1.作成の基本方針
今回の『口腔癌診療ガイドライン 2019 年版』は,Grading of Recommendations,Assessment, Development and Evaluation(GRADE)ワーキンググループによって開発されたGRADE アプローチに従って作成し,エビデンスに基づく推奨はPart 2 に掲載することとする。ただし,従前の2013 年版の内容は有用であるので,教科書的な記述に修正し,総説としてPart 1 に掲載することとする。
2.改訂のポイント
- 1)本診療ガイドラインはGRADE アプローチに従って作成し,エビデンスに基づく推奨はPart 2 に掲載した。
- 2)従前の2013 年版の内容はPart 1 に掲載し,2013 年以降に加わった新規の診断や治療方法などを加え,さらに新しい文献の検索を行ったうえで改訂し,教科書的な記述としたうえで総説の形式で掲載した。
- 3)エビデンスに基づく推奨はGRADE アプローチに準拠するため,従前の2013 年版のCQ はPart 1 の重要ポイントとして残したが,従前の文献の評価(エビデンスレベル)と推奨グレードは削除した。
- 4)参考文献は必要なもののみを掲載し,従前の構造化抄録は廃止した。
- 5)用語などについては『口腔癌取扱い規約第2 版』に準拠した。
3.作成の手順
今回の改訂に際して,第1 回口腔癌診療ガイドライン改訂合同委員会が2016 年11 月27 日に開催された。そこで,改訂の基本方針,組織体制,各委員の担当ならびに役割分担が決められ,以後9 回の委員会の開催によって改訂原案が作成された。作成においては,Part 1 は2013 年版をもとにした総説の形式に改訂するとともに,その後の新しい文献を加えて内容の改訂を行った。なお,従前のCQ の記載は重要ポイントとして残したが,今回の改訂ではGRADE アプローチに準拠するために,従前の文献の評価(エビデンスレベル)と推奨グレードは削除した。一方,Part 2 では旧米国アカデミー医学研究所(Institute of Medicine of the National Academies:IOM)の方針に従い,手順としてはコクランハンドブックならびにGRADE アプローチに従って作成した。詳細な方法はPart 2 に記載する。
4.外部評価とパブリックコメント
本診療ガイドラインの作成過程の妥当性や臨床現場で適用可能かどうかを客観的に評価するために,2009 年度版ならびに2013 年版と同様に一般社団法人日本口腔腫瘍学会および公益社団法人日本口腔外科学会のそれぞれにおいて評価委員会が設置され,評価を受けた。評価委員は本診療ガイドラインの作成に直接深くかかわっていない9 名の医師,歯科医師(口腔外科専門医,歯科放射線科医,口腔病理医)によって構成されていた。
いずれの評価委員会においても,評価は診療ガイドラインを評価するツールとして世界的に用いられているAGREE II(Appraisal of Guidelines for REsearch and Evaluation II)を用いて行い,診療ガイドラインの対象と目的,利害関係者の参加,作成の厳密さ,提示の明確さ,適用可能性,編集の独立性についての評価を受けた。その結果,いずれの評価委員会からも概ね高い評価を受け,本診療ガイドラインの使用を「推奨する」あるいは「強く条件付きで推奨する」の評価であった。各項目やCQ ごとの細かな指摘事項については,口腔癌診療ガイドライン改訂合同委員会にて審議を行い,修正が必要かつ可能と判断された事項については修正を行った。
パプリックコメント(意見公募)は,一般社団法人日本口腔腫瘍学会および公益社団法人日本口腔外科学会のそれぞれのホームページから改訂原案を閲覧できるようにして求め,寄せられた意見は口腔癌診療ガイドライン改訂合同委員会にて審議を行い,修正が必要かつ可能と判断された事項については修正を行った。なお,Part 2 で作成したシステマティックレビューの資料に関しては,口腔癌診療ガイドラインパネル会議で用いる前にも同様にパブリックコメントを求めた。
5.改訂
医学の進歩とともに口腔癌の治療内容も変化するので,本診療ガイドラインも定期的な再検討を行う必要がある。また,各方面からの建設的な批判や種々の意見を集積して内容を再吟味し,今回作成上生じた問題点を解決しながら適時改訂を行っていく予定である。今回は,前回の改訂から6 年が経過したが,今後は口腔癌診療ガイドライン改訂合同委員会で原則として3 年ごとの見直しを行い,ガイドライン評価委員会による検証を繰り返していく予定である。
6.利益相反
本診療ガイドラインの作成に関わった委員(資料作成班を除く)は、就任時からさかのぼって過去4 年間に関係すると考えられる企業・組織・団体ならびに学術的な利益相反状態の申告を行った。特に,Part 2 に関しては,表1 の自己申告書を用いて各クリニカルクエスチョンのシステマティックレビューに対して申告を行い,さらに,推奨文作成時には再度、利益相反状態を確認したうえで,推奨文作成に対して利益相反が存在する委員は、その推奨文の合意形成には関与しなかった。なお,自己申告結果は表2 に示すとおりであった。
すべての委員は,口腔癌および関連疾患の医療・医学の専門家,専門医,関係者,あるいは患者として,科学的および医学的公正さと妥当性を担保し,対象となる疾患の診療レベルの向上,対象患者の健康寿命の延伸,QOL の向上を旨として本診療ガイドラインの作成に関わった。