皮膚悪性腫瘍 〜診療ガイドライン
ガイドライン文中の文献番号から,該当する文献リストにリンクしています
乳房外パジェット病
CQ1
外陰部や肛門周囲に発生した乳房外パジェット病患者に対して,隣接臓器癌の精査は勧められるか
推奨度
B
外尿道口周囲,膣壁から膣前庭部,および肛門周囲にパジェット病変を認める症例に対しては,膀胱鏡,子宮鏡,直腸肛門鏡などによる精査が勧められる。
■解説
皮膚に隣接する臓器の癌が上皮内を移動して表皮へ到達し,表皮内癌の所見を呈することがあり,続発性(二次性)乳房外パジェット病と呼ばれる。膀胱移行上皮癌は外陰部に1, 2),子宮癌・膣癌は膣前庭部などに1),直腸肛門癌は肛門周囲にパジェット病変を生じることが知られている1)。原発性および続発性乳房外パジェット病の臨床病理組織像は酷似するが,治療法や予後が著しく異なるので,両者を鑑別することが重要である3)。原発性乳房外パジェット病の多くは表皮内癌であり,手術などにより良好な予後が得られるが,続発性乳房外パジェット病の多くはその臓器に浸潤癌が存在しており,予後不良なことが少なくない。GCDFP15 およびCK20 の免疫組織学的検索により,両者を組織学的にかなりの精度で鑑別できるが4〜7)(乳房外パジェット病-CQ2 参照),最終的には続発性乳房外パジェット病の確定診断には隣接臓器癌の存在を証明する必要がある。
外尿道口周囲,膣壁から膣前庭部,肛門周囲などに病変の中心が認められ,膀胱癌,子宮癌または直腸肛門癌からの続発性乳房外パジェット病が疑われる症例に対しては膀胱鏡,子宮鏡,直腸肛門鏡などの検査を施行すべきである3)。
文献
1) Chanda JJ: Extramammary Paget’s disease: prognosis and relationship to internal malignancy, Am J Dermatopathol, 1985; 13: 1009-1014.(エビデンスレベル Ⅰ)
2) Metcalf JS, Lee RE, Maize JC: Epidermotropic urothelial carcinoma involving the glans penis, Arch Dermatol, 1985; 121: 532-534.(エビデンスレベルⅤ)
3) Shepherd V, Davidson EJ, Davies-Humphreys J: Extramammary Paget’s disease, BJOG, 2005; 112: 273-279.(エビデンスレベル Ⅰ)
4) Goldblum JR, Hart WR: Perianal Paget’s disease: a histologic and immunohistochemical study of 11 cases with and without associated rectal adenocarcinoma, Am J Surg Pathol, 1998; 22: 170-179.(エビデンスレベルⅣ)
5) Nowak MA, Guerriere-Kovach P, Pathan A, et al: Perianal Paget’s disease: distinguishing primary and secondary lesions using immunohistochemical studies including gross cystic disease fluid protein-15 and cytokeratin 20 expression, Arch Pathol Lab Med, 1998; 122: 1077-1081.(エビデンスレベルⅤ)
6) Goldblum JR, Hart WR: Vulvar Paget’s disease: a clinicopathologic and immunohistochemical study of 19 cases, Am J Surg Pathol, 1997; 21: 1178-1187.(エビデンスレベルⅣ)
7) Lopez-Beltran A, Luque RJ, Moreno A, et al: The pagetoid variant of bladder urothelial carcinoma in situ: a clinicopathological study of 11 cases, Virchows Arch, 2002; 441: 148-153.(エビデンスレベルⅤ)
CQ2
原発性乳房外パジェット病と続発性乳房外パジェット病の鑑別に免疫組織化学的検索は勧められるか
推奨度
B
原発性乳房外パジェット病と続発性乳房外パジェット病の鑑別にサイトケラチン20 とgross cystic disease fluid protein 15:GCDFP15 の免疫組織化学的検索は勧められる。
■解説
GCDFP15 は正常組織では免疫組織化学的に汗腺・乳腺・唾液腺に陽性だが,消化管は陰性である1)。当初,アポクリン腺に特異的なマーカーとされていたが,その後,エクリン腺も陽性であると報告されている2)。アポクリン腺癌などの汗腺系腫瘍や乳癌が陽性反応を呈し,消化管腺癌は陰性である1)。サイトケラチン20(CK20)は正常組織では免疫組織化学的に消化管上皮,膀胱上皮,メルケル細胞に陽性で,これらの系統の腫瘍である消化管腺癌・膀胱移行上皮癌・メルケル細胞癌も陽性である3)。
免疫組織化学的に原発性乳房外パジェット病はGCDFP15 陽性2),CK20 陰性4, 5)(GCDFP15 + /CK20 −)であることが知られている。直腸癌は肛門周囲にパジェット病変を形成することがあるが,この場合,GCDFP15 − /CK20 +である4, 6)。膀胱移行上皮癌も外尿道口から外陰部にパジェット病変を形成することが知られているが,この場合もGCDFP15 − /CK20 +である5, 7)。したがって,GCDFP15 とCK20 の免疫組織化学的検索は原発性と続発性の乳房外パジェット病の鑑別に役立つ。しかしながら,これらの免疫染色所見の真の精度は不明であり,例外的に肛囲パジェット病においてGCDFP15 − /CK20 +となることや4),外陰部乳房外パジェット病においてGCDFP15 + /CK20 +となるとの報告もあるので5),注意を要する。
文献
1) Mazoujian G, Pinkus GS, Davis S, et al: Immunohistichemistry of a gross cystic disease fluid protein(GCDFP-15)of the breast: a marker of apocrine epithelium and breast carcinomas with apocrine features, Am J Pathol, 1983; 110: 105-112.(エビデンスレベルⅣ)
2) Ordóñez NG, Awalt H, MacKay B: Mammary and extramammary Paget’s disease: an immunohistochemical and ultrastructural study, Cancer, 1987; 59: 1173-1183.(エビデンスレベルⅣ)
3) Moll R, Löwe A, Laufer J, Franke WW: Cytokeratin 20 in human carcinomas: a new histodiagnostic marker detected by monoclonal antibodies, Am J Pathol, 1992; 140: 427-447.(エビデンスレベルⅣ)
4) Goldblum JR, Hart WR: Perianal Paget’s disease: a histologic and immunohistochemical study of 11 cases with and without associated rectal adenocarcinoma, Am J Surg Pathol, 1998; 22: 170-179.(エビデンスレベルⅣ)
5) Goldblum JR, Hart WR: Vulvar Paget’s disease: a clinicopathologic and immunohistochemical study of 19 cases, Am J Surg Pathol, 1997; 21: 1178-1187.(エビデンスレベルⅣ)
6) Nowak MA, Guerriere-Kovach P, Pathan A, et al: Perianal Paget’s disease: distinguishing primary and secondary lesions using immunohistochemical studies including gross cystic disease fluid protein-15 and cytokeratin 20 expression, Arch Pathol Lab Med, 1998; 122: 1077-1081.(エビデンスレベルⅤ)
7) Lopez-Beltran A, Luque RJ, Moreno A, et al: The pagetoid variant of bladder urothelial carcinoma in situ: a clinicopathological study of 11 cases, Virchows Arch, 2002; 441: 148-153.(エビデンスレベルⅤ)
CQ3
肉眼的境界が不明瞭な乳房外パジェット病に対するmapping biopsy は勧められるか
推奨度
C1
肉眼的境界が不明瞭な乳房外パジェット病に対しては,mapping biopsy を行うことを考慮してもよい。
■解説
乳房外パジェット病は一般的に局所再発率が高いとされている1)。その理由として,部位的特殊性による生理的色素沈着により腫瘍の境界がわかりにくいこと2),多中心性に病巣が存在する傾向があること3),一見正常にみえる周辺部分にも組織学的にパジェット細胞が存在していること3)などが挙げられる。また,外陰部や肛門周囲という部位的特殊性から湿疹化,感染,湿潤化などによる二次的修飾を受けやすく,腫瘍の肉眼的境界の判定が難しくなる。この場合,適切な外用処置を行うことが大切であり,これによって二次的修飾が消失し,肉眼的境界が明確になることが多い2)。
しかし,上述の処置によっても境界が明瞭化しない場合には,mapping biopsy(病巣周囲を複数箇所,小さな円筒状のメスで生検し,癌細胞の有無を検索する方法)を行って,切除マージンを設定することがある。Mapping biopsy の方法に統一された見解はないが,境界不明瞭な部分において臨床的に境界と推定されるところから周囲放射状に1 cm 程度外側を中心に生検するとよい。境界明瞭な部分での施行は不要である。Mapping biopsy 後に治癒的切除した境界不明瞭な病変が,mapping biopsy しないで治癒的切除した境界明瞭な病変との局所再発率に有意差がなかったという後ろ向き研究がある4)。また,女性外陰部や肛門周囲に生じた病変の粘膜側,主病巣から離れた不完全脱色素斑などについては肉眼的な判断が難しいので積極的にmapping biopsy を行うことが多い。
また,局所再発率を低下させるかどうかについての信頼性の高いエビデンスは存在しないが,術中の凍結迅速診断も組み合わせるとよい5, 6)。
文献
1) Mohs FE, Blanchard L: Microscopically controlled surgery for extramammary Paget’s disease, Arch Dermatol, 1979; 115: 706-708.(エビデンスレベルⅤ)
2) Murata Y, Kumano K: Extramammary Paget’s disease of the genitalia with clinically clear margins can be adequately resected with 1 cm margin, Eur J Dermatol, 2005; 15: 168-170.(エビデンスレベルⅣ)
3) Gunn RA, Gallanger HS: Vulvar Paget’s disease: a topographic study, Cancer, 1980; 46: 590-594.(エビデンスレベルⅤ)
4) Hatta N, Yamada M, Hirano T, et al: Extramammary Paget’s disease: treatment, prognostic factors and outcome in 76 patients, Br J Dermatol, 2008; 158: 313-318.(エビデンスレベルⅣ)
5) Xu K, Fang Z, Zheng J, et al: Intraoperative frozen biopsy in wide surgical excision of Paget’s disease of the scrotum, Urol Oncol, 2009; 27: 483-485.(エビデンスレベルⅣ)
6) Zhu Y, Ye DW, Chen ZW, et al: Frozen section-guided wide local excision in the treatment of penoscrotal extramammary Paget’s disease, BJU Int, 2007; 100: 1282-1287.(エビデンスレベルⅣ)
CQ4
肉眼的境界が明瞭な乳房外パジェット病の原発巣は何cm 離して切除することが勧められるか
推奨度
B
肉眼的境界が明瞭な乳房外パジェット病の原発巣を完全切除するためには,1 cm 程度の皮膚側の切除範囲(切除マージン)が勧められる。
■解説
乳房外パジェット病を3〜4 cm のマージンで広範囲切除し,病理組織学的に検討したところ,腫瘍細胞は肉眼的境界を越えていたという症例集積研究や1),切除マージンを全周にわたって3 cm 以上とった5 例では切除断端に腫瘍細胞を認めなかったが,切除マージンが全周または一部において3 cm 未満であった5 例中4 例では切除断端に腫瘍細胞が認められたという症例対照研究がある2)。さらに,17 例の乳房外パジェット病に対し,肉眼的辺縁から3 cm および6 cm 離れた部位をmapping biopsy したところ,それぞれ4.4%(6 カ所/136 カ所),0.7%(1 カ所/136 カ所)の頻度でパジェット細胞が見出されたとの症例対照研究がある3)。以上より,本腫瘍には3 cm 以上の切除マージンが必要とする見解がある。さらにまた,初発病変あるいは(Mohs 手術以外での切除後に)局所再発した乳房外パジェット病に対し,Mohs 手術を施行したデータから,腫瘍細胞を消失させるのに必要なマージンの平均は2.5 cm,97%の症例で組織学的に腫瘍消失が得られるためにはマージン5 cm が必要とする症例対照研究もある4)。このように,乳房外パジェット病の切除マージンは3 cm 以上必要とする考え方が優勢であった。しかしながら,66 例の治癒的切除を施行した乳房外パジェット病における後ろ向き研究では,切除マージン2 cm 以下と2cm 超との間の局所再発率に有意差はみられなかった5)。このことからは,切除マージンは2 cm 以下でよいことが示唆される。
さらに,1 cm の切除マージンで切除された境界明瞭な46 例の乳房外パジェット病において,肉眼的境界と組織学的境界の誤差は0.334 ± 1.183 mm(− 3.0 〜+ 5.4 mm)であり,全例において局所再発がみられなかったという後ろ向き研究がなされた6)。この報告では,清拭や適切な外用剤塗布などの術前処置を行うことにより病変の境界が明瞭となり,狭い範囲での切除が可能になると主張されている。
以上より,病巣の肉眼的境界が明瞭な部分の切除マージンは1 cm 程度が推奨される。なお,粘膜側や深部マージンに関しては参考となる論文は存在しない。現実的には,粘膜側では排尿・排便機能の温存を考慮して切除マージンが決定されることが多い。深部マージンについては,パジェット細胞が皮膚付属器上皮に沿って増殖することがあるため,それらを完全に含めるレベルでの切除が推奨される。
文献
1) 藤井義久,白井信之,松永悦治:組織学的に病巣の範囲を検討した腋窩および外陰部Paget 病の4 例,西日皮膚,1984; 46: 1118-1122.(エビデンスレベルⅤ)
2) 坂井秀彰,田中武司,高田 実ほか:乳房外Paget 病の治療:特にマージンの幅と所属リンパ節郭清について, Skin Cancer, 1990; 5: 85-88.(エビデンスレベルⅣ)
3) 織田知明,山田秀和,手塚 正:Mapping biopsy を施行した乳房外Paget 病17 例の組織学的検討, Skin Cancer, 1999; 14: 172-177.(エビデンスレベルⅣ)
4) Hendi A, Brodland DG, Zitelli JA: Extramammary Paget’s disease: surgical treatment with Mohs micrographic surgery, Am J Dermatopathol, 2004; 51: 767-773.(エビデンスレベルⅣ)
5) Hatta N, Yamada M, Hirano T, et al: Extramammary Paget’s disease: treatment, prognostic factors and outcome in 76 patients, Br J Dermatol, 2008; 158: 313-318.(エビデンスレベルⅣ)
6) Murata Y, Kumano K: Extramammary Paget’s disease of the genitalia with clinically clear margins can be adequately resected with 1 cm margin, Eur J Dermatol, 2005; 15: 168-170.(エビデンスレベルⅣ)
CQ5
In situ の乳房外パジェット病原発巣に対して症状緩和を目的とした光線力学的療法は勧められるか
推奨度
C1
高齢等の理由で手術が困難な乳房外パジェット病原発巣に対して緩和治療として施行を考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。
■解説
光線力学的療法(photodynamic therapy;PDT)は腫瘍親和性の光感受性物質を細胞内に取り込ませ,光化学反応により腫瘍細胞を選択的に死滅させる治療法である。表在性皮膚腫瘍に対しては5- アミノレブリン酸(ALA)外用と633 nm のレーザー光の組み合わせによるPDT の有効性が報告されているほか,ALA を取り込んだ腫瘍細胞が蛍光を発することを利用して腫瘍の存在範囲を確認する光線力学的診断が行われている1)。
乳房外パジェット病に対しては,手術不能例や他の治療後の再発例にPDT が試みられているが,いずれも後ろ向き研究や症例報告が中心であって2〜10),外科治療と生存率を比較したランダム化比較試験はみられない。これらの報告のなかにはPDT により完全奏効が得られたとする症例も含まれており,乳房外パジェット病の特に表皮内病変に対する有益性が示唆される。しかし,病巣辺縁などからの再発もあり4)5)8),使用する光源や照射法に改善の余地があることも指摘されている8)。ただし,全身状態の悪い高齢者に対する局所療法としての有用性は認められるため,手術不能例などに対する緩和治療としての施行を考慮してもよい。
文献
1) 清水純子,玉田康彦,中瀬古裕乃ほか:Photodynamic diagnosis(PDD)が腫瘍細胞の浸潤範囲確認に有用であった乳房外 Paget 病(陰部)の 2 例,日皮会誌,2001; 111: 1501-1504.(エビデンスレベルⅤ)
2) Wang J, Gao M, Wen S, et al: Photodynamic therapy for 50 patients with skin cancers or precancerous lesions, Chin Med Sci J, 1991; 6: 163-165.(エビデンスレベルⅤ)
3) Henta T, Itoh Y, Kobayashi M, et al: Photodynamic therapy for inoperable vulval Paget’s disease using delta-aminolaevulinic acid: successful management of a large skin lesion, Br J Dermatol, 1999; 141: 347-349.(エビデンスレベルⅤ)
4) Runfola MA, Weber TK, Rodriguez-Bigas MA, et al: Photodynamic therapy for residual neoplasms of the perianal skin, Dis Colon Rectum, 2000; 43: 499-502.(エビデンスレベルⅤ)
5) Shieh S, Dee AS, Cheney RT, et al: Photodynamic therapy for the treatment of extramammary Paget’s disease, Br J Dermatol, 2002; 146: 1000-1005.(エビデンスレベルⅣ)
6) Zawislak AA, McCarron PA, McCluggage WG, et al: Successful photodynamic therapy of vulval Paget’s disease using a novel patch-based delivery system containing 5-aminolevulinic acid, BJOG, 2004; 111: 1143-1145.(エビデンスレベルⅤ)
7) Tulchinsky H, Zmora O, Brazowski E, et al: Extramammary Paget’s disease of the perianal region, Colorectal Dis, 2004; 6: 206-209.(エビデンスレベルⅤ)
8) Mikasa K, Watanabe D, Kondo C, et al: 5-Aminolevulinic acid-based photodynamic therapy for the treatment of two patients with extramammary Paget’s disease, J Dermatol, 2005; 32: 97-101.(エビデンスレベルⅤ)
9) Raspagliesi F, Fontanelli R, Rossi G, et al: Photodynamic therapy using a methyl ester of 5-aminolevulinic acid in recurrent Paget’s disease of the vulva: a pilot study, Gynecol Oncol, 2006; 103: 581-586.(エビデンスレベルⅤ)
10) 福田知雄:光線力学療法(PDT)乳房外パジェット病に 対する非観血的治療法 光線力学療法とイミキモド外用療法, Skin Cancer, 2010; 24: 455-462.(エビデンスレベルⅤ)
CQ6
In situ の乳房外パジェット病原発巣に対して症状緩和を目的としたイミキモド(imiquimod)外用は勧められるか
推奨度
C1
高齢等の理由で手術が困難な乳房外パジェット病原発巣に対して緩和治療として施行を考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。
■解説
Imiquimod は細胞表面のtoll-like receptor 7 を介してインターフェロン等のサイトカインを誘導し,自然免疫を活性化する。抗ウイルス作用や抗腫瘍効果を有し,本邦では尖圭コンジローマと日光角化症の治療薬として5%クリーム剤が発売されている。欧米ではこの2 疾患に加え表在性基底細胞癌にも許可を得ており,表在性の皮膚腫瘍(ボーエン病,メラノーマ,皮膚T 細胞リンパ等)の治療にも応用されている1)。
乳房外パジェット病でも手術不能例や術後再発例に対して本剤が有効との報告が増えてきており2〜4),Cohen ら5)のレビューでは9 例中7 例と高い完全奏効率が報告されている。使用法は6〜16 週間外用を継続する。有害事象としては灼熱感,痛みなどの局所反応のほか,悪心・嘔吐といった全身症状がみられることもある。乳房外パジェット病に対しては保険適用外となるが,治療の簡便性を考慮すると手術不能例に対する緩和治療として施行を考慮してもよい。
文献
1) Berman B, Poochareon VN, Villa AM: Novel dermatologic uses of the immune response modifier imiquimod 5% cream, Skin Therapy Lett, 2002; 7: 1-6.(エビデンスレベルⅥ)
2) Badgwell C, Rosen T: Treatment of limited extent extramammary Paget’s disease with 5 percent imiquimod cream, Dermatol Online J, 2006; 12: 22.(エビデンスレベルⅤ)
3) Sendagorta E, Herranz P, Feito M, et al: Successful treatment of three cases of primary extramammary Paget’s disease of the vulva with Imiquimod-proposal of a therapeutic schedule, J Eur Acad Dermatol Venereol, 2010; 24: 490-492.(エビデンスレベルⅤ)
4) 福田知雄:光線力学療法(PDT)乳房外パジェット病に対する非観血的治療法 光線力学療法とイミキモド外用療法, Skin Cancer, 2010; 24: 455-462.(エビデンスレベルⅤ)
5) Cohen PR, Schulze KE, Tschen JA, et al: Treatment of extramammary Paget disease with topical imiquimod cream: case report and literature review, South Med J, 2006; 99: 396-402.(エビデンスレベルⅤ)
CQ7
真皮内浸潤を認める乳房外パジェット病に対するセンチネルリンパ節生検は勧められるか
推奨度
C1
リンパ節転移の有無は重要な予後因子であることから,リンパ節転移の有無を判断するために施行を考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。
■解説
乳癌やメラノーマではセンチネルリンパ節生検の実施が一般化しているが,乳房外パジェット病においては,少数の症例集積研究と症例報告がみられるのみである。したがって,本法が乳房外パジェット病患者の予後を改善するという証拠は存在しない。
しかし,乳房外パジェット病においてリンパ節転移の有無は重要な予後因子であり1)2),その組織学的確認は治療方針決定の上で重要である。本症は高齢者に好発し,広範なリンパ節郭清など長期臥床の可能性がある治療を行いにくい症例が多い。侵襲的な治療を避ける目的で近年本邦でも乳房外パジェット病にセンチネルリンパ節生検を行った報告は増加しており1, 3〜6),色素とアイソトープとの併用でセンチネルリンパ節が正確に同定されることが示されている。ただし,正中部付近に発生し,病巣の範囲が広く所属リンパ節に接近しているといった本症の臨床的特徴や,転移によるリンパ管の閉塞などの要因でセンチネルリンパ節が正確に同定できない点など,その施行に当たっては注意を要することも指摘されている7, 8)。
以上,乳房外パジェット病においてセンチネルリンパ節生検が予後に与える影響は不明であるが,真皮内浸潤を認める乳房外パジェット病に対し所属リンパ節への顕微鏡的転移の有無を知るためにセンチネルリンパ節生検を行うことを考慮してもよい。ただし,臨床研究の範囲内で本法に習熟した専門医が行うことが望ましい。
文献
1) 吉野公二,山崎直也,山本明史ほか:乳房外パジェット病でのリンパ節転移およびセンチネルリンパ節生検について,日皮会誌,2006; 116: 1473-1477.(エビデンスレベルⅣ)
2) Hatta N, Yamada M, Hirano T, et al: Extramammary Paget’s disease: treatment, prognostic factors and outcome in 76 patients, Br J Dermatol, 2008; 158: 313-318.(エビデンスレベルⅣ)
3) Hatta N, Morita R, Yamada M, et al: Sentinel lymph node biopsy in patients with extramammary Paget’s disease, Dermatol Surg, 2004; 30: 1329-1334.(エビデンスレベルⅣ)
4) 清原祥夫,吉川周佐,藤原規広ほか:【最近のトピックス2005 Clinical Dermatology 2005】新しい検査法と診断法外陰部Paget 病におけるセンチネルリンパ節生検,臨皮,2005; 59: 71-74. (エビデンスレベルⅣ)
5) 神吉晴久,池田哲哉,高井利浩ほか:当院で過去5 年間に経験した乳房外Paget 病患者の統計とセンチネルリンパ節生検適応症例の検討,日皮会誌,2009; 119: 3029-3036. (エビデンスレベルⅣ)
6) 水本一生,辻野佳雄,新原寛之ほか:センチネルリンパ節生検を行った乳房外Paget 病の9 例, Skin Cancer, 2009; 24: 108-111.(エビデンスレベルⅤ)
7) 吉野公二,青木見佳子,川名誠司:乳房外パジェット病におけるSentinel lymph node biopsy トレーサーの投与部位についての検討,日皮会誌,2004; 114: 1539-1542. (エビデンスレベルⅤ)
8) de Hullu JA, Oonk MH, Ansink AC, et al: Pitfalls in the sentinel lymph node procedure in vulvar cancer, Gynecol Oncol, 2004; 94: 10-15.(エビデンスレベルⅤ)
■解説
リンパ節転移陽性の乳房外パジェット病は予後が不良であり,本邦ではリンパ節転移が疑われる乳房外パジェット病に予防的リンパ節郭清が行われることがある1)。
しかし,乳房外パジェット病における予防的リンパ節郭清の有益性に関しては,その施行の有無による生存率の差異を比較したランダム化または非ランダム化比較試験は全く存在しない。わが国の限られた数の後ろ向き研究および症例集積の経験から,原発が浸潤癌でリンパ節腫脹のある例に郭清を勧める報告もみられるが2, 3),予後に及ぼす影響には言及されていない。永松らの単一施設における経年的比較ではin situ 症例における予防的郭清の有無が生命予後に影響しないことが示されている4)。外陰部は炎症性に所属リンパ節腫脹が生じやすい部位でもあり,山田らはリンパ節腫脹がみられた症例のうち組織学的に転移が検出されたのは48%に過ぎなかったことから,センチネルリンパ節生検を行い転移の有無を確認することを推奨している5)。特に,腫瘍細胞が表皮内に限局した乳房外パジェット病は,リンパ節転移を生じることはないので,予防的リンパ節郭清は勧められない2, 6)。
文献
1) 上田英一郎,森島陽一,永田 誠:京都府立医科大学皮膚科における最近10 年間(1982〜1991)のPaget 病の統計的観察,西日皮膚,1996; 58: 116-120.(エビデンスレベルⅣ)
2) 大原国章,大西泰彦,川端康浩:乳房外Paget病の診断と治療, Skin Cancer, 1993; 8: 187-208.(エビデンスレベルⅣ)
3) 菊池英維,津守伸一郎,黒川基樹ほか:宮崎大学医学部皮膚科学教室開講以来27 年間に経験した乳房外Paget 病58 例の統計,西日皮膚,2005; 67: 387-391.(エビデンスレベルⅣ)
4) 永松将吾,中岡啓喜,村上信司ほか:愛媛大学皮膚科における乳房外Paget 病100 例の検討, Skin Cancer, 2009; 24: 30-34.(エビデンスレベルⅣ)
5) 山田瑞貴,藤本晃英,竹原和彦ほか:金沢大学皮膚科における最近16 年間の乳房外Paget 病の統計, Skin Cancer, 2006; 20: 311-317.(エビデンスレベルⅣ)
6) 町田秀樹,中西幸浩,山本明史ほか:乳房外Paget 病患者45 人の臨床病理学的検討, Skin Cancer, 2001; 16: 114-119.(エビデンスレベルⅣ)
CQ9
両側に複数の鼠径リンパ節転移を伴う外陰部乳房外パジェット病に対して外科的根治術は勧められるか
推奨度
C2
両側に複数の鼠径リンパ節転移がある場合,両鼡径の根治的郭清を含む外科的根治術は勧められない。ただし,両側に1 個ずつなど根治可能と考えられる場合や,出血などに対する緩和治療としての外科的治療はその限りではない。
■解説
両側鼠径リンパ節に転移を生じた外陰部の乳房外パジェット病の予後は極めて悪いことが知られている。両鼠径リンパ節転移例に対する外科的根治術の有益性を比較したランダム化または非ランダム化比較試験は存在せず,限られた数の後ろ向き研究と症例集積研究しか報告されていない1〜3)。大原ら1)の報告によれば,片側のみのリンパ節転移の場合は5 例中1 例が,両側リンパ節転移の場合は6 例全例が原病死しており,両側リンパ節転移への根治手術の適応を疑問視している。Hatta らの後ろ向き研究でも両側リンパ節転移例は片側例に比べ有意に予後の悪いことが示されている3)。主に両側鼡径リンパ節転移を伴うような進行期乳房外パジェット病の患者はしばしば癌性リンパ管症により「パンツ型紅斑」と呼ばれる特徴的な皮膚症状を呈することがあるが,その場合の生命予後も極めて悪いことが知られている4)
したがって,両側鼠径リンパ節転移がある外陰部乳房外パジェット病に対し,根治術としての外科療法を行うことは推奨されない。ただし,両側に1 個ずつなど根治可能と考えられる場合や,出血などに対する緩和治療としての外科的治療はその限りではない。
文献
1) 大原国章,大西泰彦,川端康浩:乳房外Paget 病の診断と治療, Skin Cancer, 1993; 8: 187-208.(エビデンスレベルⅣ)
2) 並木 剛,柳川 茂:埼玉県立がんセンターにおける15 年間の外陰部Paget 病の治療経験, Skin Cancer, 1998; 12: 374-377.(エビデンスレベルⅣ)
3) Hatta N, Yamada M, Hirano T, et al: Extramammary Paget’s disease: treatment, prognostic factors and outcome in 76 patients, Br J Dermatol, 2008; 158: 313-318.(エビデンスレベルⅣ)
4) Murata Y, Kumano K, Tani M: Underpants-pattern erythema: a previously unrecognized cutaneous manifestation of extramammary Paget’s disease of the genitalia with advanced metastatic spread, Am J Dermatopathol, 1999; 40: 949-956.(エビデンスレベルⅣ)
■解説
乳房外パジェット病に対する術後補助化学療法の有益性に関しては,施行の有無による生存率の差異を比較したランダム化または非ランダム化比較試験は存在しない。術後補助化学療法の有益性が示唆された症例報告もない。わが国の複数の施設における限られた数の症例集積研究や,国内外のエキスパートによる総説1〜3)にも,術後補助化学療法に関する記載は認められない。また,アンケート調査による集計では,病期Ⅲ(分類試案)での放射線・化学療法併用の有無が予後に差を与えなかったことが示された4)。したがって,その実施を推奨することは現在のところできない。しかし,乳房外パジェット病-CQ11 で示すように化学療法による転移巣の縮小効果を証明する報告も数多くあり3〜5),今後の検討の余地が十分にある。
文献
1) Shepherd V, Davidson EJ, Davies-Humphreys J: Extramammary Paget’s disease, BJOG, 2005; 112: 273-279.(エビデンスレベル Ⅰ)
2) 宇原 久,斎田俊明:皮膚の腺癌の化学療法・免疫療法皮膚悪性腫瘍に対する化学療法及び免疫化学療法の適応と現状 乳房外パジェット病・汗腺癌, Skin Cancer, 2003; 18: 93-98.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) 高橋 聡:化学療法を知る Non-melanoma skin cancerの化学療法, Skin Cancer, 2010; 24: 504-509.(エビデンスレベル Ⅰ)
4) 神谷秀喜:Paget 病:進行期への対応,日皮会誌,2009; 119: 2838-2841. (エビデンスレベルⅣ)
5) Zhu Y, Ye DW, Yao XD, et al: Clinicopathological characteristics, management and outcome of metastatic penoscrotal extramammary Paget’s disease, Br J Dermatol, 2009; 161: 577-582.(エビデンスレベルⅤ)
CQ11
遠隔転移を生じた進行期乳房外パジェット病患者に化学療法を実施することは勧められるか
推奨度
C1
遠隔転移を生じた進行期の乳房外パジェット病患者に対して有効な化学療法は確立していないが実施を考慮してもよい。
■解説
遠隔転移を生じた進行期の乳房外パジェット病に対して有効な化学療法剤は確立していない。しかし単剤ではetoposide,docetaxel などが,併用では5-fluorouracil + mitomycin c,carboplatin + 5-fluorouracil + leucovorin,epirubisin + mitomycin c + vincristine + carboplatin or cisplatin + 5-fluorouracil,cisplatin(low dose)+ 5-fluorouracil などの組み合わせで完全奏効または部分奏効が得られたという症例報告がある1〜5)。症例数が少ないため,多数例を対象とした臨床試験は困難で,進行期の乳房外パジェット病に対するこれらの化学療法の奏効率は不明である6)。また,有効例においてもその効果は一過性であることが多く,生存期間の延長が期待できるか否かも不明である。しかし,手術治療・放射線治療での効果の及ばない症例では,最近の文献レビューの総説的論文においても化学療法の使用が支持されており7, 8)考慮してもよい。
文献
1) 宇原 久,斎田俊明:皮膚悪性腫瘍に対する化学療法及び免疫化学療法の適応と現状:乳房外パジェット病・汗腺癌, Skin Cancer, 2003; 18: 93-98.(エビデンスレベル Ⅰ)
2) Kariya K, Tsuji T, Schwartz RA: Trial of low-dose 5-fluorouracil/cisplatin therapy for advanced extramammary Paget’s disease, Dermatol Surg, 2004; 30: 341-344.(エビデンスレベルⅤ)
3) Mochitomi Y, Sakamoto R, Gushi A, et al: Extramammary Paget’s disease/carcinoma successfully treated with a combination chemotherapy: report of two cases, J Dermatol, 2005; 32: 632-637.(エビデンスレベルⅤ)
4) Fujisawa Y, Umebayashi Y, Otsuka F: Metastatic extramammary Paget’s disease successfully controlled with tumour dormancy therapy using docetaxel, Br J Dermatol, 2006; 154: 375-376.(エビデンスレベルⅤ)
5) 山崎直也:これまでに行なわれた進行期乳房外Paget 病の治療の総括とそこから見えてくるもの, Skin Cancer, 2009; 23: 341-346.(エビデンスレベルⅣ)
6) 高橋 聡:化学療法を知る Non-melanoma skin cancerの化学療法, Skin Cancer, 2010; 24: 504-509.(エビデンスレベル Ⅰ)
7) Shepherd V, Davidson EJ, Davies-Humphreys J: Extramammary Paget’s disease, BJOG, 2005; 112: 273-279.(エビデンスレベル Ⅰ)
8) Kanitakis J: Mammary and extramammary Paget’s disease, J Eur Acad Dermatol Venereol, 2007; 21: 581-590.(エビデンスレベル Ⅰ)
CQ12
手術不能の乳房外パジェット病患者に症状緩和を目的とした放射線療法は勧められるか
推奨度
B
手術不能の乳房外パジェット病患者に対する根治的放射線療法の意義は確立していないが,症状緩和のための姑息的治療として放射線療法は勧められる。
■解説
乳房外パジェット病には手術療法を中心とした治療法が一般的に選択される1, 2)。しかし,手術後の再発や切除不能例などでは放射線療法が選択されることがある2, 3)。これまでの報告は症例報告や少数例を解析した後ろ向き研究が中心であり放射線療法の有益性を正確に評価することはできないが,一部の症例では放射線療法により長期にわたって腫瘍が制御されることが報告されている1, 2, 4〜9)。放射線療法単独で治療された3 例の報告では56 Gy 以上の照射により12〜60 カ月の経過で再発がなかったとしている6)。また,55〜81 Gy の高い線量を投与した3 例の症例報告では,一次効果として3 例全例に腫瘍の消失が認められ,うち2 例はその後も再発が見られなかったとしている9)。
症状緩和効果に焦点をあてて解析した報告がなく,姑息的治療としての放射線療法の意義は明確ではない。しかし,放射線療法により一部の症例では腫瘍縮小効果が見られることから,放射線療法は症状緩和を目的とした治療の選択肢の一つとなりうるものと考える2)。腫瘍の進展範囲と部位により適切な照射スケジュールを検討する必要があるが,参考となる臨床データは少なく他疾患の照射スケジュールを参考にせざるを得ない。また,脳転移や骨転移に関しても他疾患の転移と同様の照射スケジュールが用いられる。
文献
1) Brown RS, Lankester KJ, McCormack M, et al: Radiotherapy for perianal Paget’s disease, Clin Oncol(R Coll Radiol),2002; 14: 272-284.(エビデンスレベルⅣ)
2) Shepherd V, Davidson EJ, Davies-Humphreys J: Extramammary Paget’s disease, BJOG, 2005; 112: 273-279.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) Guerrieri M, Back MF: Extramammary Paget’s disease: role of radiation therapy, Australas Radiol, 2002; 46: 204-208.(エビデンスレベルⅤ)
4) Parker LP, Parker JR, Bodurka-Bevers D, et al: Paget’s disease of the vulva: pathology, pattern of involvement, and prognosis, Gynecol Oncol, 2000; 77: 183-189.(エビデンスレベルⅣ)
5) Balducci L, Athar M, Smith GF, et al: Metastatic extramammary Paget’s disease: dramatic response to combined modality treatment, J Surg Oncol, 1988; 38: 38-44.(エビデンスレベルⅤ)
6) Besa P, Rich TA, Delclos L, et al: Extramammary Paget’s disease of the perineal skin: role of radiotherapy, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1992; 24: 73-78.(エビデンスレベルⅣ)
7) Brierley JD, Stockdale AD: Radiotherapy: an effective treatment for extramammary Paget’s disease, Clin Oncol(R Coll Radiol), 1991; 3: 3-5.(エビデンスレベルⅣ)
8) Moreno-Arias GA, Conill C, Sola-Casas MA, et al: Radiotherapy for in situ extramammary Paget disease of the vulva, J Dermatolog Treat, 2003; 14: 119-123.(エビデンスレベルⅤ)
9) Son SH, Lee JS, Kim YS, et al: The Role of Radiation Therapy for the Extramammary Paget’s Disease of the Vulva; Experience of 3 Cases, Cancer Res Treat, 2005; 37: 365-369.(エビデンスレベルⅤ)
■解説
乳房外パジェット病には手術療法を中心とした治療法が一般的に選択される1, 2)。しかし,手術が施行されても浸潤癌や深部に腺癌の成分を有する症例では15〜67%に局所再発が見られ,また切除断端陽性例では術後1〜2 年程度で再発をきたすことから,これからの高リスク症例には術後放射線療法が検討される1, 3〜7)。
本疾患を対象に術後放射線療法を検証したランダム化比較試験は存在せず,その有益性は明らかではない。浸潤癌や深部に腺癌の成分を有する症例,また切除断端陽性例に対し術後放射線療法を行うべきかに関しては,悪性腫瘍を専門とする皮膚科医と放射線治療専門医による慎重な検討の上,治療方針を決定すべきである。照射スケジュールや照射範囲に関しても明確なエビデンスはなく,他疾患で用いられる術後放射線療法を参考にせざるを得ない8)。
文献
1) Brown RS, Lankester KJ, McCormack M, et al: Radiotherapy for perianal Paget’s disease, Clin Oncol(R Coll Radiol),2002; 14: 272-284.(エビデンスレベルⅣ)
2) Shepherd V, Davidson EJ, Davies-Humphreys J: Extramammary Paget’s disease, BJOG, 2005; 112: 273-279.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) Fanning J, Lambert HC, Hale TM, et al: Paget’s disease of the vulva: prevalence of associated vulvar adenocarcinoma, invasive Paget's disease, and recurrence after surgical excision, Am J Obstet Gynecol, 1999; 180: 24- 27.(エビデンスレベルⅣ)
4) Besa P, Rich TA, Delclos L, et al: Extramammary Paget’s disease of the perineal skin: role of radiotherapy, Int J Radiat Oncol Biol Phys, 1992; 24: 73-78.(エビデンスレベルⅣ)
5) Parker LP, Parker JR, Bodurka-Bevers D, et al: Paget’s disease of the vulva: pathology, pattern of involvement, and prognosis, Gynecol Oncol, 2000; 77: 183-189.(エビデンスレベルⅣ)
6) Luk NM, Yu KH, Yeung WK, et al: Extramammary Paget’s disease: outcome of radiotherapy with curative intent, Clin Exp Dermatol, 2003; 28: 360-363.(エビデンスレベルⅣ)
7) Brierley JD, Stockdale AD: Radiotherapy: an effective treatment for extramammary Paget’s disease, Clin Oncol(R Coll Radiol),1991; 3: 3-5.(エビデンスレベルⅣ)
8) Guerrieri M, Back MF: Extramammary Paget’s disease: role of radiation therapy, Australas Radiol, 2002; 46: 204-208.(エビデンスレベルⅤ)
CQ14
乳房外パジェット病の術後,どの程度の頻度で何年間,経過観察すべきか
推奨度
C1
乳房外パジェット病の術後経過観察法に関するエビデンスは存在しない。術後5 年間は3〜6 カ月毎に,その後は半年〜1 年毎のペースがよいというエキスパート・オピニオンが提唱されている。
■解説
乳房外パジェット病の術後に,どの程度の頻度で何年間経過観察が必要かを科学的エビデンスに基づいて示した論文は存在しない。したがって,個々の症例に応じて判断する以外にない。一つのエキスパート・オピニオンとして術後5 年間は3〜6 カ月毎に,その後は半年〜1 年毎のペースとすることが提唱されている1)。術後何年目まで経過観察が必要かについても明確な基準はない。5 年程度が妥当と考えられるが,より長期の経過観察が必要との意見もある2, 3)。特に本症は多中心性発生があり,術後5 年以上経過した後に外陰部や腋窩に新たな病巣を生じることがあるので,注意を要する。なおこうした新生病巣は,不十分な切除に由来する局所再発と区別して考えることは,統計をとる場合にも重要である1)。
文献
1) 日本悪性腫瘍学会編:乳房外Paget 病,皮膚悪性腫瘍取扱い規約,第2版,金原出版,東京,2010, 57-77.(エビデンスレベル Ⅵ)
2) Shepherd V, Davidson EJ, Davies-Humphreys J: Extramammary Paget’s disease, BJOG, 2005; 112: 273-279.(エビデンスレベル Ⅰ)
3) Kanitakis J: Mammary and extramammary Paget’s disease, J Eur Acad Dermatol Venereol, 2007; 21: 581-590.(エビデンスレベル Ⅰ)
CQ15
乳房外パジェット病の病勢評価や治療効果判定のために血清CEA 値を測定することが勧められるか
推奨度
C1
内臓転移を生じた乳房外パジェット病の進行期症例では血清CEA 値の測定を考慮してもよい。
■解説
乳房外パジェット病の腫瘍細胞はCEA(carcinoembryonic antigen)を発現しており,広範な内臓転移を生じた進行例では血清CEA 値の上昇が認められることがある1)。また,治療による腫瘍の退縮に伴い,血清CEA 値は低下する2, 3)。したがって,内臓転移を生じた進行例では血清CEA 値は病勢の評価や治療効果の判定の参考になる場合がある。ただし,CEA が正常なことは,疾患が皮膚に限局していることにはならない3)。
文献
1) Oji M, Furue M, Tamaki K: Serum carcinoembryonic antigen level in Paget’s disease, Br J Dermatol, 1984; 110: 211-213.(エビデンスレベルⅤ)
2) Zhu Y, et al: Clinicopathological characteristics, management and outcome of metastatic penoscrotal extramammary Paget’s disease, Br J Dermatol, 2009; 161: 577-582.(エビデンスレベルⅤ)
3) Hatta N, Yamada M, Hirano T, et al: Extramammary Paget’s disease: treatment, prognostic factors and outcome in 76 patients, Br J Dermatol, 2008; 158: 313-318.(エビデンスレベルⅣ)
乳房外パジェット病CQ1〜CQ15 一覧
CQ | 推奨度 | 推奨文 |
---|---|---|
|
B | 外尿道口周囲,膣壁から膣前庭部,および肛門周囲にパジェット病変を認める症例に対しては,膀胱鏡,子宮鏡,直腸肛門鏡などによる精査が勧められる。 |
|
B | 原発性乳房外パジェット病と続発性乳房外パジェット病の鑑別にサイトケラチン20 とgross cystic disease fluid protein 15:GCDFP15 の免疫組織化学的検索は勧められる。 |
|
C1 | 肉眼的境界が不明瞭な乳房外パジェット病に対しては,mapping biopsy を行うことを考慮してもよい。 |
|
B | 肉眼的境界が明瞭な乳房外パジェット病の原発巣を完全切除するためには,1cm 程度の皮膚側の切除範囲(切除マージン)が勧められる。 |
|
C1 | 高齢等の理由で手術が困難な乳房外パジェット病原発巣に対して緩和治療として施行を考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。 |
|
C1 | 高齢等の理由で手術が困難な乳房外パジェット病原発巣に対して緩和治療として施行を考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。 |
|
C1 | リンパ節転移の有無は重要な予後因子であることから,リンパ節転移の有無を判断するために施行を考慮してもよい(2013 年12 月現在保険適用外)。 |
|
C2 | 乳房外パジェット病には予防的リンパ節郭清は勧められない。 |
|
C2 | 両側に複数の鼠径リンパ節転移がある場合,両鼡径の根治的郭清を含む外科的根治術は勧められない。但し,両側に1 個ずつなど根治可能と考えられる場合や,出血などに対する緩和治療としての外科的治療はその限りではない。 |
|
C2 | 乳房外パジェット病のリンパ節転移陽性例に対する術後補助化学療法は勧められない。 |
|
C1 | 遠隔転移を生じた進行期の乳房外パジェット病患者に対して有効な化学療法は確立していないが実施を考慮してもよい。 |
|
B | 手術不能の乳房外パジェット病患者に対する根治的放射線療法の意義は確立していないが,症状緩和のための姑息的治療として放射線療法は勧められる。 |
|
C2 | 乳房外パジェット病に対して術後補助療法としての放射線療法が有益であるか否かは不明であり勧められない。 |
|
C1 | 乳房外パジェット病の術後経過観察法に関するエビデンスは存在しない。術後5 年間は3〜6 カ月毎に,その後は半年〜 1 年毎のペースがよいというエキスパート・オピニオンが提唱されている。 |
|
C1 | 内臓転移を生じた乳房外パジェット病の進行期症例では血清CEA 値の測定を考慮してもよい。 |