大腸がん 〜治療ガイドライン
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各 論
1
Stage 0〜Stage Ⅲ 大腸癌の治療方針
1) 内視鏡治療
適応の原則
- リンパ節転移の可能性がほとんどなく,腫瘍が一括切除できる大きさと部位にある。
内視鏡的摘除の適応基準
- (1)粘膜内癌,粘膜下層への軽度浸潤癌。
- (2)大きさは問わない。
- (3)肉眼型は問わない。
2) 手術治療
手術の原則
- 大腸癌手術におけるリンパ節郭清度は,術前の臨床所見(c)および術中所見(s)によるリンパ節転移の有無と腫瘍の壁深達度から決定する。
- 術前・術中診断でリンパ節転移を認める,または疑う場合は,D3 郭清を行う。
- 術前・術中診断でリンパ節転移を認めない場合は,壁深達度に応じたリンパ節郭清を行う11)。
- (1)pTis(M)癌にはリンパ節転移はないのでリンパ節郭清の必要はないが(D0),術前深達度診断の精度の問題もあり,cTis(M)癌ではD1 郭清を行ってもよい。
- (2)pT1(SM)癌には約10%のリンパ節転移があること,中間リンパ節転移も少なくないことから,cT1(SM)癌ではD2 郭清が必要である。
- (3)cT2(MP)癌の郭清範囲を規定するエビデンスは乏しいが,少なくともD2 郭清が必要である。しかし,pT2(MP)癌には主リンパ節転移が約1%あること(表3),および術前深達度診断の精度の問題から,D3 郭清を行ってもよい。
直腸癌の手術治療
- 直腸切除の原則は,TME(total mesorectal excision)またはTSME(tumor-specific mesorectal excision)である12-15)。
〔側方郭清の適応基準〕
- 側方郭清の適応基準は,腫瘍下縁が腹膜反転部より肛門側にあり,かつ固有筋層を超えて浸潤する症例である16)。
〔直腸局所切除〕
- 第2 Houston 弁(腹膜反転部)より肛門側にあるcTis(M)癌,cT1(SM)癌(軽度浸潤)が対象となる。
- 切除標本の組織学的検索によって,治療の根治性と追加治療(リンパ節郭清を伴う腸切除)の必要性を判定する。
〔自律神経温存術〕
- 直腸癌手術に関連した自律神経系には,腰内臓神経,上下腹神経叢,下腹神経,骨盤内臓神経,骨盤神経叢がある。
- 癌の進行度,肉眼的な神経浸潤の有無等を考慮して,根治性を損なわない範囲で,排尿機能,性機能温存のため自律神経の温存に努める。
腹腔鏡下手術
- 腹腔鏡下手術の適応は,癌の部位や進行度などの腫瘍側要因および肥満,開腹歴などの患者側要因だけでなく,術者の経験,技量を考慮して決定する。(CQ 4)
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〔切離腸管長〕
〔TME/TSME〕
〔側方郭清〕
〔大腸癌全国登録の集計データ〕 |
2
Stage Ⅳ 大腸癌の治療方針
- Stage Ⅳ大腸癌では以下のいずれかの同時性遠隔転移を伴う。肝転移,肺転移,腹膜播種,脳転移,遠隔リンパ節転移,その他の転移(骨,副腎,脾など)。
- 遠隔転移巣ならびに原発巣がともに切除可能な場合には,原発巣の根治切除を行うとともに遠隔転移巣の切除を考慮する。
- 遠隔転移巣が切除可能であるが原発巣の切除が不可能な場合は,原則として原発巣および遠隔転移巣の切除は行わず,他の治療法を選択する。
- 遠隔転移巣の切除は不可能であるが原発巣切除が可能な場合は,原発巣の臨床症状や原発巣が有する予後への影響を考慮して,原発巣切除の適応を決める。(CQ 5)
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3
再発大腸癌の治療方針
- 再発大腸癌の治療目的は,予後向上とQOL の改善である。
- 治療法には,手術療法,全身化学療法,動注化学療法,熱凝固療法,放射線療法などがある。
- 期待される予後,合併症,治療後のQOL などのさまざまな因子を考慮し,患者への十分なインフォームド・コンセントのもとに治療法を選択する。
- 再発臓器が1 臓器の場合,手術にて再発巣の完全切除が可能であれば積極的に切除を考慮する。
- 再発臓器が2 臓器以上の場合,それぞれが切除可能であれば切除を考慮してもよいが29, 33, 34),治療効果について統一見解は得られていない。(CQ 7)
- 肝あるいは肺転移に対して不顕性転移を除外するために一定の観察期間を置いてから切除を行うという見解がある35, 36)。
- 切除不能と判断された肝転移に対して全身化学療法が奏効して根治切除が可能になる症例が存在する37, 38)。(CQ 9)
- 血行性転移に対する治療法(血行性転移の治療方針,参照)。
- 直腸癌局所再発には吻合部再発と骨盤内再発がある。
(1)切除可能であれば切除を考慮する。
(2)切除不能であれば放射線療法と全身化学療法の単独または併用を考慮する。
4
血行性転移の治療方針
1) 肝転移の治療方針
- 肝転移の治療は,肝切除,全身化学療法,肝動注療法および熱凝固療法がある。
- 根治切除可能な肝転移には肝切除が推奨される。
- 肝切除術には系統的切除と部分(非系統的)切除がある。
肝切除の適応基準
- (1)耐術可能。
- (2)原発巣が制御されているか,制御可能
- (3)肝転移巣を遺残なく切除可能。
- (4)肝外転移がないか,制御可能。
- (5)十分な残肝機能。
- 切除不能な肝転移で全身状態が一定以上に保たれる場合(PS 0〜PS 2)は,全身化学療法を考慮する。
- 熱凝固療法にはマイクロ波凝固療法(MCT:microwave coagulation therapy)とラジオ波焼灼療法(RFA:radiofrequency ablation)がある。
- 全身状態が不良(PS≧3)あるいは有効な薬剤がない場合は対症療法(BSC:best supportive care)を行う。
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〔肝切除〕
〔切除以外の治療法〕
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2) 肺転移の治療方針
- 肺転移の治療には,肺切除と全身化学療法,放射線療法がある。
- 肺転移巣の切除が可能であれば肺切除を考慮する。
- 肺切除には系統的切除と部分(非系統的)切除がある。
肝切除の適応基準
- (1)耐術可能。
- (2)原発巣が制御されているか,制御可能。
- (3)肺転移巣を遺残なく切除可能。
- (4)肺外転移がないか,制御可能。
- (5)十分な残肺機能。
- 切除不能肺転移で全身状態が一定以上に保たれる場合は,全身化学療法を考慮する。
- 耐術不能な場合でも,原発巣と肺外転移が制御されているか,制御可能で,5 cm 以内の肺転移個数が3 個以内であれば体幹部定位放射線治療も考慮する77)。
- 全身状態が不良な場合は適切なBSC を行う。
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〔肺切除〕
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3) 脳転移の治療方針
- 脳転移は全身疾患としての一分症として発見されることが少なくないが,治療効果が期待される病変に対しては,手術療法あるいは放射線療法を考慮する。
- 全身状態,他の転移巣の状況を考慮し,脳転移巣の大きさ,部位,脳転移個数を評価して最適な治療法を選択する。
- 切除不能例には放射線療法を考慮する。
〔手術療法〕
脳切除の適応基準
96, 97)- (1)数カ月以上の生命予後。
- (2)切除により重大な神経症状をきたさない。
- (3)他臓器の転移がないか,制御可能。
〔放射線療法〕
- 脳神経症状や頭蓋内圧亢進症状などの症状緩和と局所制御による延命を目的とする。
- 多発性脳転移例や外科切除の対象とならない孤立性脳転移例では全脳照射を考慮する。
- 脳転移個数がおよそ3〜4 個以内で3 cm 以下であれば,定位放射線照射を考慮する。
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〔手術療法〕
〔放射線療法〕 |
4) その他の血行性転移の治療方針
- 副腎,皮膚,脾などの血行性転移に対しても,切除可能な場合は切除を考慮する。しかし,これらの転移は他の臓器の転移を伴うことが多く,化学療法あるいは放射線療法が適応されることが多い。
5
化学療法
- 化学療法には,術後再発抑制を目的とした補助化学療法と切除不能な進行再発大腸癌を対象とした全身化学療法がある。
- 日本の保険診療として,大腸癌に対する適応が認められている主な抗がん剤には以下のものがある。
- 経口薬:
- 5-FU,tegafur,UFT,doxifluridine(5’-DFUR),carmofur(HCFU),S-1(S),UFT+LV,capecitabine(Cape),regorafenib など
- 注射薬:
- 5-FU,mitomycin C,irinotecan(IRI),5-FU+l-leucovorin(LV),oxaliplatin(OX),bevacizumab(Bmab),cetuximab(Cmab),panitumumab(Pmab)など
1) 補助化学療法
- 術後補助化学療法は,R0 切除が行われた症例に対して,再発を抑制し予後を改善する目的で,術後に実施される全身化学療法である112)。
適応の原則
- (1)R0 切除が行われたStage Ⅲ大腸癌(結腸癌・直腸癌)。Stage Ⅳ切除例はCQ 8 参照。
- (2)主要臓器機能が保たれている。以下を目安とする。
- 骨髄:白血球>3,500/mm3,血小板>100,000/mm3
- 肝機能:総ビリルビン<2.0 mg/dL,AST/ALT<100 IU/L
- 腎機能:血清クレアチニン:施設基準値上限以下
- (3)performance status(PS)が0〜1 である。
- (4)術後合併症から回復している。
- (5)適切なインフォームド・コンセントに基づき患者から文書による同意が得られている。
- (6)重篤な合併症(特に,腸閉塞,下痢,発熱)がない。
推奨される療法
(日本における保険適応収載順)
- 5-FU+LV 注
- UFT+LV
- Cape
- FOLFOX
- CapeOX
推奨される投与期間
(CQ 15)- 投与期間6 カ月を原則とする。
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注 補助化学療法における5-FU+LV 療法 RPMI 法(l-LV 250 mg/m2,2 時間点滴;5-FU 500 mg/m2,l-LV 開始1 時間後に3 分以内に緩徐に静注:毎週1 回投与,6 週連続2 週休薬,8 週毎に3 サイクル繰り返す135))
2) 切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法
- 化学療法を実施しない場合,切除不能と判断された進行再発大腸癌の生存期間中央値(MST:median survival time)は約8 カ月と報告されている。最近の化学療法の進歩によってMST は約2 年まで延長してきたが,現状では治癒を望むことは難しい。
- 化学療法の目標は腫瘍増大を遅延させて延命と症状コントロールを行うことである。
- PS 0〜PS 2 の症例を対象としたランダム化比較試験において,化学療法群は抗がん剤を用いない対症療法(BSC:best supportive care)群よりも有意に生存期間が延長することが示されている136-138)。
- 切除不能進行再発大腸癌に対する化学療法が奏効して切除可能となることがある。
- 強力な治療が適応となる患者と強力な治療が適応とならない患者に分けて治療方針を選択するのが望ましい〔アルゴリズム,コメント⑤およびコメント⑥参照〕。
- 強力な治療が適応とならない患者とは,患者因子と腫瘍の状態との両面から定義される。すなわち,患者因子として,重篤な有害事象の発生を好まない,または重篤な併存疾患があり一次治療のOX,IRI や分子標的薬の併用療法に耐容性がないと判断される,腫瘍の状態としては,現在切除不能な多臓器(または多発)転移があり将来的にも切除可能となる見込みが乏しい,無症状かつ緩徐な腫瘍進行と判断される(急速な悪化の危険性が少ない)患者などである〔アルゴリズム,コメント⑥参照〕。
- Cmab,Pmab はKRAS 野生型のみに適応される。
- 特に一次・二次治療においてBmab や抗EGFR 抗体などの分子標的治療薬が適応となる症例には化学療法との併用が推奨される。一方,分子標的治療薬の適応とならない場合は,化学療法単独を推奨する。
適応の原則
- (1)臨床診断または病理組織診断が確認されている。
- (2)転移・再発巣が画像にて確認可能である。
- (3)performance status(PS)が0〜2 である。
- (4)主要臓器機能が保たれている(下記の1〜3 は投与の目安)。
- 骨髄:白血球>3,500/mm3,血小板>100,000/mm3
- 肝機能:総ビリルビン<2.0 mg/dL,AST/ALT<100 IU/L
- 腎機能:血清クレアチニン:施設基準値上限以下
- (5)適切なインフォームド・コンセントに基づき患者から文書による同意が得られている。
- (6)重篤な合併症(腸閉塞,下痢,発熱など)を有さない。
一次治療
- 臨床試験において有用性が示されており,かつ保険診療として国内で使用可能な一次治療としてのレジメンは以下の通りである。
- (1)強力な治療が適応となる患者
- (2)強力な治療が適応とならない患者
二次治療
- 二次治療として以下のレジメンを考慮する。(CQ 16)
- (1)強力な治療が適応となる患者
- (2)強力な治療が適応とならない患者
- BSC
- 可能なら,最適と判断されるレジメンを考慮
三次治療以降
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- 注1 FOLFOX
- Infusional 5-FU+LV+OX。
- 注2 CapeOX
- Cape+OX。
- 注3 FOLFIRI
- Infusional 5-FU+LV+IRI。
- 注4FOLFOXIRI
- Infusional 5-FU+LV+IRI+OX。IRI 165* mg/m2;OX 85 mg/m2;OX と同時にl-LV 200 mg/m2;5-FU 3,200** mg/m2を点滴静注:2 週毎に繰り返す。なお,国内で承認されているl 型ロイコボリンの投与量は欧米で使用されているdl 型ロイコボリンの半量で等量となる。(* IRI の添付文書の用法・用量では,150 mg/m2とあるが,年齢,症状により適宜増減するとある。** 5-FU 注の添付文書の用法・用量では3,000 mg/m2までとある。)
- 注5 IRIS
- S-1+IRI。IRI 125 mg/m2 2 週毎に繰り返す;S-1 体表面積に応じて40〜60 mg/回 1 日2 回内服 2週内服2 週休薬 4 週毎に繰り返す。
- 注6 regorafenib
- 160 mg/body 1 日1 回内服 3 週内服1 週休薬 4 週毎に繰り返す。
- 注7 PS
- ECOG のperformance status(PS)の日本語訳。
Grade | performance status |
---|---|
0 |
全く問題なく活動できる。 発病前と同じ日常生活が制限なく行える。 |
1 |
肉体的に激しい活動は制限されるが,歩行可能で,軽作業や座っての作業は行うことができる。例:軽い家事,事務作業 |
2 |
歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。 日中の 50%以上はベッド外で過ごす。 |
3 |
限られた自分の身の回りのことしかできない。 日中の 50%以上をベッドか椅子で過ごす。 |
4 |
全く動けない。自分の身の回りのことは全くできない。 完全にベッドか椅子で過ごす。 |
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放射線療法
- 放射線療法には,直腸癌の術後の再発抑制や術前の腫瘍量減量,肛門温存を目的とした補助放射線療法と切除不能進行再発大腸癌の症状緩和や延命を目的とした緩和的放射線療法がある。
1) 補助放射線療法
- 補助放射線療法には,術前照射,術中照射,術後照射がある。
- 補助放射線療法の目的は直腸癌の局所制御率の向上である。術前照射では,さらに肛門括約筋温存率と切除率の向上が得られることが示唆されている。しかし,生存率の改善に関しては,現時点で補助放射線療法の目的とするだけのエビデンスは存在しない。
- 術前照射は「深達度cT3(SS/A)以深またはcN 陽性」,術後照射は「深達度pT3(SS/A)以深またはpN 陽性,外科剝離面陽性(RM1)または外科剝離面への癌浸潤の有無が不明(RMX)」,術中照射は「外科剝離面陽性(RM1)または外科剝離面への癌浸潤の有無が不明(RMX)」を対象とする。
- 照射方法により外部照射と術中照射に分けられる。
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〔治療計画〕
〔線量と分割法〕
〔治療方法〕
〔線量〕
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- 注1 5-FU
- 225 mg/m2/日 持続静注 週5 日または7 日(放射線治療期間中)
- 注2 Cape
- 825 mg/m2/回 1 日2 回内服 週5 日または7 日(放射線治療期間中)
2) 緩和的放射線療法
a.骨盤内病変(CQ 19)
- 骨盤内腫瘍による疼痛,出血,便通障害などの症状緩和を目的とする。
- 標的体積には症状の原因となっている腫瘍を含める。
〔線量と分割法〕
- 1 回1.8〜2.0 Gy,総線量45〜50 Gy 照射する。
- 全身状態,症状の程度によっては1回線量を多くして短期間で照射を終了することもある。
b.骨盤外病変
- (1)骨転移
- 疼痛の軽減,病的骨折の予防,脊髄麻痺の予防と治療を目的とする。
- 標的体積には症状の原因となっている腫瘍を含める。
〔線量と分割法〕
- 局所照射では30 Gy/10 回,20 Gy/5 回などの分割照射が広く行われている。
- (2)脳転移
- 血行性転移の項を参照。
〔線量と分割法〕
- 全脳照射では30 Gy/10 回が標準的であり,長期予後が期待される場合には37.5 Gy/15 回ないしは40 Gy/20 回などを検討する。
- 定位手術的照射では辺縁線量16〜25 Gy を1 回で照射する。
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7
緩和医療・ケア
- 緩和医療・ケアとは,患者のQOL の維持,向上を目的としたケアの総称である。
- 緩和医療・ケアは,がんの診断がついた時点から終末期までを包括する医療であり,病期や症状により,実施すべき内容が異なる。
- がん治療は症状緩和が図られた状態で行うことが原則であり215),外科治療や化学療法の当初から緩和医療を導入するのが望ましい。
- 大腸癌終末期におけるQOL 向上のための緩和医療には以下のものが含まれる。
(1)疼痛緩和
(2)外科治療
(3)化学療法
(4)放射線療法
(5)精神症状に対するカウンセリング
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8
大腸癌手術後のサーベイランス
1) 大腸癌根治度 A 切除後の再発に関するサーベイランス
- (1)pStage 0(pTis(M)癌)は,切除断端や吻合部の再発を対象とした定期的な内視鏡検査を考慮する。他臓器の再発を対象としたサーベイランスは不要である。
- (2) pStage Ⅰ〜pStage Ⅲは,肝,肺,局所,吻合部,リンパ節,腹膜などの再発をサーベイランスする。以下の点に留意する。
- サーベイランス期間は術後5 年間を目安とし,術後3 年以内はサーベイランス間隔を短めに設定する。
- 直腸癌では肺転移再発と局所再発の頻度が高いことに留意する。
- 吻合部再発のサーベイランスは術後3 年までを目安とする。
- 再発の好発部位,発生頻度,治療効果や,本邦での臨床実状を総合的に判断して導き出された,pStage Ⅰ〜pStage Ⅲ大腸癌の治癒切除後に推奨されるサーベイランススケジュールの一例を示す。
術後経過年月 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |||||||||||||||
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3 | 6 | 9 | 12 | 3 | 6 | 9 | 12 | 3 | 6 | 9 | 12 | 3 | 6 | 9 | 12 | 3 | 6 | 9 | 12 | |
結腸・RS 癌 |
||||||||||||||||||||
問診・診察 |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||
腫瘍マーカー |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||
胸部 CT |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ||||||||||
腹部 CT |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ||||||||||
大腸内視鏡検査 |
● | ● | ||||||||||||||||||
直腸癌 |
||||||||||||||||||||
問診・診察 |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||
腫瘍マーカー |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||
直腸指診 |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ||||||||||||||
腹部 CT |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ||||||||||
腹部・骨盤 CT |
● | ● | ● | ● | ● | ● | ○ | ● | ○ | ● | ||||||||||
大腸内視鏡検査 |
● | ● | ● |
●:pStage Ⅰ〜pStage Ⅲ大腸癌に行う。
○:pStage Ⅲ大腸癌に行う。pStage Ⅰ〜pStage Ⅱ大腸癌では省略してもよい。
胸部の画像診断:CT が望ましいが,胸部単純X 線検査でもよい。
腹部の画像診断:CT が望ましいが,腹部超音波検査でもよい。
2) 大腸癌根治度 B 切除後および再発巣切除後のサーベイランス
- (1)pStage Ⅳ症例のR0 切除後(根治度B)と再発巣切除症例のサーベイランスは,Stage Ⅲの内容に準ずるが,転移・再発の切除臓器に再発・再々発が多いことに留意する。
- (2)R1 切除のために根治度B となった症例は,遺残が疑われる臓器を標的とした綿密なサーベイランスを計画する。
3) 異時性多重がんのサーベイランス
- 異時性多発癌のサーベイランスを目的として大腸内視鏡検査を行う。
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