がん診療ガイドライン「ウェブ化」の目的

この「がん診療ガイドライン」は,がん患者に,より良い医療を提供する一貫として,臨床腫瘍医が提示しなければならない治療内容を,診療アルゴリズムと治療ガイドラインを中心に体系的にまとめ,関連項目の重要論文とともに,一般臨床医向けにインターネットのウェブ上で邦文で公開するものである。

また,ここで公開されているガイドラインの内容は,医療情報倫理と公平性の立場から,客観性と高質性が保証されていることを利用者が認識できることが重要である。そこで,がん医療における横断的学会である日本癌治療学会では,各がん種別に「がん診療ガイドライン委員会」を設立し,本邦の各種がん関連学術団体と密接な連携をとり,専門的視点から構築されたガイドラインを,充分な吟味のもとで評価された内容として提示することに最大の努力を払ってきた。すなわち,各がん種別関連学会や研究会が作成した診療ガイドラインを,客観性と高質性が担保されたガイドラインとして評価し,わが国で共有できるガイドラインとしてインターネット上で公開する。このことにより,臨床医に検索可能な科学情報として提供されたウェブ上の画面を,患者と共有することで治療への理解が深まり,有用かつ効率的なインフォームド・コンセントの成立が可能になると期待している。その結果,患者から信頼された治療の選択と治療の継続が可能となり,本邦でのがん医療の質と治療成績の向上につながり,安全で安心できる効率的ながん医療の展開が可能になると確信している。

ところで,このインターネット上での公開は,各種患者団体および国民から強く要望されてきたところであるが,今回の公開は欧米諸国に比べ遅すぎる帰来は否定できない。しかし,各がん種関連学会・研究会でも本事業の必要性と重要性を充分認識され,現在早急に適切な対応が取られているので,今後は,より積極的な事業推進が可能になると期待されるので,何とぞお許し願いたい。

なお,各がん種別ガイドラインの内容は,各学会・研究会が独自に,あるいは各領域担当委員が中心となり献身的な努力の上で作成されたもので,当該学会・研究会が発行する書籍に掲載後,同学会・研究会のホームページでも詳細に紹介されている。そこで,本「がん診療ガイドライン」のウェブ上での検索は,がん種別の治療アルゴリズムからアクセスし,ガイドラインの内容に関しては,各学会・研究会に作成頂いた簡易版(あるいは全編版)ガイドラインで直接,あるいは当該学会のホームページへリンクして検索する方法を採用した。そのため,インターネット上でのアクセスに若干の時間と不便を掛ける場合があるが,医療情報倫理を堅持する立場から採用した方策であるので,是非ご理解とご了解を賜りたい。

(佐治重豊)