皮膚悪性腫瘍 〜診療ガイドライン
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有棘細胞癌(SCC)
CQ1
有棘細胞癌の発生率を減少させる目的で紫外線防御を行うことは勧められるか
日本人の中でも色白で色素沈着を起こしにくいスキンタイプの者
推奨度
B
紫外線防御が勧められる。
上記以外の日本人の大半を占めるスキンタイプの者
推奨度
C1
紫外線防御を考慮してもよいが,その有益性は不明である。
■解説
有棘細胞癌(SCC)の発生に強く相関すると考えられている因子は,紫外線に対する個人の防御能を反映するスキンタイプ,日焼けの程度,年齢である1)。日光紫外線への曝露で容易に日光皮膚炎(皮膚の発赤)を起こすが,色素沈着は起こりにくいスキンタイプを持つ者はSCC を発症しやすい。また,水疱を起こすような強い日焼けを繰り返した者の方がSCC を生じやすい。オーストラリアで生まれ育った群と途中で他国から移住した群とを比較すると,SCC の発生が前者は後者の3 倍多いことが示されている。このことより,若年者における過度の日光皮膚炎がSCC の発生に強く関与していることが示唆される2)。
サンスクリーン剤による予防効果については,オーストラリア人を対象として,SCC の発生をアウトカムとする1 件のランダム化比較試験(RCT)および日光角化症の発生をアウトカムとする2 件のRCT が実施されている。SCC の発生をアウトカムとする試験では,評価対象者1,383 人の内,サンスクリーン剤の使用によって発生を39%減少させることが,また,日光角化症については,それぞれ評価対象者431 人および1,116 人のうち,38%,24%減少させることができたと報告されている3〜5)。
しかしながら日本人については,SCC と日光紫外線との関係を示す信頼できるデータは乏しい。緯度と皮膚がん発生との関係については,兵庫県加西市と沖縄県伊江島における日光角化症の罹患率を比較したコホート研究がある。人口10 万人当たりの罹患率は加西市が144.2 人,伊江島が696.8 人であり,沖縄の日光角化症の罹患率は兵庫の5 倍であると報告されている6)。また,日本人のSCC の60%は日光露出部に発生すると報告されており,白人ほどではないが,その発生に紫外線が関与していると考えられる7)。
以上より,日本人のなかで色白でサンタン(日焼けで黒くなること)をおこしにくいスキンタイプの者や小児は,サンスクリーン剤を使用し過度の日光曝露を避けることによってSCC の発生が予防できる可能性があり,有益と考えられる。しかし,日本人の大半を占めるそれ以外のスキンタイプの者に対する紫外線防御の有益性は不明である。
文献
1) English DR, Armstrong BK, Kricker A, et al: Case-control study of sun exposure and squamous cell carcinoma of the skin, Int J Cancer, 1998; 77: 347-353.(エビデンスレベルⅣ)
2) 市橋正光:光と皮膚がん,日皮会誌,1996; 106: 225-238. (エビデンスレベルⅣ)
3) Green A, Williams G, Neale R, et al: Daily sunscreen application and betacarotene supplementation in prevention of basal-cell and squamous-cell carcinomas of the skin: a randomised controlled trial, Lancet, 1999; 354: 723-729.(エビデンスレベルⅡ)
4) Thompson SC, Jolley D, Marks R: Reduction of solar keratoses by regular sunscreen use, N Engl J Med, 1993; 329: 1147-1151.(エビデンスレベルⅡ)
5) Darlington S, Williams G, Neale R, et al: A randomized controlled trial to assess sunscreen application and beta carotene supplementation in the prevention of solar keratoses, Arch Dermatol, 2003; 139: 451-455.(エビデンスレベルⅡ)
6) Nagano T, Ueda M, Suzuki T, et al: Skin cancer screening in Okinawa, Japan, J Dermatol Sci, 1999; 19: 161-165.(エビデンスレベルⅣ)
7) 石原和之:統計調査よりみた紫外線と皮膚がん,紫外線の皮膚障害とその対策, Biotherapy, 2005; 19: 411-416. (エビデンスレベルⅣ)
CQ2
有棘細胞癌患者に術前の画像検査を行うことは勧められるか
推奨度
C1
リンパ節転移を起こしやすい因子を持つ場合や,理学的に転移が疑われる場合,あるいは原発巣の拡がりを評価する場合には,術前の画像検査を考慮してもよい。
■解説
有棘細胞癌(SCC)患者の術前画像検査と再発率,生存率との関連を検討した本格的な研究報告はみられない。
Motley らが提唱した英国のガイドライン1)では,原発巣側の因子として再発,組織所見(深部への浸潤,神経周囲浸潤,分化度),原発巣のサイズ(2 cm 以上),解剖学的部位(耳,口唇,手足,粘膜部)が,また宿主側の因子として免疫不全などを有する場合がリンパ節転移のリスクに関係するとされている。画像検査を行う症例を選択する際には,これらの因子の有無が参考になる。しかし,理学的にリンパ節転移を認めない患者に対して画像検査を行うことが予後を改善するか否かは,現時点では不明である。
Barzilai らは頭頸部SCC の22 症例を対象とした症例集積研究を行っている2)。その結果,耳下腺および頸部リンパ節への組織学的転移はそれぞれ68%および45.5%で,潜在性病変は36%および20%,また5 年生存率は転移が耳下腺のみでは60%,頸部リンパ節のみでは100%であるのに対して,両方に転移した場合には0%であると報告している。耳下腺およびその周囲リンパ節や頸部リンパ節は最初に転移を起こす部位として重要であり,リンパ節転移を起こしやすい因子を持つ症例に同部位の画像検査を行うことは,手術範囲や術後放射線療法の適否の決定に有益である。
一般に軟部組織・末梢神経・頭蓋内への進展度をみる場合にはMRI を用い,骨への浸潤の程度やリンパ節の評価のためにはCT スキャンを用いる3)。なお,オーストラリアのガイドラインでは,リンパ節転移が疑われる場合は,CT ないしエコーによる検索が妥当である,とされている4)。Nemzek らは10 例のSCC を含む19 例の頭頸部癌の症例集積研究を行い,MRI による神経周囲浸潤の有無の検出については感度95%と高かったが,神経周囲浸潤の広がりを正確に評価できたかという点に関しては感度63%であったと報告しており,切除範囲の決定に際し注意が必要である5)。
以上より,すべてのSCC 患者に対して画像検査を行う必要はなく,慎重な病歴聴取と理学的検査が優先される。Motley らが指摘したリンパ節転移を起こしやすい因子を持つ場合や1),瘢痕や慢性の皮膚潰瘍の合併によって触診が困難な場合には,術前の画像検査は安全な切除範囲の決定のために有益と考えられる3, 6, 7)。また,再発と関連する因子である神経周囲浸潤の有無を術前に把握することは,術後補助療法の適否を決める上で有益と考えられる8)。遠隔転移の検索は,すでに所属リンパ節転移が明らかな患者については,所属リンパ節領域の根治的手術の適応を決めるために必要であるが,予後の改善にどの程度寄与するかは不明である。リンパ節転移のないSCC 患者が遠隔転移を発生することは極めて稀であるので,それが臨床的に疑われる場合を除き,遠隔転移検索のための画像検査は通常行わない。
文献
1) Motley R, Kersey P, Lawrence C: Multiprofessional guidelines for the management of the patient with primary cutaneous squamous cell carcinoma, Br J Dermatol, 2002; 146: 18-25.(エビデンスレベル Ⅰ)
2) Barzilai G, Greenberg E, Cohen-Kerem R, et al: Pattern of regional metastases from cutaneous squamous cell carcinoma of the head and neck, Otolaryngol Head Neck Surg, 2005; 132: 852-856.(エビデンスレベルⅣ)
3) Mancuso AA: Diagnostic Imaging, In: Basal and Squamous Cell Skin Cancers of the Head and Neck, Weber RS, Miller MJ, Goepfert H(eds). Williams & Wilkins, Philadelphia, 1996, 79-113.(エビデンスレベルVI)
4) Cancer council Australia/Australian cancer network 2008: Surgical treatment. Clinical practice guide. Basal cell carcinoma, squamous cell carcinoma(and related lesions)-a guide to clinical management in Australia, 51-54.(エビデンスレベル Ⅰ)
5) Nemzek WR, Hecht S, Gandour-Edwards R, et al: Perineural spread of head and neck tumors: how accurate is MR imaging? Am J Neuroradiol, 1998; 19: 701-706.(エビデンスレベルⅣ)
6) Rowe DE, Carroll RJ, Day CL Jr: Prognostic factors for local recurrence, metastasis, and survival rates in squamous cell carcinoma of the skin, ear, and lip. Implications for treatment modality selection, J Am Acad Dermatol, 1992; 26: 976-990.(エビデンスレベル Ⅰ)
7) Leibovitch I, Huilgol SC, Selva D, et al: Cutaneous squamous cell carcinoma treated with Mohs micrographic surgery in Australia I. Experience over 10 years, J Am Acad Dermatol, 2005; 53: 253-260.(エビデンスレベルⅣ)
8) Williams LS, Mancuso AA, Mendenhall WM: Perineural spread of cutaneous squamous and basal cell carcinoma: CT and MR detection and its impact on patient management and prognosis, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2001; 49: 1061-1069.(エビデンスレベルⅣ)
CQ3
有棘細胞癌の原発巣は病巣辺縁から何mm 離して切除することが勧められるか
推奨度
B
6 mm 以上離して切除することが勧められる。低リスク群(解説および付2 参照)であることが確実な症例は4 mm 以上離して切除することが勧められる。
■解説
有棘細胞癌(SCC)の局所再発率という観点から切除範囲の評価を行っているシステマティック・レビューおよびランダム化比較試験(RCT)は存在しない。各国のガイドラインでは,Brodland らの論文1)が切除範囲を設定する根拠として挙げられることが多い。この研究はMohs 手術に基づく症例集積研究であり,111 症例141 個の皮膚原発性の浸潤性SCC を対象として,術後15 カ月間観察している。著者らは,腫瘍径,組織学的分化度,部位,浸潤度などを考慮して,切除範囲と局所制御率との関連を検討した。その結果,切除マージンは最低限4 mm 必要であり,さらに径2 cm 以上のもの,組織学的分化度がBroders 悪性度分類のgrade 2 以上のもの,ハイリスク領域(頭部・耳・眼瞼・鼻・口唇)のもの,皮下へ浸潤しているものについては,6 mm の切除範囲が必要であると結論づけている。
英国のガイドライン2)では,径2 cm 未満で低リスク,境界明瞭なSCC は4 mm の切除範囲により95%の症例で完全に切除できるとしている。より大きな腫瘍,組織学的にgrade 2 以上,皮下まで進展したもの,リスクの高い部位(頭皮・耳・眼瞼・鼻・口唇)では6 mm 以上の切除範囲を推奨している。
オーストラリアのガイドライン3)では,径2 cm 未満の高分化のSCC であれば,切除範囲4 mm で95%の症例で適切に切除できるとしている。径2 cm 超のSCC には10 mm までの切除範囲が必要となり,より大きなものはさらに広い切除範囲を要するとしている。
米国National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドライン4)では,SCC を低リスク群と高リスク群に分け(付2),切除範囲は低リスク群では4〜6 mm とし,高リスク群のうち体幹・四肢(L 領域)では10 mm,それ以外のものはMohs 手術かCCPDMA(complete circumferential peripheral and deep margin assessment with frozen or permanent section)を推奨し,特に切除範囲を定めていない。なお,SCC 周囲の紅斑は腫瘍に含めて切除範囲をとるように記載されている。
以上より,切除範囲は,低リスク群では4 mm,高リスク群では6 mm 以上10 mm までの幅の中で判断すればよいと考えられる。低リスク群と高リスク群との割合については,高リスク群が全体の79%を占めていたとの英国からの報告がある5)。リスク因子が1 つでもあれば高リスク群に入ることや,本ガイドラインにおけるリスク因子は英国より多く設定されているため,高リスク群と評価される割合は更に多くなる可能性がある。このことから,切除範囲は最低限6 mm を原則とし,低リスクであることが確実な症例のみ切除範囲を最低限4 mm としてもよい,とする方が現実的であり,それを反映した推奨文とした。もちろん切除標本における詳細な断端の評価は必須であり,治癒率を高めるためにはより大きな切除範囲が必要となる場合があることも留意すべきである。
文献
1) Brodland DG, Zitelli JA: Surgical margins for excision of primary cutaneous squamous cell carcinoma, J Am Acad Dermatol, 1992; 27: 241-248.(エビデンスレベルⅣ)
2) Motley R, Kersey P, Lawrence C: Multiprofessional guidelines for the management of the patient with primary cutaneous squmamous cell carcinoma, Br J Dermatol, 2002; 146: 18-25.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) Cancer council Australia/Australian cancer network 2008: Surgical treatment. Clinical practice guide, Basal cell carcinoma, squamous cell carcinoma(and related lesions)-a guide to clinical management in Australia, 51-54.(エビデンスレベル Ⅰ)
4) NCCN: Clinical practice guideline in oncology. Basal cell and squamous cell skin cancers. V.2. 2013, SCC-1-MS-25.(エビデンスレベル Ⅰ)
5) Batchelor RJ, Stables GI: An audit of the management of cutaneous squamous cell carcinoma according to the multiprofessional guidelines, Br J Dermatol, 2006; 154: 1199-1219.(エビデンスレベルⅣ)
■解説
有棘細胞癌(SCC)に対するMohs 手術と通常の外科的切除の術後成績の比較に関しては,Rowe らによる症例集積研究がある。彼らの報告では,5 年以上長期観察した皮膚原発巣の再発率は,外科的切除群では8.1%であるのに対し,Mohs 手術群では3.1%,また局所再発を起こした病変の術後再発率は,外科的切除群では23.3%であるのに対し,Mohs 手術群では10.0%と低かった。また神経親和性を示す症例における再発率は,外科的切除群では47.2%であるのに対し,Mohs 手術群では0%であった。さらに腫瘍径が2 cm 以上の症例の治癒率は,外科的切除群では58.3%であるのに対し,Mohs 手術群では74.8%と高かった。SCC は再発すると転移率が30.3%と高くなり,転移後の生存率は34.4%と低下するので,著者らは術後の再発率が低いMohs 手術を推奨している1)。
再発率が低いというMohs 手術の利点は,Leibovitch らの報告でも確認されている2)。彼らは1993〜2002 年にMohs 手術を受け,The Australian Mohs surgery database に登録された症例(症例数1,263 例,61.1%が初回治療例,38.9%が再発例,96.5%が頭頸部原発SCC)に関する症例集積研究を実施した。その結果,再発例は,初発例より最大径(p < 0.0001)や術後欠損が大きく(p < 0.0001),Mohs 手術の切除回数が多く(p < 0.0001),術前の臨床的マージンを超えた浸潤を示す症例が多かった(p = 0.02)。さらにMohs 手術後の5 年間の再発は全体で3.9%(初回群2.6%,再発群5.9%)であり,転移を生じた症例はみられなかった。再発と関連する主な因子は,再発の前歴,術前の臨床的マージンを超えた浸潤とMohs 手術の切除回数であった(腫瘍の存在部位,組織型,初診時のサイズ,術後欠損と5 年間の再発率との間に関連は認められなかった)。この試験には高リスク症例が多く含まれていたにもかかわらず,Mohs 手術によって局所再発率が低かったことから,完全切除の重要性が支持される。
以上より,Mohs 手術は再発率が低いという利点があり,通常の外科的切除と比較してより有益といえる。しかしその一方で,この方法は複雑であり,手技の習得のために特殊な訓練を要し,また一連の施術のために時間と人手を要するという欠点があり,本邦では広く普及していない。
文献
1) Rowe DE, Caroll RJ, Day CL Jr: Prognostic factors for local recurrence, metastasis, and survival rates in squamous cell carcinoma of the skin, ear, and lip, J Am Acad Dermatol, 1992; 26: 976-990.(エビデンスレベル Ⅰ)
2) Leibovitch I, Huilgol SC, Selva D, et al: Cutaneous squamous cell carcinoma treated with Mohs micrographic surgery in Australia I, Experience over 10 years, J Am Acad Dermatol, 2005; 53: 253-260.(エビデンスレベルⅣ)
■解説
所属リンパ節転移を生じていない有棘細胞癌(SCC)の治療成績は良好であることから,リンパ節転移の有無が重要な予後因子であることが示唆される。
わが国において,1987〜1994 年に27 施設で登録されたSCC 1,082 例の80 カ月生存率は,病期 Ⅰ が92%,病期Ⅱが82.6%であるのに対し,病期Ⅲのうち所属リンパ節転移を伴う症例では48%と低く1),この群に対する有効な治療法の確立が望まれる。しかし,予防的リンパ節郭清の有益性については十分に研究されておらず,その意義は明確ではない2)。従来本邦では,SCC には原則として予防的リンパ節郭清は施行せず,明らかなリンパ節転移が生じた場合に根治的郭清が施されて来た。欧米のガイドラインやレビューにおいても予防的リンパ節郭清の有益性について言及しているものはない。
以上より,SCC に対する予防的リンパ節郭清の臨床的意義は不明であり,基本的に推奨できない。
注)解説文中の病期は研究期間当時のUICC 分類のものであり,現行の病期分類とは異なる部分が多い。
文献
1) 石原和之:本邦における皮膚悪性腫瘍の統計ならびに予後因子の検討,Skin Cancer, 2005; 20: 234-248.(エビデンスレベルⅣ)
2) North JH Jr, Spellman JE, Driscoll D, et al: Advanced cutaneous squamous cell carcinoma of the trunk and extremity: Analysis of prognostic factors, J Surg Oncol, 1997; 64: 212-217.(エビデンスレベルⅣ)
CQ6
有棘細胞癌患者にセンチネルリンパ節生検を行うことは勧められるか
推奨度
C1
リンパ節腫脹はないが転移の可能性が高いと考えられる症例には,センチネルリンパ節生検を考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。
■解説
有棘細胞癌(SCC)に対するセンチネルリンパ節生検については,欧米のレビューがいくつか存在する。
Renzi らのレビューでは,過去83 例の高リスクで臨床的にリンパ節腫脹のないSCC にセンチネルリンパ節生検が行われ,14 例(16.9%)が陽性であった。多重ロジスティック回帰分析では,腫瘍の大きさがセンチネルリンパ節の転移率と相関していた(オッズ比4.27,p = 0.026)1)。
Ross らのシステマティック・レビュー2)では,肛門陰部領域原発のSCC 症例では585 例中139 例(24%),非肛門陰部領域で82 例中17 例(21%)のセンチネルリンパ節に転移が認められたとしている。センチネルリンパ節を同定できなかったのは肛門陰部領域で607 例中20 例(3%),非肛門陰部領域85 例中4 例(3%)であった。また,リンパ節郭清例におけるセンチネルリンパ節生検の偽陰性率は,肛門陰部領域213 例中8 例(4%)・非肛門陰部領域20 例中1 例(5%)であったという。Ross らはSCC に対するセンチネルリンパ節生検が生存率改善に寄与するか否かについては,コントロールをおいた研究が必要だとしている。同様に,欧米のガイドラインやレビューにおいて,本法を実施することにより生存率が上昇するか否かについて言及しているものはない。
わが国においては,全身各所のSCC 9 例中1例3),また9 例中3 例(1 例は臨床的にリンパ節腫脹あり)にセンチネルリンパ節生検陽性であったとの報告4)があるにすぎない
以上より,現時点ではSCC に対するセンチネルリンパ節生検の臨床的意義は不明であり,これを実施することで生存率が改善するという高い水準の根拠は存在しない。ただし,SCC は転移ルートが主としてリンパ行性なので,理学的所見ないし画像検査ではリンパ節に異常を認めないものの,転移のリスクが高いと考えられる症例には,センチネルリンパ節生検を考慮してもよい。リスクの評価には,英国のガイドライン5)が参考になるであろう(SCC-CQ2 解説文参照)。また,その臨床的意義に関しては,科学的に十分な精度での評価が必要である。
文献
1) Renzi C, Caggiati A, Mannooranparampil TJ, et al: Sentinel lymph node biopsy for high risk cutaneous squamous cell carcinoma: case series and review of the literature, Eur J Surg Oncol, 2006; 25: 364-369.(エビデンスレベルⅣ)
2) Ross AS, Schmults CD: Sentinel lymph node biopsy in cutaneous squamous cell carcinoma: a systematic review of the English literature, Dermatol Surg, 2006; 32: 1309-1321.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) 八代 浩,河合成海,山北高志ほか:当院における有棘細胞癌に対するsentinel node biopsy の検討,日皮会誌,2006 ; 116: 325-329.(エビデンスレベルⅣ)
4) 大塚正樹,山崎 修,浅越健治ほか:皮膚悪性腫瘍(非悪性黒色腫)に対するセンチネルリンパ節生検,西日皮膚,2006; 68: 532-537.(エビデンスレベルⅣ)
5) Motley R, Kersey P, Lawrence C: Multiprofessional guidelines for the management of the patient with primary cutaneous squmamous cell carcinoma, Br J Dermatol, 2002; 146: 18-25.(エビデンスレベル Ⅰ)
■解説
有棘細胞癌(SCC)に関する既存のレビュー(Cochrane Library,Clinical Evidence:issue 9,Evidence-based Dermatology)や英国およびオーストラリアのガイドラインでは,遠隔転移の切除に関する記載そのものが存在しない。
米国のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドライン1)もほぼ同様の立場をとっている。ただし,このガイドラインでは,遠隔転移例に対しては,多領域の専門家からなる集学的臨床試験の実施を考慮すべきであると記載されており,転移巣の切除も緩和療法の選択肢の一つとして挙げられるかもしれない。
以上より,SCC の転移巣に対する外科的治療は,切除が容易で緩和療法として有益性が期待できる場合に限られるであろう。
文献
1) NCCN: Clinical practice guideline in oncology. Basal cell and squamous cell skin cancers. V.2. 2013, SCC-1-MS-25.(エビデンスレベルⅥ)
CQ8
手術不能な有棘細胞癌の原発巣・所属リンパ節転移・遠隔転移に対して化学療法は勧められるか
推奨度
C1
手術や放射線療法が困難な症例に対する代替療法,あるいは緩和療法として化学療法を行うことを考慮してもよい。
■解説
有棘細胞癌(SCC)の進行原発巣と所属リンパ節転移に対しては,化学療法が比較的高い奏効率を示すという複数の症例集積研究が存在する。ただし,少数例についての報告がほとんどである。
Ikeda らは,リンパ節転移および遠隔転移症例を含む86 症例にpeplomycin sulfate 単剤を投与し,61.6%(完全奏効23.3%,部分奏効38.4%)の奏効率を得ている(原発巣,所属リンパ節転移,遠隔転移の奏効率はそれぞれ,68.5%,22.2%,10.0%)1)。Guthrie らは,原発巣7 症例にcisplatin とdoxorubicin を併用した化学療法を実施し,57.1%(完全奏効2 例,部分奏効2 例)の奏効率を得ている2)。またSadek らは,腫瘍径が数cm 以上の原発巣13 症例に,cisplatin,5-fluorouracil,bleomycin の併用療法を実施し,84.6%(完全奏効4 例,部分奏効7 例)の奏効率を得ている3)。さらに池田らは,リンパ節転移および遠隔転移症例を含む33 例にCPT-11 単剤を投与し,39.4%の奏効率(原発巣38.5%,リンパ節転移60.0%,肺転移33.3%)を得ている4)。
一方Burris らは,手術,放射線療法,全身化学療法の適応のないSCC 21 例32 病巣に対し,cisplatin とepinephrine の局所注入療法を実施し,完全奏効率37.5%(12/32)を得たことより,緩和目的での使用を勧めている5)。
以上より,SCC に対し,化学療法はある程度の奏効率を有し,手術や放射線療法が困難な症例に対する代替療法,あるいは緩和療法として有益であるといえよう。
なお,術後化学療法により再発率が低下する(もしくは生存率が改善する),あるいは進行例に対する化学療法で生存率が改善するという根拠は乏しく,そのような目的での化学療法の意義は不明である。
文献
1) Ikeda S, Ishihara K, Matsunaka N: Peplomycin therapy for skin cancer in Japan, Drugs Exp Clin Res, 1986; 12: 247-255.(エビデンスレベルⅣ)
2) Guthrie TH Jr, Porubsky ES, Luxenberg MN, et al: Cisplatin-based chemotherapy in advanced basal and squamous cell carcinomas of the skin: results in 28 patients including 13 patients receiving multimodality therapy, J Clin Oncol, 1990; 8: 342-346.(エビデンスレベルⅢ)
3) Sadek H, Azli N, Wendling JL, et al: Treatment of advanced squamous cell carcinoma of the skin with cisplatin, 5-fluorouracil, and bleomycin, Cancer, 1990; 66: 1692-1696.(エビデンスレベルⅢ)
4) 池田重雄,石原和之,大浦武彦ほか:有棘細胞癌および悪性黒色腫に対する塩酸イリノテカン(CPT-11)の後期第Ⅱ相試験,Skin Cancer, 1993; 8: 503-513.(エビデンスレベルⅢ)
5) Burris HA III, Vogel CL, Castro D, et al: Intratumoral cisplatin/epinephrine-injectable gel as a palliative treatment for accessible solid tumors: a multicenter pilot study, Otolaryngol Head Neck Surg, 1998; 118: 496-503. (エビデンスレベルⅢ)
■解説
有棘細胞癌(SCC)は所属リンパ節転移や遠隔転移を生じる可能性は低く,手術を基本とする局所療法により90%以上の症例で治癒が期待される1, 2)。手術療法による機能低下や整容性低下が問題となる症例や,内科的理由で手術困難な症例などでは根治的放射線療法が考慮される1〜4)。
早期例における放射線療法の成績は良好であり,T1 病変では93%,T2 病変では65〜85%の症例で局所制御が得られるが,T3〜4 病変では50〜60%程度にとどまる2, 5〜7)。顔面などの部位に発生し適切な切除断端を確保することが困難な症例,高齢者で手術困難な症例,多発病巣,抗血栓薬を内服している症例,ケロイド体質の症例においては放射線療法が考慮される7)。しかし,耳下腺に浸潤した症例やリンパ節転移例,神経周囲浸潤を生じた症例では放射線療法後の成績は不良であり生存率は17〜46%である8〜12)。頭頸部領域,肛門,会陰部より発生した腫瘍,熱傷や慢性潰瘍を発生母地とした腫瘍,再発病巣,免疫不全状態の症例などではリンパ節転移の可能性が通常より高いため画像診断を用いて慎重に評価すべきである7, 13)。
表在性腫瘍には主に電子線が用いられ,表面線量が適切な線量になるようボーラス材などを用いる。腫瘍の進展範囲や深さによっては超高圧X 線を組み合わせて治療する6)。NCCN * 1)のガイドラインでは,2 cm 未満の腫瘍に対してはマージン1〜1.5 cm をつけた照射野で64 Gy/32 分割/ 6〜6.4 週間,55 Gy/20 分割/4 週間,50 Gy/15 分割/3 週間,35 Gy/5 分割/5 日間のスケジュールが推奨されている。腫瘍径2 cm 以上の場合には1.5〜2.0 cm のマージンをつけた照射野で66 Gy/33 分割/6〜6.6 週間または55 Gy/20 分割/4 週間のスケジュールが推奨されている。また,領域リンパ節を含めた広範囲の照射を行う場合や整容性を特に重視する場合には,1 回線量として2 Gy を用いて通常分割照射を行うのが望ましい。頸部郭清術を施行しない場合にはリンパ節転移部には66〜70 Gy/33〜35 分割/6.6〜7 週間を照射する。
放射線療法の非適応としては,基底細胞母斑症候群,色素性乾皮症,疣贅状表皮発育異常症,強皮症をはじめとする膠原病,同部位に照射の既往がある症例などが挙げられ,放射線療法による二次発がんや重篤な有害事象が生じる可能性が高い(NCCN)。また,60 歳未満の患者に対しても二次発がんを考慮し可能な限り放射線療法は避けるべきとされている。
注1)NCCN:National Comprehensive Cancer Network(Version 2. 2013)
注2)解説文中の病期は研究期間当時のUICC 分類のものであり,現行の病期分類とは異なる部分が多い。
文献
1) Alam M, Ratner D: Cutaneous squamous-cell carcinoma, N Engl J Med, 2001; 344: 975-983.(エビデンスレベル Ⅰ)
2) Rowe DE, Carroll RJ, Day CL Jr: Prognostic factors for local recurrence, metastasis, and survival rates in squamous cell carcinoma of the skin, ear, and lip. Implications for treatment modality selection, J Am Acad Dermatol, 1992; 26: 976-990.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) Kwan W, Wilson D, Moravan V: Radiotherapy for locally advanced basal cell and squamous cell carcinomas of the skin, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2004; 60: 406-411.(エビデンスレベルⅣ)
4) Lansbury L, Leonardi-Bee J, Perkins W, et al: Interventions for non-metastatic squamous cell carcinoma of the skin, Cochrane Database Syst Rev, 2010; 4: CD007869.(エビデンスレベル Ⅰ)
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7) Robin M, Bruce B, Richard B: Clinical Practice Guide Basal cell carcinoma, squamous cell carcinoma(and related lesions)-a guide to clinical management in Australia. 2008.(エビデンスレベル Ⅰ)
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11) Taylor BW Jr, Brant TA, Mendenhall NP, et al: Carcinoma of the skin metastatic to parotid area lymph nodes, Head Neck, 1991; 13: 427-433.(エビデンスレベルⅣ)
12) Ch’ng S, Maitra A, Allison RS, et al: Parotid and cervical nodal status predict prognosis for patients with head and neck metastatic cutaneous squamous cell carcinoma, J Surg Oncol, 2008; 98: 101-105.(エビデンスレベルⅣ)
13) Moore BA, Weber RS, Prieto V, et al: Lymph node metastases from cutaneous squamous cell carcinoma of the head and neck, Laryngoscope, 2005; 115: 1561-1567.(エビデンスレベルⅣ)
■解説
有棘細胞癌(SCC)の多くは原発部位にとどまり手術療法を中心とした局所療法により約90%の症例が治癒する1, 2)。治癒を目指した手術療法を行うためには適切な切除断端を確保することが重要であるが,適切な切除断端が確保されなかった場合には約半数の症例で局所再発が生じる3)。また,他の再発の危険因子として,T4 症例,急速に増大する腫瘍,再発例,神経周囲浸潤例,リンパ節転移例(特に,頸部では2 個以上の転移,腋窩や鼠径部では3 個以上,径3 cm 以上のリンパ節転移,被膜外浸潤,耳下腺内リンパ節転移,皮膚浸潤)などが挙げられている。術後照射の適応としては,切除断端陽性例,神経浸潤,耳下腺浸潤などが考えられ,再発率を減少させるために術後放射線療法を考慮する2, 4〜12)。術後放射線療法の臨床的意義は前向き試験で検証されたことはなく,オーストラリアとニュージーランドを中心としたランダム化比較試験POST Study(Trans Tasman Radiation Oncology Group;TROG 05.01)が進行中であり,術後療法としての化学療法同時併用放射線療法と放射線療法単独の比較の結果が待たれる13)。
術後照射としての至適スケジュールは明らかではないが,耳下腺領域に進展した症例においては1 回2 Gy 換算で少なくとも総線量60 Gy 以上の線量を投与することが必要と考えられている10, 13)。NCCN 注1)のガイドラインでは,術後照射として50 Gy/20 分割/4 週間,または60 Gy/30 分割/6 週間の照射スケジュールが推奨されている。所属リンパ節領域を含めた広い範囲を照射する場合には,遅発性有害事象を考慮し1 回線量は1.8〜2 Gy を用いて通常分割照射で行うことが望ましい。
術後照射に含めるべき範囲に関しても統一見解はいまだないが,頭頸部領域の腫瘍,慢性炎症や潰瘍を発生母地とした腫瘍,免疫不全状態の患者などでは所属リンパ節転移を生じる可能性が高いと考えられている3)。また,切除断端が不十分な症例では原発部位を,また多発リンパ節転移や被膜外浸潤例では所属リンパ節領域を含めた放射線療法を考慮する10, 11, 14)。
術後照射とは異なるが,進行期症例における症状緩和のための放射線療法も有効であり約半数の症例で症状緩和が得られる12)。遠隔転移例であっても,生活の質の向上および維持を目的とした放射線療法が検討される。
注1)NCCN:National Comprehensive Cancer Network(Version 2. 2013)
注2)解説文中の病期は研究期間当時のUICC 分類のものであり,現行の病期分類とは異なる部分が多い。
文献
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3) Robin M, Bruce B, Richard B: Clinical Practice Guide Basal cell carcinoma, squamous cell carcinoma(and related lesions)-a guide to clinical management in Australia. 2008.(エビデンスレベル Ⅰ)
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5) McNab AA, Francis IC, Benger R, Crompton JL: Perineural spread of cutaneous squamous cell carcinoma via the orbit. Clinical features and outcome in 21 cases, Ophthalmology, 1997; 104: 1457-1462.(エビデンスレベルⅣ)
6) Kraus DH, Carew JF, Harrison LB: Regional lymph node metastasis from cutaneous squamous cell carcinoma, Arch Otolaryngol Head Neck Surg, 1998; 124: 582-587.(エビデンスレベルⅣ)
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8) Veness MJ, Palme CE, Smith M, et al: Cutaneous head and neck squamous cell carcinoma metastatic to cervical lymph nodes(nonparotid): a better outcome with surgery and adjuvant radiotherapy, Laryngoscope, 2003; 113: 1827-1833.(エビデンスレベルⅣ)
9) McCord MW, Mendenhall WM, Parsons JT, et al: Skin cancer of the head and neck with clinical perineural invasion, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2000; 47: 89-93.(エビデンスレベルⅣ)
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11) Han A, Ratner D: What is the role of adjuvant radiotherapy in the treatment of cutaneous squamous cell carcinoma with perineural invasion? Cancer, 2007; 109: 1053-1059.(エビデンスレベル Ⅰ)
12) Jackson JE, Dickie GJ, Wiltshire KL, et al: Radiotherapy for perineural invasion in cutaneous head and neck carcinomas: toward a risk-adapted treatment approach, Head Neck, 2009; 31: 604-610.(エビデンスレベルⅣ)
13) Lansbury L, Leonardi-Bee J, Perkins W, et al: Interventions for non-metastatic squamous cell carcinoma of the skin, Cochrane Database Syst Rev, 2010; 4: CD007869.(エビデンスレベル Ⅰ)
14) Moore BA, Weber RS, Prieto V, et al: Lymph node metastases from cutaneous squamous cell carcinoma of the head and neck, Laryngoscope, 2005; 115: 1561-1567.(エビデンスレベルⅣ)
■解説
有棘細胞癌(SCC)の局所再発と転移の95%は,治療後5 年以内に出現するという1)。したがって,少なくともこの期間は,再発・転移のチェックのため経過観察することは,特に高リスク群において妥当と考えられる。しかし,術後の経過観察において,定期的な画像検査が再発・転移の早期発見に寄与し,生存率が上昇するか否かを明らかにした報告は存在しない。
SCC の再発・転移,および新生病変の早期発見を目的とした定期的画像検査の意義は低いと考えられる。むしろ,患者の訴えを良く聞き,原発巣部と所属リンパ節領域を丁寧に診察し,最後に特に日光露出部に新生病変がないかを観察することが重要である。また患者自身による身体検索の教育も併せて実施すべきである1, 2)。
文献
1) Motley R, Kersey P, Lawrence C: Multiprofessional guidelines for the management of the patient with primary cutaneous squamous cell carcinoma, Br J Dermatol, 2002; 146: 18-25.(エビデンスレベル Ⅰ)
2) NCCN: Clinical practice guideline in oncology. Basal cell and squamous cell skin cancers. V.2. 2013, SCC-D 3 of 3.(エビデンスレベルⅥ)
CQ12
日光角化症の治療は何が勧められるか
外科的切除
推奨度
B
角化が顕著な病変,真皮内への浸潤が疑われる場合,手術以外の治療で効果が得られなかった症例については組織学的な確認の意味も含めて外科的な切除が勧められる。
凍結療法
推奨度
B
液体窒素による凍結療法は簡便で有効な治療法として勧められる。
Photodynamic therapy(PDT)
推奨度
B
Photodynamic therapy(PDT)は広範囲に存在する多発性の病変の治療として勧められる(2013 年12 月現在保険適用外)。
イミキモド
推奨度
B
イミキモドは手術や凍結療法を行いにくい多発性病変などの治療として勧められる。
5-FU 軟膏
推奨度
B
5-FU 軟膏は多発する薄い病変の治療として勧められる。
■解説
日光角化症は慢性的な日光紫外線の曝露によって発生した上皮内癌で,顔面と手背に好発する。
日光角化症の治療方法には手術,凍結療法,電気焼灼,炭酸ガスレーザー,photodynamictherapy(PDT),5-FU やイミキモドなどの軟膏外用療法などがある。これらの治療法の選択については,病巣と患者側の要因に基づいたガイドラインが諸外国から提案されている。ガイドライン毎に多少の差を認めるが,基本的には単発であれば凍結療法や外用療法,多発している場合は凍結療法,外用療法,PDT を,角化が強い病変や他の治療に反応しなかった病巣や真皮内浸潤が疑われる場合などには手術を選択するという方針が一般的である1〜5)。日光角化症については多くの治療法が存在するため,まず医師は治療前に患者に対して複数の治療法について説明すべきである。真皮内浸潤が疑われる病巣に手術以外の治療を行う場合は,治療前に生検で病理組織学的な確認を行う。
液体窒素を用いた凍結療法は簡便であり,日光角化症に対する有効な治療法である。凍結療法の有効性については,PDT などとの比較試験の結果では完全消失率(12〜24 週後)は70%前後と報告されている6, 7)。凍結時間や凍結時の患部の温度が根治率に影響を与えることが報告されている。凍結時間が5 秒以下での完全消失率(径5 mm 以上の病変,1 mm マージン,3 カ月後に評価)は39%であったのに対し,20 秒以上では83%だったと報告されている8)。また,凍結療法時の患部の温度を− 5 度以下にした場合(36 名の180 の薄い病変,治療6 週後の評価)の完全消失率は100%と報告されている9)。施術時の痛みが問題であり,治癒後に瘢痕や色素脱失が残ることがある。治療後も再発の有無について定期的な診察が必要である。
角化が顕著な病変,真皮内への浸潤が疑われる場合,手術以外の治療で効果が得られなかった病巣については組織学的な確認の意味も含めて外科的な切除が勧められる。マージン1 mm で切除した場合の1 年後の局所再発率は4%であったとの報告がある10)。
PDT は広範囲に存在する多発性の日光角化症に対して有効な治療法である。凍結療法や外用療法との優劣に関するデータは十分ではないが,PDT は凍結療法に比べて治療後の整容性について勝るとの報告がある6, 7)。5-FU との有益性の差は確認されていない。イミキモドに対しては中等度以上の厚みのある病変にはPDT の方が勝るとの報告がなされている7)。本邦でPDT を行える施設は限られている。
イミキモド5%は手術や凍結療法を行いにくい多発性病変などに適応となる。週3 回,16 週間外用で完全消失率は45〜57%(n = 100 以上の症例集積研究3 件)と報告されている11)。本邦では顔面と禿頭部の病変のみに保険適用である。
5-FU 軟膏は0.5%か5%濃度で1 日2 回,4 週外用での完全消失率は43〜96%と報告されている12)。多発する薄い病変に適応となる。
文献
1) Clinical Practice Guide, Basal cell carcinoma, squamous cell carcinoma(and related lesions)-a guide to clinical management in Australia, Cancer Council Australia/Australian Camcer Network 2008.(エビデンスレベル Ⅰ)
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11) Krawtchenko N, Roewert-Huber J, Ulrich M, et al: A randomised study of topical 5% imiquimod vs. topical 5-fluorouracil vs. cryosurgery in immunocompetent patients with actinic keratoses: a comparison of clinical and histological outcomes including 1-year follow-up, Br J Dermatol, 2007; 157(Suppl 2): 34-40.(エビデンスレベルⅡ)
12) Askew DA, Mickan SM, Soyer HP, Wilkinson D: Effectiveness of 5-fluorouracil treatment for actinic keratosis―a systematic review of randomized controlled trials, Int J Dermatol, 2009; 48: 453-463.(エビデンスレベル Ⅰ)
CQ13
ボーエン病の治療は何が勧められるか
外科的切除
推奨度
B
1〜4 mm 程度離して切除することが勧められる。
凍結療法
推奨度
B
切除が困難な場合は液体窒素による凍結療法を行うことが勧められる。
Photodynamic therapy(PDT)
推奨度
B
Photodynamic therapy(PDT)を行うことが勧められる(2013 年12 月現在保険適用外)。
5-FU 軟膏
推奨度
B
5-FU 軟膏を外用することが勧められる。
イミキモド
推奨度
B
イミキモドを外用することが勧められる(2013 年12 月現在保険適用外)。
■解説
ボーエン病はsquamous cell carcinoma in situ の一型であり,表皮全層に異型細胞が認められる。ボーエン病に対する主な治療は,手術療法,凍結療法,photodynamic therapy(PDT),5-FU やイミキモドによる外用療法である。諸外国のガイドラインでは病変の部位や個数に応じてこれらの治療法を使い分けることが提案されている。内容はガイドライン毎に多少の差がみられるが,小型の病変に対しては手術および凍結療法が,大型もしくは多発する病変に対してはPDT,5-FU およびイミキモドによる外用療法が勧められている1〜4)。
わが国では手術療法が一般的であるが,切除範囲に関するエビデンスは乏しい。日光角化症に関して1 mm 離して切除した場合の1 年後の局所再発率は4%であったとの報告があり5),また海外のガイドラインで低リスク群のSCC に対する切除範囲を4 mm 以上としていることより2, 3),切除範囲を1〜4 mm 程度としたが,ボーエン病に関する切除範囲は海外ガイドラインでも明記されていない。また,切除後の再発率に関してはThestrup-Pedersen は約5%と報告している6)。欧米ではMohs 手術が広く用いられるが,約半数の再発例を含む95 例にモーズ法を行ったところ6.3%に再発が見られている7)。手術療法は病理組織学的な評価が可能であることを考慮すると最も確実な治療法と考えられる。
凍結療法はその簡便性より軽症例を中心に広く用いられている。Holt は凍結療法を行った後のボーエン病の再発率は0.5%(1/128)であり,その1 例の再発は治療半年後であったと報告している8)。しかしながら,Morton らが凍結療法とPDT を比較検討したところ,1 サイクル治療後の病変消失率はPDT 群75%,凍結療法群50%であり,有害事象の面でもPDT が優れていた9)。また,その後の報告では,治療12 カ月後の病変消失率はPDT 群80%,凍結療法群67%,5-FU 外用群69%であり,やはりPDT は凍結療法より有意に病変消失率が高かった10)。一方,Ahmed らは凍結療法と掻爬術とを比較しているが,治療24 カ月後の再発数は凍結療法群で13/36,掻爬術群で4/44 であった11)。しかしながら,PDT は限られた施設でしか行えないこと,凍結療法は簡便で安価であり,また複数病変に対しても容易に治療を行えることを考慮すると,凍結療法はボーエン病に対して有用な治療法と考えられる。ただし,治療後も再発の有無について定期的な診察が必要である。
PDT を用いたボーエン病の治療に関してはシステマティック・レビューがあり,その有効性は概ね確立している12)。前述の通り,PDT は凍結療法より病変消失率が高く,また,Salim らの報告では治療12 カ月後の病変消失率はPDT 群82%,5-FU 外用群48%であり,有意差がみられている13)。さらに,Perrett らは臓器移植後患者に生じた皮膚前癌病変に対する治療6 カ月後の病変消失率が,PDT 群では89%であり,5-FU 外用群11%より有意に高く,整容面や患者の満足度でも勝っていると報告している14)。本邦においては施術できる施設は限られており,本邦では2013 年12 月現在保険収載されていない。
5-FU による外用療法も以前より広く用いられている。再発に関しては8〜14%と報告されているが6, 15, 16),前述の通りPDT との比較試験においては有効率が劣っている。しかしながら凍結療法と同様,簡便で複数病変に対応できることよりやはりボーエン病に対して有用な治療法と考えられる。
イミキモドはTLR7 のアゴニストで抗腫瘍免疫を惹起することが知られている。Patel らの報告ではイミキモド外用による治療12 週間後の病変消失率が73%であり,重篤な副作用も特に認められず,ボーエン病に対して有効であると報告されているが17),本邦では2013 年12 月現在保険収載されていない。
文献
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2) Basal cell and squamous cell skin cancers. National Comprehensive Cancer Network Clinical Practice Guidelines in Oncology 2010.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) Clinical Practice Guide, Basal cell carcinoma, squamous cell carcinoma(and related lesions)-a guide to clinical management in Australia, Cancer Council Australia/Australian Cancer Network 2008.(エビデンスレベル Ⅰ)
4) [Guidelines for the diagnosis and treatment of cutaneous squamous cell carcinoma and precursor lesions. Guidelines ], Rev Stomatol Chir Maxillofac, 2010; 111: 228-237.(エビデンスレベル Ⅰ)
5) 廣瀬寮二,富村沙織,武石恵美子,横山洋子:日光角化症の側方断端陽性例についての検討, Skin Cancer, 2010; 25 : 85-89.(エビデンスレベルⅢ)
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9) Morton CA, Whitehurst C, Moseley H, et al: Comparison of photodynamic therapy with cryotherapy in the treatment of Bowen’s disease, Br J Dermatol, 1996; 135: 766-771.(エビデンスレベルⅡ)
10) Morton C, Horn M, Leman J, et al: Comparison of topical methyl aminolevulinate photodynamic therapy with cryotherapy or Fluorouracil for treatment of squamous cell carcinoma in situ: Results of a multicenter randomized trial, Arch Dermatol, 2006; 142: 729-735.(エビデンスレベルⅡ)
11) Ahmed I, Berth-Jones J, Charles-Holmes S, et al: Comparison of cryotherapy with curettage in the treatment of Bowen’s disease: a prospective study, Br J Dermatol, 2000; 143: 759-766.(エビデンスレベルⅣ)
12) Fayter D, Corbett M, Heirs M, et al: A systematic review of photodynamic therapy in the treatment of precancerous skin conditions, Barrett’s oesophagus and cancers of the biliary tract, brain, head and neck, lung, oesophagus and skin, Health Technol Assess, 2010; 14: 1-288.(エビデンスレベル Ⅰ)
13) Salim A, Leman JA, McColl JH, et al: Randomized comparison of photodynamic therapy with topical 5-fluorouracil in Bowen’s disease, Br J Dermatol, 2003; 148: 539-543.(エビデンスレベルⅡ)
14) Perrett CM, McGregor JM, Warwick J, et al: Treatment of post-transplant premalignant skin disease: a randomized intrapatient comparative study of 5-fluorouracil cream and topical photodynamic therapy, Br J Dermatol, 2007; 156: 320-328.(エビデンスレベルⅡ)
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17) Patel GK, Goodwin R, Chawla M, et al: Imiquimod 5% cream monotherapy for cutaneous squamous cell carcinoma in situ(Bowen’s disease): a randomized, doubleblind, placebo-controlled trial, J Am Acad Dermatol, 2006; 54: 1025-1032.(エビデンスレベルⅡ)
CQ14
臨床的に単発性ケラトアカントーマを疑ったときにどのような初期対応が勧められるか
推奨度
B
病理組織学的に診断を検討するために,できる限り早期に全摘出することを勧める。全摘出が困難な場合には,全体構築がわかるような部分生検で診断を検討することを勧める。
■解説
ケラトアカントーマは,臨床的には,高齢者の露光部に生じることの多い腫瘍で,発症後急速に増大して半球状を呈し,中央に角栓を入れるクレーター状の結節を形成し,自然消退することが多いとされる病変である。完成期病変の病理組織像は,内向および外向性発育を示し,中央に角栓を入れるクレーターを形成する腫瘍で,病変の両端では立ち上がってきた表皮が下方へ折り返るいわゆる口唇状所見がある。病変を構成する腫瘍細胞はすりガラス状といわれる好酸性の豊富な細胞質を持つことが多く,種々の程度の核異型性を示すとされている。ケラトアカントーマとは,前述のような特徴的な臨床像と,病理組織学的病変構築を持つ病変と定義される。
ケラトアカントーマの本態は以前から論議されているが,すべてを有棘細胞癌とする考え方1, 2)や,すべてを良性腫瘍とする考え方,その両方を含むとする考え方,があるがコンセンサスは得られていない3)。臨床的にケラトアカントーマと判断できるような病変でも,病理組織学的には,有棘細胞癌と診断すべき所見を呈する症例があるので,病変はできるだけ早期に病理組織学的に検討されるべきである。
ケラトアカントーマは,部分生検後に急速に病変が増大することがあることや,病理組織学的にケラトアカントーマと診断されてもある一定期間,病変が増大することがあること,そして,病変が自然消退しても瘢痕を残すことが多い腫瘍であることから4),早期にできるだけ全摘出することを推奨する。
海外のガイドラインでも,経過観察するのではなく,早期の全切除を勧めている5, 6)。病変の大きさや整容面,患者の理解が得られないなどの理由で早期に全摘出できない場合は,術後の病変の増大についての対応を整えた上で,全体構築のわかるような部分生検を施行すことが望ましい。病理組織学的に経過観察が可能と判断した場合でも,病変の急速な増大がある可能性を説明し,残存病変の退縮傾向が確認できるまでは週に一度程度は診察して,慎重にその経過を追う必要がある。
文献
1) Schwartz RA: Keratoacanthoma: A clinico-pathologic enigma, Dermatol Surg, 2004; 30: 326-333.(エビデンスレベル Ⅵ)
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4) Schwartz RA: Keratoacanthoma, J Am Acad Dermatol, 1994; 30: 1-19.(エビデンスレベル Ⅵ)
5) Clinical Practice Guide, Basal cell carcinoma, squamous cell carcinoma(and related lesions)-a guide to clinical management in Australia, Cancer Council Australia/Australian Cancer Network 2008.(エビデンスレベル Ⅰ)
6) Guidelines for the diagnosis and treatment of squamous cell carcinoma and precursor lesions, Guidelines Ann Dermatol Venereol, 2009; 136: S177-S186.(エビデンスレベル Ⅰ)
SCC CQ1〜CQ14 一覧
CQ | 推奨度 | 推奨文 | |
---|---|---|---|
|
日本人の中でも色白で色素沈着を起こしにくいスキンタイプの者 | B | 紫外線防御が勧められる。 |
上記以外の日本人の大半を占めるスキンタイプの者 | C1 | 紫外線防御を考慮してもよいが,その有益性は不明である。 | |
|
C1 | リンパ節転移を起こしやすい因子を持つ場合や,理学的に転移が疑われる場合,あるいは原発巣の拡がりを評価する場合には,術前の画像検査を考慮してもよい。 | |
|
B | 6 mm 以上離して切除することが勧められる。低リスク群(解説および別表参照)であることが確実な症例は4mm 以上離して切除することが勧められる。 | |
|
C1 | 施術に精通している医師がいる施設では行うことを考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。 | |
|
C2 | 臨床的意義が不明であり,基本的には勧められない。 | |
|
C1 | リンパ節腫脹はないが転移の可能性が高いと考えられる症例には,センチネルリンパ節生検を考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。 | |
|
C2 | 臨床的意義は証明されていないので,基本的には勧められない。 | |
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C1 | 手術や放射線療法が困難な症例に対する代替療法,あるいは緩和療法として化学療法を行うことを考慮してもよい。 | |
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B | 手術療法が適応とならない有棘細胞癌に対しては根治的放射線療法を行うことが勧められる。 | |
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B | 再発の危険性が高い症例に対しては術後放射線療法を行うことが勧められる | |
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C2 | 臨床的意義が不明であり,基本的には勧められない。 | |
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外科的切除 | B | 角化が顕著な病変,真皮内への浸潤が疑われる場合,手術以外の治療で効果が得られなかった症例については組織学的な確認の意味も含めて外科的な切除が勧められる。 |
凍結療法 | B | 液体窒素による凍結療法は簡便で有効な治療法として勧められる。 | |
Photodynamic therapy(PDT) | B | Photodynamic therapy(PDT)は広範囲に存在する多発性の病変の治療として勧められる(2013 年12 月現在保険適用外)。 | |
イミキモド | B | イミキモドは手術や凍結療法を行いにくい多発性病変などの治療として勧められる。 | |
5-FU 軟膏 | B | 5-FU 軟膏は多発する薄い病変の治療として勧められる。 | |
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外科的切除 | B | 1〜4mm 程度離して切除することが勧められる。 |
凍結療法; | B | 切除が困難な場合は液体窒素による凍結療法を行うことが勧められる。 | |
Photodynamic therapy(PDT); | B | Photodynamic therapy(PDT)を行うことが勧められる(2013 年12 月現在保険適用外)。 | |
5-FU 軟膏 | B | 5-FU 軟膏を外用することが勧められる。 | |
イミキモド | B | イミキモドを外用することが勧められる(2013 年12 月現在保険適用外)。 | |
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B | 病理組織学的に診断を検討するために,できる限り早期に全摘出することを勧める。全摘出が困難な場合には,全体構築がわかるような部分生検で診断を検討することを勧める。 |
付2 有棘細胞癌の再発に対する高リスク因子
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* 上記の一つでも該当する場合は高リスク群とし,一つも該当しない場合のみ低リスク群とする。
(NCCN:Clinical practice guideline in oncology. Basal cell and squamous cell skin cancers. V.2. 2013, SCC-A より一部改変)