第1 章 診断およびサーベイランス
- はじめに
サーベイランスの有効性が示されるためには,早期発見が根治的な治療を受ける機会を増やし,予後の改善に寄与することが示される必要がある。肝細胞癌は高危険群の設定が容易な癌であり,本邦ではウイルス肝炎合併肝硬変患者を中心とする高危険群を対象に広くサーベイランスが行われてきた。一方で,肝発癌の高危険群はすなわち根治治療後の再発高危険群であり,早期発見,早期治療が必ずしも疾患の治癒に結びつかないという問題がある。
実際,超音波検査単独や超音波検査と腫瘍マーカーの併用によるサーベイランスが,肝細胞癌患者の予後改善をもたらすとのエビデンスは現時点でも不十分であり,主に倫理的な観点から今後もランダム化比較試験(RCT)が行われる可能性は低いと考えられている。
超音波検査と腫瘍マーカー検査は低侵襲な方法であるが,それでもサーベイランスの害として,検査コスト,通院のために仕事を休むことなどによる機会損失,偽陽性だった場合の造影CT や腫瘍生検などのコスト,心理的負担などがあり,サーベイランスの益がこれらを上回る必要がある。サーベイランスの益の期待値は,発癌確率が高いほど,根治的治療を受けられる確率が高いほど大きくなるため,サーベイランスの対象の選定は慎重に行う必要がある。
2021 年版(第5 版)では,サーベイランスの対象と方法について2017 年版(第4 版)を踏襲して検討した。第4 版からの4 年間に,C 型肝炎に対する直接型抗ウイルス薬が普及し,多くのC 型肝炎患者が持続的ウイルス陰性化(SVR)を達成するようになった。一方で過去30 年にわたって,肥満を背景とする非B 非C 型肝癌が増加し,5 割に達しようとしている。肝癌の高危険群の変化に合わせてサーベイランスのあり方も変わっていくことが予想されるが,今後のエビデンスの蓄積を待つ必要がある。
腫瘍マーカーの利用法は,診断,サーベイランス,治療効果指標の3 つに大別できると考えられる。画像診断の進歩によって,肝癌の確定診断における腫瘍マーカーの役割は小さくなっている。
サーベイランスにおいては,腹部超音波検査で腫瘍が検出されていない場合に,dynamic CT のようなより感度の高い検査を行うべきかどうかの判断に腫瘍マーカーが用いられる。そのような判断に適した腫瘍マーカーには,陽性尤度比〔陽性であった場合に検査後確率を上昇させる割合=感度/(1-特異度)〕が大きいことが求められる。先述したC 型肝炎のSVR やB 型肝炎に対する核酸アナログ製剤投与に伴って,アルファフェトプロテイン(AFP)のベースラインが下がり,新たにカットオフ値を低く設定する必要が生じている。今回,この問題を新たなCQ として取り上げた。
腫瘍マーカーの絶対値は,肝あるいは全身の腫瘍量の総量を代替していると考えることができる。治療前後の腫瘍マーカーを測定することによって,治療による腫瘍量の減少効果を客観的に評価することが可能である。以上,診断,サーベイランス,治療効果指標の観点から腫瘍マーカーについて検討を行った。
最終診断は病理組織学的検査に基づくのが原則であるが,焼灼療法や塞栓療法が行われる症例では,画像診断をもって確定診断としている。Dynamic CT あるいはdynamic MRI が必須であるが,乏血性の早期肝癌の診断や腫瘍の存在診断に有用であるGd-EOB-DTPA 造影MRI が役割を増している。また,腎機能低下例,肝機能低下例など通常の画像検査が行えない場合に推奨される代替画像検査,肝外転移の検索に用いるべき画像診断検査についても第4 版を踏襲して検討を加えた。
肝細胞癌サーベイランス・診断アルゴリズムの解説
1.サーベイランスの対象
サーベイランスを開始するかどうかの決定は,対象者のリスク評価から始まる。B 型慢性肝炎,C 型慢性肝炎,肝硬変のいずれかが存在すれば肝細胞癌の高危険群といえる。さらに,年齢,性別,糖尿病の有無,BMI,AST,ALT,血小板,飲酒量,HBV-DNA 量(B 型慢性肝炎患者)などの危険因子を勘案して検査間隔を決定する。なかでもB 型肝硬変,C 型肝硬変患者は,超高危険群に属する。なお,核酸アナログ製剤服用中のB 型慢性肝炎患者,抗HCV 療法によってSVR を達成したC 型慢性肝炎患者では,発癌率の低下が認められるが,依然として少なからざる肝発癌リスクが存在するため,サーベイランスを継続する必要がある。
2.サーベイランスの方法
3~6 カ月間隔での腹部超音波検査を主体とし,腫瘍マーカー測定を併用する。肝硬変患者などの超高危険群ではdynamic CT,細胞外液性Gd 造影dynamic MRI,Gd-EOB-DTPA 造影MRI の併用も考慮する。
サーベイランスの間隔について,間隔をより短くするほど理論的には腫瘍は小さく発見されるはずであるが,費用は上昇する。より精緻なサーベイランスによってもたらされる腫瘍径の差が臨床上意味のある差であるか,その差が増加する費用に見合うかどうかを勘案する必要がある。また,肝硬変の進展度,肥満度,背景肝疾患の違い,検査機器の性能などによって検出できる最小腫瘍径は異なる。ここでは,超高危険群に対しては,3~4 カ月に1 回の超音波検査,高危険群に対しては,6 カ月に1 回の超音波検査を行うことを提案する。肝臓の萎縮,高度肥満,粗糙な肝実質など超音波検査によって肝細胞癌を小さくみつけることが困難であると考えられる例については,dynamic CT あるいはdynamic MRI(Gd-EOB-DTPA 造影MRI を含む)の併用も考える。
腫瘍マーカー検査については,AFP,AFP レクチン分画(AFP-L3 分画)およびPIVKA-II を超高危険群では3~4 カ月に1 回,高危険群では6 カ月に1 回測定することを推奨する。ただし,2021 年現在,上記超高危険群・高危険群に対する月1 回のAFP およびPIVKA-II 測定は保険収載となっているが,AFP-L3 分画の測定は,肝細胞癌が強く疑われる場合にのみ算定できるとされている。
3.超音波検査で結節性病変を指摘
超音波検査で結節性病変が新たに指摘された場合,dynamic CT,細胞外液性Gd 造影dynamic MRI,Gd-EOB-DTPA 造影MRI のいずれかを撮影し,鑑別診断を行う。CT 用造影剤,MRI 用造影剤の禁忌例では造影超音波が推奨される。超音波の描出不良などを理由にサーベイランスとしてCT,MRI を撮影し,結節が検出される場合もある。
AFP の持続的上昇あるいは,200 ng/mL 以上の上昇,PIVKA-II の40 mAU/mL 以上の上昇,AFP-L3 分画の15%以上の上昇を認めた場合,超音波検査で腫瘍が検出できなくても,dynamic CT/MRI を撮影することを考慮する。
4.血流診断
多血化すなわち動脈血流が周囲肝実質に比較して増加することが,典型的肝細胞癌の特徴である。多血化は,dynamic CT,Gd-EOB-DTPA 造影MRI を含むdynamic MRI の動脈相(早期相)で検出することができる。
(1)早期増強効果あり
1) dynamic CT あるいは細胞外液性Gd 造影dynamic MRI の場合
Dynamic CT,細胞外液性Gd 造影dynamic MRI の動脈相で高吸収(高信号)域として描出され,門脈・平衡相で周囲肝実質と比較して相対的に低吸収(低信号)域(washout)として描出された場合,典型的肝細胞癌として治療方針決定に進む。
Dynamic CT およびdynamic MRI の禁忌などでペルフルブタンマイクロバブル造影超音波を行った場合,後血管相(Kupffer 相)の造影欠損をwashout と同様に扱うことも可能である。ただし,high-flow な海綿状血管腫は早期血管相で造影され,Kupffer 相で造影欠損を示す場合があり,肝細胞癌との鑑別が困難であるため,他の画像検査で除外する必要がある。
Dynamic CT,細胞外液性Gd 造影dynamic MRI の門脈・平衡相でwashout が認められない場合,1 cm 未満の病変かつ超音波で描出可能であれば,3 カ月毎に超音波検査で経過観察を行い,腫瘍径の増大あるいは腫瘍マーカーの上昇を認めた場合,再度dynamic CT あるいはdynamic MRI を撮影する。超音波で描出できない病変の場合,3 カ月毎にdynamic CT あるいはdynamic MRI で経過観察を行う。なお,画像診断で良性であることが確定した病変について経過観察は不要である。
Dynamic CT の門脈・平衡相でwashout が認められない腫瘍径1 cm 以上の結節の場合,Gd-EOB-DTPA 造影MRI を行う。肝細胞癌の確定診断が得られれば,治療方針決定に進む。他の撮像法も含めて良悪性の鑑別が困難な場合,造影超音波,肝腫瘍生検を考慮する。
2) Gd‒EOB‒DTPA 造影MRI の場合
門脈相で周囲肝実質と比較して相対的に低信号域(washout)として描出された場合,典型的肝細胞癌として治療方針決定に進む。門脈相でwashout が認められない場合,腫瘍径が1 cm 未満の病変かつ超音波で描出可能であれば,3 カ月毎に超音波検査で経過観察を行い,腫瘍径の増大あるいは腫瘍マーカーの上昇を認めた場合,再度Gd-EOB-DTPA 造影MRI を撮影する。超音波で描出できない病変の場合,3 カ月毎にGd-EOB-DTPA 造影MRI で経過観察を行う。腫瘍径が1 cm 以上の場合,移行相/肝細胞相で低信号域として描出されていれば,海綿状血管腫は肝細胞相で低信号を示すので同時に施行されるMRI の他の撮像法と併せて除外し,除外できた場合は肝細胞癌として治療方針決定に進む。血管腫を除外できない場合は,dynamic CT あるいは,細胞外液性Gd 造影dynamic MRI を撮影する。門脈相のwashout,移行相/肝細胞相の低信号いずれも認められない場合は,通常のサーベイランスに戻す。
(2)早期増強効果なし
1) dynamic CT あるいは細胞外液性Gd 造影dynamic MRI の場合
Dynamic CT,細胞外液性Gd 造影dynamic MRI の動脈相で高吸収(高信号)域として描出されない場合,腫瘍径1.5 cm 未満かつ超音波で描出可能であれば,3 カ月毎に超音波検査で経過観察を行い,腫瘍径の増大あるいは腫瘍マーカーの上昇を認めた場合,再度dynamic CT あるいはdynamic MRI を撮影する。超音波で描出されない病変の場合,dynamic CT あるいはdynamic MRI による経過観察も考慮される。画像診断で良性であることが確定した病変について経過観察は不要である。
Dynamic CT あるいは細胞外液性Gd 造影dynamic MRI の動脈相で高吸収(高信号)域として描出されず,かつ腫瘍径1.5 cm 以上の場合,Gd-EOB-DTPA 造影MRI を撮影する。
2) Gd‒EOB‒DTPA 造影MRI の場合
Gd-EOB-DTPA 造影MRI の動脈相で高信号域として描出されない場合,腫瘍径1.5 cm 未満かつ超音波で描出可能であれば,3 カ月毎に超音波検査で経過観察を行い,腫瘍径の増大あるいは腫瘍マーカーの上昇を認めた場合,再度Gd-EOB-DTPA 造影MRI を撮影する。超音波で描出されない病変の場合,Gd-EOB-DTPA 造影MRI による経過観察も考慮される。画像診断で良性であることが確定した病変について経過観察は不要である。
腫瘍径1.5 cm 以上かつ肝細胞相で低信号の場合は,造影超音波,肝腫瘍生検などを考慮し,肝細胞癌の確定診断が得られれば,治療方針決定に進む。肝細胞相で低信号でない場合は,超音波で描出可能であれば,3 カ月毎に超音波検査で経過観察を行い,腫瘍径の増大あるいは腫瘍マーカーの上昇を認めた場合,再度Gd-EOB-DTPA 造影MRI を撮影する。超音波で描出されない病変の場合,Gd-EOB-DTPA 造影MRI による経過観察も考慮される。
(3)他の悪性腫瘍が疑われる場合
動脈相,門脈・平衡相の造影パターンから肝内胆管癌,転移性肝癌などが積極的に疑われる場合,おのおのの精査を行う。
- CQ1
- サーベイランスは,どのような方法で行うか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
-
- 1.C 型慢性肝疾患患者,B 型慢性肝疾患患者,および非ウイルス性の肝硬変患者が肝細胞癌の定期的スクリーニング対象である
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
-
- 2. 3~6 カ月間隔での腹部超音波検査を主体とし,腫瘍マーカー測定も用いたスクリーニングを軸とする。肝硬変患者などの超高危険群ではGd-EOB-DTPA を使用したMRI またはdynamic CT の併用も考慮する。
背景
肝細胞癌は,地域集積性の著しい癌であり,B 型肝炎ウイルス(HBV)およびC 型肝炎ウイルス(HCV)の関与と生活習慣の影響が大きいとされる。本邦においても肝細胞癌患者の約70%は,B 型あるいはC 型慢性肝疾患患者である1)。ウイルス肝炎以外の肝細胞癌の危険因子は,肝硬変,男性,高齢,アルコール摂取,喫煙,肥満,脂肪肝,糖尿病などである。肝細胞癌サーベイランスの対象と方法について検討した。
サイエンティフィックステートメント
2017 年版(第4 版)のCQ2 の内容を引き継ぎ,本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第4 版検索対象期間以降2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,849 篇が抽出された。そのなかから「コホート研究のみ。横断研究は省く。危険因子について多変量Cox 解析をしているもの,あるいは本CQ に関連すると判断されたメタアナリシスおよび前向き試験を採用」という方針の下に一次選択で136 篇,二次選択でそのなかから7 篇を新たに採用とし,第4 版の9 篇と合わせて計16 篇を採用した。
肝細胞癌サーベイランスに使用するモダリティについて,Singal らは肝硬変症例446 例を対象に調査を行った。41 例が肝細胞癌と診断され,腹部超音波単独,AFP 単独,両者併用で,それぞれ感度44%,66%,90%,特異度92%,91%,83%と腹部超音波とAFP の併用により感度が上昇することを報告している2)。Chang らも肝硬変症例1,597 例の肝癌サーベイランスにおいてAFP,腹部超音波単独よりも両者によるスクリーニングにより感度が向上(99.2%)することを報告している3)。また,AFP のカットオフ値に1 年以内の最低の値から2 倍以上の上昇を加えることにより特異度も68.3%から71.5%に向上した。早期の病期での検出能に関して,Tzartzeva らは肝硬変症例に関する32 の研究を対象にメタアナリシスを行った。13,367 例の解析を行い,ミラノ基準内での検出に関して腹部超音波単独で45%であったものがAFP の併用で63%と感度が上昇することを報告している4)。
画像検査のモダリティについて,Kim らは,肝硬変症例407 例のサーベイランスを腹部超音波とGd-EOB-DTPA を使用したMRI を同時に行うことで検出能の比較を行った。43 例が発癌し,感度は,MRI 86.0%,腹部超音波27.9%で,偽陽性率も3.0%vs. 5.6%とMRI で低かった5)。Pocha らは163 例の代償期肝硬変患者を対象に6 カ月毎の腹部超音波と1 年毎の造影CT の有用性を比較すべくRCT を行い,年率6.6%発癌している集団で,感度,特異度は腹部超音波群で71.4%,97.5%,CT 群で66.7%,94.4%と感度において6 カ月毎の腹部超音波群が優れており,検査費用も腹部超音波群で低いことを報告している6)。
定期的検査間隔の違いによる診断時腫瘍径の違いを検討したRCT が2 篇報告されている。肝硬変症例を対象とした腹部超音波によるサーベイランスに関し30 mm 以下での肝細胞癌発見率を主要評価項目とし,3 カ月と6 カ月間隔の比較を行った試験では,主要評価項目に有意差は認めず,全生存率にも差はなかった7)。4 カ月と12 カ月間隔の比較を行った試験も報告されており,4 カ月間隔で2 cm 以下の早期に検出された症例が多かったが,4 年間の生存率には有意差を認めなかった8)。Han らは,400 例の肝細胞癌症例において発見時のサーベイランス間隔で予後の比較を行った。6 カ月以内のサーベイランスで発見された腫瘍の方が有意に小さく,lead-time bias を考慮しても有意に予後が良好であったと報告している9)。
解説
肝細胞癌サーベイランスの有効性を示すためには,対象者をランダムにサーベイランスを行う群と行わない群の2 群に割り付け,全死亡を比較する研究が必要である。しかし,現在までのところ対象者をクラスター単位にランダム割り付けした2003 年および2004 年の研究がそれぞれ1 篇あるのみで10,11),以後この条件に合致する研究は発表されていない。発癌者のみを対象とし,発癌後の全死亡を比較する研究は多く報告されているが,lead-time bias の問題が生じる。Lead-time の推定は,自然経過での腫瘍の倍加時間とサーベイランスで発見された腫瘍と症状で発見された腫瘍における腫瘍径の差から計算されるが,採用されるパラメータの設定次第で計算結果が大きく異なる12,13)。定期的な肝細胞癌に対するスクリーニングによって,早期に肝細胞癌が検出され,根治療法につながる14)。また,予後改善効果をもたらす可能性があり15),この第5 版からはサーベイランスは強く推奨されるとし,第4 版のCQ1「サーベイランスは推奨されるか?」が本CQ に統合された。
肝細胞癌サーベイランスにおいて超音波検査にAFP を追加することで,より多くの患者がdynamic CT あるいはMRI による精査を受けることとなるため,理論的に感度は上昇するはずであるが,一方で偽陽性例が増加することから費用対効果は低下する16)。サーベイランスの間隔についても同様で,より短い間隔にするほど理論的には腫瘍は小さく発見されるはずであるが,費用は上昇する。よって,より精緻なサーベイランスによってもたらされる腫瘍径の差が臨床上意味のある差であるか,その差が増加するコストに見合うかどうかが問題となる。また,肝硬変の進展度,肥満度,背景肝疾患の違い,検査機器の性能などによって検出できる最小腫瘍径は異なる。検査コストも国によって大きく異なり,したがって他国で行われた費用対効果分析をそのまま本邦に当てはめることも問題がある。
結果として,推奨は現状を追認する形になった。ただし,肝細胞癌の一般的倍加時間を考慮すると,3 カ月未満のサーベイランス間隔が有効である可能性は理論的にも根拠に乏しい。また,Gd-EOB-DTPA を使用したMRI 併用による感度・特異度の向上が示されたが,検査費用が腹部超音波の8~9 倍であることを考慮すると,この増分費用効果が予想される生存期間の延長分と見合う可能性も低いといわざるを得ない。以上,肝細胞癌サーベイランスは本邦で既に確立され,広く行われているため,従来からの方法を踏襲することとした。
投票結果
◉推奨文1「C 型慢性肝疾患患者,B 型慢性肝疾患患者,および非ウイルス性の肝硬変患者が肝細胞癌の定期的スクリーニング対象である」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「3~6カ月間隔での腹部超音波検査を主体とし,腫瘍マーカー測定も用いたスクリーニングを軸とする。肝硬変患者などの超高危険群ではGd-EOB-DTPA を使用したMRI またはdynamic CT の併用も考慮する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ2
- 肝細胞癌の診断に有用な腫瘍マーカーは何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 1. 肝細胞癌の補助診断に有用な腫瘍マーカーとして,AFP,PIVKA-II,AFP-L3 分画を推奨する。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 2. 小肝細胞癌の診断においては2 種以上の腫瘍マーカーを測定することを推奨する。
背景
本邦では,肝細胞癌の腫瘍マーカーとしてAFP,PIVKA-II,AFP-L3 分画の3 種が保険収載となっている。
診断目的の腫瘍マーカー測定は,確定診断に用いる場合と,サーベイランスにおいて次のプロセスへのトリガーとして用いる場合に分けられる。画像診断が発達した現在,肝細胞癌の腫瘍マーカーは確定診断に必須ではない。一方,サーベイランスに用いられる場合は,ある閾値を超えたときに検査後確率がどのように変化するかが重要であり,陽性尤度比〔positive likelihood ratio=感度/(1-特異度)〕を指標にすることが望ましい。今回,肝細胞癌の補助診断に有用な腫瘍マーカーについて検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は,第4 版のCQ3,CQ4 を統合して作成された。第4 版のCQ3 と同じ検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,341 篇が抽出された。「感度,特異度の両方が報告されている。腫瘍径が層別化されているか限定されている。ゴールドスタンダード基準が明確」という方針の下に一次選択で97 篇,二次選択で9 篇を採用し,第4 版にて採用された11 篇と合わせ計20 篇を採用した。
5 cm 以下の肝細胞癌を対象とした17 篇の論文における感度,特異度,診断オッズ比,陽性尤度比を検討したシステマティックレビューでは,AFP の感度はカットオフ値20 ng/mL で49~71%,特異度は,49~86%,カットオフ値200 ng/mL で感度8~32%,特異度76~100%であった1)。統合された診断オッズ比は,カットオフ値20 ng/mL,200 ng/mL でそれぞれ4.06,6.99,陽性尤度比はそれぞれ2.45,5.85 であった。PIVKA-II の感度は,カットオフ値40 mAU/mL で15~54%,特異度は95~99%,カットオフ値100 mAU/mL で感度7~56%,特異度72~100%であった。統合された診断オッズ比は,カットオフ値40 mAU/mL,100 mAU/mL でそれぞれ21.31,6.70,陽性尤度比はそれぞれ12.60,4.91 であった。AFP-L3 分画の感度は,カットオフ値10%で22~33%,特異度は93~99%,カットオフ値15%で感度21~49%,特異度94~100%であった。統合された診断オッズ比は,カットオフ値10%,15%でそれぞれ6.43,10.50,陽性尤度比はそれぞれ4.89,13.10 であった。2 種類の腫瘍マーカーを組み合わせた場合の診断オッズ比は,6.29~59.81 と1 種類の腫瘍マーカーのみと比較して向上していた。
C 型肝炎患者におけるAFP の診断能に関して検討したシステマティックレビューでは,5 篇の論文を採用し,20 ng/mL をカットオフ値とした場合の感度は41~65%,特異度は80~94%,陽性尤度比3.1~6.8,陰性尤度比0.4~0.6 と報告している2)。
一方,より最近行われたシステマティックレビューでは,49 篇の論文を採用し,AFP の感度59%〔95%信頼区間(CI):54~63%〕,特異度86%(95%CI:82~89%),PIVKA-II の感度63%(95%CI:58~67%),特異度91%(95%CI:88~93%),AFP,PIVKA-II のROC 曲線下面積をそれぞれ0.83,0.77 と報告している3)。ただし,対象を腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3 個以下に限った場合は,AFP の感度48%(95%CI:39~57%),特異度89%(95%CI:79~95%),PIVKA-II の感度45%(95%CI:35~57%),95%(95%CI:91~97%),AFP,PIVKA-II およびそれらを組み合わせた場合のROC 曲線下面積はそれぞれ0.68,0.84,0.83 であり,組み合わせによる診断能の向上は認められなかった。
734 例の慢性肝炎・肝硬変患者を対象としたコホート研究において,平均観察期間374.5 日中に29 例に肝発癌を認めた4)。AFP のカットオフ値を20 ng/mL とした場合の感度は61.2%,特異度は78.3%,PIVKA-II のカットオフ値を60 mAU/mL とした場合の感度は41.4%,特異度は90.9%であった。AFP のカットオフ値を40 ng/mL,PIVKA-II のカットオフ値を80 mAU/mL とし組み合わせた場合の感度は65.5%,特異度は85.5%であった。1,377 例の肝細胞癌患者と355 例の慢性肝炎・肝硬変患者を対象としたケースコントロール研究において,3 cm 未満の腫瘍に関してAFP のカットオフ値を20 ng/mL,100 ng/mL,200 ng/mL とした場合の感度はそれぞれ55%,23%,14%であり,特異度はそれぞれ94%,99%,100%であった。同様にPIVKA-II のカットオフ値を40 mAU/mL,100 mAU/mL とした場合の感度はそれぞれ41%,21%,特異度は97%,100%であった。AFP のカットオフ値を20 ng/mL,PIVKA-II のカットオフ値を40 mAU/mL とし組み合わせた場合の感度は82%,特異度は91%であった5)。AFP およびPIVKA-II のROC 曲線下面積は,それぞれ0.887,0.812 であり,腫瘍径で層別化して検討したところ,3 cm 未満の診断能に関してはAFP の方が有意に優れており,5 cm 超の診断能に関してはPIVKA-II の方が有意に優れていた。372 例のC 型肝硬変患者を対象としたコホート研究において,2 年の経過観察中に34 例に肝発癌がみられた。AFP 20 ng/mL,AFP-L3 分画10%,PIVKA-II 7.5 ng/mL のカットオフ値で,感度はそれぞれ61%,36.5%,39.2%,特異度はそれぞれ71.1%,91.6%,89.6%であった。AFP(カットオフ値20 ng/mL),AFP-L3 分画(カットオフ値10%),PIVKA-II(カットオフ値7.5 ng/mL)の3 つを組み合わせた場合,感度は77%まで上昇した6)。B 型慢性肝炎患者において106 例の肝細胞癌群と100 例の対照群を検討した研究では,AFP 20 ng/mL,PIVKA-II 40 mAU/mL のカットオフ値で,感度はそれぞれ57.5%,51.9%,特異度は88.0%,97.0%であった7)。2,830 例の慢性肝疾患患者が参加した肝細胞癌サーベイランスにおいて,肝発癌が認められた104 例と傾向スコアによってマッチさせた対照104 例を対象とした研究では,高感度AFP-L3 分画のカットオフ値を7%,10%,15%とした際の感度はそれぞれ39.4%,16.3%,11.5%であり,特異度はそれぞれ77.0%,96%,100%であった。AFP のカットオフ値を20 ng/mL,200 ng/mL とした際の感度は41.4%,12.5%,特異度は90.4%,99.0%,PIVKA-II のカットオフ値を40 mAU/mL とした場合の感度は34.6%,特異度は94.0%であった8)。過去に行われた3 つのRCT を含む4 つの前向き研究の689 例のうち,肝発癌が認められた42 例とマッチさせた対照168 例を対象とした研究では,AFP のカットオフ値を5 ng/mL,AFP-L3 分画のカットオフ値を4%としたときの組み合わせの感度は79%,特異度は87%であり,さらに腹部超音波検査単独,腹部超音波検査+AFP,腹部超音波検査+AFP+AFP-L3 分画それぞれの感度は48.6%,88.6%,94.3%と,腹部超音波検査にAFP,AFP-L3 分画を加えることで感度が上昇した9)。
解説
ベイズの定理によると検査後オッズは,検査前オッズ×尤度比で表される。肝細胞癌のリスクが最も高い群の年率発癌率が高々10%であることを考えると,年2 回のサーベイランス検査で肝細胞癌が検出される検査前確率はおおよそ5%,検査前オッズは19 分の1 となる。腹部超音波検査の結果が陰性であった場合は,検査後オッズは,少なくとも40 分の1 程度まで低下するため,腫瘍マーカーが陽性であった場合に肝細胞癌が存在する確率を10%以上にするためには,陽性尤度比5 以上が必要である。これは特異度95%で感度25%以上,特異度90%で感度50%以上に相当する。すなわち,カットオフ値を高めに設定して陽性尤度比を高くしない限り,不必要な確認検査が増加し,費用対効果が低下する。慢性活動性肝炎を合併している患者ではAFP の特異度は低いため,少なくともカットオフ値を100 ng/mL 以上に設定する必要がある。AFP-L3 分画やPIVKA-II は小肝細胞癌における感度がAFP に劣るが,特異度が高いために,陽性尤度比はAFP よりも優れている。近年,核酸アナログ製剤投与下のB 型慢性肝炎患者および抗ウイルス療法によってSVR を達成したC 型慢性肝炎患者において,AFP の特異度が向上するという報告がある10-12)。今後これらの患者群において,新たなカットオフ値を設定すべきと考えられる。
次に,小肝細胞癌において2 つの腫瘍マーカーを測定することは,特異度の低下は最小限に抑えつつ,感度を向上させる。2 つ以上の腫瘍マーカーを組み合わせる場合,通常それぞれのカットオフ値を「どちらか片方が」超えた場合を陽性とする。そのため,組み合わせる腫瘍マーカーの数が増加するに従って無条件に感度も上昇するが,当然のことながら特異度は低下する。陽性尤度比は感度/(1-特異度)で表されるため,特異度の低下の影響の方が大きく,サーベイランスの場合は,不要な確認検査の増加,診断確定に用いた場合は,陽性でも検査後確率がさほど上昇しないという結果をもたらす。特異度の低下を避けるためには,単独で用いるよりも高いカットオフ値を採用する必要があり,特に特異度の低いAFP のカットオフ値は,20 ng/mL よりも高く設定する必要がある。また,組み合わせる腫瘍マーカーは相補的であることが望ましく,その点ではAFP とPIVKA-II は相関が低いために理想的な組み合わせといえる。
新たに採用した論文のうち2 篇はメタアナリシスの論文で,1 篇は腹部超音波検査単独より腹部超音波検査にAFP を加えることで感度が上昇すること13),もう1 篇はPIVKA-II の方がAFP よりも腫瘍サイズ,人種,病因によらず診断精度に優れていることが示された14)。
肝細胞癌の腫瘍マーカーとして本邦で最後に認可されたAFP-L3 分画の登場から20 年以上が経過した。グリピカン3,ゴルジプロテイン73,オステオポンチン,各種マイクロRNA15),さらにcentromere protein F(CENP-F)16)やcytoskeleton-associated protein 4(CKAP4)17),MFG-E818),HCC-ART スコア19),γ-GT/AST 比20)など各種スコアについて多数の報告がなされたが,今回の検討でもいまだ実用に耐えうるものは見出せなかった。以上,本邦の肝癌診断において保険収載となっている3 種の腫瘍マーカーの役割は既に確立されている。
投票結果
◉推奨文1「肝細胞癌の補助診断に有用な腫瘍マーカーとして,AFP,PIVKA-II,AFP-L3 分画を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「小肝細胞癌の診断においては2 種以上の腫瘍マーカーを測定することを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ3
- 腫瘍マーカーの測定は,肝細胞癌の治療効果判定の指標として有用か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 治療前に腫瘍マーカーが上昇している症例において,治療後にその腫瘍マーカーを測定することは,治療効果判定の指標として有用である。
背景
肝移植および肝切除では,目的とした腫瘍が完全に摘除されたかは病理学的に評価可能であるのに対して,穿刺局所療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE),薬物療法,放射線治療では,治療効果判定は画像検査によって行われる。また,肝移植・肝切除においても肝外・切除範囲外の遺残癌の評価には,画像検査が用いられる。画像による治療効果判定は,治療の影響による変化のため(AP シャント,リピオドール集積など),困難な場合も少なくない。腫瘍マーカーによる治療効果判定が,画像による効果判定を補完しうるかについて検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は,第4 版のCQ5 と同一である。今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,522 篇が抽出された。「治療効果判定に腫瘍マーカーを使用しているもののみを採用」という方針の下に一次選択で9 篇を選択,二次選択で4 篇を採用し,第4 版の8 篇と合わせて計12 篇を採用した。
根治的穿刺局所療法〔ラジオ波焼灼療法(RFA),70.7%〕が施行された416 例を対象とした研究では,AFP,PIVKA-II,AFP-L3 分画の3 種のマーカーのうち,治療後のAFP およびAFP-L3 分画高値(>100 ng/mL/>15%)が再発を予測する独立した因子であった1)。RFA で治療された54 例(治療機会72 回)を対象とした研究では,AFP の半減期7 日未満の減少は,画像診断による効果判定と独立した無再発生存の予測因子であった2)。肝切除が施行された714 例の肝細胞癌患者を対象として行われた研究においてAFP,PIVKA-II のカットオフ値をそれぞれ20 ng/mL,40 mAU/mL とした際の切除後の陰転化率は,それぞれ80.3%,99.6%であった。治療前のAFP,PIVKA-II は6 カ月以内の再発に関連していたが,2 年以降の再発には関連していなかった3)。同様に165 例の肝切除症例を対象とした研究では,再発症例でAFP が正常化しない症例が有意に多かった。多変量解析の結果,術後最低AFP 値が有意に再発と関連していた4)。また841 例の肝切除症例を対象とした同様の研究で,1 週間以内のAFP 低下は無再発生存および全生存の独立した危険因子であった5)。術前AFP 高値(>400 ng/mL)であった280 例の肝切除症例を対象とした研究では,術後3 カ月以内のAFP 正常化が無再発生存および全生存の独立した危険因子であった6)。
RFA が施行された肝細胞癌患者146 例を対象とした検討では,無再発にもかかわらずAFP が上昇していた症例ではAFP はALT と相関していた。再発もなくAFP も上昇していない症例ではALT も正常であった。カットオフ値を20 ng/mL とした際の治療前AFP 陽性例の再発時陽性率は72.2%であったのに対して,治療前AFP 陰性例の治療後陽性率は,12.2%であった7)。
TACE あるいは放射線塞栓療法(transarterial radioembolization;TARE)を受けた125 例を対象とした研究では,AFP の50%以上の減少は,画像による効果判定とともに独立した予後予測因子であった8)。TACE を受けた376 例(術前AFP>20 ng/mL,BCLC Stage B)を対象とした同様の研究では,20%以上のAFP 減少が全生存の独立した予後予測因子であった9)。また,術前AFP 高値(>400 ng/mL)でTACE を行った147 症例を対象とした研究では,30%以上のAFP 減少は独立した予後予測因子で,画像上progressive disease と判定されたなかでも良好な予後を示した10)。
分子標的治療薬を含む薬物療法を施行された72 例を対象とした研究では,AFP の20%以上の減少で定義されたAFP responder は,画像上stable disease と判定されたなかでも良好な予後を示した11)。全身化学療法あるいは分子標的治療を受けた107 例を対象とした同様の検討では,50%以上のAFP減少は,良好な予後と関連していた12)。
解説
サーベイランスにおいてしばしば問題となることであるが,AFPは背景肝の肝炎の活動性と有意に相関している。そのため,画像上根治的に治療できたと思われる症例においてAFP が陰転化しない場合の多くは背景肝由来のAFP を測定していると想定される。一方,AFP-L3 分画やPIVKA-II のように背景肝の影響を受けにくいため特異度の高い腫瘍マーカーの場合は,治療後の測定値が高い場合に腫瘍の遺残が強く疑われる。
腫瘍の進展度に関して,腫瘍の生物学的悪性度と腫瘍マーカー産生の有無は有意に関連しているとされ,また同一の腫瘍であれば,腫瘍量と腫瘍マーカー値は比例関係にあるため,より進行した肝細胞癌において腫瘍マーカー値の治療効果判定における有用性が高まることが予想される。以上,本邦の肝癌診療において保険収載となっている3 種の腫瘍マーカーの役割は既に確立されている。
なお,腫瘍マーカー測定が治療効果判定において真に有効であるためには,腫瘍マーカー値がCT などの画像検査のタイミング決定や治療法変更などの臨床判断に用いられることが必要であるが,今回の文献検索の範囲ではそのような研究は見出せなかった。
投票結果
◉推奨文「治療前に腫瘍マーカーが上昇している症例において,治療後にその腫瘍マーカーを測定することは,治療効果判定の指標として有効である」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ4
- 背景肝疾患の状態に応じて,AFP のカットオフ値を変える必要があるか?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
- 肝炎制御下において,AFP のカットオフ値を従来よりも下げることにより,検査感度は上昇する。
背景
診断目的の腫瘍マーカー測定は,確定診断に用いる場合と,サーベイランスにおいて次のプロセスへのトリガーとして用いる場合に分けられる。画像診断が発達した現在,肝細胞癌の腫瘍マーカー測定は確定診断に必須ではない。一方,サーベイランスに用いられる場合は,ある閾値を超えたときに検査後確率がどのように変化するかが重要であり,陽性尤度比〔positive likelihood ratio=感度/(1-特異度)〕を指標にすることが望ましい。
以前よりAFP は肝細胞癌の腫瘍マーカーとして広く用いられてきたが,その測定値は,肝癌だけでなく背景肝の肝炎の活動性の影響を受ける。近年のB 型肝炎に対する核酸アナログ製剤やC 型肝炎に対する直接型抗ウイルス薬(DAA)により,多くの症例で肝炎は制御可能となった。そこで,背景肝の状態に応じたAFP の最適カットオフ値について検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は今回の改訂で新設されたものである。2000 年1 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について,新たに設定した検索式を用いて検索し,115 篇が抽出された。「B 型肝炎の核酸アナログ製剤投与下あるいはC 型肝炎のSVR におけるAFP の感度・特異度を論じた論文を採用」という方針の下に一次選択にて3 篇を選択し,二次選択においては一次選択された3 篇を採用した。
エンテカビル内服中で発癌サーベイランスに則り定期画像検査を行ったB 型肝炎患者1,531 例を対象とした前向き-後ろ向きコホート研究では,57 例の発癌が認められ,肝癌診断時のAFP のROC 曲線下面積は0.85(95%CI:0.73~0.98)であり,従来のAFP カットオフ値20μg/L を用いると,感度38.6%,特異度98.9%であった。6μg/L とより低いカットオフ値を用いると,感度は80.7%に上昇する一方,特異度80.4%に低下した。エンテカビル治療中の肝癌診断において,AFP は特異度が高く,従来のカットオフ値よりも低い6μg/L を用いると,感度を上げることができると結論づけられている1)。
ラミブジンまたはエンテカビルを投与されたB 型肝炎患者256 例を対象とした前向きコホート研究では,AFP は投与前に比して投与後有意に低下していた。35 例の発癌が認められ,AFP はカットオフ値を10 ng/mL に設定すると,感度45.7%,特異度97.3%と,核酸アナログ製剤投与前のAFP の特異度64.4%に比して特異度は上昇していた2)。
インターフェロンによるSVR 達成後の発癌患者29 例(腫瘍径3 cm,腫瘍数3 個以下),SVR 達成後の非発癌患者58 例,SVR 非達成発癌患者29 例(3 cm,3 個以下),SVR 非達成非発癌C 型肝炎患者58 例を対象としたマッチド・ケースコントロール研究では,C 型肝炎ウイルス持続陽性者群における肝癌診断において,AFP のROC 曲線下面積は0.83,最適カットオフ値は17 ng/mL で感度は51.7%(95%CI:32.5~70.6),特異度は93.1%(95%CI:83.3~98.1)であった。一方,SVR 後発癌ではROC 曲線下面積は0.86,カットオフ値5 ng/mL で,感度は75.9%(95%CI:56.5~89.7),特異度は89.0%(95%CI:81.0~97.1),カットオフ値17 ng/mL では,感度24.1%(95%CI:10.3~43.5),特異度100%(95%CI:90.9~100)であった3)。
解説
サーベイランスにおいてしばしば問題となることであるが,AFPは背景肝の肝炎の活動性と有意に関連している。そのため,AFP は偽陽性も多く,肝癌の診断精度は十分とはいえなかった。しかし,抗ウイルス薬により活動性肝炎が制御された状態では,非癌組織から分泌されるAFP は低下するため,従来のAFP のカットオフ値では特異度が高くなる一方で,感度は低くなる。カットオフ値を従来よりも下げることで,感度の上昇が見込める。
採用された上記3 篇の論文では,いずれも肝炎制御下においては従来のカットオフ値ではAFP は特異度が高く,2 篇ではカットオフ値を従来よりも下げることで感度を上昇させることができるという結果であった1,3)。従来のカットオフ値を用いると陽性尤度比は最大化するものの,感度が著しく低下するため,カットオフ値を下げることで感度を上昇させることはサーベイランスにおいて妥当と考えられる。
投票結果
◉推奨文「肝炎制御下において,AFPのカットオフ値を従来よりも下げることにより,検査感度は上昇する」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
参考文献
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- CQ5
- 肝細胞癌の高危険群において,典型的肝細胞癌の診断に診断能が高い検査は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 典型的肝細胞癌の診断のためにはdynamic CT, dynamic MRI,造影超音波検査のいずれかが勧められる。ただしいずれも施行可能であるならGd-EOB-DTPA 造影MRI を推奨する。
背景
肝細胞癌の多くは,dynamic CT あるいはdynamic MRI の動脈相において濃染を示し,門脈相あるいは平衡相にてwashout を示す。このように画像上,典型的な造影パターンを呈するものを典型的肝細胞癌という。肝硬変患者で1~2 cm の結節が超音波検査で検出されたとき,造影剤を用いた超音波,CT,MRI のうち1 つが肝細胞癌に典型的な造影パターンを示せば診断可能である。
本CQ では典型的肝細胞癌の診断における,各モダリティの診断能について検討する。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ6 を踏襲している。2016 年以降にエビデンスレベルの高いメタアナリシスやシステマティックレビューが発表されたため,第4 版で採用された論文はメタアナリシスに含まれないエビデンスを補完するものにとどめて引き続き採用した。第4 版検索対象期間以降2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,429 篇より一次選択で24 篇を選択した。二次選択で採用された9 篇のうち詳細が明らかでない1 篇を除いた8 篇と,第4 版の46 篇のうち必要と思われた11 篇を合わせて19 篇を採用した。
肝細胞癌診断に関してGd-EOB-DTPA 造影MRI とdynamic CT の診断能比較を行ったメタアナリシスによると,Gd-EOB-DTPA 造影MRI はCT よりも有意に高い感度(0.85 vs. 0.68)を示し,特異度は両者に差がみられなかった(0.94 vs. 0.93)。ROC 解析ではMRI の診断能はCT よりも有意に高かった(ROC 曲線下面積0.79 vs. 0.46)1)。
肝細胞癌診断に関して,Gd-EOB-DTPA 造影MRI,dynamic CT,dynamic MRI の診断能を比較したメタアナリシスによると,Gd-EOB-DTPA 造影MRI と造影CT の推定感度はそれぞれ0.881(95%CI:0.766~0.944)と0.713(95%CI:0.577~0.819),推定特異度はそれぞれ0.926(95%CI:0.829~0.97)と0.918(95%CI:0.829~0.963)であった。この差は統計的に有意ではなかった。ただし,小さな病変を有する患者を含む研究に限定すると,Gd-EOB-DTPA 造影MRI は造影CT よりも優れており,推定感度は0.919(95%CI:0.834~0.962)と0.637(95%CI:0.565~0.704),推定特異度は0.936(95%CI:0.882~0.966)と0.971(95%CI:0.937~0.987)であった。Gd-EOB-DTPA 造影MRI とdynamic MRI の比較に関する検討では,推定感度は0.907(95%CI:0.870~0.934)と0.820(95%CI:0.776~0.857),推定特異度は0.929(95%CI:0.877~0.961)と0.934(95%CI:0.881~0.964)であり,Gd-EOB-DTPA 造影MRI の方が優れていた2)。
2 cm 以下の小肝細胞癌を対象とした場合のGd-EOB-DTPA 造影MRI とdynamic CT の診断能を比較したメタアナリシスでは,Gd-EOB-DTPA 造影MRI はCT と比較して感度が有意に高かった(0.96 vs. 0.65:p<0.01)が,特異度では有意差を認めなかった(0.94 vs. 0.98:p>0.05)。Gd-EOB-DTPA 造影MRI とdynamic CT のサマリーROC 曲線下面積は0.97 と0.85 であり,Gd-EOB-DTPA 造影MRI の方が総合診断能は優れていた3)。
Gd-EOB-DTPA 造影MRI とdynamic CT の肝細胞癌検出感度を比較したメタアナリシスでは,Gd-EOB-DTPA 造影MRI と造影CT の肝細胞癌検出感度は0.86(95%CI:0.76~0.93)と0.70(95%CI:0.58~0.80)で,Gd-EOB-DTPA 造影MRI が有意に高い値であった(p<0.05)。Gd-EOB-DTPA 造影MRI と造影CT の感度は病変が小さくなるにつれて低下したが,すべてのサイズ群においてMRI の感度はCT の感度よりも高かった4)。
以上の結果はそれ以前のメタアナリシスの結果と矛盾しない5,6)。また,肝細胞癌のステージングあるいは治療方針の決定においてもMRI は有用である7-9)。
また,超常磁性酸化鉄(SPIO)造影剤を用いたMRI とdynamic CT との比較でもMRI が優れるとの結果であるが10-12),これは1 cm 以下の小さな肝細胞癌の検出が優れることによる13)。
小型肝細胞癌の診断に対する造影超音波検査の有効性を検討したメタアナリシスによると,造影超音波の診断感度は0.86(95%CI:0.79~0.91),特異度は0.87(95%CI:0.75~0.94),陽性尤度比は7.06(95%CI:1.64~30.36),陰性尤度比は0.20(95%CI:0.14~0.28)であった。診断オッズ比は33.71(95%CI:20.34~55.88),ROC 曲線下面積は0.93(95%CI:0.90~0.95)であった14)。
造影超音波の肝細胞癌スクリーニングの有用性について非造影超音波を対照として比較した前向きRCT において,初回発見時の平均肝細胞癌サイズは,造影超音波群(13.0±4.1 mm;28 例)が非造影超音波群(16.7±4.1 mm;26 例)に比べて有意に小さかった(p=0.011)15)。
造影超音波とdynamic CT の小肝細胞癌診断能を比較したメタアナリシスによると,造影超音波とdynamic CT の感度は0.75(95%CI:0.70~0.80)と0.74(95%CI:0.68~0.78),特異度は0.91(95%CI:0.87~0.94)と0.92(95%CI:0.89~0.95),サマリーROC 曲線下面積は0.91 と0.89 であり,両者の間に有意な統計結果は認められなかった(Z=0.23,p=0.82)16)。
TACE 後の残存または再発肝細胞癌の診断における造影MRI の有用性を検討したメタアナリシスでは,造影MRI の感度,特異度,陽性尤度比,陰性尤度比,診断オッズ比,およびROC 曲線下面積は,91%(95%CI:87~96%),93%(95%CI:85~97%),12.22(95%CI:5.62~26.57),0.09(95%CI:0.05~0.18),126.99(95%CI:34.76~436.99),0.97(95%CI:0.95~0.98)であった17)。
解説
典型的肝細胞癌診断におけるdynamic CT の果たす役割は大きい。現在,ほとんどの施設にmulti-detector-row CT が普及しており,MRI と比べて安定した画質が得られ,検査時間も短いなどの優位性もある。1 回のスキャンが数秒と短く,呼吸停止ができない症例においても画質の劣化が少ない。診断能も小病変以外ではMRI と遜色がない。
Gd-EOB-DTPA 造影MRI は小病変を含めた肝細胞癌診断に優れた診断能を示す。一方でMRI は装置の導入,維持にコストがかかる。また1 件あたりの検査時間も長いため,施設によっては肝細胞癌の高リスク症例を全例MRI で検査することは難しいと考えられる。また,Gd-EOB-DTPA 造影MRI は感度の高い検査であるが,臨床においては全体が早期に濃染する小さな血管腫や多血性の腫瘤形成型肝内胆管癌などとの鑑別に留意する必要がある。
SPIO 造影剤は陰性造影剤であり,dynamic 撮像ができないなど肝細胞癌の診断における意義は限定的である。腎機能が低下した症例ではヨード造影剤やガドリニウム(Gd)造影剤の使用を避ける必要があるため,SPIO 造影剤を用いてMRI を行うことを考慮してもよい。
造影超音波はCT,MRI に比べると客観性に劣るが,血流動態と肝網内系機能を評価することが可能であり,特に第二世代の造影剤が使用できるようになってからは優れた診断能が得られるようになっている。またペルフルブタンマイクロバブルは腎機能障害の有無にかかわらず使用でき,重篤なアナフィラキシー様反応の頻度もヨード造影剤やGd 造影剤よりも少ない18)。メタアナリシスの結果では造影超音波の肝細胞癌診断能はdynamic CT と比較しても遜色なく,肝細胞癌の診断に用いる画像検査として推奨できる。ただし肥満患者などでは深部の病変は描出が難しいこともあるため注意が必要である19)。
肝細胞癌の診断を目的として血管造影が行われることは少なくなっており,今回は検討の対象から外した。経動脈性門脈造影下CT(CTAP)および肝動脈造影下CT(CTHA)を含む血管造影は典型的肝細胞癌の診断において非常に有用な検査ではあるが,肝動脈あるいは上腸間膜動脈への選択的カテーテル挿入が必要であるため他の検査法と比較して侵襲的である。他の検査法で診断がつかない場合や,TACE など治療手技と併せて施行される場合に限るべきである。
結論として,造影超音波,dynamic CT,Gd-EOB-DTPA 造影MRI のいずれの検査法も典型的肝細胞癌の診断に十分有用であり,施設の状況や患者の状態に応じて適切なものを選択することが求められる。ただ,小肝細胞癌に関してはGd-EOB-DTPA 造影MRI の診断能はdynamic CT や造影超音波よりも優れているため,施行可能であるならばGd-EOB-DTPA 造影MRI を優先して考慮するべきである。
投票結果
◉推奨文「典型的肝細胞癌の診断のためにはdynamic CT, dynamic MRI,造影超音波検査のいずれかが勧められる。ただしいずれも施行可能であるならGd-EOB-DTPA 造影MRI を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ6
- 慢性肝疾患患者において,造影CT にて多血性を示すがwashoutがみられない病変にどのように対応するか?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- Gd-EOB-DTPA 造影MRI による精査を行うことを推奨する。
背景
慢性肝疾患患者における造影CT などの細胞外液性造影検査において,動脈相で濃染して門脈相から平衡相にかけてwashout を呈する病変をみた場合には,典型的な肝細胞癌の画像所見といえる。しかしながら,肝細胞癌でもwashout がはっきりと認められない場合があり,血管腫や多血性偽病変との鑑別が問題となる。動脈相で濃染してGd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で低信号を呈する1 cm 以下の結節52 病変(悪性30 病変,良性22 病変)を対象とした検討では1),肝細胞癌の16.7%(5/30),良性の50%(11/22)が門脈相におけるwashout を認めなかった。つまり,多血性を示し,washout がみられず,かつ肝細胞相で低信号を示す微小病変(1 cm 以下)16 結節中,11 結節が良性,5 結節が肝細胞癌であり両者が混在する。このCQ では動脈相濃染を示す頻度が高い良性病変として血管腫と多血性偽病変を取り上げ,肝細胞癌との鑑別にGd-EOB-DTPA 造影MRI が有用であるかを考察する。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は,第4 版のCQ7「Dynamic CT/MRI で典型的所見を示さない肝結節の精査は,何cm 以上から行うのが望ましいか?」を引き継ぎ,よりQuestion を明確にするために表現を修正した。第4 版の検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,584 篇が抽出された。そのうち,「肝多血性結節の診断能について病理もしくは臨床経過をreference として検討しているもの」27 篇を一次選択した。二次選択ではそのうち10 篇を採用した。その後,Question をさらに明確にするため,CQ を「肝細胞癌と血管腫や多血性偽病変などの良性の多血性病変の鑑別についてGd-EOB-DTPA 造影MRI が推奨されるかどうか」に修正した。採用した10 篇のうち7 篇は対象がCQ で想定された血管腫・多血性偽病変ではないため除外した。CQ に合致する6 篇をハンドサーチで追加し,最終的に計9 篇を採用した。改訂委員会におけるvoting にて意見が分かれ,その原因として本CQ が造影CT または細胞外液性造影MRI のいずれかの施行後を想定していることによる複雑さが挙げられたため,造影CT に限定するCQ 文へ変更した。
●多血性偽病変との鑑別でGd-EOB-DTPA 造影MRI を施行することは推奨されるか?
慢性肝疾患患者は動脈-門脈短絡(AP シャント)の発達やアルコール多飲者にみられる過形成結節などにより,造影CT などの細胞外液性造影検査で多血性偽病変がしばしば観察される。これらは病理学的に診断が確定することは少なく,臨床的には多血性偽病変と一括りに扱うのが妥当と考えられる。肝細胞癌と多血性偽病変の画像所見や鑑別についてGd-EOB-DTPA 造影MRI を用いて直接比較したRCT はみつからなかった。したがって,両者の鑑別について検討された後ろ向き観察研究を以下にまとめる。
アルコール性肝硬変患者における多血性過形成結節28 病変と3 cm 以下の多血性肝細胞癌29 病変を対象とした検討では,結節径16 mm 以下,拡散強調像で低~等信号,門脈相と移行相のいずれかあるいは両方でwashout を認めない,の3 項目が多血性過形成結節を予測する独立した因子であり,これら3 項目のうち2 項目を認めた場合の多血性過形成結節の診断能は感度92.9%(26/28),特異度75.9%(22/29),正診率84.2%(48/57)であり,3 項目すべて認めた場合には感度60.7%(17/28),特異度100%(29/29),正診率80.7%(46/57)であった2)。
血管腫(11 病変)とAP シャント(15 病変)を含む良性結節28 病変(非特異的な良性結節2 病変を含む)と肝細胞癌111 病変を対象とした検討では,Gd-EOB-DTPA 造影MRI による肝細胞癌の診断能は読影者1 が感度95%(107/111),特異度96%(27/28)で読影者2 が感度95%(106/111),特異度96%(27/28)だった。一方,dynamic CT による肝細胞癌の診断能は読影者1 が感度84%(95/111),特異度100%(28/28)で読影者2 が感度89%(99/111),特異度100%(28/28)だった。読影者1 ではGd-EOB-DTPA 造影MRI はdynamic CT より感度が高かった(p=0.005)。読影者2 の感度(p=0.052)および読影者1,2 の特異度(いずれもp=0.317)には有意差を認めなかった3)。
結節状の形態を呈する多血性偽病変32 病変(平均11.5 mm)と多血性肝細胞癌123 病変(平均16.4 mm)を対象とした検討では,肝細胞癌は偽病変に比して有意にサイズが大きい,T2 強調像/拡散強調像で高信号を呈する割合が多い,肝細胞相で低信号を呈する割合が多いという結果だった(p<0.0001)。肝細胞相における病変と肝実質の信号比は肝細胞癌の方が有意に低く,0.84 をカットオフ値とした場合,感度91%(112/123),特異度91%(29/32)だった。また,拡散強調像高信号を肝細胞癌と多血性偽病変の診断基準にした場合,感度67%(83/123),特異度100%(32/32)だった4)。
2 cm 以下の多血性偽病変53 病変と肝細胞癌44 病変を対象とした検討では,2 名の評価者による独立した5 段階評価でGd-EOB-DTPA 造影MRI(動脈相での濃染と肝細胞相での低信号が診断基準)とdynamic CT(動脈相での濃染と平衡相での低信号が診断基準)の診断能を比較すると,Gd-EOB-DTPA 造影MRI の方がdynamic CT よりも感度が高く,特異度には有意差を認めなかった〔読影者1(Gd-EOB-DTPA 造影MRI vs. CT):感度93.9%(31/33)vs. 54.5%(18/33)(p=0.001),特異度92.6%(25/27)vs. 96.3%(26/27),読影者2:感度90.9%(30/33)vs. 54.5%(18/33)(p=0.0018),特異度92.6%(25/27)vs. 96.3%(26/27)〕。Az 値には有意差を認めなかった〔読影者1:0.975 vs. 0.892(p=0.069),読影者2:0.966 vs. 0.888(p=0.106)〕5)。肝切除や焼灼療法後の再発肝細胞癌42 病変と多血性偽病変11 病変を対象としたGd-EOB-DTPA 造影MRI の検討(動脈相で濃染してwashout を認めない病変が対象)では,肝細胞相低信号と拡散強調像高信号の組み合わせが両者の鑑別に有用だった。感度(54.8%)と陰性的中率(34.5%)は低かったが,特異度(90.9%)と陽性的中率(95.8%)が高いという結果だった6)。
●血管腫との鑑別でGd-EOB-DTPA 造影MRI を施行することは推奨されるか?
Gd-EOB-DTPA 造影MRI では肝細胞癌以外の病変でも動脈相に強い濃染を示し,移行相から肝細胞相にかけて周囲肝と比較して低信号を呈する,いわゆるpseudo-washout appearance を呈することがあり,造影早期に結節全体が強い濃染を示すhigh-flow 血管腫は小肝細胞癌との鑑別が問題となることが多い。しかしながらGd-EOB-DTPA 造影MRI を用いた血管腫と肝細胞癌の鑑別能を前向きに検討したRCT はこれまでに行われていない。したがって,両者の鑑別について検討された後ろ向き観察研究を以下にまとめる。
Nam らによるGd-EOB-DTPA 造影MRI にてpseudo-washout appearance を示す病変径20 mm 未満のhigh-flow 血管腫43 例50 結節と多血性小肝細胞癌62 例113 結節を対象とした検討では,high-flow 血管腫は多血性小肝細胞癌と比較して拡散強調像から求められたapparent diffusion coefficient(ADC)およびT2 強調像から求められたcontrast-to-noise ratio(CNR)が有意に高いことが示されている。ADC を用いた両者の鑑別能はROC 曲線下面積で0.995(95%CI:0.969~1.000,感度98%,特異度97.3%)であり,T2 強調像のCNR を用いた鑑別能,ROC 曲線下面積で0.915(95%CI:0.861~0.953)と比較して有意に優れたことが報告されている。一方,定性的な視覚評価においても拡散強調像を用いた両者の鑑別能は高く(ROC 曲線下面積0.988~0.999,感度90~94%,特異度98.2~100%),読影者間の一致度も高いとされている(κ値0.80)7)。
同様にChoi らによる病変径20 mm 以上の血管腫20 結節,肝細胞癌91 結節,肝内胆管癌27 結節,混合型肝癌9 結節,転移性肝癌9 結節,その他5 結節の計161 例161 結節を対象としたintravoxel incoherent motion(IVIM)とdiffusion-weighted imaging を併用したGd-EOB-DTPA 造影MRI による検討では,血管腫と肝悪性腫瘍との間でADC とIVIM におけるmolecular diffusion coefficient(Dslow)が有意に異なっており,両者の鑑別能はROC 曲線下面積でADC が0.907(95%CI:0.850~0.948,感度90.0%,特異度80.9%),Dslow が0.933(95%CI:0.882~0.967,感度95.0%,特異度83.8%)であったことが報告されている。一方,肝悪性腫瘍の間ではADC, Dslow に有意差は認められなかった8)。
一方,細胞外液性Gd 造影剤を用いたMRI 所見を後ろ向きに解析した研究によると,動脈相濃染を認めるがwashout がみられない非典型的肝細胞癌においては拡散強調像高信号と被膜様濃染が肝細胞癌と非肝細胞癌の鑑別に有用であった9)。
解説
Gd-EOB-DTPA 造影MRI による肝細胞癌と多血性偽病変の鑑別に関する検討はいまだ十分になされてはいないが,多血性を示すもののwashout がみられない病変は肝細胞癌よりも良性の頻度が高く,Gd-EOB-DTPA 造影MRI は高い診断能を有しているようである。両者の鑑別を目的とした場合に,Gd-EOB-DTPA 造影MRI が造影CT より優れているという報告はあるが,他のモダリティ(造影腹部超音波検査,細胞外液性造影MRI など)と比較して非劣性もしくは優れているという明確な根拠はこれまでに示されておらず,今後の検討課題と考えられる。
肝細胞癌と血管腫との鑑別に関するモダリティ間の診断能比較はいまだ十分になされていないが,拡散強調像所見を併用することができるMRI は臨床的に有用といえるかもしれない。両者の鑑別を目的とした場合に,Gd-EOB-DTPA 造影MRI の診断能を他のモダリティ(造影腹部超音波検査,細胞外液性造影MRI など)の診断能と直接比較した検討はないが,おそらくは動脈相の増強効果が強く平衡相も評価できる細胞外液性造影MRI の方がGd-EOB-DTPA 造影MRI より優れると考えられる。
以上を踏まえ,造影CT にて多血性を示すがwashout がみられない病変に対して,Gd-EOB-DTPA 造影MRI を追加施行することは推奨できる。
投票結果
◉推奨文「Gd-EOB-DTPA 造影MRI による精査を行うことを推奨する」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
参考文献
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- CQ7
- 慢性肝疾患患者の非多血性病変にどのように対応するか?
a. 慢性肝疾患患者の非多血性病変の診断においてGd-EOB-DTPA 造影MRI は推奨されるか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- Gd-EOB-DTPA 造影MRI による精査を行うことを推奨する。
b. 慢性肝疾患患者の非多血性病変の診断において定期的な経過観察は推奨されるか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- Gd-EOB-DTPA 造影MRI(またはdynamic CT)を用いた経過観察を推奨する。
背景
慢性肝疾患患者における造影検査で動脈相では多血性を示さず,ペルフルブタンマイクロバブル造影超音波あるいはGd-EOB-DTPA 造影MRI で正常な肝細胞機能を有さない結節が検出されることが増え,肝細胞癌の前駆病変が含まれることが知られてきた。
非多血性の病変の多血化(癌化)に関する報告は2011 年のKumada らの後ろ向き検討1)以来多くなされてきたが,この病変の呼称は文献によって異なり定まっていない。このうちGd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で低信号を示すものは検出されやすく,かつ肝細胞相の造影機序から癌化リスクが示唆されるため,LI-RADS HBA Working Group により“HBP hypointense nodule without APHE”が提唱された2)。本邦では,早期濃染を認めない病変は「乏血性病変」とも呼ばれることがある。これらの病変には癌の多段階発育のなかにあって多血性・乏血性の境界域にあるものが相当数含まれるであろうこと,早期濃染の検出能がモダリティによって異なることを考慮すると“非多血性病変”が妥当と考えられる。
多血性肝細胞癌に非多血性肝細胞性結節が併存した場合は,併存しない場合に比べて治療後の予後が悪いことが示されている3-5)。多血性肝細胞癌治療前に,併存する非多血性病変の鑑別を行うことは必要であると考えられる。
慢性肝疾患患者には肝細胞癌のスクリーニングを目的とした定期的な画像検査が推奨されている。このため,慢性肝疾患患者の肝内に発見された非多血性の病変が経過観察なしに放置されるケースは想定し難い。次に,非多血性病変が発見され次第生検および/または治療を行うべきか否かについて,その効果を検証したRCT はみつからなかった。このため,経過観察推奨の根拠にはガイドラインなどにおける専門家のコンセンサスならびに非多血化病変が多血化(癌化)する頻度およびその関連因子を探索した観察研究を用いた。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は,第4 版のCQ8「肝硬変患者における早期肝細胞癌の検出において,診断能が高い検査は何か?」を引き継ぎ,よりQuestion を明確にするために表現を修正した。第4 版と同様の検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,642 篇が抽出された。
そのうち,一次選択で21 篇,二次選択で16 篇を採用したが,対象例が少数であるものなど5 篇は除外とした。ハンドサーチで11 篇の文献が追加され,最終的に22 篇の文献を採用して以下の考察を行った。
- 1)CQ7a:
- 慢性肝疾患患者の非多血性病変の診断においてGd-EOB-DTPA 造影MRI は推奨されるか?
サイエンティフィックステートメント
Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で低信号を示す非多血性結節のうち進行肝細胞癌が44%,早期肝細胞癌が20%,高度異型性結節が27.5%,低度異形成結節および再生結節が8%である6)。選択バイアスがあるが明らかに治療対象とするべき進行肝細胞癌が含まれることに注意が必要である。
Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で低信号を示す非多血性結節の診断能については,多くの研究においてGd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で検出できた結節を対象としており,Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で検出できなかった結節の診断能についての十分なエビデンスはない。Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で検出した非多血性結節のうち,造影CT でも検出できるのは35%である7)。造影CT の非多血性結節の検出率は相対的に低いため,非多血性結節の検出にGd-EOB-DTPA 造影MRI は有用であるといえる。各モダリティの肝細胞癌(2 cm 以下)の診断能は造影CT が53%,造影超音波が68%,Gd-EOB-DTPA 造影MRI が77%,CT 下血管造影が88%である8)。CT およびMRI で非多血性とされた肝細胞癌のうち,33%が造影超音波で多血性と診断されている9)など,1 つのモダリティで非多血性と診断されても別モダリティで再検査すると多血性として描出される結節がある。非多血性の診断は複数のモダリティを用いることが望ましいといえる。また,T2 強調像や拡散強調像で高信号を示す所見が異形結節と肝細胞癌の鑑別に有用との報告もあり,一般にMRI を施行する意義はあると思われる10)。またSPIO 造影後の信号強度が,非多血性結節の多血化リスクを層別化するのに有用との報告もある11)。
解説
以上より,Gd-EOB-DTPA 造影MRI による非多血性結節の検出の意義,予後への寄与についてはいまだ不明確ではある。しかし,非多血性結節の検出はGd-EOB-DTPA 造影MRI で優れる傾向にあり,慢性肝疾患患者の肝内肝細胞性病変のマッピングにGd-EOB-DTPA 造影MRI は推奨される。注意すべきは,Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で低信号を示す非多血性結節には,その後多血化する早期肝細胞癌や異形成結節だけでなく進行肝細胞癌も含まれていることである。Gd-EOB-DTPA 造影MRI を施行することは推奨されるが,Gd-EOB-DTPA 造影MRI でも診断がつかない場合もあり,他モダリティや組織診断を合わせて慎重に鑑別を進める必要がある。
投票結果
◉CQ7a 推奨文「Gd-EOB-DTPA 造影MRI による精査を行うことを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
- 2)CQ7b:
- 慢性肝疾患患者の非多血性病変の診断において定期的な経過観察は推奨されるか?
サイエンティフィックステートメント
非多血化病変が多血化(癌化)する頻度について,Suh らによる前向きあるいは後ろ向き観察研究をまとめたメタアナリシスの結果では,Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で検出した非多血性病変の多血化率は1 年で18%,2 年で25%,3 年で30%であった12)。
多血化の関連因子に関する既報のほとんどは,後ろ向き観察研究である。対象文献で前向きに評価したものは2 篇あり,拡散強調像13),造影超音波検査9)の診断的付加価値の検証が主目的で,前項の通りである。
先述のSuh らのメタアナリシス12)において,多血化に最も強く関連する因子は発見時の大きさ(9~10 mm 以上)であった。
文献ごとにみると,非多血性病変の全体を対象とした検討,背景肝やMRI の信号パターンによりさらに限定して対象とした検討が混在している。リスク上昇因子としては病変の大きさ14-16)のほか,T2 強調像および拡散強調像で高信号を呈すること13,16),肝細胞癌の既往14,17),T1 強調像で高信号を呈すること17)などが,またリスク低下因子としてはGd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で高信号を呈すること15)が報告されている。このうち3 篇の概要を以下に示す。
肝細胞相で高信号を呈する633 個の非多血性病変を対象とした検討15)では既報よりも多血化の頻度は低く1 年で患者ベース4%(95%CI:1.74~9.55%),病変ベース0.4%(95%CI:0.20~0.95%)であった。多変量解析すると唯一の多血化関連因子は初発時の病変の大きさ(連続値)であった。10 mm で分けると未多血化期間に有意差があり(p=0.0022),1 年間の累積多血化率は10 mm 未満の病変0.10%(95%CI:0.02~0.57%),10 mm 以上の病変は1.31%(95%CI:0.56~3.07%)であった。
T2 強調像で高信号を呈さない60 例114 個の非多血性病変を対象とした後ろ向きの検討14)では,肝細胞癌に転化したのは21 例27 病変(観察期間中央値503 日,203~1,521 日),肝細胞癌に転化しなかったのは47 例87 病変(観察期間中央値949 日,103~2,541 日)であった。T1 強調像で高信号(ハザード比:2.693,95%CI:1.157~6.264,p=0.021),肝細胞癌の既往歴(ハザード比:2.64,p=0.021),が多血化と関連していた。
T2 強調像で高信号を呈さず,Gd-EOB-DTPA 造影MRI 肝細胞相で低信号を呈する97 例222 個の非多血性病変を対象としたYang らの後ろ向き検討17)では,多変量解析にて初発時の肝細胞癌の既往歴(ハザード比:3.493,95%CI:1.335~9.138,p=0.011),T1 強調像で高信号(ハザード比:2.778,95%CI:1.172~6.589,p=0.020),拡散強調像で高信号(ハザード比:19.917,95%CI:7.050~56.271,p<0.001)が有意に多血化と関連していた。またROC 解析にて増大率(体積倍加時間の逆数)のカットオフ値は0.72×10-3/日であった。
補足的情報として,非多血性病変を有する患者の予後や肝臓内の他部位の肝細胞癌発生リスクに関する報告が散見される。対象文献では以下がある。
Gyoda ら7)の肝切除例を対象とした後ろ向き検討では,非多血性病変の52.2%は初回肝切除後3 年目に古典的肝細胞癌に進展していた。また,非多血性結節と異なる部位の古典的肝細胞癌ならびに非多血性結節の1 年後,3 年後の累積発生率は非多血性結節あり群36 例(古典的肝細胞癌は各32.8%と67.1%;非多血性結節は14.3%と27.5%),なし群75 例(同じく古典的肝細胞癌は19.9%と43.4%;非多血性結節は4.8%と18.1%)で有意差がなかった(古典的肝細胞癌はp=0.097;非多血性結節はp=0.280)。このことより,肝切除時に主腫瘍と一緒に非多血性病変も切除すべきかどうかは不明と結論している。次に,HCV 陽性患者の非多血性病変について12,18,24カ月後の累積多血化率はDAA 治療あり(各11.8%,24.2%,25.2%)・なし(9.1%,15.2%,24.9%)で有意差はなかった(p=0.617)18)。比較的進行した症例が対象のため選択バイアスが懸念される。
解説
非多血性病変への対応方針について,肝生検について述べた総説によると19),CT,MRI などで典型的な造影効果を示さない肝病変に対して2011 年の米国肝臓病学会(AASLD)のガイドラインなどは生検を勧めていたが20,21),侵襲性やサンプリングエラーの可能性を考慮し,近年のガイドラインにおいて生検の適用は縮小傾向にある。2017 年のAASLD ガイドライン22)では,肝硬変症例において典型的な造影効果を示さない1~2 cm 大の結節が肝細胞癌である可能性は低いものの,2 つめの画像検査を行うか経過観察を行う必要があるとしている。
経過観察にどの程度の期間,また検査間隔が必要か検討するため,今回の対象文献における観察期間を集計した。Suh らのメタアナリシスで対象となった16 篇の中央値は186~886 日,その他の原著論文について非多血性病変の観察期間の代表値(中央値:7 篇,平均値:3 篇)は167~997 日である。上述のT2 強調像で高信号を呈さない非多血性病変の検討17)は対象を平均997 日(137 日~1,804 日)経過観察したものである。著者のYang らは,3 年間で多血化した病変は3 個のみで,いずれも多血化の関連因子を有していたことから,それらの因子がない病変は3 年間観察すれば癌化のリスクは低いと考察した。
非多血性病変を経過観察するための画像検査の至適間隔についてエビデンスはなくAASLD のガイドライン20)にも記載がない。本ガイドラインの第4 版では3 カ月後ごとに超音波または造影CT/MRI で経過観察することとされていた。
以上をまとめると,非多血性病変の3 年間累積多血化率は30%であるため放置すべきではないと考えられる。ただし,非多血性病変に対する生検と治療の是非について明確なエビデンスはない。近年の専門家の意見によると,初発時に生検を行うことは,その侵襲性と得られる利益のバランスを考慮すると望ましくなく,2 つめの造影検査を加えるか画像検査による経過観察を行うこととされている。第4 版を踏襲すれば3 カ月後ごとに超音波または造影CT/MRI で経過観察することになるが,多血化を捉えるという観点ではCT/MRI が有利であり,施設の事情が許すならばGd-EOB-DTPA 造影MRI が望ましいだろう。
投票結果
◉CQ7b 推奨文「Gd-EOB-DTPA造影 MRI(またはdynamic CT)を用いた経過観察を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ8
- 腎機能および肝機能低下患者における肝腫瘍の診断には,どの検査法が有用か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 1. 腎機能低下患者における造影CT や造影MRI は,eGFR が30~60 mL/min/1.73 m2 ではGd-EOB-DTPA 造影MRI, 30 mL/min/1.73 m2 未満ではSPIO 造影MRI,透析患者ではSPIO 造影MRI やdynamic CT の施行を考慮する。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 2. 腎機能が低下し造影CT や造影MRI が施行できない患者において,拡散強調像を含めた非造影MRI やペルフルブタンマイクロバブル造影を含めた超音波は,安全に施行でき,有用である。
背景
腎機能低下患者においてヨード造影剤やGd 造影剤は使用が制限され,肝機能低下患者において肝特異性造影剤の増強効果が低下するため,腎機能や肝機能が低下した患者においては検査の制限や診断能の低下が懸念される。今回,これらの患者に対する肝腫瘍の診断に有用な検査について検討した。
サイエンティフィックステートメント
第4 版のCQ9 を基に本CQ は作成された。今回の改訂に際し,2016 年7 月1 日から2020 年1 月30 日に発表された肝細胞癌の画像診断に関する文献のうち腎機能障害もしくは肝機能障害患者について述べているもの,または肝腎障害があっても施行可能な検査について述べられているものを検索し735 篇が抽出された。そのなかから「腎機能または肝機能障害を前提とした診断が主眼の文献,または肝腎障害があっても施行可能な検査についての診断能を数値まで算出しているものを選択する」という方針の下に一次選択で13 篇,二次選択でそのなかから5 篇を新たに採用した。第4 版で採用されていた14 篇と合わせて計19 篇を採用した。
拡散強調像は造影MRI を凌駕することはできないものの,一定の有用性が示されている1-6)。また拡散強調像を含めた非造影MRI による肝細胞癌のスクリーニングプロトコルについても有用とする報告がなされている7-9)。
超音波用造影剤であるペルフルブタンマイクロバブルや肝特異性MRI 造影剤であるSPIO は,腎機能に影響を与えず,腎機能低下による副作用増加も知られていない(各添付文書参照)。また,ペルフルブタンマイクロバブルによる造影超音波検査が非造影超音波に比較して肝細胞癌の早期発見と確定診断に有用であることが示されている10)。
透析患者におけるGd-EOB-DTPA のクリアランスは有意に低下するうえに,肝実質の増強効果も低下する11)ため,投与は勧められない。腎機能低下患者においてdynamic CT やdynamic MRI の施行を考慮する際,適切な造影剤や検査法の選択を推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate;eGFR)に応じて検討した研究は不十分である。
肝機能低下患者におけるGd-EOB-DTPA 造影MRI は,一定の有用性が示されている12)ものの,肝細胞相における増強効果が低下し13-16),肝機能が悪いほど診断能が低下する12,17)。肝機能低下患者ではSPIO のいわゆるKupffer 相の増強効果も低下し18),造影超音波の解釈も難しくなる19)。肝機能低下患者では,拡散強調像による肝細胞癌診断能も低下する12)。Child-Pugh 分類C に相当するような肝機能低下患者における,検査や造影剤の適切な選択に関する研究は不十分であり,暫定的な推奨も困難である。
解説
腎機能低下患者にヨード造影剤やGd 造影剤がもたらすリスクの各論は本ガイドラインの目的から外れるので,他のガイドラインを引用するにとどめる。eGFR が60 mL/min/1.73 m2 未満の腎機能低下患者においてはヨード造影剤投与による造影剤腎症のリスクが上昇する〔「Contrast Media Safety Guidelines 10.0」(https://www.esur.org/esur-guidelines-on-contrast-agents/)〕。糖尿病・脱水・うっ血性心不全・痛風・70 歳以上・NSAIDs 服用中などの危険因子が加わると,リスクがさらに高まると考えられている。
腎機能低下患者においては,Gd 造影剤による腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis;NSF)発症リスクが上昇する〔「腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン」(http://www.radiology.jp/content/files/649.pdf)〕。このため,透析患者,eGFR が30 mL/min/1.73 m2 未満の慢性腎臓病,急性腎不全の患者では,原則として細胞外液性Gd 造影剤およびGd-EOB-DTPA を投与しない。利益とリスクを検討したうえで,やむを得ずGd 造影剤を使用しなければならない場合には,NSF 発症報告の多いガドジアミド水和物やガドペンテト酸ジメグルミンを避ける。
腎機能低下患者において,肝臓精査目的のdynamic CT ないしdynamic MRI の施行を考慮する際,適切な造影剤や検査法の選択をeGFR に応じて検討した研究は不十分である。このため,本ガイドラインにおける推奨は暫定的なものにとどまる。eGFR が30~60 mL/min/1.73 m2 では,NSF 発症リスクがあまり高くないことを勘案して,診断能の高いGd-EOB-DTPA 造影MRI を推奨する。eGFR が30 mL/min/1.73 m2 未満ではNSF 発症リスクが高まるので,Gd-EOB-DTPA 造影MRI とSPIO 造影MRI のいずれを推奨すべきか判断が難しいが,前述の日本医学放射線学会/日本腎臓学会からのガイドラインでGd 造影剤投与については慎重に検討することとの記載があることや,Gd-EOB-DTPA の添付文書に「本剤の投与を避け」との記載があること,頻回投与の可能性が高いことを勘案し,SPIO 造影MRI を推奨する。透析患者では,Gd 造影剤を避け,SPIO 造影MRI ないしdynamic CT を施設の事情で選択することを推奨する。
造影超音波は腎機能不良の場合でも安全に施行可能であり有用な検査であるが,検査者依存の要素があり,病変位置によっては観察困難になることもある。またSPIO 造影MRI についても施設の事情により施行困難な場合もあると考えられるため,dynamic CT やdynamic MRI が施行できない場合は個別の事情によって非造影MRI を含めて施行可能な検査から選択して施行することを推奨する。
肝機能低下患者においてGd-EOB-DTPA 造影MRI は一定の有用性が示されているが,肝細胞相における経時的な肝実質増強効果の上昇が観察されにくく,Child-Pugh 分類C 相当やインドシアニングリーン(ICG)-R15 が高値の場合はその傾向が強いと報告されている14,16)。
投票結果
◉推奨文1「腎機能低下患者における造影CTや造影MRIは,eGFRが30~60 mL/min/1.73 m2 ではGd-EOB-DTPA 造影MRI, 30 mL/min/1.73 m2 未満ではSPIO 造影MRI,透析患者ではSPIO 造影MRI やdynamic CT の施行を考慮する」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
◉推奨文2「腎機能が低下し造影CT や造影MRIが施行できない患者において,拡散強調像を含めた非造影MRI やペルフルブタンマイクロバブル造影を含めた超音波は,安全に施行でき,有用である」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ9
- 肝細胞癌の病期診断に頭部MRI,胸部CT,骨シンチグラフィー,FDG-PET は必要か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
-
- 1. 肝外転移の危険因子を有する肝細胞癌患者に対して胸部CT,FDG-PET を施行することを推奨する。
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
-
- 2. 骨シンチグラフィーの施行はFDG-PET が施行できない状況であれば考慮してもよい。
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
-
- 3. 神経学的所見や肺転移のある肝細胞癌患者に対して,脳転移検索目的に頭部CT またはMRI を考慮してもよい。
背景
肝細胞癌に対する局所的な治療の適応において,肝外転移の有無は重要である。肝外転移の危険因子を有する肝細胞癌患者について,頻度の高い転移先を肝内病変の治療の前に検索することは有用と考えられる。本CQ ではどのような患者にどのような方法で肝外転移を検索することが有用か検討する。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ10 と同じCQ である。今回の改訂では,肝細胞癌の転移またはステージングの画像診断に関する文献を2000 年1 月1 日から2020 年1 月30 日までの範囲で検索し,365 篇が抽出された。そのなかから「肝細胞癌治療前の遠隔転移の診断能について論じられている文献」を選択する方針の下に一次選択で16 篇,二次選択で4 篇を採用した。第4 版で採用されている21 篇と合わせて計25 篇を採用した。
肝細胞癌の肝外転移の頻度は初発時点で1.0~2.3%と低いと考えられているが1,2),無症状の肝外転移が15.4%に認められるとした海外からの報告もある3)。治療後の経過観察中に肝外転移が出現する頻度は21~24%と報告されている4,5)。転移先別の頻度は,肺が6~29%,リンパ節が5~20%,骨が2~10%,副腎が1~10%,脳が0.2~0.6%である2,5-7)。肝外転移の危険因子として,肝内病変の進行,門脈腫瘍栓,PIVKA-II≧300 mAU/mL,AFP>100 ng/mL,血小板数≦130×103/μL,食道静脈瘤のないこと,ウイルス肝炎,が報告されている6,8,9)。
5 cm 以下単発や3 cm 以下・3 個以下の肝細胞癌について,転移検索目的に胸部CT や骨シンチグラフィーを施行しても新たな転移がみつかることは稀で,むしろ偽陽性による損失が問題となる10-12)。後ろ向き研究ではあるが,CT による肺転移検出の陽性予測値は5.0%であり,無症候性の早期肝細胞癌でAFP が正常範囲の患者では肺転移や骨転移の検索を省略可能であるとの報告もある13)。
肝細胞癌の骨転移は一般に溶骨性で,転移先のおよそ半数は椎体である1)。肝細胞癌骨転移の全身検索には,骨シンチグラフィー14)およびFDG-PET15-19)が有用である。肝細胞癌骨転移は骨シンチグラフィーでは偽陰性率が比較的高く12,20),骨転移検索に関してはFDG-PET が骨シンチグラフィーに対して感度,特異度とも優れている17,18)。
肺転移の検出に関しては胸部CT がFDG-PET よりも検出率が高いと報告されている18)。
FDG-PET は,その他の肝外転移の全身検索にも有用である21)が,脳転移の感度は低い15,16)。FDG-PET による肝細胞癌の病期診断では9.8%に肝外転移が発見されたと報告されている22)。再発肝細胞癌に対するFDG-PET による肝外転移検索で感度76.6%,特異度98.0%としたメタアナリシスが報告されている23)。
また,FDG-PET による肝内病変へのFDG 集積は肝細胞癌の独立した予後予測因子であるとの報告もある24)。
肝細胞癌の脳転移は頻度が低い2,5,6,25)うえに,ほとんどの脳転移は肺転移を合併する1)。
解説
肺転移の検索方法としては,胸部CT が標準的に用いられている。腹部dynamic CT に加えて胸部CT を施行すれば,肝内病変の評価に加えて頻度の高い肝外転移のほとんどをカバーすることができる。
肝細胞癌骨転移の全身検索において骨シンチグラフィーは有用だが,肝細胞癌骨転移はときに低集積となる欠点も知られている。FDG-PET は肝細胞癌骨転移の診断において骨シンチグラフィーよりも優れていることが示され,さらにPET/CT のCT 情報による骨折や圧迫骨折の情報も評価可能である。また,骨転移以外の肝外転移の検出も可能であるためFDG-PET が施行可能な状況であれば骨シンチグラフィーよりも優先されると考えられる。FDG-PET は骨転移を含めた肝細胞癌肝外転移の診断能に優れており,腹部病変や肺転移だけでは説明のつかない腫瘍マーカー上昇をみた場合に積極的に施行することは妥当であろう。
ただし,FDG-PET は高額な撮像機器および半減期の短い放射性核種を必要とするため現状では施行可能な施設が限られており,FDG-PET の施行が難しい場合には骨シンチグラフィーが代替検査として考慮される。
以上より,肝細胞癌の病期診断において胸部CT,骨シンチグラフィー,FDG-PET は有用であると考えられるため,肝外転移を検索する必要がある場合にはこれらの検査が有用であると考えられる。ただし大規模なRCT やメタアナリシスによるエビデンスの構築が十分ではないものの肝外転移の有病率自体が低く,画像診断による転移の陽性的中率も高くないとする報告もあるため13),新規肝細胞癌症例に対する肝外転移検索はAFP や血管浸潤,多発病変,有症状例など危険因子のない症例においては省略してもよいと考えられる。
また,脳転移検索の有用性に関するエビデンスも乏しい状況であるが,有症状の場合や肺など他臓器転移の状況からリスクの高い症例については脳転移検索が通常行われているという本邦の実情がある。
以上により改訂委員会では,肝外転移検索において胸部CT,FDG-PET,頭部CT/MRI,FDG-PET が利用できない場合の骨シンチグラフィーの施行においていずれも投票による賛成多数で弱く推奨することに決定した。
投票結果
◉推奨文1「肝外転移の危険因子を有する肝細胞癌患者に対して胸部CT,FDG-PET を施行することを推奨する」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
◉推奨文2「骨シンチグラフィーの施行はFDG-PET が施行できない状況であれば考慮してもよい」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
◉推奨文3「神経学的所見や肺転移のある肝細胞癌患者に対して,脳転移検索目的に頭部CT またはMRI を考慮してもよい」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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第2 章 治療アルゴリズム
- はじめに
本ガイドラインで最も多く引用され,臨床的に汎用されてきたのが「治療アルゴリズム」である。2005 年版(初版)で肝障害度,腫瘍数,腫瘍径の3 因子を基に設定され,最新のエビデンスを採用し治療方法が決められてきた。幕内雅敏初代班長の統括の下,治療法は最大2 個までの方針が示され,本邦における肝癌治療の実情に即したものが採択された。初版の基となったエビデンスはわずか3 篇(Arii らの肝切除と経皮的局所療法,Llovet らの経肝動脈塞栓療法,Mazzaferro らの肝移植)の論文であったが,版を重ねるごとにエビデンスが追加された。
過去には,本ガイドラインにおいて作成された「治療アルゴリズム」の他,本邦の専門家の意見を基に内科的治療の実情をより反映して作成された「コンセンサスに基づく治療アルゴリズム」が2007 年に日本肝臓学会編『肝癌診療マニュアル』に掲載され,そのアルゴリズムは2015 年の『肝癌診療マニュアル』第3 版まで改訂されてきた。本ガイドラインの前版である2017 年版(第4 版)における最大の変更点は,本ガイドラインのエビデンスに基づく「治療アルゴリズム」と「コンセンサスに基づく治療アルゴリズム」を一本化し,またアルゴリズムの各治療推奨の基礎となるCQ が設定されたことである。また,エビデンスの質と推奨の強さを評価するための国際的な基準であるGRADE システムの考え方・方式を取り入れ,改訂委員会の議論内容が本文に反映された。
アルゴリズムの内容では,2009 年版(第2 版)で脈管侵襲,肝外転移がある場合の治療方法が付記され,2013 年版(第3 版)で治療に優先順位が加えられた。第4 版より,肝外転移,脈管侵襲の有無がアルゴリズムの治療選択の因子として追加され,また肝移植の適応としてミラノ基準内と記載された。また,本ガイドラインにおいて重要なエビデンスは随時追加されるという原則に則り,2020 年に刊行された2017 年版補訂版(第4 版補訂版)において,肝細胞癌に対する肝移植の適応基準に5-5-500 基準が追加された。
今回の改訂では,アルゴリズム作成の原則は第4 版に準じて論文ベースのエビデンス,実臨床で得られたコンセンサスにGRADE システムを取り入れ,CQ10~15 の推奨文が決定された。各CQ の推奨文を基に,初版からの原則に従って第二選択までの推奨治療がアルゴリズムに記載された。エビデンスとなる文献は,第4 版の検索期間に続く形で,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに発表された論文について検索され,検索対象期間の後に発表された論文も,重要なエビデンスは適宜ハンドサーチで追加された。
2021 年版(第5 版)治療アルゴリズムは肝予備能,肝外転移,脈管侵襲,腫瘍数,腫瘍径の5 因子に基づいて推奨治療が選択されている。本治療アルゴリズムが多くの臨床家に使用され,新しい重要なエビデンスを適宜取り入れながら,さらにより良い形に発展していくことが望まれる。
肝細胞癌治療アルゴリズムの解説
肝細胞癌の治療に関するアルゴリズムを,肝予備能・肝外転移・脈管侵襲・腫瘍数・腫瘍径の5因子を基に設定した。肝予備能評価はChild-Pugh 分類に基づいて行い,肝切除を考慮する場合はインドシアニングリーン(ICG)検査を含む肝障害度を用いる。肝外転移,脈管侵襲,腫瘍数,腫瘍径は治療前画像診断に基づいて判定する。
Child-Pugh 分類A またはB の症例においては,肝外転移および脈管侵襲を認めない場合は以下の①~③に示す治療が推奨される。①腫瘍数1~3 個,腫瘍径3 cm 以内ならば肝切除または焼灼療法が選択される。(CQ10 参照)。②腫瘍数1~3 個で腫瘍径が3 cm 超ならば第一選択として肝切除,第二選択として塞栓療法が推奨される(CQ10,11 参照)。③腫瘍数が4 個以上ならば第一選択として塞栓療法,第二選択として肝動注化学療法または薬物療法が推奨される(CQ12 参照)。
次に,Child-Pugh 分類A で肝外転移がある場合は薬物療法が推奨される(CQ14 参照)。肝外転移がなく脈管侵襲を伴う場合,切除可能であれば肝切除が,切除不能であれば薬物療法が選択される。また,肝切除と薬物療法に引き続き,塞栓療法,肝動注化学療法も推奨されるが,第二選択までを記載する治療アルゴリズムの原則に則って,今回はアルゴリズムには記載されないこととなった(CQ15 参照)。
Child-Pugh 分類C の症例においては,ミラノ基準内(腫瘍数が3 個以下で腫瘍径が3 cm 以内および腫瘍が1 個ならば腫瘍径が5 cm 以内)あるいは5-5-500 基準内〔遠隔転移や脈管侵襲なし,腫瘍径5 cm 以内かつ腫瘍数5 個以内かつアルファフェトプロテイン(AFP)500 ng/mL 以下〕で,患者年齢が65 歳以下ならば肝移植が推奨される(CQ13 参照)。一方,Child-Pugh 分類C で移植不能ならば緩和ケアが推奨される。なお,移植不能とは腫瘍条件や肝機能条件が不適当なだけではなく,適切なドナーが得られず移植が実施できない場合も含める。
- CQ10
- 単発肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 腫瘍径3 cm 以内では,肝切除または焼灼療法を推奨する。3 cm 超では第一選択として肝切除を推奨する。
背景
単発肝細胞癌に対する推奨治療について,これまでのエビデンスを基にどのような治療法が有効であるか検討した。
サイエンティフィックステートメント
第4 版の検索後の2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日の間に発表された肝細胞癌に関する報告において,肝切除,焼灼療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE),放射線治療,腫瘍数,腫瘍径,予後をキーワードとして論文1,149 篇を抽出,49 篇を一次選択して内容を検討した。肝細胞癌の治療に関する報告は非常に多いため,ランダム化比較試験(RCT)やメタアナリシスなどエビデンスレベルの高い論文を中心に多施設共同研究やそれぞれの治療において重要な意味をもつ論文も加えて選択し,10 篇を二次選択として採用した。
また,第4 版で採用された10 篇のうち,4 篇を非採用とし,情報が更新されたものを1 篇追加,検索ワードで検索されなかった,ないしは2020 年1 月31 日以降の発表であるが重要な報告をハンドサーチで5 篇追加し,計22 篇を採用した。
肝機能が良好で遠隔転移,脈管侵襲を伴っていない肝細胞癌であれば根治治療の適応となる。肝機能不良例は移植または緩和ケアの適応となる。肝機能について,欧米ではChild-Pugh 分類のB,C および門脈圧亢進症を伴った症例では肝切除を除外し1),BCLC ステージングシステムでも肝切除以外の治療を推奨しているが2),本邦のIshizawa らは門脈圧亢進症を伴った肝細胞癌に対しても小領域肝切除術が安全に施行できることを報告している3)。
肝細胞癌の治療において,肝切除とラジオ波焼灼療法(RFA)を比較したRCT はこれまでに8 篇報告されている4-12)。過去の報告は研究デザインや背景因子に問題があり,第4 版まではエビデンスとして採用されなかったが,今回追加された香港のRCT,ならびに本邦のRCT であるSURF 試験において,肝切除とRFA の間で治療後の予後に差がないことが報告された。Ng らはミラノ基準内の肝細胞癌に対して,RFA の肝切除に対する優越性を示す研究デザインでRCT を行い,切除(109 例)とRFA(109 例)の予後を比較した。その結果は,全生存(p=0.531),無再発生存(p=0.072)とも予後に統計学的な有意差を認めず,RFA の切除に対する優越性は示されなかった9)。一方で本邦のIzumi,Kudo らは3 cm 以内3 個以下の肝細胞癌に対し,切除のRFA に対する優越性を示す研究デザインでRCT を行い,切除(150 例)とRFA(152 例)の予後を比較したが,全生存(p=0.838),無再発生存(p=0.793)とも予後に統計学的な有意差を認めず,切除のRFA に対する優越性は示されなかった11,12)。
今回新たに放射線治療についての論文も採用となった。Bush らは陽子線治療(33 例)とTACE(36 例)の予後を比較したRCT の中間解析で陽子線治療とTACE の短期の生存期間に差はないが局所再発や有害事象は低率であることを13),Kim らは陽子線治療(72 例)とRFA(72 例)の予後を比較したRCT を行い陽子線治療のRFA に対する非劣性を報告した14)。また,体幹部定位放射線治療(SBRT)とRFA を,肝機能を因子に含めた傾向スコアマッチングにて比較した報告が2 篇あり,予後に差はなく局所制御率はSBRT が勝ると報告されている15,16)。
解説
肝細胞癌の治療方針を選択するにあたり肝予備能評価はChild-Pugh 分類に基づいて行い,肝切除を考慮する場合はICG 検査を含む肝障害度を用いる。肝機能良好ならば肝切除を推奨している。しかし,本邦と欧米では門脈圧亢進症例(食道静脈瘤の存在または血小板数10 万/μL 以下)に対する治療方針が異なっている。すなわち,欧米のBCLC ステージングシステムでは門脈圧亢進症例の肝切除を避け,移植やRFA を選択するよう推奨している17)。本邦では術前の内視鏡的食道静脈瘤治療や系統的亜区域切除などを組み合わせることで安全に肝切除が施行されている。
肝切除とRFA を比較したRCT が8 編4-12),RCT のメタアナリシスが1 篇採用され18),内容につき検討された。第4 版で検討された過去の報告は,研究デザインや背景因子に問題があり,本邦の実情にそぐわないことからエビデンスとして採用されなかった。今回採用されたYu らのRCT のメタアナリシスの結果では,長期の無再発生存は切除の方が良いと報告されているが,解析された文献の多くが第4 版の検討で採用されなかった論文であり,推奨に反映されなかった18)。2016 年以降の論文で新たに採用となった3 篇のRCT のうち1 篇で,Lee らは無再発生存が切除の方が良いと報告したが,登録症例数が68 例と目標症例数の217 例に遠く及ばず,治療推奨のエビデンスとしては採用されなかった10)。香港のNg らはミラノ基準内の肝細胞癌に対しRFA の3 年無再発生存率における20%の優越性を示す試験デザインでRCT を行い,切除,RFA とも109 例の症例で検討したが,3 年無再発生存率は切除50.9%,RFA 46.6%(p=0.072)と両群に統計学的な有意差を認めなかった9)。また,本邦発の切除とRFAのRCT であるSURF 試験の結果が2019 年にIzumi らによって11),続いて2021 年にKudo らによって12)米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された。SURF 試験は全生存率,無再発生存率いずれもRFA に対する切除の10%の優越性を示すことを研究デザインとして行われたが,3 年無再発生存率は切除49.8%,RFA 47.7%(p=0.793),5 年全生存率は切除74.6%,RFA 70.4%(p=0.838)と有意差を認めず,これらの結果を基に本CQ では切除とRFA は同等に有効であると結論づけられた。一方で肝切除例は全身麻酔を必要とし,入院期間が長く,合併症も多いため,RFA の非侵襲性を考え第一選択をRFA とするべきかどうか議論されたが,あくまでもエビデンスとしては2 つの治療に差がないこと,SURF 試験は本邦からの重要なRCT ではあるが,目標症例数600 例の半数程度にしか達していないことから,第4 版の切除を第一選択,焼灼療法を第二選択とする推奨を覆すまでのエビデンスではないと判断され,切除と焼灼療法は同等に有効であると推奨するに至った。
切除とRFA の比較を含むRCT 以外の論文では,韓国のレジストリー研究においてLee らは単発3~5 cm の肝細胞癌に対し背景をマッチさせて解析を行い,RFA はTACE より予後良好であり切除に匹敵することを報告した19)。またCucchetti らは平均治療効果という手法を用いた観察研究で,切除がRFA やTACE より予後良好な可能性を示唆した。しかし2 cm 以下では切除とRFA の差は少なくなる20)。Takayasu らは日本肝癌研究会の全国原発性肝癌追跡調査報告のデータを後ろ向きに検討し,背景をマッチさせた単発,2 cm 以下の乏血性の肝細胞癌に対する治療において,切除とRFA,エタノール注入療法の間で全生存率に差を認めず,無再発生存率は切除が他2 群より良好であったと報告した21)。いずれの研究もエビデンスレベルにおいてRCT に及ばず,推奨文作成のエビデンスとしては取り入れられなかった。
今回新たに放射線治療についても検討された。放射線治療は外来通院での短期間治療が可能な低侵襲的治療であり,局所療法で穿刺困難な部位の腫瘍や外科治療困難な状態の患者にも適応可能なことが多い。Hara ら15),Kimら16)の背景をマッチさせた報告では,SBRT はRFA と比べ同等の予後と高い局所制御率が報告されている。Shiba らは重粒子(炭素イオン)線治療とTACE の背景をマッチさせた報告で,重粒子線治療の方が生存率,局所制御率ともに優れていたと報告した22)。また,Bush らは陽子線治療(33 例)とTACE(36 例)の予後を比較したRCT を行い,陽子線治療とTACE の短期の生存期間に差がなく,局所再発や有害事象が低率であることを中間解析の結果として報告した13)。また,Kim らは陽子線治療(72 例)とRFA(72 例)の予後を比較したRCT を行い,陽子線治療のRFA に対する非劣性を示した14)。しかし,切除やRFA と比べ他治療と直接比較した高いエビデンスの論文が少ないことから,放射線治療を推奨文に記載するには至らないと判断された。しかし放射線治療は他の局所治療の適応が困難な場合の一つの選択肢となりうる。
投票結果
◉推奨文「腫瘍径3 cm 以内では,肝切除または焼灼療法を推奨する。3 cm 超では第一選択として肝切除を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ11
- 2,3 個肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 腫瘍径3 cm 以内では肝切除または焼灼療法を推奨する。3 cm 超では第一選択として肝切除,第二選択として塞栓療法を推奨する。
背景
2 個および3 個の肝細胞癌に対する推奨治療について,これまでのエビデンスを基にどのような治療法が有効であるか検討した。
サイエンティフィックステートメント
第4 版の検索後の2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日の間に発表された肝細胞癌に関する報告において,CQ10 と同じ肝切除,焼灼療法,TACE,放射線治療,腫瘍数,腫瘍径,予後をキーワードとして論文1,149 篇を抽出,49 篇を一次選択して内容を検討した。RCTやメタアナリシスなどエビデンスの高い論文を中心に多施設共同研究やそれぞれの治療において重要な意味をもつ論文も加えて選択し,5 篇を二次選択として採用した。
また,第4 版で採用された9 篇のうち,2 篇を非採用とし,検索ワードで検索されなかった,ないしは2020 年1 月31 日以降の発表であるが重要な報告をハンドサーチで3 篇追加し,計15 篇を採用した。
CQ10 と同様にChild-Pugh 分類A(および一部B)で脈管侵襲,肝外転移のない症例が根治的治療の対象となる。
腫瘍径10 cm 以上の比較的大きな肝細胞癌に対する肝切除では5 年生存率は20~30%と報告され,腫瘍の大きさによる手術適応の制限はないものと考えられる1-3)。腫瘍数2 個以上の症例に対する肝切除と単発症例に対する肝切除を比較した検討では,単発の長期成績が良好であるが複数個に対する切除禁忌となる要素は認められない4)。
一方で,RFA の治療適応は3 cm 以下,3 個以下とする報告が多い。Murakami らは3 cm 以下,3 個以下あるいは5 cm 以下単発の肝細胞癌患者に対してRFA あるいはTACE で治療された症例について局所再発率はRFA が有意に優れていたと報告している5)。
CQ10 でも検討された2,3 個までを含む肝細胞癌に対する肝切除とRFA を比較したRCT において6-9),一部の論文で結果は異なるものもあるが,背景やデザインに問題のある研究を除くと,肝切除と RFA に差はみられなかった7-9)(CQ10 参照)。これらのRCT のほとんどで,2,3 個肝細胞癌におけるサブグループ解析はなされていなかったが,唯一本邦のSURF 試験において多発腫瘍におけるサブグループ解析が施行されており,3 cm 以内の2,3 個肝細胞癌においては単発同様に,無再発生存期間および全生存期間とも差はないと報告されている8,9)。
Llovet らはChild-Pugh 分類A,B 症例の多発肝細胞癌に対してTACE を用いたRCT を実施し有効性を示している10)。
また,本CQ でも新たに放射線治療についての論文が採用となった。肝切除とRFA の比較と同様に,対象を2,3 個に限った文献や,前向き,後ろ向き比較研究の2,3 個を対象としたサブグループ解析の報告はないが,適応を2 個以内,3 個以内とした陽子線治療とTACE11),陽子線治療とRFA の比較12)で陽子線治療の非劣性ならびに低率な局所再発率が,体幹部定位放射線治療(SBRT)とRFA の比較13,14)で予後に差がなく局所制御率はSBRT が勝ると報告されている(CQ10 参照)。
解説
3 cm 以下の小型肝細胞癌における治療では,複数のRCT で肝切除とRFA の結果に差はないと報告されている。これらのRCT は単発を多く含む報告がほとんどであり,2,3 個肝細胞癌におけるサブグループ解析はなされていなかった。唯一,本邦のSURF 試験において多発腫瘍におけるサブグループ解析が施行され,3 cm 以下の2,3 個肝細胞癌においては単発同様に,無再発生存期間および全生存期間とも差はないと報告されている8,9)。単発も含むRCT の結果の外挿とSURF 試験のサブグループ解析の結果も踏まえ,3 cm 以下の2,3 個肝細胞癌においては肝切除とRFA が同等とされた。RCT 以外の論文においては,Cucchetti らの平均治療効果という手法を用いた観察研究において,切除がRFA やTACE より予後良好な可能性を示したが,2 cm以下の肝細胞癌では切除とRFA の差は少なくなり,2 cm を超える,ないしミラノ基準までの複数腫瘍の場合には切除の予後延長効果は大きくなると報告している。一方で,2 個以上の複数腫瘍ではTACE が行われることが多いが,切除できた場合のTACE に対する予後延長効果は大きくなると報告されている15)。
RFA の治療適応は3 cm 以下,3 個以下とする報告が多い。Murakami らは3 cm 以下,3 個以下あるいは5 cm 以下単発の肝細胞癌患者に対してRFA あるいはTACE で治療された症例について局所再発率はRFA が有意に低率であったと報告している。しかし,2 cm 以下の肝細胞癌に対してはRFA が有意に優れていたが2 cm を超えると差は認めなかった5)。穿刺局所療法はエタノール注入療法が主流であった頃から,適応を3 cm・3 個以下とする論文が大多数であり,また,多くのRFA の電極針の焼灼範囲が直径3 cm 程度とされていることも考慮して,第4 版から引き続き,3 cm 以下,3 個以下をRFA の適応としている(CQ28 参照)。
一方で,3 cm を超える比較的大きな肝細胞癌において,局所コントロールに優れる治療は肝切除であり,有効な治療法として実臨床で長く実践されているため,他治療との直接比較試験はない。切除とRFA を比較したRCT において,適応をミラノ基準の5 cm までとするものもあるが,実際には3 cm を超える症例は少なく,前述のように3 cm を超える肝細胞癌の治療の第一選択は肝切除とされた。
切除困難な症例に対しては,Llovet らのChild-Pugh 分類A,B 症例の多発肝細胞癌に対してTACE を用いたRCT のエビデンスを基に10),TACE が推奨される。
CQ10 でも検討された放射線治療について,2,3 個の肝細胞癌に限った報告はないが,対象として3 個以下まで含む報告であり,放射線治療は他の局所治療の適応が困難な場合の一つの選択肢となりうる(CQ10 参照)。
以上より,現時点で得られるエビデンスを基に,第4 版に引き続き,2,3 個肝細胞癌において,腫瘍径3 cm 以内では肝切除または焼灼療法を,3 cm 超では第一選択として肝切除,第二選択として塞栓療法を推奨することとなった。本CQ の推奨において,複数のRCT ならびにメタアナリシスが存在することから,エビデンスレベルは高いと判断された。
投票結果
◉推奨文「腫瘍径3 cm 以内では肝切除または焼灼療法を推奨する。3 cm 超では第一選択として肝切除,第二選択として塞栓療法を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
参考文献
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- CQ12
- 4 個以上肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 第一選択として塞栓療法を推奨する。第二選択として肝動注化学療法または全身薬物療法を推奨する。
背景
いくつかのアルゴリズムで多発肝細胞癌に対する推奨治療が示されており,本ガイドライン第4 版発行後に新たな知見も散見される。これまでのエビデンスを基にどのような治療法が有効であるか検討した。
サイエンティフィックステートメント
第4 版のCQ13 の内容を引き継ぎ,本CQ は作成された。2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに発表された論文について検索し,後ろ向き研究であれば多施設共同研究以上,それ以外は前向き試験以上に限る,既存のアルゴリズムで推奨されている治療との比較に限る,という条件の下に多発肝細胞癌に対する治療成績を含む654 篇のなかから22 篇を一次選択し,二次選択でBCLC Stage B が解析ないしサブグループ解析されている2 篇を採用,第4 版で採用された5 篇と合わせて計7 篇を採用した。
BCLC Stage B は大きさを問わず4 個以上あるいは3 cm 以上の複数個の肝細胞癌で脈管侵襲や遠隔転移がないものと定義される。したがって厳密に言えば4 個未満であっても3 cm 以上の大きな肝細胞癌はBCLC Stage B に入ってきてしまうことには留意しなければならない。また,4 個以上の肝細胞癌ではあるが,脈管侵襲を伴うもの,肝外転移を伴うものはそれぞれCQ15,CQ14 が担当するものとし,本CQ では脈管侵襲を伴わず,肝外転移を伴わない肝内限局多発肝細胞癌(4 個以上)の治療法を検討した。
腫瘍数と肝切除後の成績を検討した報告では,複数個切除で長期成績は低下するが,肝予備能と切除範囲を適切に判断することで安全に肝切除を施行できる1)。しかし,腫瘍数に基づく切除限界に関する厳格なエビデンスは見当たらず,一般的に局所治療で推奨されている3 個以下を肝切除適応としている。したがって4 個以上の場合は肝切除,RFA 以外の治療法が推奨される。第4 版で記載のあった通り,Llovet ら2),Takayasu ら3),Nouso ら4)の報告およびSHARP 試験の結果5)からTACE,肝動注化学療法,ソラフェニブがそれぞれ対症療法あるいは未治療群と比較して,有効性が示されている。本CQ に即した4 個以上肝細胞癌の症例に限定して厳密にこれらの治療法を比較した研究は見当たらなかった。
Kudo らは切除不能肝細胞癌におけるソラフェニブのTACE 上乗せ効果を検討する目的で多施設共同試験を行った6)。切除不能肝細胞癌156 例をランダムにTACE+ソラフェニブ群(80 例),TACE 単独群(76 例)に割り付け,無増悪期間,全生存期間を比較した。この検討ではTACE+ソラフェニブ群において有意に長い無増悪期間を示すことが明らかになったが,BCLC Stage B に限定したサブグループ解析〔TACE+ソラフェニブ群(44 例),TACE 単独群(34 例)〕においてもハザード比は0.45〔95%信頼区間(CI):0.26~0.78〕であり,ソラフェニブ上乗せ効果があったことを示している。
解説
多発肝細胞癌に対して肝切除,化学療法併用肝切除,TACE などが有効という報告は散見されるがいずれも少数のケースレポートであったり対照群の設定が不明確であったりする。腫瘍数に基づいた治療限界に関するエビデンスレベルの高い報告はいまだ見当たらない。今回の改訂ではBCLC Stage B が解析ないしサブグループ解析されている1 篇の論文を新たに採用した。BCLC Stage B は4 個以上あるいは3 cm 以上複数の肝細胞癌で脈管侵襲や遠隔転移がないものと定義される。したがって4 個未満であっても3 cm 以上の大きな肝細胞癌はBCLC Stage B に含まれるため,必ずしもCQ と一致していないことには留意する必要がある。
なお,一般的に肝切除やRFA では3 個以下が妥当な治療限界と認識されているが,2018 年にHyun らは,BCLC Stage B あるいはC の肝細胞癌担癌患者における肝切除の有用性についてTACE と比較した18 篇の論文のメタアナリシスを行い,TACE と比べて肝切除が5 年生存率において優れていることを示した7)。しかしBCLC Stage B の多くが4 個未満の肝細胞癌を対象としているため,この論文をもって4 個以上の肝細胞癌に対して肝切除が妥当とは結論づけられない。
したがって,第4 版に引き続き,多数症例を層別化した比較試験により腫瘍数が4個以上ならばTACE/肝動脈塞栓療法(TAE)を第一選択とするのが妥当と考えられる。また,TACE/TAE 不応の症例では全身薬物療法や局所薬物療法としての肝動注化学療法を採用するのが適当である。TACE/TAE と分子標的治療薬併用の有用性については今後さらなるエビデンスの追加が待たれる。
以上から,4 個以上肝細胞癌に対しては第一選択としてTACE/TAE を推奨し,第二選択として肝動注化学療法または全身薬物療法を推奨した。いずれの治療法も臨床的に汎用され十分なコンセンサスが得られており強い推奨とした。一方,肝外転移を有する場合や門脈腫瘍栓を有する場合には,これらの治療法は妥当とはいえず,他のCQ を参照されたい。
投票結果
◉推奨文「第一選択として塞栓療法を推奨する。第二選択として肝動注化学療法または全身薬物療法を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ13
- 肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌は,ミラノ基準内あるいは5-5-500 基準内*であれば肝移植を推奨する。
*遠隔転移や脈管侵襲なし,腫瘍径5 cm 以内かつ腫瘍数5 個以内かつAFP 500 ng/mL 以下
背景
肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝硬変は,予後不良の末期肝臓病であり,各種治療への忍容性も低い。このため,肝細胞癌合併のいかんによらず,肝移植のみが予後に貢献できる治療とされている。しかし,実際の臨床現場では,近年著しく進歩した低侵襲な治療が,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対して行われている場合も少なくない。そのため,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対して推奨できる治療について検討した。
サイエンティフィックステートメント
2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに報告された肝障害度C(Child-Pugh 分類C)または末期肝硬変に合併した肝細胞癌の治療成績を含む論文580 篇のなかから1 篇を一次選択し,最終的にこの論文が二次選択でも採用された。第4 版補訂版に採用されていた5 篇にこの論文を加え,計6 篇を採用した。
Mazzaferro らはミラノ基準内(脈管侵襲と肝外転移なし,単発では腫瘍径5 cm 以下,多発では腫瘍数3 個以下で腫瘍径が3 cm 以下)の肝細胞癌を対象に肝移植を行い,Child-Pugh 分類C 15 例の移植後生存率が1 年:93%,3 年:93%,4 年:80%,また無再発生存率が1 年:93%,3 年:86%,4 年:86%と,Child-Pugh 分類A/B の移植成績と同等であったことを報告している1)。また,本邦の多施設での肝細胞癌に対する生体肝移植施行例をまとめた報告では,Child-Pugh 分類C 156 例の移植後生存率が1 年:75.1%,3 年:68.7%,再発率が1 年:9.9%,3 年:16.1%であり,Child-Pugh 分類A/B と同等の成績が示されている2)。一方,ミラノ基準内の肝細胞癌に対する経皮的エタノール注入(PEI)と肝移植の成績を多施設共同で後ろ向きに調査した報告では,Child-Pugh 分類C では,平均生存期間が肝移植群95.3 カ月に対してPEI 群31.5 カ月,無再発期間が肝移植群139.0 カ月に対してPEI 群34.8 カ月であり,PEI に比べて肝移植の成績が優れていた3)。また,塞栓療法に関する443 例の肝細胞癌に対する後ろ向きの検討では,Child-Pugh 分類C では塞栓療法後6 週以内の死亡および緊急肝移植のリスクがChild-Pugh 分類A の5.4 倍,不可逆的な肝障害が出現するリスクが59 倍であったと報告されている4)。また,本邦の肝細胞癌に対する生体肝移植症例の検討において,遠隔転移や脈管侵襲を認めない腫瘍径5 cm 以内かつ腫瘍数5 個以内かつAFP 500 ng/mL 以下(5-5-500 基準)の症例においてミラノ基準と同等の低い再発率,高い生存率を保ちながら適応となる患者を最大数にできることが2019 年に報告された5)。
解説
肝細胞癌に対する肝移植は,腫瘍進行度がミラノ基準内であれば良好な予後が期待できる。欧米での肝細胞癌に対する移植は,背景肝の状態を問わないため,代償期肝硬変の患者が一定数含まれた報告である。しかし,非代償性肝硬変に合併した肝細胞癌に対する本邦の移植成績も欧米からの報告と同様に良好であり,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌は,ミラノ基準内であれば肝移植が推奨されると結論した。なお,肝移植は限られた数のドナー肝を用いるため社会的・倫理的側面からレシピエントには適応年齢の上限が設けられることが一般的であり,本邦の脳死肝移植では65歳を上限としている。
肝移植の適応に関して,バイオマーカーを加えるべきかどうかの議論がなされてきたが,日本肝移植研究会(現日本肝移植学会)による本邦の肝細胞癌に対する生体肝移植965 例の検討において,腫瘍径を5 cm に固定,腫瘍数とAFP,PIVKA-II を変動させ,ミラノ基準1)で達成された5 年再発率10%未満,5 年生存率70%以上を担保しつつ組み入れ患者が最大になる基準が検討され,5-5-500 基準(遠隔転移や脈管侵襲なし,腫瘍径5 cm 以内かつ腫瘍数5 個以内かつAFP 500 ng/mL 以下)が生体肝移植の拡大適応として提唱された5)(CQ26 参照)。
その他の既存の治療については,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対して安全に行いうるかどうか,また予後に貢献できるかどうかが問題となる。肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対する肝切除は,まとまった報告がなく,一般に適応外として取り扱われていると考えられる。穿刺局所療法のなかでPEI に関しては,治療後短期の生存曲線は肝移植を若干上回るものの,最終的な予後は肝移植と比較して不良であった。この結果からは,短期的な治療安全性は問題ないものの,長期的な治療効果には乏しいと判断した。近年,穿刺局所療法の主体となっている焼灼療法に関するまとまった報告は,今回の検索範囲では認められなかった。塞栓療法の長期生存に関する報告はなかったが,今回検索した論文の結果から,肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に対する施行は合併症のリスクが高いと判断した。分子標的治療薬に関する報告は限られたものしか認められなかった。
以上から,肝移植以外の治療を肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の肝細胞癌に推奨するだけの根拠は得られなかった。また,本邦の全国原発性肝癌追跡調査報告に登録されたChild-Pugh 分類C 肝細胞癌を用いた後ろ向きコホート研究で,緩和ケアと比較して穿刺局所療法あるいはTACEを行った群の生存率が良いことが,コホート全体および傾向スコアでマッチさせたChild-Pugh スコア12 点以下のコホートで報告された6)。このように,無治療と比較して,肝移植以外の何らかの治療を行った場合に予後改善効果を認めたとする報告もあり,これらを根拠に肝障害度C(Child-Pugh 分類C)において,肝移植以外の治療選択肢をガイドラインとして示すべきという意見もあった。改訂委員会内で慎重に検討したところ,治療による合併症の頻度や治療関連死など安全性に関するデータが十分示されていないため,移植以外の積極的な治療を推奨するまでには至らないと判断した。肝障害度C(Child-Pugh 分類C)の移植以外の治療については,症例と治療方法を慎重に選択する必要がある。
投票結果
◉推奨文「肝障害度C(Child-Pugh分類 C)の肝細胞癌は,ミラノ基準内あるいは5-5-500 基準内であれば肝移植を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
参考文献
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- CQ14
- 肝細胞癌の肝外転移に対し,推奨できる治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対しては薬物療法を推奨する。
背景
肝外転移を伴う肝細胞癌は一般には肝内病変も進行していることが多い。このような進行肝細胞癌に対する治療方針はCQ38 で検討されているが,肝内病変が制御可能かつ肝外転移に局所治療を検討しうるような状況もしばしば認められる。本CQ では主にこのような場合における局所治療を念頭に肝外転移(肺転移,副腎転移,リンパ節転移,播種)に対する有効な治療方針を検討した。
サイエンティフィックステートメント
第4 版での検索に加えて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日の間に発表された肝細胞癌の肝外転移,肺転移,リンパ節転移,副腎転移,播種についての英文論文のうち,治療に関するもので,放射線治療ないしinterventional radiology(IVR),化学療法,切除,塞栓療法,TACE,RFA,凍結融解療法,high-intensity focused ultrasound(HIFU)を主題とする論文111 篇を抽出,そのうち症例報告ならびに症例数5 例以下の論文,システマティックレビューではないレビューを除く12篇を一次選択し内容を検討した。二次選択として,肺転移,リンパ節転移,播種の切除に関する論文については症例数30 例以上,副腎転移については比較的症例数が少ないため20 例以上のものを選択したうえで,ガイドラインで扱うのに十分なデータであるかを検討し,肝外病変を有する進行肝細胞癌に対する全身薬物療法に関する文献,ならびに肝外病変の治療が明確に述べられていない文献を除き,5 篇を採用した。さらに薬物療法の第III相試験の結果を報告した7 篇をハンドサーチにて採用し,今回12 篇を採用した。第4 版までの採用論文17 篇と合わせて最終的に29 篇を採用した。
肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対する標準治療は,CQ38 で検討されている薬物療法であり,現時点で肝細胞癌の一次薬物療法としてアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法,ソラフェニブ,レンバチニブが,ソラフェニブ後の二次薬物療法としてレゴラフェニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブのエビデンスが報告されている。これらの報告の症例選択基準には肝外転移を含んでおり,サブグループ解析では肝外転移を有するサブグループにも薬物療法の効果の一貫性が示されている1-7)。本CQ は第4 版のCQ15-2 を踏襲し肝外転移に対する局所治療に焦点を当てて検討した。
肝外転移のなかで肺転移の報告が最も多く10篇報告されており,いずれも後ろ向き研究で1 篇のRFA の報告以外は肺病変の外科切除の報告であった8-18)。肝移植後の肺転移治療を除くと,切除後の5 年生存率は27.5~66.9%と報告されている8-12,14-18)。肝切除後の肺転移に対する切除群と非切除群を傾向スコアでマッチングした各群7 例を比較し,切除群の予後が良好であったと報告されている17)。肝移植後の肺転移切除も報告されており,切除後の2 年生存率30.6%と悪いが,非切除は2 年生存率0%であり,切除で長期予後が得られる可能性が述べられている13)。また,肺切除と異なり一般的な治療ではないが,32 例の肝細胞癌肺転移患者にRFA を施行し生存期間中央値37.7 カ月,気胸などの合併症率25%との報告もあった14)。
副腎転移の治療に関しては少数だが肝内病変がコントロールされていれば切除の方が他治療より予後良好であるとの報告19),肝移植後の再発も含めた異時性の副腎転移26 例に対して副腎摘出を行い,長期予後を得る可能性があるとの報告がある20)。
リンパ節転移に関しては,非切除と比べ切除が21),ないしは肝内病変のみに対してTACE を行った群に比べリンパ節転移に対してもTACE を行った群の方が予後良好である22)と報告されている。日本肝癌研究会の全国原発性肝癌追跡調査報告における112 例のリンパ節転移切除症例では,5 年生存率が29.5%であったと報告されている23)。CT ガイド下RFA 治療群と非治療群46 例ずつを比較し,6 カ月,1 年生存率がRFA 群でより高かったと報告されている24)。
播種の治療については,2 篇の論文が採用され,肝機能が保たれている場合には播種切除が非切除と比べ予後が良好であること25),播種切除後39%の5 年生存率が得られ,肝内病変がないもしくは良好にコントロールされている場合は播種切除の意義があると報告されている26)。
その他の局所治療としては,多発肺転移および副腎・リンパ節転移に対する強度変調放射線治療の一つであるhelical tomotherapy の緩和治療効果が報告されている27)。
これらの肝外転移の局所治療の報告には,肝内病変のコントロールが重要であることを述べた報告が多く10,19,26),また肝外転移を有する肝細胞癌342 例の報告でも,予後を規定するのはperformance status(PS)と肝内病変の脈管侵襲であるとされている28)。肝外病変を切除した85 例の検討では全生存期間が27.2 カ月と長期生存がみられ,多変量解析で3 個以上の切除が予後不良であったと報告されている29)。
解説
本CQ は,肝細胞癌の肝外病変の治療に焦点を当てて文献を検討したが,この分野においては対象が非常に限られてしまうため,肝外病変だけを対象としたRCT やメタアナリシスはなく,検索・検討できたのは後ろ向き研究の結果のみであり,エビデンスレベルの高い論文はない。近年,進行肝細胞癌に対する薬物療法の生存期間延長効果のエビデンスが多く集積されており,これらの生存期間延長効果を示した報告での肝外転移を有する症例のサブグループ解析では生存期間延長効果の一貫性が示されている。このことから肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対して薬物療法を推奨した。
第4 版では,肝内病変が良好にコントロールされている場合に限り,肝細胞癌肝外転移(肺転移,副腎転移,リンパ節転移,播種)治療の一つの選択肢として,複数の後ろ向き研究の結果を基に,「肝内病変がない,もしくは良好にコントロールされている場合には,肺転移,副腎転移,リンパ節転移,播種病変に対して局所療法(切除を含む)が選択されることがある」と弱く推奨した。第4 版の発刊以降,薬物療法としてソラフェニブ,レゴラフェニブに加えて,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法,レンバチニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブによる薬物療法のエビデンスが新たに加わり,複数の薬物療法が選択可能となっている。一方,肝外病変に対する局所治療については前述のように後ろ向きの検討のみで高いエビデンスレベルではない。これらから今回肝外病変に対する局所治療に関しては推奨として記載しないことについて改訂委員会で議論された。第4 版の推奨が有効な薬物療法があまりなかった時期の推奨であること,肝外病変に対するRFA などは本邦で行われていないこと,癌腫によらず局所のみが問題となる場合は局所治療を行うことが一般的な治療となっていることなどの意見があり,削除するかどうかについて投票を行い,過半数の同意を得て,最終的に記載しないことになった。
今回,推奨には肝外病変に対する局所治療を記載しないことになったが,肝外病変に対する切除を含む局所治療を否定するものではなく,サイエンティフィックステートメントに記載があるように後ろ向き研究ではあるが,肝外病変に対する局所治療の有効性の報告がある。
投票結果
◉推奨文「肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対しては薬物療法を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ15
- 脈管侵襲陽性肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 1.切除可能例では肝切除を推奨する。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 2.切除不能例では全身薬物療法を推奨する。
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 3.肝切除,全身薬物療法が適応とならない場合には肝動注化学療法,塞栓療法を考慮する。
背景
第4 版より新たに設定したCQ であり,脈管侵襲陽性肝細胞癌,特に頻度の高い門脈腫瘍栓症例を中心に有効な治療法を検討した。
サイエンティフィックステートメント
第4 版では,1982 年1 月から2016 年6 月までに報告された論文のなかから門脈腫瘍栓,外科切除,化学療法,治療アルゴリズム,treatment allocation をキーワードとして検索し,脈管侵襲陽性肝細胞癌に対する治療に関する論文を12 篇採用した。今回,第4 版に準じた検索式にて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに報告された論文を87 篇抽出し,一次選択にて26 篇を選択した。二次選択でこれらのなかから結果が明確でないもの,症例数の少ないものを除外し,本邦の医療の実状に即するもの3 篇を新たに採用した。検索式にて検索されなかったが他CQ で採用された当該治療に関するものをハンドサーチとして10 篇加え,最終的に13 篇を新たに採用,第4 版の12 篇と合わせて計25 篇を採用した。
肝切除,全身薬物療法,肝動注化学療法,TACE,放射線治療による脈管侵襲陽性症例に対する治療成績を順に示す。
門脈腫瘍栓症例に対する肝切除の5 年生存率は10~38%と報告され,外科治療により一定の延命効果が得られている1,2)。日本肝癌研究会の全国原発性肝癌追跡調査報告のデータを用いた門脈腫瘍栓症例の肝切除群(2,093 例)と他治療群(4,381 例)を後ろ向きに解析し,背景を傾向スコアでマッチさせた1,058 例での比較検討3)では,肝切除群はChild-Pugh 分類A で有意に予後良好であり,腫瘍栓が門脈一次分枝に限局していれば肝切除は効果的であると報告している。肝切除にドキソルビシンを用いた肝灌流療法を組み合わせた治療も試みられている4)が,その効果は限定的であった。また肝静脈腫瘍栓合併肝細胞癌についても,日本肝癌研究会の全国原発性肝癌追跡調査報告のデータを用いた大規模コホート研究の結果5)が公表された。Child-Pugh 分類A の肝機能で下大静脈腫瘍栓合併例を除く肝静脈腫瘍栓合併肝細胞癌1,021 例で,切除群(540 例)と他治療群(481 例)の生存期間を比較すると,中央値で4.47 年/1.58 年と切除群が有意に良好で,背景を傾向スコアでマッチさせた解析でも有意差がみられた。
分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬による全身薬物療法の第III 相試験の治療成績は,脈管侵襲陽性に対するサブグループ解析として主に報告されている。一次治療薬であるソラフェニブのSHARP 試験のサブグループ解析6)によると,脈管侵襲陽性例においてソラフェニブ群(108 例)とプラセボ群(123 例)の比較にて,ソラフェニブ群で3.2 カ月の予後延長効果(ハザード比:0.68,95%CI:0.49~0.93)が示されている。アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の第III 相試験(IMbrave150試験)のサブグループ解析7)では,ソラフェニブ群と比較し,併用療法群で予後延長効果(ハザード比:0.53,95%CI:0.37~0.76)が示された。一方,レンバチニブの第III 相試験(REFLECT 試験)のサブグループ解析8)ではソラフェニブ群と比較し,レンバチニブの生存期間のハザード比は0.908(95%CI:0.783~1.054)にとどまった。二次治療薬であるレゴラフェニブの第III 相試験(RESORCE 試験)における脈管侵襲陽性例のサブグループ解析9)では,レゴラフェニブ群における生存期間のハザード比は0.67(95%CI:0.46~0.98)と良好であった。一方,ラムシルマブ10),カボザンチニブ11)の第III 相試験におけるサブグループ解析では,予後延長効果を示すには至らなかった。
肝動注化学療法の門脈腫瘍栓症例に対する検討では,背景を傾向スコアでマッチさせた後ろ向きの検討12)にて,5-FU とシスプラチンを用いた肝動注化学療法は対症療法と比較して予後延長効果(生存期間中央値:肝動注化学療法群7.9 カ月,対症療法群3.1 カ月)があることを報告している。5-FU とシスプラチンを用いた肝動注化学療法におけるインターフェロンαの併用13)に関してはまだ評価が定まっていない。脈管侵襲陽性症例に対する肝動注化学療法(110 例)とソラフェニブ(39 例)の治療成績を後ろ向きに検討した報告14)では,TACE 不応に至っていない症例では肝動注化学療法群の生存期間中央値は13.4 カ月と,ソラフェニブ群の6.0 カ月より有意に予後が良好であった。2020 年以降に発表された本邦の1,000 例を超える2 つの後ろ向き多施設研究15,16)では,背景を傾向スコアでマッチさせた肝外病変のない脈管侵襲陽性症例を伴うコホートにおいて,肝動注化学療法群の全生存期間は10.1~15.0 カ月と,ソラフェニブ群の7.9~9.1 カ月と比較し予後が有意に良好であった。またソラフェニブへの肝動注化学療法の上乗せ効果を検討した第III 相試験17)では,ソラフェニブ単独治療群と比較し,FOLFOX による肝動注化学療法併用群は,ソラフェニブ単独群と比較し予後延長効果(生存期間中央値:肝動注化学療法併用群13.37 カ月,単独群7.13 カ月,ハザード比:0.35(95%CI:0.26~0.48,p<0.001)を示した。
TACE では,脈管侵襲陽性症例に対するTACE(84 例)と対症療法(80 例)の前向き試験(非ランダム化)による長期成績比較18)にて,1 年生存率は30.9% vs. 9.2%とTACE の有効性が報告されている。
放射線治療による門脈腫瘍栓症例への治療成績は,3 次元原体照射(3D-CRT),体幹部定位放射線治療(SBRT),選択内部放射線療法(SIRT)の治療法を比較した37 篇2,513 例のメタアナリシス19)がある。3D-CRT,SBRT,SIRT の治療間で生存期間に有意差はなかったが,SBRT の奏功率が有意に高かったと報告している。90Yttrium を用いたSIRT とソラフェニブを比較した第III 相試験20)では,脈管侵襲陽性症例に対するSIRT 149 例とソラフェニブ128 例のサブグループ解析にて両治療の生存期間に有意差は認めなかった(ハザード比:1.19,95%CI:0.92~1.54,p=0.49)。SIRT とソラフェニブを比較した6 篇のメタアナリシス21)の結果でも,門脈腫瘍栓症例に対する両治療の生存期間に有意差はみられなかった(ハザード比:1.00,95%CI:0.83~1.19,p=0.96)が,脈管侵襲陽性症例(門脈腫瘍栓 and/or 肝静脈腫瘍栓)を対象としたRCT22)において,通常分割照射+TACE 群でソラフェニブ群と比較して治療後12 週間時点での無増悪生存率(86.7% vs. 34.3%,p<0.001),治療後24 週間時点での奏効率(33.2% vs. 2.2%,p<0.001),生存期間中央値(55.0 週vs. 43.0 週,p=0.04)がそれぞれ有意に良好であったとの報告もある。
解説
進行肝細胞癌では門脈内へ進展しやすく門脈腫瘍栓は最も重要な予後規定因子である。術前画像診断可能な門脈腫瘍栓は一般にVp2,Vp3,Vp4 であり,そのような肝細胞癌に対する効果的治療法に関するエビデンスレベルの高い報告は乏しく,少数の経験から試験的治療まで多岐にわたり散見される。すなわち肝機能,腫瘍条件,脈管侵襲の程度に応じて,個別に治療戦略が立てられているのが現状である。すべての治療法を総合的に比較検討した研究はない。したがって,現在報告されている治療法のなかから,対症療法やソラフェニブなどを対照として比較検討されたエビデンスレベルの高い治療法で,本邦で施行されている治療法を採用するのが妥当と考えられる。
推奨で示した4 つの治療法は脈管侵襲の進行度によっては禁忌といえる場合もある。たとえば推奨する治療選択の一つに挙げてはいるが,Vp3,Vp4 に対する塞栓療法は肝梗塞や肝膿瘍のリスクがあり,慎重に行うべきである。Vp2 に限局した単発肝癌は良い手術適応であり,Vp3 でも比較的肝機能が保たれていて(Child-Pugh 分類A),肉眼的に切除可能であれば,良好な成績が報告されており,肝切除を第一に考慮してもよい場合がある。多発例で広範囲に脈管侵襲が存在するなど,切除の適応外となる場合は肝動注化学療法や全身薬物療法も考慮される。全身薬物療法は優れた試験デザインでの検討が複数報告されており,肝切除適応外の脈管侵襲陽性症例の治療法として推奨できる。肝動注化学療法は後ろ向きの検討が主体であるが,傾向スコアでマッチさせた大規模コホート研究にて対症療法12)やソラフェニブ15,16)と比較し予後が良好であることが示された。
一方,海外を中心に90Yttrium を用いた放射線治療の有効性23),3D-CRT による延命効果24),90Yttrium による塞栓療法の有効性25)など放射線治療に関する報告も増えてきた。90Yttrium を用いた治療は本邦で施行できないという現実的な問題があり,またソラフェニブに対する優越性を証明できなかったことから,SIRT をVp 陽性の治療として推奨するエビデンスは乏しいと判断した。3D-CRT やSBRT は本邦でも使用可能であり,脈管侵襲陽性症例に対する治療の選択肢となりうるが,放射線治療以外の治療法と比較したエビデンスは乏しい。TACE と放射線治療との併用がソラフェニブより予後が良好とするエビデンス22)が新たに示されたが,この試験で行われたTACE はシスプラチンの肝動注化学療法が主体であり,本邦の実臨床であまり行われていないプロトコールであった。以上より放射線治療を本CQ の推奨治療として新たに採用するか検討したが,今回は新たに含めないとの意見が過半数となったため,解説に記載するにとどめ,現在進行中のRCT の結果を待つことにした。
今回の推奨決定会議では本CQ の推奨に関して多数の意見が出され,他のCQ に比して長時間を割き,徹底的に議論がなされた。第4 版の推奨では「塞栓療法,肝切除,肝動注化学療法または分子標的治療薬が推奨される。(強い推奨)」とすべての治療法を並記していたが,今回の改訂では各治療法の推奨を評価することになった。サイエンティフィックステートメントで記載したエビデンスを踏まえ,投票が行われた。
投票結果
◉推奨文1「切除可能例では肝切除を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「切除不能例では全身薬物療法を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文3「肝切除,全身薬物療法が適応とならない場合には肝動注化学療法,塞栓療法を考慮する」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
***
なお,脈管侵襲とは門脈腫瘍栓のことを意味することが多く,肝静脈腫瘍栓や胆管腫瘍栓に限定した治療成績に関するまとまった報告は極めて限定的であった。肝静脈腫瘍栓合併肝細胞癌については,門脈腫瘍栓同様,比較的肝機能が保たれ,かつ肉眼的に切除可能であれば肝切除の適応を考慮してよい。他治療において十分なエビデンスを有する報告はなく,肝静脈腫瘍栓に特化した推奨には今回の改訂でも至らなかった。
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第3 章 予防
- はじめに
肝細胞癌は正常肝にみられることは少なく,慢性肝疾患を背景として発生することが多い。本邦では2015 年以降,C 型肝炎ウイルス(HCV)による新規発生肝細胞癌は50%以下に減少し,非B 非C 型(非ウイルス性)の肝細胞癌が30~40%まで増加している。発癌メカニズムとして肝炎ウイルスによる発癌では免疫を介した炎症の持続,それらに関連した遺伝子変異や細胞内シグナル伝達の変化,さらにB 型肝炎ウイルス(HBV)ではウイルスそのものの関与も示唆されている。非B 非C 型肝細胞癌ではTNF-α,IL-6 などの炎症性サイトカイン,インスリン抵抗性や抗インスリン血症に関連したシグナル伝達系の活性化が発癌に関与することが想定されている。
肝炎ウイルスによる発癌に対する介入方法としては抗ウイルス療法が挙げられ,近年最も進歩が著しいのはHCV に対する抗ウイルス療法である。8~12 週間の直接型抗ウイルス薬(DAA)の内服によって,ほぼすべての感染者で持続的ウイルス陰性化(SVR)が得られる。SVR は肝発癌のみならず慢性C型肝疾患患者の全生存における重要な因子であることが多くの研究で証明されている。
HBV 感染に関して,核酸アナログ製剤治療群と無治療群の比較では核酸アナログ製剤治療群の有意な発癌抑制効果が示されているが,薬剤ごとの発癌抑制効果については明確なエビデンスはなく,今後の長期観察例での検討が期待される。また免疫寛容期のB 型肝炎患者において発癌抑制や全生存期間延長を目的とした核酸アナログ製剤投与を強く推奨するエビデンスはない。今後B 型肝炎ウイルス表面抗原(HBs 抗原)陰性化を達成しうる薬剤が登場することにより,HBV に対する発癌抑制を目的とした抗ウイルス療法の新時代の到来が期待されている。
最も介入方法の同定が困難な非B 非C 型肝細胞癌については,肝発癌が死亡の代替指標となるような集団を同定することが求められる。一方で実際の検討では,ウイルス性肝疾患も含めた検討も多く,CQ18 では2017 年版(第4 版)と同様にウイルス性・非ウイルス性を問わない,抗ウイルス療法以外の慢性肝疾患からの肝発癌予防という視点で考察した。介入方法としては薬剤・食事・生活習慣などのさまざまな方法の検討を行い,特定の対象における研究については推奨に含めず解説に記載した。
HCV-SVR 後の肝発癌については,高齢・男性・肝線維化進展あり・血小板低値・アルブミン低値などの危険因子が既にエビデンスレベルの高い複数の研究で証明されており,リスクに応じた定期的なサーベイランスをSVR 獲得後も継続することが重要である。
- CQ16
- B 型慢性肝疾患からの肝発癌予防として推奨できる治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- HBV-DNA 陽性B 型慢性肝炎・肝硬変の肝発癌予防に核酸アナログ製剤を推奨する。
背景
B 型慢性肝疾患に対する核酸アナログ製剤投与やインターフェロン投与は,HBV の増殖を抑制し,肝の炎症を沈静化させる。抗ウイルス療法が肝発癌予防として推奨される治療かを検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ17 を基に作成された。第4 版と同様の検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,267 篇が抽出された。「発癌をエンドポイントとしたランダム化比較試験(RCT)もしくは対照群を伴う非ランダム化比較試験を採用する」という方針の下に,一次選択で46 篇,二次選択で25 篇が採用された。第4 版にて採用された17 篇と合わせ計42 篇を採用した。
B 型慢性肝炎・肝硬変に対する核酸アナログ製剤投与は,1 つのメタアナリシスにおいて78%発癌リスクを減少させ〔リスク比:0.22,95%信頼区間(CI):0.10~0.50〕1),また後ろ向きコホート研究では,核酸アナログ製剤(ラミブジン,エンテカビル,テノホビル)を内服することでB 型肝炎患者は対照群に比べ累積発癌率が低下した2-13)。なお,テノホビルに関する文献はすべてテノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)のエビデンスであり,テノホビルアラフェナミド(TAF)による報告は今回の検索範囲には認めなかった。
現在,本邦で第一選択とされている核酸アナログ製剤はエンテカビル,テノホビルであり,Yokosuka らの報告14)ではエンテカビルの3 年間での耐性ウイルス出現は3.3%,96 週時点でHBV-DNA 抑制(HBV-DNA<400 copies/mL)は83%と,ウイルス増殖抑制に有効である。
核酸アナログ製剤投与による肝発癌抑制効果を示したRCT は,現在までにラミブジンを使用したもの1 篇のみが報告されている15)。メタアナリシスについてもラミブジンについての1 篇のみであり,第4 版に引き続き採用した1)。ただし,ラミブジンは現在本邦では耐性の問題から第一選択とはなっていない。エンテカビルはWong らによる1,870 例の後ろ向きコホート研究5)において肝硬変例に限って発癌を抑制した(リスク比:0.55,95%CI:0.31~0.99)と報告され,2021 年版(第5 版)の検索範囲でも1,818 例の肝硬変例を対象とした研究で発癌抑制効果を示した(ハザード比:0.40,95%CI:0.28~0.57)11)。これに対しHosaka らは傾向スコアマッチング研究において核酸アナログ製剤による肝硬変に限定されない発癌抑制効果が得られた(ハザード比:0.37,95%CI:0.09~0.55,p=0.03)としている3)。テノホビルは,B 型肝硬変無治療291 例とテノホビル内服797 例との比較で有意に発癌を抑制し(調整ハザード比:0.46,95%CI:0.29~0.75,p<0.01)13),別の傾向スコアマッチング研究においても肝硬変・慢性肝炎それぞれの群において有意に発癌率を低下させた12)。日本肝臓学会のB 型肝炎治療ガイドラインでは①組織学的進展度,②ALT 値,③HBV-DNA 量を核酸アナログ製剤投与基準としており,必ずしもすべての対象に発癌予防のみを目的として核酸アナログ製剤が投与されるとは限らないが,発癌抑制の観点からも上記基準に沿った核酸アナログ製剤投与が推奨される。
また,免疫寛容期のB 型肝炎患者について核酸アナログ製剤が発癌を抑制するかどうかという点からの論文も複数報告されている。免疫寛容期への核酸アナログ製剤投与を肯定する報告として,ALT<40 の免疫寛容期においても核酸アナログ製剤投与が発癌を抑制するという報告16)や,ALT 正常の免疫寛容期の患者はウイルスが核酸アナログ製剤で持続的に抑制されているB 型慢性肝炎患者よりも発癌率が高い(10 年:12.7% vs. 6.1%;p=0.00117),5 年:2.7% vs. 1.1%;p<0.00118))といった報告がある。一方で,ウイルス抑制状態の活動性肝炎と免疫寛容期のB 型肝炎は発癌リスクに差がない19),核酸アナログ製剤投与例の方が免疫寛容期の患者と比して発癌率が高い(ハザード比:3.44,95%CI:1.82~6.52,p<0.017)20)という報告があり,これらの研究からは免疫寛容期への核酸アナログ製剤投与は否定される。いずれも後ろ向き研究のため,現時点では免疫寛容期のB 型肝炎に対する核酸アナログ製剤投与を推奨する強いエビデンスはないといえる。
核酸アナログ製剤の薬剤ごとによる発癌抑制効果の比較では,エンテカビルとラミブジンの間に有意差なしとする後ろ向きコホート研究21-23)があり,今回の検索範囲では1 篇のRCT において,エンテカビルとその他の核酸アナログ製剤(アデフォビル,ラミブジン,エムトリシタビン)を比較し発癌リスクに有意差は認めなかったと報告された24)。しかし,この報告はcross over や核酸アナログ製剤2 剤併用も含んでいることに注意が必要である。エンテカビルとテノホビルの比較では,メタアナリシス1篇25)および4 篇の後ろ向きコホート研究26-29)でテノホビル群がエンテカビル群と比較して発癌率が低率であったと報告された一方で,5 篇の後ろ向きコホート研究30-34)ではテノホビル群とエンテカビル群の発癌率は同等であった。
核酸アナログ製剤投与は上記の通り発癌予防に有効であるが,投与例においても少なからず肝発癌がみられ,肝細胞癌サーベイランスは核酸アナログ製剤投与例においても重要である。核酸アナログ製剤投与患者における発癌リスクとしてHBs 抗原陰性化35,36),アドヒアランスが良好であること37)が発癌低リスクとなる要因として報告されている。
解説
インターフェロンについては4 つのメタアナリシスが報告されており,インターフェロン群が核酸アナログ製剤群と比較して発癌率が有意に低下するとするマッチング研究が抽出されたものの38),普遍的な発癌抑制効果は認められていないため推奨には含めなかった。Miyake らは,B 型慢性肝炎におけるインターフェロンは発癌抑制効果を認める(リスク差:-5.0%,95%CI:-9.4~-0.5%,p=0.028)がインターフェロンによる治療効果は人種やHBe 抗原の状態により異なり,特にアジア人のHBe 抗原陽性B 型慢性肝炎で発癌抑制効果が高いことを報告した39)。Sung ら(リスク比:0.66,95%CI:0.48~0.89)1),Yang ら(リスク比:0.59,95%CI:0.43~0.81)40)のメタアナリシスにおいてもインターフェロンは有意に発癌を抑制することが報告されている。今回の検索範囲ではペグインターフェロンとエンテカビルの発癌抑制効果に有意差はなかったとする前向きコホート研究41),インターフェロンがエンテカビルと比較して有意に発癌を抑制したという後ろ向きコホート研究42)が報告された。インターフェロンについては,肝硬変例は対象とならない点,発癌抑制効果のエビデンスがいまだ十分とはいえない点に留意する必要がある。
B 型慢性肝炎の抗ウイルス療法は第4 版から引き続き核酸アナログ製剤投与による発癌抑制のエビデンスが積み重ねられており,長期投与例のアドヒアランスやHBs 抗原レスポンス別の発癌リスクなどエビデンスが蓄積しつつある。
投票結果
◉推奨文「HBV-DNA陽性B 型慢性肝炎・肝硬変の肝発癌予防に核酸アナログ製剤を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ17
- C 型慢性肝疾患からの肝発癌予防として推奨できる治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- C 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変患者の肝発癌予防にHCV 排除を目的とした抗ウイルス療法を推奨する。
背景
C 型慢性肝炎・肝硬変は,本邦における肝細胞癌の最大の高危険群である。抗ウイルス療法によるHCV 排除がC 型慢性肝疾患からの肝発癌を減少させるかを検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ18 を基に作成された。2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,462 篇が抽出された。「発癌または生存をエンドポイントとした検討を採用する」という方針の下に,一次選択で26 篇,二次選択で15 篇が採用された。現在,C 型肝疾患に対する治療は,インターフェロン(IFN)フリーのDAA が日本および海外のガイドラインにおいて推奨されている。二次選択で採用された論文のうちIFN-based 治療は4 篇,IFN-based またはDAA 治療が5 篇,DAA 治療は6 篇であった。第4 版にて採用された14 篇と合わせ,計29 篇を採用した。
インターフェロン療法は,C 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変からの発癌リスクを減少させる。3 つのメタアナリシスにおいてC 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変に対するインターフェロン療法は,有意に発癌リスクを減少させた1-3)。抗ウイルス療法後にウイルス陰性化が得られたSVR 例と非SVR 例を比較した報告では,いずれもSVR 例において有意に発癌率が低下することが報告されている4-18)。Darvishian ら18)は46,666 例を対象としたコホート研究において,肝発癌のリスクはウイルス自然消失群(spontaneously cleared HCV)と比べ,IFN 治療不成功群ではハザード比14.52(95%CI:9.83~21.47),非治療群ではハザード比5.85(95%CI:4.07~8.41),IFN 治療後ウイルス陰性持続群(SVR)ではハザード比2.49(95%CI:1.52~4.06)であると報告した。
DAA 治療は,C 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変からの発癌リスクを減少させる。Carrat ら19)は9,895 例(DAA 治療7,344 例・非治療2,551 例)を対象とした多施設共同前向き研究で年齢・性別・肝線維化進展などを調整した最終結果としてDAA 治療は発癌(ハザード比:0.66,95%CI:0.46~0.93)およびすべての原因による死亡(ハザード比:0.48,95%CI:0.33~0.70)のリスクを有意に低下させたと報告した。Singer ら20)はDAA 治療を施行した30,183 例をIFN 治療12,948 例および非治療137,502 例と比較し,年齢・性別・肝線維化進展などの因子を調整するとDAA 治療群は非治療群およびIFN 治療群に比して有意に発癌リスクが低下したことを示した(調整ハザード比:0.84,95%CI:0.73~0.96 および調整ハザード比:0.69,95%CI:0.59~0.81)。その他3 篇21-23)でもDAA 治療でSVR が得られた症例での発癌率低下が示された。Cheung ら24)はDAA 治療が施行された非代償性C 型肝硬変406 例を非治療261 例と前向きに比較し,6 カ月後の発癌率はDAA 治療群・非治療群でともに4.2%であり差は認められなかったことを報告した。
IFN-based またはDAA 治療を施行した症例を検討した5 篇において,Li ら25)はIFN 治療3,534 例・DAA 治療5,834 例を非治療8,468 例と比較し,治療群においてDAA 治療はIFN 治療と比較し発癌率は同等であり(ハザード比:1.07,95%CI:0.55~2.08),また治療群(DAA およびIFN)は非治療群と比較して有意に肝発癌率が低値であったことを報告した。国内の研究ではNagata ら26)がIFN-based 治療1,145 例・DAA 治療752 例について発癌率はDAA 治療とIFN-based 治療で有意差を認めないことを示した。Toyoda ら27)はSVR を達成したDAA 治療1,086 例とIFN 治療1,533 例を比較し,発癌率はDAA-SVR 群で6.23%,IFN-SVR 群で3.01%であり,抗ウイルス療法前の年齢・血小板数・AFP・肝線維化進展(F3-4)から算出される肝癌リスクスコアの低値例は有意にIFN-SVR 群に多いことを報告した(84.1% vs. 55.6% p<0.0001)。その他2 篇28,29)でも抗ウイルス療法(DAA およびIFN)を施行しSVR を得ることにより発癌率が低下すること,SVR とは独立して肝線維化進展・年齢・アルブミン値・血小板数などが発癌と関連することが示された。
解説
第4 版と同様に「HCV 排除を目的とした抗ウイルス療法」について強い推奨とした。第4 版ではDAA 治療の肝発癌抑制効果について,十分なエビデンスはないと記載されているが,その後の大規模なコホート研究でDAA 治療によるHCV 排除がC 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変患者の肝発癌を予防することが示された。一方DAA 治療では90%以上の症例でSVR が得られるものの,DAA 治療例はIFN-based 治療と比べ高齢・肝線維化進展例が多く,SVR 後の発癌について十分に注意することが必要である。今回採用された論文の多くで抗ウイルス療法開始時に高齢・男性・肝線維化進展あり(F3 およびF4)・血小板低下・アルブミン低下などの因子がある場合はSVR が得られた後も定期的に肝癌スクリーニング検査を継続することが推奨されている。またDAA 治療ではSVR を得ることが重要であり,DAA 治療不成功例ではより慎重な肝癌スクリーニングおよびSVR を目指した再治療の検討が必要である。なお非代償性C 型肝硬変患者についてはDAA 治療が発癌を抑制するというエビデンスは現時点ではない。
投票結果
◉推奨文「C 型慢性肝炎・代償性C 型肝硬変患者の肝発癌予防にHCV 排除を目的とした抗ウイルス療法を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ18
- ウイルス性・非ウイルス性を問わず慢性肝疾患からの肝発癌予防法として推奨できるのは何か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
- コーヒー摂取は,肝発癌リスクを減少させる可能性がある。
背景
本CQ は第4 版のCQ19 を基に作成された。近年,非B 非C 型肝疾患からの発癌が増加しており,これら非ウイルス肝炎に対する肝発癌予防法にも注目が集まっている。しかし実際の検討では,ウイルス性肝疾患も含めた検討も多く,本CQ では「ウイルス性・非ウイルス性」を問わない肝発癌予防として有効な方法を検討した。
サイエンティフィックステートメント
「肝発癌予防」をキーワードに2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までの間に報告された文献を検索し,246 篇が抽出された。一次選択で18 篇を選択し,二次選択にて13 篇を採用した。第4 版で採用された10 篇と合わせて,計23 篇を採用した。
コーヒー摂取に関する横断研究では,1 日あたり600 mL 以上のコーヒー摂取例において肝発癌リスクが低下している(リスク比:0.25,95%CI:0.011~0.62)ことが報告されている1)。さらに今回採用した2 篇のメタアナリシスにおいてもコーヒー摂取による肝発癌リスク低下が示唆されている2,3)。これらのメタアナリシスにおいて肝発癌リスク比は,Bravi らの報告でコーヒー1 日1 杯0.85(95%CI:0.81~0.90),Kennedy らの報告で1 日2 杯0.65(95%CI:0.59~0.72)とされている。
大規模疫学調査研究において,多価不飽和脂肪酸の摂取は用量依存的に肝発癌リスクを低減することが報告された4)。この報告では,高用量摂取群から低用量摂取群まで5 群に分けた比較を行い,最低用量9.6 g/日に比較して最高用量70.6 g/日であり,多価不飽和脂肪酸は用量依存性に肝発癌リスクと関連した〔最も高用量群のハザード比:0.64(95%CI:0.42~0.96),最も低用量群を1,p=0.03〕。なお,この報告ではエイコサペンタエン酸(EPA)摂取量で5 群に分けても同様〔最も高用量群のハザード比:0.56(95%CI:0.36~0.85)〕であると報告しており,多価不飽和脂肪酸のうちEPA の優位性を示している。しかし,HBV・HCV 感染で調整を行った後は同様の傾向は得られたものの有意差はなかった。類似の食習慣に関する報告として,欧州から地中海食と肝発癌の関連が報告されており,地中海食のスコアが高いほど発癌リスクが低下することが示された5)。
解説
コーヒー摂取については肝細胞癌に限定しない発癌率の減少を論じた疫学研究が複数報告されており,コーヒー摂取に関する肝発癌リスクについての横断研究とメタアナリシスを採用した。
その他の肝発癌予防法として,糖尿病例に対するメトホルミン6-10)・脂質異常症に対するスタチン11-14)の有用性が報告されている。このうち5 篇は台湾のナショナルデータベースを用いた疫学研究であった。メトホルミン・スタチンいずれの報告も,肝発癌リスクを低減するとの結果であり,メタアナリシスにおいても同様の結果が報告されている15,16)。糖尿病症例や脂質異常症を有する症例に限定されるが,これらの投薬治療が肝発癌リスクを低下させる可能性がある。また,Kawaguchi らは分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)内服群と非内服群の前向き比較試験を行った17)。BCAA 内服群と非内服群にはアルブミン・アンモニア・総分岐鎖アミノ酸/チロシンモル比(BTR)・Child-Pugh スコア・フェリチンに有意差があったものの,共変量による調整後の多変量解析で,BCAA 内服は肝発癌(リスク比:0.45,95%CI:0.24~0.88,p=0.019),全死亡(リスク比:0.009,95%CI:0.0002~0.365,p=0.015)に有意に関与していた(Fine and Gray analysis)と結論づけている。今回,運動についてのコホート研究を1 篇採用した。これによると,10 歳代から中等度以上の運動を継続すると肝発癌リスクが低下することが示唆されているが,運動を行う年代によっては効果がみられず,今のところその効果は限定的と考えられる18)。アスピリンに関しては複数の報告があり,肝発癌リスクの低下が示唆されている19-21)。また,三環系抗うつ薬22),アンギオテンシン変換酵素阻害薬・受容体拮抗薬23)についても報告があるが,肝発癌リスクの低下効果は示されていない。
非ウイルス性肝癌はウイルス性肝癌と異なり,背景肝疾患に対する介入方法が明確ではない。今後は非ウイルス性肝癌の中心を占める非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対する治療で,発癌予防効果が得られるかどうかという点についての前向き検証が期待される。
本CQ は対象を限定しない肝発癌予防法に関するCQ であり,改訂委員会での討議の結果,コーヒー摂取を推奨の対象とした。比較対照試験ではなく疫学研究が根拠となっていることからエビデンスの強さは,C(弱)と判断した。コーヒー摂取については今回新たに2 つのメタアナリシスのエビデンスが加わったのに対し,第4 版では推奨の対象としていた多価不飽和脂肪酸については新たなエビデンスの追加はなく1篇の疫学研究のみのままであったため,今回は推奨の対象としなかった。メトホルミン,スタチン,BCAA,アスピリンについては対象を限定した検討であったため,前回同様,推奨には含めなかった。運動についても,前述の通り効果は限定的と考えられたため推奨には含めなかった。
投票結果
◉推奨文「コーヒー摂取は,肝発癌リスクを減少させる可能性がある」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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第4 章 手術
- はじめに
肝切除は肝癌に対して最も根治的な治療である。この領域でのトピックスは肝切除を受ける高齢肝癌患者の増加と,腹腔鏡下肝切除の安全性の向上と普及,および周術期管理法に関するエビデンスの増加である。
近年,高齢肝癌患者に対する肝切除の治療成績が多く発表され,肝切除の適応に関するCQ に年齢の因子が加わった。さらに破裂肝癌の成績も蓄積されるようになったため,破裂肝癌に対する内容も加わった。
2016 年から血行再建や胆道再建を伴わないすべての肝切除術式が腹腔鏡下肝切除の適応となった。しかし,手術難度が上昇すると,術後合併症や死亡率が上昇することや,高難度手術が行われている施設が限られている現状がある。これらを勘案し,今回の改訂では従来の推奨内容に加えて,高難度手術には慎重に取り組む重要性を強調する内容を加えた。
肝切除手技や周術期管理についてのエビデンスが増加したため,出血制御策や腹腔ドレーンの個々の項目に対するCQ から,肝切除の手術手技と周術期管理のCQ に変更した。その際,hanging maneuver,予防抗菌薬の内容が加わった。一方,予後予測因子自体は推奨する医療行為ではなく,CQ としてはなじまないことから,予後予測因子に関するCQ は削除した。
本邦の肝細胞癌に対する肝移植の適応規準が,従来の非代償性肝硬変を伴うミラノ基準から,非代償性肝硬変を伴うミラノ基準内あるいはミラノ基準外でも腫瘍径5 cm 以内かつ腫瘍数5 個以内かつアルファフェトプロテイン(AFP)500 ng/mL(5-5-500 基準)に拡大した。しかし,対象が限られている本邦では肝移植前の肝細胞癌に対する治療が予後を改善する十分なエビデンスはないのが現状である。
なお,今回の改訂では,前回の改訂からこれまでの,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに発表された論文について検索し,新たなCQ の内容については2020 年1 月31 日までの論文について検索した。
- CQ19
- 肝切除はどのような患者に行うのが適切か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 1. 肝切除が行われるべき患者は,肝臓に腫瘍が限局しており,腫瘍径にかかわらず個数が3個以下である場合が望ましい。一次分枝までの門脈侵襲例は手術適応としてよい。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 2. 高齢は肝切除の制限因子とはならない。
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 3. 急性期を乗り越えた破裂肝細胞癌は肝切除の適応となりうる。
背景
2013 年版(第3 版)まではCQ「腫瘍条件からみた肝切除の適応は?」であったが,2017 年版(第4 版)からは高齢,肝機能やperformance status などの観点を取り入れるため,本CQ 文に変更となった。
サイエンティフィックステートメント
前回の改訂よりこれまでの2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,892 篇が抽出され,これらより19 篇が一次選択された。そのなかからエビデンスレベルの高い論文や重要論文計13 篇を二次選択した。また,前回採用された15 篇中,重要論文11 篇を引用し,ハンドサーチで2 篇追加した(計26 篇)。
肝切除の適応のうち,肝細胞癌の進展度については日本肝癌研究会の提唱する原発性肝癌取扱い規約に記載されている腫瘍の大きさ,個数,脈管侵襲,およびその程度に従って記載する。
腫瘍径については10 cm 以上の腫瘍に対する肝切除後5 年生存率は20~30%程度と報告されている。この成績を他の治療法(経動脈的治療や化学療法)や自然経過と比較した検討はないが,推定される自然経過よりも明らかに優れていることから,腫瘍の大きさに適応の制限はないと考えられる。しかし,肝切除術後早期に再発する症例も少なくない。Lim ら1)は,10 cm 以上の肝癌切除後の1 年以内の再発危険因子として,術前総ビリルビン高値,血小板数低値と門脈腫瘍栓陽性を挙げており,慎重な症例選択も重要である。
腫瘍数については,単発症例が複数個症例よりも切除後成績は良好であるが,複数個でも多中心発生例2),2 個までで同じ区域に存在する症例3,4),4 個以上で門脈侵襲はない症例5,6)などでは切除後の治療成績が良好であったとの報告もある。しかし,腫瘍数の上限についてのエビデンスレベルの高い報告はない現在,肝切除も局所治療と考えると,ラジオ波焼灼療法(RFA)などで受け入れられている3 個までが良い適応となる。
門脈侵襲は肝細胞癌の最も強力な予後予測因子であることは多くの研究から明らかになっている。このなかで,腫瘍栓の門脈内の伸展に伴い予後は不良となるが,門脈一次分枝までにとどまる場合(Vp3 まで)の術後5 年生存率は10~40%と報告されている。日本肝癌研究会による全国原発性肝癌追跡調査報告の検討でも,Vp3 までは肝切除の治療成績は非手術例のそれよりも良好であった7)。門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌には薬物療法が選択肢の一つとなるが,Vp3 症例に対する薬物療法の長期予後が明らかでない現在,手術適応となると考えられる。門脈本幹まで腫瘍栓が伸展している場合(Vp4)は,予後不良で一般的には手術適応外とされるが,その程度が軽度である場合には切除成績がVp3 症例と同等であり,手術適応であるとする報告もある8)。また根治術後に肝動注化学療法を行うことで予後が延長したとの報告もある9)。
門脈侵襲の他にも肝細胞癌は肝静脈や胆管内に進展し,腫瘍栓を形成することがあり,一般に予後不良と報告されている。しかし,下大静脈腫瘍栓を有する症例においても安全に施行可能な症例が少なくなく,根治切除後の生存期間の中央値が18カ月との報告10,11)がある。
胆管内腫瘍栓併存例は,脈管侵襲や低分化型の頻度が高く,肝切除後に早期に高率に再発がみられるため,肝切除に否定的な報告12)が多いが,門脈侵襲を伴わない症例や根治切除可能な症例では,長期生存例を得られることもある13,14)。報告例の成績が一定ではなく,今後の検討が必要である。
一般的に高齢者は非高齢者に比べ肝切除後合併症の頻度が上昇する報告が多い。本邦における大規模コホート研究では,肝切除後合併症および在院死は70歳代までは増加していくものの,70 歳代と80 歳以上では合併症および在院死に差はみられなかった15)。全国原発性肝癌追跡調査報告の解析によると,高齢者は非高齢者よりも肝切除後の予後が不良であり,他病死が多い特徴があった16)。しかし,他の治療と比較し,肝切除の無再発生存率および全生存率が良好であった17)。
破裂肝細胞癌に対しては止血による全身状態の安定が重要であるが,肝動脈塞栓療法(TAE)による止血効果は53~100%と良好である。また,TAE 後二期的手術は,一期的手術と比較して30 日死亡率も低く,在院死の頻度が低い18,19)。さらに,肝切除施行例の生存率はTAE よりも良好である。非破裂例に比較して長期予後は悪いものの,長期予後は非破裂例と同様に破裂因子を除く腫瘍因子に影響されたことが報告されており20),『原発性肝癌取扱い規約第6 版補訂版』21)においても,肝細胞癌破裂でT 因子は変更しないと記載されている。しかし,Child-Pugh 分類B 症例では注意を要する19)。
解説
複数の肝細胞癌がみられる場合,主腫瘍と肝内転移,多中心性発癌,およびその両者の場合がある。これらの病態によっても同じ個数の症例でも治療成績は異なると考えられる。肝切除も局所治療ではあるものの,主腫瘍と肝内転移の場合,肝細胞癌の経門脈性転移と関連し,部分切除に比較して系統的肝切除の優位性と関連する。一方,多中心性発癌の場合,背景肝の発癌ポテンシャルと関連し,穿刺局所療法と同様の適応基準となる。また,個数が増加してくると,肝動脈化学塞栓療法(TACE)に適応が移行していくと考えられる。腫瘍数に関して,Yang ら22)は多発症例に対する肝切除後の予後予測式を提唱しており,多発症例に対する肝切除の適応をより層別化して検討する必要がある。
年齢に関してはDPC 制度のデータベースを用いた大規模コホート研究(69 歳以下13,908 例,70~79 歳10,805 例,80~84 歳2,011 例,85 歳以上370 例)で,加齢とともに脳血管障害,呼吸器疾患,認知症の割合が増加していたが,肝切除後合併症および在院死は70 歳代までは増加していくが,70 歳代と80 歳以上の群では差は認められなかった15)。本邦では適応を考慮しつつ,肝切除が安全に行われている結果と考えられる。日本肝癌研究会による全国原発性肝癌追跡調査報告(75 歳以上,肝切除2,020 例,RFA 1,888 例,マイクロ波凝固療法193 例,TACE 2,389 例)の検討では,肝切除後3 年無再発生存率39.6%,5 年全生存率は67.3%と他の治療よりも良好であった。なお,全生存率は肝切除とRFA で差はなかったが,3 cm 以下に限れば肝切除が良好であった17)。したがって年齢は必ずしも適応制限とはならず,高齢者に対しても肝切除を考慮してよいと考えられる。しかし,加齢に伴うADL 低下,身体的・社会的・精神心理的な衰退,いわゆるperformance status,サルコペニアやフレイルが肝切除後の合併症や退院後の自立生活に影響することが報告されており23-25),肝切除の適応決定においては総合的な老年機能評価が重要であると考えられる。
肝細胞癌が破裂した際の腹腔内出血に対しては,緊急TAE が有効である。止血後,全身状態の把握と癌の進展状況などを精査して肝切除を行う二期的肝切除は,一期的肝切除に比べ,切除率が高く(21~56% vs. 13~31%),在院死が低い(0~9% vs. 17~100%)ことが報告されている18)。全国原発性肝癌追跡調査報告(破裂1,160 例,非破裂48,548 例)の検討20)において,破裂例での破裂因子を除いた取扱い規約の癌進行度(Stage)と非破裂のStage を比較したところ,破裂Stage II は非破裂Stage III とIVA の間(その2 つの非破裂群とは有意差あり),破裂Stage III は非破裂Stage IVA と差はなし,破裂Stage IVA は非破裂Stage IVA とIVB の間(その2 つの非破裂群とは有意差あり),破裂Stage IVB は非破裂IVB より予後不良(p=0.081)であった。すなわち,非破裂例に比較して長期予後は悪いものの,非破裂例と同様に破裂因子を除く腫瘍因子に影響され,破裂例であっても破裂因子を除いたStage が低い症例では長期予後が期待されることが判明した。また,治療後の成績は肝切除症例の3 年/5 年生存率は48.6%/33.9%とTACE(14.1%/6.0%)よりも良好であった。したがって,TAE などで急性期を乗り越えた破裂肝細胞癌は肝切除の適応となりうる。ただし,Child-Pugh 分類B では注意を要する19)。
肝切除は肝障害度A あるいはChild-Pugh 分類A 症例を適応とするのが望ましいが,肝機能不良例でも経皮的治療やTACE が難しく,肝切除が必要となる症例がみられる。Child-Pugh 分類B に対する肝切除に関する多数例での研究はこれまでみられなかったが,2020 年に東洋9 施設,西洋5 施設でのChild-Pugh 分類B の肝細胞癌切除253 例の解析結果が報告された26)。その結果,90 日以内術後合併症は108 例(42.7%)に,90 日以内死亡は11 例(4.3%)に認められ,5 年生存率は47%と不良であった。一方,併存疾患がなく,腹腔鏡下での小範囲肝切除であれば合併症の頻度が低く,初発,単発および3 cm 以下肝細胞癌が長期予後良好因子であった。したがって,適応を考慮すれば,Child-Pugh 分類B であっても肝切除によって良好な予後が期待される。しかし,Child-Pugh 分類B の肝切除例の検討は少なく,具体的な推奨文を作成するに至らなかった。
投票結果
◉推奨文1「肝切除が行われるべき患者は,肝臓に腫瘍が限局しており,腫瘍径にかかわらず個数が3 個以下である場合が望ましい。一次分枝までの門脈侵襲例は手術適応としてよい」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「高齢は肝切除の制限因子とはならない」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文3「急性期を乗り越えた破裂肝細胞癌は肝切除の適応となりうる」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ20
- 肝切除前肝機能の適切な評価法は?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 一般肝機能検査に加えICG 15 分停滞率を測定することを推奨する。手術適応は,これらの値と予定肝切除量とのバランスから決定するのが妥当である。
背景
第4 版のCQ21「肝切除前肝機能の適切な評価法は?」を引き継ぐかたちでエビデンスレベルの高い新たな指標の探索を含め,今回も同様のCQ が設定された。
サイエンティフィックステートメント
今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,162 篇が抽出された。そのなかから,肝切除前の肝機能評価として有用性が示されている論文を絞り込み,一次選択では6篇,二次選択では3 篇を新たに採用し,第4 版の23 篇に追加して計26 篇を採用した。
術前肝機能評価としての肝予備能分類として,従来からChild 分類*および,その変法であるChild-Pugh 分類*が世界的に汎用されている。特に腹水は門脈圧亢進症の指標とされ,コントロール不良であれば手術適応とはならない。欧米では,従来からChild-Pugh 分類のB,C 症例は手術適応としないのが一般的で,Child-Pugh 分類A の症例でも門脈圧亢進症を併存する場合は肝切除の適応外とする基準を採用している。なお,この基準は欧米の肝癌診療ガイドラインに採用されている1)。一方で,門脈圧亢進症は2 区域以上の肝切除の禁忌とはならないとの欧米からの報告2)や,門脈圧亢進症を有する症例でも,ある程度縮小した肝切除術式を選択すれば術後合併症の増加は認めず適応禁忌ではないとの本邦の報告がある3)。
主な肝切除の定量的な術前肝機能評価法としてインドシアニングリーン(ICG)負荷試験,99mTc-GSA 肝シンチグラフィーが挙げられる。ICG 負荷試験に関する検討では,術後死亡の予測因子として有用であるとする報告がこれまで数多くなされている4,5)。ICG 15 分停滞率は,日本肝癌研究会による肝障害度評価の際の一因子6)として採用されており,術前肝機能評価法の標準的な検査となっている。
手術適応基準としてYamanaka らは,ICG 15 分停滞率,肝切除量,年齢から構成される肝不全のprediction score を考案し7),術後死亡を正確に予測しえたと報告している8)。またTakasaki らは,ICG 負荷試験の値ごとに異なる許容肝切除量を設定した基準を提唱し9),基準内の肝切除術後の肝不全と死亡は2%および0%であったのに対して,基準外の肝切除では,これらはそれぞれ23%および1%であったと,その有用性を報告している10)。本邦で広く使用されている幕内基準11)は腹水,血清総ビリルビン値,ICG 15 分停滞率から肝切除の適応・非適応,さらには切除許容範囲を明示しており,この基準を遵守した1,056 例の肝切除では手術死亡0%と報告されている12)。
Kokudo らは,血清アルブミン値,ICG 15 分停滞率を用いたAlbumin-Indocyanine Green Evaluation(ALICE)grade が,肝切除術後の生存率や術後肝不全の発生予測に有用であることを報告した13)。このALICE grade は,肝切除後の転帰を予測するうえでChild-Pugh 分類より優れており,門脈圧亢進症の有無と組み合わせることで,より有用な肝機能評価分類となる可能性がある14,15)。
99mTc-GSA 肝シンチグラフィーについては,組織学的肝障害の評価においてICG 15 分停滞率よりも優れているとの報告16)や,単純な術後残肝容積評価よりも99mTc-GSA 肝シンチグラフィーから算出した機能的残肝容積の評価が背景肝障害を伴う症例の術後合併症,手術関連死亡の予測に有用であるとの報告がある17)。しかしながら99mTc-GSA 肝シンチグラフィーは核種の使用による施設制限があり一般化していない。
手術適応を決定する際の術前肝機能評価法としては,血液検査を含め日常臨床上得られるChild-Pugh 分類などの情報に加え,定量的な検査法としてICG 負荷試験に関する報告が多い。実際の肝切除に際しては,こうした評価から推定される肝障害の程度と,肝切除の範囲(肝切除量)のバランスから適応を決定するのが妥当と考えられ,本邦を中心に肝予備能と許容肝切除量の関係を示した基準が提案されている。
解説
ガラクトース負荷試験,アミノ酸クリアランス試験,アミノピリン呼気試験は第3版まではサイエンティフィックステートメントにその有用性について言及されていたが,現在は行われておらず,前回改訂時より記載していない。
その他の指標として,門脈圧亢進症の指標とされる血小板数が術後の合併症や肝不全,術後死亡を予測する危険因子であるとの報告がある18)。肝切除量にかかわらず血小板数は術後肝不全の予測に有用であり,特に小範囲切除(切除肝重量<100 g)の場合ではICG 15 分停滞率よりも有用な予測因子であるとのTomimaru らの報告がある19)。
閉塞肝静脈圧から肝静脈圧を減じた肝静脈圧格差(hepatic venous pressure gradient;HVPG)の術前測定は,侵襲的ではあるが,術後肝不全予測に有用であるとの報告が散見される20,21)。しかしながら,実臨床として術前肝機能評価としてHVPG を測定している施設はほとんどない。
近年,肝切除前に肝硬度を測定し,肝硬度と予後との関係を検討した報告が散見され,多くは術前肝硬度測定が術後合併症や術後肝不全の予測に有用であるという内容の報告である22-24)。肝硬度測定に関しては,今後術前肝機能評価として有用となる可能性がある。
本邦の肝癌切除術の手術死亡が3%以下である25,26)状況において,術後死亡を評価項目として肝機能からみた適応基準を評価・検証することは実務的・倫理的には現実的ではない。施設の経験症例数(hospital volume)による在院死亡率の差もあり,high-volume hospital の死亡率1.55%に対しlow-volume hospital では4.04%と高い結果を報告しており,施設の経験値も手術適応を考慮する際には加味する必要が考えられる26)。
今回,検索論文のなかにエビデンスレベルの高い新たな肝機能指標はなかったため,第4 版の推奨内容をそのまま採用した。現在でも最も広く行われている肝切除前肝機能評価法はICG 15 分停滞率であることに関して,改訂委員会で議論した。
*:Child 分類と一般にいわれているものは,もともとはChild-Turcotte 分類が正式な名称である。また,Pugh がChild-Turcotte 分類を改訂したものは,Child-Turcotte-Pugh 分類(CTP 分類)が正式な名称であるが,本書では『原発性肝癌取扱い規約』との統一を図るため,Child-Pugh 分類という名称を用いることとした。
投票結果
◉推奨文「一般肝機能検査に加えICG 15 分停滞率を測定することを推奨する。手術適応は,これらの値と予定肝切除量とのバランスから決定するのが妥当である」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ21
- 安全で合理的な手術術式とは?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 小型の肝細胞癌(5 cm 以下)に対しては,小範囲の系統的切除,あるいは縮小手術としての部分切除(特に肝機能不良例)が選択される。大型の肝細胞癌に対しては2 区域以上の拡大切除(片肝切除を含む)が選択される。
背景
第4 版のCQ22「安全で合理的な手術術式とは?」を引き継ぐかたちでエビデンスレベルの高い新たな指標の探索を含め,今回も同様のCQ が設定された。
サイエンティフィックステートメント
今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,661 篇が抽出された。そのなかから,手術術式あるいは術中操作について安全性,合理性が示されている論文を絞り込み,一次選択では13 篇,二次選択では5 篇を新たに採用し,第4 版の26 篇から残した25 篇と合わせて計30 篇を採用した。
肝細胞癌の多くは,慢性肝疾患を背景としているため,許容肝切除量は正常肝の場合に比べて少なくならざるを得ず,拡大肝切除は施行できない場合が多い。これを鑑み,肝部分切除(腫瘍核出術を含む)による肝細胞癌の肝切除方法が提唱された1)。また,肝硬変症例では肝臓が硬く,肝表からの触診では腫瘍が同定できないことが多いため,術中超音波を使用して,肝内の腫瘍の位置を同定しながら肝切除を行う方法が考案され行われてきた2)。
肝細胞癌では,経門脈的に腫瘍が肝内転移することが知られており,理論的な根治の観点からは,当該の門脈支配領域を超音波ガイド下に色素で染色して系統的に切除することが望ましい3)。動脈-門脈(AP)シャントや門脈腫瘍栓の存在などにより担癌領域の門脈に対する穿刺・染色が不可能な場合に,隣接する領域を染色(counterstaining)することにより担癌領域を同定して切除する方法4)も考案された。また,担癌領域の門脈・動脈・胆管枝を含むグリソン鞘を一括して処理してこの領域を同定し,系統切除を行う方法も考案・施行されている5,6)。
肝切除後の予後においては,系統的切除の方が非系統的切除より良好であるとされてきた。最近の報告でも系統的切除の方が予後を改善するという内容の論文がある7-14)一方,系統的切除と非系統的切除を傾向スコアを用いてマッチさせた2 群で比較すると,累積生存率,無再発生存率には差がないという報告もある15-17)。非系統的切除の場合は,切除断端陰性(切除マージン>0 mm)の方が予後は良好であった18)。今回の改訂でも,術式や切除断端による予後の差に関しては言及しなかった。
解説
肝切除は,他の臓器の手術に比べて,切除する肝区域,領域の大きさにより,その術式は多岐にわたり,また,内部の構造が直接見えない実質を術中超音波を駆使しながら切除するという,技術的に高度な手術が多い。しかしながら,肝切除術の死亡率,出血量は過去20~30年間で大きく減少しており,手術の技術が確立され安定してきたことを示している。
肝実質を可能な限り温存する術式として,下大静脈に直接流入するS6 の肝静脈枝(下右肝静脈)が存在する場合にはこの領域を温存しかつ右肝静脈を根部で処理をする肝切除術19),あるいはS2 を温存してS3/4 を切除する術式20)も報告され行われてきている。
尾状葉は肝門板の背側に存在し,ここに存在する腫瘍に対しては通常は腹側の肝実質とともに拡大肝切除をする方法が採用されてきたが,大半の肝細胞癌症例では肝障害を伴うため,この方法は採用できない。これに対して,counterstaining 法を駆使して背側から尾状葉を単独切除する高位背方切除21,22)や前方から中肝静脈に沿って肝離断を行い単独切除する経肝前方切除23)が考案されてきた。
右肝切除を施行する際には右肝を脱転した後に肝切除を行うのが通例であるが,腫瘍が大きい場合には脱転を行うことが困難な場合が多い。このような場合に前方(腹側)からの肝切除を先行させる方法(前方アプローチ)も提唱され,通常の脱転先行の方法よりも短期・長期成績とも良好であったと報告されている24,25)。また,肝臓の深部は肝静脈からの出血のコントロールが困難であるが,下大静脈前面の肝裏面にテープを通して肝を挙上させながら肝切離を行う方法が考案され,広く応用されている26)。さらにこの方法を,前方アプローチによる右肝切除と組み合わせる術式の有効性も主張されている27)。
肝細胞癌は,進展するにつれて主要門脈枝に腫瘍栓を形成することが多い。このような場合に,腫瘍栓を含む門脈を合併切除して当該の肝領域を切除するのが通例であったが28,29),この方法は拡大肝切除あるいは全肝切除(理論上の)を必要とし障害肝での施行は困難であることが多い。これに対して門脈内壁から腫瘍栓のみを除去する肝切除の方法も報告され,通常の方法と長期成績に差がなかったとその有効性が主張されている30)。
安全で合理的な手術術式に関して新たな知見を検索したが,検索論文のなかにエビデンスレベルの高い手術術式の報告はなかったため,第4 版のCQ に対する推奨内容をそのまま採用した。肝細胞癌に対する拡大切除の意義は少なく,肝機能,腫瘍径を考慮したうえで治癒切除が可能であれば小範囲切除が妥当とする現状を踏まえて投票が行われた。
投票結果
◉推奨文「小型の肝細胞癌(5 cm以下)に対しては,小範囲の系統的切除,あるいは縮小手術としての部分切除(特に肝機能不良例)が選択される。大型の肝細胞癌に対しては2 区域以上の拡大切除(片肝切除を含む)が選択される」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ22
- 腹腔鏡下肝切除の手術適応は?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
-
- 1. 肝部分切除や肝外側区域切除が可能な肝前下領域(S2,3,4,5,6)の末梢に存在する5 cm 以下の単発腫瘍が良い適応である。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
-
- 2. 高難度症例への適応は手術難度と施設の経験症例数などを考慮して決定する。
背景
腹腔鏡下肝切除は2010 年4 月に部分切除と外側区域切除が保険収載となり,2016 年4 月からは血行再建や胆道再建を伴わないすべての肝切除術式が保険収載された。肝臓内視鏡外科研究会による前向き登録(2015 年10 月~2017 年12 月)では拡大術式での在院死の死亡率は30 日0.22%(2/891),90 日0.67%(6/891)と低く,さまざまな術式でのエビデンスが報告されるようになったため,今回,腹腔鏡下肝切除の推奨適応について改訂することとなった。
サイエンティフィックステートメント
今回は2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までの263 篇の論文中13 篇が一次選択された。そのなかから近年増えてきている拡大肝切除,再肝切除などに関するエビデンスレベルの高い論文9 篇を二次選択した。そして前回採用された論文のうち重要論文12 篇およびハンドサーチによる1 篇を加えた計22 篇を採用した。
腹腔鏡下肝切除と開腹下肝切除の比較において,腹腔鏡下肝切除では拡大視効果と気腹圧による肝静脈からの出血量低減効果があり,開腹下肝切除に比較して術中出血量が少ないと報告されている1-3)。また,肝硬変などの慢性肝疾患を併存することが多い肝細胞癌症例に対する腹腔鏡下肝切除において,開腹下肝切除と比較して,術中出血量,輸血率,腹水などの術後合併症率が低く,在院日数が短いことが報告されている4-7)。肝細胞癌に対する長期成績は開腹下肝切除と同等との報告が多く8-11),肝表面に存在する小型肝細胞癌に対してはRFA と比較して局所制御能が優れていると報告12)されている。近年ではmajor hepatectomy13,14),再肝切除15,16)および巨大肝癌17)に対する腹腔鏡下肝切除に関する報告が増え,いずれも腹腔鏡下肝切除が開腹下肝切除よりも術中出血量や術後合併症が少なく,術後在院日数が短いとの結果であった。一方,これらの腹腔鏡下肝切除では手術難易度が術中成績(Conversion,手術時間,出血量)および術後成績(重症合併症,在院死)に影響することが報告されている18)。National Clinical Database(NCD)登録症例(2011~2017 年)の検討でも,年間に10 例を超える腹腔鏡下肝切除を行う施設は54 施設(2011 年)から255 施設(2017 年)に増え,50 例を超える施設も1 施設(2011 年)から14 施設(2017 年)に増加し,腹腔鏡下肝切除は確実に普及している。区域切除以上の難度の高い手術の在院死は2011年の3.6%から2017 年の1.0%に減少しているものの,これらの手術を多く行っている施設は限られていた19)。
解説
腹腔鏡下肝切除は1991 年,Reich らが報告して以来,種々の手術機器の進歩に伴い各国で行われるようになった。本邦においては2005 年に高度先進医療として認可され,2010 年に肝部分切除術と肝外側区域切除術が,さらに2016 年には血行再建や胆道再建を伴わないすべての肝切除術式が保険収載された。しかし,腹腔鏡下肝切除は,特に広範囲肝切除において完全に確立した手術手技ではなく,そのリスクも完全には否定できない。部分切除,外側区域切除,亜区域切除後の在院死亡率は0.5%と低く,区域切除以上でも在院死亡率は2011 年の3.6%から2017 年の1.0%と減少しているものの,区域切除以上の手術を数多く行っている施設は限られている19)。したがって,腹腔鏡下肝切除は十分な開腹下肝切除と高難度の内視鏡手術の経験を有するチームのある施設において行われるべき手術である。肝部分切除や肝外側区域切除を超える術式の施行にあたっては,十分な腹腔鏡下肝切除の経験とlearning curve を踏まえて,術前の難易度評価20)などを考慮しつつ適応を拡げることが必要である21,22)。これらを勘案して,肝前下領域(segment 2~6)の末梢に存在する5 cm 以下の単発腫瘍が腹腔鏡下肝部分切除や肝外側区域切除の良い適応であり,高難度症例に対する腹腔鏡下肝切除の適応は,手術難度と施設の経験症例数などを考慮して決定することを強く推奨することとした。なおNCD への前向き登録が義務づけられている。
投票結果
◉推奨文1「肝部分切除や肝外側区域切除が可能な肝前下領域(S2,3,4,5,6)の末梢に存在する5 cm 以下の単発腫瘍が良い適応である」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「高難度症例への適応は手術難度と施設の経験症例数などを考慮して決定する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ23
- 肝切離を安全に行うための手術手技は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
-
- 1. 肝流入血流遮断は肝切離中出血量減少に有効である。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 2. 中心静脈圧(CVP)低下は肝切離中出血量減少に有効である。
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さA
-
- 3. 開腹下片肝切除においてhanging maneuver は肝切離中出血量減少に有効である。
背景
これまでは「肝流入血流遮断や中心静脈圧低下は,肝切離中出血量を減少させるか?」という出血量減少に限ったCQ であり,肝流入血流遮断および中心静脈圧(CVP)低下が肝切離中出血量減少に有効であることを推奨してきた。今回,肝切離中の手術手技に関する内容全般に変更することとし,「肝切離を安全に行うための手術手技は何か?」とのCQ に改訂することにした。
サイエンティフィックステートメント
今回2000 年1 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,541 篇が抽出され,これらより34 篇が一次選択された。そのなかから,エビデンスレベルの高い論文や重要論文計6 篇を二次選択し,第4 版から選択したエビデンスレベルの高い10 篇,hanging maneuver の解説のためにハンドサーチで2 篇追加し,計18 篇を採用した。
肝流入血流遮断に関するランダム化比較試験(RCT)によって,間欠的肝流入血流遮断法(Pringle 法)は,肝機能に影響を与えずに肝切離中出血量を減少させることが示されている1,2)。また,片葉流入血流遮断法の有効性を示す報告3,4)や,15 分間と30 分間のPringle 法ではprotease inhibitor の投与により肝機能に対する影響に差がないとの報告5)がみられる。一方,近年の手術手技や器具の進歩で,Pringle 法で術中出血量に差がみられなかったとの報告もみられるようになっている6)。
肝下部下大静脈(IVC)遮断や薬剤などを用いて肝切離中のCVP を低下させることにより,出血量が減少することがRCT を含むメタアナリシスによって示されている7-9)。その際,2.1~3.0 mmHg がCVP 圧として適切であること10)や薬剤などによるCVP 低下法よりIVC 遮断が有効であったことも示されている11)。ただし,CVP 低下によっても出血量が減少しなかったとの報告12)もある。なお,IVC 遮断により肺塞栓が発症したとの報告もあり,注意を要する。
また下大静脈前面にテーピングを行い牽引しながら肝を切離するhanging maneuver13)は巨大腫瘍や片肝切除などで多用されているが,今回メタアナリシス(15 篇:開腹下片肝切除,1 篇:開腹下尾状葉切除)により,手術時間短縮,出血量減少および術後合併症の頻度も低下した報告がみられた14)。
解説
肝切離中の出血を減少させるためにPringle 法が広く行われており,その安全性も確認されている。近年の肝切離手技や機器の進歩により出血量自体が大幅に減少したことなどから,Pringle 法活用の有無によっても術中出血量に差がみられなかったとの報告や,Pringle 法をルーチンに行うことに否定的な論文も散見された6)。したがって,肝切離においてPringle 法は必須ではないものの,一方でその安全性,有用性を減弱させるようなエビデンスはなく,改訂委員会で議論した結果,今回も強く推奨することとした。切除範囲が片葉内に限局される場合は,片葉流入血流遮断法も勧められる。
Pringle 下の肝切離中の出血の多くは肝静脈由来であるため,出血量低下や輸血回避におけるCVP 低下の有用性は示されており,肝機能や術後短期成績への影響も少ないと報告されている。これらの報告を踏まえて,CVP 低下は強い推奨とした。しかし,長期成績への影響についての検討はみられず,肝切除部位などによるCVP 低下法の適応についての検討も必要である。
Hanging maneuver は2001 年にBelghiti ら13)が報告した肝切離時に用いる方法である。横隔膜に浸潤した巨大腫瘍に対し右肝切除を行った際に,右葉を脱転せず,肝下部下大静脈前面から中・右肝静脈流入部にテープを通し肝表面に誘導し,吊り上げながら肝切離を行い下大静脈に到達後,右肝静脈および短肝静脈の処理ののちに肝右葉実質と冠状間膜および右三角間膜の間を剝離する方法で,腫瘍近傍の脈管損傷のリスクを減らすことを目的としている。その後,hanging maneuver がドナー右肝切除や巨大肝細胞癌症例を対象に普及してきた。最近のメタアナリシス14)はRCT 2 篇,後ろ向き研究14 篇(エビデンスレベル1b 2 篇,2a 5 篇,2b 8 篇,3a 1 篇)によるものであり,エビデンスレベルは高いものの,転移性肝癌やドナー手術を対象に含む報告もみられることから弱い推奨とした。腹腔鏡下肝切除においてもシステマティックレビューが1 篇みられるものの15),症例数が少なく,対照(hanging maneuver なし)がない報告であり,十分な評価ができなかったため,今回は開腹下片肝切除時のみの推奨とした。
また肝静脈合流部や肝静脈浸潤の肝腫瘍に対する肝切除での肝静脈遮断はPringle 法のみに比べて術中出血量が少なかったとのRCT 1 篇(80 例vs. 80 例)がみられたが16),この手法の適応などについては今後検討が必要である。
術後胆汁漏予防に肝切離後に胆囊管から総胆管に留置したカテーテルを用いて色素などを注入して胆汁漏の有無を確認するbile leak test が有用でなかったとのRCT17)がみられたが,総胆管と交通のない離断型胆汁漏が含まれている可能性がある。また,テスト施行51 例中21 例(41%)において,テスト施行時に検出された胆汁漏を修復し,術後胆汁漏は3 例(6%)のみであったと報告されている。一方,胆汁漏のリスクが高いcentral hepatectomy(中央2 区域切除,前区域切除,内側区域切除,それらに近い術式)においてbile leak test で胆汁漏が確認された症例(42 例)において修復(+減圧チューブ留置)した結果,胆汁漏が10 例に減少したとの前向き観察研究18)があることから,bile leak test とその対処により術後胆汁漏が防げる症例はあると考えられる。なお,bile leak test は肝門部が露出する術式などでは確認する意義はあると考えられるものの,総胆管と交通のない胆汁漏の検出には無効であることには留意すべきである。
投票結果
◉推奨文1「肝流入血流遮断は肝切離中出血量減少に有効である」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「中心静脈圧(CVP)低下は肝切離中出血量減少に有効である」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文3「開腹下片肝切除においてhanging maneuver は肝切離中出血量減少に有効である」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ24
- 肝切除の周術期管理として有用なものは何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 1. 待機的肝切除での腹腔ドレーン留置の有無は,出血・胆汁漏などのリスクを考慮して決定する。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 2. 肝切除後の手術部位感染予防抗菌薬の投与期間は術後24 時間までを推奨する。
背景
第4 版までは「肝切除において腹腔ドレーン留置は必要か?」というCQ であったが,今回の改訂では腹腔ドレーン留置だけではなく,周術期管理に有用な方法に関するCQ に変更することとなった。
サイエンティフィックステートメント
2000 年1 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,624 篇が抽出され,一次選択で16 篇を選択,そのなかから周術期管理,術後合併症への影響を観点に入れたエビデンスレベルの高い論文や重要論文10 篇を二次選択した。また第4 版のエビデンスレベルが高い12 篇およびハンドサーチ1 篇と合わせて計23 篇を採用した。
待機的肝切除の際の腹腔ドレーン留置と非留置のRCT によると,ルーチンのドレーン留置は不必要であるか,禁忌であるとの報告がある。ドレーン留置により,ドレーン関連合併症,創部合併症,敗血症や感染性液体貯留の頻度が高くなり,在院日数が有意に増加する1-4)ことが理由として挙げられている。一方,門脈圧亢進症を伴う肝硬変症例においては腹腔ドレーン留置により,術後腹水に関連した合併症が減少し,在院日数が短くなるため,ドレーン留置を勧める報告もある5)。また,出血や胆汁漏のリスクの高い症例を除いた症例においては腹腔ドレーンを留置すべきではないとの報告がみられる6)。さらに,ドレーン非留置例において重篤な病態に陥ることがある遅発性胆汁漏症例がみられたとの報告もある7)。ドレーン留置による胆汁漏や腹腔内液体貯留に対する治療上の有用性8,9),ドレーン排液中のビリルビン濃度モニタリングによる胆汁漏予測の可能性9,10)に関する報告や,胆道再建症例や主要グリソン鞘露出例,術中胆汁漏確認例など胆汁漏の高危険群に限っての留置を勧める報告もある11)。また,生体肝移植ドナー肝切除では,腹腔ドレナージは必須でないとの報告がある12)。
手術部位感染(SSI)予防抗菌薬の投与期間に関して,術前から術中投与(術後投与なし)群と術前から術後3 日間投与群を,および術前から術後6 時間投与群(1 日群)とさらに2 日間投与した3 日群を比較したRCT において,いずれもSSI の頻度に差はみられなかった13,14)。また,開腹下肝切除例,腹腔鏡下肝切除例各々の群で比較してもSSI および遠隔部位感染の頻度に差はみられず,予防抗菌薬は24 時間までの投与が適切であると報告されている15)。
解説
肝切除は他の腹腔臓器の手術と異なり,慢性肝障害を伴っていることが多く,出血,胆汁漏や難治性腹水に留意する必要がある。待機的肝切除の際のドレーン留置の是非については,1990 年代からRCT が施行されているが,症例数が少ないことや評価法に問題がみられる報告があり,併存する肝障害の程度や切除術式を考慮した検証が必要である。健康人に施行される生体肝移植ドナー手術にはより慎重な対応が求められ,また近年増加している腹腔鏡下肝切除においても,ドレーン留置の是非を検討する必要がある。これらを勘案し,待機的肝切除での腹腔ドレーン留置の有無は,出血・胆汁漏などのリスクを考慮して決定することを強く推奨することとした。
CDC(Center for Disease Control and Prevention,米国疾病管理予防センター)の手術部位感染予防のガイドラインでは,「もしドレーンが必要なら,閉鎖式ドレーンを使用し,できるだけ早期に抜去する」ことが推奨されている16)。ドレーンの抜去時期に関して,排液の性状などに問題がなければ,術後2 日ないし3 日以内の抜去が望ましいとの報告がみられる9,17,18)。
予防抗菌薬投与に関するRCT は,フロモキセフ1 g を術前から術中投与群(術後投与なし)95 例と術前から術後3 日間投与群95 例の比較で,SSI はそれぞれ7.5%,13.8%(p=0.235)であり,遠隔感染はそれぞれ2.1%,8.5%(p=0.100)であったとの報告がみられる13)。また,フロモキセフ1 g を術後6 時間まで投与した(1 日群)232 例とさらに2 日間まで投与した(3 日群)235 例との比較(非劣性試験)では,SSI はそれぞれ9.5%,9.8%(非劣性p=0.001)であり,遠隔部位感染はそれぞれ6.9%,9.4%(非劣性p<0.001)14)と報告されている。また後ろ向き研究であるが,アプローチ別(開腹下,腹腔鏡下)に術後24 時間までの投与群と術後3 日間の投与群を,傾向スコアマッチングを用いて比較・検討した結果においても,SSI および遠隔部位感染に差はみられなかった15)。これらの結果から,肝切除後の手術部位感染予防抗菌薬の投与期間は術後24 時間までとすることを強く推奨することとした。
近年,ERAS(enhanced recovery after surgery,術後早期回復プログラム)が肝切除症例にも導入され,RCT,メタアナリシスの結果,術後早期回復のみならず合併症の頻度を減少させたと報告されている19-22)。そのなかで疼痛管理は重要な因子であり,IV-PCA(intravenous patient-controlled analgesia,経静脈的自己調節鎮痛法)は硬膜外麻酔に対し非劣性であったとの報告がある23)。ERAS は医療費の削減にもつながるため,今後,本邦でも普及すると考えられるものの,ERAS を実施するためには麻酔科医やコメディカルとの連携や協力が必要であることや,現時点ではERAS の内容に施設間での相違がみられることから,今回は推奨文に取り上げなかった。
投票結果
◉推奨文1「待機的肝切除での腹腔ドレーン留置の有無は,出血・胆汁漏などのリスクを考慮して決定する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「肝切除後の手術部位感染予防抗菌薬の投与期間は術後24時間までを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ25
- 肝切除の術前療法は有用か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
- 肝細胞癌の予後改善を目的とした術前療法は推奨しない。
背景
第4 版のCQ28「肝切除前に補助療法を行うか?」を引き継いだCQ となっている。第4 版でも肝切除後の予後改善を目的とした術前補助化学療法として推奨できるものはなかった。
サイエンティフィックステートメント
今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,262 篇が抽出された。そのなかから,肝切除前の補助療法の有用性を検討した論文を絞り込み,一次選択では4 篇,二次選択では1 篇を新たに採用し,第4 版からの16 篇と合わせて計17 篇を採用した。
全身化学療法を術前補助化学療法として施行し,その有効性を検証したエビデンスレベルの高い報告はほとんど認めない。術前補助化学療法としてTAE/TACE を施行した場合,単回では肝機能の低下もわずかで合併症罹患率も低く,腫瘍壊死や縮小効果により,進行肝細胞癌で切除率を向上させる可能性はあるが,予後改善効果については一定の見解は得られていない(文献1~4:有効,文献5~15:無効)1-15)。術前肝動注化学療法についても,再発抑制や生存率の改善に対する有効性は認められていない16)。
またLi らは,門脈本幹に腫瘍栓を有する肝細胞癌に対する術前放射線治療の有効性を検討し,術前放射線治療施行群で肝切除後の再発率および肝細胞癌関連死亡率は低く,門脈本幹に腫瘍栓を有する進行肝細胞癌に対する放射線治療+肝切除の可能性を報告している17)。
解説
TAE/TACE を術前補助化学療法として有効とする論文のほとんどが2000 年前後までに発表されているが,エビデンスレベルの高い論文は少ない。一方,無効とする論文には,2000 年以降のエビデンスを伴ったRCT やメタアナリシスが含まれており,一定の見解は得られていないものの術前補助化学療法としては推奨しなかった。
投票結果
◉推奨文「肝細胞癌の予後改善を目的とした術前療法は推奨しない」について委員による投票の結果,行わないことに対する弱い推奨となった。
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- CQ26
- 肝細胞癌に対する肝移植の適応基準は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 非代償性肝硬変を伴うミラノ基準内あるいはミラノ基準外でも腫瘍径5 cm 以内かつ腫瘍数5 個以内かつAFP 500 ng/mL 以下(5-5-500 基準)の肝細胞癌に対し肝移植を考慮する。
背景
肝細胞癌に対する肝移植は,腫瘍そのものの摘出と同時に発癌母地となっている肝硬変を治療することが可能な,理論的に優れた治療法である。しかし,肝移植が臨床応用された初期の症例では,肝細胞癌に対する肝移植は高率に移植後再発を来し,その移植成績は不良であり,積極的な移植適応疾患から除外されていた。1996 年にMazzaferro らは,術前画像検査における肝細胞癌の大きさと病変数に一定の基準(脈管侵襲と肝外転移なし,単発では腫瘍径5 cm 以下,多発では腫瘍数3 個以下で腫瘍径が3cm 以下)を設けることで,肝細胞癌を合併していない患者と同等の移植成績が得られることを明らかにした1)。この基準はミラノ基準と呼ばれ,現在では肝細胞癌における移植適応のゴールドスタンダードとなっている。本邦でも肝細胞癌合併非代償性肝硬変は,ミラノ基準に合致した症例に限り肝移植が保険認可を受けていた。ミラノ基準は,肝細胞癌の大きさと病変数という単純な要素を評価することにより,その生物学的悪性度が類推できることを示した点で,臨床的に有用な基準であった。しかし一方で,肝画像診断機器や造影剤などが進歩した現在の臨床現場において,1990 年代と同様の基準をそのまま当てはめてよいかという問題点や,ミラノ基準が脳死肝移植を対象とした基準であること,腫瘍径と腫瘍数にバイオマーカーなど別の因子を組み合わせることによりさらに予後予測精度の高い移植適応基準を作成できるのではないかという期待から,肝細胞癌に対する新しい移植適応基準が模索されてきた。
サイエンティフィックステートメント
検索式を用い,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に公表された646 篇を抽出した。術前に評価可能な因子を用いた基準である点と,ミラノ基準との比較成績が記載されているという観点から,一次選択で11 篇を選択し,二次選択で最終的に3 篇を採用した。また,2017 年版補訂版(第4 版補訂版)に採用されていた17 篇から15 篇を採用し,計17 篇を採用した(1 篇は第4 版補訂版と重複)。
ミラノ基準同様に腫瘍径と腫瘍数に基づいた基準として,6.5 cm 以下単発もしくは3 cm 以下3 個以下で腫瘍径の和が8 cm 以下(UCSF 基準)2),最大径5 cm 以下かつ腫瘍数5 個以内(Tokyo 基準)3),最大径7 cm 以下かつ腫瘍数7 個以内(up-to seven 基準)4),6 cm 以下単発もしくは5 cm 以下3 個以下で腫瘍径の和が9 cm 以下5)などの拡大基準で,ミラノ基準と同等の移植成績が報告されていた。また,腫瘍径と腫瘍数以外の因子として,AFP やPIVKA-II が肝移植後の予後予測因子となることから6-10),腫瘍径と腫瘍数にAFP あるいはPIVKA-II を組み合わせた移植適応基準が報告されていた。特に,AFP を組み入れた適応基準は海外を中心に多数の報告があり,ミラノ基準と比較した予後予測能の向上が示されていた11-16)。また,本邦の肝細胞癌に対する生体肝移植症例の検討において,遠隔転移や脈管侵襲を認めない腫瘍径5 cm 以下,腫瘍数5 個以内かつAFP 500 ng/mL 以下(5-5-500 基準)の症例においてミラノ基準と同等の低い再発率,高い生存率を保ちながら適応となる患者を最大数にできることが2019 年に報告された17)。
解説
肝細胞癌に対する移植成績を左右する最も重要な要因は,移植後の肝細胞癌再発である。このため,移植後再発リスクの高い症例を移植適応から除外することが必要となる。現在のゴールドスタンダードとなっているミラノ基準は,一定の腫瘍径と腫瘍数の肝細胞癌を対象とすれば,良好な移植成績が得られることを明らかにした点で重要である。しかし,20 年前の基準を現在の画像診断に用いることで,本来移植可能な症例が適応外となってしまっている可能性も考えられる。このため,基準となる腫瘍最大径と腫瘍数に関して複数の拡大基準が報告され,ミラノ基準と遜色のない成績が報告されている。これらの結果を総合すると,ミラノ基準に用いられた5 cm 以下単発もしくは3 cm 以下3 個以下の基準をある程度まで拡大しても,同等の移植成績が得られる可能性は高い。しかし,どの程度まで腫瘍径と腫瘍数を拡大できるかについては,報告により相違があり,いまだに意見は一致していない。一方では,いずれの報告でも対照となっているミラノ基準の移植成績は良好であり,その有用性が改めて確認されている。このような点を踏まえて,現時点での最大腫瘍径と腫瘍数に関する移植適応基準としてはミラノ基準が推奨されると結論した。
術前のAFP やPIVKA-II は肝移植の予後規定因子として多数の報告がある。このため,これら腫瘍マーカーを腫瘍径や腫瘍数と組み合わせることにより,さらに精度の高い移植適応基準の作成が試みられている。特にAFP に関しては,腫瘍径や腫瘍数との組み合わせにより,ミラノ基準と比較して予後予測能が向上することが,前向き試験を含めて複数報告され,その有用性に期待がもたれる。ただし,各報告における移植適応として用いるAFP のカットオフ値の決定方法は一律ではなく,一致した基準値もない。また,PIVKA-II に関しては,欧米で測定している国が少ないためか,本邦からの報告が大部分で,AFP に関する報告と比較して数がやや少ない。以上の結果から,AFP もしくはPIVKA-II を移植基準に加えることで精度の高い移植適応基準を作成しうる可能性はあるものの,当初はガイドラインに加えるには時期尚早と判断された。しかし,日本肝移植研究会(現日本肝移植学会)による本邦の肝細胞癌に対する生体肝移植965 例の検討において,腫瘍径を5 cm に固定したうえで腫瘍数とAFP,PIVKA-II を変動させ,ミラノ基準1)で達成された5 年再発率10%未満,5 年生存率70%以上を担保しつつ組み入れ患者が最大になる基準が検討され,5-5-500 基準(遠隔転移や脈管侵襲を認めない腫瘍径5 cm 以下,腫瘍数5 個以内かつAFP 500 ng/mL 以下)が提唱された17)。バイオマーカーとしてPIVKA-II も検討されたが,AFP を基準にした方が組み入れる患者数が多くなったため,AFP が採用された。また,ミラノ基準内かつ5-5-500 基準外の患者は少数ながら存在するが,これを非適応とすることは現実的ではないため,ミラノ基準内ないし5-5-500 基準内が適応とされた。本基準は2019 年8 月1 日,脳死肝移植におけるレシピエント選択基準に追加された。
なお,欧米での肝細胞癌肝移植適応は,背景肝の状態にかかわらず腫瘍進行度のみで決定される。一方,本邦では肝細胞癌に対する治療として肝切除や焼灼療法,塞栓療法などが広く施行されている反面,脳死ドナー数は依然として少なく,肝移植は主に生体ドナーを用いて行われている。このような本邦の臨床現場の実情を考えた場合,非代償性肝硬変を伴い肝移植以外に有効な治療を施行し得ない症例を適応とすることが妥当と考えられ,第4 版補訂版に引き続き非代償性肝硬変をガイドラインの文言として取り入れた。
投票結果
◉推奨文「非代償性肝硬変を伴うミラノ基準内あるいはミラノ基準外でも腫瘍径5 cm 以内かつ腫瘍数5 個以内かつAFP 500 ng/mL 以下(5-5-500 基準)の肝細胞癌に対し肝移植を考慮する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ27
- 肝移植前の治療は移植後の予後を改善するか?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
- 肝移植が予定されている肝細胞癌に対する治療は推奨しない。
背景
移植前の肝細胞癌に対し移植以外の何らかの治療を加えることは,待機中の腫瘍進行による待機リストからの脱落抑止,あるいは移植後再発率低下という2 つの効果が期待され,患者予後の改善につながる可能性がある。また,適応基準を超えた進行度の肝細胞癌に対し移植前治療を行い,適応内まで進行度を下げた(ダウンステージング)後に移植した場合にも適応基準内と同等の移植成績が得られるのであれば,肝移植の適応が広がる可能性もある。
サイエンティフィックステートメント
検索式を用い,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに公表された240 篇を抽出した。一次選択で7 篇を選択し,二次選択で最終的に1 篇を採用した。この論文を,第4 版に採用されていた2 篇に加えて,計3 篇を採用した。
適応基準内の腫瘍進行度(ステージ)の肝細胞癌に対する移植前治療として穿刺局所療法やTACE/TAE などの治療を行う試みが複数報告されているが,移植前治療を行わなかった症例と比較して待機脱落率や移植後再発率の低下を明らかにしたエビデンスレベルの高い報告は認められなかった。一方,適応基準外の進行度の肝細胞癌に対するダウンステージングを前向きに検討したYao らの報告では1,2),単発で腫瘍径8 cm 以下,2~3 病変で各腫瘍径5 cm 以下,もしくは4~5 病変で各腫瘍径3 cm 以下かつ腫瘍径の総和が8 cm 以下の症例を対象に穿刺局所療法やTACE/TAE などの方法でダウンステージングを行った結果,65.3%の患者がミラノ基準内へのダウンステージングに成功した。ダウンステージング後肝移植を受けた症例と,同時期にミラノ基準内で移植を受けた症例の移植成績を比較した結果,全生存率および無再発生存率ともに両群間に差は認められなかった。また,ダウンステージングを企図した患者全体と,ミラノ基準内で待機登録した患者全体の生存にも差は認められなかった。全米臓器分配ネットワーク(United Network for Organ Sharing;UNOS)データベースの後ろ向き解析でも,このダウンステージングプロトコルに則り移植を受けた患者の成績は,ミラノ基準内患者の移植成績と差は認められていない。一方で,対象に制限を設けずダウンステージングを行い成功した患者では,ミラノ基準内患者と比較して移植成績が低下することが報告されている3)。
解説
適応基準内の腫瘍進行度(ステージ)の肝細胞癌に対する移植前治療により,待機脱落率や移植後再発率が低下し,最終的な患者の生命予後改善効果が得られるかについては明確な結論は得られていない。一方,適応基準外進行度の肝細胞癌に対するダウンステージングに関しては,前向きの検討でダウンステージングの適応,成功率,患者生存が示され,肝移植まで完遂した症例ばかりでなく(per protocol 解析),ダウンステージングを企図した患者全体の生存率も対照群と同等であった(intention-to-treat 解析)。この結果は,①ミラノ基準外であるものの一定の腫瘍進行度の範囲にとどまる肝細胞癌であれば,既存の治療により一定数をミラノ基準内にダウンステージングすることが可能である,②ダウンステージング成功例ではミラノ基準内の症例と同等の移植成績が期待できる,③ダウンステージングを企図すること自体が患者の予後を短くするものではない,という事実を示している。すなわち,ダウンステージング後の肝移植は,肝細胞癌に対する治療戦略として成立しうると考えることができる。また,このダウンステージングプロトコルによる移植成績の妥当性は全米データの後ろ向き解析でも確認されている。一方で,これらの報告を解釈するにあたっては,対象患者が本邦の実状と異なることに注意が必要である。報告施設のある米国では,肝移植は主に脳死ドナー肝を用いて行われ,肝細胞癌は背景肝の状態にかかわらず,腫瘍進行度のみで移植適応が決定される。これらの報告でも,対象患者の半数以上はChild-Pugh 分類A の代償性肝硬変の患者,もしくはModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコア15 点以下である。一方,脳死ドナーの不足している本邦では,肝移植は主に生体ドナー肝で行われ,肝細胞癌の移植適応はミラノ基準内もしくは5-5-500 基準内かつ非代償性肝硬変を伴っている症例である。この点から,非代償性肝硬変を伴う本邦の肝細胞癌患者を対象として,同様の移植前治療が安全かつ効果的に行いうるか否かについては不明であり,待機脱落が問題となる症例も少ない。
以上の考察から,本邦において移植前治療が肝細胞癌の予後を改善すると結論する十分なエビデンスはないと結論した。
投票結果
◉推奨文「肝移植が予定されている肝細胞癌に対する治療は推奨しない」について委員による投票の結果,行わないことに対する弱い推奨となった。
参考文献
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第5 章 穿刺局所療法
- はじめに
肝細胞癌に対する穿刺局所療法は,超音波診断装置の発達により導入された治療法であり,1983 年に始まった「経皮的エタノール注入療法」が始まりであるといわれている。その後,1996 年に「経皮的マイクロ波凝固療法」に続き,2004 年に「経皮的ラジオ波焼灼療法」が保険収載され,現在では本邦における穿刺局所療法の主役となっている。穿刺局所療法の特徴としては,外科切除とともに肝細胞癌の根治的治療であることと,比較的侵襲が少なく,近年増加傾向である高齢の症例や外科切除が困難な肝予備能の低下症例に対しても治療が可能なことが挙げられる。
今回の改訂において,2017 年版(第4 版)から新たに追加されたCQ はなく,旧版のCQ36「穿刺局所療法の治療効果予測因子は何か?」を削除し,新版では,CQ28「穿刺局所療法はどのような患者に行うのが適切か?」,CQ29「各穿刺局所療法の選択は,どのように行うのが適切か?」,CQ30「穿刺局所療法にTACE を併用することで予後を改善できるか?」,CQ31「造影超音波やfusion imaging は局所療法の治療ガイドとして有用か?」,CQ32「穿刺局所療法の効果判定に有用な画像診断は何か?」の計5 つのCQ とした。
CQ28 では第4 版での検討に用いられた10 篇に新たに2 篇を加え,計12 篇を用いて,穿刺局所療法の適応について腫瘍条件と症例の背景から検討を行い,推奨は前回と同様とした。CQ29 では今回新たに6 篇を採用し,前回の検討に用いたものと合わせて23 篇で各穿刺局所療法の治療成績や合併症を比較検討し,推奨は「穿刺局所療法としてRFA を推奨する」とし,前回弱い推奨であった「消化管穿孔が危惧される場合には人工腹水下RFA やPEI は選択の一つである」は削除した。CQ30 では今回2 篇を加え,前回の検討で用いた16 篇から1 篇を除外し計17 編で検討した結果,推奨は前回と同様の結果となった。CQ31 では新たに採用した8 篇と前回用いた11 篇を合わせて19 篇で治療に用いるガイドの有用性を検討し,推奨は前回と同様となった。最後のCQ32 では,造影CT・造影MRI・造影超音波検査を比較した2 篇と,前回用いた9 編で検討した結果,やはり前回と同様の推奨となった。
今回の改訂では,ほぼ第4 版の推奨と同様の結果となった。これにより,穿刺局所療法は今後治療に用いる画像診断装置の進化に伴い治療精度は向上していくことが期待できるものの,既に現段階で確立された治療法として,一般診療に根付いていると解釈できるのではないだろうか。
- CQ28
- 穿刺局所療法はどのような患者に行うのが適切か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 穿刺局所療法はChild-Pugh 分類A あるいはB の症例で,腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3個以下の場合に推奨する。
背景
穿刺局所療法の歴史は経皮的エタノール注入療法(PEI)から始まり,簡便で低侵襲であることから小型肝癌の治療を容易にした画期的な治療法であった。また,PEI から派生した治療として熱湯注入療法(PHoT)や経皮的酢酸注入(PAI)がある。しかし,これらの治療では腫瘍内隔壁や被膜外浸潤を有する症例には治療効果が十分でないとの問題があった。そのため,均一な凝固壊死が誘導できる穿刺局所療法が登場することとなり,経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)は1996 年に,ラジオ波焼灼療法(RFA)は2004 年にそれぞれ保険収載された。
穿刺局所療法の適応について,腫瘍条件と症例背景の観点から検討を行った。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は2017 年版(第4 版)のCQ31 の引き継ぎであるため,第4 版の検索に2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに発表された論文を追加検索した。検索式により285 篇が抽出され,「アウトカムを生存率もしくは合併症とする研究において,腫瘍径,腫瘍数,脈管侵襲,肝外転移,症例背景(肝機能など)を治療適応について論じる論文を採用する」との方針から40 篇を一次選択とし,さらに内容を検証して20 篇を二次選択とした。さらに「高いエビデンスレベル」「症例数の多さ」「研究デザインの質の高さ」という基準から最終的に2 篇を採用した。ただし,今回の改訂から「治療法の比較はアルゴリズムの章でまとめて扱う方針」になることから,第4 版での10 篇を合わせた計12 篇1‒12)を採用した。
Hasegawa らは日本肝癌研究会の全国原発性肝癌追跡調査報告のデータベースより,2 個および3 個の肝癌を2 cm 未満,2~3 cm に分類し,さらに肝障害度A,B 別の8 群間で予後を比較したところ,RFA 群では無再発生存率に差を認めなかったと報告した1)。「Child‒Pugh 分類A,単発の2 cm 以下」と条件を限定すると,より良好なRFA の治療成績(5 年生存率:60~74%)が得られるとの報告がある1,2)。
4 個以上の多発肝癌に対して穿刺局所療法が有効とする報告は散見されるが,腫瘍数に基づいた治療限界を検証しているエビデンスレベルの高い報告は見当たらない。
Child‒Pugh 分類C(Child‒Pugh スコア10~11)の肝細胞癌に関する後ろ向きコホート研究にて緩和ケアと穿刺局所療法を比較したところ,全生存期間の中央値が,4.0 カ月〔95%信頼区間(CI):2.9~5.1 カ月〕と26.0 カ月(95%CI:22.4~29.6 カ月)で有意差を認めた(p<0.0001)3)。
解説
「腫瘍条件」における適応に関して,かつて穿刺局所療法の中心的治療法であったPEI の時代から治療対象の条件が「3 cm 以下,3 個以下」とする論文が大多数であり,また3 cm を超える場合ではPEI の局所再発率は高くなると報告されていた。一方,現在の標準治療であるRFA では穿刺回数を増やすことで理論上は焼灼範囲の拡大が可能であるが,穿刺回数の増加や広範な焼灼は合併症のリスクになる。肝動脈化学塞栓療法(TACE)を併用することで焼灼範囲の拡大は得られるものの,「3 cm 超」と適応を拡大するに足るエビデンスは抽出されていない。また,一部の電極針では長軸の焼灼径として3 cm 超を謳うものもあるが,多くのRFA 電極針の焼灼範囲が直径3 cm 程度とされていることも考慮して,穿刺局所療法の適応は第4 版から引き続き「3 cm 以下,3 個以下」を踏襲する。
CQ13「肝障害度C(Child‒Pugh 分類C)の肝細胞癌に対し,推奨できる治療法は何か?」でも取り上げているように,本邦の全国原発性肝癌追跡調査報告に登録されたChild‒Pugh 分類C 症例の後ろ向きコホート研究から,穿刺局所療法およびTACE による予後の改善効果が報告された3)。これを受け,改訂委員会ではChild‒Pugh 分類C における治療法選択の拡大を慎重に検討したが,合併症の頻度や治療関連死など安全性に関するデータが十分に示されていないことから,肝移植以外の治療を推奨するには至らないとの判断になった。
「腫瘍径」「腫瘍個数」「肝機能(肝予備能)」以外で治療適応に影響を及ぼしうる要因として「侵襲性」を挙げることができる。RFA と肝切除の治療比較を行った多くの研究4‒11)では,RFA 群で少ない合併症と短い在院日数を報告している。また,「腫瘍部位」「手術歴(胆管空腸吻合,内視鏡的乳頭切開術)」に関しては,本邦のリアルワールドデータ12)からRFA 実施の妨げに必ずしもなっていない実情が伺える。
本邦から初発肝細胞癌に対する治療法選択の根拠となるエビデンス確立を目的としてSURF 試験*が実施された。SURF 試験は,肝機能良好(Child‒Pugh スコア7 点以下)かつ3 cm,3 個以下の腫瘍条件を満たす初発症例を対象として,肝切除とRFA の有効性を検証したランダム化比較試験(RCT)である。全国49 施設から最終的に外科切除群150 例,RFA 群151 例で検討がなされ,外科切除とRFA の3 年無再発生存率について有意差を認めず(49.8% vs. 47.7%,p=0.793),周術期死亡も認めなかった13)。ただし,全生存期間は観察期間中のため発表されておらず,その報告が待たれる。また,外科切除と穿刺局所療法の治療目的は「局所コントロールを得る」という意味では同じであるが,穿刺局所療法では腫瘍径が大きくなるほどに焼灼マージンを十分に確保することが難しくなることもあり,腫瘍条件,症例背景,術者自身の技量を鑑みて治療適応を考慮する必要がある。
投票結果
◉推奨文「穿刺局所療法はChild-Pugh 分類A あるいはB の症例で,腫瘍径3 cm 以下,腫瘍数3 個以下の場合に推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
*SURF 試験:Efficacy of Surgery vs. Radio‒frequency ablation on primary hepatocellular carcinoma trial
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- CQ29
- 各穿刺局所療法の選択は,どのように行うのが適切か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 穿刺局所療法としてRFA を推奨する。
背景
穿刺局所療法は1980 年代のPEI から始まりPAI やPMCT を経て,現在ではRFA がその代表的治療と位置づけられている。そして,RFA の成績および治療効率のさらなる向上を目指して,バイポーラ方式,可変型電極針といった新しい治療デバイスも臨床使用されている。また,穿刺局所療法の新規機器として登場した次世代マイクロ波アブレーションについて,従来のマイクロ波凝固療法(MCT)と区別して「microwave ablation(MWA)」と呼称される機会が増えている。一方,凍結融解壊死療法(cryoablation),不可逆電気穿孔法(irreversible electroporation;IRE)といった治療システム(本邦ではいずれも肝癌で未承認)も穿刺局所療法に含まれる。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ32 の引き継ぎであるため,第4 版の検索に2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに発表された論文を追加検索した。ただし,改訂委員会での討議により本CQ で「開腹および腹腔鏡下焼灼療法」も扱う方針となった。検索式より抽出された136 篇から17 篇を一次選択とし,さらに「エビデンスレベル」「研究デザイン」の観点から6 篇を二次選択とした。そして,第4 版で採用された19 篇のうち17 篇(cryoablation に関する2 篇を削除)を合わせて計23 篇を採用した。
●RFA とPEI の治療比較
RCT 5 篇1‒5)とこれらを含んだメタアナリシス6 篇6‒11)が報告されている。うち出版年の新しい2 篇のメタアナリシスの結果を示す。Shen ら10)は生存と局所再発ともにRFA で優れていたと報告している。また,Yang ら11)の検討ではEuropean study 3 件,Asian study 4 件,African study 1 件に分けてメタアナリシスにて検討したところ,RFA の生存と局所再発の両方について有意性が示されたのはAsian study であったと報告している。
●RFA とMCT の治療比較
RCT 2 篇を新たに採用した。Vietti ら12)の152 例を対象としたRCT では,2 年局所再発率に有意差は認めなかったもののRFA でやや高かった。(オッズ比:1.62,95%CI:0.66~3.94,p=0.27)。観察期間は短いが2 年生存率に有意差はなく,また合併症も差は認めなかった。Yu ら13)の203 例を対象としたRCT でも同様に局所再発,生存と合併症において有意差を認めなかったと報告されている。一方,Facciorusso ら14)のメタアナリシスによる検討では,完全焼灼率について有意差は認めなかった(オッズ比:1.12,95%CI:0.67~1.88,p=0.67)。局所再発率についても有意差はなかった(オッズ比:1.01,95%CI:0.53~1.87,p=0.98)ものの,比較的大きな結節の場合ではMCT がRFA より優れていた(ハザード比:0.46,95%CI:0.24~0.89,p=0.02)。3 年生存率でも有意差はなかった(オッズ比:0.95,95%CI:0.58~1.57,p=0.85)が,RFA で高い傾向であった。また,合併症については,有意でないがMCT でやや多かった(オッズ比:1.63,95%CI:0.88~3.03,p=0.12)と報告されている。
●合併症について
Bertot ら15)によるメタアナリシスでは,穿刺局所療法全体の死亡率は0.16%(95%CI:0.10~0.24%)であり,治療法別ではRFA,MCT およびPEI について,それぞれ0.16%(95%CI:0.10~0.24%),0.15%(95%CI:0.08~0.23%),0.23%(95%CI:0.0~0.58%)であった。重篤な合併症の発生は全体で3.29%(95%CI:2.43~4.28%)であり,治療法別での重篤な合併症の頻度はRFA 4.1%(95%CI:3.3~5.1%),MCT4.6%(95%CI:0.7~11.8%),PEI 2.7%(95%CI:0.28~7.4%)であった。また,Germani ら9)のメタアナリシスでは,RFA とPEI の合併症の頻度に差はなかった(オッズ比:1.21,95%CI:0.89~1.63,p=0.22)。一方,Shen ら10)の報告によるとPEIと比較し有意差はなかったが,RFA で合併症が多い傾向であった(ハザード比:2.04,95%CI:0.81~5.15,p=0.059)。
解説
PEI に関して腫瘍内の線維性隔壁や被膜がエタノールの拡散を障害することは知られており,そのため腫瘍径が大きくなるに従ってPEI の根治性が低下する傾向にある。一方でMCT やRFA では衛星結節が存在する腫瘍周囲を含めて壊死を誘導できることは有利な点である。RFA とPEI と治療比較したところ,局所再発および生存に関してRFA の優位性を強く示唆する論文6-11)が多く抽出される。さらにサブグループ解析では2 cm 以上の腫瘍径で治療成績の差が大きい傾向であった9,10)。ただし,今回の検索でもRFA のデバイス間での治療成績を比較した研究は抽出されておらず,この件に関しては今後の検討課題である。RFA とMCT の治療比較では,新たにRCT 2 篇が報告され12,13),それ以前に報告されたメタアナリシス1 篇14)と合わせても治療効果に差を認めない。しかし,本邦で2017 年より保険収載となったMWA では冷却効果(heat sink effect)が少ないために,その原理から短時間で球状に近い焼灼を期待できる。そのため,MWA でより広範囲の焼灼が得られる可能性はあるものの,RFA との比較において十分なエビデンスは示されていない。さらに,長期予後も含めた考証が必要であることから,現時点ではRFA を第一選択として推奨する。
RFA の開腹下/腹腔鏡下アプローチについて単施設後ろ向きであるが検討された論文が報告されている。腹腔鏡下RFA が経皮的RFA より治療成績が優れるとする報告もあるが16),開腹下/腹腔鏡下RFA と経皮的RFA の間に有意差はないと報告するものが多い17,18)。また,システマティックレビューでも開腹下,腹腔鏡下,経皮的RFAにおいて合併症頻度で差がない19)ことを考慮すると,経皮的穿刺経路が難しい症例では開腹下/腹腔鏡下RFA は有効な選択肢といえる。
合併症については,各穿刺治療(RFA,MCT,PEI)間において合併症全体の発生に差を認めなかったと報告されている6,9,10)。しかし,肝門部近傍や肝外臓器と接するような部位は一般的に合併症が起こりやすい20)。また,消化管穿孔に限るとPEI と比べてRFA に多く報告されており17),特に術後の癒着が存在する症例では消化管穿孔の危険性が高まる21)。そのため,本邦から報告される多くの後ろ向き研究20,22,23)では,このような条件において人工腹水下RFA やPEI を行うことで経過が良好であった症例を報告している。
投票結果
◉推奨文「穿刺局所療法としてRFA を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ30
- 穿刺局所療法にTACE を併用することで予後を改善できるか?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 比較的大型の腫瘍に焼灼療法を適用する場合には,TACE との併用で予後改善が期待できる。
背景
焼灼療法前にTACE を行う意義は,血流によるcooling effect を減弱させ焼灼範囲の拡大を得ることである。焼灼療法にTACE を併用することが肝細胞癌患者の予後を改善するかについて検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ33 の引き継ぎであるため,第4 版の検索に2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに発表された論文を追加検索した。検索式より抽出された177 篇から7 篇を一次選択とし,さらに穿刺局所療法vs. TACE+穿刺局所療法の比較試験(RCT,non-RCT)の2 篇を二次選択として採用した。なお,第4 版で採用された16 篇からメタアナリシス1 編を「比較的古い年代,雑多な治療法比較,少ない症例数」を理由に不採用とし,計17 編を採用した。
●焼灼範囲について
Kitamoto らの報告1)では,TACE+RFA 群ではRFA 単独群と比べて有意に大きな壊死がみられた(TACE+RFA 群,RFA 単独群の焼灼範囲の長径と短径平均値:39.9 mm,32.3 mm vs. 34.6 mm,26.0 mm;p<0.05)。
Morimoto ら2)の報告によれば,TACE+RFA 群およびRFA 単独群で焼灼範囲の長径と短径の平均値がそれぞれ50 mm,41 mm と58 mm,50 mm(p=0.012)と,TACE+RFA 群でRFA 単独群に比較して有意に焼灼範囲の増大がみられた。
●生存について
TACE+RFA とRFA 単独を比較した研究3-10)を表1 に示す。患者背景が異なるものの,TACE+RFA がRFA 単独と比べて有意に生存率が良好であったとする報告が6 篇と,差を認めなかったとする報告が2 編であった。また,7 篇のメタアナリシス11-17)においてTACE+RFA 群で有意に良好な生存であったと報告されている。
解説
先行するTACE の施行時期については同日から2 カ月以内とさまざまであるが,本邦からの報告では1 カ月以内とするものが多い。
RFA にTACE を先行することで焼灼範囲の拡大がもたらされることは各報告の一致した見解であり,その焼灼域の拡大によって治療回数や局所再発の減少に寄与すると期待される。特にMorimoto ら2)の報告によると,治療セッション数(TACE+RFA vs. RFA:1.1 vs. 1.4,p<0.01)と局所再発(TACE+RFA vs. RFA:6% vs. 39%,p=0.012)が有意に少なかった。
TACE+RFA とRFA 単独の比較ではTACE+RFA が生存に寄与することを支持する論文が多い。Jiang ら15)のメタアナリシス(RCT 8 件と後ろ向きコホート11 件)を例に挙げると,1 年生存率に対するオッズ比が2.14(95%CI:1.57~2.91,p<0.001),3 年生存率のオッズ比が1.98(95%CI:1.28~3.07,p=0.001),5 年生存率のオッズ比が2.70(95%CI:1.42~5.14,p<0.001)とTACE+RFA に強い優位性があることが報告された。また,サブグループ解析では腫瘍径の大きい条件でより生存に寄与するとの報告もあることから,推奨を「比較的大型の腫瘍に焼灼療法を適用する場合には,TACE との併用で予後改善が期待できる」とした。
投票結果
◉推奨文「比較的大型の腫瘍に焼灼療法を適用する場合には,TACE との併用で予後改善が期待できる」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ31
- 造影超音波やfusion imaging は局所治療の治療ガイドとして有用か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 造影超音波やfusion imaging はB モードで描出が困難な肝細胞癌に対する治療ガイドとして有用である。
背景
穿刺局所療法は超音波ガイドで行われるがゆえに,超音波画像で病変を明瞭に描出できるかどうかが治療成功を左右する。さらに,局所再発を未然に防ぐために,治療では腫瘍だけでなく焼灼マージンを含めた焼灼範囲の確保が求められる。そのため,腫瘍の境界を正しく把握することは焼灼マージンを想定するうえで重要である。しかし,①腫瘍自体の境界が不明瞭(被膜形成が不十分など),②複数の大きな再生結節に小肝癌が紛れている(肝硬変を背景にして),③治療域に接する小肝癌が同様のエコーパターンを呈する,などの条件では超音波B モードによる肝癌結節の描出や同定が困難である。このようなB モードで描出不良な肝細胞癌に対する穿刺局所療法の工夫として,造影超音波ガイドやfusion imaging ガイドが行われており,これらの治療ガイドの有用性について検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ34 の引き継ぎであるため,第4 版の検索に2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに発表された論文を追加検索した。検索式より抽出された68 篇から一次選択として20 篇を選択し,二次選択で造影超音波ガイド・fusion imaging ガイド治療について比較を行っている8 篇を採用した。そして,第4 版で採用された12 篇のうち1 篇を除いた11 篇と合わせ,計19 篇を採用した。
●造影超音波ガイド
Minami ら1)は,B モードで描出不良な肝癌108 結節について,造影超音波ガイドにてRFA を行ったところ,平均治療セッションは1.1±0.3 であったと報告している。
Masuzaki ら2)は,造影超音波ガイドでRFA を行った291 例について類似対照群2,261 例と比較し有意に少ないセッション数で治療を完遂できた(1.33 vs. 1.49,p=0.0019)と報告している。
●Fusion imaging ガイド
Minami ら3)は,B モードで描出不良な肝細胞癌について,fusion imaging ガイドでのRFA がB モードガイドと比べてより効果的に治療できたと報告している(平均治療セッション:1.1 vs. 1.3,p=0.021)。
Lee ら4)は,B モードとCT/MRI fusion imaging での病変指摘における陽性的中率を比較したところ,B モードが78.8%でfusion imaging が90.5%(p=0.0003)であったと報告している。
●造影超音波とfusion imaging の組み合わせ
Minら5)は,Bモードで不明瞭な肝細胞癌について造影超音波とCT/MRI fusion imaging の組み合わせで治療を行ったところ手技成功率92.0%であったと報告している。
Minami ら6)は造影超音波,CT/MRI fusion imaging,両者の組み合わせガイドで3 年局所再発率を比較したところ,それぞれ4.9%,7.2%,5.9%で有意差を認めなかったと報告している。
Ma ら7)は,B モードによるRFA と比較して,CT/MRI‒CEUS fusion imaging を用いた場合には手技成功率・局所再発率・無再発生存率・全生存期間のいずれも有意に向上したと報告し,またJu ら8)は,30 mm 以上あるいは脈管近傍などの難易度の高い症例で組み合わせガイドが特に有用であると述べている。
●Fusion imaging ガイドの新たな応用
US‒US overlay fusion は焼灼直後の焼灼範囲をリアルタイムに把握できる治療支援技術であり9),US‒US overlay fusion と従来治療法とを比較したところ,5 mm 以上のsafety margin の確保率が有意に高く(89.3% vs. 47.0%,p<0.01),局所再発率は有意に低いことが示された(0.8% vs. 6.0%,p=0.022)10)。
Huangら11)は造影超音波,CT/MRI fusion imaging,3‒D US‒CEUS fusion imaging の3 群間でRCT を行い,fusion imaging 群で局所再発率が低い傾向(ただし,有意差なし)にあること,難易度の高い部位や多発例で特にfusion imaging が有用であることを報告している。
解説
超音波造影剤ペルフルブタンマイクロバブルにより,①どの時相でも連続観察ができる安定的な病変の描出,②Kupffer 相での欠損像をターゲットにできる視認性の向上がもたらされた12,13)。さらに,defect re‒perfusion imaging14)の活用はB モード描出不良の肝細胞癌の局在および質的診断を向上させ,造影超音波ガイドをより効果的にさせている。しかし,深部病変や硬変肝の進行した症例では病変の描出が難しい場合があることに留意が必要である。
Fusion imaging とは,あらかじめ取得されたCT やMRI のボリュームデータについて磁気センサーを装着した超音波プローブと位置情報を同期することで,B モード画像と近似のmulti planar reconstruction(MPR)画像をリアルタイムに表示する画像技術である15‒18)。特に,造影超音波では描出が難しい条件でも参照画像を表示できることはfusion imaging のメリットの一つである。さらに,機器の進歩(アクティブ・トラッカー,位置センサー内蔵プローブなど)により画像調整の精度の向上と手間の軽減が図られている。ただし,肝臓のねじれや呼吸性移動からfusion imaging も必ずしも実像に完全一致するわけではないことは念頭に置かなければならない。
造影超音波とfusion imaging を併用した治療報告6)では,「B モードで不明瞭であることに加えて,造影超音波もしくはfusion imaging で同定困難」と他群と比べて条件が厳しいにもかかわらず組み合わせガイドの局所再発率に差がなかった。造影超音波とfusion imaging は競合するものでなく19),状況に合わせて選択もしくは併用することで局所コントロールを目指すことが治療において肝心と思われる。
上記ガイドの目的は「(描出不良な肝細胞癌の)ターゲティング」であるが,焼灼範囲の「モニタリング」として新たなfusion imaging の応用が提唱されている。US‒US overlay fusion とは,焼灼療法前後の超音波画像の重ね合わせから,焼灼高エコー域に腫瘍像が投影されることでablative margin を可視化する画像技術である9,10)。治療中にablative margin を評価しながら焼灼を進められることから,US‒US overlay fusion の治療応用はより精度の高い焼灼療法(precise ablation)に寄与するものとして期待される。
以上から第4 版と同様に造影超音波やfusion imaging は治療ガイドとして有用と判断できる。今回の検索によりRCT の1 篇が加わったがCT/MRI‒CEUS,3D US‒CEUS,CEUS の各ガイドを比較して有意差がないというものであった。また,その他のエビデンスについて多くが後ろ向き研究で,症例数も百数十以下であることからエビデンスの強さをB とした。なお,これら造影超音波やfusion imaging は使用する超音波装置に依存する技術であり,造影感度やfusion 技術については機種間に違いがあることに留意する必要がある。
投票結果
◉推奨文「造影超音波やfusion imagingはB モードで描出が困難な肝細胞癌に対する治療ガイドとして有用である」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ32
- 穿刺局所療法の効果判定に有用な画像診断は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 穿刺局所療法の効果判定には,dynamic CT/MRI を推奨する。
背景
固形癌の治療効果判定基準としてRECIST1)が広く用いられている。しかし,肝細胞癌に対する穿刺局所療法においては根治的治療後も病変部が残存することから治療効果をRECIST で正しく判定することは難しい。そのため,肝細胞癌治療の効果判定については腫瘍の壊死効果を評価に取り入れたmodified RECIST2,3)が欧米で提唱された。また,本邦では『原発性肝癌取扱い規約第5 版』に合わせて肝癌治療効果判定基準(2015 年改訂版)4)がRECICL5)として発表されている。穿刺局所療法の効果判定に有用な画像診断に関して検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ35 の引き継ぎであるため,第4 版の検索に2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までに発表された論文を追加検索した。検索式より抽出された310 篇から5 篇を一次選択し,さらにCT とGd‒EOB‒DTPA 造影MRI,造影超音波を比較した論文の2 篇を二次選択で採用した。第4 版の9 篇と合わせて計11 篇を採用した。
●単純MRI
Koda らの報告6)では,86%の結節においてRFA 後にablative margin がT1WI で高信号rim として描出された。また,単純MRI とdynamic CT を比較したところ,ablative margin 評価について良好な相関を認めた(κ係数=0.716)。
●Gd-EOB-DTPA 造影MRI(EOB-MRI)
Granata ら7)は,病理学的に証明されたRFA 後の残存病変(42 例)評価についてGd‒EOB‒DTPA 造影MRI とdynamic CT を比較したところ,Gd‒EOB‒DTPA 造影MRI(RFA 後1 カ月)では感度92%,特異度97%,陽性的中率92%,陰性的中率97%であり,Gd‒EOB‒DTPA 造影MRI が有意にdynamic CT と比べて良好であったと報告している(p<0.05)。
Imai ら8)は,根治的RFA 後の再発病変のサーベイランス(97 例)において,3~4 カ月おきに造影CT とGd‒EOB‒DTPA 造影MRI の双方を行って多血性再発病変の検出精度を比較した。観察期間の中央値は385(86~1,141)日であった。48 例に認められた66 個の再発病変のうち,造影CT は26 例(54.2%),34 病変(51.5%)を検出した一方,Gd‒EOB‒DTPA 造影MRI は44 例(91.7%),59 病変(89.4%)を検出し,Gd‒EOB‒DTPA 造影MRI が有意にdynamic CT と比べて良好であったと報告している(p<0.001)。
●造影超音波
Kudo らの報告9)によるとdefect re‒perfusion imaging の手技を用いれば癌遺残部の指摘が容易であり,造影CT で指摘できなかった小結節についても肝細胞癌との診断ができた。
Zhou ら10)によるRFA 後のB モード像における腫瘍境界の経時的変化の研究では,RFA 翌日,3 日後,4 日後,5 日後の腫瘍境界の描出率はそれぞれ65.2%,54.3%,43.5%,39.1%であった。
Kong ら11)は,RFA 後に造影CT と造影超音波双方を用いて治療効果を検討した(60 例)。その結果,RFA 後1 カ月ならびに3 カ月の時点における焼灼領域は,造影CT と造影超音波との間で差はなく,かつ良好な相関を認めた(r2=0.617)。
解説
焼灼療法後の治療効果判定では焼灼マージンを含む画像評価における客観性や複数の結節を判定する必要性からdynamic CT/MRI を基本的検査として推奨する。また,推奨度はエビデンスの大きな内容変更がないため,推奨決定会議の投票の結果に基づき,引き続き「強い推奨」である。多くの研究ではdynamic CT がゴールドスタンダードとして用いられていることや本邦での検査機器の普及状況からdynamic CT が標準検査として位置づけられる。Gd‒EOB‒DTPA 造影MRI の有用性に関しては,Granata ら7)によって遺残病変の検出にはdynamic CT よりGd‒EOB‒DTPA 造影MRI が優れていること,Imai ら8)によってより長期にわたるRFA 後の再発病変のサーベイランスにおいてもdynamic CT よりGd‒EOB‒DTPA 造影MRI が優れていることが示されている。ただし,検討した件数が少ないことからさらなるエビデンスの集積は必要である。
焼灼療法後の治療効果判定には造影所見が非常に重要である。しかし,ヨードアレルギーや喘息などのアレルギー疾患の既往,腎機能障害のある症例ではCT/MRI での造影検査を回避しなければならない。特に,腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis;NFS)はMRI のガドリニウム(Gd)造影剤に起因する重篤な遅発性合併症である。腎機能障害が危険因子であり,GFR(糸球体濾過量)30 mL/min/1.73 m2 未満では原則として造影検査は禁忌とされる。上記のように造影検査が難しい条件での代替検査として,単純MRI や造影超音波は考慮される。単純MRI では組織性状のコントラスト分解能から腫瘍と焼灼域がそれぞれ明瞭に描出される場合も多い。また,造影超音波では造影剤における合併症リスクが少なく,優れた空間・コントラスト・時間分解能を有している。そのため,CT/MRI ではpartial volume effect によって指摘できない小病変を造影超音波では検出できたとする報告が多い。ただし,Zhou らが報告10)するようにRFA で焼灼された腫瘍はB モード像で経時的に不明瞭になる傾向がある。RFA 後翌日では腫瘍境界が1/3 の結節で不明瞭であり,造影超音波を組み合わせたとしても焼灼マージンの評価という点では制限がある。一方でKong ら11)は,RFA 後1 カ月,3 カ月における焼灼範囲の検討においては,造影超音波は造影CT と比較して差がなかったと報告している。
投票結果
◉推奨文「穿刺局所療法の効果判定には,dynamic CT/MRIを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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第6 章 肝動脈(化学)塞栓療法 TA(C)E
- はじめに
肝癌診療ガイドラインの肝動脈化学塞栓療法(TACE)は,2009 年版(第2 版),2013 年版(第3 版),2017 年版(第4 版)と版を重ねるにつれ少しずつCQ が変わってきている。第2 版のCQ には,CQ41「どのような症例がTACE/TAE のよい適応か?」,CQ42「TACE/TAE に使用する塞栓物質は何を用いるべきか?」,CQ43「TACE/TAE で(化学)塞栓すべき脈管は?」,CQ44「肝動脈化学塞栓療法(TACE)にイオダイズドオイル(リピオドール)と抗癌剤のエマルジョン注入は必要か?」,CQ45「リピオドールと抗癌剤の混合液(リピオドールエマルジョン)に使用する抗癌剤は何が選択されるべきか?」,CQ46「再TACE/TAE の時期の選択は?」,CQ47「TACE/TAE と他治療法の併用療法は有効か?」の7 つが採用されていた。2013 年の改訂では,第2 版のCQ41 はCQ37「どのような症例がTACE/TAE のよい適応か?」としてそのまま残り,第2 版のCQ42 からCQ45 は1 つのCQ,CQ38「TACE/TAE において塞栓物質や抗癌剤は何を用いるべきか?」に統一された。第2 版のCQ46 はCQ39「再TACE/TAE の時期の選択は?」となり,第2 版のCQ47「TACE/TAE と他治療法〔ラジオ波焼灼療法(RFA),手術,動注〕の併用療法は有効か?」は他の治療法の章に吸収させることで第5 章からは削除された。第3 版には新たにCQ40「TACE の効果判定に有用な画像診断は何か?」が新設された。2017 年の第4 版では,第3 版のCQ37 からCQ40 の表現は少し変わったが,CQ37「TACE/TAE はどのような患者に行うのが適切か?」,CQ38「TACE/TAE において塞栓物質や抗癌剤の選択はどのように行うのが適切か?」,CQ39「再塞栓療法の時期を決定する因子は何か?」,CQ40「TACE の効果判定に有用な画像診断は何か?」として残り,新たにCQ41「塞栓療法と分子標的治療薬を併用するのは適切か?」,CQ42「どのような場合にTACE 不応と考えるか?」が新設された。
2021 年版(第5 版)では新設されたCQ はなく,第4 版のCQ39「再塞栓療法の時期を決定する因子は何か?」が削除され残りの5 つのCQ は第4 版から引き継ぐかたちとなっている。
CQ33「TACE/TAE はどのような患者に行うのが適切か?」については推奨に第4 版と大きな変更はないが,エビデンスの追加により具体的な条件が加わった代わりにBCLC ステージングシステムの記載を削除した。
CQ34「塞栓療法において塞栓物質や抗癌剤の選択はどのように行うのが適切か?」,CQ35「TACE の効果判定に有用な画像診断は何か?」についてはそれぞれいくつかの新しいエビデンスの追加はあったものの,推奨は第4 版と同様である。CQ35 については第4 版同様,dynamic MRI にはGd-EOB-DTPA による造影MRI も含まれていることに留意されたい。
CQ36「塞栓療法と分子標的治療薬を併用するのは適切か?」については第4 版CQ41 を引き継いだCQ であるが,第4 版では「塞栓療法と分子標的治療の併用は,生存期間延長の効果を示す十分な科学的根拠がないので推奨しない。(弱い推奨)」としていたものを第5 版では「塞栓療法と分子標的治療薬の併用は,行うことを考慮してもよい。(弱い推奨)」と推奨が変更されている。これは第4 版の時点よりも主にソラフェニブとTACE/肝動脈塞栓療法(TAE)の併用療法に関するエビデンスが蓄積され,全生存期間延長を示すことはできなかったものの無再発生存期間を延長した報告もみられたこと,今後さらに両治療の併用による有効性を検討する研究が行われうることへの期待から「行うことを考慮してもよい」との推奨を採択した。
CQ37「どのような場合にTACE 不応と考えるか?」については推奨の内容自体は第4 版のCQ42 とほぼ同様である。ただし第4 版の時点に比較すると不応の条件について検証が進んだエビデンスが新たに採用されている(CQ37:文献26 OPTIMIS 試験)。一方でOPTIMIS 試験は非介入の傾向スコアマッチングを用いた試験であるため,推奨決定会議では依然弱い推奨にとどめるべきであるとの結論に至った。
TACE/TAE に関するエビデンスは強固に検証されているものも少なくないが,比較的新しい治療である分子標的治療薬との併用や,分子標的治療への移行を意識したTACE 不応の概念についてはまさに現在エビデンスの構築が進行している段階であり,第4 版や第5 版では弱い推奨とせざるを得なかったところがある。今後発表される結果によってはより具体的な条件の追加や推奨度が強まることが期待される。
- CQ33
- TACE/TAE はどのような患者に行うのが適切か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 1. 腫瘍個数4 個以上もしくは1~3 個で腫瘍径が3 cm 超,Child-Pugh 分類A~B で,手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞癌に対する治療法として推奨する。
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
-
- 2. 門脈腫瘍栓を有する多血性肝細胞癌のうち,手術不能症例に対する治療法として考慮してよい。
背景
本ガイドラインの治療アルゴリズムにおいて,TACE/TAE は手術療法,ラジオ波焼灼療法(RFA),薬物療法に並ぶ有効な治療選択肢と位置づけられている。一般にTACE/TAE の治療対象となるのは肝動脈造影像で腫瘍濃染を有する多血性肝細胞癌であり,古典的肝細胞癌(中分化型,低分化型肝細胞癌)もしくは一部の早期肝細胞癌が含まれるが,腫瘍因子のみでなく患者因子を含めたステージングシステムに沿った治療選択を行うべきである。現状でのTACE/TAE の治療選択について検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ37 の文言を軽微に改変したものである。今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,557 篇が抽出された。そのなかから「TACE/TAE の適応について議論した論文を採用する」という方針の下に一次選択で20 篇,「エビデンスレベルの高い論文を採用する」という方針の下に二次選択で4 篇を新たに採用した。さらに2016 年7 月以降に発表された4 篇をハンドサーチにて加え,第4 版で採用された16 篇のなかから継続採用された10 篇と合わせて,最終的に18 篇を採用した。
手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない進行肝細胞癌に対するTACE/TAE は欧米を含め標準的な治療法となっている1,2)。2000 年代に進行肝細胞癌に対するTACE/TAE は予後向上に寄与するとのランダム化比較試験(RCT)が2 篇報告された3,4)。いずれもOkuda 分類III,Child-Pugh 分類C は対象外とした論文であり,選択的カテーテル挿入下に,非癌部肝組織の障害の少ない化学塞栓が施行されている点で本邦でのTACE/TAE の方法と変わらないといえる。Cammà らのメタアナリシスでも5),全体の2 年死亡率は無治療群と比べ有意にTACE/TAE 群の方が少ない(オッズ比:0.54,95%信頼区間:0.33~0.89,p=0.015)と報告された。Lencioni らのシステマティックレビューでは6),リピオドールエマルジョンとゼラチンスポンジを用いたLip-TACE の生存期間中央値は19.4 カ月,1・3・5 年生存率は70.3・40.4・32.4%であった。また有害事象は悪寒,発熱,腹痛,悪心,嘔吐などの塞栓後症候群(47.7%)や肝機能増悪(52%)の頻度が高かったが,肝不全は1.0%,死亡率は0.6%であった。
本邦からはTakayasu らにより,肝切除不能肝細胞癌に対するLip-TACE の予後向上に寄与する因子に関する,日本肝癌研究会の全国原発性肝癌追跡調査報告の大規模な前向きコホート研究が2 篇報告された7,8)。1994~2001 年の8,510 症例の検討が行われた論文では,①本法は切除不能肝細胞癌に対する安全な治療法で5 年生存率は25%であり,②同治療法による独立した予後予測因子は,i)肝障害度,ii)Stage 分類,iii)アルファフェトプロテイン(AFP)(401 ng/mL 以上or 未満)であった。2000~2005 年の4,966 症例の検討が行われた論文では,①5 年生存率は34%と上昇し,②同治療法による独立した予後予測因子は肝障害度,Stage 分類,AFP に加え,PIVKA-II が加わった。
脈管内腫瘍栓を有する症例は禁忌とする報告があるものの2),肝機能障害が軽度の高度進行症例(脈管内腫瘍栓を有する症例や10 cm 以上の巨大肝細胞癌症例)でもTACE/TAE を中心とした他治療法との併用療法で長期生存可能症例が報告されている9,10)。また門脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌に対するTACE/TAE は予後向上に寄与するとしたメタアナリシスが存在する11)。1・3・5 年生存率は全体で29・4・1%でありbest supportive care(BSC)と比較して良好で,治療後肝不全の頻度は1%であった。また門脈一次分枝までにとどまる場合には5 年生存率は6%で,門脈本幹に進展する場合(0%)と比較して良好であった(p<0.001)。
解説
TACE/TAE の治療対象となる肝細胞癌は肝動脈造影像で腫瘍濃染を有する多血性肝細胞癌であり,古典的肝細胞癌(中分化型,低分化型肝細胞癌)もしくは一部の早期肝細胞癌が含まれる1,2)。海外で広く使われるBCLC ステージングシステムにおけるTACE/TAE の適応は,Child-Pugh 分類のA~B,performance status(PS)0 のStage B(intermediate stage)のみとされる2)。これは第4 版のガイドラインにおけるChild-Pugh 分類A もしくはB で腫瘍個数4 個以上(大きさを問わない)もしくは1~3 個で腫瘍径が3 cm を超える肝細胞癌とほぼ同様である。一方,2005 年以降均質な対象症例に対して行われた適応拡大に関するエビデンスレベルの高い論文は出ていないため,Child-Pugh 分類C の肝機能不良例や肝外転移症例におけるTACE/TAE は勧められない12)。
現行のガイドラインにおけるTACE/TAE の適応基準は腫瘍因子,肝予備能とも広い範囲を含む。ゆえにより具体的なTACE/TAE の適応を決定するため,いくつかのサブグループ化の試みが報告されている13-15)。このような観点から,TACE/TAE の適応基準内であっても最大限の効果が得られにくい病態,すなわちTACE 不適の概念が提唱されているが16,17),その妥当性についてはエビデンスがまだ十分であるとはいえないため,推奨文には加えていない。
脈管内腫瘍栓を伴う肝細胞癌にはTACE/TAE に加えて肝切除や薬物療法が適応となる。薬物療法との比較でエビデンスレベルの高い論文が存在しない点,肝切除との比較を行ったメタアナリシスでTACE は肝切除に生存率で劣る点18)に鑑み,手術不能な門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対するTACE/TAE の有用性については弱い推奨とした。
投票結果
◉推奨文1「腫瘍個数4 個以上もしくは1~3 個で腫瘍径が3 cm 超,Child-Pugh 分類A~B で,手術不能かつ穿刺局所療法の対象とならない多血性肝細胞癌に対する治療法として推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「門脈腫瘍栓を有する多血性肝細胞癌のうち,手術不能症例に対する治療法として考慮してよい」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ34
- 塞栓療法において塞栓物質や抗癌剤の選択はどのように行うのが適切か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 塞栓療法においては,抗癌剤を混合したリピオドール®(ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル)と多孔性ゼラチン粒を使用したconventional TACE(cTACE)あるいは,薬剤溶出性の球状塞栓物質を用いたTACE(DEB-TACE)を推奨する。
背景
本ガイドラインの治療アルゴリズムにおいて,塞栓療法は切除不能肝細胞癌に対して行われる治療である。本治療法は比較的長い期間に複数回にわたって行われることが多く,肝細胞癌患者の経過中において選択される頻度の高い治療法である。使用可能な塞栓物質や抗癌剤も複数あり,それらの組み合わせはさらに多様となる。このように多種の治療選択肢があるなかで,塞栓物質や抗癌剤の選択をどのように行うのがよいか検討する。
なお,本稿においてTAE とはリピオドール® やゼラチンスポンジ細片,多孔性ゼラチン粒や球状塞栓物質などの塞栓物質を用いて肝細胞癌の栄養血管や血洞を塞栓する治療法,TACE とは前出の塞栓物質を使用する際に抗癌剤を同時に用いる治療法とする。また,cTACE とは抗癌剤を混合したリピオドールエマルジョンと多孔性ゼラチン粒を使用したTACE を指す。また,球状塞栓物質が2014 年に保険収載となり,薬剤溶出性球状塞栓物質(drug-eluting beads;DEB)を用いたTACE(DEB-TACE)あるいは球状塞栓物質のみでのTAE(bland TAE)が可能となっている。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ38 を引き継いだCQ である。今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,269 篇が抽出された。そのなかから「異なる塞栓物質あるいは抗癌剤使用の有無における治療成績の比較を行っている論文や,使用した抗癌剤の違いによる治療効果の比較を行っている論文を採用する」という方針の下に一次選択で35 篇を選択した。さらに,二次選択で症例研究や症例数が30 例以下の前向き試験を除いて8 篇を採用,ハンドサーチにて選択した1 篇を加え,第4 版の47 篇から16 篇を削除し計40 篇を採用した。
●塞栓物質の選択
1)リピオドール® および多孔性ゼラチン粒
2008 年に発表された本邦におけるアンケート結果報告では,リピオドール® はTACE 例の90%以上で使用されており,本邦ではTACE 時にリピオドール® を使用するのが一般的であった1)。
リピオドール® とゼラチンスポンジ細片を併用したTAE でゼラチンスポンジ細片のみを使用したTAE と比べ生存率が有意に良好という報告がなされている2,3)。
なお,2006 年に,ある程度規格化された無菌の球形の塞栓物質である多孔性ゼラチン粒(粒子径1 mm と2 mm:ジェルパート®)が保険収載となり,現在はゼラチンスポンジ細片に替えて多孔性ゼラチン粒が用いられている。ゼラチンスポンジ細片と多孔性ゼラチン粒の間には治療効果や副作用の発現率は大差がないという報告がある4)。
2)球状塞栓物質
DEBは塞栓物質であるビーズに薬剤をあらかじめ含浸させ,塞栓後に周囲に徐放する性質を利用する。そのため抗癌剤が腫瘍内に高濃度に残存し,末梢血に流出しないため抗癌剤による全身性の副作用が少なく治療効果の高い治療法であるとの短期成績が出ている5)。
DEB-TACE とbland TAE の比較試験では,bland TAE と比較してDEB-TACE では有意に腫瘍壊死率が高いとの報告がある6)。
また,cTACE とDEB-TACE の比較試験では全生存期間に関しては差がないとする後ろ向き研究が多い7-17)が,完全奏効率に関してはcTACE が有意に高いという前向き研究がある18)。
有害事象の面ではcTACE の方が血中に放出される抗癌剤量が多いとされ19),DEB-TACE と比較してcTACE において腹痛や発熱などの塞栓後症候群の出現は有意に高い8,9,12,14,20)。一方,胆管障害の発生はDEB-TACE で多い12)という結果が得られている。
ビーズのサイズと治療効果の関係の検討では,ディーシービーズ® において,100~300μm と300~500μm の比較では奏効率に差はないものの,小径の100~300μm で塞栓後症候群が少なかった21)と報告されている。さらに小径の75~150μm と100~300μm の比較では,奏効率に差はないものの,より小径の粒子で胆道系の合併症が多くみられたと報告されている22)。一方,ヘパスフィア® についてはcTACE に比べると血中への抗癌剤の漏出は少ないが,従来品である50~100μm とより小径の30~60 μm の粒子間の治療効果の比較はなされていない19)。
なお,欧州におけるDEB-TACE とcTACE の間のコスト面の比較では,両者に明らかな差はみられていない23)。
●TACE で使用する薬剤の選択
2 種類の異なる抗癌剤(エピルビシンvs. ドキソルビシン)を使用したリピオドールエマルジョン注入後,ゼラチンスポンジ細片で塞栓療法を行ったRCT では24),両者間に副作用の差は認めず,低リスク群では後者の生存率が良好であった(p=0.018)が全体では両者間に差は認めていない。
低用量シスプラチンとドキソルビシンを用いたリピオドールエマルジョン注入後,塞栓(ゼラチンスポンジ細片使用,前者31%,後者50%)した症例での生存率比較では,前者が後者に比して有意に良好であった(p<0.05)25)との報告がある。切除不能進行肝細胞癌に対する動注用シスプラチン製剤を用いたシスプラチン・リピオドールサスペンジョンの肝動注化学療法の有用性に関する報告26,27)もみられるが,いずれもエビデンスレベルの高いものはない。
シスプラチン・リピオドールサスペンジョンによるTACE とドキソルビシン・リピオドールサスペンジョンによるTACE の比較では,シスプラチンの治療効果が有意に高いとする報告28,29)と有意差はないとする報告30)がある。
シスプラチン・リピオドールサスペンジョンに多孔性ゼラチン粒などゼラチンスポンジによる塞栓を追加したTACE では,塞栓なしの肝動注化学療法の場合に比べて治療効果が優れるという報告がある26)。
親油性でリピオドール® に懸濁しやすいプラチナ製剤であるミリプラチンを使用したTACE とエピルビシンを使用したTACE を比較した前向き検討では両者の全生存期間に有意差はみられなかったが,ミリプラチンでは副作用の発生頻度が低いという結果が得られている31)。
解説
リピオドール® は,腫瘍血管および類洞にトラップされ停滞するため,抗癌剤を混合したリピオドールエマルジョンはドラッグデリバリーシステムにおける担体の役目を果たしている32,33)。また,本邦では,球状塞栓物質が2014 年初頭より特定保険医療材料として保険収載となり,3 種類の球状塞栓物質が使用可能となっている。薬剤溶出能をもたないものはbland beads,薬剤溶出能をもつものはDEB と呼称される。肝細胞癌に対してはbland beads によるbland TAE よりもDEB を用いたDEB-TACE が一般的である。
TACE とTAE の比較に関して,2002 年のメタアナリシスでは,進行肝細胞癌に対するTACE がTAE に比して生存率が良好であるとの結果は得られていない。その原因として,対象となるTACE は,ほぼ全肝に施行されたため非癌部肝組織の障害が大きく関与した可能性が挙げられる34)。本邦では選択的あるいは超選択的cTACE の施行が主流であり,過去の全肝TACE を基にしたメタアナリシスの結果をそのまま適用することはできず,現状に即した検討が必要である。
なお,本邦では未承認のため使用できないが,ベータ線放出核種である90Yttrium を利用した球状塞栓物質を用いた塞栓療法は放射線塞栓療法(transarterial radioembolization;TARE)と呼ばれ,塞栓効果と腫瘍内からの放射線照射を組み合わせた新たな塞栓療法として主に欧米で確立しつつある35)。cTACE との比較では,有効性は同等であったものの,より多血性の性質が少ない腫瘍や脈管侵襲を伴った進行例での治療効果が期待されている。
本邦ではリピオドール® を使用したcTACE が主であり,欧米はDEB-TACE が主であるが,それぞれの有効性に明らかな違いは見出せていない。さらに実臨床においては,比較的小型の肝細胞癌に対して根治目的の塞栓療法の場合はcTACE を,巨大な肝細胞癌に対する塞栓療法ではDEB-TACE を行うなど両者は排他的ではなく症例に応じて使い分けられる場合も多い。したがって塞栓療法で使用する塞栓物質についてはリピオドール® とDEB の間に優劣がない状況として,両者のいずれかを塞栓物質として用いることを推奨とした。
リピオドールエマルジョンとして使用される抗癌剤はエピルビシン,ドキソルビシン,マイトマイシンC,シスプラチン,ネオカルチノスタチン24,33,36-40)など,さまざまな薬剤が使用されてきた。さらに本邦では水溶性を高めた動注用シスプラチン製剤が2004 年から,リピオドール® に懸濁しやすいプラチナ製剤であるミリプラチンが2010 年より使用されているが,それら薬剤の違いによるTACE の有効性の差は確認されていないこと31),また,安全性の違いについてのエビデンスレベルの高い報告がなされていないことから,抗癌剤は併用すべきであるが現時点では推奨すべき特定の抗癌剤はない状態である。
改訂委員会では上記に基づき投票を行い,cTACE あるいはDEB-TACE を行うことを強く推奨することが採択された。使用する抗癌剤については推奨すべき特定のものがないため,協議により第5 版では推奨文としては掲載しないことにした。
投票結果
◉推奨文「塞栓療法においては,抗癌剤を混合したリピオドール®(ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル)と多孔性ゼラチン粒を使用したconventional TACE(cTACE)あるいは,薬剤溶出性の球状塞栓物質を用いたTACE(DEB-TACE)を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ35
- TACE の効果判定に有用な画像診断は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- Dynamic CT もしくはdynamic MRI を推奨する。
背景
TACE の効果判定にさまざまなモダリティが用いられており,高いエビデンスレベルで推奨される画像診断の検討が必要である。TACE の効果判定に有用な画像診断について検討した。
サイエンティフィックステートメント
今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,381 篇が抽出された。そのなかから「TACE の効果判定の方法自体を検討している文献を優先する。TACE 自体の治療効果を検討した大規模前向き試験も,その試験で用いられている効果判定法を参考にするため選択してよい」という方針の下に一次選択で29 篇,二次選択で8 篇を新たに採用し,第4 版の20 篇と合わせて計28 篇を採用した。
CT がTACE の効果判定の第一選択であることは,広く一般的な見解である。リピオドールCT において病変に完全にリピオドール® が集積した場合は病変の98%,集積が不完全な場合は病変の64%に壊死がみられ,集積パターンにより治療効果判定が可能とされている1)。腫瘍内のリピオドール集積が不完全であると,造影剤による濃染と不均一なリピオドール集積の区別が困難になり,さらにリピオドール集積が病変部の血流動態に影響を与えると腫瘍濃染の判定が難しくなる2)。Dual-energy CTを用いたヨードマップによりリピオドール® の集積を有する症例における再発を描出する試みが第3 版の発刊以降に報告されているが3),dual-energy CT の治療効果判定に関する新たな文献は追加されなかった。また,CT での評価方法でも,qEASL はRECIST,modified RECIST,EASL 基準よりもTACE 後の治療効果判定として生存率と再発の検出感度が高いとの報告もある4)。
造影超音波によるTACE 治療効果判定の報告では,残存腫瘍の診断能の検討において造影CT よりも優れており5),TACE 施行翌日の造影超音波がTACE 施行1 カ月の造影CT よりも残存病変の検出において高い感度を示したとされている6)。今回の改訂でも,造影超音波によるTACE 治療効果判定の報告では,残存腫瘍の診断能において造影CT より優れるという報告が引き続き積み重ねられている7-9)。ただし造影CT は造影超音波よりも残存病変同定の特異度が優れているとの報告もある7)。TACE 手技中に施行するコーンビームCT についての報告では,腫瘍の辺縁に沿ってみられる造影剤貯留がTACE 治療効果と関連があること10),コーンビームCT による灌流画像により残存病変の評価が可能であること11)などが報告されているが,現時点ではTACE 治療効果判定についてのまとまった報告は今回の改訂においても確認できなかった。薬剤溶出性球状塞栓物質を用いたTACE(DEB-TACE)後の治療効果判定にperfusion CT を使用した2 篇では,有用な評価perfusion CT パラメータが示されているが,他画像と比較した検討ではない12,13)。
Dynamic MRI のTACE 後治療効果判定における有用性については1990 年代より報告されている14,15)。Dynamic CT とdynamic MRI の比較において,残存病変を過小評価する傾向がCT にみられ16),移植肝を用いた検討ではMRI はCT よりも高い感度および特異度を示したとされている17)。リピオドールCT,パワードプラー超音波,dynamic MRI の比較においてはMRI が感度,特異度,正診率において優れていたとされている18)。TACE 施行1 カ月後のdynamic MRI においてみられる腫瘍濃染がTACE 施行6 カ月後の再発巣と高い一致を示し,再発予測の可能性も示されている19)。今回新たに採用した13 篇のメタアナリシスでは,dynamic MRI はTACE 後治療効果判定に有用としているものの,他の画像診断方法との比較は行われていない20)。
MRI の拡散強調像による報告では,肝移植での検討で病変部の完全な壊死の評価においてdynamic MRI の方が優れており21),TACE 後の再発予測の検討ではリピオドールCT と有意差はみられなかったとされている22)。Dynamic MRI に拡散強調像を付加することによりTACE 施行後の再発病変の検索において感度は上昇するが,特異度は低下して正診率は変わらないとされており23),拡散強調像の顕著な有用性は示されていない。拡散強調像で得られるパラメータであるapparent diffusion coefficient(ADC)によるTACE 治療効果判定を検討する報告がいくつかある。TACE 治療後早期のADC がTACE の治療効果判定に有用であり24),またTACE 治療前後においてADC が低い症例ではTACE 治療効果が不良であったとされている25,26)。
FDG-PET を用いたTACE 治療効果判定が第3 版以降にあり,TACE 治療後早期でのFDG-PET による治療効果判定が生存期間と関連がみられたとされており27),リピオドール® が高度に集積している症例においてCT よりもTACE 後の残存病変の判定に有用であったとされている28)。
解説
TACE の治療効果判定は,病変の治療効果評価のみならず,治療方針の決定にも関わる。特に,近年の薬物療法の進歩により,TACE 不応後の複数の治療選択肢が存在している現状では,TACE 治療効果の評価はますます重要性が増していると考えられる。AFP は肝細胞癌のマーカーであるが,TACE 後の再発において異常値とならない症例もしばしばあり,画像が治療効果判定において重要である。TACE の治療効果判定としてdynamic CT が一般的に用いられているが,リピオドール集積そのものの高い吸収値やビームハードニング効果などにより局所再発の評価が困難な場合がある。リピオドール集積に対するdual-energy CT の有用性については現在でも検討中である。MRI においてリピオドール® による病変描出の妨げはなく,造影剤を用いることにより残存病変を濃染像として描出することが可能である。また,高速3D dynamic 撮影法によりCT にも匹敵する薄いスライスでの撮影が可能になり,部分容積効果の影響を受けることなく,微小な濃染を捉えることが可能である。病変の血流診断ばかりでなく,MRI での拡散強調像,ADC での評価が,TACE 後残存,再発病変の評価に有用との報告もある。加えて,TACE をはじめとして,肝細胞癌の診療において頻回の画像検査が必要であり,放射線被曝の観点からもMRI での評価が求められてくると考えられ,今後のさらなる検討が必要である。造影超音波検査は,放射線被曝の観点と治療効果判定が造影CT よりも優れていることからも有用であるが,術者の技量に評価能が左右され検査の客観性の観点からは,補助的な運用が現実的である。コーンビームCT によるTACE 直後の評価により最終的な治療効果判定を予測する方向もあり,今後のTACE 治療後判定の方向性の一つと考える。
検査費用や検査時間の観点より,すべての症例の治療効果判定にMRI を利用することは現実的ではなく,またCT を用いた治療効果判定も臨床的には十分な有用性がある。よって,dynamic CT とdynamic MRI の双方を本ガイドラインでは推奨する。
投票結果
◉推奨文「Dynamic CT もしくはdynamic MRI を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ36
- 塞栓療法と分子標的治療薬を併用するのは適切か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 塞栓療法と分子標的治療薬の併用は,行うことを考慮してもよい。
背景
このCQ は,分子標的治療薬であるソラフェニブが広く用いられるようになり,局所治療との併用療法の成績も報告されてきたなかで,第4 版で新規に作成されたCQである。
サイエンティフィックステートメント
今回の改訂に際し,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,252 篇が抽出された。そのなかから「塞栓療法と分子標的治療の併用と非併用,複数の分子標的治療薬との併用療法の治療効果比較を行っているoriginal study を選択する。本邦で実行可能な治療法を優先する」という方針の下に一次選択で54 篇,二次選択で15 篇を採用した。第4 版の15 篇から残した11 篇と合わせて計26 篇を採用した。
TACE とソラフェニブの併用療法の成績はこれまで数多く報告されている。前向き研究としては,単アーム第II 相試験として切除不能例に対するDEB-TACE とソラフェニブの併用療法が2011 年に報告されており,安全性には問題がなく,忍容性があるという結果であったが,症例数が少ない1)。またChao らが多施設共同第II 相試験として,切除不能例に対するcTACE とソラフェニブの併用療法を報告しており,3 年生存率は86.1%であった2)。他にもDEB-TACE/cTACE との併用療法の第II 相試験が複数報告されており,概ね安全に施行可能であり,有効性が期待される結果であった3-5)。
RCT としては,Lencioni らがBCLC Stage B(intermediate stage)に対するDEB-TACE とソラフェニブ(プラセボ対照)併用療法の第II 相試験であるSPACE 試験が報告されているが,無増悪期間において臨床的に意味のあるソラフェニブの上乗せ効果は証明できなかった6)。他にも同様の対象でcTACE とソラフェニブ(プラセボ対照)併用療法の単一施設での試験が実施されており,ソラフェニブ併用群で無増悪期間の有意な延長が得られたと報告された7)。また日韓で行われたcTACE 後のソラフェニブ(プラセボ対照)併用の第III 相試験では,無増悪期間の有意な延長を得ることができなかったが,TACE 後のソラフェニブ開始時期など試験デザインが影響した可能性があるとされた8)。その後も切除不能例に対して,欧米よりDEB-TACE とソラフェニブ(プラセボ対象)併用療法の第III 相試験が報告されたが,やはり無増悪期間の有意な延長を示すことができなかった9)。しかし,近年本邦からのcTACE とソラフェニブ併用療法の第II 相試験で,併用療法群がcTACE 単独治療群に対して無増悪期間の有意な延長を得ることができ,初めてソラフェニブの上乗せ効果が示された。この要因として,TACE による治療継続が困難な状態になるまでは,試験治療を継続可能とした点が挙げられている10)。
一方,本来の分子標的治療薬の適応とされるBCLC Stage C(advanced stage)に対しては,TACE とソラフェニブの併用療法の有効性を示唆する後ろ向きコホート研究の報告があり11-13),その後本邦から単アーム第II 相試験が報告され,安全性に問題はなく有効性が期待される結果であった14)。大規模コホート研究でも,TACE とソラフェニブの併用療法がソラフェニブ単独治療よりも有意に生存期間を延長したと報告された15)。しかしcTACE とソラフェニブの併用療法とソラフェニブ単独治療のRCT が報告され,併用療法群で無増悪期間は延長したが,生存期間の有意な延長は認めなかったという結果であった16)。
TACE とソラフェニブの併用療法が有用である因子としては,門脈腫瘍栓を有する症例,治療開始後のソラフェニブ関連の皮膚障害や高血圧などが挙げられている17-21)。他の分子標的治療薬との併用療法では,cTACE とソラフェニブまたはスニチニブの併用療法の比較試験があり,cTACE とソラフェニブの併用療法群が生存期間で上回り,忍容性も高かった22)。
解説
TACE とソラフェニブの併用療法は,安全性については問題がなく忍容性があり,有効性が期待されるという報告が多いが,多くは後ろ向きコホート研究か単アームの第II 相試験相当である。RCT では無増悪期間を延長するとした報告はあるが,ソラフェニブ単独治療に対する併用療法の生存期間の延長を示した報告はなく6-10,16),RCT を含んだメタアナリシスでも同様の結論である23-26)。また他の分子標的治療薬との併用療法の有効性を示した前向き研究の報告もない。しかし,今後有効性を示唆する報告が新たに出てくる可能性も考慮して,塞栓療法(TACE)と分子標的治療薬の併用について投票が行われた。
投票結果
◉推奨文「塞栓療法と分子標的治療薬の併用は,行うことを考慮してもよい」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ37
- どのような場合にTACE 不応と考えるか?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
- 以下の3 条件のいずれかを満たした場合をTACE 不応と考える。
- ①2 回の適切なTACE を行っても標的病変の治療効果が不十分か,新たな肝内病変の出現
- ②脈管侵襲,肝外転移の出現
- ③腫瘍マーカーの持続的な上昇
背景
肝機能がChild-Pugh 分類A またはB で,脈管侵襲がなく,肝内に多発肝細胞癌を認め,そのうち1 病変は3 cm を超える病変であるか,4 個以上の病変が認められる場合にTACE が推奨される。適切なTACE は,肝細胞癌患者の予後に貢献する。しかし,再発病変に対してTACE を追加しても腫瘍制御の困難や,肝機能の悪化を来す症例を経験する。2009 年から分子標的治療薬が導入された。TACE 不応後症例に対し,TACE を繰り返すよりも分子標的治療に切り替えた方が予後延長に貢献する報告がある。近年,複数の分子標的治療薬が,肝細胞癌に対して保険収載され,TACE 不応後の複数の治療の選択肢が示された。したがって,適切な時期にセカンドラインの治療に切り替えるうえで,TACE 不応を定義することは重要である。
サイエンティフィックステートメント
「hepatocellular carcinoma」「TACE・embolization」「refractory・failure」をキーワードとして,第5 版では,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,112 篇が抽出された。そのなかから「TACE 不応の定義について言及している論文,TACE 不応後の治療や予後,TACE 不応の予測因子について議論している論文を採用する」方針の下に一次選択で21 篇,二次選択で14 篇を採用した。加えてハンドサーチにて5 篇を採用し,第4 版の11 篇と合わせて計30 篇を採用した。
2012 年および2014 年に本邦から以下のTACE 不応の定義が専門家のコンセンサスとして提唱された1,2)。①薬剤変更や選択血管の再検討を考慮したTACE 施行1~3 カ月後の治療効果判定のCT/MRI にて,治療結節の造影効果(50%以上)が残存する場合が2 回以上続くか,あるいは肝内腫瘍個数が増加している場合が2 回以上続く,②脈管侵襲の出現,③遠隔転移の出現,④TACE 施行直後にもかかわらず,腫瘍マーカーの一過性の低下のみで上昇傾向が続く。
TACE 不応の判断時期に関する明確なエビデンスはないが,TACE 後5 カ月以内での再発症例では全生存期間不良で,TACE 後5 カ月以内の再発症例では,TACE 以外の治療を選択すべきとの報告もある3,4)。また,外科切除後の肝細胞癌症例では,6 カ月以内の2 回以上TACE は,予後不良因子であり,TACE 不応に関与しているとの報告もある5)。1 回のTACE で治療効果が得られなくても2 回目のTACE で良好な治療効果が得られれば予後が延長するという報告6)もあり,2 回のTACE で,栄養動脈の再検討や薬剤変更によって効果が異なることが想定されることから,2 回以上の治療後にTACE 不応を判断することは適当であると考えられる7)。上記定義によりTACE 不応と判定された後もTACE を続けた場合の予後は,11.5 カ月から15.3 カ月と報告されている8-10)。後ろ向き研究ではあるが,TACE 不応後,TACE を繰り返すよりもソラフェニブ投与を行った方が,肝予備能の維持や進行肝細胞癌に至るまでの時間を延ばすことができ,予後の延長が得られるという報告や8,9),TACE 単独よりTACE とソラフェニブ投与の併用療法を行った方が良好な予後が得られるといった報告もある10,11)。
また,TACE 不応患者では5-FU 肝動注化学療法よりソラフェニブが有用との報告もあり12,13),TACE 不応後も適切なセカンドラインの治療へ移行することにより患者の予後延長が得られる可能性が示されている14,15)。TACE 不応後にソラフェニブ治療に移行した症例では,24.7 カ月から25.4 カ月の生存期間中央値が報告されている8,9)。ソラフェニブ治療の他にも,TACE に用いる薬剤をエピルビシンからプラチナ製剤へ変更したり16),塞栓物質を球状塞栓物質に変更したりすることで17)良好な奏効率が得られるとの報告もあるが,DEB-TACE 不応患者でもソラフェニブが有効との報告もある18)。TACE 不応後のソラフェニブ治療効果に関する文献では,ChE levels≧220 U/L 症例ではソラフェニブ≧400 mg 治療が継続可能となるとの報告19)やソラフェニブ治療後に門脈侵襲を来す症例では予後不良であるとの報告20)もあり,適切な薬物療法の選択が必要と考えられる。
TACE 不応にはHIF-1αやVEGF,C-Met が関与するとの文献や21,22),IL-8,miR-122 術前値23)などのバイオマーカーを術前に測定することでTACE 不応を予測するといった文献もある24,25)。
解説
現在使われているTACE 不応の定義は専門家のコンセンサスから決定されたものであったが,このTACE 不応の定義が前向き試験(OPTIMIS 試験)にて検証された26)。しかしながら,推奨決定会議においては,現在用いられているTACE 不応の定義は一定の妥当性は認められるものの,OPTIMIS 試験は前向きであるが,非介入の症例蓄積での解析であること,今回の改訂における採用文献にRCT はないことから,弱い推奨と決定された。
TACE 不応になれば薬物療法に速やかに切り替えるべきであることは,世界のコンセンサスが得られているものの,現在のTACE 不応の基準までTACE を継続すると肝予備能低下のため薬物療法への移行が不可能となる症例が少なからず存在する。TACE 不応後の薬物療法の選択肢が複数ある現状では,肝予備能を可能な限り温存した,より一層の適切なTACE が求められる。すなわち,血管造影装置などに装備された栄養血管同定のための支援ソフトおよび,細径マイクロカテーテルを使用した超選択的TACE(ultra selective-TACE)や治療域の血行動態を変更および塞栓物質の圧入が可能なマイクロバルーンカテーテルを用いたballoon occluded-TACE(B-TACE)を,個々の症例さらには個々の病変に対して,肝予備能を可能な限り温存して適切に選択することが必要である。
また,近年,TACE によりChild-Pugh 分類B になりやすい病態やTACE の効果が期待できない病態すなわち,「TACE 不適」症例にTACE を施行することは避けるべきであることが,専門家のコンセンサスとして提唱された27,28)。「TACE 不適」の病態は,①TACE 不応になりやすい病態:up-to-seven 基準外のような腫瘍のサイズ,個数の基準,②肝予備能が低下しやすい病態:up-to-seven 基準外,albumin-bilirubin(ALBI) grade 2 以下の病態,③TACE の効果が期待できない病態:単純結節周囲増殖型,多結節癒合型,塊状型,浸潤型,びまん型など腫瘍被膜がなく微小脈管侵襲を高頻度に伴う腫瘍形態,低分化型肝癌などの結節自体の表現型と提唱されている。TACE 不適の病態はTACE 禁忌ということではなく,TACE 不適の病態にレンバチニブなどの奏効率の高い薬物療法を先行させたり,薬物療法とTACE を組み合わせることにより,肝予備能を保ちながら腫瘍制御を行っていくべきであるとのエキスパートオピニオンが提唱されている29,30)。
今後は,TACE 不応後の適切な時期に薬物療法へ移行するためにも,適切なTACE とTACE 不応の判定が求められ,薬物療法移行後も,薬物療法継続が困難な症例や薬物療法の効果が不十分な症例では,適切なTACE を追加していくことも考慮すべきである。
投票結果
◉推奨文「以下の3条件のいずれかを満たした場合をTACE 不応と考える。①2 回の適切なTACE を行っても標的病変の治療効果が不十分か,新たな肝内病変の出現,②脈管侵襲,肝外転移の出現,③腫瘍マーカーの持続的な上昇」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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第7 章 薬物療法
- はじめに
肝細胞癌に対する薬物療法の最初のエビデンスは,2008 年に報告されたソラフェニブとプラセボを比較した二重盲検ランダム化比較試験(RCT)のSHARP 試験で,ソラフェニブがプラセボと比較して生命予後を改善することが示されたことである。この結果からソラフェニブが進行肝細胞癌に対する一次薬物療法の標準的治療となり,2009 年5 月から本邦で保険収載となった。
その後,ソラフェニブを対照とした一次薬物療法の開発試験が多く行われたが,ソラフェニブに対して優越性または非劣性を示すことができた薬物療法はなかった。ようやく2017年にレンバチニブがソラフェニブに対して非劣性を示したことが報告され,2018 年3 月に保険収載となった。さらに2019 年に免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブと血管新生阻害薬であるベバシズマブとの併用療法がソラフェニブを対照としたRCT において生存期間延長を示したと報告され,2020 年9 月に保険収載となった。現在,免疫チェックポイント阻害薬を用いた併用療法の効果を検討する複数の第III 相試験が進行中である。
また,ソラフェニブ治療後の二次薬物療法の開発試験も進められ,2017 年にソラフェニブにて進行のあった症例に対して,レゴラフェニブが生存期間延長を示したと報告され,2017 年6 月より保険収載となった。さらに,ラムシルマブがソラフェニブ治療後の二次薬物療法として,アルファフェトプロテイン(AFP)400 ng/mL 以上の症例に対して行ったRCT にて生存期間延長を示したと報告され,2019 年6 月に保険収載になった。カボザンチニブもソラフェニブ治療後の二次薬物療法として,プラセボを対照としたRCT にて生存期間延長を示し,2020 年11 月に保険収載となった。
このように現在,一次薬物療法としてソラフェニブ,レンバチニブ,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を用いることができ,二次薬物療法としてレゴラフェニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブを用いることができるようになった。
一方,本邦では以前から肝内進行例に対して肝動注化学療法が行われてきている。現在複数の全身薬物療法が登場し,肝動注化学療法による治療は減りつつあるものの,主要脈管侵襲例を中心に実臨床では依然として行われている。
今回の改訂ではCQ を見直し,2017 年版(第4 版)のCQ43「切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?」は,CQ39「切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法に何を推奨するか?」とCQ40「切除不能進行肝細胞癌の二次薬物療法以降の治療に何を推奨するか?」に分けた。第4 版のCQ45「薬物療法の治療効果予測因子は何か?」とCQ47「薬物療法の副作用とその対策は何か?」は削除した。また薬物療法の適応として,CQ38「薬物療法は,どのような患者に行うのが適切か?」を新たに追加した。さらに前述のように複数の薬物療法が使用可能となっていることより,今回「薬物療法アルゴリズム」を作成した。
今回の改訂では,2020 年1 月31 日までの英文論文に対して,各CQ に設定した検索式により該当した論文についてGuideline Manager を用いWeb 上で独立した2 名により評価し一次選択を行い,一次選択論文についてアブストラクトを評価し二次選択を行った。意見の不一致については議論のうえ解決した。これまでと同様,塞栓を含む治療,手術前後の薬物療法,第I 相第II 相レベルの開発中の薬剤や既に使用されなくなった薬剤を用いたものは除外し,さらに抗腫瘍効果判定があいまいなものも除外した。記載不十分やデータ抽出の重複のあるシステマティックレビューも除外した。
また,検索期限の2020 年1 月31 日以降に報告された大規模RCT の結果に関する論文,および検索式にて検索されなかった重要論文または学会報告についてハンドサーチにて追加した。一次選択以降の論文についてはAbstract Table にまとめた。
エビデンスレベルについては,エビデンステーブルを基に改訂委員会にて議論し決定した。推奨は担当者で推奨案を作成し,推奨決定会議にてエビデンスレベルを評価した後に議論し決定し,推奨度についてはvoting にて決定した。
今回新たに作成した薬物療法アルゴリズムは薬物療法担当者で草案を作成し,改訂委員でメールを中心に議論し最終案を作成し,改訂委員会にて議論しvoting にて決定した。
肝細胞癌に対する薬物療法の開発試験が現在も多く行われている。次の改訂までにいくつかの新しいエビデンスが発表され,これらの薬剤が保険収載されることが予想される。これらの新規薬剤に関しては,第4 版と同様に学会発表や論文発表された時点ではなく,保険収載となった時点で,速やかにエビデンスを評価し推奨に正式に反映し,日本肝臓学会ホームページにて公開していく方針である。
肝細胞癌薬物療法アルゴリズムの解説 ※2023年5月30日改訂
肝細胞癌に対する薬物療法が進歩し,本邦でも既に6 つの薬物療法が保険収載されていることから,今回薬物療法のアルゴリズムを作製した。CQ38 で推奨された薬物療法の対象症例に対して,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の適応の有無を判断し,適応がある場合は一次薬物療法としてアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を行うことを推奨し,自己免疫疾患などの併存疾患のために適応がない場合はソラフェニブまたはレンバチニブを推奨する。二次薬物療法以降に関しては,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法後はエビデンスはないものの,ソラフェニブ,レンバチニブ,レゴラフェニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブによる治療が考慮される。ソラフェニブ後の二次薬物療法以降としてはレゴラフェニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブのエビデンスがあり,これらの治療が推奨される。エビデンスはないものの本邦ではレンバチニブによる治療も考慮される。レンバチニブ後の二次薬物療法以降についてはエビデンスはないものの,ソラフェニブ,レゴラフェニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブが考慮される。
委員会では,アルゴリズムにはエビデンスのあるもののみを記載すべきという意見やその場合実臨床でアルゴリズムを使用する際にエビデンスがないものは使用できないなどの誤解を招くのではないかという意見があった。しっかりとしたエビデンスがない薬剤についてはしっかりと記載すべきという意見があり,エビデンスのない薬剤に関しては,保険適用となっているため,使用を妨げるものではないことを付記すべきという意見もあった。最終的にエビデンスがある薬剤については太字と下線で示すことになった。このアルゴリズムに対して委員会で投票を行い,過半数の賛成で承認となった。
<2023年4月追記>
2022年12月にデュルバルマブ単剤、2023年3月にトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法が保険適用となったため、CQ39 および薬物療法アルゴリズムの改訂作業を行った。
一次薬物療法に推奨された二つの複合免疫療法の使い分けについては、直接比較ではないもののアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法とトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法の効果を示したいずれの試験も対照治療をソラフェニブとしており、組み入れ基準も似通っていることから、その結果はある程度比較可能であろうという前提のもと、ソラフェニブに対する全生存のハザード比や奏効率においてアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法のほうが良好なこと、トレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法に免疫関連有害事象の頻度や全身ステロイド使用割合が高いことなどを勘案し、一次薬物療法としてはまずはアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を検討し、消化管出血のリスクなどによりベバシズマブの使用が適さない場合に、トレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法を推奨すべきではないかという専門家の意見があった。委員会を2回開催して議論したが、これらは別の試験であり直接比較ではないので優劣はつけられないという意見、ある程度の比較妥当性はあるものの、統計学的有意差がでないのではないかという意見、免疫関連有害事象に限るとトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法のほうが頻度は高いものの有害事象全体ではGrade 3 以上も含め、両併用療法に差がないという意見があった。ガイドラインの在り方として、このような専門家の意見を積極的に反映し、非専門家に対してより明確な推奨を示すべきという意見があった一方、多少あいまいさは残るが、既存のエビデンスから確実に言える点を中心に推奨に盛り込むべき、という意見もあった。
最終的には今回のマイナー改訂においては2021 年度版のガイドラインの作成方針に従って、既存のエビデンスから確実に言える点から判断することになり、専門家の意見をより強く反映させるべきか、という問題については次の大改訂の際に改めて協議することになった。上記方針を確認したのち一次薬物療法として、「まずはアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を検討し、ベバシズマブ投与が適さない場合にトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法とする案」と「一次薬物療法にアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法またはトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法を並列に推奨する案」に対して委員会で投票を行い,過半数の賛成(4 票 対17 票 [COI のため棄権5 票])で後者が承認となった。二次治療としては2つの複合免疫療法が適さない場合はソラフェニブまたはレンバチニブまたはデュルバルマブによる治療を推奨することになった。
委員会ではアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法とトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法の違いを解説に明記することになったので、下表にそれぞれの試験で報告された結果を比較する1-3)。
参考文献
- 1)
- Finn RS, Qin S, Ikeda M, et al. Atezolizumab plus Bevacizumab in Unresectable Hepatocellular Carcinoma. N Engl J Med. 2020; 382:1894—905. PMID: 32402160
- 2)
- Abou-Alfa GK, Lau G, Kudo M, et al. Tremelimumab plus Durvalumab in Unresectable Hepatocellular Carcinoma. N Engl J Med Evidence. 2022; 1: DOI:https://doi.org/10.1056/EVIDoa2100070
- 3)
- Cheng AL, Qin S, Ikeda M, et al. Updated efficacy and safety data from IMbrave150: Atezolizumab plus bevacizumab vs. sorafenib for unresectable hepatocellular carcinoma. J Hepatol. 2022;76 :862-73.
- CQ38
- 薬物療法は,どのような患者に行うのが適切か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 薬物療法は,外科切除や肝移植,穿刺局所療法,TACE などが適応とならない進行肝細胞癌で,PS 良好かつ肝予備能が良好なChild-Pugh 分類A 症例に行うことを推奨する。
背景
肝細胞癌は高頻度に再発を繰り返し,最終的には外科切除や肝移植,穿刺局所療法,肝動脈化学塞栓療法(TACE)の適応とならない進行肝細胞癌に進展することが多い。このような場合に全身薬物療法が行われるが,癌の進行とともに全身状態が悪化していたり,臓器機能が低下していたりすることが多いため,薬物代謝および有害事象の観点から投与に際しては患者の全身状態(performance status;PS)や臓器機能を考慮する必要がある。本CQ では,薬物療法の適応について推奨を検討する。
サイエンティフィックステートメント
第4 版におけるCQ43「切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?」に,治療適応を含め,各薬剤の推奨に関する記載がされていたが,近年の薬物療法の発達に伴い,保険収載された薬剤が増加し,複雑化してきているため,2021 年版(第5 版)においては,本CQ であるCQ38「薬物療法は,どのような患者に行うのが適切か?」,CQ39「切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法に何を推奨するか?」,CQ40「切除不能進行肝細胞癌の二次薬物療法以降の治療に何を推奨するか?」の3 つのパートに分割することとなった。
新たに設定したCQ であるため,2000 年1 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について設定した検索式を用いて363 篇が抽出された。一次選択にて25 篇を選択し,二次選択にて6 篇を採用し,ハンドサーチにて1 篇を追加し,最終的に計7 篇を採用した。
本CQ については各種薬剤の治験(第III 相試験)の組み入れ条件が参考となる。以下,各薬剤の治験組み入れ条件を示す。
一次薬物療法としてアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法とソラフェニブを比較する第III 相試験の組み入れ条件は,全身療法未治療で,測定可能病変を有する切除不能または転移性肝細胞癌で,Child-Pugh 分類A かつECOG performance status 0 または1 の症例であった1)。
一次薬物療法としてレンバチニブとソラフェニブを比較する第III 相試験の組み入れ条件は,切除不能肝細胞癌で,Child-Pugh 分類A かつECOG performance status 0 または1 の症例であった2)。
一次薬物療法としてソラフェニブとプラセボを比較する第III 相試験の組み入れ条件は,薬物療法歴のない切除不能肝細胞癌で,Child-Pugh 分類A かつECOG performance status 0 または1 の症例であった3,4)。
二次薬物療法としてレゴラフェニブとプラセボを比較する第III 相試験の組み入れ条件は,切除,穿刺局所療法,塞栓療法対象外の進行肝細胞癌で,また,ソラフェニブに忍容性があり,ソラフェニブ治療の効果が画像診断上進行と診断されたChild-Pugh 分類A かつECOG performance status 0 または1 の症例であった5)。
二次薬物療法としてラムシルマブとプラセボを比較する第III 相試験の組み入れ条件は,ソラフェニブ治療にて進行またはソラフェニブに不耐となったAFP 400 ng/mL 以上の切除不能肝細胞癌で,Child-Pugh 分類A かつECOG performance status 0 または1 の症例であった6)。
二次あるいは三次薬物療法としてカボザンチニブとプラセボを比較する第III 相試験の組み入れ条件は,前治療歴(過去にソラフェニブ治療を含む計2 剤までの全身療法を許容)のある切除不能肝細胞癌で,Child-Pugh 分類A かつECOG performance status 0 または1 の症例であった7)。
以上,現在保険収載されている薬物療法の開発試験における組み入れ条件として,1)切除不能肝細胞癌であること,2)肝予備能がChild-Pugh 分類A であること,3)ECOG performance status が0 か1 であること,の3 条件が共通している。
解説
薬物療法の開発においては,有効性,安全性を確認するために,対象に対する条件設定が必要となる。肝細胞癌に対する薬物療法のターゲットは,切除などの局所治療が対象となる腫瘍状態に対する再発あるいは増悪抑制を目的とするものと,局所治療では治療困難な腫瘍状態に対するものに大別される。現在までにこれらを対象とした薬物療法の開発が数多く行われているが,保険収載に至っているものは後者のみであり,補助化学療法は確立していない。すなわち現在,保険収載されている薬剤の開発対象(治験の組み入れ条件)は,「切除不能肝細胞癌」であり,またこれら薬物の開発治験(第III 相試験)の組み入れ条件が,ECOG performance status が0 か1,かつ肝予備能がChild-Pugh 分類A であったことから,本CQ に対する推奨は,「外科切除や肝移植,穿刺局所療法,TACE などが適応とならない進行肝細胞癌で,PS 良好かつ肝予備能が良好なChild-Pugh 分類A 症例」とした。言いかえれば,この条件においてのみ有効性,安全性が確認されている。すなわち,この条件で有効性および安全性が担保されているということになる。
エビデンスの強さに関しては,本条件と別条件を比較した第III 相試験が存在しないため,エビデンスレベルを決定することは難しいが,今回適応について採用した各種薬物療法の論文が第III 相試験であるRCT であることから,エビデンスの強さA とした。
投票結果
◉推奨文「薬物療法は,外科切除や肝移植,穿刺局所療法,TACE などが適応とならない進行肝細胞癌で,PS 良好かつ肝予備能が良好なChild-Pugh 分類A 症例に行うことを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
***
改訂委員会では「TACE などが適応とならない」状況は少ないので,必要ではないのではないかという意見があったが,治験の選択基準で「TACE などが適応とならない」は条件に入っていることが多いため,対象患者の条件として組み込んだ。
参考文献
- 1)
- Finn RS, Qin S, Ikeda M, Galle PR, Ducreux M, Kim TY, et al. Atezolizumab plus bevacizumab in unresectable hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 2020; 382: 1894-905. PMID: 32402160
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- 3)
- Llovet JM, Ricci S, Mazzaferro V, Hilgard P, Gane E, Blanc JF, et al. Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 2008; 359: 378-90. PMID: 18650514
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- Cheng AL, Kang YK, Chen Z, Tsao CJ, Qin S, Kim JS, et al. Efficacy and safety of sorafenib in patients in the Asia-Pacific region with advanced hepatocellular carcinoma: a phase III randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Oncol 2009; 10: 25-34. PMID: 19095497
- 5)
- Bruix J, Qin S, Merle P, Granito A, Huang YH, Bodoky G, et al. Regorafenib for patients with hepatocellular carcinoma who progressed on sorafenib treatment(RESORCE): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet 2017; 389: 56-66. PMID: 27932229
- 6)
- Zhu AX, Kang YK, Yen CJ, Finn RS, Galle PR, Llovet JM, et al. Ramucirumab after sorafenib in patients with advanced hepatocellular carcinoma and increased alpha-fetoprotein concentrations(REACH-2): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol 2019; 20: 282-96. PMID: 30665869
- 7)
- Abou-Alfa GK, Meyer T, Cheng AL, El-Khoueiry AB, Rimassa L, Ryoo BY, et al. Cabozantinib in patients with advanced and progressing hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 2018; 379: 54-63. PMID: 29972759
- CQ39
- 切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法に何を推奨するか? ※2023年5月30日改訂
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 1.切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法にアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法またはトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法を推奨する。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 2.複合免疫療法が適さない場合はソラフェニブまたはレンバチニブまたはデュルバルマブによる治療を推奨する。
背景
肝細胞癌は高頻度に再発を繰り返し,最終的に外科切除や肝移植,肝動脈化学塞栓療法(TACE)の適応とならない進行肝細胞癌に進展することが多い。このような切除不能肝細胞癌に対して分子標的治療薬であるソラフェニブの有効性が2008 年に報告された。この報告は薬物療法とプラセボを比較した最初の報告である。その後,レゴラフェニブ,レンバチニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブ,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法が肝細胞癌の薬物療法として有効性を示した。一次薬物療法として何を推奨すべきか検討する。
サイエンティフィックステートメント
第5 版では,第4 版のCQ43「切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?」を一次治療と二次治療に分割しCQ39,CQ40 とした。これらのCQ に対する検索式については第4 版の検索式を変更し,CQ39 とCQ40 に関する論文を併せて検索した。2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について124 篇が抽出された。そのなかから,ランダム化比較試験(RCT)を中心に一次選択で11 篇を選択し,二次選択でこれらから9 篇を新たに採用した。これらのうち6 篇はすでに第4版補訂版Web 改訂版で採用された論文と重複しており,新規追加は3 篇であった。さらに重要論文として,学会報告1 篇を採用し,第5 版では新たに計4 篇を採用した。第4 版補訂版Web 改訂版で採用されている20 篇からサブグループ解析など3 篇を削除し17 篇を採用し,CQ39,CQ40 として併せて最終的に21 篇を採用した。この中から一次薬物療法に関連する11 篇をCQ40 に採用した。
ソラフェニブは,外科切除や肝移植,局所療法,TACE が適応とならない症例のうち,performance status(PS)が良好で,肝機能がChild-Pugh 分類A の症例を対象として,プラセボと比較して有意に生存期間延長を示した1,2)。また,システマティックレビューにおいてもソラフェニブの効果と安全性が報告された3)。
一次治療として,ソラフェニブを対照としてスニチニブ,brivanib,linifanib を比較するRCT が行われたが,いずれも優越性または非劣性を示す有意な結果はみられなかった4-6)。ソラフェニブに対するエルロチニブの併用効果を検討するRCT が行われたが,有意な生存期間延長を示さなかった7)。レンバチニブは,ソラフェニブを対照としてRCT が行われ,生存期間延長における非劣性を示した8)。ソラフェニブに対するドキソルビシンの併用効果を検討するRCT が行われたが,有意な延長効果を示さなかった9)。ニボルマブはソラフェニブを対象としてRCT が行われたが,有意な生存期間延長を示さなかった10)。アテゾリズマブ+ベバシズマブ療法は,ソラフェニブを対照としたRCT において生存期間延長を示した11)。トレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法は、ソラフェニブを対照としたRCT において生存期間延長を示した12)。デュルバルマブ単剤療法はソラフェニブを対照としたRCT において生存期間延長における非劣性を示した12)。
解説
近年の肝細胞癌に対する薬物療法の開発は目覚ましく,一次薬物療法としては第4版からレンバチニブ,ドキソルビシン併用ソラフェニブ,ニボルマブ,アテゾリズマブの4 篇のRCT の報告がある。このように多くのRCT の報告が出てきたことより,今回第3版で採択されたソラフェニブのサブグループ解析などの3 篇はエビデンスレベルが高くないために削除した。
ソラフェニブは2008 年にSHARP 試験としてプラセボと比較して生存期間延長を示し,その後2009 年にAsia-Pacific 試験として同じく生存期間延長を示した1,2)。その後既報のシステマティックレビューでもソラフェニブの有効性が示されており3),切除不能肝細胞癌に対するソラフェニブの有効性に関して十分に高いエビデンスがある。本邦では2009 年5 月から切除不能肝細胞癌に対して保険適用となった。
進行肝細胞癌に対するソラフェニブの有効性の報告をきっかけに,ソラフェニブを対照として,スニチニブ,brivanib,linifanib といった分子標的治療薬,ソラフェニブ+エルロチニブ併用療法,ソラフェニブ+ドキソルビシン併用療法が検討されたが,いずれのRCT も主要評価項目である生存期間に対する優位性または非劣性を示すことができなかった4-7,9)。
レンバチニブは,ソラフェニブと比較して主要評価項目である生存期間延長に対する非劣性を示し8),2018 年3 月に切除不能肝細胞癌に対して保険適用となった。このため,一次治療としてソラフェニブに加えて,レンバチニブによる治療も用いることができるようになった。
がん薬物療法として,免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療開発が盛んに行われている。肝細胞癌の一次薬物療法として免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブが検討されたが,ソラフェニブを対照として行われたRCT では生存期間延長効果を示さなかった10)。その後免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブと血管新生阻害薬であるベバシズマブとの併用療法は,ソラフェニブを対照としたRCT において生存期間延長を示し11),2020 年9 月に切除不能肝細胞癌に対して保険適用となった。これまでの一次薬物療法としてソラフェニブまたはレンバチニブが用いられてきたが,ソラフェニブと比較してアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法が有意な生存期間延長を示していること,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法をレンバチニブと直接比較するRCT は行われていないが,レンバチニブはソラフェニブに対して生存期間延長の優越性を示すことができず非劣性のみしか示すことが出来ていないことから,一次薬物療法としてアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法を推奨した。
ただし,自己免疫疾患などの併存症のためアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法による治療が適さないと判断されるような症例に対しては,これまで用いられてきたソラフェニブまたはレンバチニブによる治療を推奨した。
免疫チェックポイント阻害薬同志を併用したトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法は,ソラフェニブを対照としたRCT において生存期間延長を示し12)、2022 年12 月に切除不能肝細胞癌に対して保険適用となった。デュルバルマブ単剤療法は,ソラフェニブを対照としたRCT において生存期間延長に対して非劣性を示し12)、2022 年12 月に切除不能肝細胞癌に対して保険適用となった。このことより、切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法にアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法に加えて、トレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法を推奨した。
デュルバルマブ単剤療法はソラフェニブに対して生存期間延長の優越性を示すことができず非劣性のみしか示すことが出来ていないことより、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法またトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法、これら二つの複合免疫療法が適さない場合に推奨した。
投票結果
◉推奨文1「切除不能進行肝細胞癌の一次薬物療法にアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法またはトレメリムマブ+デュルバルマブ併用療法を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「複合免疫療法が適さない場合はソラフェニブまたはレンバチニブまたはデュルバルマブによる治療を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
参考文献
- 1)
- Llovet JM, Ricci S, Mazzaferro V, Hilgard P, Gane E, Blanc JF, et al. Sorafenib in advanced hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 2008; 359: 378-90. PMID: 18650514
- 2)
- Cheng AL, Kang YK, Chen Z, Tsao CJ, Qin S, Kim JS, et al. Efficacy and safety of sorafenib in patients in the Asia-Pacific region with advanced hepatocellular carcinoma: a phase III randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet Oncol 2009; 10: 25-34. PMID: 19095497
- 3)
- Shen A, Tang C, Wang Y, Chen Y, Yan X, Zhang C, et al. A systematic review of sorafenib in Child-Pugh A patients with unresectable hepatocellular carcinoma. J Clin Gastroenterol 2013; 47: 871-80. PMID: 24100749
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- Cheng AL, Kang YK, Lin DY, Park JW, Kudo M, Qin S, et al. Sunitinib versus sorafenib in advanced hepatocellular cancer: results of a randomized phase III trial. J Clin Oncol 2013; 31: 4067-75. PMID: 24081937
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- Johnson PJ, Qin S, Park JW, Poon RTP, Raoul JL, Philip PA, et al. Brivanib versus sorafenib as first-line therapy in patients with unresectable, advanced hepatocellular carcinoma: results from the randomized phase III BRISK-FL study. J Clin Oncol 2013; 31: 3517-24. PMID: 23980084
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- Cainap C, Qin S, Huang WT, Chung IJ, Pan H, Cheng Y, et al. Linifanib versus sorafenib in patients with advanced hepatocellular carcinoma: results of a randomized phase III trial. J Clin Oncol 2015; 33: 172-9. PMID: 25488963
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- Zhu AX, Rosmorduc O, Evans TR, Ross PJ, Santoro A, Carrilho FJ, et al. SEARCH: a phase III, randomized, double-blind, placebo-controlled trial of sorafenib plus erlotinib in patients with advanced hepatocellular carcinoma. J Clin Oncol 2015; 33: 559-66. PMID: 25547503
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- Kudo M, Finn RS, Qin S, Han KH, Ikeda K, Piscaglia F, et al. Lenvatinib versus sorafenib in first-line treatment of patients with unresectable hepatocellular carcinoma: a randomised phase 3 non-inferiority trial. Lancet 2018; 391: 1163-73. PMID: 29433850
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- Abou-Alfa GK, Shi Q, Knox JJ, Kaubisch A, Niedzwiecki D, Posey J, et al. Assessment of treatment with sorafenib plus doxorubicin vs sorafenib alone in patients with advanced hepatocellular carcinoma: phase 3 CALGB 80802 randomized clinical trial. JAMA Oncol 2019; 5: 1582-8. PMID: 31486832
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- Yau T, Park JW, Finn RS, Cheng A, Mathurin P, Edeline J, et al. CheckMate 459: a randomized, multi-center phase III study of nivolumab(NIVO)vs sorafenib(SOR)as first-line(1L)treatment in patients(pts)with advanced hepatocellular carcinoma(aHCC). Ann Oncol. 2019; 30(Suppl 5): V874-5. (abstr 6572)
- 11)
- Finn RS, Qin S, Ikeda M, Galle PR, Ducreux MD, Kim TY, et al. Atezolizumab plus bevacizumab in unresectable hepatocellular carcinoma. N Engl J Med 2020; 382: 1894-905. PMID: 32402160
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- Abou-Alfa GK, Lau G, Kudo M, et al. Tremelimumab plus Durmalumab in Unresectable Hepatocellular Carcinoma. N Engl J Med Evidence. 2022; 1: DOI:https://doi.org/10.1056/EVIDoa2100070
- 13)
- Cheng AL, Qin S, Ikeda M, et al. Updated efficacy and safety data from IMbrave150: Atezolizumab plus bevacizumab vs. sorafenib for unresectable hepatocellular carcinoma. J Hepatol. 2022;76 :862-73.
- CQ40
- 切除不能進行肝細胞癌の二次薬物療法以降の治療に何を推奨するか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 二次薬物療法として,ソラフェニブ治療後画像進行を認め,Child-Pugh 分類A でソラフェニブに忍容性を示した症例にレゴラフェニブによる治療を推奨する。また,ソラフェニブ治療後画像進行または副作用にて中止した,Child-Pugh 分類A でAFP 400 ng/mL 以上の症例にラムシルマブによる治療を推奨する。ソラフェニブによる治療歴を有し,全身薬物療法後に増悪したChild-Pugh 分類A の症例にカボザンチニブによる治療を推奨する。
背景
肝細胞癌は高頻度に再発を繰り返し,最終的に外科切除や肝移植,穿刺局所療法,TACE の適応とならない進行肝細胞癌に進展することが多い。このような切除不能肝細胞癌に対して分子標的治療薬であるソラフェニブの有効性が2008 年に報告された。その後,レゴラフェニブ,レンバチニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブ,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法が肝細胞癌の薬物療法として有効性を示した。二次薬物療法として何を推奨すべきか検討する。
サイエンティフィックステートメント
第5 版では,第4 版のCQ43「切除不能進行肝細胞癌に分子標的治療を行うか?」を一次薬物療法と二次薬物療法に分割しCQ39,CQ40 とした。これらのCQ に対する検索式については第4 版の検索式を変更し,CQ39 とCQ40 に関する論文を併せて検索した。2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について124 篇が抽出された。そのなかから,RCT を中心に一次選択で11 篇を選択し,二次選択でこれらから9 篇を新たに採用した。これらのうち6 篇は既に第4 版補訂版で採用された論文と重複しており,新規追加は3 篇であった。さらに重要論文として,学会報告1 篇を採用し,第5 版では新たに計4 篇を採用した。第4 版補訂版で採用されている20 篇からサブグループ解析など3 篇を削除し17 篇を採用し,CQ39,CQ40 として合わせて最終的に21 篇を採用した。このなかから二次薬物療法に関連する10 篇1-10)をCQ40 に採用した。
二次薬物療法として,ソラフェニブ治療後の症例に対して,プラセボを対照としてbrivanib,エベロリムス,tivantinib,S-1 を比較するRCT が行われたが,いずれも生存期間延長を示さなかった1-4)。レゴラフェニブは,ソラフェニブ治療後画像進行を認め,ソラフェニブに忍容性のある(治療終了前28 日間で20 日以上の期間1 日400 mg 以上の内服が可能)Child-Pugh 分類A の症例に対するプラセボを対照としたRCT において,有意に生存期間延長を示した5)。ラムシルマブは,ソラフェニブ治療後の症例に対するプラセボを対照としたRCT において生存期間を延長しなかったが6),サブグループ解析にてAFP 高値(400 ng/mL 以上)の症例において生存期間延長を認めた。この結果の検証のため,一次薬物療法としてソラフェニブ治療後の症例で,AFP 高値(400 ng/mL 以上)かつChild-Pugh 分類A の症例を対象にプラセボを対照としたRCT が行われ,ラムシルマブは生存期間延長を示した7)。カボザンチニブは,ソラフェニブ治療歴を有し,全身薬物療法後に増悪したChild-Pugh 分類A の症例にプラセボを対照として行われたRCT において,生存期間延長を示した8)。ADI-PEG 20(pegylated arginine deiminase)は二次薬物療法以降の症例にプラセボを対照として行われたRCT において,生存期間延長を認めなかった9)。ペムブロリズマブはソラフェニブ治療後の症例を対象にプラセボを対照として行われたRCT において,生存期間延長を認めなかった10)。
解説
近年の肝細胞癌に対する薬物療法の開発は目覚ましく,二次薬物療法としては第4 版の発刊以降ラムシルマブ,カボザンチニブ,ADI-PEG 20,ペムブロリズマブの4 篇のRCT の報告がある。
ソラフェニブ治療後の二次薬物療法では分子標的治療薬brivanib,エベロリムス,殺細胞性抗癌薬のS-1 がプラセボと比較検討されたが,主要評価項目である生存期間における優越性を示すことができなかった1-3)。Tivantinib は,肝細胞癌腫瘍組織中のMET 高発現症例に対するプラセボを対照としたRCT において生存期間を延長しなかった4)。
レゴラフェニブは,ソラフェニブ治療後画像進行を認め,ソラフェニブに忍容性のある(治療終了前28 日間で20 日以上の期間1 日400 mg 以上の内服が可能)Child-Pugh 分類A の症例に対するプラセボを対照としたRCT において,二次薬物療法として初めて生存期間延長を示した5)。本邦では2017 年6 月からがん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌に対して保険収載となった。
ラムシルマブは,ソラフェニブ治療後,画像進行だけでなく副作用による中止を含む症例に対するプラセボを対照としたRCT において生存期間延長を示さなかったが6),AFP 400 ng/mL 以上の症例に対して行ったRCT にて生存期間延長を示した7)。本邦では2019 年6 月にがん化学療法後に増悪したAFP 400 ng/mL 以上の切除不能な肝細胞癌に保険収載となった。
カボザンチニブは,ソラフェニブ治療歴を有し,全身薬物療法後に増悪したChild-Pugh 分類A の症例に対するプラセボを対照としたRCT において生存期間延長を示した。この試験では27%の症例がソラフェニブ以外の1 剤の全身療法歴があり,三次薬物療法としてカボザンチニブによる治療を受けていた8)。本邦では2020 年11 月からがん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌に対して保険収載となった。
ADI-PEG 20 はソラフェニブ以外の全身薬物療法も含む1 剤以上の全身療法後の症例に対するプラセボを対照としたRCT において生存期間延長を示さなかった9)。ペムブロリズマブはソラフェニブ治療後の症例を対象にプラセボを対照としてRCT が行われ,主要評価項目である全生存と無増悪生存期間はプラセボと比較して延長を示していたが,事前に統計学的に設定した有意基準を達成せず,有効性を示さなかった10)。
このように二次薬物療法として生存期間延長を示すことができた治療は,レゴラフェニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブの3 剤による治療である。これらの治療はいずれも一次薬物療法としてソラフェニブ治療後の症例に対して行われたRCT であり,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法やレンバチニブ治療後の症例に対して行われた結果ではない。
海外のガイドラインでは,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法後の治療としてソラフェニブまたはレンバチニブを記載しているガイドラインもあるが,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法後やレンバチニブ後の二次薬物療法について推奨できるエビデンスレベルが十分に高い報告はないため,ガイドラインとして,これらの治療後の二次薬物療法として推奨できる治療法は現時点ではない。ソラフェニブ後の二次薬物療法としてレゴラフェニブ,ラムシルマブ,カボザンチニブをそれぞれのRCT の症例選択条件を付記し推奨した。
投票結果
◉推奨文「二次薬物療法として,ソラフェニブ治療後画像進行を認め,Child-Pugh 分類 A でソラフェニブに忍容性を示した症例にレゴラフェニブによる治療を推奨する。また,ソラフェニブ治療後画像進行または副作用にて中止した,Child-Pugh 分類A でAFP 400 ng/mL 以上の症例にラムシルマブによる治療を推奨する。ソラフェニブによる治療歴を有し,全身薬物療法後に増悪したChild-Pugh 分類A の症例にカボザンチニブによる治療を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
***
今回の推奨は,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法後やレンバチニブ後の二次薬物療法を否定しているのではなく,実臨床ではアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法やレンバチニブが一次薬物療法として行われた場合は,一次薬物療法で用いられた薬剤以外の治療が二次薬物療法として選択されるものと思われる。しかし,一次薬物療法として,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法またはレンバチニブを用いた後の二次薬物療法の選択の根拠となるべき十分なエビデンスがまだ報告されていないことから,推奨として取り上げなかった。今後はこれらの一次薬物療法後の二次治療選択に関わるエビデンスの報告に期待する。
近年,臓器横断的ゲノム診療が進み,本邦では2018 年12 月からがん化学療法後に増悪した進行・再発のmicrosatellite instability(MSI)-High を有する固形癌に対して標準的な治療が困難な場合に限りペムブロリズマブが保険収載となっている。また,2019 年6 月からはneurotrophic receptor tyrosine kinase(NTRK)融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌に対してエヌトレクチニブが保険収載となっている。これらの臓器横断的ゲノム診療について改訂委員会で検討した結果,MSI-High を有する固形癌に対するペムブロリズマブについては,肝細胞癌が治験患者に含まれていないこと,肝細胞癌患者ではMSI-High は極めて低頻度であること11),一次薬物療法としてペムブロリズマブと同じ経路に作用する抗PD-L1 抗体であるアテゾリズマブが使用できることから,推奨文に掲載するものではないと判断した。NTRK 融合遺伝子陽性の進行・再発の固形癌に対するエヌトレクチニブについても,肝細胞癌が治験患者に含まれていないこと12),肝細胞癌患者ではNTRK 融合遺伝子は極めて低頻度であること13)から,同様に推奨文は掲載しないこととした。ただし腫瘍組織や血液を用いたがん遺伝子パネル検査などでこれらの遺伝子異常などがみられ,標準的な治療が困難な場合は治療の選択肢となりうる。
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- CQ41
- 切除不能進行肝細胞癌に肝動注化学療法は推奨されるか?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 外科切除,肝移植,穿刺局所療法,TACE の適応とならない肝内多発または脈管侵襲を伴う進行肝細胞癌では,肝動注化学療法を行ってよい。
背景
肝動注化学療法は,その手技の特殊性はあるものの,国内では多数例を対象に実施されてきた。高濃度の抗癌剤を肝細胞癌に直接投与することが可能であり,また結果として全身の抗癌剤の濃度も低く抑えられ,全身への副作用の頻度は低くなると考えられている。切除不能進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法の推奨について検討した。
サイエンティフィックステートメント
新たに設定した検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日の期間で63 篇を抽出した。まず一次選択で28 篇を選択した。次に,肝動注化学療法を50 例以上施行した試験結果を中心に,二次選択で9 篇を採用した。さらに,2020 年2 月以降に発表された2 篇をハンドサーチで加え,最終的に11 篇を新たに採用した。また第4 版までの採用論文26 篇のうち,第4 版CQ44 のサイエンティフィックステートメントで引用されている7 篇も引き続き採用し,付表のみで採用していた論文は不採用とし,最終的に18 篇を採用した。
インターフェロン全身投与とシスプラチン肝動注化学療法を併用したインターフェロン・シスプラチン併用肝動注化学療法群を,シスプラチン単独肝動注化学療法群,best supportive care(BSC)群と比較した小規模のRCT1)で,インターフェロン・シスプラチン併用肝動注化学療法群の生存期間中央値は,シスプラチン単独肝動注化学療法群,BSC に比較して有意に延長がみられた。インターフェロン併用5-FU 肝動注化学療法の成績をヒストリカルコントロールと比較した報告2)では,生存率の有意な改善がみられた。日本肝癌研究会の全国原発性肝癌追跡調査報告のデータベースに登録された初発肝細胞癌症例を対象とした検討にて,5-FU とシスプラチンを用いた肝動注化学療法施行群とBSC 群を比較した傾向スコアマッチング法を用いた解析3)では,BSC に比較して肝動注化学療法施行群では予後が良好(ハザード比:0.60,p<0.0001)であり,4 結節以上,または門脈腫瘍栓例でも同様に肝動注化学療法施行群では予後が良好であった。
進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法とソラフェニブの治療成績を比較した後ろ向きの解析では,ソラフェニブ治療と比較して肝動注化学療法の奏効率は良好であった4,5)(特に,TACE に感受性がありかつ脈管侵襲陽性の場合6))。進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法とソラフェニブの治療成績を比較したメタアナリシスでは,ソラフェニブ治療と比較して肝動注化学療法が治療効果は高く,予後も良好であった7)。進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法とソラフェニブの治療成績を比較した傾向スコアマッチング法を用いた後ろ向きの解析では,2015 年までの検討8,9)では予後に有意差を認めなかったものの,2016 年以降に発表されたより大規模なコホートに対する検討ではソラフェニブ治療と比較して肝動注化学療法の方が予後は良好であることが示された10)(特に,肝外病変がない場合11),肝外病変がないかつ脈管侵襲陽性の場合12))。
一方,進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療において,シスプラチンを用いた肝動注化学療法の上乗せ効果を検証した第II 相試験13)では,ソラフェニブ単独治療と比較してソラフェニブと肝動注化学療法の併用は生存期間延長を示したものの,5-FU とシスプラチンを用いた肝動注化学療法の上乗せ効果を検証した第III 相試験では,ソラフェニブ単独治療と比較してソラフェニブと肝動注化学療法の併用療法は有意な生存期間延長を示せなかった14)。門脈腫瘍栓を伴う進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療において,FOLFOX を用いた肝動注化学療法の上乗せ効果を検証した第III 相試験では,ソラフェニブ単独治療と比較してソラフェニブと肝動注化学療法の併用療法の方が予後は良好であった15)。
他に,肝外転移を伴う進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法の治療成績を比較した後ろ向きの解析では,肺転移を伴う症例と比較して肺以外の転移を伴う症例が予後は良好であった16)。また,進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法の治療成績を肝予備能別に比較した後ろ向きの解析17,18)では,Child-Pugh スコア8 または9 以上の症例と比較して,それ未満の肝予備能良好例の予後が良好であった。
解説
今回採用した11 篇の論文の特徴は,進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法とソラフェニブの治療成績を比較した解析がほとんどであったことである。すなわち,9 篇が肝動注化学療法に対してソラフェニブ治療を対照とした論文であり,そのうち,単純に肝動注化学療法とソラフェニブの治療成績を比較した論文が7 篇,ソラフェニブ単独治療とソラフェニブと肝動注化学療法の併用療法を比較した論文が2 篇(RCT)であった。9 篇のうち8 篇の論文において,ソラフェニブ治療と比較して肝動注化学療法の方が良好な成績が得られた。
第4 版の解説において,「肝動注化学療法の予後改善を証明するにはソラフェニブなどの分子標的治療薬との質の高い比較試験が望ましいが,現実的には難しく,行われていない」とされていたが,そのような比較が困難な状況のなか,今回RCT が2 篇採用された。その2 篇はいずれも進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療において肝動注化学療法の上乗せ効果を検証したものであり,一つは「門脈腫瘍栓を伴う場合,ソラフェニブ単独治療と比較してソラフェニブと肝動注化学療法の併用療法が予後は良好であった」というものであり,もう一つは「ソラフェニブ単独治療と比較してソラフェニブと肝動注化学療法の併用療法は有意な生存期間延長を示せなかった」というものであった。
一方,単純に肝動注化学療法とソラフェニブの治療成績を比較した論文によくある特徴としては,肝外病変がない場合または脈管侵襲陽性の場合において,ソラフェニブ治療と比較して肝動注化学療法の方が予後は良好であることが挙げられる。
これらの結果を踏まえると,ソラフェニブ治療に対して肝動注化学療法の優越性を証明できなかったRCT が存在するうえに,ソラフェニブ治療と比較して肝動注化学療法の方が良好な成績が得られた報告では,「門脈腫瘍栓を伴う」「肝外病変がない」「脈管侵襲陽性」などの「条件」が付くことが多かった。このことを反映し,第4 版の推奨では「肝内病変進行肝細胞癌では,肝動注化学療法を行ってよい(弱い推奨)」であったものを,今回の改訂では「肝内多発または脈管侵襲を伴う進行肝細胞癌では,肝動注化学療法を行ってよい」へと変更し,推奨の強さについて改訂委員会での投票となった。
投票結果
◉推奨文「外科切除,肝移植,穿刺局所療法,TACE の適応とならない肝内多発または脈管侵襲を伴う進行肝細胞癌では,肝動注化学療法を行ってよい」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ42
- 薬物療法の治療効果判定はどのようにするか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
- 薬物療法の治療効果判定においては,RECIST またはmodified RECIST を用いることを推奨する。
背景
一般的な薬物療法の治療効果判定には,一方向での腫瘍の縮小を評価したRECIST1,2)が汎用されている。しかし,肝細胞癌は多血性であり,腫瘍内血流の低下も治療効果として捉えることもあり,肝細胞癌に特有のmodified RECIST3)も用いられている。肝細胞癌に対してこれまでに報告された効果判定基準を踏まえ,有効性が証明されたアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法4),ソラフェニブ5,6),レンバチニブ7),レゴラフェニブ8),ラムシルマブ9),カボザンチニブ10)の計6 レジメンのRCT で用いられた治療効果判定方法を勘案したうえで,推奨される治療効果判定を検討する。
サイエンティフィックステートメント
第5 版では,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し52 編が抽出された。そのなかから,RCT を中心に一次選択で15 篇を選択し,二次選択でこれらから5 篇を新たに採用した。第4 版で採用された論文を再評価し,このなかよりRCT を2 篇追加した。さらに重要論文として,ハンドサーチでRCT を1 篇と効果判定方法に関する論文を7 篇採用し,第5 版では計15 篇を採用した。なお,第4 版で採用された後ろ向きの検討である論文は採用しなかった。
一般的な薬物療法の治療効果判定には,RECIST version 1.12)が最も汎用されている基準である。1 臓器あたり最大2 病変で,一方向での腫瘍の縮小を評価した基準で,腫瘍内の血流の低下は考慮しない。肝細胞癌においては,腫瘍内血流の消失も考慮したmodified RECIST3),EASL 基準11),RECICL12),Choi 基準13)などが用いられている。また,近年,免疫チェックポイント阻害薬の登場に伴い,がんの増悪の確定も考慮したiRECIST14)も登場した。肝細胞癌の薬物療法の効果判定基準として,有効性が証明された上記6 レジメンのRCT4-10),全7 試験において使用された効果判定方法を表1 に示す。
全7 試験で,RECIST での治療効果判定は行われていた。また,アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法,レンバチニブ,レゴラフェニブの3 試験ではmodified RECIST による治療効果判定も行われていた。
解説
肝細胞癌の標準治療として,ソラフェニブが登場した際には,腫瘍縮小が得られにくいこともあり,腫瘍内の血流の低下を評価することの重要性も指摘された15)。特に,レンバチニブは腫瘍濃染の消失が高率に認められ,治療効果として評価すべきとの意見も多く,modified RECIST も使用されるようになり7),第4 版では腫瘍内血流を考慮した基準を用いることを推奨した。しかし,近年のアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法4)に代表される複合免疫療法の登場で,肝細胞癌においても腫瘍の縮小が期待できるようになり,腫瘍内血流の消失を評価せず,腫瘍縮小のみを評価するRECIST で十分との意見もある。RECIST は測定が簡便であり,測定者間の差も認めにくいことから,試験間での比較も容易になる。また,肝細胞癌の薬物療法は,今後も腫瘍縮小は期待できるようになると思われ,RECIST またはmodified RECIST による治療効果判定を用いることを推奨することした。
投票結果
◉推奨文「薬物療法の治療効果判定においては,RECIST またはmodified RECIST を用いることを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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第8 章 放射線治療
- はじめに
放射線治療は侵襲性が低く,高齢や合併症をもった患者にも負担なく適応できる特徴があり,現在多くの悪性腫瘍に対する根治的治療として選択されるとともに,腫瘍による症状の緩和を目的とした治療としても広く用いられている。
X 線透視を治療計画に用いた2 次元照射法が一般に行われていた1970 年代頃までは,肝細胞癌に対する放射線治療はあまり行われてこなかった。当時の技術では,肝内の腫瘍に正確に狙いをつけることが困難であったため,病巣よりも広い範囲を照射せざるを得ず,根治を目指した高線量を照射すると肝障害のリスクが懸念されたためである。
1980 年代頃から行われるようになった3 次元原体照射法では,CT 画像を用いて肝内の腫瘍を3次元的に同定することが可能となり,不必要に照射される正常肝体積が大きく減少した。同時に線量体積ヒストグラムを用いた肝障害リスクの定量的な評価・予測が可能となった。このため脈管侵襲陽性肝細胞癌など,他の治療が適応困難な症例を主な対象として放射線治療が行われるようになった。しかし,放射線治療のみで局所の治癒を目指すことは,この段階でもまだ困難であった。
近年,コンピュータの進歩による治療計画アルゴリズムの改良,腫瘍の形状に合わせ線量集中性を高める強度変調放射線治療(IMRT)の開発,3 次元画像による画像誘導の高精度化,時間軸を考慮した呼吸性移動への対策などの技術が進み,これに治療装置の技術革新が並走することで,変化する腫瘍の位置を正確に捉え,根治を目的とした線量を病巣に投与しつつ,周囲の正常組織への線量を低減することが可能となった。治療技術としては,従来の通常分割照射(1 回2 Gy 前後の線量)よりも1 回あたり大線量の放射線を短期間で精密に照射する体幹部定位放射線治療(SBRT)や粒子線治療(陽子線治療,重粒子線治療)などが開発され,本邦でもさまざまな疾患・病態に対して利用されている。肝細胞癌に対しては,線量分布と肝障害のバランスの観点から,根治的治療として主にSBRT と粒子線治療が用いられている。
前回の改訂では,肝細胞癌治療における放射線治療として,局所の治癒を目指した治療強度の高いモダリティとしてのSBRT および粒子線治療と,手術や肝動脈化学塞栓療法(TACE)などに対する補助療法としての3 次元原体照射法(通常分割照射)に区分して記載した。今回のシステマティックレビューの新たな特徴として,SBRT および粒子線治療について,穿刺局所療法やTACEなどの他の標準療法とのランダム化比較試験(RCT)の結果や傾向スコアによる比較論文が公表されるようになった点が挙げられる。いずれも,既存の標準治療と比べて劣性であるという報告はなく,同等性もしくは一部のエンドポイントでは優越性が示されている。今後さらに多くのエビデンスの蓄積が期待されるため,SBRT と粒子線治療の高精度放射線治療については,2017 年版(第4 版)から引き続きCQ として掲載した。一方で線量強度が弱いため制御率がやや落ちる3 次元原体照射法に関する報告は,局所の治癒を目的とした放射線治療としてのSBRT や粒子線治療に置き換えられつつあるためかなり減少しており,改訂委員会での議論の結果,今回の改訂ではCQ から取り下げることとした。
また,転移性腫瘍に対する放射線治療は,原発臓器にかかわらず一般に実施されており,肝細胞癌に特異的なエビデンスは少ないが,本ガイドラインが広く一般の臨床医に利用されることを踏まえ,骨転移および脳転移についてのCQ を第4 版に引き続き掲載した。
さらに,肝細胞癌の放射線治療後の腫瘍の縮小には一定の時間がかかること,縮小の速度にもばらつきがあることが臨床的に知られていることから,他の治療法の効果判定とは異なった考え方が必要と考えられたため,放射線治療後の効果判定の方法について新規CQ として取り上げることとした。
今回のシステマティックレビューにおいて,根治的な意味をもつ放射線治療と他の標準療法とのRCTの結果や傾向スコアによる比較論文が公表されるようになった点から,本分野での放射線治療のエビデンスは構築されつつあると考えられる。現時点で薬物療法と放射線治療の併用などの臨床試験も進んでおり,今後さらに肝細胞癌に対する放射線治療の役割が明らかになることが期待される。
- CQ43
- 体幹部定位放射線治療はどのような患者に行うのが適切か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 1~3 個の肝細胞癌において,脈管侵襲の有無にかかわらず,切除・穿刺局所療法が施行困難な,Child-Pugh 分類A~B 7 点,腫瘍径が5 cm 以下の場合,体幹部定位放射線治療を行ってよい。
背景
体幹部定位放射線治療(SBRT)は限局した標的腫瘍に対し従来の通常分割照射よりも1 回あたり大線量の放射線を短期間で精密に照射する方法であり,従来の通常分割放射線治療より局所制御の向上と周囲臓器の有害事象の低減を可能にする。また,肝細胞癌に対して手術・穿刺局所療法が医学的な理由(手術:耐術能がないなど,穿刺局所療法:標的腫瘍が大血管・胆管・横隔膜に近接している,標的腫瘍が超音波で描出できないなど)で施行困難な場合においても,SBRT は施行可能である1)。これらの利点から,SBRT は肝細胞癌に対する局所治療として近年普及してきている。本項ではどのような肝細胞癌患者にSBRT を行うのが適切かについて検討した。また,本項はSBRT の適応に関するものではあるが,本ガイドラインをSBRT 施行の際の参考とすることを考慮して線量分割・処方方法についても記載した。
サイエンティフィックステートメント
第4 版のCQ48 を引き継いで本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された235 篇を抽出した。まず,一次選択で50 篇を選択した。次に,文献本文の内容を検討し,肝細胞癌に対してSBRT を用いた治療成績に関する第I~II 相試験3 篇とメタアナリシス1 篇の計4 篇を二次選択で採用した。また,第4 版で採用された文献のうち第I~II 相試験に関する5 篇を採用し,脈管侵襲陽性肝細胞癌に対してソラフェニブと通常分割+TACE を比較したRCT 1 篇をハンドサーチで追加し計10 篇2-11)を採用した。
採用した8 篇の第I~II 相試験の報告2-9)から以下の知見が得られた。
試験内の肝細胞癌全患者を対象に2 年以上の治療成績を報告した文献において,2/3 年局所制御率が94.6~97%/90~96.3%,2/3 年全生存率が68.7~84%/66.7~76%とそれぞれ報告された2-4,6,9)。
肝細胞癌の個数について,3 篇で単発肝細胞癌のみを治療対象とし2,3,9),2 篇で1~3・4 個の少数個の肝細胞癌を治療対象としていた5,8)。残りの3 篇では適格基準に肝細胞癌の個数に制限を設けていなかった4,6,7)が,そのうちSBRT を施行した肝細胞癌の個数を報告しているものでは,2 個ないし3 個までの肝細胞癌を治療していた4,6)。
治療対象患者の手術・穿刺局所療法の可否について,7 篇で手術・穿刺局所療法が医学的な理由により困難と判断された患者をSBRT の治療対象とし2-8),残りの1 篇では手術・穿刺局所療法が医学的な理由で困難と判断された,あるいはそれらの治療法を拒否した患者を対象としていた9)。
肝機能について,2 篇でChild-Pugh 分類A のみを治療対象としていた2,7)。残りの6 篇ではChild-Pugh 分類A~B を治療対象としており3-6,8,9),そのうち5 篇ではChild-Pugh 分類A~B 7 点を治療対象としていた4-6,8,9)。Child-Pugh 分類A またはA~B 7 点を治療対象とし,試験内の全患者を対象に有害事象について検討した報告では,Grade 3 以上の肝胆道系酵素の上昇は1.7~28.6%であり2,4-7,9),SBRT 前と比較したSBRT 後のChild-Pugh スコアの2 点以上の上昇は1.7~34.3%であった2,4,5,9)。
肝細胞癌の腫瘍径について,4 篇で腫瘍径が4~6 cm までの肝細胞癌のみを治療対象とし2,3,8,9),残りの4 篇で腫瘍径が10~15 cm まで,あるいはサイズに制限を設けず大きな肝細胞癌も治療対象としていた4-7)。また,腫瘍径の総和について,複数個の肝細胞癌をSBRT の治療対象とした5 篇のうち,1 篇が1~3 個までを治療対象として腫瘍径の総和に6 cm 以下の制限を設けていた8)。残りの4 篇では腫瘍径の総和に制限を設けていなかった4-7)。
SBRT の線量分割,線量処方方法ならびにそれに伴う標的腫瘍の線量不均一性は報告によってさまざまであった2-9)。総線量は24~60 Gy,1 回線量は4~20 Gy,分割回数は3~6 回であった2-9)。
1 篇の脈管侵襲陽性(門脈腫瘍栓and/or 肝静脈腫瘍栓)の肝細胞癌を対象としたRCT において,通常分割照射+TACE 群でソラフェニブ群と比較して治療後12 週間時点での無増悪生存率(86.7% vs. 34.3%,p<0.001),治療後24 週間時点での奏効率(33.2% vs. 2.2%,p<0.001),生存期間中央値(55.0 週vs. 43.0 週,p=0.04)がそれぞれ有意に良好であったと報告された10)。
1 篇の脈管侵襲陽性(門脈腫瘍栓)を伴う肝細胞癌に対する前向き・後ろ向きの報告(SBRT 群は後ろ向きの報告のみ)を対象としたメタアナリシスにおいて,SBRT 群で通常分割照射±TACE 群と比較して奏効率が有意に高かったと報告された(70.7% vs. 51.3%,p=0.031)11)。
解説
SBRT の肝細胞癌に対する治療効果として,複数の前向き試験で高い局所制御率(2/3 年:94.6~97%/90~96.3%),と高い生存率(2/3 年:68.7~84%/66.7~76%)が報告されている2-4,6,9)。前向き試験のほとんどが手術・穿刺局所療法が施行困難と判断された患者を治療対象としたうえでの治療成績であり2-8),SBRT は手術・穿刺局所療法が施行困難な肝細胞癌患者に対して有効な局所治療であると考えられる。また,SBRT の前向き試験の多くで局所未治療の肝細胞癌に加えTACE 不応例やラジオ波焼灼療法(RFA),TACE,手術などの局所治療後再発例も治療対象として高い局所制御率を報告しており3-8),局所未治療の肝細胞癌に加え,他の局所治療後不応・再発した肝細胞癌もSBRT の良い治療対象であると考えられる。肝細胞癌に対するSBRT と放射線治療以外の局所治療,化学療法,ならびに経過観察と治療成績を比較したRCT は今日まで報告されていない。SBRT とRFA の治療成績について肝機能を調整因子としたうえで傾向スコア分析を用いて後ろ向きに比較した研究において,SBRT はRFA と比較して局所制御が有意に良好で全生存が同等であると報告され12,13),SBRT がRFA に匹敵する効果を有する可能性が示唆されている。腫瘍径が2~3 cm以上の肝細胞癌に対しては,SBRT がRFA と比較して局所制御が良好である可能性が複数の傾向スコア分析を用いた後ろ向きの報告から示唆されている13,14)。また,SBRT とTACE の治療成績について傾向スコア分析を用いて後ろ向きに比較した研究から,SBRT がTACE と比較して局所制御15-18)ならびに全生存15,17,19)が有意に良好であったとの報告があり,SBRT はTACE と比較してより有効な局所治療である可能性が示唆されている。
SBRT の適応となる肝細胞癌の個数について厳密な規定はない。今日までに報告されている前向き試験のうち多くが複数個の病変に対しSBRTを施行していた4-8)。そのうち最も多いもので4 個までを治療対象としていた5)ことに,本ガイドラインの治療アルゴリズムとの整合性を加味して,1~3 個の肝細胞癌をSBRT の適応として推奨することとした。
肝細胞癌に対するSBRT の有害事象の一つに肝機能低下があり,SBRT の適応を検討する際には肝機能に留意する必要がある。これまで報告された前向き試験の多くでChild-Pugh 分類A~B 7 点を治療対象とし,有害事象として肝機能低下が比較的低い重症度・頻度で報告されている2,4-7,9)。そのため,Child-Pugh 分類A~B 7 点では肝機能低下を考慮した適切な線量制約の下であればSBRT を安全で有効な局所治療として施行可能であると考えられるため,SBRT の適応として推奨することとした。その他,消化管に高線量が照射された場合に消化管の出血・潰瘍・穿孔が生じることがあるため1,20),SBRT の可否や線量分割を検討する際には標的腫瘍と消化管の距離・位置関係に留意する必要がある。
SBRT の治療対象となる肝細胞癌のサイズについても厳密な規定はなく,海外で行われた前向き試験では腫瘍径が10 cm を超えるような大きな肝細胞癌に対してもSBRT を施行していた4-7)。しかし,本邦から報告された前向き試験においては腫瘍径4~5 cm 以下の肝細胞癌を治療対象としていた3,9)ことに加え,本邦では腫瘍径が5 cm以下の肝細胞癌がSBRT の保険適用となることから,腫瘍径が5 cm 以下の肝細胞癌をSBRT の適応として推奨することとした。SBRT を施行する肝細胞癌の個数ならびに腫瘍サイズが大きくなるほど正常肝への照射線量が増加することには十分注意する必要がある。正常肝への照射線量を考慮した適切な線量制約の下でSBRT を施行することが重要である。
肝細胞癌に対するSBRT の線量分割,線量処方法は前述のようにさまざまであり,現時点で強く推奨されるものはない。線量分割について,本邦からTakeda らが報告した単施設第II 相試験3)では35~40 Gy/5 回を,Kimura らが報告した多施設第II 相試験であるSTRSPH 試験9)において40 Gy/5 回をそれぞれ用いていた。線量処方法については両者とも計画的腫瘍体積の95%が処方線量でカバーされるようにし,前者では最大線量の60~80%を,後者では70%をそれぞれ計画的腫瘍体積の辺縁にフィットさせる等線量曲線への処方を用いていた。本邦で肝細胞癌に対してSBRT を施行する際にはこれらの線量分割ならびに線量処方法が参考になると考えられる。
脈管侵襲陽性肝細胞癌に対しては以前より放射線治療として通常分割照射あるいは通常分割照射とTACE を組み合わせた治療(通常分割照射±TACE)が行われることがあり,複数の前向き試験の結果が報告されている10,21-23)。そのうち,Yoon らが脈管侵襲陽性(門脈腫瘍栓and/or 肝静脈腫瘍栓)の肝細胞癌を対象としたRCT において,通常分割照射+TACE 群でソラフェニブ群と比較して無増悪生存率,生存期間中央値,奏効率がそれぞれ有意に良好であったと報告した10)。また,Koo らが下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌を対象とした前向き試験で,通常分割照射+TACE 群でヒストリカルコントロールのTACE 群と比較して奏効率(42.9% vs. 13.8%,p<0.01),無増悪生存率(71.4% vs. 37.9%,p<0.01),全生存期間(中央値:11.7 カ月vs. 4.7 カ月,p<0.01)がそれぞれ有意に良好であったと報告した21)。以上より,脈管侵襲陽性肝細胞癌に対して放射線を用いた治療が有効である可能性が示唆されている。
近年,脈管侵襲陽性肝細胞癌に対するSBRT の治療成績が後ろ向きに複数報告されている24,25)。Rim らが門脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌に対する前向き・後ろ向きの報告を対象としたメタアナリシスにおいて,SBRT 群で通常分割照射±TACE 群と比較して奏効率が有意に高かったと報告し(70.7% vs. 51.3%,p=0.031)11),脈管侵襲陽性肝細胞癌に対してSBRT が通常分割照射±TACE と比較してより有効である可能性が示唆されている。
前述のようにSBRT の肝細胞癌に対する高い治療効果が報告されているものの,肝細胞癌に対するSBRT が他の局所治療,薬物療法,経過観察と比較して臨床成績を改善することを示したRCT がこれまで報告されていないことも背景に推奨が議論された。
投票結果
◉推奨文「1~3個の肝細胞癌において,脈管侵襲の有無にかかわらず,切除・穿刺局所療法が施行困難な,Child-Pugh 分類A~B 7 点,腫瘍径が5 cm 以下の場合,体幹部定位放射線治療を行ってよい」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ44
- 粒子線治療(陽子線治療,重粒子線治療)はどのような患者に行うのが適切か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- 肝切除・穿刺局所療法が施行困難な肝細胞癌に対して,粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕を行ってよい。
背景
荷電粒子線は有限の飛程をもち,その線量集中性に優れる物理学的特性から,X 線と比較して肝機能を温存しつつ病巣に高線量を照射することが容易である。肝細胞癌に対する粒子線治療は局所治療の新たな選択肢として期待されているが,腫瘍背景や患者背景からどのような患者に対して有効性が期待できるか検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版CQ49 を引き継いで作成された。今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された文献を検索し,78 篇が抽出された。そのなかから「無再発生存期間もしくは全生存期間を評価項目としたRCT あるいはnon-RCT を採用する」という方針の下に一次選択で24 篇,二次選択で17 篇,二次選択以降に公表されたRCT 1 篇をハンドサーチで追加し,第4 版の18 篇と合わせて36 篇を採用した。
RCT は2 篇が抽出された。1 篇はミラノ基準もしくはUCSF 基準で肝移植の適応とされる症例に対して陽子線治療とTACE を比較した第III 相試験で,69 症例の中間解析において陽子線治療群〔70.2 Gy(RBE)/15 回/3 週間〕とTACE 群で2 年生存率に差は認めなかったが,2 年局所制御率は陽子線治療群88%,TACE 群45%と陽子線治療が良好であった。また,有害事象による治療後30 日以内の合計入院日数は,陽子線治療群24 日,TACE 群113 日であり,陽子線治療群で有意な入院期間の短縮が報告されている1)。もう1 篇は3 cm 以下,2 病変以下の再発肝細胞癌を対象として陽子線治療とRFA を比較した第III 相試験で,主要評価項目の局所無増悪生存率は陽子線治療群で92.8%,RFA 群で83.2%と陽子線治療群で有意に良好で,陽子線治療のRFA に対する非劣性が示されている2)。
前向き単群試験は陽子線治療については6 つの,重粒子線治療については3 つの研究が抽出された3-10)。ほとんどの報告で手術および穿刺局所療法の適応が困難なもの(拒否例を含む)を治療対象としていた。局所制御率は陽子線治療では2 年で88~96%,5 年で87.8~90.2%3-7,11),重粒子線治療では3 年81~95%,5 年90~95%と報告されている8-10)。局所効果の線量依存性については陽子線治療第I 相試験において60 Gy(RBE)/20 回,66 Gy(RBE)/22 回,72 Gy(RBE)/24 回と線量を増加するにつれ有意に腫瘍の完全奏効率が高くなったとの報告がある11)。全生存率に関しては,陽子線治療では2 年で59~66%,3 年で33%,5 年で38.7~42.3%1,5-7,11),重粒子線治療では3 年で50%,5 年で25~36.3%であった8-10)。単一施設における陽子線治療と重粒子線治療の比較では,局所制御,全生存率ともに有意差を認めなかったとの報告がある12)。X 線治療との比較では,傾向スコアを用いた研究やメタアナリシスなどが3 篇あり,粒子線治療で肝障害が少なく,有意に予後が良好であることが示されている13-15)。
後ろ向きではあるが,脈管侵襲陽性肝細胞癌に対しては有効性を示唆する多数の報告があり,門脈腫瘍栓症例の生存期間中央値が13.2~22 カ月16-18),未治療の脈管侵襲陽性肝細胞癌症例の5 年生存率が34%19),単発の下大静脈腫瘍栓症例で2 年生存率が64%20)との報告がある。
有害事象としては肝不全,消化管障害,肋骨骨折,肺臓炎などが認められており,Grade 3 以上の有害事象の頻度は3.2~8.1%と報告されている8-10,21-31)。肝機能については治療前後で有意な悪化を認めなかったとの複数の報告がある3,5,10,11,30)。腫瘍径の大きいものや肝門部や消化管に近接した病変に対しても線量や照射範囲の調整により安全に治療が可能であることが報告されており,病変の局在による予後の差はないとされる21,30,32,33)。重粒子線治療では高齢者でも急性期の有害事象なく治療でき,サルコペニア合併患者において明らかな治療成績の悪化はないことが報告されている34,35)。予後予測因子としては,インドシアニングリーン(ICG)15 分停滞率が特にChild-Pugh 分類A の症例について有用であることが示されている36)。
解説
肝細胞癌に対する粒子線治療は1980年代から行われている。これまで治療施設が限られていたことからエビデンスは限られていたが,近年,世界的な治療施設数の増加に伴ってRCT や前向き研究により良好な局所制御効果が確認されるようになってきている(表1)。
2 篇のRCT で,切除および穿刺局所療法が困難な肝細胞癌に対して陽子線治療はTACE よりも高い局所効果を有し入院期間を短縮できること,小径肝細胞癌に対する局所効果においてRFA に対して非劣性であることが示されている。他の治療法との関係についてはより高いレベルでの研究が必要であるが,切除および穿刺局所療法が困難な肝細胞癌に対しては現時点で一定の有効性が示されており,有害事象も少ないことから治療対象として推奨してよいと判断した。
また多くの後ろ向き観察研究から,TACE の適応となりにくい脈管侵襲陽性肝細胞癌や巨大肝細胞癌,高齢者などの脆弱性を有する症例に対する有用性も報告されており,他の治療手段が限られる場合には粒子線治療はこれらの病態における治療選択肢として有用な可能性がある。いずれもX 線治療と比べて高線量が投与されているが,有害事象は低率であることが報告されている。
陽子線治療と重粒子線治療は物理的な線量分布や生物学的効果,それに基づく総線量や分割回数などの設定に若干の差異があるものの,現時点で肝細胞癌に対しては両者の治療成績や適応となる病態に明らかな違いはない。
以上より,肝細胞癌に対する粒子線治療(陽子線治療,重粒子線治療)は低侵襲で高い局所効果を有し,標準的な局所治療が適さない肝細胞癌に対して有効な治療選択肢と考えられる。本邦では,手術による根治的な治療が困難な肝細胞癌(長径4 cm 以上のものに限る)について,2022 年4 月から保険収載された。
投票結果
◉推奨文「肝切除・穿刺局所療法が施行困難な肝細胞癌に対して,粒子線治療〔陽子線治療,重粒子(炭素イオン)線治療〕を行ってよい」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ45
- 肝細胞癌の骨転移・脳転移の症状緩和目的に放射線治療は推奨されるか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 1.骨転移に対して疼痛緩和目的の放射線治療を行うことを推奨する。
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さA
-
- 2.脳転移に対して放射線治療を行うことを推奨する。
背景
転移性脳腫瘍および転移性骨腫瘍に関しては,原発臓器を限定しないで行われたRCT が多数報告されており,放射線治療が標準的に行われている。固形癌に関する限り一般的には,原発臓器や病理組織型によって放射線治療の方針を変えることのエビデンスは確立していない。骨転移・脳転移に対する放射線治療の有効性および意義について,肝細胞癌に限定した特定の治療方針の必要性を中心に検討した。
サイエンティフィックステートメント
第4 版のCQ15-1 を引き継いで本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日の文献を検索したところ,303 篇が抽出された。これらのなかからタイトルおよびアブストラクトに基づいて57 篇を一次選択し,その後,一次選択した文献の本文の内容を検討した。肝細胞癌の骨転移もしくは脳転移に対する放射線治療成績に関する文献を後ろ向き研究を含めて選択し,また,原発臓器を限定しない骨転移もしくは脳転移を対象としたRCT,RCT を主体とした文献を対象としたシステマティックレビューおよびメタアナリシスを選択した結果,31 篇が二次選択され,第4 版以前で採用された19 篇と合わせて計50 篇を採用した。
肝細胞癌のみの骨転移を対象としたエビデンスレベルの高い臨床試験は行われていないが,他臓器原発の癌からの骨転移患者を対象にしたRCT およびそれらの研究を対象としたメタアナリシスから,骨転移による疼痛緩和に対する放射線治療の有効性は一貫して示されている1-4)。しかし,これらのRCT に肝細胞癌症例が含まれているものはほとんどない。肝細胞癌の骨転移症例に放射線治療を行った後ろ向きの解析でも,疼痛緩和の効果は報告されているものの5-9),他臓器の癌からの骨転移に対する放射線治療と比較して,治療効果が低い傾向や高線量投与での有効性を指摘する報告も複数あり10-15),一般的な骨転移とは異なる線量分割法での放射線治療が望ましい可能性も示唆されている。一般的に骨転移を有する肝細胞癌症例の予後が不良であることから16,17),治療期間の短い8 Gy 単回照射も行われている18-25)。
転移性脳腫瘍についても,肝細胞癌のみを対象としたエビデンスレベルの高い臨床試験は行われていない。他臓器原発の癌からの脳転移患者を対象にしたRCT およびメタアナリシスに基づき,全脳照射および定位放射線治療(SRT)を適切に組み合わせた治療が標準治療として確立している26-41)。肝細胞癌の脳転移症例を対象にした文献は後ろ向きの解析のみしかみられないものの,放射線治療を行うことによって無治療の場合よりも生存期間が延長するとの報告が複数みられる42-46)。なお,近年全身治療の進歩によって肝細胞癌に多数の分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬が用いられるようになったが,それらと脳転移への放射線治療を併用することは安全性を損なわないという報告がある47)。
解説
遠隔転移に対する治療に際して重要な点は,腫瘍による症状の緩和および予防である。特に,脳転移例では腫瘍制御が生存に直結することとなるため,適切な治療方針の選択は極めて重要である。原発臓器を限定することなく骨転移・脳転移を組み込んだ放射線治療についてのRCT は多数行われており,それらの結果はほぼ一貫している。一般には放射線治療の適応や線量分割法を,原発臓器や病理組織型によって調整することのエビデンスは乏しく,その点では治療方針に関してのエビデンスは十分に確立していると考えられる。ただしサイエンティフィックステートメントにも示した通り,肝細胞癌の遠隔転移例を組み込んで行われているエビデンスレベルの高い研究はほとんどなく,肝細胞癌の遠隔転移に対してこれらの記載が当てはまるか否かはわからない。
肝細胞癌のみの骨転移もしくは脳転移を対象とした報告は後ろ向き研究がいくつかみられるのみで,エビデンスは限られているが,放射線治療の意義を否定する文献はみられず,他の臓器の癌の骨転移・遠隔転移と同様の基準で適応を決めて構わないと考えられる。ただし,他の原発臓器の癌を対象とした放射線治療よりもその成績が低い傾向を示し,治療強度を上げることを提唱する文献が複数みられる。しかし,特定の線量分割法が優れるとする報告も認められない。
また近年の放射線治療技術の進歩に伴い,1 回高線量を照射することで局所の治療効果を高めるSBRT が可能となった。遠隔転移病変に対して局所治療を行うことの予後改善効果には議論があるが,他病変が制御されているいわゆるオリゴ転移の症例に対するSBRT は本邦でも2020 年度から保険収載されたため,検討の余地がある。通常分割照射と比較しても除痛効果が高かったという報告もある一方で48),SBRT 後の骨密度の低下や骨折の増加の報告もあり慎重な適応判断が求められる49,50)。
なお,骨転移,脳転移とも肝細胞癌症例が含まれるRCT がほとんどないため,エビデンスの強さはB が妥当ではないかとの意見も出たが,癌種を問わず行われたRCT 結果と矛盾する結果を報告している肝細胞癌症例に対する後ろ向き研究があるわけではないことから,議論の結果,エビデンスの強さはA にしてよいと最終的に判断した。
投票結果
◉推奨文1「骨転移に対して疼痛緩和目的の放射線治療を行うことを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
◉推奨文2「脳転移に対して放射線治療を行うことを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ46
- 放射線治療後の治療効果判定はどのようにするか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さB
- 放射線治療後の治療効果判定は,dynamic CT/MRI を用い,6 カ月以上治療病巣の増大や早期濃染の増大がないことを局所制御とする。
背景
固形癌の治療効果判定基準として,腫瘍の縮小を評価したRECIST1.11)が広く用いられている。一方,典型的に多血性の形態をとる肝細胞癌においては,治療が行われても必ずしも腫瘍の縮小を伴わない。このため,腫瘍の壊死効果を評価に取り入れたmodified RECIST2),RECICL3)などが用いられている。しかし,肝細胞癌に対する放射線治療では,治療後も画像上は腫瘤が残存し,縮小率や縮小速度にばらつきが大きいため,既存の治療効果判定基準で正しく効果判定を行うことは難しく,誤って治療不応と判断されることが懸念される。今回,放射線治療後の効果判定基準について検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は2021 年版(第5 版)で新たに追加されたものであるため,2010 年1 月1 日から2020 年1 月31 日までに報告された「放射線治療後の治療効果についての研究」または「放射線治療の有効性についての前向き試験」についての論文を検索し,抽出された440 篇から一次選択として関連性の高い33 篇を選択した。さらに二次選択として,治療効果の画像評価方法について検討した4 篇と,治療効果の判定方法について記載のある前向き試験(対象症例が20 例以上)9 篇を採用し,ハンドサーチにより重要と思われるものを2 篇追加し,計15 篇4-18)を採用した。
●放射線治療後の治療効果についての研究
Kimura ら4)は,肝細胞癌に対するSBRT 後の59 例67 病変の経時的な画像変化をdynamic CT を用いて評価した。このうち約3 割で治療後3 カ月後も早期濃染が残存していたが,治療後6 カ月後には大半で血流低下を認めた。Sanuki ら5)も,早期濃染のある肝細胞癌42 例へSBRT を実施し,dynamic CT 上でmodified RECIST にて治療効果を評価したところ,完全奏功率が治療後3,6,12 カ月でそれぞれ24%,67%,71%と経時的に増加し,早期濃染が2 年以上残存する例も認めた。Mendiratta-Lala ら6)はSBRT 後に肝移植を行った6 例と腫瘍マーカーが正常化した4 例をdynamic MRI またはCT にて評価した。その結果,病理学的または血清学的に腫瘍が制御されていても,画像上の早期濃染は治療後12 カ月後も残存し,血流残存は生存腫瘍の残存を示すわけではないと報告している。また,同グループが62 例67 病変をdynamic MRI にて画像追跡した結果7),治療後3~6 カ月後のmodified RECIST による評価では完全奏効が25%,不変が75%となっており,治療後12 カ月後に58%で早期濃染の残存を認めた。
●放射線治療の有効性についての前向き試験
前述の検索条件と採用基準に基づき論文を抽出したところ,結果的にSBRT および粒子線治療に関するものに絞られた8-16)。いずれの研究も評価にはdynamic CT/MRI が用いられ,効果判定基準は4 篇でRECIST,5 篇でmodified RECIST が使用されていた。ただし,これらの試験で「奏効率」をエンドポイントとしていたのは1 篇のみであり,他はすべて,治療病巣の無増悪を局所制御と判断し,「局所制御率」を算出していた。
解説
放射線治療は腫瘍細胞障害(細胞分裂能の障害とそれに引き続く細胞死)をもたらすことで効果を発揮するため,必ずしも焼灼療法や塞栓療法のように治療後早期に壊死や血流低下を伴わない。今回採用した放射線治療後の治療効果判定についての研究はいずれも,腫瘍血流が1~2 年と長期に残存することや,腫瘍縮小の観察に長期間を要することを示している。このため,早期濃染の有無による効果判定は困難であり,放射線治療後の治療効果判定は,治療病巣の増大がない(無増悪)ことを「局所制御」とすることが望ましい。この場合は,RECIST やmodified RECIST などのいずれの評価方法を用いるかは結果に影響しないと考えられる。また,「奏効率」を評価する場合は,判定時期に注意が必要である。複数の報告より,最大効果が得られるまでに少なくとも6 カ月程度を要すると考えられるため,治療後の経時的変化の特徴を理解して十分な期間を設定することが望ましい。画像評価のタイミングは,3~4 カ月毎のdynamic CT もしくはMRI が望ましく(CQ47 参照),治療病巣に明らかな増大があった場合は局所再発と判断される。
評価モダリティについてはdynamic CT/MRI を基本とするが,治療効果の判断が腫瘍血流の変化に依存しない拡散強調MRI の有用性も報告されており17,18),今後の検討課題である。
投票結果
◉推奨文「放射線治療後の治療効果判定は,dynamic CT/MRI を用い,6カ月以上治療病巣の増大や早期濃染の増大がないことを局所制御とする」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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第9 章 治療後のサーベイランス・再発予防・再発治療
- はじめに
肝細胞癌の治療は非常に進歩したとはいえ,根治的に治療が行われた後であっても,再発率は依然高く,未解決の問題点である。一方,再発しても,初発と同様の治療法選択が可能であり,治療効果も一定以上期待できる点が他の癌腫にはない特徴といえる。すなわち肝細胞癌の治療を考えるうえで,再発に対する治療戦略は初発同様に重要であり,この点は本ガイドライン発刊以降変わっていない。
2005 年版(初版)および2009 年版(第2 版)は,再発治療に関するエビデンスが十分でなかったため,基本的に初発肝細胞癌を対象に策定されてきた。再発治療に関するclinical question(以下CQ,初版ではresearch question に相当)は,手術を扱う第3 章における「再発肝細胞癌に対する有効な治療は?」のみで,これに対する推奨(第2 版)は「再発肝細胞癌に対しては,初回肝細胞癌に対するのと同じ基準で治療方針を決定することが推奨される。すなわち肝切除が標準治療であり,特に肝機能良好例(非硬変肝症例またはChild 分類のA 症例)における単発症例では再切除が推奨される」(推奨グレードB)となっていた。
しかし,再発に対する診療に関するエビデンスの蓄積を受け,初回根治治療後の対応についても,ガイドラインとしてまとめることになり,2013 年版(第3 版)ではこれらを一括して「第8 章 治療後のサーベイランス,再発予防,再発治療」として扱われた。根治治療法として,肝切除,穿刺局所療法,肝移植を選び,それぞれ治療後の経過観察(再発を拾い上げるサーベイランス),再発予防法,再発時の治療法選択の3 つの命題を掲げた。すなわち,計9 つのCQ を新設し,いずれも2007 年6 月以前の論文まで対象を広げて検討した。検討の過程でいくつかの理由により,これら9 つのCQ は統廃合され,第3 版では最終的に6 つとなった。
2017 年版(第4 版)ではこれら6 つのCQ につき,第3 版以降に新たなエビデンスが得られたか,検討を加えた。根治治療後の経過観察法については,強いエビデンスの追加はなく,第3 版とほぼ同じ内容となった。根治治療後の再発予防については,殺細胞性抗癌薬の意義がほぼ否定され,またSorafenib as Adjuvant Treatment in the Prevention of Recurrence of Hepatocellular Carcinoma(STORM)試験により分子標的治療薬の再発予防効果も否定されたことから,積極的な抗腫瘍治療は推奨されない。一方,第3 版発刊時にはインターフェロンが主たる役割を担っていたウイルス肝炎の治療は,直接型抗ウイルス薬(DAA)の登場により,長足の進歩を遂げた。DAA による肝炎コントロールにより,直接肝細胞癌の再発を抑えられるかどうかはまだ十分なエビデンスがないものの,少なくとも肝機能の維持・改善を介した間接的な予後改善効果が期待されている。肝移植後の再発予防に関しては,mTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬による術後管理の有効性を示唆する報告が出たため,それを反映させた推奨となった。再発に対する治療選択については,第3 版で切除と穿刺局所療法でCQ を分けていたのを,結局は初回治療と同じstrategy で適応を検討するという点では同じということでCQ を1 つにまとめた。移植後再発については,第3 版で切除可能であれば切除を,という推奨であったが,分子標的治療薬を使用した報告が出たことを反映し,切除不能であれば分子標的治療薬を考慮,という微修正となった。
今回,2021 年版(第5 版)では第4 版の5 つのCQ のなかに肝移植の経過観察についてのCQ がなかったため,新たにCQ50「肝移植後,どのように経過観察するか?」を加えた。さらに前半(CQ47,48,49)を「肝切除後・穿刺局所療法後」に関するCQ とし,後半(CQ50,51,52)を「肝移植後」に関するCQ に並べ替えた。今回も第4 版同様にエビデンスレベルの高い報告は少なく,「肝切除後・穿刺局所療法後」に関するCQ47,48,49 と「肝移植後」に関するCQ51 について推奨文はほぼ同じ内容となった。新たに作られたCQ50「肝移植後,どのように経過観察するか?」について,二次選択での採用は1 篇のみでかつエビデンスレベルの高い論文は存在しなかったが,改訂委員会では「初発時の超高危険群に対するサーベイランスに準じた腫瘍マーカーと画像検査の併用による経過観察」の重要性に関して異論はなく,「強い推奨」となった。また,CQ52「肝移植後の再発に対する有効な治療法は何か?」では,肝移植後の肝細胞癌再発症例に対するmTOR 阻害薬の有用性を示す報告がみられたことから,第4 版の推奨文に追記することとなった。
本章で扱った6 つのCQ はいずれもいまだエビデンスが十分とはいえない状況だが,第4 版発刊時から比べると,少しずつながら考慮に値するデータが出始めている。今後のさらなるエビデンスの蓄積を待って,次回改訂につなげたい。
- CQ47
- 肝切除後・穿刺局所療法後,どのように経過観察するか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さC
- 初発時の超高危険群に対するサーベイランスと同様に腫瘍マーカーと画像検査の併用による経過観察を推奨する。
背景
肝細胞癌は根治的治療を行っても高率に再発を認めることから,肝切除後・穿刺局所療法後の経過観察および再発後の治療の選択が重要である。
サイエンティフィックステートメント
第4 版のCQ51 に基づいて本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,356 篇が抽出された。そのなかから「経過観察のプロトコールと再発病変の詳細(サイズ,個数,門脈侵襲の有無)が記載されているコホート研究あるいはランダム化比較試験(RCT)を採用する」という方針の下に一次選択で14 篇,二次選択で9 篇を新たに採用し,第4 版の12 篇と合わせて計21 篇を採用した。初発時の肝細胞癌サーベイランスと異なり,肝切除後や穿刺局所療法後の再発を検知する高い感度,特異度を有する単独の検査方法やその間隔を比較検討したエビデンスレベルの高い論文は存在しなかった1-21)。
解説
肝細胞癌発症の超高危険群であるC 型肝硬変患者の発癌率が年率約8%1)であるのに対し,肝細胞癌の肝切除後の再発率は年率10%以上で5 年後には70~80%に達する。また,穿刺局所療法後,超音波検査とdynamic CT を4 カ月間隔で行った報告2)では,肝細胞癌累積再発率は1 年18.6%,5 年72.0%である。肝切除後ならびに穿刺局所療法後の再発の早期発見が予後を改善するというエビデンスは十分ではないが,肝切除あるいは穿刺局所療法の長期予後を報告した論文では,再発に対する再肝切除,繰り返す穿刺局所療法の施行が通常記載されていることを考慮すると,根治治療の機会をもたらす点では,治療後の経過観察は初発時のサーベイランスと同様に重要であると考えられる。したがって,治療後には最低でも超高危険群に準じた厳密な経過観察が必要である。
本ガイドラインのサーベイランスアルゴリズムでは,肝細胞癌発症の超高危険群に対して3~6 カ月間隔の超音波検査と腫瘍マーカー測定を軸に,dynamic CT/MRI を併用した定期的スクリーニングを推奨している。ラジオ波焼灼療法(RFA)3,6,12,24 カ月後に超音波検査を用いた経過観察法3)では,肝細胞癌再発の78%が検出可能であったとの報告がある。また,造影超音波検査はRFA 後の肝内再発に対して造影CT に比べて正診率は劣るとの報告4)があるものの,造影超音波検査による経過観察はCT/MRI の施行回数を減らせる可能性があるとの報告5)がある。したがって,治療後の経過観察法の一案として3~4 カ月毎の腫瘍マーカー測定,ならびに(造影)超音波検査のみならずdynamic CT,dynamic MRI(Gd-EOB-DTPA 造影MRI 含む)の併用による画像検査を提案する。
術前の肝細胞癌のstage や背景肝の線維化といった危険因子により術後再発率の上昇が予測されるが,根治的焼灼療法を行った患者のうち術前リスクが高かった症例(3 cm 以下多発または3~5 cm 単発)は経過観察の間隔が短い方(<4 カ月毎)が長い方(4~6 カ月毎)より有意に全生存期間が良好で,術前リスクが低かった症例(3 cm 以下単発)では変わらなかったとする報告6)や,肝切除または焼灼療法を行った患者のうちで年齢とPT-INR を考慮したリスクスコアが高リスクの症例は3 カ月毎の経過観察の方が6 カ月毎の経過観察よりも有意に全生存期間が良好で,低リスクの症例では差がなかった7)とする報告がある。一方,術前の腫瘍サイズ・腫瘍個数・微小脈管侵襲などを考慮したリスクによらず,治癒切除後2~4カ月毎に経過観察を行った症例と4~6 カ月毎に経過観察を行った症例で,全生存期間の違いがなかったとする報告8)もあり,検査コストや放射線被曝なども考慮すると,前述以上の厳密なスクリーニングは非現実的と考える。
肝外再発も早期発見により治療の選択肢を拡大し予後を改善する可能性を有するが,臨床症状を認めない場合,肝臓以外の再発に対しどのような画像検査をどれくらいの頻度で行うかの推奨はない。四肢の疼痛や神経症状などの臨床症状を認めた場合,また腫瘍マーカーが再上昇したにもかかわらず肝臓に再発を認めない場合は肝外転移を疑い,CT/MRI やFDG-PET,骨シンチグラフィーなどを考慮する。
米国肝臓病学会(AASLD),欧州肝臓学会(EASL)のガイドラインでも局所治療後の再発に対する経過観察法に関する記載があるが,その根拠となる論文は示されていない。AASLD のガイドラインでは,肝切除後は少なくとも3~6 カ月毎の画像検査とアルファフェトプロテイン(AFP)測定(最初の1 年間さらに間隔を短くすることを考慮),穿刺局所療法後は少なくとも最初の1 年間は3 カ月毎でその後少なくとも6 カ月毎のCT またはMRI を実施すべきと記載されている。またEASL では,根治切除後の経過観察の間隔を最初の1 年間は3~4 カ月間隔で行う案が提案されている。
長期の経過観察に関しては,肝切除治療後5 年目以降に再発した患者のうち,6 カ月毎にCT を行っていた患者は12 カ月毎にCT を行っていた患者に比べ,再発時の腫瘍の大きさが有意に小さかった(1.1 cm vs. 3 cm,p=0.045)との報告9)がある。また,術後2 年以降に再発した患者のうち画像診断とAFP による定期的(6 カ月以内毎)な経過観察を受けていた患者は受けていなかった患者に比べて治癒可能な治療を行えた割合が有意に高く生存が有意に長かったとの報告10)や,治癒切除後10 年以上生存した症例では10 年未満であった症例よりも定期経過観察(6 カ月以内毎)を受けていた症例が有意に多く,定期経過観察は10年以上の生存に関連する独立した予後予測因子であったとの報告11)があることから,長期無再発例においても最長6 カ月までの間隔で経過観察を行うことが推奨される。
したがって,肝切除後・穿刺局所療法後は初発時の超高危険群に対するサーベイランスと同様に腫瘍マーカーと画像検査を併用する経過観察法が強く推奨される。
肝切除後・穿刺局所療法後の再発リスクを予測するマーカーについてエビデンスレベルの高い論文は存在しないが,治療後にAFP やAFP-L3 分画が低下しないこと(non-response)が再発予測因子になることを示した報告が散見されており12-15),このような集団には慎重な経過観察が必要であると考えられる。
推奨決定会議では,肝切除後・穿刺局所療法後の経過観察法に研究目的を限定したエビデンスレベルの高い論文はないものの,肝細胞癌に対する根治治療後の再発率が極めて高いことを考慮すると,少なくとも初発時の超高危険群に対するサーベイランスに準じた考え方を取ることが望ましいと考えられること,初発時の超高危険群に対するサーベイランスに対するエビデンスの強さがB であることを考慮すると,本CQでは対象集団が異なるためエビデンスの強さをC とすることが決定されたうえで,投票が行われた。
投票結果
◉推奨文「初発時の超高危険群に対するサーベイランスと同様に腫瘍マーカーと画像検査の併用による経過観察を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ48
- 肝切除後・穿刺局所療法後の有効な再発予防法は何か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さB
- ウイルス肝炎に起因する肝細胞癌において,肝切除後や穿刺局所療法後の抗ウイルス療法は,再発抑制や生存率の向上に寄与する可能性がある。
背景
肝細胞癌は,局所根治的に治療が行われても高率に再発を来す。再発を抑制することによって生存率の改善が期待される。有効な再発予防策について検討した。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は第4 版のCQ28 とCQ52 を統合して作成された。新たに設定した検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,211 篇が抽出された。そのなかから「RCT あるいはRCT のみのメタアナリシスを採用する」という方針の下に一次選択で32 篇,二次選択で4 篇を新たに採用した。第4 版の38 篇から残した36 篇と合わせて計40 篇を採用した。
根治肝切除後の術後補助化学療法(殺細胞性)については,いくつかのRCT が報告され,1 篇のみ無再発生存改善効果を示しているが1),その他は否定的な評価であり,逆に肝機能を悪化させて予後不良になるとの報告もある2-4)。同じく肝切除に限定した術後補助療法として,経肝動脈的治療〔肝動注化学療法や肝動脈化学塞栓療法(TACE)など〕を評価するRCT がみられるが,無再発生存では有意差を認めるものの累積生存では差がなかったとする結果が多い3,5,6)。近年B 型肝炎ウイルス(HBV)陽性切除例のRCT において術後TACE 施行例は有意に無再発生存(ハザード比:0.68)および3 年生存(ハザード比:0.59)が良好であると報告された7)。補助的な経肝動脈的治療のメタアナリシスが行われ累積生存率改善効果も報告しているが,投与薬剤や方法がすべて異なっており慎重な評価が必要である8)。特殊な例では,門脈腫瘍栓合併例では術後の経門脈的治療やTACE が有効であったとする報告が認められる9)。
インターフェロン療法(αもしくはβ)は,HBV 陽性やC 型肝炎ウイルス(HCV)陽性肝細胞癌の肝切除や穿刺局所療法後の補助療法として,再発抑制や生存率の改善がいくつかのRCT によって示されてきた10-13)。一方,生存率の改善や再発抑制効果が一定のサブグループのみにとどまったとの報告もある14,15)。少数例のRCT の結果を統合するメタアナリシスの結果が3 篇報告されており16-18),いずれもインターフェロンαの有効性を支持している。HBV 陽性患者についてR0 切除例におけるRCT ではアデフォビル投与が無再発生存,累積生存向上に寄与した19)ことが以前より報告されている。根治切除後の核酸アナログ製剤治療は低HBV-DNA 例においても無再発生存(p=0.016)および累積生存(p=0.004)向上に寄与した20)。根治切除・焼灼療法後早期に核酸アナログ製剤+ペグインターフェロンα 48 週投与を行った群(early combination)は1 年後のペグインターフェロン併用群(late combination)・核酸アナログ製剤単独投与群・核酸アナログ製剤非投与群と比較し,B 型肝炎ウイルス表面抗原(HBs 抗原)減少率,全生存期間,無再発生存期間が有意に良好であったことが447 例のRCT で報告された21)。
分子標的治療の補助療法への応用が期待されるなか,世界202 施設,1,114 例の患者を対象に肝細胞癌に対する肝切除あるいは穿刺局所療法後のソラフェニブ内服の再発抑制効果を検討した大規模RCT(STORM 試験)の結果が2015 年に報告されたが,主要評価項目である無再発生存期間中央値が33.3 カ月vs. 33.7 カ月で効果は示されず,累積生存でも有意差はなかった22)。
根治治療後再発予防としての養子免疫療法23)により再発が抑制されたとの報告があるが,生存率を有意に改善するまでには至っていない。また,acyclic retinoid により無再発生存も累積生存も改善したとの1996 年の報告24)を受けて401 例の患者をperetinoin300 mg/日投与群,600 mg/日投与群,プラセボ群の3 群に分けたRCT が報告され,peretinoin 600 mg 群とプラセボ群との間に無再発生存で有意差を認めた25)。現在HBV 陽性肝癌根治療法後の第III 相試験が進行中である。治療後補助療法としてのビタミンK については4 篇のRCT があるが,有効性は否定的である26-28)。ビタミンアナログ製剤として,acyclic retinoid とビタミンK を統合解析したメタアナリシスが1 篇あるが,前者で有効,後者で無効という結果であった29)。分岐鎖アミノ酸製剤単独の長期投与の生存率の改善効果は明らかではない30)。分岐鎖アミノ酸製剤+ACE(angiotensin converting enzyme)阻害薬併用療法による再発抑制効果を示す1 篇のRCT が報告されたが,治療群の患者数が少数であった31)。COX2(cyclooxygenase 2)阻害薬であるメロキシカム内服による再発抑制効果がRCT で示されたが,累積生存率は不変であった32)。この他,125I 密封小線源療法を3 cm 以下の小肝細胞癌の治療後に用いることで無再発生存も生存も改善することを示した2 篇のRCT が報告された33,34)。さらに術後補助療法としての漢方薬(Cinobufacini+Jiedu 顆粒)35),サイトカイン誘導キラー細胞36),131I 標識metuximab37),Huaier 顆粒38)の使用が無再発生存,生存ともに改善することを示すRCT が各々1 篇ずつ報告されたが単報である。肝切除術前TACE39)と肝切除に伴うリンパ節郭清40)の予後改善効果を検討するRCT が各々1 篇ずつ報告され,いずれも無再発生存・生存ともに改善効果を認めなかった。
解説
肝細胞癌に対し切除あるいは穿刺局所療法が根治的に行えた場合でも再発率は極めて高く,再発予防が長期生存には重要である。以前より,HBV やHCV 関連の肝細胞癌では抗ウイルス療法が試されてきた。術後インターフェロン療法は,HBV 陽性肝細胞癌,HCV 陽性肝細胞癌においていくつかのRCT で肯定,否定さまざまな結果が報告されてきたが,3 篇のメタアナリシスすべてで肝切除後あるいは穿刺局所療法後のインターフェロン治療が無再発生存あるいは累積生存の延長に寄与することが示されており,重要視せざるを得ない。ただし,これらメタアナリシスでもRCT だけでなく前向きコホート研究の結果が含まれているものがあり18,19),第4 版を踏襲し,弱い推奨とした。HCV 陽性肝癌根治療法後のDAA 治療はRCT が倫理的に困難であるため「RCT あるいはRCT のみのメタアナリシスを採用する」という方針での採用論文は存在しなかった。HBV 陽性肝癌根治療法後の核酸アナログ製剤についてはアデフォビルの他に2 篇RCT が報告されエビデンスレベルは高いが,術後早期にペグインターフェロンを併用するかについては続報が待たれる。
肝切除に限った(穿刺局所療法を含まない)文献検索を行うと,術後補助療法については,TACE などの経肝動脈的治療を含めて複数のRCT が報告されているが,投与経路・方法にかかわらず標準的なプロトコールは確立しておらず,有効とするプロトコールのさらなる検証が必要である。切除・穿刺局所療法・TACE 後の免疫チェックポイント阻害薬の再発予防効果については現在複数の臨床試験が進行中であり,今後の報告が注目されている。
ビタミンK,養子免疫療法,acyclic retinoid,COX2 阻害薬,分岐鎖アミノ酸製剤,125I 密封小線源療法,Huaier 顆粒などについてRCT がみられたが,結果が否定的であったり単報であったりしたために推奨文には反映しなかった。術前補助療法については推奨されるものは存在しなかった。
投票結果
◉推奨文「ウイルス肝炎に起因する肝細胞癌において,肝切除後や穿刺局所療法後の抗ウイルス療法は,再発抑制や生存率の向上に寄与する可能性がある」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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- CQ49
- 肝切除後・穿刺局所療法後の再発に対する有効な治療法は何か?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さC
- 肝切除後・穿刺局所療法後の再発に対する治療は,初回治療時の治療アルゴリズムに準ずることを推奨する。
背景
肝細胞癌に対する肝切除後の治療成績について,1980 年代に比べ1990 年代の累積生存率は著明な改善を認めるものの,切除後の無再発生存率には差はないことから,初回治療後の再発治療の進歩が長期予後の改善に寄与するとされる1)。
サイエンティフィックステートメント
第4 版のCQ54 に基づいて本CQ は作成された。今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日に発表された論文について検索し,403 篇が抽出された。そのなかから「エンドポイントを無再発生存率か全生存率に設定したコントロール群を伴うRCT あるいはnon-RCT を採用する」という方針の下に一次選択で38 篇,二次選択で13 篇を新たに採用した。第3 版(CQ55,CQ56)で採用された16 篇のうち9 篇と第4 版の二次選択の13 篇のうち12 篇を採用し,計34 篇を採用した。
今回の二次選択13 篇の内訳は,RCT 1 篇,non-RCT 10 篇(バイアスを適切に調整した報告は6 篇),メタアナリシスは2 篇で前回に比べサンプル数が多い報告が多くみられた。しかし,今回RFA 後再発治療に関する論文はみられず,第4 版で採用した論文をそのまま採用した。肝外再発に関しては,肝外転移に関するCQ14 があるため,第4 版で採用した肝外病変に対する治療に関する文献1 篇を除外した。
肝細胞癌に対する肝切除後,おおよそ2 年で50%,5 年で80%の症例に再発を認めるとされている。肝細胞癌に対する肝切除後再発の特徴は肝内再発の頻度が高いことであり,初回再発の90%以上が肝内再発で,またそのほとんどが肝単独再発であるとされる。肝切除後の肝再発については,転移によるものに加え,切除後の残存肝からの新しい肝細胞癌の発生(異時多中心性再発)が寄与するとされている。異時多中心性再発に対する治療方針は,理論的には初発時のそれと同じになる(背景肝の発癌リスクの経時的な変化がないと仮定した場合)。しかし,日常の臨床病理学的な検討からは,これらと肝内転移による再発の鑑別は困難であるため,初発の肝細胞癌に対する治療方針とどのように異なる態度をとるべきかが問題となる。
肝単独再発に対して治療群と未治療群,あるいは肝切除と他の治療を比較した検討は後ろ向きのコホート研究にとどまり,したがって各治療の適応症例の選択というバイアスがかかっている。これらの背景因子を考慮して多変量解析を行った報告はいくつかあり,いずれも再切除が非切除に対する独立した予後良好因子であったとしている2,3)が,出版バイアスの可能性については考慮が必要である。再発肝細胞癌に対する再肝切除症例の予後予測因子の検討についての数十篇の報告(後ろ向きのコホート研究,または治療前後の比較のみ)があるが,再肝切除後の生存予後は同じ施設の初発肝細胞癌に対する切除後のそれとほぼ同等である。初回切除から再肝切除までの期間がこれらの比較では無視されていることを考慮すると,再肝切除後の良好な結果は再切除症例の選択バイアスを反映したものと考えられる。おそらく,初発時と同様の適応基準により症例選択をすることにより,事実上,異時多中心性発生による再発症例に対して選択的に切除を施行していると考えられる。切除後の予後予測因子としては,初回切除時と同様に脈管侵襲の有無が共通して挙げられており,また初回切除から再発までの期間(1 年未満と以上で区分)が予後予測因子となっているとする報告が多いのも,前述の推測の傍証と考えられる。
肝細胞癌治療後の肝内再発に対する治療として,主に肝切除,RFA,TACE,肝移植,薬物療法などが挙げられ,それぞれの治療成績を比較した多くの報告があった。今回RCT は1 篇のみで,ミラノ基準内の肝細胞癌に肝切除を繰り返した場合とRFA を繰り返した場合の累積生存と無再発生存は同等であるとの報告であった4)。TACE に関して,初発肝細胞癌と再発肝細胞癌にTACE を施行した場合,患者背景の傾向スコアマッチング後の成績は同等であったことより初発肝細胞癌に対するTACE 治療ガイドラインは再発肝細胞癌にも適用されうるとの報告があった5)。
●肝切除後再発肝細胞癌
肝切除後の再発肝細胞癌(肝単独再発)に対する治療を比較した報告が散見される。再切除例と非切除治療例の成績の比較では,再切除群が予後良好と報告されている2,3,6)。ただし,再発例のうち実際に切除の適応となった症例は11~30%程度にとどまる。再肝切除後の予後予測因子としては初回肝切除時と同様に,脈管侵襲,残肝機能,腫瘍数が挙げられているが2,3,6-9),さらに再発までの期間が短いと予後不良であると一貫して報告されている2,3,6,8,9)。肝切除後の再発肝細胞癌に対する治療法と予後との関係を報告した論文は2 篇みられ,2 篇とも再発に対する治療法自体が予後予測因子であると報告している10,11)。肝切除後再発肝細胞癌に対するRFA の検討はいくつかあり,予後予測因子の検討では腫瘍径やAFP,また再肝切除症例と同様に初回切除から再発までの期間により予後が左右されるとするものが多い12)。肝切除後再発肝細胞癌に対して肝切除とRFA を比較した場合,同等の成績であるとの報告がある13,14)。肝切除とTACE(TACE+RFA)を比較した論文は4 篇あり,3 個までの肝内再発は肝切除がTACE より成績は良い15)との報告や,メタアナリシスで切除はTACE より予後が良い16)との報告があった。また,Yagi らは年齢,腫瘍サイズ,腫瘍数からなる予測スコアを使用すると,スコア0 の患者は肝切除を,スコア2/3 の患者はTACE を治療すべきで,スコア1 の患者は肝機能に応じて治療法を決定すべきと報告した17)。腫瘍径5 cm 以下の再発肝細胞癌について肝切除とTACE+RFA を比較した場合,同等の成績であったとの報告もある18)。一方,肝切除,RFA,およびTACE を比較した場合,肝切除およびRFA は同等の成績でTACE はそれらより劣るとの報告があった11,19)。また,ソラフェニブ群とソラフェニブ+TACE-RFA 群を比較した場合,ソラフェニブ+TACE-RFA 群の方が生存期間を延長させたとの報告があった20)。一方,TACE 群とTACE+ソラフェニブ群を比較した場合,肝切除後のBCLC intermediate stage 再発のなかでも微小脈管侵襲ありの症例や進行再発癌(門脈腫瘍栓や肝外転移を伴う)ではTACE+ソラフェニブ群の方が成績が良かったとの報告があった21)。
●穿刺局所療法後再発肝細胞癌
穿刺局所療法後の再発肝細胞癌に関してRossi らが,肝細胞癌にRFA を繰り返した696 例について検討したところ,初回治療の3 年および5 年再発率は70.8%,81.7%(年率について,局所再発6.2%,他部位再発35%)であった。3 年および5 年の全生存率と無病生存率は,それぞれ67.0%,40.1%および68.0%,38.0%であった22)。Portolani らが,Group 1:穿刺局所療法〔経皮的エタノール注入(PEI):24 例,RFA:12 例〕後再発に肝切除(36 例),Group 2:肝切除後再発で再切除(26 例),Group 3:肝切除後再発で穿刺局所療法(31 例)について検討したところ,1,3,5 年生存率についてグループ間で有意差はなかった(Group 1:92%,73%,43%,Group 2:95%,73%,31%,Group 3:96%,78%,41%)23)。Okuwaki らによると,肝細胞癌にRFAを行った115 例の他部位再発は59 例(51.3%)に認め,他部位再発後における1,3,5 年生存率はそれぞれ92.7%,55.4%,43.7%であった。また,他部位再発に対してRFA を行った群ではTACE を行った群に比べて有意に生存率が高かった(3 年生存率:77.2% vs. 28.5%)24)。穿刺局所療法後の再発に対する治療法として外科治療(移植を含む)と穿刺局所療法が比較検討された報告が2 篇みられた25,26)。Imai らは,RFA 後の再発肝細胞癌に対して肝切除とRFA を比較したところ,無病生存率,累積生存率ともに有意な差を認めず,局所再発に対して一部の症例では切除が推奨されるが,RFA も許容範囲内の長期予後であった25)。Xie らは,RFA 後の再発肝細胞癌に対して外科切除(移植を含む)とRFA を比較したところ,無病生存率,累積生存率ともに有意な差を認めず,RFA 後局所再発に対してはRFA が第一選択で適応外であれば切除を検討すべきと結論づけている26)。いずれの論文でも,穿刺局所療法は外科切除と同等の成績を示した。
●肝切除または穿刺局所療法後再発肝細胞癌
肝細胞癌に対して肝切除もしくはRFA 後の肝内再発をまとめて報告した論文は3 篇みられた。Eisele らは肝内再発に対してRFA と再肝切除を行った2 群を比較し,予後に差はないと報告した27)。Chan らは肝移植,肝切除,RFA を行った3 群を比較し,移植または肝切除が予後良好で肝切除が不可能であれば肝移植が有用であると報告した28)。Ma らは肝切除もしくはRFA 後の肝内再発に対してサルベージ肝移植は再切除に比べて無病生存期間,全生存期間が優れており,再切除後の再発では移植不可能な再発が多く,適切な時期にサルベージ肝移植を行うことが重要と報告した29)。
●穿刺局所療法またはTACE 後再発肝細胞癌
今回,RFA またはTACE 後の再発についての報告が1 篇あった。Orimo らは,RFA またはTACE 後の肝内再発に対して肝切除を行った場合と未治療の肝細胞癌に対して肝切除をした場合で長期と短期の治療成績は同等であったことから,RFA またはTACE 後の肝内再発に対して肝切除は容認できると報告した30)。
●再発肝細胞癌に対する肝移植
肝移植における脳死肝ドナーの圧倒的な不足という事情を鑑みて,初発肝細胞癌に対しては肝切除を行い,その後の経過中に再発を認め腫瘍が移植の適応基準内(ミラノ基準)の場合に移植を行うという方針も主張されており,サルベージ肝移植と呼ばれている。しかし,この方針の是非は,初発の肝細胞癌に対して肝切除と肝移植の双方が適応であった場合に,最初から肝移植を行うか,初回は肝切除を行うかという議論であり,他項に譲った。一方,再発時の腫瘍条件が肝移植適応基準内であった症例に対しての肝移植の是非は議論すべき問題である。再発肝細胞癌に対して肝移植と肝切除を比較した報告は3 篇(2 篇のメタアナリシスを含む)ある。再発肝細胞癌に対する肝移植は肝切除と比較して全生存期間は同等で手術関連合併症は肝切除よりも劣っているが,無病生存期間の面では利点があると報告している31-33)。肝切除後の再発肝細胞癌に対して肝切除,肝移植,RFA,TACE,薬物療法を比較した場合,肝切除と肝移植は同等の成績であったと報告されている34)。全体的な生存率とドナー不足の現状を考えると,依然として肝切除は再発肝細胞癌の重要なオプションであるといえる。
●肝外再発
肝外再発に関しては,肝外転移に関するCQ14 を参照されたい。
解説
前述のサイエンティフィックステートメントで検討した肝切除後・穿刺局所療法後の再発肝細胞癌治療におけるエビデンスは,いずれも初回肝細胞癌の治療アルゴリズムに大きく逸脱する報告はなく,肝切除後・穿刺局所療法後の再発に対する治療は初回肝細胞癌の治療アルゴリズムに準するべきであると考えられた。ただし,初回治療直後の早期再発など再発時期によっては治療アルゴリズムを逸脱することも考慮してもよい。
推奨決定会議では,「推奨文に対するエビデンスの総括」について,再発肝癌に対して治療アルゴリズムに準じて行うことが再発の抑制と生存期間の延長につながるかどうかの報告がなく,関連するRCT とメタアナリシスが少ないことから「エビデンスの強さC」であるが,治療アルゴリズムに準じた場合の不利益が少なく日常臨床では再発時に治療アルゴリズムに準ずることが多いことを考慮して投票が行われた。
投票結果
◉推奨文「肝切除後・穿刺局所療法後の再発に対する治療は,初回治療時の治療アルゴリズムに準ずることを推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
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- CQ50
- 肝移植後,どのように経過観察するか?
- 推奨の強さ強い
- エビデンスの強さC
- 肝切除後・穿刺局所療法後と同様,初発時の超高危険群に対するサーベイランスに準じた腫瘍マーカーと画像検査の併用による経過観察を推奨する。
背景
肝細胞癌に対して肝移植を行っても一定の確率で再発を認めることから,肝移植後の経過観察および再発後の治療の選択が重要である。
サイエンティフィックステートメント
本CQ は今回の改訂に際し,第5 版で新設されたものである。「肝細胞癌」「肝移植」「サーベイランス」をキーワードとして,2000 年1 月1 日から2020 年1 月31 日までに報告された論文について検索し,341 篇が抽出された。そのなかから「経過観察の画像診断の方法について述べたものを採用する」という方針の下に一次選択で7 篇,二次選択で1 篇1)を採用した。肝移植後の至適経過観察法に関するエビデンスレベルの高い論文は存在しなかったが,経過観察の重要性に関しては異論がなく,改訂委員会で協議の結果「肝癌再発の経過観察のプロトコールと再発率が記載されている観察研究あるいはRCT」を追加することとなった。肝移植後肝癌再発に対する予防,治療に関するCQ51,CQ52 の採用論文のなかから上記を満たす文献を11 篇2-12)追加し,さらにそのうちの1 篇12)に引用されていた経過観察のプロトコールに関する後ろ向き観察研究を1 篇13)追加して,最終的に計13 篇を採用した。
肝移植が臨床応用された初期においては,肝細胞癌に対する肝移植は高率に移植後再発を来していたことからその移植成績は不良であったが,ミラノ基準をはじめとした肝細胞癌に対する移植適応基準を設けることにより,肝細胞癌を合併していない患者と同等の移植成績が得られている。一方で,肝移植後の累積肝癌再発率は12.5~21.4%と報告1-13)され決して少なくない。また,経過観察法に関しても術後早期に関しては少なくとも3~6 カ月間隔の画像検査,腫瘍マーカーを軸になされている1-13)ことが多いが,定まったものはない。
Liu1)らの単施設後ろ向き研究では,125 例の肝細胞癌患者(ミラノ基準外37 例:29.6%を含む)に対して肝移植を施行し,胸腹部CT あるいは胸部CT と腹部MRI 画像を術後3 カ月毎に5 年間,それ以降は6 カ月毎に実施することの有用性を検討した。平均84.3 カ月の観察期間において24 例(19.2%)の再発を認め,2 年以内に14 例(11.2%),3~5 年までに9 例(7.2%),5 年以降に1 例(0.8%)再発を認めた。Frailty model を用いて解析したところ,3~12 カ月間隔のサーベイランスでは,無再発生存期間に差は認められなかったとしている。また,24 例の再発例のうち,1 例を除くすべての症例で追加治療が行われたが,再発後の生存期間中央値は14 カ月であった。本報告では,画像撮影回数を減らしてもサーベイランスの利益を損なうことはなく,検査に伴う患者負担の軽減につながると結論しているが,少なくない再発率と再発後の予後が不良であることを考慮すると,解釈には注意を要する。また,Hwang13)らの単施設後ろ向き研究では,肝細胞癌に対して生体肝移植を行った334 症例において,移植後5 年間は1~3 カ月毎の腫瘍マーカー測定,3~6 カ月毎の腹部骨盤部dynamic CT と胸部X 線,追加検査として4~12 カ月毎の胸部単純CT を行い,5 年目以降も定期的に採血,画像検査を用いた経過観察を行ったところ,周術期死亡16 例を除いた318 例における肝癌再発は平均77 カ月の観察期間において68 例(21.4%)であったと報告している。また,このうちミラノ基準内肝細胞癌に対する肝移植後では243 例中36 例に再発が認められ,3 年以内の再発が30 例と多かったが3 年以降でも散発的に6 例に再発を認めた。一方,ミラノ基準外肝細胞癌においては全例3 年以内の再発であり,このうちAsan 基準内(腫瘍径5 cm 以内かつ腫瘍個数6 個以内)では33 例中3 例に,Asan 基準外では42 例中29 例に再発を認め,Asan 基準外では有意に再発率が高かったとしている。再発リスクに応じた経過観察法を提唱するとともに,ハイリスク症例における術後3 年間の綿密な経過観察の重要性ならびにミラノ基準内であっても長期的な経過観察の必要性を指摘している。
解説
肝移植後再発の早期発見が予後を改善するというエビデンスは乏しいが,限局した再発巣であれば切除も考慮されることや全身薬物療法による治療機会が得られる点において,移植後の経過観察は他の肝細胞癌の根治治療後と同様に重要であると考えられる。米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインでは,移植後2 年間は3~6 カ月間隔でのAFP 測定ならびにCT,MRI を,それ以後は6~12 カ月間隔で経過観察を行うことが提唱されているが,その根拠となる論文は示されていない。
肝移植後の経過観察法に関するエビデンスは少なく,改訂委員会では弱く推奨するのか,強く推奨するのかで議論が分かれた。移植後の再発率は2 割程度で移植の適応基準を遵守すれば再発率は低く,また,移植後1 年を過ぎればさらに再発は少なくなること,再発パターンとして肝外転移が多いことについて議論となったが,最終的には,NCCN のガイドラインにおいても肝移植後2 年間は3~6 カ月毎の画像による経過観察が推奨されていること,肝移植の場合は再発時の治療法は異なることもあるが,同じ肝細胞癌を扱っており再発を発見する方法論は同じと考えられることより,肝切除や穿刺局所療法で得られたエビデンスを外挿することに問題がないことを確認し,投票となった。
投票結果
◉推奨文「肝切除後・穿刺局所療法後と同様,初発時の超高危険群に対するサーベイランスに準じた腫瘍マーカーと画像検査の併用による経過観察を推奨する」について委員による投票の結果,強い推奨となった。
***
肝移植後にも肝切除後・穿刺局所療法後と同様,最低でも超高危険群に準じた厳密な経過観察が必要である。
参考文献
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- CQ51
- 肝移植後の有効な再発予防法は何か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
- 肝移植後のmTOR 阻害薬による管理は肝細胞癌の再発を抑制する。
背景
第4 版のCQ53 と同様のCQ である。肝細胞癌合併肝硬変肝不全に対する肝移植後の問題点の一つは肝細胞癌の再発である。肝移植後の免疫抑制は拒絶反応の予防のため必須であるが,同時に腫瘍の進展に寄与する可能性がある。以下のステートメントは肝移植後の免疫抑制薬の管理の違いによって再発が予防されるか,という観点で論じた。
サイエンティフィックステートメント
今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までの間に発表された論文について検索し,108 篇が抽出された。そのなかから11 篇が一次選択され,そこから1 篇のRCT,1 篇のメタアナリシス,2 篇の後ろ向きコホートの計4 篇を採用した。また,第4 版で選択されていた14 篇をそのまま採用とし計18 篇を採用した。
近年,免疫抑制と抗腫瘍効果を併せ持つmTOR(mammalian target of rapamycin)阻害薬による肝細胞癌に対する肝移植後の管理についての報告が蓄積されている。2005 年頃より,mTOR 阻害薬が肝移植後の肝細胞癌再発率低下に寄与する可能性を示唆する観察研究1-4)が報告されるようになった一方で,一部では否定的な報告も認められた5)。近年,Geissler ら6)はmTOR 阻害薬であるシロリムス(SRL)の使用について多施設共同RCT を行い,肝移植525 例についてSRL 使用群261 例,未使用群264 例の移植後3 年無再発生存率はそれぞれ80.6%,72.3%,5 年生存率はそれぞれ79.4%,70.3%と有意差を認めた。ただし全期間での無再発生存率,全生存率には差を認めなかった。またミラノ基準外の症例では1 年生存率のみそれぞれ97.2%,90.0%と有意差を認めた。さらにJeng ら7)は,同じくmTOR 阻害薬であるエベロリムス(EVR)使用群と未使用群の安全性と有効性を検証した多施設共同RCT を行い,このうち移植前より肝細胞癌を有していたEVR 使用群56 例と未使用群62 例とのサブグループ解析において,術後12 カ月時点の肝癌再発はEVR 使用群では認められなかったが未使用群で8.1%に認めたと報告している。
上記に加え,SRL 使用と肝移植後肝細胞癌再発に関するメタアナリシスでは,SRL使用例は非使用例に比べ1 年〔オッズ比:4.53,95%信頼区間(CI):2.31~8.89〕,3 年(オッズ比:1.97,95%CI:1.29~3.00),5 年(オッズ比:2.47,95%CI:1.72~3.55)の生存率が改善され,さらにSRL 使用例は非使用例に比べ再発率が減じられる(オッズ比:0.42,95%CI:0.21~0.83)としている。また,SRL 使用の有無による急性細胞性拒絶や肝動脈血栓症などの移植後合併症の差はないとしている8)。同様のメタアナリシスでもSRL 使用例はカルシニューリン阻害薬(CNI)使用例に比べ再発率(オッズ比:0.30,95%CI:0.16~0.55),再発関連死亡(オッズ比:0.29,95%CI:0.12~0.70),全死亡(オッズ比:0.35,95%CI:0.20~0.61)は有意に低かった9)。さらに近年のメタアナリシスで,SRL とEVR を含むmTOR 阻害薬を肝移植後6 カ月以内に投与開始された症例では,mTOR 阻害薬使用例で拒絶反応を増加させることなく1 年(オッズ比:1.09,95%CI:1.01~1.18),3 年(オッズ比:1.1,95%CI:1.01~1.21)の無再発生存率と,1 年(オッズ比:1.07,95%CI:1.02~1.12),3 年(オッズ比:1.1,95%CI:1.02~1.19),5 年(オッズ比:1.18,95%CI:1.08~1.29)の生存率が改善されたとの報告がある10)。
一方,CNI については以前から使用量と再発の関連について報告がある。Vivarelli らはシクロスポリンA(CyA)を基にした免疫抑制を行った脳死肝移植70 例(7 例で再発)について後ろ向きに検討を加え,ミラノ基準内外,病理学的脈管侵襲の有無,肝細胞癌の組織学的分化度などの因子を含めて検討を行ったところ,多変量解析でCyA に対する曝露が高い場合,再発の可能性が上昇すると報告した。曝露量は,測定ポイントにおけるCyA の血中濃度と結果時間から台形公式(trapezoidal rule)により,血中濃度の時間曲線下面積(area under the blood concentration time curve;AUC)を求め,経過観察時間で除したものと本報告中では定義されている11)。同グループは,CyA(79 例)とタクロリムス(Tac)(60 例)を合わせた後報にて,CyA 220 ng/mL そしてTac 10 ng/mL を閾値とした同様の解析を行い,CNI に対する過度の曝露が再発率と関連があるとしている12)。血中濃度の測定方法は統一され,諸因子を含めた多変量解析がなされているものの他病死は除外されており,拒絶反応に関する詳述はない。Rodríguez-Perálvarez らはミラノ基準内における5 年再発率はCNI 高用量曝露(Tac 平均トラフ>10 ng/mL もしくはCyA 平均トラフ>300 ng/mL)36 例は22.0%であり,低用量曝露106 例の7.0%と比べ有意に高率であったと報告している13)。
解説
第3 版では,CNI に対する過度の曝露が肝移植後の再発と関連するという結果を基に推奨文が作成され,第4 版ではmTOR 阻害薬の有無によるRCT の結果からSRL の有用性が示され推奨文を変更し,今回はmTOR 阻害薬の有用性を支持するエビデンスが追加された。
免疫抑制薬は移植後の拒絶反応を抑制するために必須である。免疫抑制薬の種類の選択,維持レベルの血中濃度の調整は病態に応じて行われている。また,終生におよぶ免疫抑制による感染症のリスクや,腎機能障害などの副作用の蓄積を極力避けるため,過度の投与は回避するのが通常である。しかし再発を抑制する意図で過度に低用量での投与を試み,拒絶反応により移植片を失ってしまっては元も子もないため,濃度の調節のみに再発抑制効果を期待する戦略は好ましいとはいえない。mTOR 阻害薬は免疫抑制,抗癌作用の両者を併せ持つため肝細胞癌に対する肝移植後の管理としてはより可能性のある薬剤である。殺細胞性抗癌薬を用いた肝細胞癌に対する肝移植後の術後補助療法のRCT,システマティックレビューでその有用性も報告されていたが,本邦では肝細胞癌に対する術後補助療法のエビデンスもなく今回の推奨文には反映しなかった14,15)。また,HBV 関連肝細胞癌に対する肝移植後のステロイド投与のない免疫抑制薬レジメン16),HCV 関連肝細胞癌に対する肝移植後のインターフェロン治療17),周術期のプロスタグランディンE1 使用18)についても報告があったが,いずれも後ろ向きの検討であり単一施設からの報告であったため,推奨文には反映しなかった。今回,有用性が示されたmTOR 阻害薬であるが,本邦で保険収載されたのは2018 年2 月であり,まだ長期の使用経験がないことも考慮して投票が行われた。
投票結果
◉推奨文「肝移植後のmTOR 阻害薬による管理は肝細胞癌の再発を抑制する」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
参考文献
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- CQ52
- 肝移植後の再発に対する有効な治療法は何か?
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
-
- 1.肝移植後の再発に対しては可能であれば再発病巣の切除を,不可能であれば薬物療法を考慮する。
- 推奨の強さ弱い
- エビデンスの強さC
-
- 2.mTOR 阻害薬非使用例においては投与を考慮する。
背景
第4 版のCQ55 と同様のCQ である。肝細胞癌合併肝硬変肝不全に対する肝移植後の再発は一定の確率で存在するがその治療法について示されたものはない。再発時の患者の状態と再発部位で治療方針が決定される。以下のステートメントは肝移植後の再発に対する有効な治療法は何か,という観点で論じた。
サイエンティフィックステートメント
今回の改訂に際し,第4 版と同様の検索式を用いて,2016 年7 月1 日から2020 年1 月31 日までの間に発表された論文について検索し,108 篇が抽出された。そのなかから11 篇を一次選択し,最終的に第4 版で採用となっている2 篇のメタアナリシスと,再発後の分子標的治療薬投与に関する2篇の後ろ向き研究の計4篇を採用した1-4)。
de’Angelis らのメタアナリシスでは,肝移植後の再発肝細胞癌に対する治療法の安全性と有効性について61 篇の研究について解析されている1)。移植後の肝細胞癌の平均再発率は16%,移植から再発までの期間の中央値は13 カ月(2 カ月~132 カ月),67%が肝外再発で,再発後の生存期間中央値は12.97 カ月であった。肝内外の限局した再発に対する切除27 例の生存期間中央値は42 カ月で,重篤な術後合併症もなく,術後死亡もなかったとしている。また,切除の対象とならない全身性の転移に対してソラフェニブ単剤で治療された76 例もしくはmTOR 阻害薬が併用された68 例の生存期間中央値はそれぞれ12.1 カ月,18.2 カ月であった。主な副作用は,消化器症状,手足症候群,高血圧,倦怠感などで,副作用のため42.1%は減量が必要とされ9.6%は治療が中断されている。ソラフェニブとmTOR 阻害薬の併用についての23 件の研究のうち6 件は重篤な副作用が出現したと報告しており4 例が死亡していた。他の治療による生存期間中央値はTACE(40 例)で11.2 カ月,全身化学療法(35 例)で5.79 カ月,best supportive care(54 例)で3.3 カ月と報告している。
Mancuso らのメタアナリシスでは,移植後の再発肝細胞癌に対するソラフェニブの安全性と生存について17 件の研究が選択され解析されている2)。移植から再発までの期間は中央値で13.6 カ月(7 カ月~38.1 カ月),肝内再発,肝内外再発,肝外再発は中央値でそれぞれ14.5%,26.2%,56.8%であった。ソラフェニブのGrade 3 以上の副作用発生頻度(中央値)は倦怠感16.1%,消化管毒性18%,皮膚障害22.5%で,心血管系は0%であった。副作用のため,42.8%は減量が必要とされ,31.9%は中断されていた。113 例はmTOR 阻害薬と併用されており,2 例(1.8%)が消化管出血で死亡しているため,その併用に対しては注意を喚起している。生存について記載のあった8 件で解析された1 年生存率は63%(18~90%)と報告している。
上記のメタアナリシスの後にXu ら3)は,肝細胞癌合併肝硬変に対する生体肝移植後に免疫抑制薬としてmTOR 阻害薬であるシロリムスを使用しなかった症例において,肝癌再発後にシロリムス投与に変更した症例では変更しなかった症例よりも再発後の生存期間が優位に延長(中央値:12 カ月vs. 8 カ月,p=0.039)したと報告している。またJung ら4)は,肝移植後の肝細胞癌再発症例に対するソラフェニブとmTOR 阻害薬の有用性を,両剤の使用の有無で4 群(両剤投与なし:139 例,mTOR 阻害薬のみ;16 例,ソラフェニブのみ:54 例,両剤投与あり:23 例)に分けて比較検討を行い,再発後生存期間はソラフェニブ投与の有無では差は認められなかった(ハザード比:1.25,95%CI:0.91~1.73,p=0.18)が,mTOR 阻害薬投与では有意に改善し(ハザード比:2.25,95%CI:1.58~2.92,p<0.001),またmTOR 阻害薬投与群におけるソラフェニブ投与の有無では再発後生存期間に差はなかった(p=0.26)と報告している。
解説
肝移植は,癌病巣のみならず癌発生の母地である病的肝を含めた全肝を摘出した後に同所性に置換する。その後に認められる再発病巣は,既に血中に存在していた癌細胞の播種性の病変であると考えられている。ただし肝内再発はその播種性病変の一環か,グラフトにおける肝炎の再燃,肝硬変への進行に伴うde novo 発癌の可能性も否定しえない。近年,肝移植後の再発に対する治療報告も蓄積しつつあるが,RCT や大規模前向き研究はない。以上より,今回の採用論文は,前回採用された後ろ向き報告をまとめたメタアナリシスに加え,mTOR 阻害薬使用と肝癌再発後の予後に言及した後ろ向き研究2 篇を追加し,「弱い推奨」とした。
治療別にみると肝内もしくは肝外の孤立性病変に対する切除成績が最も優れていたが,再発形式,再発部位,患者背景など相応のバイアスを考慮し,推奨文では「可能であれば」と付記した。肝内転移巣に対してはTACE の治療報告が多く,また近年ではRFA の報告も蓄積しつつある。いずれも重篤な合併症の報告はないが,肝移植における胆道再建法は,胆管胆管吻合のみならず胆管空腸吻合が行われている症例も少なくないことより,TACE,RFA は胆管炎や肝膿瘍などの重篤な合併症を招く可能性も否定できないため,その点を考慮し推奨とはしなかった。
転移が全身に広がっている場合,殺細胞性抗癌薬による全身化学療法よりも分子標的治療薬であるソラフェニブの方が生存期間中央値が良好であったが,副作用のために減量もしくは中止せざるを得ない症例も報告されている。また,免疫抑制薬としてmTOR 阻害薬を併用した場合の生存期間中央値は良好との報告もあり,mTOR 阻害薬非使用例においてはmTOR 阻害薬併用への変更も考慮してよいと考えられる。しかし,ソラフェニブとmTOR 阻害薬の併用に関する安全性ならびに有効性は確立しておらず,有害事象による死亡例の報告もあり注意を要する。ソラフェニブ以外の分子標的治療薬に関してはレゴラフェニブに関する観察研究が1 篇報告されていたが,対照群のない単アーム研究であり今回は採用とはしなかった5)。免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブの臓器移植歴のある患者への使用は,臨床試験上の除外基準となっていたこと,また腎移植歴のある患者に対して類薬を投与した際に移植臓器拒絶反応の発現が報告され医薬品リスク管理計画(RMP)に重要な潜在的リスクと記載されていることから,注意が必要である。いずれにせよ,進行肝細胞癌に対する新規薬物療法の出現により,肝移植後再発肝癌における使用に関しても今後の症例の蓄積と予後の検討が必要である。
投票結果
◉推奨文1「肝移植後の再発に対しては可能であれば再発病巣の切除を,不可能であれば薬物療法を考慮する」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
◉推奨文2「mTOR 阻害薬非使用例においては投与を考慮する」について委員による投票の結果,弱い推奨となった。
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