No. |
重要ポイント |
解説 |
3-1 |
口腔癌の肉眼分類はどのようなものが臨床上有用か? |
分類としては,表在型,外向型,内向型の3 型に分類する肉眼分類が簡便で,臨床病態をよく反映しており,臨床上有用である。それぞれの型の定義を以下に示す。
表在型(superficial type):表在性の発育を主とするもの
外向型(exophytic type):外向性の発育を主とするもの
内向型(endophytic type):内向性の発育を主とするもの |
3-2 |
内向型の舌癌は表在型や外向型に比べて頸部リンパ節転移の可能性は高いか? |
舌癌(T1,T2)において,肉眼分類の表在型や外向型は頸部リンパ節転移率が低い。一方,内向型では頸部リンパ節への転移率は前二者に比べて高く,治療に際しては注意を要する。 |
3-3 |
内向型と表在型の舌癌は,外向型に比べて原発巣再発頻度が高いか? |
舌癌(T1,T2)において,肉眼分類の内向型と表在型は外向型と比べて原発巣再発率は高い傾向にある。 |
3-4 |
触診による頸部リンパ節転移の診断はどの程度可能か? |
触診による頸部リンパ節転移の診断精度は60〜70%であり,触診は有用である。しかし,頸部リンパ節転移の診断には画像診断を加えた総合的な診断が必要である。 |
3-5 |
舌癌のT-原発巣の評価にはどのような画像検査が勧められるか? |
舌癌原発巣のT 分類のために優先される画像検査法はMR であり,MR が使用できない場合にはCT を使用する。厚さや深さの評価にはMR あるいは口腔内走査のUS が勧められる。 |
3-6 |
舌癌原発巣の画像上の厚さ(深さ)は頸部リンパ節転移と関連するか? |
画像上の厚さや深さが増すほど頸部リンパ節転移率が高くなる傾向があると報告されている。 |
3-7 |
下顎歯肉癌のT-原発巣の評価にはどのような画像検査が勧められるか? |
下顎骨吸収の判定はパノラマX 線画像およびCT を基本とし,周囲軟組織への進展の判定にはCT およびMR を使用することが勧められる。 |
3-8 |
下顎歯肉癌原発巣の画像所見は臨床経過と関連するか? |
下顎歯肉癌の画像所見で骨吸収型は予後と関連するという報告が多く,虫喰い型の骨吸収を示すものでは予後が悪いとされる。 |
3-9 |
口腔癌の頸部リンパ節転移(N-領域リンパ節)の評価にはどのような画像検査が勧められるか? |
口腔癌の頸部リンパ節転移(N-領域リンパ節)の評価には,CT,MR,US を単独あるいは組み合わせて用いることが勧められる。また,PET も一般的に用いられている。 |
3-10 |
口腔癌の遠隔転移(M-遠隔転移)の評価にはどのような画像検査が勧められるか? |
口腔癌の遠隔転移(M- 遠隔転移)の評価には一般的に胸部X 線撮影とCT が用いられてきたが,近年ではPET も併せた評価が一般的になっている。 |
3-11 |
生検検体から口腔癌の診断・治療に対してどのような情報が得られるか? |
癌の確定診断だけでなく,予後にかかわる重要な情報が得られる場合が多い。生検の目的は癌の診断を確定することと,癌の性状や予後にかかわるさまざまな情報を得ることである。生検検体から得られる治療に有用な情報について解説する。 |
3-12 |
口腔癌の外科療法において術中迅速病理診断は有用か? |
口腔癌の術中迅速病理診断は,切除断端での腫瘍組織残存の有無や頸部リンパ節転移の有無を検索する方法として有用である。術中に切除断端の腫瘍の有無や頸部リンパ節転移の有無を診断できれば,より確実な外科療法を行うことができる。 |
3-13 |
口腔癌において切除断端に上皮性異形成を認めた症例の再発率は高いか? |
上皮性異形成の程度と再発率の関連性は明らかでないが,切除断端上皮に高度の異型を認めた症例では,原発巣再発率が高いと推察される。手術検体の検索や術中迅速病理診断時に,切除断端にみられる上皮性異形成に対する臨床的対応は常に問題となる。 |
3-14 |
口腔癌の浸潤様式は予後の判定に有用か? |
癌の深部浸潤先端部における浸潤様式は,予後判定に有用な病理組織学的所見の1 つである。口腔癌の組織学的悪性度評価は予後と相関するとされている。 |
No. |
重要ポイント |
解説 |
4-1 |
口腔癌の原発巣切除における適切な安全域は? |
口腔癌の切除では10 mm 以上の安全域をとることが勧められるが,明確な根拠はない。 |
4-2 |
pull-through operation の適応は? |
舌癌と口底癌のN1〜3 症例においては,口腔原発巣から頸部へのリンパ流路を損傷することなく切除することを目的としたpull-through operation が基本となる。 |
4-3 |
口腔癌手術における生体染色の有用性は? |
生体染色を用いた異型上皮や悪性腫瘍の識別法は有用である。なかでも,ヨード生体染色の不染域描出による異型上皮の識別は特異度が高く,有効である。また,舌癌のT1 症例あるいはearly T2 症例の表在性病変では,ヨード生体染色を行って切除した症例は,行わなかった症例に比べ明らかに原発巣再発率は低い。しかし,ヨードは歯肉や口蓋粘膜など角化上皮を染色できないことがある。 |
4-4 |
口底癌における下顎骨合併切除の適応は? |
臨床的に下顎歯槽歯肉への浸潤や骨浸潤を認める口底癌症例では,下顎骨の合併切除が必要となる。 |
4-5 |
下顎歯肉癌の骨浸潤(骨吸収)が歯槽部にとどまっている症例における辺縁切除術の適応は? |
T1 症例であれば適応可能である。T2,T3 症例でもX 線学的に骨吸収が歯槽部にとどまっている場合や,骨吸収型が平滑型の場合には辺縁切除術が適応される。ただし虫喰い型の場合,歯槽部にとどまっていても骨髄腔内への癌の浸潤が予想されるため,区域切除術が適応となる。 |
4-6 |
舌癌切除術後欠損に対する再建方法で,遊離組織移植(血管柄付き組織移植)は有茎(筋)皮弁に比べて術後の機能は優れているか? |
舌癌の術後機能については,舌半側切除術後の構音機能における前腕皮弁の有用性が報告されているが,遊離組織移植が有茎(筋)皮弁に比べて機能的に優れているとする高いレベルのエビデンスはない。 |
4-7 |
血管柄付き骨移植による下顎再建は他の方法と比較して優れているか? |
血管柄付き骨移植は,他の方法と比較して多くの利点を有し,特に下顎区域切除後の一次再建においては第一選択と考えられる。 |
4-8 |
舌癌T1,T2 症例に対する組織内照射は外科療法と同等の原発巣制御率が得られるのか? |
1 平面刺入組織内照射が行える厚さ10 mm 未満の原発巣であれば,外科療法と同等の90%程度の原発巣制御率が得られる。しかし,厚さが10 mm を超える原発巣では,組織内照射より外科療法が勧められる。 |
4-9 |
切除可能進行口腔癌において,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)の原発巣・頸部制御率および生存率は,放射線療法および外科療法と比較して高いか? |
切除可能な進行口腔癌に対して,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)が放射線療法や外科療法と比較して,原発巣・頸部制御率や生存率を明らかに向上させたというエビデンスは認められないが,非外科的治療を希望する患者に対する臓器・機能温存療法としての治療選択肢の可能性が示されている。 |
4-10 |
切除不能進行口腔癌において,化学放射線療法(殺細胞性抗がん薬以外の薬物の併用も含む)の原発巣・頸部制御率および生存率は,放射線療法単独と比較して高いか? |
根治切除不能な進行口腔癌の治療に対するCDDP を主体とする化学放射線療法は,放射線療法単独に比べて原発巣・頸部制御率と生存率ともに有意に優れている。また,頭頸部癌に対するCmab を併用した化学放射線療法は,放射線療法単独に比べて,原発巣・頸部制御率と生存率の向上ならびに生存期間の延長が認められている。 |
4-11 |
CDDP を主体とした超選択的動注化学放射線療法はどのような症例に有効と考えられるか? |
超選択的動注化学放射線療法は,現時点では,他療法との比較を行ったエビデンスレベルの高い報告はみられないが,stage III,IV の進行癌や切除不能癌に対する臓器温存を目指した治療法として期待されている。 |
No. |
重要ポイント |
解説 |
7-1 |
摂食嚥下リハビリテーションの導入は,術後の機能の向上に有用か? |
口腔癌に対して拡大切除を行うと,術後の機能障害のために社会復帰が遅れる場合も少なくない。近年,口腔癌切除患者に対する口腔機能リハビリテーションが導入されるようになり,その有効性が報告されている。 |
7-2 |
口腔癌治療における口腔管理は合併症の予防に有用か? |
口腔癌に対する外科療法,放射線療法,薬物療法を受ける患者に対して,治療前から治療後に至るまで口腔管理を積極的に行うことにより,急性期のみならず晩期においても合併症の発生を減少させることができる。 |
7-3 |
口腔癌治療後のQOL 評価にはどのような方法があるか? |
口腔癌の治療後に後遺する機能障害は多岐に渡り,QOL に大きな影響を与える。口腔癌を含む頭頸部癌の疾患特異性を考慮したQOL を評価するスケールとしては,UW-QOL scale,EORTC QLQ-C30 and H&N35,FACT,PSS,MDASI-HN などがある。 |
7-4 |
舌接触補助床は術後の機能改善に有用か? |
舌口底部切除後に舌の容量が減少した場合や舌の可動性が大きく障害された場合には,PAP を用いて口腔容積を減少させることにより,構音機能や摂食嚥下機能の回復が期待できる。術後の機能訓練や口腔ケアに加えて,このPAP による歯科補綴的アプローチが機能改善に貢献することがある。 |
7-5 |
放射線照射野内の抜歯は避けるべきか? |
放射線性骨壊死(以下,骨壊死)は,抜歯を契機に発症することが多いために危険因子とされており,原則的には禁忌である。しかし,実際には,抜歯が避けられない場合がある1)。 |