皮膚悪性腫瘍 〜診療ガイドライン

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メラノーマ(悪性黒色腫)

CQ1

メラノーマの発生予防を目的とした紫外線防御は勧められるか

推奨度

C1

日本人ではメラノーマの過半数が肢端部に発生し,紫外線の関与は少ないと考えられるが,サンスクリーン剤などで紫外線防御を行うことにより露光部のメラノーマの発生率が減少する傾向はあるため,紫外線防御を考慮してもよい。

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■解説

メラノーマの発生には遺伝的背景と環境因子の両者が重要である。表在拡大型メラノーマの発生が半数以上を占める白人ではメラノーマの家族歴,スキンタイプ,雀卵斑の密度,皮膚・眼・毛髪の色などの遺伝的因子とともに,生涯を通じて(特に小児期)の強い日焼けと,日焼けの頻度・回数が危険因子であることが数編のメタアナリシスから明らかになってきている1〜3)

一方,サンスクリーン剤などの使用による徹底した生涯にわたる紫外線防御がメラノーマ発症の予防に役立つか否かについては,18 編のシステマティック・レビューにて小児期のサンスクリーン剤の使用がメラノーマの予防に役立つという結論は得られなかった4)。しかし,これらの研究がなされた時期のサンスクリーン剤の防御能は主としてUVB に対してのみでUVA に対する防御能に乏しく,これらのサンスクリーン剤を用いた17 編のシステマティック・レビューでもメラノーマの予防に役立たなかったことから,UVA がメラノーマの発症に関与する可能性を示唆した報告に留まっていた5)

近年のbroad spectrum サンスクリーン剤はUVB,UVA に対して共に優れた防御能を有している。これらを実際に使用したところメラノーマの発生リスクと考えられている多数の後天性色素細胞母斑の発生が30〜40%減少したとするランダム化比較試験がある6)。さらに白人1,621 例を対象にbroad spectrum サンスクリーン剤を毎日4 年間塗布した群と,自分の裁量で適宜塗布する群を塗布後10 年観察・比較したランダム化比較試験では,毎日塗布した群ではメラノーマの発生率を50%予防でき,特に浸潤性メラノーマでは73%予防できたと報告されている7)

一方,ヒスパニックや黒人などの有色人種においては,メラノーマの発生と紫外線曝露を関連付ける疫学的な調査は存在しない8)。日本人においても,メラノーマの約半数が肢端部に発生するため,メラノーマの発生に関する紫外線の関与は少ないと考えられるが,近年白人におけるサンスクリーン剤のメラノーマ予防効果についてエビデンスレベルの高い研究7)が出現したため,推奨度をC1 とした。

文献

1) Dennis LK, Vanbeek MJ, Beane Freeman LE, et al: Sunburns and Risk of Cutaneous Melanoma: Does age matter? A comprehensive meta-analysis, Ann Epidemiol, 2008; 18: 614-627.(エビデンスレベル Ⅰ

2) Gandini S, Sera F, Cattaruzza MS, et al: Meta-analysis of risk factors for cutaneous melanoma: Ⅲ. Family history, actinic damage and phenotypic factors, Eur J Cancer, 2005; 41: 2040-2059.(エビデンスレベル Ⅰ

3) Elwood JM, Jopson J: Melanoma and sun exposure: an overview of published studies, Int J Cancer, 1997; 73: 198-203.(エビデンスレベル Ⅰ

4) Dennis LK, Beane Freeman LE, VanBeek MJ: Sunscreen use and the risk for melanoma: a quantitative review, Ann Intern Med, 2003; 139: 966-978.(エビデンスレベル Ⅰ

5) Gorham ED, Mohr SB, Garland CF, et al: Do sunscreens increase risk of melanoma in populations residing at higher latitudes? Ann Epidemiol, 2007; 17: 956-963.(エビデンスレベル Ⅰ

6) Gallagher RP, Rivers JK, Lee TK, et al: Broad-spectrum sunscreen use and the development of new nevi in white children: a randomized controlled trial, JAMA, 2000; 283: 2955-2960.(エビデンスレベルⅡ

7) Green AC, Williams GM, Logan V, et al: Reduced melanoma after regular sunscreen use: randomized trial follow-up, J Clin Oncol, 2011; 29: 257-263.(エビデンスレベルⅡ

8) Eide MJ, Weinstock MA: Association of UV index, latitude, and melanoma incidence in nonwhite populations-US Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER) Program, 1992 to 2001, Arch Dermatol, 2005; 141: 477-481.(エビデンスレベルⅤ


CQ2

ほくろ(後天性色素細胞母斑)の数が多い者に対してメラノーマの早期診断を目的とした定期診察は勧められるか

推奨度

C1

色白でほくろの数が50 個以上の場合定期診察を考慮してもよい。

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■解説

後天性色素細胞母斑(acquired melanocytic nevus;AMN)の個数とメラノーマ発生リスクについては,欧米白人で多数の症例対照研究が実施され,いずれの研究でもAMN の個数が多いとメラノーマ発生の危険性が高まることが示されている。これらの研究で注意すべきことは,白人のメラノーマは大多数が表在拡大型黒色腫(superficial spreading melanoma;SSM)であること,AMN を通常型母斑と異型母斑(atypical nevus, dysplastic nevus;AN)に分けて考察している研究が多いことである。AN は臨床的に大型,不整な斑状病変で,組織学的に独特な横広がりの病巣であるとされるが,その概念と診断基準は必ずしも確立されていない。

オーストラリアにおいてメラノーマ244 例と対照276 例を調査した後ろ向き症例対照研究では,AMN を100 個以上有する例のメラノーマ発生リスクは10 個以下より12 倍高いことが示された1)。イギリスにおいてメラノーマ426 例と対照416 例を調査した後ろ向き症例対照研究では,AN を4 個以上有する例は,AN を有さない例に比べ,メラノーマ発生のオッズ比(odds ratio;OR)が28.7 ときわめて高い値を示した(P < 0.0001)。通常型のAMN(径2 mm 以上)についても,100 個以上有する例は4 個までの例に比べ,OR が7.7 と有意に高かった(P <0.0001)2)。アメリカにおいてメラノーマ716 例と対照1,014 例を調査した後ろ向き症例対照研究では,2 mm 以上のAMN を25 個有する例のメラノーマ発生のOR を1 とすると,25〜49 個では1.4,50〜99 では3.0,100 以上では3.4 となった3)。イタリアにおいてメラノーマ542 例(SSM 391 例,結節型黒色腫72 例,肢端黒色腫(ALM)22 例)と対照538 例を調査した後ろ向き症例対照研究では,径2〜6 mm のAMN の個数,径6 mm 超のAMN の個数が,それぞれいずれも独立にメラノーマ発生リスクとなり,特に前者が46 個以上,後者が5 個以上の例ではきわめて高い有意差をもってメラノーマ発生リスクが高いことが示された4)。46 編を集計した最近のメタアナリシスでもAMN,AN 共にその数が多くなるほどメラノーマ発生リスクが高くなることが示された5)

日本人におけるほくろ(後天性色素細胞母斑)の数とメラノーマ発生リスクの研究はRokuhara らが報告したメラノーマ82 例(acral lentiginous melanoma;ALM50 例,non-ALM32 例)と対照600 例を調査した後ろ向き症例対照研究1 編のみである。40〜59 歳,60〜79 歳の両年齢群でnon-ALM 群が対照群に比べ有意に2 mm 以上のAMN の数が多く,一方ALM 患者と対照群の間にはAMN の数に有意差はみられなかった6)

以上より白人では,ほくろの数が50 個以上の場合は表在拡大型メラノーマを発生する危険性が高い。日本人では高いエビデンスレベルの研究はないが,メラノーマ患者にはAMN の数が高い傾向にあることから,色白(紫外線曝露で皮膚が赤くはなるが,色素沈着を起こさない)で,ほくろの数が50 個以上の場合は定期診察を考慮してもよいと考えられる。

文献

1) Grulich AE, Bataille V, Swerdlow AJ, et al: Naevi and pigmentary characteristics as risk factors for melanoma in a high-risk population: A case-control study in New South Wales, Australia, Int J Cancer, 1996; 67: 485-491.(エビデンスレベルⅣ

2) Bataille V, Bishop JA, Sasieni P, et al: Risk of cutaneous melanoma in relation to the numbers, types and sites of nevi: A case-control study, Br J Cancer, 1996; 73: 1605-1611.(エビデンスレベルⅣ

3) Tucker MA, Halpern A, Holly FA, et al: Clinically recognized dysplastic nevi: A central risk factor for cutaneous melanoma, JAMA, 1997; 277: 1439-1444.(エビデンスレベルⅣ

4) Naldi L, Imberti GL, Parazzini F, et al: Pigmentary traits, modalities of sun reaction, history of sunburns, and melanocytic nevi as risk factors for cutaneous malignant melanoma in the Italian population: Results of a collaborative case-control study, Cancer, 2000; 88: 2703-2710.(エビデンスレベルⅣ

5) Gandini S, Sera F, Cattaruzza MS, et al: Meta-analysis of risk factors for malignant melanoma: I. Common and atypical naevi, Eur J Cancer, 2005; 41: 28-44.(エビデンスレベル Ⅰ

6) Rokuhara S, Saida T, Oguchi M, et al: Number of acquired melanocytic nevi in patients with melanoma and control subjects in Japan: Nevus count is a significant risk factor for nonacral melanoma but not for acral melanoma, J Am Acad Dermatol, 2004; 50: 695-700.(エビデンスレベルⅣ


CQ3

巨大型先天性色素細胞母斑に対してメラノーマの発生予防を目的とした予防的切除は勧められるか

推奨度

C1

巨大型先天性色素細胞母斑患者がメラノーマを発生する危険性は有意に高く,若年で発生することが多いため,学童期に終了するような予防的切除を考慮してもよい。

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■解説

先天性色素細胞母斑を成人での病変の最大径(小児の病変では成人に成長した際に見積もられる最大径)で分け,径20 cm 以上のものを大型とするKopf らの分類法が広く用いられている。しかし,「巨大型」の明確な定義は存在せず,Zaal らのシステマティック・レビューによれば巨大型先天性母斑のサイズについて少なくとも7 つの異なる定義が使用されているが1),実際には径20 cm 以上を巨大型先天性色素細胞母斑(large congenital melanocytic nevus:LCMN)として検討した研究が多い。

LCMN 患者がメラノーマを発生する危険性が高いことは数編のシステマティック・レビューで明らかにされている。Zaal らによる35 編のシステマティック・レビューによれば,各報告によって差がみられるものの,Kopf の定義でのLCMN からメラノーマが発生する平均リスクは8.2%で,その平均発生年齢は11.1 歳であった1)。Watt らによる8 編のシステマティック・レビューによれば,LCMN 432 例中12 例(2.8%)にメラノーマが発生した2)。Krengel らによる14 編のシステマティック・レビューによれば,LCMN 1,539 例中39 例(2.5%)にメラノーマが発生し,その平均発症年齢は15.5 歳(中央値7 歳)であり,小児期から思春期におけるメラノーマ発生のリスクは一般人に比べて465 倍高いことが示された3)。このうちメラノーマの発生部位に関しては,LCMN 内からが67%,LCMN 外の皮膚からが11%,原発部位が特定できない転移病巣として出現したものが14%,皮膚以外の発症(神経皮膚黒色症による)が8%とLCMN内のメラノーマ発生が多いものの,LCMN 外の発生もあることが示された3)。Zaal らによる大きさを問わない先天性色素細胞母斑の後ろ向きコホート研究では,平均4.7 年の観察期間(19,253人年)で15 例にメラノーマが発生し,全標準化罹患比(overall standardized incidence rate)は12.2(95% CI:9.6〜15.3)で,メラノーマ発生のリスクは一般人に比べて51.6%高いことが示された4)

以上より,LCMN からメラノーマが発生する危険性は高いので,予防切除を選択肢の一つとして考慮してもよい5)。実際Zaal らの4 編のシステマティック・レビューではLCMN 早期予防切除群(部分切除含む)と非切除群においてメラノーマの発生率はそれぞれ650 例中4 例(0.6%),304 例中23 例(7.5%)と予防切除群の方がメラノーマの発生が少ない傾向にあった5)。しかし,病変が巨大であるため完全切除とその再建には手術回数を要し,かつ不完全切除となったり,術後合併症として瘢痕による関節可動域制限が生じる可能性もある6)。また,前述のようにメラノーマの平均発生年齢は若年であることから,予防切除終了前に未切除のLCMN からメラノーマが発生することがある5)。ときに併発する神経皮膚黒色症を含めLCMN 外に発生するメラノーマに関しては,LCMN を切除しても当然予防できない。以上より,推奨度はC1 とした。

文献

1) Zaal LH, Mooi WJ, Sillevis Smitt JH, et al: Classification of congenital melanocytic naevi and malignant transformation: A review of the literature, Br J Plast Surg, 2004; 57: 707-719.(エビデンスレベル Ⅰ

2) Watt AJ, Kotsis SV, Chung KC: Risk of melanoma arising in large congenital melanocytic nevi: A systematic review, Plast Reconstr Surg, 2004; 1168-1174.(エビデンスレベル Ⅰ

3) Krengel S, Hauschild A, Schafer T: Melanoma risk in congenital melanocytic naevi: a systematic review, Br J Dermatol, 2006; 155: 1-8.(エビデンスレベル Ⅰ

4) Zaal LH, Mooi WJ, Klip H, et al: Risk of malignant transformation of congenital melanocytic nevi: A retrospective nationwide study from The Netherlands, Plast Reconstr Surg, 2005; 116: 1902-1909.(エビデンスレベルⅣ

5) Marghoob AA, Agero AL, Benvenuto-Andrade C, Dusza SW: Large congenital melanocytic nevi, risk of cutaneous melanoma, and prophylactic surgery, J Am Acad Dermatol, 2006; 54: 868-870.(エビデンスレベル Ⅰ

6) Kinsler VA, Chong WK, Aylett SE, Atherton DJ: Complications of congenital melanocytic naevi in children: analysis of 16 years’ experience and clinical practice, Br J Dermatol, 2008; 159: 907-914.(エビデンスレベルⅣ


CQ4

メラノーマの早期診断を目的としたダーモスコピーの使用は勧められるか

推奨度

A

ダーモスコピーに習熟した医師が用いればメラノーマの早期診断に役立つので,使用を強く勧める。

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■解説

2002 年までに報告された2 件のメタアナリシスで,メラノーマ(tumor thickness が1 mm 未満の早期病変が大多数を占める)の診断においてダーモスコピーを用いた診断と肉眼による診察とを比較したところ,相対診断オッズ比(relative diagnostic odds ratio)がダーモスコピーの使用によって約4 倍高くなることが示された1, 2)。2008 年のVestergaard らによる臨床現場におけるダーモスコピー使用に関する文献のみを採用したメタアナリシスでは,相対診断オッズ比15.6(95% CI 2.9〜83.7,P = 0.016)となり,バイアスとなる2 つの外れ値データを除いたものでも9.0(95% CI 1.5〜54.6,P = 0.03)となった3)。しかしながら,このようなダーモスコピーによる診断精度の向上にはダーモスコピーの診断法について正規の訓練を受けることが必須とされる4)

Carli らは,色素性病変の専門外来で913 病変をランダム化して検討し,肉眼所見のみに比べて,ダーモスコピー所見を加えて判定すると,メラノーマの早期病変が効率的に検出できて,不要な生検が有意に減少することを報告している5)。Haenssle らは,メラノーマのハイリスク患者530 人の7,001 個のクラーク母斑(atypical nevus;AN)を臨床所見,通常のダーモスコピー観察,ならびにデジタルダーモスコピー(ダーモスコピー所見をデジタルに記録,保存しておき,所見の変化を比較,検討できる機器を用いる方法)にて前向きに平均32.2 カ月間経過観察した。この間に何らかの疑わしい所見を呈するようになった637 病巣を切除したところ,うち53 病巣(8.3%)がメラノーマであったと報告している6)。この研究では,デジタルダーモスコピーによってメラノーマの検出が17%向上し,18 病巣はデジタルダーモスコピーの所見の変化のみによって検出できたという。とくに,familial atypical mole melanoma syndrome(クラーク母斑とメラノーマを家族性に多発する症候群)やatypical mole syndrome(クラーク母斑が多発する者)といったハイリスク患者でのメラノーマ検出に有用であった。デジタルダーモスコピーはハイリスク患者でのクラーク母斑のフォローアップとメラノーマの早期検出に役立つといえる。

日本人では掌蹠に好発する肢端黒子型メラノーマが最頻病型だが,この肢端黒子型メラノーマは,白人に多い表在拡大型メラノーマとはまったく異なるダーモスコピー所見を呈する。とくに皮丘平行パターン(parallel ridge pattern)という皮丘優位の帯状色素沈着がメラノーマにおいて早期病変の段階から高率に認められる(感度86%,特異度99%)。この特異なダーモスコピー所見によって肢端黒子型メラノーマを早期病変の段階で検出,診断することが可能である7)

以上より,ダーモスコピーはこの診断法に習熟した者が用いれば,メラノーマの早期診断に大いに役立つといえる。

文献

1) Bafounta ML, Beauchet A, Aegerter P, et al: Is dermoscopy(epiluminescence microscopy)useful for the diagnosis of melanoma? Results of a meta-analysis using techniques adapted to the evaluation of diagnostic tests, Arch Dermatol, 2001; 137: 1343-1350.(エビデンスレベル Ⅰ

2) Kittler H, Pehamberger H, Wolff K, et al: Diagnostic accuracy of dermoscopy, Lancet Oncol, 2002; 3: 159-165.(エビデンスレベル Ⅰ

3) Vestergaard ME, Macaskill P, Holt PE, et al: Dermoscopy compared with naked eye examination for the diagnosis of primary melanoma: a meta-analysis of studies performed in a clinical setting, Br J Dermatol, 2008; 159: 669-676.(エビデンスレベル Ⅰ

4) Troyanova P: A beneficial effect of a short-term formal training course in epiluminescence microscopy on the diagnostic performance of dermatologists about cutaneous malignant melanoma, Skin Res Technol, 2003; 9: 269-273.(エビデンスレベルⅢ

5) Carli P, Giorgi V, Chiarugi A, et al: Addition of dermoscopy to conventional naked-eye examination in melanoma screening: A randomized study, J Am Acad Dermatol, 2004; 50: 683-689.(エビデンスレベルⅡ

6) Haenssle HA, Krueger U, Vente C, et al: Results from an observational trial: Digital epiluminescence microscopy follow-up of atypical nevi increases the sensitivity and the chance of success of conventional dermoscopy in detecting melanoma, J Invest Dermatol, 2006; 126: 980-985.(エビデンスレベルⅢ

7) Saida T, Miyazaki A, Oguchi S, et al: Significance of dermoscopic patterns in detecting malignant melanoma on acral volar skin: Results of a multi-center study in Japan, Arch Dermatol, 2004; 140: 1233-1238.(エビデンスレベルⅣ


CQ5

メラノーマの早期診断を目的とした血清腫瘍マーカー測定は勧められるか

推奨度

C2

メラノーマの早期診断を目的とした血清腫瘍マーカー測定は勧められない。

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■解説

メラノーマの血清腫瘍マーカーとしては,LDH,S100-β,melanoma inhibitory activity(MIA),neuron-specific enolase(NSE),メラニン代謝産物である5-S-cysteinyldopa(5-SCD)などが知られているが,これらは一般に進行期の患者血清でのみ異常値を示し,早期診断に有用であるとの報告はない1, 2)

本邦においては血清5-S-CD が外注検査(2013 年12 月現在保険適用外)として測定可能であるが,やはり早期には異常値を示さず,腎障害,L-dopa 内服,夏期,アガリクス摂取などで偽陽性となることがあるので結果の解釈には注意が必要である。

文献

1) Brochez L, Naeyaert JM: Serological markers for melanoma, Br J Dermatol, 2000; 143: 256-268.(エビデンスレベルI)

2) Mouawad R, Spano JP, Khayat D: Old and new serological biomarkers in melanoma: where we are in 2009, Melanoma Res, 2010; 20: 67-76.(エビデンスレベル VI)


CQ6

メラノーマ原発巣におけるtumor thickness の術前評価のため高周波エコーやMRI の実施は勧められるか

 

高周波エコー

推奨度

C1

高周波エコー(20〜100 MHz)はメラノーマのtumor thickness を比較的正確に予測できるため,その実施を考慮してもよい。

 

MRI

推奨度

C2

MRI ではtumor thickness の測定誤差が生じることがあるため,その実施は勧められない。

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■解説

機器を用いて術前にtumor thickness を評価することは,生検を行うことなしにT 分類を予測できる点で意義がある。

・高周波エコー

一般に20 MHz の高周波エコーを用いたtumor thickness の評価については,複数の前向きコホート研究およびシステマティック・レビューで,術前の高周波エコーでの測定値と実際の標本のtumor thickness との相関係数を算出し,相関係数が高値であったと報告されている1〜3)。しかし1 mm 以下のtumor thickness については,20 MHz エコーではその解像度から評価が困難であり実際の標本のtumor thickness との誤差が大きくなる。近年登場した75〜100 MHz の高周波エコーによる前向きコホート研究でその誤差はさらに小さくなると報告されているが4, 5),本邦では機器自体がまだ普及していない。

一般に高周波エコーの特性として,腫瘍部分が低エコー領域として描出され,その幅を画像上で測定するが,下床のリンパ球浸潤などの存在により過剰評価が生じ,逆に腫瘍がくさび状に侵入するような場合やプローブの過剰な圧力により過小評価が起こる1)。また,標本の切り出し面と同一の位置で測定されるとは限らないことから生じる誤差もある。標本処理に伴う問題もあり,皮膚病変を切除すると,in vivo で皮膚にかかっていた緊張が解除されて一旦,組織は厚くなるが,その後の標本作成過程で収縮が起こるので,最終的には両者の誤差はほぼ相殺されるとみなされている6)。また,周波数が高くなるほど描出力は高くなるが深部は観察しにくくなる。エコーの実施にあたっては上記の特性およびそのために生じる誤差につき十分考慮する必要があり,かつ検者の熟練も要すると考えられることから推奨度をC1 とした。

・MRI

MRI によるtumor thickness の評価については,2 mm 以下の薄い病変では描出の誤差が大きくなり,高周波エコーの方がMRI よりも描出力において勝っている7)。Tumor thickness が2 mm 以上でも,撮影条件による描出像の変化や組織切り出し面との不一致による誤差などが生じ得る8)。以上より,MRI は高周波数エコーに比べ薄い病変の描出力に劣るため推奨度をC2 とした。

文献

1) Hoffmann K, Jung J, el Gammal S, Altmeyer P: Malignant melanoma in 20-MHz B scan sonography, Dermatology, 1992; 185: 49-55.(エビデンスレベルⅣ

2) Lassau N, Lamuraglia M, Koscielny S, et al: Prognostic value of angiogenesis evaluated with high-frequency and colour Doppler sonography for preoperative assessment of primary cutaneous melanomas: correlation with recurrence after a five year follow-up period, Cancer Imaging, 2006; 6: 24-29.(エビデンスレベルⅣ

3) Machet L, Belot V, Naouri M, et al: Preoperative measurement of thickness of cutaneous melanoma using highresolution 20 MHz ultrasound imaging: A monocenter prospective study and systematic review of the literature, Ultrasound Med Biol, 2009; 35: 1411-1420.(エビデンスレベル Ⅰ

4) Guitera P, Li LX, Crotty K, et al: Melanoma histological Breslow thickness predicted by 75-MHz ultrasonography, Br J Dermatol, 2008; 159: 364-369.(エビデンスレベルⅣ

5) Gambichler T, Moussa G, Bahrenberg K, et al: Preoperative ultrasonic assessment of thin melanocytic skin lesions using a 100-MHz ultrasound transducer: a comparative study, Dermatol Surg, 2007; 33: 818-824.(エビデンスレベルⅣ

6) Salmhofer W, Rieger E, Soyer HP, et al: Influence of skin tention and formalin fixation on sonographic measurement of tumor thickness, J Am Acad Dermatol, 1996; 34: 34-39.(エビデンスレベルⅤ

7) Hayashi K, Koga H, Uhara H, Saida T: High-frequency 30-MHz sonography in preoperative assessment of tumor thickness of primary melanoma: usefulness in determination of surgical margin and indication for sentinel lymph node biopsy, Int J Clin Oncol, 2009; 14: 426-430.(エビデンスレベルⅣ

8) 八田尚人,坂井秀彰,高田 実ほか:悪性黒色腫の術前評価におけるMRI の有用性:原発巣の厚さの測定による病期の推定,日本皮膚科学会誌,1995 ; 105 : 1837-1843.(エビデンスレベルⅣ


CQ7

メラノーマの原発巣に部分生検(incisional biopsy)を行ってもよいか

推奨度

C1

全切除生検が困難な大きな病変では部分生検を行ってもよい。

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■解説

メラノーマ原発巣について,全切除生検(excisional biopsy)すると単純縫縮が不可能な大型病変の場合や,顔面や手掌・足底などの病変で単純縫縮が難しい場合などに,診断とtumor thickness 確定のため,部分生検を選択してよいか否かが問題になる。従来部分生検によりメラノーマ細胞が深部に押し込まれて,局所再発,リンパ節転移や遠隔転移の危険性が高まると考えられてきた。

Pflugfelder らによる9 編のシステマティック・レビューのうち,7 編(総症例数5,017 例,全切除生検群3,629 例,部分生検群1,365 例)において全切除生検群と部分生検群間に局所再発率,生存率に差はなかった1)。一方頭頸部原発症例を検討した後ろ向き症例対象研究1 編で,全切除生検群79 例,部分生検群48 例での多変量解析にて部分生検群の生存率が低下したとする報告2)があるが,母集団が少ない上に部分生検群の年齢が有意に高く(メラノーマの予後不良因子とされている),matched control study ではないことが指摘されている1)。近年の報告でもMolenkamp らの後ろ向き症例対象研究3),Martin らの前向きランダム化比較試験4),Bong らの後ろ向きケースコントロール研究5)はそれぞれ471 例,1,776 例,761 例と大規模症例による研究で,局所再発率,5 年生存率とも両群間に有意差がなかったと報告されている。

一方で部分生検の欠点として,組織診断の精度低下が挙げられる6, 7)。Tumor thickness で切除範囲およびセンチネルリンパ節生検の適応が決定する今日において,部分生検では腫瘍全体の組織構築を観察できずtumor thickness が低く見積もられて,拡大切除の範囲が不足したり,後日センチネルリンパ節生検が必要となるおそれもある。

全切除生検に関して,切除する範囲と予後との関係を検討した研究はないが,一般的には2 mm 程度の側方マージンとし,深部は皮下脂肪組織まで切除することが推奨されている。なお,全切除生検から拡大切除施行までの待機時間の長さの違いは生存率と再発率に影響しないと報告されている8)。また,全切除生検でtumor thickness を確認してから拡大切除を行う方が,一期的に根治的拡大手術を行うよりも生存率と再発率が優れていたという報告もある9)

以上より,部分生検は局所再発率,生存率に影響しないというエビデンスレベルは比較的高いため,行っても問題ないと考えられる。しかし病理診断時に腫瘍全体の組織構築が観察できる全切除生検の利点を考慮すると,全切除生検が困難な場合にのみ適応すべきと考えられるため,推奨度はC1 とした。

文献

1) Pflugfelder A, Weide B, Eigentler TK, et al: Incisional biopsy and melanoma prognosis: Fact and cotroversies, Clin Dermatol, 2010; 28: 316-318.(エビデンスレベル Ⅰ

2) Austin JR, Byers RM, Brown WD, et al: Influence of biopsy on the prognosis of cutaneous melanoma of the head and neck, Head Neck, 1996; 18: 107-117.(エビデンスレベルⅣ

3) Molenkamp BG, Sluijter BJ, Oosterhof B, et al: Non-radical diagnostic biopsies do not negatively influence melanoma patient survival, Ann Surg Oncol, 2007; 14: 1424-1430.(エビデンスレベルⅣ

4) Martin RC 2nd, Scoggins CR, Ross MI, et al: Is incisional biopsy of melanoma harmful? Am J Surg, 2005: 190: 913-917.(エビデンスレベルⅣ

5) Bong JL, Herd RM, Hunter JA: Incisional biopsy and melanoma prognosis, J Am Acad Dermatol, 2002; 46: 690-694.(エビデンスレベルⅣ

6) Pariser RJ, Divers A, Nassar A: The relationship between biopsy technique and uncertainty in the histopathologic diagnosis of melanoma, Dermatol Online J, 1999; 5: 4.(エビデンスレベルⅣ

7) Witheiler DD, Cockerell CJ: Sensitivity of diagnosis of malignant melanoma: a clinicopathologic study with a critical assessment of biopsy techniques, Exp Dermatol, 1992; 1: 170-175.(エビデンスレベルⅣ

8) McKenna DB, Lee RJ, Prescott RJ, et al: The time from diagnostic excision biopsy to wide local excision for primary cutaneous malignant melanoma may not affect patient survival, Br J Dermatol, 2002; 147: 48-54.(エビデンスレベルⅣ

9) McKenna DB, Lee RJ, Prescott RJ, et al: A retrospective observational study of primary cutaneous malignant melanoma patients treated with excision only compared with excision biopsy followed by wider local excision, Br J Dermatol, 2004; 150: 523-530.(エビデンスレベルⅣ


CQ8

メラノーマの転移巣検出のための術前画像検査は勧められるか

 

臨床病期0(in situ)

推奨度

C2

胸部X 線,超音波検査,CT,PET などを実施することは勧められない。

 

臨床病期 ⅠからⅡB

推奨度

C1

胸部X 線,超音波検査,CT,PET などを実施することを考慮してもよいが,一律に実施することは勧められない。

 

臨床病期ⅡC からⅢ

推奨度

B

胸部X 線,超音波検査,CT,PET などを所属リンパ節の位置と遠隔転移のリスクに応じて症例ごとに選択して実施することが勧められる。

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■解説

術前に画像検査を行う最大の目的は,治療方針の変更につながる潜在的な転移を検出することである。Tumor thickness が厚くなるに従い転移を生じる確率も上昇することから,画像検査による利益が偽陽性などの不利益を上回ると思われるtumor thickness 以上の病変に対してのみ画像検査を行うことが勧められる1)

胸部X 線検査は偽陽性が多く,真の肺転移が検出される確率は0.1%と報告されており,tumor thickness 4.0 mm 以下の患者に肺転移を検出するためのスクリーニング検査として行うことは推奨されない2)。超音波検査はメタアナリシスにおいて,触診よりもリンパ節転移の検出能が優れていることが示されている3)。触診と超音波検査を組み合わせるとPET(positron emission tomography)よりも臨床的リンパ節転移の検出率が高まるという報告もある4)

病期Ⅲのメラノーマ患者においてCT によって臨床症状のない潜在的な遠隔転移が見つかる確率は,センチネルリンパ節生検が陽性であった者では0.5〜3.7%5〜7),臨床的所属リンパ節腫脹のある患者では4.2〜15.7%である8〜10)。したがってCT を臨床病期 ⅠからⅢの患者全員にスクリーニング的に術前検査として行うことは,転移検出の感度と偽陽性の頻度からみて推奨されず,個々の症例ごとに転移のリスクに応じて検討する必要がある。PET は,センチネルリンパ節転移の検出力は低いが11),病期が進んだ症例における潜在的転移巣の検出能力では優れているのでCT では評価が難しい四肢を含めた全身の転移を検索するには有用である12)

臨床病期別に検討した場合,臨床病期0(in situ)の病変では所属リンパ節転移および無症状の遠隔転移を検出する目的で画像検査を行う必要はない。

臨床病期Ⅰ からⅡB のメラノーマ患者で,画像検査で描出されるような所属リンパ節転移または遠隔転移が見つかる確率は低く,臨床的に転移を示唆する所見が無い症例に対して一律に画像検査を行う必要はない。所属リンパ節転移の検出を試みる場合は超音波検査が勧められる。

臨床病期ⅡC からⅢのメラノーマ患者では,症例ごとに所属リンパ節の位置と遠隔転移のリスクに応じた全身画像検査計画をたてることが勧められる。

なお,欧米では生検でtumor thickness を確認して臨床病期に応じた画像検査を検討するが,日本では足底・爪部の病変が多いため,tumor thickness を予想して原発部位切除前に画像検査を行うことが多く,結果的に過剰な術前画像検査になる傾向がある。

一般的に画像検査へのアクセスがよい日本では,個々の患者の基礎疾患評価も兼ねて欧米のガイドラインの内容を超える画像検査が行われているが,これまで日本人患者について画像検査における偽陽性の問題や医療経済的観点から検討を行った報告はない。

文献

1) Yancovitz M, Finelt N, Warycha MA, et al: Role of radiologic imaging at the time of initial diagnosis of stage T1b-T3b melanoma, Cancer, 2007; 110: 1107-1114.(エビデンスレベルⅣ

2) Terhune MH, Swanson N, Johnson TM: Use of chest radiography in the initial evaluation of patients with localized melanoma, Arch Dermatol, 1998; 134: 569-572.(エビデンスレベルⅣ

3) Bafounta ML, Beauchet A, Chagnon S, et al: Ultrasonography or palpation for detection of melanoma nodal invasion: a meta-analysis, Lancet Oncol, 2004; 5: 673-680.(エビデンスレベル Ⅰ

4) Hafner J, Schmid MH, Kempf W, et al: Baseline staging in cutaneous malignant melanoma, Br J Dermatol, 2004; 150: 677-686.(エビデンスレベルⅣ

5) Aloia TA, Gershenwald JE, Andtbacka RH, et al: Utility of computed tomography and magnetic resonance imaging staging before completion lymphadenectomy in patients with sentinel lymph node-positive melanoma, J Clin Oncol, 2006; 24: 2858-2865.(エビデンスレベルⅣ

6) Gold JS, Jaques DP, Busam KJ, et al: Yield and predictors of radiologic studies for identifying distant metastases in melanoma patients with a positive sentinel lymph node biopsy, Ann Surg Oncol, 2007; 14: 2133-2140.(エビデンスレベルⅣ

7) Miranda EP, Gertner M, Wall J, et al: Routine imaging of asymptomatic melanoma patients with metastasis to sentinel lymph nodes rarely identifies systemic disease, Arch Surg, 2004; 139: 831-836.(エビデンスレベルⅣ

8) Kuvshinoff BW, Kurtz C, Coit DG: Computed tomography in evaluation of patients with stage Ⅲ melanoma, Ann Surg Oncol, 1997; 4: 252-258.(エビデンスレベルⅣ

9) Buzaid AC, Tinoco L, Ross MI, et al: Role of computed tomography in the staging of patients with local-regional metastases of melanoma, J Clin Oncol, 1995; 13: 2104-2108.(エビデンスレベルⅣ

10) Johnson TM, Fader DJ, Chang AE, et al: Computed tomography in staging of patients with melanoma metastatic to the regional nodes, Ann Surg Oncol, 1997; 4: 396-402.(エビデンスレベルⅣ

11) Jiménez-Requena F, Delgado-Bolton RC, Fernández-Pérez C, et al: Meta-analysis of the performance of(18)F-FDG PET in cutaneous melanoma, Eur J Nucl Med Mol Imaging, 2010; 37: 284-300.(エビデンスレベル Ⅰ

12) Bastiaannet E, Oyen WJ, Meijer S, et al: Impact of[18F] fluorodeoxyglucose positron emission tomography on surgical management of melanoma patients, Br J Surg, 2006; 93: 243-249.(エビデンスレベルⅣ


CQ9

メラノーマの原発巣は,肉眼的な病巣辺縁から何cm 離して切除することが勧められるか

 

In situ 病変

推奨度

C1

メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は3〜5 mm が考慮される。

 

Tumor thickness ≦ 1 mm

推奨度

A

メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は1 cm が強く勧められる。

 

Tumor thickness 1.01〜2.0 mm

推奨度

A

メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は1〜2 cm が強く勧められる。

 

Tumor thickness 2.01 〜 4.0 mm

推奨度

A

メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は2 cm が強く勧められる。

 

Tumor thickness > 4.0 mm

推奨度

B

メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は2 cm が勧められる。

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■解説

メラノーマの原発巣に対する標準的かつ信頼性の高い治療は広範囲の切除である。この広範囲切除により局所再発の減少や生存率の改善などが期待されるが,他方,切除後の再建には植皮や皮弁による再建が必要となることもあり,機能的あるいは整容的な問題や術後合併症が増加する可能性が高まる。これまで適切な切除マージンを決定するために,さまざまな設定で症例対照研究やランダム化比較試験が行われてきた。

2002 年のメタアナリシスにおいて,1〜2 cm マージンと3〜5 cm マージンでの切除が比較され,5 年生存率および5 年無病生存率に有意差のないことが示された1)。別のメタアナリシスでは,原発巣の最大切除マージンは2 cm を超えないことが望ましく,2 cm と1 cm を比較したランダム化比較試験は行われていないので,切除マージンは2 cm が望ましいと結論付けている2)。National Intergroup Trial では,tumor thickness が1.0 〜 4.0 mm の468 例を無作為に2 cm と4 cm マージンに割り付け,経過観察期間の中央値が10 年の結果,局所再発,無病生存,全生存において両者に差がないことを報告した3)。Tumor thickness が2 mm 以下の症例では,切除マージンと生存率の間に相関関係はなく,原発巣の切除マージンを1 cm 以上とすれば,局所再発率にも影響のないことが示された4)。Tumor thickness が4.0 mm を超える症例に限った前向きのランダム化比較試験は行われておらず,2 cm マージンが適当であるというコホート研究があるのみである5)。In situ 病変についても,前向きのランダム化比較試験は行われていないが,3 mm マージンと3 mm を超えるマージンでの比較において局所再発率に有意差がないことが報告されており,3 mm マージンでの切除が推奨される6)。しかし,顔面のin situ 病変で最大径が2 cm 以上の場合は5 mm 以上のマージンでも再発することがある6)

以上より,①in situ 病変の切除マージンは3〜5 mm(顔面で最大径が2 cm 以上の病変は5 mm 以上),②tumor thickness が1 mm 以下の病変では1 cm,③tumor thickness が1〜2mm では1〜2 cm,④tumor thickness が2〜4 mm では2 cm,⑤tumor thickness が4 mm を超える病変に関して2 cm が推奨される。ただし,切除マージンは,個々の症例の解剖学的位置や整容面も考慮する。解剖学的に2 cm マージンの確保が困難な場合もあり,1〜2 cm の範囲でも許容される。In situ 病変では上記のように切除が標準的治療と考えられるが,術後合併症や整容面を考慮して全切除が困難な場合,最近では治療のオプションとしてイミキモド外用も報告されている。しかし現時点では長期経過における再発の有無が明らかになっていないため手術に代わる治療法として推奨はされない7)

なお深部の切除断端は,侵入の深さに応じて決定する。侵入が真皮内までの病変は皮下脂肪組織全層を含めて切除する。下床の筋膜を付けて切除すると予後が改善するというデータはない8, 9)

文献

1) Lens MB, Dawes M, Goodacre T, et al: Excision margins in the treatment of primary cutaneous melanoma: a systematic review of randomized controlled trials comparing narrow vs wide excision, Archives of Surgery, 2002; 137: 1101-1105.(エビデンスレベル Ⅰ

2) Haigh PI, DiFronzo LA, McCready DR: Optimal excision margins for primary cutaneous melanoma: a systematic review and meta-analysis, Can J Surg, 2003; 46: 419-426.(エビデンスレベル Ⅰ

3) Balch CM, Soong SJ, Smith T, et al: Long-term results of a prospective surgical trial comparing 2 cm vs. 4 cm excision margins for 740 patients with 1-4 mm melanomas, Ann Surg Oncol, 2001; 8: 101-108.(エビデンスレベルⅡ

4) McKinnon JG, Starritt EC, Scolyer RA, et al: Histopathologic excision margin affects local recurrence rate: analysis of 2681 patients with melanomas < or = 2 mm thick, Ann Surg, 2005; 241: 326-333.(エビデンスレベルⅣ

5) Heaton KM, Sussman JJ, Gershenwald JE, et al: Surgical margins and prognostic factors in patients with thick(> 4 mm) primary melanoma, Ann Surg Oncol, 1998; 5: 322-328.(エビデンスレベルⅣ

6) Bartoli C, Bono A, Clemente C, et al: Clinical diagnosis and therapy of cutaneous melanoma in situ, Cancer, 1996; 77: 888-892.(エビデンスレベルⅣ

7) Cotter MA, McKenna JK, Bowen GM: Treatment of lentigo maligna with imiquimod before staged excision, Dermatol Surg, 2008: 34: 147-151.(エビデンスレベルⅣ

8) Kenady DE, Brown BW, McBride CM: Excision of underlying fascia with a primary malignant melanoma: effect on recurrence and survival rates, Surgery, 1982; 92: 615-618.(エビデンスレベルⅣ

9) Sondergaard K, Schou G: Therapeutic and clinico-pathological factors in the survival of 1,469 patients with primary cutaneous malignant melanoma in clinical stage I. A multivariate regression analysis, Virchows Arch A Pathol Anat Histopathol, 1985; 408: 249-258.(エビデンスレベルⅣ


CQ10

肉眼的(臨床的)リンパ節転移がなくかつ遠隔転移のないメラノーマに対して,センチネルリンパ節生検(sentinel lymph node biopsy; SLNB)は勧められるか

 

Tumor thickness ≦ 0.75 mm

推奨度

C2

SLNB を行うことは勧められない。

 

Tumor thickness 0.76〜1.0 mm

推奨度

C1

厚さ0.76 mm 以上ではSLNB を考慮してよい。特に潰瘍がある場合,年齢が40 歳以下,生検組織の深部断端が陽性,リンパ管浸潤を認める場合,Clark レベルⅣ以上,あるいは1個/mm2 以上の核分裂像のいずれかがさらにあればSLNB を考慮する。

 

Tumor thickness 1.01〜4.0 mm

推奨度

B

SLNB によりセンチネルリンパ節(sentinel lymph node;SLN)の顕微鏡的転移を早期に発見し,そのリンパ節領域を郭清することによりリンパ節転移のある患者の予後が改善されることから,SLNB を行うことが勧められる。

 

Tumor thickness > 4.0 mm

推奨度

C1

SLNB を行う意義は明確になっていないが,世界的にも多くの施設で行われている現状から,現時点ではSLNB を考慮してよい。

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■解説
1)SLNB の意義

SLNB は,肉眼的(臨床的)リンパ節転移のないメラノーマにおいて,予防的リンパ節郭清に比べより低侵襲であり,現在では病期決定においてほぼ必須な技法である。またSLN の転移の有無が生存に影響を及ぼす重要な因子である。色素法にシンチグラフィーとガンマプローブを併用することによりSLN の同定率は93〜99.5%と非常に高い1)。ただし,SLNB を安全,正確に行うためにはラーニングカーブがあるとされ,特に頭頸部領域では手技が難しいため,十分な経験を積んだ施設,術者によって行われるべきであろう。

SLN の顕微鏡的転移陽性率は原発腫瘍の厚さに比例して上昇する。MD Anderson Cancer Center のデータによれば,SLN の転移陽性率は,原発腫瘍の厚さが1.5 mm 以下で4.8%,1.5 〜 4 mm で19.2%,4 mm を超える場合で34.4%であった2)。宇原らによる本邦の多施設共同研究では,thickness とSLN の転移率は,T1:11.3 %,T2:21.0 %,T3:34.0 %,T4:62.4%であり,in situ では転移は認められず,局所進行例では高率に転移がみられている3)

2)tumor thickness ≦ 1.0 mm のメラノーマに対するSLNB

Tumor thickness が1.0 mm 以下のメラノーマでは,欧米のデータによるとSLN の転移陽性率は2〜5%程度であり,本邦では11.3%であった3)。Wright らは,631 例を解析し,SLN に転移なしと転移ありでは10 年メラノーマ特異的生存率に有意差を認め(98% vs 83%,p < .001),この層においてもSLN の転移が重要な予後因子であるとしている4)。SLN 転移に関わる因子として,いくつかのコホート研究より5〜7),厚さ0.75 mm 以上,Clark レベルIV 以上,潰瘍が存在する場合,浸潤部位の核分裂が1 個/mm2 以上,生検組織像の深部断端陽性,リンパ管浸潤などが考えられ,これらの所見がある場合はSNB を考慮してよいと考える。

3)tumor thickness が1.01 〜 4.0 mm のメラノーマに対するSLNB

中間層の厚さのメラノーマについて,SLNB が生存率を改善するかどうかを検討するために,欧米の主要なメラノーマ治療施設にてランダム化比較試験(Multicenter Selective Lymphadenectomy Trial-I:MSLT-I)が行われた。この試験では原発腫瘍の厚さが1.2〜3.5 mm の1,269 例を,SLNB 施行769 例と原発巣切除のみ(術後の定期的観察でリンパ節転移が出現した時点で郭清)500 例の2 群に振り分けた。その中間解析の結果,5 年無病生存率は前者が78.3 ± 1.3%,後者が73.1 ± 2.1%でSLNB 群が有意に優れていた(p = 0.009,死亡危険率:0.74)。SLN の転移陽性率は16.0%,経過観察群のリンパ節再発率は15.6%でほぼ同等であった。所属リンパ節における転移陽性リンパ節の平均個数は,SLNB 群で1.4 個,観察群で3.3 個で有意に後者が高く(p < 0.001),観察期間中におけるリンパ節転移の進行が示唆された。転移陽性例の5 年生存率はSLNB 群が72.3 ± 4.6%,観察群が52.4 ± 5.9%で前者が有意に優れていた(p = 0.004,死亡HR:0.51)8)。この成績は中間層の厚さのメラノーマにおいてSLNB とその結果に基づく直後の所属リンパ節郭清が予後の改善に繋がることを示唆している。最終結果がまだ出ていないためSLNB の生存に対するインパクトは明らかにはなっていないが,病期決定とSLN の転移の有無が重要な予後因子であることから,遠隔転移のない中間層の厚さのメラノーマに対してSLNB を行うことが推奨される。

4)tumor thickness > 4 mm のメラノーマに対するSLNB

Tumor thickness が4 mm 超のメラノーマでは,すでに潜在的転移をきたしている可能性が高いと考えられる一方で,SLN に転移がない症例は転移例に比べて予後良好とする報告があり9, 10)。有効性については結論がでていない。しかし,世界的にも多くの施設で行われている現状も鑑み,現時点では研究的にSLNB が考慮されてもよい。

文献

1) Kapteijn BA, Nieweg OE, Liem I, et al: Localizing the sentinel node in cutaneous melanoma: gamma probe detection versus blue dye, Ann Surg Oncol, 1997; 4: 156-160.(エビデンスレベルⅣ

2) Gershenwald JE, Thompson W, Mansfield PF, et al: Multiinstitutional melanoma lymphatic mapping experience: the prognostic value of sentinel lymph node status in 612 stage Ⅰ or Ⅱ melanoma patients, J Clin Oncol, 1999; 17: 976-983.(エビデンスレベルⅣ

3) 宇原 久,山本明史,清原祥夫ほか:メラノーマの原発巣の厚さとセンチネルリンパ節の転移率についての検討,日皮会誌,2008 ; 118 : 3083-3088.(エビデンスレベルⅣ

4) Wright BE, Scheri RP, Ye X, et al: Importance of sentinel lymph node biopsy in patients with thin melanoma, Arch Surg, 2008; 143: 892-899; discussion 899-900.(エビデンスレベルⅣ

5) Bleicher RJ, Essner R, Foshag LJ, et al Role of sentinel lymphadenectomy in thin invasive cutaneous melanomas, J Clin Oncol, 2003; 21: 1326-1331.(エビデンスレベルⅣ

6) Ranieri JM, Wagner JD, Wenck S, et al: The prognostic importance of sentinel lymph node biopsy in thin mela noma, Ann Surg Oncol, 2006; 13: 927-932.(エビデンスレベルⅣ

7) Wong SL, Brady MS, Busam KJ, Coit DG: Results of sentinel lymph node biopsy in patients with thin melanoma, Ann Surg Oncol, 2006; 13: 302-309.(エビデンスレベルⅣ

8) Morton DL, Thompson JF, Cochran AJ, et al: Sentinel-node biopsy or nodal observation in melanoma, N Engl J Med, 2006; 355: 1307-1317.(エビデンスレベルⅡ

9) Gershenwald JE, Mansfield PF, Lee JE, Ross MI: Role for lymphatic mapping and sentinel lymph node biopsy in patients with thick(>or=4 mm) primary melanoma, Ann Surg Oncol, 2000; 7: 160-165.(エビデンスレベルⅣ

10) Ferrone CR, Panageas KS, Busam K, et al: Multivariate prognostic model for patients with thick cutaneous melanoma: importance of sentinel lymph node status, Ann Surg Oncol, 2002; 9: 637-645.(エビデンスレベルⅣ


CQ11

メラノーマの所属リンパ節転移に対してリンパ節郭清術を行うことは勧められるか

 

肉眼的(臨床的)リンパ節転移を認めるメラノーマ

推奨度

B

リンパ節郭清術を行うことが勧められる。

 

センチネルリンパ節(sentinel lymph node;SLN)転移陽性のメラノーマ

推奨度

C1

リンパ節郭清術を行うことを考慮する。

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■解説
1)肉眼的(臨床的)リンパ節転移症例に対する根治的リンパ節郭清術

所属リンパ節に腫脹が認められる場合あるいは画像検査にてリンパ節転移が疑われる場合(肉眼的あるいは臨床的リンパ節転移)で,組織学的にメラノーマの転移が確認され他に遠隔転移の所見が認められない場合には,腫脹したリンパ節とその周囲の所属リンパ節を切除する根治的リンパ節郭清術を行うことが推奨される。Karakousis1)のレビューによれば,根治的リンパ節郭清術後の5 年生存率は19〜38%,平均26%であり,組織学的に転移陽性のリンパ節の数,リンパ節の被膜外浸潤の有無が予後を規定する最も重要な因子であった。また根治的リンパ節郭清術後の所属リンパ節局所再発率は0.8〜52%であった。このように所属リンパ節局所再発を生じるグループがある一方,根治的リンパ節郭清術を行うことにより良好な予後が得られるグループもあることが示されている。根治的リンパ節郭清術施行患者における予後不良因子として,高齢,体幹または頭頸部の原発,3 個より多くのリンパ節転移,リンパ節の被膜外浸潤などが同定されている2, 3)

以上のように所属リンパ節転移に対する根治的リンパ節郭清術によって約1/3 の患者の生存に 寄与できる可能性があり他に有効な治療法が示されていない現状では,全身状態の許す患者におい て根治的リンパ節郭清術を考慮すべきといえる。

2)SLN 転移症例に対するリンパ節郭清術と予防的リンパ節郭清術

SLN 転移が認められる場合(顕微鏡的リンパ節転移),SLN 以外のリンパ節(non-SLN)に組織学的リンパ節転移を認める割合は海外のデータでは15〜20%4, 5)本邦の研究では約25%であることから6),残りの所属リンパ節に対してリンパ節郭清術を行うことを考慮する。約25%というnon-SLN 転移率から考えて残りの約75%の患者でリンパ節郭清を省略できる可能性もあるが,どのような症例に省略可能かが明らかにされていないため,現時点ではリンパ節郭清を省略可能とする根拠にはならない。現在,SLN の組織学的あるいは分子生物学的転移(RT-PCR 陽性)例に対して,リンパ節郭清を行う群と経過観察群に分けるランダム化比較試験(Multicenter Selective Lymphadenectomy Trial-Ⅱ:MSLT-Ⅱ)が行われており,その結果が待たれる。

なおセンチネルリンパ節生検(sentinel lymph node biopsy;SLNB)が普及した現在,臨床的リンパ節転移を認めないメラノーマに対してかつて行われていた予防的リンパ節郭清術(SLNBを行わずにリンパ節郭清術を行うこと)は,その有用性を支持する根拠に乏しく7)現在では勧められない。

3)リンパ節郭清範囲

リンパ節郭清術の際の郭清範囲に関して,鼠径部では,臨床的(CT やPET の所見も含める)骨盤内リンパ節転移が認められた場合,鼠径部に肉眼的リンパ節転移が認められた場合,鼠径部に4 個以上の組織学的リンパ節転移が認められた場合に,鼠径リンパ節郭清に加え,骨盤内リンパ節郭清術(一般的には外腸骨リンパ節と閉鎖リンパ節)も考慮する8)。Cloquet リンパ節の転移を指標とするべき明確な根拠は現時点ではない。膝窩リンパ節転移を認めた場合は膝窩リンパ節郭清術も行う。腋窩リンパ節郭清術については,通常レベル ⅠからⅢまでの範囲を行うが,症例により小胸筋の切除,鎖骨上窩リンパ節の郭清も考慮する。頸部については,全頸部郭清術(根治的頸部郭清術,根治的頸部郭清術変法,機能的頸部郭清術)あるいは選択的頸部郭清術を行う。症例や原発巣の部位により,浅頸リンパ節(浅頸静脈リンパ節,外頸静脈リンパ節),耳下腺リンパ節(耳介前リンパ節,耳下腺内リンパ節,耳介下リンパ節),耳下腺浅葉切除,頬リンパ節,耳介後リンパ節,後頭リンパ節の郭清も考慮する。

SLN 転移(顕微鏡的転移)の場合のリンパ節郭清範囲については,現時点ではおよそ上記に準じるが,どのような転移状況でどの範囲をまでを郭清すべきかに関してはまだ議論されている段階である。

4)リンパ節郭清術の合併症

リンパ節郭清術後の合併症は約1/3 の患者で起こるといわれる。そのほとんどが治療を要さないものであるが,腋窩や鼠径リンパ節郭清術後には,治療を要する,あるいは日常生活に支障が出るような重度の四肢のリンパ浮腫が5〜10%に認められるので,十分な術前インフォームドコンセントと,術後の圧迫やリンパマッサージなどの予防や対処法の指導が必要である。

文献

1) Karakousis CP: Therapeutic node dissections in malignant melanoma, Ann Surg Oncol, 1998; 5: 473-482.(エビデンスレベル Ⅰ

2) Pidhorecky I, Lee RJ, Proulx G, et al: Risk factors for nodal recurrence after lymphadenectomy for melanoma, Ann Surg Oncol, 2001; 8: 109-115.(エビデンスレベルⅣ

3) Meyer T, Merkel S, Gohl J, et al : Lymph node dissection for clinically evident lymph node metastases of malignant melanoma, Eur J Surg Oncol, 2002; 28: 424-430.(エビデンスレベルⅣ

4) Cascinelli N, Bombardieri E, Bufalino R, et al: Sentinel and nonsentinel node status in stage ⅠB and Ⅱ melanoma patients: two-step prognostic indicators of survival, J Clin Oncol, 2006; 24: 4464-4471.(エビデンスレベルⅣ

5) Lee JH, Essner R, Torisu-Itakura H, et al: Factors predictive of tumor-positive nonsentinel lymph nodes after tumor-positive sentinel lymph node dissection for melanoma, J Clin Oncol, 2004: 22: 3677-3684.(エビデンスレベルⅣ

6) 清原祥夫,吉川周佐,藤原規広ほか:皮膚悪性腫瘍におけるSentinel Node Navigation Surgery,癌と化療,2005 ; 32 : 1191-1194.(エビデンスレベルⅣ

7) Lens MB, Dawes M, Goodacre T, Newton-Bishop JA: Elective lymph node dissection in patients with melanoma: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials, Arch Surg, 2002; 137: 458-461.(エビデンスレベル Ⅰ

8) Coit DG, Brennan MF: Extent of lymph node dissection in melanoma of the trunk or lower extremity, Arch Surg, 1989; 124: 162-166.(エビデンスレベルⅣ


CQ12

メラノーマのin-transit 転移に対してどのような治療が勧められるか

 

外科的切除

推奨度

C1

完全切除可能な単発あるいは数個のin-transit 転移は外科的切除を考慮してもよい。

 

インターフェロンβ局注

推奨度

C1

インターフェロンβ局注療法を単独あるいは他治療と併用して行うことは考慮してもよい。

 

温熱四肢灌流isolated limb perfusion(ILP)あるいはisolated limb infusion(ILI)

推奨度

C1

四肢のin-transit 転移に対するILP とILI はその有効性に関する海外からの報告があり本治療を行うことを考慮してもよい。ただし現時点で国内で施行可能な施設はない(2013 年12 月現在保険適用外)。

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■解説

メラノーマにおけるin-transit 転移の頻度は,全体の5〜10%といわれ,年齢が50 歳以上,T3 以上,潰瘍の存在,原発が下肢であること,リンパ節転移がリスクファクターとされる。特にリンパ節転移症例については,センチネルリンパ節転移症例では約10%,臨床的リンパ節転移の場合約20%でin-transit 転移が生じるとされる。In-transit 転移症例の予後について,5 年生存率は18〜25%とされるが,遠隔転移がなく積極的な治療が行えれば30〜40%で長期生存が得られる可能性もある。

In-transit 転移に対して有効な治療がない現状において,単発あるいは数個のin-transit 転移であればまずは外科的切除を考慮する。この際切除マージンを広くとる意義は乏しく完全切除できればよい。切除検体の病理検査で断端陽性となり再切除が困難な場合には放射線治療も考慮する1)。施設によって予防的あるいは根治的に原発巣から所属リンパ節領域までのリンパ流を考慮した連続的な組織郭清術であるsubtotal integumentectomy も行われることがあるが2, 3),その有用性については明確ではない。しかし現状では第一選択は外科的切除であるので,適応を十分検討した上で本法を行うことは考慮してもよい。

In-transit 転移に対するインターフェロンβ局注療法については,有効性を示した文献はないが,わが国ではメラノーマに対して保険診療として使用可能な数少ない薬物であり,保険認可時の臨床試験においてメラノーマ皮膚転移に対する奏効率は50%であり4),現在でも実地医療としてすでに多くの施設で行われている現状を鑑み,インターフェロンβ局注療法を単独,あるいは他治療と併用して行うことは考慮してもよい。

急速に増大する場合または多発する四肢のin-transit 転移には,薬物を使用した四肢温熱灌流を行う方法もある。直接患側四肢の動静脈へカニュレーションを行い,体外循環装置に接続し灌流するisolated limb perfusion(ILP)とILP に比べて侵襲が少ないisolated limb infusion(ILI)がある。ILP は人工心肺装置を使用しなければならず,侵襲の大きな方法であるが,海外からはその有効性についてシステマティック・レビューが報告されている5)。後者のILI は特に下肢に対して対側(健側)の大腿動静脈よりカテーテルを入れてポンピングで灌流する方法であり,ILP に比べ低侵襲かつ主にmelphalan を用いることにより奏効率90%以上(完全奏効率60〜70%)という高い局所制御率が報告されている6)。しかし本邦ではこれらの治療はこれまでほとんど行われていない。その他放射線治療やイミキモド,CO2 レーザー治療,全身化学療法なども治療の選択肢として報告されているが現時点で評価は困難である。

文献

1) Hayes AJ, Clark MA, Harries M, Thomas JM: Management of in-transit metastases from cutaneous malignant melanoma, Br J Surg, 2004; 91: 673-682.(エビデンスレベルⅣ

2) 加口敦士,石原 剛,増口信一ほか:Subtotal integumentectomy を行った悪性黒色腫19 例, Skin Cancer, 2006 ; 21 : 53-57.(エビデンスレベルⅤ

3) 藤澤康弘,中村泰大,石塚洋典ほか:Subtotal integumentectomy を施行したin-transit 転移を有する悪性黒色腫の4 例, Skin Cancer, 2009 ; 24 : 272-277.(エビデンスレベルⅤ

4) 石原和之:Human Fibroblast Interferon(HuIFN- β)による皮膚悪性腫瘍に対する臨床研究,日本癌治療学会,1983 ; 18 : 41-53.(エビデンスレベルⅣ

5) Lens MB, Dawes M: Isolated limb perfusion with melphalan in the treatment of malignant melanoma of the extremities: a systematic review of randomised controlled trials, Lancet Oncol, 2003; 4: 359-364..(エビデンスレベル Ⅰ

6) Thompson JF, Kam PC: Isolated limb infusion for melanoma: a simple but effective alternative to isolated limb perfusion, J Surg Oncol, 2004; 88: 1-3.(エビデンスレベルⅣ


CQ13

メラノーマの所属リンパ節郭清後に術後放射線療法を行うことは勧められるか

推奨度

C1

所属リンパ節郭清後の放射線療法を一律に行うことは推奨されないが,不完全切除例などでは術後放射線療法を行うことを考慮してもよい。

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■解説

複数のランダム化比較試験において予防的所属リンパ節郭清は生命予後改善につながらないことが示されているが,臨床的リンパ節転移例においては郭清術を含む根治的手術を行うことでおよそ1/3 の症例で長期生存が得られることが示されている。制御不能のリンパ節再発は出血,感染,疼痛,四肢の浮腫などを伴い生活の質を低下させるため,再発の危険性が高い症例においては所属リンパ節領域に対する積極的な介入が検討されている1〜3)

所属リンパ節郭清術後の同部位からの再発危険因子としては被膜外浸潤,多発リンパ節転移,大きなリンパ節転移(3 cm 以上),頸部リンパ節転移,耳下腺浸潤,再発例,センチネルリンパ節生検陽性で十分な郭清が施行されなかった症例などが挙げられる1〜6)。術後照射の意義を検討した複数の後ろ向き研究と二つの第Ⅱ相試験で再発率の低下と安全性に関する報告がなされている一方,術後照射が再発率低下につながらないとする報告もある1〜5, 7)。現在,これらの高リスク因子を有する症例全てに術後照射を行うべきかに関しての統一した見解はないが,十分な郭清が行えなかった症例,多発リンパ節転移や被膜外進展をきたした病期ⅢC の症例には郭清術後の放射線療法を検討すべきである。ただし,ランダム化比較試験で郭清術後の放射線療法が生存率の向上に寄与することが示されたことはなく,Trans Tasman Radiation Oncology Group;TROG 02.01 の結果が待たれる。

また,手術後の原発巣周囲からの再発の可能性が高い症例としては,神経向性の線維化型(desmoplastic neurotropic type),腫瘍の厚さが4 mm を超えるもの,リンパ節転移例,潰瘍や衛星病巣の存在,四肢遠位側や頭頸部原発,切除断端が不十分な症例(特に,lentigo maligna melanoma)などが挙げられ,術後照射を行うかは症例ごとに皮膚悪性腫瘍専門医と放射線治療医,病理医の慎重な議論の中で検討されるべきである。

術後照射のスケジュールに関しては,1 回線量を3 〜 4 Gy 以上に上げ分割回数を減らした寡分割照射法が優れているとする報告もあるが,一定の見解は得られていない2, 8)。これまでの報告では48 Gy/20 分割/4 週間,50 Gy/21 分割/4.2 週間,30 Gy/5〜6 分割/2.5〜3 週間など比較的1 回線量を高めた照射スケジュールが用いられてきたが,1 回線量を高めることで遅発性有害事象が増加する可能性があるため,照射部位や範囲を考慮して50〜60 Gy/25〜30 分割/5〜6 週間の通常照射法を行うことが勧められる9)

また,頭頸部原発例や会陰部原発例などで十分な切除断端が確保できないと判断される場合や高齢者で手術困難な場合などごく限られた状況においては根治的放射線療法が試みられることもある10, 11)

文献

1) O’Brien CJ, Coates AS, Petersen-Schaefer K, et al: Experience with 998 cutaneous melanomas of the head and neck over 30 years, Am J Surg, 1991; 162: 310-314.(エビデンスレベルⅣ

2) Ang KK, Peters LJ, Weber RS, et al: Postoperative radiotherapy for cutaneous melanoma of the head and neck region, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1994; 30: 795-798.(エビデンスレベルⅢ

3) Moncrieff MD, Martin R, O’Brien CJ, et al: Adjuvant postoperative radiotherapy to the cervical lymph nodes in cutaneous melanoma: is there any benefit for high-risk patients? Ann Surg Oncol, 2008; 15: 3022-3027.(エビデンスレベルⅣ

4) Temam S, Mamelle G, Marandas P, et al: Postoperative radiotherapy for primary mucosal melanoma of the head and neck, Cancer, 2005; 103: 313-319.(エビデンスレベルⅣ

5) Ballo MT, Bonnen MD, Garden AS, et al: Adjuvant irradiation for cervical lymph node metastases from melanoma, Cancer, 2003; 97: 1789-1796.(エビデンスレベルⅣ

6) Dummer R, Hauschild A, Guggenheim M, et al: Melanoma: ESMO Clinical Practice Guidelines for diagnosis, treatment and follow-up, Ann Oncol, 2010; 21(Suppl 5): v194-197.(エビデンスレベル Ⅰ

7) Burmeister BH, Mark Smithers B, Burmeister E, et al: A prospective Phase Ⅱ study of adjuvant postoperative radiation therapy following nodal surgery in malignant melanoma-Trans Tasman Radiation Oncology Group (TROG) Study 96.06, Radiother Oncol, 2006; 81: 136-142.(エビデンスレベルⅣ

8) Guadagnolo BA, Zagars GK: Adjuvant radiation therapy for high-risk nodal metastases from cutaneous melanoma, Lancet Oncol, 2009; 10: 409-416.(エビデンスレベル Ⅰ

9) Testori A, Rutkowski P, Marsden J, et al: Surgery and radiotherapy in the treatment of cutaneous melanoma, Ann Oncol, 2009; 20(Suppl 6): vi22-29.(エビデンスレベル Ⅰ

10) Krengli M, Masini L, Kaanders JH, et al: Radiotherapy in the treatment of mucosal melanoma of the upper aerodigestive tract: analysis of 74 cases. A Rare Cancer Network study, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2006; 65: 751-759.(エビデンスレベルⅣ

11) Garbe C, Peris K, Hauschild A, et al: Diagnosis and treatment of melanoma: European consensus-based interdisciplinary guideline, Eur J Cancer, 2010; 46: 270-283.(エビデンスレベル Ⅰ


CQ14

手術で完全切除が得られたメラノーマ患者に対して術後補助療法は勧められるか

推奨度

C1〜C2

生命予後の改善が証明された副作用に見合う術後補助療法は存在しないため,全患者に画一的に行うことは勧められない。本邦ではDAVFeron 療法やフェロン療法が頻用されてきたが,実施の根拠は乏しいため見込まれる有益性と副作用を十分説明した上で個々の患者毎に適応が決められるべきである。

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■解説

厚い原発巣やリンパ節転移を有する例では,適切な手術療法にもかかわらず半数近くに再発がみられることから,有効な術後補助療法の確立が望まれる。しかしながら,これまで化学療法1),インターフェロン2〜12),ワクチン療法13, 14)など数多くのがん薬物療法が再発予防目的に評価されてきたものの,いまだに有効で確実な術後補助療法は見出されていない。

欧米では,高用量のインターフェロンアルファ(IFN-α)が,経過観察群とのランダム化比較試験(RCT)で統計学的有意差をもって無再発生存期間(RFS)と全生存期間(OS)を延長したことから,米国FDA の承認を得ている2)。しかし,その後のRCT3, 4)やシステマティック・レビューでは軽微なOS の延長が示されたものの5),かなりの毒性を有することから広くは受け入れられていない。毒性を軽減した低用量IFN6〜9),中用量IFN1011),半減期の長いpegylated IFN12)などが検討され,pegylated IFN は2011 年3 月に米国FDA の承認を得たものの,これらはRFS を延長することはあってもOS の延長は証明されていない。現在cytotoxic T lymphocyte antigen-4(CTLA-4)に対するモノクローナル抗体製剤であるipilimumab,BRAF 阻害剤であるvemurafenib,BRAF 阻害剤のdabrafenib とMEK 阻害剤のtrametinib による併用療法,などの第Ⅲ相RCT が進行中であり結果が待たれる。

本邦では,DTIC/ACNU/VCR の3 者併用化学療法にインターフェロンβ(IFN-β)の術創部への局注を加えるDAVFeron 療法や,IFN-βの局注のみを行うフェロン療法がこれまで頻用されてきた。UICC(1997)病期Ⅲにおいて,DAV のみ投与された歴史対照に対しDAVFeron 療法群で5 年生存率の有意な改善がみられたことが実施の根拠であるが15),近年の後ろ向き研究では生命予後の有意な改善は示されず16〜18),RCT も行われていないため,今後も継続して行われるためには効果と安全性を客観的に評価したエビデンスの構築が望まれる。

以上よりメラノーマに対する術後補助療法として,ⅠA 期では適切な手術療法のみでほぼ治癒が得られるため経過観察が勧められ,その他の病期では生命予後の改善が確証された治療法は存在しないため経過観察もしくは臨床試験が勧められる。なお,推奨度は本委員会でも意見が分かれたためC1〜C2 とした。

文献

1) Veronesi U, Adamus J, Aubert C, et al: A randomized trial of adjuvant chemotherapy and immunotherapy in cutaneous melanoma, N Engl J Med, 1982; 307: 913-916.(エビデンスレベルⅡ

2) Kirkwood JM, Strawderman MH, Ernstoff MS, et al: Interferon alfa-2b adjuvant therapy of high-risk resected cutaneous melanoma: the Eastern Cooperative Oncology Group Trial EST 1684, J Clin Oncol, 1996; 14: 7-17.(エビデンスレベルⅡ

3) Kirkwood JM, Ibrahim JG, Sondak VK, et al: High- and low-dose interferon alfa-2b in high-risk melanoma: first analysis of intergroup trial E1690/S9111/C9190, J Clin Oncol, 2000; 18: 2444-2458.(エビデンスレベルⅡ

4) Kirkwood JM, Manola J, Ibrahim J, et al: A pooled analysis of eastern cooperative oncology group and intergroup trials of adjuvant high-dose interferon for melanoma, Clin Cancer Res, 2004; 10: 1670-1677.(エビデンスレベルⅡ

5) Mocellin S, Lens MB, Pasquali S, Chiarion Sileni V: Interferon alpha for the adjuvant treatment of cutaneous melanoma(Review), The Cochrane Library, 2013; Issue 6.(エビデンスレベル Ⅰ

6) Cascinelli N, Belli F, MacKie RM, et al: Effect of long-term adjuvant therapy with interferon alpha-2a in patients with regional node metastases from cutaneous melanoma: a randomised trial, Lancet, 2001; 358: 866-869.(エビデンスレベルⅡ

7) Grob JJ, Dreno B, de la Salmoniere P, et al: Randomised trial of interferon alpha-2a as adjuvant therapy in resected primary melanoma thicker than 1.5 mm without clinically detectable node metastases. French Cooperative Group on Melanoma, Lancet, 1998; 351: 1905-1910.(エビデンスレベルⅡ

8) Pehamberger H, Soyer HP, Steiner A, et al: Adjuvant interferon alfa-2a treatment in resected primary stage Ⅱ cutaneous melanoma. Austrian Malignant Melanoma Cooperative Group, J Clin Oncol, 1998; 16: 1425-1429.(エビデンスレベルⅡ

9) Hancock BW, Wheatley K, Harris S, et al: Adjuvant interferon in high-risk melanoma: the AIM HIGH Study-United Kingdom Coordinating Committee on Cancer Research randomized study of adjuvant low-dose extended-duration interferon Alfa-2a in high-risk resected malignant melanoma, J Clin Oncol, 2004; 22: 53-61.(エビデンスレベルⅡ

10) Eggermont AM, Suciu S, MacKie R, et al: Post-surgery adjuvant therapy with intermediate doses of interferon alfa 2b versus observation in patients with stage ⅡB/Ⅲ melanoma(EORTC 18952): randomised controlled trial, Lancet, 2005; 366: 1189-1196.(エビデンスレベルⅡ

11) Hansson J, Aamdal S, Bastholt L, et al: Two different durations of adjuvant therapy with intermediate-dose interferon alfa-2b in patients with high-risk melanoma(Nordic IFN trial): a randomised phase 3 trial, Lancet Oncol, 2011; 12: 144-152.(エビデンスレベルⅡ

12) Eggermont AM, Suciu S, Santinami M, et al: Adjuvant therapy with pegylated interferon alfa-2b versus observation alone in resected stage Ⅲ melanoma: final results of EORTC 18991, a randomised phase Ⅲ trial, Lancet, 2008; 372: 117-126.(エビデンスレベルⅡ

13) Sondak VK, Liu PY, Tuthill RJ, et al: Adjuvant immunotherapy of resected, intermediate-thickness, node-negative melanoma with an allogeneic tumor vaccine: overall results of a randomized trial of the Southwest Oncology Group, J Clin Oncol, 2002; 20: 2058-2066.(エビデンスレベルⅡ

14) Hersey P, Coates AS, McCarthy WH, et al: Adjuvant immunotherapy of patients with high-risk melanoma using vaccinia viral lysates of melanoma: results of a randomized trial, J Clin Oncol, 2002; 20: 4181-4190.(エビデンスレベルⅡ

15) Yamamoto A, Ishihara K: Clinical study of DAV + IFN-beta therapy(combination adjuvant therapy with intravenous DTIC, ACNU and VCR, and local injection of IFN-beta)for malignant melanoma, Int J Immunother, 1996; 12: 73-78.(エビデンスレベルⅢ

16) 藤澤康弘,大塚藤男:日本皮膚悪性腫瘍学会皮膚癌予後統計調査委員会悪性黒色腫全国追跡調査グループ:術後補助療法(DAVFeron,フェロン療法,フェロン維持療法)は悪性黒色腫ステージⅡ・Ⅲ患者の予後を改善するか 831 例の解析,日皮会誌,2012 ; 122 : 2305-2311.(エビデンスレベルⅣ

17) 並川健二郎, 堤田 新, 山崎直也:「術後補助療法(DAVFeron,フェロン療法,フェロン維持療法)は悪性黒色腫ステージⅡ・Ⅲ患者の予後を改善するか 831 例の解析」への質問,日皮会誌,2013 ; 123 : 155. (エビデンスレベルⅥ

18) Matsumoto T, Yokota K, Sawada M, et al: Postoperative DAV-IFN-beta therapy does not improve survival rates of stage Ⅱ and stage Ⅲ melanoma patients significantly, J Eur Acad Dermatol Venereol, 2013; 27: 1514-1520.(エビデンスレベルⅣ


CQ15

メラノーマの遠隔転移巣に対して外科的切除は勧められるか

推奨度

B

遠隔転移が単発で完全切除が可能な場合には,その転移巣の切除により患者の生存期間が延長する可能性がある。また,遠隔転移巣の切除が症状緩和に有益なことがあるので勧められる。

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■解説

遠隔転移を生じたメラノーマ患者の予後は極めて不良であり,転移臓器毎の生存期間中央値と5 年生存率はそれぞれ,皮膚・リンパ節・消化管:12.5 カ月,14%,肺:8.3 カ月,4%,肝・脳・骨:4.4 カ月,3%と報告されている1)。このような患者に対して,他に有効な治療法がない現在,遠隔転移の広がりが限定されていれば,QOL の改善と生存期間の延長をもたらす可能性があるため外科的切除を行うことがNCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインなどでも推奨されている。特に,皮膚,皮下組織,リンパ節,肺,脳,消化管,肝臓,副腎については個々の臓器種に限局した転移巣の切除効果が報告されている2〜17)。しかし転移巣が限局し切除が可能な患者は元々全身状態が良く,病勢の進行も緩徐であることも考えられる。

遠隔転移巣の切除によって臨床効果が期待できるのは,完全切除が可能な場合である2〜4)。臓器種ごとに差はあるが,所属リンパ節転移が先行しない遠隔転移であること,初回治療から転移巣の出現までの期間が長いこと,切除対象病巣の増大が緩徐であること,術前の血清LDH が低いことも予後良好因子とされる。他臓器に転移がないか,あるいは転移があっても進行性の動きがないこと,患者に手術に耐えられる予備能力があることなども考慮すべき条件である。したがって,遠隔転移巣が発見された場合,まず転移巣の動きや新生病巣の出現の有無について数週間程度観察し,その間にCT,MRI,PET などの画像検査で他臓器転移の有無を検索するか,化学療法等の治療を行い病変の変化を確認し,手術の適応を決定する。他方,症状緩和を目的とする場合や,切除が容易な部位(皮膚,皮下組織,リンパ節など)については,他臓器転移や複数の転移巣が存在しても切除することがある。

臓器別では,皮膚・皮下組織・リンパ節転移については,他臓器に転移がなければ外科切除が最も迅速で有効な治療法となり,5 年生存率は皮膚・皮下組織転移で33%,遠隔リンパ節転移で22%というデータがある。切除の際は,なるべく狭い切除マージンで完全に摘出する5)。肺転移については,上述の予後良好因子を持つ症例を対象に完全切除を行えた場合,生存期間中央値が30カ月で,5 年生存率20.7〜29%と報告されている6〜8)。本邦においても遠隔転移部位が肺のみで,完全切除が可能である症例においては,転移巣の数が4 個未満で,転移が出現するまでの無病期間が12 カ月以上であれば,両側の肺転移に対しても積極的に手術を施行すべきとの報告がある9)。よって完全切除が可能な肺転移巣は化学療法よりも外科的切除を選択することが考慮される。脳転移については,単発で術前の神経学的な症状がなく,完全切除可能なことが予後因子となるというデータがあり,脳転移切除により約80%で症状緩和効果が得られる10, 11)。症状緩和を目的とする場合は放射線療法(定位照射)と比較し,慎重に適応を決める。消化器転移については,他に転移がない等の条件が揃った患者に完全切除が行えれば,生存期間中央値14.9〜48.9 カ月,5 年生存率18〜28.3%と報告されている12〜14)

以上解説で引用した文献はすべてエビデンスレベルⅣだが,信頼できる多数の研究が集積されているので推奨度をB とした。

文献

1) Barth A, Wanek LA, Morton DL: Prognostic factors in 1,521 melanoma patients with distant metastases, J Am Coll Surg, 1995; 181: 193-201.(エビデンスレベルⅣ

2) Essner R, Lee JH, Wanek LA, et al: Contemporary surgical treatment of advanced-stage melanoma, Arch Surg, 2004; 139: 961-966, discussion 6-7.(エビデンスレベルⅣ

3) Fletcher WS, Pommier RF, Lum S, et al: Surgical treatment of metastatic melanoma, Am J Surg, 1998; 175: 413-417.(エビデンスレベルⅣ

4) Meyer T, Merkel S, Goehl J, et al: Surgical therapy for distant metastases of malignant melanoma, Cancer, 2000; 89: 1983-1991.(エビデンスレベルⅣ

5) Karakousis CP, Velez A, Driscoll DL, et al: Metastasectomy in malignant melanoma, Surgery, 1994; 115: 295-302.(エビデンスレベルⅣ

6) Ollila DW, Stern SL, Morton DL: Tumor doubling time: a selection factor for pulmonary resection of metastatic melanoma, J Surg Oncol, 1998; 69: 206-211.(エビデンスレベルⅣ

7) Gorenstein LA, Putnam JB, Natarajan G, et al: Improved survival after resection of pulmonary metastases from malignant melanoma, Ann Thorac Surg, 1991; 52: 204-210.(エビデンスレベルⅣ

8) Leo F, Cagini L, Rocmans P, et al: Lung metastases from melanoma: when is surgical treatment warranted? Br J Cancer, 2000; 83: 569-572.(エビデンスレベルⅣ

9) 西澤 綾,山崎直也,山本明史ほか:悪性黒色腫の肺転移に対する外科療法の有用性,日皮会誌,2006; 116 : 1187-1193.(エビデンスレベルⅣ

10) Wronski M, Arbit E: Surgical treatment of brain metastases from melanoma: a retrospective study of 91 patients, J Neurosurg, 2000; 93: 9-18.(エビデンスレベルⅣ

11) Zacest AC, Besser M, Stevens G, et al: Surgical management of cerebral metastases from melanoma: outcome in 147 patients treated at a single institution over two decades, J Neurosurg, 2002; 96: 552-558.(エビデンスレベルⅣ

12) Ollila DW, Essner R, Wanek LA, et al: Surgical resection for melanoma metastatic to the gastrointestinal tract, Arch Surg, 1996; 131: 975-979, 979-980.(エビデンスレベルⅣ

13) Agrawal S, Yao TJ, Coit DG: Surgery for melanoma metastatic to the gastrointestinal tract, Ann Surg Oncol, 1999; 6: 336-344.(エビデンスレベルⅣ

14) Ricaniadis N, Konstadoulakis MM, Walsh D, et al: Gastrointestinal metastases from malignant melanoma, Surg Oncol, 1995; 4: 105-110.(エビデンスレベルⅣ

15) Rose DM, Essner R, Hughes TM, et al: Surgical resection for metastatic melanoma to the liver: the John Wayne Cancer Institute and Sydney Melanoma Unit experience, Arch Surg, 2001; 136: 950-955.(エビデンスレベルⅣ

16) Haigh PI, Essner R, Wardlaw JC, et al: Long-term survival after complete resection of melanoma metastatic to the adrenal gland, Ann Surg Oncol, 1999; 6: 633-639.(エビデンスレベルⅣ

17) de Wilt JH, McCarthy WH, Thompson JF: Surgical treatment of splenic metastases in patients with melanoma, J Am Coll Surg, 2003; 197: 38-43.(エビデンスレベルⅣ


CQ16

メラノーマの肝転移に対し,肝動脈化学療法あるいは肝動脈化学塞栓療法は勧められるか

推奨度

C1

転移が肝臓に限局しているか,他臓器の転移巣がよくコントロールされている場合には,肝転移に対する肝動脈化学療法あるいは肝動脈化学塞栓療法は症状緩和に有益なので実施を考慮してもよい。

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■解説

メラノーマの肝転移に対する肝動脈化学療法あるいは化学塞栓療法の奏効率は20〜70%であり,奏効期間中央値は数カ月から1 年程度,生存期間中央値は数カ月〜2 年程度と報告されている1〜13)。全身的化学療法による肝転移患者の生存期間中央値は概ね数か月程度であるので,適用症例を選択すれば,肝動脈化学療法あるいは化学塞栓療法によって生存期間の延長を期待できる可能性がある14)。ただし,本療法の適用は主として転移が肝臓に限局している患者であり,1 臓器転移という良い予後因子を持っている。ランダム化比較試験も行われていないので,本療法の生存期間延長効果は現時点では確証されていない15)。肝動脈化学療法や化学塞栓療法の操作は侵襲を伴うが,有害反応は全身的化学療法に比較すると軽度な傾向がある。

肝動脈化学療法あるいは化学塞栓療法が適用となる条件として定まったものはないが,一般に肝臓以外の臓器に転移がないか,あっても転移巣が制御されている場合が適用となる。これらの条件を満たすのは主に眼球原発メラノーマの場合であり16),皮膚原発の場合は遠隔転移が肝臓に限局することは稀である1)。なお,転移巣が限局している例では,外科切除も考慮する必要がある。

動注薬剤としては,欧米では単剤でcisplatin,fotemustine,1,3-bis(2-chloroethyl)-1-nitrosourea(BCNU),melphalan を用いたり,cisplatin やcarboplatin と他剤の併用が行われる1〜8, 10〜13)。本邦では主としてcisplatin 単剤の動注が行われている9)

文献

1) Feldman ED, Pingpank JF, Alexander HR Jr: Regional treatment options for patients with ocular melanoma metastatic to the liver, Ann Surg Oncol, 2004; 11: 290-297.(エビデンスレベル Ⅰ

2) Bedikian AY, Legha SS, Mavligit G, et al: Treatment of uveal melanoma metastatic to the liver: a review of the M.D. Anderson Cancer Center experience and prognostic factors, Cancer, 1995; 76: 1665-1670.(エビデンスレベルⅣ

3) Mavligit GM, Charnsangavej C, Carrasco CH, et al: Regression of ocular melanoma metastatic to the liver after hepatic arterial chemoembolization with cisplatin and polyvinyl sponge, JAMA, 1988; 260: 974-976.(エビデンスレベルⅣ

4) Leyvraz S, Spataro V, Bauer J, et al: Treatment of ocular melanoma metastatic to the liver by hepatic arterial chemotherapy, J Clin Oncol, 1997; 15: 2589-2595.(エビデンスレベルⅣ

5) Becker JC, Terheyden P, Kampgen E, et al: Treatment of disseminated ocular melanoma with sequential fotemustine, interferon alpha, and interleukin 2, Br J Cancer, 2002; 87: 840-845.(エビデンスレベルⅢ

6) Patel K, Sullivan K, Berd D, et al: Chemoembolization of the hepatic artery with BCNU for metastatic uveal melanoma: results of a Phase Ⅱ study, Melanoma Res, 2005; 15: 297-304.(エビデンスレベルⅣ

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8) Melichar B, Dvorak J, Jandik P, et al: Intraarterial chemotherapy of malignant melanoma metastatic to the liver, Hepatogastroenterology, 2001; 48: 1711-1715.(エビデンスレベルⅤ

9) 藤沢康弘,山崎直也,山本明史:[解説/ 特集]【皮膚悪性腫瘍治療最前線】メラノーマ肝転移のTAE 療法, Derma, 2003 ; 77 : 38-43.(エビデンスレベルⅣ

10) Sharma KV, Gould JE, Harbour JW, et al: Hepatic arterial chemoembolization for management of metastatic melanoma, AJR Am J Roentgenol, 2008; 190: 99-104.(エビデンスレベルⅣ

11) Dayani PN, Gould JE, Brown DB, et al: Hepatic metastasis from uveal melanoma: angiographic pattern predictive of survival after hepatic arterial chemoembolization, Arch Ophthalmol, 2009; 127: 628-632.(エビデンスレベルⅣ

12) Schuster R, Lindner M, Wacker F, et al: Transarterial chemoembolization of liver metastases from uveal melanoma after failure of systemic therapy: toxicity and outcome, Melanoma Res, 2010; 20: 191-196.(エビデンスレベルⅣ

13) Gupta S, Bedikian AY, Ahrar J, et al: Hepatic artery chemoembolization in patients with ocular melanoma metastatic to the liver: response, survival, and prognostic factors, Am J Clin Oncol, 2010; 33: 474-480..(エビデンスレベルⅣ

14) Manola J, Atkins M, Ibrahim J, Kirkwood J: Prognostic factors in metastatic melanoma: a pooled analysis of Eastern Cooperative Oncology Group trials, J Clin Oncol, 2000; 18: 3782-3793.(エビデンスレベルⅡ

15) Eton O, Legha SS, Moon TE, et al: Prognostic factors for survival of patients treated systemically for disseminated melanoma, J Clin Oncol, 1998; 16: 1103-1111.(エビデンスレベルⅡ

16) Rietschel P, Panageas KS, Hanlon C, et al: Variates of survival in metastatic uveal melanoma, J Clin Oncol, 2005; 23: 8076-8080.(エビデンスレベルⅣ


CQ17

遠隔転移を有するメラノーマ患者に対して症状緩和を目的に放射線療法を実施することは勧められるか

 

遠隔転移(脳転移以外)に対する放射線治療

推奨度

B

遠隔転移を有するメラノーマ患者に対し放射線療法を行うことで半数以上の症例で症状緩和効果が得られるため勧められる。

 

脳転移に対する放射線治療

推奨度

B

全脳照射が頻用されるが転移個数が少なく全身状態良好な症例では定位照射が勧められる。

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■解説

これまでメラノーマは放射線感受性が低いと考えられてきたが,緩和的放射線療法を行うことで再発・転移病巣に伴う症状の約半数が緩和されることが示されている1〜4)。皮膚病変やリンパ節転移,内臓転移に対する放射線療法により部分寛解以上の腫瘍縮小効果が約6 割の症例で得られることが示されており,特に1 回線量を4 Gy 以上に高めた照射スケジュールで良好とされる3〜6)。しかし,周囲臓器の耐容線量を考慮し照射スケジュールを決定することが重要である。放射線生物学的にはメラノーマは遅発反応組織に分類され,放射線療法後の縮小が他癌腫に比べ遅く症状の緊急性なども考慮した治療方針の決定が必要である3)。転移または再発の618 病変に対し放射線療法を行い49%に完全寛解が得られ,その病巣の多くは長期にわたり再増悪することなく経過したとの報告もある7)

一方,骨転移や脳転移例では照射スケジュールによる治療効果はあまり影響されないことが示されている8, 9)。特に有痛性骨転移に対しては,8 Gy 1 回照射と30 Gy/10 分割/2 週間の照射スケジュールによる違いはなく,約7 割の症例で症状緩和効果が得られる。多発性脳転移に対しては,本邦では全脳照射として30 Gy/10 分割/2 週間のスケジュールが頻用され,約半数の症例で疼痛の改善や運動神経障害の改善が得られる5, 10, 11)

単発の脳転移に対しては手術や定位照射と全脳照射の併用療法が用いられ比較的良好な成績が得られている5, 9〜14)。特に,若年者で,頭蓋外病変がなく,初回治療から転移出現までの期間が長い症例においては長期生存が期待され積極的な介入が行われる11)

文献

1) Sause WT, Cooper JS, Rush S, et al: Fraction size in external beam radiation therapy in the treatment of melanoma, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1991; 20: 429-432.(エビデンスレベルⅡ

2) Overgaard J, von der Maase H, Overgaard M: A randomized study comparing two high-dose per fraction radiation schedules in recurrent or metastatic malignant melanoma, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1985; 11: 1837-1839.(エビデンスレベルⅡ

3) Seegenschmiedt MH, Keilholz L, Altendorf-Hofmann A, et al: Palliative radiotherapy for recurrent and metastatic malignant melanoma: prognostic factors for tumor response and long-term outcome: a 20-year experience, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1999; 44: 607-618.(エビデンスレベルⅣ

4) Corry J, Smith JG, Bishop M, Ainslie J: Nodal radiation therapy for metastatic melanoma, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1999; 44: 1065-1069.(エビデンスレベルⅣ

5) Ewend MG, Carey LA, Brem H: Treatment of melanoma metastases in the brain, Semin Surg Oncol, 1996; 12: 429-435.(エビデンスレベル Ⅰ

6) Katz HR: The results of different fractionation schemes in the palliative irradiation of metastatic melanoma, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1981; 7: 907-911.(エビデンスレベルⅣ

7) Overgaard J: The role of radiotherapy in recurrent and metastatic malignant melanoma: a clinical radiobiological study, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1986; 12: 867-872.(エビデンスレベルⅣ

8) Konefal JB, Emami B, Pilepich MV: Analysis of dose fractionation in the palliation of metastases from malignant melanoma, Cancer, 1988; 61: 243-246.(エビデンスレベルⅣ

9) Rate WR, Solin LJ, Turrisi AT: Palliative radiotherapy for metastatic malignant melanoma: brain metastases, bone metastases, and spinal cord compression, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1988; 15: 859-864.(エビデンスレベルⅣ

10) Patchell RA, Tibbs PA, Regine WF, et al: Postoperative radiotherapy in the treatment of single metastases to the brain: a randomized trial, JAMA, 1998; 280: 1485-1489.(エビデンスレベルⅡ

11) Fife KM, Colman MH, Stevens GN, et al: Determinants of outcome in melanoma patients with cerebral metastases, J Clin Oncol, 2004; 22: 1293-1300.(エビデンスレベルⅣ

12) Mori Y, Kondziolka D, Flickinger JC, et al: Stereotactic radiosurgery for cerebral metastatic melanoma: facto affecting local disease control and survival, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1998; 42: 581-589.(エビデンスレベルⅣ

13) Zacest AC, Besser M, Stevens G, et al: Surgical management of cerebral metastases from melanoma: outcome in 147 patients treated at a single institution over two decades, J Neurosurg, 2002; 96: 552-558.(エビデンスレベルⅣ

14) Hagen NA, Cirrincione C, Thaler HT, DeAngelis LM: The role of radiation therapy following resection of single brain metastasis from melanoma, Neurology, 1990; 40: 158-160.(エビデンスレベルⅣ


CQ18

切除不能な遠隔転移を有するメラノーマ患者に対して従来のがん薬物療法は勧められるか

推奨度

C1

ダカルバジン(DTIC)単独療法の実施を考慮してもよいが,生命予後の改善は証明されていない。

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■解説

進行期メラノーマ患者に対するがん薬物療法として,DTIC は最も頻用されてきた標準的薬剤であるが,その奏効率は10〜20%,完全奏効率は5%,長期完全奏効率は2%以下であり1, 2),満足できるものではない。そのため,これまで様々ながん薬物療法が単剤あるいは多剤併用で試みられてきた。

単剤では,temozolomide3),carmustine(BCNU),fotemustine4),cisplatin(CDDP),carboplatin(CBDCA),vinblastine(VLB),vindesine,paclitaxel(PTX),docetaxel, 高用量interleukin-2(IL-2)5),interferon-α(IFN-α)6)などが用いられた。多剤併用化学療法ではBOLD 療法(bleomycin,vincristine,lomustine,DTIC)7),CVD 療法(CDDP + VLB +DTIC)8),DTIC + tamoxifen9),本邦でのDAC-Tam 療法に相当するDartmouth regimen(DTIC + BCNU + CDDP + tamoxifen)10),PTX + CBDCA11)などが用いられた。化学療法剤とIL-2 やIFN-αを組み合わせる生物化学療法では,同時併用療法として,DTIC + IFN-α+tamoxifen12),CVD 療法+ IL-2 + IFNα13)などが,連続的併用療法として,DTIC + CDDP+ tamoxifen に引き続いてIL-2 とIFN-αを投与する方法14),CVD 療法に引き続いてIL-2 とIFN-αを投与する方法15),などが用いられた。

当初,単独施設での第Ⅱ相試験で高い奏効率が報告された併用療法もあるが,DTIC を対照とするランダム化比較試験(RCT)で生存期間の有意な延長が証明できたものは存在しない。近年のメタアナリシスでも,化学療法や生物化学療法による生命予後の改善を示すエビデンスは得られなかったと報告されている16, 17)。さらに多剤併用療法はDTIC 単剤と比べて有害反応が高度なことも問題である。そのため,これまでDTIC 単剤がメラノーマのがん薬物療法の基準となってきたが,その有益性は満足できるものではなく,DTIC に勝る有益性を持つ治療薬の導入が望まれる。

文献

1) Hill GJ 2nd, Krementz ET, Hill HZ: Dimethyl triazeno imidazole carboxamide and combination therapy for melanoma. IV. Late results after complete response to chemotherapy(Central Oncology Group protocols 7130, 7131, and 7131A), Cancer, 1984; 53: 1299-1305.(エビデンスレベルⅣ

2) Eigentler TK, Caroli UM, Radny P, Garbe C: Palliative therapy of disseminated malignant melanoma: a systematic review of 41 randomised clinical trials, Lancet Oncol, 2003; 4: 748-759.(エビデンスレベル Ⅰ

3) Middleton MR, Grob JJ, Aaronson N, et al: Randomized phase Ⅲ study of temozolomide versus dacarbazine in the treatment of patients with advanced metastatic malignant melanoma, J Clin Oncol, 2000; 18: 158-166.(エビデンスレベルⅡ

4) Avril MF, Aamdal S, Grob JJ, et al: Fotemustine compared with dacarbazine in patients with disseminated malig nant melanoma: a phase Ⅲ study, J Clin Oncol, 2004; 22: 1118-1125.(エビデンスレベルⅡ

5) Atkins MB, Kunkel L, Sznol M, Rosenberg SA: High-dose recombinant interleukin-2 therapy in patients with metastatic melanoma: long-term survival update, Cancer J Sci Am, 2000; 6(Suppl 1): S11-14.(エビデンスレベルⅣ

6) Dummer R, Garbe C, Thompson JA, et al: Randomized dose-escalation study evaluating peginterferon alfa-2a in patients with metastatic malignant melanoma, J Clin Oncol, 2006; 24: 1188-1194.(エビデンスレベルⅡ

7) Vuoristo MS, Hahka-Kemppinen M, Parvinen LM, et al: Randomized trial of dacarbazine versus bleomycin, vincristine, lomustine and dacarbazine(BOLD)chemotherapy combined with natural or recombinant interferonalpha in patients with advanced melanoma, Melanoma Res, 2005; 15: 291-296.(エビデンスレベルⅡ

8) Legha SS, Ring S, Papadopoulos N, et al: A prospective evaluation of a triple-drug regimen containing cisplatin, vinblastine, and dacarbazine(CVD) for metastatic melanoma, Cancer, 1989; 64: 2024-2029.(エビデンスレベルⅣ

9) Cocconi G, Bella M, Calabresi F, et al: Treatment of metastatic malignant melanoma with dacarbazine plus tamoxifen, N Engl J Med, 1992; 327: 516-523.(エビデンスレベルⅡ

10) Chapman PB, Einhorn LH, Meyers ML, et al: Phase Ⅲ multicenter randomized trial of the Dartmouth regimen versus dacarbazine in patients with metastatic melanoma, J Clin Oncol, 1999; 17: 2745-2751.(エビデンスレベルⅡ

11) Rao RD, Holtan SG, Ingle JN, et al: Combination of paclitaxel and carboplatin as second-line therapy for patients with metastatic melanoma, Cancer, 2006; 106: 375-382.(エビデンスレベルⅣ

12) Falkson CI, Ibrahim J, Kirkwood JM, et al: Phase Ⅲ trial of dacarbazine versus dacarbazine with interferon alpha-2b versus dacarbazine with tamoxifen versus dacarbazine with interferon alpha-2b and tamoxifen in patients with metastatic malignant melanoma: an Eastern Cooperative Oncology Group study, J Clin Oncol, 1998; 16: 1743-1751.(エビデンスレベルⅡ

13) Atkins MB, Hsu J, Lee S, et al: Phase Ⅲ trial comparing concurrent biochemotherapy with cisplatin, vinblastine, dacarbazine, interleukin-2, and interferon alfa-2b with cisplatin, vinblastine, and dacarbazine alone in patients with metastatic malignant melanoma(E3695): a trial coordinated by the Eastern Cooperative Oncology Group, J Clin Oncol, 2008; 26: 5748-5754.(エビデンスレベルⅡ

14) Rosenberg SA, Yang JC, Schwartzentruber DJ, et al: Prospective randomized trial of the treatment of patients with metastatic melanoma using chemotherapy with cisplatin, dacarbazine, and tamoxifen alone or in combination with interleukin-2 and interferon alfa-2b, J Clin Oncol, 1999; 17: 968-975.(エビデンスレベルⅡ

15) Eton O, Legha SS, Bedikian AY, et al: Sequential biochemotherapy versus chemotherapy for metastatic melanoma: results from a phase Ⅲ randomized trial, J Clin Oncol, 2002; 20: 2045-2052.(エビデンスレベルⅡ

16) Crosby T, Fish R, Coles B, et al: Systemic treatments for metastatic cutaneous melanoma, Cochrane Database Syst Rev, 2009; Issue 3.(エビデンスレベル Ⅰ

17) Sasse AD, Sasse EC, Clark LGO, et al: Chemoimmunotherapy versus chemotherapy for metastatic malignant melanoma, Cochrane Database Syst Rev, 2009; Issue 1.(エビデンスレベル Ⅰ


CQ19

切除不能な遠隔転移巣を有するメラノーマ患者に対して分子標的薬をはじめとした新規の治療法の臨床試験は勧められるか

推奨度

B

新規の治療法の中には生命予後の改善が証明された有望な薬物療法も存在するため,臨床試験として行われる場合に限り勧められる。

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■解説

近年の分子生物学の発展により癌の免疫逃避や発生・増殖に関わる分子の解明が進み,これらを標的とした薬剤の臨床試験が急速に進められている。

癌の免疫逃避機構に関わるcytotoxic T lymphocyte antigen-4(CTLA-4)やprogrammed death ligand 1(PD-L1)/PD-1 経路を標的とした治療では,CTLA-4 に対する完全ヒト型モノクローナル抗体であるipilimumab が史上初めて第Ⅲ相ランダム化比較試験(RCT)で進行期メラノーマにおける生命予後改善効果を証明したため注目された。DTIC を含む前治療不応例に対しgp100 vs ipilimumab(3 mg/kg)vs ipilimumab + gp100 の3 群による第Ⅲ相RCT が行われ,gp100 投与群に対しipilimumab 投与群において統計学的有意差をもって全生存期間(OS)の延長が示された1)。その後前治療歴のない症例を対象としたDTIC ± ipilimumab(10 mg/kg)の第Ⅲ相RCT も終了し,ipilimumab 併用群において統計学的有意差をもってOS の延長が示された2)。これらの結果を受けipilimumab(3 mg/kg)は2011 年3 月に米国FDA に承認されている。抗PD-1 抗体は,単剤のほかipilimumab との併用でも開発が進められている。

メラノーマの発生・増殖に関わる分子には多くの報告があるが,現在のところBRAF・MEK・KIT を標的とした阻害剤の臨床試験が活発に進められている。BRAF を含むマルチキナーゼ阻害剤であるsorafenib では,DTIC ± sorafenib の第Ⅱ相RCT3) やcarboplatin + paclitaxel(PTX)± sorafenib の第Ⅲ相RCT4), 5)が実施されたが,いずれも生命予後に対するsorafenibの上乗せ効果は示されなかった。経口のV600E 変異BRAF キナーゼ阻害剤であるvemurafenib は,第Ⅰ 相試験でBRAFV600E 変異を有する悪性黒色腫に約8 割の奏効率を示して注目された6)。その後のDTIC vs vemurafenib の第Ⅲ相RCT でもvemurafenib 投与群における生命予後改善効果が示され7),2011 年8 月に米国FDA に承認されている。同様にBRAF 阻害剤であるdabrafenib でもDTIC vs dabrafenib の第Ⅲ相RCT が行われ,dabrafenib 投与群における生命予後改善効果が示された8)。MEK 阻害剤であるtrametinib では,DTIC あるいはPTX による化学療法vs trametinib の第Ⅲ相RCT が行われ,trametinib 投与群における生命予後改善効果が示された9)。現在dabrafenib とtrametinib の併用による臨床試験が進められている。KIT 阻害剤であるimatinib では,KIT 遺伝子変異や増幅の有無を参加条件とせずに実施した第Ⅱ相試験では明らかな臨床効果は得られなかったものの10〜12),KIT 遺伝子変異を有する症例での奏効例12)やKIT 遺伝子変異や増幅を参加条件とした第Ⅱ相試験における一定の臨床効果が示されている13〜15)

以上のように,これまで有効な手段が存在しなかったメラノーマの薬物療法は大きな進化を遂げつつあり,今後も新規薬剤や有効な併用療法の開発に期待がかかる。

文献

1) Hodi FS, O’Day SJ, McDermott DF, et al: Improved survival with ipilimumab in patients with metastatic melanoma, N Engl J Med, 2010; 363: 711-723.(エビデンスレベルⅡ

2) Robert C, Thomas L, Bondarenko I, et al: Ipilimumab plus dacarbazine for previously untreated metastatic melanoma, N Engl J Med, 2011; 364: 2517-2526.(エビデンスレベルⅡ

3) McDermott DF, Sosman JA, Gonzalez R, et al: Double-blind randomized Phase Ⅱ study of the combination of sorafenib and dacarbazine in patients with advanced melanoma: a report from the 11715 Study Group, J Clin Oncol, 2008; 26: 2178-2185.(エビデンスレベルⅡ

4) Hauschild A, Agarwala SS, Trefzer U, et al: Results of a phase Ⅲ, randomized, placebo- controlled study of sorafenib in combination with carboplatin and paclitaxel as second-line treatment in patients with unresectable stage Ⅲ or stage IV melanoma, J Clin Oncol, 2009; 27: 2823-2830.(エビデンスレベルⅡ

5) Flaherty KT, Lee SJ, Zhao F, et al: Phase Ⅲ Trial of Carboplatin and Paclitaxel With or Without Sorafenib in Metastatic Melanoma, J Clin Oncol, 2013; 31: 373-379.(エビデンスレベルⅡ

6) Flaherty KT, Puzanov I, Kim KB, et al: Inhibition of mutated, activated BRAF in metastatic melanoma, N Engl J Med, 2010; 363: 809-819.(エビデンスレベルⅣ

7) Chapman PB, Hauschild A, Robert C, et al: Improved survival with vemurafenib in melanoma with BRAF V600E mutation, N Engl J Med, 2011; 364: 2507-2516.(エビデンスレベルⅡ

8) Hauschild A, Grob JJ, Demidov LV, et al: Dabrafenib in BRAF-mutated metastatic melanoma: a multicentre, open-label, phase 3 randomised controlled trial, Lancet, 2012; 380: 358-365.(エビデンスレベルⅡ

9) Flaherty K T, Robert C, Hersey P, et al: Improved survival with MEK inhibition in BRAF-mutated melanoma, N Engl J Med, 2012; 367: 107-114.(エビデンスレベルⅡ

10) Ugurel S, Hildenbrand R, Zimpfer A, et al: Lack of clinical efficacy of imatinib in metastatic melanoma, Br J Cancer, 2005; 92: 1398-1405.(エビデンスレベルⅣ

11) Wyman K, Atkins MB, Prieto V, et al: Multicenter Phase Ⅱ trial of high-dose imatinib mesylate in metastatic melanoma: significant toxicity with no clinical efficacy, Cancer, 2006; 106: 2005-2011.(エビデンスレベルⅣ

12) Kim KB, Eton O, Davis DW, et al: Phase Ⅱ trial of imatinib mesylate in patients with metastatic melanoma, Br J Cancer, 2008; 99: 734-740.(エビデンスレベルⅣ

13) Carvajal RD, Antonescu CR, Wolchok JD, et al: KIT as a therapeutic target in metastatic melanoma, JAMA, 2011; 305: 2327-2334.(エビデンスレベルⅣ

14) Guo J, Si L, Kong Y, et al: Phase Ⅱ, open-label, single-arm trial of imatinib mesylate in patients with metastatic melanoma harboring c-Kit mutation or amplification, J Clin Oncol, 2011; 29: 2904-2909.(エビデンスレベルⅣ

15) Hodi FS, Corless CL, Giobbie-Hurder A, et al: Imatinib for melanomas harboring mutationally activated or amplified KIT arising on mucosal, acral, and chronically sun-damaged skin, J Clin Oncol, 2013; 31: 3182-3190.(エビデンスレベルⅣ


CQ20

手術で病変を全切除できた患者に対して定期的な全身画像検査は勧められるか

 

病期0(in situ)

推奨度

C2

定期的な全身画像検査は勧められない。

 

病期 ⅠからⅡB

推奨度

C1

定期的な全身画像検査を行うことを考慮してもよいが一律に実施することは勧められない。検査項目と検査間隔については患者ごとに検討を行う。

 

病期ⅡC からⅢ

推奨度

B

無症候性のリンパ節転移の評価と遠隔転移を発見する目的で,定期的な全身画像検査を実施す ることが勧められる。検査項目と検査間隔については患者ごとに検討を行う。

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■解説

メラノーマ患者の原発巣治療後には定期的な経過観察が行われる。その主目的は治療可能な転移や局所再発を早期に発見することにあるが,経過観察の最適な間隔や方法に関しては世界中の各機関が作成した診療ガイドラインにおいてもコンセンサスが得られていない。一般的事実として,メラノーマの再発転移は術後早期に生じることが多く,術後5 年を経過するとリスクは下がるものの術後10 年を過ぎても再発転移を生じることがある。

経過観察方法に関しては多数の研究が行われており1),初回再発の50〜85%は局所〜所属リンパ節に起き,発見の契機としては本人あるいは医師による触診がほとんどであることが示されている2, 3)。欧米では所属リンパ節転移の早期発見に超音波検査の有用性が示唆されている4)。一方,胸部X 線撮影は一部の患者において肺転移発見の契機となりうるが,偽陽性が多く生存率の改善は証明されていない5, 6)

Garbe ら7)が実施した前向き臨床研究では病期別に6〜12 カ月毎に診察,リンパ節の超音波検査,胸部X 線,腹部超音波検査,血液検査などが施行された。その結果,転移発見の契機は診察47%,リンパ節超音波13.7%,胸部X 線5.5%,腹部超音波3.7%,CT23.7%,血液検査1.4%,シンチグラフィー1.4%であったと報告されている。この研究ではCT はルーチンには行われていないが,リンパ節超音波検査で発見された転移の71%,診察での56%,CT での30%が治療可能な早期転移であり,転移の早期発見群と晩期発見群では生存率に有意差が認められている。

石井ら8)の日本人を対象とした症例集積研究では,142 名の術後患者のうちAJCC/UICC2002 分類でstage Ⅱ,Ⅲの症例で少なくとも1 年に1 回CT スキャン,67Ga シンチグラフィー,PET のいずれかを施行した。初回転移が画像で発見された群(16 例)と自覚症状または診察で発見された群(28 例)の初回手術からの生存期間の間に有意差はみられなかった(p = 0.27)。

CT に関しては,大部分が転移の疑われる症例にのみ施行された後ろ向き研究であり9, 10),定期的検査によって生存率が改善するか否かは不明である。現時点では超音波検査の有用性は示唆されるものの,定期的な超音波検査が生存率の改善につながることを示す明確な根拠は存在しない。

文献

1) Francken AB, Bastiaannet E, Hoekstra HJ: Follow-up in patients with localised primary cutaneous melanoma, Lancet Oncol, 2005; 6: 608-621.(エビデンスレベル Ⅰ

2) Francken AB, Shaw HM, Accortt NA, et al: Detection of first relapse in cutaneous melanoma patients: implications for the formulation of evidence-based follow-up guidelines, Ann Surg Oncol, 2007; 14: 1924-1933.(エビデンスレベルⅣ

3) Mooney MM, Kulas M, McKinley B, et al: Impact on survival by method of recurrence detection in stage Ⅰ and Ⅱ cutaneous melanoma, Ann Surg Oncol, 1998; 5: 54-63.(エビデンスレベルⅣ

4) Bafounta ML, Beauchet A, Chagnon S, et al: Ultrasonography or palpation for detection of melanoma nodal invasion: a meta-analysis, Lancet Oncol, 2004; 5: 673-680.(エビデンスレベル Ⅰ

5) Morton RL, Craig JC, Thompson JF: The role of surveillance chest X-rays in the follow-up of high-risk melanoma patients, Ann Surg Oncol, 2009; 16: 571-577.(エビデンスレベルⅣ

6) Tsao H, Feldman M, Fullerton JE, et al: Early detection of asymptomatic pulmonary melanoma metastases by routine chest radiographs is not associated with improved survival, Arch Dermatol, 2004; 140: 67-70.(エビデンスレベルⅣ

7) Garbe C, Paul A, Kohler-Spath H, et al: Prospective evaluation of a follow-up schedule in cutaneous melanoma patients: recommendations for an effective follow-up strategy, J Clin Oncol, 2003; 21: 520-529.(エビデンスレベルⅣ

8) 石井貴之,八田尚人,藤本晃英,竹原和彦:悪性黒色腫患者の術後経過観察:画像検査の意義についての検討,日皮会誌,2008 ; 118 : 397-402.(エビデンスレベルⅣ

9) Johnson TM, Fader DJ, Chang AE, et al: Computed tomography in staging of patients with melanoma metastatic to the regional nodes, Ann Surg Oncol, 1997; 4: 396-402.(エビデンスレベルⅣ

10) Kuvshinoff BW, Kurtz C, Coit DG: Computed tomography in evaluation of patients with stage Ⅲ melanoma, Ann Surg Oncol, 1997; 4: 252-258.(エビデンスレベルⅣ


CQ21

術後メラノーマ患者に対して再発・転移早期発見のための患者教育を行うことは勧められるか

推奨度

B

術後メラノーマ患者が自分の皮膚に対する定期的自己検査(self skin examination;SSE) を行うと生存率が改善する可能性があるので,患者教育を行うことは勧められる。

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■解説

術後メラノーマ患者に教育を行う第一の目的は再発・転移の早期発見である。再発・転移は,患者もしくは医師による視診・触診で発見されることが最も多い1, 2)

Dalal らはセンチネルリンパ節生検が陰性であった病期 ⅠまたはⅡの患者においてフォローアップ中に再発した場合,発見方法の違いによる1 年生存率は,自己診察による発見:79%,医師の診察による発見:76%,医師の画像検査による発見:45%,患者の自覚症状による発見26%の順に低下することを報告した2)

Berwick らがSSE の有用性を検討したところ3),メラノーマによる死亡に対する修正オッズ比が,原発巣の術後に定期的なSSE を行った群では行わなかった群に対して0.37(95%信頼区間0.16〜0.84)であった。この結果はSSE が原発巣術後メラノーマ患者の死亡を63%減少させる可能性を示している。しかしこの研究はバイアスや交絡因子の調整がなされていないため,結果の解釈には注意が必要である。

欧米におけるSSE は,パートナーの協力も得てひと月に1 回鏡を使用して全身の皮膚表面を観察し,原発部位から所属リンパ節のみでなく全身の皮膚を触り,リンパ節の腫脹や結節の有無を検索するものである。日本においても術後患者に対して触診法を含めた適切なSSE を指導することが望まれる。

文献

1) Garbe C, Paul A, Kohler-Spath H, et al: Prospective evaluation of a follow-up schedule in cutaneous melanoma patients: recommendations for an effective followup strategy, J Clin Oncol, 2003; 21: 520-529.(エビデンスレベルⅣ

2) Moore Dalal K, Zhou Q, Panageas KS, et al: Methods of detection of first recurrence in patients with stage Ⅰ/Ⅱ primary cutaneous melanoma after sentinel lymph node biopsy, Ann Surg Oncol, 2008; 15: 2206-2214.(エビデンスレベルⅣ

3) Berwick M, Begg CB, Fine JA, et al: Screening for cutaneous melanoma by skin self-examination, J Natl Cancer Inst, 1996; 88: 17-23.(エビデンスレベルⅣ

メラノーマ CQ1〜CQ21 一覧
CQ   推奨度 推奨文
  1. 1.メラノーマの発生予防を目的とした紫外線防御は勧められるか
  C1 日本人ではメラノーマの過半数が肢端部に発生し,紫外線の関与は少ないと考えられるが,サンスクリーン剤などで紫外線防御を行うことにより露光部のメラノーマの発生率が減少する傾向はあるため、紫外線防御を考慮してもよい。
  1. 2.ほくろ(後天性色素細胞母斑)の数が多い者に対してメラノーマの早期診断を目的とした定期診察は勧められるか
  C1 色白でほくろの数が50 個以上の場合定期診察を考慮してもよい。
  1. 3.巨大型先天性色素細胞母斑に対してメラノーマの発生予防を目的とした予防的切除は勧められるか
  C1 巨大型先天性色素細胞母斑患者がメラノーマを発生する危険性は有意に高く,若年で発生することが多いため,学童期に終了するような予防的切除を考慮してもよい。
  1. 4.メラノーマの早期診断を目的としたダーモスコピーの使用は勧められるか
  A ダーモスコピーに習熟した医師が用いればメラノーマの早期診断に役立つので,使用を強く勧める。
  1. 5.メラノーマの早期診断を目的とした血清腫瘍マーカー測定は勧められるか
  C2 メラノーマの早期診断を目的とした血清腫瘍マーカー測定は勧められない。
  1. 6.メラノーマ原発巣におけるtumor thickness の術前評価のため高周波エコーやMRI の実施は勧められるか
高周波エコー C1 高周波エコー(20 〜 100MHz) はメラノーマのtumor thickness を比較的正確に予測できるため,その実施を考慮してもよい。
MRI C2 MRI ではtumor thickness の測定誤差が生じることがあるため,その実施は勧められない。
  1. 7.メラノーマの原発巣に部分生検(incisional biopsy)を行ってもよいか
  C1 全切除生検が困難な大きな病変では部分生検を行ってもよい。
  1. 8.メラノーマの転移巣検出のための術前画像検査は勧められるか
臨床病期0(in situ) C2 胸部X 線,超音波検査,CT,PET などを実施することは勧められない。
臨床病期I からIIB C1 胸部X 線,超音波検査,CT,PET などを実施することを考慮してもよいが,一律に実施することは勧められない。
臨床病期IIC からIII B 胸部X 線,超音波検査,CT,PET などを所属リンパ節の位置と遠隔転移のリスクに応じて症例ごとに選択して実施することが勧められる。
  1. 9.メラノーマの原発巣は,肉眼的な病巣辺縁から何cm離して切除することが勧められるか
In situ 病変 C1 メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は3〜5mm が考慮される
Tumor thickness ≦ 1.0mm A メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は1cm が強く勧められる。
Tumor thickness 1.01 〜 2.0mm A メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は1 〜 2cm が強く勧められる。
Tumor thickness 2.01 〜 4.0mm A メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は2cm が強く勧められる。
Tumor thickness > 4.0mm B メラノーマ原発巣を外科的切除する際の病巣辺縁からの距離は2cm が勧められる。
  1. 10.肉眼的(臨床的)リンパ節転移がなくかつ遠隔転移のないメラノーマに対して,センチネルリンパ節生検(sentinel lymphnode biopsy;SLNB)は勧められるか
Tumor thickness ≦ 0.75mm C2 SLNB を行うことは勧められない。
Tumor thickness 0.76 〜 1.0mm C1 厚さ0.76mm 以上ではSLNB を考慮してよい。特に潰瘍がある場合,年齢が40 歳以下,生検組織の深部断端が陽性,リンパ管浸潤を認める場合,Clark レベルIV 以上,あるいは1 個/mm2 以上の核分裂像のいずれかがさらにあればSLNB を考慮する。
Tumor thickness 1.01 〜 4.0mm B SLNB によりセンチネルリンパ節(sentinel lymph node;SLN)の顕微鏡的転移を早期に発見し,そのリンパ節領域を郭清することによりリンパ節転移のある患者の予後が改善されることから,SLNB を行うことが勧められる。
Tumor thickness > 4.0mm C1 SLNB を行う意義は明確になっていないが,世界的にも多くの施設で行われている現状から,現時点ではSLNB を考慮してよい。
  1. 11.メラノーマの所属リンパ節転移に対してリンパ節郭清術を行うことは勧められるか
肉眼的(臨床的)リンパ節転移を認めるメラノーマ B リンパ節郭清術を行うことが勧められる。
センチネルリンパ節(sentinellymph node;SLN) 転移陽性のメラノーマ C1 リンパ節郭清術を行うことを考慮する。
  1. 12.メラノーマのin-transit転移に対してどのような治療が勧められるか
外科的切除 C1 完全切除可能な単発あるいは数個のintransit 転移は外科的切除を考慮してもよい。
インターフェロンβ局注 C1 インターフェロンβ局注療法を単独あるいは他治療と併用して行うことは考慮してもよい。
温熱四肢灌流isolated limb perfusion(ILP) あるいはisolated limb infusion(ILI) C1 四肢のin-transit 転移に対するILP とILI はその有効性に関する海外からの報告があり本治療を行うことを考慮してもよい。ただし現時点で国内で施行可能な施設はない(2013 年12 月現在保険適用外)。
  1. 13.メラノーマの所属リンパ節郭清後に術後放射線療法を行うことは勧められるか
  C1 所属リンパ節郭清後の放射線療法を一律に行うことは推奨されないが,不完全切除例などでは術後放射線療法を行うことを考慮してもよい。
  1. 14.手術で完全切除が得られたメラノーマ患者に対して術後補助療法は勧められるか
  C1〜C2 生命予後の改善が証明された副作用に見合う術後補助療法は存在しないため,全患者に画一的に行うことは勧められない。本邦ではDAVFeron 療法やフェロン療法が頻用されてきたが,実施の根拠は乏しいため見込まれる有益性と副作用を十分説明した上で個々の患者毎に適応が決められるべきである。
  1. 15.メラノーマの遠隔転移巣に対して外科的切除は勧められるか
  B 遠隔転移が単発で完全切除が可能な場合には,その転移巣の切除により患者の生存期間が延長する可能性がある。また,遠隔転移巣の切除が症状緩和に有益なことがあるので勧められる。
  1. 16.メラノーマの肝転移に対し,肝動脈化学療法あるいは肝動脈化学塞栓療法は勧められるか
  C1 転移が肝臓に限局しているか,他臓器の転移巣がよくコントロールされている場合には,肝転移に対する肝動脈化学療法あるいは肝動脈化学塞栓療法は症状緩和に有益なので実施を考慮してもよい。
  1. 17.遠隔転移を有するメラノーマ患者に対して症状緩和を目的に放射線療法を実施することは勧められるか
遠隔転移(脳転移以外)に対する放射線治療 B 遠隔転移を有するメラノーマ患者に対し放射線療法を行うことで半数以上の症例で症状緩和効果が得られるため勧められる。
脳転移に対する放射線治療 B 全脳照射が頻用されるが転移個数が少なく全身状態良好な症例では定位照射が勧められる。
  1. 18.切除不能な遠隔転移を有するメラノーマ患者に対して従来のがん薬物療法は勧められるか
  C1 ダカルバジン(DTIC)単独療法の実施を考慮してもよいが,生命予後の改善は証明されていない。
  1. 19.切除不能な遠隔転移巣を有するメラノーマ患者に対して分子標的薬をはじめとした新規の治療法の臨床試験は勧められるか
  B 新規の治療法の中には生命予後の改善が証明された有望な薬物療法も存在するため,臨床試験として行われる場合に限り勧められる。
  1. 20.手術で病変を全切除できた患者に対して定期的な全身画像検査は勧められるか
病期0(in situ) C2 定期的な全身画像検査は勧められない。
病期I からIIB C1 定期的な全身画像検査を行うことを考慮してもよいが一律に実施することは勧められない。検査項目と検査間隔については患者ごとに検討を行う。
病期IIC からIII B 無症候性のリンパ節転移の評価と遠隔転移を発見する目的で,定期的な全身画像検査を実施することが勧められる。検査項目と検査間隔については患者ごとに検討を行う。
  1. 21.術後メラノーマ患者に対して再発・転移早期発見のための患者教育を行うことは勧められるか
  B 術後メラノーマ患者が自分の皮膚に対する定期的自己検査(self skin examination;SSE)を行うと生存率が改善する可能性があるので,患者教育を行うことは勧められる。
付1 第7 版AJCC 皮膚メラノーマ病期分類2009

T:原発腫瘍

TX :原発腫瘍の評価不能(例,掻爬切除(curettage)されたり重度に退縮したメラノーマ)

T0 :原発腫瘍がない

Tis :Melanoma in situ

T1a :厚さ1.0 mm 以下で,潰瘍*なしかつ核分裂像**が< 1/ mm2

T1b :厚さ1.0 mm 以下で,潰瘍ありまたは核分裂像が≧ 1/ mm2

T2a :厚さが1.01〜2.0 mm で,潰瘍なし

T2b :厚さが1.01〜2.0 mm で,潰瘍あり

T3a :厚さが2.01〜4.0 mm で,潰瘍なし

T3b :厚さが2.01〜4.0 mm で,潰瘍あり

T4a :厚さが4.0 mm を超えて,潰瘍なし

T4b :厚さが4.0 mm を超えて,潰瘍あり

* 潰瘍とは直近の外傷または外科的侵襲がなく,病理組織学的に以下の所見が組み合わされて観察される状態と定義付けられる:表皮全層の欠損(角層と基底膜の欠損を含む),反応性変化の証拠(例えばフィブリン沈着や好中球),周辺表皮の菲薄化・欠落または反応性肥厚。

** 1 mm2 あたりの細胞分裂数(mitotic rate)。メラノーマの真皮病変内で最も細胞分裂の多い領域(ホットスポット)を探し,400 倍の視野でホットスポット内の細胞分裂数を数えたのちにホットスポット周辺の領域に移動し,観察視野面積が合計1 mm2 になった時点で終了する。< 1/ mm2 は0/ mm2 と同義。


N:所属リンパ節

NX:所属リンパ節の評価不能(例,別の理由で以前に摘出されている)

N0:所属リンパ節転移,satellite*,in-transit 転移**を認めない

N1:1 個のリンパ節転移

- N1a:顕微鏡的転移***

- N1b:肉眼的転移****

N2:2〜3 個のリンパ節転移,またはリンパ節転移を伴わないsatellite またはin-transit 転移

- N2a:2〜3 個の顕微鏡的転移

- N2b:2〜3 個の肉眼的転移

- N2c:リンパ節転移を伴わない,satellite またはin-transit 転移

N3:4 個以上のリンパ節への転移,互いに癒着したリンパ節転移,リンパ節転移を伴うsatellite またはintransit 転移

* satellite: 原発部位から2cm 以内に存在し, 肉眼的または顕微鏡学的に確認される非連続性病巣。microsatellite(直径0.05 mm を超える転移細胞巣で,線維化または炎症を伴わない正常真皮によって明瞭に分離されており,主たる浸潤性の原発巣から0.3 mm 以上離れているもの)を含む。

** in transit 転移:原発部位から2cm を越えて所属リンパ節領域との間の皮膚・皮下組織に肉眼的または顕微鏡学的に確認される非連続性病巣

*** 顕微鏡的転移はセンチネルリンパ節生検(と行われたならば引き続く所属リンパ節郭清)の結果から決定される

**** 肉眼的転移は,治療的リンパ節郭清によって証明された転移,触診または画像検査で臨床的に検出可能なリンパ節転移,またはリンパ節転移が広範な被膜外浸潤を示した時と定義される


M:遠隔転移

M0:遠隔転移を認めない

M1:遠隔転移あり

- M1a:所属リンパ節を超える皮膚,皮下またはリンパ節転移

- M1b:肺転移

- M1c:その他の臓器転移,または転移部位にかかわらず血清LDH 異常高値を示す場合


第7 版 AJCC 皮膚メラノーマ病期分類
臨床病期分類* 病理病期分類**
Stage 0 Tis N0 M0 0 Tis N0 M0
Stage IA T1a N0 M0 IA T1a N0 M0
Stage IB T1b
T2a

N0

N0

M0

M0

IB T1b
T2a

N0

N0

M0

M0

Stage IIA T2b
T3a

N0

N0

M0

M0

IIA

T2b

T3a

N0

N0

M0

M0

Stage IIB T3b
T4a

N0

N0

M0

M0

IIB T3b
T4a

N0

N0

M0

M0

Stage IIC T4b N0 M0 IIC T4b N0 M0
Stage III Any T ≥ N1 M0 IIIA T1-4a
T1-4a
N1a
N2a

M0

M0

        IIIB

T1-4b

T1-4b
T1-4a
T1-4a
T1-4a

N1a
N2a
N1b
N2b
N2c

M0

M0

M0

M0

M0

        IIIC T1-4b
T1-4b
T1-4b
Any T
N1b
N2b
N2c
N3

M0

M0

M0

M0

Stage IV Any T Any N M1 IV Any T Any N M1

* 臨床病期分類は原発巣の顕微鏡的ステージングと転移巣の臨床/ 画像評価から構成される。通常は原発巣の全切除と所属リンパ節および遠隔転移について臨床的評価ののちに用いられる。

** 病理病期分類は原発巣の顕微鏡的ステージングと所属リンパ節の部分的/ 完全リンパ節切除後の病理結果から構成される。病理病期0 またはIA は除く;これらの患者はリンパ節病変の病理評価が不要である。