皮膚悪性腫瘍 〜診療ガイドライン
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Ⅲ.各治療法の推奨度と解説
1.菌状息肉症・Sézary 症候群
◆概説
菌状息肉症とSézary 症候群が同一の疾患であるか未だに議論があるが,病期分類は同じものが使用されており1,2),治療法も共通点が多いこと,稀ではあるが両者の移行例があることから共通のCQ を作成した。菌状息肉症/Sézary 症候群は最も古くからある疾患概念であり,他の原発性皮膚リンパ腫と比べて頻度が高いが,エビデンスレベルの高い治療法は皆無といってよい。これは10 年以上の経過をたどる症例が多く,治療介入の成否の判定が困難であること,倫理的にプラセボコントロールを用いたランダム化比較試験の実施が難しいことなどによる。実際,異なる治療法の効果を評価したランダム化比較試験は4件3〜6),プラセボコントロールとのランダム化比較試験は1 件7)しか存在しない。本ガイドラインでは作成委員全員によるコンセンサスを重視し,日常診療で第一選択とされる治療法には推奨度B をつけた。
菌状息肉症/Sézary 症候群の治療に関するもう一つの問題点は,欧米と比べて使用可能な治療が極端に少ないことである。IFN- αやボリノスタット以外の分子標的療法,体外光化学療法は現時点で国内に使用可能な施設はほとんどない。しかし海外での治療という選択肢や,今後日本に導入される可能性も考え,これらの治療に関してもCQ を設定した。海外においても認可されていない,いわゆる実験的治療に関しては本ガイドラインで扱わないこととした。
文献
1) Willemze R, Jaffe ES, Burg G, et al: WHO-EORTC classification for cutaneous lymphomas, Blood, 2005; 105: 3768-3785.
2) Olsen E, Vonderheid E, Pimpinelli N, et al: Revisions to the staging and classification of mycosis fungoides and Sezary syndrome: a proposal of the International Society for Cutaneous Lymphomas(ISCL) and the Cutaneous Lymphoma Task Force of the European Organization of Research and Treatment of Cancer(EORTC), Blood 2007; 110: 1713-1722.
3) Stadler R, Otte HG, Luger T, et al: Prospective randomized multicenter clinical trial on the use of interferon α-2a plus acitretin versus interferon α-2a plus PUVA in patients with cutaneous T-cell lymphoma stages Ⅰ and Ⅱ, Blood, 1998; 92: 3578-3581.
4) Stadler R, Kremer A, Luger T, Sterry W: Prospective, randomized, multicentre clinical trial on the use of interferon a 2a plus PUVA versus PUVA monotehrapy in patients with cutaneous T-cell lymphoma, stage Ⅰ and Ⅱ. J Clin Oncol, 2006 ASCO Annual Meeting Proceedings, 2006; 24: 7541.
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6) Child FJ, Mitchell TJ, Whittaker SJ, et al: A randomized cross-over study to compare PUVA and extracorporeal photopheresis in the treatment of plaque stage(T2) mycosis fungoides, Clin Exp Dermatol, 2004; 29: 231-236.
7) Prince HM, Duvic M, Martin A, et al: Phase Ⅲ placebo-controlled trial of denileukin diftitox for patients with cutaneous T-cell lymphoma, J Clin Oncol, 2010; 28: 1870-1877.
CQ1
菌状息肉症に対して無治療での経過観察は勧められるか
推奨度
C1(病期 ⅠA)
C2(病期 ⅠA 以外)
病期 ⅠA の早期菌状息肉症に対しては無治療での経過観察を考慮してもよい。病期 ⅠA 以外では無治療での経過観察は基本的には勧められない。
■解説
無治療での経過観察による菌状息肉症の予後を評価した前向きコホート研究はない。欧米における4 件の大規模な後向きコホート研究において, 病期 ⅠA あるいはT1 の菌状息肉症患者の生存率と人種・年齢・性別をマッチさせたコントロール集団の予測生存率には差がないことが示されている1〜4)。本邦における病期 ⅠA 患者の長期予後も同程度と考えられるため5),病期 ⅠA の早期菌状息肉症患者を無治療で経過観察することは妥当な選択である。しかし, 長期観察の結果,病期 ⅠA の菌状息肉症患者の2%が菌状息肉症により死亡したと報告されており1),定期的な注意深い経過観察が必要である。病期 ⅠA またはT1 における病期の進行は5 年で0〜10%,10 年で0〜13%,20 年で16〜18%に認められる4〜8)。病期 ⅠB あるいはT2(T2a とT2b の両者を含む)の菌状息肉症患者の生存率は予測生存率より低いが3, 4, 7),紅斑期(T2a)の菌状息肉症患者の生存率と予測生存率には差がないとする報告がある3)。しかし,病期T2a の菌状息肉症患者の生存率は病期 ⅠA 患者の生存率より低いという報告もあり5, 8),病期 ⅠA 以外では無治療での経過観察は妥当な選択とは言えない。
文献
1) Kim YH, Jensen RA, Watanabe GL, et al: Clinical stage ⅠA(limited patch and plaque) mycosis fungoides. A long-term outcome analysis, Arch Dermatol, 1996; 132: 1309-1313.(エビデンスレベルⅣ)
2) Toro JR, Stoll HL Jr, Stomper PC, Oseroff AR: Prognostic factors and evaluation of mycosis fungoides and Sézary syndrome, J Am Acad Dermatol, 1997; 37: 58-67.(エビデンスレベルⅣ)
3) Zackheim HS, Amin S, Kashani-Sabet M, McMillan A: Prognosis in cutaneous T-cell lymphoma by skin stage: long-term surviv;al in 489 patients, J Am Acad Dermatol, 1999; 40: 418-425.(エビデンスレベルⅣ)
4) Kim YH, Liu HL, Mraz-Gernhard S, et al: Long-term outcome of 525 patients with mycosis fungoides and Sézary syndrome: clinical prognostic factors and risk for disease progression, Arch Dermatol, 2003; 139: 857-866.(エビデンスレベルⅣ)
5) Suzuki S, Ito K, Ito M, Kawai K: Prognosis of 100 Japanese patients with mycosis fungoides and Sézary syndrome, J Dermatol Sci, 2010; 57: 37-43.(エビデンスレベルⅣ)
6) van Doorn R, Van Haselen CW, van Voorst Vader PC, et al: Mycosis fungoides: disease evolution and prognosis of 309 Dutch patients, Arch Dermatol, 2000; 136: 504-510.(エビデンスレベルⅣ)
7) Kim YH, Chow S, Varghese A, Hoppe RT: Clinical characteristics and long-term outcome of patients with generalized patch and/or plaque(T2) mycosis fungoides, Arch Dermatol, 1999; 135: 26-32.(エビデンスレベルⅣ)
8) Agar NS, Wedgeworth E, Crichton S, et al: Survival outcomes and prognostic factors in mycosis fungoides/ Sézary sundrome: validation of the revised International Society for Cutaneous Lymphomas/European Organisation for Research and Treatment of Cancer staging proposal, J Clin Oncol, 2010; 28: 4730-4739.(エビデンスレベルⅣ)
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するステロイド外用療法の効果を評価したランダム化比較試験はない。病期 ⅠA/ⅠB の早期菌状息肉症患者(95%が紅斑期)に対して主にstrongest ランクのステロイド外用薬を用いた1 件の前向き症例集積研究において,観察期間中央値9 カ月で ⅠA では奏効率94%,CR 率63%,ⅠB では奏効率82%,CR 率25%という結果が報告されている9)。したがって, 長期予後に関するデータはないが,ステロイド外用療法は病期 ⅠA/ⅠB で紅斑期の早期菌状息肉症に対して有効な局所療法である。他の病期に対しては有効性を示すデータがないため,姑息的・補助的局所療法として位置付けられるが, ステロイド外用療法はすべての病期の菌状息肉症・Sézary 症候群に対して用いることが可能であり,他の局所療法と比較しても簡便で副作用が少ないと考えられることから,推奨度をB とした。
文献
9) Zackheim HS, Kashani-Sabet M, Amin S: Topical corticosteroids for mycosis fungoides. Experience in 79 patients, Arch Dermatol, 1998; 134: 949-954.(エビデンスレベルⅣ)
CQ3
菌状息肉症・Sézary 症候群に対して局所化学療法は勧められるか
推奨度
C1
欧米で用いられているmechlorethamine/nitrogen mustard(HN2)あるいはcarmustine(BCNU)外用による局所化学療法は病期 ⅠA-ⅡA の早期菌状息肉症に対して勧められるが,本邦では未発売・未承認である。本邦で用いられている塩酸ニムスチンnimustine(ACNU)外用療法に関しては,小範囲に対して,あるいは短期間であれば実施を考慮してもよい。
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対する局所化学療法の効果を評価したランダム化比較試験はない。
欧米では早期菌状息肉症に対して0.01〜0.02%のHN2 溶液あるいは軟膏が用いられており,HN2 外用療法の効果に関して,8 件の後向きコホート研究1, 7, 10, 11, 14〜17),1 件の前向き症例集積研究18),1 件の非ランダム化比較試験13)がある。病期 ⅠA,ⅠB,ⅡA のCR 率は,それぞれ61〜80%,35〜68%,28〜61%であり10〜12),病期 ⅠA-ⅡA 全体では51〜78%にCR が得られ10〜15),多くの患者はHN2 外用療法のみで長期間の維持が可能である10,15)。病期 ⅠA およびT2 の菌状息肉症に対するtotal skin electron beam(TSEB)療法とHN2 外用療法の効果を比較した研究では,CR 率はTSEB 療法が有意に優れていたが,生存率には有意な差は認められなかった16), CQ1-1, 7)。また,病期T2 ではTSEB 療法後にHN2 外用による維持療法を行うことにより奏効期間の延長が認められている16)。他の施設からの報告でも病期 ⅠA-ⅡA におけるCR 率はTSEB 療法がHN2 外用療法より優れていたが(100% vs 78%),病期 ⅠA 以外ではTSEB 療法後の再発が多く,HN2外用による維持療法が推奨されている13)。病期ⅡB あるいはT3 ではHN2 外用療法によるCR 率は50%未満で奏効期間も短いが10,13〜17),病期ⅢA-ⅣA1(T4)でも60%にCR が得られたという報告がある10)。主な副作用は一次刺激性またはアレルギー性の接触皮膚炎で,その頻度は溶液で28〜58%12,14),軟膏で10%未満15)である。4〜11%に二次性皮膚癌が認められているが15, 17),HN2 外用療法との因果関係は不明である。
BCNU 外用療法の効果に関しては, 単一施設における2 件の後向きコホート研究18, 19)がある。0.017%溶液または0.01%軟膏によるCR 率は病期 ⅠA で86%,ⅠB で47%,ⅡA で55%であり18), 病期T1 の91%,T2 の62%が36 カ月間以上BCNU 外用療法のみで維持されている19)。主な副作用として何らかの紅斑が多くの患者に生じるが,アレルギー性の接触皮膚炎の頻度は10%未満であり,二次性皮膚癌は認められない19)。骨髄抑制(軽度の白血球減少)の頻度は約4%とされている19)。
局所化学療法としてHN2 とBCNU のどちらが有効かを比較した臨床試験は行われていないが,病期 ⅠA-ⅡA の早期菌状息肉症に対してHN2 またはBCNU 外用による局所化学療法は有効であり,欧米では早期菌状息肉症に対する第一選択の局所療法として位置付けられている。
本邦ではHN2 とBCNU の両者とも販売・承認されていないため,0.2〜0.4%のACNU 溶液が用いられているが20),奏効率・長期予後・安全性に関する臨床試験は行われていない。特に全身・広範囲に長期間用いた場合の安全性が不明であることから,第一選択の局所療法として積極的には推奨できないが,他の局所療法を施行困難な部位や局所療法抵抗性の少数の病変に対する補助的治療として部分的に,あるいは短期間用いることは可能である。
文献
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12) de Quatrebarbes J, Esteve E, Bagot M, et al: Treatment of early-stage mycosis fungoides with twice-weekly applications of mechlorethamine and topical corticosteroids: a Prospective study, Arch Dermatol, 2005; 141: 1117-1120.(エビデンスレベルⅣ)
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15) Kim YH, Martinez G, Varghese A, Hoppe RT: Topical nitrogen mustard in the management of mycosis fungoides: update of the Stanford experience, Arch Dermatol, 2003; 139: 165-173.(エビデンスレベルⅣ)
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17) Hoppe RT, Abel EA, Deneau DG, Price NM: Mycosis fungoides: management with topical nitrogen mustard, J Clin Oncol, 1987; 5: 1796-1803.(エビデンスレベルⅣ)
18) Zackheim HS, Epstein EH Jr, Crain WR: Topical carmustine(BCNU) for cutaneous T cell lymphoma: a 15-year experience in 143 patients, J Am Acad Dermatol, 1990; 22: 802-810.(エビデンスレベルⅣ)
19) Zackheim HS: Topical carmustine(BCNU) in the treatment of mycosis fungoides, Dermatol Ther, 2003; 16: 299-302.(エビデンスレベルⅣ)
20) 神保孝一,堀越貴志,神村瑞夫: ACNU 外用を用いた菌状息肉症の局所化学療法の試み,癌と化学療法,1982; 9: 1231-1236.(エビデンスレベルⅣ)
CQ4
菌状息肉症・Sézary 症候群に対して紫外線療法は勧められるか
推奨度
B
内服PUVA 療法あるいはnarrow-band UVB(NB-UVB)療法は病期 ⅠA-ⅡA の早期菌状息肉症に対して勧められる。
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対する紫外線療法単独の効果を他の局所療法と比較したランダム化比較試験はない。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対する紫外線療法としては,broad-band UVB(BB-UVB)療法,NB-UVB 療法,PUVA 療法,UVA1 療法などがあるが,本邦ではUVA1 療法を施行している施設は少ない。また,菌状息肉症・Sézary 症候群に対するPUVA 療法の報告の多くは内服PUVA 療法に関するものであり,外用PUVA 療法およびPUVA バス(bath-PUVA)療法に関する報告は少ない21, 22)。
菌状息肉症に対するBB-UVB 療法の効果に関しては,2 件の症例集積研究23, 24),1 件の症例報告25),1 件の後向きコホート研究26)がある。BB-UVB 療法により病期 ⅠA/ⅠB の菌状息肉症患者の71%にCR が得られ,奏効期間中央値は22 カ月と報告されているが23),紅斑期では ⅠA/ⅠB ともにCR 率83%であったのに対して,扁平浸潤期の患者ではCR は得られていない。紅斑期の菌状息肉症患者を主な対象にした他の報告でもBB-UVB 療法によるCR 率は病期 ⅠA で67〜89%,ⅠB で44〜100%であり24〜26),一部の患者では維持療法中止後も長期間再発がみられなかったため24, 26),寛解後の維持療法は行うべきではないという意見がある26)。したがって,BB-UVB 療法は病期 ⅠA/ⅠB で紅斑期の早期菌状息肉症に対しては有効だが,深達度の問題から扁平浸潤期の菌状息肉症に対しては推奨できない。
菌状息肉症に対するNB-UVB 療法の効果に関しては,1 件の後向きコホート研究26),2 件の症例報告27, 28),5 件の症例集積研究29〜33)がある。病期 ⅠA/ⅠB で紅斑期の菌状息肉症に対するNBUVB 療法のCR 率は54〜83%である27〜29)。紅斑期と扁平浸潤期を明確に区別していない報告でも病期 ⅠA/ⅠB で70-90%26, 30〜33),病期ⅡA で100%30, 33)にCR が得られている。紅斑期と扁平浸潤期に対する効果を比較した研究では,病期 ⅠA-ⅡA で紅斑期における臨床的CR 率が100%(組織学的CR 率94%)であったのに対して,扁平浸潤期では臨床的CR 率60%(組織学的CR 率20%)であったと報告されている33)。NB-UVB 療法とPUVA 療法の効果を比較した3 件の非ランダム化比較試験では,病期 ⅠA/ⅠB の菌状息肉症に対するCR 率はNB-UVB 療法で60〜81%,PUVA 療法で62〜71%であり,無再発期間も同程度であった34〜36)。また,患者の左右半身で効果を比較した1 件の非ランダム化比較試験でも有効性の差は認められていない37)。したがって,NB-UVB 療法は病期 ⅠA-ⅡA の早期菌状息肉症に対して有効な局所療法であり,PUVA 療法と同程度の奏効率・奏効期間を示すものと考えられる。寛解後の維持療法の有効性に関しては議論があり26,30,38),皮膚発癌のリスクがあるために積極的には推奨できない。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するPUVA 療法の効果に関して,2 件の症例集積研究39, 42),5 件の後向きコホート研究40,41,43〜45)がある。PUVA 療法単独によるCR 率は病期 ⅠA-ⅡA あるいはT1/T2 全体で58〜100%と報告されている39〜45)。病期ⅡB(T3)に対する効果は通常期待できないが40, 42, 43, 45),病期Ⅲ(T4)でもPUVA 療法単独で33〜100%にCR が得られている40,41,43,45)。ただし,Sézary 症候群ではPUVA 療法単独によるCR は得られない41, 43)。病期 ⅠA の56%, ⅠB の39%は維持療法中止後も長期間再発がみられなかったという報告もあるが41),維持療法の有無にかかわらず ⅠA-ⅡA の50〜86%,Ⅲ のほぼ100%が再発し40, 41, 43, 44),長期観察では ⅠA-ⅡA の無再発期間中央値は39 カ月,10 年無病生存率は30〜50%であった44)。ただし,再発の有無による生存率の差は認められていない44)。したがって,PUVA 療法は病期 ⅠA-ⅡA の早期菌状息肉症に対して有効な局所療法であるが,PUVA 療法単独ではCR が得られないか維持できない患者が存在し,また,PUVA 療法が生存期間を延長するかどうかも不明である。寛解後の維持療法に関しては,欧米の診療ガイドラインにおいても意見が分かれており,再発防止のために有効である41, 43, 46)という意見と無再発期間の延長は期待できず,皮膚発癌のリスクがあるために行うべきではない47, 48)という意見の両者がある38)。
文献
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CQ5
菌状息肉症・Sézary 症候群に対してPUVA とレチノイドまたはインターフェロンの併用療法は勧められるか
推奨度
B
PUVA とエトレチナートetretinate 内服の併用によるRePUVA 療法およびPUVA とイン ターフェロンinterferon(IFN)の併用療法は菌状息肉症・Sézary 症候群に対して勧められ る。
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するPUVA とレチノイドの併用療法の効果を評価したランダム化比較試験はない。病期 ⅠA/ⅠB の早期菌状息肉症患者に対するPUVA 療法単独とPUVA とレチノイド(エトレチナートetretinate またはisotretinoin)内服の併用療法(RePUVA 療法)の効果を比較した1 件の非ランダム化比較試験では,奏効率は両群とも100%であり,CR 率(72% vs 73%)にも差は認められなかったが,RePUVA 療法群ではPUVA 療法単独群より少ない照射回数・照射線量でCR が得られた49)。また,PUVA 療法に抵抗性の患者を含む病期 ⅠA/ⅠB の早期菌状息肉症に対してPUVA とbexarotene の併用療法を行った1 件の症例報告では,63%にCR が得られている50)。PUVA 療法に抵抗性の早期菌状息肉症に対するエトレチナート内服の併用によるRePUVA 療法の効果は不明であるが,レチノイド内服療法単独でもある程度の効果が期待できるため(CQ7),RePUVA 療法は早期菌状息肉症で全身療法の併用が必要な場合の第一選択,あるいは局所療法に抵抗性の早期菌状息肉症に対する第二選択の治療として試みてもよい。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するPUVA とIFN-αの併用療法の効果に関しては, 2 件のランダム化比較試験51, 52)が行われている。病期 ⅠA-ⅡB の菌状息肉症患者を対象にしたIFN-αとPUVA の併用療法とIFN-αとレチノイド(acitretin)の併用療法とのランダム化比較試験では,奏効率80% vs 60%,CR 率 70% vs 38%でIFN-αとPUVA の併用療法群が優れていた51)。また,病期 ⅠA-ⅡB の菌状息肉症患者を対象にしたPUVA 療法単独とIFN-αとPUVA の併用療法とのランダム化比較試験では,CR 率(72% vs 79%)には有意差は認められなかったが,IFN-αとPUVA の併用療法群においてPUVA 療法単独群より少ない照射回数・照射線量でCR が得られ,無進行期間中央値(113 週 vs 53 週)の延長が認められた52)。これらの研究では病期 ⅠAⅡA とⅡB が区別されていないが,IFN-αとPUVA の併用療法はIFN-αとレチノイドの併用療法およびPUVA 療法単独より優れていると考えられ,病期 ⅠA-ⅡB で全身療法が必要な場合の第一選択, あるいは局所療法に抵抗性の早期菌状息肉症(病期 ⅠA-ⅡA)に対する第二選択の治療として推奨される。ただし, 本邦ではIFN-αは菌状息肉症に対して未承認である。
本邦では菌状息肉症に対してIFN-γが主に用いられてきたが(CQ8),PUVA との併用療法の効果を評価したランダム化比較試験はない。本邦における1 件の非ランダム化比較試験において,病期 ⅠA-ⅡA で扁平浸潤期の早期菌状息肉症患者に対する天然型IFN-γと外用PUVA の併用療法により奏効率100%,CR 率58%という結果が得られているが,一旦CR が得られても維持療法中に57%が再発している53)。この研究では天然型IFN-γと内服PUVA の併用療法も行われているが,症例数が少なく評価は困難である。
文献
49) Thomsen K, Hammar H, Molin L, Volden G: Retinoids plus PUVA(RePUVA) and PUVA in mycosis fungoides, plaque stage. A report from the Scandinavian Mycosis Fungoides Group, Acta Derm Venereol, 1989; 69: 536-538.(エビデンスレベルⅢ)
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CQ6
菌状息肉症・Sézary 症候群に対して放射線療法は勧められるか
推奨度
B
局所放射線照射は病期にかかわらず菌状息肉症の個々の局面・腫瘤に対する姑息的治療として勧められる。全身皮膚電子線total skin electron beam(TSEB)療法は病期 ⅠB-ⅡA(T2)の菌状息肉症に対する治療として勧められる。
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対する放射線療法の効果を評価したランダム化比較試験はない。
菌状息肉症に対する局所放射線照射の効果に関しては,3 件の症例集積研究54〜56)がある。病変が単一の菌状息肉症unilesional mycosis fungoides に対する照射線量30.6 Gy の局所電子線照射により100%にCR が得られ,照射野内の再発は認められなかったことが報告されている54)。同様にunilesional あるいは数個の病変が単一または近接した照射野内に限局している"minimal"な病期 ⅠA の菌状息肉症に対するX 線または電子線による局所照射では,ほぼ全病変でCR が得られ,照射野内の再発は照射線量20 Gy 未満では17%,20 Gy 以上では8%であった55)。したがって,unilesional あるいは"minimal" な病期 ⅠA の菌状息肉症に対して20〜30 Gy 以上の局所放射線照射は有効である。菌状息肉症の個々の局面・腫瘤に対する姑息的な局所放射線照射により,線種にかかわらず照射線量>20 Gy で全病変にCR が得られ,>30 Gy で照射野内の再発が認められなかったことが報告されている56)。したがって,個々の局面・腫瘤に対する姑息的照射では,照射線量>30 Gy を推奨する。
菌状息肉症に対するTSEB 療法に関しては, EORTC によるガイドラインが発表されている57)。TSEB 療法の奏効率は病期・電子エネルギー・照射線量によって決まり58),4〜5.5 MeV で31〜36 Gy の照射が推奨されている57)。
初回治療としてTSEB 療法を行った場合,病期 ⅠA(およびT1N1M0B0 のⅡA)のCR 率は約95%で10 年無進行生存率は50%であり58),TSEB 療法後に再発しても通常はHN2 外用療法またはPUVA 療法に反応する59)。しかし,前述のように病期 ⅠA の菌状息肉症患者の生存率とコントロール集団の予測生存率には差がなく(CQ1),病期 ⅠA に対するTSEB 療法とHN2 療法の効果を比較した報告において,CR 率はTSEB 療法が優れていても生存率には差がないことが示されているため(CQ3),副作用を考慮するとTSEB 療法を病期 ⅠA に対する第一選択の治療としては推奨できない。一方,上記のガイドラインでは局所放射線照射の適応である"minimal" な病期 ⅠA に対してのみTSEB は推奨できないとしている57)。
病期 ⅠB(およびT2N1M0B0 のⅡA)でもTSEB 療法による初回治療のCR 率は約90%であるが,高率に再発が認められ,10 年無再発生存率は20%未満である58)。前述のように病期T2(ⅠB/ⅡA)ではTSEB 療法後の再発を防止するためにHN2 外用による維持療法が推奨されているが59) CQ3-13, 16),本邦ではHN2 は未発売・未承認である。その他の維持療法に関しては,病期にかかわらず化学療法の併用の有効性は否定されており59, 60),エトレチナート59, 61)やIFN-α62)との併用・維持療法でも奏効期間の有意な延長は認められていない。1 件の後向きコホート研究63)により, 病期 ⅠA/ⅠB に対するTSEB 療法後のPUVA による維持療法は奏効期間を延長させる可能性が示されている59)。
1 件の症例集積研究において,病期ⅡB でも病変の範囲が体表面積の10%未満の場合は初回治療としてTSEB 療法を行うことにより100%にCR が得られ,3 年無病生存率は50%と報告されているが64),生存期間を延長するかどうかに関しては議論があるCQ3-13), 16)。病期ⅡB で病変の範囲が体表面積の10%以上の場合のCR 率は74%であるが,18 カ月以内に100%が再発し,TSEB 療法は姑息的治療として位置付けられる64)。
1 件の後向きコホート研究において, 病期T4(ⅢA-ⅣB)の菌状息肉症・Sézary 症候群全体ではTSEB 療法による皮膚病変のCR 率は60%であり,5 年無進行生存率は26%と報告されている65)。しかし, 末梢血病変のない病期ⅢA では32〜40 Gy のTSEB 療法により100%にCR が得られ,5 年無進行生存率は69%であった。病期ⅢB およびSézary 症候群を含むⅣA1-ⅣB に対してはTSEB 療法は姑息的治療として位置付けられ,何らかの全身療法との併用が必要である。病期T3/T4 の菌状息肉症・Sézary 症候群に対するTSEB 後の維持療法として体外光化学療法extracorporeal photochemotherapy(ECP)/photopheresis と化学療法を比較した1 件の非ランダム化比較試験では,ECP 群の生存率が化学療法群および維持療法を行わなかった群より高いことが示されている66)。また,病期T4(ⅢA-ⅣB)の菌状息肉症・Sézary 症候群患者を対象にした1 件の非ランダム化比較試験67)では,TSEB 療法単独群に比べてTSEB とECP の併用療法群の無病生存率が高いことが報告されている59)。したがって, 紅皮症型(病期T4)の菌状息肉症・Sézary 症候群ではTSEB とECP の併用療法を検討してもよいが,本邦ではECP は未承認であり,施行可能な施設はほとんどない。
以上より,初回治療としてのTSEB 療法単独で長期間の寛解が期待できるのは病期T1(ⅠA/ⅡA)と限局性のⅡB およびⅢA の菌状息肉症患者の一部のみであり,T2(ⅠB/ⅡA)ではPUVA 療法による維持療法を,その他の病期では何らかの全身療法の併用が必要である57)。また,治療抵抗性の早期(病期 ⅠA-ⅡA)菌状息肉症に対する第二選択の治療としてTSEB 療法を行った場合でも長期間の寛解が期待できるが57),初回治療として行った場合より効果は劣るため59),併用療法を検討すべきである。TSEB 療法後の再発時に再度TSEB 療法を施行することは可能であるが68, 69),2 回目以降のTSEB 療法は姑息的治療として位置付けられる。
文献
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CQ7
菌状息肉症・Sézary 症候群に対してレチノイド内服療法は勧められるか
推奨度
B-C1
エトレチナートetretinate 内服療法は菌状息肉症・Sézary 症候群に対して有用である可能性がある。
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するレチノイド内服療法単独の効果をプラセボコントロールあるいは他の治療法と比較したランダム化比較試験はない。
欧米ではトレチノインtretinoin/all-trans-retinoic acid(ATRA),isotretinoin/13-cis-retinoic acid,エトレチナートetretinate(米国・カナダでは販売中止),acitretin などのレチノイドretinoid が菌状息肉症・Sézary 症候群に対して使用されているが,菌状息肉症の治療薬として承認されているのはレチノイドX レセプター選択的レチノイド(rexinoid)であるbexaroteneのみである。本邦で販売されているレチノイドはエトレチナート,トレチノイン,タミバロテンtamibarotene のみであり,いずれも菌状息肉症・Sézary 症候群に対しては未承認であるが,主にエトレチナートが用いられている。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するisotretinoin 内服療法の奏効率は43〜100%,エトレチナート内服療法の奏効率は55〜67%と報告されているが70),両者の効果を比較した1 件の非ランダム化比較試験において, isotretinoin とエトレチネートの奏効率(59% vs 67%)・CR 率(両者とも21%)・毒性には差がなく,治療継続中にそれぞれ26%,22%に再発がみられている71)。Isotretinoin およびエトレチナートの内服療法による奏効期間は3〜13 カ月と報告されている72)。Acitretin 内服療法の奏効率・奏効期間に関する報告はない。
菌状息肉症・Sézary 症候群患者を対象にした前向き研究が行われているのはbexarotene 内服療法のみである。治療抵抗性の早期(病期 ⅠA-ⅡA)菌状息肉症患者を対象にしたbexarotene 内服療法の第Ⅱ/Ⅲ相試験では,2 つの投与量のランダム化比較試験が行われたが, 至適量である300 mg/m2 投与群における奏効率は54%,CR 率7%であり,再発は13%に認められた73)。主な副作用は高脂血症と甲状腺機能低下症であった。治療抵抗性の進行期(病期ⅡB-ⅣB)菌状息肉症・Sézary 症候群に対するbexarotene の奏効率は45%(ⅡB で57%,Sézary 症候群を含むⅢ[旧病期分類]で32%,ⅣA2 で44%,ⅣB で40%,Sézary 症候群で24%),CR 率は2%であった74)。再発は36%に認められ,奏効期間中央値は299 日であった。したがって,bexarotene は早期および進行期の治療抵抗性菌状息肉症・Sézary 症候群に対して単独でも有効であり,現在さまざまな併用療法が試みられている75)。
治療抵抗性の病期 ⅠB-ⅣB の菌状息肉症・Sézary 症候群に対するATRA とbexarotene の効果を比較した1 件の非ランダム化比較試験では,両者の奏効率・奏効期間・生存期間・毒性に差は認められなかった76)。したがって,本邦で用いられているエトレチナートも治療抵抗性菌状息肉症・Sézary 症候群に対してbexarotene と同程度に有効である可能性がある。しかし, エトレチナート内服療法単独での奏効期間は通常短く,他の治療との併用療法を検討すべきである。ただし,エトレチナート内服との併用療法で有効性が示されているのは前述の早期菌状息肉症に対するPUVA との併用療法(RePUVA 療法)のみである(CQ5)。
米国では治療抵抗性の早期菌状息肉症に対してbexarotene 外用薬(1% bexarotene gel)が承認されている。病期 ⅠA-ⅡA の早期菌状息肉症に対する第 Ⅰ-Ⅲ相試験における奏効率は44〜63%,CR 率8〜21%であった77, 78)。Bexarotene 外用療法は病期 ⅠA-ⅡA の早期菌状息肉症に対して有効な局所療法であるが,bexarotene 外用薬は本邦では未発売・未承認である。
文献
70) Kempf W, Kettelhack N, Duvic M, Burg G: Topical and systemic retinoid therapy for cutaneous T-cell lymphoma, Hematol Oncol Clin North Am, 2003; 17: 1405-1419.(エビデンスレベルⅥ)
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CQ8
菌状息肉症・Sézary 症候群に対してインターフェロン療法は勧められるか
推奨度
B-C1
インターフェロンinterferon(IFN)-α療法は全身療法が必要な早期(病期 ⅠA-ⅡA)および進行期(ⅡB-ⅣA1)の菌状息肉症・Sézary 症候群に対して勧められるが,本邦では未承認である。本邦で菌状息肉症に対して用いられてきたIFN-γはIFN-αと同程度の効果を有すると考えられ,有用である可能性がある。
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対して用いられているbiological response modifier(BRM)として前述のレチノイド(CQ7)以外には,IFN-αとIFN-γがある。欧米では主にIFN-α-2a(またはIFN-α-2b)が使用されているが,本邦で販売されているIFN-α製剤(天然型IFN-α,IFN-α-2b,IFN-alfacon-1,PEG-IFN-α-2a,PEG-IFN-α-2b) はすべて菌状息肉症・Sézary 症候群に対して未承認である。本邦では遺伝子組換え型IFN-γ-1a 製剤と天然型IFN-γ-n1 製剤が菌状息肉症に対して承認されていたが,両者ともすでに販売が中止されている。本邦で現在販売されている遺伝子組換え型IFN-γ-1a 製剤は菌状息肉症・Sézary 症候群に対して未承認である注)。
注)IFN-γ-1a は2014 年に保険適用になった(補遺参照)。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するIFN-α療法単独の効果に関しては多くの報告があるが,ランダム化比較試験はなく, 対象患者の病期およびIFN-αの投与量・投与スケジュール・投与期間が報告により異なるため,統合的な評価は困難である。報告全体での奏効率は54%,CR 率17%,奏効期間中央値5〜41 カ月とされており79, 80),単剤化学療法とほぼ同程度の奏効率が得られている79)。低用量IFN- α療法単独による長期観察を行った1 件の後向きコホート研究では,奏効率67%(ⅠA-ⅡA で89%,ⅡB で77%,Sézary 症候群を含むⅢA-ⅣA1 で28%,ⅣA2/ⅣB で0%),CR 率41%(病期 ⅠA-ⅡA で67%,ⅡB で43%,Sézary 症候群を含むⅢA-ⅣA1 で18%)であり,多くの場合CR は6 カ月以内に得られた81)。再発は病期とは無関係に57%に認められている。したがって,IFN-α療法は皮膚外病変を伴う病期ⅣA2/ⅣB を除く菌状息肉症・Sézary 症候群に対して有効な全身療法であり80),全身療法が必要な早期(病期 ⅠA-ⅡA)および進行期(ⅡB-ⅣA1)菌状息肉症・Sézary 症候群に対する第一選択の治療, あるいは局所療法に抵抗性の早期菌状息肉症に対する全身療法として推奨される。
前述のように病期 ⅠA-ⅡB の菌状息肉症患者を対象にした2 件のランダム化比較試験によりIFN-αとPUVA の併用療法はIFN-αとレチノイドの併用療法およびPUVA 療法単独より優れていることが示されている(CQ5)。上記のランダム化比較試験CQ5-51)以外にもIFN-αとレチノイド(エトレチナートまたはisotretinoin)の併用療法の報告は多いが,IFN-αとレチノイドの併用療法の奏効率60%,CR 率11%はIFN-α療法単独の奏効率54%,CR 率17%と差がない79, 80)。Bexarotene に関してもIFN-αとbexarotene の併用療法により低用量のbexarotene でも効果が得られる可能性が示唆されているが82),IFN-αと通常の至適量のbexarotene の併用療法の奏効率はbexarotene 療法単独と差がない83)。したがって,IFN-αとPUVA の併用療法は病期 ⅠA-ⅡB の菌状息肉症に対して有効であるが(CQ5),IFN-αとレチノイドの併用療法はいずれの病期の菌状息肉症・Sézary 症候群に対しても積極的には推奨できない。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するIFN-γ療法単独の効果をプラセボコントロールあるいは他の治療法と比較したランダム化比較試験はない。米国における病期 ⅠB-ⅣB の治療抵抗性菌状息肉症・Sézary 症候群患者を対象にした遺伝子組換え型IFN-γの第Ⅱ相試験では,CR は得られなかったが,31%にPR が得られ(ⅣB では奏効率0%),奏効期間中央値は10 カ月であった84)。本邦における病期 ⅠA-ⅣB の菌状息肉症・Sézary 症候群に対する遺伝子組換え型IFN-γ-1a の後期臨床第Ⅱ相試験では,点滴静注投与による菌状息肉症に対する奏効率は58%(ⅠA-ⅡA で58%,ⅡB で50%,ⅣA2 で33%),CR 率8%(ただしCR はⅠA/ⅠB のみ),奏効期間中央値85 日であったが,Sézary 症候群の1 例に対しては効果が認められなかった85)。また,本邦における病期 ⅠA-ⅣB の菌状息肉症に対する天然型IFN-γ-n1 の後期臨床第Ⅱ相試験では,奏効率58%(ⅠA-ⅡA で63%,ⅡB で38%,Ⅲで100%,ⅣB は0%),CR 率8%,奏効期間中央値74 日であった86)。したがって, IFN-γは少なくとも病期 ⅠA-ⅢA/ⅣA2 の菌状息肉症に対して有効な全身療法であり,奏効率・奏効期間はIFN-αと同程度あるいはやや劣る程度と考えられる。前述のようにIFN-γとPUVA の併用療法に関するエビデンスは乏しく(CQ5),IFN-γとレチノイドの併用療法に関する臨床試験は行われていない。
文献
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CQ9
菌状息肉症・Sézary 症候群に対して体外光化学療法は勧められるか
推奨度
B(紅皮症型菌状息肉症・Sézary 症候群)
C1(紅皮症以外の病型)
体外光化学療法extracorporeal photochemotherapy(ECP)/photopheresis は病期T4 の紅皮症型菌状息肉症およびSézary 症候群に対して勧められる。紅皮症型以外の菌状息肉症に対しては,治療抵抗性であれば実施を考慮してもよい。ECP は本邦では未承認であり,現在本邦でECP を施行している施設はほとんどない。
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するECP の効果に関して,2 件のシステマティック・レビュー/ガイドライン87, 88)がある。欧米ではECP は主に病期T4 の紅皮症型菌状息肉症・Sézary 症候群に対して用いられており, 奏効率は31〜86%であるが,CR 率は0〜62%で,ECP によりSézary 症候群の生存期間が延長するかどうかについては議論がある87, 88)。PCR で末梢血T 細胞クローン陽性の病期 ⅠB の菌状息肉症に対するPUVA 療法とECP のクロスオーバー・デザインのランダム化比較試験では,奏効率においてPUVA 療法が有意に優れていた89)。したがって,ECPは紅皮症型菌状息肉症・Sézary 症候群に対して有効であるが,紅皮症型以外の菌状息肉症に対しては第一選択の治療として推奨できない。
ECP とIFN-αの併用療法によりECP 単独に比べて高い奏効率が得られたという報告は多いが,ランダム化比較試験は行われていない87, 88)。
本邦ではECP は未承認であり,現在ECP を施行している施設はほとんどない。
文献
87) McKenna KE, Whittaker S, Rhodes LE, et al: Evidence-based practice of photopheresis 1987-2001: a report of a workshop of the British Photodermatology Group and the U.K. Skin Lymphoma Group, Br J Dermatol, 2006; 154: 7-20.(エビデンスレベル Ⅰ)
88) Scarisbrick JJ, Taylor P, Holtick U, et al: U.K. consensus statement on the use of extracorporeal photopheresis for treatment of cutaneous T-cell lymphoma and chronic graft-versus-host disease, Br J Dermatol, 2008; 158: 659-678.(エビデンスレベル Ⅰ)
89) Child FJ, Mitchell TJ, Whittaker SJ, et al: A randomized cross-over study to compare PUVA and extracorporeal photopheresis in the treatment of plaque stage(T2) mycosis fungoides, Clin Exp Dermatol, 2004; 29: 231-236.(エビデンスレベルⅡ)
CQ10
菌状息肉症・Sézary 症候群に対して分子標的療法は勧められるか
推奨度
B-C1
Denileukin diftitox,ボリノスタットvorinostat,romidepsin は再発・治療抵抗性の菌状息 肉症・Sézary 症候群に対して有用である可能性があるが,本邦で承認されているのはボリノ スタットのみである。
■解説
さまざまな分子標的治療薬の菌状息肉症・Sézary 症候群に対する効果が報告されているが,本邦で菌状息肉症・Sézary 症候群に対する治療薬として承認されているのはボリノスタットvorinostat/suberoylanilide hydroxamic acid(SAHA)のみである。
Denileukin diftitox/DAB389IL-2 はジフテリア毒素を結合したIL-2 fusion toxin であり,米国では再発・治療抵抗性CD25 陽性CTCL の治療薬として承認されているが,本邦では未発売・未承認である。米国における病期 ⅠB-ⅣA の再発・治療抵抗性CD25 陽性菌状息肉症・Sézary 症候群患者を対象にした第Ⅲ相試験では,1 日9μg/kg または18μg/kg のdenileukin diftitox を5 日間連続静注投与し21 日サイクルで最大8 コースまで繰り返す投与法でのランダム化比較試験が行われた90)。投与量による有意な差は認められず,全体での奏効率は30%,CR 率10%,奏効期間中央値6.9 カ月であった。主な有害事象はacute hypersensitivity-type reaction と遅発性のvascular leak syndrome であった。その後,病期 ⅠA-Ⅲ(旧病期分類)のCD25 陽性菌状息肉症・Sézary 症候群患者を対象にした1 件のプラセボコントロールとのランダム化比較試験において,denileukin diftitox 治療群の奏効率・無進行生存率はプラセボコントロールにまさることが確認されている91)。また,denileukin diftitox はCD25 陰性患者およびdenileukin diftitox による治療後に再発した患者に対しても有効であることが,1 件のコホート研究により示されている92)。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対する抗体治療で最も報告が多いのはヒト化抗CD52 抗体alemtuzumab/Campath-1H である。Alemtuzumab は欧米ではB 細胞性慢性白血病の治療薬として承認されているが,本邦では未発売・未承認である。菌状息肉症・Sézary 症候群に対するalemtuzumab の効果を評価したランダム化比較試験はないが,2 件の症例集積研究93, 94)と1 件の症例報告95)があり, 進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対する奏効率は38〜55%である。著明な免疫抑制のために一般には使用されていないが,最近,Sézary 症候群に対する低用量での有効性が報告されている96)。
ヒストン脱アセチル化酵素histone deacetylase(HDAC)阻害薬は,ヒストンおよび非ヒストン蛋白のアセチル化を促進し,細胞分化誘導・アポトーシス誘導・細胞周期停止・血管新生阻害・転移抑制などの薬理作用を示す。菌状息肉症・Sézary 症候群に対するHDAC 阻害薬の効果を評価したランダム化比較試験はない。
ボリノスタットは経口投与可能なHDAC 阻害薬であり,米国におけるbexarotene を含む2 つ以上の全身療法に抵抗性を示す病期 ⅠB-ⅣA の菌状息肉症・Sézary 症候群患者を対象にした1 日400 mg 連日内服での後期臨床第Ⅱ 相試験では,奏効率30%(ⅡB-ⅣA2 でも30%),奏効期間は185 日以上と推定された97)。主な有害事象は下痢・倦怠感・悪心・食欲低下などであった。ボリノスタットは治療抵抗性の進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対して有効な治療薬であり,米国では2006 年に再発・治療抵抗性CTCL に対して承認されたが,本邦でも2011 年にCTCL に対する治療薬として承認された。
再発・治療抵抗性CTCL を対象にしたromidepsin/depsipeptide の2 件の第Ⅱ 相試験では,1 日14 mg/m2 のromidepsin を第1,8,15 日に静注投与し,28 日サイクルで繰り返す投与法が用いられた98, 99)。両者をまとめた奏効率は35%,CR 率6%,奏効期間中央値13.8 カ月であった。主な有害事象は悪心・嘔吐・倦怠感・食欲不振・血球減少などであった98, 99)。Romidepsinは治療抵抗性の菌状息肉症・Sézary 症候群に対して有効なHDAC 阻害薬であり,米国では2009 年に1 つ以上の全身療法を受けたことのあるCTCL に対して承認されたが,本邦では未発売・未承認である。
文献
90) Olsen E, Duvic M, Frankel A, et al: Pivotal phase Ⅲ trial of two dose level_pus of denileukin diftitox for the treatment of cutaneous T-cell lymphoma, J Clin Oncol, 2001; 19: 376-388.(エビデンスレベルⅡ)
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95) Kennedy GA, Seymour JF, Wolf M, et al: Treatment of patients with advanced mycosis fungoides and Sézary syndrome with alemtuzumab, Eur J Haematol, 2003; 71: 250-256.(エビデンスレベルⅤ)
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98) Piekarz RL, Frye R, Turner M, et al: Phase Ⅱ multi-institutional trial of the histone deacetylase inhibitor romidepsin as monotherapy for patients with cutaneous T-cell lymphoma, J Clin Oncol, 2007; 27: 5410-5417.(エビデンスレベルⅣ)
99) Kim Y, Whittaker S, Demierre MF, et al: Clinically significant responces achieved with romidepsin in treatmentrefractory cutaneous T-cell lymphoma: final results from a phase 2B, international, multicenter, registration study, Blood(ASH Annual Meeting Abstructs), 2008; 112: Abstract 263.(エビデンスレベルⅣ)
CQ11
菌状息肉症・Sézary 症候群に対して化学療法は勧められるか
推奨度
B(治療抵抗性および皮膚外病変を伴う場合)
D(早期菌状息肉症)
病期 ⅠA-ⅡA の早期菌状息肉症に対する初回治療として化学療法は勧められない。局所療法およびBRM 療法に抵抗性の病期 ⅠB-ⅢB と皮膚外病変を伴うⅣA1-ⅣB の菌状息肉症・Sézary 症候群では化学療法を行うことが勧められる。
■解説
すべての病期の菌状息肉症患者を対象にした1 件のランダム比較試験により,初回治療としてTSEB と多剤併用化学療法の併用療法を行う群とHN2 外用療法(と局所放射線照射)および内臓病変に対するメトトレキサートmethotrexate(MTX)内服療法で治療を開始し,治療抵抗性の場合にPUVA 療法,TSEB 療法およびMTX 内服による維持療法を順次施行し,これらの治療にも抵抗性あるいは皮膚外病変が生じた場合のみ多剤併用化学療法を行う保存的治療群が比較されたCQ6-60)。奏効率とCR 率は前者が優れていたが,毒性は前者が強く,CR が得られても多くは再発し,両群間に無病生存率および全生存率の差は認められなかった。また,各病期で比較しても両群間の生存率に有意差は認められなかった。したがって,早期(病期 ⅠA-ⅡA)の菌状息肉症に対する初回治療として化学療法は行うべきではない。化学療法の適応は局所療法およびBRM 療法に抵抗性の病期 ⅠB-ⅢB(特に病変が広範囲のⅡB)と皮膚外病変を伴うⅣA1-ⅣB の菌状息肉症・Sézary 症候群である。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対しては,さまざまな化学療法薬が単剤あるいは多剤併用で試みられているが,奏効期間は通常短く,生存期間の延長にはつながらない100)。菌状息肉症・Sézary 症候群に対する単剤化学療法の奏効率は62%,CR 率33%,奏効期間は3〜22 カ月とされているが,ランダム化比較試験は行われていないため,どの薬剤が優れているかは明らかではないCQ8-79)。進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対する多剤併用化学療法の奏効率は81%,CR 率38%,奏効期間は5〜41 カ月であり,単剤化学療法と多剤併用化学療法の有効性には明らかな差はないCQ8-79)。
進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対するCHOP 療法を代表とした塩酸ドキソルビシンdoxorubicin を含む第1 世代の多剤併用化学療法の効果に関しては,1 件のランダム化比較試験101)と1 件の症例報告102)がある。奏効率は90%,CR 率は40%程度であるが,奏効期間は6 カ月以内であり,塩酸ドキソルビシンを含むかどうかにかかわらず,長期間のCR は期待できない101, 102)。第3 世代の多剤併用化学療法であるVICOP-B 療法の進行期菌状息肉症に対する効果を評価した1 件の症例集積研究でも,奏効率は84%,CR 率は32%,奏効期間中央値は9 カ月と報告されている103)。したがって,再発・治療抵抗性の進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対する化学療法は姑息的治療として位置付けられ,奏効率が他の薬剤・治療より明らかに優れている化学療法薬・多剤併用化学療法は存在しないため,臨床試験を除いて通常は単剤による化学療法を第一選択にすることを推奨する。
単剤で使用される化学療法薬としてはMTX に関する報告が最も多いが,菌状息肉症・Sézary 症候群に対するMTX の効果を評価したランダム化比較試験はない。1 件の後向きコホート研究において,低用量MTX を用いた単剤化学療法により,病期T2 では奏効率33%,CR 率12%,奏効期間中央値15 カ月と報告されているが,T3 ではCR は得られていない104)。同一施設における病期T4 の紅皮症型菌状息肉症・Sézary 症候群を対象にした症例集積研究では, 奏効率58%,CR 率41%,奏効期間中央値31 カ月と報告されている105)。したがって, MTX は病期T4 の菌状息肉症・Sézary 症候群に対して有効な治療薬である。本邦では菌状息肉症・Sézary 症候群に対して低用量エトポシドetoposide(ETP)/VP-16 内服療法106)が用いられることが多く,ステロイドも単独あるいは化学療法薬との併用で使用される。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対する塩酸ゲムシタビンgemcitabine の効果を評価したランダム化比較試験はないが, 1 件の症例集積研究において,治療抵抗性の進行期菌状息肉症(病期ⅡB/Ⅲ)に対して単剤で用いた場合,奏効率70%,CR 率10%と報告されている107)。進行期菌状息肉症(病期ⅡB/Ⅲ)とSézary 症候群(1 例)に対する初回治療として塩酸ゲムシタビンを用いた1 件の症例集積研究では,Sézary 症候群には無効であったが,菌状息肉症では奏効率73%,CR 率23%であった108)。これらの研究の対象には菌状息肉症・Sézary 症候群以外の皮膚病変を伴う末梢T 細胞リンパ腫患者も含まれているため,菌状息肉症患者のみでの奏効期間は不明であるが,CR が得られた患者全体の奏効期間中央値は10〜15 カ月であった107, 108)。他の施設における非ランダム化比較試験でも同様な結果が報告されており109),塩酸ゲムシタビンは進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対して単剤で効果が期待できる薬剤である。しかし, 本邦では塩酸ゲムシタビンは悪性リンパ腫に対して未承認である。
プリンアナログであるペントスタチンpentostatin/2-deoxycoformycin,クラドリビンcladribine/2-chlorodeoxyadenosine,リン酸フルダラビンfludarabine の菌状息肉症・Sézary 症候群に対する効果に関しては多くの報告があるが,ランダム化比較試験は行われていない。2 件のコホート研究および1 件の症例集積研究におけるペントスタチンのSézary 症候群に対する奏効率は33〜71%,CR 率5〜29%と報告されているが,菌状息肉症では奏効率0〜57%,CR 率0〜14%であり,Sézary 症候群より反応が悪い110〜112)。また,菌状息肉症・Sézary 症候群に対するペントスタチンの奏効期間中央値は2〜9 カ月と短い110, 111, 113)。1 件の症例集積研究において,ペントスタチンとIFN-αの併用療法により,奏効率はペントスタチン単独と同程度であるが,奏効期間が延長することが示されている114)。クラドリビンおよびリン酸フルダラビンの菌状息肉症・Sézary 症候群に対する効果はペントスタチンより劣ると考えられ,2 件の症例報告および1件の症例集積研究におけるクラドリビンの奏効率は25〜38%,CR 率0〜14%と報告されている115〜117)。クラドリビンでもSézary 症候群患者のみを対象にした1 件の症例報告では, 奏効率66%,CR 率13%が得られているが,感染症により50%が死亡している118)。1 件の症例集積研究におけるリン酸フルダラビン単剤の菌状息肉症・Sézary 症候群に対する奏効率は19%,CR 率は3%と低かったため119),さまざまな併用療法が試みられている。1 件の症例集積研究において,リン酸フルダラビンとIFN-αの併用療法による奏効率は51%,CR 率は11%であり,病期ⅣBおよびペントスタチンとIFN-αの併用療法に抵抗性の患者でも効果が認められている120)。1 件の症例集積研究において,リン酸フルダラビンとシクロホスファミドの併用療法のSézary 症候群に対する有効性が示されたが,奏効期間中央値は10 カ月であり,骨髄毒性が強く生存期間の延長は認められなかった121)。1 件の非ランダム化比較試験では,リン酸フルダラビンのSézary 症候群に対する奏効率は35%,CR 率は18%であり,菌状息肉症に対する奏効率26%,CR 率4%より高く,また, リン酸フルダラビンによる単剤化学療法後にECP を行うことにより,さらに奏効率は高くなるが,奏効期間・生存期間の有意な延長は認められないと報告された122)。したがって, ペントスタチンまたはリン酸フルダラビンによる単剤化学療法およびIFN-αとの併用療法はSézary 症候群に対して有効であるが,本邦ではいずれも菌状息肉症・Sézary 症候群に対して未承認である。
菌状息肉症・Sézary 症候群に対するドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤pegylated liposomal doxorubicin の効果を評価したランダム化比較試験はないが,4 件の症例集積研究がある123〜126)。進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対する単剤化学療法の奏効率は56〜87%,CR 率は20〜42%であり,奏効期間中央値は5〜12 カ月と報告されている123〜125)。また,1 件の症例集積研究では,病期ⅣB の菌状息肉症でも30%にPR が得られている126)。したがって,ドキソルビシン塩酸塩リポソーム注射剤は進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対して単剤で効果が期待できる薬剤であるが,本邦では菌状息肉症・Sézary 症候群に対して未承認である。
文献
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CQ12
菌状息肉症・Sézary 症候群に対して造血幹細胞移植は勧められるか
推奨度
C1(同種造血幹細胞移植)
C2(自家造血幹細胞移植)
自家造血幹細胞移植併用大量化学療法は菌状息肉症・Sézary 症候群に対する治療として基本的には勧められない。若年の進行期患者に対する同種造血幹細胞移植は臨床試験として実施を考慮してもよい。
■解説
菌状息肉症・Sézary 症候群に対する造血幹細胞移植の効果を評価したランダム化比較試験はな い。
症例報告および症例集積研究を統合した1 件のメタアナリシスにおいて,進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対して自家造血幹細胞移植併用大量化学療法を行っても,多くは短期間で再発することが示されている127)。したがって, 現時点では菌状息肉症・Sézary 症候群に対する自家造血幹細胞移植併用大量化学療法の積極的な適応はなく,奏効期間の延長のためには移植後の再発を防止できる効果的な維持療法の開発が必要である。
同種造血幹細胞移植では,graft-versus-lymphoma/Leukemia 効果により進行期菌状息肉症・Sézary 症候群でも長期間のCR が期待できるが127),適切なドナーの存在が必要であり,GVHD や感染症などの移植関連合併症および移植関連死の頻度が高いため適応は限定される。骨髄非破壊的前処置を用いた同種造血幹細胞移植(RIST)は比較的高齢者に対しても施行可能であるが,菌状息肉症・Sézary 症候群に対するRIST については今後さらなる評価が必要である。しかし,現時点では,進行期菌状息肉症・Sézary 症候群に対する治療で長期間のCR が期待できるものは同種造血幹細胞移植のみであるため,若年の進行期菌状息肉症・Sézary 症候群患者に対しては臨床試験としての同種造血幹細胞移植の適応を検討してもよい。
文献
127)Wu PA, Kim YH, Lavori PW, Hoppe RT, Stockerl-Goldstein KE: A meta-analysis of patients receiving allogeneic or autologous hematopoietic stem cell transplant in mycosis fungoides and Sézary syndrome, Biol Blood Marrow Transplant, 2009; 15: 982-990.(エビデンスレベル Ⅰ)
2.主な皮膚T/NK 細胞リンパ腫(菌状息肉症・Sézary 症候群以外)
◆概説
菌状息肉症・Sézary 症候群以外の皮膚T/NK 細胞リンパ腫に関するCQ を解説する。NK 細胞リンパ腫は鼻腔・副鼻腔など皮膚以外の節外臓器に発生することが多いため別項目とした。
菌状息肉症・Sézary 症候群以外の皮膚T/NK 細胞リンパ腫はWHO-EORTC 分類では比較的急速に進行し予後不良である病型(Aggressive group)と緩徐進行性で生命予後良好な病型(indolent group)に大別される。Aggressive group(原発性皮膚CD8 陽性進行性表皮向性細胞傷害性T 細胞リンパ腫,原発性皮膚γδ細胞リンパ腫,末梢性T 細胞リンパ腫,非特定)は統計的には5 年生存率10%台であり,生命予後は極めて不良であるが,そのなかには皮膚病変のみで長期にわたり経過している症例なども含まれており経過は一律ではない1〜7)。皮膚病変のみで経過し,全身症状や著しい検査値異常がない症例については菌状息肉症・Sézary 症候群に準じたskin-directed therapy が主体となり,リンパ節・内臓浸潤や全身症状,著しい検査値異常などを来たした症例は全身化学療法の適応と考えられるが,個々の患者の状態に応じて治療方法を検討すべきであり,一律に治療方針を示すのは難しいためCQ の対象とはしなかった。Indolent group(原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫,皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫,原発性皮膚CD4 陽性小・中細胞型T 細胞リンパ腫)は病型ごとに特徴的な臨床所見,経過を示すため,個々の病型についてCQ を作成した。
菌状息肉症・Sézary 症候群以外の皮膚T/NK 細胞リンパ腫は菌状息肉症・Sézary 症候群とは異なる皮膚病変の広がり,進展を示すため,菌状息肉症を対象とした病期分類は適応できない。2007 年にISCL およびEORTC 共同で菌状息肉症・Sézary 症候群以外の皮膚リンパ腫を対象とした病期分類案が提唱された8)。この病期分類の妥当性はまだ検証されておらず,この分類に従ってガイドラインを作成するのは本来は時期尚早である。しかし,他に妥当な病期分類は見られず,今後のガイドライン改定の際には共通の病期分類に立脚した臨床情報の集積が重要であるため,ここではこの病期分類案を採用した。
文献
1) Willemze R, Jaffe ES, Burg G, et al: WHO-EORTC classification for cutaneous lymphomas. Blood, 2005; 105: 3768-3785.
2) Toro JR, Beaty M, Sorbara L, et al: Gamma delta T-cell lymphoma of the skin: a clinical, microscopic, and molecular study, Arch Dermatol, 2000; 136: 1024-1032.
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4) Lu D, Patel KA, Duvic M, Jones D: Clinical and pathological spectrum of CD8-positive cutaneous T-cell lymphomas, J Cutan Pathol, 2002; 29: 465-472.
5) Toro JR, Liewehr DJ, Pabby N, et al: Gamma-delta T-cell phenotype is associated with significantly decreased Survival in cutaneous T-cell lymphoma, Blood, 2003; 101: 3407-3412.
6) Bekkenk MW, Vermeer MH, Jansen PM, et al: Peripheral T-cell lymphomas unspecified presenting in the skin: analysis of prognostic factors in a group of 82 patients, Blood, 2003; 102: 2213-2219.
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CQ13
原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫に対して放射線療法あるいは外科的切除などの局所療法は勧められるか
推奨度
B
放射線療法や外科的切除により多くの症例で寛解導入が可能なため,施行可能な症例にはこれらの治療が勧められる。
■解説
これまでの原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫(primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma: cALCL) に関する報告は症例集積研究1〜4)や症例報告5〜7)のみであり,放射線治療や外科的治療の有効性を比較検討した報告は見られない。これまでの報告ではcALCL に対しては放射線療法や外科的切除などの局所療法,単剤あるいは多剤併用化学療法などの全身療法が行われている。Liu らの25 例の症例集積研究ではAnn Arbor stage ⅠE の11 例に対して放射線療法あるいは外科的切除が施行されており,放射線療法では7 例中6 例,外科切除では4 例全例CR となっている1)。Beljaards らは47 例の症例集積研究で放射線療法(5 例),外科的切除(11 例)および両者の併用(4 例)を施行し,全例でCR と報告している2)。Bekkenk らは79 例の症例集積研究で放射線療法(38 例),外科的切除(15 例),紫外線療法(3 例),ステロイド外用(3 例)を施行し,ほぼ全例でCR と報告している3)。これらの結果から,cALCL は局所療法で皮膚病変の制御は可能である。いずれの報告でも局所療法による再発は約半数にみられるが,多剤併用化学療法でも半数例以上で再発しており(CQ14),治療法により寛解率,再発率に明らかな差は見られない。cALCL の5 年生存率は90%以上とする報告が多く1, 3, 4),生命予後良好な病型であり,全身療法でも再発がみられるため局所療法が施行可能な症例は全身療法よりも侵襲,副作用の軽度な局所療法を選択することが望ましい。従って,単発病変や限局性病変(T1,T2)では放射線療法または外科的切除が第一選択であり,汎発病変(T3)に対しても放射線療法が可能であれば第一選択として勧められる。ただし,本邦ではCHOP 療法後再発例に第三世代化学療法を要した例やリンパ節および内臓浸潤を生じた予後不良症例などが報告されており,厳重な経過観察は必要である5〜7)。
文献
1) Liu HL, Hoppe RT, Kohler S, Harvell JD, Reddy S, Kim YH: CD30+cutaneous lymphoproliferative disorders: the Stanford experience in lymphomatoid papulosis and primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma, J Am Acad Dermatol, 2003; 49: 1049-1058.(エビデンスレベルⅣ)
2) Beljaards RC, Kaudewitz P, Berti E, et al: Primary cutaneous CD30-positive large cell lymphoma: definition of a new type of cutaneous lymphoma with a favorable prognosis. A European Multicenter Study of 47 patients, Cancer, 1993; 71: 2097-2104.(エビデンスレベルⅣ)
3) Bekkenk MW, Geelen FA, van Voorst Vader PC, et al: Primary and secondary cutaneous CD30 + lymphoproliferative disorders: a report from the Dutch Cutaneous Lymphoma Group on the long-term follow-up data of 219 patients and guidelines for diagnosis and treatment, Blood, 2000; 95: 3653-3661.(エビデンスレベルⅣ)
4) Vergier B, Beylot-Barry M, Pulford K, et al: Statistical Evaluation of Diagnostic and Prognostic Features of CD30 + Cutaneous lymphoproliferative Disorders: A Clinicopathologic Study of 65 Cases. Am J Surg Pathol, 1998; 22: 1192-1202.(エビデンスレベルⅣ)
5) Tokura Y, Sugita K, Yagi H, Shimauchi T, Kabashima K, Takigawa M: Primary cutaneous anaplastic large cell lymphoma with fatal leukemic outcome in Association with CLA and CCR4-negative conversion, J Am Acad Dermatol, 2007; 57: S92-96.(エビデンスレベルⅤ)
6) Isogai R, Fukao M, Kawada A: Successful treatment for recurrence of primary cutaneous anaplastic large-cell lymphoma in elderly patient with etoposide, mitoxantrone, cyclophosphamide, vincristine, prednisolone and bleomycin(VNCOP-B) therapy, J Dermatol, 2007; 34: 556-560.(エビデンスレベルⅤ)
7) Sugiyama H, Asagoe K, Morizane S, Oono T, Okazaki F, Iwatsuki K: Leukocyte common antigen-negative, Aggressive cutaneous anaplastic large cell lymphoma with prominent pseudocarcinomatous hyperplasia, Eur J Dermatol, 2008; 18: 74-77.(エビデンスレベルⅤ)
CQ14
原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫に対して化学療法は勧められるか
推奨度
B(リンパ節病変や内臓浸潤例に対して),
C1(皮膚病変のみ場合)
皮膚病変のみでも放射線療法や切除などの局所療法に対して治療抵抗性の症例や多発例に対しては化学療法の実施を考慮してもよい。リンパ節病変や内臓浸潤例に対しては化学療法が勧められる。
■解説
これまでのcALCL に関する報告は症例集積研究8), CQ13-1〜3)や症例報告9)のみであり,化学療法の有効性を比較した報告は見られない。cALCL 対する化学療法としてかつてはCHOP 療法の報告が多く,Liu らの25 例の症例集積研究ではAnn Arbor stage ⅠE の5 例,Ann Arbor stage Ⅳ の6 例に対して多剤併用化学療法(CHOP 療法)が施行されており,11 例中10 例でCR となっているCQ13-1)。Beljaards らの47 例の症例集積研究では7 例,Bekkenk らの79 例の症例集積研究で6 例に多剤併用化学療法が施行され,全例でCR と報告されているCQ13-2, 3)。しかし,Liu らの報告CQ13-1)では約半数の症例で,Beljaards らの報告CQ13-2)では85%の症例で再発しており,化学療法は根治的治療にはならないことが多いCQ13-3)。従って,皮膚病変のみの症例に対しては放射線療法や切除などの局所療法を行い(CQ13),その後に再発を繰り返す場合やこれら局所療法が困難な多発病変を有する症例(T3)には化学療法を考慮してもよい。cALCL に対する化学療法について,さまざまな化学療法剤の奏効率などを比較検討した報告は見られず,症例集積研究CQ13-3)や症例報告8, 9)が見られるのみであるが,メトトレキサート(MTX)の単剤化学療法を第一選択とする報告が多い10), CQ13-3)。ただし,前述(CQ13)のように本邦を中心としてcALCL の予後不良例が報告されており,単剤化学療法施行後も腫瘍退縮がみられない場合には多剤併用化学療法を選択する。また,多発病変が出没を繰り返す場合にはリンパ腫様丘疹症との鑑別が必要である。そのため皮疹の経過が不明な場合には病変部の出没の有無を確認するため,4 週から8 週間経過観察という選択もあるCQ13-3)。なお,リンパ腫様丘疹症に対する化学療法はMTX を推奨する報告が多い11, 12)
皮膚病変の所属リンパ節領域のみにリンパ節病変を有する症例は皮膚病変のみの場合と同様に生命予後は良好であると報告されているがCQ13-3),過去の報告で所属リンパ節病変を有する症例はほとんどが多剤併用化学療法を施行されてCR となっているためCQ13-3),放射線療法や単剤化学療法での効果は不明であり,多剤併用化学療法が第一選択として勧められる。内臓病変を生じている症例については,cALCL の疾患概念から外れるため,anaplastic large cell lymphoma, ALKnegative に準じた治療方法を選択すべきであり,多剤併用療法が基本となる。
文献
8) Vonderheid EC, Sajjadian A, Kadin ME: Methotrexate is effective therapy for lymphomatoid papulosis and other primary cutaneous CD30-positive lymphoproliferative disorders, J Am Acad Dermatol, 1996; 34: 470-481.(エビデンスレベルⅣ)
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10) Willemze R, Jaffe ES, Burg G, et al: WHO-EORTC classification for cutaneous lymphomas, Blood, 2005; 105: 3768-3785.(エビデンスレベル Ⅰ)
11) Wantzin LG, Thomsen K: Methotrexate in lymphomatoid papulosis, Br J Dermatol. 1984; 111: 93-95.(エビデンスレベルⅤ)
12) Christensen HK, Thomsen K, Vejlsgaard GL: Lymphomatoid papulosis: a follow-up study of 41 patients, Semin Dermatol. 1994; 13: 197-201.(エビデンスレベルⅣ)
CQ15
皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫 に対して放射線療法は勧められるか
推奨度
C1
限局性病変に対し放射線療法を行うことにより,照射部位のコントロールは可能である。全身症状を伴わず,限局した範囲(T1,T2)に病変が見られる症例の初期治療としては実施を考慮してもよい。
■解説
皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫(subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma : SPTCL)の報告当初はAggressive に進行し生命予後不良例が多いとされていた13)。その後症例の集積にともない,細胞傷害性αβT 細胞,細胞傷害性γδT 細胞,NK 細胞などさまざまなphenotype/genotype を示すものがあることが知られるようになり,腫瘍細胞の浸潤パターン,予後が異なることが明らかにされてきた14, 15)。γδT 細胞の症例は真皮や皮膚外への浸潤を生じることが多く,Aggressive に進行してαβT 細胞の症例よりも予後が悪いため16),WHO-EORTC 分類ではSPTCL をαβT 細胞の表面形質を有する細胞傷害性T 細胞によるリンパ腫と定義しているCQ14-10)。WHO-EORTC 分類で定義されたSPTCL の5 年生存率は約80%であり,indolent 群に分類されているが,血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome: HPS)を生じた症例では予後不良例が多い。
SPTCL に対して放射線療法単独の有効性を比較検討した報告は見られず,放射線線治療の効果に言及している症例集積研究が2 編報告されている16, 17)。Willemze らにより報告された欧州の多施設による症例集積研究では63 例のSPTLC に対し,3 例に放射線治療が選択されている。いずれもCR となっているが寛解期間の記載はない17)。そのうち1 例では再発病変に対し再度放射線療法を施行し,CR となっている。また,2003 年までにSPTCL として報告されている156 例のレビュー(γδT 細胞の表面形質を有する症例を含む)では,放射線療法単独は11 例あり,いずれも四肢の限局性病変が対象である16)。そのうちCR が4 例(36%),PR が5 例(45%)であり,奏効率は81%であった。CR の1 例は1 年以上の長期寛解を示しているが,1 例は数カ月で再発し,その他の症例の経過は不明である。CR に至っていない症例および再発例はその後全身化学療法を施行されているため,放射線療法のみで長期の寛解維持は難しい。しかし,SPTCL ではまれに自然寛解例も報告されており14, 18),病変が小範囲に限局(T1,T2)し,発熱や肝機能障害,血球減少,HPS などの全身症状がない症例には放射線療法を第一選択として考慮してもよい。全身症状のある症例に対しては放射線療法以外の全身療法を考慮すべきである。なお,化学療法と放射線療法を併用している報告は少なく,併用の効果は不明である。
文献
13) Gonzalez CL, Medeiros J, Braziel RM, Jaffe ES: T-cell lymphoma involving subcutaneous tissue. A clinicopathologic entitiy associated with hemophagocytic syndrome, Am J Surg Pathol, 1991; 15: 17-27.(エビデンスレベルⅣ)
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17) Willemze R, Jansen PM, Cerroni L, et al: Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma: definition, classification, and prognostic factors: an EORTC Cutaneous Lymphoma Group Study of 83 cases, Blood, 2008; 111: 838-845.(エビデンスレベル Ⅰ)
18) Santucci M, Pimpinelli N, Massi D, Kadin ME, Meijer CJ, Müller-Hermelink HK, Paulli M, Wechsler J, Willemze R, Audring H, et al: EORTC Cutaneous Lymphoma Task Force. Cytotoxic/natural killer cell cutaneous lymphomas. Report of EORTC Cutaneous Lymphoma Task Force Workshop, Cancer, 2003; 97: 610-627.(エビデンスレベル Ⅰ)
■解説
SPTCL に対してステロイド内服療法の有効性を比較検討した結果は見られず,ステロイド内服の治療効果に言及している症例集積研究は2 編報告されているCQ15-16, 17)。欧州の多施設による症例集積研究では63 例に対し,24 例(38%)で多剤併用化学療法以外の全身療法が選択されているCQ15-17)。その内訳はステロイド内服19 例,シクロスポリン5 例,クロランブチル3 例,メトトレキサート2 例などであり,これらの単独およびいずれかの併用が行われている。CR は16例,PR は5 例,NC またはPD が3 例であり,奏効率は88%であった。CR16 例中9 例が再発しているが,そのうち5 例はステロイド内服または免疫抑制剤により再度CR となっている。再発病変に対してCHOP などの多剤併用療法を施行されたのは8 例であり,そのうち3 例がCR となっている。報告時点で14 例は無病生存,6 例は有病生存,4 例が死亡している。死亡例は3 例がHPS を合併しており,1 例は他病死である。2003 年までにSPTCL として報告されている156 例のレビュー(γδT 細胞の表面形質を有する症例を含む)では初期治療として20 例でステロイド内服が選択されているが,CR は30%,PR20%で奏効率50%であったCQ15-16, 17)。寛解例の寛解期間は6 カ月未満でありステロイド減量とともに再発する例が多いが,HPS を合併していない4 症例では中央値で36 カ月以上の長期寛解を示している。ステロイド内服以外ではシクロスポリン4 例,シクロフォスファミド3 例,メトトレキサート2 例,クロランブチル1 例であり,4 例がPR となったがCR はなかった。この報告ではSPTCL とγδT 細胞リンパ腫が厳密に区別されていないため,奏効率が低いのはγδT 細胞リンパ腫の症例が含まれているための可能性がある。これらの報告のほかにもステロイド内服または免疫抑制剤の併用療法を初期治療として19), 20),あるいは多剤併用療法に不応性であった症例21)に対して施行しCR となった報告が見られる。SPTCL は長期間にわたり寛解再燃をくり返す症例や自然寛解する症例,病初期に結節性紅斑などの炎症性疾患との鑑別と困難な症例があることを考慮すると,第一選択として一律に多剤併用化学療法を行うことは適切でなく,初期治療としてはステロイド内服などの侵襲が少ない治療が勧められる。しかし,ステロイドの至適用量,投与期間は検討されていない。また,ステロイド内服で効果がない場合には多剤併用化学療法を考慮する。
文献
19) Al Zolibani AA, Al Robaee AA, Qureshi MG, Al Nosian H: Subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma with hemophagocytic syndrome successfully treated with cyclosporin A, Skinmed, 2006; 5: 195-197.(エビデンスレベルⅤ)
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CQ17
皮下脂肪織炎様T 細胞リンパ腫に対して多剤併用化学療法は勧められるか
推奨度
B-C1
ステロイドによる治療に抵抗を示す症例に対しては多剤併用化学療法の実施を考慮してもよい。また,血球貪食症候群を合併した症例の予後は不良であり,多剤併用化学療法が勧められる。
■解説
SPTCL に対して多剤併用化学療法の有効性を比較検討した結果は見られず,多剤併用化学療法の治療効果に言及している症例集積研究は2 編報告されているCQ15-16, 17)。欧州の多施設による症例集積研究では63 例に対し, 初期治療として31 例に多剤併用化学療法が施行されているCQ15-17)。その多くがCHOP またはCHOP 類似の多剤併用化学療法である。これらの症例では19 例(62%)がCR,3 例(10%)がPR であり奏効率は72%である。観察期間は記載されていないが,報告時点でCR の症例中の再発は2 例のみであった。CR に至らなかった症例のうち2 例はステロイド内服単独,ステロイドとメトトレキサート併用でCR となっている。一方,2003 年までにSPTCL として報告されている156 例のレビュー(γδT 細胞の表面形質を有する症例を含む)では,60 例にCHOP を主体とした多剤併用化学療法が施行され,CR21 例(35%),PR11 例(18%)であり奏効率は約50%であったCQ15-16)。通常量の化学療法が無効または再発例に対して造血幹細胞移植併用大量化学療法を施行した症例では寛解例の報告が多い22)。しかし,通常量の化学療法または大量化学療法を行うことにより生命予後が改善するか否かについては明らかにされていない。
これらの報告によると多剤併用化学療法はステロイド内服などの治療と寛解率は大きな差はみられず,多剤併用化学療法が無効でステロイド内服で寛解になった症例もあるため,多剤併用化学療法がステロイド内服などよりも明らかに治療効果が高いという根拠には乏しい。これらの症例集積研究のデータは重症例に多剤併用化学療法を施行していた可能性があるため,多剤併用化学療法の有効性を否定するものではないが,CQ16 でも記載したようにSPTCL では病初期にリンパ腫との困難な症例があることから多剤併用化学療法はステロイドなどの治療で効果が乏しい場合,またはステロイド漸減により再発する症例が適応になると考えられる。
HPS 合併例に対しては多剤併用化学療法,ステロイドともに奏効率は低くCQ15-16, 17),多剤併用化学療法がHPS 合併例に対してステロイドよりも一概に効果が高いとは言えない。しかし,SPTCL の疾患関連死はほとんどがHPS であり,HPS 合併例に対して多剤併用化学療法や造血幹細胞移植併用大量化学療法を施行し有効であった報告もあるため23〜25),HPS 合併例に対しては多剤併用化学療法が勧められる。
文献
22) Alaibac M, Berti E, Pigozzi B, et al: High-dose chemotherapy with autologous Blood stem cell transplantation for Aggressive subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma, J Am Acad Dermatol, 2005; 52: S121-3.(エビデンスレベルⅤ)
23) Koh MJ, Sadarangani SP, Chan YC, et al: Aggressive subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma with hemophagocytosis in two children(subcutaneous panniculitis-like T-cell lymphoma), J Am Acad Dermatol, 2009; 61: 875-881.(エビデンスレベルⅤ)
24) Medhi K, Kumar R, Rishi A, Kumar L, Bakhshi S: Subcutaneous panniculitislike T-cell lymphoma with hemophagocytosis: complete remission with BFM-90 protocol, J Pediatr Hematol Oncol, 2008; 30: 558-561.(エビデンスレベルⅤ)
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CQ18
原発性皮膚CD4 陽性 小・中型T 細胞リンパ腫に放射線療法は勧められるか
推奨度
B
放射線療法により多くの症例で寛解導入が可能であり,生命予後は比較的良好であるため,単発や限局性病変(T1,T2)の症例に対しては放射線療法が勧められる。
■解説
原発性皮膚CD4 陽性 小・中型T 細胞リンパ腫はまれな病型であり,放射線療法の有効性を比較検討した報告は見られず,症例集積研究が3 編見られるのみである26〜28)。Friedmann らによる11 例(多発7 例,限局性1 例,単発3 例)の症例集積研究では単発性病変を有する3 例に放射線治療を行い,全例CR となっている26)。これらの症例は6~48 カ月で再発しているが,再発病変は照射野外である。Bekkenk らの症例集積研究では19 例(多発10 例,限局性5 例,単発4 例)に対し12 例に放射線治療が選択され,10 例がCR となっている27)。また,Garcia-Herrera らの症例集積研究では16 例(多発2 例,単発14 例)に対し,5 例で放射線療法が選択されている28)。この報告では放射線治療での寛解率の記載はないが,外科的切除(8 例)やステロイド外用(1例)を含めた14 例中12 例がCR となっている。以上から,本病型は放射線感受性が良好であり,とくに単発および限局性病変(T1,T2)に対する初期治療として放射線療法が勧められる。また,切除可能な単発病変に対しては外科切除も選択可能である28, 29)。多発病変に対しては放射線療法可能であれば第一選択としてもよいが,照射野外の再発が多いことを考慮すると病変が広範囲におよぶ場合(T3)には全身療法も考慮する。本病型はindolent な経過を示す生命予後良好な病型であり30),放射線療法以外の局所療法も治療の候補となるが,PUVA 療法は2 名に施行されいずれもPR であった26, 29)。また,mechlorethamine の外用例では効果が得られなかったとの報告もあり26),紫外線療法および外用療法は効果が乏しいと推測されるため,第一選択としては勧められない。
文献
26) Friedmann D, Wechsler J, Delfau MH, et al: Primary cutaneous pleomorphic small T-cell lymphoma. A review of 11 cases. The French Study Group on Cutaneous Lymphomas, Arch Dermatol, 1995; 131: 1009-1015.(エビデンスレベルⅣ)
27) Bekkenk MW, Vermeer MH, Jansen PM, et al: Peripheral T-cell lymphomas unspecified presenting in the skin: analysis of prognostic factors in a group of 82 patients, Blood, 2003; 102: 2213-2219.(エビデンスレベルⅣ)
28) Garcia-Herrera A, Luis Colomo, Mireia Camo´s, et al: Primary cutaneous small/medium CD4 + T-cell lymphomas: A heterogeneous group of tumors with different clinicopathologic features and outcome, J Clin Oncol, 2008; 26: 3364-3371.(エビデンスレベルⅣ)
29) von den Driesch P, Coors EA: Localized cutaneous small to medium-sized pleomorphic T-cell lymphoma: a report of 3 cases stable for years, J Am Acad Dermatol, 2002; 46: 531-535.(エビデンスレベルⅤ)
30) Beltraminelli H, Leinweber B, Kerl H, Cerroni L: Primary cutaneous CD4 + small-/medium-sized pleomorphic T-cell lymphoma: a cutaneous nodular proliferation of pleomorphic T lymphocytes of undetermined significance? A study of 136 cases, Am J Dermatopathol, 2009, 31: 317-322.(エビデンスレベルⅣ)
CQ19
原発性皮膚CD4 陽性 小・中型T 細胞リンパ腫に化学療法は勧められるか
推奨度
C1
多発病変を有する原発性皮膚CD4 陽性 小・中型T 細胞リンパ腫(T3)に対しては,化学療法の実施を考慮してもよい。
■解説
本病型に対して単剤あるいは多剤併用化学療法の有効性を比較した報告は見られず,化学療法に言及している症例集積研究が2 編見られるのみであるCQ18-26,27)。Friedmann らによる11 例の症例集積研究では多剤併用療法を施行した症例はなく,単剤化学療法ではシクロフォスファミドを経口投与した6 例(シクロフォスファミド単独2 例,ステロイド内服併用4 例)でCR,PR がそれぞれ3 例ずつであったCQ18-26)。単剤化学療法は高い奏効率が期待できるが,CR 症例は1 年以内に再発している。Bekkenk らの19 例の症例集積研究では多剤併用化学療法が5 例,単剤化学療法が1 例に施行され,多剤併用化学療法の5 例中2 例がCR となっているが,単剤化学療法ではCR となっていないCQ18-27)。これらの結果から単剤,多剤併用化学療法の奏効率は高いものの,CR は約50%であるため,放射線治療など局所療法が可能な場合にはそれらの治療を選択するのが望ましく,化学療法は広範囲に病変を有する症例(T3)や放射線療法による初期治療後の再発例が適応になると考えられる。選択すべき化学療法剤を推奨する根拠は乏しいが,生命予後が比較的良好な病型であることから多剤併用化学療法よりは単剤化学療法が適応になると考えられる。なお,化学療法以外の全身療法としてはインターフェロン-αによる治療が5 例に行われ,2 例がCR,3 例がPR であるCQ18-26)。他の治療が奏効しない症例や再発例には有望な治療法であるが,インターフェロン-αは本邦ではリンパ腫に対して保険適応がない。
文献
CQ 18 の文献を参照(新しい文献なし)。
3.皮膚のみに病変を有する成人T 細胞白血病・リンパ腫
◆概説
ATLL は,HTLV-I を原因ウイルスとして様々な臓器に発症するT 細胞リンパ腫である。診断のための主要所見は3 項目存在し,1)形態学的に異常でT 細胞の表面抗原を有するリンパ球の出現(典型的にはCD4 + , CD25 +),2)血清中の抗 HTLV-I 抗体の証明,3)サザンブロット法で証明される腫瘍細胞へのHTLV-I プロウイルスのモノクローナルな組み込みである1)。皮膚症状をATLL の特異疹と診断するためには,1)と3)が皮膚組織で証明される必要があり,特に菌状息肉症など他の皮膚リンパ腫との鑑別には3)が必須である2)。
ATLL ガイドライン作成における問題点は,皮膚科でどの範囲までを扱うかという点である注)。ATLL 全般に関するガイドラインを作成するということになると血液内科を含めた他科ガイドラインとの協調性や整合性を持たせることが必須であり,皮膚科単独で作成することは不可能である。そこで,皮膚科ガイドラインでは,患者が皮膚科を最初に受診するであろう「皮膚のみに病変を有する例」のみを対象として扱うこととした。しかしながら従来から提唱されている皮膚型ATLL2〜5)は,その診断に関する統一された基準はなく,存在自体に否定的な考えもある。このガイドラインでは,化学療法や移植などの全身療法の必要な症例は扱わず,ATLL に伴う皮膚症状に関して,skin-directed therapy が主となる例を扱うこととした6)。
ATLL の特異疹とは,ATLL の臨床型は問わず血清抗HTLV-1 抗体陽性で, 皮膚組織にHTLV-1 のモノクローナルな取り込みのみられた皮膚症状と定義する。今回は「従来から皮膚型として報告されてきたもの」を含め,「末梢血中のATLL 細胞が5%未満で,皮膚型またはくすぶり型以外の臨床型に属さないもの」を暫定的に,「皮膚のみに病変を有するATLL」として扱った。ATLL の皮疹によって予後が異なる結果が示された。結節・腫瘤型と紅皮症型のATLL は予後不良である7)。
注)成人T 細胞白血病・リンパ腫については,日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」(2013 年 版)が公開された。
文献
1) Shimoyama M: Diagnostic criteria and classification of clinical subtypes of adult T-cell leukaemia-lymphoma. A report from the Lymphoma Study Group(1984-87), Br J Haematol, 1991; 79: 428-437.
2) Setoyama M, Katahira Y, Kanzaki T: Clinicopathologic analysis of 124 cases of adult T-cell Leukemia/lymphoma with cutaneous manifestations: the smouldering type with skin manifestations has a poorer prognosis than previously thought, J Dermatol, 1999; 26: 785-790.
3) Takahashi K, Tanaka T, Fujita M, Horiguchi Y, Miyachi Y, Imamura S: Cutaneous-type adult T-cell Leukemia/ lymphoma. A unique clinical feature with monoclonal T-cell proliferation detected by Southern blot analysis, Arch Dermatol, 1988; 124: 399-404.
4) Johno M, Ohishi M, Kojo Y, Yamamoto S, Ono T: Cutaneous manifestations of adult T-ell Leukemia/lymphoma, Gann Monogr Cancer Res, 1992; 39: 33-42.
5) Amano M, Kurokawa M, Ogata K, Itoh H, Kataoka H, Setoyama M: New intity, definition and Diagnostic criteria of cutaneous adult T-cell Leukemia/lymphoma: Human T-lymphotropic virus type 1 proviral DNA load can distinguish between cutaneous and smoldering types, J Dermatol, 2008; 35: 270-275.
6) 天野正宏, 瀬戸山 充:成人T 細胞白血病・リンパ腫の診断と治療, Derma, 2003; 80: 49-57.
7) Sawada Y, Hino R, Hama K, et al: Type of skin eruption is an independent prognostic indicator for adult T-cell Leukemia/lymphoma, Blood, 2011; 117: 3961-3967.
CQ20
皮膚のみに病変を有するATLL に対して紫外線療法は勧められるか
病期0
推奨度
B-C1
皮膚のみに病変を有するATLL に対してPUVA 療法は寛解を導入することができ,有用である可能性がある。皮膚以外への病変の有無に関わらず,PUVA 療法は皮膚症状の緩和効果は期待できるが,皮膚以外の症状への効果や生命予後の改善に対する効果は確認されていない。
■解説
ATLL の特異疹に対する紫外線療法の効果を評価するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。皮膚以外にも病変が存在した例を含めたATLL 特異疹に対する22 例の症例集積研究では,初発例では4 例中4 例がPR であったのに対し,再発例では,9 例中7 例がPR,2 例がNC であった1)。皮疹の型による効果では,紅斑では7 例中6 例がPR,1 例がNC,丘疹では3 例中2 例がPR,1 例がNC,結節では,3 例中3 例がPR であったと報告されている1)。また,1 件の症例報告ではあるが,全身の紅斑丘疹を有する急性型ATLL においてPUVA 療法を試みたところ末梢血も含めてCR が得られたという報告がある2)。しかし,全身症状や生命予後の改善効果は検討対象としていないため,skin-directed therapy が皮膚以外の症状も改善させるという仮説を立証させうるだけの根拠に乏しい。以上から,ATLL における特異疹では,PUVA 療法は皮膚症状の緩和には効果が期待できる治療法である。ただし皮膚以外の症状への効果や,生命予後も含めた十分な臨床上の効果は検討されていない。
なお,ナローバンドUVB による臨床効果は未だ十分に検討されていない。
文献
1) 片平充彦, 溝口志真子, 田中昭人, 瀬戸山 充, 神崎 保:成人T 細胞白血病(ATL)患者の皮膚病変に対する治療法の比較検討,皮膚のリンフォーマ , 1999; XVIII: 46-49.(エビデンスレベルⅣ)
2) 竹森信男, 平井克幸: 成人T 細胞白血病の治療におけるPUVA 療法の意義.PUVA 療法は白血病細胞のアポトージスを誘発,Human Cell, 1995; 8: 121-126.(エビデンスレベルⅤ)
CQ21
皮膚のみに病変を有するATLL に対して放射線療法は勧められるか
推奨度
B
皮膚のみに病変を有するATLL に対して放射線療法は,症状の緩和効果が期待でき,勧められる。しかしながら生命予後の改善に対する効果は確認されていない。
■解説
皮膚に病変が限局するATLL に対する放射線療法の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在せず,1 件の症例集積研究と6 件の症例報告がある。電子線による治療の報告は,皮膚の結節や腫瘤に対して行われ3〜7),腫瘍の縮小や消退といった効果が見られ,1 例では20 Gy の照射により腫瘤が消退した後に,皮膚浸潤細胞のPCR 法にて腫瘍細胞の消退を証明している5)。また軟レントゲン線(デルモパン)照射も試みられ7)腫瘍縮小効果が得られている。皮膚以外にも病変が存在した例を含めたATLL 特異疹に対する効果の検討では,5 例(紅斑1 例,結節2 例,腫瘤2 例)の特異疹に対して放射線療法を行い全例でCR であったという報告があるCQ20-1)。末梢血に異型リンパ球の見られた例における皮膚腫瘤に対してのリニアックX 線照射にて腫瘤の消退と末梢血からの異型細胞の消退が見られたという報告もある8)。以上のことから,ATLL における特異疹では,皮膚のみに病変を有する例でも皮膚以外にも病変を有する例でも,皮膚症状の緩和には効果が期待できる治療法である。ただし生命予後も含めた十分な臨床上の効果は検討されていない。
文献
3) 津田毅彦,石川雅士,伴野朋裕ほか: 長期の臨床経過をたどり皮膚型ATL と考えた1 例,皮膚のリンフォーマ,2002; XXI: 78-81.(エビデンスレベルⅤ)
4) 池野史典,濱田理恵,清家正博,小玉 肇:腫瘍細胞浸潤による骨融解が続発した皮膚型ATLL.皮膚臨床,2004; 46: 29-32.(エビデンスレベルⅤ)
5) Suga M, Yamaguchi M, Ichimiya M, Yoshikawa Y, Hamamoto Y, Muto M: A rare case of the cutaneous form of adult T-cell leukaemia/lymphoma: assessment of remission by PCR for clonal T-cell receptor gamma gene rearrangements in an electron beam-irRadiated cutaneous lesion, Clin Exp Dermatol, 2005; 30: 40-42.(エビデンスレベルⅤ)
6) 村松重典,赤堀 亘,桧垣淑子ほか:成人T 細胞白血病/ リンパ腫の経過中に併発した後天性魚鱗癬の1 例,角化症研究会記録集 , 2007; 21: 119-122.(エビデンスレベルⅤ)
7) 峯 嘉子,山本雄一,平良清人ほか: 皮膚腫瘤の出没がみられた長期生存中のAdult T-cell Leukemia/Lymphoma(ATLL)の 1 例,西日皮膚,2007; 69: 521-526.(エビデンスレベルⅤ)
8) 苅谷清徳,磯貝善蔵,宮脇さおり: 背部に単発腫瘤を認めた成人T 細胞白血病・リンパ腫の1 例,皮膚臨床,2005; 47: 375-379.(エビデンスレベルⅤ)
■解説
本邦で発売されているレチノイドはエトレチナートとトレチノインのみであり,いずれもATLL に対しては未承認である。ATLL の皮膚症状に対するエトレチナートの効果に関して,ランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 件の症例報告では,エトレチナートを60 mg から開始し,34 カ月かけて漸減して1 回目を終了し47 カ月の寛解期間を得ている。その後は再発のつど30 mg から開始して寛解している9)。トレチノイン(オールトランスレチノイン酸,ATRA)は,国内では現在のところ急性前骨髄球性白血病の治療に承認されているが,ATLL への適応はない。皮膚のみに病変を有するATLL に対する2 件の症例集積試験では,6 例中3 例がPR(皮膚症状が50%以上改善)であり重篤な副作用は出現しなかった10)。その内の1 例では,皮膚生検組織でHTLV-I porviral DNA が消失した11)。
これらのことから,十分な解析によるエビデンスは得られていないが,皮膚のみに病変を有するATLL に対してレチノイドは有益である。
文献
9) Inozume T, Matsue H, Furuhashi M, et al: Successful use of etretinate for long-term management of a patient with cutaneous-type adult T-cell leukaemia/lymphoma, Br J Dermatol, 2005; 153: 1239-1241.(エビデンスレベルⅤ)
10) Maeda Y, Yamaguchi T, Hijikata Y, et al: Clinical efficacy of all-trans retinoic acid for treating adult T cell Leukemia, J Cancer Res Clin Oncol, 2008; 134: 673-677.(エビデンスレベルⅣ)
11) Maeda Y, Yamaguchi T, Ueda S, Miyazato H, Matsuda M, Kanamaru A: All-trans retinoic acid reduced skin involvement of adult T-cell Leukemia, Leukemia, 2004; 18: 1159-1160.(エビデンスレベルⅣ)
CQ23
皮膚のみに病変を有するATLL に対してインターフェロン療法は勧められるか
推奨度
C1
皮膚に病変が限局するATLL に対して,インターフェロンガンマは症状を緩和できる可能性があり,使用を考慮してもよい。皮膚以外の症状への効果や生命予後の改善に対する効果は確認されていない。
■解説
皮膚に病変が限局するATLL に対するインターフェロンガンマの効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 件の症例集積研究では,皮膚に病変が限局するATLL 対象患者22 例のうち,CR が5 例,PR が7 例で奏効率は54.5%(22 例中12 例)CR 率22.7%(22 例中5 例)であった12)。2000 年からIFN-γ-n1 は,ATLL の皮膚症状に対して健保適応が承認されている注)。2 件の症例報告では,治療効果が得られた例として大型の腫瘤の縮小13)や紅斑,丘疹の2 症例14)などの使用経験が報告されている。IFN-γ-n1 は副作用として,白血球減少,肝機能障害,腎不全,うつ,ショックなどが報告されているがATLL 患者における発現頻度は不明である。ステロイド外用剤や紫外線療法に抵抗性の症例では試みてもよい治療法であるが,副作用を含めた有用性や,皮膚以外の症状への効果,生命予後改善効果に関しては,市販後臨床試験の結果を待たなければならない。
注)IFN-γ-n1 は製造・販売が中止された(補遺参照)。
文献
12) 石原和之:成人T 細胞白血病・リンパ腫を対象としたOH-6000 の後期臨床第Ⅱ 相試験,Skin Cancer, 1997; 12: 301-314.(エビデンスレベルⅣ)
13) Oba T, Suzuki R, Miyamura K, Kodera Y: Huge mass of cutaneous-type adult T-cell Leukemia which responded to interferon gamma, Intern Med, 2007; 46: 147.(エビデンスレベルⅤ)
14) 片平充彦, 福重智子, 瀬戸山 充, 神崎 保: IFN- γがATL 特異疹に対し有効であった2 例,西日皮膚,2002; 64: 769.(エビデンスレベルⅤ)
CQ24
皮膚のみに病変を有するATLL に対して単剤化学療法は勧められるか
推奨度
B-C1
Skin-directed therapy に対して治療抵抗性で,多剤併用化学療法の適応がない症例に対して,単剤化学療法は有用である可能性がある。しかし,生命予後の改善に対する効果は確認されていない。
■解説
急性型,リンパ腫型のAggressive ATLL に対する化学療法はmLSG15(VCAP, AMP, VECP)が推奨されているが,くすぶり型,予後良好な慢性型ATL を含むindolent type ATL に対しては注意深い経過観察あるいはAZT/IFN-α療法が推奨されている15)。従って,皮膚のみに病変を有するATLL に対する化学療法を推奨するエビデンスは現在のところない。しかし,前述のように,特異疹を伴うATLL は皮膚症状を伴わないくすぶり型ATLL より予後不良であること,また副腎皮質ステロイド外用,紫外線療法,放射線療法,インターフェロンガンマ療法などによるskin-directed therapy による症状緩和が困難であり,かつ多剤化学療法の適応がない症例に対しては,治療の選択肢として考慮せざるを得ないのが現状である。
現在,ATLL に対する単剤化学療法としては,経口内服剤としてVP-16(エトポシド)やソブゾキサン,点滴注射剤としてペントスタチンが使用される。ATLL に対する単剤化学療法に関して,ランダム化比較試験はない。しかし,低容量エトポシド内服療法に関しては,全ての臨床型を含めた1 件の非ランダム化比較試験と3 件の症例報告が存在する。VP-16 25 mg + プレドニゾロン10 mg の連日内服療法(8 例)とOPEC/MPEC 多剤併用化学療法(79 例)の非ランダム化比較試験では,median Survival times で前者が18.0 カ月に対して後者は7.1 カ月であったと報告されている16)。また,7 例のATLL に対するエトポシド少量長期経口投与(25〜100 mg)では,7 例中4 例にCR が得られ(CR 率57.1%),PR 例1 例を含めた有効率は71.4%とする報告がある17)。しかし,この報告は既治療例や他の化学療法剤との併用例も含まれる。リンパ腫型ATLL に対して低容量エトポシド内服療法を初回治療とした報告が1 例あり,エトポシド 50 mg連日内服(14〜21 日間継続投与)にて,有効であったと報告されている18)。皮膚症状に対する効果については,VP-16 50 mg の連日内服(3 週投薬,2 週休薬を1 クールとし,4 クール施行)にて紅斑の色素沈着を認めたという報告がなされている19)。ソブゾキサンとペントスタチンについては,単独投与における皮膚症状への効果は未だ十分に検討されていない。以上から,皮膚のみに病変を有するATLL に対する単剤化学療法の効果,予後改善あるいは予後悪化に関する良質なエビデンスは存在せず,今後の検討が必要である。
文献
15) Tsukasaki K, Hermine O, Bazarbachi A, et al: Definition, prognostic factors, treatment, and response criteria of adult T-cell Leukemia-lymphoma: a proposal from an international consensus meeting, J Clin Oncol, 2009; 27: 453-459.(エビデンスレベルⅥ)
16) Matsushita K, Matsumoto T, Ohtsubo H, et al: Long-term maintenance combination chemotherapy with OPEC/ MPEC(Vincristin or Methotrexate, Prednisolone, Etoposide and Cyclophosphamide) or with daily oral etoposide and prednisolone can improve Survival and quality of life in adult T-cell Leukemia/lymphoma, ILeuk Lymphoma, 1999; 36: 67-75.(エビデンスレベルⅢ)
17) 江副彩乃,幸田久平,平山泰生ほか: Etoposide 少量長期経口投与が奏効して長期生存が得られた成人T 細胞白血病の2 例,癌と化学療法 , 1995; 22: 547-552.(エビデンスレベルⅤ)
18) 付 新佳,又野禎也,網谷茂樹ほか: 重篤な循環器疾患をもつ高齢成人T 細胞白血病/リンパ腫に対する低容量Etoposide の有効性,癌と化学療法 , 2001; 28: 1269-1272.(エビデンスレベルⅤ)
19) 伊川友香,金原拓郎,高田 実,坂井宣彦,山田祐治,彼谷裕康: 高カルシウム血症を呈した皮膚紅斑丘疹型成人T 細胞白血病・リンパ腫,皮膚臨床 , 2005; 47: 381-384.(エビデンスレベルⅤ)
4.その他の稀な病型
1)節外性NK/T 細胞リンパ腫, 鼻型(Extranodal NK/T cell lymphoma, nasal type)
2)芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍(Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm)
3)種痘様水疱症様リンパ腫(Hydroa vacciniforme-like lymphoma)
◆概説
WHO 分類(2008)では,節外性NK/T 細胞リンパ腫に加えて,本邦を含むアジア,メキシコ,ペルーから報告のある種痘様水疱症様リンパ腫(hydroa vacciniforme-like lymphoma)が新たに独立疾患として加えられた。種痘様水疱症様リンパ腫は,EB ウイルス関連で青少年に好発するT 細胞リンパ腫で,しばしば虫刺や光線に対する過敏反応がある。予後は様々であるが,血球貪食症候群の合併など全身性に拡大した場合は予後不良である。この疾患単独での治療に関する報告は無く,慢性活動性EB ウイルス感染症やEB ウイルス陽性T/NK 細胞増殖性疾患について,治療に関する報告が散見される。アシクロビルやガンシクロビルによる抗ウイルス療法,インターフェロンαやインターロイキン2 などの免疫療法,副腎皮質コルチコステロイド薬とエトポシド併用の化学療法などがみられるが2),少数例での報告が中心で記述的研究としても十分といえるものではない。近年,幹細胞移植についての報告が散見され,CQ は同種幹細胞移植が治療として有益か,の1 項目について検討した。
文献
1) Jaffe ES, Harris NL, Stein H, et al: Induction and overview of the classification of the lymphoid neoplasms. Swerdlow SH, Campo E, Harris NL et al, editors. WHO Classification of Haematopoietic and Lymphoid Tissue. Lyon, France: IARC Press 2008.
2) Cohen JI, Kimura H, Nakamura S, et al: Epstein-Barr virus-associated lymphoproliferative disease in non-immunocompromised hosts: a status report and summary of an international meeting, 8-9 September 2008, Ann Oncol, 2009; 20: 1472-1482.
CQ25
節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型に対してCHOP は勧められるか
推奨度
C2
節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型に対するCHOP 療法は概して反応は悪いか,一時的なので基本的には勧められない。
■解説
症例数が少なく,十分な検討はされていないが,2 件の症例集積研究から,多くは化学療法に抵抗性を示すとされている。腫瘍細胞は,多剤耐性遺伝子P 糖蛋白を発現していることが多く,CHOP 療法が十分な効果を発揮しない理由の一つと考えられている1〜3)。
文献
1) Yamaguchi M, Kita K, Miwa H, et al: Frequent expression of P-glycoprotein/MDR1 by nasal T-cell lymphoma cells, Cancer, 2001; 76: 2351-2356.(エビデンスレベルⅣ)
2) Yamamoto T, Iwasaki T, Watanabe N, et al: Expression of multidrug resistance P-glycoprotein on peripheral blood mononuclear cells of patients with granular lymphocyte-proliferative disorders. Blood, 1993; 81: 1342-1346.(エビデンスレベルⅣ)
3) Oshimi K: Progress in understanding and managing natural killer-cell malignancies, Br J Haematol, 2007; 139: 532-544.(エビデンスレベルⅥ)
CQ26
節外性NK/T 細胞リンパ腫,鼻型に対して放射線療法と化学療法の併用は勧められるか
推奨度
B
限局性病変に対しては放射線療法に次いであるいは同時にDeVIC 療法を加える治療が勧められる。
■解説
節外性NK/T 細胞リンパ腫に対する治療に関して,3 件の非ランダム化比較試験がある。限局性病変の鼻性節外性NK/T 細胞リンパ腫に対する放射線療法と2/3 量のDeVIC 療法との併用療法に関する非ランダム化比較試験では,26 例中20 例がCR(CR 率77%),1 例がPR の効果が認められ,2 年生存率は78%であった。これは他施設から報告された放射線治療のみの45%と比較して良好な結果が得られている4)。進行期あるいは多発性病変に対しては,SMILE-PⅡ のプロトコール(JCOG: http://www.c-shot.or.jp/study/0701/outline/)が進められているが,その評価は今後の解析を待たなくてはならない注)。 香港グループはProMACE / CytaBOM に続き,放射線療法を行ってきたがその治療効果の評価は不明である。 本症に対するCHOP 療法の効果は一時的か,抵抗性を示すことが多い4,5)。同種血液幹細胞移植の多施設での成績では,NK 細胞腫瘍全体では,2 年間の病状進行のない生存率は34%で,全体の2 年生存率は40%であった6)。10 カ月間再発や進行がない症例では,観察期間中は生存が認められた。Oshimi らの疫学調査から,生命予後が3,4 年以降プラトーになる傾向がみられ,症例の中には寛解導入が可能な症例が存在するCQ25-3)。これらのデータは,治療に反応して寛解に導入できる症例が存在することを示していると思われる。
注)日本血液学会「造血器腫瘍診療ガイドライン」(2013 年版)に治療方針が示された。
文献
4) Yamaguchi M, Tobinai K, Oguchi M, Ishizuka N, Kobayashi Y, Isobe Y, Ishizawa K, Maseki N, Itoh K, Usui N, Wasada I, Kinoshita T, Ohshima K, Matsuno Y, Terauchi T, Nawano S, Ishikura S, Kagami Y, Hotta T, Oshimi K: Phase Ⅰ/Ⅱ study of concurrent chemoradiotherapy for localized nasal natural killer/T-cell lymphoma: Japan Clinical Oncology Group Study JCOG0211, J Clin Oncol, 2009; 27: 5594-5600.(エビデンスレベルⅢ)
5) Yamaguchi M, Ogawa S, Nomoto, et al: Treatment outcome of nasal NK-cell lymphoma: a report of 12 consecutively-diagnosed cases and a review of the literature, J Clin Exp Haematopathol, 2001; 41: 93-99.(エビデンスレベルⅢ)
6) Mutashige N, Kami M, Kishi Y, et al: Allogenic haematopoietic stem cell transplantation as a promising treatment for natural killer-cell neoplasms, Br J Haematol, 2005; 130: 561-567.(エビデンスレベルⅢ)
CQ27
芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍に化学療法は勧められるか
推奨度
C1
芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍に対してスタンダードな治療は確立していないため,多剤併用療法の実施を考慮してもよい。しかし効果は一時的で,ほとんどの例が数年で不幸な転帰をとる。
■解説
本症の腫瘍細胞は,CD123(IL-3R α鎖)とTCL1(lymphoid protooncogene)が陽性になり,plasmacytoid dendritic cell 前駆細胞由来の腫瘍と考えられ,リンパ腫のカテゴリーから外れるために上記の呼称となった。1 件のメタアナリシスと1 件の症例集積研究では,男性に約2 倍多く,平均発症年齢は67 歳(8〜89 歳)である7)。診断時にすでに46%の例で骨髄浸潤を認め,経過中に72%で骨髄浸潤が生じる。CHOP 療法が用いられることが多いが,治療効果は乏しく,平均生存期間は皮膚病変の症例では約25 カ月7,8)であり,皮膚外病変を有する場合はさらに短い。血液幹細胞移植によって生存延長が可能という1 件の症例集積研究があるが,治療効果の評価は今後の問題であるCQ26-6)。
文献
7) Bekkenk MW, Jansen PM, Meijer CJLM, Willemze R: CD56 + hematological neoplasms presenting in the skin: a retrospective analysis of 23 new cases and 130 cases from the literature, Ann Oncol, 2004; 15; 1097-1108.(エビデンスレベル Ⅰ)
8) Suzuki R, Nakamura S, Suzumiya J, et al: Blastic natural killer cell lymphoma/Leukemia(CD56-positive blastic tumor). Prognostication and categorization according to anatomic sites of involvement, Cancer, 2005; 104: 1022-1031.(エビデンスレベルⅣ)
■解説
対象を種痘様水疱症様リンパ腫に限定した同種造血幹細胞移植の効果に関する比較試験および症例集積研究は存在しない。慢性活動性EB ウイルス感染症(CAEBV)に対する同種造血幹細胞移植の効果に関する2 編の症例集積研究によると,CAEBV 15 例に対して同種骨髄または末梢血幹細胞移植を血縁者間または非血縁者間で施行した結果,生着しなかった1 例を除いて7 例が生存,7 例が移植後1〜16 カ月で死亡したが,その中の3 例が移植関連死であったと報告している9)。もう1 編は多施設間の症例集積研究で,42 例のCAEBV 患者に同種幹細胞移植(骨髄幹細胞移植25 例,末梢血幹細胞移植10 例,臍帯血移植4 例,CD34 陽性細胞移植3 例)を施行した成績を報告している10)。全体の26%にあたる11 例は骨髄非破壊的前処置による移植(RIST)であった。1 年後の無再発生存率は56.1%と報告している。移植関連合併症が多く,種痘様水疱症様リンパ腫のみでの治療成績の報告はないが,EB ウイルス量を監視して経過観察し,全身性に増悪傾向が見られれば早急に造血幹細胞移植を計画・準備することが推奨される。
文献
9) Gotoh K, Ito Y, Shibata-Watanabe Y, et al: Clinical and virological characteristics of 15 patients with chronic active Epstein-Barr virus infection treated with hematopoietic stem cell transplantation, Clin Infect Dis, 2008; 46: 1525-1534.(エビデンスレベルⅣ)
10) Sato E, Ohga S, Kuroda H, et al: Allogeneic hematopoietic stem cell transplantation for Epstein-Barr virus-associated T/natural killer-cell lymphoproliferative disease in Japan, Am J Hematol, 2008; 83: 721-727.(エビデンスレベルⅣ)
5. 皮膚B 細胞リンパ腫
◆概説
皮膚B 細胞リンパ腫は,2005 年のWHO-EORTC 分類1)では原発性皮膚辺縁帯B 細胞リンパ腫(primary cutaneous marginal zone B-cell lymphoma, PCMZL),原発性皮膚濾胞中心リンパ腫(primary cutaneous follicle center cell lymphoma, PCFCL),原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫, 下肢型(primary cutaneous diffuse large B-cell lymphoma, leg type, PCLBCL, leg type),原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫, その他(PCLBCL, other)および血管内大細胞型B 細胞リンパ腫(intravascular large B-cell lymphoma: ⅣL) に分類されたが,2008 年に改訂された造血系腫瘍のWHO 分類2)では,「原発性皮膚」辺縁帯B 細胞リンパ腫の病名が削除され,「節外性」辺縁帯リンパ腫(MALT リンパ腫)にまとめられた。原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,下肢型 は病名として記載されたが,びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫,非特定(not otherwise specified)の下位に入り,原発性皮膚びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫, その他は削除された。予後因子としては病型分類が重要な因子であり,原発性皮膚濾胞中心リンパ腫と節外性辺縁帯リンパ腫は予後良好のindolent 群,びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫および血管内大細胞型B 細胞リンパ腫は予後不良群に分類されている。ここでは,予後を重視して「indolent 群」と「びまん性大細胞型」に分けてCQ を設定した。この疾患群でもRCT は存在せず記述的研究がメインであるが,2008 年に過去の報告をまとめてEORTC とISCL による皮膚B 細胞リンパ腫の取り扱い指針が示されている3)。治療については,局所療法として放射線照射と外科的切除,全身療法として化学療法とリツキシマブ投与による治療報告が大多数を占める。一方で,少数ながらインターフェロンαの局所投与や光線力学的療法の報告がある。
文献
1) Willemze R, Jaffe ES, Burg G, et al: WHO-EORTC classification for cutaneous lymphomas, Blood, 2005; 105: 3768-3785.
2) Jaffe ES, Harris NL, Stein H, et al: Induction and overview of the classification of the lymphoid neoplasms. Swerdlow SH, Campo E, Harris NL et al, editors. WHO Classification of Haematopoietic and Lymphoid Tissue. Lyon, France: IARC Press 2008; 158.
3) Sneff NJ, Noordijk EM, Kim YH, et al: European Organization for Research and Treatment of Cancer and International. Society for Cutaneous Lymphoma consensus recommendations for the management of cutaneous Bcell lymphomas, Blood, 2008; 112: 1600-1609.
CQ29
皮膚B 細胞リンパ腫Indolent 群に対して放射線療法は勧められるか
推奨度
B
Indolent 群(PCMZL, PCFCL)では,切除可能な病変に対しては,外科的切除が勧められる。
■解説
Indolent 群(PCMZL, PCFCL)に対する放射線療法の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 編の症例集積研究では,初期治療としてPCMZL 83 例,PCFCL 134 例に対して施行した放射線療法の結果,それぞれ97.6%,97.8%のCR を得たと報告している1)。一方で,CR を得た症例のうちそれぞれ46.9%,49.6%に再発がみられたと報告している。2 編目の症例集積研究は多施設間の153 例のPCBCL 患者における放射線療法の有効性を検討し,PCMZL 25 例,PCFCL 101 例について解析している2)。結果はいずれも全例がCR を得ている一方,それぞれ60%,29%に再発がみられたが,5 年生存率はそれぞれ,95%,97%と良好であったと報告している。3 編目の症例集積研究によるとPCMZL 17 例に放射線療法を施行し,16 例がCR を得たと報告している3)。いずれも予後良好な疾患で放射線療法への反応は良好であり治療法として推奨される。
文献
1) Zinzani PL, Quaglino P, Pimpinelli N, et al: Prognostic factors in primary cutaneous B-cell lymphoma: The Italian study group for cutaneous lymphoma, J Clin Oncol, 2006; 24: 1376-1382.(エビデンスレベルⅣ)
2) Senff NJ, Hoefnagel JJ, Keelis KJ, et al: Results of radiotherapy in 153 primary cutaneous B-cell lymphomas classified according to the WHO-EORTC classification, Arch Dermatol, 2007; 143: 1520-1526.(エビデンスレベルⅣ)
3) Hoefnagel JJ, Vermeer MH, Jansen PM, et al: Primary cutaneous marginal zone B-cell lymphoma - clinical and therapeutic features in 50 cases, Arch Dermatol, 2005; 141: 1139-1145.(エビデンスレベルⅣ)
CQ30
皮膚B 細胞リンパ腫Indolent 群に対して外科的切除は勧められるか
推奨度
B
Indolent 群(PCMZL, PCFCL)では,切除可能な病変に対しては,外科的切除が勧められる。
■解説
Indolent 群(PCMZL, PCFCL)に対する外科的切除の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 編の症例集積研究では初期治療としてPCMZL 39 例,PCFCL 64 例に対して施行した放射線療法の結果を,それぞれ97.4%,96.8%のCR を得て放射線療法の治療効果と同等であったと報告しているCQ29-1)。一方で,CR を得た症例の31.6%,37.1%に再発がみられたと報告している。もう1 編の症例集積研究ではPCMZL 10 例に外科的切除を施行し,全例がCR を得たと報告しているCQ29-3)。外科的切除は放射線療法と同様に治療法として推奨される。
文献
CQ 29 の文献1), 3)を参照。
CQ31
皮膚B 細胞リンパ腫Indolent 群に対してリツキシマブ単剤療法は勧められるか
推奨度
B-C1
Indolent 群(PCMZL, PCFCL)において,特に多発病変を有する症例では,リツキシマブ単剤投与が有用である可能性がある。
■解説
Indolent 群(PCMZL, PCFCL)に対するリツキシマブ単剤投与の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 編の症例集積研究ではPCBCL 10 例(PCMZL 1 例,PCFCL 8 例,DLCBL 1 例)に対し,リツキシマブ 8 クールの全身投与を行い,70%の症例でCR となったと報告している4)。2 編目の症例集積研究ではPCBCL(PCMZL 4 例,PCFCL5 例)のうち2 例にリツキシマブの全身投与を行いCR,7 例で局所投与を行いPCMZL の1 病変を除き,6 例でCR を得たと報告している5)。3 編目の症例集積研究では9 例のPCBCL(PCMZL 4 例,PCFCL 4 例)で,PCMZL 3 例,PCFCL 3 例に局所投与,PCMZL 1 例,PCFCL 1 例に全身投与を行い,すべての症例でCR となったが,局所投与群では4 例に再発を認めたと報告している6)。4 編目の症例集積研究では15 例のindolent 群(PCMZL 5 例,PCFCL 10 例)にリツキシマブの全身投与を行い,CR 60%,PR 27%であったと報告している7)。少数例の報告ばかりではあるが,リツキシマブの単剤投与も有用で,特にT2C やT3 に相当する多発症例では治療法として推奨される。
文献
4) Gellrich S, Muche JM, Wilks A, et al: Systemic eight-cycle anti-CD20 monoclonal antibody(rituximab) therapy in primary cutaneous B-cell lymphomas-an applicational observation, Br J Dermatol, 2005; 153: 167-173.(エビデンスレベルⅣ)
5) Fink-Puches R, Wolf IH, Zalaudekl, et al: Treatment of primary cutaneous B-cell lymphoma with rituximab. J Am Acad Dermatol, 2005; 52: 847-853.(エビデンスレベルⅣ)
6) Kerl K, Prins C, Saurat JH, et al: Intralesional and intravenous treatment of cutaneous B-cell lymphoma with the monoclonal anti-CD20 antibody rituximab: report and follow-up of eight cases, Br J Dermatol, 2006; 155: 1197-1200.(エビデンスレベルⅣ)
7) Morales AV, Advani R, Horwitz SM, et al: Indolent primary cutaneous B-cell lymphoma: experience using systemic rituximab, J Am Acad Dermatol, 2008; 59: 953-957.(エビデンスレベルⅣ)
CQ32
皮膚細胞B 細胞リンパ腫Indolent 群に対して多剤併用化学療法は勧められるか
推奨度
C1
Indolent 群に対しては,他の治療法に抵抗する症例や皮膚外進展例に限り,多剤併用化学療法の実施を考慮してよい。
■解説
Indolent 群(PCMZL, PCFCL)に対する多剤併用化学療法の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 編の症例集積研究ではPCMZL で85%,PCFCL で85%がCR を得たと解析しているCQ29-2)。しかし,生命予後良好なindolent 群に対して,多剤併用化学療法は第一選択とはなりえず,適応は限定的である。
文献
CQ 29 の文献2 に引用。
CQ33
びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫に対して多剤併用化学療法は勧められるか
推奨度
B
びまん性大型細胞型B 細胞リンパ腫
PCLBCL, leg type および血管内大細胞型B 細胞リンパ腫(ⅣL)に対しては多剤併用化学療法,特にリツキシマブを併用した多剤併用化学療法が勧められる。
■解説
びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫ではR-CHOP が第一選択とされているが,DLCBL, leg type は高齢者での発症が多く,症例数も少ないために多剤併用化学療法,中でもR-CHOP の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 編の症例集積研究では初期治療としてPCLBCL, leg type 20 例に対して化学療法を施行した結果,80.0%のCR を得たと報告しているCQ29-1)。一方で,CR を得た症例の62.5%に再発がみられた。2 編目の症例集積研究では,PCLBCL,leg type 25 例に対しリツキシマブを併用した化学療法(そのうち,R-CHOP は21 例)は,23 例でCR を得たと報告している8)。3 編目の症例集積研究では,多施設間の60 症例による検討を行っており,リツキシマブを併用した多剤併用化学療法群が統計学的有意さはないものの91.6%でCR を得ており,リツキシマブを使用しない他治療群よりも短期間での生存率が高かったと報告している9)。ⅣL についても多剤併用化学療法,中でもR-CHOP の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 編の症例集積研究では,106 例の化学療法を施行したⅣL 症例のうち,49 例のリツキシマブ併用群と57 例のリツキシマブ非投与群を比較し,CR はそれぞれ82%,51%,2 年後の全生存率はそれぞれ66%,46%でリツキシマブ併用群が有意に良好であったと報告している10)。2 編目の症例集積研究では,10 例のリツキシマブ併用群と20 例の非投与群を比較し,CR はそれぞれ90%,50%,3 年後の全生存率はそれぞれ89%,38%でリツキシマブ併用群が有意に良好であったと報告している11)。びまん性大細胞型ではリツキシマブを併用した多剤併用化学療法が第一選択として推奨される。
文献
8) Grange F, Maubec E, Bagot M, et al: Treatment of cutaneous B-cell lymphoma, leg type, with age-adapted combinations of chemotherapies and rituximab, Arch Dermatol, 2009; 145: 329-330.(エビデンスレベルⅣ)
9) Grange F, Beylot-Barry M, Courville P, et al: Primary cutaneous diffuse large B-cell lymphoma, leg type: clinicopathologic features and prognostic analysis in 60 cases, Arch Dermatol, 2007; 143: 1144-1150.(エビデンスレベルⅣ)
10) Shimada K, Matsue K, Yamamoto K, et al: retrospective analysis of intravascular large B-cell lymphoma treated with rituximab-containing chemotherapy as reported by the ⅣL study group in Japan, J Clin Oncol, 2008; 26: 3189-3195.(エビデンスレベルⅣ)
11) Ferreri AJ, Dognini GP, Bairey O, et al: The addition of rituximab to anthracycline-based chemotherapy significantly improves outcome in 'Western' patients with intravascular large B-cell lymphoma, Br J Haematol, 2008; 143: 253-257.(エビデンスレベルⅣ)
CQ34
びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫に対してリツキシマブ単剤療法は勧められるか
推奨度
B
びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫(PCLBCL)でも,高齢や合併症などの問題で多剤併用化学療法が困難な症例では,リツキシマブ単剤投与が勧められる。
■解説
びまん性大細胞型に対するリツキシマブ単剤療法の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しないが,過去の報告をまとめた1 編のメタアナリシスではPCLBCL, leg type 13 例に対し経静脈的にリツキシマブを単剤投与し,5 例にCR を得たと報告している12)。高齢発症が多く合併症やADL に問題があり,多剤併用化学療法が困難な場合にはリツキシマブ単剤投与も治療法として推奨される。
文献
12) Sneff NJ, Noordijk EM, Kim YH, et al: European Organization for Research and Treatment of Cancer and International. Society for Cutaneous Lymphoma consensus recommendations for the management of cutaneous Bcell lymphomas, Blood, 2008; 112: 1600-1609.(エビデンスレベル Ⅰ)
CQ35
びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫に対して外科的切除や放射線照射は勧められるか
推奨度
C1
リツキシマブ併用化学療法が行えないような高齢患者や合併症の多い患者に対しては,外科的切除や放射線照射の実施を考慮してもよい。
■解説
びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫に対する外科的切除や放射線照射の効果に関するランダム化及び非ランダム化比較試験は存在しない。1 編の症例集積研究では初期治療としてPCLBCL, leg type 3 例に対して外科的切除を,28 例に対して放射線照射を施行し,それぞれ3 例および23 例でCR を得たと報告しているCQ29-1)。もう1 編の症例集積研究では21 例のPCLBCL, leg type に関して,放射線治療を9 例,外科的切除を9 例に施行し,それぞれ3 例,6 例が有効であったと報告している13)。CQ34 に解説したように,リツキシマブを併用した多剤併用化学療法が第一選択として推奨されるが,多剤併用化学療法が行えないような高齢患者や合併症の多い患者に対して,症状緩和もしくは一時的な病変縮小を目的に,外科的切除や放射線照射も治療法の選択肢となりうる。
文献
13) Hallermann C, Niermann C, Fischer RJ, et al: New prognostic relevant factors in primary cutaneous diffuse large B-cell lymphomas, J Am Acad Dermatol, 2007; 56: 588-597.(エビデンスレベルⅣ)