No. |
クリニカルクエスチョン |
推奨 |
グレード |
CQ15 |
両側乳房切除後の一次再建では,人工物による再建が勧められるか? |
両側乳房切除後の一次再建では人工物による再建がよく行われるが,他の方法による再建を行ってもよい。 |
C1 |
CQ16 |
シリコーンジェルインプラントによる乳房再建後の患者において,インプラント破損率と被膜拘縮発生率が予想されるか? |
シリコーンインプラントの破損率について,2000 年以降報告の文献では約0~26%,1990 年代報告の文献では約0~71%である。2 者の破損率の差は,インプラントの種類・世代や挿入期間の違いが関係しているが,インプラント挿入年数が長くなると破損率が増加するという点は多くの文献で一致している。また,被膜拘縮発生率(Baker Grade Ⅲ or Ⅳ)は,約5~15%と報告されている。 |
C1 |
CQ17 |
シリコーンジェルインプラントによる乳房再建後の患者において,マッサージは被膜拘縮予防に対して有効か? |
マッサージによる被膜拘縮の予防に関しては,大規模な研究はないが有害である報告もない。スムーズタイプのインプラントを使用した場合においては,マッサージが有効であるとの意見が多いので行ってもよい。 |
C1 |
CQ18 |
テクスチャードタイプのインプラントはスムーズタイプのインプラントと比較した場合,被膜拘縮の発生率が低くなるか? |
スムーズタイプのインプラントに比べ,テクスチャードタイプのインプラントによる被膜拘縮の発生頻度は減少する。 |
B |
CQ19 |
インプラントを大胸筋下に挿入する場合と大胸筋上に挿入する場合で,術後の質感と合併症に差はあるか? |
血腫発生率と乳房の対称性に関しては,大胸筋上挿入の方が優れている。被膜拘縮と乳頭知覚障害に関しては,大胸筋下の方が優れている。感染と波打ち(Rippling)に関しては差がない。 |
C1 |
CQ20 |
再建術にエキスパンダーの使用は有効か? |
乳房再建術にエキスパンダーの使用は有効であるが,放射線治療や術前術後の化学療法を行う患者には注意が必要である。 |
C1 |
CQ21 |
エキスパンダーを使用する場合,テクスチャードタイプのエキスパンダーの方がスムーズタイプのエキスパンダーと比較して被膜形成の程度は軽度か? |
乳房再建にインプラントを用いる場合,被膜形成の面からは,スムーズタイプよりもテクスチャードタイプのエキスパンダーを使用することが勧められる。 |
C1 |
CQ22 |
乳房全摘術後の患者に対して腹直筋皮弁は有効か? |
腹直筋皮弁による再建は適応となる。 |
B |
CQ23 |
腹直筋皮弁による乳房再建術後の患者は出産が可能か? |
腹直筋皮弁による乳房再建術後に経腟分娩による出産は可能であるとされるが,十分な根拠はない。 |
C1 |
CQ24 |
腹部手術の既往歴がある患者に対して,腹直筋皮弁による乳房再建術は可能か? |
瘢痕の部位に応じて皮弁のデザインを工夫することや,皮弁血流量を増強させる手技により,安全に移植することが可能である。 |
C1 |
CQ25 |
遊離TRAM 皮弁(DIEP を含める)は,有茎TRAM 皮弁に比べて合併症の点において優れているか? |
遊離TRAM 皮弁は有茎TRAM 皮弁に比べ,皮弁合併症ならびに腹壁合併症の発生率は低く,推奨される。 |
C1 |
CQ26 |
広背筋皮弁は勧められるか? |
広背筋皮弁による乳房再建は選択肢の1 つとして勧められる。 |
B |
CQ27 |
拡大広背筋皮弁による乳房再建術は勧められるか? |
中等度までの大きさの乳房であれば,拡大広背筋皮弁による乳房再建術を行ってもよいが,合併症に注意を要する。 |
C1 |
CQ28 |
広背筋皮弁で再建する場合,胸背神経を温存するか切断するかにより,再建乳房の状態に差を生じるか? |
広背筋皮弁の挙上時には,胸背神経は温存されることが多く,通常,胸背神経を切断する必要はないと考えられる(グレードC 1)。ただし,神経を温存した場合,筋の不随意収縮が生じる可能性がある。 |
C1 |
CQ29 |
乳癌全摘後の患者に対して穿通枝皮弁は有効か? |
穿通枝皮弁は,取り扱う血管径が細いため合併症が多く,安全とはいえない。しかし,筋および主要血管を犠牲にしない低侵襲皮弁であり,皮弁採取部の合併症が少ないという点では有効といえる。 |
C1 |
CQ30 |
遊離DIEP 皮弁は遊離TRAM 皮弁(muscle sparing flap:筋体温存腹直筋皮弁を含む)と比較して術後合併症が少ないか? |
遊離DIEP 皮弁は遊離TRAM 皮弁(筋体温存腹直筋皮弁:muscle sparing flap を含む)と比較して皮弁の虚血性合併症は増加するが,腹壁の合併症は少ない傾向がある。 |
B |
CQ31 |
遊離皮弁の移植床血管の選択によって手術結果に差が出るか? |
遊離皮弁の移植床血管の選択による手術結果に差はない。 |
B |
CQ32 |
自家脂肪注入法を行った場合,長期的に術後形態は保持されるか? |
自家脂肪注入のみによって,長期形状維持を可能とする十分な量の脂肪組織を再生する技術はいまだに開発されておらず,現段階では術後形態が保持されるとはいえない。 |
C2 |
CQ33 |
自家真皮脂肪移植は推奨されるか? |
生着に関する科学的根拠が乏しく,推奨されない。 |
C2 |
CQ34 |
乳輪乳頭形成は勧められるか? |
乳頭再建は,健側からの乳頭半切移植法または局所皮弁法としてStar flap,Skate flap,Doubleopposingtab flap などが代表的な方法である。乳輪再建は,健側乳輪または大腿内側基部からの植皮または刺青法が代表的な方法である。いずれの方法も優劣があり,患者の状態に合わせて選択する必要がある。 |
C1 |