2 を加える

CQ 2

抗がん薬によるAKI の早期診断に,バイオマーカーによる評価は推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

現状では,抗がん薬投与によるAKI の早期診断にバイオマーカーによる評価は強く推奨できない。わが国では,尿中タンパク,尿中アルブミン,血清シスタチンC,β2ミクログロブリン,尿中NAG,尿中L-FABP がAKI に対するバイオマーカーとして測定可能だが,その他も含めて,いまだAKI のバイオマーカーとして強く推奨できるものはない。


CQ 3

腎機能の低下した患者に対して毒性を軽減するために抗がん薬投与量減量は推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

腎機能の低下した患者において薬物有害事象のリスクが高まる薬剤では,減量投与を行うことを推奨する。ただし,治癒を目標とする場合にはリスク・ベネフィットのバランスを考慮して最終的に投与量を決定する必要がある。


CQ 4

シスプラチンによるAKI を予測するために,リスク因子による評価は推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

シスプラチンによるAKI を予測する因子として,低アルブミン血症,喫煙,女性,高齢(1 歳あたり1.03 倍リスクが増える),他の抗がん薬の併用,血清カリウム,心・血管系疾患や糖尿病の合併,進行がん,シスプラチン総投与量などが報告されている。シスプラチンによるAKI を防ぐために,投与前にリスク因子を評価することを推奨する。


CQ 5

シスプラチン分割投与は腎障害の予防に推奨されるか?

推奨グレード
行わないことを強く推奨する

推奨文

腎障害の予防にシスプラチン分割投与の意義は確立していないため推奨されない。


CQ 6

シスプラチン投与時の補液(3L/日以上)は腎障害を軽減するために推奨されるか?

推奨グレード
行うことを強く推奨する

推奨文

シスプラチン投与時の補液(3L/日以上)は,腎障害を軽減するために推奨される。


CQ 7

シスプラチン投与時のshort hydration は推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

外来でシスプラチンを投与する際は,腎機能・PS・年齢を考慮したうえでshort hydration を推奨する。ただし,short hydration を安全に行うには,十分な経口水分補給と尿量確保が必須であり,化学療法施行当日から3 日目まで,食事など通常の摂取量に加えて,1 日あたり1,000mL 程度の追加補給が可能な症例が対象となる。また,経口水分補液が不十分となった場合,迅速に点滴による水分補給が行える環境が整えられていることが必要である。


CQ 8

利尿薬投与はシスプラチンによる腎障害の予防に推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

利尿薬投与はシスプラチンによる腎障害の予防に明確な推奨ができない。小規模なランダム化比較試験においてその効果が証明されていないため,推奨するだけの根拠がない。ただし,利尿薬投与は1970 年代から広く行われているシスプラチン投与時の腎障害予防法であり,シスプラチンを含む治療法の大規模な臨床試験において,本法を用いたうえでの有効性,安全性が示されている。したがって,本法を否定する根拠もない。


CQ 9

マグネシウム投与はシスプラチンによる腎障害の予防に推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

マグネシウム投与により,低マグネシウム血症予防効果は期待できる。また腎機能への好影響も示唆されており,腎障害の予防のためにマグネシウム投与は推奨される。


CQ 10

腎機能に基づくカルボプラチン投与量設定は推奨されるか?

推奨グレード
行うことを強く推奨する

推奨文

カルボプラチンを投与される成人がん患者において,目標とするAUC を設定したうえで腎機能に基づいて投与量を決定する方法は,体表面積に基づく一般的な方法と比較して治療効果を高めかつ副作用を軽減させるというエビデンスは十分ではない。しかし,この腎機能に基づく投与量設定法は合理的であり,かつ日常臨床では広く普及している。


CQ 11

大量メトトレキサート療法に対するホリナート救援療法時の腎障害予防には尿のアルカリ化が推奨されるか?

推奨グレード
行うことを強く推奨する

推奨文

メトトレキサートに対するホリナート救援療法時の腎障害予防には尿のアルカリ化が推奨される。


CQ 12

血管新生阻害薬投与時にタンパク尿を認めたときは休薬・減量が推奨されるか?

推奨グレード
行うことを強く推奨する

推奨文

血管新生阻害薬投与時にタンパク尿を認めたときは,タンパク尿のグレードと薬物治療継続のリスク・ベネフィットを加味したうえでの休薬・減量が推奨される。


CQ 13

ビスホスホネート製剤,抗RANKL 抗体は腎機能が低下した患者に対しては減量が推奨されるか?

推奨グレード
行うことを強く推奨する

推奨文

ビスホスホネート製剤は,腎機能が低下した患者に対して減量が推奨される。一方,抗RANKL 抗体は,腎機能が低下した患者に対して減量が推奨されない。


CQ 14

維持透析患者に対してシスプラチン投与後に薬物除去目的に透析療法を行うことは推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

組織やタンパクに結合しているシスプラチンの大部分は透析を行っても体内に残り,透析後にリバウンドによる再上昇が認められるため,維持透析患者に対してシスプラチン投与後にタイミングに関わらず薬物除去目的の透析療法を行うことは推奨されない。


CQ 15

腫瘍崩壊症候群の予防にラスブリカーゼは推奨されるか?

推奨グレード
行うことを強く推奨する

推奨文

腫瘍崩壊症候群の予防にラスブリカーゼは推奨される。


CQ 16

抗がん薬によるTMA に対して血漿交換は推奨されるか?

推奨グレード
行うことを弱く推奨する(提案する)

推奨文

抗がん薬によるTMA に対し,明確なエビデンスはないため,現時点では推奨されない。TMA による腎障害に対する血漿交換は,進展を抑制している症例が散見されるものの,その有効性を評価するまでには至らず,現時点では推奨されない。