悪性胸膜中皮腫診療
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総論.悪性胸膜中皮腫診療ガイドライン2020 年版を利用するにあたり
Ⅰ.診 断
1 画像診断
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
エビデンスの強さ |
CQ1 |
どのような画像所見のときに中皮腫を疑うのか? |
胸水貯留と胸膜肥厚が認められたら,中皮腫を鑑別診断に挙げることを推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:90%〕 |
C |
2 確定診断
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
エビデンスの強さ |
CQ2 |
末梢血中のマーカーによる中皮腫の確定診断は勧められるか? |
末梢血中のマーカーにより中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕 |
評価できず |
CQ3 |
胸水中の腫瘍マーカーやヒアルロン酸の測定は中皮腫の確定診断に勧められるか? |
胸水中の腫瘍マーカーやヒアルロン酸の測定で,中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:80%〕 |
評価できず |
CQ4 |
確定診断のための胸膜採取法として,何が勧められるか? |
- a . 全身麻酔下の外科的胸膜生検により,十分な量の生検を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕
|
C |
- b . 外科的胸膜生検の適応がない症例において腫瘤形成がある場合は,CT ガイド下針生検をまず行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕
|
C |
3 病理診断
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
エビデンスの強さ |
CQ5 |
中皮腫の診断に組織診断は必要か? |
中皮腫の診断に組織診断を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 |
C |
CQ6 |
迅速凍結切片で中皮腫の確定診断をつけることは勧められるか? |
迅速凍結切片で中皮腫の確定診断を行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:90%〕 |
C |
CQ7 |
体腔液が貯留している場合に,体腔液細胞診を行うことは勧められるか? |
- a . 体腔液が貯留している場合は,体腔液細胞診を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕
|
B |
- b . 体腔液細胞診にセルブロック法などによる補助的検査を追加するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:95%〕
|
B |
CQ8 |
上皮型中皮腫と反応性中皮過形成の鑑別診断に何が勧められるか? |
脂肪組織への浸潤あるいはBAP1 loss,MTAP loss,CDKN2A/p16 のホモ接合性欠失を確認するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:95%〕 |
B |
CQ9 |
線維形成型中皮腫と線維性胸膜炎の鑑別に何が勧められるか? |
組織学的zonation およびCDKN2A/p16 ホモ接合性欠失を確認するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:90%〕 |
C |
CQ10 |
肉腫型中皮腫と肺肉腫様癌の鑑別診断に何が勧められるか? |
肉腫型中皮腫と肺肉腫様癌の鑑別は,病理組織所見だけではなく,臨床情報,画像所見,免疫染色所見とともに判断するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:60%〕 |
D |
CQ11 |
肉腫型中皮腫と滑膜肉腫の鑑別診断に何が勧められるか? |
滑膜肉腫の診断にはFISHまたはRT-PCRにて染色体相互転座t(X;18)(p11.2;q11.2)による融合遺伝子SS18-SSX の形成を検出するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 |
B |
4 病期診断
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
エビデンスの強さ |
CQ12 |
中皮腫のCT による病期診断に造影剤使用は勧められるか? |
存在診断および病期診断には,CT 撮像時に造影剤を使用するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:100%〕 |
C |
CQ13 |
中皮腫の病期診断にFDG‒PET/CT は勧められるか? |
- a . FDG-PET/CT は,存在診断,病期診断において行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕
|
C |
- b . FDG-PET/CT は,胸膜病変の良・悪性鑑別の確定診断として行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕
|
C |
CQ14 |
中皮腫の病期診断に胸部MRI は勧められるか? |
中皮腫の存在診断,病期診断に胸部MRI をルーチンに行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:80%〕 |
D |
CQ15 |
中皮腫の病期診断に頭部造影MRI は勧められるか? |
頭部造影MRI はルーチンには行わないよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:85%〕 |
D |
CQ16 |
中皮腫の病期診断に侵襲的検査(EBUS,VATS,縦隔鏡,腹腔鏡)は勧められるか? |
縦隔リンパ節転移や腹腔内浸潤・播種が画像的に疑われ,検査に耐え得る場合は,侵襲的検査を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:70%〕 |
D |
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Ⅱ.治 療
1 外科治療
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
エビデンスの強さ |
CQ1 |
臨床病期Ⅰ-Ⅲ期に外科治療を行うことは勧められるか?特に,
- a . T2-3 が疑われる場合に勧められるか?
- b . 同側縦隔リンパ節転移が疑われる場合に勧められるか?
|
臨床病期Ⅰ-Ⅲ期で術後に肉眼的完全切除を得られると考えられる症例に対して外科治療を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:70%〕 |
B |
- a . T2-3 が疑われる場合も,外科治療を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:85%〕
|
B |
- b-1 . 同側縦隔リンパ節転移が疑われるが,病理学的に診断されていない場合には外科治療を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:85%〕
|
C |
- b-2 . 同側縦隔リンパ節転移が病理学的に証明されている場合には,外科治療を行わないよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:65%〕
C |
|
CQ2 |
耐術能のある切除可能中皮腫には,胸膜肺全摘術(EPP)と胸膜切除/肺剝皮術(P/D)いずれの術式が勧められるか? |
EPP とP/D のいずれかの術式選択は,患者の状態や外科医・施設の習熟度や経験により決定するよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕 |
B |
CQ3 |
肉腫型および二相型中皮腫に外科治療は勧められるか? |
- a . 肉腫型中皮腫に外科治療を行わないよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:65%〕
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B |
- b . 二相型中皮腫に外科治療を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:80%〕
|
B |
CQ4 |
手術中の局所療法併用は勧められるか? |
外科治療に併用する治療法選択として様々な術中局所療法が報告されるが,これらの局所療法を勧めるだけの根拠が明確ではない。〔推奨度決定不能〕 |
2 放射線治療
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
エビデンスの強さ |
CQ5 |
胸膜肺全摘術(EPP)の術後に片側胸郭照射を行うことは勧められるか? |
EPP の術後に片側胸郭照射を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:85%〕 |
D |
CQ6 |
胸膜切除/ 肺剝皮術(P/D)の術後または手術非適応症例に放射線治療は勧められるか? |
P/D の術後または手術非適応症例に放射線治療を行わないよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:74%〕 |
D |
CQ7 |
EPP 後放射線治療として3 次元原体放射線治療(3D‒CRT)や強度変調放射線治療(IMRT)は勧められるか? |
EPP 後放射線治療として,3D-CRT やIMRT を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:80%〕 |
C |
3 内科治療
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
エビデンスの強さ |
CQ8 |
胸水コントロールのためにタルクやOK432 による胸膜癒着術は勧められるか? |
- a . 胸水コントロールのため胸膜癒着術を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕
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B |
- b . 胸膜癒着術に用いる薬剤としてはタルク懸濁液を提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:60%〕
|
C |
CQ9 |
術前・術後の化学療法は勧められるか? |
- a . 術前もしくは術後の化学療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕
|
C |
- b . 化学療法レジメンとしてはシスプラチン+ペメトレキセド併用療法を推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:90%〕
|
C |
CQ10 |
胸水コントロールなどの局所療法と全身的な薬物療法のどちらを先に行うべきか? |
自覚症状を呈するような胸水貯留を伴う場合は,局所療法を先行するよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:65%〕 |
D |
CQ11 |
PS 0‒2 の一次治療にプラチナ併用療法は勧められるか? |
シスプラチン+ペメトレキセド併用療法を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:95%〕 |
B |
CQ12 |
プラチナ製剤併用薬物療法で勧められる投与コース数は? |
6 コースを行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:80%〕 |
C |
CQ13 |
PS 0‒2,75 歳以上の一次治療にプラチナ併用療法は勧められるか? |
PS 0-2 であればプラチナ併用療法を行うよう提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:85%〕 |
D |
CQ14 |
PS 3-4 に全身的な薬物治療は勧められるか? |
PS 3-4 に対し薬物治療は行わないよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:70%〕 |
D |
CQ15 |
PS 0‒2 の二次治療以降に勧められる薬物療法は何か? |
- a . ペメトレキセド未使用の場合,ペメトレキセド単剤を推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:75%〕
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C |
- b . ペメトレキセド単剤の再投与を提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:90%〕
|
D |
- c . ビノレルビン単剤,ゲムシタビン単剤もしくはビノレルビン+ゲムシタビン併用療法の投与を提案する。〔推奨の強さ:2,合意率:90%〕
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C |
- d. ニボルマブ単剤の投与を推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕
|
C |
4 緩和治療
No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
エビデンスの強さ |
CQ16 |
疼痛緩和目的の放射線治療は勧められるか? |
疼痛緩和目的の放射線治療を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:85%〕 |
C |
CQ17 |
症状緩和目的の胸膜癒着術は勧められるか? |
胸水制御と胸水貯留による症状の軽減を目的とした緩和治療として,胸膜癒着術を行うよう推奨する。〔推奨の強さ:1,合意率:80%〕 |
B |