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1.危険因子・予防
総論
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
腎癌の発症について,肥満・職業・生活習慣・環境・遺伝因子に注意を喚起することは推奨されるか? |
生活習慣・環境因子…喫煙や肥満により腎癌の発症リスクが上昇する。 |
C1 |
遺伝因子…von Hippel-Lindau(VHL)腫瘍抑制遺伝子やBirt-Hogg-Dube(BHD)腫瘍抑制遺伝子の胚細胞変異により腎癌の発癌リスクが上昇する。 |
B |
CQ2 |
腎癌の早期発見にどのような検査が推奨されるか? |
腎癌の早期発見には腹部超音波検査が有用で,確定診断としてCT 検査を施行する。 |
B |
腎癌スクリーニングにおいてFDG-PET/CT の使用は限定的であり,顕微鏡的血尿の有無や静脈性尿路造影検査も有用でない。 |
C2 |
2.診断
総論
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
透析患者における腎癌のスクリーニングは推奨されるか? |
透析患者においては通常よりも腎癌発生率が高いことから,スクリーニングによる早期発見,治療により予後の改善が期待できる可能性が高い。若年者,長期透析患者においては腹部超音波検査,CT 検査による定期的なスクリーニングが有用と思われるが, 現状では高いエビデンスは存在しない。 |
C1 |
CQ2 |
腎腫瘍の生検はどのような場合に推奨されるか? |
画像所見を基にして,①監視療法の候補患者,②アブレーション治療の候補患者, ③良性腫瘍を疑う患者(CT にて高濃度で均一に造影される腫瘍),④悪性リンパ腫・膿瘍・転移性腫瘍を疑う患者,⑤術前補助療法の対象者や腎摘除術の非対象者で,組織型の確定診断が必要な患者に対して推奨される。 |
C1 |
CQ3 |
腎癌の病期診断に胸部CTや骨シンチグラフィー,PETは推奨されるか? |
腎癌の病期診断に胸部CT は必要である。 |
A |
骨転移を疑う所見がある場合は,骨シンチグラフィーを施行することを考慮してもよい。 |
C1 |
骨転移を疑う所見がない場合は,骨シンチグラフィーを施行することは推奨されない。 |
C2 |
PET は,遠隔転移の検索,さらにフォローアップにおける再発の診断にその有用性が報告されている。しかしルーチン検査としての意義についてはいまだ明らかではない。 |
C1 |
CQ4 |
腎癌の予後予測因子としてCRPは推奨されるか? |
腎癌の予後および病勢を評価する因子として C 反応性タンパク(CRP)は重要であり,腎癌の治療においてCRP の測定が推奨される。 |
C1 |
CQ5 |
転移進行腎癌の予後予測因子による治療法選択は推奨されるか? |
MSKCC 分類等の生命予後予測分類は,治療法選択の際の指標の1つとして推奨される。 |
C1 |
3.外科療法・局所療法
総論
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
Stage I,IIの腎癌に対する腎摘除術において腹腔鏡手術は推奨されるか? |
Stage Iの腎癌に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術は,標準術式として推奨される。 |
B |
腫瘍径の大きな腫瘍では腹腔鏡手術による合併症の頻度が高くなるとの報告もあり, Stage IIの腎癌に対する腹腔鏡手術には熟練した手術手技と適切な患者選択が必要である。 |
C1 |
CQ2 |
腫瘍径4cm以下(T1a)の腎癌患者において腎部分切除術は推奨されるか? |
腎部分切除術は根治的腎摘除術と同等の制癌性であり,腎機能温存の観点からは有用であり,推奨される。 |
A |
CQ3 |
腹腔鏡手術で腎部分切除困難な腫瘍に対するロボット支援腎部分切除術は推奨されるか? |
腹腔鏡手術で腎部分切除困難患者に対してロボット支援腎部分切除術は試みてもよいが,本邦において本技術はいまだ発展途上であり,困難患者に対する手術適応は術者の経験に応じて決定されるべきである。 |
C1 |
CQ4 |
転移性腎癌症例において腎摘除術は推奨されるか? |
現時点では,サイトカイン療法時代に証明された転移性腎癌に対する腎摘除術の有用 性を否定するレベルの高いエビデンスは存在しない。また,分子標的薬を用いた前向 き試験の結果はいまだ出ていない。後ろ向き解析の結果からは,poor risk 患者やperformance status 不良患者等,予後不良と考えられる患者に対する腎摘除術の施行は慎重に検討されるべきである。 |
B |
CQ5 |
根治的腎摘除術においてリンパ節郭清は推奨されるか? |
リンパ節腫大が認められない場合はリンパ節転移の可能性は非常に低く,リンパ節郭清は再発予防や生存率向上に寄与しないため推奨されない。 |
C2 |
リンパ節腫大を認め転移が疑われる場合は,リンパ節郭清により正確な病期診断および生存率の向上が期待されるため推奨される。 |
B |
CQ6 |
腎癌に対する腎摘除術において患側の副腎温存は推奨されるか? |
画像上副腎転移や副腎への直接浸潤が疑われない場合には,副腎温存が推奨される。 |
C1 |
CQ7 |
下大静脈腫瘍塞栓を有する腎癌患者に対する腫瘍塞栓摘除術は推奨されるか? |
下大静脈腫瘍塞栓を有する腎癌患者のうち,転移のない局所性腎癌患者において腫瘍塞栓摘除術は推奨される。 |
C1 |
CQ8 |
転移巣に対する外科療法は推奨されるか? |
転移を有する腎癌患者のうち,performance status が良好で,無病期間が長く,完全切除が可能な場合等,注意深く選択された患者において転移巣切除術は生存率の向上が期待される。 |
B |
CQ9 |
小径腎腫瘍に対する経皮的局所療法は推奨されるか? |
小径腎腫瘍に対する経皮的凍結療法(cryoablation)およびラジオ波焼灼術(RFA)等の局所療法は,高齢者,重篤な合併症を有する high risk 患者,手術療法を希望しない患者等に対しては推奨される。 |
C1 |
CQ10 |
腎癌転移巣に対する放射線療法は推奨されるか? |
腎癌の脳転移に対して,ガンマナイフ,定位放射線療法は有効である。 |
B |
腎癌の骨転移に対する放射線療法により,疼痛と QOL の改善を認める。 |
B |
4.全身治療
総論
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
腎癌に対する術前補助薬物療法は推奨されるか? |
腎癌の原発巣,転移巣に対する外科療法を想定した分子標的薬による術前補助療法は,安全かつ有効である可能性はある。 |
C1 |
CQ2 |
腎癌に対する根治的腎摘除術後の再発予防のために 補助薬物療法は推奨されるか? |
術後再発予防のための補助薬物療法は現時点では保険適用外であり,無再発生存期間および全生存期間の延長効果に一定の見解はなく,重篤な有害事象の報告もあるため,推奨されない。 |
C2 |
CQ3 |
進行腎癌に対する一次分子標的治療は何が推奨されるか? |
MSKCC 分類favorable risk,intermediate risk の淡明細胞型腎細胞癌については,スニチニブ,パゾパニブが推奨される。 |
A |
MSKCC 分類poor risk の淡明細胞型腎細胞癌については,テムシロリムスとスニチニブが推奨される。 |
B |
CQ4 |
二次薬物療法としての分子標的治療は何が推奨されるか? |
サイトカイン療法あるいは分子標的治療に抵抗性となった進行腎癌に対するアキシチニブを用いた分子標的治療は無増悪生存期間の延長が期待でき,推奨される。 |
A |
サイトカイン療法あるいは分子標的治療に抵抗性となった進行腎癌に対して,アキシチニブが使用しにくい状況ではソラフェニブも推奨される。 |
C1 |
サイトカイン療法に抵抗性となった進行腎癌に対するスニチニブあるいはパゾパニブを用いた分子標的治療は無増悪生存期間の延長が期待でき,推奨される。 |
B |
チロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性となった進行腎癌に対するエベロリムスを用いた分子標的治療は無増悪生存期間の延長が期待でき,推奨される。 |
B |
CQ5 |
進行腎癌に対する三次治療以降の分子標的治療は 何が推奨されるか? |
進行淡明細胞型腎細胞癌の三次治療として,前治療が2 種類のVEGFR-TKI であればエベロリムスが推奨される。 |
B |
進行淡明細胞型腎細胞癌の三次治療として,前治療が1種類のVEGFR-TKI と1 種類のmTOR 阻害薬であればソラフェニブ等のVEGFR-TKI が推奨される。 |
C1 |
CQ6 |
進行腎癌に対する免疫療法は推奨されるか? |
進行腎癌に対するニボルマブ(免疫チェックポイント阻害薬)は,血管新生阻害薬による治療後の二次治療(以降)として推奨される。 |
A |
進行腎癌に対するサイトカイン療法は,一次治療として推奨される。 |
C1 |
CQ7 |
非淡明細胞型腎細胞癌に対する薬物療法は何が推奨されるか? |
スニチニブを中心とした血管新生阻害薬が推奨される。 |
C1 |
テムシロリムスは血管新生阻害薬が使用しにくい状況では推奨される。 |
C1 |
5.病理
総論
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
病理組織学的な予後因子としてどのようなものが推奨されるか? |
組織型,組織学的異型度(核異型度),肉腫様変化(紡錘細胞,ラブドイド細胞),壊死,脈管侵襲の有無が主要な病理組織学的予後因子である。 |
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CQ2 |
転座型腎細胞癌の診断にはどのような検査法が推奨されるか? |
転座型腎細胞癌が疑われる患者では,パラフィン包埋組織切片を用いた免疫組織化学染色がスクリーニングに役立つ。 |
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転座型腎細胞癌が疑われる患者では,パラフィン包埋組織切片を用いたbreak-apart FISH により転座の有無が判定できる。 |
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新鮮凍結標本が保管されている転座型腎細胞癌が疑われる患者では,RT-PCR や染色体分析を用いた融合遺伝子の特定が確定診断につながる。 |
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CQ3 |
透析腎癌を特徴づける病理学的因子としてどのようなものが推奨されるか? |
透析に関連した腎癌には後天性囊胞腎随伴腎細胞癌の頻度が高く,強い好酸性の細胞質を有する腫瘍細胞の篩状あるいは微小囊胞状構築,シュウ酸カルシウム結晶の沈着を特徴とする。 |
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6.フォローアップ
総論
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ1 |
早期の腎癌患者に対して監視療法は推奨されるか? |
腎癌患者に対する監視療法は,限局性で腫瘍径の小さな,いわゆる早期の腎癌患者には考慮してもよい。特に高齢者または合併症の多い患者では選択肢の1つである。 |
C1 |
CQ2 |
根治的腎摘除術後のフォローアップの際にどのようなプロトコールが推奨されるか? |
現時点でエビデンスのある推奨プロトコールは存在しない。根治的腎摘除術後の再発リスクに応じて,適切なフォローアップの検査項目ならびに時期を決定すべきである。 |
C1 |